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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1349612
審判番号 不服2018-4975  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-11 
確定日 2019-03-07 
事件の表示 特願2014- 77808「透明樹脂層、粘着剤層付偏光フィルムおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-200698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成26年4月4日
拒絶理由通知: 平成29年11月7日
手続補正: 平成30年1月11日
拒絶査定: 平成30年1月15日(以下、「原査定」という。送達日:同年同月25日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成30年4月11日
手続補正: 平成30年4月11日 (以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、

[補正前]
「【請求項1】
画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光フィルムよりも、視認側に配置される透明樹脂層であって、
前記透明樹脂層は、表面抵抗値が1.0×10^(13)Ω/□以下であることを特徴とする透明樹脂層。」

[補正後]
「【請求項1】
画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光フィルムよりも、視認側に配置される透明樹脂層であって、
前記透明樹脂層の前記偏光フィルムが配置された側の反対面に、入力装置または透明基体が配置され、
前記透明樹脂層は、表面抵抗値が1.0×10^(13)Ω/□以下であることを特徴とする透明樹脂層。」

と補正するものであって、「画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光フィルムよりも、視認側に配置される」とされていた「透明樹脂層」の配置について、さらに「前記透明樹脂層の前記偏光フィルムが配置された側の反対面に、入力装置または透明基体が配置され」ることを限定するものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。

2 引用例
原査定の拒絶理由に引用された.特開2007-2112号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。

「【0001】
本発明は、絶縁性基材の表面抵抗値を低下させる方法に関する。詳しくは、本発明は、被着体表面を所定の期間、機械的及び電気的に保護するための表面保護用粘着フィルムの粘着剤層が有している帯電防止能を利用し、被着体である基材の表面抵抗値を低下させる方法に関する。より詳しくは、本発明は、液晶パネル、プラズマディスプレイ、CRT(ブラウン管)等のディスプレイ製造に使用される、偏光板等の光学基材の表面抵抗値を、上記帯電防止能を利用することにより低下させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワードプロセッサ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイ製造に使用される偏光板等の光学基材や電子基板等の表面には、通常、表面保護及び機能性付与の目的でポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の透明な表面保護フィルムが粘着剤層を介して積層される。
【0003】
これら表面保護粘着フィルムは、通常、表面が剥離処理されたセパレータを粘着面に貼り合わせた形態で流通し、保護粘着フィルムとして使用する際に前記セパレータを剥がし、被着体へ貼り合わせる場合が多い。この、セパレータを剥がす時に、静電気による剥離帯電が発生し、これが原因となって液晶や電子回路が破壊されるというトラブルが発生することがある。さらには、保護フィルムとしての機能を終えて被着体から剥離される際にも、今度は被着体との間で生ずる剥離帯電により、上記と同様なトラブルが発生することがある。」

「【0009】
ここに、液晶パネル等のディスプレイ装置を製造するために用いられ、発光部の前面あるいは背面に配置される光学フィルム等の光学基材は、偏光板などの各種機能を有する基材が複数積層された、複合積層体とされて組み込まれているのが一般的な態様である。
・・・」

「【0011】
本発明の目的は、絶縁性の基材、中でも液晶パネル、プラズマディスプレイ、CRT等の各種ディスプレイの製造に使用される、偏光板等の光学基材用の表面保護粘着フィルムの粘着剤層が有する導電性機能を利用し、前期絶縁性基材の表面抵抗値を低下させる方法を提供するとともに、前記粘着剤層を好ましく形成し得る、透明性に優れ着色もほとんどなく、再剥離性に優れ、剥離時の剥離帯電が少ない帯電防止粘着剤を提供することである。」

「【0014】
また、本発明は、粘着フィルムの粘着剤層の表面抵抗値が、1.0×10^(12)(Ω/□)未満であることを特徴とする上記発明に記載の表面抵抗値を低下させる方法に関する。」

3 引用発明
上記【0003】の「・・・これが原因となって液晶や電子回路が破壊されるというトラブルが発生することがある。さらには、保護フィルムとしての機能を終えて被着体から剥離される際にも、今度は被着体との間で生ずる剥離帯電により、上記と同様なトラブルが発生することがある。」との記載から、上記の保護フィルムは液晶上に配置された被着体に貼付けられているものであることが分かる。
そうすると、上記記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「液晶上に設けられた偏光板等の光学基材の表面に粘着剤層を介して積層される透明な表面保護フィルムに用いられる粘着剤層であって、粘着剤層の表面抵抗値が、1.0×10^(12)(Ω/□)未満である、透明性に優れた粘着剤層。」(以下、「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明の「液晶上に設けられた偏光板」と、本願補正発明の「画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光フィルム」とは、「画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光部材」である点で共通する。
また、引用発明の「透明性に優れた粘着剤層」、及び「透明な表面保護フィルム」は、それぞれ本願補正発明の「透明樹脂層」、及び「透明基体」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明には、次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光部材よりも、視認側に配置される透明樹脂層であって、
前記透明樹脂層の前記偏光フィルムが配置された側の反対面に、透明基体が配置され、
前記透明樹脂層は、表面抵抗値が1.0×10^(13)Ω/□以下であることを特徴とする透明樹脂層。」

(相違点)本願補正発明の偏光部材は、「偏光フィルム」であるのに対し、引用発明の「偏光板等の光学基材」がフィルム状であるかどうかは不明な点。

なお、審判請求書において、
「すなわち、引用発明1にかかる表面保護粘着フィルムは、液晶パネル等のディスプレイ装置を製造する際に、発光部の前面あるいは背面に配置される光学フィルム等の光学基材などに使用する絶縁性被着体([0009]、[0011])を、一時的に保護するために用いられる(剥離することを前提とする)ものです([0012])。
一方、本願発明1にかかる「透明樹脂層」は、上記の「(3).ア」のとおり、画像表示装置において、「偏光フィルム」と「入力装置または透明基体」に継続的に組込まれるものです。」(「(4) 本願発明1の容易想到性」「ア 相違点の検討」)
との主張がなされているが、本願の請求項1において「継続的に組込まれる」旨の限定はなされていないから、上記主張を採用することはできない。
仮に、本願発明1にかかる「透明樹脂層」が、「偏光フィルム」と「入力装置または透明基体」に継続的に組込まれるものだとしても、表示装置を構成する部品としての液晶パネルは表面保護フィルムを貼付けした状態で流通、販売されるのが一般的であり、この状態は「継続的に組込まれ」たものであるといえる。すなわち、引用発明の「粘着剤層」も継続的に組込まれたものである。したがって、請求人の主張は、上記の一致点、相違点の認定を左右するものではない。

5 判断
上記相違点について検討する。
例えば、特開2009-237489号公報(以下、「周知例」という。)において、
「【0002】
偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる光学部材であり、通常、偏光フィルム(偏光子ともいう)とその片面または両面に積層された保護フィルムとを備えている。・・・」
「【0006】
また、・・・偏光板等の光学フィルムにおける、表面保護フィルムの粘着剤層に接する側の表面に活性化処理を施すことが記載されている。・・・」
と記載されているように、フィルム状の偏光板は周知技術であって、引用発明の「偏光板等の光学基材」としてこれを採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。またその採用により、当業者の予想し得ない特段の効果が生じるともいえない。
なお、周知例は、平成29年11月7日付け拒絶理由通知書において先行技術文献として示した文献である。

6 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成30年1月11日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載される事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「画像表示装置において最も視認側に設けられる偏光フィルムよりも、視認側に配置される透明樹脂層であって、
前記透明樹脂層は、表面抵抗値が1.0×10^(13)Ω/□以下であることを特徴とする透明樹脂層。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-12
・引用文献等1

<引用文献等一覧>
1.特開2007-2112号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の2,3のとおりである。

4 判断
本願発明は、本願補正発明から、「前記透明樹脂層の前記偏光フィルムが配置された側の反対面に、入力装置または透明基体が配置され」るとの事項を省いたものであるから、本願発明と引用発明の相違点は、上記第2の4の(相違点)と同じであり、本願発明は、上記第2の5と同じ理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められる。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-08 
結審通知日 2019-01-09 
審決日 2019-01-23 
出願番号 特願2014-77808(P2014-77808)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村川 雄一  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
中村 説志
発明の名称 透明樹脂層、粘着剤層付偏光フィルムおよび画像表示装置  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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