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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1347645
異議申立番号 異議2018-700113  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-14 
確定日 2018-11-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6182206号発明「高吸水性樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6182206号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕について訂正することを認める。 特許第6182206号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6182206号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、2013年4月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2012年4月25日、韓国、2013年4月23日、韓国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年7月28日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数15)がされ、同年8月16日の特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月14日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、当審において同年4月18日付けで取消理由が通知され、同年7月20日に特許権者 エルジー・ケム・リミテッド(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年7月25日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月28日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年9月25日付けで審尋が通知され、同年10月25日に特許権者から回答書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成30年7月20日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む」と記載されているのを、「前記高吸水性樹脂は、下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/gであり、
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含み、」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし15についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂」と記載されているのを、「前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含み、
前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む、高吸水性樹脂」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし15についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、高吸水性樹脂の、60分まで加圧時の数式3で表される加圧吸水能値を24.4g/g?25.1g/gに限定するものである。
これは、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書の【0120】の【表2】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載のベース樹脂を「300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む」ものに限定するものである。
これは、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、本件特許の願書に添付した明細書の【0042】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし15は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし15は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1及び2は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものである。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1及び2は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1及び2は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1及び2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし15〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成30年7月20日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足することを特徴とする、高吸水性樹脂であり、
前記高吸水性樹脂は、下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/gであり、
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含み、
前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む、高吸水性樹脂。
【数11】

前記数式1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径であり、
【数12】

前記数式2において、
ARULは、加圧下での吸水速度(Absorbing rate under load)であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【数13】

前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物を形成する段階と、
重合反応器で前記モノマー組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階と、
前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、
前記分級された含水ゲル重合体それぞれに水および表面架橋剤を含む表面処理溶液を噴射して、含水ゲル重合体の表面を処理する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法であって、
前記表面処理溶液は、噴射装置の油圧ノズルから10°?30°の角度に調節して、分級された含水ゲル重合体が分布した基板に噴射される製造方法。
【請求項4】
記表面架橋剤は、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物を使用することを特徴とする、請求項3に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理溶液には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択された1種以上の有機溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記表面架橋剤は、全体表面処理溶液に対して0.1?10重量%で含むことを特徴とする、請求項3?5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記表面を処理する段階において、
分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、
120?250℃の温度で、10分?120分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させる段階を含むことを特徴とする、請求項3?6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階において、
乾燥した含水ゲル重合体を、粒度が150?850μmとなるように粉砕を進行させることを特徴とする、請求項3?7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記分級する段階において、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、および粒度150μm以上850μm以下の粒子の2分に分級する段階、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、および粒度300μm以上850μm以下の粒子の3分に分級する段階、または
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、粒度300μm以上600μm未満の粒子、および粒度600μm以上850μm以下の粒子の4分に分級する段階を含むことを特徴とする、請求項3?8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記含水ゲル重合体の表面を処理した後に、含水ゲル重合体を粉砕し、粒度150?850μmの粒子に分級する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3?9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記含水ゲル重合体の乾燥段階の前に、重合された後の含水ゲル重合体を、粒度が1mm?15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3?10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記重合は、UV重合または熱重合を進行させることを特徴とする、請求項3?11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、
アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項3?12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記重合開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化物開始剤、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、およびその誘導体からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項3?13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
モノマー組成物は、架橋剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3?14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。」

第4 特許異議申立てについて
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、以下の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1ないし4及び9号証並びに本件特許の出願後に作成された甲第5ないし8号証を提出し、訂正前の請求項1ないし15に係る特許に対して、おおむね次の理由を主張している。
(1)申立理由1(新規性)
本件特許発明1及び2は、甲第1ないし4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件特許発明1ないし15は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(具体的には、甲第1ないし4号証のそれぞれを主引用文献とする理由である。)。
(3)申立理由3(実施可能要件、サポート要件及び明確性)
本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4)証拠方法
甲第1号証:特開2005-113117号公報
甲第2号証:特開2005-194376号公報
甲第3号証:特開2006-55833号公報
甲第4号証:特開2006-116535号公報
甲第5号証:特開2005-113117号公報の参考例1,2、比較例2,4を追試した実験成績証明書、平成30年1月17日、株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部、片田好希
甲第6号証:特開2005-194376号公報の実施例1を追試した実験成績証明書、平成30年1月17日、株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部、片田好希
甲第7号証:特開2006-55833号公報の比較例1を追試した実験成績証明書、平成30年1月19日、株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部、片田好希
甲第8号証:特開2006-116535号公報の比較例3を追試した実験成績証明書、平成30年1月19日、株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部、片田好希
甲第9号証:”Modern Superabsorbent Polymer Technology”p58?60,p69?74,p97?103,p215,1998年

2 平成30年4月18日付けで通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし15に係る特許に対して、平成30年4月18日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。

「1.(新規性)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた下記の文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2.(サポート要件)本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
3.(実施可能要件)本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第1 手続の経緯
・・・(略)・・・
第2 本件特許発明
・・・(略)・・・
第3 取消理由
1 取消理由1(新規性)について
・・・(略)・・・
そして、甲第5号証によると、甲第1号証に参考例1及び2並びに比較例2及び4として記載された吸水性樹脂組成物は、数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足するものである。
・・・(略)・・・
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・本件特許発明2も、甲第1号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・
そして、甲第6号証によると、甲第2号証に実施例1として記載された吸水性樹脂組成物は、数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・本件特許発明2も、甲第2号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・
そして、甲第7号証によると、甲第3号証に比較例1として記載された吸水性樹脂組成物は、数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・本件特許発明2も、甲第3号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・
そして、甲第8号証によると、甲第4号証に比較例3として記載された吸水性樹脂組成物は、数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明である。
・・・(略)・・・本件特許発明2も、甲第4号証に記載された発明である。
2 取消理由2(サポート要件)について
(1)本件特許発明1は、数式1で表されるSPAN及び数式2で表されるARULによって規定されるものである。
しかし、発明の詳細な説明には、このように規定することによって、なぜ、特許明細書の【0007】及び【0008】に記載された「高吸水性樹脂の表面処理を通じて、物性に優れていながら、特に初期吸水性に優れ、長時間経過後も、加圧状態で水分がほとんど滲み出ることなく、吸水能に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する」及び「吸水速度が速く、着用感が同時に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する」という発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)を解決することができるのか、その合理的な説明は記載されていない。また、このように規定することによって、発明の課題を解決することができることが当業者の技術常識でもない(特許異議申立書の第66及び67ページの「(4)理由4」を参照。)。
(2)本件特許発明1は、数式2で表されるARULによって規定されるものであるが、加圧下での吸水速度AUPの絶対値によっては規定されていない。したがって、本件特許発明1は、加圧下での吸水速度AUPの絶対値が低い吸水性樹脂を包含する。
そして、加圧下での吸水速度AUPの絶対値が低い吸水性樹脂は、初期吸水性に劣るため、例えばおむつなどの衛生用品に用いたときに、加圧されると水分が滲み出る可能性が非常に高いこと、すなわち、戻り量の多い吸水性樹脂であることは当業者にとって自明であり、発明の課題を解決することはできない。
また、加圧下での吸水速度AUP(10min)及び加圧下での吸水速度AUP(60min)の絶対値が低い吸水性樹脂では、吸水を始めてから時間が経過しても吸水速度AUPは大きくならない。このため、たとえば、加圧下での吸水速度AUP(10min)が0.7g/g及び加圧下での吸水速度AUP(60min)が1g/gの吸水性樹脂等、吸水速度AUPの絶対値が低い吸水性樹脂では、数式2を満たすことも十分に起こり得る。係る吸水速度AUPの絶対値が低い吸水性樹脂は、「初期吸水性に劣り、長時間経過後も、加圧状態で水分が滲み出る、吸水能に劣った吸水性樹脂」であることは当業者にとって自明であり、このような吸水性樹脂は、発明の課題を解決することはできない(特許異議申立書の第68ないし70ページの「(6)理由6」を参照。)。
(3)本件特許発明1は、数式1で表されるスパン値(SPAN)によって規定されるものであるが、スパン値(SPAN)を求める前提となる高吸水性樹脂自体の「粒径」について特定されていない。
ところで、本件特許明細書の記載によれば、本件特許の吸水性樹脂は粒子径300?600μmのフラクションを主成分としており、実施例1?3(ベースポリマーBP-1、BP-2;粒子径300?600μmが61.62重量%、68.62重量%であり、粒子径600μm以上が15.57重量%、17.57重量%)では、表面架橋を行うことによって、数式2の条件が満たされ、一方、比較例1及び2(ベースポリマーBP-3;粒子径300?600μmが41.43重量%であり、粒子径600μm以上が27.27重量%)では、表面架橋を行っても、数式2の条件を満たさないことが示されている。
ここで、特許異議申立書に添付された甲第9号証(Modern Superabsorbent Polymer Techonology p58?60,p69?74,p97?103,p215、WILEY-VCH、Fredric L.Buchholz、Andrew T.Graham)のp215のFig.5.27に示されているように、吸水性樹脂の加圧下での吸水倍率AULの時間依存性は、吸水性樹脂の粒子径と強い相関関係があることは当業者にとって技術常識である。そして、甲第9号証のp215のFig.5.27及び本件特許発明1の数式2から、粒子径とARULとの関係は「粒子径45?50mesh(粒子径約350?約300μmに相当)ならばARUL(=ARU(10min)/AUL(60min))=0.96」、「粒子径25?30mesh(粒子径約700?約600μmに相当)ならばARUL=0.65」、「粒子径80?100mesh(粒子径約180?約150μmに相当)ならばARUL=1.0」であることがわかる。
すなわち、粒子径600μm以上の吸水性樹脂以外の吸水性樹脂は、数式2を満たし、粒子径600μm以上の吸水性樹脂では、その比表面積が小さくなることから、吸水速度が遅くなり、初期のARULが低くなることがわかる。
したがって、ARULを高めるためには、粒子径600μm以上の吸水性樹脂の割合を減少させればよいことがわかる。つまり、吸水性樹脂において、粒子径600μm以上の吸水性樹脂の割合を減少させると、数式2を満たすことは、当業者にとって技術常識である。
しかし、上記のとおり、本件特許発明1は、数式1で表されるスパン値(SPAN)によって規定されるものであり、スパン値(SPAN)を求める前提となる高吸水性樹脂自体の「粒径」について特定されていないから、数式2を満たさない粒子径600μm以上のフラクションが多い吸水性樹脂を包含している。そして、このような吸水性樹脂は、発明の課題を解決することはできない(特許異議申立書の第71ないし72ページの「(7)理由7」を参照。)。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。
請求項1を引用する本件特許発明2ないし15についても同様である。
3 取消理由3(実施可能要件)について
本件特許発明1は、加圧下での吸水速度の条件が、1.0>ARUL>0.8を満足するものを包含するものであるが、発明の詳細な説明には、何をどのように制御すれば、1.0>ARUL>0.8を満足させる高吸水性樹脂を製造することができるのか、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない(特許異議申立書の第65及び66ページの「(2)理由2」及び「(3)理由3」を参照。)。
請求項1を引用する本件特許発明2ないし15についても同様である。」

3 取消理由についての判断
(1)取消理由1(新規性)について
ア 甲第1号証に基づく新規性について
(ア)甲第1号証の記載及び甲1発明
甲第1号証には、次の記載がある(下線は、当審で付した。他の文献についても同様。)。

・「【0138】
・・・(略)・・・
<参考例1>
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.0gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム 2.8g及びL-アスコルビン酸0.01gを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30℃?90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(A)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(A)100重量部に、プロピレングリコール0.5重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、1,4-ブタンジオール0.3重量部、及び水3重量部とからなる有機表面架橋剤を混合した。上記の混合物を200℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(1)を得た。この吸水性樹脂(1)の粒度分布を表1に、その他の物性を表2にまとめた。
<参考例2>
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.0gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム 2.8g及びL-アスコルビン酸0.01gを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30℃?90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(B)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(B)100重量部に、プロピレングリコール0.5重量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、1,4-ブタンジオール0.3重量部、及び水3重量部とからなる有機表面架橋剤を混合した。上記の混合物を200℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(2)を得た。この吸水性樹脂(2)の粒度分布を表1に、その他の物性を表2にまとめた。
・・・(略)・・・
〔比較例2〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(1)100重量部に対して、硫酸アルミニウム14?18水和物2重量部を粉体のまま添加混合し、吸水性樹脂組成物(5)を得た。この吸水性樹脂組成物(5)の粒度分布を表1に、その他の物性を表2にまとめた。
・・・(略)・・・
〔比較例4〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(1)100重量部に対して、硫酸アルミニウム14?18水和物の40.9重量%水溶液6.7重量部を添加混合し、吸水性樹脂組成物(7)を得た。この吸水性樹脂組成物(7)の粒度分布を表1に、その他の物性を表2にまとめた。」

・「【0139】
【表1】



甲第1号証の上記記載、特に参考例1、参考例2、比較例2及び比較例4に関する記載を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末を、プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール及び水とからなる表面架橋剤で表面架橋させた、特定の粒度分布を有する架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」(当審注:「特定の粒度分布」とは、【表1】の参考例1、参考例2、比較例2及び比較例4の項目に示された粒度分布のことである。)

(イ)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末」は、本件特許発明1における「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」に相当し、以下、同様に、「表面架橋剤」を構成する「プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール」は「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足する」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点(当審注:数式の摘記は省略する。以下、同様。)。

<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/g」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、相違点について、検討する。
相違点1-1ないし1-3のうち、相違点1-1に係る発明特定事項については、甲第5号証によると、甲1発明の認定の根拠となった参考例1、参考例2、比較例2及び比較例4も有しており、相違点1-1は実質的な相違点とはいえない。
しかし、相違点1-2に係る発明特定事項については、甲第5号証によると、上記参考例1、参考例2、比較例2及び比較例4は有していない。
したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。
よって、相違点1-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

イ 甲第2号証に基づく新規性について
(ア)甲第2号証の記載及び甲2発明
甲第2号証には、次の記載がある。

・「【0110】
〔参考例1〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)3.4gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム 2.46g及びL-アスコルビン酸0.10gを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30℃?90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は1?4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(a)を得た。
【0111】
得られた吸水性樹脂粉末(a)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤3.83質量部を混合した。上記の混合物を210℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(1)を得た。この吸水性樹脂(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布を表1、表2に示す。」

・「【0122】
〔実施例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部に、銀イオンで置換された二酸化ケイ素/酸化アルミニウムのモル比が1?15のゼオライト(商品名:ゼオミックAJ10N、シナネンゼオミック株式会社製、平均粒子径:2?3μm)を0.50質量部添加混合(ドライブレンド)することによって、吸水性樹脂組成物(1)を得た。」


・「【0146】
【表2】



甲第2号証の上記記載、特に実施例1に関する記載を整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末を、プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール及び水とからなる表面架橋剤で表面架橋させた、特定の粒度分布を有する架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」(当審注:「特定の粒度分布」とは、【表2】の参考例1の項目に示された粒度分布のことである。)

(イ)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明における「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末」は、本件特許発明1における「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」に相当し、以下、同様に、「表面架橋剤」を構成する「プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール」は「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、特定の粒度分布を有する架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1においては、「下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足する」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-2>
本件特許発明1においては、「下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/g」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-3>
本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、相違点について、検討する。
相違点2-1ないし2-3のうち、相違点2-1に係る発明特定事項については、甲第6号証によると、甲2発明の認定の根拠となった実施例1も有しており、相違点2-1は実質的な相違点とはいえない。
しかし、相違点2-2に係る発明特定事項については、甲第6号証によると、上記実施例1は有していない。
したがって、相違点2-2は実質的な相違点である。
よって、相違点2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、すなわち甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。

ウ 甲第3号証に基づく新規性について
(ア)甲第3号証の記載及び甲3発明
甲第3号証には、次の記載がある。

・「【0170】
[参考例2]
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度40質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.0gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、1分後に重合が開始した。重合開始後15分で重合ピーク温度93℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は1?4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと150μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(b)を得た。
【0171】
得られた吸水性樹脂粉末(b)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部を混合した。上記の混合物を熱媒温度210℃で45分間加熱処理することにより吸水性樹脂(2)を得た。」

・「【0184】
[参考例9]
参考例2で得られた含水ゲル状重合体の乾燥物を、参考例2と同様のロールミルを用いて参考例2より粗くなる粉砕条件に設定して粉砕し、さらに目開き850μmと106μmの金網で分級・調合することで不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(i)を得た。
【0185】
次いで、得られた吸水性樹脂粉末(i)100質量部に、参考例2と同様の表面架橋剤3.53質量部を混合した。上記の混合物を、熱媒温度210℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(9)を得た。」

・「【0190】
[実施例2]
参考例2で得られた吸水性樹脂(2)100質量部に、ジエチレントリアミン5酢酸水溶液を2質量部、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムが吸水性樹脂(2)に対して50ppmとなるように噴霧混合した。得られた混合物を60℃で1時間硬化し、吸水剤(2)を得た。吸水剤(2)を実施例1と同様に評価し、結果を表2?4に示した。なお、水性液の噴霧混合および硬化工程を経たことによって、得られた吸水剤(2)は造粒されていた。」

・「【0197】
[比較例1]
実施例2において、参考例2で得られた吸水性樹脂(2)を参考例9で得られた吸水性樹脂(9)に変えた以外は同様の操作を行い、比較用吸水剤(1)を得た。比較用吸水剤(1)を実施例1と同様に評価し、結果を表2?4に示した。なお、水の噴霧混合および硬化工程を経たことによって、得られた比較用吸水剤(1)は造粒されていた。」

・「【0228】
【表2】



甲第3号証の上記記載、特に比較例1に関する記載を整理すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末を、プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール及び水とからなる表面架橋剤で表面架橋させた、特定の粒度分布を有する架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」(当審注:「特定の粒度分布」とは、【表2】の比較例1の項目に示された粒度分布のことである。)

(イ)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明における「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末」は、本件特許発明1における「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」に相当し、以下、同様に、「表面架橋剤」を構成する「プロピレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオール」は「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては、「下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足する」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されてない点。

<相違点3-2>
本件特許発明1においては、「下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/g」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されてない点。

<相違点3-3>
本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されてない点。

そこで、相違点について、検討する。
相違点3-1ないし3-3のうち、相違点3-1に係る発明特定事項については、甲第7号証によると、甲3発明の認定の根拠となった比較例1も有しており、相違点3-1は実質的な相違点とはいえない。
しかし、相違点3-2に係る発明特定事項については、甲第7号証によると、上記比較例1は有していない。
したがって、相違点3-2は実質的な相違点である。
よって、相違点3-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明、すなわち甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。

エ 甲第4号証に基づく新規性について
(ア)甲第4号証の記載及び甲4発明
甲第4号証には、次の記載がある。

・「【0172】
〔参考例1〕
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.3gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1?4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)の粒度分布を表2に示す。
【0173】
〔参考例2〕
参考例1において乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmの金網で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(b)を得た。得られた吸水性樹脂(b)の粒度分布を表2に示す。」

・「【0179】
〔比較例3〕
参考例2で得られた吸水性樹脂(b)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された比較用吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋された比較用吸水性樹脂(3)をさらに目開き850μmのふるいを通過させることにより、比較用粒子状吸水剤(3)を得た。比較用粒子状吸水剤(3)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。」

・「【0194】
【表2】



甲第4号証の上記記載、特に比較例3に関する記載を整理すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。

「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末を、エチレンカーボネート、グリセリン及び水からなる表面架橋剤で表面架橋させた、特定の粒度分布を有する架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」(当審注:「特定の粒度分布」とは、【表2】の比較例3の項目に示された粒度分布のことである。)

(イ)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明における「75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液にポリエチレングリコールジアクリレートを溶解し反応液とし、重合させて得た吸水性樹脂粉末」は、本件特許発明1における「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」に相当する。
また、甲4発明における「表面架橋剤」を構成する「グリセリン」は、本件特許発明1における「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂。」

そして、両者は、次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足する」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されてない点。

<相違点4-2>
本件特許発明1においては、「下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/g」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されてない点。

<相違点4-3>
本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されてない点。

そこで、相違点について、検討する。
相違点4-1ないし4-3のうち、相違点4-1に係る発明特定事項については、甲第8号証によると、甲4発明の認定の根拠となった比較例3も有しており、相違点4-1は実質的な相違点とはいえない。
しかし、相違点4-2に係る発明特定事項については、甲第8号証によると、上記比較例3は有していない。
したがって、相違点4-2は実質的な相違点である。
よって、相違点4-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明、すなわち甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。

(2)取消理由2(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(平成17年(行ケ)第10042号同年11月11日知財高裁特別部判決参照。)。

そこで、検討する。
本件特許発明1ないし15は、数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であること、数式2で表される加圧状態での吸水速度ARULが0.70より大きく1.0未満であること、数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/gであること及びベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含むことによって、規定されるものである。
他方、本件特許明細書の【0007】及び【0008】によると、本件特許発明1ないし15の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「高吸水性樹脂の表面処理を通じて、物性に優れていながら、特に初期吸水性に優れ、長時間経過後も、加圧状態で水分がほとんど滲み出ることなく、吸水能に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する」こと及び「吸水速度が速く、着用感が同時に優れた高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する」ことである。
そして、本件特許明細書の【0040】には「前記数式1で表されるスパン値が1.2以上の場合、粒度分布が均一でなく、物性の低下および粉塵の飛散現象の問題を引き起こす。また、前記数式2で表される加圧(荷重)下の吸水速度(ARUL)の条件が0.7未満の場合、加圧下の吸水速度が低下して、最終衛生製品において十分な吸水力を有することができず、水分が滲み出る問題がある。」、【0042】には「つまり、前記ベースポリマーの分級後、このようなベースポリマーの粒度分布が150?850ミクロンの場合に、本発明で実現しようとする優れた物性を示すことができる。具体的には、本発明は、300?600ミクロンのベースポリマーの含有量が高くてこそ、高吸水性樹脂の粒度および物性を向上させることができる。例えば、300?600ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約50重量%以上、あるいは約60重量%以上、例えば、約50?80重量%で含まれ、600?850ミクロンおよび150?300ミクロンのベースポリマーが、全体ベースポリマーに対して約7重量%以上、あるいは約10重量%以上、例えば、7?20重量%で含まれるように分級されたベースポリマーを得て、これを用いて高吸水性樹脂を製造することにより、本発明の優れた物性を達成することができる。」と記載され、【0120】及び【0121】には、スパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、ARULが0.70より大きく1.0未満であり、AUP(60min)が24.4g/g?25.1g/gである実施例1ないし4が、既存と同等以上の物性を示すことが記載されている。
そして、本件特許発明1ないし15は、高吸水性樹脂の「AUP」の絶対値が特定され、スパン値(SPAN)を求める前提となる高吸水性樹脂の「粒径」の分布が特定されていることから、本件発明の課題が解決できない範囲を包含するものではない。
したがって、本件特許発明1ないし15が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし15に関して、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえる。

(3)取消理由3(実施可能要件)について
物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産及び使用をすることができる程度の記載を要する。
また、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用及びその方法により生産された物の使用をすることができる程度の記載を要する。

そこで、検討する。
本件特許明細書の【0040】の「前記数式1で表されるスパン値が1.2以上の場合、粒度分布が均一でなく、物性の低下および粉塵の飛散現象の問題を引き起こす。また、前記数式2で表される加圧(荷重)下の吸水速度(ARUL)の条件が0.7未満の場合、加圧下の吸水速度が低下して、最終衛生製品において十分な吸水力を有することができず、水分が滲み出る問題がある。この時、前記ARUL数値に影響を与える要素としては、架橋重合体の架橋密度、表面処理密度、ベースポリマーの均一な粒度、表面処理剤の均一な分布などがある。したがって、本発明では、前記ARUL値が上述した化学式2の条件に符合するようにすることが重要であり、このために、後述する方法によって表面処理された架橋重合体を高吸水性樹脂として使用することが好ましい。」という記載から、当業者は、架橋重合体の架橋密度、表面処理密度、ベースポリマーの均一な粒度、表面処理剤の均一な分布等の因子を変化させることによって、ARUL値を変化させられることを理解することができる。
また、本件特許明細書の【0088】ないし【0097】には、実施例1ないし4として、所定の粒度分布を有するベース樹脂及び所定の濃度で所定の種類の表面架橋剤を使用し、15°の噴射角度で表面処理溶液を噴射し、130℃の温度で40分間表面架橋させることによって、0.75?0.8のARULを実現した高吸水性樹脂を製造することができたことが記載され、これらの記載から、当業者は、以下の傾向を示すことを理解することができる。
・実施例1と実施例2(実施例2では、表面架橋剤の含有量が実施例1よりも高くなっている。)の比較及び実施例3と実施例4(実施例4では、表面架橋剤の含有量が実施例3よりも高くなっている。)の比較から、表面架橋剤の含有量が高い場合にはARULの値は小さくなり、逆に表面架橋剤の含有量が低い場合にはARULの値は大きくなるという傾向がある。
・実施例1と実施例3(使用するベース樹脂の粒度分布が異なる。)の比較及び実施例2と実施例4(使用するベース樹脂の粒度分布が異なる。)の比較から、ARULの値がベース樹脂の粒度分布によって影響を受けていること、具体的には、300?600μmの粒度を有し、粒度分布が均一である粒子を多く含む方がARULの値が大きくなるという傾向がある。
以上より、例えば、実施例1と同一のSPAN値を有していたとしても、ベース樹脂の粒度分布の均一性を変化させること(すなわち300?600μmの粒度を有する粒子の含有量を増やすこと)や表面架橋剤の含有量を減少させることなどにより、実施例1で実現した0.8を越えて1.0に近い値のARULの値を有する樹脂を製造できることを、当業者は理解することができる。
また、例えば、実施例4と同一のSPAN値を有していたとしても、ベース樹脂の粒度分布の均一性を変化させること(すなわち300?600μmの粒度を有する粒子の含有量を減らすこと)、表面架橋剤の含有量を増加させること又は表面架橋温度と高くして表面架橋度を高くすることなどにより、実施例4で実現した0.75よりも小さく7.0に近い値のARULの値を有する樹脂を製造できることを、当業者は理解することができる。
したがって、発明の詳細な説明に、本件特許発明1及び2の「高吸水性樹脂」の発明について、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用をすることができる程度の記載があるといえ、また、本件特許発明3ないし15の「高吸水性樹脂の製造方法」の発明について、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造する方法及びその方法により生産された物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし15の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものである。

(4)取消理由についての判断のまとめ
したがって、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、取消理由によっては、取り消すことはできない。

なお、平成30年8月28日に特許異議申立人から提出された意見書、参考資料1(甲第3号証の実施例1を追試した実験成績証明書)及び参考資料2(甲第4号証の実施例11を追試した実験成績証明書)を検討したが、上記判断は左右されない。そもそも、上記意見書の主張は、実質的に新たな内容を含むものであるし、参考資料1及び2によれば、甲3の実施例1及び甲4の実施例11は、本件特許発明1のスパン値の条件を満足していない。

4 特許異議申立理由のうち、取消理由で採用しなかった申立理由について
特許異議申立理由のうち、取消理由で採用しなかった申立理由について、以下、検討する。

(1)本件特許発明1ないし15に対しての甲第1ないし4号証のそれぞれに基づく進歩性違反
ア 甲第1号証に基づく進歩性違反
本件特許発明1と甲1発明を対比するに、両者は、相違点1-1ないし1-3の点で相違する。
そして、甲第1号証には、甲1発明において、相違点1-1に係る発明特定事項を採用した上で、相違点1-2に係る発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
したがって、相違点1-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件特許発明2ないし15は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 甲第2号証に基づく進歩性違反
本件特許発明1と甲2発明を対比するに、両者は、相違点2-1ないし2-3の点で相違する。
そして、甲第2号証には、甲2発明において、相違点2-1に係る発明特定事項を採用した上で、相違点2-2に係る発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
したがって、相違点2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明、すなわち甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件特許発明2ないし15は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 甲第3号証に基づく進歩性違反
本件特許発明1と甲3発明を対比するに、両者は、相違点3-1ないし3-3の点で相違する。
そして、甲第3号証には、甲3発明において、相違点3-1に係る発明特定事項を採用した上で、相違点3-2に係る発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
したがって、相違点3-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3発明、すなわち甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件特許発明2ないし15は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 甲第4号証に基づく進歩性違反
本件特許発明1と甲4発明を対比するに、両者は、相違点4-1ないし4-3の点で相違する。
そして、甲第4号証には、甲4発明において、相違点4-1に係る発明特定事項を採用した上で、相違点4-2に係る発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
したがって、相違点4-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明、すなわち甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
本件特許発明2ないし15は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)請求項1に記載された「スパン値(SPAN)」を求めるのに必要な粒子径を「レーザー粉砕機」で測定することに関する実施可能要件違反
請求項1に記載された「スパン値(SPAN)」に関して、本件特許明細書の【0039】に「この時、前記粒子サイズ分布は、「SPAN」として知られているパラメータによって計算できる。したがって、前記スパン(SPAN)は、製造された高吸水性樹脂の粒子サイズ分布により測定できる。前記数式1においては、Dは、「μm」で表される高吸水性樹脂の粒子径であり、レーザー粉砕機で測定できるが、これに限定されない。」と記載されているが、測定条件は記載されていない。
確かに、レーザー粉砕機でどう測定するのかは不明であるが、それに限定されない旨の記載があるし、実施例では、篩いで分級した後、調合しており、本件特許明細書の【0105】によると、EDANA法WSP220.2の粒度分析方法により測定しており、本件特許発明1ないし15について、当業者が、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、実施をすることができる程度の記載があるといえる。

(3)請求項1の「表面架橋させた」という記載がプロダクト・バイ・プロセスクレームに該当する旨の明確性違反
請求項1の「表面架橋させた」という記載は、単に「表面架橋」させているという状態を示すことにより、構造又は特性を特定しているにすぎない。
したがって、請求項1に記載された事項により特定される本件特許発明1及び請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし15に関して、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「例えば、甲第9号証の§2.7.3(p58?60;特にScheme 2.5,2.6)、§3.2.2.1(p69?74;特にFigure 3.1)および§3.2.8.1(p97?103;特にTable 3.6)には、請求項1の構成Dに記載の表面架橋剤である「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物(代表的には、エチレングリコール)」と、吸水性樹脂の分野で汎用的に使用される表面架橋剤である「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物の環状炭酸エステル(いわゆるアルキレンカーボネート、代表的にはエチレンカーボネート)」とでは、同じ表面架橋構造を与えることが記載されている。
よって、善意の当業者(第三者)は、請求項1に記載の構成を満足する吸水性樹脂を仮に入手しても、当該吸水性樹脂が「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂」であるのか、「炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物の環状炭酸エステルで表面架橋させた、架橋重合体を含む高吸水性樹脂」であるのかを判別しようがない。それゆえ、善意の当業者(第三者)は、本件特許を実施ないし回避することが不可能である。」旨主張する。しかしながら、甲第9号証には、「同じ表面架橋構造を与えること」は記載されているとはいえないし、仮に「同じ表面架橋構造を与えること」が記載されていたとしても、架橋剤の種類にかかわらず、架橋構造が同じになる場合を当業者が理解できるものは、請求項1に記載の「表面架橋させた」状態にあたることは明らかであるから、上記主張は明確性違反の理由とはならない。

(4)特許異議申立理由のうち、取消理由で採用しなかった申立理由についてのまとめ
したがって、特許異議申立理由のうち、取消理由で採用しなかった申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。

第5 結語
上記第4のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の数式1で表されるスパン値(SPAN)が1.0以上1.1以下であり、
下記の数式2で表される加圧状態での吸水速度の条件を、同時に満足することを特徴とする、高吸水性樹脂であり、
前記高吸水性樹脂は、下記の数式2のAUP(60min)が24.4g/g?25.1g/gであり、
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み、少なくとも一部が中和した水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物で表面架橋させた、架橋重合体を含み、
前記ベース樹脂は、300?600ミクロンの粒径を有するベース樹脂を50重量%以上含む、高吸水性樹脂。
【数11】

前記数式1において、
D(90%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が90%となる粒子径であり、
D(10%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が10%となる粒子径であり、
D(50%)は、粒子径の順において最も小さい粒子から累積が50%となる粒子径であり、
【数12】

前記数式2において、
ARULは、加圧下での吸水速度(Absorbing rate under load)であり、AUP(10min)は、10分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)値であり、AUP(60min)は、60分まで加圧時の、下記の数式3で表される加圧吸水能値であり、
【数13】

前記数式3において、
Wa(g)は、吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和であり、
Wb(g)は、荷重(0.7psi)下、10分または60分の所定時間の間、前記吸水性樹脂に水分を供給した後の水分の吸収した吸水性樹脂の重量、および前記吸水性樹脂に荷重を付与可能な装置重量の総和である。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含むモノマー組成物を形成する段階と、
重合反応器で前記モノマー組成物を重合して含水ゲル重合体を製造する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階と、
前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、
前記分級された含水ゲル重合体それぞれに水および表面架橋剤を含む表面処理溶液を噴射して、含水ゲル重合体の表面を処理する段階とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法であって、
前記表面処理溶液は、噴射装置の油圧ノズルから10°?30°の角度に調節して、分級された含水ゲル重合体が分布した基板に噴射される製造方法。
【請求項4】
記表面架橋剤は、炭素数2?8のジオールまたはグリコール系化合物を使用することを特徴とする、請求項3に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理溶液には、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールからなる群より選択された1種以上の有機溶媒をさらに含むことを特徴とする、請求項3または4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記表面架橋剤は、全体表面処理溶液に対して0.1?10重量%で含むことを特徴とする、請求項3?5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記表面を処理する段階において、
分級された含水ゲル状重合体を1つの表面架橋反応器に供給し、
120?250℃の温度で、10分?120分間、含水ゲル重合体の表面架橋反応を進行させる段階を含むことを特徴とする、請求項3?6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕する段階において、
乾燥した含水ゲル重合体を、粒度が150?850μmとなるように粉砕を進行させることを特徴とする、請求項3?7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記分級する段階において、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、および粒度150μm以上850μm以下の粒子の2分に分級する段階、
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、および粒度300μm以上850μm以下の粒子の3分に分級する段階、または
粉砕された含水ゲル重合体を、粒度150μm未満の粒子、粒度150μm以上300μm未満の粒子、粒度300μm以上600μm未満の粒子、および粒度600μm以上850μm以下の粒子の4分に分級する段階を含むことを特徴とする、請求項3?8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記含水ゲル重合体の表面を処理した後に、含水ゲル重合体を粉砕し、粒度150?850μmの粒子に分級する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3?9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記含水ゲル重合体の乾燥段階の前に、重合された後の含水ゲル重合体を、粒度が1mm?15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項3?10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記重合は、UV重合または熱重合を進行させることを特徴とする、請求項3?11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、
アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、または(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項3?12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記重合開始剤は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化物開始剤、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンジル、およびその誘導体からなる群より選択されるいずれか1つであることを特徴とする、請求項3?13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
モノマー組成物は、架橋剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3?14のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-16 
出願番号 特願2015-508860(P2015-508860)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飛彈 浩一芦原 ゆりか平井 裕彰  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
渕野 留香
登録日 2017-07-28 
登録番号 特許第6182206号(P6182206)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 高吸水性樹脂およびその製造方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 実広 信哉  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
代理人 実広 信哉  

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