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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A47F
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  A47F
審判 全部申し立て 特29条特許要件(新規)  A47F
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  A47F
管理番号 1348700
異議申立番号 異議2016-701090  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-24 
確定日 2018-12-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5946491号発明「ステーキの提供システム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5946491号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-6〕について,訂正することを認める。 特許第5946491号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第5946491号の請求項1?6に係る特許についての出願は,平成26年6月4日に特許出願され,平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされ,同年7月6日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件異議の申立ての経緯は次のとおりである,
平成28年11月24日 :特許異議申立人柿内一浩による特許異議の申立て
平成29年3月10日付け:取消理由通知書
同年5月9日付け :特許権者による意見書の提出,及び訂正請求
同年6月19日付け :特許異議申立人柿内一浩による意見書の提出
同年7月31日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年9月22日付け :特許権者による意見書の提出,及び訂正請求
同年11月28日付け:「特許第5946491号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1?6]について,訂正することを認める。特許第5946491号の請求項1?6に係る特許を取り消す。」との決定
平成30年10月17日:知財高裁にて決定取消し

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1の
「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備えることを特徴とする,ステーキの提供システム。」を,
「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え,上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする,ステーキの提供システム。」(下線は当審で付した。以下同じ。)と訂正する。

2.訂正の適否についての判断
訂正事項は,計量機,及び印しに関して,具体的に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,訂正事項は,願書に添付した明細書(段落【0012】,【0013】)に記載した事項の範囲において訂正をするものであり,また実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
また,訂正前の請求項1?6は,請求項2?6が,訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから,訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって,訂正の請求は,一群の請求項ごとにされたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項[1?6]について訂正を認める。

第3.訂正後の請求項1?6に係る発明
特許第5946491号の請求項1?6に係る発明は,特許明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下,それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明6」といい,併せて「本件特許発明」という。)。
1.本件特許発明1(便宜上,分説して示す。以下,付された符号に従って「構成要件A」のようにいう。)
【請求項1】
A お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,
B 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,
C 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,
D 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え,
E 上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,
F 上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする,
G ステーキの提供システム。
2.本件特許発明2
【請求項2】
上記お客様の要望に応じてカットした肉を焼くためのガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火と,該ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火で焼いた肉を保温するための電磁誘導加熱により所定温度に加熱された鉄皿とを更に備えることを特徴とする,請求項1に記載のステーキの提供システム。
3.本件特許発明3
【請求項3】
上記お客様を案内するテーブルに置かれた多数のフォークとナイフを更に備えることを特徴とする,請求項1又は2に記載のステーキの提供システム。
4.本件特許発明4
【請求項4】
上記お客様を案内するテーブルに置かれた温かいステーキソースが入れられたポットを更に備えることを特徴とする,請求項1?3のいずれかに記載のステーキの提供システム。
5.本件特許発明5
【請求項5】
上記お客様を案内するテーブルが複数人用であり,該テーブルを仕切る可動式パーティションを更に備えることを特徴とする,請求項1?4のいずれかに記載のステーキの提供システム。
6.本件特許発明6
【請求項6】
上記可動式パーティションが,高さが250mm以下の低い障壁と,該障壁を自立させる脚とから構成されていることを特徴とする,請求項5に記載のステーキの提供システム。

第4.取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して,審判合議体が平成29年7月31日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
請求項1?6に係る発明は,特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。
よって,請求項1?6に係る発明は,特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しないから,請求項1?6に係る発明の特許は,特許法第29条柱書きの規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。

第5.当審の判断
1.本件特許発明について
本件特許明細書には,以下の記載がある。
(1) 技術分野
【0001】
本発明は,ステーキの提供システムに関するもので,特に,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供するステーキの提供システムに関するものである。
(2) 背景技術
【0002】
飲食店において提供されるステーキは,ゆったりと椅子に座り,会話を楽しみながら食すのが一般的であり,どうしても場所代,人件費がかかり,高価なものとなっていた。また,提供されるステーキの大きさは,定量で決まっていたり,選べる場合であっても,100g,150g,200gと言ったように,その量が決められており,お客様が,自分の好みの量を,任意に思う存分食べられるものではなかった。
(3) 発明が解決しようとする課題
【0003】
本発明は,上述した背景技術が有する課題に鑑み成されたものであって,その目的は,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することにある。
(4) 課題を解決するための手段
【0004】
上記した目的を達成するため,本発明は,次の〔1〕?〔6〕に記載のステーキの提供システムとした。
〔1〕お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備えることを特徴とする,ステーキの提供システム。
〔2〕上記お客様の要望に応じてカットした肉を焼くためのガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火と,該ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火で焼いた肉を保温するための電磁誘導加熱により所定温度に加熱された鉄皿とを更に備えることを特徴とする,上記〔1〕に記載のステーキの提供システム。
〔3〕上記お客様を案内するテーブルに置かれた多数のフォークとナイフを更に備えることを特徴とする,上記〔1〕又は〔2〕に記載のステーキの提供システム。
〔4〕上記お客様を案内するテーブルに置かれた温かいステーキソースが入れられたポットを更に備えることを特徴とする,上記〔1〕?〔3〕のいずれかに記載のステーキの提供システム。
〔5〕上記お客様を案内するテーブルが複数人用であり,該テーブルを仕切る可動式パーティションを更に備えることを特徴とする,上記〔1〕?〔4〕のいずれかに記載のステーキの提供システム。
〔6〕上記可動式パーティションが,高さが250mm以下の低い障壁と,該障壁を自立させる脚とから構成されていることを特徴とする,上記〔5〕に記載のステーキの提供システム。
(5) 発明の効果
【0005】
上記した本発明に係るステーキの提供システムによれば,お客様が要望する量のステーキを,ブロックからカットして提供するものであるため,お客様は,自分の好みの量のステーキを,任意に思う存分食べられるものとなる。また,お客様は,立食形式で提供されたステーキを食するものであるため,少ない面積で客席を増やすことができ,またお客様の回転,即ち客席回転率も高いものとなる。
上記したようなことから,本発明に係るステーキの提供システムは,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することができるものとなる。
(6) 発明を実施するための形態
【0007】
以下,上記した本発明に係るステーキの提供システム,及び該ステーキの提供システムにおいて使用される可動式パーティションの実施の形態を,詳細に説明する。
【0008】
本発明に係るステーキの提供システムは,お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを,少なくとも有するステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムである。
【0009】
本発明においては,お客様を案内するテーブルは,立食形式,即ち座るための椅子を用意しないテーブルのみの席とし,該席にお客様を案内する。
この際,例えばテーブルが5人用のテーブルであり,案内するお客様が3人グループである場合には,該3人のお客様によって5人用のテーブルが占有されてしまわないように,お客様を案内する直前或いは案内した直後に,後に詳述する可動式パーティションにより5人用のテーブルを3人のスペースと2人のスペースとに仕切り,後に該テーブルにも,お客様を案内できるようにスペースを確保しておく。
【0010】
お客様を案内するテーブルには,図1に示したように,テーブル番号が付されていると共に,該テーブル番号を記載した札,例えば図示したように,22番のテーブルTに22番の札Hを置いておく。
テーブルに案内したお客様に対し,先ず接客スタッフは,ステーキ以外の注文をメニュー表の中から伺う。メニュー表には,ドリンク,サラダ,ライス程度を掲載し,メインであるステーキを主に食べて頂くものとする。ステーキ以外の注文を伺い,テーブル番号が示されたオーダー票を作成した後,お客様に,上記テーブル番号を記載した札Hを持って,カットステージまで移動して頂く。


【0011】
カットステージにおいては,お客様からテーブル番号が記載された札Hを受け取ると共に,ステーキの種類及び量,例えばサーロイン400g,或いはリブロース350gといった,お客様が要望するステーキの種類及び量をグラム単位で伺う。
そして,伺ったステーキの量をカットする前に,予めお客様に「多少前後しますが宜しいでしょうか?」と必ずお聞きし,了承を得たのちに,図2に示したように,お客様から伺ったステーキの量を肉のブロックBからカットし,そのカットした肉Aを,お客様の目の前で計量機に乗せ,計量機が示した数値,例えばリブロース362gについて,お客様に確認して頂くと共に,そのステーキの量について了承を得る。

【0012】
ステーキには,予め種類に応じてグラム単価,例えばサーロイン1グラム6円(税抜),リブロース1グラム5円(税抜)といったように価格を決めておき,上記計量機が示した数値,例えばリブロース362gの場合は,362(g)×5(円/g)=1,810(円)をステーキAの料金とする。
そして,計量機から打ち出された,ステーキの種類及び量,価格,テーブル番号が記された2枚のシールの内の一枚をステーキのオーダー票とし,先のステーキ以外のオーダー票に貼着することにより保管し,お客様には,案内したテーブルに戻って頂く。
【0013】
お客様の要望に応じてカットした肉Aには,図3に示したように,先の計量機から打ち出されたもう一枚のステーキの種類及び量,テーブル番号等が記されたシールSを付し,他のお客様のものと混同が生じない状態として,焼きのステップに移す。なお,この混同が生じないようにカットした肉Aに付すシールSに変えて,テーブル番号が記載された旗をカットした肉Aに刺す等の方策により,混同を防止する印しとしても良い。
肉を焼くステップは,ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火焼きであり,これらから出る遠赤外線によって肉を原則としてレアの状態(要望によりミディアム,ウエルダンの状態)で焼き,その後,電磁誘導加熱により200?350℃,より好ましくは220?300℃に加熱した鉄皿に乗せる。加熱した鉄皿には,予めタマネギとコーンを乗せておき,その上に焼いた肉を乗せることによって,肉の焼き過ぎを防ぐ。

【0014】
ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火で焼かれ,加熱した鉄皿に乗せられたステーキを,ライス等の他のオーダー品と共に(ドリンク,サラダについては先に),保管したオーダー票でその商品を確認し,オーダー票と共にお客様のテーブルに運ぶ。
テーブルには,図4に示したように,予め多くのフォークとナイフを用意しておき,お客様に,該フォークとナイフを使って提供したステーキ等を立食形式で食べて頂く。また,テーブルには,図5に示したように,一般的に置かれている塩,コショウの入れ物の他に,温かいステーキソースを入れたポットを用意しておき,お客様に,これらを好みに応じてステーキに自由にかけて食べて頂く。
【0015】
食事が終了したら,お客様には,オーダー票を持ってレジまで移動して頂き,提供された料理のお支払いをして頂く。スタッフは,テーブルに残された鉄皿等の後片付け,清掃,即ちバッシングを行い,テーブル番号が記載された札Hを該テーブルに置き,そして,次の新たなお客様をテーブルにご案内する。
【0016】
本発明に係るステーキの提供システムは,上述したものであり,特に,お客様が要望する量のステーキを,ブロックからカットして提供するものであるため,お客様は,自分の好みの量のステーキを,任意に思う存分食べられるものとなる。
また,お客様の要望に応じてカットした肉を計量機に乗せ,お客様にその量をご確認頂くと共に,グラム単位で料金を算出しているため,このステーキの提供システムは,明朗な料金設定のものとなる。
また,お客様は,立食形式で提供されたステーキを食するものであるため,少ない面積で客席を増やすことができ,またお客様の回転,即ち客席回転率も高いものとなる。
更に,お客様を案内したテーブルに番号を記載した札を置き,該札を持ってカットステージまでお客様に移動して頂き,そこで好みの量のステーキを伺う,また,お客様を案内するテーブルに予め多くのフォークとナイフが用意しておく,更にはステーキ以外のメニューをドリンク,サラダ,ライス程度にしぼる等の方策により,スタッフへの負担が軽減でき,少ない人数での接客作業を実現できる。
また,肉を焼くステップが,遠赤外線が多く出るガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火焼きであり,該ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火で焼いた肉を電磁誘導加熱により所定温度に加熱した鉄皿に乗せ,お客様のテーブルまで運ぶ,また,お客様を案内するテーブルに予め温かいステーキソースが入れられたポットを用意しておく等の方策により,お客様には,いつまでも温かい状態でステーキを食べて頂くことができる。
上記したようなことから,本発明に係るステーキの提供システムによれば,お客様に,好みの量のステーキを,美味しく,安価に提供することができるものとなる。

2.本件特許発明1について
(1)本件特許発明1の技術的意義
ア 本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載(前記第3.1)及び本件特許明細書の記載(前記1.)によると,本件特許発明1について,次のとおり,認められる。
(ア) 技術的課題
従来,飲食店において提供されるステーキは,ゆったりと椅子に座り,会話を楽しみながら食すのが一般的であり,場所代,人件費がかかり,高価なものとなっていた。また,提供されるステーキの大きさは,その量が決められており,お客様が,好みの量を食べられるものではなかった。(【0002】)
そこで,本件特許発明1は,上記問題の解決を課題として,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することを目的とする(【0003】)。
(イ) 課題を解決するための技術的手段の構成
本件特許発明1は,前記(ア)の課題を解決するための技術的手段として,その特許請求の範囲(請求項1)記載の構成を採用した(【0004】,【0013】)。
すなわち,{1}「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施する」ものであって(構成要件A),{2}「上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札」(構成要件B)と,{3}「上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量」し,「計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力する」「計量機」(構成要件C,E)と,{4}「上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印し」である,「上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシール」(構成要件D,F)とを備える,{5}「ステーキの提供システム」(構成要件A,G)という構成を採用した。
このように,本件特許発明1のステーキの提供システムは,構成要件Aで規定されるステーキの提供方法(以下,「本件ステーキ提供方法」という。)を実施する構成(上記{1})及び構成要件B?Fに規定された「札」,「計量機」及び「シール(印し)」(以下,「本件計量機等」という。)を備える構成(上記{2}?{4})を,その課題を解決するための技術的手段とするものである。
(ウ) 構成から導かれる効果
a 本件特許発明1のステーキの提供システムは,本件ステーキ提供方法を実施する構成(前記(イ){1})を採用したことにより,次のような効果を奏する。
まず,お客様が要望する量のステーキを,ブロックからカットして提供するものであるため,お客様は,好みの量のステーキを,食べられる。また,お客様は,立食形式で提供されたステーキを食するものであるため,少ない面積で客席を増やすことができ,客席回転率も高いものとなる。(【0005】,【0016】)
b 本件特許発明1のステーキの提供システムは,本件計量機等に関する構成(前記(イ){2}?{4})を採用したことにより,次のような効果を奏する。
まず,「計量機」は,お客様の要望に応じてカットした肉を計量し,計量した肉の量と「札」に記載されたテーブル番号とを記載した「シール」を出力し,この「シール」はカットした肉を他のお客様の肉と区別するものであるので,この「シール」をカットした肉に付すこと(肉を乗せた皿にシールを貼ることを含む。)により,他のお客様の肉と混同が生じない状態として焼きのステップに移すことができる(【0013】,【図3】)。
また,上記「シール」をステーキのオーダー票として保管し,焼いた肉をお客様のテーブルに運ぶ際に,このオーダー票で商品を確認することができる(【0012】,【0014】)。
c 以上により,本件特許発明1は,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することができる(【0005】【0016】)。
イ 前記アによると,本件特許発明1は,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することを目的(課題)とする。そして,本件ステーキ提供方法の実施に係る構成(前記ア(イ){1})により,お客様が好みの量のステーキを食べることができるとともに,少ない面積で客席を増やし,客席回転率を高めることができることから,ステーキを安価に提供することができる。また,本件計量機等に係る構成(前記ア(イ){2}?{4})により,お客様の要望に応じてカットした肉が他のお客様の肉と混同することを防止することができる。
ウ ここで,本件ステーキ提供方法は,「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップ」,「お客様からステーキの量を伺うステップ」,「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ」,「カットした肉を焼くステップ」及び「焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップ」を含むものである。
本件明細書には,これらのステップについて,「スタッフは,・・・次の新たなお客様をテーブルにご案内する。」(【0015】),「カットステージにおいては,お客様から・・・お客様が要望するステーキの種類及び量をグラム単位で伺う。」,「図2に示したように,お客様から伺ったステーキの量を肉のブロックBからカットし」(【0011】)(なお,図2には,人がステーキの肉をカットしている様子が記載されている。),「お客様の要望に応じてカットした肉Aには,・・・シールSを付し,・・・焼きのステップに移す。」(【0013】),「焼かれ,加熱した鉄皿に乗せられたステーキを,・・・保管したオーダー票でその商品を確認し,オーダー票と共にお客様のテーブルに運ぶ。」(【0014】)と記載されており,人が行うことが想定されている。そして,本件明細書には,これらのステップが機械的処理によって実現されることを示唆する記載はなく,また,そのようにすることが技術常識であると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,本件ステーキ提供方法は,ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでに人が実施する手順を特定したものであると認められる。
よって,本件ステーキ提供方法の実施に係る構成(前記ア(イ){1})は,「ステーキの提供システム」として実質的な技術的手段を提供するものであるということはできない。
エ 一方,本件計量機等は,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」といった特定の物品又は機器(装置)であり,「札」に「お客様を案内したテーブル番号が記載され」,「計量機」が,「上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量」し,「計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力」し,この「シール」を「お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印し」として用いることにより,お客様の要望に応じてカットした肉が他のお客様の肉と混同することを防止することができるという効果を奏するものである。
そして,札によりテーブル番号の情報を正確に持ち運ぶことができるから,計量機においてテーブル番号の情報がお客様の注文した肉の量の情報と組み合わされる際に,他のテーブル番号(他のお客様)と混同が生じることが抑制されるということができ,「札」にテーブル番号を記載して,テーブル番号の情報を結合することには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。また,肉の量はお客様ごとに異なるのであるから,「計量機」がテーブル番号と肉の量とを組み合わせて出力することには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。さらに,「シール」は,本件明細書に「オーダー票に貼着」(【0012】),「カットした肉Aに付す」(【0013】)と記載されているとおり,お客様の肉やオーダー票に固定することにより,他のお客様のための印しと混じることを防止することができるから,シールを他のお客様の肉との混同防止のための印しとすることには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。このように,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」は,本件明細書の記載及び当業者の技術常識を考慮すると,いずれも,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義を有すると認められる。
他方,他のお客様の肉との混同を防止するという効果は,お客様に好みの量のステーキを提供することを目的(課題)として,「お客様からステーキの量を伺うステップ」及び「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ」を含む本件ステーキ提供方法を実施する構成(前記ア(イ){1})を採用したことから,カットした肉とその肉の量を要望したお客様とを1対1に対応付ける必要が生じたことによって不可避的に生じる要請を満たしたものであり,このことは,外食産業の当業者にとって,本件明細書に明示的に記載されていなくても自明なものということができる。このように,他のお客様の肉との混同を防止するという効果は,本件特許発明1の課題解決に直接寄与するものであると認められる。
オ 以上によると,本件特許発明1は,ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの,これにとどまるものではなく,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し,他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより,本件ステーキ提供方法を実施する際に不可避的に生じる要請を満たして,「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という本件特許発明1の課題を解決するものであると理解することができる。
(2)本件特許発明1の発明該当性
前記(1)のとおり,本件特許発明1の技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと,本件特許発明1は,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機等)を,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するための技術的手段とするものであり,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができる。
したがって,本件特許発明1は,特許法第2条第1項所定の「発明」に該当するということができる。

3.本件特許発明2?6について
本件特許発明2?6は,本件特許発明1の構成に限定を加えて減縮したものであるところ,本件特許発明1は,前記2.(2)のとおり,特許法第2条第1項所定の「発明」に該当するということができるから,本件特許発明2?6も,同項所定の「発明」に該当するということができる。

4.小括
以上のとおり,本件特許発明1?6は,特許法第2条第1項所定の「発明」に該当するということができるから,本件特許発明1?6に係る特許は,特許法第29条柱書きの規定に適合するものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によっては,本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え、上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと、上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする、ステーキの提供システム。
【請求項2】
上記お客様の要望に応じてカットした肉を焼くためのガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火と、該ガス又は電気で熱した溶岩及び/又は炭火で焼いた肉を保温するための電磁誘導加熱により所定温度に加熱された鉄皿とを更に備えることを特徴とする、請求項1に記載のステーキの提供システム。
【請求項3】
上記お客様を案内するテーブルに置かれた多数のフォークとナイフを更に備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のステーキの提供システム。
【請求項4】
上記お客様を案内するテーブルに置かれた温かいステーキソースが入れられたポットを更に備えることを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載のステーキの提供システム。
【請求項5】
上記お客様を案内するテーブルが複数人用であり、該テーブルを仕切る可動式パーティションを更に備えることを特徴とする、請求項1?4のいずれかに記載のステーキの提供システム。
【請求項6】
上記可動式パーティションが、高さが250mm以下の低い障壁と、該障壁を自立させる脚とから構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のステーキの提供システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-04 
出願番号 特願2014-115682(P2014-115682)
審決分類 P 1 651・ 841- YAA (A47F)
P 1 651・ 854- YAA (A47F)
P 1 651・ 851- YAA (A47F)
P 1 651・ 1- YAA (A47F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大谷 謙仁  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 佐々木 芳枝
藤井 昇
登録日 2016-06-10 
登録番号 特許第5946491号(P5946491)
権利者 株式会社ペッパーフードサービス
発明の名称 ステーキの提供システム  
代理人 岩根 正敏  
代理人 田野 賢太郎  
代理人 仁平 信哉  
代理人 岩根 正敏  
代理人 田中 佐知子  

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