ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特174条1項 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L |
---|---|
管理番号 | 1345870 |
異議申立番号 | 異議2018-700669 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-08-10 |
確定日 | 2018-10-30 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第6279420号発明「ポリカーボネート成形組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6279420号の請求項1?8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6279420号(請求項の数8。以下,「本件特許」という。)は,平成22年1月19日(パリ条約による優先権主張:平成21年1月23日,欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願(特願2011-546674号)の一部を,平成26年7月23日に新たな出願とした特許出願(特願2014-149900号)に係るものであって,平成30年1月26日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成30年2月14日である。)。 その後,平成30年8月10日に,本件特許の請求項1?8に係る特許に対して,特許異議申立人である板倉昭夫(以下,「申立人板倉」という。)により,特許異議の申立て(以下,「申立てA」という。)がされた。 また,平成30年8月13日に,本件特許の請求項1?8に係る特許に対して,特許異議申立人である赤松智信(以下,「申立人赤松」という。)により,特許異議の申立て(以下,「申立てB」という。)がされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?8に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを,A)およびB)の総量に対して52?95重量部,および B)バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマーを,A)およびB)の総量に対して5?48重量部, 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム,および それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム, を含み, 但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする,熱可塑性成形組成物。 【請求項2】 リチウムの含有量が,0.2ppm以上,2ppm未満である,請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記ゴム変性グラフトポリマーが, B.1 B)に対して65?95重量%である,下記混合重合物 B.1.1 ビニル芳香族および環置換ビニル芳香族からなる群から選択される少なくとも1種を,B.1)に対して50?99重量% B.1.2 シアン化ビニル,(メタ)アクリル酸(C_(1)-C_(8))アルキルエステル および不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を,B.1)に対して1?50重量%, の, B.2 B)に対して5?35重量%である,ガラス転移温度-10℃未満である1種またはそれ以上のグラフトベース, への,グラフト物, を含む, 請求項1または2に記載の組成物。 【請求項4】 B.2)が,ポリブタジエンゴムおよびポリブタジエン/スチレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種である,請求項3に記載の組成物。 【請求項5】 エマルション重合によって調製されたグラフトポリマーDをさらに含む,請求項1に記載の組成物。 【請求項6】 成形組成物中における前記リチウムの含有量が,0.3?3.2ppmであり 成形組成物中における前記ナトリウムおよび/またはカリウムの含有量が,それぞれ2ppmを超える量であり,および ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ10ppmを超えない量である, 請求項1記載の組成物。 【請求項7】 ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が2.8?6.8ppmの範囲である,請求項1に記載の組成物。 【請求項8】 請求項1?7いずれかに記載の組成物を含む成形品。 第3 特許異議の申立ての理由の概要 1 申立人板倉による申立てAについて 本件発明1?8は,下記(1)?(4)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?8に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(5)の甲第1号証?甲第2号証(以下,申立ての記号を付して「甲1A」等という。)を提出する。 (1)取消理由1(進歩性) 本件発明1?8は,甲1Aに記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2)取消理由2(委任省令要件) 本件発明1及び3?8は,発明の詳細な説明の記載が特許法36条4項1号に適合するものではない。 (3)取消理由3(サポート要件) 本件発明1?5,7及び8は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。 (4)取消理由4(新規事項の追加) 本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲(請求項2)について,平成28年10月3日付けの手続補正書でした補正は,国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文,国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては,当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下,翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては,翻訳文等又は当該補正後の明細書,特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法184条の12第2項参照)。 (5)証拠方法 ・甲1A 特表2009-501816号公報 ・甲2A 平成26年(行ケ)第10155号審決取消請求事件判決 2 申立人赤松による申立てBについて 本件発明1?8は,下記(1)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?8に係る特許は,特許法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(2)の甲第1号証?甲第3号証(以下,申立ての記号を付して「甲1B」等という。)を提出する。 (1)取消理由5(進歩性) 本件発明1?8は,甲1Bに記載された発明及び甲1B?3Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2)証拠方法 ・甲1B 特表2009-501816号公報 ・甲2B 特表2008-505220号公報 ・甲3B 特開平11-130954号公報 第4 当審の判断 以下に述べるように,申立てA及び申立てBのいずれについても,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 以下,事案に鑑み,取消理由4,1,5,2,3の順で検討する。 1 取消理由4(新規事項の追加) (1)平成28年10月3日付けの手続補正書でした補正(以下,「本件補正」という。)は,本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2における「リチウムの含有量」について,「0.2ppm?3.6ppm」を「0.2ppm以上,2.0ppm未満」とする補正事項を含むものである。 (2)翻訳文等には,以下の記載がある。 「従って本発明は, A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを,A)およびB)の総量に対して52?95重量部,好ましくは53?85重量部,最も好ましくは55?75重量部,および B)バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマーを,A)およびB)の総量に対して5?48重量部,好ましくは15?47重量部,最も好ましくは25?45重量部, 0を超えそして4ppm以下,好ましくは0.2?3.6ppm,特に好ましくは0.3?3.2ppmおよび最も好ましくは0.4?2.5ppmの量のリチウム,および それぞれ1.5ppmを超える,好ましくは2ppmを超える量の,ナトリウムおよび/またはカリウム, を含む,熱可塑性成形組成物を提供する。」(【0010】) 「表1:成形組成物およびそれらの性能」(【0071】) 「【表1】 (3)以上の記載によれば,翻訳文等には,熱可塑性成形組成物におけるリチウムの含有量について,「0を超えそして4ppm以下」が記載され,さらに,好ましいリチウムの含有量として,「0.2?3.6ppm」,「0.3?3.2ppm」及び「0.4?2.5ppm」が記載されている(【0010】)。そして,表1には,熱可塑性成形組成物の具体例が記載されており(【0071】),リチウムの含有量が,それぞれ,「1.3(ppm)」,「2.0(ppm)」,「3.5(ppm)」及び「6.0(ppm)」のものが記載されている(表1の「組成物中のLi含量(ppm)」の欄)。 そうすると,翻訳文等には,熱可塑性成形組成物におけるリチウムの含有量について,「0を超えそして4ppm以下」を前提として,それより狭い数値範囲である「0.2?3.6ppm」が好ましいものとして記載され,また,具体例として,「0.2?3.6ppm」に含まれる「2.0(ppm)」も記載されている以上,翻訳文等には,熱可塑性成形組成物におけるリチウムの含有量として,0.2ppm以上であって,2.0ppmまでのもの,すなわち,「0.2ppm以上,2.0ppm未満」が記載されているということができる。 したがって,本件補正に係る上記補正事項は,翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであり,翻訳文等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。 (4)また,翻訳文等における「0.2?3.6ppm」及び「2.0(ppm)」との記載から,翻訳文等には,「0.2ppm以上,2.0ppm以下」が記載されていることは明らかであるが,「0.2ppm以上,2.0ppm未満」は,上記の「0.2ppm以上,2.0ppm以下」から,「2.0ppm」の場合を除いたもの(一種の除くクレーム)と解することもできる。 そうすると,このような点からも,本件補正に係る上記補正事項は,翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであり,翻訳文等に記載した事項の範囲内においてするものといえる。 (5)したがって,取消理由4(新規事項の追加)によっては,本件特許の請求項2に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由1(進歩性) (1)甲1Aに記載された発明 甲1Aの記載(請求項1,2,【0010】)によれば,甲1Aには,以下の発明が記載されていると認められる。 「A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートおよび B) バルク,溶液またはバルク-サスペンション重合法によって製造されるゴム変性グラフトポリマー を含有し,リチウムイオンのポジティブ含量(positive content)4ppm以下を有し, A)およびB)の総重量に対して A)が30?90部の量で存在し,かつ B)が10?70部の量で存在する, 熱可塑性成形組成物。」(以下,「甲1A発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1A発明とを対比する。 甲1A発明における「A) 芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート」,「B) バルク,溶液またはバルク-サスペンション重合法によって製造されるゴム変性グラフトポリマー」は,それぞれ,本件発明1における「A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート」,「B)バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマー」に相当する。 そして,上記A)の含有割合について,本件発明1における「A)およびB)の総量に対して52?95重量部」含むことと,甲1A発明における「A)およびB)の総重量に対して」「30?90部の量で存在」することは,「A)およびB)の総量に対して52?90重量部」含む点で一致する。また,上記B)の含有割合について,本件発明1における「A)およびB)の総量に対して5?48重量部」含むことと,甲1A発明における「A)およびB)の総重量に対して」「10?70部の量で存在」することは,「A)およびB)の総量に対して10?48重量部」含む点で一致する。 甲1A発明における「リチウムイオンのポジティブ含量(positive content)4ppm以下を有し」は,本件発明1における「0を超えそして4ppm以下の量のリチウム」を含むことに相当する。 そうすると,本件発明1と甲1A発明とは, 「A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを,A)およびB)の総量に対して52?90重量部,および B)バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマーを,A)およびB)の総量に対して10?48重量部, 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム を含む, 熱可塑性成形組成物。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 ・相違点1 本件発明1は,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ものであるのに対して,甲1A発明は,ナトリウム及びカリウムを含むものであるか不明であり,その含有量も不明である点。 イ 相違点1の検討 (ア)本件明細書の記載(【0001】,【0008】,【0009】,実施例2?9,比較実施例V1,V10,表1,【0068】,【0069】,特に,実施例2,3,5及び7と比較実施例V1との比較)によれば,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,「0を超えそして4ppm以下の量のリチウム」を含むものとすることに加えて,さらに,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ことによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものである。 (イ)これに対して,甲1Aの記載(【0001】,【0005】?【0007】,実施例1?5,比較例V1,V2,表1,表2,【0066】,【0067】)によれば,甲1A発明は,熱可塑性成形組成物において,「リチウムイオンのポジティブ含量(positive content)4ppm以下」とすることによって,耐加水分解性が改良されるというものである。 (ウ)本件発明1と甲1A発明は,上記のとおり,いずれも,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量を4ppm以下とすることにより,耐加水分解性を改善する点で共通するものである。 しかしながら,甲1Aには,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量を4ppm以下とすることに加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を,それぞれ1.5ppmを超え20ppmを超えない量とすること,また,それにより耐加水分解性がさらに改善されることについては,何ら記載されていない。また,このようなことが技術常識であるともいえない。むしろ,甲1Aの記載(【0007】,【0066】)によれば,ナトリウム及びカリウムの含有量は,熱可塑性成形組成物の耐加水分解性に影響を与えるものではないことが理解できる。そうすると,甲1A発明において,耐加水分解性をさらに改善するために,ナトリウム及びカリウムの含有量を,それぞれ1.5ppmを超え20ppmを超えない量とすることが動機付けられるとはいえない。 甲1Aの表1には,実施例で使用したゴム(成分B-1?B-7)に含まれるナトリウム及びカリウムの含有量が示されているが,最大でも,ナトリウムが1.5ppm,カリウムが1.9ppmであり(成分B-1),これらの成分B-1?B-7を成分Aと表2に示される割合(A:B=60:40)で混合したとしても,得られる熱可塑性成形組成物においては,ナトリウム及びカリウムの含有量がいずれも1.5ppmを下回ることは,明らかである。このような表1及び表2の記載により,甲1A発明において,耐加水分解性をさらに改善するために,ナトリウム及びカリウムの含有量を,それぞれ1.5ppmを超え20ppmを超えない量とすることが動機付けられるとはいえない。 (エ)以上によれば,甲1A発明において,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ことが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 そして,本件発明1は,上記(ア)のとおり,熱可塑性成形組成物において,「0を超えそして4ppm以下の量のリチウム」を含むものとすることに加えて,さらに,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ことによって,耐加水分解性がさらに改善されるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲1Aに記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人板倉の主張について (ア)申立人板倉は,甲1Aには,ナトリウム及び/又はカリウムの含有量が,少なくなっても多くなっても,性能に影響しないことが明記されており(【0066】),本件明細書の表1をみても,実施例と比較実施例はそれほど性能に差がないことが示されているとして,本件発明1におけるナトリウム及びカリウムの含有量の限定は,甲1A発明と比べて何ら特徴的なものではないから,本件発明1は,甲1Aに記載された事項に基いて,当業者が容易に想到し得る程度のものであると主張する。 しかしながら,上記イ(ア)で述べたとおり,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量の特定に加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を特定することによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものであるから,本件発明1におけるナトリウム及びカリウムの含有量の特定が,甲1A発明と比べて何ら特徴的なものではないということはできない。 よって,申立人板倉の主張は,前提において失当であり,採用することができない。 (イ)申立人板倉は,甲1Aには,PC/ABS組成物の加水分解抵抗は,ABSのリチウム含有量に大きく依存するが,ナトリウム及びカリウム等の別のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の含有量には依存しないことが記載されているから,熱可塑性成形組成物中に含有させるナトリウム及び/又はカリウムの含有量は,当業者が目的に応じて適宜選択する事項にすぎず,また,本件明細書の記載をみても,1.5ppmを超える量を含むことの臨界的意義は明確ではないから,相違点によって奏される効果は格別顕著なものとはいえないと主張する。 しかしながら,上記イ(ア)で述べたとおり,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量の特定に加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を特定することによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものであるから,ナトリウム及び/又はカリウムの含有量は,当業者が目的に応じて適宜選択する事項であるということはできない。また,本件発明1が,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものであることは,上記イ(エ)で述べたとおりである。 よって,申立人板倉の主張は,採用することができない。 (ウ)申立人板倉は,本件明細書における実施例8及び9は,いずれも本件発明1の規定を満たすものであるにもかかわらず,同規定を満たさない比較実施例V1よりも加水分解抵抗が劣る結果が示されているから,本件発明1における「0を超えそして4ppm以下の量のリチウム」という規定の範囲内で,かつ,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム,を含み,但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないこと」というナトリウム及びカリウムの数値範囲の規定の内外では,効果に量的に顕著な差異があるとはいえないと主張する。 しかしながら,実施例8及び9と比較実施例V1とでは,そもそもリチウムの含有量が全く異なるものである。リチウムの含有量が多いほど加水分解抵抗が劣り,リチウムの含有量が少ないほど加水分解抵抗が優れる傾向にあることは,本件明細書の記載や甲1Aの記載から明らかであるから,リチウムの含有量が多い実施例8(2.0ppm)及び実施例9(3.5ppm)と,リチウムの含有量が少ない比較実施例V1(1.3ppm)とを単純に比較して,前者が後者よりも加水分解抵抗が劣るとしても,そのことのみをもって,本件発明1におけるリチウムの含有量の範囲内で,かつ,ナトリウム及びカリウムの含有量の数値範囲の内外では,効果に差異がないなどということはできない。 よって,申立人板倉の主張は,採用することができない。 (エ)申立人板倉は,甲1Aの請求項1には,B成分の含有量は特に限定されていないので,B成分の含有量が85重量%の場合も含むところ,このような場合について,表1の成分B-1の含量数値に基づき計算すると,リチウムは1.0ppm,ナトリウムは1.3ppm,カリウムは1.6ppmとなり,本件発明1と共通するから,本件発明1における所定のリチウム含有量は,甲1Aに強く示唆されていると主張する。 しかしながら,申立人板倉も自認するとおり,甲1Aには,B成分の含有量が85重量%の場合については明記されておらず,また,実施例においても,成分B-1は,成分Aと「A:B=60:40」で混合することが記載されているにすぎない。甲1Aの請求項1に,B成分の含有量が85重量%の場合が含まれ得るとしても,そのことのみをもって,甲1に,B成分の含有量が85重量%の場合について記載されているということはできず,まして,本件発明1における所定のリチウム含有量が甲1Aに強く示唆されているなどということはできない。 よって,申立人板倉の主張は,採用することができない。 (3)本件発明2?8について 本件発明2?8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲1Aに記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?8についても同様に,甲1Aに記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり,本件発明1?8は,いずれも,甲1Aに記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由1(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由5(進歩性) (1)甲1Bに記載された発明 甲1Bは,甲1Aと同一の証拠であるから,甲1Bにも,上記2(1)で認定したとおりの甲1A発明が記載されていることは,明らかである。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1A発明とを対比すると,両者は,上記2(2)アのとおり,以下の一致点で一致し,以下の相違点1で相違する。 ・一致点 「A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを,A)およびB)の総量に対して52?90重量部,および B)バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマーを,A)およびB)の総量に対して10?48重量部, 0を超えそして4ppm以下の量のリチウム を含む, 熱可塑性成形組成物。」 ・相違点1 本件発明1は,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ものであるのに対して,甲1A発明は,ナトリウム及びカリウムを含むものであるか不明であり,その含有量も不明である点。 イ 相違点1の検討 甲1B(甲1A)については,上記2(2)イで検討したとおりである。 甲1Bのほか,甲2Bや甲3Bにも,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量を4ppm以下とすることに加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を,それぞれ1.5ppmを超え20ppmを超えない量とすること,また,それにより耐加水分解性がさらに改善されることについては,何ら記載されていない。 そうすると,甲2Bや甲3Bの記載を考慮したとしても,甲1A発明において,「それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウムおよび/またはカリウム」を含み,「但し,ナトリウムおよびカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えないことを条件とする」ことが,当業者が容易に想到することができたということはできない。 そして,本件発明1は,上記2(2)イのとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。 したがって,本件発明1は,甲1A発明,すなわち,甲1Bに記載された発明及び甲1B?3Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人赤松の主張について (ア)申立人赤松は,本件明細書の表1における実施例6(注:実施例5の誤記と考えられる。),実施例8及び比較実施例V1をみても,ナトリウム及びカリウムの含有量が本件発明1の範囲内にあるものと範囲外にあるものとで,耐加水分解性に格別の相違はなく,実施例8については,比較実施例V1よりも耐加水分解性が劣っていると主張する。 しかしながら,上記2(2)イ(ア)で述べたとおり,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量の特定に加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を特定することによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものである。 この点,カリウムの含有量以外は同じ条件である実施例5と比較実施例V1とを比較すると,カリウムの含有量が2.8ppmである実施例5は,耐加水分解性の指標であるMVR変化(MVR:溶融体積流量率)が12.2%であり,カリウムの含有量が0.8ppmである比較実施例V1は,MVR変化が12.8%であるから,実施例5は比較実施例V1よりも,耐加水分解性が改善されているといえる。また,ナトリウムの含有量以外は同じ条件である実施例2及び3と比較実施例V1との比較についても同様であり,ナトリウムの含有量がそれぞれ2.8ppm及び6.8ppmである実施例2及び3は,MVR変化がそれぞれ8.7%及び10.8%であり,ナトリウムの含有量が0.8ppmである比較実施例V1は,MVR変化が12.8%であるから,実施例2及び3は比較実施例V1よりも,耐加水分解性が改善されているといえる。 また,実施例8は,リチウムの含有量が2.0ppmであるから,同1.3ppmである実施例5や比較実施例V1と単純には比較できないことは,上記2(2)ウ(ウ)で述べたとおりである。 以上のとおりであるから,実施例5,実施例8及び比較実施例V1の比較に基づいて,ナトリウム及びカリウムの含有量が本件発明1の範囲内にあるものと範囲外にあるものとで,耐加水分解性に格別の相違がないなどということはできない。 よって,申立人赤松の主張は,採用することができない。 (イ)申立人赤松は,甲1Bの実施例(表2)は,MVR変化が0?17%であり,特に実施例1?3は,それぞれ,0%,0%,7%と極めて小さく優れた性能を示しているのに対して,本件明細書の実施例の中で最も小さく優れた効果が得られているのは,実施例2の8.7%であり,本件発明1は,従来技術である甲1Bよりも効果において劣っているから,実際には,ナトリウム及びカリウムの含有量は,耐加水分解性が改善されるという効果を奏するための本質的な事項ではないと主張する。 しかしながら,本件明細書の実施例と甲1Bの実施例とでは,そもそもリチウムの含有量が異なるものである。上記2(2)ウ(ウ)で述べたのと同様に,リチウムの含有量が多い本件明細書の実施例(実施例2は1.3ppm)と,リチウムの含有量が少ない甲1Bの実施例1?3(それぞれ,0.5ppm,0.8ppm,1.2ppm)とを単純に比較して,前者が後者よりも加水分解抵抗が劣るとしても,そのことのみをもって,ナトリウム及びカリウムの含有量が,耐加水分解性が改善されるという効果を奏するための本質的な事項ではないなどということはできない。 よって,申立人赤松の主張は,採用することができない。 (ウ)申立人赤松は,特段の措置をとらなければ,ポリカーボネート中には,不純部や残留金属としてナトリウムやカリウムが1ppm以上含まれ得ること(甲2B),甲3Bの比較例1は,それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウム及び/又はカリウムを含み,しかも,ナトリウム及びカリウム両方の含有量が,それぞれ20ppmを超えない量を含有したものであること,を指摘した上で,上記(ア),(イ)の主張を前提に,本件発明1におけるナトリウム及び/又はカリウムの含有量の数値範囲には,格別の技術的意義はないとして,それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウム及び/又はカリウムを含み,それらの上限値を20ppmと限定することも,当業者が容易になし得ることであると主張する。 しかしながら,上記(ア),(イ)の主張については,いずれも,採用することができないものであるから,本件発明1におけるナトリウム及び/又はカリウムの含有量の数値範囲には,格別の技術的意義はないとする申立人赤松の主張は,前提において失当である。 そして,上記2(2)イ(ア)で述べたとおり,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量の特定に加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を特定することによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものである。申立人赤松が主張するように,仮に,ポリカーボネート中には,不純部や残留金属としてナトリウムやカリウムが1ppm以上含まれ得るものであり,また,ナトリウム及びカリウムの含有量が,それぞれ1.5ppmを超え20ppmを超えない量を含有したものが知られているとしても,そうであるからといって,甲1A発明において,それぞれ1.5ppmを超える量のナトリウム及び/又はカリウムを含み,それらの上限値を20ppmと限定することが,当業者が容易になし得ることであるということはできない。 よって,申立人赤松の主張は,採用することができない。 (3)本件発明2?8について 本件発明2?8は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記(2)で述べたとおり,本件発明1が,甲1Bに記載された発明及び甲1B?3Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?8についても同様に,甲1Bに記載された発明及び甲1B?3Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり,本件発明1?8は,いずれも,甲1Bに記載された発明及び甲1B?3Bに記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって,取消理由5(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 4 取消理由2(委任省令要件) 申立人板倉は,本件明細書における実施例8及び9は,いずれも本件発明1の規定を満たすものであるにもかかわらず,比較実施例V1よりも加水分解抵抗が劣っているため,耐衝撃性,耐加水分解性が改善された熱可塑性成形組成物を提供するという本件発明1の課題と,本件発明1に規定される組成物の関係を実質的に理解することができるように記載されているとはいえず,本件発明1の技術的意義が不明であるから,本件発明1については,発明の詳細な説明の記載が委任省令要件に適合するものではないと主張する。また,本件発明3?8についても同様に主張する。 しかしながら,実施例8及び9と比較実施例V1とでは,そもそもリチウムの含有量が全く異なるものである。上記2(2)ウ(ウ)で述べたのと同様に,リチウムの含有量が多い実施例8及び実施例9と,リチウムの含有量が少ない比較実施例V1とを単純に比較して,前者が後者よりも加水分解抵抗が劣るとしても,そのことのみをもって,本件発明1の技術的意義が不明であるなどということはできない。そして,上記2(2)イ(ア)で述べたとおり,本件発明1は,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量の特定に加えて,さらに,ナトリウム及びカリウムの含有量を特定することによって,耐加水分解性がさらに改善されるというものであり,本件発明1の技術的意義は明確であるから,本件発明1は,発明の詳細な説明の記載が委任省令要件に適合するものである。 また,本件発明3?8についても同様であり,本件発明3?8は,発明の詳細な説明の記載が委任省令要件に適合するものである。 よって,申立人板倉の主張は理由がない。 したがって,取消理由2(委任省令要件)によっては,本件特許の請求項1及び3?8に係る特許を取り消すことはできない。 5 取消理由3(サポート要件) (1)本件発明1,3?5,7及び8について ア 申立人板倉は,本件明細書の実施例2?7において,リチウムの下限として1.3ppmの試験しかされていないにもかかわらず,本件発明1において,リチウムの含有量が「0を超え」とされていることは,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず,出願時の技術常識に照らしても,本件発明1の範囲まで,本件明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから,本件発明1は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものではないと主張する。また,本件発明3?5,7及び8についても同様に主張する。 以下,検討する。 イ 本件明細書の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネートと,バルク,溶液またはバルク懸濁重合プロセスによって調製された,ゴム変性グラフトポリマーと,を含む,耐衝撃性が改質された熱可塑性成形組成物を開示する。この組成物は,リチウムイオンの含有量が低いことを特徴とし,さらに,ナトリウムおよび/またはカリウムイオンの量が特定量であり,耐加水分解性が改善されていることを特徴とする。」(【0008】) 「リチウムイオンの含有量が少ない,耐衝撃性が改質されたポリカーボネート組成物は,アルカリの総含有量が比較的高いにもかかわらず,リチウムイオンの含有量が比較的高い比較組成物と比べて,耐加水分解性が有意に優れることを見出した。」(【0009】) 以上の記載によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,熱可塑性成形組成物において,リチウムの含有量が少ないことにより,耐加水分解性が改善されることが記載されているといえる。 ウ そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,実施例2?9及び比較実施例V10が記載されているが(表1),このうち,実施例2,8及び9並びに比較実施例V10は,いずれも,ナトリウムの含有量が2.8ppmであり,カリウムの含有量が0.8ppmであるのに対して,リチウムの含有量は,それぞれ,1.3ppm,2.0ppm,3.5ppm,6.0ppmである。これらを比較すると,リチウムの含有量が少なくなるにつれ,MVR変化が,131.7%,15.5%,13.6%,8.7%と小さくなり,耐加水分解性が優れたものとなることが理解できる。そうすると,当業者であれば,リチウムの含有量が1.3ppmよりも少なくなって,0ppmに近づくにつれ,耐加水分解性がさらに優れたものとなることが理解できるといえる。 エ 以上のとおり,本件明細書の記載を総合すれば,リチウムの含有量が「0を超え」とされた本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって,本件発明1は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 また,本件発明3?5,7及び8についても同様であり,本件発明3?5,7及び8は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 よって,申立人板倉の主張は理由がない。 (2)本件発明2について 申立人板倉は,本件特許に係る出願の願書に添付した特許請求の範囲(請求項2)について,平成28年10月3日付けの手続補正書でした補正が,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないと主張し(取消理由4(新規事項の追加)),当該主張を前提として,本件発明2におけるリチウムの含有量の上限である「2ppm未満」は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから,本件発明2は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものではないと主張する。 しかしながら,上記1で検討したとおり,取消理由4(新規事項の追加)は理由がないから,本件発明2について,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものではないとの主張は,その前提を欠くものである。そして,リチウムの含有量の上限を「2ppm未満」とする本件発明2は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。 よって,申立人板倉の主張は理由がない。 (3)まとめ したがって,取消理由3(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1?5,7及び8に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり,申立てA及び申立てBのいずれについても,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件特許の請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-10-19 |
出願番号 | 特願2014-149900(P2014-149900) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08L)
P 1 651・ 55- Y (C08L) P 1 651・ 537- Y (C08L) P 1 651・ 536- Y (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松元 洋 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
海老原 えい子 井上 猛 |
登録日 | 2018-01-26 |
登録番号 | 特許第6279420号(P6279420) |
権利者 | コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト |
発明の名称 | ポリカーボネート成形組成物 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 反町 洋 |
代理人 | 末盛 崇明 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 中村 行孝 |