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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09K 審判 全部申し立て 1項1号公知 C09K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C09K 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C09K 審判 全部申し立て 1項2号公然実施 C09K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09K |
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管理番号 | 1348716 |
異議申立番号 | 異議2018-700398 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-05-14 |
確定日 | 2019-01-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6231031号発明「熱伝導性粒子組成物、熱伝導性粒子組成物の製造方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂硬化体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6231031号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕、8について訂正することを認める。 特許第6231031号の請求項1ないし3、5ないし8に係る特許を維持する。 特許第6231031号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6231031号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年2月24日の出願であって、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がされ、同年11月15日に特許掲載公報が発行され、平成30年5月14日に、その特許について、特許異議申立人澤山政子により、特許異議の申立てがされ(以下、特許異議申立人を単に「申立人」ということもある。)、当審より、同年7月5日付けで取消理由が通知され、特許権者は同年9月7日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人から同年10月19日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「窒化ホウ素粗粉」及び「窒化ホウ素微粉」とあるのを、それぞれ、「窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部」及び「窒化ホウ素微粉0.2?10質量部」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5?7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「平均粒子径1?10μm」とあるのを、「平均粒子径2?8μm」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5?7も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4」とあるのを、「請求項1?3」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に「平均粒子径1?10μm」とあるのを、「平均粒子径2?8μm」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、訂正前の請求項4の記載に基いて、「窒化ホウ素粗粉」及び「窒化ホウ素微粉」の含有量について、それぞれ、「90?99.8質量部」及び「0.2?10質量部」であることを特定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5?7の訂正事項1に係る訂正についても同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1において、本件明細書の【0012】の記載に基いて、「窒化ホウ素微粉」の平均粒子径の範囲を、訂正前の「1?10μm」より狭めて、「2?8μm」とするものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5?7の訂正事項2に係る訂正についても同様である。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1?4の何れか一項の記載を引用するものであるところ、訂正事項3に係る訂正に伴い、多数項を引用している請求項5において、引用先の請求項4を削除し、引用請求項数を減少する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項8において、本件明細書の【0012】の記載に基いて、「窒化ホウ素微粉」の平均粒子径の範囲を、訂正前の「1?10μm」より狭めて、「2?8μm」とするものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1?7について、請求項2が請求項1を引用し、請求項3が請求項1又は2を引用し、請求項5が請求項1?4の何れか一項を引用し、請求項6が請求項5を引用し、請求項7が請求項6を引用することから、請求項1?7は一群の請求項をなし、訂正事項1?4は、該一群の請求項に関係する訂正であるから、本件訂正の請求は一群の請求項ごとにされたものである。 (3)まとめ 上記(1)、(2)より、訂正事項1?5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕及び8について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件特許の特許請求の範囲について、上記のとおり訂正が認められるから、本件特許の請求項1?3、5?8に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3、5?8に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部と平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉0.2?10質量部を含む熱伝導性粒子組成物。 【請求項2】 前記窒化ホウ素微粉が、シランカップリング剤で分散処理されたものである、請求項1に記載の熱伝導性粒子組成物。 【請求項3】 前記窒化ホウ素微粉の一部が、前記窒化ホウ素粗粉表面に付着したものである、請求項1または2に記載の熱伝導性粒子組成物。 【請求項5】 請求項1?3の何れか一項に記載の熱伝導性粒子組成物と樹脂を含有する熱伝導性樹脂組成物。 【請求項6】 前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドから選択される少なくとも1種以上の樹脂である、請求項5に記載の熱伝導性樹脂組成物。 【請求項7】 請求項6に記載の熱伝導性樹脂組成物における樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、該エポキシ樹脂が硬化された熱伝導性樹脂硬化体。 【請求項8】 窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要 訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、平成30年7月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1.理由1(新規性) 訂正前の請求項1?7に係る発明(以下、訂正前の本件発明1?7などという。)は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(下記8.の引用例1、2)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、訂正前の本件発明1?7に係る特許は、取り消されるべきものである。 2.理由2(進歩性) 訂正前の本件発明1?8は、その出願前に日本国内又は外国において、刊行物(下記8.の引用例1?5)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、訂正前の本件発明1?8に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.理由3(実施可能要件) 原料粉末の厚みを制御する方法を開示していない本件明細書の発明の詳細な記載から、窒化ホウ素微粉の平均厚みを訂正前の本件発明1?8の規定する範囲に制御することは、たとえ当業者であっても困難であり、また、窒化ホウ素微粉の厚みを満たすと同時に平均粒子径も同時に特定のものとするのは、同様に非常に困難と考えられることから、本件の、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、訂正前の請求項1?8に係る特許は、取り消されるべきものである。 4.理由4(サポート要件) 本件発明の詳細な説明において、本件特許発明の解決課題を解決できたことを説明する記載(実施例および比較例の対比)では、予め「粗粉」と「微粉」を別途作製したものを混合したもの「のみ」しか開示されておらず、粗粉同士の接触などにより微粉にあたるものが生成した場合であっても、当該課題が解決できるような効果を奏するとは、当業者であっても認識できないことから、本件の、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?7の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、上記請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。 5.理由5(明確性要件) 組成物中に含まれている粒子全体において「粗粉」と「微粉」とを区別する方法がない(少なくとも本件発明の詳細な説明には区別の方法について何ら記載されていない)ことから、粗粉と微粉とに区別された粒子の、それぞれの平均粒子径の意味するところが明確ではなく、粒子組成物に含まれている「粗粉」と「微粉」の平均粒子径を測定することができず、また、区別することが実際上不可能な同じ「窒化ホウ素」の粒子組成物において、粗粉の平均粒子径と微粉の平均粒子径とをどのように区別して測定すればよいのか、たとえ当業者であっても理解することができないことから、本件の、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?7の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、上記請求項に係る特許は、取り消されるべきものである。 6.理由6(新規性) 下記8(1)の引用例1に記載された「PT110」は、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当する粒子と「平均粒子径が1?10μmで、平均厚みが0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」に相当する粒子とを双方含んでいる蓋然性が極めて高いことから、訂正前の本件発明1は、その出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができず、訂正前の本件発明1に係る特許は、取り消されるべきものである。 7.理由7(新規性) 下記8(2)の引用例2に記載された「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」について、UHP-S1、UHP-IK、UHP-2のいずれもが、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当する粒子と「平均粒子径が1?10μmで、平均厚みが0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」に相当する粒子とを双方含んでいる蓋然性が極めて高いことから、訂正前の本件発明1は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができず、訂正前の本件発明1に係る特許は、取り消されるべきものである。 8.引用例 (1)引用例1:特表2010-505729号公報(甲第1号証。以下、単に、「甲1」などという。) (2)引用例2:特開2014-152299号公報(甲2) (3)引用例3:特開2013-136658号公報(甲3) (4)引用例4:特開2012-251023号公報(甲4) (5)引用例5:特開2011-178961号公報(甲5) 第5 取消理由通知に記載した取消理由についての判断 1.理由1、2について (1)引用例の記載 ア 引用例1 引用例1には、次の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む窒化ホウ素組成物。」 「【0002】 本発明は、ポリマーベースのコンパウンドの形成を含む用途に使用するための、異なる窒化ホウ素粉体の混合物を含む窒化ホウ素組成物に関する。」 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 改善された特性を有する、改善されたBN組成物が求められている。さらに、電子材料、熱伝導性組成物などの用途にフィラーとして大量に使用することができるBN組成物も求められている。本発明の混合窒化ホウ素ブレンドのように、既存のBN原料から改善されたBN組成物が製造されることが特に望ましい。」 「【0012】 本明細書で用いる『官能化された』という用語は、カップリング剤またはコーティング剤による、凝集体形態またはプレートレット形態の窒化ホウ素成分のコーティングに関して、『表面を官能化した』、『官能化された表面』、『被覆した』、『表面処理した』または『処理した』という用語と互換的に用いることができる。」 「【0019】 一実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は少なくとも50ミクロンの平均粒径を有する。別の実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は5?500ミクロンの平均粒径を有し、第3の実施形態では10?100ミクロンである。」 「【0022】 一実施形態では、ブレンド中のBN粉体のうちの1種は、少なくとも約1ミクロン、典型的には約1?20μmの平均直径を有し、約50以下の厚さを有するプレートレットの形態である。別の実施形態では、粉体は、約50?約300の平均アスペクト比を有するプレートレットの形態である。」 「[実施例9?18] 【0045】 これらの実施例では、NX1、PT120、およびPT110などのプレートレットBNグレードを、別個に、または一緒に使用して、熱伝導率と粘度の性能に対する粒度分布の影響を検討した。これらの粉体は、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーで、およそ3500rpmで20秒間ブレンドした。AR-2000TAレオメーターを使用して、シリコーン油(Dow200-100cst粘度)中で粘度を2回測定した。報告された粘度を、煎断速度l/sで記録した。 【0046】 これらのフィラーまたはフィラーの混合物をシリコーンに添加し、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーを用いて、およそ3500rpmで20秒間混合した。シリコーン流体中のフィラー濃度は38重量%であった。Sylgard184シリコーン樹脂と硬化剤Sylgard184を用いてパッドを作製した。このSylgard流体を、高速ミキサーで3500RPMで20秒間混合した後フィラーを添加し、その後高速ミキサーを再び使用して3500RPMで20秒間混合した。シリコーン中のフィラー濃度は40容量%(59重量%)であった。この混合物を、3”×5”の長方形のモールドに入れ、125℃で30分間プレスして、厚さ0.5?1.5mmのパッドを形成する。Mathis(商標)Hot Disk Thermal Constant Analyzerを用いてバルク熱伝導率を測定する。 【0047】 使用した各グレードの窒化ホウ素の特性を表5に示す。1つの重要な知見は、この実験では、0.7?41ミクロンの範囲の異なる粒径(D50)を有するプレートレットBNだけを使用したということである。表6は、これらのグレードを用いた10例の様々な実施例(実施例9?18)の性能(粘度および熱伝導率(TC))データを示す。例えば、単にPT110(実施例12)を用いるだけでも、あるいはPT120とPT110の組合せ(実施例16)を用いても、同じようなTCおよび粘度を得ることができる。この場合、前者の粒度分布ではD50は41であり、後者ではD50は26である(表7)。 表5 実験で使用した各種のプレートレットBNグレードの特性 【0048】 【表5】 【0049】 表6-プレートレットBNを用いた10例の様々な実施例の粘度および熱伝導率。 【0050】 【表6】 【0051】 表7-プレートレットBNを用いた10例の様々な実施例の粒度分布。 【0052】 【表7】 」 イ 引用例2 引用例2には、次の記載がある。 「【請求項1】 熱伝導性フィラーとして、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子から形成された二次凝集粒子と粒径2μm以下の無機微細粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該二次凝集粒子の含有量が30体積%以上であり且つ該無機微細粒子の含有量が1体積%以上5体積%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。 【請求項2】 前記無機微細粒子が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、シリカ及びアルミナからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。」 「【請求項5】 請求項1?4の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物をシート状に加工したことを特徴とする熱伝導性樹脂シート。」 「【0019】 本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されることはなく、公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。かかる熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環脂肪族エポキシ樹脂、グリシジル-アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 「【0021】 本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と熱伝導性フィラーとの界面の接着力を向上させる観点から、カップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、特に限定されることはなく、熱硬化性樹脂や無機充填材の種類にあわせて公知のものを適宜選択すればよい。かかるカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物におけるカップリング剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂やカップリング剤の種類等に併せて適宜設定すればよく、一般的に、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.01質量%以上5質量%以下である。」 「【実施例】 【0029】 以下、実施例及び比較例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。 <窒化ホウ素の二次凝集体の作製> 窒化ホウ素の微細な一次粒子原料をスプレードライ等の公知の方法によって凝集させた後、約2000℃で焼成及び粒成長させることによって、窒化ホウ素の一次粒子から形成された平均粒子径50μmの二次凝集粒子を得た。ここで、一次粒子の平均長径は、二次凝集粒子をエポキシ樹脂に埋封したサンプルを作製し、そのサンプルの断面を研磨して電子顕微鏡で数千倍に拡大した写真を数枚撮影した後、一次粒子の長径を実際に測定し、その測定値を平均することによって求めた。 【0030】 〔実施例1〕 液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828:三菱化学製)100質量部、及び硬化剤である1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール(キュアゾール2PN-CN:四国化成工業株式会社製)1質量部を、溶剤であるメチルエチルケトン223質量部に添加して攪拌混合した。この溶液に、二次凝集粒子187質量部及び平均粒径約4μmの鱗片状窒化ホウ素(HGP:電気化学工業製)47質量部を添加して均一に分散した熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、この熱硬化性樹脂組成物における2μm以下の窒化ホウ素の含有量は、鱗片状窒化ホウ素の粒径分布から1.1体積%と求められた。 【0031】 次に、熱硬化性樹脂組成物を、厚さ105μmの放熱部材上にドクターブレード法にて塗布した後、110℃で10分間加熱乾燥させることによって、厚さが300μmの熱伝導性樹脂シートを作製した。放熱部材上に塗布した熱伝導性樹脂シートを、熱伝導性樹脂シート側が内側になるように2枚重ねた後、10?20MPaのプレス圧で加圧しながら120℃で1時間加熱し、さらに160℃で3時間加熱することで、熱伝導性樹脂シートのマトリックスである熱硬化性樹脂を完全に硬化させ、2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性樹脂シートを得た。 【0032】 〔実施例2〕 鱗片状窒化ホウ素(HGP:電気化学工業製)47質量部の代わりに、平均粒径約10μmの鱗片状窒化ホウ素(MGP:電気化学工業製)35質量部と平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)12質量部を配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、この熱硬化性樹脂組成物における2μm以下の窒化ホウ素の含有量は、鱗片状窒化ホウ素の粒径分布から2.1体積%と求められた。 得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを作製した。 【0033】 〔実施例3〕 窒化ホウ素の二次凝集粒子の添加量を210質量部に変更し、鱗片状窒化ホウ素(HGP:電気化学工業製)47質量部の代わりに、平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)23質量部を配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、この熱硬化性樹脂組成物における2μm以下の窒化ホウ素の含有量は、鱗片状窒化ホウ素の粒径分布から3.9体積%と求められた。 得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを作製した。 【0034】 〔実施例4〕 鱗片状窒化ホウ素(HGP:電気化学工業製)47質量部の代わりに、平均粒径約10μmの鱗片状窒化ホウ素(MGP:電気化学工業製)19質量部と平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)28質量部を配合した以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、この熱硬化性樹脂組成物における2μm以下の窒化ホウ素の含有量は、鱗片状窒化ホウ素の粒径分布から4.7体積%と求められた。 得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートを作製した。」 「【0040】 【表1】 」 ウ 引用例3 引用例3には、次の記載がある。 「【0036】 [熱伝導性フィラーの製造] 窒化ホウ素微粒子(電気化学工業製「HGP」、平均粒径5μm、図3参照)と純水とを分散機(エムテクニック製「クリアミクス」)に投入し、窒化ホウ素微粒子の水分散体を得た。この水分散体とアルミナゾル(日産化学製「アルミナゾル520」)とを混合して混合ゾルを調製した。なお、アルミナゾル520は硫酸安定型で有機物を含んでいない(無機物のみにより構成されている)。この混合ゾルに純水を加え、固形分を15.0重量%に調整した原料液を得た。この原料液における窒化ホウ素微粒子とアルミナとの質量比は90:10であった。」 「【図3】 」 エ 引用例4 引用例4には、次の記載がある。 「【0033】 本発明の組成物は、上述した樹脂及び無機充填材以外に種々の添加剤を含有していてもよく、例えば、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤などのカップリング剤、イオン吸着剤などが挙げられる。」 オ 引用例5 引用例5には、次の記載がある。 「【0023】 本実施の形態の樹脂組成物は、二次焼結粒子とマトリックス樹脂との界面の接着力を向上させる観点から、カップリング剤を含むことができる。カップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独又は組み合わせて用いることができる。 カップリング剤の配合量は、使用する熱硬化性樹脂やカップリング剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、一般的に100質量部の熱硬化性樹脂に対して0.01質量部以上1質量部以下である。」 (2)引用例に記載された発明(引用発明)の認定 ア 引用例1に記載された発明(引用発明1) 引用例1には、「少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む窒化ホウ素組成物。」(【請求項1】)について、【0045】?【0052】に記載された実施例10、13、16、17及び18は、いずれも、該「少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料」として、窒化ホウ素粉体である「PT110」及び「PT120」を含むものであって、【0048】の【表5】には、該「PT110」の平均粒子径D50は41.3μm(ミクロン)であり、該「PT120」の平均粒子径D50は9.8μm(ミクロン)であることが記載されている。 また、引用例1の【0045】には、「NX1、PT120、およびPT110などのプレートレットBNグレード」と記載され、「プレートレット」について、「電子辞書(研究社 新英和・和英中辞典)」には「plate・let -[名] [C] 〔生理〕 血小板.」と記載されていることから、小板状の形状を指すもの解される。 そうすると、「PT110」及び「PT120」は、小板状窒化ホウ素粉体であるといえる。 そして、該「窒化ホウ素組成物」は、「熱伝導性組成物」の用途にフイラーとして用いられる(【0007】)ことが記載され、【0050】の【表6】には、熱伝導率が測定されていることから、「熱伝導性窒化ホウ素組成物」であるといえる。 そうすると、引用例1には、「平均粒子径D50が41.3μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT110)と平均粒子径D50が9.8μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT120)とを含む熱伝導性窒化ホウ素組成物。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 イ 引用例2に記載された発明(引用発明2) 引用例2には、「熱伝導性フィラーとして、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子から形成された二次凝集粒子と粒径2μm以下の無機微細粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該二次凝集粒子の含有量が30体積%以上であり且つ該無機微細粒子の含有量が1体積%以上5体積%以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。」(【請求項1】)について、【0029】?【0034】に記載された実施例1?4は、いずれも、該「鱗片状窒化ホウ素の一次粒子から形成された二次凝集粒子」の平均粒子径は50μm(【0029】)であることが記載されている。 また、引用例2の【請求項5】には、該熱硬化性樹脂組成物をシート状に加工して、熱伝導性樹脂シートを得ることが記載され、【0040】の【表1】には、該熱伝導性樹脂シートの熱伝導率が測定されていることから、該熱硬化性樹脂組成物は、熱伝導性熱硬化性樹脂組成物であるといえる。 そして、【0033】に記載された実施例3は、上記「粒径2μm以下の無機微細粒子」として、「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」を用い、上記「鱗片状窒化ホウ素の一次粒子から形成された二次凝集粒子」及び「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」の添加量は、それぞれ、210質量部及び23質量部である。 そうすると、引用例2には、実施例3として、「熱伝導性フィラーとして、平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)の一次粒子から形成された二次凝集粒子と平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該二次凝集粒子の含有量が210質量部であり且つ該無機微細粒子の含有量が23質量部であり、該二次凝集粒子の平均粒子径は50μmである熱伝導性熱硬化性樹脂組成物。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (3)本件発明と引用発明との対比・判断 ア 引用発明1を主引用発明とした場合 (ア)本件発明1について 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「平均粒子径D50が41.3μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT110)」及び「熱伝導性窒化ホウ素組成物」は、本件発明1の「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」及び「熱伝導性粒子組成物」にそれぞれ相当する。 また、「小板状形状」は、「鱗片形状」といえるから、本件発明1の「平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」と引用発明1の「平均粒子径D50が9.8μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT120)」とは、「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」である点で共通する。 そうすると、本件発明1と引用発明1とは、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉と鱗片形状である窒化ホウ素微粉を含む熱伝導性粒子組成物。」である点で一致し、次の相違点1-1?1-3で相違する。 (相違点1-1) 「窒化ホウ素微粉」の平均粒子径について、本件発明1は、「2?8μm」であるのに対し、引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均粒子径は、「9.8μm」である点。 (相違点1-2) 「窒化ホウ素微粉」の平均厚みについて、本件発明1は、「0.001?1μm」であるのに対し、引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均厚みは、不明な点。 (相違点1-3) 「窒化ホウ素粗粉」及び「窒化ホウ素微粉」の量について、本件発明1では、「窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部」及び「窒化ホウ素微粉0.2?10質量部」と規定されているのに対し、引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT110)」及び「窒化ホウ素粉体(PT120)」の量は規定されていない点。 ここで、事案に鑑み、相違点1-1及び1-3について検討する。 (相違点1-1について) 引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均粒子径は、「9.8μm」であり、「2?8μm」の範囲に含まれるものではないから、上記相違点1-1は実質的な相違点であって、本件発明1は、引用発明1と同一であるということはできない。 そして、引用発明1において、該「窒化ホウ素粉体(PT120)」に替えて、平均粒子径が、「2?8μm」の範囲に含まれるものを採用した場合、引用例1?5の記載を参酌しても、引用発明1の「熱伝導性窒化ホウ素組成物」が、どのような特性のものとなるかは当業者によって明らかではなく、引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均粒子径に着目し、これを「2?8μm」の範囲ものに変更する動機付けは、見出すことはできない。 そうすると、上記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。 (相違点1-3について) また、仮に、引用発明1の「窒化ホウ素粉体(PT120)」に替えて、「平均粒子径が2?8μmの範囲の窒化ホウ素粉体」に変更することがあるとしても、当該変更を行った際に、その量について、「窒化ホウ素粉体(PT110)」を「90?99.8質量部」であって、かつ、「平均粒子径が2?8μmの範囲の窒化ホウ素粉体」を「0.2?10質量部」とする動機付けは、引用例1?5の記載からは、見出すことはできない。 そうすると、上記相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。 さらに、効果の点において、本件発明1は、本件発明1の「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部と平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉0.2?10質量部を含む」ことによって、「熱伝導性粒子組成物」が、「樹脂組成物中での分散性および低粘度化に優れ」たものとなり、「本発明の熱伝導性粒子組成物を用いた樹脂組成物および硬化体は、熱伝導性粒子組成物を高充填できるため、優れた熱伝導性を示す」(本件明細書【0008】)ものとなるという、引用例1?5からは予測外の格別顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1であるということはできないし、引用発明1から容易に発明をすることができたものである、とすることもできない。 (イ)本件発明2?7について 本件発明2?7は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、引用発明1であるということはできないし、引用発明1から容易に発明をすることができたものである、とすることもできない。 (ウ)本件発明8について 本件発明8と引用発明1を対比する。 上記(ア)で述べたように、引用発明1の「平均粒子径D50が41.3μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT110)」及び「熱伝導性窒化ホウ素組成物」は、本件発明8の「窒化ホウ素粗粉」及び「熱伝導性粒子組成物」にそれぞれ相当する。 また、本件発明8の「平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」と引用発明1の「平均粒子径D50が9.8μmの小板状形状の窒化ホウ素粉体(PT120)」とは、「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」である点で共通する。 そうすると、本件発明1と引用発明1とは、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉と鱗片形状である窒化ホウ素微粉を含む熱伝導性粒子組成物」に関する発明である点で共通し、本件発明8は、「窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法」であるのに対し、引用発明1の「熱伝導性窒化ホウ素組成物」の製造方法は不明な点で相違する。 ここで、上記相違点について検討する。 高圧ホモジナイザーを採用して窒化ホウ素粉末を粉砕すること、窒化ホウ素粉体をシランカップリング剤で表面処理すること、及び、2種の粉体を混合する際に、乾式混合を用いることが、いずれも、当業者にとってありふれた技術であるとしても、上記(ア)の「相違点1-1について」において述べたように、引用発明1の「平均粒子径D50が9.8μmの窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均粒子径を、本件発明8の「窒化ホウ素微粉」のような「2?8μm」の範囲に含まれるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではないことから、引用発明1において、「窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程」を備えることは、当業者が容易に想到し得るものである、とすることはできない。 したがって、本件発明8は、引用発明1から容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 イ 引用発明2を主引用発明とした場合 (ア)本件発明1について 本件発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)の一次粒子から形成された二次凝集粒子」は、「該二次凝集粒子の平均粒子径は50μmである」から、本件発明1の「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当する。 また、引用発明2の「熱伝導性フィラー」は、本件発明1の「熱伝導性粒子組成物」に相当する。 そして、本件発明1の「平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」と引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」とは、「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」である点で共通する。 さらに、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)の一次粒子から形成された二次凝集粒子」は、熱伝導性熱硬化性樹脂組成物に210質量部含まれ、「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」は、23質量部含まれるから、前者が90?99.8質量部含まれる場合は、後者は、9.86?10.9質量部(90/210×23?99.8/210×23)含まれることになり、本件発明1の窒化ホウ素微粉の量の「0.2?10質量部」とは、「9.86?10質量部」の範囲で共通する。 そうすると、本件発明1と引用発明2とは、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部と鱗片形状である窒化ホウ素微粉9.86?10質量部を含む熱伝導性粒子組成物。」である点で一致し、次の相違点2-1?2-3で相違する。 (相違点2-1) 「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」の平均粒子径について、本件発明1は、「2?8μm」であるのに対し、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)は、「約1μm」である点。 (相違点2-2) 「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」の平均厚みについて、本件発明1は、「0.001?1μm」であるのに対し、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)は、不明である点。 (相違点2-3) 「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」の量について、本件発明1は、「0.2?10質量部」であるのに対し、引用発明2は、「9.86質量部超?10.9質量部」である点。 ここで、事案に鑑み、相違点2-1について検討する。 (相違点2-1について) 引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」の平均粒子径は、「2?8μm」の範囲に含まれるものではないから、上記相違点2-1は実質的な相違点であって、本件発明1は、引用発明2と同一であるということはできない。 そして、引用発明2において、該「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」に替えて、平均粒子径が、「2?8μm」の範囲に含まれるものを採用した場合、引用例1?5の記載を参酌しても、引用発明2の「熱伝導性熱硬化性樹脂組成物」が、どのような特性のものとなるかは当業者によって明らかではないことから、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」の平均粒子径に着目し、これを「2?8μm」の範囲のものに変更する動機付けは見出すことはできない。 そうすると、上記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。 また、仮に、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」に替えて、平均粒子径が「2?8μm」の範囲に含まれるものを採用することがあるとしても、そのような平均粒子径を有する「鱗片状窒化ホウ素の一次粒子」「から形成された二次凝集粒子」の平均粒径が変動することは明らかであり、該「二字凝集粒子」が、本件発明1の「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当するといえるものなのかどうかは判然としない。 また、該「二次凝集粒子」の平均粒子径を20?150μmの範囲内のものとする動機付けは見当たらない。 さらに、効果の点において、本件発明1は、本件発明1の「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部と平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉0.2?10質量部を含む」ことによって、「熱伝導性粒子組成物」が、「樹脂組成物中での分散性および低粘度化に優れ」たものとなり、「本発明の熱伝導性粒子組成物を用いた樹脂組成物および硬化体は、熱伝導性粒子組成物を高充填できるため、優れた熱伝導性を示す」(本件明細書【0008】)ものとなるという、引用例1?5からは予測外の格別顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、上記相違点2-2?2-3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2であるということはできないし、引用発明2から容易に発明をすることができたものである、とすることもできない。 (イ)本件発明2?7について 本件発明2?7は、本件発明1を引用し、さらに限定するものであるから、引用発明2であるということはできないし、引用発明2から容易に発明をすることができたものである、とすることもできない。 (ウ)本件発明8について 本件発明8と引用発明2とを対比する。 上記(ア)で述べたように、引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)の一次粒子から形成された二次凝集粒子」は、本件発明8の「窒化ホウ素粗粉」に相当する。 また、引用発明2の「熱伝導性フィラー」は、本件発明1の「熱伝導性粒子組成物」に相当する。 そして、本件発明2の「平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」と引用発明2の「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」とは、「鱗片形状である窒化ホウ素微粉」である点で共通する。 そうすると、本件発明8と引用発明2とは、「窒化ホウ素粗粉と鱗片形状である窒化ホウ素微粉を含む熱伝導性粒子組成物」に関する発明である点で共通し、本件発明8は、「窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法」であるのに対し、引用発明2の「熱伝導性フィラー」の製造方法は不明な点で相違する。 ここで、上記相違点について検討する。 高圧ホモジナイザーを採用して窒化ホウ素粉末を粉砕すること、窒化ホウ素粉体をシランカップリング剤で表面処理すること、及び、2種の粉体を混合する際に、乾式混合を用いることが、いずれも、当業者にとってありふれた技術であるとしても、上記(ア)の「相違点2-1について」において述べたように、引用発明2の「平均粒子径D50が9.8μmの窒化ホウ素粉体(PT120)」の平均粒子径を、本件発明8の「窒化ホウ素微粉」のような「2?8μm」の範囲に含まれるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることではないことから、引用発明2において、「窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程」を備えることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 したがって、本件発明8は、引用発明2から容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。 ウ まとめ 以上のとおり、理由1、2には、理由がない。 2.理由3について 本件明細書の【0014】には、「窒化ホウ素微粉」の作製について、次のような記載がある。 「前記窒化ホウ素微粉は、窒化ホウ素粉末を湿式で粉砕可能な、例えば高圧ホモジナイザー、ビーズミル、磨細機または振動ミルを用いて作製することができる。特に、不純物の混入を避けるため、メディアレスである高圧ホモジナイザーによる粉砕処理が好ましい。 前述の方法以外に、化学気相成長(CVD)法、有機溶媒中で超音波を照射する方法を用いて窒化ホウ素微粉を作製してもよい。」 また、本件明細書の【0024】には、「窒化ホウ素微粉」の作製について、次のような記載がある。 「(実施例1) <窒化ホウ素微粉の作製> ガラス製300mlビーカーに鱗片形状の窒化ホウ素粉末(電気化学工業(株)製、製品名「SGP」、平均粒子径18μm)5質量部、エタノール47.5質量部、水47.5質量部を入れて混合した。この溶液をスギノマシン社製高圧ホモジナイザー(湿式微粒化装置「スターバーストミニ」)を用いて、微粉化処理を行った。条件として、ノズルの形状はボール衝突型を使用し、200MPaの圧力での処理を10回行い、窒化ホウ素微粉分散溶液を作製した。得られた分散溶液を、目開き0.5μmのろ紙によって、吸引ろ過し、固液分離し、濾物を45℃で12時間真空乾燥し、窒化ホウ素微粉を得た。」 そして、本件明細書の【0029】の【表1】の実施例1には、上記【0024】に記載された作製方法によって、平均粒子径5μm、平均厚み0.15μmの窒化ホウ素微粉が得られたことが例示され、本件図面の【図1】には、実施例1の窒化ホウ素微粉の走査型電子顕微鏡写真が示されている。 また、同【表1】には、平均粒子径は本件発明の範囲内のものではないものの、平均厚み0.03μm(実施例9)、平均厚み0.62μm(実施例10)の窒化ホウ素微粉が例示され、本件図面の【図2】には、該実施例9の窒化ホウ素微粉の走査型電子顕微鏡写真が示されている。 そうすると、本件発明における「窒化ホウ素微粉」の作製にあたっては、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、高圧ホモジナイザーによる微粉化処理等によって行えばいいものといえ、窒化ホウ素微粉の平均厚み及び平均粒子径を本件発明1?8の規定する範囲に制御することについて、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるとまではいえない。 したがって、本件発明を当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないとすることはできず、理由3は理由がない。 3.理由4について 本件発明の課題は、「分散性および樹脂の低粘度化に優れた熱伝導性粒子組成物およびその製造方法を提供すること」、及び「この熱伝導性粒子組成物を用いて製造される熱伝導性に優れた樹脂組成物および硬化体を提供すること」(【0006】)と解されるところ、本件明細書には次の記載がある(下線は、当審が付与した。)。 「【0008】 本発明者らは鋭意検討の結果、熱伝導性粒子粗粉と、特定範囲にある平均粒子径および平均厚みの鱗片形状を有する窒化ホウ素微粉を用いた熱伝導性粒子組成物は、樹脂組成物中での分散性および低粘度化に優れることを見出した。さらに本発明の熱伝導性粒子組成物を用いた樹脂組成物および硬化体は、熱伝導性粒子組成物を高充填できるため、優れた熱伝導性を示す。」 「【0010】 <熱伝導性粒子粗粉> 本発明の熱伝導性粒子粗粉としては、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、表面絶縁処理を行った金属や炭素系の導電性粒子を使用することができる。これらの中では、高熱伝導性および高絶縁性を示すことから、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素が好ましい。 【0011】 熱伝導性粒子粗粉の平均粒子径は20?150μmが好ましく、20?70μmがより好ましい。熱伝導性粒子粗粉の平均粒子径が20μm未満であると、熱伝導性が低下する場合がある。平均粒子径が150μmを超えると、絶縁性が低下する場合がある。 【0012】 <窒化ホウ素微粉> 本発明の窒化ホウ素微粉は鱗片形状であり、その平均粒子径は1?10μmであり、好ましくは2?8μmである。1μm未満であると、分散性が低下したり、樹脂組成物の粘度が高くなり充填性が低下する場合がある。また、10μmよりも大きいと、熱伝導性粒子粗粉に良好な流動性や充填性を付与できない場合がある。 【0013】 窒化ホウ素微粉の平均厚みは0.001?1μmであり、好ましくは0.05?0.5μmである。平均厚みが0.001μm未満または1μmを超えると、樹脂組成物へ熱伝導性粒子組成物を高充填することが困難になる場合がある。」 「【0017】 <熱伝導性粒子組成物> 本発明の熱伝導性粒子組成物(以下、粒子組成物と略す)は、熱伝導性粒子粗粉と窒化ホウ素微粉を含む。窒化ホウ素微粉の一部が熱伝導性粒子粗粉の表面に付着した状態にあることが好ましい。付着とは、窒化ホウ素微粉が、ファデアワールス力により熱伝導性粒子粗粉の表面に物理的に付着した状態を意味する。粒子組成物は、熱伝導性粒子粗粉90?99.8質量部に対し窒化ホウ素微粉0.2?10質量部であることが好ましく、熱伝導性粒子粗粉95?99.5質量部に対し窒化ホウ素微粉0.5?5質量部であることがより好ましい。熱伝導性粒子粗粉が90質量部未満であると、後述する熱伝導性樹脂組成物の粘度が高くなる場合がある。また、99.8質量部を超えると、分散性が低下する場合がある。 【0018】 粒子組成物は、前記窒化ホウ素微粉を乾式混合にて、熱伝導性粒子粗粉と混合し作製される。混合方法として、ヘンシェルミキサー、転動流動式混合機、V型ブレンダー、らいかい機、バタフライミキサーを用いて、各成分の所定量を均一に混合すればよい。」 そうすると、上記明細書の記載から、本件発明は、熱伝導性粒子組成物において、 高熱伝導性および高絶縁性を示す窒化ホウ素粗粉と窒化ホウ素微粉とを用い(【0010】)、 窒化ホウ素粗粉について、平均粒子径が20?150μmのものを用いることで、熱伝導性を低下させず、かつ、絶縁性を低下させないようにし(【0011】)、 窒化ホウ素微粉について、鱗片形状で、その平均粒子径を2?8μmのものを用いることで、分散性を低下させず、樹脂組成物の粘度が高くなって充填性が低下することがなく、熱伝導性粒子粗粉に良好な流動性や充填性を付与できなくなることがないようにし(【0012】)、 しかも、窒化ホウ素微粉の平均厚みが0.001?1μmのものを用いることで、樹脂組成物へ熱伝導性粒子組成物を高充填することが困難とならない(【0013】)ようにしたものであることが、理解できる。 そして、本件明細書の実施例1?3、5では、平均粒子径が上記範囲に含まれる窒化ホウ素微粉と、鱗片形状で、その平均粒子径及び平均厚みが上記範囲に含まれる窒化ホウ素粗粉を用いた熱伝導性粒子組成物、及び、該熱伝導性粒子組成物を用いて得られた熱伝導性樹脂組成物について、「分散性および樹脂の低粘度化に優れた熱伝導性粒子組成物」であること、及び「この熱伝導性粒子組成物を用いて製造される熱伝導性に優れた樹脂組成物」であることが確認されているといえる。 以上のことから、本件明細書には、本件発明が本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例や説明が記載されているといえる。 したがって、本件発明は発明の詳細な説明において本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるということはできない。 したがって、理由4は理由がない。 4.理由5について 訂正後の本件発明1においては、「窒化ホウ素粗粉」は「平均粒子径が20?150μm」であることが特定され、「窒化ホウ素微粉」は、「平均粒子径が2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である」ことが特定されており、「窒化ホウ素粗粉」及び「窒化ホウ素微粉」について、技術的に不明確な要素を含むものとはいえない。 そして、本件発明の組成物中に含まれている個々の窒化ホウ素粒子が、「窒化ホウ素粗粉」由来なのか、「窒化ホウ素微粉」由来なのかが不明といえる場合があるとしても、本件発明においては、「窒化ホウ素粗粉」及び「窒化ホウ素微粉」の定義は明確であって、不明確な要素を含むものとはいえないことから、請求項の記載が明確性要件を満たしていないとすることはできない。また、本件の明細書又は図面中に、請求項の記載を不明確とするような記載も見出せない。 したがって、理由5は理由がない。 5.理由6について 申立人の示した証拠には、引用例1に記載された「PT110」が、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当する粒子と「平均粒子径が2?8μmで、平均厚みが0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」に相当する粒子とを双方含み、しかも、該「PT110」に、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」が「90?99.8質量部」含まれ、「平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」が「0.2?10質量部」含まれることを示すものはなく、そのような蓋然性が高いとはいえない。 したがって、理由6は理由がない。 6.理由7について 申立人の示した証拠には、引用例2に記載された「平均粒径約1μmの鱗片状窒化ホウ素(UHP:昭和電工製)」について、UHP-S1、UHP-IK、UHP-2のいずれもが、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」に相当する粒子と「平均粒子径が2?8μmで、平均厚みが0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」に相当する粒子とを双方含み、しかも、該「UHP-S1、UHP-IK、UHP-2」に、「平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉」が「90?99.8質量部」含まれ、「平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」が「0.2?10質量部」含まれることを示すものはなく、そのような蓋然性が高いとはいえない。 したがって、理由7は理由がない。 7.申立人の意見について 申立人は、理由1に関して、平成30年10月19日付けの意見書において、引用発明2は次のように特定することができ、訂正後の特許発明1?3、5?7は、依然として、引用発明2に対して新規性がない旨主張している。 「(a1’)平均粒径50μmである窒化ホウ素の二次凝集粒子90.1質量部と、 (b1’)粒子径2?8μmの鱗片状窒化ホウ素約1質量部と、 (c1’)粒子径2μm未満の鱗片状窒化ホウ素約8.9質量部と、 (d1’)を含む、熱伝導性フィラー」(意見書3頁10?14行) しかしながら、本件発明1は、「平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」について、「0.2?10質量部を含む」ことを規定するものであり、引用発明2において、「平均粒子径1?10μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉」の含有量が明らかではない以上、本件発明1と引用発明2とが同一であるとすることはできない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。 第6 むすび したがって、請求項1?3、5?8に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 そして、他に請求項1?3、5?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項4に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項4に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 平均粒子径が20?150μmの窒化ホウ素粗粉90?99.8質量部と平均粒子径2?8μm、平均厚み0.001?1μmの鱗片形状である窒化ホウ素微粉0.2?10質量部を含む熱伝導性粒子組成物。 【請求項2】 前記窒化ホウ素微粉が、シランカップリング剤で分散処理されたものである、請求項1に記載の熱伝導性粒子組成物。 【請求項3】 前記窒化ホウ素微粉の一部が、前記窒化ホウ素粗粉表面に付着したものである、請求項1または2に記載の熱伝導性粒子組成物。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 請求項1?3の何れか一項に記載の熱伝導性粒子組成物と樹脂を含有する熱伝導性樹脂組成物。 【請求項6】 前記樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンオキシドから選択される少なくとも1種以上の樹脂である、請求項5に記載の熱伝導性樹脂組成物。 【請求項7】 請求項6に記載の熱伝導性樹脂組成物における樹脂としてエポキシ樹脂を使用し、該エポキシ樹脂が硬化された熱伝導性樹脂硬化体。 【請求項8】 窒化ホウ素粉末を高圧ホモジナイザーで、平均粒子径2?8μm、平均厚み0.01?1μmの鱗片形状の窒化ホウ素微粉に粉砕する第一工程と、前記窒化ホウ素微粉をシランカップリング剤で分散処理する第二工程と、前記シランカップリング剤で表面処理された窒化ホウ素微粉を、乾式混合にて、窒化ホウ素粗粉と混合する第3工程を含む、熱伝導性粒子組成物の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-12-18 |
出願番号 | 特願2015-34520(P2015-34520) |
審決分類 |
P
1
651・
111-
YAA
(C09K)
P 1 651・ 121- YAA (C09K) P 1 651・ 113- YAA (C09K) P 1 651・ 537- YAA (C09K) P 1 651・ 112- YAA (C09K) P 1 651・ 536- YAA (C09K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 川端 修 |
登録日 | 2017-10-27 |
登録番号 | 特許第6231031号(P6231031) |
権利者 | デンカ株式会社 |
発明の名称 | 熱伝導性粒子組成物、熱伝導性粒子組成物の製造方法、熱伝導性樹脂組成物および熱伝導性樹脂硬化体 |
代理人 | 田口 昌浩 |
代理人 | 伊藤 高志 |
代理人 | 田口 昌浩 |
代理人 | 伊藤 高志 |