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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
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管理番号 | 1346449 |
審判番号 | 不服2017-13322 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-09-08 |
確定日 | 2018-12-11 |
事件の表示 | 特願2012-266916「赤色着色硬化性樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月18日出願公開、特開2013-140348、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月6日(優先権主張平成23年12月9日)の出願であって、平成28年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成29年5月8日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成30年7月11日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月16日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。 第2 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりのものである。 理由1(新規性) 本願の平成28年12月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、引用文献A又はBに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) 本願の平成28年12月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、引用文献A?Cに記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A:特開2010-211198号公報 引用文献B:特開2011-39317号公報 引用文献C:特開2008-242311号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は、以下のとおりのものである。 理由1(明確性) 本願は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?4の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 理由2(進歩性) 本願の本件補正前の請求項1?4に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、引用文献1、2に記載された発明及び、周知技術に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 理由3(拡大先願) 本願の本件補正前の請求項1?4に係る発明は、その優先権主張の日前の特許出願であって、その優先権主張の日後に出願公開がされた特許出願である、引用出願6?9の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその優先権主張の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 引用文献1:特開2010-211198号公報 (拒絶査定時の引用文献A) 引用文献2:特開2011-39317号公報 (拒絶査定時の引用文献B) 引用文献3:特開平4-274410号公報(周知技術) 引用文献4:特開2011-59673号公報(周知技術) 参考文献5:Acid Red 52,東京化成工業株式会社カタログ 引用出願6:特願2011-222637号 (特開2012-194523号) 引用出願7:特願2011-178364号 (特開2013-41145号) 引用出願8:特願2011-246112号 (特開2013-101287号) 引用出願9:特願2011-235015号 (特開2013-101166号) 第4 本件発明 本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 着色剤、樹脂、重合性化合物及び重合開始剤を含み、 着色剤が、式(1a)で表される化合物と、黄色顔料、オレンジ色顔料及び赤色顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料とを含む着色剤である赤色着色硬化性樹脂組成物。 ![]() [式(1a)中、R^(1)及びR^(2)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、 R^(3)及びR^(4)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、 前記飽和炭化水素基は、炭素数1?20の1価の飽和炭化水素基であり、 前記芳香族炭化水素基(1)は、置換基を有していてもよい炭素数6?10の1価の芳香族炭化水素基であり、 前記飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数6?10の芳香族炭化水素基(2)又はハロゲン原子で置換されていてもよく、前記芳香族炭化水素基(2)に含まれる水素原子は、炭素数1?3のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記飽和炭化水素基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(11)-で置き換わっていてもよい。R^(1)及びR^(2)の組み合わせと、R^(3)及びR^(4)の組み合わせが、それぞれ飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせである場合、R^(1)及びR^(2)と、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ互いに結合して、それらが結合する窒素原子と一緒になって窒素原子を含む環を形成している。 R^(5)は、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、又は-SO_(3)^(-)Z^(+)を表す。 R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基を表す。 mは、0?5の整数を表す。mが2以上のとき、複数のR^(5)は同一でも異なってもよい。 aは、0又は1の整数を表す。 Xは、ハロゲン原子を表す。 Z^(+)は、^(+)N(R^(11))_(4)、Na^(+)又はK^(+)を表す。 R^(11)は、互いに独立に、水素原子、炭素数1?20の1価の飽和炭化水素基又は炭素数7?10のアラルキル基を表す。] 【請求項2】 顔料が、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242及びC.I.ピグメントレッド254からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の赤色着色硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 請求項1又は2記載の赤色着色硬化性樹脂組成物により形成される赤色カラーフィルタ。 【請求項4】 請求項3記載の赤色カラーフィルタを含む表示装置。」 第5 引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献の記載事項 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成22年9月24日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2010-211198号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が、発明の認定等に用いた記載箇所に下線を付した。以下の文献についても同様である。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、着色感光性樹脂組成物、着色パターン及びカラーフィルタに関し、より詳細には、液晶表示素子や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタを構成する着色画像の形成に好適な着色感光性樹脂組成物、該着色感光性樹脂組成物を用いた着色パターン及びカラーフィルタに関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、特許文献1に具体的に開示される組み合わせを用いても、着色感光性樹脂組成物の耐熱性は十分ではなかった。 本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、特定の染料及び顔料と、特定の溶剤とを組み合わせることにより、高耐熱性を実現する着色感光性樹脂組成物及び優れたカラーフィルタを得ることを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明は、以下の発明〔1〕?〔15〕を提供する。 〔1〕着色剤(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含み、 着色剤(A)が、染料(A-1)と顔料(A-2)との両者を含み、 溶剤(E)が、ヒドロキシ基含有溶剤を2種以上含む溶剤であることを特徴とする着色感光性樹脂組成物。 (中略) 【発明の効果】 【0012】 本発明の着色感光性樹脂組成物によれば、耐熱性が高く、塗布むらの少ない塗膜、着色パターン及びカラーフィルタを得ることができる。」 イ 「【0013】 本発明の着色感光性樹脂組成物は、着色剤(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含む。 着色剤(A)は、染料(A-1)と顔料(A-2)との双方を含む。 【0014】 染料(A-1)としては、特に限定されるものではなく、目的とするカラーフィルタの色に合わせて選択することができる。また、複数の染料を配合して使用してもよい。さらに、後述する着色感光性樹脂組成物中に含まれる溶剤に充分な溶解度、例えば、パターン形成時の現像工程でパターン形成ができる程度に現像液に対して充分な溶解度を有するものが好ましい。例えば、式(1)で表される化合物が挙げられる。 (中略) 【0015】 なお、本明細書では、特に断りのない限り、同様の置換基を有するいずれの化学構造式においても、炭素数を適宜選択しながら、後述する具体的な各置換基を適用することができる。直鎖状、分岐状又は環状いずれかをとることができるものは、特記ない限り、そのいずれをも含み、また、同一の基において、直鎖状、分岐状又は環状の部分構造が混在していてもよい。立体異性体が存在する場合は、それらの立体異性体の全てを包含する。さらに、各置換基は、結合部位によって一価又は二価以上の置換基となり得る。 【0016】 ![]() 【0017】 (式(1)中、 R^(1)?R^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、-R^(6)又は炭素数6?10の1価の芳香族炭化水素基を表す。該炭素数6?10の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R^(6)、-OH、-OR^(6)、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)又は-SO_(2)N(R^(8))R^(9)で置換されていてもよい。 R^(5)は、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)又は-SO_(2)N(R^(8))R^(9)を表す。 mは、0?5の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数のR^(5)は、同一であっても異なっていてもよい。 Xは、ハロゲン原子を表す。aは、0又は1の整数を表す。 R^(6)は、炭素数1?10の1価の飽和炭化水素基を表す。該炭素数1?10の飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子又は炭素数1?10のアルコキシ基で置換されていてもよい。 R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1?10のアルキル基、炭素数3?30のシクロアルキル基又は-Qを表し、該アルキル基及び該シクロアルキル基の水素原子は、-OH、ハロゲン原子、-Q、-CH=CH_(2)又は-CH=CHR^(6)で置換されていてもよく、該アルキル基及び該シクロアルキル基の-CH_(2)-は、-O-、-S-、-CO-、-NH-又は-NR^(6)-で置き換わっていてもよく、R^(8)及びR^(9)は、互いに結合して炭素数1?10の複素環を形成していてもよく、該環の水素原子は、-R^(6)、-OH又は-Qで置換されていてもよい。 Qは、炭素数6?10の1価の芳香族炭化水素基又は5?10員環の1価の芳香族複素環式基を表し、該芳香族炭化水素基及び該芳香族複素環式基に含まれる水素原子は、-OH、-R^(6)、-OR^(6)、-NO_(2)、-CH=CH_(2)、-CH=CHR^(6)又はハロゲン原子で置換されていてもよい。 Mは、ナトリウム原子又はカリウム原子を表す。) ただし、式(1)で表される化合物中の+電荷数と-電荷数とが同一である。(以下、式(1)に包含される化合物について同じ。) (中略) 【0074】 着色剤(A)は、染料(A-1)のほかに、さらに顔料(A-2)を含む。 顔料(A-2)としては、有機顔料、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60などの青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38などのバイオレット色顔料;C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214などの黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73などのオレンジ色の顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265などの赤色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58などの緑色顔料;などが挙げられる。なかでも、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも1つの顔料を含有していることが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6を含有していることが特に好ましい。着色感光性樹脂組成物が、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも1つの顔料を含むことにより、青色感光性樹脂組成物としての透過スペクトルの最適化が容易であり、耐薬品性が良好になるため好ましい。 赤色感光性樹脂組成物としては、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254が好ましく、C.I.ピグメントレッド177、242、254がより好ましい。緑色感光性樹脂組成物としては、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントグリーン7、36、58が好ましく、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントグリーン36、58がより好ましい。 これらの顔料は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。 (中略) 【0079】 さらに、赤色感光性樹脂組成物としては、C.I.ピグメントレッド177、242及び254からなる群から選ばれる少なくとも1種と染料(A-1)との質量比が97:3?30:70であることが好ましい。 また、C.I.ピグメントレッド177、242及び254からなる群から選ばれる少なくとも1種と式(2)で表される化合物との質量比が97:3?30:70であることが好ましく、97:3?40:60であることがより好ましく、80:20?50:50であることがさらに好ましく、80:20?60:40であることが特に好ましい。」 (2)引用文献に記載された発明 上記記載事項イに基づけば、引用文献1に記載された着色感光性樹脂組成物は、着色剤(A)が、染料(A-1)と顔料(A-2)との双方を含むものであって、目的とするカラーフィルタの色に合わせて染料(A-1)が選択されるものであり、赤色感光性樹脂組成物とする場合、顔料(A-2)としてC.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254が選択されるものである。 したがって、引用文献1には、赤色感光性樹脂組成物として、以下の発明が記載されていると認められる。 「着色剤(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)及び溶剤(E)を含み、着色剤(A)は、染料(A-1)と顔料(A-2)との双方を含み、顔料(A-2)として、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254を単独で、又は2種以上を混合して用いる、赤色感光性樹脂組成物。」(以下、「引用発明1」という。) 2 引用文献2 (1)引用文献の記載事項 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由に引用され、本願優先権主張の日前の平成23年2月24日に頒布された刊行物である引用文献2(特開2011-39317号公報)には、以下の記載事項がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 式(1)で表される染料と、C.I.ピグメントブルー15:6と、黄色顔料、赤色顔料及びオレンジ顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料と、バインダー樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含む着色感光性樹脂組成物。 ![]() (式(1)中、R^(1)?R^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、-R^(6)又は炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。該炭素数6?10の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R^(6)、-OH、-OR^(6)、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)、-SO_(2)NHR^(8)又は-SO_(2)NR^(8)R^(9)で置換されていてもよい。 R^(5)は、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)、-SO_(2)NHR^(8)又は-SO_(2)NR^(8)R^(9)を表す。 mは、0?5の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数のR^(5)は、同一であっても異なっていてもよい。 Xは、ハロゲン原子を表す。aは、0又は1の整数を表す。 R^(6)は、炭素数1?10の飽和炭化水素基を表す。該炭素数1?10の飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該炭素数1?10の飽和炭化水素基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(6)-で置き換わっていてもよい。 R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に、炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3?30のシクロアルキル基又は-Qを表す。あるいはR^(8)及びR^(9)は、互いに結合して炭素数1?10の複素環を形成していてもよい。 Qは、炭素数6?10の芳香族炭化水素基又は炭素数5?10の芳香族複素環基を表し、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基に含まれる水素原子は、-OH、R^(6)、-OR^(6)、-NO_(2)、-CH=CH_(2)、-CH=CHR^(6)又はハロゲン原子で置換されていてもよい。 炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3?30のシクロアルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、-Q、-CH=CH_(2)又は-CH=CHR^(6)で置換されていてもよい。 炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3?30のシクロアルキル基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(6)-で置き換わっていてもよい。 炭素数1?10の複素環に含まれる水素原子は、R^(6)、-OH又は-Qで置換されていてもよい。 Mは、ナトリウム原子又はカリウム原子を表す。)」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は、液晶表示素子や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタを構成する着色画像の形成に好適な着色感光性樹脂組成物及び該着色感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタに関する。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来の着色感光性樹脂組成物では、得られる塗膜及びカラーフィルタのコントラストが必ずしも十分ではない場合があった。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明は、以下の発明である。 1. 式(1)で表される染料と、C.I.ピグメントブルー15:6と、黄色顔料、赤色顔料及びオレンジ顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料と、バインダー樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、溶剤とを含む着色感光性樹脂組成物。 (中略) 【発明の効果】 【0015】 本発明の着色感光性樹脂組成物によれば、高コントラストな塗膜及びカラーフィルタを得ることができる。」 ウ 「【0016】 本発明の着色感光性樹脂組成物は、式(1)で表される染料を含む。 【0017】 ![]() 【0018】 (式(1)中、R^(1)?R^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、-R^(6)又は炭素数6?10の芳香族炭化水素基を表す。該炭素数6?10の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、-R^(6)、-OH、-OR^(6)、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)、-SO_(2)NHR^(8)又は-SO_(2)NR^(8)R^(9)で置換されていてもよい。 R^(5)は、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、-SO_(3)M、-CO_(2)H、-CO_(2)R^(6)、-SO_(3)R^(6)、-SO_(2)NHR^(8)又は-SO_(2)NR^(8)R^(9)を表す。 mは、0?5の整数を表す。mが2以上の整数である場合、複数のR^(5)は、同一であっても異なっていてもよい。 Xは、ハロゲン原子を表す。aは、0又は1の整数を表す。 R^(6)は、炭素数1?10の飽和炭化水素基を表す。該炭素数1?10の飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該炭素数1?10の飽和炭化水素基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(6)-で置き換わっていてもよい。 R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に、炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数3?30のシクロアルキル基又は-Qを表す。あるいはR^(8)及びR^(9)は、互いに結合して炭素数1?10の複素環を形成していてもよい。 Qは、炭素数6?10の芳香族炭化水素基又は炭素数5?10の芳香族複素環基を表し、該芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基に含まれる水素原子は、-OH、R^(6)、-OR^(6)、-NO_(2)、-CH=CH_(2)、-CH=CHR^(6)又はハロゲン原子で置換されていてもよい。 炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3?30のシクロアルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、-Q、-CH=CH_(2)又は-CH=CHR^(6)で置換されていてもよい。 炭素数1?10の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3?30のシクロアルキル基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(6)-で置き換わっていてもよい。 炭素数1?10の複素環に含まれる水素原子は、R^(6)、-OH又は-Qで置換されていてもよい。 Mは、ナトリウム原子又はカリウム原子を表す。)」 エ 「【実施例】 【0147】 以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、重量%及び重量部である。 【0148】 合成例1 冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、スルホローダミンB(関東化学製)を15部、クロロホルム150部及びN,N-ジメチルホルムアミド9.8部を投入し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル12.0部を滴下して加えた。滴下終了後、50℃に昇温し、同温度で5時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を、攪拌下20℃以下に維持しながら、2-エチルヘキシルアミン13.9部及びトリエチルアミン24.5部の混合液を滴下して加えた。その後、同温度で5時間攪拌して反応させた。次いで得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで溶媒留去した後、メタノールを少量加えて激しく攪拌した。この混合物を、イオン交換水375部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、染料(A1)(式(A1-1)で表される染料及び式(A1-2)で表される染料の混合物)14.7部を得た。 【0149】 ![]() 【0150】 合成例2 冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、式(A0-2)で表される染料(中外化成製)を15部、クロロホルム150部及びN,N-ジメチルホルムアミド7.1部を混合し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル8.7部を滴下して加えた。滴下終了後、50℃に昇温し、同温度で5時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を、攪拌下20℃以下に維持しながら、2-エチルヘキシルアミン10部及びトリエチルアミン17.7部の混合液を滴下して加えた。その後、同温度で5時間攪拌して反応させた。次いで得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで溶媒留去した後、メタノールを少量加えて激しく攪拌した。この混合物を、イオン交換水375部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、染料(A2)(式(A2-3)?式(A2-9)で表される染料の混合物)12.7部を得た。 【0151】 ![]() (式(A2-1)及び式(A2-2)中、R^(d)、R^(e)及びR^(f)は、それぞれ独立に、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)Na又は-SO_(2)NHR^(a)を表す。R^(a)は、2-エチルヘキシルを表す。) 【0152】 ![]() 【0153】 合成例3 冷却管及び攪拌装置を備えたフラスコに、式(A0-3)で表される染料及び式(A0-4)で表される染料の混合物(中外化成製)を15部、クロロホルム150部及びN,N-ジメチルホルムアミド8.9部を混合し、攪拌下20℃以下を維持しながら、塩化チオニル10.9部を滴下して加えた。滴下終了後、50℃に昇温し、同温度で5時間維持して反応させ、その後20℃に冷却した。冷却後の反応溶液を、攪拌下20℃以下に維持しながら、2-エチルヘキシルアミン12.5部及びトリエチルアミン22.1部の混合液を滴下して加えた。その後、同温度で5時間攪拌して反応させた。次いで得られた反応混合物をロータリーエバポレーターで溶媒留去した後、メタノールを少量加えて激しく攪拌した。この混合物を、イオン交換水375部の混合液中に攪拌しながら加えて、結晶を析出させた。析出した結晶を濾別し、イオン交換水でよく洗浄し、60℃で減圧乾燥して、染料(A3)(式(A3-3)?式(A3-10)で表される染料の混合物)11.3部を得た。 【0154】 ![]() (式(A3-1)及び式(A3-2)中、R^(g)、R^(h)及びR^(i)は、それぞれ独立に、水素原子、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H又は-SO_(2)NHR^(a)を表す。R^(a)は、2-エチルヘキシルを表す。) 【0155】 ![]() 【0156】 樹脂合成例 還流冷却器、滴下ロート及び攪拌機を備えた1Lのフラスコ内に窒素を0.02L/分で流して窒素雰囲気とし、3-メトキシ-1-ブタノール200質量部及び3-メトキシブチルアセテート105質量部を入れ、撹拌しながら70℃まで加熱した。次いで、メタクリル酸60質量部、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.0^(2.6)]デシルアクリレート(式(I-1)で表される化合物及び式(II-1)で表される化合物を、モル比で、50:50で混合。)240質量部及び、3-メトキシブチルアセテート140質量部に溶解して溶液を調製し、該溶解液を、滴下ロートを用いて4時間かけて、70℃に保温したフラスコ内に滴下した。一方、重合開始剤2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)30質量部を3-メトキシブチルアセテート225質量部に溶解した溶液を、別の滴下ロートを用いて4時間かけてフラスコ内に滴下した。重合開始剤の溶液の滴下が終了した後、4時間、70℃に保持し、その後室温まで冷却して、重量平均分子量Mwは、1.3×10^(4)、分散度は2.5、固形分33質量%、酸価34mg-KOH/gの樹脂溶液B1を得た。 【0157】 ![]() (中略) 【0159】 実施例1 [着色感光性樹脂組成物1の調製] C.I.ピグメントブルー15:6 20 部 アクリル系顔料分散剤 5 部 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 137 部 を混合し、ビーズミルを用いて顔料を十分に分散させ、ついで、 C.I.ピグメントレッド177 5 部 アクリル系顔料分散剤 1 部 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 30 部 染料A1 3.5部 樹脂溶液B1 157 部 光重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート (日本化薬(株)製) 50 部 光重合開始剤:OXE-01 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 15 部 溶剤:4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン 289 部 を混合して着色感光性樹脂組成物1を得た。 【0160】 〔パターンの形成〕 2インチ角のガラス基板(イーグル2000;コーニング社製)上に、着色感光性樹脂組成物1をスピンコート法で塗布したのち、100℃で3分間プリベークした。冷却後、この着色感光性樹脂組成物を塗布した基板とパターンを有する石英ガラス製フォトマスクとの間隔を100μmとして、露光機(TME-150RSK;トプコン(株)製)を用いて、大気雰囲気下、150mJ/cm^(2)の露光量(365nm基準)で光照射した。光照射後、上記塗膜を、非イオン系界面活性剤0.12%と水酸化カリウム0.04%を含む水系現像液に23℃で80秒間浸漬現像し、水洗後、オーブン中、220℃で20分間ポストベークを行った。放冷後、得られた硬化パターンの膜厚を、膜厚測定装置(DEKTAK3;日本真空技術(株)製))を用いて測定したところ、2.2μmであった。 【0161】 〔評価〕 得られたガラス基板上の塗膜について、測色機(OSP-SP-200;オリンパス(株)製)を用いて分光を測定し、C光源を用いてCIEのXYZ表色系におけるxy色度座標(Bx、By)と明度を測定した。 また、コントラスト値をコントラスト測定機(CT-1;壺坂電機社製)を用いて、ブランク値を30000として測定した。結果を表1に示す。 【0162】 実施例2?3 染料A1を表1に示す染料に変更したこと以外は、実施例1と同様にして着色感光性樹脂組成物及び塗膜を得た。結果を表1に示す。 (中略) 【0163】 【表1】 ![]() 【0164】 実施例の着色感光性樹脂組成物を用いて形成された塗膜において高いコントラストが確認された。」 (2)引用文献に記載された発明 引用文献2には、実施例1?3として、以下の発明が記載されていると認められる。 「 C.I.ピグメントブルー15:6 20 部 アクリル系顔料分散剤 5 部 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 137 部 を混合し、ビーズミルを用いて顔料を十分に分散させ、ついで、 C.I.ピグメントレッド177 5 部 アクリル系顔料分散剤 1 部 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 30 部 染料A1、染料A2、染料A3のいずれか、 3.5部 樹脂溶液B1 157 部 光重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート (日本化薬(株)製) 50 部 光重合開始剤:OXE-01 (チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製) 15 部 溶剤:4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン 289 部 を混合して得た着色感光性樹脂組成物であって、 染料A1が、以下の、式(A1-1)で表される染料及び式(A1-2)で表される染料の混合物であり、染料A2が、以下の、式(A2-3)?式(A2-9)で表される染料の混合物であり、染料A3が、以下の、式(A3-3)?式(A3-10)で表される染料の混合物である着色感光性樹脂組成物。 ![]() 」(以下、「引用発明2」という。) 第6 対比・判断 1 引用発明1との対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「着色剤(A)」、「アルカリ可溶性樹脂(B)」、「光重合性化合物(C)」、「光重合開始剤(D)」は、その機能からみて、それぞれ、本件発明1の「着色剤」、「樹脂」、「重合性化合物」、「重合開始剤」に、相当する。 (イ)引用発明1の「C.I.ピグメントイエロー138、139、150」及び「C.I.ピグメントレッド177、209、242、254」は、それぞれ、本件発明1の「黄色顔料」及び「赤色顔料」に相当する。そうすると、引用発明1は、本件発明1における「黄色顔料、オレンジ色顔料及び赤色顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料とを含む」とする要件を満たしている。 (ウ)引用発明1の「赤色感光性樹脂組成物」は、アルカリ可溶性樹脂(B)、光重合性化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含むものであるから、硬化性の樹脂組成物であるといえる。したがって、引用発明1の「赤色感光性樹脂組成物」は、本件発明1の「赤色着色硬化性樹脂組成物」に相当する。 (エ)以上より、本件発明1と引用発明1とは、 「着色剤、樹脂、重合性化合物及び重合開始剤を含み、着色剤が、黄色顔料、オレンジ色顔料及び赤色顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料とを含む着色剤である赤色着色硬化性樹脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件発明1は、着色剤が、以下の式(1a)で表される化合物を含むのに対し、引用発明1は、着色剤(A)が染料(A-1)を含むものであって、本件発明1の式(1a)で表される化合物を含まない点。 ![]() [式(1a)中、R^(1)及びR^(2)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、 R^(3)及びR^(4)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、 前記飽和炭化水素基は、炭素数1?20の1価の飽和炭化水素基であり、 前記芳香族炭化水素基(1)は、置換基を有していてもよい炭素数6?10の1価の芳香族炭化水素基であり、 前記飽和炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数6?10の芳香族炭化水素基(2)又はハロゲン原子で置換されていてもよく、前記芳香族炭化水素基(2)に含まれる水素原子は、炭素数1?3のアルコキシ基で置換されていてもよく、前記飽和炭化水素基に含まれる-CH_(2)-は、-O-、-CO-又は-NR^(11)-で置き換わっていてもよい。R^(1)及びR^(2)の組み合わせと、R^(3)及びR^(4)の組み合わせが、それぞれ飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせである場合、R^(1)及びR^(2)と、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ互いに結合して、それらが結合する窒素原子と一緒になって窒素原子を含む環を形成している。 R^(5)は、-SO_(3)^(-)、-SO_(3)H、又は-SO_(3)^(-)Z^(+)を表す。 R^(6)及びR^(7)は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1?6のアルキル基を表す。 mは、0?5の整数を表す。mが2以上のとき、複数のR^(5)は同一でも異なってもよい。 aは、0又は1の整数を表す。 Xは、ハロゲン原子を表す。 Z^(+)は、^(+)N(R^(11))_(4)、Na^(+)又はK^(+)を表す。 R^(11)は、互いに独立に、水素原子、炭素数1?20の1価の飽和炭化水素基又は炭素数7?10のアラルキル基を表す。] イ 判断 上記[相違点1]について検討すると、引用文献1には、段落【0016】及び【0017】に、染料(A-1)として、以下の式(1)で表される化合物が挙げられており、 ![]() 上記式(1)において、R^(1)?R^(4)は、それぞれ独立に、水素原子、-R^(6)又は炭素数6?10の1価の芳香族炭化水素基を表すこと、R^(6)は、炭素数1?10の1価の飽和炭化水素基を表すことが記載されている。 しかしながら、引用文献1には、式(1a)中、R^(1)及びR^(2)の組み合わせが、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、R^(3)及びR^(4)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、R^(1)及びR^(2)の組み合わせと、R^(3)及びR^(4)の組み合わせが、それぞれ飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせである場合、R^(1)及びR^(2)と、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ互いに結合して、それらが結合する窒素原子と一緒になって窒素原子を含む環を形成していることについては、記載も示唆もされていない。 また、引用文献3の請求項1及び引用文献4の段落【0016】及び【0017】に記載されているように、カラーフィルタに含まれる染料としてアシッドレッド52は周知であるものの、アシッドレッド52は本件発明1の式(1a)で表される化合物には該当しない。そして、本件発明1の式(1a)に該当する化合物が周知であるとする根拠も見いだせない。 そして、本件発明1は、着色剤として特定の染料と顔料とを組み合わせて用いることにより、高明度な赤色カラーフィルターを製造することができるという効果を奏するものである。 したがって、当業者であっても、引用発明1の染料を本件発明1の上記[相違点1]に係る構成とすることが、容易になし得たということができない。 ウ むすび 以上より、本件発明1は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2?4 本件発明2は、本件発明1と同じく、着色剤が「式(1a)で表される化合物」を含むとする構成を具備している。また、本件発明3は、本件発明1の赤色着色硬化性樹脂組成物により形成される赤色カラーフィルタであり、本件発明4は、本件発明3の赤色カラーフィルタを含む表示装置であるから、いずれも、本件発明1の「式(1a)で表される化合物」を含んでいるといえる。そうすると、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 引用発明2との対比・判断 (1)本件発明1 ア 対比 本件発明1と引用発明2とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の点で相違するといえる。 [相違点2]本件発明1は、着色剤が、式(1a)で表される化合物を含むのに対し、引用発明1は、着色剤(A)が染料A1、染料A2、染料A3のいずれかを含むものであって、本件発明1の式(1a)で表される化合物を含まない点。 イ 判断 上記[相違点2]について検討すると、引用文献2の記載事項ウには、染料として式(1)で表される化合物が挙げられているものの、式(1)は、R^(1)及びR^(2)の組み合わせが、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、R^(3)及びR^(4)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせであり、R^(1)及びR^(2)の組み合わせと、R^(3)及びR^(4)の組み合わせが、それぞれ飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせである場合、R^(1)及びR^(2)と、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ互いに結合して、それらが結合する窒素原子と一緒になって窒素原子を含む環を形成しているものではなく、そのような組み合わせとすることについて記載も示唆もしていない。 また、引用文献3の請求項1及び引用文献4の段落【0016】及び【0017】に記載されているように、カラーフィルタに含まれる染料としてアシッドレッド52は周知であるものの、アシッドレッド52は本件発明1の式(1a)で表される化合物には該当しない。そして、本件発明1の式(1a)に該当する化合物が周知であるとする根拠も見いだせない。 そして、本件発明1は、着色剤として特定の染料と顔料とを組み合わせて用いることにより、高明度な赤色カラーフィルターを製造することができるという効果を奏するものである。 したがって、当業者であっても、引用発明2の染料を、本件発明1の上記[相違点2]に係る構成とすることが、容易になし得たということができない。 ウ むすび 以上より、本件発明1は、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2?4 本件発明2?4も、本件発明1と同じ「式(1a)で表される化合物」の構成を含んでいるといえる。そうすると、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 本件発明1?4は、本件補正によって、着色剤に含まれる式(1a)で表される化合物の範囲が、「R^(1)及びR^(2)の組み合わせは、飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせ、又は飽和炭化水素基と芳香族炭化水素基(1)との組み合わせ」であることに加えて、「R^(1)及びR^(2)の組み合わせと、R^(3)及びR^(4)の組み合わせが、それぞれ飽和炭化水素基と飽和炭化水素基との組み合わせである場合、R^(1)及びR^(2)と、R^(3)及びR^(4)は、それぞれ互いに結合して、それらが結合する窒素原子と一緒になって窒素原子を含む環を形成している」ものに減縮された。 そうすると、原査定において引用された引用文献1及び引用文献2には、着色剤に含まれる化合物として、本件補正後の本件発明1?4における式(1a)で表される化合物が記載されていないから、特許法第29条第1号第3号に該当するとはいえない。また、引用文献1及び引用文献2には、着色剤に、本件補正後の本件発明1?4における式(1a)で表される化合物を含むことが示唆されておらず、式(1a)で表される化合物を着色剤に含めることが周知技術であったということもできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということもできない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 1 理由1(明確性) 当審拒絶理由では、請求項1?4の記載が不明確となっているとの拒絶の理由を通知しているが、本件補正により特許請求の範囲の記載が補正された結果、この拒絶理由は解消した。 2 理由2(進歩性) 本件補正後の本件発明1?4は、いずれも、着色剤が、式(1a)で表される化合物を含むものである。一方、当審拒絶理由において提示した引用文献1及び引用文献2に記載された発明は、本件補正後の本件発明1?4における式(1a)で表される化合物を含んでいない。そして、前記第6の1(1)イ及び前記第6の2(1)イに記載したとおり、引用文献1又は引用文献2に記載された発明における染料を、本件補正後の本件発明1?4における式(1a)で表される化合物とすることを、当業者が容易になし得たということもできない。 したがって、この拒絶理由は解消した。 3 理由3(拡大先願) 当審拒絶理由において提示した引用出願6?9の、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明は、いずれも、赤色感光性着色組成物に、着色剤として、C.I.アシッドレッド52と、赤色顔料及び橙色顔料のいずれかとを含むというものである。 しかし、本件補正により本件発明1?4における式(1a)で表される化合物の範囲が減縮されたことにより、C.I.アシッドレッド52は、本件発明1?4における式(1a)で表される化合物に該当しないものとなった。この結果、この拒絶理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-11-27 |
出願番号 | 特願2012-266916(P2012-266916) |
審決分類 |
P
1
8・
16-
WY
(G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B) P 1 8・ 121- WY (G02B) P 1 8・ 537- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩井 好子 |
特許庁審判長 |
中田 誠 |
特許庁審判官 |
清水 康司 宮澤 浩 |
発明の名称 | 赤色着色硬化性樹脂組成物 |
代理人 | 植木 久彦 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 伊藤 浩彰 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 菅河 忠志 |
代理人 | 植木 久一 |
代理人 | 植木 久彦 |
代理人 | 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 |