• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1348314
審判番号 不服2017-11705  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-04 
確定日 2019-01-23 
事件の表示 特願2015-556120「テープ経路を跨いで横方向に配置された光ピックアップユニットを有する光ピックアップアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月7日国際公開、WO2014/120859、平成28年3月24日国内公表、特表2016-509329〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)1月31日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月21日 :手続補正書の提出
平成28年 9月 2日付け:拒絶理由通知書
同年12月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月30日付け:拒絶査定
同年 8月 4日 :審判請求書の提出
同年 9月21日 :手続補正書(請求の理由)の提出

第2 本願発明
平成28年12月6日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、各構成の符号(A)ないし(H)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成Aないし構成Hと称する。

(本願発明)
(A)光ピックアップアセンブリであって、
(B)隣接している第1および第2の区画を有するハウジングを備え、前記第1の区画は、前記ハウジングの最上部内に収容され、前記第2の区画は、前記ハウジングの底部内に収容され、前記第1および第2の区画は、前記ハウジング内で互いに隣接しており、
(C)第1の対物レンズと、第1の送信光路と、第1のレーザ源と、第1の受信光路と、第1の光検出器と、第1のビームスプリッタとを有する第1の光ピックアップユニットを備え、前記第1の送信光路および受信光路は、前記第1のビームスプリッタと前記第1のレーザ源と前記第1の光検出器との間にそれぞれ別々に互いから延びており、
(D)第2の対物レンズと、第2の送信光路と、第2のレーザ源と、第2の受信光路と、第2の光検出器と、第2のビームスプリッタとを有する第2の光ピックアップユニットを備え、前記第2の送信光路および受信光路は、前記第2のビームスプリッタと前記第2のレーザ源と前記第2の光検出器との間にそれぞれ別々に互いから延びており、
(E)前記第1の送信光路および受信光路ならびに前記第1のビームスプリッタが前記ハウジングの前記第1の区画内に含まれ、前記第2の送信光路および受信光路ならびに前記第2のビームスプリッタが前記ハウジングの前記第2の区画内に含まれる状態で、前記第1および第2の光ピックアップユニットは、前記ハウジングにおいて一体化され、
(F)前記第1および第2の光ピックアップユニットは、長手方向に延びるテープ経路を跨いで互いの横方向上方に配置され、
(G)前記第1および第2の光ピックアップユニットの同一の長手方向位置において、前記第1および第2の光ピックアップユニットのうちの一方の前記対物レンズが、前記第1および第2の光ピックアップユニットのうちの他方の前記対物レンズよりも、前記テープ経路を跨いで横方向上方にあり、
(H)前記第1および第2の光ピックアップユニットは両方とも、前記テープ経路に沿った同一の長手方向位置に位置決めされる、
(A)光ピックアップアセンブリ。

第3 先願
1 先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に出願された特許出願であって、本願の優先日後に出願公開がされた特願2012-42923号(特開2013-65388号公報)(出願日:平成24年2月29日、出願人:パナソニック株式会社、発明者:家木浩二)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。(以下、下線は当審で付した。)

「【0001】
本発明は光ピックアップ装置および光ピックアップユニットに関する。また、本発明は、当該光ピックアップ装置を備えるデータストリーマ装置に関する。」

「【0036】
更に、データストリーマ装置は、走行する光テープ4に対して光学的にアクセスする光ピックアップユニット60を備えている。光ピックアップユニット60は、光テープ4の走行方向に沿って配列された複数の光ピックアップ装置6を有している。個々の光ピックアップ装置6の構造について、詳細は後述する。本実施形態における光ピックアップユニット60は、上段および下段の各々に複数の光ピックアップ装置6を有している。なお、光ピックアップユニット60は、このような構成に限定されない。各光ピックアップ装置6は、光ビームを発する光源と、光ビームをテープ4上に収束する対物レンズと、対物レンズを駆動するレンズアクチュエータと、光テープ4からの反射光を検知して必要な信号を生成する光検出器などを備えている。光ピックアップ装置4は、配線を介して不図示の回路基板に接続されている。回路基板には、光ピックアップ装置6やモータ2、3を制御するための回路ブロックが設けられている。」

「【0045】
図3Aに示されるように、テープ4のトラックの延びる方向(トラック方向またはテープ走行方向)をX方向、テープ4の幅方向をY方向とする。また、X方向およびY方向の両方に垂直な方向(図3Aの紙面に垂直な方向)をZ方向とする。光ピックアップ装置6の対物レンズ8が光テープ4の記録面に形成する光スポットは、光テープ4がX方向(+X方向および-X方向の両方を含む)に沿って走行するとき、目的とするトラックを追従する必要がある。このために、前述したフォーカス制御およびトラッキング制御が行われる。フォーカス制御は、図3Aの紙面に垂直な方向(Z方向)に対物レンズ8の位置を調整することによって実行される。一方、トラッキング制御は、対物レンズ8の位置をY方向に調整することによって実行される。このため、図3Aの紙面に垂直な方向を「フォーカス方向」、Y方向に垂直な方向を「トラッキング方向」と称する場合がある。」

「【0051】
1-3.光ピックアップ装置
図5は、本実施形態における光ピックアップ装置6の構成例を示す斜視図である。この光ピックアップ装置6は、1つの光学ベース20と、この光学ベース20の上面に固定された2つのレンズアクチュエータ9a、9bとを備えている。言い換えると、この光ピックアップ装置6では、独立して対物レンズ8a、8bを駆動することができる2つの光ピックアップが一体化されている。図3Aに示されている構成は、各々が図5に示す構成を有する12個の光ピックアップ装置6を用いて実現することができる。なお、図5には、破線で光テープ4のエッジが記載されている。複数の光ピックアップ装置6を図5に示すテープ走行方向に沿って配列する場合、1つの光テープ4に対して、対物レンズ8a、8bがカバーするトラック範囲を光ピックアップ装置毎に変えることが効率的である。」

「【0053】
図5の光ピックアップ装置6では、光テープ4の記録面に対して平行に2個の対物レンズ8a、8bが備えられる。2個の対物レンズ8a、8bのトラッキング方向(Y方向)における中心間の距離は、4?8mmの範囲内にあり、例えば約6mmに設定され得る。2個の対物レンズ8a、8bは、それぞれ、光テープ4の記録面上の別のトラック上に光ビームのスポットを形成し、各トラックを追従して記録、再生を行う。2個の対物レンズ8a、8bの位置は、それぞれ、対応する2個のレンズアクチュエータ9a、9bによって、独立してフォーカス方向およびトラッキング方向に制御される。光学ベース部20には、2つの対物レンズ8a、8bの各々によって集光される光ビームを出射するレーザが内蔵されている。」

「【図3A】



「【図5】



2 先願明細書等に記載の技術的事項
上記(1)に摘記した記載、及び、この分野における技術常識から、先願明細書等には、以下(ア)ないし(カ)の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)段落0051の記載から、「2つの光ピックアップが一体化されている光ピックアップ装置」が記載されている。

(イ)段落0036、0051の記載から、「前記光ピックアップ装置は、1つの光学ベースと、この光学ベースの上面に固定され、対物レンズを駆動する2つのレンズアクチュエータとを備えること」が記載されている。

(ウ)段落0036、0053の記載から、「光ピックアップ装置は、2つの対物レンズと、前記2つの対物レンズの各々によって集光される光ビームを出射するレーザと、反射光を検知する光検出器とを備えること」が記載されている。
ここで、先願明細書等には、上記レーザ源及び光検出器を含む光ピックアップのその余の構成については記載されていないが、光ピックアップの構成として「対物レンズ、レーザ、光検出器及びビームスプリッタを有し、前記レーザから出射されたレーザ光はビームスプリッタで反射されて対物レンズを経て光記録媒体に達し、光記録媒体から反射されたレーザ光は対物レンズを経てビームスプリッタを通過して光検出器に導かれる構成」(以下、「光ピックアップの当該構成」という。)は、特開平10-27353号公報及び米国特許出願公開第2012/0320727号明細書に以下(ウ-1)及び(ウ-2)のとおり記載されているように、本件の優先日前における技術常識と認められるから、先願明細書等に記載の2つの光ピックアップの各々には、上記「光ピックアップの当該構成」が備わっているものと認められる。

(ウ-1)特開平10-27353号公報の記載事項
「【0019】図1で見て左側に位置するピックアップ部6は、後述する各種の光学部品を有する光学ブロック10と、対物レンズ11を支持した二軸アクチュエータ12と、を備え、図1で見て右側に位置するピックアップ部7は、後述する各種の光学部品を有する光学ブロック13と、対物レンズ14を支持した二軸アクチュエータ15と、を備えている。そして、ピックアップ部6は、CDのフォーマットに対応しその再生に係るものであり、ピックアップ部7は、高密度記録型光ディスクのフォーマットに対応しその再生に係るものであり、ピックアップ部6,7は装置1に装着されたCD又は高密度記録型光ディスクに対応して択一的に駆動するようにされている。
【0020】CD再生用の光学ブロック10は、半導体レーザ16と、ビームスプリッタ17と、光検出器18と、を含む各種の光学部品により構成されている。また、高密度記録型光ディスク再生用の光学ブロック11は、半導体レーザ19と、ビームスプリッタ20と、光検出器21と、を含む各種の光学部品により構成されている。」

「【0026】光学ブロック10の半導体レーザ16からビームスプリッタ17に向けてレーザ光が出射され、このレーザ光はビームスプリッタ17によって上方へ向けて反射される。上方へ向けて反射されたレーザ光は二軸アクチュエータ12の対物レンズ11へ向かい、この対物レンズ11により集光性を与えられてその上方に位置する光学記録媒体4、即ち、CDの記録面に達する。」

「【0029】CDの記録面に照射されたレーザ光はこの記録面で反射され再び対物レンズ11を経てビームスプリッタ17へ向かい、このビームスプリッタ17を通過して光検出器18に導かれてCDに記録された記録信号の読み取りが為され、この記録信号に応じた再生信号が図示しない再生回路へ出力されCDの再生が行われる。」

「【図1】



(ウ-2)米国特許出願公開第2012/0320727号明細書の記載事項
「[0099] FIG. 4A illustrates the arrangement of an optical system for an optical pickup according to this embodiment. This optical pickup may be used in not only the optical data streamer apparatus described above but also any other optical read/write apparatus as well. Particularly, this optical pickup can be used to write data on an optical storage medium in which multiple information storage layers are stacked one upon the other. For that reason, in the following description, this embodiment will be described more generally as being applied to an “optical storage medium 7" including a multilayer optical disc, instead of the optical tape 505.
[0100] An optical pickup according to this embodiment includes a laser light source 1 with first and second emission points 1a and 1b, an optical modulator 10 which records a signal mark (i.e., forms a recorded mark) on the optical storage medium 7, a diffractive element 2 which diffracts the light that has come from the laser light source 1 and which branches it into a zero-order light beam and ±first-order light beams, an objective lens 6 which condenses the diffracted light onto the optical storage medium 7, and a photodetector 9 which receives the light that has been reflected from the optical storage medium 7. With this optical pickup, while data is being written on the optical storage medium 7 with the light that has been emitted from the emission point 1a, a read signal can be obtained from the optical storage medium 7 with the light that has been emitted from the emission point 1b. Part or all of the optical modulator 10 may be arranged outside of the optical pickup.」
(当審による仮訳:
[0099]図4Aは本実施例における光ピックアップの光学系の配置を示す。この光ピックアップは上記光データストリーマ装置に限らず他の光学読取/書込装置にも使用可能である。特に、この光ピックアップは複数の情報記録層が積層した光記録媒体へのデータ書込に使用可能である。そのため、以降において本実施例は光テープ505に代わりより一般に多層光ディスクを含む“光記録媒体7”に適用されるように説明する。
[0100]本実施例の光ピックアップは、第1及び第2の発光点1a及び1bを有するレーザ光源1、光記録媒体7に信号マークを記録(すなわち記録マークを形成)する光変調器10、レーザ光源1からの光を回折し0次光ビームと±1次光ビームに分岐する回折要素2と、回折光を光記録媒体7に集光する対物レンズ6と、光記録媒体7からの反射光を受ける光検出器9とを含む。この光ピックアップでは、発光点1aからの光で光記録媒体7に書き込む間に、発光点1bからの光で光記録媒体7から信号を読み出すことができる。光変調器の一部又は全部が光ピックアップの外側に配置される。)

「[0106] In the example illustrated in FIG. 4A, each of the light beams that have been emitted from the emission points 1a and 1b is diffracted and branched by the diffractive element 2 into a zero-order light beam and ±first-order light beams as described above. These branched light beams pass through the polarization beam splitter 3 and are transformed into parallel light beams by the collimator lens 4. After that, those parallel light beams are transmitted through the wave plate 5 to turn into circularly polarized light beams and then condensed by the objective lens 6, thereby leaving respective light beam spots on the information storage layer of the optical storage medium 7. On the way back, the light that has been reflected from the optical storage medium 7 is transmitted through the objective lens 6 and the wave plate 5 to be transformed into plane polarized light, of which the polarization direction is perpendicular to the one on the way toward the optical storage medium. As a result, the reflected light is transmitted through the collimator lens 4 and reflected from the polarization beam splitter 3. After that, the reflected light is given astigmatism by the condenser lens 8 and then incident on the photodiodes on the photodetector 9. In FIG. 4A, the tracking direction of the optical storage medium 7 is supposed to be the direction coming out of the paper.」
(当審による仮訳:
[0106]図4Aの例では、上記したように、発光点1a及び1bから発光した各光ビームは回折要素2により回折され、0次光ビーム及び±1次光ビームに分岐される。これらの分岐された光ビームは偏光ビームスプリッタ3を通過し、コリメータレンズ4により平行光ビームに変換される。その後、これらの平行光ビームは位相板5を通って円偏光された光ビームとなり、対物レンズ6により集光され、それにより光記録媒体7の情報記録層における各光ビームスポットは分離する。戻りでは、光記録媒体7からの反射光は対物レンズ6と位相板5を通り、偏光方向が光記録媒体に向かって直交する平面偏光となる。結果として、反射光はコリメータレンズ4を通り、偏光ビームスプリッタ3から反射する。その後、反射光は集光レンズ8で非点収差を与えられ光検出器9のフォトダイオードに入射する。図4Aにおいて光記録媒体7のトラッキング方向は本紙から出る方向とされる。)

「FIG.4A



(エ)段落0053の記載から、「レーザは光学ベースに内蔵されていること」が記載されている。また、上記(ウ)のとおり、光ピックアップ装置の2つの光ピックアップの各々は、上記「光ピックアップの当該構成」を備えているから、光学ベースには、前記レーザに加えて、「光検出器」及び「ビームスプリッタ」が内蔵されているものと認められる。
ここで、「光ピックアップの当該構成」において、レーザから出射されたレーザ光の「ビームスプリッタで反射されて対物レンズを経て光記録媒体に達し、光記録媒体から反射されたレーザ光は対物レンズを経てビームスプリッタを通過して光検出器に導かれる」構成を実現するには、レーザ光が干渉しないようにすることは技術常識であるから、2つの光ピックアップのレンズアクチュエータを上面に固定した光ベースの構成において、光ベースに内蔵する2組の「レーザ、光検出器及びビームスプリッタ」は、2つの対物レンズの各位置に対応したレーザ光が干渉しない位置に配置されているものと認められる。

(オ)段落0053に記載の「トラッキング方向(Y方向)」は、段落0045の「テープ4の幅方向をY方向とする」との記載から「テープの幅方向」でもある。そして、段落0036、0045、0053、図3Aの記載から、「前記2つのレンズアクチュエータの2つの対物レンズは、テープの幅方向(Y方向)における中心間の距離が所定の範囲に設定され、それぞれ光テープの記録面上の別のトラック上に光ビームのスポットを形成し、各トラックを追従して記録、再生を行うように配置されること」が記載されている。

(カ)段落0045、0051、図3A、図5の記載から、「前記光ピックアップ装置はテープ走行方向(X方向)に沿って配列されること」が記載されている。

3 先願発明
以上より、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、各構成の符号(a)ないし(g)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成aないし構成gと称する。

(a)2つの光ピックアップが一体化されている光ピックアップ装置であって、
(b)1つの光学ベースと、前記光学ベースの上面に固定され、対物レンズを駆動する2つのレンズアクチュエータとを備え、
(cd)前記2つの光ピックアップの各々は、対物レンズ、レーザ、光検出器及びビームスプリッタを有し、前記レーザから出射されたレーザ光はビームスプリッタで反射されて対物レンズを経て光記録媒体に達し、光記録媒体から反射されたレーザ光は対物レンズを経てビームスプリッタを通過して光検出器に導かれる構成を備え、
(e)前記レーザ、光検出器及びビームスプリッタは、前記光学ベースに内蔵されるとともに、2つの対物レンズの各位置に対応したレーザ光が干渉しない位置に配置され、
(f)前記2つのレンズアクチュエータの2つの対物レンズは、テープの幅方向(Y方向)における中心間の距離が所定の範囲に設定され、それぞれ光テープの記録面上の別のトラック上に光ビームのスポットを形成し、各トラックを追従して記録、再生を行うように配置され、
(g)前記光ピックアップ装置はテープ走行方向(X方向)に沿って配列される
(a)光ピックアップ装置。

第4 対比
本願発明と先願発明とを対比する。

(1)本願発明の構成Aについて
先願発明の構成aの「2つの光ピックアップが一体化されている光ピックアップ装置」は、複数の光ピックアップで構成されるものであるから、本願発明の構成Aの「光ピックアップアセンブリ」に相当する。

(2)本願発明の構成C及び構成Dについて
先願発明の構成cdの「レーザ」は、本願発明の構成C及び構成Dの「レーザ源」に相当する。また、先願発明の構成cdの「レーザからビームスプリッタへのレーザ光路」及び「ビームスプリッタから光検出器へのレーザ光路」は、本願発明の構成C及び構成Dの「送信光路」及び「受信光路」にそれぞれ相当し、かつ、両者はビームスプリッタにおいてそれぞれ反射及び通過するものであるから、別々の光路を形成するものである。そして、先願発明の構成cdの、前記「送信光路」及び「受信光路」を含む「対物レンズ、レーザ、光検出器及びビームスプリッタ」からなる構成は、本願発明の「光ピックアップユニット」に相当する。
したがって、先願発明の構成cdの、2つの光ピックアップの各々が「対物レンズ、レーザ、光検出器及びビームスプリッタを有し、前記レーザから出射されたレーザ光はビームスプリッタで反射されて対物レンズを経て光記録媒体に達し、光記録媒体から反射されたレーザ光は対物レンズを経てビームスプリッタを通過して光検出器に導かれる構成」を備えることは、本願発明の構成Cの「第1の対物レンズと、第1の送信光路と、第1のレーザ源と、第1の受信光路と、第1の光検出器と、第1のビームスプリッタとを有する第1の光ピックアップユニットを備え、前記第1の送信光路および受信光路は、前記第1のビームスプリッタと前記第1のレーザ源と前記第1の光検出器との間にそれぞれ別々に互いから延びており」及び構成Dの「第2の対物レンズと、第2の送信光路と、第2のレーザ源と、第2の受信光路と、第2の光検出器と、第2のビームスプリッタとを有する第2の光ピックアップユニットを備え、前記第2の送信光路および受信光路は、前記第2のビームスプリッタと前記第2のレーザ源と前記第2の光検出器との間にそれぞれ別々に互いから延びており」に相当する。

(3)本願発明の構成B及び構成Eについて
先願発明の構成b及び構成eの「光学ベース」は、「レーザ、光検出器及びビームスプリッタ」を内蔵する構造を有するから、本願発明の構成Bの「ハウジング」に相当する。
また、構成b及び構成eの「光学ベース」は、「レーザ、光検出器及びビームスプリッタ」を内蔵するから、これらの間のレーザ光路である「レーザからビームスプリッタまでのレーザ光路」及び「ビームスプリッタから光検出器までのレーザ光路」、すなわち「送信光路」及び「受信光路」も光学ベースに内蔵されることは明らかである。そして、先願発明は、レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路が、前記光学ベースに内蔵されるとともに、2つの対物レンズの各位置に対応したレーザ光が干渉しない位置に配置されるから、先願発明の2つの「レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路からなる構成」は、光学ベース内でレーザ光が干渉しないように区切られた2つの空間にそれぞれ位置するように配置されることは明らかである。よって、2つのうちの一方の対物レンズに対応した「レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路からなる構成」が位置する区切られた空間は、「第1の区画」といえ、2つのうちの他方の対物レンズに対応した「レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路からなる構成」が位置する区切られた空間は、「第2の区画」といえる。また、先願発明の光学ベース内で区切られた2つの空間は隣接しているといえるから、先願発明の2つの対物レンズに対応した「レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路からなる構成」が配置される空間は、本願発明の構成Bの「隣接している第1および第2の区画」に相当する。
ここで、本願発明は、構成F及び構成Gにおいて「上方」の基準とする方向が「テープ経路を跨いで横方向」と定められており、先願発明の構成fの「テープの幅方向(Y方向)」が当該「テープ経路を跨いで横方向」に相当する。そして、構成fにおいて、「2つの対物レンズは、テープの幅方向(Y方向)における中心間の距離が所定の範囲に設定され」るものであるから、2つの対物レンズはテープの幅方向(Y方向)を基準として上下に離れて存在し、上記2組の「レーザ、光検出器、ビームスプリッタ、送信光路及び受信光路」は、共に光ピックアップユニットを構成する前記上下2つの対物レンズの各々に対応して光学ベースの最上部と底部内の互いに隣接した区画にそれぞれ収容されているものといえる。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Bの「隣接している第1および第2の区画を有するハウジングを備え、前記第1の区画は、前記ハウジングの最上部内に収容され、前記第2の区画は、前記ハウジングの底部内に収容され、前記第1および第2の区画は、前記ハウジング内で互いに隣接しており」、及び、構成Eの「前記第1の送信光路および受信光路ならびに前記第1のビームスプリッタが前記ハウジングの前記第1の区画内に含まれ、前記第2の送信光路および受信光路ならびに前記第2のビームスプリッタが前記ハウジングの前記第2の区画内に含まれる状態で、前記第1および第2の光ピックアップユニットは、前記ハウジングにおいて一体化され」に相当する構成を備えているといえる。

(4)本願発明の構成Fについて
上記(3)で示したとおり、先願発明の光ピックアップ装置は、光ピックアップユニットがテープの幅方向(Y方向)に2つ配置されるものである。そして、当該各光ピックアップユニットは、テープの幅方向(Y方向)において互いの上方に配置されているといえるから、先願発明は、本願発明の構成Fの「前記第1および第2の光ピックアップユニットは、長手方向に延びるテープ経路を跨いで互いの横方向上方に配置され」に相当する構成を備えているといえる。

(5)本願発明の構成Hについて
上記(3)で示したとおり、先願発明の光ピックアップ装置は、光ピックアップユニットがテープの幅方向(Y方向)に2つ配置されるものである。そして、前記2つの光ピックアップユニットが配置された光ピックアップ装置は、構成gの「テープ走行方向(X方向)に沿って配列される」構造を有するから、前記2つの光ピックアップユニットはテープ走行方向(X方向)における同一の位置に設けられているものである。ここで、構成gの「テープ走行方向(X方向)」は本願発明の構成Hの「テープ経路に沿った長手方向」に相当する。
したがって、先願発明は、本願発明の構成Hの「前記第1および第2の光ピックアップユニットは両方とも、前記テープ経路に沿った同一の長手方向位置に位置決めされる」に相当する構成を備えているといえる。

(6)本願発明の構成Gについて
上記(5)で示したとおり、先願発明は、前記2つの光ピックアップユニットはテープ走行方向(X方向)における同一の位置に設けられ、上記(3)で示したとおり、光ピックアップ装置における2つのピックアップユニットの各々に対応する2つの対物レンズが、テープの幅方向(Y方向)を基準として上下に離れて存在しているから、本願発明の構成Gの「前記第1および第2の光ピックアップユニットの同一の長手方向位置において、前記第1および第2の光ピックアップユニットのうちの一方の前記対物レンズが、前記第1および第2の光ピックアップユニットのうちの他方の前記対物レンズよりも、前記テープ経路を跨いで横方向上方にあり」に相当する構成を備えているといえる。

以上(1)?(6)のとおり、先願発明は本願発明の構成A?Hの全てを実質的に備えているから、本願発明は、先願発明と同一である。

そして、先願発明をした者が本願発明の発明者と同一の者ではなく、また、本願の出願時に本願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-27 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-10 
出願番号 特願2015-556120(P2015-556120)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 和彦  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小池 正彦
樫本 剛
発明の名称 テープ経路を跨いで横方向に配置された光ピックアップユニットを有する光ピックアップアセンブリ  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ