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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F25C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F25C
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F25C
管理番号 1346749
異議申立番号 異議2018-700241  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-23 
確定日 2018-10-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6204045号発明「結晶型降雪用空気の作製方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6204045号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3〕について訂正することを認める。 特許第6204045号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6204045号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年3月29日に特許出願され、平成29年9月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1、2に係る特許について、平成30年3月23日に特許異議申立人小松純(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、当審において平成30年6月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年8月3日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年9月20日に申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成30年8月3日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6204045号の明細書、特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に」とあるのを、「前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に」に訂正し、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する、」とあるのを、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、」に訂正する。
(訂正事項2)
本件特許明細書の【0013】に「(1)結晶型降雪用空気の作製方法であって、湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。」とあるのを、「(1)結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、請求項1の結晶型降雪用空気の作製方法について、作製される「結晶型降雪用空気」は、「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であ」って、その「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気」を、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して」「調整する」ことを限定し、さらに「分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記冷却用空気として使用する」ことについて、「分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して」使用することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1を引用する請求項3についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0026】に「本発明の結晶型降雪用空気の作製方法は、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合して冷却することを含む。」、【0027】に「水飽和以下の湿度の結晶用湿度空気1(状態点SP1)を、低温の冷却用空気2(状態点SP2)で混合冷却していくと、結晶用湿度空気が冷却される。図1では、状態点SP1と状態点SP2を結んだ直線上を左側に状態点が移動していく(矢印方向)。この直線と水飽和線が交わるまでは、結晶用湿度空気の湿度は水飽和以下である。水飽和線との交点を過ぎると、湿度が飽和を超え過飽和になった後、空気中に含まれる水分が凝縮し、小さな粒径の過冷却水滴が飛散した状態となる。更に混合冷却が進むと、所望の結晶形状の結晶型人工雪をつくるために最適な、結晶型降雪用空気3の温湿度条件(状態点SP3)となる」、及び【0038】に「降雪後空気の少なくとも一部を循環冷却7して冷却用空気2とする冷却用空気調整手段」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴って、本件特許明細書の対応する記載を同様に訂正するものであるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、本件特許明細書の【0026】、【0027】及び【0038】の記載を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)請求項3についての独立特許要件について
特許異議の申立てがされていない請求項3について、上記訂正事項1により特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされたから、独立特許要件について検討する。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるところ、後述の通り「第4」に示す取消理由によって、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
よって、請求項3に係る発明も同様に、同取消理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができないとはいえない。また、他に請求項3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、請求項3についての訂正は、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第7項に適合するものである。

(4)一群の請求項等について
訂正前の請求項1及び3は、請求項3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項2は、一群の請求項である請求項1及び3に関係する訂正であるから、訂正事項2は、当該明細書の訂正に係る請求項の全てについて行ったものである。

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項?第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3〕についての訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項2】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とする、結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項3】
前記結晶型降雪用空気の温度が-17?-14℃の範囲にあり、結晶型降雪用空気の氷に対する過飽和度が107%以上である、請求項1又は2に記載の結晶型降雪用空気の作製方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成30年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)(進歩性)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

甲第2号証:特許第4549364号公報

<参考> 特許異議申立理由のその他の証拠
甲第1号証:特開平9-329380号公報
甲第3号証:実公平8-7325号公報
甲第4号証:実用新案登録第2531100号公報
甲第5号証:実願平3-40803号(実開平5-73478号)のCD-ROM
甲第6号証:”第13版 空気調和・衛生工学便覧 1基礎篇”、社団法人 空気調和・衛生工学会、2001年11月30日、p.85-86
甲第7号証:井上宇市、”新版 空気調和ハンドブック”、丸善株式会社、昭和47年1月20日、p.20-21

2 取消理由についての判断
(1)新規性について
ア 甲第2号証記載の発明
甲第2号証には、以下の記載がある
(ア)「【0014】
以下、本発明の降雪装置を添付図面に基づいて説明する。
本発明に係る降雪装置の造雪部1は、図1に示すように、造雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を同造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3に、循環用の送風機として第一の送風手段たる第一送風機4と第二の送風手段たる第二送風機8を設けている。
【0015】
第一送風機4は、主に造雪室2に空気(氷飽和以上の雰囲気A)を送風するもので、また第二送風機8は、主に造雪室2の空気(氷飽和以上の雰囲気A)を、通気部材である通気膜14に通過させて吸入口7からダクト3に吸引するものである。
【0016】
そして、造雪室2に空気を送風する第一送風機4の送風量に対し、造雪室2の空気を、通気膜14を介して吸入口7からダクト3に吸引する第二送風機8の送風量を小に調整していて、造雪室2内で余剰となった空気を排出口2aから被供給室18に排出(排出空気B)するようにしている。」
(イ)「【0019】
そして、ダクト3には、造雪室2から被供給室18に排出した空気(排出空気B)を補うための送風機9、冷却器10を配設したダクト11を接続してあり、同冷却器10で所定の温度に冷却した空気を、送風機9によってダクト3に供給するようにしている。すなわち、上述において造雪室2から被供給室18に排出(排出空気B)した風量「0.1」の空気をダクト3に供給するようにしている。
【0020】
また、本降雪装置の造雪部1における造雪室2は、所定の温度に冷却され、かつ氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を通過させる通気膜14を、細かいメッシュ状のエンドレスベルト状にし、同通気膜14を駆動回転体12と従動回転体13に張設してベルトコンベア状に回転させてなる回転膜装置を多数備えたものを示している。
【0021】
そして、造雪室2で造雪した雪を排出するための排出口2aに、同排出口2aから被供給室18に排出する空気(排出空気B)の量を制限するための制限手段としてローラ回転体16を配設している。」
(ウ)「【0026】
しかしながら、上述のように排出空気の流速や流量を増大させるとエネルギー効率が低下してしまうので、このエネルギー効率の観点からは、排出空気Bの流量を可及的小とすることができるようにローラ回転体表面の霜は前述のような着霜除去具17にて除去するのが望ましい。」
(エ)図1及び3には、送風機9で取り込まれる空気は、外気であることが看取できる。

上記記載事項を総合すると、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を造雪室2に循環させる方法であって、
造雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を前記造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3を有し、
ダクト3には、造雪室2から被供給室18に排出した空気(排出空気B)を補うための送風機9、冷却器10を配設したダクト11を接続し、前記冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を、送風機9によってダクト3に供給する方法。」

イ 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、
(ア)甲2発明の「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を造雪室2に循環させる方法」は、降雪装置における人工雪製造の機序から結晶型人工雪が生成されていることは明らかであり、造雪室2に循環させる空気は結晶型降雪に用いる空気であるから、本件発明1の「結晶型降雪用空気の作製方法」に相当する。

(イ)甲2発明の「造雪室2に循環させる」「降雪装置による氷飽和以上の雰囲気に調整された空気」は、結晶型降雪に用いる空気であるから、本件発明1の「氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気」である「結晶型降雪用空気」に相当する。

(ウ)甲2発明の「冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気」は、本件発明1の「外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含」む「結晶用湿度空気」に相当する。

(エ)甲2発明の「降雪装置」が「雪部1内において冷却器5により所定の温度に冷却され、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気を前記造雪部1と造雪室2に循環させるための循環経路たるダクト3を有」することは、造雪室2で結晶型人工雪が生成され、結晶型人工雪と残余の加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整された空気とが分離され、分離された降雪後の空気の一部が冷却器5及び加湿器6に循環するものであるから、甲2発明の当該記載と、本件発明1の「前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する」こととは、「前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を、前記結晶用湿度空気と混合する空気として使用する」ことの限りで一致する。

したがって、本件発明1と甲2発明とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1は、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含」むのに対して、甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気(本件発明1の「結晶用湿度空気」に相当。)を造雪室2からのダクト3に供給した後、冷却器5により所定の温度に冷却し、次いで加湿器6により氷飽和以上の雰囲気に調整する点。

<相違点2>
分離した降雪後空気の少なくとも一部を使用する冷却用空気について、本件発明1では、冷却して使用するのに対して、甲2発明では、冷却していない点。

ウ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
相違点1は、本件発明1が結晶用湿度空気を冷却用空気と混合冷却することで、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気、すなわち、結晶型降雪用空気を作成しているのに対し、甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を造雪室2からのダクト3に供給された空気と混合した後、冷却器5と加湿器6とを用いて、結晶型降雪用空気とする点で相違する。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。

<相違点2について>
甲第2号証には、造雪室2からのダクト3において、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を供給する前に冷却することは、何ら記載されていない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。

(2)進歩性について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、上記(1)イの相違点1及び2の点で少なくとも相違する。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1について>
甲2発明は、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を造雪室2からダクト3に供給された空気と混合した後、冷却器5と加湿器6とを用いて、結晶型降雪用空気とするものであるところ、冷却器5と加湿器6とを用いずに結晶型降雪用空気とすることは、甲第1、3?7号証に記載も示唆もなく、周知技術であるとの証拠もないから、相違点1に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到し得たとする理由はない。

<相違点2について>
甲第2号証には、造雪室2からのダクト3において、冷却器10で外気を所定の温度に冷却した空気を供給する前に冷却することは、何ら示唆されておらず、甲第1、3?7号証にも何ら記載されていない。

申立人は、平成30年9月20日の意見書において、少なくとも外気の冷却が必要であるところ、外気を冷却するのに、それより低温の空気と混合して、混合冷却することが周知技術である旨主張する。
しかし、甲2発明において、造雪室2からダクト3に供給された空気が冷却器10を通って供給される空気より低温であるとしても、甲2発明の外気は、冷却器10により所定の温度に冷却されており、冷却器5を有していることも考慮すると、造雪室2からダクト3に供給された空気が冷却を目的としているとまではいえないから、造雪室2からダクト3に供給された空気をさらに冷却する動機付けはない。

したがって、当業者が、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の事項とすることを容易になし得たとはいえない。

(3)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明であるとはいえず、かつ、甲2発明及び甲第1、3?7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ゆえに、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえないから、その発明に係る特許は取り消すべきものであるとはいえない。

第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第36条第6項1号について
申立人は、第1に、外気との混合前に、降雪後空気が人工結晶型空気の温度より冷却する工程、または、外気との混合時点において、降雪後空気が人工結晶型空気の温度より低いという条件、及び第2に、混合して、冷却後に加湿工程がないという条件が請求項1に反映されておらず、発明の課題を解決するための手段が反映されていない旨主張する。
しかし、上記第1の工程又は条件、及び第2の条件は、本件発明1において反映されていると認められるので、申立人の当該主張は採用できない。

2 本件発明1に対する甲第1号証を主発明とする特許法第29条第2項について
ア 対比
本件発明1と甲第1号証記載の発明(以下「甲1発明」という。)とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含」むのに対して、甲1発明は、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合冷却するものでない点。

イ 当審の判断
甲第2号証には、上記甲2発明について検討したとおり、外気である結晶用湿度空気を供給する点が記載されているといえるが、「湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製すること」は開示されていない(<相違点1>参照。)から、仮に、甲1発明において、甲2号証の発明の外気である結晶用湿度空気を供給する構成を適用したとしても、上記相違点3に係る本件発明1の構成は得られない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本件発明2に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件発明2と甲2発明とは少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明2は、「前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とする」のに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。

イ 当審の判断
申立人は、上記相違点4に係る本件発明2の事項は、単に結晶用湿度空気と冷却用空気の混合の際の熱量収支計算を空気線図上に表現しただけにすぎず、当業者にとっての必然の選択にすぎない旨主張する。
しかし、本件発明2は、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比の決め方を具体的に特定するものであり、当該初期風量比の決め方として、「結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし」て、当該初期風量比を、t2を用いて決定する以外の方法がないとは認められない。
よって、相違点4に係る本件発明2の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 小括
上記のとおり、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消すべきものであるとはいえない。
また、本件発明1、2は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証記載の事項、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3?7号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。
また、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものとはいえず、取り消されるべきものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
結晶型降雪用空気の作製方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工雪の製造に関し、より詳細には、雪結晶の品質に優れ、降雪装置に供給する水の量を大幅に削減でき、制御が容易で、省エネである、結晶型降雪用空気の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪装置で製造される人工雪は、自動車等各種機械製品、建材、構造物などの耐久試験等を行う環境試験室や、観察、イベントを目的とした博物館等の体験学習等に利用されている。人工雪には、結晶型だけでなく氷結粒子のような非結晶型のものがある。非結晶型の人工雪は、低温空気に水噴霧するなどして製造され、前記用途などに使用されている。しかし、非結晶型人工雪の降雪は、自然状態の降雪性状と差異があり、特に環境試験用途においては、地吹雪や粉雪の環境を再現したに過ぎない。また、観察用途においては、非結晶型人工雪は、擬似的にでも自然体験したとは言い難い。
【0003】
一方、結晶型の人工雪は、形状が自然雪結晶そのもの又はそれに準じたものである。そのような結晶型人工雪を降らせることにより、ほぼ自然状態に近い降雪、新雪の積雪の環境を再現できる。非特許文献1には、結晶型人工雪を造る方法が開示されており、結晶が成長している場所の気温と過飽和度との組み合わせによって、成長する雪の結晶の形がどのように変化するかを示した図(ナカヤ・ダイヤグラム)が記載されている。また、人工雪の結晶形状として、樹枝状、扇形-角板、厚角板等があることが記載されている。
【0004】
従来の降雪方法を加湿方法で分類すると、二流体ノズルや超音波等で微水滴を噴霧して加湿する方法と、加湿パン等の温水によって加湿する方法等が挙げられる。微水滴を噴霧して加湿する方法としては、例えば、特許文献1に開示された人工降雪方法が挙げられる。この人工降雪方法では、超音波発生装置の振動子に冷水を流出させて水滴にし、それに高圧空気を噴出して水滴を0℃以下の低温空間に噴霧し、高圧空気の断熱膨張を利用して過冷却を破ることにより水滴を凍結させて雪を造っている。また、特許文献2に開示された人工降雪装置は、空中に微小氷塊を生成する手段を備え、この手段が水と圧縮空気とにより微小水滴を低温域に噴霧する二流体ノズルである。この人工降雪装置では、二流体ノズルから噴霧される微小水滴は、低温域で断熱膨張し、ノズル放出口の近距離内で微小氷塊になる。そして、落下するその微小氷塊を回転ブラシで下から受け取り、それをブラシ接触体で圧縮凝結して粒子径を大きくし、それをブラシ回転駆動体で降下させ、降雪させる。
【0005】
加湿パン等の温水によって加湿する方法については、例えば、特許文献3に開示された人工結晶雪製造装置がある。この人工結晶雪製造装置は、所定氷点下の温度をつくる冷却器と、氷飽和以上の飽和雰囲気をつくり出す加湿装置と、回転通気膜装置と、霜除去装置とからなる。この加湿装置は、低水温の蒸発による低温加湿パンを多段に配設したものとし、加湿パンが蒸発面以外を断熱した流水式としている。この人工結晶雪製造装置では、空気を氷点下の温度に冷却し、その冷風を低温加湿パンの水面に流して氷飽和以上の空気湿度にし、その氷飽和以上の湿度の冷風を細かいメッシュの通気性を有する織物状膜体に透過させてこの膜体の表面に霜を生成させ、その霜に前記冷風中の水蒸気が供給されて成長し、成長した霜の一部が霜除去装置にて落下され、降下雪が形成される。また、特許文献4に開示された加湿パンは、氷点下の空気が流通する空気通路内に設けられ、降雪装置等の造雪部に供給する氷点下の空気を加湿する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-257916号公報
【特許文献2】特許第2632129号明細書
【特許文献3】特許第3397582号明細書
【特許文献4】特開2009-216362号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】中谷宇吉郎著、「雪」岩波書店、1994年10月17日、p.176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載の結晶型人工雪の作製方法は、毛の先に結晶を成長させるものであり、人工雪の大量製造には向かない。
【0009】
特許文献1や2に記載されている、微水滴を噴霧する方法は、水滴が空気中に飛散している状態を作り出せる。しかし、飽和していない状態の空気に水滴を飛ばすと、水滴を飛ばしながら周りに水蒸気を与えることになり、空気を飽和状態まで加湿するのに時間がかかる。そのため、水滴が凍結して直接氷になり、結晶型雪にならないと考えられる。また、噴霧する水滴の小ささには限界があり、粒径が大きすぎると人工雪の性状に影響を及ぼすので、このような人工雪による降雪は、例えば嵩密度が高いなど環境試験用の品質が得られないと考えられる。
【0010】
また、特許文献3や4に記載されている、加湿パン等の温水によって加湿する方法は、前記の微水滴を噴霧する方法と違い、空気に水蒸気を投入でき、空気が過飽和蒸気で満たされ、かつ空気中で水蒸気を凝集させるのでより小さな水滴が得られる。しかし、加湿パン等の凍結防止などのため、空気に投入する水分量以上の流量の温水を循環流水させて加湿装置に投入しなければならない。また、加湿量は、空気の温度・流速と、温水の温度又は加湿水面の面積に依存するので、水温をある程度高くするか、温水の表面積(加湿面積)を大きくしなければならない。そして、水温を高くすると加湿前の投入空気の温度をより低くしなければ、結晶型人工雪を作製するための空気温度条件を満たすことができない。また、温水全体の温度を維持するための熱量が必要であり省エネでなく、制御も難しい。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題は、雪結晶の品質に優れ、降雪装置に供給する水の量を大幅に削減でき、制御が容易で、省エネである、結晶型降雪用空気の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討し、常温外気が含有する水分量が水飽和湿度の低温空気中の水分量に比べて多いことに着目し、外気を低温空気と混合して冷却すれば、外気が含有していた水分を利用して、結晶型降雪用空気として適する水分量と温度の空気が得られることを見出した。本発明者は更に検討を進め、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。
(2)結晶型降雪用空気の作製方法であって、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とする、結晶型降雪用空気の作製方法。
(3)前記結晶型降雪用空気の温度が-17?-14℃の範囲にあり、結晶型降雪用空気の氷に対する過飽和度が107%以上である、前記(1)又は(2)に記載の結晶型降雪用空気の作製方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の結晶型降雪用空気の作製方法によれば、空気に含まれる湿度(蒸気)を冷却凝縮し水滴を発生させるので、水を直接噴霧した粒径(通常2?40μm又はそれ以上である。)よりも微水滴(1μm程度又はそれ以下である。)が得られ、作製する雪結晶の品質が向上する。また、本発明の結晶型降雪用空気の作製方法は、結晶用湿度空気として外気を導入すると、外気の含有する水分を利用できるので、降雪装置に供給する水量を大幅に削減でき(絶対湿度量で0.01kg/kg(DA)程度の供給量である。)、省エネできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る混合冷却の空気状態挙動を示した湿り空気線図である。
【図2】冷却用空気の初期設定温度、結晶用湿度空気と冷却用空気との初期風量比を演算する方法の概念図である。
【図3】結晶型降雪用空気の温度を、降雪後空気の温度及び湿度から演算推測する方法の概念図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る降雪空気の作製方法のフローを示す概念図である。
【図5A】本発明の一実施形態に係る給気口の側面図である。
【図5B】本発明の一実施形態に係る給気口の空気の流れ方向の下流側から見た正面図である。
【図5C】本発明の一実施形態に係る結晶用湿度空気の給気口の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の結晶型降雪用空気の作製方法は、湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気である。
【0017】
本発明に係る結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散(分散)し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気である。ここで、氷点下とは、常圧で0℃以下をいう。本発明に係る結晶型降雪用空気は、人工雪の形状が自然界の雪結晶そのものや、それに準じた結晶型の人工雪の生成に用いられる。この結晶型人工雪を降らせることにより、ほぼ自然状態に近い降雪、新雪の積雪を再現できる。この結晶型人工雪を作り出すためには、特殊な空気状態にしなければならない。結晶型人工雪を作るための空気(結晶型降雪用空気)の状態は、氷点下であり、氷飽和以上の過飽和蒸気を含み、かつ過冷却微水滴が飛散している状態であり、定常的には存在しない状態である。このような過渡的な状態を保った空気で、結晶を生成させることが、結晶型人工雪の降雪に必要である。
【0018】
人工雪の結晶性状は、この結晶型降雪用空気の温度と含水量(過飽和蒸気+過冷却微水滴)によって変化させることができる。例えば、非特許文献1には、空気及び氷に対する過飽和度(%)を所定の範囲にすることにより、所望の形状の人工雪の結晶性状が得られることが記載されている。ここで、氷に対する過飽和度(%)とは、含水量の氷飽和水蒸気密度に対する比である。
【0019】
結晶型降雪用空気の温度及び氷に対する過飽和度(%)は、所望の形状の結晶型人工雪が得られる所定の範囲に維持することが好ましい。結晶型降雪用空気の温度及び氷に対する過飽和度(%)を所定の範囲に維持すると、得られる結晶型人工雪の形状が均一となり、降雪品質が向上する。ここで、所望の形状の結晶型人工雪が得られる温度範囲は、結晶型人工雪を成長させる際の条件によりシフトするが、例えば、雪結晶を空中に浮かべて成長させる場合、樹枝状の結晶型人工雪を得たいときには、結晶型降雪用空気を温度-17?-14℃かつ氷に対する過飽和度を107%以上にすることが好ましく、扇形、角板、又は厚角板状の結晶状雪を得たいときには、前記の樹枝状の結晶状雪の場合の範囲を除き、結晶型降雪用空気を温度-20?-10℃かつ氷に対する過飽和度を100%以上にすることが好ましく、針状の結晶型人工雪を得たいときには、結晶型降雪用空気を温度-7?-4℃かつ氷に対する過飽和度を108%以上にすることが好ましく、針異型の結晶型人工雪を得たいときには、結晶型降雪用空気を温度-6?-1℃かつ氷に対する過飽和度を107%以上にすることが好ましい。結晶型人工雪を担体上で成長させる場合には、これらの好ましい温度範囲は、2?3℃程度高温側にシフトすることがある。
【0020】
降雪品質の指標には、例えば嵩密度(kg/m^(3))がある。嵩密度が小さいほど降雪の品質が良いことを示す。例えば、自然界の新雪は、嵩密度が30?150kg/m^(3)である。この品質を達成するためには、結晶型人工雪の形状を樹枝状にすることが最も望ましい。また、樹枝状の結晶形状は、結晶生成速度が速い点でも好ましい。例えば、結晶型降雪用空気を、-16℃近辺(±2℃程度)で、かつ氷に対する過飽和度が107%以上にすると、生成する人工雪の結晶形状が樹枝状になる。
【0021】
本発明に係る結晶型降雪用空気中に飛散している過冷却微水滴は、粒径がより小さい水滴が望ましい。具体的には、1μm程度又はそれ以下であると好ましい。
【0022】
本発明に係る結晶用湿度空気は、湿度が水飽和以下の空気である。結晶用湿度空気は、外気、若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含むことが好ましい。結晶用湿度空気として外気を導入すると、外気の含有する水分を利用できるので、降雪装置に供給する水量を大幅に削減でき(絶対湿度量で0.01kg/kg(DA)程度の供給量である。)、省エネできる。これは、外気を加湿又は減湿した場合も同様である。結晶用湿度空気の温度及び湿度は通常の計測手段で測定できる。
【0023】
本発明に係る結晶用湿度空気の温度は特に限定されないが、結晶用湿度空気として外気を導入する場合、外気温度が高いとき(夏季等)は、外気由来の結晶用湿度空気と冷却空気との温度差が大きくなり、両者を混合して結晶型降雪用空気にする際に生成した凝縮水滴が、結晶生成前に空気中で過冷却解除する可能性が高まり、氷結するので、降雪品質が低下する恐れがある。従って、外気を冷却器や後述する降雪後空気などにより冷却し、結晶用湿度空気の温度を下げて用いることが好ましい。なお、外気温度が高いときとは、具体的には気温が25℃以上や30℃以上のときをいう。
【0024】
また、結晶用湿度空気として外気を導入する場合、外気温度が低いとき(冬季等)は、外気由来の結晶用湿度空気の湿度(水含有量)が、結晶型降雪用空気を作成するには足りない場合がある。また、その外気温が低い(特に氷点下の)ときは、必要な湿度量に加湿できない場合もある。従って、必要により外気に加温してから加湿して結晶用湿度空気として導入する。なお、外気温度が低いときとは、具体的には気温が10℃以下のときをいう。
【0025】
本発明に係る冷却用空気は、結晶用湿度空気より低温の空気である。冷却用空気の温度は、結晶用湿度空気より低温であれば特に限定されないが、具体的には、温度が-273℃?0℃の範囲にあり、好ましくは-30℃?-10℃の範囲にあり、より好ましくは-25℃?-15℃の範囲にあり、特に好ましくは-25℃?-20℃の範囲である。また、湿度は特に限定されないが、氷飽和湿度以下であると好ましい。冷却用空気の湿度が氷飽和以下であると、冷却用空気に冷却する冷却器の結露、凍結がおきにくい。冷却用空気の温度及び湿度は通常の計測手段で測定できる。冷却用空気は、例えば、後述する結晶作製器から循環された空気を、冷却器で冷却して低温にする。
【0026】
本発明の結晶型降雪用空気の作製方法は、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合して冷却することを含む。以下に、混合冷却について図を参照しながら説明する。図1は、湿り空気線図上に、本発明の結晶型降雪用空気の作製方法における、結晶用湿度空気を冷却用空気と混合して冷却する際の空気の状態の挙動を示している。この湿り空気線図は、全圧が101.325kPaに等しい空気における湿り空気線図(h-x線図)であり、斜交軸の横軸に比エンタルピh(kJ/kg(DA))、縦軸に絶対湿度x(kg/kg(DA))を基準座標軸にとり、乾球温度DB(℃)、湿球温度WB(℃)、相対湿度φ(%)、比容積v(m^(3)/kg(DA))の状態値が示してある。なお、kg(DA)は、乾き空気の質量を示す。
【0027】
水飽和以下の湿度の結晶用湿度空気1(状態点SP1)を、低温の冷却用空気2(状態点SP2)で混合冷却していくと、結晶用湿度空気が冷却される。図1では、状態点SP1と状態点SP2を結んだ直線上を左側に状態点が移動していく(矢印方向)。この直線と水飽和線が交わるまでは、結晶用湿度空気の湿度は水飽和以下である。水飽和線との交点を過ぎると、湿度が飽和を超え過飽和になった後、空気中に含まれる水分が凝縮し、小さな粒径の過冷却水滴が飛散した状態となる。更に混合冷却が進むと、所望の結晶形状の結晶型人工雪をつくるために最適な、結晶型降雪用空気3の温湿度条件(状態点SP3)となる。なお、状態点SP3は、湿度100%の氷飽和線より上方にあり、定常的には存在せず、過渡的な状態点であるが、縦軸の絶対湿度の数値は、その温度における空気の含水量(過飽和蒸気+過冷却微水滴)を示している。
【0028】
結晶用湿度空気と冷却用空気を混合する際、混ざり具合に斑があると、結晶型降雪用空気の空気状態が安定せず、また凝縮水滴の形成(粒径など)にも影響する。また、混ぜたときや、混ぜた後の空気と、結晶型降雪用空気から人工雪を生成させる結晶作製部の間に構造物があると、その部分で過冷却解除が起こりやすくなり、そこで結晶が生成して、湿度投入量に対して結晶生成量が少なく、損失量が多くなる。よって、結晶用湿度空気及び冷却用空気の供給口の形状や配置を、均等に混合できる形状や配置にすることが好ましい。
【0029】
本発明の結晶型降雪用空気の作製方法では、結晶型降雪用空気から生成させる結晶型人工雪の品質を一定に保つために、結晶型降雪用空気の状態を一定に保つことが好ましい。結晶型降雪用空気の状態を一定に保つ制御方法は特に限定されないが、例えば、1)結晶型降雪用空気の温度の現在値が設定温度より高い場合には、結晶用湿度空気及び/又は冷却用空気の温度を下げ、並びに/若しくは結晶用湿度空気の風量を減らし及び/又は冷却用空気の風量を増やし、2)結晶型降雪用空気の温度の現在値が設定温度より低い場合には、冷却用空気及び/又は結晶用湿度空気の温度を上げ、並びに/若しくは結晶用湿度空気の風量を増やし及び/又は冷却用空気の風量を減らし、また、3)結晶型降雪用空気の湿度の現在値が設定湿度より高い場合には、結晶用湿度空気を減湿し及び/又は風量を減らし、4)結晶型降雪用空気の湿度の現在値が設定湿度より低い場合には、結晶用湿度空気を加湿し及び/又は風量を増やす、方法で制御することが好ましい。
【0030】
結晶型降雪用空気の計測温度としては、直接、人工雪が生成している近傍で測定した値を使用できる。しかし、結晶型降雪用空気は、過飽和以上の空気であるので、温度センサ部に着霜し、理論的に実際の温度より高い温度で計測され、正確な測定はできない。そのため、人工雪が生成している近傍で測定した値を、固定値又は湿度量から決定した値で補正して計測値として使用することが好ましい。また、センサへの着霜による積層を、センサ駆体に震動を与えるなどして防止することが好ましい。
【0031】
また、結晶型降雪用空気の計測温度としては、結晶型降雪用空気から結晶雪が生成した後の空気、つまり、降雪後空気の温度及び湿度を測定し(飽和線上かその近辺の状態となる)、その計測値から演算推測した値を用いることができる。この演算推測する方法としては、結晶型降雪用空気の水分が、凍結潜熱と昇華潜熱を空気に放出し空気の温度を上げて、結晶生成するとして、結晶型降雪用空気の温度を計算する方法が挙げられる。より詳細に図3を用いて説明する。図3には、結晶型降雪用空気3の状態、すなわち、過飽和蒸気に過冷却水滴が飛散している状態点SP3から、結晶型人工雪が生成し、全て氷結晶となった状態点への過程を矢印で示してある。状態点SP3の湿度(hu3)は計測値である。まず、結晶型降雪用空気の氷飽和以上の全水分から結晶雪が生成すると仮定する。結晶型降雪用空気のうち、水飽和線以上の水分は、飽和空気に過冷却水滴が飛散している状態であり、水飽和線までは水滴が氷になる領域である。水滴が氷になる領域では凍結潜熱で空気温度が上昇しながら、水飽和線上に到達する(状態点SP4)。水飽和線と氷飽和線の間は、過飽和蒸気が氷となる領域であり、昇華潜熱で空気温度が上昇し氷飽和線上に到達する(状態点SP5)。結晶型降雪用空気から二つの温度上昇分を経て、降雪後空気に至るとして、計測した降雪後空気の温度から温度上昇分を引いた値を結晶型降雪用空気の温度(t3)とする。このようにして、氷飽和線以上となる結晶型降雪用空気の温度を、降雪後空気での計測値から、湿度量(水分量)と熱量、温度の関係により推測することができる。
【0032】
結晶型降雪用空気3の湿度は、飽和以上では直接的には計測できないが、その空気の一部を取り出す経路を設け、その空気を加温することにより飽和以下の空気にしてその湿度を測定し、その測定値から求めることが好ましい。
【0033】
冷却用空気2の初期設定温度は、湿り空気線図(h-x線図)を用いて決定することが好ましい。具体的には、図2に示すように、結晶用湿度空気1の温度及び湿度を計測して状態点SP1とし、結晶型降雪用空気3の設定空気条件を状態点SP3とし、状態点SP1と状態点SP3とを直線で結び、その直線を低温側に延長して、水飽和線と交差する点を冷却用空気2の状態点SP2とし、その状態点SP2の温度を冷却用空気の初期設定温度にする。また、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比は、湿り空気線図(h-x線図)を用いて決定することが好ましい。具体的には、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、前記の湿り空気線図(h-x線図)上の状態点SP3と状態点SP2との間の長さ(Q1):状態点SP1と状態点SP3との間の長さ(Q2)とする。Q1とQ2の比は、t3-t2とt1-t3の比に等しい。これらの決定は、演算処理で決定することができる。また、結晶用湿度空気と冷却用空気の総流量は、所望の降雪量及び結晶型降雪用空気からの人工雪の生成速度に応じて任意に設定できる。
【0034】
本発明に係る降雪後空気は、結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させた後の空気である。降雪後空気は、結晶作製器で結晶型人工雪と分離し、その少なくとも一部を、冷却用空気として循環させて使用することが好ましい。通常、降雪後空気の一部を排気する。その排気量は、特に限定されないが、通常、結晶用湿度空気と同じ量である。降雪後空気は、冷却して冷却用空気として使用する他、湿度が水飽和以下となる範囲で、結晶用湿度空気と混合して冷却、減湿、加湿に使用できる。
【0035】
本発明の結晶型降雪用空気の作製方法を、図4を参照しながら更に説明する。図4は、本発明の降雪空気の作製方法のフローを示す概念図である。図4中、Hは湿度センサ、Tは温度センサを示す。まず、結晶用湿度空気1として外部から外気10を導入する。外気10の温度及び湿度は通常の計測手段で計測する。外気の温度や湿度に応じて、必要により外気10を加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿し(結晶用湿度空気調整9)、また、必要により降雪後空気の一部を外気10に循環8させる。降雪後空気の少なくとも一部を循環冷却7して冷却用空気2とする。結晶用湿度空気1の湿度並びに冷却用空気2の温度及び湿度は混合前に通常の計測手段で計測する。次に、結晶用湿度空気1と冷却用空気2を混合冷却5して結晶型降雪用空気3を作製する。結晶型降雪用空気3を結晶作製器6に送り、人工雪を生成させる。生成した人工雪は降雪11として分離する。残余の空気である降雪後空気は、その一部を排気12し、他の一部を循環冷却7して冷却用空気2として用いる。降雪後空気の温度及び湿度は通常の計測手段で計測する。
【0036】
前記の結晶作製器6は、結晶型降雪用空気3で生じた結晶型人工雪を降雪に変え、降雪後空気を分離することができれば特に限定されないが、例えば、1)頂部を下にした円錐状の通気膜の外部から円錐内に結晶型降雪用空気を透過させて、霜を膜上に成長させ、霜が所定の大きさに成長したら通気膜を振動や変形させて、霜を落下させて降雪とするものや、2)特許文献2に記載されている、回転ブラシ、ブラシ接触体、及びブラシ回転駆動体を備え、落下する結晶型人工雪を回転ブラシで受け取って、それをブラシ接触体で圧縮凝結して粒子経を大きくし、それをブラシ回転駆動体で降下させるものや、3)引用文献3に記載されているような、膜体が細かいメッシュの織物状で、所定間隔で設置された多数の回転通気膜装置と、その膜体の一端に設けたスクレーパーなどの霜除去装置とを備え、通気膜状で霜を成長させ、その成長した霜を霜除去装置で膜から除去するもの、などを用いることができる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る結晶用湿度空気と冷却用空気の混合冷却の一実施形態について図を参照して説明する。図5Aは、本発明に係る結晶用湿度空気1及び冷却用空気2の給気口の配置の側面図であり、図5Bは、それらの給気口の配置を空気の流れ方向の下流側から見た正面図である。図中の矢印は空気の流れを示している。結晶用湿度空気1の給気口を中心にして、その周りに冷却用空気2の給気口を四方に配置し、結晶用湿度空気1と冷却用空気2とが空気中で均等に混ざるようにしている。
また、図5Cは、本発明に係る結晶用湿度空気の給気口の形状の一態様を示した斜視図である。吹き出し口13の前面に板15を設け、横に360度噴出するようになっている。より具体的には、円筒状給気管の一端の吹き出し口13に、その周縁に設けられ、管の軸方向に延びた複数のピン14を介して、給気管の内径よりを大きい径の円板15が、管の軸方向に垂直にして設けてある。結晶用湿度空気1は、図5Aの左側から右側へ、中心の給気管内を流れ、吹き出し口前面の板にぶつかる。そして、結晶用湿度空気1は、円周方向に吹き出す。冷却用空気2は、周りの給気管から図5Aの左側から右側へ給気管内を流れ、給気管の開口部から吹き出し、前記の円周方向に吹き出した結晶用湿度空気1と衝突混合し、結晶型降雪用空気3となる。この結晶型降雪用空気は、結晶作製器に導入される。なお、この図は、本発明に係る混合の一態様を示すものであり、結晶用湿度空気と冷却用空気が混合できるものであれば特に限定されないが、結晶用湿度空気と冷却用空気とが均等に混ざるものが好ましい。混合を適度な範囲内とすると、結晶型降雪用空気3に含まれる微水滴の過冷却解除が起きないので好ましい。
【0038】
本発明の結晶型降雪用空気3の作製方法は、例えば、結晶用湿度空気1として外部から外気10を導入する外気導入手段と、降雪後空気の少なくとも一部を循環冷却7して冷却用空気2とする冷却用空気調整手段と、結晶用湿度空気1と冷却用空気2を混合冷却5して結晶型降雪用空気3を生成する混合手段と、結晶型降雪用空気3から結晶型人工雪を生成6し、結晶型人工雪を降雪11させて降雪後空気を分離する結晶作製手段と、降雪後空気の一部を排気12する排気手段と、必要により降雪後空気の一部を外気10に循環8させる循環手段と、必要により外気10を加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿(結晶用湿度空気調整9)する結晶用湿度空気調整手段と、を備える結晶型降雪装置で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:結晶用湿度空気、2:冷却用空気、3:結晶型降雪用空気
4:降雪装置、5:混合冷却、6:結晶作製器、7:循環冷却、8:循環、9:結晶用湿度空気調整
10:外気、11:降雪、12:排気
13:吹き出し口、14:ピン、15:板
SP1:結晶用湿度空気1の状態点、SP2:冷却用空気2の状態点、SP3:結晶型降雪用空気3の状態点
SP4:結晶型降雪用空気3中の全水滴が氷になったと仮定した状態点、SP5:降雪後空気の状態点
t1:結晶用湿度空気1の温度、t2:冷却用空気2の初期設定温度、t3:結晶型降雪用空気3の設定温度
Q1:結晶用湿度空気の初期設定風量、Q2:冷却用空気の初期設定風量
hu3:結晶型降雪用空気3(結晶雪生成前)の湿度
T:温度センサ、H:湿度センサ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合冷却して、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気を調製することを含み、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶型降雪用空気中で結晶型人工雪を生成させ、結晶型人工雪と、残余の結晶型降雪用空気である降雪後空気とを分離し、分離した降雪後空気の少なくとも一部を冷却して、前記冷却用空気として使用する、結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項2】
結晶型降雪用空気の作製方法であって、
湿度が水飽和以下の結晶用湿度空気を、前記結晶用湿度空気より低温の冷却用空気と混合して冷却することを含み、
前記結晶型降雪用空気は、氷点下であり、過冷却微水滴が飛散し、かつ氷飽和以上の過飽和蒸気を含む空気であり、更に
前記結晶用湿度空気は、外気若しくは加温又は冷却、及び/若しくは加湿又は減湿した外気を含み、
前記結晶用湿度空気の温度がt1℃であり、前記結晶型降雪用空気の温度をt3℃と設定したときに、湿り空気線図(h-x線図)上で、結晶用湿度空気の状態点と結晶型降雪用空気の状態点を結び、低温側に延長して、その線と飽和線と交差する状態点の温度を前記冷却用空気の初期設定温度t2の設定値とし、結晶用湿度空気と冷却用空気の初期風量比を、結晶用湿度空気:冷却用空気で、t3-t2:t1-t3とするく結晶型降雪用空気の作製方法。
【請求項3】
前記結晶型降雪用空気の温度が-17?-14℃の範囲にあり、結晶型降雪用空気の氷に対する過飽和度が107%以上である、請求項1又は2に記載の結晶型降雪用空気の作製方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-10 
出願番号 特願2013-72994(P2013-72994)
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (F25C)
P 1 652・ 121- YAA (F25C)
P 1 652・ 113- YAA (F25C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 宮崎 賢司
佐々木 正章
登録日 2017-09-08 
登録番号 特許第6204045号(P6204045)
権利者 株式会社大気社
発明の名称 結晶型降雪用空気の作製方法  
代理人 齋藤 悟郎  
代理人 庄野 寿晃  
代理人 佐藤 浩義  
代理人 木村 満  
代理人 山本 洋美  
代理人 庄野 寿晃  
代理人 長野 正  
代理人 齋藤 悟郎  
代理人 湯浅 夏樹  
代理人 湯浅 夏樹  
代理人 長野 正  
代理人 山本 洋美  
代理人 佐藤 浩義  
代理人 木村 満  

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