ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1346695 |
審判番号 | 不服2017-17198 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-21 |
確定日 | 2018-11-29 |
事件の表示 | 特願2013-100042「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月20日出願公開、特開2014-217648〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月10日の出願であって、平成28年10月18日に手続補正書が提出され、平成29年3月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成29年11月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年11月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、本件補正前の平成29年5月18日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1が、 「【請求項1】 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり、 前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み、 前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記所定表示結果組合せの導出可能性が前記第1演出よりも高い旨を示唆する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 から、本件補正後の請求項1として、 「【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 B 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 C 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 D 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 E 前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 F 前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり、 G 前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み、 H 前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 I 前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり、 J 前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示されず、 K 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてA?Kに分説した。)。 2 補正の適否 本件補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の段落【0544】?【0546】、図38等の記載に基づいて、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1演出」に関して、「第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する」とともに、「前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であ」ることに限定し、「第2演出」に関して、「前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する」とともに、「前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示され」ないことを限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)先願に係る発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日の前の出願に係る特願2012-235940号(以下「先願」という。特許第6395346号公報参照。)の請求項1に係る発明(以下「先願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(下線は、本願補正発明と文言上異なる箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてa?e、h?i、kに分説した。) 「【請求項1】 a 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 b 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 c 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 d 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 e 前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容する所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより入賞が発生する所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 h 前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 i 前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり、 k 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 (2)対比 本願補正発明と先願発明とを対比する(下記の(a)?(k)は、上記分説に対応させて当審で付した。)。 (a)?(d)本願補正発明の構成A?Dと先願発明の構成a?dとは文言上も一致しており、相当することは明らかである。 (e)特定操作手順による操作を行うこととなる事前決定手段の決定結果である本願補正発明の「所定結果」と先願発明の「入賞の発生を許容する所定結果」とは、「所定結果」であることで共通する。 また、その操作によって導出される表示結果組合せである本願補正発明の「所定表示結果組合せ」と先願発明の「入賞が発生する所定表示結果組合せ」とは、「所定表示結果組合せ」であることで共通する。 よって、本願補正発明の構成Eと先願発明の構成eとは「前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出」しない点で共通する。 (f)本願補正発明は、先願発明が有しない構成F「前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり」を備えている。 (g)本願補正発明は、先願発明が有しない構成G「前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み」を備えている。 (h)?(i)本願補正発明の構成H?Iと先願発明の構成h?iとは文言上も一致しており、相当することは明らかである。 (j)本願補正発明は、先願発明が有しない構成J「前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示されず」を備えている。 (k)本願補正発明の構成Kと先願発明の構成kとは文言上も一致しており、相当することは明らかである。 したがって、本願補正発明と先願発明とは、 「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 B 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 C 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 D 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 E’前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 H 前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 I 前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり、 K 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 [相違点1] 特定操作手順による操作を行うこととなる事前決定手段の決定結果が、本願補正発明は「所定結果」であるのに対して、先願発明は「入賞の発生を許容する所定結果」であるとともに、その操作によって導出される表示結果組合せが、本願補正発明は「所定表示結果組合せ」であるのに対して、先願発明は「入賞が発生する所定表示結果組合せ」である点。(上記(e)) [相違点2] 本願補正発明は、先願発明が発明特定事項として有していない構成F「前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり」、及び、構成G「前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み」を発明特定事項として有している点。(上記(f)、(g)) [相違点3] 本願補正発明は、先願発明が発明特定事項として有していない構成J「前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示されず」を発明特定事項として有している点。(上記(j)) (3)判断 上記相違点1?3がある場合であっても、本願補正発明と先願発明とが同一又は実質同一といえるかどうかについて、以下に検討する。 [相違点1]について スロットマシンにおいて、内部抽選の結果が特定の入賞可能な役である場合に特定の操作手順を行うことにより特定の表示結果組合せを導出して入賞を発生させることは技術常識である。 したがって、本願補正発明の特定操作手順による操作を行うこととなる事前決定手段の決定結果である「所定結果」が入賞の発生を許容するものであることや、その操作によって導出される「所定表示結果組合せ」が入賞が発生するものであることは自明の事項であるといえる。 よって、上記相違点1について本願補正発明と先願発明とは実質同一である。 [相違点2]について スロットマシンにおいて、所定の当選役(所定結果)が複数設けられ、当該当選役に基づいて導出される図柄の組み合わせとして、有効ライン(第1ライン)に所定の異なる図柄の組み合わせ(第1組合せ、第2組合せ)が停止表示された場合に、無効ライン(第2ライン)にベルが揃う図柄の組み合わせ(特定の識別情報の揃う組合せ)を停止表示させる表示の組合せ(所定表示結果組合せ)が複数設けられることは周知の技術である(特開2013-81614号公報の段落【0160】?【0165】、【0242】?【0247】、図7、図17には、左ベルの当選役が複数設けられること、左ベルの当選に基づいて無効ラインにベルが揃う右下がりベルの図柄の組合せが導出されること、右下がりベルの図柄の組合せが複数設けられることが示されている。特開2012-65872号公報の段落【0090】?【0095】、【0227】?【0232】、図6、図16にも同様の事項が示されている。また、特開2013-78453号公報の段落【0099】、【0114】、図9、図12には、左中右ベルの当選役が複数設けられること、左中右ベルの当選に基づいて無効ラインにベルが揃う上段ベルの図柄の組合せが導出されること、上段ベルの図柄の組合せが複数設けられることが示されている。)。 そして、先願発明に当該周知技術を付加することは、新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないから、上記相違点2について本願補正発明と先願発明とは実質同一である。 [相違点3]について 先願発明は「第1選択肢画像」と「第2選択肢画像」との各々を表示する「第1演出」を行った後に、「第1選択肢画像」と「第2選択肢画像」とのうちの「第1選択肢画像」を選択結果として表示する「第2演出」を行うものであることから(構成h、k)、先願発明は「第2演出」においては選択結果として「第1選択肢画像」を表示する一方で、選択結果ではない「第2選択肢画像」は表示しないものであると解される。 この点に関して、先願の明細書の段落【0544】?【0546】、図38には、入賞結果確定画面(第2演出)の表示形態として、ベルが入賞することを示す「黄」の文字(第1選択肢画像)のみを表示して、ハズレとなることを示す文字である「白」の文字(第2選択肢画像)を表示しないことが実施形態として記載されており、それ以外の実施形態は記載されておらず、このことは、先願発明の上記解釈を裏付けるものである。 したがって、本願補正発明の「前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示され」ない点は、先願発明においても実質的に特定されているといえるから、上記相違点3は実質的な相違点とはいえない。 また、仮に、先願発明が「第2演出」において「第2選択肢画像」を表示しないものであるとは解釈できないとしても、先願発明の「第2演出」は、「第1選択肢画像」と「第2選択肢画像」とのうちの「第1選択肢画像」を選択結果として表示するものであり、このうちの選択結果ではない「第2選択肢画像」は表示の必要性の低い情報であるといえる。そして、必要性の低い情報を表示しないように制御することは、表示制御における周知技術であり、先願発明に当該周知技術を付加することは、新たな効果を奏するものではなく、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないから、上記相違点3について本願補正発明と先願発明とは実質同一である。 以上のとおり、相違点1?3について、本願補正発明と先願発明とは実質同一と判断されるから、両者は同一(実質同一)である。 (4)請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、「本願発明(本願請求項1の発明及び本願請求項2の発明)と先願1の発明(先願1の請求項1の発明及び先願1の請求項2の発明)とを対比すると、本願発明では『第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、第2選択肢画像は表示されない』ところ、先願1の発明ではこのようなことはありません。このような点で、本願発明と先願1の発明とは相違しますので、両者は同一ではありません。」と主張している(審判請求書の「4.拒絶理由について」参照。) しかしながら、上記第2の3(3)[相違点3]において検討したように、本願発明が「前記第1選択肢画像が選択結果として表示されるときは、前記第2選択肢画像は表示され」ない構成を有することを考慮しても、先願発明と先願発明とは実質同一である。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許法第39条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年5月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである(当審においてA?H’、Kに分説した。)。 「【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 B 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 C 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 D 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 E 前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 F 前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり、 G 前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み、 H’前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記所定表示結果組合せの導出可能性が前記第1演出よりも高い旨を示唆する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 K 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明は先願発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 先願に係る発明 先願発明は、先願の平成30年6月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(下線は、本願発明と文言上異なる箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてa?e、h?i、kに分説した。) 「【請求項1】 a 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 b 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 c 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 d 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 e 前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容する所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより入賞が発生する所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 h 前記スロットマシンは、 前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する第1演出を実行する第1演出実行制御および前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 i 前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり、 k 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 4 対比 本願発明と先願発明とを対比する(下記の(a)?(i)、(k)は、上記分説に対応させて当審で付した。)。 (a)?(d)本願発明の構成A?Dと先願発明の構成a?dとは文言上も一致しており、相当することは明らかである。 (e)特定操作手順による操作を行うこととなる事前決定手段の決定結果である本願発明の「所定結果」と先願発明の「入賞の発生を許容する所定結果」とは、「所定結果」であることで共通する。 また、その操作によって導出される表示結果組合せである本願発明の「所定表示結果組合せ」と先願発明の「入賞が発生する所定表示結果組合せ」とは、「所定表示結果組合せ」であることで共通する。 よって、本願発明の構成Eと先願発明の構成eとは「前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出」しない点で共通する。 (f)本願発明は、先願発明が有する構成F「前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり」を備えている。 (g)本願発明は、先願発明が有する構成G「前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み」を備えている。 (h)本願発明の構成H’と先願発明の構成hとは、スロットマシンが第1演出を実行する第1演出実行制御および第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段を備える点で共通する。 (i)本願発明は、先願発明が有する構成i「前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり」を有しない。 (k)本願発明の構成Kと先願発明の構成kとは文言上も一致しており、相当することは明らかである。 したがって、本願発明と先願発明とは、 「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を複数備え、前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の前記可変表示部の表示結果の組合せである表示結果組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 B 前記可変表示部の表示結果を導出させる際に操作される導出操作手段と、 C 前記可変表示部の表示結果が導出される前に入賞の発生を許容するか否かを決定する事前決定手段と、 D 前記導出操作手段が操作されたときに前記可変表示部の表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段とを備え、 E’前記導出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が所定結果であるときに特定操作手順によって前記導出操作手段が操作されることにより所定表示結果組合せを導出し、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果であるときに前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときには前記所定表示結果組合せを導出せず、 H’’前記スロットマシンは、 第1演出を実行する第1演出実行制御および第2演出を実行する第2演出実行制御を行うことが可能な演出制御手段をさらに備え、 K 前記演出制御手段は、前記事前決定手段の決定結果が前記所定結果となり且つ前記第1演出実行制御を行った後に、前記導出操作手段が前記特定操作手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行い、前記導出操作手段が前記特定操作手順以外の手順によって操作されたときは前記第2演出実行制御を行わずに前記第1演出を継続する制御を行う ことを特徴とするスロットマシン。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 [相違点1] 特定操作手順による操作を行うこととなる事前決定手段の決定結果が、本願発明は「所定結果」であるのに対して、先願発明は「入賞の発生を許容する所定結果」であるとともに、その操作によって導出される表示結果組合せが、本願発明は「所定表示結果組合せ」であるのに対して、先願発明は「入賞が発生する所定表示結果組合せ」である点。(上記(e)) [相違点2] 本願発明は、先願発明が発明特定事項として有していない構成F「前記事前決定手段の決定結果としての前記所定結果は、複数あり」、及び、構成G「前記所定表示結果組合せとして、複数の前記可変表示部を跨る第1ライン上の識別情報が第1組合せとなり、前記第1ラインとは異なる第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第1所定表示結果組合せと、前記第1ライン上の識別情報が前記第1組合せと異なる第2組合せとなり、前記第2ライン上の識別情報が特定の識別情報の揃う組合せとなる第2所定表示結果組合せと、を含み」を発明特定事項として有している点。(上記(f)、(g)) [相違点3] 本願発明は、「第1演出」として、「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する」演出、「第2演出」として、「前記所定表示結果組合せの導出可能性が前記第1演出よりも高い旨を示唆する」演出をそれぞれ行うのに対して、先願発明は「第1演出」として、「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する」演出、「第2演出」として、「前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する」演出をそれぞれ行うとともに、演出で用いる「第1選択肢画像」が「前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像」である点。(上記(h)、(i)) 5 判断 上記相違点1?3がある場合であっても、本願発明と先願発明とが同一又は実質同一といえるかどうかについて、以下に検討する。 [相違点1]について 当該相違点は、上記第2の3(3)[相違点1]で検討したものと同様のものであるから、上記検討と同様の理由により、当該相違点について本願発明と先願発明とは実質同一である。 [相違点2]について 当該相違点は、上記第2の3(3)[相違点2]で検討したものと同様のものであるから、上記検討と同様の理由により、当該相違点について本願発明と先願発明とは実質同一である。 [相違点3]について 先願発明の「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する」演出であって、演出で用いる「第1選択肢画像」として「前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像」を用いる「第1演出」は、「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像」を表示するものであるから、「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する」演出の一形態であるといえる。 したがって、本願発明の発明特定事項である「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1演出」は、先願発明の発明特定事項である「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第1選択肢画像と前記事前決定手段の決定結果が入賞の発生を許容しない結果であるときに導出される表示結果組合せの導出可能性がある旨を示唆する第2選択肢画像との各々を表示する第1演出」及び「前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり」を、上位概念として表現したものといえる。 また、先願発明の「前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する」演出であって、演出で用いる「第1選択肢画像」として「前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像」を用いる「第2演出」は、「第1選択肢画像」を選択結果として表示するものであるから、「第1選択肢画像」と当該画像以外の画像である「第2選択肢画像」の各々を表示する「第1演出」に比べて、「第1選択肢画像」を強調して表示する演出であるといえる。そして、「第1選択肢画像」は「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨」を示唆するものであるから、先願発明の「第2演出」は、「第1演出」よりも「前記所定表示結果組合せの導出可能性がある旨」が強調される演出であり、「所定表示結果組合せの導出可能性が前記第1演出よりも高い旨を示唆する」演出の一形態であるといえる。 したがって、本願発明の発明特定事項である「前記所定表示結果組合せの導出可能性が前記第1演出よりも高い旨を示唆する第2演出」は、先願発明の発明特定事項である「前記第1選択肢画像と前記第2選択肢画像とのうちの前記第1選択肢画像を選択結果として表示する第2演出」及び「前記第1選択肢画像は、前記所定表示結果組合せに関連する態様の画像であり」を、上位概念として表現したものといえる。 以上のとおり、相違点1?3について、本願発明と先願発明とは実質同一と判断されるから、両者は同一(実質同一)である。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第39第1項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-09-26 |
結審通知日 | 2018-10-02 |
審決日 | 2018-10-16 |
出願番号 | 特願2013-100042(P2013-100042) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 4- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 史彬、岡崎 彦哉 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
田付 徳雄 ▲高▼橋 祐介 |
発明の名称 | スロットマシン |