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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1347294
審判番号 不服2017-13422  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-08 
確定日 2018-12-20 
事件の表示 特願2012-206688「位相差フィルム,偏光板,および画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月9日出願公開,特開2013-83956〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特願2012-206688号(以下「本件出願」という。)は,平成24年9月20日(優先権 平成23年9月30日)を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成28年 3月18日付け:拒絶理由通知書
平成28年 5月20日 :意見書
平成28年 5月20日 :手続補正書
平成28年11月29日付け:拒絶理由通知書
平成29年 1月30日 :意見書
平成29年 1月30日 :手続補正書
平成29年 6月 6日付け:補正の却下の決定
(平成29年1月30日にした手続補正の却下)
平成29年 6月 6日付け:拒絶査定
平成29年 9月 8日 :審判請求書
平成29年 9月 8日 :手続補正書
平成30年 6月13日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月14日 :意見書
平成30年 8月14日 :手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1に係る発明は,平成30年8月14日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの,次のものである(以下「本願発明」という。)。
「 主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し,589nmにおける面内位相差が100nm以上160nm以下であり,
JIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmの光線透過率が厚さ100μmに換算して3%以下であり,
下記方法で測定される位相差の変化率が全て4%以下であり,
前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し,
589nmにおける厚さ方向の位相差が-160nm以上,-50nm以下であり,
スチレン系重合体を含有している位相差フィルム。
位相差の変化率: 位相差フィルム試験片(100mm×100mm)を,下記3条件に投入し,試験片の各条件への投入前と投入後における位相差の変化率を算出した。
条件(1):80℃の環境下に240時間
条件(2):60℃,90%RHの環境下に240時間
条件(3):-30?80℃のヒートショックを各30分間×200サイクル」

3 当合議体の拒絶の理由
本願発明に関して平成30年6月13日付けで通知した拒絶の理由(以下「当合議体の拒絶の理由」という。)は,(理由1)本願発明は,発明の詳細の説明に記載したものであるということができないから,本件出願は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない,(理由2)本願発明は,本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:国際公開2008/153143号
引用文献2:特開2011-128608号公報
引用文献3:特開2010-65109号公報
なお,引用文献1?引用文献3は,いずれも主引用例である。また,引用文献2は,副引用例でもある。

第2 当合議体の判断
事案に鑑みて,理由2のうち,引用文献1を主引用例とする場合と,引用文献3を主引用例とする場合について判断する。また,予備的に,理由1についても判断する。
1 理由2(引用文献1)について
(1) 引用文献1の記載
当合議体の拒絶の理由で引用され,本件出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された引用文献1には,以下の記載がある(要部のみ示す。)。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物と,当該組成物からなる樹脂成形品ならびに樹脂成形品の具体的な一例である偏光子保護フィルムとに関する。
…(省略)…
背景技術
[0002] ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に代表される熱可塑性アクリル樹脂(以下,単に「アクリル樹脂」ともいう)は,…(省略)…近年,画像表示装置に用いる光学部材など,光学関連用途への使用が増大している。
[0003] アクリル樹脂は,紫外線を含む光に曝されると黄変して透明度が低下することがあり,これを防ぐ方法として,紫外線吸収剤(UVA)を添加する方法が知られている。しかし一般的なUVAでは,UVAを添加したアクリル樹脂組成物を成形する際に発泡が生じたり,UVAがブリードアウトしたりすることがある。
…(省略)…
発明の開示
[0008] 本発明は,アクリル樹脂とUVAとを含む樹脂組成物であって,ガラス転移温度の高さに基づく優れた耐熱性を有しながら,高温での成形時においても,発泡,ブリードアウトなどの発生が抑制され,UVAの蒸散による問題の発生を低減できる樹脂組成物を提供することを目的とする。
[0009] 本発明の樹脂組成物は,熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))と,分子量が700以上の紫外線吸収剤(UVA(B))とを含み,110℃以上のガラス転移温度を有する。
[0010] 本発明の樹脂成形品は,上記本発明の樹脂組成物からなる。本発明の樹脂成形品は,例えば,フィルムまたはシートである。
…(省略)…
[0016] このような樹脂組成物からなる本発明の樹脂成形品は,Tgの高さに基づく優れた耐熱性と,UVA(B)に基づく高い紫外線吸収能ならびに樹脂(A)に基づく高い透明性,機械的強度および成形加工性とを示す。また,本発明の樹脂成形品は,発泡やブリードアウトによる外観上の欠点あるいは光学的な欠点が少なく,この効果は,本発明の樹脂成形品がフィルムまたはシートである場合,特に偏光子保護フィルムなどの光学部材である場合に,より顕著となる。」

イ 「[0020] [樹脂(A)]
樹脂(A)は,熱可塑性アクリル樹脂である限り特に限定されない。ただし,樹脂(A)は,樹脂組成物としてのTgが110℃以上となるアクリル樹脂である必要がある。
…(省略)…
[0027] 樹脂(A)および樹脂組成物のTgがより向上することから,環構造は,グルタルイミド構造,無水グルタル酸構造およびラクトン環構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。また,構造内に窒素原子を含まないために着色(黄変)が生じにくく,樹脂成形品としたときの光学特性に優れることから,環構造がラクトン環構造であることが好ましい。即ち,樹脂(A)は,主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂であることが好ましい。
…(省略)…
[0039] 樹脂(A)が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず,例えば4?8員環であってもよいが,環構造としての安定性に優れることから5員環または6員環であることが好ましく,6員環であることがより好ましい。6員環であるラクトン環構造は,例えば,特開2004-168882号公報に開示されている構造であるが,前駆体(前駆体を環化縮合反応させることで,ラクトン環構造を主鎖に有する樹脂(A)が得られる)の重合収率が高いこと,前駆体の環化縮合反応により,高いラクトン環含有率を有する樹脂(A)が得られること,メタクリル酸メチル単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること,などの理由から,以下の式(4)により示される構造が好ましい。
[0040][化3]

[0041] 上記式(4)において,R^(12),R^(13)およびR^(14)は,互いに独立して,水素原子または炭素数1?20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
…(省略)…
[0048] 樹脂(A)は,当該樹脂に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を有していてもよい。この場合,樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た樹脂成形品の複屈折性の制御の自由度が向上し,本発明の樹脂組成物から形成した樹脂成形品(例えば,樹脂フィルム)の光学部材としての使用用途が拡大する。
…(省略)…
[0050] 樹脂(A)に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位の一例は,スチレン単位である。
…(省略)…
[0067] UVA(B)の構造は分子量が700以上である限り特に限定されないが,UVA(B)がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン骨格は,トリアジンと,トリアジンに結合した3つのヒドロキシフェニル基とからなる骨格((2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン骨格)である。
…(省略)…
[0077] 上記式(1)により示される構造を有するUVA(B)の具体例を,以下の式(9),(10)に挙げる。UVA(B)は,以下に示す例に限定されない。
[0078][化9]

[0079][化10]

[0080] 上記式(9)により示されるUVA(B)を主成分として含み,上記式(10)により示されるUVA(B)を副成分として含む市販の紫外線吸収剤には,例えば,CGL777MPA(チバスペシャリティケミカルズ製)あるいはCGL777MPAD(チバスペシャリティケミカルズ製)がある。
…(省略)…
[0087] 本発明の樹脂組成物は,UVA(B)に基づく紫外線吸収能を有し,例えば,厚さ100μmのフィルムとしたときに,波長380nmの光の透過率を30%未満,場合によっては20%未満,さらには10%未満,1%未満とすることができる。この透過率は,JIS K7361:1997の規定に基づいて測定すればよい。
…(省略)…
[0094] 本発明の樹脂組成物は,負の固有複屈折を有する重合体を含んでいてもよい。この場合,樹脂組成物および当該組成物を成形して得た樹脂成形品における複屈折性(例えば位相差)の制御の自由度が向上する。
[0095] 負の固有複屈折を有する重合体は,例えば,シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体である。当該共重合体は,例えばスチレン-アクリロニトリル共重合体であり,スチレン-アクリロニトリル共重合体は,広範囲の共重合組成において樹脂(A)との相容性に優れる。
…(省略)…
[0121] シートまたはフィルムである本発明の樹脂成形品の用途は特に限定されないが,その高い透明性,耐熱性および紫外線吸収能により,光学部材として好適に用いることができる。光学部材は,例えば,光学用保護フィルム(シート),具体的には,各種の光ディスク(VD,CD,DVD,MD,LDなど)基板の保護フィルム,液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。位相差フィルム,視野角補償フィルム,光拡散フィルム,反射フィルム,反射防止フィルム,防眩フィルム,輝度向上フィルム,タッチパネル用導電フィルムなどの光学フィルムとして,あるいは,拡散板,導光体,位相差板,プリズムシートなどの光学シートとして,本発明の樹脂成形品を用いてもよい。
…(省略)…
[0158] 押出成形によって得られた樹脂フィルムは,必要に応じて延伸してもよい。延伸の種類は特に限定されず,一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。延伸により,樹脂フィルムの機械的強度を向上でき,場合によっては,樹脂フィルムに複屈折性を賦与することも可能である。
…(省略)…
[0159] 樹脂フィルムの光学特性および機械的特性を安定させるために,延伸後,必要に応じて熱処理(アニーリング)を実施してもよい。」

ウ 「実施例
[0160] 以下,実施例により,本発明をより詳細に説明する。
…(省略)…
[0177] (実施例1)
…(省略)…
[0181] UVA溶液には,上記式(9)に示す紫外線吸収剤(分子量958)を主成分とし,上記式(10)に示す紫外線吸収剤(分子量773)および以下の式(11)に示す紫外線吸収剤(分子量1142)を副成分とするCGL777MPA(チバスペシャリティケミカルズ製,有効成分80%)37.5部をトルエン12.5部に溶解させた溶液を用いた。
[0182][化11]

…(省略)…
[0193] (実施例5)
…(省略)…
[0195] 次に,得られた重合溶液を,バレル温度240℃,回転速度100rpm,減圧度13.3?400hPa(10?300mmHg),リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1,第2,第3,第4ベントと称する),第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダが設けられており,先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μ,濾過面積1.5m^(2))が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(Φ=50.0mm,L/D=30)に,樹脂量換算で45kg/時の処理速度で導入し,脱揮を行った。その際,別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を0.68kg/時の投入速度で第1ベントの後ろから,別途準備しておいたUVA溶液を1.25kg/時の投入速度で第2ベントの後ろから,イオン交換水を0.22kg/時の投入速度で第3ベントの後ろから,それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液およびUVA溶液は,実施例1と同じものを用いた。また,上記サイドフィーダから,スチレン-アクリロニトリル(AS)樹脂ペレット(旭化成ケミカルズ製,スタイラックAS783)を投入速度5kg/時で投入した。
…(省略)…
[0258] (製造例9)
攪拌装置,温度センサー,冷却管および窒素導入管を備えた内容積30Lの反応釜に,7000gのMMA,3000gのMHMAおよび重合溶媒として12000gのトルエンを仕込み,これに窒素を通じつつ,105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで,重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製,ルパゾール570)6.0gを添加するとともに,t-アミルパーオキシイソノナノエート12.0gとトルエン100gとからなる溶液を2時間かけて滴下しながら,約105?110℃の環流下で溶液重合を進行させ,さらに4時間の熟成を行った。
[0259] 次に,得られた重合溶液に,環化触媒として20gのリン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(堺化学工業製,商品名:Phoslex A-8)を加え,約80?105℃の環流下において2時間,環化縮合反応を進行させた。次に,メチルエチルケトン4000gを添加することで全体を希釈した後,240℃のオートクレーブにより加圧(ゲージ圧にして最高約2MPa)下で重合溶液を1.5時間加熱し,環化縮合反応をさらに進行させた。
[0260] 次に,得られた重合溶液をメチルエチルケトンで希釈した後,(1)オクチル酸亜鉛(日本化学産業製,ニッカオクチックス亜鉛18%)26.5gと,酸化防止剤としてIRGANOX1010(チバスペシャリティケミカルズ製)2.2gおよびアデカスタブAO-412S(ADEKA製)2.2gならびに溶剤としてトルエン61.6gからなる溶液とを,20g/時の速度で投入したこと,(2)バレル温度を250℃にしたこと,以外は製造例5と同様にして,主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂からなる透明なペレット(I)を得た。
[0261] 得られたペレット(I)についてダイナミックTGの測定を行ったところ,0.21%の重量減少を検知した。得られた樹脂の重量平均分子量は110000であり,メルトフローレートは8.7g/10分,ガラス転移温度は142℃であった。
[0262] 次に,得られたペレット(I)を,シリンダー径が20mmの単軸押出機を用いて以下の条件で押出成形し,厚さ約400μmの未延伸フィルム(J)を作製した。
…(省略)…
[0264] 得られた未延伸フィルム(J)の面内位相差は0.3nm(実測1.3nm),厚さ方向の位相差は0.5nm(実測2.2nm),厚さは433μm,ガラス転移温度は142℃であった。
[0265] (製造例10)
製造例9で作製した未延伸のフィルム(J)を,製造例1で用いた延伸試験装置を用いて逐次二軸延伸した。
…(省略)…
[0268] このようにして得た二軸延伸性フィルムの面内位相差は282nm(実測135nm),厚さ方向の位相差は307nm(実測148nm),厚さは48μm,全光線透過率は93%,ヘイズは0.3%,ガラス転移温度は142℃であった。
…(省略)…
産業上の利用可能性
[0282] 本発明によれば,熱可塑性アクリル樹脂と紫外線吸収剤とを含む樹脂組成物であって,110℃以上という高いガラス転移温度に基づく優れた耐熱性を示すとともに,高温での成形時においても,発泡,ブリードアウトなどの発生が抑制され,UVAの蒸散による問題の発生が少ない樹脂組成物を提供できる。」

(2) 引用発明1
ア 引用発明1A
引用文献1の[0009],[0010]及び[0016]の記載からみて,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明1A」という。)。
「 熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))と,分子量が700以上の紫外線吸収剤(UVA(B))とを含み,110℃以上のガラス転移温度を有する樹脂組成物からなり,
ガラス転移温度の高さに基づく優れた耐熱性と,UVA(B)に基づく高い紫外線吸収能ならびに樹脂(A)に基づく高い透明性,機械的強度および成形加工性とを示す,
フィルム。」

イ 引用発明1B
引用文献1には,[0009]及び[0094],[0020]及び[0027],[0067]及び[0087],[0094]及び[0095],並びに,[0121]の記載から理解される樹脂組成物からなるフィルムとして,次の発明も記載されている(以下「引用発明1B」という。)。
「 熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))と,分子量が700以上の紫外線吸収剤(UVA(B))と,負の固有複屈折を有する重合体を含む樹脂組成物からなるフィルムであって,
樹脂(A)は,樹脂組成物としてのTgが110℃以上の,主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂であり,
UVA(B)は,ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し,樹脂組成物のUVA(B)に基づく紫外線吸収能は,厚さ100μmのフィルムとしたときの波長380nmの光の透過率(JIS K7361:1997の規定に基づいて測定)で1%未満であり,
負の固有複屈折を有する重合体はスチレン-アクリロニトリル共重合体であり,広範囲の共重合組成において樹脂(A)との相容性に優れ,樹脂組成物を成形して得た樹脂成形品における位相差の制御の自由度が向上し,
フィルムである樹脂成形品の用途は特に限定されないが,その高い透明性,耐熱性および紫外線吸収能により,光学部材として好適に用いることができる,
フィルム。」

(3) 引用文献2の記載
当合議体の拒絶の理由に引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には,以下の記載がある(要部のみ示す。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の樹脂フィルムを当該樹脂フィルムの面内方向に多段延伸して位相差フィルムを形成する,位相差フィルムの製造方法であって,
前記樹脂フィルムが,110℃以上のガラス転移温度Tgおよび負の固有複屈折を有する樹脂から構成され,
前記多段延伸が,前記帯状の樹脂フィルムの流れ方向の延伸である縦延伸と,前記帯状の樹脂フィルムの幅方向の延伸である横延伸と,を含み,
前記多段延伸を,以下の(1)または(2)のように行い,
(1)延伸温度(Tg+20)℃以上で縦延伸した後に,延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する,
(2)延伸温度(Tg+15)℃以上で縦延伸した後に,(Tg+20)℃以上で熱処理し,さらに延伸温度(Tg+20)℃未満で横延伸する,
波長589nmの光に対する面内位相差Reが50nm以上300nm以下,当該光に対する厚さ方向の位相差Rthが-300nm以上-30nm以下の位相差フィルムを形成する,位相差フィルムの製造方法。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,位相差フィルムの製造方法に関する。より具体的に,本発明は,厚さ方向の位相差が負である位相差フィルム(負の位相差フィルム)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸して得た延伸フィルムが,画像表示分野において幅広く使用されている。その一種に,延伸による高分子鎖の配向に基づく複屈折を利用した位相差フィルムがある。位相差フィルムは,例えば,液晶表示装置(LCD)における色調補償,視野角補償に広く使用される。従来,複屈折により生じた位相差(光路長差:レターデーション)が波長の1/4であるλ/4板が,LCDに用いる位相差フィルムとして代表的である。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル重合体を用いることで位相差フィルムとしての耐熱性を向上させながら,樹脂フィルムの面内方向の延伸により負の位相差フィルムを得るには,当該樹脂フィルムを構成する樹脂の固有複屈折を負とすればよい。…(省略)…特許文献4には,負の固有複屈折を与える作用を有するスチレン系単量体をさらに共重合させることによって,主鎖にグルタルイミド構造を有しながらも固有複屈折が負である(メタ)アクリル重合体を用いた,負の位相差フィルムが開示されている。
【0010】
しかし,これらの方法をとった場合,上記(メタ)アクリル重合体に由来するTgの高さも相まって,得られた位相差フィルムが硬くなる傾向があり,位相差フィルムの折り曲げ耐性の低下,当該耐性の低下が原因である取り扱い時の破断などが生じやすい。
…(省略)…
【課題を解決するための手段】
【0012】
…(省略)…
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば,厚さ方向の位相差Rthが負の位相差フィルム,すなわち,負の位相差フィルムであって,当該フィルムを構成する樹脂のTgの高さに基づく高い耐熱性を示しながらも,折り曲げ耐性に優れ,面内位相差Reが50nm以上300nm以下,厚さ方向の位相差Rthが-300nm以上-30nm以下であるReおよびRthともに十分な位相差を有する位相差フィルムを,原反となる帯状の樹脂フィルムの面内方向の延伸によって,製造できる。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
…(省略)…
【0061】
[原反]
本発明の製造方法で使用する帯状の樹脂フィルム(原反)は,110℃以上のTgおよび負の固有複屈折を有する熱可塑性樹脂(A)から構成される。原反のTgは,通常,樹脂(A)のTgと同一である。原反の固有複屈折は負である。
…(省略)…
【0064】
樹脂(A)の組成は,110℃以上のTgおよび負の固有複屈折を有する限り,限定されない。樹脂(A)は,少なくとも1種の,負の固有複屈折を有する重合体を含む。
【0065】
負の固有複屈折を有する重合体は限定されないが,…(省略)…樹脂(A)として110℃以上のTgを実現する重合体,を含む場合に,当該他の重合体との相溶性に優れることから,スチレン系重合体が好ましい。
…(省略)…
【0075】
樹脂(A)は,負の固有複屈折を有する重合体以外に,(メタ)アクリル重合体を含んでいてもよい。
…(省略)…
【0079】
(メタ)アクリル重合体は,主鎖に環構造を有していてもよい。
…(省略)…
【0081】
環構造は,…(省略)…形成された位相差フィルムの耐熱性および光学特性の観点からは,ラクトン環構造またはグルタルイミド構造が好ましい。
…(省略)…
【0083】
重合体(B)の主鎖に位置するラクトン環構造は,…(省略)…以下の式(3)により示される構造が好ましい。
【0084】
【化1】

【0085】
式(3)において,R^(1),R^(2)およびR^(3)は,互いに独立して,水素原子または炭素数1?20の範囲の有機残基である。有機残基は,酸素原子を含んでもよい。
…(省略)…
【0108】
本発明の製造方法により得た位相差フィルムを備える画像表示装置は,斜めから画面を見たときの光漏れが少ないなど,画像表示特性に優れる。」

エ 「【実施例】
【0109】
以下,実施例により,本発明をさらに詳細に説明する。
…(省略)…
【0121】
(製造例1)
撹拌装置,温度センサー,冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に,メタクリル酸メチル(MMA)40重量部,2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)10重量部,重合溶媒としてトルエン50重量部ならびに酸化防止剤としてアデカスタブ2112(ADEKA製)0.025重量部を仕込み,…(省略)…溶液重合を進行させ,さらに4時間の熟成を行った。
【0122】
次に,得られた重合溶液に,環化縮合反応の触媒(環化触媒)として,リン酸2-エチルヘキシル(堺化学製,商品名:Phoslex A-8)0.05重量部を加え,約90?105℃の還流下において2時間,環化縮合反応を進行させた。次に,得られた重合溶液を,…(省略)…ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に,樹脂量換算で70重量部/時の処理速度で導入し,脱揮を行った。その際,…(省略)…サイドフィーダーから,スチレン-アクリロニトリル共重合体(スチレン単位/アクリロニトリル単位の比率が73質量%/27質量%,重量平均分子量22万)のペレットを,投入速度30重量部/時で投入した。
【0123】
その後,押出機内にある溶融状態の樹脂を押出機の先端から吐出し,ペレタイザーによりペレット化して,負の固有複屈折を有する樹脂(A1)のペレットを得た。
…(省略)…
【0125】
(実施例1)
製造例1で作製した樹脂(A1)のペレットを,ポリマーフィルター(濾過精度5μm)およびTダイを先端部に備えた単軸押出機により,270℃で溶融押出して,帯状の原フィルム(厚さ202μm,幅535mm,未延伸)を作製した。作製した原フィルム(原反)のTgは122℃であった。
【0126】
次に,作製した原フィルムを,オーブン延伸機を用いて,延伸温度170℃,延伸倍率1.5倍で縦延伸した。
…(省略)…
【0127】
次に,原フィルム(A1-MF1)を,テンター延伸機を用いて,以下の条件で横延伸した。
…(省略)…
【0128】
横延伸全体としての延伸倍率 ・・・3.0倍
熱処理ゾーン温度 ・・・131℃
熱処理ゾーンでの延伸 ・・・なし
前段延伸ゾーン温度 ・・・131℃
前段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の88%
後段延伸ゾーン温度 ・・・124℃
後段延伸ゾーンでの延伸倍率 ・・・横延伸全体の12%
【0129】
このようにして得た位相差フィルム(A1-BF1)の面内位相差Reは107nm,厚さ方向の位相差Rthは-94nm,光軸精度ΔRは1°,平均膜厚は47μm,膜厚精度は±2μm(膜厚ムラ±4%),MIT回数は12回,位相差長期耐久性は○であった。
…(省略)…
【0179】
【表1】

…(省略)…
【0183】
後段の延伸を,原フィルムの延伸および収縮を組み合わせて行った実施例9?12では,光軸精度ΔRおよび位相差の長期耐久性が著しく向上した。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の製造方法により得た位相差フィルムは,従来の位相差フィルムの用途と同じ用途に幅広く使用できる。本発明の製造方法により得た位相差フィルムは,LCDなどの画像表示装置への使用に好適である。」

(4) 対比
本願発明と引用発明1Aを対比すると,引用発明の「フィルム」は,「熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))と,分子量が700以上の紫外線吸収剤(UVA(B))とを含み,110℃以上のガラス転移温度を有する樹脂組成物」からなる。
ここで,引用発明1Aの「熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))」は,技術的にみて,アクリル系重合体ということができる。また,引用発明1Aの「紫外線吸収剤(UVA(B))」は,その文言が意味するとおり紫外線吸収剤であり,また,「分子量が700以上」であるから,分子量500以上といえる。
したがって,引用発明1Aの「熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))」及び「紫外線吸収剤(UVA(B))」は,それぞれ,本願発明の「アクリル系重合体」及び「紫外線吸収剤」に相当する。また,引用発明1Aの「フィルム」と本願発明の「位相差フィルム」は,「アクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有」する「フィルム」の点で,共通する。

(5) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明1Aは,次の構成で一致する。
「 アクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有しているフィルム。」

イ 相違点
本願発明と引用発明1Aは,次の点で相違する。
(相違点1)
「アクリル系重合体」について,本願発明は,「主鎖に環構造を有する」ものであるのに対して,引用発明1Aは,このように特定されたものではない点。

(相違点2)
本願発明は,「紫外線吸収剤」が「ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」,「フィルム」が「JIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmの光線透過率が厚さ100μmに換算して3%以下」であるのに対して,引用発明1Aは,このように特定されたものではない点。

(相違点3)
本願発明は,「589nmにおける面内位相差が100nm以上160nm以下であり」,「下記方法で測定される位相差の変化率が全て4%以下」である「位相差フィルム」であるのに対して,引用発明1Aは,このように特定されたものではない点。
(当合議体注:「下記方法」は,前記「第1」2に記載のとおりである。「下記方法で測定される位相差の変化率が全て4%以下」となることを,以下,「位相差耐久試験をクリアする」という。)

(相違点4)
本願発明は,「589nmにおける厚さ方向の位相差が-160nm以上,-50nm以下であり」,「スチレン系重合体を含有している」のに対して,引用発明1Aは,このように特定されたものではない点。

(6) 判断
相違点1?相違点4について,まとめて判断する。
引用発明1Aの「フィルム」は,「ガラス転移温度の高さに基づく優れた耐熱性と,UVA(B)に基づく高い紫外線吸収能ならびに樹脂(A)に基づく高い透明性,機械的強度および成形加工性とを示す」ものである。したがって,引用発明1Aのフィルムは,耐熱性や機械的強度等が要求される,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される位相差フィルムとして好適なものといえる(この点は,引用文献1の[0121]の記載とも整合するものである。)。
そうしてみると,例えば,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される(視認側の)位相差フィルムに関心を寄せた当業者が,引用文献1の[0009]及び[0094],[0020]及び[0027],[0067]及び[0087],並びに,[0094]及び[0095]の記載を考慮して,[A]引用発明1Aの「熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))」として,樹脂組成物としてのTgが110℃以上の,主鎖にラクトン環構造を有するものを採用し,[B]引用発明1Aの「紫外線吸収剤(UVA(B))」として,分子量が700以上であり,ヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有するものを採用し,また,引用発明1Aの「樹脂組成物」のUVA(B)に基づく紫外線吸収能を,厚さ100μmのフィルムとしたときの波長380nmの光の透過率(JIS K7361:1997の規定に基づいて測定)で1%未満とし,[C]引用発明1Aの「樹脂組成物」に,樹脂組成物を成形して得た樹脂成形品における位相差の制御の自由度を向上させることを目的として,広範囲の共重合組成において樹脂(A)との相容性に優れるスチレン-アクリロニトリル共重合体を含ませること,すなわち,引用発明1Bのようになすことは,引用文献1の記載が示唆する範囲内の事項といえる。また,[D]589nmにおける面内方向の位相差を100?160nm,厚さ方向の位相差を-160nm?-50nmの要件を満たすものとすることは,当業者が所望する位相差に応じた,設計範囲内の事項にすぎない(例えば,引用文献2の【0125】?【0179】には,589nmにおける面内方向の位相差が100?160nm,厚さ方向の位相差が-160nm?-50nmの要件を満たす位相差フィルムが,実施例1,実施例2,実施例4,実施例6?実施例11及び実施例13?実施例16として,開示されている。)。

加えて,引用発明1Aにおいて上記[A]?[D]の構成を具備した位相差フィルムは,本願発明の「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し,589nmにおける面内位相差が100nm以上160nm以下であり」,「JIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmの光線透過率が厚さ100μmに換算して3%以下であり」,「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」,「589nmにおける厚さ方向の位相差が-160nm以上,-50nm以下であり」,「スチレン系重合体を含有している位相差フィルム」という構成をすべて具備する。
そうしてみると,引用発明1Aにおいて上記[A]?[D]の構成を具備した位相差フィルムは,本願発明の課題を解決するための手段として理解可能なすべての構成を具備するものであるから,前記相違点3に係る本願発明の位相差耐久試験をクリアするものといえる。
(当合議体注:なお,後記「3」で述べるとおり,本件出願の発明の詳細な説明の記載に基づくと,「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し」及び「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」という構成を具備する場合には,位相差耐久試験をクリアする。)

あるいは,引用発明1Aは,「ガラス転移温度の高さに基づく優れた耐熱性」を具備する。また,引用文献2の【0183】には,「後段の延伸を,原フィルムの延伸および収縮を組み合わせて行った実施例9?12では,光軸精度ΔRおよび位相差の長期耐久性が著しく向上した」と記載され,引用文献1の[0159]には,「樹脂フィルムの光学特性および機械的特性を安定させるために,延伸後,必要に応じて熱処理(アニーリング)を実施してもよい」と記載されている。
そうしてみると,引用発明1Aを,耐熱性や機械的強度等が要求される,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される位相差フィルムとして具体化する当業者が,位相差耐久試験をクリアするように,適切なガラス転移温度の「熱可塑性アクリル樹脂(樹脂(A))」及び延伸条件を選択し,延伸後,アニーリングを実施する等の手段により,位相差耐久試験をクリアする位相差フィルムとすることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。

(7) 本願発明の効果について
本願発明の効果に関して,明細書の【0017】には,「本発明の位相差フィルムによれば,高温環境下における耐熱性,高湿環境下における耐湿性を有しながら,高い位相差耐久性を発現できる。また,偏光板や画像表示装置は前記位相差フィルムを備えることにより,紫外線に対して高い耐久性を示す。」と記載されている。
しかしながら,このような効果は,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される(視認側の)位相差フィルムとして引用発明1Aのフィルムを具体化する当業者が,期待する範囲内の効果である。

(8) 引用発明1Bについて
上記(5)及び(6)のとおりであるから,引用発明1Aに替えて,引用発明1Bに基づいて検討しても,同様である。

(9) 小括
本願発明は,引用文献2に記載された技術を心得た当業者が,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

2 理由2(引用文献3)について
(1) 引用文献3の記載
当合議体の拒絶の理由が引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には,以下の記載がある(要部のみ示す。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性アクリル樹脂と分子量が700以上の紫外線吸収剤およびゴム質重合体とを含み,110℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
…(省略)…
【請求項4】
前記アクリル樹脂が,主鎖中に環構造を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
…(省略)…
【請求項7】
厚さ100μmのフィルムとしたときにJIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmおよび500nmにおける透過率がそれぞれ1%以下および90%以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項9】
2軸延伸してなる請求項8記載のフィルム。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は,耐熱性透明材料として好適な熱可塑性樹脂組成物とそれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
…(省略)…
【0003】
しかしながら,アクリル樹脂は紫外線を含む光に曝されると,黄変して透明度が低下することがあり,これを防ぐ方法として,紫外線吸収剤を添加する方法が知られている。
…(省略)…
【0006】
これらの問題を考慮し,これまで,少量の添加により高い紫外線吸収効果が得られるとされるトリアジン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物およびベンゾフェノン系化合物が,紫外線吸収剤としてアクリル樹脂と組み合わせて用いられている。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,これらの化合物は主鎖に環構造を有するアクリル樹脂との相溶性に課題が残る。高温での成型時における発泡,ブリードアウトの発生の抑制も必ずしも十分であるといえない。
…(省略)…
【発明の効果】
【0015】
…(省略)…
【0016】
このような樹脂組成物からなる本発明のフィルムはTgの高さに基づく優れた耐熱性を有するとともに,紫外線吸収剤に基づく高い紫外線吸収能,アクリル樹脂に基づく高い透明性および優れた光学特性ならびにゴム質重合体に基づく優れた機械的強度および成形加工性とを示す。
…(省略)…
【0018】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0019】
[アクリル樹脂(A)]
…(省略)…
【0024】
アクリル樹脂(A)のTgは,紫外線吸収剤(B)およびゴム質重合体(C)を含む樹脂組成物としてのTgが110℃以上であることから,通常110℃以上である。
…(省略)…
【0025】
アクリル樹脂(A)は主鎖に環構造を有していてもよい。この場合,アクリル樹脂(A)および樹脂組成物のTgが高くなり,当該組成物から得た樹脂成形品の耐熱性が向上する。
…(省略)…
【0027】
環構造の種類は特に限定されないが,例えば,ラクトン環構造,無水グルタル酸構造,グルタルイミド構造,N-置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。
…(省略)…
【0039】
アクリル樹脂(A)が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は…(省略)…以下の一般式(4)に示される構造が好ましい。
【0040】
【化3】

【0041】
上記一般式(4)において,R^(10),R^(11)およびR^(12)は,互いに独立して,水素原子または炭素数1から20の範囲の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
…(省略)…
【0048】
アクリル樹脂(A)は,当該樹脂に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を有していてもよい。この場合,樹脂組成物ならびに当該組成物を成形して得た成形品における複屈折性の制御の自由度が向上し,本発明の樹脂組成物から形成したフィルムなどの成形品の光学部材として使用用途が拡大する。
…(省略)…
【0050】
アクリル樹脂(A)に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位の一例は,スチレン単位である。
…(省略)…
【0062】
[紫外線吸収剤(B)]
紫外線吸収剤(B)の分子量は700以上である。
…(省略)…
【0067】
紫外線吸収剤(B)の構造は分子量が700以上である限り特に限定されないが,紫外線吸収剤(B)がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有することが好ましい。
…(省略)…
【0077】
…(省略)…紫外線吸収剤(B)の具体例を,以下の化学式(9)に挙げる。紫外線吸収剤(B)は,以下に示す例に限定されない。
【0078】
【化9】

【0079】
上記化学式(9)により示される紫外線吸収剤(B)を主成分として含む市販の紫外線吸収剤には,例えば,チヌビン477(チバスペシャリティケミカルズ製)がある。
【0080】
[ゴム質重合体(C)]
ゴム質重合体(C)は,本発明の樹脂組成物をフィルムとした場合の可とう性の改善および位相差を低下させる効果を有するものである。
…(省略)…
【0125】
本発明の樹脂組成物は,紫外線吸収剤(B)に基づく紫外線吸収能を有し,例えば,厚さ100μmのフィルムとしたときに,波長380nmの光の透過率を30%未満,場合によっては20%未満,さらには10%未満,1%未満とすることができる。この透過率は,JIS K7361:1997の規定に基づいて測定すればよい。
…(省略)…
【0166】
本発明のフィルムの用途は特に限定されないが,その高い透明性,耐熱性および紫外線吸収能により,光学部材として好適に用いることができる。光学部材は,例えば,光学用保護フィルム,具体的には,各種の光ディスク(VD,CD,DVD,MD,LDなど)基板の保護フィルム,液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置が備える偏光板に用いる偏光子保護フィルムである。位相差フィルム,視野角補償フィルム,光拡散フィルム,反射フィルム,反射防止フィルム,防眩フィルム,輝度向上フィルム,タッチパネル用導電フィルムなどの光学フィルムとして,本発明のフィルムを用いてもよい。
…(省略)…
【0204】
樹脂フィルムの光学特性および機械的特性を安定させるために,延伸後,必要に応じて熱処理(アニーリング)を実施してもよい。」

ウ 「【実施例】
【0205】
以下に,実施例により本発明をより詳細に説明する。本発明は,以下に示す実施例に限定されない。以下の説明では,便宜上,「質量部」を単に「部」と,「リットル」を単に「L」と記すことがある。
尚,実施例において便宜上,下記略称を用いて説明する。
MMA:メタクリル酸メチル
…(省略)…
RHMA:2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル
…(省略)…
【0224】
(製造例1)アクリル樹脂(A-1)の製造
攪拌装置,温度計,冷却器,窒素導入管を備えた30L反応釜に,MMA40部,RHMA10部,トルエン50部,アデカスタブ2112(ADEKA製)0.025部を仕込み,…(省略)…溶液重合を行い,さらに4時間かけて熟成を行った。
【0225】
上記重合体溶液に,リン酸2-エチルヘキシル(堺化学工業製,商品名:Phoslex A-8)を0.05部加え,還流下(約90?110℃)において2時間環化縮合反応を進行させた。
…(省略)…
【0227】
…(省略)…紫外線吸収剤溶液は,分子量が958の紫外線吸収剤を主成分(分子量773および1142の紫外線吸収剤との混合物)とするヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有するチヌビン477(B-1)(チバスペシャリティケミカルズ製 有効成分80%)37.5部をトルエン12.5部に溶解して調製した。
【0228】
上記脱揮操作により,分子量700以上の紫外線吸収剤(B-1)を有する熱可塑性アクリル樹脂組成物(A-1)のペレットを得た。樹脂部の重量平均分子量は148000,ガラス転移温度は128℃であった。ラクトン環含有率は28.7%であった。
…(省略)…
【産業上の利用可能性】
【0341】
本発明によれば,熱可塑性アクリル樹脂と紫外線吸収剤およびゴム質重合体とを含む樹脂組成物であって,110℃以上という高いガラス転移温度に基づく,優れた耐熱性示すとともに,高温での成形時においても,発泡,ブリードアウトなどの発生が抑制され,紫外線吸収剤の蒸散による問題の発生が少ない,機械的強度に優れた樹脂組成物を提供できる。」

(2) 引用発明3
引用文献3には,【請求項1】,【請求項2】,【請求項4】,【請求項7】,【請求項8】及び【請求項9】に記載された発明特定事項を具備し,【0016】に記載の効果を奏する発明として,次の発明が記載されている(以下「引用発明3」という。)。
「 熱可塑性アクリル樹脂と分子量が700以上の紫外線吸収剤およびゴム質重合体とを含み,110℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムであって,
前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し,
前記アクリル樹脂が,主鎖中に環構造を含み,
厚さ100μmのフィルムとしたときにJIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmおよび500nmにおける透過率がそれぞれ1%以下および90%以上であり,
2軸延伸してなり,
ガラス転移温度(Tg)の高さに基づく優れた耐熱性を有するとともに,紫外線吸収剤に基づく高い紫外線吸収能,アクリル樹脂に基づく高い透明性および優れた光学特性ならびにゴム質重合体に基づく優れた機械的強度および成形加工性とを示す,
フィルム。」

(3) 一致点及び相違点
事案に鑑みて,以下,簡潔に記載する。
ア 一致点
本願発明と引用発明3は,次の構成で一致する。
「 主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し,
JIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmの光線透過率が厚さ100μmに換算して3%以下であり,
前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有する,
位相差フィルム。」

イ 相違点
本願発明と引用発明3は,以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は,「589nmにおける面内位相差が100nm以上160nm以下であり」,「下記方法で測定される位相差の変化率が全て4%以下」である「位相差フィルム」であるのに対して,引用発明3は,このように特定されたものではない点。
(当合議体注:「下記方法」は,前記「第1」2に記載のとおりである。)

(相違点2)
本願発明は,「589nmにおける厚さ方向の位相差が-160nm以上,-50nm以下であり」,「スチレン系重合体を含有している」のに対して,引用発明3は,このように特定されたものではない点。

(4) 判断
判断は,引用発明1Aの場合(前記1(6)参照)と同様である。
すなわち,引用発明3の「フィルム」は,「ガラス転移温度(Tg)の高さに基づく優れた耐熱性を有するとともに,紫外線吸収剤に基づく高い紫外線吸収能,アクリル樹脂に基づく高い透明性および優れた光学特性ならびにゴム質重合体に基づく優れた機械的強度および成形加工性とを示す」ものである。したがって,引用発明3のフィルムは,耐熱性や機械的強度等が要求される,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される位相差フィルムとして好適なものといえる(この点は,引用文献3の【0166】の記載とも整合するものである。)。
そうしてみると,例えば,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される(視認側の)位相差フィルムに関心を寄せた当業者が,引用発明3の「フィルム」を,[A]589nmにおける面内方向の位相差を100?160nmにするとともに,[B]引用文献3の【0050】の記載を参考に,589nmにおける厚さ方向の位相差を-160nm?-50nmの要件を満たす位相差フィルムとすることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である(例えば,引用文献2の【0125】?【0179】には,589nmにおける面内方向の位相差が100?160nm,厚さ方向の位相差が-160nm?-50nmの要件を満たす位相差フィルムが,実施例1,実施例2,実施例4,実施例6?実施例11及び実施例13?実施例16として,開示されている。)。

加えて,引用発明3において上記[A]及び[B]の構成を具備した位相差フィルムは,本願発明の課題を解決するための手段として理解可能なすべての構成を具備するものであるから,位相差耐久試験をクリアするものといえる。
(当合議体注:なお,後記「3」で述べるとおり,本件出願の発明の詳細な説明の記載に基づくと,「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し」及び「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」という構成を具備する場合には,位相差耐久試験をクリアする。したがって,引用発明3との関係においては,位相差耐久試験をクリアすることは,相違点ではないと理解される。)

あるいは,引用発明3は,「ガラス転移温度(Tg)の高さに基づく優れた耐熱性」を具備する。また,引用文献2の【0183】には,「後段の延伸を,原フィルムの延伸および収縮を組み合わせて行った実施例9?12では,光軸精度ΔRおよび位相差の長期耐久性が著しく向上した」と記載され,引用文献3の【0204】には,「樹脂フィルムの光学特性および機械的特性を安定させるために,延伸後,必要に応じて熱処理(アニーリング)を実施してもよい」と記載されている。そうしてみると,引用発明3を,耐熱性や機械的強度等が要求される,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される位相差フィルムとして具体化する当業者が,位相差耐久試験をクリアするように,適切なガラス転移温度の「熱可塑性樹脂組成物」及び延伸条件を選択し,延伸後,アニーリングを実施する等の手段により,位相差耐久試験をクリアする位相差フィルムとすることは,当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。

(5) 本願発明の効果について
本願発明の効果に関して,明細書の【0017】には,「本発明の位相差フィルムによれば,高温環境下における耐熱性,高湿環境下における耐湿性を有しながら,高い位相差耐久性を発現できる。また,偏光板や画像表示装置は前記位相差フィルムを備えることにより,紫外線に対して高い耐久性を示す。」と記載されている。
しかしながら,このような効果は,液晶表示装置や有機EL表示装置で使用される(視認側の)位相差フィルムとして引用発明3のフィルムを具体化する当業者が,期待する範囲内の効果である。

(6) 小括
本願発明は,引用文献2に記載された技術を心得た当業者が,引用文献3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

3 理由1(サポート要件)について
理由2との関係において予備的に,理由1についても判断を示す。
本願発明の,発明が解決しようとする課題に関して,本件出願の明細書の【0010】には,以下のとおり記載されている。
「 本発明は,アクリル系重合体とUVAとを含む位相差フィルムであって,樹脂のTgの高さに基づく高温環境下における耐熱性,高湿環境下における耐湿性を有しながら,UVA由来の配向緩和に基づく光学特性の劣化の問題を低減できる位相差フィルムを提供することを目的とする。」
ここで,上記記載における「樹脂のTgの高さに基づく高温環境下における耐熱性,高湿環境下における耐湿性」及び「UVA由来の配向緩和に基づく光学特性の劣化」という記載は,いずれも定性的なものであり,明確であるとはいいがたい。
ただし,本願発明は,位相差耐久試験をクリアすることを,発明の構成として具備する。
そうしてみると,本願発明の発明が解決しようとする課題は,「アクリル系重合体とUVAとを含む位相差フィルムであって,樹脂のTgの高さに基づく高温環境下における耐熱性,高湿環境下における耐湿性を有しながら,UVA由来の配向緩和に基づく光学特性の劣化の問題を,位相差耐久試験をクリアする程度に低減できる位相差フィルムを提供すること」にあると理解される。また,本願発明は,位相差耐久試験をクリアすることが記載されているから,形式的には,発明が解決しようとする課題を解決することができる発明のみを,発明の範囲に含むものといえる。

ここで,本願発明の構成のうち,位相差耐久試験をクリアすること以外の構成は,本願発明の構成を物の構造や物性により特定するものといえる。また,これら物の構造や物性を達成するための手段(材料の選択や製造方法等)は,当業者に明らかなものである。したがって,本願発明の構成のうち,位相差耐久試験をクリアすること以外の構成については,本願発明の課題を解決するための手段として,当業者が理解可能なものである。
これに対して,位相差耐久試験をクリアすることについては,本願発明の課題を解決することができることを,その結果において特定するにとどまるものである。
そこで,本件出願の発明の詳細な説明を参照すると,以下の事項が理解される。
(1) 本願発明の構成のうち,「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し」及び「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」という構成を具備する場合には,位相差耐久試験をクリアすることができる(実施例1?実施例6,実施例8,実施例10,実施例12,実施例27?実施例30,比較例1及び比較例2)。
(2) 本願発明の構成のうち,「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体」「を含有し」という構成を具備しない場合には,本願発明の他の構成を具備するとしても,位相差耐久試験をクリアできない(比較例7)。
(3) 本願発明の構成のうち,「分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し」及び「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」という構成を具備しない場合には,本願発明の他の構成を具備するとしても,位相差耐久試験をクリアできない(実施例7,実施例9,実施例11,実施例13及び比較例3?比較例7)。
(4) 本願発明の構成のうち,「589nmにおける面内位相差が100nm以上160nm以下」,「JIS K7361:1997の規定に準拠して測定した波長380nmの光線透過率が厚さ100μmに換算して3%以下」,「589nmにおける厚さ方向の位相差が-160nm以上,-50nm以下」及び「スチレン系重合体を含有している」という構成は,偏光板としたときの黒表示や,紫外線に対する耐久性に関する要件である。

以上のとおりであるから,本件出願の発明の詳細な説明からは,本願発明の構成のうち,「主鎖に環構造を有するアクリル系重合体と分子量500以上である紫外線吸収剤を含有し」及び「前記紫外線吸収剤がヒドロキシフェニルトリアジン骨格を有し」という構成(以下「樹脂及び紫外線吸収剤の構成」という。)を具備する場合には,高い蓋然性をもって位相差耐久試験をクリアし得るものであることを,理解することができる。
そうしてみると,本願発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。

ただし,仮に,位相差耐久試験をクリアするために,樹脂及び紫外線吸収剤の構成以外のものが必要であり,かつ,それが技術常識の範囲を超えるものである場合には,本願発明は,依然として,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
したがって,仮に,以下[A]?[C]に例示する手段を採用してもなお,位相差耐久試験をクリアできないとするならば,本願発明は,依然として,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
[A]樹脂全体でみたときのガラス転移温度を,高く調整すること。
[B]位相差フィルムを得るための延伸条件を,適切なものとすること。
[C]延伸後にアニーリング等の適切な後処理をすること。

以上のとおり,理由2との関係において予備的には,本願発明は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから,本件出願は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

第3 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,拒絶すべきものである。
また,予備的に,本件出願は,同法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-18 
結審通知日 2018-10-23 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2012-206688(P2012-206688)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
P 1 8・ 537- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 河原 正
樋口 信宏
発明の名称 位相差フィルム、偏光板、および画像表示装置  

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