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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1346763
異議申立番号 異議2017-700178  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-24 
確定日 2018-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5980860号発明「LEDランプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5980860号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5980860号の請求項1ないし4及び6に係る特許を維持する。 特許第5980860号の請求項5及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5980860号の請求項1ないし7に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は,平成19年3月15日に出願した特願2007-67362号の一部を平成21年9月14日に新たな特許出願とした特願2009-211855号の一部を,平成22年6月4日に新たな特許出願とした特願2010-129024号の一部を,平成23年8月25日に新たな特許出願とした特願2011-183773号の一部を,平成26年7月1日に新たな特許出願とした特願2014-136034号の一部を平成26年8月29日に新たな特許出願としたものであって,平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ,同年8月31日に特許掲載公報が発行された。
その後,請求項1ないし7に対し,平成29年2月24日に,特許異議申立人 アクシス国際特許業務法人により特許異議の申立てがされ,当審において平成30年3月30日付けで取消理由が通知され,同年5月31日付けで意見書とともに訂正請求書が提出され,これに対し異議申立人からは意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成30年5月31日にされた訂正請求(以下「本件訂正請求」または「本件訂正」という。)は,明細書及び特許請求の範囲を,訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであって,以下の訂正事項1?7からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において,
「発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,
前記発光装置は,基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,
前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,
前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,
前記基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,
前記基板は,該基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ,
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記基板上面に形成され,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,
前記外部引き出し配線パターンは前記基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とするLEDランプ。」
と記載されているのを,
「発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,
前記発光装置は,絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,
前記半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり,
前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,
前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,
前記絶縁基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,
前記絶縁基板は,該絶縁基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ,
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記基板上面に形成され,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,
前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とするLEDランプ。」
に訂正する(請求項1の記載を直接または間接に引用する請求項2?4,6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6において,
「前記絶縁基板が白色のセラミック基板であることを特徴とする請求項5に記載のLEDランプ。」
と記載されているのを,
「前記絶縁基板が白色のセラミック基板であることを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(5)訂正事項5
明細書の段落【0009】において,
「本発明は,発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,前記発光装置は,基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,前記半導体発光素子は,前記基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり,前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,前記基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,前記基板は,該基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部を挟んで対向して設けられ,前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記基板上面に形成された外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,前記外部引き出し配線パターンは前記基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とする。」
と記載されているのを,
「本発明は,発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,前記発光装置は,絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,前記半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり,前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,前記絶縁基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,前記絶縁基板は,該絶縁基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ,前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記絶縁基板上面に形成され,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とする。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0013】において,
「本発明のLEDランプにおいて,前記基板が絶縁基板であることが好ましく,白色のセラミック基板であることがより好ましい。」
と記載されているのを,
「本発明のLEDランプにおいて,前記絶縁基板は白色のセラミック基板であることが好ましい。」
に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0028】において,
「本発明の発光装置1における絶縁基板3は,少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されていればよく,特に制限されるものではないが,熱膨張が小さく,熱伝導性が高く,かつ光反射率が高いことから,白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで,「白色」とは,物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし,100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで,発光素子5からの出射光のうち,特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ,発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに,高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに,発光素子5の信頼性を向上できるとともに,封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には,発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき,蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに,上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで,基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため,銀マイグレーションの心配がなく,さらに銀が硫化してしまう問題もない。」
と記載されているのを,
「本発明の発光装置1における絶縁基板3は,絶縁性を有する材料で形成されていればよく,特に制限されるものではないが,熱膨張が小さく,熱伝導性が高く,かつ光反射率が高いことから,白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで,「白色」とは,物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし,100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで,発光素子5からの出射光のうち,特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ,発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに,高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに,発光素子5の信頼性を向上できるとともに,封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には,発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき,蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに,上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで,基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため,銀マイグレーションの心配がなく,さらに銀が硫化してしまう問題もない。」
と訂正する。

2 当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は,訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「基板」を「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」とし,構成を付加して限定し,これに伴い,以降,訂正前の請求項1に記載された「基板」を「絶縁基板」とし,また,訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載される」について,「前記半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり」として,「半導体発光素子」とともにその搭載態様を限定する訂正であるから,訂正事項1は,特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項1は,本件特許の願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の請求項5及び請求項7,並びに段落【0016】,【0017】,【0028】及び【0057】の記載から導き出されるものである。
よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項1は,上記アのとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は,訂正前の請求項5を削除する訂正であるから,特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項2は,訂正前の請求項5を削除する訂正であるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合することは明らかである。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項2は,上記アのとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項2は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は,訂正前の請求項6が訂正前の請求項5を引用していたところ,上記訂正事項1及び訂正事項2により,訂正前の請求項5が削除されるとともに,訂正前の請求項5に記載されていた事項が訂正後の請求項1に加入されたことに伴い,訂正後の請求項6においては,訂正後の請求項1を引用することとするものであるから,当該訂正事項は,特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は,上記アのとおり,訂正前の請求項5に記載されていた事項が訂正後の請求項1に加入されたことに伴い,訂正後の請求項6においては,訂正後の請求項1を引用することとするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項3は,上記アのとおり,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は,訂正前の請求項7を削除する訂正であるから,特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項4は,訂正前の請求項7を削除する訂正であるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合することは明らかである。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項4は,上記アのとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項4は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は,訂正事項1?4による訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるためのものであるから,特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
上記アのとおり,訂正事項5は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合することは明らかである。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アのとおり,訂正事項5は,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
エ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項5は,訂正事項1?4に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるものであり,これは一群の請求項1?7に関係する請求であるから,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は,訂正事項1?4による訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるためのものであるから,特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
上記アのとおり,訂正事項6は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合することは明らかである。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アのとおり,訂正事項6は,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項6は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
エ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項6は,訂正事項1?4に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるものであり,これは一群の請求項1?7に関係する請求であるから,訂正事項6は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は,明細書の段落【0028】において,訂正前の「本発明の発光装置1における絶縁基板3は,少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されていればよく,」を「本発明の発光装置1における絶縁基板3は,絶縁性を有する材料で形成されていればよく,」と訂正するものである。
よって,訂正事項1?4による訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるためのものであるから,特許法第120条の5第2項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
上記アのとおり,訂正事項7は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合することは明らかである。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アのとおり,訂正事項7は,明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項7は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。
エ 明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項7は,訂正事項1?4に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と明細書の記載とを整合させるものであり,これは一群の請求項1?7に関係する請求であるから,訂正事項7は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項の規定に適合する。

(8)一群の請求項について
訂正前の請求項1?7は一群の請求項であるところ,訂正事項1?7に係る訂正は,前記一群の請求項ごとに請求されたものである。よって,本件訂正請求は特許法120条の5第4項の規定に適合する。

(9)むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正請求書に添付された訂正明細書,特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1?7〕について訂正を認める。

第3 訂正発明
上記のとおり,本件訂正が認められたので,本件特許の訂正後の請求項1?7に係る発明は,請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,
前記発光装置は,絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,

前記半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり,
前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,
前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,
前記絶縁基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,
前記絶縁基板は,該絶縁基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ,
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記基板上面に形成され,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,
前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とするLEDランプ。
【請求項2】
前記アノード用配線パターン,前記カソード用配線パターン,前記外部引き出し配線パターンの厚みは,前記半導体発光素子の厚みより薄いことを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。
【請求項3】
前記配線パターンは,前記アノード用,カソード用以外の配線パターンをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のLEDランプ。
【請求項4】
前記配線パターンが,前記半導体発光素子との間の電気的接続の位置決め用のパターン,または,前記半導体発光素子の搭載位置の目安用のパターンをさらに有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のLEDランプ。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記絶縁基板が白色のセラミック基板であることを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。
【請求項7】(削除)」

(以下,上記請求項1?7に係る発明を,順に「訂正発明1」?「訂正発明7」といい,「訂正発明1」?「訂正発明7」を合わせて「訂正発明」という。また,本件特許の請求項1?7に係る発明を,以下それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明7」といい,「本件特許発明1」?「本件特許発明7」を合わせて「本件特許発明」という。)

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して,平成30年3月30日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。

1 理由1-1(第29条第1項第3項)及び理由2-1(第29条第2項)
本件特許発明1は,「基板」が,「絶縁基板」又は「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」に特定されていないが,本件特許に係る出願の原出願の明細書には,「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」以外の「基板」を備える発明は記載されていない。
よって,本件本件特許に係る出願は分割要件を満たしておらず,本件特許出願は,現実の出願日である平成26年8月29日に出願されたものというべきであるから,本件特許発明1?7は,刊行物13に記載された発明であり,特許法第29条第1項第3項に該当するか,仮にそうでないとしても,刊行物13に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
刊行物13: 特開2008-227412号公報

2 理由1-2(第29条第1項第3項)及び理由2-2(第29条第2項)
本件特許発明1?6は,甲第1号証に記載された発明であり,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証 :特開2005-109434号公報

3 理由2-3(第29条第2項)
本件特許発明1?7は,甲第1?12号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第1号証 :特開2005-109434号公報 (再掲)
甲第2号証 :特開2002-49326号公報
甲第3号証 :特開2006-295085号公報
甲第4号証 :「よくわかるプリント基板のできるまで」,
日刊工業新聞社,2004年1月30日発行,6?15頁
甲第5号証 :トランジスタ技術 2003年6月号123?124頁
甲第6号証 :DesignWaveMagazine2003April 62?63頁
甲第7号証 :JIS工業用語大辞典(第5版),
2001年3月30日発行,2341頁
甲第8号証 :特開平10-163585号公報
甲第9号証 :特開2001-44639号公報
甲第10号証:特開2002-9349号公報
甲第11号証:特開2003-8083号公報
甲第12号証:特開2005-26619号公報

4 理由3(第36条第4項第1号(委任省令要件))
本件特許明細書には,「発明が解決しようとする課題」として,「充分な電気的絶縁が達成でき,かつ,製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供すること」と記載されている。
一方,本件特許発明1が備える「基板」は,「絶縁基板(又は『少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板』」とは特定されておらず,また,本件特許発明1が備える「複数の発光素子」が,「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」との特定もない。
しかしながら,基板が,「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」以外の基板,例えば,「金属板からなる基板」である場合に,どのようにして,「充分な電気的絶縁が達成」できるのか理解することができず,また,「複数の発光素子」が,「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」以外である場合に,どのようにして,「充分な電気的絶縁が達成でき,かつ,製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供することができる」のか理解することができない。
よって,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からは,本件特許発明1,及び本件特許発明1に従属する本件特許発明2?7によって,どのように前記課題が解決されるのかを理解することができない。
したがって,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は,経済産業省令で定めるところにより,当業者が本件特許発明1?7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

5 理由4(第36条第6項第1号)
前記4のとおり,前記「発明の課題」のうち,「充分な電気的絶縁」を達成するためには,請求項1に記載された発明特定事項に加え,「基板」が「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であること,及び「複数の発光素子」が「前記基板に直に搭載された複数の発光素子」であることが,ともに必要と認められるところ,本件の請求項1,及び請求項1を引用する請求項2?7には,「基板」が,「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であって,かつ,「複数の発光素子」が,「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」であることが記載されていないから,本件の請求項1,及び請求項1を引用する請求項2?7の記載は,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されていないため,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものとなっている。
したがって,本件特許発明1?7は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。

なお,上記「2 理由1-2(第29条第1項第3項)及び理由2-2(第29条第2項)」及び「3 理由2-3(第29条第2項)」が,異議申立書に記載された理由である。

第5 取消理由についての判断
1 理由1-1および理由2-1について
上記「第3 訂正発明」のとおり,本件訂正請求により,訂正発明1は「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」を備えることが特定されたから,上記「第4 取消理由の概要」1に記載した,分割要件を満たしていないとの事由は解消された。
また,本件特許に係る出願の原出願およびそれより先代の各原出願である,特願2014-136034号,特願2011-183773号,特願2010-129024号,及び特願2009-211855号は,それぞれ,訂正審判2017-390056号,訂正審判2017-390055号,訂正審判2017-390054号,訂正審判2017-390053号,において訂正することを認める審決が確定され,分割出願の要件を満たすものとなったので,本件特許出願は,最初の特許出願の時,すなわち,平成19年3月15日にしたものとみなすことができる。
よって,平成20年9月25日に公開された刊行物13は,本件特許出願前に頒布された刊行物に該当しないから,訂正発明1ないし4及び6は,理由1-1および理由2-1によっては,特許法第29条第1項第3項に規定する発明とはいえず,また,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものともいえない。

2 理由1-2及び理由2-2について(訂正発明1に対して)
(1)甲1発明
ア 甲第1号証(特開2005-109434号公報)には以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体素子を利用した半導体装置およびその製造方法に関わり,特に発光効率が高く,高輝度に発光可能な信頼性の高い発光装置,およびその製造方法を提供することを目的とする。」

(イ)「【背景技術】
【0002】
同一面側に正負両電極が設けられている半導体素子チップの電極形成面を支持基板の導体配線に対向させ,導電性部材を介して接合し,半導体素子と支持基板とを電気的および機械的に接続する実装方法がある。このような実装方法を本明細書中では「フリップチップ実装」と呼ぶこととする。
【0003】
半導体素子は,通常,超音波を利用して支持基板の導体配線にフリップチップ実装される。…(略)…
【0004】
このように,半導体発光素子がフリップチップ実装された発光装置の一例として,特開2003-8083号公報に記載の発光装置が挙げられる。特許文献1に開示される半導体発光素子は,正負一対の電極を有する面の大部分を占める正電極上に多数のバンプが配列され,同一の支持基板(以下,「サブマウント」と呼ぶことがある。)の導体配線に複数の半導体発光素子がフリップチップ実装されている。これにより,発光輝度の高い発光装置とすることができる。
【0005】
また,従来のフリップチップ実装において,半導体素子を支持基板と接合した後,半導体素子と支持基板との間に生じた隙間を埋めるように,その隙間に樹脂(以下,「アンダフィル樹脂」と呼ぶ。)が注入される(例えば,特開2001-244299号公報参照。)。これにより,半導体装置の信頼性を向上させることができる。」

(ウ)「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,半導体素子を大型化したとき,あるいは上述のように同一の支持基板に多数の半導体素子を実装したとき,発光装置の外部へ効率よく放熱を行うことができず,発光装置の高輝度化に限界がある。」
…(略)…
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したような問題を解決するための本発明は,同一面側に正負一対の電極を有する半導体素子と,該半導体素子の各電極が対向され導電部材を介して接合される導体配線を有する支持基板と,を有する半導体装置において,上記導体配線は,上記支持基板の主面に垂直な方向から見て,上記半導体素子の電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する第一の領域と,該第一の領域の少なくとも一部を包囲し上記半導体素子の他方の電極に接合する導電部材を有する第二の領域とを有することを特徴とする。これにより,半導体素子からの放熱を効率よく行うことができ,半導体装置の信頼性および発光装置の発光輝度を向上させることができる。

(エ)「【発明の効果】
【0023】
上述したように,本発明は,同一の支持基板にフリップチップ実装された複数の半導体素子からの放熱を効率よく行うことができ,従来と比較して,発光装置の高輝度化を実現することができる。また,本発明は,硬化状態で柔らかく弾力性を有する部材を,発光素子と支持基板との間に有しており,放熱効果が向上するだけでなく,光取り出し効率が向上する。また,硬化状態で柔らかく弾力性を有する部材を樹脂層として,予め支持基板に成型した後,LEDチップの電極を支持基板の導体配線に接合することにより,従来のように接合した後に樹脂層を形成する場合と比較して作業性が向上する。」

(オ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
同一面側に正負一対の電極を有する半導体素子と,該電極が導電部材を介して対向される導体配線を有する支持基板と,を有する半導体装置において,本発明者は種々の検討の結果,支持基板の主面に垂直な方向から見て,導体配線が,半導体素子の電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する第一の領域と,該第一の領域の少なくとも一部を包囲し他方の電極に接合する導電部材を有する第二の領域とを有することにより上記課題を解決するに至った。
…(略)…
【0032】
[半導体素子]
本発明における半導体素子は,発光素子,受光素子,およびそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子,あるいはそれらを組み合わせたものとすることができる。ここでは特に,発光素子として,LEDチップについて説明する。
…(略)…
【0036】
p型半導体層には,発光素子に投入された電流をp型半導体層の全面に広げるための拡散電極が設けられる。さらに,拡散電極およびn型半導体層には,バンプや導電性ワイヤのような導電部材と接続するp側台座電極およびn側台座電極がそれぞれ設けられる。本形態における導体配線は,支持基板に対して,正負一対の配線パターンが絶縁分離されて互いに一方を包囲するように形成される。
…(略)…
【0046】
[支持基板]
本形態における支持基板とは,少なくとも発光素子の電極に対向する面に導体配線が施され,フリップチップ実装された発光素子を固定・支持するための部材である。さらに,支持基板をリード電極に導通させるときには,発光素子に対向する面からリード電極に対向する面にかけて導電部材により導体配線が施される。本形態における導体配線は,支持基板に対して,正負一対の配線パターンが絶縁分離されて互いに一方を包囲するように形成される。特に,本形態における導体配線は,支持基板の主面に垂直な方向(即ち,発光装置の発光観測面方向)から見て,発光素子の電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する第一の領域と,該第一の領域の少なくとも一部を包囲し発光素子の他方の電極に接合する導電部材を有する第二の領域とを有することを特徴とする。例えば,本形態における導体配線は,発光装置の発光観測面方向から見て,発光素子の正電極に接合するバンプを有する正の極性領域と,該正の極性領域の少なくとも一部を包囲し発光素子の負電極に接合するバンプを有する負の極性領域とを有し,正の極性領域内でバンプが載置されている領域は,負の極性領域内で導電部材が載置されている領域より広い。さらに,正の極性領域内におけるバンプの数は,負の極性領域内におけるバンプの数より多い。
【0047】
導体配線の材料とする金属は,Auや銀白色の金属であるAlなどとされる。反射率の高い銀白色の金属とすることにより,発光素子からの光が支持基板と反対側の方向に反射され,発光装置の光取り出し効率が向上するため好ましい。ここで,導体配線の材料とする金属は,金属相互間の接着性の良さ,いわゆる濡れ性等を考慮して選択されることが好ましい。例えば,Auバンプを介して,Auを含むLEDチップの電極とを超音波ダイボンドにより接合するとき,導体配線は,AuまたはAuを含む合金とする。
【0048】
支持基板の材料は,発光素子と熱膨張係数がほぼ等しいもの,例えば窒化物半導体発光素子に対して窒化アルミニウムが好ましい。このような材料を使用することにより,支持基板と発光素子との間に発生する熱応力の影響を緩和することができる。あるいは,支持基板の材料は,静電保護素子の機能を備えさせることもでき安価でもあるシリコンが好ましい。
【0049】
保護素子の機能を備えるサブマウントの一例として、例えば、Siダイオード素子のn型シリコン基板内に選択的に不純物イオンの注入を行うことによりp型半導体領域を形成し、逆方向ブレークダウン電圧が所定の電圧に設定する。このSiダイオード素子のp型半導体領域及びn型シリコン基板(n型半導体領域)の上に、Alよりなるp電極及びn電極が形成され、p電極の一部がボンディングパッドとなり、n電極の一部がボンディングパッドとなる。なお、n電極の一部をボンディングパッドとせずに、n型シリコン基板の下面の上には、パッケージ等の支持基板のリード電極と電気的に接続するためのAuよりなるn電極を形成してもよい。これにより、n電極側はワイヤを用いることなく電気的接続を行うことができる。
【0050】
保護素子の機能を備えるサブマウントの他の一例として、Siダイオード素子であり、複数のn型半導体領域およびp型半導体領域が一方の主面方向に形成されているサブマウントが挙げられる。さらに、銀白色の金属を材料(例えば、Al、Ag)とする反射膜が上記複数の半導体領域に電気的に接続するように形成される。また、上記反射膜の一部の領域は、金属材料が蒸着あるいはスパッタリングされることにより、電極とすることができる。その電極は、バンプが載置され、あるいは発光素子の電極と直接接合することができる。また、p型半導体領域および反射膜が形成されていないn型半導体領域の一部は、例えば、SiO_(2)のような絶縁膜により被覆されている。また、サブマウントは、裏面に、金属材料が蒸着あるいはスパッタリングされた電極を有することができる。
【0051】
半導体発光素子は、上記保護素子の機能を備えるサブマウントに対してフリップチップ実装される。すなわち、サブマウントのn型半導体領域の電極にAuバンプを載置した後、半導体発光素子のp側台座電極およびn側台座電極が、Auバンプを介して対向される。次に、超音波、熱および荷重を加えることにより、半導体発光素子とサブマウント部材とが電気的および機械的に接続される。サブマウント部材のSiダイオード素子と半導体発光素子の回路構成は、2つのダイオードの直列接続による双方向ダイオードと、半導体発光素子との並列接続となる。これにより、半導体発光素子は、順方向・逆方向の過電圧から保護され、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0052】
さらに、支持基板に対し、発光素子の実装に悪影響を与えない箇所に、孔や凹凸形状を設けることが好ましい。このような形状を設けることにより、半導体素子からの熱は支持から効率よく放熱することができる。支持基板の厚さ方向に少なくとも一つ以上の貫通孔を設け、貫通孔の内壁面に導体配線が延材するように形成すると、放熱性がさらに向上するため好ましい。なお、本形態における支持基板の導体配線は、導電性ワイヤを介してリード電極と接続されるが、一方の主面から他方の主面に施された導体配線とリード電極とを接合部材により接続する構成としても構わない。…(略)…
【0055】
[樹脂層]
(第一の形態における樹脂層)
…(略)…
【0061】
(第二の形態における樹脂層)
同一の支持基板に対して複数の発光素子がフリップチップ実装されるとき,発光素子と,その発光素子に隣接する別の発光素子との間に間隙が生じる。仮に,それらの発光素子を波長変換部材にて被覆しようとすると,波長変換部材は,隙間にも入り込み,隙間に存在する蛍光体の量が他の発光素子の周辺と比較して相対的に多くなる。したがって,発光装置は,全方位に渡って色度が均一な発光を観測することができなくなる。
【0062】
そこで,本形態においては,上記隙間を封止する透光性の樹脂層を形成した後,複数の発光素子の光出射面側を被覆するように波長変換部材を均一な厚みで形成する。これにより,発光素子からの光が照射される波長変換部材自体の厚み(実際には,含有される蛍光体の量)は,発光観測面側において,ほぼ等しくなる。したがって,本形態の発光装置は,発光観測方位によって色度が均一な光学特性に優れた発光装置とすることができる。以下,図面を参照しながら,第二の形態における樹脂層について詳細に説明する。
【0063】
図10および図11は,本形態にかかる発光装置の一実施例を示す模式的な断面図である。本形態において,フリップチップ実装された発光素子と発光素子との間に生じた間隙は,透光性の樹脂層104aにより封止される。さらに,それらの発光素子の光出射面(例えば,LEDチップの透光性基板面)および樹脂層の上面は,該発光素子からの光の少なくとも一部を吸収し異なる波長を有する光を発する蛍光体を含有する波長変換部材115により被覆されている。
【0064】
本形態における樹脂層104aは,樹脂が発光素子とその発光素子に隣接する別の発光素子との間隙に充填され,硬化されることにより形成されることが好ましい。例えば,樹脂の充填方法は,孔版印刷,スクリーン印刷,ポッティングあるいはメタルマスク印刷法などによることができる。あるいは,このような形成方法に限定されることなく,上記隙間に嵌合するように別工程で成型された透光性の部材を樹脂層104aの代わりに配置させてもよい。あるいは,上述したように,フリップチップ実装前に形成する樹脂層104(すなわち,第一の形態における樹脂層)を上記隙間が生じる箇所にも形成し,本形態における樹脂層104aとしても構わない。
…(略)…
【0066】
本形態における樹脂層104aは,図10に示されるように,上記発光素子の少なくとも側面を被覆することが好ましい。このように側面を被覆することにより,波長変換部材115が,その形成工程において発光素子の側面側に入り込むことを防ぐことができる。また,樹脂層104aの上面は,発光素子の上面(例えば,LEDチップの透光性基板面)とほぼ同一平面とすることが好ましい。
【0067】
さらに,透光性の樹脂層は,上記隙間を封止するだけでなく,さらに発光素子の光出射面となる主面側を均一な厚みで被覆しても構わない。図11は,本形態にかかる発光装置の一実施例を示す模式的な断面図である。図11に示されるように,例えば,発光素子と発光素子の隙間を樹脂層104aにて封止し,それらの発光素子の光出射面,例えばLEDチップの透光性基板面を被覆する樹脂層104bを形成した後,樹脂層104bに対して波長変換部材115を均一な厚みで積層させる。これにより,発光観測方位によって色度が均一な光学特性に優れた発光装置とすることができる。また,発光素子と蛍光体とを樹脂層を介して離間させることにより,発熱による蛍光体の劣化およびその発光輝度低下を抑制し,発光効率の高い発光装置とすることができる。
【0068】
[封止部材]
本発明において,封止部材は,半導体素子および樹脂層を封止し,半導体素子と樹脂層との隙間を埋め,さらに半導体素子などを外部環境からの外力,塵芥や水分などから保護するために設けることができる。封止部材は,形状を種々変化させることによって発光素子から放出される光の指向特性を種々選択することができる。即ち,封止部材の形状を凸レンズ形状,凹レンズ形状とすることによってレンズ効果をもたすことができる。そのため,所望に応じて,ドーム型,発光観測面側から見て楕円状,立方体,三角柱など種々の形状を選択することができる。
…(略)…」

(カ)「【実施例1】
【0125】
図1は,本実施例にかかる半導体装置について,図3のX-Xにおける模式的な断面図である。図2は,本実施例にかかる支持基板に導体配線を施した状態を示す模式的な上面図である。図3は,本実施例にかかる支持基板に発光素子をフリップチップボンディングした状態を示す模式的な上面図である。なお,図3は発光素子を発光観測面側から見た状態を示しており,p側台座電極106,n側台座電極107およびバンプ105が透光性基板から透けて見えている。さらに,図4は,実施例における発光装置の回路構成を模式的に示す。
【0126】
本実施例における発光装置100は,2つの半導体発光素子101が同一のサブマウント103にバンプ105により,フリップチップ実装されてなる。本実施例における発光素子は,活性層として単色性発光ピークが可視光である475nmのIn_(0.2)Ga_(0.8)N半導体を有する窒化物半導体素子を用いる。より詳細に説明すると,発光素子であるLEDチップは,洗浄させたサファイア基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス,TMI(トリメチルインジウム)ガス,窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し,MOCVD法で窒化物半導体を成膜させることにより形成させることができる。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgを切り替えることによってn型窒化物半導体やp型窒化物半導体となる層を形成させる。
…(略)…
【0129】
図1に示すように,本発明の一実施例に使用される支持基板103は,窒化アルミニウムのプレートにAuを材料とする導体配線108,109が施され,バンプ105を介してp側台座電極106およびn側台座電極107とそれぞれ対向する正負一対の電極が絶縁分離されている。ここで,本実施例における導体配線は,正負一対の電極が互いに一部を包囲するように櫛状に形成されている。このような形状とすることにより,フリップチップ実装された半導体発光素子からの放熱性を向上させることができる。さらに,LEDチップのp側台座電極106に対向する領域の面積は,n側台座電極107に対向する領域の面積より大きい。また,本実施例における発光素子は,図4の回路図に示されるように二つの発光ダイオードが並列接続とされたものである。このように並列接続とすることにより,直列接続とした場合と比較して,導体配線が簡略化され,放熱性を向上させることができる。
【0130】
また,本実施例において樹脂層104とされるシリコーン樹脂は,貫通孔が設けられ,貫通孔の底面に導体配線が露出されている。そして,本実施例にかかる発光装置はLEDチップの正負一対の両電極がフリップチップ実装により,Auバンプを介してAuを材料とする導体配線とフリップチップボンディングされてなる。以下,本実施例における発光装置の製造方法を説明する。
【0131】
(工程1)
窒化アルミニウムを材料とするウエハの所定の位置に,導体配線となるAu層をメッキにより形成する。本実施例における導体配線は,図2に示されるように,LEDチップの正電極が対向する正の導体配線,およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され,互いに一部を包囲するように形成されている。例えば,図2に示される支持基板は,上述したLEDチップが2つ隣接されてフリップチップ実装される支持基板である。支持基板に配される正(+)極側の導体配線は,外部電極(図示せず)の正極側に接続される領域から,上記複数のLEDチップのうち一方のLEDチップ(A)のp側台座電極に対向する位置を経由して他方のLEDチップ(B)のp側台座電極に対向する位置まで延伸している。同様に,支持基板に配される負(-)極側の導体配線は,LEDチップ(A)およびLEDチップ(B)の一方のn側台座電極に対向する領域から,外部電極(図示せず)の負極側に接続される領域,およびLEDチップ(B)の他方のn側台座電極に対向する領域を経由して,LEDチップ(A)の他方のn側台座電極に対向する領域まで延伸している。…(略)…
【0136】
(工程5)
最後に,所望の数のLEDチップが含まれるように,支持基板をカットし,パッケージに搭載して導電性ワイヤを介して外部電極と接続させ,発光装置とする。なお,カット後の支持基板の形状は,矩形の他,如何なる形状でも構わない。」

(キ)「【実施例5】
【0143】
図12は,本実施例における発光装置に利用される発光素子の上面図であり,図13は,サブマウントの上面図である。また,図14は,サブマウントに発光素子がフリップチップ実装された本実施例にかかる発光装置の上面図である。
【0144】
本実施例にかかる発光装置は,上面から見て六角形のサブマウントに対し,四つの発光素子チップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装されてなる。以下,本実施例の発光装置における各構成部材について詳述する。
…(略)…
【0146】
本実施例におけるサブマウントは、Siダイオード素子であり、複数のp型半導体領域およびn型半導体領域が一方の主面方向に形成されている。さらに、n型半導体領域の一部は、反射膜兼電極として、Alが5000Åの厚みで蒸着され、その上にさらに電極と
してTi/Auが、それぞれ3000Å/7000Åの厚みで蒸着されている。また、反射膜が形成されている領域を除き、p型半導体領域およびn型半導体領域は、SiO_(2)からなる絶縁膜により被覆されている。また、サブマウントは、裏面に、Al/Ti/Agが順に蒸着された電極を有する。
【0147】
発光素子がフリップチップ実装される側から本実施例にかかるサブマウントを見ると,反射膜兼電極(Al)の導電性パターンが正負一対配され,その上に,上記電極(Ti/Au)が楕円状に複数形成されている。本実施例において,楕円状の電極の個数は,一つの発光素子について,正電極の接合用に12個,その12個を挟むように負電極の接合用に6個それぞれ形成される。また,正負の導電性パターンは,上述の実施例1と同様,サブマウントの主面に垂直な方向から見て,互いにその一部を包囲するように対向して延伸する部分を有し,櫛状あるいは鍵状に形成されている。すなわち,サブマウントに配される導電性パターンは,発光素子201と対向する領域において,発光素子の正電極が対向する導体配線204aが,発光素子の負電極が対向する導体配線204bの間となるように配されている。また,発光素子の正電極が対向する導電性パターンの面積は,発光素子の負電極が対向する導電性パターンの面積より広い。また,正負の導電パターンが絶縁分離され発光素子が対向する領域において,それら正負の導電パターンの外縁は,凹凸状あるいは波状になっている。」


ここで,図11,13及び14は以下のものである。


イ 上記段落【0066】の記載とともに図11を参照すると,図10と同様に,図11に示されたものにおいても,樹脂層104は,発光素子101が搭載される配線パターンの部分のみならず,当該搭載される配線パターンの部分の周囲まで封止していることが見て取れる。

ウ 上記段落【0066】及び【0067】の記載とともに図11を参照すると,複数の発光素子101は,樹脂層104a及び樹脂層104bが一体となった樹脂層により封止され,また,段落【0129】の記載も参照すると,正極の導体配線108及び負極の導体配線109が支持基板103の上面に配置されていることがわかる。さらに,図11から,正極の導体配線108及び負極の導体配線109が一定の厚さを有するものの,発光素子101の厚みよりは薄いことが見て取れる。

エ 図13及び図14を参照すると,正極の導体配線204a及び負極の導体配線204bは,それぞれ発光素子を挟んで左右端に配置された,フリップチップ実装された発光素子により覆われない部分を有することが見て取れる。また,当該部分は,上記段落【0049】,【0050】及び【0052】の記載から,導電性ワイヤを介してリード電極と接続されるものといえる。さらに,当該「リード電極」は,段落【0136】に記載された「外部電極」と同じものといえる。

オ 従って,甲第1号証の段落【0061】?【0067】に記載の,[樹脂層]として,「第二の形態における樹脂層」を採用し,発光装置の樹脂層以外の具体的な構成として,段落【0143】?【0148】に記載の【実施例5】にかかる構成を採用したものについて,他の記載も参照すると,甲第1号証には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明」という。)。

「同一面側に正負一対の電極を有するLEDチップと,該LEDチップの正負各電極が対向され導電部材を介して接合される導体配線を有する支持基板と,を有し,同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装された発光装置において,
上記導体配線は,上記支持基板の主面に垂直な方向から見て,上記LEDチップの正負電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する正極の導体配線と,該正極の導体配線の少なくとも一部を包囲し上記半導体素子の他方の電極に接合する導電部材を有する負極の導体配線とを有することを特徴し,これにより,前記LEDチップからの放熱を効率よく行うことができ,前記LEDチップの信頼性および発光装置の発光輝度を向上させることができるものであり,
前記支持基板は,Siダイオード素子であり,
前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線はともに一定の厚さを有するものの,その厚さは,前記LEDチップの厚みよりも薄いものであり,
前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線は,それぞれ左右端に配置された,フリップチップ実装された前記LEDチップにより覆われない部分を有し,前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線は,導電性ワイヤを介してリード電極と接続されるものであり,
前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線が絶縁分離され前記LEDチップが対向する領域において,それら正極の導体配線及び負極の導体配線の外縁は,凹凸状あるいは波状になっており,
フリップチップ実装された複数の前記LEDチップは一体となった樹脂層により封止され,当該樹脂層は,前記LEDチップが搭載される前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線の部分のみならず,当該搭載される前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線の周囲まで封止するものであり,
前記LEDチップがフリップチップ実装された前記支持基板をパッケージに搭載して導電性ワイヤを介してリード電極と接続させ,発光装置とされたものである,
発光装置。」

(2)対比
訂正発明1と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「LEDチップ」は,訂正発明1の「半導体発光素子」に相当する。

イ 甲1発明の「LEDチップがフリップチップ実装された支持基板」は,訂正発明1の「発光装置」に相当する。

ウ 甲1発明の「LEDチップの正負各電極が対向され導電部材を介して接合される導体配線を有する支持基板と」「同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装された」ものと,訂正発明1の「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え」たものとは,「基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え」たものである点で一致する。

エ 甲1発明の「同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装された」ことと,訂正発明1の「前記半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであ」ることとは,「前記半導体発光素子は,前記基板上面に搭載された半導体LEDチップであ」る点で一致する。

オ 甲1発明の「上記導体配線は,上記支持基板の主面に垂直な方向から見て,上記LEDチップの正負電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する正極の導体配線と,該正極の導体配線の少なくとも一部を包囲し上記半導体素子の他方の電極に接合する導電部材を有する負極の導体配線とを有する」ことは,訂正発明1の「前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え」ることに相当する。

カ 甲1発明の「LEDチップの正負各電極が対向され導電部材を介して接合される導体配線を有する支持基板と,を有し,同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装された」ことは,甲1発明の「上記導体配線は,上記支持基板の主面に垂直な方向から見て,上記LEDチップの正負電極の何れか一方の電極に接合する導電部材を有する正極の導体配線と,該正極の導体配線の少なくとも一部を包囲し上記半導体素子の他方の電極に接合する導電部材を有する負極の導体配線とを有する」構成も併せると,訂正発明1の「前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され」たことに相当する。

キ 甲1発明の「同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装され」,「フリップチップ実装された複数の前記LEDチップは一体となった樹脂層により封止され,当該樹脂層は,前記LEDチップが搭載される前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線の部分のみならず,当該搭載される前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線の周囲まで封止するものであ」ることは,訂正発明1の「前記絶縁基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え」ることとは,「前記基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え」る点で一致する。

ク 甲1発明は,「前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線は,四つのLEDチップを挟んでそれぞれ左右端に配置された,フリップチップ実装された前記LEDチップにより覆われない部分を有」するところ,「前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線は,導電性ワイヤを介してリード電極と接続されるものである」ことから見て,前記「前記正極の導体配線及び前記負極の導体配線」の「それぞれ左右端に配置された,フリップチップ実装された前記LEDチップにより覆われない部分」は外部接続用のランドとなることは明らかであるから,甲1発明の当該構成と,訂正発明1の「前記絶縁基板は,該絶縁基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ」ることとは,「前記基板は,該基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられ」る点で一致する。

ケ 甲1発明の「LEDチップがフリップチップ実装された支持基板をパッケージに搭載して導電性ワイヤを介してリード電極と接続させ,発光装置とされたもの」は,訂正発明1の「発光装置を照明用光源として用いたLEDランプ」に相当する。

コ 従って,両者は以下の点で一致する。
「発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって,
前記発光装置は,基板上面に,複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに,配線パターンを備え,
前記半導体発光素子は,前記基板上面に搭載された半導体LEDチップであり,
前記配線パターンは,アノード用配線パターンと,カソード用配線パターンとを備え,
前記配線パターンの間に,それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され,
前記基板上面で,複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え,
前記基板は,該基板上面に,前記発光部の周囲全体を取り囲む,前記封止体で封止されていない領域を備えており,該領域は,外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し,
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは,前記発光部と重複しないように配置され,かつ,前記発光部を挟んで対向して設けられている,
LEDランプ。」

サ 一方両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
訂正発明1は,「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」を備えるのに対して,甲1発明は,「Siダイオード素子であ」る「支持基板」は備えるものの,「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」は備えない点。

《相違点2》
訂正発明1は,「前記半導体発光素子は,」「基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであ」る構成を備えるのに対して,甲1発明は「前記半導体発光素子は,前記基板上面に搭載された半導体LEDチップであ」る構成を備えるものの,「基板上面に直に搭載」されたものである構成までは備えない点。

《相違点3》
訂正発明1は,「前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに,前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに,前記基板上面に形成され,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており,前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し,前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており,前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていない」構成を備えるが,甲1発明は,そのような構成を備えることが明らかでない点。

(3)判断
まず,相違点2から検討する。
甲1発明は,「LEDチップの正負各電極が対向され導電部材を介して接合される導体配線を有する支持基板と,を有し,同一の支持基板に四つのLEDチップが2×2のマトリックス状に近接されてフリップチップ実装された」ものであるところ,前記2(1)ア(イ),(エ)に摘記した甲第1号証の段落【0002】?【0005】,【0023】を参照すると,甲第1号証に記載の技術的事項は,「フリップチップ実装」と呼ばれる「同一面側に正負両電極が設けられている半導体素子チップの電極形成面を支持基板の導体配線に対向させ,導電性部材を介して接合し,半導体素子と支持基板とを電気的および機械的に接続する実装方法」における課題を解決したものであることは明らかである。
また,前記2(1)ア(カ)に摘記した甲第1号証の段落【0129】に,「導体配線は,…。このような形状とすることにより,フリップチップ実装された半導体発光素子からの放熱性を向上させることができる。」と記載されているように,「導体配線」を,「LEDチップの正電極が対向する正の導体配線,およびLEDチップの負電極が対向する負の導体配線が絶縁分離され,互いに一部を包囲するように形成されて」いる形状とすることで,放熱性を向上させることができるものである。
そうすると,甲1発明の発光装置は,LEDチップの電極を導体配線に対して,導電性部材を介して接合するフリップチップ実装することが前提であるところ,導電性部材及び導体配線がいずれも一定の厚さを有することを考慮すると,甲1発明において,発光素子を支持基板上に直に搭載されたもの,すなわち,支持基板のうち導体配線が形成されないで支持基板自体が表出している部分にLEDチップを搭載することには阻害要因があるといえる。
よって,甲1発明において相違点2を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。

(4)小括
以上のとおり,少なくとも相違点2は実質的な相違点であって,甲1発明が備えない構成であるから,訂正発明1が甲1発明であるということはできない。また,相違点1及び3について検討するまでもなく,訂正発明1が,甲1発明及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(5)訂正発明2?4及び6について
訂正発明2?4及び6は,訂正発明1に係る構成を全て含むものであるから,訂正発明2?4及び6については,上記(3)と同様の理由によって,甲1発明であるとはいえず,また,甲1発明及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものともいえない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから,訂正発明1ないし4及び6は,理由1-2および理由2-2によっては,特許法第29条第1項第3項に該当するとはいえず,また,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものともいえない。

3 理由2-3について
(1)甲1発明
甲第1号証に記載された事項,及び甲1発明は,前記2(1)に記載されたとおりである。

(2)対比
訂正発明1と甲1発明との対比,ならびに両者の一致点及び相違点は,前記2(2)に記載したとおりである。

(3)判断
ア 前記2(3)で検討したとおり,甲1発明の発光装置は,LEDチップの電極を導体配線に対して接合するフリップチップ実装することが前提であるから,甲1発明において,発光素子を支持基板上に直に搭載されたもの,すなわち,支持基板のうち導体配線が形成されないで支持基板自体が表出している部分にLEDチップを搭載することには阻害要因があるといえる。

イ 特許異議申立人は,異議申立書の(4)(4-2)ウ g(30?31ページ)において,相違点2に係る構成を備えている本件特許発明7について,以下のとおり主張する。
「フリップチップボンディング実装するかワイヤボンディング実装するかは発光素子の電極位置により決せられる設計事項であり,フリップチップボンディング実装の発光素子にかえてワイヤボンディング実装の発光素子を採用することは当業者が適宜になし得る事項であるから,本件特許発明7は甲第1号証記載の発明と実質的な相違点を構成しないと思量する。
たとえば,甲第4号証の14頁には,半導体チップの接続方式として,「(a)ワイヤボンディング」と「(c)フリップチップ」があることが開示されているところ,当業者が甲第1号証に記載されたフリップチップボンディング実装にかえてワイヤボンディング実装をすることは適宜になし得る事項である。
このことは,甲第2号証の図1,図7,【0017】に,複数のLEDチップ2を絶縁基板I上の磁化の搭載する構成が開示されていることとによっても裏付けることができると思量する。」

ウ しかしながら,前記2(3)で検討したとおり,甲1発明の発光装置は,LEDチップの電極を導体配線に対して接合するフリップチップ実装することが前提であるから,ワイヤボンディングによる接続方式が周知ないし慣用の技術であるとしても,甲1発明において,LEDチップをワイヤボンディングにより接続して,相違点2に係る構成を備えるようにすることには阻害要因がある。

エ したがって,甲第2号証及び甲第4号証の記載を参照しても,甲1発明において相違点2を備えることは,当業者が容易になし得たこととはいえない。

(4)小括
よって,相違点1及び3について検討するまでもなく,訂正発明1が,甲1発明及び甲第2号証及び甲第4号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)訂正発明2?4及び6について
訂正発明2?4及び6は,訂正発明1に係る構成を全て含むものであるから,訂正発明2?4及び6については,上記(3)と同様の理由によって,甲1発明及び甲第2号証及び甲第4号証の記載に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)まとめ
以上のとおりであるから,訂正発明1ないし4及び6は,理由2-3によっては,特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

4 理由3について
前記第4「4 理由3(第36条第4項第1号(委任省令要件))」に記載したとおり,理由3は,本件特許発明1?7について,基板が,「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」以外の基板,例えば,「金属板からなる基板」である場合に,どのようにして,「充分な電気的絶縁が達成」できるのか理解することができず,また,「複数の発光素子」が,「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」以外である場合に,どのようにして,「充分な電気的絶縁が達成でき,かつ,製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供することができる」のか理解することができないことをその事由としていたところ,本件訂正により,訂正発明1,及び本件特許発明1に従属する訂正発明2ないし4及び6において,「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」であることが特定されたので,上記事由は解消された。
よって,訂正発明1ないし4及び6は,理由3によっては,特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)の規定に違反して特許されたものとはいえない。

5 理由4について
前記第4「5 理由4(第36条第6項第1号)」に記載したとおり,理由4は,本件訂正前の請求項1?7には,「基板」が,「少なくともその表面が絶縁性を有する材料で形成されている基板」であって,かつ,「複数の発光素子」が,「前記基板上に直に搭載された複数の発光素子」であることが記載されていないから,本件訂正前の請求項1?7の記載は,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されていないことをその事由としていたところ,本件訂正により,訂正後の請求項1,及び訂正後の請求項1に従属する訂正後の請求項2?4,6の記載において,「絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板」であること,及び「複数個の」「半導体発光素子は,前記絶縁基板上面に直に搭載された」ことが特定されたので,上記事由は解消された。
よって,訂正発明1ないし4及び6は,理由3によっては,特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものとはいえない。

第7 むすび
よって,取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載された理由によっては,訂正発明1ないし4及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に訂正発明1ないし4及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項5及び7は本件訂正により削除されたため,本件特許の請求項9に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
LEDランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置の光源としてLEDが多く用いられるようになってきている。LEDを使った照明装置の白色光を得る方法として、赤色LED、青色LEDおよび緑色LEDの三種類のLEDを用いる方法、青色LEDから発した励起光を変換して黄色光を発する蛍光体を用いる方法などがある。照明用光源としては、十分な輝度の白色光が要求されているために、LEDチップを複数個用いた照明装置が商品化されている。
【0003】
このような照明装置の一例として、たとえば特開2003-152225号公報(特許文献1)には、図14に模式的に示すような発光装置101が開示されている。図14に示す発光装置101は、アルミニウムで形成された金属板102上に凹状の素子格納部103が設けられるとともに、素子格納部間には、絶縁性のガラスエポキシ基板であって、その上に銅箔で形成された配線部105が設けられたプリント回路基板104が形成されてなる。そして、図14に示す例では、素子格納部103に載置(配置)された発光素子106と、前記プリント回路基板104上の配線部105とが、ボンディングワイヤ107を介して電気的に接続されてなる。さらに、この素子格納部103を、発光素子106およびボンディングワイヤ107ごと覆うようにして、樹脂封止体108にて封止されて構成される。特許文献1には、このような構成を備えることによって、放熱性を向上でき、かつ、発光ダイオードチップからの光を効率良く外部へ取り出すことができる発光装置を提供できると記載されている。
【0004】
しかしながら、図14に示すような発光装置101では、アルミニウムで形成された金属板102の直近に、銅箔で形成された配線部105が設けられたプリント回路基板104が配置されている(図中、金属板102と配線部105との間の間隔として、水平方向に関する直線距離dを示している)。このため、金属板102と配線部105との間に充分な電気的絶縁が達成されていないことが想定される。また、図14に示すような発光装置101では、ガラスエポキシ基板で形成されたプリント回路基板104を有するため、製造工程が複雑となり、安価な発光装置を提供できないという問題もある。
【0005】
また、たとえば特開2006-287020号公報(特許文献2)には、図15に模式的に示すようなLED部品201が開示されている。図15に示すLED部品201は、配線基板202に形成された貫通孔内に、LEDチップ204が搭載された金属またはセラミックで形成された放熱板203が接合されてなる。そして、図15に示す例では、LEDチップ204と、配線基板202に形成された配線パターン205とがボンディングワイヤWにより電気的に接続され、このLEDチップ204およびボンディングワイヤWが透明樹脂で形成された樹脂封止体206により埋設されてなる。特許文献2には、このような構成を備えることによって、LEDチップの発熱を効率的に放熱させることができ、生産性に優れた表面実装型のLED部品およびその製造方法を提供できると記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2には、LEDチップ204およびボンディングワイヤWを埋設するための透明樹脂を塗布する方法について詳細には記載されていない。また、特許文献2に開示された図15に示すLED部品201では、配線パターン205は配線基板202の側面と裏面の一部に形成されているため製造が困難であり、安価に製造することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-152225号公報
【特許文献2】特開2006-287020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって、前記発光装置は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に、複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに、配線パターンを備え、前記半導体発光素子は、前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり、前記配線パターンは、アノード用配線パターンと、カソード用配線パターンとを備え、前記配線パターンの間に、それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され、前記絶縁基板上面で、複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え、前記絶縁基板は、該絶縁基板上面に、前記発光部の周囲全体を取り囲む、前記封止体で封止されていない領域を備えており、該領域は、外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記発光部と重複しないように配置され、かつ、前記発光部を挟んで対向して設けられ、前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し、前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とする。
【0010】
本発明のLEDランプにおいて、前記アノード用配線パターン、前記カソード用配線パターン、前記外部引き出し配線パターンの厚みは、前記半導体発光素子の厚みより薄いことが好ましい。
【0011】
本発明のLEDランプにおいて、前記配線パターンは、前記アノード用、カソード用以外の配線パターンをさらに備えることが好ましい。
【0012】
本発明のLEDランプにおいて、前記配線パターンが、前記半導体発光素子との間の電気的接続の位置決め用のパターン、または、前記半導体発光素子の搭載位置の目安用のパターンをさらに有することが好ましい。
【0013】
本発明のLEDランプにおいて、前記絶縁基板は白色のセラミック基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充分な電気的絶縁が達成でき、かつ、製造工程が容易で安価に製造することができる発光装置およびその製造方法を提供することができる。また本発明の発光装置は、従来と比較して演色性が向上され、また色ズレが発生しにくいものであり、液晶ディスプレイ、照明用光源に好適に適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好ましい第1の例の発光装置1を模式的に示す上面図である。
【図2】図1に示す例の発光装置1における発光部2を模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す例の発光装置1の絶縁基板3を模式的に示す上面図である。
【図4】本発明の好ましい第2の例の発光装置21を模式的に示す上面図である。
【図5】本発明の好ましい第3の例の発光装置31を模式的に示す上面図である。
【図6】本発明の好ましい第4の例の発光装置41を模式的に示す上面図である。
【図7】本発明の好ましい第5の例の発光装置51を模式的に示す上面図である。
【図8】図1に示した例の発光装置1を蛍光灯型LEDランプ61に適用した場合を示す斜視図である。
【図9】図6に示した例の発光装置41を蛍光灯型LEDランプ71に適用した場合を示す斜視図である。
【図10】図6に示した例の発光装置41を電球型LEDランプ81に適用した場合を示す断面図である。
【図11】本発明の発光装置の製造方法の好ましい一例を段階的に示す図である。
【図12】本発明の発光装置の製造方法に用いられる、好ましい一例のシリコーンゴムシート91を模式的に示す図である。
【図13】CIEの色度座標を示すグラフである。
【図14】従来の典型的な発光装置101を模式的に示す断面図である。
【図15】従来の典型的なLED部品201を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の好ましい第1の例の発光装置1の上面図であり、図2は、図1に示す例の発光装置1における発光部2を模式的に示す断面図である。また図3は、図1に示す例の発光装置1の絶縁基板3を模式的に示す上面図である。本発明の発光装置1は、絶縁基板3上に、直線状の配線パターン4が平行に配置されて複数形成され、その配線パターン4間に複数個の発光素子5が配線パターン4に電気的に接続された状態で搭載され、封止体6で封止された発光部2を備えることを特徴とする。本発明の発光装置1では、特に、絶縁基板3に発光素子5を直に搭載することで隣接する発光素子間、および発光素子/電極間の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0017】
本発明の発光装置1によれば、絶縁基板3上に複数形成された直線状の配線パターン4間に、配線パターン4に電気的に接続された状態で複数個の発光素子5を搭載してなることで、従来の金属基板上に絶縁層を形成する場合とは異なり、充分な電気絶縁性が達成される。すなわち、上述したように、従来の図14に示した例のような構成では、発光素子が搭載されている金属板102の直近に配線部105が設けられたプリント回路基板104が配置されているため、充分な電気的絶縁を達成することが困難であった。このような構成において絶縁物で隔離することなく充分な電気的絶縁を達成するためには、金属板102と配線部105との間の水平方向に関する直線距離dを充分な長さだけ確保する必要がある。これに対し、本発明の発光装置1では、絶縁基板3上に配線パターン4を直接形成し、またこの絶縁基板3上に発光素子5を直に搭載し、配線パターン4とはボンディングワイヤWを用いて電気的に接続した状態とするため、上述した直線距離を考慮することなく発光装置を設計することができ、製造も容易となる。また本発明の発光装置1では、金属板上に絶縁層を形成する構成でないため、製造に際して金属板上に絶縁層を形成する工程が不要であり、この点からも製造は容易である。
【0018】
また、発光強度の強い発光素子を1つ備える発光装置を発光させた場合には、輝点状の発光となり、人の目には眩しく感じられるため用途が限定されてしまう。本発明の発光装置1では、複数個の発光素子5を備えるため、輝点状の発光が生じることなく均一な発光を実現することができ、広範な用途に適用することができる。本発明の発光装置1においてはまた、平行に複数形成された直線状の配線パターン4に沿って、複数個の発光素子5の搭載位置を自在に設定することができ、発光装置1の輝度調整、色度調整が容易にできる。またこの発光装置1では、発光素子の発熱が集中しないように、発光素子5の搭載位置を設定して放熱対策を講じることも容易にできる。さらに本発明の発光装置1では、発光素子の搭載個数も調整することができるため、所望の仕様に応じて全光束、消費電力を調整することができる。
【0019】
本発明の発光装置1において、発光素子5は、直線状の各配線パターンを挟んで、配線パターンに沿って直線状に複数個搭載されてなることが好ましい。本発明の発光装置における配線パターンの数は、特に制限されるものではないが、アノード用配線パターン、カソード用配線パターンがそれぞれ1本以上必要であるため、少なくとも2本以上の配線パターンが必要であり、2?4本の範囲内が好ましい。発光装置から電流350mAの時に全光束を300lmを得るためには、発光素子が36個必要となる。その場合、たとえば配線パターン4は、4つの配線パターン4a,4b,4c,4dを有するように形成され、配線パターン4a,4b間に12個、配線パターン4b,4c間に12個、配線パターン4c,4d間に12個の発光素子5がそれぞれ搭載される(図1?図3に示す例)。
【0020】
なお、図1?図3には、発光装置1が正方形状の上面形状を有するように実現された例を示しているが、この場合には、図3に示すように、直線状の配線パターン4は、発光装置1の上面形状である正方形状の対角線の1つに平行になるように形成されてなることが好ましい。このように配線パターン4が形成されてなることで、配線パターン4の長さおよび間隔を十分に確保することができ、また後述する発光装置の固定用穴、外部配線用穴などを形成できる領域も確保できるというような利点がある。なお、上述した発光装置の上面形状とは、絶縁基板3の基板面に平行な断面における形状を意味する。
【0021】
また本発明の発光装置1において、配線パターン4を挟んで搭載された各発光素子5は、側面同士が対向しないようにずらして配置されていることが好ましい。このように発光素子5が配置されていることで、輝度が均一となり、輝度ムラを低減できるという利点がある。
【0022】
また本発明の発光装置1においては、発光素子5は上面形状が長方形状の発光素子を用いることが好ましい。ここで、発光素子5の上面形状は、絶縁基板3上に搭載された状態での当該絶縁基板3の基板面に平行な上面における形状を指す。このような上面形状が長方形状の発光素子5として、具体的には、当該上面形状における短辺が200?300μmの範囲内であり、長辺が400?1000μmの範囲内である発光素子が例示される。本発明の発光装置1では、このような上面形状が長方形状の発光素子5を用いる場合には、当該発光素子5の上面形状の短辺に沿った方向が配線パターン4の長手方向と平行となるように搭載されていることが好ましい。通常、上面形状が長方形状の発光素子5においては、その上面の短辺側に電極パッドが形成されているため、上述のように発光素子5を搭載することで、ボンディングワイヤWを用いた発光素子5の電極パッドと配線パターン4との間の電気的接続を容易に行うことができ、ボンディングワイヤWの切断、ボンディングワイヤWの剥れなどの不良を防止することができる。また、このようにすることで、配線パターン4の長手方向に沿って所望の間隔、所望の数だけ発光素子5を搭載することにより所望の光が得られるよう容易に調整することができるという利点がある。
【0023】
上述のように本発明に用いる発光素子5は、長方形状の上面形状を有する発光素子を用いることが好ましいが、上述したような発光素子の上面の短辺側に通常電極パッドが形成されていることにより、ボンディングワイヤWを用いた配線パターン4との間の電気的接続が容易であり、ボンディングワイヤWの切断、剥れなどの不良の防止の効果が特に顕著であることから、長尺状の上面形状を有する発光素子を用いることがより好ましい。ここで、「長尺状」とは、上面形状における短辺の長さに対し長辺の長さが顕著に長い形状を指し、たとえば、長辺が480μmであり、短辺が240μmであるような上面形状を有する発光素子が例示される。長尺状の上面形状を有する発光素子を用いる場合には、電極パッドが短辺の端(短辺側)に設けられ、電極パッドが対向するように設けられた発光素子を用いることが好ましい。
【0024】
なお、本発明の発光装置1において、平行に配置された複数の直線状の配線パターン4と、複数個の発光素子5との間をどのように電気的に接続するかは特に制限されるものではなく、直線状の配線パターン4を挟んで搭載された発光素子5同士は、直列に電気的に接続されていてもよいし、並列に電気的に接続されていてもよい。直線状の配線パターン4を挟んで搭載された発光素子5同士が直列に電気的に接続され、直線状の配線パターンに沿って直線状に搭載された発光素子5同士が並列に電気的に接続されていてもよい。なお、発光素子と電極との距離は近い方が配線の抵抗による電圧降下が最も小さくなるので好ましい。さらに、配線パターンに沿って直線状に配列されて複数個搭載されている発光素子は全て電極と電気的に接続するのではなく、一部の発光素子は予備の発光素子として搭載しただけの状態にしておくことが好ましい。このようにすることで、発光素子を封止体で封止する前の検査工程(後述)で故障して発光しない発光素子があることが分かった場合に、予備の発光素子を電極と電気的に接続して所定の明るさとすることができる。
【0025】
本発明の発光装置はまた、配線パターンが、発光素子との間の電気的接続の位置決め用のパターン、または、発光素子の搭載位置の目安用のパターンをさらに有することが、好ましい。図3には、平行に形成された4つの直線状の配線パターン4に繋がって、パターン7が点在して形成された例を示している。このパターン7を、配線パターン4と発光素子5との間の電気的接続の位置決め、または、発光素子5の搭載位置の目安として用いることで、発光素子の搭載および配線パターンとの間の電気的接続が容易となり、さらに自動化装置を用いる場合の認識パターンとして用いることもできるという利点がある。
【0026】
本発明の発光装置1では、発光素子5と配線パターン4との間の直線距離が0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。ここで、この直線距離は、絶縁基板3の基板面に沿った方向における発光素子5と配線パターン4との間の直線距離を意味する。上記直線距離が0.1mm以上であることで、電気的絶縁性が確実に達成される。なお、ワイヤボンディングの際のタレ、ボンディングワイヤの切断防止の観点からは、発光素子5と配線パターン4との間の水平方向に沿った直線距離は、1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の発光装置1はまた、図2に示すように、配線パターン4の厚みは、発光素子の厚みよりも小さいことが好ましい。これによって、発光素子5から発光する光を、配線パターンによって外部に放出される光が遮蔽することが低減され、外部に効率よく光を放出できる発光装置1が実現できる。具体的には、配線パターン4の上記領域の厚みと発光素子5の厚みとの差は、0.005mm以上であることが好ましく、0.07mm以上であることがより好ましい。
【0028】
本発明の発光装置1における絶縁基板3は、絶縁性を有する材料で形成されていればよく、特に制限されるものではないが、熱膨張が小さく、熱伝導性が高く、かつ光反射率が高いことから、白色のセラミック基板であることが好ましい。ここで、「白色」とは、物体が全ての波長の可視光線をほぼ100%反射するような物体の色を指す(ただし、100%の反射率をもった理想的な白色の物体は存在しない。)。白色のセラミック基板を絶縁基板3として用いることで、発光素子5からの出射光のうち、特に下面方向への光を白色のセラミック基板にて反射することができ、発光素子5からの出射光をロスなく有効に活用できるとともに、高い放熱性および耐熱性が要求される駆動電流として大電流を供給する用途にも好適に適用することができる。さらに、発光素子5の信頼性を向上できるとともに、封止体6が蛍光体を含有する場合(後述)には、発光素子5からの熱による蛍光体の劣化を抑えることもでき、蛍光体により波長変換されて出光する光の色度ズレが生じにくい。またさらに、上述のように光反射率の高いセラミック基板を用いることで、基板材料および/または配線パターンの形成材料に光反射率90%以上の銀を用いる必要がないため、銀マイグレーションの心配がなく、さらに銀が硫化してしまう問題もない。
【0029】
白色のセラミック基板を用いる場合には、光反射率が90%以上と高いことから、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、フォルステライト、ステアタイト、低温焼結セラミックから選ばれるいずれか、または、これらの複合材料で形成されたセラミック基板が好ましい。上述した中でも、安価で、反射率が高く、加工しやすく、工業材料として広く使われている酸化アルミニウム(アルミナ)で形成された白色のセラミック基板が特に好ましい。
【0030】
本発明の発光装置1に用いられる発光素子5としては、当分野において通常用いられる発光素子を特に制限なく用いることができる。このような発光素子としては、たとえば、サファイヤ基板、ZnO(酸化亜鉛)基板、GaN基板、Si基板、SiC基板、スピネルなどの基板上に、窒化ガリウム系化合物半導体、ZnO(酸化亜鉛)系化合物半導体などの材料を成長させた青色系LED(発光ダイオード)チップ、InGaAlP系化合物半導体LEDチップ、AlGaAs系化合物半導体LEDチップなどの半導体発光素子を挙げることができる。中でも、絶縁性基板に片面2電極構造を容易に作製でき、結晶性のよい窒化物半導体を量産性よく形成できることから、サファイヤ基板上に窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた青色系LEDを発光素子として用いることが、好ましい。このような青色系LEDを発光素子として用いる場合には、当該半導体発光素子からの光で励起されて黄色系の光を発する蛍光体を封止体中に分散させることで、白色を得るように発光装置を実現することが好ましい(後述)。
【0031】
なお、本発明の発光装置に用いられる発光素子は、発光色は青色発光に限定されるものではなく、たとえば紫外線発光、緑色発光などの発光色の発光素子を用いても勿論よい。また、青色系LEDを発光素子として用い、この青色系LEDから発せられる光を蛍光体によって変換して白色を得る構成に換えて、蛍光体を用いずにたとえば赤、緑、青の三色のLEDチップをそれぞれ発光素子として用いて、白色などの照明に必要な色が得られるように発光装置を実現するようにしても勿論よい。
【0032】
本発明の発光装置1に用いられる発光素子5は、その形状については特に制限されるものではないが、上述したように、上面形状が長方形状であることが好ましく、長尺状であることがより好ましい。なお、本発明の発光装置1においては、一方の面にP側電極およびN側電極が形成された発光素子5を用いる必要がある。このような発光素子5を、P側電極およびN側電極が形成された面を上面として絶縁基板3上の配線パターン4の間に搭載し、配線パターン4との間を電気的に接続する。
【0033】
発光素子5と配線パターン4との電気的接続は、図2に示すように、P側電極およびN側電極をそれぞれ配線パターン4にボンディングワイヤWをボンディングすることで実現される。ボンディングワイヤWとしては、当分野において従来から広く用いられている適宜の金属細線を特に制限されることなく用いることができる。このような金属細線としては、たとえば金線、アルミニウム線、銅線、白金線などが挙げられるが、中でも腐食が少なく、耐湿性、耐環境性、密着性、電気伝導性、熱伝導性、伸び率が良好であり、ボールが出来やすいことから、金線をボンディングワイヤWとして用いることが好ましい。
【0034】
本発明の発光装置1は、上述したように配線パターン4の間に、配線パターン4に電気的に接続された状態で搭載された複数個の発光素子5を、電気的接続を行っているボンディングワイヤWごと、封止体6にて封止してなる。封止体6による封止は、直線状の配線パターン4に沿って両側に搭載された発光素子5を含むように直線状の封止体を複数形成するようにしてもよいし、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止するようにしてもよい。発光装置の輝度ムラを低減でき、封止体の厚みのバラツキを低減できる観点からは、図1?図3に示す例のように、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止することが好ましい。
【0035】
本発明の発光装置1における封止体6を形成するための材料(封止材料)としては、透光性を有する材料であれば特に制限されるものではなく、当分野において従来から広く知られた適宜の材料を用いて形成することができる。このような封止材料としては、たとえば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透光性樹脂材料、耐光性に優れたシリカゾル、硝子などの透光性無機材料が好適に用いられる。
【0036】
本発明における封止体6は、所望の光が得られるように調整可能であり、また、白色、昼白色、電球色などが容易に得られることから、蛍光体を含有してなることが好ましい。蛍光体としては、たとえば、Ce:YAG(セリウム賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体、Eu:BOSE(ユーロピウム賦活バリウム・ストロンチウム・オルソシリケート)蛍光体、Eu:SOSE(ユーロピウム賦活ストロンチウム・バリウム・オルソシリケート)蛍光体、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体などを好適に用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
なお、本発明における封止体6には、蛍光体と共に拡散剤を含有させるようにしてもよい。拡散剤としては、特に制限されるものではないが、たとえば、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化珪素などが好適に用いられる。
【0038】
本発明における封止体6は、発光装置1の所望される光の色度に応じて、2層で実現することができる。この場合、図2に示すように第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第1の封止体層8上に積層された第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9とを備えるように実現されることが好ましい。このように封止体6を第1の封止体層8と第2の封止体層9とで構成することで、色度を容易に調整でき、色度ズレのない発光装置を、良好な歩留りで安価に提供することができるという利点がある。好適な具体例としては、樹脂材料としてメチルシリコーンを用い、これに第1の蛍光体としてEu:BOSEを分散させ、硬化させることにより第1の封止体層8を形成し、この第1の封止体層8を覆うようにして、樹脂材料として有機変性シリコーンを用い、これに第2の蛍光体としてEu:SOSEを分散させ、硬化させることにより第2の封止体層9を形成する場合が例示される。色度ズレの調色の観点からは、第2の封止体層9は、第1の封止体層8の上面の少なくとも一部を覆うようにして第1の封止体層8上に積層されていることが好ましく、図2に示すように第1の封止体層8の上面の全面を第2の封止体層9で覆うようにして実現されることが特に好ましい。なお、1層(第1の蛍光体層)のみで所望の色度の光を発する発光装置が得られる場合には、封止体6は単層で実現されても勿論よい。ここで、第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9の境界は、明確に分離していても、明確に分離していなくともよい。
【0039】
本発明における封止体6は、その形状については特に制限されるものではないが、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましい。図1?図3には、第1の封止体層8を正方形状の上面形状を有するように形成し、この第1の封止体層8の上面の全面を覆うようにして正方形状の上面形状を有するように第2の封止体層9を形成してなる例を示している。なお、上述した封止体6、第1の封止体層8および第2の封止体層9の上面形状とは、絶縁基板3の基板面に平行な断面における形状を指す。
【0040】
ここで、図4は、本発明の好ましい第2の例の発光装置21の上面図である。図4に示す例の発光装置21は、封止体22の上面形状が円形状であることを除いては図1に示した例の発光装置1と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図4に示すように封止体22が円形状の上面形状を有するように実現されることで、対称形状であるため光指向性がよいという利点がある。このため、上述した六角形状、円形状、長方形状または正方形状の中でも、図4に示すように円形状の上面形状を有するように封止体22を実現することが特に好ましい。
【0041】
また封止体6は、上方に凸となる半球状に形成するようにしてもよい。この場合には、封止体6にレンズとしての機能を持たせることも可能になる。
【0042】
本発明の発光装置1は、その全体の形状についても特に制限されるものではないが、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有するように実現されることが好ましい。発光装置が長方形状または正方形状の上面形状を有する場合には、発光素子を密着させて配置することができるため、発光装置を蛍光灯型LEDランプに適用する場合に特に好ましい。また、発光装置を電球型LEDランプ(後述)に適用する場合には、発光装置が円形状の上面形状を有するように実現されることが好ましい。図1および図4には、上述のように発光装置1が正方形状の上面形状を有するように実現された例を示している。
【0043】
また図5は、本発明の好ましい第3の例の発光装置31の上面図である。図5に示す例の発光装置31は、封止体33の上面形状が六角形状であり、発光装置31の上面形状が円形状であることを除いては図1に示した例の発光装置1と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図5に示す例の発光装置31のように封止体33を六角形状の上面形状を有するように実現することでも、対称形状であるため、光の指向性がよいという利点がある。また、図5に示す例のように円形状の上面形状を有する(円形状の上面形状を有する絶縁基板32を用いる)された発光装置31は、電球型LEDランプに特に好適に適用できる。
【0044】
図6は、本発明の好ましい第4の例の発光装置41の上面図である。図6に示す例の発光装置41は、封止体42(第1の封止体層43)の上面形状が円形状であり、第2の封止体層44が第1の封止体層43の上面の一部のみを覆うように形成されていることを除いては図5に示した例の発光装置31と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図6に示す例の発光装置41のように封止体42を円形状の上面形状を有するように実現することで、対称形状であるため、光の指向性がよいという利点がある。また図6に示す例では、円形状の上面形状を有するように形成された第1の封止体層43と、この第1の封止体層43を部分的に覆うようにして形成された第2の封止体層44とで封止体42が形成されている。このように第1の封止体層43を部分的に覆うようにして第2の封止体層44を形成することで、第1の封止体層の一部のみの調整で発光装置として所望の色度特性を有する(たとえば、後述する色度座標を示す図13の(b)の範囲内に入る)発光装置を得ることができるという利点がある。なお、このような場合、第2の封止体層44にて覆う第1の封止体層43の部分は、所望の色度特性に応じて選択する(たとえば、後述する色度座標を示す図13の(b)の範囲内に入っていない部分など)。また図6に示す例の発光装置41は、円形状の上面形状を有するため、図5に示した例の発光装置31と同様に電球型LEDランプに特に好適に適用できる。
【0045】
図7は、本発明の好ましい第5の例の発光装置51の上面図である。図7に示す例の発光装置51は、封止体52(第1の封止体層53)の上面形状が正方形状であり、第2の封止体層44が第1の封止体層53の上面の一部のみを覆うように形成されていることを除いては図5に示した例の発光装置31と同様の構成を有するものであり、同様の構成を有する部分については同一の参照符を付して説明を省略する。図7に示す例の発光装置51のように封止体52(第1の封止体層53)を正方形状の上面形状を有するように実現することで、後述する固定用穴、外部配線用穴などを形成できる領域を確保できるという利点がある。また図7に示す例では、正方形状の上面形状を有するように形成された第1の封止体層53と、この第1の封止体層53を部分的に覆うようにして形成された第2の封止体層44とで封止体42が形成されており、これによって図6に示した例と同様の効果が奏される。また図7に示す例の発光装置51は、円形状の上面形状を有するため、図5、図6に示した例の発光装置31,41と同様に電球型LEDランプに特に好適に適用できる。上記第1の封止体層43、第1の封止体層53は第1の蛍光体を含有し、第2の封止体層44は第2の蛍光体を含有する。
【0046】
本発明の発光装置は、製造方法が容易で、色ズレが発生しにくい発光装置が提供でき、このことから、液晶ディスプレイのバックライト光源または照明用光源に特に好適に用いられる。本発明の発光装置を用いることで、白色を含め電球色など任意の色調の上記光源を実現できる。
【0047】
本発明の発光装置は、通常、上述した用途に供するために、相手部材に取り付け、固定するための固定用穴を有する。図1および図4に示した正方形状の上面形状を有する発光装置1,21では、正方形状の上面形状を有する絶縁基板3の対向する角部に、絶縁基板3を貫通するように設けられた固定用穴11が対角線上に配置されて1つずつ形成された場合を示している。また、図5?図7に示した円形状の上面形状を有する発光装置31,41,51では、切り欠き状の固定用穴34が、円形状の上面形状を有する絶縁基板32の中心を通る直線上に配置されて1つずつ形成された例を示している。
【0048】
また本発明の発光装置は、上述した用途に供するために、固定用冶具を用いて相手部材に取り付けられ、固定される。この固定用冶具としては、たとえば図1および図4に示す固定用冶具19のように、内壁にネジ山が形成された固定用穴11に挿入され、螺合するネジなどが挙げられる。また固定用冶具は、接着シートなどであってもよい。
【0049】
本発明の発光装置においては、絶縁基板と同じ材料で形成された固定用冶具を用いて固定されてなることが好ましい。絶縁基板と同じ材料で形成された固定用冶具を用いることで、絶縁基板と固定用冶具との熱膨張率を同じにすることができ、熱による反りなどで絶縁基板に割れ、ヒビは発生することを低減でき、発光装置の歩留りを向上することができる。具体的には、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、フォルステライト、ステアタイト、低温焼結セラミックから選ばれるいずれか、または、これらの複合材料で形成された固定用冶具を、絶縁基板の形成材料に合わせて好適に用いることができる。
【0050】
ここで、図8?図10には、本発明の発光装置を照明用光源として適用した例をそれぞれ示している。図8は、図1に示した例の発光装置1を蛍光灯型LEDランプ61に適用した場合を示す斜視図であり、図9は、図6に示した例の発光装置41を蛍光灯型LEDランプ71に適用した場合(第1の蛍光体層43を部分的に覆う第2の蛍光体層44については省略している)を示す斜視図であり、図10は、図6に示した例の発光装置41を電球型LEDランプ81に適用した場合を示す断面図である。図8?図10に示すように、発光装置1,41は、それぞれ固定用穴11,34で、固定用冶具19を用いて取り付けられ、固定される。
【0051】
なお、本発明の発光装置は、図1、図4?図7にそれぞれ示されているように、絶縁基板3,32上に、正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が直接設けられ、この正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13と電源(図示せず)との間をそれぞれ電気的に接続するための外部接続配線14が設けられてなることが好ましい。
【0052】
また本発明の発光装置は、図1、図4?図7にそれぞれ示されているように、絶縁基板3,32に、外部接続配線14を通すための外部配線用穴15が形成されてなることが好ましい。図1および図4に示す例では、正方形状の上面形状を有する絶縁基板3に、上述した固定用穴11が設けられている対角線上とは異なるもう1つの対角線上に配置されるように正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が設けられており、さらに絶縁基板3の対向する2つの辺の中央付近に切り欠き状の外部配線用穴15が形成されている。また、図5?図7に示す例では、円形状の上面形状を有する絶縁基板32上に、上述したように固定用穴34が形成された中心を通る直線上に概ね垂直な中心を通る直線上に、切り欠き状の外部配線用穴15が形成され、この固定用穴34と外部配線用穴15との間に、対向して正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13が設けられている。なお、図4?図7に示す例のように円形状の上面形状を有する絶縁基板32に固定用穴34および外部配線用穴15を切り欠き状に形成した場合には、相手部材に取り付けられた状態で、発光装置が周方向に回るのを防止する、回り止めの役割も果たす。
【0053】
また、本発明の発光装置は、図3に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4の一端と正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13との間を電気的に接続するための外部引き出し配線パターン16,17がさらに形成されていることが好ましい。このような外部引き出し配線パターン16,17により、電源(図示せず)と配線パターン4との間を、正電極外部接続ランド12および外部引き出し配線パターン16、負電極外部接続ランド13および外部引き出し配線パターン17をそれぞれ介して、電気的に接続することができる。
【0054】
さらに本発明の発光装置は、絶縁基板上に、検査用のパターンがさらに形成されてなるのが好ましい。図3には、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4cと配線パターン4dとの間にそれぞれスポット状の検査用のパターン18が形成された例を示している。このような検査用のパターン18が絶縁基板3上に形成されていることで、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4bと配線パターン4cとの間および配線パターン4cと配線パターン4dとの間の導通の検査を検査用のパターン18を介して容易に行うことができるようになる。また、この検査用のパターン18は、ダイボンド、ワイヤボンディングを自動化装置で行う際の認識パターンとしても用いることができる。なお、検査用のパターンは、図3に示したようなスポット状に限定されるものではなく、配線パターン4bと配線パターン4cとそれぞれ電気的に繋がっておりプローブを当てられる大きさのパターンにて実現されてもよい。
【0055】
本発明はまた、発光装置の製造方法についても提供する。上述してきた本発明の発光装置は、その製造方法については特に制限されるものではないが、本発明の発光装置の製造方法を適用することで好適に製造することができる。本発明の発光装置の製造方法は、絶縁基板上に複数の配線パターンを形成する工程と、配線パターン間に複数個の発光素子を搭載する工程と、発光素子と配線パターンとを電気的に接続する工程と、貫通孔を有するシリコーンゴムシートを絶縁基板上に載置する工程と、シリコーンゴムシートの貫通孔内に、発光素子を封止する封止体を形成する工程とを基本的に含む。ここで、図11は、本発明の発光装置の製造方法の好ましい一例として、図1に示した発光装置1を製造する場合を段階的に示す図である。以下、図11を参照して、本発明の発光装置の製造方法について具体的に説明する。
【0056】
まず、図11(a)に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4を形成する。上述したように図11は図1に示した発光装置1を製造する場合であるので、配線パターン4として、4つの直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dを平行に配置して絶縁基板3上に形成する。好適な具体例として、厚み1mmの酸化アルミニウムで形成された白色の絶縁基板3上に、厚み0.07mmの金膜をスパッタリング法を用いて形成した後、フォトエッチング法にて配線パターン4a,4b,4c,4d(幅1mm、間隔2mm)を形成する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、上述したように発光素子との間の電気的接続の位置決め用または発光素子の搭載位置の目安用のパターン7として直線から外側に膨らんだパターン、外部引き出し配線パターン16,17、検査用のパターンを形成する場合には、所望のパターンとなるように設計してフォトエッチングを行えばよい。
【0057】
次に、図11(b)に示すように、配線パターン4間に発光素子5を搭載する。ここで、発光素子5の搭載は、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて発光素子5を絶縁基板3に直に接着することで行うことができる。そうすることにより、沿面放電電圧で決まる絶縁耐圧をできる限り高くすることができる。すなわち、電極方向に配列された発光素子と発光素子との間の絶縁耐圧は発光素子間の距離と絶縁基板の誘電率で決まり、発光素子と電極との間の絶縁耐圧も同様に発光素子と電極との最短距離と絶縁基板の誘電率で決まる。好適な具体例としては、絶縁基板3上に平行に形成された直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dのそれぞれの間に、発光素子5として短辺幅0.24mm、長辺0.48mm、厚み0.14mmのLEDチップをエポキシ樹脂を用いて接着し、固定する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。その後、図11(b)に示すように、所望の電気的接続の状態に応じて、配線パターン4と発光素子5とをワイヤボンディングWを用いて電気的に接続する。
【0058】
なお、本発明の発光装置の製造方法では、上述のように発光素子と配線パターンとを電気的に接続した後に、発光素子の特性を検査する工程と、検査の結果、特性不良があった場合に、予備の発光素子を配線パターンと接続する工程とをさらに含むことが好ましい。この検査は、たとえば発光素子に電流を流し、その光出力特性を測定することで行なうことができる。また、外観検査としてボンディングワイヤWの断線、ボンディング不良も併せて行なうようにしてもよい。
【0059】
次に、図11(c)に示すように、貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91を絶縁基板3上に載置する。ここで、図12は、本発明の発光装置の製造方法において用いられる、好ましい一例のシリコーンゴムシート91を模式的に示す図である。本発明の製造方法に用いるシリコーンゴムシートは、封止体を形成するための空間となる貫通孔を有するものを用いるが、この貫通孔の形状については特に制限されるものではなく、形成しようとする封止体の上面形状に応じた形状のものを用いることができる。上述したように、封止体は、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましいため、シリコーンゴムシート91の貫通孔は、六角形状、円形状、長方形状または正方形状の上面形状を有することが好ましい。図12には、一例として、長方形状の上面形状を有する貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91を示している。なお、上述したような貫通孔92を有するシリコーンゴムシート91は、絶縁基板上の直線状の配線パターンおよび発光素子の全てを1つの封止体で封止する場合に特に好適に用いることができるが、直線状の配線パターン4に沿って両側に搭載された発光素子5を含むように直線状の封止体を複数形成する場合には、対応する複数個の所望の形状の貫通孔を有するシリコーンゴムシートを用いるようにすればよい。
【0060】
シリコーンゴムシート91は、容易に入手可能であり、ゴム製であるため弾性を有し、配線パターンなどの段差があっても隙間なく密着させて設けることができ、好ましい。また、シリコーンゴムシート91には、絶縁基板3に設けた状態では後述する封止体形成用の樹脂の漏れを防ぐことができ、また、封止体形成後に容易に除去できることから、一面に両面接着シートを接着しておき、この接着シートで絶縁基板3に接着させるようにすることが好ましい。
【0061】
本発明の発光装置の製造方法に用いるシリコーンゴムシートは、その厚みが、形成する第1の封止体層の厚みの2倍以上であることが好ましい。シリコーンゴムシートが、第1の封止体層の厚みの2倍以上の厚みを有することで、色度ズレを修正するために2度塗りができ、封止材料の漏れを防止できるという利点がある。
【0062】
次に、図11(d)に示すように、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に、発光素子5を封止する封止体6を形成する。ここで、封止体6には、上述のように蛍光体を含有させることが、好ましい。また、封止体6は単層、二層のいずれの形態で形成するようにしてもよい(図11は、図1に示した発光装置1を製造する場合であるため、第1の蛍光体を含有する第1の封止体層8と、第2の蛍光体を含有する第2の封止体層9とを有するように封止体6を形成する場合を示している。
【0063】
本発明の発光装置の製造方法におけるこの封止体で発光素子を封止する工程は、シリコーンゴムシートの貫通孔内に第1の蛍光体を含有する封止材料を注入する工程と、第1の蛍光体を含有する樹脂を硬化させて第1の封止体層を形成する工程と、第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程とを含むことが、好ましい。
【0064】
この場合、まず、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に第1の蛍光体を含有する封止材料を注入する。ここで、封止材料としては、上述したようにたとえば、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透光性樹脂材料、耐光性に優れたシリカゾル、硝子などの透光性無機材料が好適に用いられる。また、第1の蛍光体としては、上述したようにたとえば、Ce:YAG蛍光体、Eu:BOSEあるいはEu:SOSE蛍光体、ユーロピウム賦活αサイアロン蛍光体などを好適に用いることができる。また、封止材料には上述した拡散剤が添加されていてもよい。
【0065】
次に、シリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入された第1の蛍光体を含有する封止材料を硬化させる。封止材料を硬化させる方法としては、用いる封止材料に応じて従来公知の適宜の方法を特に制限されることなく用いることができる。たとえば封止材料として透光性樹脂材料であるシリコーン樹脂を用いる場合には、シリコーン樹脂を熱硬化させることで、封止材料を硬化させることができる。なお、封止材料としてモールド用の樹脂を用い、金型を用いて封止材料を硬化させるようにしてもよい。封止材料の硬化により形成される封止体(第1の封止体層)の形状は特にされるものではなく、たとえば上方に凸となる半球状の形状に封止体を形成することで、封止体にレンズとしての機能を持たせるようにしてもよい。
【0066】
次に、上述のようにして第1の封止体層を形成した後の発光装置の色度特性を測定する。ここで、図13はCIEの色度座標を示すグラフである。発光装置の色度特性は、JIS28722の条件C,DIN5033teil7、ISOk772411に準拠のd・8(拡散照明・8°受光方式)光学系を採用した測定装置を用いて測定することができる。たとえば、CIEの色度表でx、y=(0.325、0.335)となる光を発するように、第1の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを5:100の重量比で混合したものをシリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入し、150℃の温度で30分間熱硬化させて第1の封止体層を形成した場合、形成された第1の封止体層の色度範囲は、図13中の(a)の領域内となる。このような第1の封止体層を有する発光装置について色度特性を測定する場合には、色度範囲は図13中の(b)の領域から外れてしまう。このような場合には、発光装置の色度範囲が図13中の(b)の領域内となるように、第1の封止体層上に第2の封止体層を形成する。
【0067】
第2の封止体層を形成する場合、本発明の発光装置の製造方法は、上述した第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程の後に、第1の封止体層上に、第2の蛍光体を含有する封止材料を注入する工程と、第2の蛍光体を含有する封止材料を硬化させて第2の封止体層を形成する工程と、第2の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定する工程と、シリコーンゴムシートを除去する工程とをさらに含むことが好ましい。すなわち、上述した第1の封止体層を形成する各工程と同様にして、まず、第1の封止体層上に第2の蛍光体を含有する封止材料を注入し、硬化させて、第2の封止体層を形成する。第2の封止体層を形成するための第2の蛍光体および封止材料は、上述した第1の封止体層を形成するための第1の蛍光体および封止材料のうち、所望される色度特性に応じて適宜選択し、場合によっては拡散剤をさらに添加して用いることができる。上述した例の場合には、CIEの色度表でx、y=(0.345、0.35)となる光が得られるように、たとえば第2の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを2:100の重量比で混合して第1の封止体層上に注入し、150℃で1時間熱硬化させて第2の封止体層を形成する。そうすることで、第2の封止体層を形成した後、発光装置の色度特性を同様に測定した場合には、図13中の(b)の領域内の色度範囲の発光装置を得ることができる。
【0068】
このように、本発明の発光装置の製造方法では、必要に応じて第2の封止体層をさらに形成するようにすることで、色度ズレのない発光装置を、歩留りよく安価に製造することができるようになる。なお、上述したように、第2の封止体層は第1の封止体層の上面の少なくとも一部を覆うように形成すればよく、第1の封止体層の上面の全面を覆うように形成されてもよいし(たとえば、図1、図4、図5に示した例)、第1の封止体層の上面を部分的に覆うように形成されてもよい(たとえば、図6、図7に示した例)。
【0069】
また、たとえばCIEの色度表でx、y=(0.325、0.335)となる光を発するように、第1の蛍光体と封止材料であるシリコーン樹脂とを5:80の重量比で混合したものをシリコーンゴムシート91の貫通孔92内に注入し、120℃の温度で30分間熱硬化させて第1の封止体層を形成した場合など、当該第1の封止体層形成後の発光装置の色度特性を測定した際に、色度範囲が図13中の(b)の領域内となるような場合には、上述したような第2の封止体層をさらに形成する必要はなく、第1の封止体層をそのまま封止体として備える発光装置を製造すればよい。
【0070】
本発明の発光装置の製造方法では、上述したように第1の封止体層単独、または、第1の封止体層および第2の封止体層を形成した後に、シリコーンゴムシート91を取り除き、上述した本発明の発光装置が提供される。上述したように、シリコーンゴムシート91は一面に両面接着シートを接着しておき、この接着シートで絶縁基板3に接着させるようにしておくことで、容易に除去することができる。なお、シリコーンゴムシートは何度も使用することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1,21,31,41,51 発光装置、2 発光部、3,32 絶縁基板、4 位置決め用配線パターン、5 発光素子、6,22,33,42,52 封止体、7 パターン、8,43,53 第1の封止体層、9,44 第2の封止体層、11,34 固定用穴、12 正電極外部接続ランド、13 負電極外部接続ランド、14 外部接続配線、15 外部配線用穴、16,17 外部引き出し配線パターン、18 検査用パターン、19 固定冶具、61,71 蛍光灯型LEDランプ、81 電球型LEDランプ、91 シリコーンゴムシート、92 貫通孔。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置を照明用光源として用いたLEDランプであって、
前記発光装置は、絶縁性を有する材料で形成されている絶縁基板上面に、複数個の半導体発光素子が搭載されるとともに、配線パターンを備え、
前記半導体発光素子は、前記絶縁基板上面に直に搭載された半導体LEDチップであり、
前記配線パターンは、アノード用配線パターンと、カソード用配線パターンとを備え、
前記配線パターンの間に、それぞれ複数個の前記半導体発光素子が搭載され、
前記絶縁基板上面で、複数の列からなる前記半導体発光素子および前記配線パターンが1つの封止体で封止された発光部を備え、
前記絶縁基板は、該絶縁基板上面に、前記発光部の周囲全体を取り囲む、前記封止体で封止されていない領域を備えており、該領域は、外部接続配線を直接接続するための正電極外部接続ランドおよび負電極外部接続ランドが設けられる広さを有し、
前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドは、前記発光部と重複しないように配置され、かつ、前記発光部を挟んで対向して設けられ、
前記正電極外部接続ランドは前記アノード用配線パターンに、前記負電極外部接続ランドは前記カソード用配線パターンに、前記絶縁基板上面に形成され、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドよりも幅の小さい外部引き出し配線パターンを通じてそれぞれ接続されており、
前記外部引き出し配線パターンは前記絶縁基板上に段差を有し、前記外部引き出し配線パターンの前記アノード用配線パターンおよびカソード用配線パターンに近い部分は前記封止体で封止されており、前記正電極外部接続ランドおよび前記負電極外部接続ランドに近い部分は封止体で封止されていないことを特徴とするLEDランプ。
【請求項2】
前記アノード用配線パターン、前記カソード用配線パターン、前記外部引き出し配線パターンの厚みは、前記半導体発光素子の厚みより薄いことを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。
【請求項3】
前記配線パターンは、前記アノード用、カソード用以外の配線パターンをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のLEDランプ。
【請求項4】
前記配線パターンが、前記半導体発光素子との間の電気的接続の位置決め用のパターン、または、前記半導体発光素子の搭載位置の目安用のパターンをさらに有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載のLEDランプ。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記絶縁基板が白色のセラミック基板であることを特徴とする請求項1に記載のLEDランプ。
【請求項7】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-11 
出願番号 特願2014-175806(P2014-175806)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 113- YAA (H01L)
P 1 651・ 536- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北島 拓馬大西 孝宣金高 敏康  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 森 竜介
近藤 幸浩
登録日 2016-08-05 
登録番号 特許第5980860号(P5980860)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 LEDランプ  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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