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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A45D
管理番号 1349192
審判番号 無効2017-800102  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-08-01 
確定日 2019-02-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第5847904号発明「美容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許5847904号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年11月16日に出願した特願2011-250915号の一部を平成26年9月26日に新たな特許出願としたものであって、平成27年12月4日にその請求項1ないし2にかかる発明について特許の設定登録がなされた。
その後、請求人(株式会社ファイブスター)より平成29年8月1日付けで請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする審決を求める無効審判の請求がなされ、被請求人(株式会社MTG)より平成29年10月20日付け審判事件答弁書が提出され、請求人より平成30年1月12日付け口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人より同日付け口頭審理陳述要領書が提出され、請求人より平成30年1月26日付け口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人より同日付け口頭審理陳述要領書が提出され、平成30年1月26日に口頭審理が行われた。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし2に係る発明(以下、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
基端においてハンドルに抜け止め固定された支持軸と、
前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え、その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において、
前記回転体は基端側にのみ穴を有し、回転体は、その内部に前記支持軸の先端が位置する非貫通状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており、
軸受け部材は、前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ、
前記軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに、軸受け部材は係止爪の前記基端側に鍔部を有しており、同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し、
前記回転体は内周に前記係止爪に係合可能な段差部を有し、前記段差部は前記係止爪の前記基端側に係止されるとともに前記係止爪と前記鍔部との間に位置することを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記軸受け部材は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の美容器。」



第3 請求人の主張の概要
請求人が主張する無効理由の概要及び提出した証拠方法は、以下のとおりである。

1 請求人の主張
(1)無効理由1
本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、及び、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明、及び、甲第6号証に記載された事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された事項、及び、甲第7号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。


2 請求人が提出した証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証の1:欧州特許出願公開第0674894号の写し(以下、「写し」である旨の表記は省略する。)
甲第1号証の2:欧州特許出願公開第0674894号の翻訳文
甲第1号証の3:翻訳にあたってのコメント
甲第2号証:国際特許公開第2011/004627号
甲第3号証の1:米国特許出願公開第2010/191161号
甲第3号証の2:米国特許出願公開第2010/191161号の翻訳文
甲第3号証の3:コメント
甲第4号証:登録実用新案第3159255号公報
甲第5号証:特開2010-131090号公報
甲第6号証:日本接着学会誌Vol.43 No.4,P149-157,「綜説 組立/分解性を考慮したスナップフィット設計およびバーチャルリアリティ環境における製品評価」,表紙,目次,奥付
甲第7号証:特開2002-340001号公報
甲第8号証:実願昭57-98165号(実開昭59-4819号)のマイクロフィルム
甲第9号証:実公平8-9455号公報
甲第10号証:実願昭59-200825号(実開昭61-112120号)のマイクロフィルム
甲第11号証:特開昭61-244923号公報
甲第12号証:登録実用新案第3166202号公報
甲第13号証の1:中国実用新案明細書第201814806号
甲第13号証の2:中国実用新案明細書第201814806号の翻訳文
甲第13号証の3:翻訳物に関するコメント
甲第14号証の1:欧州特許出願公開第0346942号
甲第14号証の2:欧州特許出願公開和文抄録第0346942号



第4 被請求人の主張の概要
被請求人の主張の概要は以下のとおりである。

1 被請求人の主張
(1)本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、及び、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものではない。(審判事件答弁書第5頁14ないし16行)

(2)本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明、及び、甲第6号証に記載された事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものではない。(審判事件答弁書第5頁17ないし20行)

(3)本件特許発明1及び2は、甲第1号証の1に記載された発明、甲第2号証、甲第12号証又は第13号証の1に記載された発明、甲第3号証の1に記載された発明、甲第4号証又は甲第5号証に記載された発明、甲第6号証に記載された事項、及び、甲第7号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明することができたものではない。(審判事件答弁書第5頁21ないし24行)



第5 当審の判断
1 引用刊行物の記載内容
(1)甲第1号証の1
ア 甲第1号証の1に記載された事項
甲第1号証の1には、次の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、請求人による仮訳に準じたものである。


(ア)「



((54)【発明の名称】マッサージ器
(57)【要約】
マッサージ器はハンドグリップ(1)を有し、該ハンドグリップ(1)は、その上にマッサージローラ(4)を回動可能に軸支する軸(2)を支持する。当該マッサージローラ(4)は柔軟に変形可能な中空ローラとして形成され、軸(2)上の一方の側に片持ちで支持される。当該マッサージローラ(4)はさらに、グリップ(1)の反対側で軸(2)から突出する。)(なお、下線部は当審で付したものである。以下同様。)


(イ)「

」(第1欄1ないし5行)
(本発明は、ハンドグリップを有するマッサージ器に関し、該ハンドグリップが、その外装面上に個々のマッサージ突起を備えるマッサージローラを、その上に回動可能に軸支する軸を支持するマッサージ器に関する。)

(ウ)「


」(第1欄6ないし36行)
(上記のようなマッサージ器は例えば欧州特許第0282173号明細書に記載されている。このマッサージ器の場合、マッサージローラはその両端がグリップのフォークのアーム内に支持される。これによって非常に安定した軸受けが生じ、それはマッサージ器を大きな身体面のマッサージに使用するとき、及びそのとき著しい力を行使したいとき有利である。しかしこの公知のマッサージ器を顔のマッサージに使用すると、その前に片方のアームと突起した身体部分がぶつかるために、マッサージローラを支持するアームにより、マッサージローラを突起した身体部分の近くまで導くことができない点が不利であることに気づくであろう。
欧州特許出願公開0346942号明細書もすでに、単一のローラ体を支持する軸がグリップに対して一直線上に配置されたマッサージ器を記載している。そのような機器は例えば鼻または目の領域の比較的近くまで転動することができる。しかしそのときローラ体を超えるまで延びる軸の自由前端面で突起した身体部分に達すると、肌を損傷しうる危険が生じる。
本発明の課題は、冒頭で述べた種類のマッサージ器を、マッサージローラで、怪我の危険性を生じさせずに、突起した身体部分に可能な限り近くに達することができるように形成することにある。)

(エ)「

」(第1欄37ないし42行)
(この課題は本発明によって、マッサージローラが柔軟に変形する中空ローラとして形成され、軸上の一方の側に片持ちで支持され、及びマッサージローラがグリップの反対側で軸から突出することによって解決される。)

(オ)「

」(第1欄43行ないし第2欄3行)
(そのようなマッサージ器の場合、部材がグリップの反対側のマッサージローラの前端面を超えて突出することはない。そのためマッサージローラをその自由前端面とともに直接突起する身体部分まで導くことができる。マッサージローラが中空ローラから形成されており、弾性材料から成るため、その軸を超えて突出する自由端部は柔軟に変形されることができ、それによってマッサージローラは身体輪郭に適応することができ、それはマッサージの効果を改善し、急な方向転換を伴う、例えば鼻領域または眼窩の始まる領域などの主要部分に達する可能性を促進する。本発明のマッサージ器により、怪我の危険性なく、例えば目のすぐ近くまで肌にロールマッサージを施すことが可能になる。)

(カ)「

」(第2欄4ないし14行)
(本発明の有利な発展形態により軸上に鞘が回動可能に軸支され、この鞘の上に鞘に対して回動不能にマッサージローラが保持されるとき、構造的に特に簡単にマッサージ器が形成される。これによって鞘用に、回動時に発生する軸上の滑動摩擦に最適な材料を選ぶことができ、マッサージローラ用にはマッサージ効果に最適な材料を使用する。)

(キ)「

」(第2欄15ないし23行)
(本発明の別の発展形態により、マッサージローラの内径が鞘と軸から突出する領域で他の領域より大きいとき、マッサージローラの自由端は特に容易く柔軟に変形可能である。なぜならそれによってこの軸から突出する領域が横断面でその他の領域に対して縮小されるため、より少ない抵抗モーメントを有するためである。)

(ク)「

」(第2欄29ないし37行)
(鞘がその外装面に周囲を巡る隆起を、それに対応して、マッサージローラがその内装面に周囲を巡る凹部を備えるとき、マッサージローラの鞘上での軸方向保持は非常に簡単にスナップ結合によって行われる。この実施形態は摩滅した際、または清掃のために、マッサージローラを容易に交換することを可能とする。)

(ケ)「

」(第2欄51行ないし第3欄3行)
(図1で全体として示されるマッサージ器はグリップ1に共軸に軸2を有し、それに回動可能に鞘3が軸支される。この鞘3上に中空筒によって形成されたマッサージローラ4が着座する。本発明にとって重要なのは、マッサージローラ4が軸2の自由端を超えて突出すること、及び弾性材料から成ることである。軸2がその自由端に、鞘3をグリップ1の端部とそれ自体の間で軸方向に固定するヘッド5を有することが、付加的に図1で見ることができる。)

(コ)「

」(第3欄4ないし17行)
(図2は図1に対して、マッサージローラ4がその外装面上に、転動の際に肌の上にマッサージ効果を与える先の尖った突起6を有することを拡大図で示す。図2の右領域では、マッサージローラ4の内径が一領域の一端部で他の領域に対して直径拡大部7で大きくなっていることが見てとれる。この直径拡大部7内に図1で示された軸2のヘッド5が着座する。直径拡大部7に向き合う端部の近くの、マッサージローラ4の内装面に周囲を巡る凹部8がある。)

(サ)「

」(第3欄25ないし30行)
(図4では、鞘3がその長さの大部分に渡り、それを完全に貫通する縦溝9を有することが見てとれる。さらに図4には、マッサージローラ4を押し開けると凹部8に達する周囲を巡る隆起10が示される。)

イ 引用発明1
(シ)甲第1号証のFig.1より、軸2が基端においてグリップ1に支持されていることは明らかである。

(ス)上記記載事項(オ)には、「マッサージローラは身体輪郭に適用することができ」、「肌にロールマッサージを施すことができる」なる記載があり、また、上記記載事項(コ)には、「転動の際に肌の上にマッサージ効果を与える先の尖った突起6を有する」なる記載があることより、“マッサージローラ4により身体に対してマッサージ効果を付与する”ことは明らかである。

(セ)上記記載事項(ケ)には、「中空筒によって形成されたマッサージローラ4」なる記載があり、また、Fig.1及びFig.2を考慮するに、“マッサージローラ4が基端側及び先端側に穴を有している”ことは明らかである。

(ソ)上記記載事項(ケ)には、「マッサージローラ4が軸2の自由端を超えて突出する」なる記載があり、また、Fig.1を考慮するに、“マッサージローラ4がその内部に軸2の先端が位置する貫通状態である”ことは明らかである。

(タ)上記記載事項(カ)には、「軸上に鞘が回動可能に軸支され、この鞘の上に鞘に対して回動不能にマッサージローラが保持される」なる記載があり、このことより、“マッサージローラ4は、軸2に鞘3を介して軸支されている”と認められる。

(チ)上記記載事項(ケ)には、「軸2がその自由端に、鞘3をグリップ1の端部とそれ自体の間で軸方向に固定するヘッド5を有することが、付加的に図1で見ることができる。」なる記載があり、また、Fig.1を考慮するに、“鞘3を軸方向に固定する”とは“鞘3が軸2に抜け止めされている”ことを意味していると認められ、“軸2”の“自由端”とは“マッサージローラ4の基端側の穴とは反対側となる先端”に他ならないものと認められる。
よって、上記記載は、“鞘3は、マッサージローラ4の基端側の穴とは反対側となる先端で軸2に抜け止めされ”ることを意味すると認められる。

(ツ)上記記載事項(サ)には、「さらに図4には、マッサージローラ4を押し開けると凹部8に達する周囲を巡る隆起10が示される。」なる記載があり、また、Fig.4を考慮するに、“鞘3からは隆起10が突き出”ているものと認められる。

(テ)Fig.1及びFig.4によれば、鞘3は隆起10の基端側に鍔状の膨径部を有していることが認められ、即ち、“鞘3は隆起10の基端側に鍔部を有して”いるものと認められる。

(ト)Fig.1によれば、隆起10と鍔部との間にマッサージローラ4の段差状となっている内周側の一部が配置されていることが認められ、即ち、“マッサージローラ4が内周に段差部を有する”こと、及び、“隆起10と鍔部との間に段差部が配置される”ものと認められる。

(ナ)上記記載事項(サ)には、「さらに図4には、マッサージローラ4を押し開けると凹部8に達する周囲を巡る隆起10が示される。」との記載があり、また、Fig.1によれば、隆起10と凹部8とがはめ合っていることが示されている。
そして、当該はめ合いの結果、上記(ト)の段差部は、隆起10と係合可能であり、隆起10の基端側に係止されるものとなっていることは明らかである。


上記記載事項(ア)ないし(サ)及び上記認定事項(シ)ないし(ナ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第1号証の1には、以下の引用発明1が記載されていると認める。

「基端においてグリップ1に支持された軸2と、軸2に回動可能に軸支されたマッサージローラ4とを備え、そのマッサージローラ4により身体に対してマッサージ効果を付与するようにしたマッサージ器において、
マッサージローラ4は基端側及び先端側に穴を有し、マッサージローラ4は、その内部に軸2の先端が位置する貫通状態で軸2に鞘3を介して軸支されており、
鞘3は、マッサージローラ4の基端側の穴とは反対側となる先端で軸2に抜け止めされ、
鞘3からは隆起10が突き出るとともに、
鞘3は隆起10の基端側に鍔部を有しており、
マッサージローラ4は内周に隆起10に係合可能な段差部を有し、段差部は隆起10の基端側に係止されるとともに隆起10と鍔部との間に位置するマッサージ器。」


(2)甲第2号証
ア 甲第2号証に記載された事項
(ア)「[0018]
図1?図3に示すように、この実施形態の美容器11は、平面形状が略Y字状をなすハンドル12を備えており、このハンドル12は、使用者の手によって把持される棒状の把持部12bと、この把持部12bの先端に形成された二叉部12aとを有している。ハンドル12は、合成樹脂よりなる電気絶縁の芯材13と、一対の外装カバー14とから構成されている。外装カバー14,15は、合成樹脂材料より形成され、芯材13の外周に被覆されて複数のネジ16により同芯材13に固定されている。外装カバー14,15の外表面には、導電金属メッキが施されている。ここで、外装カバー14,15の外壁は、ハンドル12の導電部を構成している。
[0019]
図1及び図4に示されるように、前記ハンドル12の芯材13において二叉部12aに対応する部分には、一対のローラ支持軸17が設けられている。これらのローラ支持軸17の基端部(図4の右側の端部)は芯材13の中心部に形成された空間に嵌入され、同ローラ支持軸17の先端部(図4の左側の端部)は、二叉部12aから突出している。なお、図4において、ローラ支持軸17は、切断されていない状態で示されている。こうした構造により、これらのローラ支持軸17は、外装カバー14,15と接触しない離間状態で芯材13の先端部に支持されており、ハンドル12の外表面の導電金属メッキとローラ支持軸17とは、電気的に絶縁されている。ローラ支持軸17は金属材料により形成され、その両端部にはネジ部17aが形成されている。
[0020]
図1及び図4に示すように、前記両ローラ支持軸17には、円筒状をなすローラ18がそれぞれ各一対の軸受19を介して回転可能に支持されている。これらの軸受19は、磁性のある金属材料により構成されている。ローラ支持軸17の先端のネジ部17aには、ローラ18がローラ支持軸17から抜けることを防止するための雌ネジ部材20が螺合されている。各ローラ18は、合成樹脂よりなり、その外周面及び内周面に導電金属材料よりなる導電メッキが施されている。ここで、両ローラ18の内外両壁は、同ローラ18の導電部を構成している。」


(3)甲第3号証の1
ア 甲第3号証の1に記載された事項
甲第3号証の1には、次の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、請求人による仮訳に準じたものである。


(ア)「


(【0018】
本発明によるエクササイズ器具は、任意の好適なタイプのエクササイズ器具として構成することができる。例えば、器具は、例えばマッサージ器具等の筋骨格処置器具として構成することができ、それによって、器具のモジュールのうちの1つ又は複数が、自身の身体の1つ又は複数の特定の筋肉又はトリガポイントに圧力を加え、マッサージすることが可能である。器具はしたがって、人が、例えば頭痛、関節炎、背中/首/肩の痛み、足底筋膜の症状、テニス肘及び一般的な筋肉痛等の種々の筋骨格の状態の継続的な管理のために他者に自身が依存することを低減すること、並びに、自身の足、膝、脚、肩、鼠径部等を全体的に処置することを可能にする。)

(イ)「


(【0020】
エクササイズ器具が構成される器具の特定のタイプに関係なく、器具は、それらの特定の必要性及び要件に合うようにユーザによって構成することができる。例えば、エクササイズ器具がマッサージ器具として構成される場合、マッサージ器具は、様々な人々に合うように、又は、人の身体の特定の部分をマッサージするために使用することができるように、複数の様々な方法で構成することができる。)

(ウ)「


(【0068】
【図12】自身の上部胸椎並びに自身の上部僧帽筋及び肩甲挙筋を同時にマッサージするように、本発明の第1の好ましい実施形態によるエクササイズ器具を使用する人を示す図である。)

(エ)「


(【0116】
図17を参照すると、本発明の第2の好ましい実施形態によるエクササイズ器具のロッドモジュール100が実質的に円筒形の形状である。)

(オ)「


(【0119】
複数の等間隔に離間した平行な円形開口106が、ロッドモジュール100を通って横方向に延びる。開口106は、モジュール100を通って延びる開口105に対して垂直である。また、開口106は開口105に交差する。

(カ)「


(【0128】
本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具の小さい球状のボールモジュール130が、図19及び図20に示されている。)

(キ)「


(【0130】
モジュール130は、モジュール130の中心を通るようにモジュール130を貫通する円形開口131を含む。加えて、モジュール130は、開口131に対して垂直であり、開口131に交差するまでモジュール130内のみに延びる円形開口132を含む。)

(ク)「


(【0131】
開口131及び132は、それらの長さとは別に、互いに同一である。各開口131、132は、より幅広の部分134の下に凹んだより幅狭の部分133を含む。より幅狭の部分133は、より幅広の部分134からより幅狭の部分133内に延びる4つの平行な周方向に離間した溝135を含む。)

(ケ)「


(【0151】
図29は、モジュール100、120、130、140のうちの2つを任意の組み合わせで一緒に固定するために使用することができるプラグ200を示している。プラグ200は、プラスチックから製造され、2つの円筒部分202間に位置付けられる円形のフランジ201を含む。それぞれのより幅狭の円筒部分203が、円筒部分202のそれぞれから延びる。より幅狭の部分203のそれぞれは、1対の直径方向に対向する弾性的なラッチアーム204を含む。各ラッチアーム204は、アーム204の端に位置付けられ、プラグ200から外方に延びる突起205を含む。円形開口206が、プラグ200の一端からプラグ200の他端まで延びる。)

(コ)「


(【0152】
2つのモジュール100、120、130、140を、プラグ200の各端を各モジュールのそれぞれの開口に挿入することによって、プラグ200と一緒に着脱可能に固定することができる。プラグ200が開口に挿入されると、プラグ200のより幅狭の部分203は、開口のより幅狭の部分によって受け入れられ、プラグ200のより幅広の部分202は、開口のより幅広の部分によって受け入れられる。)

(サ)「


(【0153】
プラグ200が開口に挿入されると、開口のより幅狭の部分が各ラッチアーム204の突起205に対して押圧されることで、弾性的なラッチアーム204が互いに向かって移動する。プラグ200が開口に完全に挿入されると、突起205は、ラッチアーム204がそれらの元の位置に跳ねてラッチ凹部と噛み合うように開口のラッチ凹部によって受け入れられる。ラッチアーム204及びラッチ凹部はしたがって、プラグ200がモジュールの開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能である。)

(シ)「


(【0155】
ラッチアーム204及びラッチ凹部は、プラグ200が開口から意図せず引き出されることを阻止することが可能であるが、プラグ200は、それにもかかわらず、ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である。そのような回転を防止するために、図30に示されている変更されたプラグ210を、プラグ200の代わりに使用することができる。)

(ス)「


(【0160】
図31は、プラグ200と同様のプラグ220を示している。便宜上、プラグ200、220の同様の特徴は、同様の参照符号を用いて言及されている。
【0161】
プラグ220は、そのより幅狭の円筒部分203がプラグ200のより幅狭の円筒部分よりも長いという点でプラグ200とは異なる。また、プラグ220の円筒部分203は複数の溝204をそれぞれ含む。)

(セ)「


(【0162】
プラグ200の円筒部分203とは異なり、プラグ220の円筒部分203は、モジュール100、120、130、140のうちの1つの開口に挿入されるときに、その開口に交差するモジュールの他の開口を塞ぐことが可能であるように十分に長い。さらに、プラグ220の付加的な長さは、プラグ200と比較して、一部を形成する器具を補強することがより良く可能であることを意味する。)

(ソ)「


(【0165】
図33を参照すると、本発明の第2の好ましい実施形態による多機能エクササイズ器具のロックピン240が、細長い円筒シャフト241を含む。シャフト241は、第1の部分242、第2の部分243及び第3の部分244を含む。実質的に平坦なプラスチックヘッド245が、シャフト241の第3の部分244とオーバーモールドされる。
【0166】
ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は、モジュール100、120、130、140及びプラグ154、200、210、220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため、シャフト241は、それらの開口を通して挿入されることが可能である。)

(タ)「


(【0168】
ロックピン240のシャフト241が、モジュール100、120、130、140のうちの1つの開口にそれ自体が挿入されたプラグ154、200、210、220又は230に挿入されると、シャフト241は、プラグのラッチアームがモジュールの開口のラッチ凹部と離脱することを防止することが可能である。ロックピン240は、ラッチアームがラッチ凹部と離脱することを防止することによって、プラグが開口から意図せず取り外されることを防止するか又は少なくとも更に阻止することが可能である。ロックピンはしたがって、プラグがモジュールの開口から意図せず引き出されることにつながり得るラッチ凹部からのラッチアームの意図しない離脱のリスクを高める可能性がある比較的高い捩り荷重に器具が晒される使用に特に好適である。
【0169】
図34は、ロックピン240のシャフト241が、開口141の一端を通して中間のボールモジュール140に、及び、モジュール140に対して固定されるようにそれ自体が開口141の他端に挿入されているプラグ200の開口206に挿入されているときのロックピン240を示している。)

(チ)「


(【0170】
開口141によって受け入れられるプラグ200のラッチアーム204の突起205は、開口141内に位置付けられるラッチ凹部250によってそれぞれ受け入れられるため、プラグ200はそれによって、開口141から引き出されることが阻止される。ロックピン240のシャフト241は、ラッチアーム204が互いに向かって押されて突起205をラッチ凹部250から取り外すことを防止する。ラッチアーム204は、ロックピン240がプラグ200から取り外されると、上述したように専ら移動することができる。)


イ 技術事項3
(ツ)上記記載事項(ケ)に、「図29は、モジュール100、120、130、140のうちの2つを任意の組み合わせで一緒に固定するために使用することができるプラグ200を示している。」なる記載があり、かつ、上記記載事項(サ)に、「プラグ200が開口に挿入されると、開口のより幅狭の部分が各ラッチアーム204の突起205に対して押圧されることで、弾性的なラッチアーム204が互いに向かって移動する。プラグ200が開口に完全に挿入されると、突起205は、ラッチアーム204がそれらの元の位置に跳ねてラッチ凹部と噛み合うように開口のラッチ凹部によって受け入れられる。」なる記載が、上記記載事項(シ)に、「ラッチアーム204及びラッチ凹部が互いに噛み合う場合であっても開口に対して依然として回転することが可能である」なる記載があることより、“モジュール130,140がプラグ200に回転可能に支持される”と認められる。
また、上記記載事項(ソ)には、「ロックピン240のシャフト241の第1の部分242の直径は、モジュール100、120、130、140及びプラグ154、200、210、220及び230を通って延びる開口の直径よりも僅かに小さいため、シャフト241は、それらの開口を通して挿入されることが可能である。」なる記載があり、“ロックピン240が、プラグ200の開口を通して挿入されるものである”と認められる。
よって、これらの記載より、甲第3号証の1には、“ロックピン240にプラグ200を介して回転可能に支持されたモジュール130,140”が記載されていると認められる。

(テ)上記記載事項(ケ)には、「図29は、・・・プラグ200を示している。プラグ200は、・・・円形のフランジ201を含む」なる記載があり、また、図29を考慮するに、“フランジ201が、ラッチアーム204の基端側にある”ことは明らかである。

(ト)上記記載事項(ケ)には、「図29は、・・・プラグ200を示している。プラグ200は、・・・2つの円筒部分202間に位置付けられる円形のフランジ201を含む。それぞれのより幅狭の円筒部分203が、円筒部分202のそれぞれから延びる。より幅狭の部分203のそれぞれは、1対の直径方向に対向する弾性的なラッチアーム204を含む。各ラッチアーム204は、アーム204の端に位置付けられ、プラグ200から外方に延びる突起205を含む。」なる記載があり、また、図29を考慮するに、ラッチアーム204の突起205は、先端側に向かうほどプラグ200におけるモジュール130,140の回転中心との距離が短くなる斜面を有していることは明らかである。
よって、甲第3号証の1には、“ラッチアーム204の突起205は先端側に向かうほどプラグ200におけるモジュール130,140の回転中心との距離が短くなる斜面を有”することが記載されていると認められる。

(ナ)上記記載事項(タ)に、「図34は、ロックピン240のシャフト241が、開口141の一端を通して中間のボールモジュール140に、及び、モジュール140に対して固定されるようにそれ自体が開口141の他端に挿入されているプラグ200の開口206に挿入されているときのロックピン240を示している。」なる記載が、上記記載事項(チ)に、「開口141によって受け入れられるプラグ200のラッチアーム204の突起205は、開口141内に位置付けられるラッチ凹部250によってそれぞれ受け入れられる」なる記載があり、また、図34を考慮するに、“モジュール140が、内周に、ラッチ凹部を有すること”が記載されていると認められる。

上記記載事項(ア)ないし(チ)及び上記認定事項(ツ)ないし(ナ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第3号証の1には、以下の技術事項3が記載されていると認める。

「ロックピン240にプラグ200,220を介して回転可能に支持されたモジュール140により、身体をマッサージするマッサージ器において、プラグ200は、外方に延びる突起205を含む弾性的なラッチアーム204を含むと共に、プラグ200は、ラッチアーム204の基端側にフランジ201を有しており、ラッチアーム204の突起205は先端側に向かうほどプラグ200におけるモジュール140の回転中心との距離が短くなる斜面を有し、モジュール140は、内周に、ラッチアーム204と噛み合うラッチ凹部を有すること。」



(4)甲第4号証
ア 甲第4号証に記載された事項
(ア)「【0012】
また、前記ローラ部は、磁石、特にフェライトインジェクション磁石からなる円筒状のもので、その先端部は、球面突出状に形成されることを特徴とする。さらに、前記ローラ部の側面には、軸方向に所定の間隔で、樹脂リングが配設されるものである。尚、樹脂リングとしては、フッ素樹脂リング、テフロン(登録商標)(PTFE)リング等があるが、シリコンリングが望ましい。また、天然ゴム等の天然由来の樹脂からなるリングであっても良いものである。
【0013】
これによって、ローラ部の先端が球面突出状に形成されることから、ローラ部端部で顔面等の皮膚を刺激することも可能となるものである。また、ローラ部がフェライトインジェクション磁石によって形成されているので、磁気による血行促進効果を得ることができるものである。さらにまた、ローラ部側面に樹脂リングを配設したことによって、ローラ部と皮膚との摩擦抵抗を向上させることができるため、ローラ部を確実に回転させることが可能となるものである。また、ローラ部の側面と樹脂リングによって、皮膚との接触面に凹凸が形成されることから、皮膚への刺激を向上させることもできるものである。」

(イ)「【0019】
以下、本考案の実施例について、具体的に説明する。本考案に係るマグネット美容ローラ1は、図1に示すように、柄本体部2と、ローラ部5とによって構成される。
【0020】
前記柄本体部2は、本実施例では亜鉛合金によって成形され、図2及び図3に示されるように、使用者によって保持される把持部3と、この把持部3から一方の側に角度αで、例えば手前側に傾斜すると共に、角度βで両側に広がるように延出するローラ保持部4とによって構成され、さらにローラ保持部4は、前記把持部3から分かれて延出する大径部4aと、その先端に一体に形成された小径部4bとによって構成される。この小径部4bには、下記するベアリング8が固着される。また、前記把持部3は、一端側の前記ローラ保持部4の分岐部分から他端側に向けて漸次大きくなるように形成され、持ちやすさを向上させるものである。さらに、把持部3の断面は、この実施例では長円形状に形成されるものであるが、円形であっても良いものである。」

(ウ)「【0022】
前記ローラ部5は、図4に示すように、フェライトインジェクション磁石から円筒状に形成され、一端に球面状に突出する先端部51を一体に具備するローラ本体部50と、このローラ本体部50の側面52に装着された複数の樹脂リング6とによって構成される。この樹脂リング6は、シリコンリングであり、前記側面52の軸方向に所定の間隔で形成された環状溝55に装着されるものである。」

(エ)「【0023】
また、前記ローラ部5のローラ本体部50には、軸方向に形成された小径孔53と大径孔54とが連設され、小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿通され、大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され、前記大径孔54の内周面に固定される。これによって、前記ローラ部5は、前記ローラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである。」

(オ)「【0024】
以上に説明した構造によって、本考案に係るマグネット美容ローラ1は、把持部3を持ち、ローラ部5を顔などの皮膚に当てて移動させることによって、ローラ部5の凹凸及び磁気によって使用者の皮膚を刺激することができるものである。」


イ 技術事項4
(カ)上記記載事項(エ)には、「前記ローラ部5は、前記ローラ保持部4に対して回転自在に保持されるものである」なる記載があり、また、【図1】ないし【図3】を考慮するに、“ローラ部5が、ローラ保持部4の先端側に回転自在に保持され”ていることは明らかである。

(キ)上記記載事項(エ)には、「前記ローラ部5のローラ本体部50には、軸方向に形成された小径孔53と大径孔54とが連設され、小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿通され、大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され、前記大径孔54の内周面に固定される。」なる記載があり、また、【図1】及び【図4】を参酌するに、“ローラ部5が基端側にのみ穴を有し、その内部にローラ保持部4の先端が位置する非貫通状態でローラ保持部4に支持されていること”は明らかである。

(ク)上記記載事項(エ)には、「前記ローラ部5のローラ本体部50には、軸方向に形成された小径孔53と大径孔54とが連設され、小径孔53には前記ローラ保持部4の小径部4bが挿通され、大径孔54には前記小径部4bに固着されたベアリング8が挿入され、前記大径孔54の内周面に固定される」なる記載があり、“ローラ部5が、ベアリング8を介してローラ保持部4に支持されていること”は明らかである。


上記記載事項(ア)ないし(オ)及び上記認定事項(カ)ないし(ク)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第4号証には、以下の技術事項4が記載されていると認める。

「ローラ保持部4の先端側に回転自在に保持されたローラ部5を備え、ローラ部5により皮膚を刺激することができるようにした美容ローラにおいて、ローラ部5は、フェライトインジェクション磁石から形成され、ローラ部5は基端側にのみ穴を有し、ローラ部5は、その内部にローラ保持部4の先端が位置する非貫通状態でローラ保持部4にベアリング8を介して支持されていること。」


(5)甲第5号証
ア 甲第5号証に記載された事項
(ア)「【0001】
本発明は、ゲルマニウムの半導体を、肌アレルギーを起こし難いチタニウム製ローラーに突設し、このローラーを顔面に接触させ回転させて美顔にする美顔用マッサージ器に関するものである。」

(イ)「【0010】
本発明は、ローラー部と、把手部と、ローラー部と把手部とを連結する連結軸部とよりなる美顔用マッサージ器であって、ローラー部はチタニウム製円筒形ローラーでローラーの先端を閉塞し、ローラーの円周を4等分した外周面の軸線方向に円弧溝を刻設してローラーの外周面に4個の凸面を形成し、凸面に小穴を凹設し、前記小穴に表面を研磨したゲルマニウム粒子を突設し、ローラーの先端面にも表面を研磨したゲルマニウム粒子を突設し、ローラー外周面のゲルマニウム粒子と相隣る凸面のゲルマニウム粒子とを軸線方向で同位置にならないようにずらして配置した美顔用マッサージ器である。
【0011】
本発明の美顔用マッサージ器は、ローラー部1と、把手部2と、ローラー部1と把手部2とを連結する連結軸部3とよりなる。」

(ウ)「【0016】
把手5の中空部10には把手5の先端中央から突出させた連結軸部3の連結軸11を突出させ、連結軸11の先端部にベアリング12を圧入し、連結軸11の基端にはL型ベアリング13を回転自在に嵌着し、円周溝14に座金15を嵌めてL型ベアリング13を連結軸11に固着し、この連結軸部3をローラー4の中空部10に、ベアリング12を回転自在で、L型ベアリング13を圧入して挿入する。ローラー部1と連結軸部3の構成は至極単純であるが、連結するという目的が達成できる。」


イ 技術事項5
(エ)上記記載事項(ウ)には、「把手5の中空部10には把手5の先端中央から突出させた連結軸部3の連結軸11を突出させ、連結軸11の先端部にベアリング12を圧入し、連結軸11の基端にはL型ベアリング13を回転自在に嵌着し、円周溝14に座金15を嵌めてL型ベアリング13を連結軸11に固着し、この連結軸部3をローラー4の中空部10に、ベアリング12を回転自在で、L型ベアリング13を圧入して挿入する。ローラー部1と連結軸部3の構成は至極単純であるが、連結するという目的が達成できる。」なる記載があり、“ローラー4が、連結軸11の先端部に回転可能に支持された”ものであること、及び、“ローラー4が、連結軸11にL型ベアリング13及びベアリング12を介して支持されていること”は明らかである。

(オ)上記記載事項(イ)には、「ローラー部はチタニウム製円筒形ローラーでローラーの先端を閉塞し」なる記載があり、“ローラー4が基端側にのみ穴を有し”ていることは明らかである。

(カ)上記認定事項(エ)及び(オ)、及び、【図6】を考慮するに、“ローラー4が、その内部に連結軸11の先端が位置する非貫通状態で連結軸11に支持されていること”は明らかである。


上記記載事項(ア)ないし(ウ)及び上記認定事項(エ)ないし(カ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第5号証には、以下の技術事項5が記載されていると認める。


「連結軸11の先端部に回転可能に支持されたローラー4を備え、ローラー4を顔面に接触させ回転させて美顔にする美顔用マッサージ器において、ローラー4はチタニウム製であり、ローラー4は基端側にのみ穴を有し、ローラー4は、その内部に連結軸11の先端が位置する非貫通状態で連結軸11にL型ベアリング13及びベアリング12を介して支持されていること。」


(6)甲第6号証
ア 甲第6号証に記載された事項
(ア)「2.7 スナップフィットの分類」(第【151】頁右欄第25行目)

(イ)「(2)ロック ロックは柔軟性を必要とするために強度が低くなりやすい。そのためロックは取付け方向と反対の方向に拘束する場合に使用され、他の方向はロケータにより拘束する場合が多い。ロックは図8に示す5種類に分類できる。」(第【152】頁右欄6ないし10行)

(ウ)「(a)カンチレバーロック カンチレバーロックは最も一般的なスナップフィットであり,図9に示すように,組立/分解を可能にするための撓み部と拘束するための保持部から構成される。梁状の撓み部の例を図10に,保持部の例を図11に示す。図12に示すように,梁の先端に空かを有したり,T形やL形の保持機構を有するループと呼ばれているものもある。このループは,引張荷重が作用した場合もその反力が梁の中立軸上に作用
するため,締結保持力が大きい。」(第【152】頁右欄7行ないし第【153】頁左欄1行)

(エ)「(e)アニュラロック アニュラロックは組立と保持の際に円筒状のうねとそれに対となった部分の撓みによるものである。アニュラロックはキャッチとエッジが円筒状に連なったものと考えることができる」(第【153】頁右欄第9?12行目)


イ 技術事項6
(オ)上記記載事項(ウ)の「カンチレバーロックは最も一般的なスナップフィットであり,図9に示すように,組立/分解を可能にするための撓み部と拘束するための保持部から構成される。梁状の撓み部の例を図10に,保持部の例を図11に示す。」なる記載に基づき、図面を参照するに、甲第6号証には、カンチレバーロックにおいて、“保持部が、先端に向かって下がる斜面を有する”ことが記載されている。

上記記載事項(ア)ないし(エ)及び上記認定事項(オ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、甲第6号証には、以下の技術事項6が記載されていると認める。

「先端に向かって下がる斜面を有する保持部と撓み部とを含むカンチレバーロック」


(7)甲第7号証
ア 甲第7号証に記載された事項
(ア)「【0017】
この一実施の形態の樹脂製のフランジ付き滑り軸受11は、ファクシミリ装置の紙送り機構の支持板12に貫通形成された円形の軸受挿通孔12aに嵌合する円筒状の筒部11aと、該筒部11aの基端部外周から半径方向外方に向かって張り出して設けられて前記支持板12への当接によって前記筒部11aの軸方向の位置決めを果たすフランジ11bと、筒部11aの外周に突出する弾性係止片11cとを、合成樹脂により一体成形したもので、筒部11aに挿通された軸を回転自在に支承する。支持板12は、JIS規格に準じた市販の鋼鈑材料のプレス成形によって形成されたものである。」


(8)甲第8号証
ア 甲第8号証に記載された事項
(ア)「本考案は軸受、特にその取付が容易な軸受に関するものである。
軸受を低コストにて固定物に取付けるためには、板材や鋳物部等に最も加工の仕易い円筒形状の穴を穿け、そこに軸受を圧入し、接着し、又はカシメ或いはネジ等の締結手段を用いスラスト及び円周方向に固定する方法が一般的である。」(明細書第1頁13ないし20行)

(イ)「本考案に於いて第6図(a)、(b)に示すように回転軸用筒状軸受本体1の軸方向の一端部に均一肉厚のフランジ3を一体に形成し、フランジ3を除く筒状軸受本体1部分に円筒形スペース2の軸に平行に延びる水平の切り込み溝4を2ヶ所以上、円周方向に均等に配分して形成し、上記筒状軸受本体1の外周には上記フランジ3と反対側に前記溝4の位置に対応して軸方向に延びる断面山形の爪5を設ける。」(明細書第4頁11ないし19行)



(9)甲第9号証
ア 甲第9号証に記載された事項
(ア)「1は合成樹脂製の軸受であり、該軸受1は円筒部10と該円筒部10の一方の端部外周面に径方向外方に延設された鍔部11と該円筒部10の外周面に該外周面から鍔部11側に斜方向に延設された1つの舌片部12と該舌片部12の端部に該鍔部11側に向けて延設された係合片部13と該係合片部13に該鍔部11裏面との隙間t1、t2、t3を漸次縮小するように形成された複数個の段部14(本実施例においては3個)とを備えている。」(第2頁第4欄36ないし43行)

(イ)「上述した固定構造において、該軸受1は係止片部13が取付部材2の円孔20に連なって形成された切欠き溝22に係合することによりその円周方向の回転が阻止されて回り止め手段を形成し、また鍔部11裏面と係止片部13の段部14との隙間に該取付部材2を挟持することによりその軸方向の移動が阻止されて該軸受の抜け止め手段を形成する。」(第3頁第5欄26ないし32行)

(ウ)「第6図及び第7図は、本考案の第2の実施例を示すものである。
この実施例は、取付部材2に円孔20と該円孔20に連なる切欠き溝22が相対向して2つ形成されており、軸受1の円筒部10の外周面には端部に係止片部13を備えた舌片部12が相対向して2つ形成されているものである。」(第3頁第5欄33ないし38行)



(10)甲第10号証
ア 甲第10号証に記載された事項
(ア)「フレーム1にモールドベアリング4が矢印Bの方向に挿入される。モールドベアリング4の嵌合部分には5で示す爪が設けられており、モールドベアリング4が挿入される時、フレーム1の穴の縁で押されてモールドベアリング4の本体内に引っ込められるが、モールドベアリング4がフレーム1に押し付けられた時点で、爪5のバネ性により飛び出す。
従ってモールドベアリング4を組立てる場合、モールドベアリング4をフレーム1に十分に押し込むのみで良い。」(明細書第4頁8ないし18行)




(11)甲第11号証
ア 甲第11号証に記載された事項
(ア)「第1図、第2図は本発明の一実施例の斜視図と、これをフレームに固定した時の断面図、第3図はその要部の断面図、第4図はこれに用いるロッカーの斜視図を示す。図において1は軸受本体、2は軸の貫通孔、3はフレームに固定するため軸受本体1の外周に設けられたフック部、4は該フック部3と軸の貫通孔2との間に設けられたロッカー5を挿入するための間隙である。
このような軸受をフレーム6に固定するには、フレーム6の取付穴に本軸受フック部3の方向から挿入すれば、フック部3の傾斜部7と間隙4のためフック部3はたわみ簡単にフレーム6の穴に挿入でき、その後間隙4に第4図に示すロッカー5を挿入すれば軸受は固定される。」(第1頁右下欄13行ないし第2頁左上欄6行)


(12)甲第12号証
ア 甲第12号証に記載された事項
(ア)「【0002】
中国医学では既に人体に分布し、各器官を反映するツボの存在を証明している。手や道具を使って人体にあるツボを押す、或いは人体の器官が痛みを感じる部分に対応するツボを押すことで、強く健康的な体を作り、美容や保健の目的に達するため、頻繁にツボマッサージをするのは、血液循環を促進し、新陳代謝を速め、元気を回復し、疲れを取り、ストレスを軽くする、ダイエットできるなど、素晴らしい効果をもたらす。」

(イ)「【0007】
最良実施例として、各ローラーは接続部品、内柱、二つのベアリング、軸受及び、外カバーを具有し、各ローラー3の接続部品31は球状ヘッド22を通じて互いに嵌合して固定する。また、接続部品31はハンドル2の軸を中心とするある角度に開いて、該二つのベアリング33をそれぞれ軸受34の両端に設置し、且つ二つのベアリング33と軸受34を同時に接続部品31の外側に套設する。該内柱32をしっかりと二つのベアリング33及び軸受34の外側に套設し、外カバー35の中に、しっかりと内柱32を嵌合することで、二つのベアリング33、外カバー35及び内柱32が回転可能の構造となる。該ローラーの外カバーの表面に若干の磁石を嵌め込む。」



(13)甲第13号証の1
ア 甲第13号証の1に記載された事項
甲第13号証の1には、次の事項が記載されている。なお、括弧内の日本語は、請求人による仮訳に準じたものである。

(ア)「


((57)要約
本考案は、折り畳み式Y字形構造のマッサージ棒に関する。半導体鉱物質を含むマッサージ具を使えば、皮膚の正負イオンを正常化に導き、皮膚に欠乏している負イオンを補い、しみ、しわ、くすみ、二重あご、首のしわ等の問題を解決することができる。本考案はハンドル、マッサージヘッド、および回転リンクからなり、ハンドルはリンクを介してマッサージヘッドと連結され、ハンドル下端に回転連結式調節ハンドルを内蔵し、ハンドル上端に凹状係止溝が開設されており、回転リンクの一端がハンドル上端の凹状係止溝内に係合しており、他端はマッサージヘッドの屈曲リンクと連結し、マッサージヘッドは、屈曲リンクおよび2組の軸受、軸スリーブ、マッサージローラ、および固定ねじを備え、軸受と軸スリーブが屈曲リンクの両端に固定設置され、その外部にマッサージローラを嵌接し、マッサージヘッドと、固定されたマッサージヘッドリンクとがY字形状をなす。健康、美容、マッサージ機能を一体化しており、便利に素早く操作・使用することができ、折り畳んで角度を切り替えてマッサージを行い、携帯するのに便利である。)

(イ)「


(【請求項1】
折り畳み式Y字形構造のマッサージ棒において、ハンドル(1)と、マッサージヘッド(2)と、回転リンク(3)とからなり、ハンドル(1)は折り畳み式回転リンク(3)を介してマッサージヘッド(2)と連結され、ハンドル(1)下端に回転連結式調節ハンドル(4)を内蔵し、ハンドル(1)上端に凹状係止溝が開設されており、回転リンク(3)の一端はねじA(5)とキャップA(6)およびキャップB(7)によりハンドル(1)上端の凹状係止溝内に係合され、他端はねじB(8)とキャップC(9)とを介してマッサージヘッドの屈曲リンク(10)と連結され、マッサージヘッド(2)は、屈曲リンク(10)および2組の軸受(11)、軸スリーブ(12)、マッサージローラ(13)、および固定ねじ(14)を備え、軸受(11)と軸スリーブ(12)は屈曲リンク(10)の両端に固定設置され、その外部にマッサージローラ(13)を嵌接し、マッサージヘッド(2)と、固定されたマッサージヘッドリンク(3)とがY字形状をなすことを特徴とする折り畳み式Y字形構造のマッサージ棒。)

(ウ)「


(【0004】
本考案はハンドル、マッサージヘッド、および回転リンクからなる。ハンドルは折り畳み式回転リンクを介してマッサージヘッドと連結され、ハンドル下端に回転連結式調節ハンドルを内蔵し、ハンドル上端に凹状係止溝が開設されており、回転リンクの一端はねじAとキャップAおよびキャップBによりハンドル上端の凹状係止溝内に係合し、他端はねじBとキャップCとを介してマッサージヘッドの屈曲リンクと連結され、マッサージヘッドは、屈曲リンクおよび2組の軸受、軸スリーブ、マッサージローラ、および固定ねじを備え、軸受と軸スリーブが屈曲リンクの両端に固定設置され、その外部にマッサージローラを嵌接し、マッサージヘッドと、固定されたマッサージヘッドリンクとがY字形状をなす。)



2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と、引用発明1とを対比すると、引用発明1の「マッサージ器」が本件特許発明1の「美容器」に相当し、以下同様に、「グリップ1」が「ハンドル」に、「軸2」が「支持軸」に、「マッサージローラ4」が「回転体」に、「回動可能」が「回転可能」に、「軸支」が「支持」に、「マッサージ効果」が「美容的作用」に、「鞘3」が「軸受け部材」に、各々相当する。
また、引用発明1の「隆起10」は、本件特許発明1の「弾性変形可能な係止爪」と「突出係止部」である点において共通する。

したがって、本件特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致しているということができる。

(一致点)
「基端においてハンドルに支持された支持軸と、
前記支持軸の先端側に回転可能に支持された回転体とを備え、その回転体により身体に対して美容的作用を付与するようにした美容器において、
前記回転体は基端側に穴を有し、回転体は、その内部に前記支持軸の先端が位置する状態で前記支持軸に軸受け部材を介して支持されており、
軸受け部材は、前記回転体の穴とは反対側となる先端で支持軸に抜け止めされ、
前記軸受け部材からは突出係止部が突き出るとともに、軸受け部材は突出係止部の前記基端側に鍔部を有しており、
前記回転体は内周に突出係止部に係合可能な段差部を有し、前記段差部は突出係止部の前記基端側に係止されるとともに、前記突出係止部と前記鍔部との間に位置する、美容器。」

そして、本件特許発明1と引用発明1とは、以下の点で相違している。

(相違点1)
本件特許発明1においては、支持軸が、基端においてハンドルに抜け止め固定されているのに対して、引用発明1においては、軸2が、グリップ1に支持されているものの、基端においてグリップ1に抜け止め固定されているかが不明である点。
(相違点2)
本件特許発明1においては、軸受け部材からは弾性変形可能な係止爪が突き出るとともに、同係止爪は前記先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有し、かつ、回転体の段差部が前記係止爪の前記基端側に係止されるものであるのに対して、引用発明1においては、鞘3から隆起10が突き出るとともに、マッサージローラ4の段差部が隆起10の基端側に係止されるものであるものの、隆起10が弾性変形可能であるかが不明であり、かつ、隆起10は、先端側に向かうほど軸受け部材における回転体の回転中心との距離が短くなる斜面を有するものではない点。
(相違点3)
本件特許発明1においては、回転体が基端側にのみ穴を有し、かつ、回転体が、非貫通状態で支持軸に支持されているのに対して、引用発明1においては、マッサージローラ4が基端側及び先端側に穴を有し、かつ、マッサージローラ4が、貫通状態で軸2に支持されている点。



(2)相違点について判断
上記相違点について検討するに、事案に鑑み、先に相違点2及び3について検討する。

ア 相違点2について
技術事項3は、上記1(3)イのとおり、“プラグ200から突き出た弾性変形可能な突起205を有するラッチアーム204が、モジュール130、140のラッチ凹部に係止して、ロックピン240にモジュール130,140を回転可能に支持する”構造に関するものである。
また、甲第6号証には、スナップフィットにおけるロックの分類が示されており、その分類として「カンチレバーロック」及び「アニュラロック」が各々示されている(上記1(6)アの記載事項(ア)?(エ)参照)。

よって、甲第6号証によれば、スナップフィットとして、「アニュラロック」及び「カンチレバーロック」は共に代表的な構造の一つであり、かつ、技術事項3においては、マッサージ器の回転体を回転可能に軸支する構造として、甲第6号証における「カンチレバーロック」に類似した、「ラッチアーム204」を用いた構成が用いられていることが見て取れる。

そして、甲第1号証においては、隆起10が用いられる結合様態を「スナップ結合」と称しており(上記1(1)アの記載事項(ク)参照)、これは、技術事項6の「スナップフィット」と同義であると認められる。
よって、引用発明1と技術事項3とは、共に、マッサージ器であり、かつ、「スナップ結合」により回転体を回転可能に支持する構成を有している点において、共通しているものである。

しかしながら、引用発明1の隆起10を、技術事項3の「ラッチアーム204」、あるいは、技術事項6の係止爪に置き換えることは、以下に列挙する理由により、当業者が容易に想到することができるものとは認められない。

(ア)引用発明1において、隆起10とマッサージローラ4の段差部とが係合する状態にマッサージローラ4を配置する際に、マッサージローラ4を押し開けるものであり(上記1(1)アの記載事項(サ)を参照)、装着の際にマッサージローラ4が変形することは明らかである一方、隆起10が変形するか否かについては不明である。
よって、引用発明1における鞘3とマッサージローラ4との結合構造において、両者を結合した状態に配置する際には、隆起10が変形するか否かにかかわらず、マッサージローラ4の変形が、主要な作用を果たすものであることは明らかである。
一方、技術事項3におけるプラグと回転体モジュールとを結合させる際には、「ラッチアーム204」が変形するものであると認められる。
よって、引用発明1における隆起10と、技術事項3における「ラッチアーム204」とは、結合構造における役割が異なるものであるから、引用発明1における隆起10を、技術事項3における「ラッチアーム204」に置き換えることには動機付けがなく、当業者が容易になし得るものではない。
また、技術事項6の「カンチレバーロック」についても、技術事項3と同様であるから、引用発明1における隆起10を、「カンチレバーロック」における係止爪に置き換えることにも、動機付けがなく、当業者が容易になし得るものではない。

(イ)上記(ア)のとおり、引用発明1においては、スナップ結合を行う際に、マッサージローラ4の変形が、主要な作用を果たすものであるところ、引用発明1の隆起10を技術事項3のラッチアーム204又は技術事項6の係止爪に置き換えた場合、スナップ結合における内側、外側の双方の部材が、結合の際に主要な作用を果たす程度に大きな変形をするものとなり、結合した状態が外れやすいものとなることは明らかである。
よって、引用発明1における隆起10を、技術事項3のラッチアーム204又は技術事項6の係止爪に置き換えることにより、スナップ結合が有する物体の結合という機能が損なわれることとなるから、当該置き換えには阻害要因が存在するものと認められる。

当該判断に関連して、審判請求書においては、“係止爪が変形しないように、マッサージローラの素材を選択することは、単なる設計事項にすぎない”旨の主張がされている(審判請求書第53頁第6?13行目)。しかしながら、引用発明1におけるマッサージローラ4は、肌のマッサージを行うことを目的とするものであり(上記1(1)アの記載事項(オ)及び(コ)参照)、その本来の目的に適した硬さのゴムを採用することが自然であるところ、スナップ結合の状態を維持するために、上記本来の目的を損なってまで、マッサージローラ4の硬さ変更することは、当業者が容易に想到することができるものとは認められない。
したがって、当該主張には理由がない。


(ウ)引用発明1は、マッサージローラ4が軸2に支持された状態において、軸2を外すことなく、マッサージローラ4を押し広げることにより、スナップ結合を解除して、マッサージローラ4のみを容易に交換できるものである(上記1(1)アの記載事項(キ)及び(コ)参照)。一方、技術事項3においては、ロックピンを外さないとスナップ結合が解除できないものであるから、軸を外すことなく、回転体のみを容易に交換することはできない。
そのため、マッサージローラ4のみを容易に交換できるスナップ結合を有する引用発明1において、その構成を有しない技術事項3のスナップ結合の構成を採用することには、動機づけが存在しない。



なお、甲第6号証に記載の事項を考慮しても、上記のとおりである以上、甲第6号証を用いない場合、上記と同様、引用発明1の隆起10を、技術事項3の「ラッチアーム204」に置き換えることは、当業者が容易に想到することができるものとは認められない

また、甲第7号証には、外周に突出する弾性係止片11cを有する滑り軸受11が記載されているが、上記と同様、引用発明1の隆起10をこれらの係止爪に置き換えることは、当業者が容易に想到することができるものではない。
甲第8号証ないし甲第11号証についても同様である。

よって、本件特許発明1の相違点2に係る事項は、甲第6号証ないし甲第11号証の有無にかかわらず、引用発明1、技術事項3、又は、技術事項6から、当業者が容易に想到することができるものではない。
また、当該相違点2に係る事項は、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第12号証の1、及び、甲第13号証の1のいずれにも記載されていない。


イ 相違点3について
技術事項4は、上記1(4)イのとおり、「ローラ保持部4の先端側に回転自在に保持されたローラ部5を備え、ローラ部5により皮膚を刺激することができるようにした美容ローラにおいて、ローラ部5は、フェライトインジェクション磁石から形成され、ローラ部5は基端側にのみ穴を有し、ローラ部5は、その内部にローラ保持部4の先端が位置する非貫通状態でローラ保持部4にベアリング8を介して支持されていること。」に関するものである。
技術事項5は、上記1(5)イのとおり、「連結軸11の回転可能に支持されたローラー4を備え、ローラー4により身体に対して美容的作用を付与するようにした美顔用マッサージ器において、ローラー4はチタニウム製であり、ローラー4は基端側にのみ穴を有し、ローラー4は、その内部に連結軸11の先端が位置する非貫通状態で連結軸11にL型ベアリング13及びベアリング12を介して支持されていること。」に関するものである。


引用発明1と技術事項4、5とは、共に、“回転体を軸受け部材を介して軸に支持するマッサージ器”に関するものである点で共通する。

しかしながら、引用発明1は、マッサージローラ4が、柔軟に変形する中空ローラとして形成され、また、鞘と軸から突出する領域で内径が他の領域より大きいことにより、その自由端が特に容易く柔軟に変形可能とされている(上記1(1)アの記載事項(エ)、(キ))のに対して、甲第4号証には、ローラ部5がフェライトインジェクション磁石からなることが記載されており(上記1(4)アの記載事項(ア)及び(ウ))、また、甲第5号証には、ローラー4がチタニウム製であることが記載されている(上記1(5)アの記載事項(ア))ことより、技術事項4のローラ部5及び技術事項5のローラー4は、いずれも、その材質から見て、先端側が柔軟に変形可能ではないものであると認められる。
よって、仮に、引用発明1において、技術事項4又は5の回転体を適用した場合、マッサージローラ4の先端部は、容易く柔軟に変形可能なものではなくなるから、引用発明1のマッサージローラ4の先端部が本来有している身体輪郭に適用することができるという効果(上記1(1)アの記載事項(オ))を低減することとなる。よって、当該適用は、マッサージローラ4が有する機能を損なうものであるため、その適用には阻害要因が存在する。

また、甲第1号証には、「本発明の課題は、冒頭で述べた種類のマッサージ器を、マッサージローラで、怪我の危険性を生じさせずに、突起した身体部分に可能な限り近くに達することができるように形成することにある。」(上記1(1)アの記載事項(ウ))及び「マッサージローラが中空ローラから形成されており、弾性材料から成るため、その軸を超えて突出する自由端部は柔軟に変形されることができ、それによってマッサージローラは身体輪郭に適応することができ、それはマッサージの効果を改善し、急な方向転換を伴う、例えば鼻領域または眼窩の始まる領域などの主要部分に達する可能性を促進する」(上記1(1)アの記載事項(オ))と記載されており、また、その実施例として、自由端部である先端側に穴がある貫通状態のものが示されている(Fig.1参照)。そして、先端側を閉塞し非貫通状態とすることについての記載も示唆も無い。
しかるに、引用発明1は、“自由端部が柔軟に変形されることができ、それによってマッサージローラ4が身体輪郭に適応することができる”なる効果を有するものであり、当該効果が、マッサージローラ4が先端側に穴を有する中空ローラである構成に起因していることは明らかであると認められる。
よって、仮に、引用発明1において、技術事項4又は5の回転体の構造を適用して、マッサージローラ4を基端側にのみ穴を有し、内部に軸3の先端が位置する非貫通状態で支持されるものとした場合、マッサージローラ4の先端部が閉塞されることにより、その柔軟性が損なわれることは明らかであり、引用発明1のマッサージローラ4の先端部が本来有している身体輪郭に適用することができるという効果(上記1(1)アの記載事項(オ))を低減することとなる。よって、当該適用は、マッサージローラ4が有する機能を損なうものであるため、その適用には阻害要因が存在する。

この点に関して、請求人は審判請求書にて、甲第1号証の1に「部材がグリップの反対側のマッサージローラの前端面を超えて突出することはない。」との構成を採用することで、「そのためマッサージローラをその自由前端面とともに直接突起する身体部分まで導くことができる」との作用効果を生じさせることが記載されていることを根拠として、“甲1発明ではマッサージローラ4の前端面から、軸2を突出させないということを主眼としている”と主張した上で、“支持軸の先端が回転体から露出していないという点において、甲第1号証並びに甲第4号証及び甲第5号証における課題及び解決手段は、共通しているため、その点が動機付けとなる。”と主張し(第55頁21ないし23行)、また、平成30年1月26日付け口頭審理陳述要領書にて、“甲第1号証では、支持軸の露出による怪我を問題視しているのであるから、マッサージローラ4の先端部(自由端)を非貫通とすることについては、技術的意義が没却されるということにはならない”と主張している(第17頁2ないし4行)。
しかしながら、甲第1号証の1における、上記請求人主張に関する箇所(第1欄43行ないし第2欄3行)には、上記記載に引き続き、「マッサージローラが中空ローラから形成されており、弾性材料から成るため、その軸を超えて突出する自由端部は柔軟に変形されることができ、それによってマッサージローラは身体輪郭に適応することができ、それはマッサージの効果を改善し、急な方向転換を伴う、例えば鼻領域または眼窩の始まる領域などの主要部分に達する可能性を促進する」なる作用効果も記載されているから、引用発明1は、“マッサージローラ4の前端面から、軸2を突出させないということ”のみを主眼としているとは認められず、“マッサージローラ4の自由端部が柔軟に変形されること”にも、技術的意義が認められるものである。
そして、“マッサージローラ4の自由端部が柔軟に変形されること”なる、技術的意義を没却させてまで、技術事項4、5を適用することは、当業者が容易に想到することができるとは言うことはできない。


上記のことより、本件特許発明1の相違点3に係る事項は、引用発明1及び技術事項4又は5から、当業者が容易に想到することができたものではない。
また、当該相違点3に係る事項は、甲第2号証、甲第3号証の1、甲第6号証ないし甲第11号証にも記載されていない。
甲第12号証、及び、甲第13号証の1には、甲第4号証、甲第5号証と同じく、回転体が基端側のみに穴を有し、非貫通状態で支持軸に支持された構成が記載されている(甲第12号証の【図2】及び【図4】、甲第13号証の1の図1及び図3を参照)が、これらにおいても、回転体の先端側が柔軟に変形可能である旨の記載がないから、上記技術事項4、5についての検討と同様である。



ウ 小括
(ア)無効理由1について
以上のことより、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、及び、技術事項4又は5に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものとは言えない。
(イ)無効理由2について
以上のことより、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、技術事項4又は5、及び、技術事項6に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものとは言えない。
(ウ)無効理由3について
以上のことより、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、技術事項4又は5、技術事項6、及び、甲第7号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものとは言えない。



3 本件特許発明2について
(ア)無効理由1について
上記2(2)ウ(ア)のとおり、本件特許発明1が、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、及び、技術事項4又は5に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものではない以上、本件特許発明1の特定事項を全て有しつつ更に限定したものである本件特許発明2についても、同じく、当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ)無効理由2について
上記2(2)ウ(イ)のとおり、本件特許発明1が、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、技術事項4又は5、及び、技術事項6に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものではない以上、本件特許発明1の特定事項を全て有しつつ更に限定したものである本件特許発明2についても、同じく、当業者が容易に発明することができたものではない。
(ウ)無効理由3について
上記2(2)ウ(ウ)のとおり、本件特許発明1が、引用発明1、甲第2号証、甲第12号証又は甲第13号証の1に記載された事項、技術事項3、技術事項4又は5、技術事項6、及び、甲第7号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、原出願前に当業者が容易に発明することができたものではない以上、本件特許発明1の特定事項を全て有しつつ更に限定したものである本件特許発明2についても、同じく、当業者が容易に発明することができたものではない。


4 小括
よって、無効理由1ないし3によっては、本件特許発明1ないし2に係る特許を無効とすることはできない。



第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1ないし3及び提出した証拠方法によっては、本件特許発明1ないし2についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人らが負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-03-15 
結審通知日 2018-03-19 
審決日 2018-03-29 
出願番号 特願2014-197056(P2014-197056)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大瀬 円  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 平瀬 知明
五閑 統一郎
登録日 2015-12-04 
登録番号 特許第5847904号(P5847904)
発明の名称 美容器  
代理人 冨宅 恵  
代理人 小林 徳夫  
代理人 ▲高▼山 嘉成  

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