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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F |
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管理番号 | 1346308 |
審判番号 | 不服2017-19025 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-22 |
確定日 | 2018-12-04 |
事件の表示 | 特願2014-560717「導電性フイルムを備える表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月14日国際公開、WO2014/123009、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この審判事件に関する出願(本願)は、平成25年2月5日にされた特許出願(特願2013-20775)及び同年7月31日にされた特許出願(特願2013-159113)に基づく特許法第41条第1項の優先権を主張して平成26年1月24日にされた国際特許出願である。そして、平成27年7月16日に明細書、特許請求の範囲及び図面についての補正がされ、さらに、平成28年8月3日に明細書及び特許請求の範囲についての補正がされた後、平成29年9月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ、同26日に査定の謄本が送達された。 これに対して、同年12月22日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。 なお、本件補正によって本件補正前の請求項18が削除されたので、本願の請求項の数は、本件補正前(すなわち、原査定時)の18から本件補正後の17へと減少した。 第2 本願に係る発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項17に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 表示ユニットと、 この表示ユニットの上に設置される、導電性フイルムと、を備える表示装置であって、 前記導電性フイルムは、 透明基体と、該透明基体の少なくとも一方の面に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、を有し、 前記導電部は、前記複数の金属細線によりメッシュ状に形成された、複数の開口部を配列した配線パターンを有し、 前記配線パターンは、前記表示ユニットの画素配列パターンに重畳されており、 前記配線パターンは、少なくとも1視点において、その透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度と、前記画素配列パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度とからそれぞれ算出されるモアレの周波数及び強度において、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標が所定値以下であり、 前記所定値が、-1.75であり、 前記評価指標は、常用対数で-1.75以下であることを特徴とする表示装置。 【請求項2】 前記評価指標は、常用対数で-1.89以下である請求項1に記載の表示装置。 【請求項3】 前記モアレの最高周波数は、前記表示ユニットの表示ピッチをp(μm)とする時、1000/(2p)で与えられる請求項1又は2に記載の表示装置。 【請求項4】 前記モアレの評価値は、前記モアレの周波数及び強度に、前記視覚応答特性として前記観察距離に応じた視覚伝達関数を畳み込み積分で重み付けを行うことによって求められる請求項1?3のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項5】 前記視覚伝達関数は、下記式(1)で与えられる視感度関数S(u)である請求項4に記載の表示装置。 【数1】 ![]() …(1) ここで、uは、空間周波数(cycle/deg)であり、Lは、輝度(cd/mm^(2))であり、X_(0)は、前記観察距離における前記表示ユニットの表示面の視野角(deg)であり、X_(0)^(2)は、前記観察距離において前記表示面が作る立体角(sr)である。 【請求項6】 前記モアレの評価指標は、1つの前記モアレの周波数に対して、前記観察距離に応じて重み付けされた複数の前記モアレの評価値の中の最も悪い評価値を用いて算出される請求項1?5のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項7】 前記モアレの評価指標は、前記1つの前記モアレの周波数に対して選択された前記最も悪い評価値を全ての前記モアレの周波数について合算した合算値である請求項6に記載の表示装置。 【請求項8】 前記モアレの周波数は、前記配線パターンの前記ピーク周波数と前記画素配列パターンの前記ピーク周波数との差分で与えられ、前記モアレの強度は、前記配線パターンの前記ピーク強度と前記画素配列パターンの前記ピーク強度との積で与えられる請求項1?7のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項9】 前記視覚応答特性を作用させるために選択されるモアレは、前記モアレの強度が-4以上の強度を持ち、前記最高周波数以下の周波数を持つモアレである請求項1?8のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項10】 前記ピーク強度は、前記スペクトルピークのピーク位置周辺の複数画素内の強度の合算値である請求項1?9のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項11】 前記ピーク強度は、前記ピーク位置周辺の7×7画素内の上位5位までの強度の合算値である請求項10に記載の表示装置。 【請求項12】 前記ピーク強度は、前記配線パターン及び前記画素配列パターンの前記透過率画像データで規格化されたものである請求項1?11のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項13】 前記画素配列パターンは、ブラックマトリックスパターンである請求項1?12のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項14】 前記画素配列パターンの前記2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク強度分布が対称である時、前記配線パターンは、対称なパターン形状を持つ請求項1?13のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項15】 前記画素配列パターンの前記2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク強度分布が非対称である時、前記配線パターンは、非対称なパターン形状を持つ請求項1?13のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項16】 前記金属細線が2μm?6μmである請求項1?15のいずれか1項に記載の表示装置。 【請求項17】 前記表示ユニットの画素配列パターンの開口が所定角度で屈曲した帯状であり、 前記配線パターンの開口部が、菱形パターン、六角形パターン、正方格子パターン、及び非対称な平行四辺形パターンのいずれかである請求項1?16のいずれかに記載の表示装置。」 なお、本願発明2ないし本願発明17は、本願発明1の構成を全て含む。 第3 原査定の概要 本願の請求項1ないし請求項17に係る発明は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-117683号公報 引用文献2:特開2008-25025号公報 引用文献3:特開2001-174780号公報 第4 引用文献に記載された発明等 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、プラズマディスプレイ等の表示装置に設置され、該表示装置から発生する電磁波をシールドする電磁波シールドパターンが形成された電磁波シールドフィルムの製造装置、電磁波シールドフィルムの製造方法及びモアレの発生を抑止することができるパターン生成方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子・電気機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。 【0003】 上記EMIの対策には電磁波をシールドする必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよい。 【0004】 優れた透光性と高い電磁波遮断性を備えたプラズマディスプレイパネル(PDP)用電磁波シールドフィルムとしては、金属メッシュをフィルム上に形成したものを使用する方法が一般に用いられる。しかし、このようなフィルムをPDPに使用した場合には、PDPの画素パターンとの干渉によりモアレが発生する場合がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 …(中略)… 【0012】 本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、モアレの発生を抑止でき、しかも、電磁波シールドフィルムの特性、特に、表面抵抗率の増大や透明性の劣化をも回避することができる電磁波シールドパターンを自動的に選定し、設置される表示装置に適合した電磁波シールドフィルムを製造することができる電磁波シールドフィルムの製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。 【0013】 また、本発明の他の目的は、モアレの発生を抑止することができるパターン生成方法を提供することにある。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、本発明に係る電磁波シールドフィルムの製造装置、電磁波シールドフィルムの製造方法及びパターン生成方法の実施の形態例を図1?図17を参照しながら説明する。 【0027】 本実施の形態に係る電磁波シールドフィルムの製造装置(以下、単に製造装置10と記す)は、プラズマディスプレイ等の表示装置に設置され、該表示装置から発生する電磁波をシールドする電磁波シールドパターンが形成された電磁波シールドフィルムを製造するのに好適なものである。 【0028】 電磁波シールドフィルム12は、図1及び図2に示すように、透明支持体14と、該透明支持体14上に形成されたメッシュ状の導電性金属薄膜、すなわち、電磁波シールドパターン16とを有する。なお、電磁波シールドフィルム12を構成するメッシュ状の導電性金属薄膜の電磁波シールドパターン16と、後述する製造装置10にてデータ処理される電磁波シールドパターンとを区別するために、製造装置10にてデータ処理される電磁波シールドパターンを電磁波シールドパターンデータと記す。」 「【0041】 判別部36は、比較部34にて得られた相対距離が所定の空間周波数を超えるかどうかを判別する。ここで、空間周波数と人間の視覚特性に基づくコントラスト感度をグラフ化すると図9のようになる。図9から空間周波数がfaより高いとコントラスト感度が落ち、空間周波数がfaより低いとコントラストは高くなっている。このことから、人間の目は空間周波数が高周波になるほどコントラストを知覚しにくくなり、モアレを視認されなくなることがわかる。 【0042】 そこで、所定の空間周波数として、モアレを視認することができない臨界の空間周波数を候補として挙げ、この臨界の空間周波数として例えば8cm^(-1)を設定した。従って、判別部36では、比較部34にて得られた相対距離が8cm^(-1)を超えているかどうかを判別する。この8cm^(-1)の数値は、表示装置の画素配列パターンのパターン形状によって変わるため、製造段階で、モアレが発生する臨界の空間周波数を調べ、例えば第1データベース48に、対応する画素配列パターンのデータと共に登録しておいてもよい。この場合、第1入力部24は、第1データベース48から画素配列パターンデータを読み出す際に、対応する臨界の空間周波数の数値も読み出すようにし、この読み出した臨界の空間周波数の値を判別部36に供給するようにしてもよい。判別部36では、比較部34にて得られた相対距離が、供給された臨界の空間周波数を超えているかどうかを判別することになる。」 「【0047】 ここで、製造装置10の処理動作について図10のフローチャートを参照しながら説明する。 【0048】 先ず、ステップS1において、第1入力部24は、使用者による入力装置22への操作入力に基づいて、第1データベース48から今回対象となる表示装置の画素配列パターンデータを読み出して第1メモリ46に記憶する。 【0049】 その後、ステップS2において、第2入力部26は、使用者による入力装置22への操作入力に基づいて、第2データベース52から1つの電磁波シールドパターンデータを読み出して第2メモリ50に記憶する。 【0050】 その後、ステップS3において、第1演算部30は、第1メモリ46に記憶されている画素配列パターンデータをフーリエ変換し、画素配列パターンの二次元フーリエスペクトル(第1二次元フーリエスペクトル)を求め、第3メモリ60に記憶する。 【0051】 その後、ステップS4において、第2演算部32は、第2メモリ50に記憶されている電磁波シールドパターンデータをフーリエ変換し、電磁波シールドパターンデータの二次元フーリエスペクトル(第2二次元フーリエスペクトル)を求め、第4メモリ62に記憶する。 【0052】 その後、ステップS5において、比較部34は、第3メモリ60に記憶された第1二次元フーリエスペクトルと、第4メモリ62に記憶された第2二次元フーリエスペクトルとを比較して、第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2jの相対距離(図8参照)を求める。ここでi、jは0以上の整数で、第1、第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークをナンバリングしている。 【0053】 その後、ステップS6において、判別部36は、比較部34にて得られた相対距離が所定の空間周波数を超えるかどうかを判別する。具体的には、比較部34にて得られた相対距離が8cm^(-1)を超えているかどうかを判別する。求められる相対距離の個数が多すぎる場合は、第1、第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークのうち、ピーク強度の弱いものに関しては予め判別の対象からはずしてもよい。ピーク強度の弱い第1、第2二次元フーリエススペクトルの組み合わせで発生するモアレはそもそもその強度が弱いからである。 【0054】 相対距離が所定の空間周波数(臨界の空間周波数)を超えていないと判別された場合は、次のステップS7に進み、パターンデータ処理部38での第1の処理に入る。すなわち、第2メモリ50に記憶されている電磁波シールドパターンデータをパターン変形部28に入力する。パターン変形部28は、上述したように、入力された電磁波シールドパターンデータの回転角度、ピッチ、パターン幅のいずれか1つ以上を変化させて新たな電磁波シールドパターンデータとし、第2メモリ50に上書きする。 【0055】 その後、ステップS4以降の処理に戻り、第2メモリ50に記憶されている新たな電磁波シールドパターンデータの二次元フーリエスペクトル(第2二次元フーリエスペクトル)を求め、さらに、第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1と第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2の相対距離を求め、得られた相対距離が所定の空間周波数(臨界の空間周波数)を超えるかどうかを判別する。 【0056】 そして、ステップS6において、相対距離が所定の空間周波数を超えていると判別された場合は、ステップS8に進み、パターンデータ処理部38での第2の処理に入る。すなわち、第2メモリ50に記憶されている電磁波シールドパターンデータを記録媒体64(光ディスク、ハードディスク等)に記憶する。 【0057】 その後、ステップ9において、処理終了を示す要求があるか否かが判別される。この判別は、予め設定されたパターン変形部28での処理手順が全て終了したかどうか、あるいは選定処理の終了要求があるかどうかで行われる。 【0058】 処理終了の要求がなければ、ステップS7以降の処理に進み、パターン変形部28での処理、第2演算部32での処理、比較部34での処理、判別部36での処理が繰り返される。この繰り返し処理は、処理終了の要求があるまで行われ、ステップS8を処理するたびに、相対距離が8cm^(-1)を超える様々な電磁波シールドパターンを有するデータが記録媒体64に記憶されていく。 【0059】 その後、ステップS10において、第1パターン選択部40は、記録媒体64に記憶された複数の電磁波シールドパターンデータのうち、情報テーブル66に登録された製造可能なピッチの範囲及びパターン幅の範囲を満足する1以上の電磁波シールドパターンデータを選択して記録媒体64に記憶する。 【0060】 その後、ステップS11において、第2パターン選択部42は、第1パターン選択部40にて選択された1以上の電磁波シールドパターンデータのうち、入力装置22からの操作入力に対応した1つの電磁波シールドパターンデータを選択して記録媒体64の特定の記憶領域に記憶する。 【0061】 このステップS11での処理が終了した段階で、1つの電磁波シールドパターンデータが選定されることになる。 【0062】 そして、製造ライン21においては、選定された電磁波シールドパターンデータに基づいて電磁波シールドフィルム12を製造する。」 【図1】 ![]() 【図2】 ![]() 【図10】 ![]() (2)引用文献1に記載された発明 引用文献1の前記(1)の記載によれば、以下のことが認められる。 ア 引用文献1には、プラズマディスプレイ等の表示装置に設置され、表示装置から発生する電磁波をシールドする電磁波シールドパターンが形成された電磁波シールドフィルムの製造装置が記載されている(【0001】)。 イ 電磁波シールドフィルム12は、透明支持体14と、透明支持体14上に形成されたメッシュ状の導電性金属薄膜である電磁波シールドパターン16とを有する(【0028】)。 ここで、前記アのとおり、電磁波シールドフィルム12は、プラズマディスプレイ等の表示装置に設置されるものであるから、引用文献1には、プラズマディスプレイ等の表示装置とその表示装置に設置された電磁波シールドフィルム12とからなる電磁波シールド付き表示装置も記載されているということができる。 ウ 電磁波シールドフィルム12は、製造装置10によって製造され、製造装置10の処理動作は、具体的には以下のとおりである(【0027】、【0028】、【0047】、図10)。 (ア)表示装置の画素配列パターンデータを第1メモリ46に記憶し、1つの電磁波シールドパターンデータを第2メモリ50に記憶する(【0048】、【0049】)。 (イ)第1メモリ46に記憶されている画素配列パターンデータをフーリエ変換し、画素配列パターンの二次元フーリエスペクトル(第1二次元フーリエスペクトル)を求め、第3メモリ60に記憶する(【0050】)。 (ウ)第2メモリ50に記憶されている電磁波シールドパターンデータをフーリエ変換し、電磁波シールドパターンデータの二次元フーリエスペクトル(第2二次元フーリエスペクトル)を求め、第4メモリ62に記憶する(【0051】)。 (エ)第3メモリ60に記憶された第1二次元フーリエスペクトルと、第4メモリ62に記憶された第2二次元フーリエスペクトルとを比較して、第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2jの相対距離を求める(【0052】)。 (オ)得られた相対距離がモアレを視認できない臨界の空間周波数である所定の空間周波数を超えているかどうかを判別し、超えていると判別された場合は、第2メモリ50に記憶されている電磁波シールドパターンデータを記録媒体64に記憶する(【0042】、【0053】、【0056】)。 (カ)記録媒体64に記憶された複数の電磁波シールドパターンデータのうち、製造可能な1以上の電磁波シールドパターンデータを選択して記録媒体64に記憶し、記憶された1以上の電磁波シールドパターンデータのうち、1つの電磁波シールドパターンデータを選択して記録媒体64の特定の記憶領域に記憶し、この段階で1つの電磁波シールドパターンデータが選定される(【0059】ないし【0061】)。 (キ)選定された電磁波シールドパターンデータに基づいて電磁波シールドフィルム12を製造する(【0062】)。 ここで、製造された電磁波シールドフィルム12の電磁波シールドパターン16は、選定された電磁波シールドパターンデータに対応することが明らかである。また、製造された電磁波シールドフィルム12は、当然、それを製造する際に用いた表示装置の画素配列パターンデータに対応する画素配列パターンを有する表示装置に設置されることになる。 エ 前記ウ(ア)ないし(キ)をまとめると、製造装置10によって製造される電磁波シールド12は、それが設置された表示装置の画素配列パターンをフーリエ変換して得られる第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと、電磁波シールドパターン16をフーリエ変換して得られる第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2iとの相対距離が、モアレを視認できない臨界の空間周波数である所定の空間周波数を超えていることになる。 オ 前記イ及びエから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「プラズマディスプレイ等の表示装置とその表示装置に設置された電磁波シールドフィルム12とからなる電磁波シールド付き表示装置であって、 電磁波シールドフィルム12は、透明支持体14と、透明支持体14上に形成されたメッシュ状の導電性金属薄膜である電磁波シールドパターン16とを有し、 電磁波シールドパターン16は、表示装置の画素配列パターンをフーリエ変換して得られる第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと、電磁波シールドパターン16をフーリエ変換して得られる第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2iとの相対距離が、モアレを視認できない臨界の空間周波数である所定の空間周波数を超えている 電磁波シールド付き表示装置。」 2 引用文献2 引用文献2の【0142】、【0154】ないし【0158】、図13及び図14の記載によれば、引用文献2には、基材12に粘着層13を介して導電層パターン11を貼り合わせた電磁波遮蔽部材において、導電層パターンのライン幅を遮蔽効果の観点から1μm以上とし、非視認性の観点から25μm以下とすることが好ましく、ライン間隔を可視光透過率の観点から120μm以上とし、電磁波遮蔽性の観点から1000μm以下とすることが好ましい旨の記載がある。 3 引用文献3 引用文献3の【0025】、【0026】、【0036】及び【0048】の記載によれば、引用文献2には、画素ピッチが168μm×168μmの液晶表示装置が記載されている。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明の「プラズマディスプレイ等の表示装置」は、本願発明1の「表示ユニット」に相当する。 イ 本願発明1の「導電性フィルム」は、本願の明細書に「表示装置…の表示ユニット上に設置される導電性フイルムとして、例えば電磁波シールド用の導電性フイルムやタッチパネル用の導電性フイルム等が挙げられる…。」(【0002】)と記載されているとおり、電磁波シールド用の導電性フィルムを含むから、引用発明の「電磁波シールドフィルム12」は、本願発明1の「導電性フィルム」に相当する。 ウ 前記ア及びイを踏まえると、引用発明の「プラズマディスプレイ等の表示装置とその表示装置に設置された電磁波シールドフィルム12とからなる電磁波シールド付き表示装置」は、本願発明1の「表示ユニットと、」「この表示ユニットの上に設置される、導電性フイルムと、を備える表示装置」に相当する。 エ 引用発明の「透明支持体14」は、本願発明1の「透明基体」に相当する。 オ 引用発明の「透明支持体14上に形成された」「導電性金属薄膜」と、本願発明1の「該透明基体の少なくとも一方の面に形成され、複数の金属細線からなる導電部」とは、「該透明基体の少なくとも一方の面に形成された導電部」である点で共通するから、引用発明の「透明支持体14と、透明支持体14上に形成された」「導電性金属薄膜」「とを有」する「電磁波シールドフィルム12」と、本願発明1の「透明基体と、該透明基体の少なくとも一方の面に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、を有」する「導電性フイルム」とは、「透明基体と、該透明基体の少なくとも一方の面に形成された導電部と、を有」する「導電性フイルム」である点で共通する。 カ 引用発明の「電磁波シールドパターン16」は、本願発明1の「配線パターン」に相当し、引用発明の「導電性金属薄膜」が「メッシュ状の」ものであり、しかも、「電磁波シールドパターン16」であることは、本願発明1の「導電部」が「メッシュ状に形成された、複数の開口部を配列した配線パターンを有」することに相当する。 キ 前記アを踏まえると、引用発明の「表示装置の画素配列パターン」は、本願発明1の「表示ユニットの画素配列パターン」に相当する。 ク 引用発明の「電磁波シールドフィルム12」は、「プラズマディスプレイ等の表示装置」「に設置された」ものであるから、「電磁波シールドフィルム12」の「電磁波シールドパターン16」が「表示装置の画素配列パターン」と重畳されていることは明らかである。これは、本願発明1の「配線パターン」が「表示ユニットの画素配列パターンに重畳されて」いることに相当する。 (2)一致点及び相違点 前記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「表示ユニットと、 この表示ユニットの上に設置される、導電性フイルムと、を備える表示装置であって、 前記導電性フイルムは、 透明基体と、該透明基体の少なくとも一方の面に形成された導電部と、を有し、 前記導電部は、メッシュ状に形成された、複数の開口部を配列した配線パターンを有し、 前記配線パターンは、前記表示ユニットの画素配列パターンに重畳されている 表示装置。」 イ 相違点 (ア)相違点1 本願発明1は、「導電部」が「複数の金属細線からなる」のに対し、 引用発明は、「導電部」が「導電性金属薄膜」である点。 (イ)相違点2 本願発明1は、「配線パターン」が「少なくとも1視点において、その透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度と、前記画素配列パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度とからそれぞれ算出されるモアレの周波数及び強度において、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標が所定値以下であり、」「前記所定値が、-1.75であり、」「前記評価指標は、常用対数で-1.75以下である」のに対し、 引用発明は、「電磁波シールドパターン16」(本願発明1の「配線パターン」に相当する。)が「表示装置の画素配列パターンをフーリエ変換して得られる第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと、電磁波シールドパターン16をフーリエ変換して得られる第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2iとの相対距離が、モアレを視認できない臨界の空間周波数である所定の空間周波数を超えている」点。 (3)相違点2についての判断 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用発明の「電磁波シールドパターン16は、表示装置の画素配列パターンデータをフーリエ変換して得られる第1二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP1iと、電磁波シールドパターン16をフーリエ変換して得られる第2二次元フーリエスペクトルのスペクトルピークP2iとの相対距離が、モアレを視認できない臨界の空間周波数である所定の空間周波数を超えている」という構成は、「電磁波シールドパターン16」(本願発明1の「配線パターン」に相当する。)と「表示装置の画素配列パターン」(本願発明1の「表示ユニットの画素配列パターン」に相当する。)とを重畳したときに生じるモアレの空間周波数が、そのモアレを視認できないほど高いことを特定するものである。すなわち、引用発明は、「表示装置の画素配列パターン」と「電磁波シールドパターン16」とを重畳したときに生じるモアレの空間周波数に着目し、それを所定の値より高くすることによって、モアレの発生を抑止するものである。 これに対し、本願発明1の「配線パターンは、少なくとも1視点において、その透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度と、前記画素配列パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度とからそれぞれ算出されるモアレの周波数及び強度において、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標が所定値以下であり、」「前記所定値が、-1.75であり、」「前記評価指標は、常用対数で-1.75以下である」という構成は、「配線パターン」と「表示ユニットの画素配列パターン」とを重畳したときに生じる「モアレの周波数」だけでなく、「モアレの周波数及び強度」に着目し、「表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における」「モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標が」「常用対数で-1.75以下である」ことを特定するものである。すなわち、本願発明1は、モアレの周波数(空間周波数)だけでなく、モアレの強度にも着目し、モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標を常用対数で-1.75以下にすることによって、モアレの発生を抑止するものである。 そして、モアレの周波数だけでなく、モアレの強度にも着目した上で、モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させることは、引用文献2にも引用文献3にも記載されていないし、示唆されてもいない。また、このことが当業者にとって周知な事項又は自明な事項であると認めることもできない。 したがって、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献2及び引用文献3に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。 (4)本願発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 本願発明2ないし本願発明17について 本願発明2ないし本願発明17は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点1及び相違点2(前記1(2)イ(ア)及び(イ))で引用発明と相違する。 そして、前記1(3)のとおり、相違点2に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献2及び引用文献3に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点2に係る本願発明2ないし本願発明17の構成も同様である。 したがって、本願発明2ないし本願発明17は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 原査定について 原査定は、本願発明1と引用発明との相違点は「モアレの評価値から算出したモアレの評価指標」が「常用対数で-1.75以下である」という数値限定の有無のみであると認定した上で、引用文献1の【0067】及び【0068】の記載に従って、引用発明においてモアレ発生を小さくするために電磁波シールドのパターン幅を小さくし、また、モアレ発生がなるべく小さくなるピッチを選択することは、当業者が容易に想到し得ることであると判断した。 しかし、引用発明の「電磁波シールドパターン16」(本願発明1の「配線パターン」に相当する。)では、「その透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度と、前記画素配列パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度とからそれぞれ算出されるモアレの周波数及び強度において、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標」という数値がそもそも想定されていないから、本願発明1と引用発明との相違点は数値限定の有無のみであるということはできない。 また、本願発明1の「配線パターンは、少なくとも1視点において、その透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度と、前記画素配列パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度とからそれぞれ算出されるモアレの周波数及び強度において、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の各モアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させて得られたモアレの評価値から算出したモアレの評価指標が所定値以下であり、」「前記所定値が、-1.75であり、」「前記評価指標は、常用対数で-1.75以下である」という構成は、引用発明の「電磁波シールドパターン16」のパターン幅を小さくし、また、モアレ発生がなるべく小さくなるピッチを選択することを意味するものと認めることはできない。 したがって、原査定の理由は、維持することができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。 また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-19 |
出願番号 | 特願2014-560717(P2014-560717) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 南川 泰裕、笹野 秀生 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
小林 紀史 須原 宏光 |
発明の名称 | 導電性フイルムを備える表示装置 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 伊東 秀明 |