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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C07D
審判 全部無効 特123条1項5号  C07D
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07D
審判 全部無効 2項進歩性  C07D
管理番号 1346947
審判番号 無効2015-800065  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-03-17 
確定日 2018-12-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4592183号発明「2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4592183号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、3、4〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4592183号は、1998年8月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年8月7日(DE)ドイツ)を国際出願日として出願(特願2000-507656号)されたものであり、平成22年9月24日に設定登録を受けた(請求項の数4)。
その後、平成24年12月25日付けで訂正審判が請求され、訂正2012-390175号として審理され、平成25年3月14日付けで「特許第4592183号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める」との審決がされ、この審決は確定した。このとき、請求項2が削除され、請求項1、3、4及び発明の詳細な説明が訂正された(以下、その特許を「本件特許」といい、その明細書を「本件特許明細書」という。)。
そして、本件特許を無効とすることについて、平成27年3月17日にバイエルクロップサイエンス株式会社(以下「請求人」という。)から本件審判の請求がされた。
本件審判の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 3月17日付け 審判請求書・甲第1?甲第9号証提出
同 年 4月30日付け 手続補正書(請求人)・
甲第5、甲第7、甲第8号証再提出
同 年 8月10日付け 審判事件答弁書・訂正請求書・
乙第1?乙第7号証提出
同 年 9月25日付け 審判事件弁駁書・
甲第10?甲第20号証提出
同 年11月24日付け 審理事項通知
同 年12月21日付け 上申書(請求人)・
甲第21?甲第24号証・
本件特許に係る侵害訴訟の被告準備書面
(甲第25?甲第27号証)提出
同 年12月21日付け 上申書(被請求人)・
乙第8?乙第12号証・
本件特許に係る侵害訴訟の訴状及び
原告準備書面提出
平成28年 1月12日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)・
甲第28?甲第31号証提出
同 年 1月12日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)・
乙第13、乙第14号証提出
同 年 1月25日 口頭審理
同 年 2月15日付け 上申書2(請求人)提出
同 年 2月15日付け 上申書2(被請求人)・
乙第15?乙第24号証提出
同 年 2月18日付け 手続補正書(被請求人)・
乙第19号証訳文提出
同 年 3月 7日付け 上申書3(請求人)・
甲第32?甲第34号証提出
同 年 3月 7日付け 上申書3(被請求人)提出
同 年 4月 6日付け 上申書4(被請求人)・
乙第25号証の1、同2、同3、
乙第26、乙第27号証提出
同 年 5月24日付け 審決の予告
同 年 8月26日付け 上申書5(被請求人)・訂正請求書・
乙第28、乙第29号証提出
同 年10月 7日付け 審判事件弁駁書2・
甲第35?甲第41号証提出
同 年11月15日付け 審理終結通知書
上記において、2回目以降の上申書を「上申書2」などとした。
上申書(請求人)及び上申書(被請求人)とともに、平成27年(ワ)第2862号特許権侵害行為差止等請求事件における訴状及び準備書面が提出されているが、合議体が参考情報として提出を要請したものである。
証拠方法等の一覧は、後記第4及び第5の項で示す。甲第6号証は、甲第5号証の訳文として整理したので欠番である。また、甲第25?第27号証は、上記の参考情報としての準備書面であるので、後記第4の証拠方法等の一覧には示さない。以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などという。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容
被請求人は、審決の予告が被請求人に送達された平成28年5月30日から90日の期間内である同年8月26日に訂正請求書を提出して、訂正請求書に添付した訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)のとおり、訂正後の請求項1、3、4について訂正することを求めた。
その訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】式Ia

[但し、R^(1)が、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)又は-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(2)が、水素、又はハロゲン以外のR^(1)で述べた基の1個を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し、
Hetが、
窒素、酸素及び硫黄から選択される1?3個のヘテロ原子を有する、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する、3?6員のヘテロ芳香族基、を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く、
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩。」
と記載されているのを、
「【請求項1】式Ia

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表し、
Hetが、
オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩。」
と訂正する。

(2)訂正事項2:特許請求の範囲の請求項3に
「【請求項3】Hetが、
窒素、酸素及び硫黄から選択される1?3個のヘテロ原子を有する、5員若しくは6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は
下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する、5員若しくは6員のヘテロ芳香族基、を表す請求項1に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン。」
と記載されているのを、
「【請求項3】Hetが、
2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す請求項1に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン。」
に訂正する。

(3)訂正事項3
段落【0061】の
「2,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル」

「2,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル」
と訂正する。

(4)訂正事項4
段落【0002】の
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により遮断されている}を表し、」

「X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、」
と、段落【0030】の
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により遮断されている}を表し、」

「X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、」
と、段落【0063】の
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(4)アルキレン鎖、C_(2)?C_(4)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(4)アルキニレン鎖、特に好ましくはエチレン、プロピレン、プロペニレン又はプロピニレン鎖{これらの鎖は、酸素又は硫黄(好ましくは酸素)から選択されるヘテロ原子により遮断されている}を表し、」

「X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(4)アルキレン鎖、C_(3)?C_(4)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(4)アルキニレン鎖、特に好ましくはエチレン、プロピレン、プロペニレン又はプロピニレン鎖{これらの鎖は、酸素又は硫黄(好ましくは酸素)から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、」
と、それぞれ訂正する。

(5)訂正事項5
段落【0068】の
「X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し、」

「X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルキニレン鎖を表し、」
と訂正する。

(6)訂正事項6
段落【0071】の表Aを以下のように訂正する(審決注:もとの表Aの左端に1欄増やして「実施例」か「参考例」かを表示する訂正である。)。
「【表1】



(7)訂正事項7
段落【0109】の
「これらの組成物は、オオムギ、米、トウモロコシ、大豆、及び綿花等の作物の中に広範囲に残った雑草及び牧草に対して、栽培植物に損傷を与えることなく作用する。この効果は、主に低施与率で観察される。」

「これらの組成物は、オオムギ、米、トウモロコシ、大豆、及び綿花等の作物の中の広葉の雑草及びイネ科の雑草(Unkraeuter und Schadgraeser)に対して、栽培植物に損傷を与えることなく作用する。この効果は、主に低施与率で観察される。」(審決注:ウムラウトは代わりにeを付けて表した。)
と訂正する。

2 訂正の適否についての検討

(1)訂正事項1及び2に係る請求項1、3及び4からなる一群の請求項についての訂正について

ア 一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正事項1及びに係る訂正後の請求項1、3、4は、訂正後の請求項3が請求項1を引用して記載しており、請求項4が請求項1又は3を引用して記載しており、請求項1についての訂正事項1及び請求項3についての訂正事項2により、実質的に請求項4について訂正されるものである。
上記1の(1)の訂正事項1及び同(2)の訂正事項2は、上記の一群の請求項がある特許請求の範囲について、当該一群の請求項である請求項1、3、4について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第3項の規定を満たす。

イ 訂正の目的及び新規事項の追加の有無について

(ア)請求項1について

a 訂正事項1に係る訂正は、請求項1において、式Iaで表される化合物における、
R^(1)の選択肢を、列挙されたうちの「ハロゲン」に限定し、
R^(2)の選択肢を、列挙されたうちの「-S(O)_(n)R^(3)」に限定し、
X^(1)の選択肢を、列挙されたうちの「酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-」に限定し、
Hetについて、
「窒素、酸素及び硫黄から選択される1?3個のヘテロ原子を有する、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する、3?6員のヘテロ芳香族基、を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く、
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い」
と特定されていたのを
「オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す」
と、上位概念による記載を削除し、代わりに18個の具体的なヘテロシクリル基を追加して限定するものである。

b R^(1)の選択肢を、列挙されたうちの「ハロゲン」に限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、R^(1)が「ハロゲン」である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、R^(1)以外の部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

c R^(2)の選択肢を、列挙されたうちの「-S(O)_(n)R^(3)」に限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、R^(2)が「-S(O)_(n)R^(3)」である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、R^(2)以外の部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

d X^(1)の選択肢を、列挙されたうちの「酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-」に限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、X^(1)が「酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-」である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、X^(1)以外の部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

e Hetに具体的な18個のヘテロシクリル基を追加する訂正について検討する。

(a)これらは、以下に表にして示すように、本件特許明細書の段落【0061】の後ろ約三分の一の部分の「ヘテロシクリル」及び「ヘテロアリール」の例に列挙されているか、段落【0071】の表Aに記載があるか、段落【0135】の表37に記載がある。
以下の表において、
「段落【0061】」の欄の「○」は、段落【0061】に挙げられていることを示す。
「表ANo.」の欄の数字は、段落【0071】の表Aは、X^(1)とHetの組合せを920個(8個のX^(1)毎に同じ115個のHetの組合せ)示したものであるが、例えばX^(1)が「CH_(2)O」である「No.」116?230の中では、どのNo.の欄にそのヘテロアリールの記載があるかを示す。
「表37No.」の欄の数字は、段落【0135】の表37は、段落【0130】?【0134】の合成例に続けて記載された表であるが、どのNo.の欄にそのヘテロアリールの記載があるかを示す。

段落【0061】 表ANo. 表37No.
オキシラニル ○ 116
2-オキセタニル 118
3-オキセタニル 131
2-テトラヒドロフラニル ○
3-テトラヒドロフラニル ○
2-テトラヒドロチエニル ○
2-ピロリジニル ○
2-テトラヒドロピラニル ○
2-ピロリル ○ 146
5-イソオキサゾリル ○ 168
2-オキサゾリル ○ 185
5-オキサゾリル ○ 187
2-チアゾリル ○ 188
2-ピリジニル ○ 204
1-メチル-5-ピラゾリル 195
1-ピラゾリル 37.1
3,5-ジメチル-1-ピラゾリル 37.2,37.4,37.6
4-クロロ-1-ピラゾリル 37.3,37.5,37.7

(b)段落【0061】に記載されていた12個について検討する。
上記の段落【0061】は、冒頭に「他の意味の例として、下記のものを挙げることができる」として種々の置換基の例を記載した段落である。
この段落【0061】より前にあるHetを含む化合物の化学構造に言及する記載は、段落【0059】の「さらに、本発明の式Iで表される以下の化合物が重要である。即ち、Hetが、5員若しくは6員の部分飽和若しくは完全飽和のヘテロシクリル基、又は窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有する、5員若しくは6員のヘテロ芳香族基・・・を表し・・・」があり、それより前では、段落【0001】?【0002】、【0014】?【0016】の式I

及びそのQ

の全体の構造についての記載がある。この式における置換基や部分構造は、請求項1に記載された式Iaの上位概念に当たる、より広範な選択肢を含むものである。
そうすると、この12個を追加する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、Hetがこの12個である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、Het以外の置換基や部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

(c)表Aに記載されていた10個について検討する。
上記の表Aは、上記したとおり、X^(1)とHetの組合せを920個(8個のX^(1)毎に同じ115個のHetの組合せ)示したものであるが、段落【0070】に「下記の表1?36の化合物Ibが特に好ましい」と記載され、段落【0073】のその表1は
「表1:化合物1.1?1.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物」
というものであり、段落【0074】?【0108】の表2?36もそれぞれ、R^(1)、R^(2)、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ特定のものである化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物である、というものである。
なお、表Aに記載された8個のX^(1)のうちで、請求項1に記載されたX^(1)に該当するものは、CH_(2)O(No.116?230)、CH_(2)OCH_(2)(No.461?575)のみである。
また、表1?36に記載されたR^(1)、R^(2)、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)の組合せのうち、訂正事項1に係る「R^(1)が、ハロゲンを表し」及び「R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し」に該当し、請求項1に記載されたR^(6)?R^(11)にも該当するのは、
表1(R^(6)?R^(11)が全てH)、
表7(R^(6)?R^(11)のうちR^(8)とR^(9)がメチルで他はH)、
表13(R^(6)?R^(11)のうちR^(10)とR^(11)がメチルで他はH)、
表19(R^(6)?R^(11)のうちR^(8)とR^(9)がオキソで他はメチル)、
だけである。
以上によれば、上記10個のヘテロシクリル基は、表A及び表1、7、13、19との関係では、特定のX^(1)及び特定のR^(1)、R^(2)、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)との組合せについて、本件特許明細書に開示されていたといえる。
しかし、本件特許明細書の全体の記載をみれば、段落【0061】の記載は、段落【0001】等に記載された最も上位概念の式Iの化合物においてHetがとり得る「ヘテロシクリル」の例示に過ぎず、式Iの化合物や、本件発明1の式Iaの化合物におけるHetが、段落【0061】に記載されたものに限られるというものではない。表Aに記載された上記の10個のヘテロシクリル基も、同様に、上記式I及び式Iaの化合物においてとり得るものであることは、明らかである。
そうすると、この10個を追加する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、Hetがこの10個である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、Het以外の置換基や部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

(d)表37に記載されていた3個について検討する。
上記の表37は、上記したとおり、段落【0130】?【0134】の合成例に続けて記載された表であり、そこでは、X^(1)がCH_(2)O、R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)?R^(11)は、R^(8)とR^(9)がメチルで他はHであるか、R^(7)とR^(11)がメチルで他はHであるか、R^(6)とR^(7)とR^(10)とR^(11)がメチルでCR^(8)R^(9)単位がC=Oとなったものである。これも、特定のX^(1)及び特定のR^(1)、R^(2)、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)との組合せについてのみ、本件特許明細書に開示されていたといえる。
しかし、本件特許明細書の全体の記載をみれば、段落【0061】の記載は、段落【0001】等に記載された最も上位概念の式Iの化合物においてHetがとり得る「ヘテロアリール」(ヘテロ芳香族基)の例示に過ぎず、式Iの化合物や、本件発明1の式Iaの化合物におけるHetが、段落【0061】に記載されたものに限られるというものではない。表37に記載された上記の3個のヘテロ芳香族基も、同様に、上記式I及び式Iaの化合物においてとり得るものであることは、明らかである。
そうすると、この3個を追加する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
そして、Hetがこの9個である場合が、請求項1に記載された式Iaで表される化合物の、Het以外の置換基や部分構造が特定のものである場合に限られるというものでもないから、新規事項を追加するものではない。

f 以上によれば、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、請求項1に係る発明に関し、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。

(イ)請求項3について
訂正事項2に係る訂正は、請求項3において、Hetについて、
Hetが、
「窒素、酸素及び硫黄から選択される1?3個のヘテロ原子を有する、5員若しくは6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は
下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する、5員若しくは6員のヘテロ芳香族基、を表す」
と特定されていたのを、
「2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す」
と、上位概念による記載を削除し、代わりに15個の具体的なヘテロシクリル基を追加して限定するものであり、かつ、訂正事項1により訂正された請求項1において、記載されるHet18個のうちの、15個に限定するものである。
請求項1についての訂正が、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、その訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすことは、上記(ア)で述べたとおりである。
請求項3についての訂正は、請求項1をさらに限定するものであり、訂正後の請求項3に係る発明についてみても、同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。

(ウ)請求項4について
請求項4に係る発明は、請求項1及び3に記載の式Iaで表される化合物の製造方法についての発明を、含んでいる。
請求項4の文言は訂正されないが、請求項1及び3についての訂正が、上記(ア)及び(イ)に示したとおり、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、そして、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすのであるから、訂正後の請求項4に係る発明についてみても、同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正がされたことになり、そして、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。

ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について
訂正事項1及び2に係る訂正は、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないことは明らかであるから、この訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。

エ 訂正後の発明の独立特許要件について
請求項1、3及び4からなる一群の請求項について、全ての請求項に対し無効審判の請求がされているので、検討を要しない。

オ まとめ
よって、訂正事項1及び2に係る請求項1、3及び4からなる一群の請求項についての訂正は、許容されるものである。

(2)訂正事項3に係る段落【0061】の訂正について
訂正事項2に係る訂正は、段落【0061】の「2,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル」を、国際出願の明細書(国際公開(甲8)20頁30?31行参照)の「2,5-Dihydroisoxazol-5-yl」の記載に基づき、「2,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル」と誤訳訂正するものであるから、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、この訂正は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
また、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
また、上記(1)アの一群の請求項について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。
よって、訂正事項2に係る段落【0061】の訂正は、許容されるものである。

(3)訂正事項4に係る段落【0002】、【0030】及び【0063】の訂正について
訂正事項3に係る訂正のうち、段落【0002】の訂正は、
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により遮断されている}を表し、」

「X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、」
と、アルキレン鎖の炭素数の下限をC_(1)(炭素数1)からC_(2)(炭素数2)に訂正し、アルケニレン鎖の炭素数の下限をC_(2)(炭素数2)からC_(3)(炭素数3)に訂正し、アルキニレン鎖の炭素数の下限をC_(2)(炭素数2)からC_(3)(炭素数3)に訂正し、併せて「遮断」を「中断」と訂正するものである。段落【0030】及び【0063】の訂正も、同様に各鎖の炭素数の下限を訂正し、併せて「遮断」を「中断」と訂正するものである。
この訂正は、請求項1の「中断」との記載と整合させるもので、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正前の本件明細書における「遮断」という用語の意味は、
(i)例えば訂正前の段落【0002】の上記の
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により遮断されている}を表し、」
の記載は、少なくともヘテロ原子が鎖の端にあるものを排除していないが、端になければならないと解すべき理由もないこと、
(ii)好ましい化合物として記載された表1から36の化合物のX^(1)とHetの組合せを示した表Aに挙げられた全8個のX^(1)は、OCH_(2)、CH_(2)O、OCH_(2)CH_(2)、CH_(2)CH_(2)O、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)OCH_(2)CH=CH、CH=CHCH_(2)O、C≡CCH_(2)Oであって、ヘテロ原子は鎖の端にあるものと中間にあるものの両方があること、
(iii)外国語書面(本件特許に対応する国際公開(甲8)参照)における対応する語の「unterbrochen」は「unterbrechen」の過去分詞であって「unterbrechenされた」の意味であるところ、unterbrechenには、中断する、遮断するの、両方の意味があり、「Die Hecke wird (ist) von einer kleinen Pforte unterbrochen. 続いている生け垣の途中に小さな門がある」や「Der Verkehr ist durch einen Unfall unterbrochen worden. 交通は事故のために遮断された」のような使い方がされ(乙13)、ある状態がunterbrechenされた点の前後に存在する場合と、ある状態がunterbrechenされた点の前だけに存在する場合の両方を含み、前者を日本語では「中断」、後者を日本語では「遮断」と訳すと解されること、
からすると、もともと、遮断と中断の両方の意味を含んでいたと解される。
そうすると、訂正事項3により、段落【0002】、【0030】及び【0063】の記載を請求項1の記載に整合させる訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
また、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
また、上記(1)アの一群の請求項について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。
よって、訂正事項3に係る段落【0002】、【0030】及び【0063】の訂正は、許容されるものである。

(4)訂正事項5に係る段落【0068】の訂正について
訂正事項4に係る訂正は、段落【0068】の「X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し、」の「C_(2)アルケニレン鎖」を、国際出願の明細書(国際公開(甲8)24頁30行参照)の「C_(2)-Alkinylenekette」の記載に基づき「C_(2)アルキニレン鎖」と誤訳訂正するものであるから、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、この訂正は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
また、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
また、上記(1)アの一群の請求項について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。
よって、訂正事項4に係る段落【0068】の訂正は、許容されるものである。

(5)訂正事項6に係る段落【0071】の表Aの訂正について
訂正事項5に係る訂正は、もとの表Aの左端に1欄増やして「実施例」か「参考例」かを表示する訂正である。
この訂正は、請求項1の式Iaの化合物のX^(1)とHetの定義に該当するX^(1)とHetの組合せを、実施例と表示し、該当しないX^(1)とHetの組合せを、参考例と表示して、請求項1の記載と整合させるもので、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
また、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
また、上記(1)アの一群の請求項について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。
よって、訂正事項5に係る段落【0071】の表Aの訂正は、許容されるものである。

(6)訂正事項7に係る段落【0109】の訂正について
訂正事項6に係る訂正は、段落【0109】の「これらの組成物は、オオムギ、米、トウモロコシ、大豆、及び綿花等の作物の中に広範囲に残った雑草及び牧草に対して、栽培植物に損傷を与えることなく作用する。この効果は、主に低施与率で観察される。」の「・・・等の作物の中に広範囲に残った雑草及び牧草に対して・・・作用する」を、国際出願の明細書の「In Kulturen wie ・・・ wirken sie gegen Unkraeuter und Schadgraeser」(国際公開(甲8)58頁12?14行参照)(審決注:ウムラウトは代わりにeを付けて表した。次行も同じ。)の記載に基づき「・・・等の作物の中の広葉の雑草及びイネ科の雑草(Unkraeuter und Schadgraeser)に対して・・・作用する」と誤訳訂正するものであるから、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
また、この訂正は、外国語書面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められ、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定を満たす。
また、事実上特許請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定を満たす。
また、上記(1)アの一群の請求項について訂正を請求するものであるから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。
よって、訂正事項6に係る段落【0109】の訂正は、許容されるものである。

(7)まとめ
以上によれば、訂正事項1及び2に係る請求項1、3及び4からなる一群の請求項についての訂正並びに訂正事項3?7に係る発明の詳細な説明の訂正は、許容される。

3 訂正請求に対する請求人の主張について

(1)請求人の主張
請求人は、概略以下の主張をしている。

(i)本件訂正後に残された特定の選択肢の組合せは新たな技術事項を導入するものである。
マーカッシュ形式で記載された請求項において、願書に添付した明細書等に化学物質が多数の選択肢群の組合せで記載されている場合、すなわち、本件のように選択肢群R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHet等の組合せで化学物質が特定されている場合、個々の選択肢群は、その群内のものが一体として1つの概念を形成していると認識されるべきものである。したがって、そのような選択肢群の組合せも、個々の選択肢群が一体不可分のものとして、その他の一体不可分な選択肢群と組合わされた概念ないし技術事項と認識されるべきものである。換言すれば、たとえ1つの選択肢群のうちの特定の選択肢を抜き出し、また他の選択肢群のうちの特定の選択肢を抜き出してきて、それらを組み合わせることにより何らかの具体的な化合物が想起できるとしても、そのような具体的化合物が、直ちに願書に添付した明細書等に記載された技術事項ということはできない。したがって、明細書等の記載にはそのようにして訂正することの根拠がないにもかかわらず、1つの選択肢群から特定の選択肢を抜き出し、また他の選択肢群からも特定の選択肢をを抜き出しつつ、それらを組み合わせたことに相当する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではないと解されるべきこととなる。
そして、審査基準(甲35)を当て嵌めれば、本件訂正は、選択肢群R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetの何れをも限定することで、特定の選択肢の組合せが請求項に残るようにするものであるにもかかわらず、そのようにして残った選択肢とそれらの組合せは、実施例等の当初明細書等の全体の記載に基づいても、そこから把握しうる技術事項に相当するとはいえないから、新たな技術的事項を導入するものである。具体的に、本件特許明細書には、訂正後の「酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-」といった選択肢群はどこにも記載されていない。同じく、訂正後の「オキシラニル、2-オキセタニル、・・・3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリル」といった、特定の置換基だけからなる選択肢群は、どこにも記載されていない。したがって、本件特許明細書には、訂正後の選択肢群X^(1)及びHetの組合せが記載されていないことは明らかである。上記訂正後の選択肢群X^(1)とHetの組合せを有する化合物が具体的に記載されているかどうかについても見ると、審査基準が根拠として認め得るとしているような「実施例」ではない表Aにおいてさえも、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル及び2-テトラヒドロピラニルを有する化合物は記載されていない。そもそも本件特許明細書の実施例(合成例)は、X^(1)として-CH_(2)O-を有し、Hetとして1-メチルピラゾリルを有する化合物だけであり、仮にそれに加えて化合物の融点の記載がある表37を見たとしても、高々、X^(1)として-CH_(2)O-を有し、Hetとして1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル又は4-クロロ-1-ピラゾリルを有する化合物が記載されているだけである。審査基準の、「新たな技術的事項を導入するものではないと認められる場合」には該当しないことは明白である。(弁駁書2の5?9頁)

(ii)審査基準(甲35)には、「他方、請求項の発明特定事項を下位概念化する補正であっても、この補正により当初明細書等に記載した事項以外のものが個別化されることになる場合は、その補正は、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、このような補正は許されない。」と記されている。
本件特許明細書の段落【0061】、表A、合成例及び表37に記載された具体的なHetを総合したものは、概ね平成28年8月10日付けの訂正請求(以下「前回訂正請求」という。)に係る請求項3に記載されたHetに相当するものであるところ、本件特許明細書には、例えば本件実施例や表A、表37などをみても、前回訂正請求に係る請求項3に記載されたHetのうちから、本件訂正請求に係る請求項1及び3の特定のHetだけを選択することの根拠はない。してみれば、選択肢群Hetに係る訂正自体が、本件特許明細書等に記載した事項以外のものを個別化するものであることは明らかであるから、この点からも本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではなく、認められる余地はない。(弁駁書2の9?10頁)

(iii)訂正事項3は、本件明細書に記載された「遮断」の用語を「中断」に変更する点で、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。また、訂正前の段落【0002】、【0030】及び【0063】の記載は、C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖が「ヘテロ原子により遮断されている」とは、それらの鎖の中にヘテロ原子が存在している状態(つまり「中断」)ではなく、それらの鎖の端にヘテロ原子が結合している状態を表していることが明確に理解でき、段落【0071】の表Aにも、本件訂正で「参考例」とされたが、例えばC_(1)アルキレン鎖が酸素により遮断された化合物が多数記載されているから(No.1?115)、何ら不明瞭なものではない。したがって、訂正事項3が、明瞭でない記載の釈明を目的とするということはできない。(弁駁書18?22頁、上申書1の3?8頁、陳述要領書3?7頁、上申書2の3?6頁)

(2)検討

ア 請求人の(i)の主張について
R^(1)、R^(2)、X^(1)については上記2(1)イ(ア)b?dで、Hetについては同eで、それぞれ、それら以外の部分構造が特定のものである場合に限られるものでないことも含め、述べたとおりである。

イ 請求人の(ii)の主張について
上記2(1)イ(ア)eで述べたとおりである。本件訂正は、審査基準にいう、特定の化合物に個別化した場合にも、当たらない。本件訂正は、本件特許明細書の段落【0061】、表Aや表37に根拠があり、また、実施可能要件及びサポート要件の無効理由が示されたことに伴い、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetの選択肢を広めに削除したものであり、本件特許明細書等に記載した事項以外のものを個別化するものであるとはいえない。

ウ 請求人の(iii)の主張について
上記2(3)で述べたとおりである。
訂正前の段落【0002】、【0030】、【0063】の「遮断されている」の記載は、もともと、遮断(ヘテロ原子が鎖の端にあるもの)と中断(ヘテロ原子が鎖の中間にあるもの)の両方の意味を含んでいたと解される。請求人の主張は、専ら上記の遮断(ヘテロ原子が鎖の端にあるもの)の意味であるとするものであり、採用できない。

4 訂正の適否についてのまとめ
よって、平成28年8月26日付けで請求された訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2の項で示したように、平成28年8月26日付けの訂正請求は適法なものであるから、本件特許の請求項1、3、4に係る発明は、本件訂正明細書(本件訂正明細書を、以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1、3、4に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項3に係る発明を「本件発明3」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)また、先の訂正審判により削除された請求項2については、「【請求項2】(削除)」として、併せて示す。
「【請求項1】式Ia

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表し、
Hetが、
オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩。
【請求項2】(削除)
【請求項3】Hetが、
2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す請求項1に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン。
【請求項4】請求項1又は3に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンの製造方法であって、 置換又は非置換のシクロヘキサン-1,3-ジオンQを、カルボン酸IIIb’

[但し、置換基R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetが、それぞれ請求項1と同義である]
でアシル化し、適宜触媒の存在下に、アシル化生成物を転位させて化合物Iaを得ることを特徴とする製造方法。」

第4 請求人の主張する無効理由の概要及び請求人が提出した証拠方法等

1 無効理由の概要
請求人は、請求の趣旨の欄を「特許第4592183号発明の特許請求の範囲の請求項1、3及び4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とした審判請求書及び無効審判弁駁書で、概略以下の無効理由1?4を主張し(調書も参照)、無効審判弁駁書2で、同様の無効理由1?3を主張している。
【無効理由1】
本件明細書には本件発明1、3及び4の課題が解決できることを当業者が認識できるための説明や具体例が何一つ記載されておらず、技術常識に照らしても上記の課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえないため、本件発明1、3及び4は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。したがって、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
【無効理由2】
本件明細書には、本件発明1、3及び4に係る化学物質を作ることができ且つ使用することができることを示した実施例がないため、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、3、4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。したがって、本件発明1、3、4についての特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
【無効理由3】
本件発明1、3及び4は、本件優先日前に頒布された甲1?甲4(主引用例は、本件発明1及び3については甲1、本件発明4については甲2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
【無効理由4】
本件外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項のうち、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、国際出願時の国際出願明細書の実施例等に「単一の化学物質」群として記載されていないため、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第184条の18で準用する第123条1項第5号に該当し、無効とすべきものである。

2 請求人が提出した証拠方法等
以下の証拠方法が提出されている。

[審判請求書に添付]
甲1:特開平8-20554号公報
甲2:特開平7-206808号公報
甲3:特開平6-321932号公報
甲4:特開平6-271562号公報
甲5:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)に対する欧州特許庁審査官の2010年4月22日付けの拒絶理由通知書
甲6:(欠番)
甲7:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)における、被請求人の2009年11月16日付けの意見書及び補正書
甲8:国際公開99/10327号(本件特許に対応する国際公開)
甲9:特願2000-507656号(本件特許に対応する出願)に係る不服2010-15970号の審判請求書を補正する平成22年7月23日付け手続補正書

[審判事件弁駁書に添付]
甲10:不服2013-19717号(本件特許に対応する出願である特願2000-507656号から平成22年7月15日に分割出願された特願2010-160833号に対する拒絶査定不服審判)の平成27年4月1日付け審決
甲11:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)に対する2012年5月11日付け特許査定
甲12:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)に対する2012年5月11日付け特許査定の添付書類
甲13:高橋信孝,「農薬の化学」,5版,文永堂出版,昭和59年4月20日,p.148-149,288-289
甲14:平成22年1月28日言渡平成21年(行ケ)第10033号判決
甲15:平成27年4月28日言渡平成25年(行ケ)第10250号判決
甲16:平成25年4月11日言渡平成24年(行ケ)第10299号判決
甲17:平成23年12月26日言渡平成22年(行ケ)第10402号判決
甲18:平成25年1月31日言渡平成24年(行ケ)第10052号判決
甲19:バイエル・クロップサイエンス・アーゲーのクリストファー・ヒュー・ロジンガー博士が2015年9月14日付けで作成した陳述書
甲20:特許第5005852号公報

[上申書1に添付]
甲21:平成26年10月9日言渡平成25年(行ケ)第10346号判決
甲22:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)に対する欧州特許庁審査官の2010年4月22日付け拒絶理由通知書(甲5)のカバーシート
甲23:平成17年(行ケ)第10042号判決(大合議判決)
甲24:平成22年7月15日言渡平成21年(行ケ)第10238号判決
甲25:(準備書面につき省略)
甲26:(同上)
甲27:(同上)

[口頭審理陳述要領書に添付]
甲28:平成19年10月11日言渡平成18年(行ケ)第10509号判決
甲29:N. E. Schore著,大嶌幸一郎,小田嶋和徳,小松満男,戸部義人訳,「ボルハルト・ショアー 現代有機化学 問題の解き方(第4版)」,第7刷,化学同人,2008年7月20日,p.239
甲30:「特許実用新案審査基準」,特許庁,2011年10月,第I部第1章のp.1-68
甲31:平成27年(ワ)第2862号特許権侵害行為差止等請求事件(本件の関連訴訟)における被請求人(訴訟原告)代理人の裁判所及び相手方に宛てたファクシミリによる平成27年8月28日付け回答書

[上申書3に添付]
甲32:K. P. C. Vollhardt,N. E. Schore著,古賀憲司,野依良治,村橋俊一監訳,大嶌幸一郎,小田嶋和徳,小松満男,戸部義人訳,「ボルハルト・ショアー 現代有機化学(第3版)〔上〕」,第3版第1刷,化学同人,1999年11月10日,p.363-364,591
甲33:Collection Czechoslov. Chem. Commun.,43,1978,p.3404-3408
甲34:バイエル・クロップサイエンス・アーゲーのクリストファー・ヒュー・ロジンガー博士が2016年2月29日付けで作成した陳述書

[審判事件弁駁書2に添付]
甲35:「特許実用新案審査基準」,特許庁,2016年3月23日,第IV部第2章のp.1-12
甲36:特開平6-73044号公報
甲37:特開2000-327632号公報
甲38:特開平9-183745号公報
甲39:特表2013-536866号公報
甲40:平成28年3月31日言渡平成27年(行ケ)第10052号判決
甲41:「特許実用新案審査基準」,特許庁,2016年3月23日,第II部第1章のp.1-13

第5 被請求人の主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法等

1 被請求人の主張の概要
被請求人は、「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、請求人が主張する無効理由のいずれにも理由がない旨の反論をしている(調書も参照)。

2 被請求人が提出した証拠方法等
以下の証拠方法が提出されている。

[審判事件答弁書に添付]
乙1:平成27年8月10日付け訂正請求書(以下の乙6及び乙7を含む)
乙2:BASF社のVice PresidentであるReinhold Kosterが2015年8月7日付けで署名した実験成績証明書1
乙3:BASF社のVice PresidentであるReinhold Kosterが2015年8月7日付けで署名した実験成績証明書2
乙4:新村出編,「広辞苑 第六版」,第六版第四刷,岩波書店,2013年2月12日,「ちゅう・だん〔中断〕」の項を記載した頁及び「しゃ・だん〔遮断〕」の項を記載したp.1303
乙5:特願2000-507656号(本件特許に対応する出願)に係る平成21年8月27日付け拒絶理由通知書

[訂正請求書に添付]
乙6:平山健三,平山和雄訳著,「有機化学・生化学命名法 上」,改訂第2版,南江堂,1988年9月15日,p.20
乙7:ホクレン農協.net,「農薬の基礎知識 VI.雑草の防除」(http://www.nouyaku.hokuren.or.jp/basis/index.html)

[上申書1に添付]
乙8:平成17年11月11日言渡平成17年(行ケ)10042号判決(甲23と同じ)
乙9:判例タイムズ,1192,2006.1.1,p.164-181
乙10:BASF SE社のトレヴァー・ウィリアム・ニュートン博士が2015年11月25日付けで署名した実験成績証明書1(実験実施及びデータ管理責任者の陳述による乙2と同一内容の証明書)
乙11:BASF SE社のトレヴァー・ウィリアム・ニュートン博士が2015年11月30日付けで署名した実験成績証明書2(実験実施及びデータ管理責任者の陳述による乙3と同一内容の証明書)
乙12:本件の対応欧州出願(EP98942611.9)について被請求人が2007年7月17日付けで提出した「Request for further processing」

[口頭審理陳述要領書に添付]
乙13:国松孝二編,「小学館 独和大辞典」,初版8刷,小学館,1993年3月10日,「unterbrechen」の項を記載した頁及び「unterbrochen」の項を記載した頁
乙14:桜井和市,「改訂ドイツ広文典」,改訂58版,第三書房,2006年4月30日,p.166-173

[上申書2に添付]
乙15:BASF SE社のマティアス ウィッチェル博士が2016年2月4日付けで署名した実験成績証明書3
乙16:Tetrahedron Letters,21,1980,p.969-970
乙17:J. Org. Chem.,1991,56,p.3556-3564J
乙18:特開2009-227655号公報の抜粋,p.1,260-265
乙19:独国出願公開第2209470号公報
乙20:Chem. Pharm. Bull.,29(5),1981,p.1274-1279
乙21:CAS REGISTRY 物質レコード,(1)?(19)
乙22:BASF SE社のトレヴァー・ウィリアム・ニュートン博士が2016年2月5日付けで署名した実験成績証明書4
乙23:バイエル・クロップサイエンス・アーゲーのクリストファー・ヒュー・ロジンガー博士が2015年9月14日付けで作成した陳述書(甲19と同じ)
乙24:バイエル・クロップサイエンス・アーゲーの甲20特許の欧州特許出願(EP99946146.0)における欧州特許庁への提出書類

[上申書4に添付]
乙25の1:J. Am. Chem.,1954,76,p.516-519
乙25の2:乙25の1の表紙
乙25の3:乙25の1のp.516に書誌事項が表示されたもの
乙26:New J. Chem,1990,14,p.359-364
乙27:Tetrahedron Letters,29(23),1988,p.2783-2786

[上申書5に添付]
乙28:CAS REGISTRY物質レコード,(1)?(22)
乙29:CAS REGISTRY物質レコード,p.1-16

第6 当審の判断
当審は、無効理由1?4はいずれも理由がない、と判断する。
その理由は、以下のとおりであるが、事案に鑑み、無効理由4、同2、同1、同3の順に示すことにする。

1 無効理由4について
無効理由4の概要は、本件外国語特許出願に係る特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項のうち、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、国際出願時の国際出願明細書の実施例等に「単一の化学物質」群として記載されていないため、特許法第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第184条の18で準用する第123条1項第5号に該当し、無効とすべきものである、というものである。

(1)国際出願明細書の記載
甲8は、本件特許に対応する国際公開であって、国際出願日における国際出願の明細書及び特許請求の範囲(以下「国際出願明細書」という。)と同一の事項が記載されていると認める。甲8には、X^(1)の化学構造について、以下の記載がある。

ア 本件明細書の段落【0002】の式Iについての説明中のX^(1)の説明に対応する記載


」(1頁45行?2頁21行)

イ 本件明細書の段落【0030】の式IIIについての説明中のX^(1)の説明に対応する記載
式IIIは、式Iで表される化合物を製造するための中間体として記載されている化合物である。


」(9頁14?38行)

ウ 本件明細書の段落【0058】の式Iの化合物の重要なものについての説明中のX^(1)の説明に対応する記載




エ 本件明細書の段落【0063】の式Iの化合物の好ましいものについての説明中のX^(1)の説明に対応する記載


」(23頁3?17行)

オ 本件明細書の段落【0068】の式Iaについての説明中のX^(1)の説明に対応する記載




カ 本件明細書の段落【0070】?【0108】及びその中の表Aに対応する記載
表Aは、上記第2の2(1)イ(ア)e及びgで検討したとおり、表1?36の化合物IbにおけるX^(1)とHetの組合せを920個(8個のX^(1)毎に同じ115個のHetの組合せ)示した表である。ここに記載されている8個のX^(1)は、記載されている順に、以下のものである。(25頁38行?58頁6行、表Aは26?52頁)
OCH_(2)
CH_(2)O
OCH_(2)CH_(2)
CH_(2)CH_(2)O
CH_(2)OCH_(2)
CH_(2)OCH_(2)CH=CH
CH=CHCH_(2)O
C≡C-CH_(2)O

キ 本件明細書の段落【0130】?【0135】及びその中の表37に対応する記載
X^(1)がCH_(2)OでありHetが1-メチルピラゾール-5-イルである化合物の合成例及び融点が記載されている。表37には、X^(1)がCH_(2)OでありHetがそれとは異なる(R^(6)?R^(11)も異なる)化合物の融点が記載されている。(63頁1行?64頁39行)

(2)検討

ア 上記(1)ア及びイによれば、国際出願明細書において、最も上位概念で記載された化合物IについてX^(1)の化学構造は、直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖が、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により「unterbrochen」、すなわち「unterbrechenされる」、というものであり、上記(1)エの式Iの化合物の好ましいものについても、各鎖の炭素数の上限がC_(4)とされている他は、同じである。
また、より限定された上記(1)ウでは、式Iの化合物の重要なものについて「基X^(1)が、1個の他の酸素又は硫黄原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し」というものであり、上記(1)オでは、式Iaの化合物について「X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し」というものである。
さらに、X^(1)が具体的な化学構造で示されているのは、上記(1)カの表Aにおける
OCH_(2)
CH_(2)O
OCH_(2)CH_(2)
CH_(2)CH_(2)O
CH_(2)OCH_(2)
CH_(2)OCH_(2)CH=CH
CH=CHCH_(2)O
C≡C-CH_(2)O
であり、また上記(1)キの合成例及び表37におけるCH_(2)Oである。

イ ここで、unterberechenの意味を考察すると、上記第2の2(3)で訂正事項3に関連して検討したとおりであり、unterbrechenには、中断する、遮断するの、両方の意味があり、「Die Hecke wird (ist) von einer kleinen Pforte unterbrochen. 続いている生け垣の途中に小さな門がある」や「Der Verkehr ist durch einen Unfall unterbrochen worden. 交通は事故のために遮断された」のような使い方がされ(乙13)、ある状態がunterbrechenされた点の前後に存在する場合と、ある状態がunterbrechenされた点の前だけに存在する場合の両方を含み、前者を日本語では「中断」、後者を日本語では「遮断」と訳すと解される。すると、上記(1)ア、イ、エのunterubrechenは、ヘテロ原子がアルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖の中間にあるものと、端にあるものの、両方を意味していると理解できる。
そして、この理解は、上記(1)ウの式Iの化合物の重要なもののX^(1)の記載、上記(1)オの式IaのX^(1)についての記載、上記(1)カ、キに具体的に示されたX^(1)の記載とも、整合するものである。

ウ そして、請求人が指摘する「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」の記載の、前段は、酸素により中断された、C_(2)アルキレン鎖、C_(3)アルキレン鎖、C_(3)アルケニレン鎖又はC_(3)アルキニレン鎖に対応し、後段は、酸素により遮断されたC_(1)アルキレン鎖であるOCH_(2)とCH_(2)Oのうちの後者に対応すると、理解できる。

エ 以上によれば、本件明細書に記載した、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、上記(1)アの、
「X^(1)が直鎖又は分岐C_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子によりunterberechenされている}を表し」
から、
ヘテロ原子から硫黄を削除し、
酸素によりunterbrechenされるC_(1)?C_(6)アルキレン鎖、C_(2)?C_(6)アルケニレン鎖、C_(2)?C_(6)アルキニレン鎖から、C_(4)?C_(6)のアルキレン鎖、C_(2)及びC_(4)?C_(6)のアルケニレン鎖、C_(2)及びC_(4)?C_(6)のアルキニレン鎖を削除し、
酸素によりunterbrechenされるC_(1)アルキレン鎖については-OCH_(2)-を削除し「-CH_(2)O-」を残し、
酸素によりunterbrechenされるC_(2)アルキレン鎖については酸素が鎖の端につくものを削除し「酸素により中断された、エチレン・・・鎖」を残し、
酸素によりunterbrechenされるC_(3)アルキレン鎖については酸素が鎖の端につくものを削除し「酸素により中断された、・・・プロピレン・・・鎖」を残し、
酸素によりunterbrechenされるC_(3)アルケニレン鎖については酸素が鎖の端につくものを削除し「酸素により中断された、・・・プロペニレン・・・鎖」を残し、
酸素によりunterbrechenされるC_(3)アルキニレン鎖については酸素が鎖の端につくものを削除し「酸素により中断された、・・・プロピニレン鎖」を残した、
ものであるから、国際出願明細書に記載した事項の範囲内のものである。

オ 本件訂正後の特許請求の範囲においては、上記で検討した、式Iaの化合物の置換基X^(1)についての「酸素により中断されたエチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」は、「酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表し」となったが、結論は上記エと同じである。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、国際出願時の国際出願明細書の実施例等に「単一の化学物質」群として記載されていない、と主張し、その理由として、以下の(i)?(iii)を挙げるが、何れも採用できない。

(i)請求人は、アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖のうち、ヘテロ原子によりunterbrechenされたり、ヘテロ原子を含むのは、アルキニレン鎖のみであると主張する。(審判請求書34?40頁、41頁)
しかし、上記(1)ア?オの記載は、文法的にみても、ヘテロ原子によりunterbrechenされたりヘテロ原子を含むのは、列挙された鎖のいずれについても当てはまる事項として記載されているといえるから、請求人の主張は、誤りである。

(ii)請求人は、C_(2)アルキニレン鎖が酸素で中断されることなどあり得ないから、「ヘテロ原子により遮断されているC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖」の「遮断されている」に「中断されている」の意味はないと主張する。(審判請求書40?41頁、弁駁書62?63頁、上申書1の10頁)
しかし、unterbrechenには、日本語でいうところの中断と遮断の両方の意味があること、そのように理解することが本件明細書の全体の記載とも整合することは、上記(1)に示したとおりである。したがって、C_(2)アルキニレン鎖のみを取り上げてC_(2)?C_(6)アルキニレン鎖も中断の意味を含まないと解する請求人の主張は、採用できない。

(iii)請求人は、表Aは、式Ibに関するもので、式Iaに関するものではなく、式Iaの化合物と式Ibの化合物とが明確に異なる化合物群を形成しているから、表Aを基にして式Iaにおける「X^(1)が酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-」が、国際出願明細書に記載の範囲であるとすることはできないと主張する。(審判請求書41?44頁、弁駁書61?62頁、上申書1の10?11頁)
しかし、上記(2)に示したとおり、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、上記(1)ア?オの記載に既に根拠があり、表Aや合成例の記載も整合するものである。請求人の主張は、採用できない。

イ その他、請求人は、欧州特許庁における審査官の見解を引用して、独自の見解を述べるが、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項が国際出願明細書に記載した事項の範囲内でないことを、何ら根拠づけるものではないから、採用できない。

(4)無効理由4についてのまとめ
以上のとおり、式Iaの化合物の置換基X^(1)が「酸素により中断された、エチレン、プロピレン、プロペニレンまたはプロピニレン鎖、或いは-CH_(2)O-を表し」との事項は、国際出願明細書に記載した事項の範囲内にないということはできないから、特許法第184条の18で準用する第123条1項第5号に該当せず、無効理由4によっては、無効とすべきものではない。

2 無効理由2について
無効理由2の概要は、本件明細書には、本件発明1、3及び4に係る化学物質を作ることができ且つ使用することができることを示した実施例がないため、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、3、4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。したがって、本件発明1、3、4についての特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである、というものである。

(1)はじめに
以下の観点に立って、検討する。
物の発明における発明の「実施」とは、その物の生産、使用等をする行為をいう(特許法2条3項1号)から、特許法36条4項の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物の発明については、明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。
物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいう(特許法2条3項3号)から、特許法36条4項の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できることである。したがって、物を生産する方法の発明については、明細書の記載又はその示唆及び出願当時の技術常識に基づき、当業者がその方法により物を生産することができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。

(2)発明の詳細な説明の記載

ア 背景技術、発明が解決しようとする課題、上位概念の式Iの化合物及びその用途についての記載
本件明細書の段落【0001】?【0016】に、以下の記載がある。
「【0001】本発明は、式I
【0002】

[但し、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ水素、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシ、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)、-OCOR^(3)、-OSO_(2)R^(3)、-S(O)_(n)R^(3)、-SO_(2)OR^(3)、-SO_(2)N(R^(3))_(2)、-NR^(3)SO_(2)R^(3)又は-NR^(3)COR^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ(最後の8個の基は置換されていても良い)を有していても良く;
nが0、1又は2を表し;
Qが、2位で結合する、置換基を有していても良いシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1個以上の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシから選択される基で置換されていても良く;
Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は3?6員のヘテロ芳香族基{これら基は、下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する}を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩に関する。
【0003】さらに本発明は、式Iの化合物を製造する方法及びそのための中間体、化合物Iを含む組成物、式Iの化合物の使用、並びに有害植物防除用としての化合物Iを含む組成物に関する。
【0004】2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンは、文献、例えばEP-A278742、EP-A298680、EP-A320864及びWO96/14285に開示されている。
【0005】しかしながら、従来技術の化合物が示す除草特性及びその栽培植物の安全性は、完全に満足できるものではない。
【0006】本発明の目的は、新規な、特に除草作用において、特性が改良された化合物を提供することにある。
【0007】本発明者等は、この目的が式Iの2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン及びその除草作用により達成されることを見出した。
【0008】さらに本発明者等は、化合物Iを含み極めて良好な除草作用のある除草剤組成物を見出した。さらに、本発明者等は、これら組成物を製造する方法及びこの化合物Iを用いて望ましくない植生を制御する方法を見出した。
【0009】本発明は、さらに式Iで表される化合物の立体異性体を提供することにある。この異性体には、純粋な立体異性体のみならず、その混合物も含まれている。
【0010】置換形式により、式Iの化合物は1個以上のキラル中心を有することができ、この場合、エナンチオマー又はジアステレオマー混合物として存在する。本発明は、純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーのみならず、これらの混合物に関するものでもある。
【0011】式Iの化合物は、その農業上有用な塩の形態で存在することもでき、塩の種類は一般に重要でない。一般に、これらのカチオンの塩又はこれら酸の酸付加塩が適当であり、そのカチオン又はアニオンは、化合物Iの除草作用に悪影響を与えない。
【0012】好適なカチオンは、特にアルカリ金属、好ましくはリチウム、ナトリウム及びカリウムのイオン、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及びマグネシウムのイオン、並びに遷移金属、好ましくはマンガン、銅、亜鉛及び鉄のイオンであり、さらにまたアンモニウム塩(必要により、1?4個の水素原子は、C_(1)?C_(4)アルキル又はヒドロキシC_(1)?C_(4)アルキル及び/又は1個のフェニル又はベンジルで置き換わって良い)、好ましはジイソプロピルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムであり、さらにホスホニウムイオン、スルホニウムイオン(好ましくは、トリ(C_(1)?C_(4)アルキル)スルホニウム)及びスルホキソニウムイオン(好ましくはトリ(C_(1)?C_(4)アルキル)スルホキソニウムである。
【0013】有用な酸付加塩のアニオンは、主に塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸水素塩、硫酸塩、燐酸二水素塩、燐酸水素塩、硝酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ヘキサフルオロ珪酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、安息香酸塩であり、またさらにC_(1)?C_(4)アルカン酸のアニオン、好ましくはホルマート、アセタート、プロピオナート及びブチラートである。
【0014】Qは2位で結合する式II
【0015】

で表され、さらに互変異性体II’及びII”
【0016】

も表すシクロヘキサン-1,3-ジオン環である場合の、本発明の式Iで表される化合物が特に重要である:
[但し、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し;
R^(8)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(3)?C_(4)シクロアルキル{最後の2個の基は1?3個の下記の基:ハロゲン、C_(1)?C_(4)アルキルチオ又はC_(1)?C_(4)アルコキシから選択される置換基を有していても良い}を表し、或いは
テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチオラン-2-イル又は1,3-ジチアン-2-イル{最後の6個の基は1?3個のC_(1)?C_(4)アルキル基で置換されていても良い}を表し;
R^(10)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(1)?C_(6)アルコキシカルボニルを表し、又は
R^(8)とR^(11)が合体して、π結合又は3?6員の炭素環を形成し;又は
上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]。」

イ 式Iの化合物の合成についての一般的な記載
段落【0017】?【0057】に、以下の記載がある。
「【0017】方法A:
式IIのシクロヘキサン-1,3-ジオンを、好ましくは系内で活性化される活性化カルボン酸IIIa又はカルボン酸IIIbと反応させ、アシル化生成物IVを得、次いで本発明の式Iの化合物に転位させる反応。
【0018】

L^(1)は求核置換可能な脱離基であり、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、又はカルボキシラート(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)等が挙げられる。
【0019】活性化カルボン酸を、ハロゲン化アシルの場合のように直接使用することができ、或いは系内で、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、トリフェニルホスフィン/アゾジカルボン酸エステル、2-ピリジンジスルフィド/トリフェニルホスフィン、カルボニルジイミダゾール等を用いて発生させることができる。
【0020】塩基の存在下にアシル化反応を行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基を、等モル量で使用することが有利である。特定の条件では、IIに対して僅かに過剰の、例えば1.2?1.5モル等量の補助塩基が有利であろう。
【0021】好適な補助塩基は、第三級アルキルアミン、ピリジン又はアルカリ金属炭酸塩である。使用することができる溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0022】ハロゲン化アシルを、活性化カルボン酸成分として使用した場合、この反応材料を添加した際に反応混合物を0?10℃に冷却することが有利である。次いで、混合物を20?100℃、好ましくは25?50℃で、反応が完結するまで撹拌する。後処理は、慣用法で行われ、例えば反応混合物を水に注ぎ、所望の生成物を抽出する。この目的に特に好適な溶剤は、塩化メチレン、ジエチルエーテル及び酢酸エチルである。有機層を乾燥し、溶剤を除去した後、式IVの粗エノールエステルが、好ましくはクロマトグラフィー処理することにより精製される。或いは、転位反応を行うために、式IVの粗エノールエステルを、さらに精製することなく用いることも可能である。
【0023】式IVの粗エノールエステルを反応させて式Iの化合物に転位させる反応は、塩基の存在下、また適宜シアノ化合物の存在下、溶剤中、20?40℃で行われることが有利である。
【0024】使用することができる溶剤の例としては、アセトニトリル、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、又はこれらの混合物である。好ましい溶剤は、アセトニトリル及びジオキサンである。
【0025】適当な塩基は、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、又はアルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム)であり、これら塩基は上記エステルに対して等モル量で、又は4倍量までの過剰量で使用することが好ましい。トリエチルアミン又はアルカリ金属炭酸塩を用いることが好ましい。
【0026】適当なシアノ化合物は、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等の無機シアン化物、及びアセトンシアノヒドリン、トリメチルシリルシアニド等の有機シアノ化合物である。これらは、上記エステルに対して1?50モル%の量で使用される。アセトンシアノヒドリン又はトリメチルシリルシアニドを使用することが好ましく、例えば上記エステルに対して、5?15モル%、好ましくは10モル%の量で使用される。
【0027】特に、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カリウムを、アセトニトリル又はジオキサン中で用いることが好ましい。
【0028】後処理は、それ自体公知の方法で行われる。例えば、反応混合物を希薄な鉱酸(例えば、5%濃度の塩酸又は硫酸)で酸性化し、有機溶剤(例えば、塩化メチレン又は酢酸エチル)で抽出する。有機層を、5?10%濃度アルカリ金属炭酸塩溶液(例えば、炭酸ナトリウム溶液又は炭酸カリウム溶液)で抽出することができる。水層を酸性化し、形成した沈殿を吸引ろ過及び/又は塩化メチレン若しくは酢酸エチルで抽出し、乾燥し、そして濃縮する。
【0029】式IIIで表される安息香酸は、新規である:
【0030】

[但し、R^(1)とR^(2)が、それぞれ水素、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシ、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)、-OCOR^(3)、-OSO_(2)R^(3)、-S(O)_(n)R^(3)、-SO_(2)OR^(3)、-SO_(2)N(R^(3))_(2)、-NR^(3)SO_(2)R^(3)又は-NR^(3)COR^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ(最後の8個の基は置換されていても良い)を有していても良く;
nが0、1又は2を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1個以上の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシから選択される基で置換されていても良く;
Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は3?6員のヘテロ芳香族基{これら基は、窒素、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子を3個まで有する}を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良く;
R^(12)がヒドロキシル又は加水分解可能な基を表す]。
【0031】加水分解可能な基の例としては、アルコキシ、フェノキシ、アルキルチオ及びフェニルチオ(置換されていることもある)、ハロゲン化物、窒素を介して結合するヘテロアリール基、アミノ及びイミノ基(置換されていることもある)、等である。
【0032】L^(1)がハロゲンであるハロゲン化ベンゾイルIIIa(R^(12)がハロゲンであるIIIに該当)
【0033】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義であり、L^(1)はハロゲン、特に塩素又は臭素である]
が好ましい。
【0034】さらに式IIIb(R^(12)がヒドロキシルであるIIIに該当)
【0035】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義である]
で表される安息香酸が好ましい。
【0036】さらに式IIIc(R^(12)がC_(1)?C_(6)アルコキシであるIIIに該当)
【0037】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義であり、MはC_(1)?C_(6)アルコキシである]
で表される安息香酸エステルが好ましい。
【0038】式IIIの好ましい安息香酸について、式Iで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンで述べたことは、基R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetに使用する。
【0039】式IIIa(L^(1)がハロゲン)の化合物は、文献(L. G. Fieser,M. Fieser “Reagents for Organic Synthesis”,第I巻,767?769頁 (1967)、参照)により知られている類似の方法により、式IIIbの安息香酸を、ハロゲン化剤(例えば、塩化チオニル、臭化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、塩化オキサリル及び臭化オキサリル)と反応させて合成することができる。
【0040】式IIIbの安息香酸は、特に式IIIcの安息香酸エステル(MがC_(1)?C_(6)アルコキシ)を加水分解することにより得ることができる。
【0041】本発明の式IIIcで表される安息香酸エステルは、下記の例に記載されているように、文献(例えば、a:G. Dittus in Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie,第VI/3巻,Oxygen compounds I,第4版,493頁以下.,Georg Thieme Verlag,1965;b:T. L. Gilchrist,Heterocyclenchemie,第2版,Verlag Chemie,1995)公知の種々の方法により製造することができる。
【0042】方法B:
安息香酸エステルVaを適当な求核試薬VIで置換して、本発明の安息香酸エステルIIIcを得る;
【0043】

[但し、M、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ上記と同義であり、
L^(2)が適当な求核置換可能な脱離基、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、カルボキシラート(例えば、アセタート、トリフルオロアセタート)、スルホナート(例えば、メシラート、トリフラート)等を表し、
X^(2)が、炭素原子が少なくとも1個で、最大5個の、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、
X^(3)が、最大5個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、且つはX^(2)OX^(3)は基X^(1)を形成する]。
【0044】一般に、出発材料は等モル量で用いられる。しかしながら、過剰量の出発材料又は他の成分を使用することが有利であろう。
【0045】適宜、反応を塩基の存在下で行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基は、等モル量で用いることが有利である。特定の場合、Vaに対して、過剰量の補助塩基、例えば1.5?3モル等量用いることが有利であろう。
【0046】適当な補助塩基は、第三級アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)である。トリエチルアミン、ピリジン及び炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0047】適当な溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物である。
【0048】一般に反応温度は、0℃?反応混合物の沸点の間である。
【0049】後処理は、それ自体公知の方法で行われる。
【0050】方法C:
適当な置換ヘテロシクリルVIIを安息香酸エステルVbで置換して、本発明の安息香酸エステルIIIcを得る;
【0051】

[但し、M、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ上記と同義であり、
L^(2)が適当な求核置換可能な脱離基、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、カルボキシラート(例えば、アセタート、トリフルオロアセタート)、スルホナート(例えば、メシラート、トリフラート)等を表し、
X^(2)が、炭素原子が少なくとも1個で、最大5個の、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、
X^(3)が、最大5個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は部分的にハロゲン化されてても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、且つはX^(2)OX^(3)は基X^(1)を形成する]。
【0052】一般に、出発材料は等モル量で用いられる。しかしながら、過剰量の出発材料又は他の成分を使用することが有利であろう。
【0053】適宜、反応を塩基の存在下で行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基は、等モル量で用いることが有利である。特定の場合、VIIに対して、過剰量の補助塩基、例えば1.5?3モル等量用いることが有利であろう。
【0054】適当な補助塩基は、第三級アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)である。トリエチルアミン、ピリジン及び炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0055】適当な溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物である。
【0056】一般に反応温度は、0℃?反応混合物の沸点の間である。
【0057】後処理は、それ自体公知の方法で行われる。」

ウ 式Iの化合物のうち重要とされる化合物についての記載
段落【0058】?【0059】に、以下の記載がある。
「【0058】本発明の式Iで表される以下の化合物が重要である。即ち、 基X^(1)が、1個の他の酸素又は硫黄原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し、 Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有する、3?6員のヘテロ芳香族基{このヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い}を表す。
【0059】さらに、本発明の式Iで表される以下の化合物が重要である。即ち、Hetが、5員若しくは6員の部分飽和若しくは完全飽和のヘテロシクリル基、又は窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有する、5員若しくは6員のヘテロ芳香族基{このヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い}を表し;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い。」

エ 式Iの化合物のX^(1)、Het以外の部分についての記載
段落【0060】に、R^(1)?R^(12)について、以下の記載がある。
「【0060】置換基R^(1)?R^(12)について、或いはフェニル、ヘテロアリール環及びヘテロシクリル環の基として記載された有機基は、個々の基の構成員をそれぞれ例示するための共通の用語を表す。全ての炭化水素鎖、即ち全てのアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルイミノオキシ、アルコキシアミノ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシカルボニル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル部分は、直鎖でも分岐でも良い。特段述べない限り、ハロゲン化置換基は、1個?5個の同一又は異なるハロゲンを有することが好ましい。ハロゲンは、それぞれフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。」

オ 用語の定義又は例示の記載
段落【0061】?【0062】に、以下の記載がある。
「【0061】他の意味の例として、下記のものを挙げることができる:
C_(1)?C_(4)アルキル及びC_(1)?C_(4)アルキルカルボニルのアルキル部分:メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル及び1,1-ジメチルエチル;
C_(1)?C_(6)アルキル、及びC_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル及びC_(1)?C_(6)アルキルカルボニルのアルキル部分:上述のC_(1)?C_(4)アルキル、さらにペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-3-メチルプロピル;
C_(1)?C_(4)ハロアルキル:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(4)アルキル基、例えばクロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、2-ヨードエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3-フルオロプロピル、2,2-ジフルオロプロピル、2,3-ジフルオロプロピル、2-クロロプロピル、3-クロロプロピル、2,3-ジクロロプロピル、2-ブロモプロピル、3-ブロモプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,3-トリクロロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエチル、1-(クロロメチル)-2-クロロエチル、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエチル、4-フルオロブチル、4-クロロブチル、4-ブロモブチル及びノナフルオロブチル;
C_(1)?C_(6)ハロアルキル及びC_(1)?C_(6)ハロアルキルカルボニルのハロアルキル部分:上述のC_(1)?C_(4)ハロアルキル、さらに5-フルオロペンチル、5-クロロペンチル、5-ブロモペンチル、5-ヨードペンチル、ウンデカフルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、6-クロロヘキシル、6-ブロモヘキシル、6-ヨードヘキシル及びドデカフルオロヘキシル;
C_(1)?C_(4)アルコキシ、及びC_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル及びC_(1)?C_(4)アルコキシカルボニルのアルコキシ部分:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ及び1,1-ジメチルエトキシ;
C_(1)?C_(6)アルコキシ、及びC_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(2)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル及びC_(1)?C_(6)アルコキシカルボニルのアルコキシ部分:上述のC_(1)?C_(4)アルコキシ、さらにペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メトキシブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ又は1-エチル-2-メチルプロポキシ;
C_(1)?C_(4)ハロアルコキシ:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(4)アルコキシ基、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ブロモジフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、2-ヨードエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2-フルオロプロポキシ、3-フルオロプロポキシ、2-クロロプロポキシ、3-クロロプロポキシ、2-ブロモプロポキシ、3-ブロモプロポキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジクロロプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、3,3,3-トリクロロプロポキシ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエトキシ、1-(クロロメチル)-2-クロロエトキシ、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエトキシ、4-フルオロブトキシ、4-クロロブトキシ、4-ブロモブトキシ又はノナフルオロブトキシ;
C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル(C_(1)?C_(4)アルキル-S(=O)_(2)-):メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、1-メチルエチルスルホニル、ブチルスルホニル、1-メチルプロピルスルホニル、2-メチルプロピルスルホニル及び1,1-ジメチルエチルスルホニル;
C_(1)?C_(6)アルキルスルホニル:上述のC_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、さらにペンチルスルホニル、1-メチルブチルスルホニル、2-メチルブチルスルホニル、3-メチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルプロピルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、1,1-ジメチルプロピルスルホニル、1,2-ジメチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、1-メチルペンチルスルホニル、2-メチルペンチルスルホニル、3-メチルペンチルスルホニル、4-メチルペンチルスルホニル、1,1-ジメチルブチルスルホニル、1,2-ジメチルブチルスルホニル、1,3-ジメチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルブチルスルホニル、2,3-ジメチルブチルスルホニル、3,3-ジメチルブチルスルホニル、1-エチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル、1,1,2-トリメチルプロピルスルホニル、1,2,2-トリメチルプロピルスルホニル、1-エチル-1-メチルプロピルスルホニル及び1-エチル-2-メチルプロピルスルホニル;
C_(1)?C_(6)ハロアルキルスルホニル:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(6)アルキルスルホニル基、例えばフルオロメチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、クロロジフルオロメチルスルホニル、ブロモジフルオロメチルスルホニル、2-フルオロエチルスルホニル、2-クロロエチルスルホニル、2-ブロモエチルスルホニル、2-ヨードエチルスルホニル、2,2-ジフルオロエチルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル、2,2,2-トリクロロエチルスルホニル、2-クロロ-2-フルオロエチルスルホニル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチルスルホニル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチルスルホニル、ペンタフルオロエチルスルホニル、2-フルオロプロピルスルホニル、3-フルオロプロピルスルホニル、2-クロロプロピルスルホニル、3-クロロプロピルスルホニル、2-ブロモプロピルスルホニル、3-ブロモプロピルスルホニル、2,2-ジフルオロプロピルスルホニル、2,3-ジフルオロプロピルスルホニル、2,3-ジクロロプロピルスルホニル、3,3,3-トリフルオロプロピルスルホニル、3,3,3-トリクロロプロピルスルホニル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルスルホニル、ヘプタフルオロプロピルスルホニル、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエチルスルホニル、1-(クロロメチル)-2-クロロエチルスルホニル、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエチルスルホニル、4-フルオロブチルスルホニル、4-クロロブチルスルホニル、4-ブロモブチルスルホニル、ノナフルオロブチルスルホニル、5-フルオロペンチルスルホニル、5-クロロペンチルスルホニル、5-ブロモペンチルスルホニル、5-ヨードペンチルスルホニル、6-フルオロヘキシルスルホニル、6-ブロモヘキシルスルホニル、6-ヨードヘキシルスルホニル及びドデカフルオロヘキシルスルホニル;
C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ:メチルイミノオキシ、エチルイミノオキシ、1-プロピルイミノオキシ、2-プロピルイミノオキシ、1-ブチルイミノオキシ及び2-ブチルイミノオキシ;
C_(3)?C_(6)アルケニル:プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-2-エン-1-イル、1-メチルエテニル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、1-メチルプロパ-1-エン-1-イル、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、2-メチルプロパ-2-エン-1-イル、ペンテン-1-イル、ペンテン-2-イル、ペンテン-3-イル、ペンテン-4-イル、1-メチルブタ-1-エン-1-イル、2-メチルブタ-1-エン-1-イル、3-メチルブタ-1-エン-1-イル、1-メチルブタ-2-エン-1-イル、2-メチルブタ-2-エン-1-イル、3-メチルブタ-2-エン-1-イル、1-メチルブタ-3-エン-1-イル、2-メチルブタ-3-エン-1-イル、3-メチルブタ-3-エン-1-イル、1,1-ジメチルプロパ-2-エン-1-イル、1,2-ジメチルプロパ-1-エン-1-イル、1,2-ジメチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチルプロパ-1-エン-2-イル、1-エチルプロパ-2-エン-1-イル、ヘキサ-1-エン-1-イル、ヘキサ-2-エン-1-イル、ヘキサ-3-エン-1-イル、ヘキサ-4-エン-1-イル、ヘキサ-5-エン-1-イル、1-メチルペンタ-1-エン-1-イル、2-メチルペンタ-1-エン-1-イル、3-メチルペンタ-1-エン-1-イル、4-メチルペンタ-1-エン-1-イル、1-メチルペンタ-2-エン-1-イル、2-メチルペンタ-2-エン-1-イル、3-メチルペンタ-2-エン-1-イル、4-メチルペンタ-2-エン-1-イル、1-メチルペンタ-3-エン-1-イル、2-メチルペンタ-3-エン-1-イル、3-メチルペンタ-3-エン-1-イル、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル、1-メチルペンタ-4-エン-1-イル、2-メチルペンタ-4-エン-1-イル、3-メチルペンタ-4-エン-1-イル、4-メチルペンタ-4-エン-1-イル、1,1-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,1-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、2,2-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、3,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1-エチルブタ-1-エン-1-イル、1-エチルブタ-2-エン-1-イル、1-エチルブタ-3-エン-1-イル、2-エチルブタ-1-エン-1-イル、2-エチルブタ-2-エン-1-イル、2-エチルブタ-3-エン-1-イル、1,1,2-トリメチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチル-1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチル-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル及び1-エチル-2-メチルプロパ-2-エン-1-イル;
C_(2)?C_(6)アルケニル:上述のC_(3)?C_(6)アルケニル及びエテニル;
C_(3)?C_(6)アルキニル:プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-1-イン-4-イル、ブタ-2-イン-1-イル、ペンタ-1-イン-1-イル、ペンタ-1-イン-3-イル、ペンタ-1-イン-4-イル、ペンタ-1-イン-5-イル、ペンタ-2-イン-1-イル、ペンタ-2-イン-4-イル、ペンタ-2-イン-5-イル、3-メチルブタ-1-イン-3-イル、3-メチルブタ-1-イン-4-イル、ヘキサ-1-イン-1-イル、ヘキサ-1-イン-3-イル、ヘキサ-1-イン-4-イル、ヘキサ-1-イン-5-イル、ヘキサ-1-イン-6-イル、ヘキサ-2-イン-1-イル、ヘキサ-2-イン-4-イル、ヘキサ-2-イン-5-イル、ヘキサ-2-イン-6-イル、ヘキサ-3-イン-1
-イル、ヘキサ-3-イン-2-イル、3-メチルペンタ-1-イン-1-イル、3-メチルペンタ-1-イン-3-イル、3-メチルペンタ-1-イン-4-イル、3-メチルペンタ-1-イン-5-イル、4-メチルペンタ-1-イン-1-イル、4-メチルペンタ-2-イン-4-イル及び4-メチルペンタ-2-イン-5-イル;
C_(2)?C_(6)アルキニル:上述のC_(3)?C_(6)アルキニル及びエチニル;
C_(3)?C_(6)シクロアルキル:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル;
C_(4)?C_(6)シクロアルケニル:シクロブテン-1-イル、シクロブテン-3-イル、シクロペンテンテン-1-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロペンテン-4-イル、シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセン-3-イル及びシクロヘキセン-4-イル;
ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルオキシのヘテロシクリル基:酸素、窒素及び硫黄原子から選ばれる1?3個のヘテロ原子を有する3?7員の飽和又部分不飽和の単環もしくは多環ヘテロシクリル、例えば、オキシラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、3-イソオキサゾリジニル、4-イソオキサゾリジニル、5-イソオキサゾリジニル、3-イソチアゾリジニル、4-イソチアゾリジニル、5-イソチアゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、5-ピラゾリジニル、2-オキサゾリジニル、4-オキサゾリジニル、5-オキサゾリジニル、2-チアゾリジニル、4-チアゾリジニル、5-チアゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、1,2,4-オキサジアゾリジン-3-イル、1,2,4-オキサジアゾリジン-5-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-3-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-5-イル、1,2,4-トリアゾリジン-3-イル、1,3,4-オキサジアゾリジン-2-イル、1,3,4-チアジアゾリジン-2-イル、1,3,4-トリアゾリジン-2-イル、2,3-ジヒドロフラン-2-イル、2,3-ジヒドロフラン-3-イル、2,3-ジヒドロフラン-4-イル、2,3-ジヒドロフラン-5-イル、2,5-ジヒドロフラン-2-イル、2,5-ジヒドロフラン-3-イル、2,3-ジヒドロチエン-2-イル、2,3-ジヒドロチエン-3-イル、2,3-ジヒドロチエン-4-イル、2,3-ジヒドロチエン-5-イル、2,5-ジヒドロチエン-2-イル、2,5-ジヒドロチエン-3-イル、2,3-ジヒドロピロール-2-イル、2,3-ジヒドロピロール-3-イル、2,3-ジヒドロピロール-4-イル、2,3-ジヒドロピロール-5-イル、2,5-ジヒドロピロール-2-イル、2,5-ジヒドロピロール-3-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-3-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-4-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-5-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-3-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-4-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-5-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-3-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-4-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-5-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-2-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-5-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-4-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-2-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-4-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-5-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-2-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-4-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-5-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-2-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-4-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-5-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-2-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-2-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル、2-モルホリニル、3-モルホリニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、3-テトラヒドロピリダジニル、4-テトラヒドロピリダジニル、2-テトラヒドロピリミジニル、4-テトラヒドロピリミジニル、5-テトラヒドロピリミジニル、2-テトラヒドロピラジニル、1,3,5-テトラヒドロトリアジン-2-イル、1,2,4-テトラヒドロトリアジン-3-イル、1,3-ジヒドロオキサジン-2-イル、1,3-ジチアン-2-イル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1,3-ジオキソラン-2-イル、3,4,5,6-テトラヒドロピリジン-2-イル、4H-1,3-チアジン-2-イル、4H-3,1-ベンゾチアジン-2-イル、1,1-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロチエン-2-イル、2H-1,4-ベンゾチアジン-3-イル、2H-1,4-ベンゾオキサジン-3-イル、1,3-ジヒドロオキサジン-2-イル;
ヘテロアリール、及びヘテロアリールオキシのヘテロアリール基:炭素環員とは別に、1?4個の窒素原子、又は1?3個の窒素原子と1個の酸素又は硫黄原子、又は1個の酸素原子、又は1個の硫黄原子をさらに有していても良い芳香族の単環もしくは多環基、例えば、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,2,4,5-テトラジン-3-イル、及び対応するベンゾ縮合誘導体。
【0062】全てのフェニル、ヘテロアリール及びヘテロシクリル環(複素環)は、非置換あるか、或いは1?3個のハロゲン原子及び/又は1個又は2個の下記の基:ニトロ、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ又はメトキシカルボニルから選択される基を有することが好ましい。」

カ 式Iの化合物のうち除草剤として使用する観点から好ましい化合物についての記載
段落【0063】?【0066】に、以下の記載がある。
「【0063】本発明の式Iの化合物を除草剤として使用する観点から、上記記号が、それぞれ単独で又は組み合わせて下記の意味を有することが好ましい:
R^(1)がニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)又は-S(O)_(n)R^(3)を表し、特に好ましくは、ニトロ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素又は臭素)、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、-OR^(3)、又は-SO_(2)R^(3)を表し;
R^(2)が水素、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)又は-S(O)_(n)R^(3)を表し、特に好ましくは、水素、ニトロ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素又は臭素)、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、-OR^(3)又は-SO_(2)R^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、特に好ましくは水素、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(2)?C_(3)アルケニル、C_(2)?C_(3)アルキニル又はフェニルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ{最後の8個の基は置換されていても良い}を有していても良く、
さらにR^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表すことが好ましく、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)’、-OR^(3)’、-SR^(3)’、-N(R^(3)’)_(2)、=NOR^(3)’、-OCOR^(3)’、-SCOR^(3)’、-NR^(3)’COR^(3)’、-CO_(2)R^(3)’、-COSR^(3)’、-CON(R^(3)’)_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ{最後の8個の基は置換されていても良い}を有していても良く[但し、R^(3)’は水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表す];
nが0、1又は2、特に好ましくは0又は2を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(4)アルキレン鎖、C_(3)?C_(4)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(4)アルキニレン鎖、特に好ましくはエチレン、プロピレン、プロペニレン又はプロピニレン鎖{これらの鎖は、酸素又は硫黄(好ましくは酸素)から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアアルキル、特に好ましくは水素、メチル、エチル又はトリフルオロメチルを表し;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)ルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い。
【0064】R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキル、特に好ましくは水素、メチル又はエチルを表し;
R^(8)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(3)?C_(4)シクロアルキル{最後の2個の基は1?3個の下記の基:ハロゲン、C_(1)?C_(4)アルコキシ又はC_(1)?C_(4)アルキルチオから選択される置換基を有していても良い}を表し、或いは
テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチアン-2-イル又は1,3-ジチオラン-2-イル{最後の6個の基は1?3個のC_(1)?C_(4)アルキル基を有していても良い}、特に好ましくは水素、メチル、エチル、シクロプロピル、ジ(メトキシ)メチル、ジ(エトキシ)メチル、2-エチルチオプロピル、テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチオラン-2-イル、5,5-ジメチル-1,3-ジチアン-2-イル又は1-メチルチオシクロプロピルを表し;
R^(10)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、特に好ましくは水素、メチル又はメトキシカルボニルを表す。
【0065】同様に、R^(8)とR^(11)が二重結合系発生の素になるπ結合を形成することが有利であろう。
【0066】或いは、CR^(8)R^(9)単位がC=Oで置き換えられていることは有利であろう。」

キ 式Iaの化合物についての記載
段落【0067】?【0069】に、以下の記載がある。
「【0067】R^(1)がベンゼン環の2位に、そしてR^(2)がベンゼン環の4位に結合する式Iaで表される化合物が特に好ましい。
【0068】

以下の式Iaで表される化合物が最も好ましい。即ち、 置換基R^(1)、R^(2)及びQがそれぞれ上記と同義であり、 X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルキニレン鎖を表し、そして Hetが、3?6員、好ましくは5員又は6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:即ち、窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、特に好ましくは以下の2個の群:即ち、窒素、又は酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択される3個まで、特に好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を有する、3?6員、好ましくは5員又は6員のヘテロ芳香族基を表し、且つこのヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い。
【0069】さらに、以下の、本発明の式Iaで表される化合物が極めて最も好ましい。即ち、 置換基R^(1)、R^(2)及びX^(1)がそれぞれ上記と同義であり、 Hetが、5員又は6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:即ち、窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、特に好ましくは以下の2個の群:即ち、窒素、又は酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択される3個まで、特に好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を有する、5員又は6員のヘテロ芳香族基、を表し、且つこのヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い。」

ク 表1?36の式Ibの化合物についての記載
段落【0070】?【0108】に、以下の記載がある。
「【0070】下記の表1?36の化合物Ibが特に好ましい。
【0071】【表1】
表A
(審決注:No.1?No.920まで、8個のX^(1)(記載されている順に、OCH_(2)、CH_(2)O、OCH_(2)CH_(2)、CH_(2)CH_(2)O、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)OCH_(2)CH=CH、CH=CHCH_(2)O、C≡C-CH_(2)O)と115個のHetの組合せを示した表。第2の2(5)に示したとおりであるので、ここでは省略する。)
* ブリッジX^(1)は、左端に中心となるフェニル基があり、右端にHetがある位置で結合する。
【0072】下記の表1?36は、式Ibで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンに基づくものである。
【0073】

表1:化合物1.1?1.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0074】表2:化合物2.1?2.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0075】表3:化合物3.1?3.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0076】表4:化合物4.1?4.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0077】表5:化合物5.1?5.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0078】表6:化合物6.1?6.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0079】表7:化合物7.1?7.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0080】表8:化合物8.1?8.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0081】表9:化合物9.1?9.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0082】表10:化合物10.1?10.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0083】表11:化合物11.1?11.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0084】表12:化合物12.1?12.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0085】表13:化合物13.1?13.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0086】表14:化合物14.1?14.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0087】表15:化合物15.1?15.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0088】表16:化合物16.1?16.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0089】表17:化合物17.1?17.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0090】表18:化合物18.1?18.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0091】表19:化合物19.1?19.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0092】表20:化合物20.1?20.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0093】表21:化合物21.1?21.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0094】表22:化合物22.1?22.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0095】表23:化合物23.1?23.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0096】表24:化合物24.1?24.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0097】表25:化合物25.1?25.920
R^(1)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0098】表26:化合物26.1?26.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0099】表27:化合物27.1?27.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0100】表28:化合物28.1?28.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0101】表29:化合物29.1?29.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0102】表30:化合物30.1?30.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0103】表31:化合物31.1?31.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0104】表32:化合物32.1?32.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0105】表33:化合物33.1?33.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0106】表34:化合物34.1?34.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0107】表35:化合物35.1?35.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0108】表36:化合物36.1?36.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。」

ケ 除草剤用途についての記載
段落【0109】?【0129】に、以下の記載がある。
「【0109】化合物I及びその農業上有用な塩は、異性体混合物、また純粋な異性体の形態で、除草剤として好適である。Iを含む除草剤組成物は、非栽培領域の植生の制御に、特に高い施与率で効果的である。これらの組成物は、オオムギ、米、トウモロコシ、大豆、及び綿花等の作物の中の広葉の雑草及びイネ科の雑草(Unkraeuter und Shadgraeser)(審決注:ウムラウトは代わりにeを付けて表した。)に対して、栽培植物に損傷を与えることなく作用する。この効果は、主に低施与率で観察される。
【0110】施与方法の相違によるが、化合物I又はこれらを含む組成物は、更に多くの栽培植物に、望ましくない植物の除去のために使用することができる。適当な作物として以下のものを挙げることができる:
タマネギ(Allium cepa)
パイナップル(Ananas comosus)
ナンキンマメ(Arachis hypogaea)
アスパラガス(Asparagus officinalis)
フダンソウ(Beta vulgaris spp. altissima)
サトウジシヤ(Beta vulgaris spp. rapa)
アブラナ(変種カブラ)(Brassica napus var. napus)
カブカンラン(変種ナポプラシーカ)(Brassica napus var. napobrassica)
テンサイ(変種シルベストリス)(Brassica rapa var. silvestris)
トウツバキ(Camellia sinensis)
ベニバナ(Carthamus tinctorius)
キヤリーヤイリノイネンシス(Carya illinoinensis)
レモン(Citrus limon)
ナツミカン(Citrus sinensis)
コーヒー〔Coffea arabica(Coffea canephora、Coffea liberica)〕
キユウリ(Cucumis sativus)
ギヨウギシバ(Cynodon dactylon)
ニンジン(Daucus carota)
アブラヤシ(Elaeis guineensis)
イチゴ(Fragaria vesca)
大豆(Glycine max)
木棉[Gossypium hirsutum(Gossypium arboreum、Gossypium herbaceum、Gossypium vitifolium)]
ヒマワリ(Helianthus annuus)
ゴムノキ(Hevea brasiliensis)
大麦(Hordeum vulgare)
カラハナソウ(Humulus lupulus)
アメリカイモ(Ipomoea batatas)
オニグルミ(Juglans regia)
レンズマメ(Lens culinaris)
アマ(Linum usitatissimum)
トマト(Lycopersicon lycopersicum)
リンゴ属(Malus spec.)
キヤツサバ(Manihot esculenta)
ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)
バシヨウ属(Musa spec.)
タバコ[Nicotiana tabacum(N. rustica)]
オリーブ(Olea europaea)
イネ(Oryza sativa)
アズキ(Phaseolus lunatus)
ゴガツササゲ(Phaseolus vulgaris)
トウヒ(Picea abies)
マツ属(Pinus spec.)
シロエンドウ(Pisum sativum)
サクラ(Prunus avium)
モモ(Prunus persica)
ナシ(Pyrus communis)
スグリ(Ribes sylvestre)
トウゴマ(Ricinus communis)
サトウキビ(Saccharum officinarum)
ライムギ(Secale cereale)
ジャガイモ(Solanum tuberosum)
モロコシ[Sorghum bicolor(s. vulgare)]
カカオ(Theobroma cacao)
ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)
小麦(Triticum aestivum)
トリテイカム、ドラム(Triticum durum)
ソラマメ(Vicia faba)
ブドウ(Vitis vinifera)
トウモロコシ(Zea mays)。
更に、遺伝子工学的方法を含む栽培の結果として除草剤の作用に耐性を有する農作物においても化合物Iを使用することができる。
【0111】除草剤組成物又は有効成分は、事前法または事後法により施与される。有効成分にある種の栽培植物がほとんど耐性を示さない場合、下部に成長している望ましくない植物の葉又は露出している土壌には付着しても、敏感な栽培植物の葉にできるだけ接触しないように、噴霧装置により除草剤を噴霧することができる(後直接撒布、レイ-バイ)。
【0112】化合物I又はこれらを含む除草剤組成物は、例えば直ぐに噴霧可能な水溶液、粉末、懸濁液、高濃度の水性、油性または他の懸濁液または分散液、エマルジョン、油性分散液、ペースト、ダスト剤、散布剤または顆粒の形で、噴霧、ミスト法、ダスト法、散布法または注入法によって施与することができる。施与方法は、使用目的に基づいて決定される。いずれの場合にも、本発明の有効物質の可能な限りの微細分配が保証されるべきである。
【0113】好適な不活性添加剤としては、本質的に下記のものである:中位乃至高位の沸点の鉱油留分(例えば燈油またはディーゼル油、更にコールタール油等)、並びに植物性または動物性産出源の油、脂肪族、環式および芳香族炭化水素(例えばパラフィン、テトラヒドロナフタリン、アルキル置換ナフタリン又はその誘導体、アルキル置換ベンゼン又はその誘導体)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン(例えば、シクロヘキサノン)、高極性溶剤(例えば、N-メチルピロリドン等のアミン、水)。
【0114】水性使用形態は、乳濁液濃縮物、懸濁液、ペースト、湿潤可能の粉末または水分散可能の粉末から水の添加により製造することができる。乳濁液、ペーストまたは油分散液の製造は、置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンをそのまま、または油または溶剤中に溶解して、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤により水中に均質に混合することにより行うことができる。或いは、有効物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤、及び必要により溶剤又は油よりなる濃縮物を製造することもでき、これらは水にて希釈するのに適する。
【0115】適当な界面活性剤としては次のものが挙げられる:芳香族スルホン酸(例えば、リグニンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、ジブチルナフタリンスルホン酸)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;脂肪酸、アルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルスルファート、ラウリルエーテルスルファート及び脂肪アルコールスルファートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;硫酸化ヘキサデカノール、ヘプタデカノールおよびオクタデカノールの塩;脂肪アルコールグリコールエーテルの塩;スルホン化ナフタリン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタリン或いはナフタリンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、エトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、またはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタート、ソルビットエステル、リグニン-亜硫酸廃液およびメチルセルロース。
【0116】粉末、散布剤およびダスト剤は、有効物質と固体担体物質とを混合または一緒に磨砕することにより製造することができる。
【0117】粒状体(例えば、被覆粒状体、含浸粒状体及び均質粒状体)は、有効物質を固体担体物質に結合させることにより製造することができる。固体担体物質の例としては、鉱物土(例えば、シリカ、シリカゲル、珪酸塩、タルク、カオリン、石灰石、石灰、白亜、膠塊粒土、石灰質黄色粘土、クレイ、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、磨砕合成物質)、肥料(例えば、硫酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素)及び植物性生成物(例えば、穀物粉、樹皮、木材およびクルミ穀粉、セルロース粉末)、又は他の固形担体物質である。
【0118】直接使用可能な製剤の有効成分Iの濃度は、広い範囲で変更することができる。一般に、その処方は、少なくとも1種の有効成分を、0.001?98重量%、好ましくは0.01?95重量%の量で含む。有効成分は90?100%の純度(NMRスペクトルによる)のもの、好ましくは95?100%の純度のものが使用される。
【0119】本発明の化合物Iの製造を、下記の調製例に示す:
I:20重量部の化合物Iを、80重量部のアルキル化ベンゼン、10重量部の、オレイン酸N-モノエタノールアミド(1モル)のエチレンオキシド(8?10モル)付加体、5重量部のドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及び5重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0120】II:20重量部の化合物Iを、40重量部のシクロヘキサノン、30重量部のイソブタノール、20重量部の、イソオクチルフェノール(1モル)のエチレンオキシド(7モル)付加体及び10重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0121】III:20重量部の化合物Iを、25重量部のシクロヘキサノン、65重量部の鉱物油(沸点210?280℃の留分)及び10重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0122】IV:20重量部の化合物Iを、3重量部のジイソブチルナフタリンスルホン酸ナトリウム、17重量部のリグノスルホン酸のナトリウム塩(亜硫酸廃液から得られる)及び60重量部の微粉末のシリカゲルと完全に混合させ、そしてその混合物をハンマーミルで磨砕する。最後に、この混合物を20000重量部の水に分散させ、これにより0.1重量%の有効成分を含む噴霧混合物を得る。
【0123】V:3重量部の化合物Iを、97重量部の微粉砕カオリンと混合し、これにより3重量%の有効成分を含むダストを得る。
【0124】VI:20重量部の化合物Iを、2重量部のドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、8重量部の脂肪アルコールポリグリコールエーテル、2重量部のフェノール/尿素/ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩及び68重量部のパラフィン鉱物油とまず充分に混合させ、これにより安定な油性分散液を得る。
【0125】VII:1重量部の化合物Iを、70重量部のシクロヘキサノン、20重量部のエトキシル化イソオクチルフェノール及び10重量部のエトキシル化ヒマシ油からなる混合物に溶解させ、これにより安定なエマルジョン濃縮体を得る。
【0126】VIII:1重量部の化合物Iを、80重量部のシクロヘキサノン及び20重量部のウエットール(登録商標)EM31(WettolR EM31;エトキシ化ひまし油を基礎とする非イオン乳化剤)からなる混合物に溶解させ、これにより安定なエマルジョン濃縮体を得る。
【0127】作用範囲を広げ、そして相乗作用を得るために、置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンIは、多くの他の代表的なグループの除草剤又は成長調整剤の有効成分と混合することができ、そしてこれらと共に施与することができる。混合に適当な成分としては、例えば1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、アミド、アミノホスホン酸及びその誘導体、アミノトリアゾール、アニリド、アリール/ヘテロアリールオキシアルカン酸及びその誘導体、安息香酸及びその誘導体、ベンゾチアジアジノン、2-アロイル-1,3-シクロヘキサンジオン、ヘテロアリールアリールケトン、ベンジルイソオキサゾリジノン、メタ-CF3-フェニル誘導体、カルバメート、キノリンカルボン酸及びその誘導体、クロロアセトアニリド、シクロヘキサン-1,3-ジオン誘導体、ジアジン、ジクロロプロピオン酸及びその誘導体、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロフラン-3-オン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、ジピリジル、ハロカルボン酸及びその誘導体、尿素、3-フェニルウラシル、イミダゾール、イミダゾリノン、N-フェニル-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド、オキサジアゾール、オキシラン、フェノール、アリールオキシ-又はヘテロアリールオキシ-フェノキシプロピオン酸エステル、フェニル酢酸及びその誘導体、フェニルプロピオン酸及びその誘導体、ピラゾール、フェニルピラゾール、ピリダジン、ピリジンカルボン酸及びその誘導体、ピリミジルエーテル、スルホンアミド、スルホニル尿素、トリアジン、トリアジノン、トリアジノン、トリアゾールカルボキシアミド及びウラシル、を挙げることができる。
【0128】さらに化合物Iは、単一、あるいは他の除草剤との組合せたものを、他の栽培植物保護剤、例えば殺虫剤または植物殺菌剤または殺バクテリア剤と共に施与することが有利であり得る。苗栄養不足、希元素欠乏などの症状治癒のために使用されるミネラル塩溶液と混合し得ることことも重要である。植物に無害の油類、油濃縮物類も添加し得る。
【0129】有効化合物(物質)の施与率は、施与目的、季節、対象の植物および成長段階に応じて、1ヘクタールあたり0.001?3.0kgの有効物質(a.s.)の量、好ましくは0.01?1.0kgの量である。」

コ 合成実施例の記載
段落【0130】?【0134】に、以下の記載がある。
「【0130】出発材料と生成物の幾つかの合成を、以下に記載する。
【0131】{2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニルフェニル}{5,5-ジメチル-1,3-ジオキソ-シクロヘキサ-2-イル}メタノン
工程a:2-クロロ-3-ブロモメチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル
80g(0.3モル)の2-クロロ-3-メチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル、54g(0.31モル)のN-ブロモスクシンイミド及び1.5gのアゾイソブチロニトリルを、76℃で6時間撹拌した。反応混合物をろ過し、そして減圧下に溶剤を除去した。収量:104g;融点:83?85℃。
【0132】工程b:2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸メチル
4.3g(44ミリモル)の1-メチル-5-ヒドロキシピラゾール、9.1gの炭酸カリウム及び100mlのテトラヒドロフランを、65℃で1時間加熱した。この混合物に、15g(44ミリモル)の2-クロロ-3-ブロモメチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル及び150mlのテトラヒドロフランを添加し、40℃で4時間加熱した。この混合物を、12時間撹拌し、減圧下に溶剤を除去し、酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、乾燥し、そして溶剤を除去した。粗生成物を、シリカゲル上で精製した(溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1)。収量:7.6g;融点70℃。
【0133】工程c:2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸
30mlのテトラヒドロフランと30mlの水との混合物中の、6.95g(19ミリモル)の2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸メチルを、0.93gの水酸化リチウムを用いて室温で12時間処理した。10%濃度塩酸を用いて反応混合物のpHを4に調整し、塩化メチレンで抽出した。有機層を乾燥し、溶剤を除去した。収量:4.3g;融点197℃。
【0134】工程d:{2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニルフェニル}{5,5-ジメチル-1,3-ジオキソ-シクロヘキサ-2-イル}メタノン
50mlのアセトニトリル中の、1.0g(2.9ミリモル)の2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸、0.4g(2.9ミリモル)のジメドン及び0.72gのN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドを、40℃で4時間加熱した。反応混合物を室温で12時間撹拌させた後、0.87gのトリエチルアミン及び0.57gのトリメチルシリルニトリルを添加した。その後、反応混合物を40℃で6時間加熱し、ろ過し、減圧下に溶剤を除去し、そして残留物をシリカゲル上で精製した(溶離液:トルエン/テトラヒドロフラン/酢酸:100/0/0?4/1/0.1)。収量:0.25g;融点82℃。」

サ 表37の化合物についての記載
段落【0135】に、以下の記載がある。
「【0135】



シ 使用実施例の記載
段落【0136】?【0141】に、以下の記載がある。
「【0136】[使用実施例]
式Iで表される置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンの除草作用を下記の温室実験で示した。
【0137】プラスチック植木鉢を栽培容器として用い、約3.0%の腐葉土を含むローム質砂を培養基とした。被検植物の種子を種類ごとに播種した。
【0138】事前法(pre-emergence treatment)により、水中に懸濁または乳化させた有効成分を、種子を撒いた後に微細散布ノズルを使用して直接撒布した。出芽と成長を促進させるために容器を軽く灌水し、次いで植物が根付くまで透明のプラスチックの覆いを被せた。有効成分により害が与えられない限り、この被覆が被検植物の均一な出芽をもたらす。
【0139】事後法(post-emergence treatment)により、被検植物を、発育型によるが、草丈3?15cmとなった後、水中に懸濁または乳化させた有効成分で処理することのみを行った。この目的のため、被検植物を直接播種し同一の容器で栽培することも、当初は別々に苗として植え、処理の行われる2?3日前に試験用容器に移植することも可能である。
【0140】各被検植物を種類により、10?25℃または20?35℃に保持し、実験期間を2?4週間とした。この間、被検植物を管理し、個々の処理に対する反応を評価した。
【0141】0?100の尺度を用いて評価を行った。この尺度において100は植物が全く出芽しないか、或いは少なくとも地上に出ている部分の全てが破壊してしまったことを示し、0は全く被害がなく正常な成長を遂げたことを示す。」

(3)本件発明1について

ア 本件発明1は、
「【請求項1】式Ia

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表し、
Hetが、
オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩。」
と特定されているところ、後記3の無効理由1(サポート要件)の検討及び後記4の無効理由3(進歩性)の検討にも示すとおり、その-X^(1)-Hetの化学構造に特徴を有するものである。
そのX^(1)は、以下の2個である。
酸素により中断されたエチレン鎖
CH_(2)OCH_(2)(以下「B」という。)
そして、
CH_(2)O(以下「A」という。)
そのHetは、18個である。
そこで、上記のX^(1)及びHetを有する請求項1記載の化合物を生産することができるかを検討する。

イ 上記(2)イによれば、本件発明1の式Iaで表される化合物の上位概念に当たる式Iで表される化合物の合成スキームが、方法Aとして記載されている。
方法Aは、R^(1)、R^(2)及び-X^(1)-Hetが置換した安息香酸IIIbから出発して、シクロヘキサン-1,3-ジオンを反応させてアシル化物IVを得て、転位反応により式Iの化合物を合成する全体の合成スキームである。出発物質は、置換安息香酸IIIb以外に、同様の置換安息香酸誘導体III(-COOHでなく-COR^(12);R^(12)はヒドロキシ又は加水分解可能な基)、同IIIa(-COOHでなく-COL^(1);L^(1)はハロゲン)、同IIIc(-COOHでなく-COM;MはC_(1)?C_(6)アルコキシ)が記載されている。
そして、出発物質の置換安息香酸誘導体IIIcを合成するスキームが、方法B及び方法Cとして記載されている。
その方法Bは、Hetを持っていないR^(1)、R^(2)及び-X^(2)-OH置換安息香酸誘導体Va(以下「φ-X^(2)-OH」で表す。)と、L^(2)-X^(3)-Het(L^(2)はハロゲン、ヘテロアリール、カルボキシラート、スルホナート等の脱離基)で表される化合物VIを反応させて、φ-X^(1)-Hetで表される化合物IIIcを得る方法である。
φ-X^(2)-OH + L^(2)-X^(3)-Het → φ-X^(1)-Het
Va VI IIIc
その方法Cは、Hetを持っていないR^(1)、R^(2)及び-X^(2)-L^(2)置換安息香酸誘導体Vb(以下「φ-X^(2)-L^(2)」で表す。L^(2)は上記と同じ脱離基)と、HO-X^(3)-Hetで表される化合物VIIを反応させて、φ-X^(1)-Hetで表される化合物IIIcを得る方法である。
φ-X^(2)-L^(2) + HO-X^(3)-Het → φ-X^(1)-Het
Vb VII IIIc
上記において、X^(2)及びX^(3)は、それぞれ、最大5個の炭素原子を有するアルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖であり、そして、X^(2)OX^(3)がX^(1)を構成する。
これらの記載は、一般的な合成スキームの記載であり、具体的な合成例の記載ではない。

ウ 一方、具体的な合成例は、上記(2)コに、{2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニルフェニル}{5,5-ジメチル-1,3-ジオキソ-シクロヘキサ-2-イル}メタノンの合成例が記載されている。
この化合物は、R^(1)がハロゲンの一種であるクロロであり、R^(2)が-SO_(2)CH_(3)であり、X^(1)がCH_(2)Oであり、Hetが1-メチルピラゾール-5-イルであるものである。上記イにおけるのと同様にφなどで簡略した化学構造式で表すと、工程aでφ-CH_(3)の化合物(-COOCH_(3)を有する)をハロゲン化してφ-CH_(2)-Brを合成し、工程bでHO-Hetの化合物を反応させてφ-CH_(2)O-Hetを合成し、工程cで-COOCH_(3)を-COOHに変換し、工程dでジメドン(シクロヘキサン-1,3-ジオンの一種。メチル基を2つ有する。以下「Q」で表す。)を反応させ、転位反応させて目的化合物を合成している。
工程a:
φ-CH_(3) → φ-CH_(2)-Br
工程b:
φ-CH_(2)-Br + HO-Het → φ-CH_(2)O-Het
工程c:
φ-CH_(2)O-Het → φ-CH_(2)O-Het
(-COOCH_(3)を有する) (-COOHを有する)
工程d:
φ-CH_(2)O-Het →→ Q-φ-CH_(2)O-Het
ここには、用いる物質の量、溶媒、塩基、反応温度、反応時間等の諸条件や、各工程で得られる化合物の融点や量が、具体的に記載されている。
また、上記(1)サの表37には、具体的な合成例として記載されているのではないものの、X^(1)がCH_(2)Oである化合物7個(合成例からHetを1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル又は4-クロロ-1-ピラゾリルに変えたり、QのR^(6)?R^(11)を変えたもの)の融点が記載され、これらを合成したことが推認される。
ここで、上記合成例の工程bの、φ-CH_(2)O-Hetを合成する方法は、上記イの方法Cに類似するが、この合成例はHO-Hetを用いており、一方上記イの方法CはHO-X^(3)-Het(X^(3)はアルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖)を用いるものであるので、上記イの方法Cを具体化したもの、というのではない。

エ X^(1)がA(CH_(2)O)である化合物について
上記ウによれば、HO-Hetの化合物を入手できれば、
φ-CH_(2)-Br + HO-Het → φ-CH_(2)O-Het
の反応によりφ-CH_(2)O-Hetの化合物を得て、これにQの化合物を反応させ、転位反応させて目的化合物を合成できると認められる。
そして、HO-Hetの化合物のいくつかが入手できるものであることは、乙28のCAS REGISTRY物質レコードに示されていて、知られている。以下に、Hetが請求項1に記載されるものについてまとめて示す。

HO-HetのHet 乙28の番号
オキシラニル (1)
2-オキセタニル (2)
3-オキセタニル (3)
2-テトラヒドロフラニル (4)
3-テトラヒドロフラニル (5)
2-テトラヒドロチエニル (6)
2-ピロリジニル (7)
2-テトラヒドロピラニル (8)
2-ピロリル (9)
5-イソオキサゾリル (10)
2-オキサゾリル (11)
5-オキサゾリル (12)
2-チアゾリル (13)
2-ピリジニル (14)
1-メチル-5-ピラゾリル (15)
1-ピラゾリル (16)
3,5-ジメチル-1-ピラゾリル (17)
4-クロロ-1-ピラゾリル (18)

反応条件は、段落【0130】?【0134】の合成実施例の記載及び段落【0050】?【0057】の方法Cの記載を参考に適宜決定し得ると認められる。
そして、本件発明1の化合物の、中央のベンゼン環におけるR^(2)は、上記の具体的な合成実施例における-SO_(2)CH_(3)以外に-S(O)_(n)R^(3)をを含み、また、環QにおけるR^(6)?R^(11)も、上記の具体的な合成実施例のもの以外のものも含むが、その選択肢の範囲からみて、それらの化合物についても、当業者が生産できる範囲であると認められる。
したがって、本件発明1のX^(1)がA(CH_(2)O)である化合物は、当業者が生産できると認められる。

オ X^(1)がB(CH_(2)OCH_(2))である化合物について
上記イの方法Cは、上記ウの合成例の工程bと類似するので、HO-CH_(2)-Hetの化合物を入手できれば、
φ-CH_(2)-Br + HO-CH_(2)-Het
→ φ-CH_(2)OCH_(2)-Het
の反応によりφ-CH_(2)OCH_(2)-Hetの化合物を得て、これにQの化合物を反応させ、転位反応させて目的化合物を合成できると推認できる。
そして、HO-CH_(2)-Hetの化合物のいくつかが入手できるものであることは、乙21及び乙28のCAS REGISTRY物質レコードに示されていて、知られている。以下に、Hetが請求項1に記載されるものについてまとめてて示す。

HO-CH_(2)-HetのHet 乙21の番号 乙28の番号
オキシラニル (7)
2-オキセタニル (5)
3-オキセタニル (6)
2-テトラヒドロフラニル (1)
3-テトラヒドロフラニル (4)
2-テトラヒドロチエニル (11)
2-ピロリジニル (9)
2-テトラヒドロピラニル (8)
2-ピロリル (13)
5-イソオキサゾリル (15)
2-オキサゾリル (16)
5-オキサゾリル (17)
2-チアゾリル (19)
2-ピリジニル (14)
1-メチル-5-ピラゾリル (19)
1-ピラゾリル (20)
3,5-ジメチル-1-ピラゾリル (21)
4-クロロ-1-ピラゾリル (22)

反応条件は、段落【0130】?【0134】の合成実施例の記載及び段落【0050】?【0057】の方法Cの記載を参考に適宜決定し得ると認められる。
なお、被請求人が提出した乙15の実験成績証明書3には、化合物4、7、10の合成実験が記載されているところ、化合物7は、X^(1)がCH_(2)OCH_(2)であり、Hetがオキセタン-2-イル(審決注:2-オキセタニルと同じ)であるものであり、化合物10は、X^(1)がCH_(2)OCH_(2)であり、Hetがテトラヒドロフラン-2-イル(審決注:2-テトラヒドロフラニルと同じ)であるものである。用いる物質の量、溶媒、塩基、反応温度、反応時間等の諸条件は、上記ウの合成例の工程bとは異なるが、上記イの合成スキームの方法Cに関して本件明細書に記載されているもの(上記(2)イ段落【0052】?【0057】)の範囲のものである。
そして、本件発明1の化合物の、中央のベンゼン環におけるR^(2)は、上記の具体的な合成実施例における-SO_(2)CH_(3)以外に-S(O)_(n)R^(3)をを含み、また、環QにおけるR^(6)?R^(11)も、上記の具体的な合成実施例のもの以外のものも含むが、その選択肢の範囲からみて、それらの化合物についても、当業者が生産できる範囲であると認められる。
したがって、本件発明1のX^(1)がB(CH_(2)OCH_(2))である化合物は、当業者が生産できると認められる。

カ 上記イ?オによれば、本件発明1の化合物は、本件明細書に記載された合成スキーム及び具体的な合成例並びに技術水準を考慮すると、当業者が生産できると認められる。

キ 以上によれば、発明の詳細な説明の記載又は示唆及び出願時の技術常識に基づき、当業者が、上記アに示した本件発明1の化合物を生産することができるといえる。そして、本件発明1の化合物を生産した後は、常法に従い除草のために施用できることは明らかであり、施用すれば、常法に従い除草特性を確認することができることは明らかであるから、本件発明1の化合物を使用することができるといえる。
したがって、発明の詳細な説明は、本件発明1に関し、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(4)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において、Hetの選択肢を、初めの3個を除いた15個に限定したものである。
この発明に関しても、上記(3)に述べたのと同様の理由で、発明の詳細な説明の記載又は示唆及び出願時の技術常識に基づき、当業者が、本件発明3の化合物を生産することができるといえるから、発明の詳細な説明は、本件発明3に関し、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(5)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1又は3に係る化合物の製造方法に関する発明である。
上記(3)及び(4)で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載又は示唆及び出願時の技術常識に基づき、当業者が、本件発明1及び3の化合物を生産することができるといえ、その方法は、上記(3)ウ?オで検討した方法であり、本件発明4の方法と同じであるから、本件発明4に関しても、発明の詳細な説明は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

(6)請求人の主張について

ア 請求人は、少なくとも本件特許明細書に記載された合成例と乙15の合成例とでは、溶媒、反応試薬及び反応温度や時間が異なっているところ、たとえそれらは本件特許明細書に記載の一般的な合成スキーム(段落【0052】?【0057】)の範囲内であったとしても、本件訂正により個別化された個々の化合物を製造する際には、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤が要求されるというべきであると主張する。(弁駁書2、15?16頁)
しかし、上記(3)エ及びオで述べたとおりである。請求人の主張は、採用できない。

イ 請求人は、本件特許明細書には、本件訂正発明に係る個別化された化合物が改良された除草特性を有していることを示す具体的な記載は何もなく、結局それは、いわゆる後出しの実験データである被請求人の実験成績証明書1、2、及び4(乙10、11及び22)において示されたにすぎず、これらが参酌される余地はないと主張する。また、仮にそれらを見たとしても、本件訂正発明1に係る化合物のうち、(i)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖又は-CH_(2)O-である場合、Hetがオキシラニル、3-オキセタニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロフラニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル又は1-ピラゾリルである化合物、(ii)X^(1)が-CH_(2)O-である場合、Hetが2-オキセタニルである化合物、(iii)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖である場合、Hetが2-ピラゾリル、1-メチル-5-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル又は4-クロロ-1-ピラゾリルである化合物の除草特性は、何ら示されていないから、本件訂正発明が実施可能要件を満たしているとはいえないと主張する。(弁駁書2、29?33頁)
しかし、上記(3)キで述べたとおりである。請求人の主張は、採用できない。

(7)無効理由2についてのまとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、3、4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項の規定に違反しておらず、本件特許は、同法同条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由4によっては、無効とすべきものではない。

3 無効理由1について
無効理由1の概要は、本件明細書には本件発明1、3及び4の課題が解決できることを当業者が認識できるための説明や具体例が何一つ記載されておらず、技術常識に照らしても上記の課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえないため、本件発明1、3及び4は特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。したがって、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである、というものである。

(1)はじめに
以下の観点に立って、検討する。
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。そして、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合することは、当該特許の特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。

(2)発明の詳細な説明の記載
上記2(2)に記載したとおりである。

(3)本件発明1、3、4の課題について
上記2(2)アによれば、2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン化合物が除草特性を有する化合物として知られていたが、従来技術の化合物が示す除草特性及びその栽培植物の安全性は、完全に満足できるものではないという問題があった。そこで、この出願の発明は、除草作用において、特性が改良された化合物を提供することを目的として、式Iで表される化合物を見出したものである。そして、上記2(2)ケによれば、式Iの化合物を含む除草剤組成物は、非栽培領域の植生の制御に、特に高い施与率で効果的であり、一方、主に低施与率で、オオムギ、米、トウモロコシ、大豆、及び綿花等の作物の中に広範囲に残った雑草及び牧草に対して、栽培植物に損傷を与えることなく作用するというものであり、施与率は、施与目的、季節、対象の植物及び成長段階に応じて、1ヘクタールあたり0.001?3.0kgの有効物質(a.s.)の量である、というものである。
したがって、本願発明1及び3の課題は、除草特性が改良された化合物であって、除草剤の有効成分又はその候補化合物となる化合物を提供することであり、その改良された除草特性とは、非栽培領域の植生を制御する特性と、栽培植物に影響を与えずに望ましくない植物を除草する特性の、一方又は両方であると、認められる。
また、本件発明4の課題は、上記の除草特性が改良された化合物の製造方法を提供することであると認められる。

(4)発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲の請求項1、3、4に記載された発明との対比・判断
本件発明1、3、4が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又は示唆により当業者が本件発明1、3、4の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1、3、4の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
上記2において、実施可能要件について検討したとおり、発明の詳細な説明の記載又は示唆及び出願時の技術常識に基づき、当業者が、本件発明1及び3に係る化合物を生産できるといえ、また、本件発明4に係る方法により本件発明1及び3の化合物を生産できるといえる。
そして、本件発明1又は3の化合物を生産した後は、常法に従い除草のために施用できることは明らかであり、施用すれば、常法に従い除草特性を確認することができることは明らかである。
そして、本件発明1又は3の化合物の化学構造からすると、後記4で無効理由3に関連して述べる従来技術の化合物の化学構造との共通性からみて、本件発明1、3、4の課題とする、除草剤の有効成分又はその候補化合物となる化合物を、提供できると認められる。
したがって、本件発明1、3、4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明1、3、4の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか、又は、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明1、3、4の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。

(5)請求人の主張について

ア 請求人は、少なくとも本件特許明細書に記載された合成例と乙15の合成例とでは、溶媒、反応試薬及び反応温度や時間が異なっているところ、たとえそれらは本件特許明細書に記載の一般的な合成スキーム(段落【0052】?【0057】)の範囲内であったとしても、本件訂正により個別化された個々の化合物を製造する際には、当業者に通常期待し得る程度を超える試行錯誤が要求されるというべきであると主張する。(弁駁書2、15?16頁)
しかし、上記(4)で述べたとおりである。請求人の主張は、採用できない。

イ 請求人は、本件特許明細書には、本件訂正発明に係る個別化された化合物が改良された除草特性を有していることを示す具体的な記載は何もなく、結局それは、いわゆる後出しの実験データである被請求人の実験成績証明書1、2、及び4(乙10、11及び22)において示されたにすぎず、これらが参酌される余地はないと主張する。また、仮にそれらを見たとしても、本件訂正発明1に係る化合物のうち、(i)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖又は-CH_(2)O-である場合、Hetがオキシラニル、3-オキセタニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロフラニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル又は1-ピラゾリルである化合物、(ii)X^(1)が-CH_(2)O-である場合、Hetが2-オキセタニルである化合物、(iii)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖である場合、Hetが2-ピラゾリル、1-メチル-5-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル又は4-クロロ-1-ピラゾリルである化合物の除草特性は、何ら示されていないから、本件訂正発明がサポート要件を満たしているとはいえないと主張する。(弁駁書2、29?33頁)
しかし、上記(4)で述べたとおりである。請求人の主張は、採用できない。

(6)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、3、4は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合し、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由1によっては、無効とすべきものではない。

4 無効理由3について
無効理由3の概要は、本件発明1、3及び4は、本件優先日前に頒布された甲1?甲4(主引用例は、本件発明1及び3については甲1、本件発明4については甲2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。

(1)甲1?甲4の記載

ア 甲1(特開平8-20554号公報、発明の名称「シクロヘキサンジオン誘導体および除草剤」)には、以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】一般式

[式中、R^(1)は水素原子または低級アルキル基を表し、Xは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルコキシ基、低級アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、トリフルオロメチル基、-COR^(2)基(ただし、基中、R^(2)は低級アルキル基、低級アルコキシ基または低級アルキルアミノ基を表す。)、-NHCOR^(3)基(ただし、基中、R^(3)は低級アルキル基または低級アルキルアミノ基を表す。)、-S(O)_(m)R^(4)基(ただし、基中、R^(4)は低級アルキル基を表し、mは0または2を表す。)、-C(CH_(3))=NOR^(5)基(ただし、基中、R^(5)は低級アルキル基を表す。)または-(CH_(2))yCN基(ただし、基中、yは0または1を表す。)を表し、nは0、1または2を表す。]で示されるシクロヘキサンジオン誘導体。」
(1b)「【0001】【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体および該誘導体を活性成分として含有することを特徴とする除草剤に関する。」
(1c)「【0003】【従来の技術】本発明のシクロヘキサンジオン誘導体と化学構造上近似の化合物は、次の・・・文献に記載されている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】これら・・・文献に記載の化合物は、後記試験例に示すように、除草効力が不十分であったり、作物に薬害を与えたりすることから、必ずしも満足すべきものとはいいがたい。そのため、このような欠点のない除草剤の開発が望まれている。
【0009】本発明は、これらの化合物に代わり、優れた除草活性と作物に対する安全性を有するシクロヘキサンジオン誘導体およびそれを含有する水稲および畑作物用除草剤を提供することにある。」
(1d)「【0014】次に、本発明の一般式(1)の化合物の代表的な具体例を表1?表3に示す。
【0015】なお、化合物No.は以下の実施例および試験例でも参照される。
【0016】【表1】

【0017】【表2】

【0018】【表3】


(1e)「【0020】【実施例】(本発明化合物の製造法)
次に本発明化合物の製造法について詳しく説明する。すなわち、出発原料として、一般式(2)

(式中、R^(1)は前記の意味を表す。)で示されるシクロヘキサンジオン誘導体と、一般式(3)

(式中、X、nは前記の意味を表し、Yはハロゲン原子を表す。)で示されるベンゾイルハライド誘導体とを反応させることにより、一般式(4)

(式中、R^(1)、Xおよびnは前記の意味を表す。)で示される中間体を得、次いでシアナイド源を触媒として反応させることにより、一般式(1)

(式中、R^(1)、Xおよびnは前記の意味を表す。)で示される本発明化合物が得られる。」
(1f)「【0031】なお、出発原料である一般式(2)で表される化合物は、公知のものであり、試薬として入手できる。また、一般式(3)の出発原料は新規の化合物であり、下記の反応式で示すとおり、公知の方法に準じて合成することができ、その製造例を参考製造例に示した。
【0032】

(X、Yおよびnは前記と同じ意味を表し、Rは炭素数1?4のアルキル基を表す。)」
(1g)「【0064】試験例1.水田雑草に対する除草効果試験および移植水稲に対する薬害試験
5000分の1アールの大きさのプラスチック製ポットに水田土壌(植壌土)を充填し、タイヌビエ、広葉雑草(アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベ)、ホタルイの種子を1?2cmの深さにそれぞれ30粒ずつを播種した。播種1日後に湛水し、水深を2cmに保った。播種3日後に2.5葉期の水稲を移植し、温室内で育成した。水稲移植1日後に実施例5に準じて調製した乳剤を所定量となるように水で希釈し、ポット当たり10ml滴下した。
【0065】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、処理21日後に下記式により除草率(%)を求め、以下に示す評価の指標に基づいて除草効果と薬害を調査した。その結果は表4?5のとおりである。
【0066】

【0067】

【0068】【表4】

【0069】【表5】

【0070】比較薬剤A;

(特表平4-501726号公報に記載の化合物)
【0071】比較薬剤B;

(特表平4-501726号公報に記載の化合物)
【0072】比較薬剤C;

(米国特許第5092919号明細書に記載の化合物)
【0073】比較薬剤D;

(米国特許第5110979号明細書に記載の化合物)」
(1h)「【0074】試験例2 畑作雑草に対する除草効果および作物に対する薬害試験
1) 畑作雑草に対する除草効果試験
5000分の1アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、表層1cmの土壌とメヒシバ、エノコログサ、シロザ、イヌビユ、イヌタデの各種雑草種子それぞれ50粒を均一に混合し、表層を軽く押圧した。播種2日後に実施例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、10アール当り100リットル(活性成分の施用量換算で10アール当り100g相当)を土壌表面に噴霧した。
【0075】本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、薬剤処理30日後に除草効果を試験例1と同様の評価の指標に基づいて調査した。
【0076】2) 作物に対する薬害試験
10,000分の1アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、各作物の種子(ダイズ5粒、トウモロコシ5粒、ビート10粒、ナタネ10粒およびコムギ10粒)をそれぞれ別のポットに播種し、表層を軽く押圧した。播種1日後に実施例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、10アール当り100リットル(活性成分量で10アール当り100g相当)を土壌表面に噴霧した。
【0077】本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、薬剤処理30日後に各作物に対する薬害程度を、試験例1と同様の評価の指標に基づいて調査した。その結果は表6?7のとおりである。
【0078】【表6】

【0079】【表7】


(1i)「【0080】【発明の効果】本発明化合物は、既知の類似化合物に比べ、優れた除草効力を有し、かつ作物と雑草間に優れた選択性を示す。すなわち、水田の湛水処理において、問題となる種々の雑草、例えばタイヌビエなどのイネ科雑草、アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベなどの広葉雑草、タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリなどのカヤツリグサ科雑草、コナギ、ウリカワなどに幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかも水稲に対しては薬害を与えない。
【0081】また、本発明化合物は畑地の茎葉処理及び土壌処理において、問題となるソバカズラ、イヌビユ、イヌタデ、ハコベ、シロザ、アオゲイトウ、ナズナ、イチビ、マルバアサガオなどの広葉雑草、タイヌビエ、イヌビエ、エノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、カラスムギなどのイネ科雑草、ハマスゲなどのカヤツリグサ科雑草に対しても幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかもトウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、ナタネ、ビートなどの主要作物に対し薬害を与えない。
【0082】その上、人畜毒性や魚毒性も少ない。したがって、安全に使用できる。」

イ 甲2(特開平7-206808号公報、発明の名称「シクロヘキサンジオン誘導体および除草剤」)には、以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】一般式

[式中、R^(1)およびR^(2)は、水素原子または低級アルキル基を表し、R^(3)は、-CH_(2)OR^(5)基(ただし、基中、R^(5)は、低級アルキル基を表す。)、-CH_(2)CH_(2)OCH_(2)CH_(2)OR^(6)基(ただし、基中、R^(6)は、低級アルキル基を表す。)または-CH_(2)CH(OR^(7))_(2 )基(ただし、基中、R^(7)は、低級アルキル基を表すか、または環構造を形成する低級アルキレン基を表す。)を表し、R^(4)は、低級アルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示されるシクロヘキサンジオン誘導体。」
(2b)「【0001】【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体および該誘導体を活性成分として含有することを特徴とする除草剤に関する。」
(2c)「【0003】【従来の技術】本発明のシクロヘキサンジオン誘導体と化学構造上近似の化合物としては次の・・・文献に記載されている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら・・・文献に記載の化合物は、後記試験例に示すように、除草効力が不十分であったり、作物に薬害を与えたりすることから、必ずしも満足すべきものとはいいがたい。そのため、このような欠点のない除草剤の開発が望まれている。
【0009】本発明は、これらの化合物に代わり、優れた除草活性と作物に対する安全性を有するシクロヘキサンジオン誘導体およびそれを含有する水稲および畑作物用除草剤を提供することにある。」
(2d)「【0014】次に、本発明の一般式(1)の化合物の代表的な具体例を表1?2に示す。
【0015】なお、化合物No.は以下の実施例および試験例でも参照される。
【0016】【表1】

【0017】【表2】


(2e)「【0019】【実施例】(本発明化合物の製造法)
次に本発明化合物の製造法について詳しく説明する。すなわち、出発原料として、一般式(2)

(式中、R^(1)、R^(2)は前記の意味を表す。)で示されるシクロヘキサンジオン誘導体と、一般式(3)

(式中、R^(3)、R^(4)およびXは、前記の意味を表し、Yは、ハロゲン原子を表す。)で示されるベンゾイルハライド誘導体とを反応させることにより、一般式(4)

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)およびXは前記の意味を表す。)で示される中間体を得、次いでシアナイド源を触媒として反応させることにより、一般式(1)

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)およびXは前記の意味を表す。)で示される本発明化合物が得られる。」
(2f)「【0030】なお、出発原料である一般式(2)で表される化合物は、公知のものである。また、一般式(3)の出発原料は、新規の化合物であり、公知の方法により合成することができ、その製造例を参考製造例1?2に示した。」
(2g)「【0058】・・・試験例1.ヒエに対する除草効果試験および移植水稲に対する薬害試験5000分の1アールの大きさのプラスチック製ポットに水田土壌(植壌土)を充填し、水を加えて代かきを行い、表層0?2cmにタイヌビエ種子50粒を播種し、2葉期の水稲を2cmの深さに1株2本植えでポット当たり3株移植し、水深を3cmに保った。
【0059】薬剤処理はタイヌビエの2葉期に実施例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、ポット当たり10ml(活性成分の使用量換算で1アール当たり1.3g相当)を滴下した。
【0060】本試験は1薬液濃度区あたり2連制で行い、薬剤処理21日後に下記式により除草率(%)を求め、以下に示す評価の指標に基づいて除草効果と薬害を調査した。その結果は表3?4のとおりである。
【0061】

【0062】

【0063】【表3】

【0064】【表4】

【0065】比較薬剤A;

(特表平4-501726号公報に記載の化合物)
【0066】比較薬剤B;

(特表平4-501726号公報に記載の化合物)
【0067】比較薬剤C;

(特表平4-501726号公報に記載の化合物)
【0068】比較薬剤D;

(米国特許第5092919号明細書に記載の化合物)
【0069】比較薬剤E;

(米国特許第5092919号明細書に記載の化合物)」
(2h)「【0070】試験例2. 水田雑草に対する除草効果試験および移植水稲に対する薬害試験5000分の1アールの大きさのプラスチック製ポットに水田土壌(植壌土)を充填し、タイヌビエ、広葉雑草(アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベ)、ホタルイの種子を1?2cmの深さにそれぞれ30粒ずつを播種した。播種1日後に湛水し、水深を2cmに保った。播種3日後に2.5葉期の水稲を移植し、温室内で育成した。水稲移植1日後に実施例5に準じて調製した乳剤を所定量となるように水で希釈して得た散布液をポット当たり10ml滴下した。
【0071】本試験は1薬液濃度区当たり2連制で行い、処理21日後に除草効果および水稲の薬害を試験例1と同様の評価の指標に基づいて調査した。その結果は表5?6のとおりである。
【0072】【表5】

【0073】【表6】


(2i)「【0074】試験例3 畑作雑草に対する除草効果および作物に対する薬害試験
1) 畑作雑草に対する除草効果試験
5000分の1アールの大きさの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、表層1cmの土壌とメヒシバ、エノコログサ、シロザ、イヌビユ、イヌタデの各種雑草種子それぞれ50粒を均一に混合し、表層を軽く押圧した。播種2日後に実施例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、10アール当り100リットル(活性成分の施用量換算で10アール当り100g相当)を土壌表面に噴霧した。
【0075】本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、薬剤処理30日後に除草効果を試験例1と同様の評価の指標に基づいて調査した。
【0076】2) 作物に対する薬害試験
10,000分の1アールの素焼製ポットに畑土壌(沖積壌土)をつめ、各作物の種子(ダイズ5粒、トウモロコシ5粒、ビート10粒、ナタネ10粒およびコムギ10粒)をそれぞれ別のポットに播種し、表層を軽く押圧した。播種1日後に実施例5に準じて調製した乳剤を水で希釈し、10アール当り100リットル(活性成分量で10アール当り100g相当)を土壌表面に噴霧した。
【0077】本試験は1薬液濃度区当り2連制で行い、薬剤処理30日後に各作物に対する薬害程度を、試験例1と同様の評価の指標に基づいて調査した。その結果は表7?8のとおりである。
【0078】【表7】

【0079】【表8】


(2j)「【0080】【発明の効果】本発明化合物は、既知の類似化合物に比べ、優れた除草効力を有し、かつ作物と雑草間に優れた選択性を示す。すなわち、水田の湛水処理において、問題となる種々の雑草、例えばタイヌビエなどのイネ科雑草、アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベなどの広葉雑草、タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリなどのカヤツリグサ科雑草、コナギ、ウリカワなどに幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかも水稲に対しては薬害を与えない。
【0081】また、本発明化合物は畑地の茎葉処理及び土壌処理において、問題となるソバカズラ、イヌビユ、イヌタデ、ハコベ、シロザ、アオゲイトウ、ナズナ、イチビ、マルバアサガオなどの広葉雑草、タイヌビエ、イヌビエ、エノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、カラスムギなどのイネ科雑草、ハマスゲなどのカヤツリグサ科雑草に対しても幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかもトウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、ナタネ、ビートなどの主要作物に対し薬害を与えない。
【0082】その上、人畜毒性や魚毒性もない。したがって、安全に使用できる。」

ウ 甲3(特開平6-321932号公報、発明の名称「シクロヘキサンジオン誘導体および除草剤」)には、以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】一般式

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、水素原子または低級アルキル基を表し、Xは塩素原子または臭素原子を表す。)で示されるシクロヘキサンジオン誘導体。」
(3b)「【0001】【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体および該誘導体を活性成分として含有することを特徴とする除草剤に関する。」
(3c)「【0003】【従来の技術】本発明のシクロヘキサンジオン誘導体と化学構造上近似の化合物としては次のものがあり、いずれも除草活性を有することが知られている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら・・・文献に記載の化合物は、後記試験例に示すように、除草効力が不十分であったり、作物に薬害を与えたりすることから、必ずしも満足すべきものとはいいがたい。そのため、このような欠点のない除草剤の開発が望まれている。
【0009】本発明は、これらの化合物に代わり、優れた除草活性と作物に対する安全性を有するシクロヘキサンジオン誘導体およびそれを含有する水稲および畑作物用除草剤を提供することにある。」
(3d)「【0072】【発明の効果】本発明化合物は、既知の類似化合物に比べ、優れた除草効力を有し、かつ作物と雑草間に優れた選択性を示す。すなわち、水田の湛水処理において、問題となる種々の雑草、例えばタイヌビエなどのイネ科雑草、アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベなどの広葉雑草、タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリなどのカヤツリグサ科雑草、コナギ、ウリカワなどに幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかも水稲に対しては全く薬害を与えない。
【0073】また、本発明化合物は畑地の茎葉処理及び土壌処理において、問題となるソバカズラ、イヌビユ、イヌタデ、ハコベ、シロザ、アオゲイトウ、ナズナ、イチビ、マルバアサガオなどの広葉雑草、タイヌビエ、イヌビエ、エノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、カラスムギなどのイネ科雑草、ハマスゲなどのカヤツリグサ科雑草に対しても幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかもトウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、ナタネ、ビートなどの主要作物に対し薬害を与えない。
【0074】その上、人畜毒性や魚毒性もない。したがって、安全に使用できる。」

エ 甲4(特開平6-271562号公報、発明の名称「シクロヘキサンジオン誘導体および除草剤」)には、以下の記載がある。
(4a)「【請求項1】一般式

(式中、R^(1)、R^(2)およびR^(3)は水素原子または低級アルキル基を表し、Xは塩素原子または臭素原子を表し、Yは酸素原子または硫黄原子を表し、Zは低級アルキル基で置換されてもよい低級アルキレン基を表し、mは1または2の整数を表す。)で示されるシクロヘキサンジオン誘導体。」
(4b)「【0001】【発明の目的】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体および該誘導体を活性成分として含有することを特徴とする除草剤に関する。」
(4c)「【0003】【従来の技術】本発明のシクロヘキサンジオン誘導体と化学構造上近似の化合物としては次のものがあり、いずれも除草活性を有することが知られている。
・・・・・・・・・・・・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら・・・文献に記載の化合物は、後記試験例に示すように、除草効力が不十分であったり、作物に薬害を与えたりすることから、必ずしも満足すべきものとはいいがたい。そのため、このような欠点のない除草剤の開発が望まれている。
【0009】本発明は、これらの化合物に代わり、優れた除草活性と作物に対する安全性を有するシクロヘキサンジオン誘導体およびそれを含有する水稲および畑作物用除草剤を提供することにある。」
(4d)「【0072】【発明の効果】本発明化合物は、既知の類似化合物に比べ、優れた除草効力を有し、かつ作物と雑草間に優れた選択性を示す。すなわち、水田の湛水処理において、問題となる種々の雑草、例えばタイヌビエなどのイネ科雑草、アゼナ、キカシグサ、ミゾハコベなどの広葉雑草、タマガヤツリ、ホタルイ、マツバイ、ミズガヤツリなどのカヤツリグサ科雑草、コナギ、ウリカワなどに幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかも水稲に対しては全く薬害を与えない。
【0073】また、本発明化合物は畑地の茎葉処理及び土壌処理において、問題となるソバカズラ、イヌビユ、イヌタデ、ハコベ、シロザ、アオゲイトウ、ナズナ、イチビ、マルバアサガオなどの広葉雑草、タイヌビエ、イヌビエ、エノコログサ、メヒシバ、スズメノカタビラ、カラスムギなどのイネ科雑草、ハマスゲなどのカヤツリグサ科雑草に対しても幅広く作用してほぼ完全に除草することができ、しかもトウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、ナタネ、ビートなどの主要作物に対し薬害を与えない。
【0074】その上、人畜毒性や魚毒性もない。したがって、安全に使用できる。」

(2)甲1及び甲2に記載された発明

ア 甲1は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体及び該誘導体を活性成分として含有する除草剤について記載した特許文献である。甲1には、摘示(1a)?(1i)からみて、その請求項1に係る発明である、
「一般式

[式中、R^(1)は水素原子または低級アルキル基を表し、Xは低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルコキシ基、低級アルキニルオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、トリフルオロメチル基、-COR^(2)基(ただし、基中、R^(2)は低級アルキル基、低級アルコキシ基または低級アルキルアミノ基を表す。)、-NHCOR^(3)基(ただし、基中、R^(3)は低級アルキル基または低級アルキルアミノ基を表す。)、-S(O)_(m)R^(4)基(ただし、基中、R^(4)は低級アルキル基を表し、mは0または2を表す。)、-C(CH_(3))=NOR^(5)基(ただし、基中、R^(5)は低級アルキル基を表す。)または-(CH_(2))yCN基(ただし、基中、yは0または1を表す。)を表し、nは0、1または2を表す。]で示されるシクロヘキサンジオン誘導体。」
の発明(以下「甲1発明」といい、上記化合物を「甲1化合物」という。)が記載されているということができる。

イ 甲2は、新規なシクロヘキサンジオン誘導体及び該誘導体を活性成分として含有する除草剤について記載した特許文献である。甲2には、摘示(2a)?(2j)からみて、その請求項1に係る発明の一般式

[式中、R^(1)およびR^(2)は、水素原子または低級アルキル基を表し、R^(3)は、-CH_(2)OR^(5)基(ただし、基中、R^(5)は、低級アルキル基を表す。)、-CH_(2)CH_(2)OCH_(2)CH_(2)OR^(6)基(ただし、基中、R^(6)は、低級アルキル基を表す。)または-CH_(2)CH(OR^(7))_(2 )基(ただし、基中、R^(7)は、低級アルキル基を表すか、または環構造を形成する低級アルキレン基を表す。)を表し、R^(4)は、低級アルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。]
の化合物を、摘示(2e)の方法で製造することが記載されている。上記において、R^(3)が、-CH_(2)CH(OR^(7))_(2 )基であって、そのR^(7)が環構造を形成する低級アルキレン基である

又は

であるものは、具体的な合成例が示されてはいないが、摘示(2d)の表にも都合6個の化合物が物性値と共に示され、具体的な合成例が示された化合物と同様に製造できるものとして記載されていると認められる。したがって、甲2には、
「一般式

[式中、R^(1)およびR^(2)は、水素原子または低級アルキル基を表し、R^(3)は、-CH_(2)CH(OR^(7))_(2 )基であってそのR^(7)が環構造を形成する低級アルキレン基である

又は

を表し、R^(4)は、低級アルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。]で示されるシクロヘキサンジオン誘導体の製造方法であって、一般式(2)

(式中、R^(1)、R^(2)は前記の意味を表す。)で示されるシクロヘキサンジオン誘導体と、一般式(3)

(式中、R^(3)、R^(4)およびXは、前記の意味を表し、Yは、ハロゲン原子を表す。)で示されるベンゾイルハライド誘導体とを反応させることにより、一般式(4)

(式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)およびXは前記の意味を表す。)で示される中間体を得、次いでシアナイド源を触媒として反応させることにより、上記一般式(1)で示される化合物を製造する方法。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているということができる。

(3)本件発明1について

ア 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「式Ia

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本件発明1は、R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)であるのに対し、甲1発明においては、対応する基が、ハロゲンの1種であるクロロである点
相違点2:
本件発明1は、Hetが、オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、又は4-クロロ-1-ピラゾリルであるのに対し、甲1発明においては、対応する基が、特定の基Xを0、1又は2個有するフェニル基である点

イ 相違点の検討
甲1発明の甲1化合物は、シクロヘキサン-1,3-ジオンの2位がカルボニル基を介して中央のベンゼン環に結合した構造を有する点で、本件発明1の化合物と共通するものであり、中央のベンゼン環のカルボニルが置換した位置を1位とすると、2位及び4位がクロロで置換され、3位が特定のXで置換していてもよいフェニルオキシメチルで置換されていることを、発明を特定する事項とするものである。
甲1発明から出発して本件発明1の構成に至るためには、4位のクロロを-S(O)_(n)R^(3)に置き換え、3位の(Xで置換していてもよい)フェニルオキシメチル(-CH_(2)O-φ)を特定のヘテロ環オキシメチル(-CH_(2)O-Het)に置き換える必要がある。
しかし、甲1発明は、上記2位?4位が特定の基であることを必須とする発明であり、甲1の全ての記載をみても、4位のクロロを-S(O)_(n)R^(3)に置き換えたり、3位の(Xで置換していてもよい)フェニルオキシメチルを特定のヘテロ環オキシメチルに置き換えることの、動機付けとなるものは存在しない。
また、甲2?甲4にも、シクロヘキサン-1,3-ジオンの2位がカルボニル基を介して中央のベンゼン環に結合した構造を有する、除草剤としての有用性を有する化合物の発明が記載されているが、甲2?甲4のいずれにも、中央のベンゼン環の3位を特定のヘテロ環オキシメチルとすることは記載されておらず、3位の基としてヘテロ環を有する構造が少数記載されているとしても、せいぜい、ヘテロ環メチルオキシ(-OCH_(2)-ヘテロ環)か、ヘテロ環エチルオキシ(-OCH_(2)CH_(2)-ヘテロ環)であって、本件発明1におけるX^(1)とは異なる連結基のものである。したがって、甲1発明に、甲2?甲4に記載された発明を組み合わせても、3位の構造が、本件発明1の特定のヘテロ環オキシメチル(-CH_(2)O-Het)となることはなく、そもそも、甲1発明の2位?4位の化学構造を変化させるために甲2?甲4を組み合わせる動機付けとなるものもない。
そうすると、甲1発明において、相違点1及び2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

エ まとめ
したがって、本件発明1は、甲1?甲4(主引用例は甲1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1において、Hetの選択肢を、初めの3個を除いた15個に限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1?甲4(主引用例は甲1)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明4について

ア 甲2発明との対比
本件発明4と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「低級アルキル基」は本件発明4の「C_(1)?C_(6)アルキル」又は「C_(1)?C_(4)アルキル」に包含され、また、甲2発明における「一般式(3)・・・で示されるベンゾイルハライド誘導体」と、本件発明4における「カルボン酸IIIb’」は、ともに「アシル化剤」であるから、両者は、
「式Ia

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンの製造方法であって、置換又は非置換のシクロヘキサン-1,3-ジオンQを、アシル化剤でアシル化し、適宜触媒の存在下に、アシル化生成物を転位させて化合物Iaを得ることを特徴とする製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点3:
本件発明4は、X^(1)が、酸素により中断されたエチレン鎖又は-CH_(2)O-であるのに対し、甲2発明においては、対応する基が、-OCH_(2)-である点
相違点4:
本件発明4は、Hetが、オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、若しくは4-クロロ-1-ピラゾリル、又は上記のうち初めの3つを除いたものの何れかであるのに対し、甲2発明においては、対応する基が、

又は

である点
相違点5:
本件発明4は、アシル化剤がカルボン酸IIIb’

であるのに対し、甲2発明においては、アシル化剤が一般式(3)

(審決注:Yは、ハロゲン原子である。他の置換基は省略する。)で示されるベンゾイルハライド誘導体、すなわち、カルボン酸ハライドである点

イ 相違点の検討

まず、相違点3及び4について検討する。
甲2発明の目的化合物は、シクロヘキサン-1,3-ジオンの2位がカルボニル基を介して中央のベンゼン環に結合した構造を有する点で、本件発明4の目的化合物と共通するものであり、中央のベンゼン環のカルボニルが置換した位置を1位とすると、2位及び4位の置換基も共通するが、3位の置換基は、-OCH_(2)-に続いて

又は

であることを、発明を特定する事項とするものである。
甲2発明から出発して本件発明4の構成に至るためには、上記の3位の置換基を、特定のヘテロ環オキシメチル(-CH_(2)O-Het)に置き換える必要がある。
しかし、甲2発明は、上記の3位の置換基を必須とする発明であり、甲2の全ての記載をみても、上記の3位の置換基は、「-OR^(3)」であって「R^(3)は、-CH_(2)OR^(5)基(ただし、基中、R^(5)は、低級アルキル基を表す。)、-CH_(2)CH_(2)OCH_(2)CH_(2)OR^(6)基(ただし、基中、R^(6)は、低級アルキル基を表す。)または-CH_(2)CH(OR^(7))_(2 )基(ただし、基中、R^(7)は、低級アルキル基を表すか、または環構造を形成する低級アルキレン基を表す。)を表し」というものであるから、甲2発明の上記の3位の置換基を、本件発明4の目的化合物の特定のヘテロ環オキシメチルに置き換えることの、動機付けとなるものは存在しない。
また、甲1には、シクロヘキサン-1,3-ジオンの2位がカルボニル基を介して中央のベンゼン環に結合した構造を有する、除草剤としての有用性を有する化合物の発明が記載されており、中央のベンゼン環の3位は、特定のXで置換していてもよいフェニルオキシメチルである。つまり、甲1にも、中央のベンゼン環の3位を特定のヘテロ環オキシメチルとすることは記載されていない。したがって、甲2発明に、甲1に記載された発明を組み合わせても、3位の構造が、本件発明4の特定のヘテロ環オキシメチル(-CH_(2)O-Het)となることはなく、そもそも、甲2発明の3位の化学構造を変化させるために甲1を組み合わせる動機付けとなるものもない。
また、甲3、甲4にも、シクロヘキサン-1,3-ジオンの2位がカルボニル基を介して中央のベンゼン環に結合した構造を有する、除草剤としての有用性を有する化合物の発明が記載されているが、甲3、甲4のいずれにも、中央のベンゼン環の3位を特定のヘテロ環オキシメチルとすることは記載されておらず、3位の基としてヘテロ環を有する構造が少数記載されているとしても、せいぜい、ヘテロ環メチルオキシ(-OCH_(2)-ヘテロ環)か、ヘテロ環エチルオキシ(-OCH_(2)CH_(2)-ヘテロ環)であって、本件発明4におけるX^(1)とは異なる連結基のものであり、Hetも異なる。したがって、甲2発明に、甲3、甲4に記載された発明を組み合わせても、3位の構造が、本件発明1の特定のヘテロ環オキシメチル(-CH_(2)O-Het)となることはない。
そうすると、甲2発明において、相違点3及び4に係る本件発明4の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

エ まとめ
したがって、相違点5については検討するまでもなく、本件発明4は、甲1?甲4(主引用例は甲2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)請求人の主張について
請求人は、除草剤特性を有する化合物において、当該特性を有する既知の化合物のうちの一部の置換基を変更した種々の化合物を作製し、その効果を確認してみることの動機付けがあったことは明白であると主張する。また、本件訂正発明に係る化合物で、X^(1)が-CH_(2)O-であり、Hetがオキシラニルである化合物は、甲1に記載の一般的手順を適用し、フェノールに代えて、公知のハイドロオキシオキシランを用いることにより製造することができると主張する。そして、本件特許明細書には、本件訂正発明に係る化合物の効果は何一つ記載されていないし、実験成績証明書1、2及び4(乙10、11及び12)にも、本件訂正発明1に係る化合物のうち、(i)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖又は-CH_(2)O-である場合、Hetがオキシラニル、3-オキセタニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロフラニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル又は1-ピラゾリルである化合物、(ii)X^(1)が-CH_(2)O-である場合、Hetが2-オキセタニルである化合物、(iii)X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖である場合、Hetが2-ピラゾリル、1-メチル-5-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル又は4-クロロ-1-ピラゾリルである化合物の効果は、何ら示されていないから、本件訂正発明に係る化合物の効果が、当業者の予期せぬ格別顕著なものということはできないと主張する。(弁駁書2、33?40頁)
しかし、上記(3)及び(4)で述べたとおりであって、そこで検討した相違点1及び2並びに相違点3及び4に係る、化合物の置換基又は部分構造を置き換える動機付けとなるものは、存在しないから、その余について検討するまでもなく、請求人の主張は、採用できない。

(7)無効理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1、3及び4は、本件優先日前に頒布された甲1?甲4(主引用例は、本件発明1及び3については甲1、本件発明4については甲2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
よって、本件発明1、3及び4についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由3によっては、無効とすべきものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人が示した理由及び証拠によっては、本件発明1、3、4に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia
【化1】

[但し、R^(1)が、ハロゲンを表し、
R^(2)が、-S(O)_(n)R^(3)を表し、
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキルを表し、
nが1又は2を表し、
Qが2位に結合する式II
【化2】

[但し、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し、上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]
で表されるシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し、
X^(1)が酸素により中断されたエチレン鎖または-CH_(2)O-を表し、
Hetが、
オキシラニル、2-オキセタニル、3-オキセタニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
Hetが、
2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、2-テトラヒドロピラニル、2-ピロリル、5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、2-ピリジニル、1-メチル-5-ピラゾリル、1-ピラゾリル、3,5-ジメチル-1-ピラゾリル、または4-クロロ-1-ピラゾリルを表す請求項1に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の式Iaで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンの製造方法であって、置換又は非置換のシクロヘキサン-1,3-ジオンQを、カルボン酸IIIb’
【化3】

[但し、置換基R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetが、それぞれ請求項1と同義である]
でアシル化し、適宜触媒の存在下に、アシル化生成物を転位させて化合物Iaを得ることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、式I
【0002】
【化5】

[但し、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ水素、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシ、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)、-OCOR^(3)、-OSO_(2)R^(3)、-S(O)_(n)R^(3)、-SO_(2)OR^(3)、-SO_(2)N(R^(3))_(2)、-NR^(3)SO_(2)R^(3)又は-NR^(3)COR^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ(最後の8個の基は置換されていても良い)を有していても良く;
nが0、1又は2を表し;
Qが、2位で結合する、置換基を有していても良いシクロヘキサン-1,3-ジオン環を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1個以上の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシから選択される基で置換されていても良く;
Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は3?6員のヘテロ芳香族基{これら基は、下記の3個の群:窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択されるヘテロ原子を3個まで有する}を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い]
で表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン又はその農業上有用な塩に関する。
【0003】
さらに本発明は、式Iの化合物を製造する方法及びそのための中間体、化合物Iを含む組成物、式Iの化合物の使用、並びに有害植物防除用としての化合物Iを含む組成物に関する。
【0004】
2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンは、文献、例えばEP-A278742、EP-A298680、EP-A320864及びWO96/14285に開示されている。
【0005】
しかしながら、従来技術の化合物が示す除草特性及びその栽培植物の安全性は、完全に満足できるものではない。
【0006】
本発明の目的は、新規な、特に除草作用において、特性が改良された化合物を提供することにある。
【0007】
本発明者等は、この目的が式Iの2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン及びその除草作用により達成されることを見出した。
【0008】
さらに本発明者等は、化合物Iを含み極めて良好な除草作用のある除草剤組成物を見出した。さらに、本発明者等は、これら組成物を製造する方法及びこの化合物Iを用いて望ましくない植生を制御する方法を見出した。
【0009】
本発明は、さらに式Iで表される化合物の立体異性体を提供することにある。この異性体には、純粋な立体異性体のみならず、その混合物も含まれている。
【0010】
置換形式により、式Iの化合物は1個以上のキラル中心を有することができ、この場合、エナンチオマー又はジアステレオマー混合物として存在する。本発明は、純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーのみならず、これらの混合物に関するものでもある。
【0011】
式Iの化合物は、その農業上有用な塩の形態で存在することもでき、塩の種類は一般に重要でない。一般に、これらのカチオンの塩又はこれら酸の酸付加塩が適当であり、そのカチオン又はアニオンは、化合物Iの除草作用に悪影響を与えない。
【0012】
好適なカチオンは、特にアルカリ金属、好ましくはリチウム、ナトリウム及びカリウムのイオン、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及びマグネシウムのイオン、並びに遷移金属、好ましくはマンガン、銅、亜鉛及び鉄のイオンであり、さらにまたアンモニウム塩(必要により、1?4個の水素原子は、C_(1)?C_(4)アルキル又はヒドロキシC_(1)?C_(4)アルキル及び/又は1個のフェニル又はベンジルで置き換わって良い)、好ましはジイソプロピルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムであり、さらにホスホニウムイオン、スルホニウムイオン(好ましくは、トリ(C_(1)?C_(4)アルキル)スルホニウム)及びスルホキソニウムイオン(好ましくはトリ(C_(1)?C_(4)アルキル)スルホキソニウムである。
【0013】
有用な酸付加塩のアニオンは、主に塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸水素塩、硫酸塩、燐酸二水素塩、燐酸水素塩、硝酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ヘキサフルオロ珪酸塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、安息香酸塩であり、またさらにC_(1)?C_(4)アルカン酸のアニオン、好ましくはホルマート、アセタート、プロピオナート及びブチラートである。
【0014】
Qは2位で結合する式II
【0015】
【化6】

で表され、さらに互変異性体II’及びII”
【0016】
【化7】

も表すシクロヘキサン-1,3-ジオン環である場合の、本発明の式Iで表される化合物が特に重要である:
[但し、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキルを表し;R^(8)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(3)?C_(4)シクロアルキル{最後の2個の基は1?3個の下記の基:ハロゲン、C_(1)?C_(4)アルキルチオ又はC_(1)?C_(4)アルコキシから選択される置換基を有していても良い}を表し、或いは
テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチオラン-2-イル又は1,3-ジチアン-2-イル{最後の6個の基は1?3個のC_(1)?C_(4)アルキル基で置換されていても良い}を表し;
R^(10)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(1)?C_(6)アルコキシカルボニルを表し、又は
R^(8)とR^(11)が合体して、π結合又は3?6員の炭素環を形成し;又は
上記CR^(8)R^(9)単位が、C=Oで置き換わっていても良い]。
【0017】
方法A:
式IIのシクロヘキサン-1,3-ジオンを、好ましくは系内で活性化される活性化カルボン酸IIIa又はカルボン酸IIIbと反応させ、アシル化生成物IVを得、次いで本発明の式Iの化合物に転位させる反応。
【0018】
【化8】

L^(1)は求核置換可能な脱離基であり、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、又はカルボキシラート(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸)等が挙げられる。
【0019】
活性化カルボン酸を、ハロゲン化アシルの場合のように直接使用することができ、或いは系内で、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、トリフェニルホスフィン/アゾジカルボン酸エステル、2-ピリジンジスルフィド/トリフェニルホスフィン、カルボニルジイミダゾール等を用いて発生させることができる。
【0020】
塩基の存在下にアシル化反応を行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基を、等モル量で使用することが有利である。特定の条件では、IIに対して僅かに過剰の、例えば1.2?1.5モル等量の補助塩基が有利であろう。
【0021】
好適な補助塩基は、第三級アルキルアミン、ピリジン又はアルカリ金属炭酸塩である。使用することができる溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
ハロゲン化アシルを、活性化カルボン酸成分として使用した場合、この反応材料を添加した際に反応混合物を0?10℃に冷却することが有利である。次いで、混合物を20?100℃、好ましくは25?50℃で、反応が完結するまで撹拌する。後処理は、慣用法で行われ、例えば反応混合物を水に注ぎ、所望の生成物を抽出する。この目的に特に好適な溶剤は、塩化メチレン、ジエチルエーテル及び酢酸エチルである。有機層を乾燥し、溶剤を除去した後、式IVの粗エノールエステルが、好ましくはクロマトグラフィー処理することにより精製される。或いは、転位反応を行うために、式IVの粗エノールエステルを、さらに精製することなく用いることも可能である。
【0023】
式IVの粗エノールエステルを反応させて式Iの化合物に転位させる反応は、塩基の存在下、また適宜シアノ化合物の存在下、溶剤中、20?40℃で行われることが有利である。
【0024】
使用することができる溶剤の例としては、アセトニトリル、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、又はこれらの混合物である。好ましい溶剤は、アセトニトリル及びジオキサンである。
【0025】
適当な塩基は、第三級アミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、又はアルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム)であり、これら塩基は上記エステルに対して等モル量で、又は4倍量までの過剰量で使用することが好ましい。トリエチルアミン又はアルカリ金属炭酸塩を用いることが好ましい。
【0026】
適当なシアノ化合物は、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等の無機シアン化物、及びアセトンシアノヒドリン、トリメチルシリルシアニド等の有機シアノ化合物である。これらは、上記エステルに対して1?50モル%の量で使用される。アセトンシアノヒドリン又はトリメチルシリルシアニドを使用することが好ましく、例えば上記エステルに対して、5?15モル%、好ましくは10モル%の量で使用される。
【0027】
特に、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸カリウムを、アセトニトリル又はジオキサン中で用いることが好ましい。
【0028】
後処理は、それ自体公知の方法で行われる。例えば、反応混合物を希薄な鉱酸(例えば、5%濃度の塩酸又は硫酸)で酸性化し、有機溶剤(例えば、塩化メチレン又は酢酸エチル)で抽出する。有機層を、5?10%濃度アルカリ金属炭酸塩溶液(例えば、炭酸ナトリウム溶液又は炭酸カリウム溶液)で抽出することができる。水層を酸性化し、形成した沈殿を吸引ろ過及び/又は塩化メチレン若しくは酢酸エチルで抽出し、乾燥し、そして濃縮する。
【0029】
式IIIで表される安息香酸は、新規である:
【0030】
【化9】

[但し、R^(1)とR^(2)が、それぞれ水素、メルカプト、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシ、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)、-OCOR^(3)、-OSO_(2)R^(3)、-S(O)_(n)R^(3)、-SO_(2)OR^(3)、-SO_(2)N(R^(3))_(2)、-NR^(3)SO_(2)R^(3)又は-NR^(3)COR^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ(最後の8個の基は置換されていても良い)を有していても良く;
nが0、1又は2を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(6)アルキレン鎖、C_(3)?C_(6)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(6)アルキニレン鎖{これら鎖は、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、且つ上述のアルキル、アルケニル又はアルキニル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1個以上の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシから選択される基で置換されていても良く;
Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は3?6員のヘテロ芳香族基{これら基は、窒素、酸素又は硫黄から選択されるヘテロ原子を3個まで有する}を表し、且つ上述のヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良く;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良く;
R^(12)がヒドロキシル又は加水分解可能な基を表す]。
【0031】
加水分解可能な基の例としては、アルコキシ、フェノキシ、アルキルチオ及びフェニルチオ(置換されていることもある)、ハロゲン化物、窒素を介して結合するヘテロアリール基、アミノ及びイミノ基(置換されていることもある)、等である。
【0032】
L^(1)がハロゲンであるハロゲン化ベンゾイルIIIa(R^(12)がハロゲンであるIIIに該当)
【0033】
【化10】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義であり、L^(1)はハロゲン、特に塩素又は臭素である]
が好ましい。
【0034】
さらに式IIIb(R^(12)がヒドロキシルであるIIIに該当)
【0035】
【化11】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義である]
で表される安息香酸が好ましい。
【0036】
さらに式IIIc(R^(12)がC_(1)?C_(6)アルコキシであるIIIに該当)
【0037】
【化12】

[但し、R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetは式IIIと同義であり、MはC_(1)?C_(6)アルコキシである]
で表される安息香酸エステルが好ましい。
【0038】
式IIIの好ましい安息香酸について、式Iで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンで述べたことは、基R^(1)、R^(2)、X^(1)及びHetに使用する。
【0039】
式IIIa(L^(1)がハロゲン)の化合物は、文献(L.G.Fieser,M.Fieser″Reagents for Organic Synthesis″,第I巻,767?769頁(1967)、参照)により知られている類似の方法により、式IIIbの安息香酸を、ハロゲン化剤(例えば、塩化チオニル、臭化チオニル、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、塩化オキサリル及び臭化オキサリル)と反応させて合成することができる。
【0040】
式IIIbの安息香酸は、特に式IIIcの安息香酸エステル(MがC_(1)?C_(6)アルコキシ)を加水分解することにより得ることができる。
【0041】
本発明の式IIIcで表される安息香酸エステルは、下記の例に記載されているように、文献(例えば、a:G.Dittus in Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie,第VI/3巻,Oxygen compounds I,第4版,493頁以下.,Georg Thieme Verlag,1965;b:T.L.Gilchrist,Heterocyclenchemie,第2版,Verlag Chemie,1995)公知の種々の方法により製造することができる。
【0042】
方法B:
安息香酸エステルVaを適当な求核試薬VIで置換して、本発明の安息香酸エステルIIIcを得る;
【0043】
【化13】

[但し、M、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ上記と同義であり、
L^(2)が適当な求核置換可能な脱離基、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、カルボキシラート(例えば、アセタート、トリフルオロアセタート)、スルホナート(例えば、メシラート、トリフラート)等を表し、
X^(2)が、炭素原子が少なくとも1個で、最大5個の、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、
X^(3)が、最大5個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、且つはX^(2)OX^(3)は基X^(1)を形成する]。
【0044】
一般に、出発材料は等モル量で用いられる。しかしながら、過剰量の出発材料又は他の成分を使用することが有利であろう。
【0045】
適宜、反応を塩基の存在下で行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基は、等モル量で用いることが有利である。特定の場合、Vaに対して、過剰量の補助塩基、例えば1.5?3モル等量用いることが有利であろう。
【0046】
適当な補助塩基は、第三級アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)である。トリエチルアミン、ピリジン及び炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0047】
適当な溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物である。
【0048】
一般に反応温度は、0℃?反応混合物の沸点の間である。
【0049】
後処理は、それ自体公知の方法で行われる。
【0050】
方法C:
適当な置換ヘテロシクリルVIIを安息香酸エステルVbで置換して、本発明の安息香酸エステルIIIcを得る;
【0051】
【化14】

[但し、M、R^(1)及びR^(2)が、それぞれ上記と同義であり、
L^(2)が適当な求核置換可能な脱離基、例えばハロゲン(例えば、臭素、塩素)、ヘテロアリール(例えば、イミダゾリル、ピリジル)、カルボキシラート(例えば、アセタート、トリフルオロアセタート)、スルホナート(例えば、メシラート、トリフラート)等を表し、
X^(2)が、炭素原子が少なくとも1個で、最大5個の、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、
X^(3)が、最大5個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝アルキレン鎖、アルケニレン鎖又はアルキニレン鎖{上述のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基は部分的にハロゲン化されてても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良い}を表し、且つはX^(2)OX^(3)は基X^(1)を形成する]。
【0052】
一般に、出発材料は等モル量で用いられる。しかしながら、過剰量の出発材料又は他の成分を使用することが有利であろう。
【0053】
適宜、反応を塩基の存在下で行うことが有利であろう。出発材料及び補助塩基は、等モル量で用いることが有利である。特定の場合、VIIに対して、過剰量の補助塩基、例えば1.5?3モル等量用いることが有利であろう。
【0054】
適当な補助塩基は、第三級アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属水素化物(例えば、水素化ナトリウム)である。トリエチルアミン、ピリジン及び炭酸カリウムを用いることが好ましい。
【0055】
適当な溶剤の例としては、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド)、又はエステル(例えば、酢酸エチル)、或いはこれらの混合物である。
【0056】
一般に反応温度は、0℃?反応混合物の沸点の間である。
【0057】
後処理は、それ自体公知の方法で行われる。
【0058】
本発明の式Iで表される以下の化合物が重要である。即ち、基X^(1)が、1個の他の酸素又は硫黄原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルケニレン鎖を表し、Hetが、3?6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有する、3?6員のヘテロ芳香族基{このヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い}を表す。
【0059】
さらに、本発明の式Iで表される以下の化合物が重要である。即ち、Hetが、5員若しくは6員の部分飽和若しくは完全飽和のヘテロシクリル基、又は窒素、酸素及び硫黄から選択される3個までのヘテロ原子を有する、5員若しくは6員のヘテロ芳香族基{このヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い}を表し;R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い。
【0060】
置換基R^(1)?R^(12)について、或いはフェニル、ヘテロアリール環及びヘテロシクリル環の基として記載された有機基は、個々の基の構成員をそれぞれ例示するための共通の用語を表す。全ての炭化水素鎖、即ち全てのアルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルイミノオキシ、アルコキシアミノ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アルキルカルボニル、ハロアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシカルボニル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル部分は、直鎖でも分岐でも良い。特段述べない限り、ハロゲン化置換基は、1個?5個の同一又は異なるハロゲンを有することが好ましい。ハロゲンは、それぞれフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。
【0061】
他の意味の例として、下記のものを挙げることができる:
C_(1)?C_(4)アルキル及びC_(1)?C_(4)アルキルカルボニルのアルキル部分:メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル及び1,1-ジメチルエチル;
C_(1)?C_(6)アルキル、及びC_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル及びC_(1)?C_(6)アルキルカルボニルのアルキル部分:上述のC_(1)?C_(4)アルキル、さらにペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-3-メチルプロピル;
C_(1)?C_(4)ハロアルキル:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(4)アルキル基、例えばクロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、2-ヨードエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3-フルオロプロピル、2,2-ジフルオロプロピル、2,3-ジフルオロプロピル、2-クロロプロピル、3-クロロプロピル、2,3-ジクロロプロピル、2-ブロモプロピル、3-ブロモプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、3,3,3-トリクロロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエチル、1-(クロロメチル)-2-クロロエチル、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエチル、4-フルオロブチル、4-クロロブチル、4-ブロモブチル及びノナフルオロブチル;
C_(1)?C_(6)ハロアルキル及びC_(1)?C_(6)ハロアルキルカルボニルのハロアルキル部分:上述のC_(1)?C_(4)ハロアルキル、さらに5-フルオロペンチル、5-クロロペンチル、5-ブロモペンチル、5-ヨードペンチル、ウンデカフルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、6-クロロヘキシル、6-ブロモヘキシル、6-ヨードヘキシル及びドデカフルオロヘキシル;
C_(1)?C_(4)アルコキシ、及びC_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル及びC_(1)?C_(4)アルコキシカルボニルのアルコキシ部分:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1-メチルエトキシ、ブトキシ、1-メチルプロポキシ、2-メチルプロポキシ及び1,1-ジメチルエトキシ;
C_(1)?C_(6)アルコキシ、及びC_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(2)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル及びC_(1)?C_(6)アルコキシカルボニルのアルコキシ部分:上述のC_(1)?C_(4)アルコキシ、さらにペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メトキシブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ又は1-エチル-2-メチルプロポキシ;
C_(1)?C_(4)ハロアルコキシ:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(4)アルコキシ基、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロジフルオロメトキシ、ブロモジフルオロメトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、2-ヨードエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、2-クロロ-2-フルオロエトキシ、2-クロロ-2,2-ジフルオロエトキシ、2,2-ジクロロ-2-フルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、2-フルオロプロポキシ、3-フルオロプロポキシ、2-クロロプロポキシ、3-クロロプロポキシ、2-ブロモプロポキシ、3-ブロモプロポキシ、2,2-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジフルオロプロポキシ、2,3-ジクロロプロポキシ、3,3,3-トリフルオロプロポキシ、3,3,3-トリクロロプロポキシ、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエトキシ、1-(クロロメチル)-2-クロロエトキシ、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエトキシ、4-フルオロブトキシ、4-クロロブトキシ、4-ブロモブトキシ又はノナフルオロブトキシ;
C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル(C_(1)?C_(4)アルキル-S(=O)_(2)-):メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、1-メチルエチルスルホニル、ブチルスルホニル、1-メチルプロピルスルホニル、2-メチルプロピルスルホニル及び1,1-ジメチルエチルスルホニル;
C_(1)?C_(6)アルキルスルホニル:上述のC_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、さらにペンチルスルホニル、1-メチルブチルスルホニル、2-メチルブチルスルホニル、3-メチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルプロピルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、1,1-ジメチルプロピルスルホニル、1,2-ジメチルプロピルスルホニル、ヘキシルスルホニル、1-メチルペンチルスルホニル、2-メチルペンチルスルホニル、3-メチルペンチルスルホニル、4-メチルペンチルスルホニル、1,1-ジメチルブチルスルホニル、1,2-ジメチルブチルスルホニル、1,3-ジメチルブチルスルホニル、2,2-ジメチルブチルスルホニル、2,3-ジメチルブチルスルホニル、3,3-ジメチルブチルスルホニル、1-エチルブチルスルホニル、2-エチルブチルスルホニル、1,1,2-トリメチルプロピルスルホニル、1,2,2-トリメチルプロピルスルホニル、1-エチル-1-メチルプロピルスルホニル及び1-エチル-2-メチルプロピルスルホニル;
C_(1)?C_(6)ハロアルキルスルホニル:部分的又は完全にフッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素で置換された上述のC_(1)?C_(6)アルキルスルホニル基、例えばフルオロメチルスルホニル、ジフルオロメチルスルホニル、トリフルオロメチルスルホニル、クロロジフルオロメチルスルホニル、ブロモジフルオロメチルスルホニル、2-フルオロエチルスルホニル、2-クロロエチルスルホニル、2-ブロモエチルスルホニル、2-ヨードエチルスルホニル、2,2-ジフルオロエチルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル、2,2,2-トリクロロエチルスルホニル、2-クロロ-2-フルオロエチルスルホニル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチルスルホニル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチルスルホニル、ペンタフルオロエチルスルホニル、2-フルオロプロピルスルホニル、3-フルオロプロピルスルホニル、2-クロロプロピルスルホニル、3-クロロプロピルスルホニル、2-ブロモプロピルスルホニル、3-ブロモプロピルスルホニル、2,2-ジフルオロプロピルスルホニル、2,3-ジフルオロプロピルスルホニル、2,3-ジクロロプロピルスルホニル、3,3,3-トリフルオロプロピルスルホニル、3,3,3-トリクロロプロピルスルホニル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルスルホニル、ヘプタフルオロプロピルスルホニル、1-(フルオロメチル)-2-フルオロエチルスルホニル、1-(クロロメチル)-2-クロロエチルスルホニル、1-(ブロモメチル)-2-ブロモエチルスルホニル、4-フルオロブチルスルホニル、4-クロロブチルスルホニル、4-ブロモブチルスルホニル、ノナフルオロブチルスルホニル、5-フルオロペンチルスルホニル、5-クロロペンチルスルホニル、5-ブロモペンチルスルホニル、5-ヨードペンチルスルホニル、6-フルオロヘキシルスルホニル、6-ブロモヘキシルスルホニル、6-ヨードヘキシルスルホニル及びドデカフルオロヘキシルスルホニル;
C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ:メチルイミノオキシ、エチルイミノオキシ、1-プロピルイミノオキシ、2-プロピルイミノオキシ、1-ブチルイミノオキシ及び2-ブチルイミノオキシ;
C_(3)?C_(6)アルケニル:プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-2-エン-1-イル、1-メチルエテニル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、1-メチルプロパ-1-エン-1-イル、2-メチルプロパ-1-エン-1-イル、1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、2-メチルプロパ-2-エン-1-イル、ペンテン-1-イル、ペンテン-2-イル、ペンテン-3-イル、ペンテン-4-イル、1-メチルブタ-1-エン-1-イル、2-メチルブタ-1-エン-1-イル、3-メチルブタ-1-エン-1-イル、1-メチルブタ-2-エン-1-イル、2-メチルブタ-2-エン-1-イル、3-メチルブタ-2-エン-1-イル、1-メチルブタ-3-エン-1-イル、2-メチルブタ-3-エン-1-イル、3-メチルブタ-3-エン-1-イル、1,1-ジメチルプロパ-2-エン-1-イル、1,2-ジメチルプロパ-1-エン-1-イル、1,2-ジメチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチルプロパ-1-エン-2-イル、1-エチルプロパ-2-エン-1-イル、ヘキサ-1-エン-1-イル、ヘキサ-2-エン-1-イル、ヘキサ-3-エン-1-イル、ヘキサ-4-エン-1-イル、ヘキサ-5-エン-1-イル、1-メチルペンタ-1-エン-1-イル、2-メチルペンタ-1-エン-1-イル、3-メチルペンタ-1-エン-1-イル、4-メチルペンタ-1-エン-1-イル、1-メチルペンタ-2-エン-1-イル、2-メチルペンタ-2-エン-1-イル、3-メチルペンタ-2-エン-1-イル、4-メチルペンタ-2-エン-1-イル、1-メチルペンタ-3-エン-1-イル、2-メチルペンタ-3-エン-1-イル、3-メチルペンタ-3-エン-1-イル、4-メチルペンタ-3-エン-1-イル、1-メチルペンタ-4-エン-1-イル、2-メチルペンタ-4-エン-1-イル、3-メチルペンタ-4-エン-1-イル、4-メチルペンタ-4-エン-1-イル、1,1-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,1-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,2-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1,3-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、2,2-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、2,3-ジメチルブタ-3-エン-1-イル、3,3-ジメチルブタ-1-エン-1-イル、3,3-ジメチルブタ-2-エン-1-イル、1-エチルブタ-1-エン-1-イル、1-エチルブタ-2-エン-1-イル、1-エチルブタ-3-エン-1-イル、2-エチルブタ-1-エン-1-イル、2-エチルブタ-2-エン-1-イル、2-エチルブタ-3-エン-1-イル、1,1,2-トリメチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチル-1-メチルプロパ-2-エン-1-イル、1-エチル-2-メチルプロパ-1-エン-1-イル及び1-エチル-2-メチルプロパ-2-エン-1-イル;
C_(2)?C_(6)アルケニル:上述のC_(3)?C_(6)アルケニル及びエテニル;
C_(3)?C_(6)アルキニル:プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-1-イン-4-イル、ブタ-2-イン-1-イル、ペンタ-1-イン-1-イル、ペンタ-1-イン-3-イル、ペンタ-1-イン-4-イル、ペンタ-1-イン-5-イル、ペンタ-2-イン-1-イル、ペンタ-2-イン-4-イル、ペンタ-2-イン-5-イル、3-メチルブタ-1-イン-3-イル、3-メチルブタ-1-イン-4-イル、ヘキサ-1-イン-1-イル、ヘキサ-1-イン-3-イル、ヘキサ-1-イン-4-イル、ヘキサ-1-イン-5-イル、ヘキサ-1-イン-6-イル、ヘキサ-2-イン-1-イル、ヘキサ-2-イン-4-イル、ヘキサ-2-イン-5-イル、ヘキサ-2-イン-6-イル、ヘキサ-3-イン-1-イル、ヘキサ-3-イン-2-イル、3-メチルペンタ-1-イン-1-イル、3-メチルペンタ-1-イン-3-イル、3-メチルペンタ-1-イン-4-イル、3-メチルペンタ-1-イン-5-イル、4-メチルペンタ-1-イン-1-イル、4-メチルペンタ-2-イン-4-イル及び4-メチルペンタ-2-イン-5-イル;
C_(2)?C_(6)アルキニル:上述のC_(3)?C_(6)アルキニル及びエチニル;
C_(3)?C_(6)シクロアルキル:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル;
C_(4)?C_(6)シクロアルケニル:シクロブテン-1-イル、シクロブテン-3-イル、シクロペンテンテン-1-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロペンテン-4-イル、シクロヘキセン-1-イル、シクロヘキセン-3-イル及びシクロヘキセン-4-イル;
ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルオキシのヘテロシクリル基:酸素、窒素及び硫黄原子から選ばれる1?3個のヘテロ原子を有する3?7員の飽和又部分不飽和の単環もしくは多環ヘテロシクリル、例えば、オキシラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、3-イソオキサゾリジニル、4-イソオキサゾリジニル、5-イソオキサゾリジニル、3-イソチアゾリジニル、4-イソチアゾリジニル、5-イソチアゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、5-ピラゾリジニル、2-オキサゾリジニル、4-オキサゾリジニル、5-オキサゾリジニル、2-チアゾリジニル、4-チアゾリジニル、5-チアゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、1,2,4-オキサジアゾリジン-3-イル、1,2,4-オキサジアゾリジン-5-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-3-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-5-イル、1,2,4-トリアゾリジン-3-イル、1,3,4-オキサジアゾリジン-2-イル、1,3,4-チアジアゾリジン-2-イル、1,3,4-トリアゾリジン-2-イル、2,3-ジヒドロフラン-2-イル、2,3-ジヒドロフラン-3-イル、2,3-ジヒドロフラン-4-イル、2,3-ジヒドロフラン-5-イル、2,5-ジヒドロフラン-2-イル、2,5-ジヒドロフラン-3-イル、2,3-ジヒドロチエン-2-イル、2,3-ジヒドロチエン-3-イル、2,3-ジヒドロチエン-4-イル、2,3-ジヒドロチエン-5-イル、2,5-ジヒドロチエン-2-イル、2,5-ジヒドロチエン-3-イル、2,3-ジヒドロピロール-2-イル、2,3-ジヒドロピロール-3-イル、2,3-ジヒドロピロール-4-イル、2,3-ジヒドロピロール-5-イル、2,5-ジヒドロピロール-2-イル、2,5-ジヒドロピロール-3-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-3-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイソオキサゾール-5-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-3-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイソチアゾール-5-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-3-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-4-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-5-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-3-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-4-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-5-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-3-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-4-イル、2,5-ジヒドロピラゾール-5-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-2-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-5-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-4-イル、4,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-2-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-4-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-5-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-2-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-4-イル、4,5-ジヒドロチアゾール-5-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-2-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-4-イル、2,5-ジヒドロチアゾール-5-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-2-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-4-イル、2,3-ジヒドロイミダゾール-5-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-4-イル、4,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-2-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-4-イル、2,5-ジヒドロイミダゾール-5-イル、2-モルホリニル、3-モルホリニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、3-テトラヒドロピリダジニル、4-テトラヒドロピリダジニル、2-テトラヒドロピリミジニル、4-テトラヒドロピリミジニル、5-テトラヒドロピリミジニル、2-テトラヒドロピラジニル、1,3,5-テトラヒドロトリアジン-2-イル、1,2,4-テトラヒドロトリアジン-3-イル、1,3-ジヒドロオキサジン-2-イル、1,3-ジチアン-2-イル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1,3-ジオキソラン-2-イル、3,4,5,6-テトラヒドロピリジン-2-イル、4H-1,3-チアジン-2-イル、4H-3,1-ベンゾチアジン-2-イル、1,1-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロチエン-2-イル、2H-1,4-ベンゾチアジン-3-イル、2H-1,4-ベンゾオキサジン-3-イル、1,3-ジヒドロオキサジン-2-イル;
ヘテロアリール、及びヘテロアリールオキシのヘテロアリール基:炭素環員とは別に、1?4個の窒素原子、又は1?3個の窒素原子と1個の酸素又は硫黄原子、又は1個の酸素原子、又は1個の硫黄原子をさらに有していても良い芳香族の単環もしくは多環基、例えば、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,2,4,5-テトラジン-3-イル、及び対応するベンゾ縮合誘導体。
【0062】
全てのフェニル、ヘテロアリール及びヘテロシクリル環(複素環)は、非置換あるか、或いは1?3個のハロゲン原子及び/又は1個又は2個の下記の基:ニトロ、シアノ、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ又はメトキシカルボニルから選択される基を有することが好ましい。
【0063】
本発明の式Iの化合物を除草剤として使用する観点から、上記記号が、それぞれ単独で又は組み合わせて下記の意味を有することが好ましい:
R^(1)がニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)又は-S(O)_(n)R^(3)を表し、特に好ましくは、ニトロ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素又は臭素)、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、-OR^(3)、又は-SO_(2)R^(3)を表し;
R^(2)が水素、ニトロ、ハロゲン、シアノ、チオシアナト、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(1)?C_(6)アルコキシC_(1)?C_(6)アルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、-OR^(3)又は-S(O)_(n)R^(3)を表し、特に好ましくは、水素、ニトロ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素又は臭素)、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、-OR^(3)又は-SO_(2)R^(3)を表し;
R^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表し、特に好ましくは水素、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(2)?C_(3)アルケニル、C_(2)?C_(3)アルキニル又はフェニルを表し、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)、-OR^(3)、-SR^(3)、-N(R^(3))_(2)、=NOR^(3)、-OCOR^(3)、-SCOR^(3)、-NR^(3)COR^(3)、-CO_(2)R^(3)、-COSR^(3)、-CON(R^(3))_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ{最後の8個の基は置換されていても良い}を有していても良く、
さらにR^(3)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表すことが好ましく、且つ上述のアルキル基は部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、R^(3)’、-OR^(3)’、-SR^(3)’、-N(R^(3)’)_(2)、=NOR^(3)’、-OCOR^(3)’、-SCOR^(3)’、-NR^(3)’COR^(3)’、-CO_(2)R^(3)’、-COSR^(3)’、-CON(R^(3)’)_(2)、C_(1)?C_(4)アルキルイミノオキシ、C_(1)?C_(4)アルコキシアミノ、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルコキシC_(2)?C_(6)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、フェノキシ、ベンジルオキシ及びヘテロアリールオキシ{最後の8個の基は置換されていても良い}を有していても良く[但し、R^(3)’は水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアルキル、C_(2)?C_(6)アルケニル、C_(2)?C_(6)アルキニル、フェニル又はフェニルC_(1)?C_(6)アルキルを表す];
nが0、1又は2、特に好ましくは0又は2を表し;
X^(1)が直鎖又は分岐C_(2)?C_(4)アルキレン鎖、C_(3)?C_(4)アルケニレン鎖又はC_(3)?C_(4)アルキニレン鎖、特に好ましくはエチレン、プロピレン、プロペニレン又はプロピニレン鎖{これらの鎖は、酸素又は硫黄(好ましくは酸素)から選択されるヘテロ原子により中断されている}を表し、且つ上述のアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基は、部分的にハロゲン化されていても、及び/又は1?3個の下記の基:-OR^(4)、-OCOR^(4)、-OCONHR^(4)又は-OSO_(2)R^(4)から選択される基を有していても良く;
R^(4)が水素、C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)ハロアアルキル、特に好ましくは水素、メチル、エチル又はトリフルオロメチルを表し;
R^(5)が水素、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、シアノ、ニトロ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシを表し、且つ上記アルキル基は、それぞれ1個以上の下記の基:シアノ、ホルミル、C_(1)?C_(4)アルキルアミノ、C_(1)?C_(4)ジアルキルアミノ、C_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニル、C_(1)?C_(4)アルキルカルボニルオキシ、C_(1)?C_(4)アルキル、C_(1)?C_(4)ハロアルキル、C_(1)?C_(4)アルキルチオ、C_(1)?C_(4)ハロアルキルチオ、C_(1)?C_(4)アルコキシ、C_(1)?C_(4)ハロアルコキシで置換されていても良い。
【0064】
R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(11)が、それぞれ水素又はC_(1)?C_(4)アルキル、特に好ましくは水素、メチル又はエチルを表し;
R^(8)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(3)?C_(4)シクロアルキル{最後の2個の基は1?3個の下記の基:ハロゲン、C_(1)?C_(4)アルコキシ又はC_(1)?C_(4)アルキルチオから選択される置換基を有していても良い}を表し、或いは
テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチアン-2-イル又は1,3-ジチオラン-2-イル{最後の6個の基は1?3個のC_(1)?C_(4)アルキル基を有していても良い}、特に好ましくは水素、メチル、エチル、シクロプロピル、ジ(メトキシ)メチル、ジ(エトキシ)メチル、2-エチルチオプロピル、テトラヒドロピラン-2-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロチオピラン-2-イル、テトラヒドロチオピラン-3-イル、テトラヒドロチオピラン-4-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-イル、1,3-オキサチオラン-2-イル、1,3-オキサチアン-2-イル、1,3-ジチオラン-2-イル、5,5-ジメチル-1,3-ジチアン-2-イル又は1-メチルチオシクロプロピルを表し;
R^(10)が水素、C_(1)?C_(4)アルキル又はC_(1)?C_(4)アルコキシカルボニル、特に好ましくは水素、メチル又はメトキシカルボニルを表す。
【0065】
同様に、R^(8)とR^(11)が二重結合系発生の素になるπ結合を形成することが有利であろう。
【0066】
或いは、CR^(8)R^(9)単位がC=Oで置き換えられていることは有利であろう。
【0067】
R^(1)がベンゼン環の2位に、そしてR^(2)がベンゼン環の4位に結合する式Iaで表される化合物が特に好ましい。
【0068】
【化15】

以下の式Iaで表される化合物が最も好ましい。即ち、置換基R^(1)、R^(2)及びQがそれぞれ上記と同義であり、X^(1)が、1個の他の酸素原子を含むC_(1)?C_(2)アルキレン鎖又はC_(2)アルキニレン鎖を表し、そしてHetが、3?6員、好ましくは5員又は6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:即ち、窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、特に好ましくは以下の2個の群:即ち、窒素、又は酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択される3個まで、特に好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を有する、3?6員、好ましくは5員又は6員のヘテロ芳香族基を表し、且つこのヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い。
【0069】
さらに、以下の、本発明の式Iaで表される化合物が極めて最も好ましい。即ち、置換基R^(1)、R^(2)及びX^(1)がそれぞれ上記と同義であり、Hetが、5員又は6員の部分飽和若しくは完全飽和ヘテロシクリル基、又は下記の3個の群:即ち、窒素、酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、又は硫黄と少なくとも1個の窒素との組み合わせ、特に好ましくは以下の2個の群:即ち、窒素、又は酸素と少なくとも1個の窒素との組み合わせから選択される3個まで、特に好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を有する、5員又は6員のヘテロ芳香族基、を表し、且つこのヘテロシクリル基又はヘテロ芳香族基は、部分的に又は完全にハロゲン化されていても、及び/又はR^(5)で置換されていても良い。
【0070】
下記の表1?36の化合物Ibが特に好ましい。
【0071】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

*ブリッジX^(1)は、左端に中心となるフェニル基があり、右端にHetがある位置で結合する。
【0072】
下記の表1?36は、式Ibで表される2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンに基づくものである。
【0073】
【化16】

表1:化合物1.1?1.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0074】
表2:化合物2.1?2.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0075】
表3:化合物3.1?3.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0076】
表4:化合物4.1?4.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0077】
表5:化合物5.1?5.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0078】
表6:化合物6.1?6.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(9)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素であり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0079】
表7:化合物7.1?7.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0080】
表8:化合物8.1?8.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0081】
表9:化合物9.1?9.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0082】
表10:化合物10.1?10.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0083】
表11:化合物11.1?11.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0084】
表12:化合物12.1?12.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(8)及びR^(9)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0085】
表13:化合物13.1?13.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0086】
表14:化合物14.1?14.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0087】
表15:化合物15.1?15.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0088】
表16:化合物16.1?16.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0089】
表17:化合物17.1?17.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0090】
表18:化合物18.1?18.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)及びR^(9)がそれぞれ水素、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0091】
表19:化合物19.1?19.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0092】
表20:化合物20.1?20.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0093】
表21:化合物21.1?21.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0094】
表22:化合物22.1?22.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0095】
表23:化合物23.1?23.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0096】
表24:化合物24.1?24.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれメチルを表し、CR^(8)R^(9)単位が基C=Oを形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0097】
表25:化合物25.1?25.920
R^(1)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0098】
表26:化合物26.1?26.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0099】
表27:化合物27.1?27.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0100】
表28:化合物28.1?28.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0101】
表29:化合物29.1?29.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0102】
表30:化合物30.1?30.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(8)、R^(10)及びR^(11)がそれぞれ水素、R^(9)がメチルであり、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0103】
表31:化合物31.1?31.920
R^(1)が塩素、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0104】
表32:化合物32.1?32.920
R^(1)及びR^(2)がそれぞれ塩素、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0105】
表33:化合物33.1?33.920
R^(1)が塩素、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0106】
表34:化合物34.1?34.920
R^(1)がメチル、R^(2)が塩素、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0107】
表35:化合物35.1?35.920
R^(1)がメチル、R^(2)がメチルスルホニル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0108】
表36:化合物36.1?36.920
R^(1)がメチル、R^(2)がトリフルオロメチル、R^(6)、R^(7)、R^(9)及びR^(10)がそれぞれ水素を表し、R^(8)とR^(11)が合体してメチレン基を形成し、そして個々の化合物について、置換基X^(1)及びHetが表Aの各行に対応する式Ibで表される化合物。
【0109】
化合物I及びその農業上有用な塩は、異性体混合物、また純粋な異性体の形態で、除草剤として好適である。Iを含む除草剤組成物は、非栽培領域の植生の制御に、特に高い施与率で効果的である。これらの組成物は、オオムギ、米、トウモロコ

は、主に低施与率で観察される。
【0110】
施与方法の相違によるが、化合物I又はこれらを含む組成物は、更に多くの栽培植物に、望ましくない植物の除去のために使用することができる。適当な作物として以下のものを挙げることができる:
タマネギ(Allium cepa)
パイナップル(Ananas comosus)
ナンキンマメ(Arachis hypogaea)
アスパラガス(Asparagus officinalis)
フダンソウ(Beta vulgaris spp.altissima)
サトウジシヤ(Beta vulgaris spp.rapa)
アブラナ(変種カブラ)(Brassica napus var.napus)
カブカンラン(変種ナポプラシーカ)(Brassica napus var.napobrassica)
テンサイ(変種シルベストリス)(Brassica rapa var.silvestris)
トウツバキ(Camellia sinensis)
ベニバナ(Carthamus tinctorius)
キヤリーヤイリノイネンシス(Carya illinoinensis)
レモン(Citrus limon)
ナツミカン(Citrus sinensis)
コーヒー〔Coffea arabica(Coffea canephora、Coffea liberica)〕
キユウリ(Cucumis sativus)
ギヨウギシバ(Cynodon dactylon)
ニンジン(Daucus carota)
アブラヤシ(Elaeis guineensis)
イチゴ(Fragaria vesca)
大豆(Glycine max)
木棉[Gossypium hirsutum(Gossypium arboreum、Gossypium herbaceum、Gossypium vitifolium)]
ヒマワリ(Helianthus annuus)
ゴムノキ(Hevea brasiliensis)
大麦(Hordeum vulgare)
カラハナソウ(Humulus lupulus)
アメリカイモ(Ipomoea batatas)
オニグルミ(Juglans regia)
レンズマメ(Lens culinaris)
アマ(Linum usitatissimum)
トマト(Lycopersicon lycopersicum)
リンゴ属(Malus spec.)
キヤツサバ(Manihot esculenta)
ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)
バシヨウ属(Musa spec.)
タバコ[Nicotiana tabacum(N.rustica)]
オリーブ(Olea europaea)
イネ(Oryza sativa)
アズキ(Phaseolus lunatus)
ゴガツササゲ(Phaseolus vulgaris)
トウヒ(Picea abies)
マツ属(Pinus spec.)
シロエンドウ(Pisum sativum)
サクラ(Prunus avium)
モモ(Prunus persica)
ナシ(Pyrus communis)
スグリ(Ribes sylvestre)
トウゴマ(Ricinus communis)
サトウキビ(Saccharum officinarum)
ライムギ(Secale cereale)
ジャガイモ(Solanum tuberosum)
モロコシ[Sorghum bicolor(s.vulgare)]
カカオ(Theobroma cacao)
ムラサキツメクサ(Trifolium pratense)
小麦(Triticum aestivum)
トリテイカム、ドラム(Triticum durum)
ソラマメ(Vicia faba)
ブドウ(Vitis vinifera)
トウモロコシ(Zea mays)。
更に、遺伝子工学的方法を含む栽培の結果として除草剤の作用に耐性を有する農作物においても化合物Iを使用することができる。
【0111】
除草剤組成物又は有効成分は、事前法または事後法により施与される。有効成分にある種の栽培植物がほとんど耐性を示さない場合、下部に成長している望ましくない植物の葉又は露出している土壌には付着しても、敏感な栽培植物の葉にできるだけ接触しないように、噴霧装置により除草剤を噴霧することができる(後直接撒布、レイ-バイ)。
【0112】
化合物I又はこれらを含む除草剤組成物は、例えば直ぐに噴霧可能な水溶液、粉末、懸濁液、高濃度の水性、油性または他の懸濁液または分散液、エマルジョン、油性分散液、ペースト、ダスト剤、散布剤または顆粒の形で、噴霧、ミスト法、ダスト法、散布法または注入法によって施与することができる。施与方法は、使用目的に基づいて決定される。いずれの場合にも、本発明の有効物質の可能な限りの微細分配が保証されるべきである。
【0113】
好適な不活性添加剤としては、本質的に下記のものである:中位乃至高位の沸点の鉱油留分(例えば燈油またはディーゼル油、更にコールタール油等)、並びに植物性または動物性産出源の油、脂肪族、環式および芳香族炭化水素(例えばパラフィン、テトラヒドロナフタリン、アルキル置換ナフタリン又はその誘導体、アルキル置換ベンゼン又はその誘導体)、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン(例えば、シクロヘキサノン)、高極性溶剤(例えば、N-メチルピロリドン等のアミン、水)。
【0114】
水性使用形態は、乳濁液濃縮物、懸濁液、ペースト、湿潤可能の粉末または水分散可能の粉末から水の添加により製造することができる。乳濁液、ペーストまたは油分散液の製造は、置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンをそのまま、または油または溶剤中に溶解して、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤により水中に均質に混合することにより行うことができる。或いは、有効物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤または乳化剤、及び必要により溶剤又は油よりなる濃縮物を製造することもでき、これらは水にて希釈するのに適する。
【0115】
適当な界面活性剤としては次のものが挙げられる:芳香族スルホン酸(例えば、リグニンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、ジブチルナフタリンスルホン酸)のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;脂肪酸、アルキルスルホナート、アルキルアリールスルホナート、アルキルスルファート、ラウリルエーテルスルファート及び脂肪アルコールスルファートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;硫酸化ヘキサデカノール、ヘプタデカノールおよびオクタデカノールの塩;脂肪アルコールグリコールエーテルの塩;スルホン化ナフタリン及びその誘導体とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタリン或いはナフタリンスルホン酸とフェノール及びホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、エトキシル化オクチルフェノール、エトキシル化ノニルフェノール、アルキルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、イソトリデシルアルコール、脂肪アルコール/エチレンオキシド縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、またはポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタート、ソルビットエステル、リグニン-亜硫酸廃液およびメチルセルロース。
【0116】
粉末、散布剤およびダスト剤は、有効物質と固体担体物質とを混合または一緒に磨砕することにより製造することができる。
【0117】
粒状体(例えば、被覆粒状体、含浸粒状体及び均質粒状体)は、有効物質を固体担体物質に結合させることにより製造することができる。固体担体物質の例としては、鉱物土(例えば、シリカ、シリカゲル、珪酸塩、タルク、カオリン、石灰石、石灰、白亜、膠塊粒土、石灰質黄色粘土、クレイ、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、磨砕合成物質)、肥料(例えば、硫酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素)及び植物性生成物(例えば、穀物粉、樹皮、木材およびクルミ穀粉、セルロース粉末)、又は他の固形担体物質である。
【0118】
直接使用可能な製剤の有効成分Iの濃度は、広い範囲で変更することができる。一般に、その処方は、少なくとも1種の有効成分を、0.001?98重量%、好ましくは0.01?95重量%の量で含む。有効成分は90?100%の純度(NMRスペクトルによる)のもの、好ましくは95?100%の純度のものが使用される。
【0119】
本発明の化合物Iの製造を、下記の調製例に示す:
I:20重量部の化合物Iを、80重量部のアルキル化ベンゼン、10重量部の、オレイン酸N-モノエタノールアミド(1モル)のエチレンオキシド(8?10モル)付加体、5重量部のドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及び5重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0120】
II:20重量部の化合物Iを、40重量部のシクロヘキサノン、30重量部のイソブタノール、20重量部の、イソオクチルフェノール(1モル)のエチレンオキシド(7モル)付加体及び10重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0121】
III:20重量部の化合物Iを、25重量部のシクロヘキサノン、65重量部の鉱物油(沸点210?280℃の留分)及び10重量部の、ヒマシ油(1モル)のエチレンオキシド(40モル)付加体からなる混合物に溶解させる。この溶液を100000重量部の水に注ぎ、その中で微細に分散させ、これにより0.02重量%の有効成分を含む水性分散液を得る。
【0122】
IV:20重量部の化合物Iを、3重量部のジイソブチルナフタリンスルホン酸ナトリウム、17重量部のリグノスルホン酸のナトリウム塩(亜硫酸廃液から得られる)及び60重量部の微粉末のシリカゲルと完全に混合させ、そしてその混合物をハンマーミルで磨辞する。最後に、この混合物を20000重量部の水に分散させ、これにより0.1重量%の有効成分を含む噴霧混合物を得る。
【0123】
V:3重量部の化合物Iを、97重量部の微粉砕カオリンと混合し、これにより3重量%の有効成分を含むダストを得る。
【0124】
VI:20重量部の化合物Iを、2重量部のドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、8重量部の脂肪アルコールポリグリコールエーテル、2重量部のフェノール/尿素/ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩及び68重量部のパラフィン鉱物油とまず充分に混合させ、これにより安定な油性分散液を得る。
【0125】
VII:1重量部の化合物Iを、70重量部のシクロヘキサノン、20重量部のエトキシル化イソオクチルフェノール及び10重量部のエトキシル化ヒマシ油からなる混合物に溶解させ、これにより安定なエマルジョン濃縮体を得る。
【0126】
VIII:1重量部の化合物Iを、80重量部のシクロヘキサノン及び20重量部のウエットール(登録商標)EM31(Wettol^(R) EM31;エトキシ化ひまし油を基礎とする非イオン乳化剤)からなる混合物に溶解させ、これにより安定なエマルジョン濃縮体を得る。
【0127】
作用範囲を広げ、そして相乗作用を得るために、置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンIは、多くの他の代表的なグループの除草剤又は成長調整剤の有効成分と混合することができ、そしてこれらと共に施与することができる。混合に適当な成分としては、例えば1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、アミド、アミノホスホン酸及びその誘導体、アミノトリアゾール、アニリド、アリール/ヘテロアリールオキシアルカン酸及びその誘導体、安息香酸及びその誘導体、ベンゾチアジアジノン、2-アロイル-1,3-シクロヘキサンジオン、ヘテロアリールアリールケトン、ベンジルイソオキサゾリジノン、メタ-CF_(3)-フェニル誘導体、カルバメート、キノリンカルボン酸及びその誘導体、クロロアセトアニリド、シクロヘキサン-1,3-ジオン誘導体、ジアジン、ジクロロプロピオン酸及びその誘導体、ジヒドロベンゾフラン、ジヒドロフラン-3-オン、ジニトロアニリン、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、ジピリジル、ハロカルボン酸及びその誘導体、尿素、3-フェニルウラシル、イミダゾール、イミダゾリノン、N-フェニル-3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド、オキサジアゾール、オキシラン、フェノール、アリールオキシ-又はヘテロアリールオキシ-フェノキシプロピオン酸エステル、フェニル酢酸及びその誘導体、フェニルプロピオン酸及びその誘導体、ピラゾール、フェニルピラゾール、ピリダジン、ピリジンカルボン酸及びその誘導体、ピリミジルエーテル、スルホンアミド、スルホニル尿素、トリアジン、トリアジノン、トリアジノン、トリアゾールカルボキシアミド及びウラシル、を挙げることができる。
【0128】
さらに化合物Iは、単一、あるいは他の除草剤との組合せたものを、他の栽培植物保護剤、例えば殺虫剤または植物殺菌剤または殺バクテリア剤と共に施与することが有利であり得る。苗栄養不足、希元素欠乏などの症状治癒のために使用されるミネラル塩溶液と混合し得ることことも重要である。植物に無害の油類、油濃縮物類も添加し得る。
【0129】
有効化合物(物質)の施与率は、施与目的、季節、対象の植物および成長段階に応じて、1ヘクタールあたり0.001?3.0kgの有効物質(a.s.)の量、好ましくは0.01?1.0kgの量である。
【0130】
出発材料と生成物の幾つかの合成を、以下に記載する。
【0131】
{2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニルフェニル}{5,5-ジメチル-1,3-ジオキソ-シクロヘキサ-2-イル}メタノン
工程a:2-クロロ-3-ブロモメチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル80g(0.3モル)の2-クロロ-3-メチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル、54g(0.31モル)のN-ブロモスクシンイミド及び1.5gのアゾイソブチロニトリルを、76℃で6時間撹拌した。反応混合物をろ過し、そして減圧下に溶剤を除去した。収量:104g;融点:83?85℃。
【0132】
工程b:2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸メチル
4.3g(44ミリモル)の1-メチル-5-ヒドロキシピラゾール、9.1gの炭酸カリウム及び100mlのテトラヒドロフランを、65℃で1時間加熱した。この混合物に、15g(44ミリモル)の2-クロロ-3-ブロモメチル-4-メチルスルホニル安息香酸メチル及び150mlのテトラヒドロフランを添加し、40℃で4時間加熱した。この混合物を、12時間撹拌し、減圧下に溶剤を除去し、酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、乾燥し、そして溶剤を除去した。粗生成物を、シリカゲル上で精製した(溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1)。収量:7.6g;融点70℃。
【0133】
工程c:2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸
30mlのテトラヒドロフランと30mlの水との混合物中の、6.95g(19ミリモル)の2-クロロ-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸メチルを、0.93gの水酸化リチウムを用いて室温で12時間処理した。10%濃度塩酸を用いて反応混合物のpHを4に調整し、塩化メチレンで抽出した。有機層を乾燥し、溶剤を除去した。収量:4.3g;融点197℃。
【0134】
工程d:{2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニルフェニル}{5,5-ジメチル-1,3-ジオキソ-シクロヘキサ-2-イル}メタノン
50mlのアセトニトリル中の、1.0g(2.9ミリモル)の2-クロロ-3-[(1-メチルピラゾール-5-イル)オキシメチル]-4-メチルスルホニル安息香酸、0.4g(2.9ミリモル)のジメドン及び0.72gのN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドを、40℃で4時間加熱した。反応混合物を室温で12時間撹拌させた後、0.87gのトリエチルアミン及び0.57gのトリメチルシリルニトリルを添加した。その後、反応混合物を40℃で6時間加熱し、ろ過し、減圧下に溶剤を除去し、そして残留物をシリカゲル上で精製した(溶離液:トルエン/テトラヒドロフラン/酢酸:100/0/0?4/1/0.1)。
収量:0.25g;融点82℃。
【0135】
【表28】

【0136】
[使用実施例]
式Iで表される置換2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオンの除草作用を下記の温室実験で示した。
【0137】
プラスチック植木鉢を栽培容器として用い、約3.0%の腐葉土を含むローム質砂を培養基とした。被検植物の種子を種類ごとに播種した。
【0138】
事前法(pre-emergence treatment)により、水中に懸濁または乳化させた有効成分を、種子を撒いた後に微細散布ノズルを使用して直接撒布した。出芽と成長を促進させるために容器を軽く灌水し、次いで植物が根付くまで透明のプラスチックの覆いを被せた。有効成分により害が与えられない限り、この被覆が被検植物の均一な出芽をもたらす。
【0139】
事後法(post-emergence treatment)により、被検植物を、発育型によるが、草丈3?15cmとなった後、水中に懸濁または乳化させた有効成分で処理することのみを行った。この目的のため、被検植物を直接播種し同一の容器で栽培することも、当初は別々に苗として植え、処理の行われる2?3日前に試験用容器に移植することも可能である。
【0140】
各被検植物を種類により、10?25℃または20?35℃に保持し、実験期間を2?4週間とした。この間、被検植物を管理し、個々の処理に対する反応を評価した。
【0141】
0?100の尺度を用いて評価を行った。この尺度において100は植物が全く出芽しないか、或いは少なくとも地上に出ている部分の全てが破壊してしまったことを示し、0は全く被害がなく正常な成長を遂げたことを示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-11-15 
結審通知日 2016-11-17 
審決日 2016-12-06 
出願番号 特願2000-507656(P2000-507656)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (C07D)
P 1 113・ 54- YAA (C07D)
P 1 113・ 537- YAA (C07D)
P 1 113・ 536- YAA (C07D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
中田 とし子
登録日 2010-09-24 
登録番号 特許第4592183号(P4592183)
発明の名称 2-ベンゾイルシクロヘキサン-1,3-ジオン  
代理人 倉脇 明子  
代理人 杉本 賢太  
代理人 大石 裕太  
代理人 杉本 賢太  
代理人 江藤 聡明  
代理人 田中 成志  
代理人 江藤 聡明  
代理人 板井 典子  
代理人 板井 典子  
代理人 田中 成志  
代理人 倉脇 明子  
代理人 山口 修  
代理人 小野 誠  
代理人 山内 真之  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 城山 康文  
代理人 山田 徹  
代理人 山田 徹  
代理人 山口 修  
代理人 坪倉 道明  

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