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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
管理番号 1349646
異議申立番号 異議2018-700268  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-02 
確定日 2019-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6205745号発明「車両用灯具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6205745号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4及び5について訂正することを認める。 特許第6205745号の請求項2?5に係る特許を維持する。 特許第6205745号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6205745号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成29年9月15日に特許権の設定登録がされ、同年10月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年4月2日に特許異議申立人中川賢治(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、同年6月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月1日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年9月11日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年10月18日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年11月27日付けで訂正請求書に対する手続補正指令書(方式)が通知され、同年12月3日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 訂正の適否

1 訂正請求について

1-1 訂正の内容

平成30年8月1日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。なお、平成30年12月3日付けの手続補正書(方式)により、訂正の理由が補正されている。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2(下線は、特許権者が訂正箇所を示すものとして付したものである。以下同様。)

特許請求の範囲の請求項2に
「 前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。」
と記載されているのを
「 基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用されることを特徴とする車両用灯具。」
に訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に
「 前記基板に、2つの前記第1の種類の発光素子と1つの前記第2の種類の発光素子を搭載するにあたり、
前記基板は、
非導通領域を介して直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域と、
前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む導体領域と、を有し、
一方の前記第1の種類の発光素子は、前記第1の放熱用導体領域と前記第2の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
他方の前記第1の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域と前記第3の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
前記第2の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域の中央部で、前記第2の放熱用導体領域と前記導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置されることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。」
と記載されているのを
「 基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記基板に、2つの前記第1の種類の発光素子と1つの前記第2の種類の発光素子を搭載するにあたり、
前記基板は、
非導通領域を介して直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域と、
前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む導体領域と、を有し、
一方の前記第1の種類の発光素子は、前記第1の放熱用導体領域と前記第2の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
他方の前記第1の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域と前記第3の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
前記第2の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域の中央部で、前記第2の放熱用導体領域と前記導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置されることを特徴とする車両用灯具。」
に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4に
「 前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の車両用灯具。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「 基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。」
に訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項4に
「 前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の車両用灯具。」
とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「 基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。」
との新たな請求項5とする。

訂正前の請求項2?4は、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載されているから、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?5は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに特許請求の範囲の訂正を請求するものである。

1-2 訂正の適否

(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無

ア 訂正事項1について

訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって新規事項の追加に該当せず、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について

訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2における請求項1の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるとともに、訂正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」構成について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「本件明細書等」という。)の 段落【0030】、【0032】、【0037】及び図2等の記載を根拠に、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」ことを限定するものである。
本件明細書の段落【0030】には、「第1の種類の発光素子」及び「第2の種類の発光素子」について、「本実施形態のLED基板20では、少なくとも一つの放熱用導体領域22を、第1の発光素子30の点灯時と第2の発光素子40の点灯時に兼用している。」と記載され、段落【0032】には、「LED基板20は、2つの第1の発光素子30と1つの第2の発光素子40を搭載するにあたり、非導通領域25を介して所定方向(この例では基板長手方向)に直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域21?23と、非導通領域25を介して第2の放熱用導体領域22の中央部まで入り込む導体領域24とを有する。」と記載され、段落【0037】には、「一方の第1の発光素子30は、第1の放熱用導体領域21と第2の放熱用導体領域22の間の非導通領域25を跨ぐように配置され、他方の第1の発光素子30は、第2の放熱用導体領域22と第3の放熱用導体領域23の間の非導通領域25を跨ぐように配置され、第2の発光素子40は、第2の放熱用導体領域22の中央部で、第2の放熱用導体領域22と導体領域24の間の非導通領域25を跨ぐように配置されている。」と記載されていることから、本件明細書には、「第2の放熱用導体領域22」に、「第1の発光素子30」と「第2の発光素子40」を配置していることが記載されているといえる。
そして、本件明細書等の図2には「第1の発光素子30」と「第2の発光素子40」が、何ら他の構成を介さずに「第2の放熱用導体領域22」に配置されている、すなわち、直接接触していることが図示されていることを踏まえれば、本件明細書等には、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触」していることが記載されているといえる。
したがって、訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、訂正前の請求項2における請求項1の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるとともに、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」構成を限定するものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3について

訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3における請求項2の引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4について

訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4における請求項2及び3を引用する部分を削除するとともに、請求項1を引用する部分について、その引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5について

訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項4における請求項1及び3を引用する部分を削除するとともに、請求項2を引用する部分について、その引用関係を解消し、独立形式請求項に改めるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)独立特許要件

本件において、訂正前の請求項1?4について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?4に係る訂正事項1?5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

(3)小括

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、特許権者は、訂正後の請求項2?5について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4及び5について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項2?5に係る発明(以下「本件発明2?5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、上記「第2」で述べたとおり、請求項1は削除された。

「【請求項2】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記基板に、2つの前記第1の種類の発光素子と1つの前記第2の種類の発光素子を搭載するにあたり、
前記基板は、
非導通領域を介して直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域と、
前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む導体領域と、を有し、
一方の前記第1の種類の発光素子は、前記第1の放熱用導体領域と前記第2の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
他方の前記第1の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域と前記第3の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
前記第2の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域の中央部で、前記第2の放熱用導体領域と前記導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。」

第4 特許異議の申立てについて

1 取消理由の概要

平成30年6月5日付けで特許権者に通知した取消理由(以下「本件取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。

(1)取消理由1

本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきである。

(2)取消理由2

本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その係る発明の特許は取り消すべきである。

刊行物1:特開2012-119277号公報
刊行物2:特開2012-22797号公報

刊行物1及び刊行物2は、特許異議申立人が提出した甲第1号証及び甲第2号証である。

2 当審の判断

2-1 本件取消理由について

上記「第2」で述べたとおり、請求項1は削除され、取消理由1は解消したから、取消理由2について、以下検討する。

(1)刊行物の記載事項等

ア 刊行物1の記載事項等

刊行物1には、以下の事項等が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。

(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光レンズと、
前記導光レンズ内部に導入された後に出射してデイタイムランニングランプ用配光を形成する白色光を放射する白色LED光源と、
前記導光レンズ内部に導入された後に出射してフロントターンランプ用配光を形成する橙色光を放射する橙色LED光源と、
を備えることを特徴とする車両用光学ユニット。
【請求項2】
前記導光レンズは、前記白色LED光源から放射された白色光を前記導光レンズ内部に導入するための白色光入光部と、前記橙色LED光源から放射された橙色光を前記導光レンズ内部に導入するための橙色光入光部と、前記導光レンズ内部に導入された白色光及び/又は橙色光が出射する共通出光面と、を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の車両用光学ユニット。
【請求項3】
前記導光レンズは、前記導光レンズ内部に導入された白色光及び/又は橙色光を前記共通出光面から出射させるために、当該白色光及び/又は橙色光を前記共通出光面に向けて全反射するための全反射面を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の車両用光学ユニット。」

(1b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は車両用光学ユニットに係り、特に、デイタイムランニングランプとフロントターンランプとを両立させることが可能な車両用光学ユニットに関する。」

(1c)
「【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来の車両用灯具と比べ、発光領域の共有による小型化を実現することが可能な車両用光学ユニットを提供することを目的とする。」

(1d)
「【0033】
図1、図2(a)?図2(d)に示すように、車両用光学ユニット10は、その基端面11aから先端11bに向かうにつれ共通出光面としての表面11cとその反対側の裏面11dとの間の厚みが薄くなる楔形状に構成された導光レンズ11、導光レンズ11内部に導入された後に出射してデイタイムランニングランプ用配光を形成する白色光を放射する白色LED光源12、導光レンズ11内部に導入された後に出射してフロントターンランプ用配光を形成する橙色光を放射する橙色LED光源13等を備えている。
【0034】
導光レンズ11は、透明樹脂製(例えば、アクリル又はポリカーボネイト)又はガラス製の、基端面11a、共通出射面としての表面11c、その反対側の裏面11d、及び、両側面11fで囲まれた全体として楔形状のレンズ体である。
【0035】
図1及び図2(a)に示すように、導光レンズ11の基端面11aには、白色LED光源12から放射された白色光を導光レンズ11内部に導入する1つの白色光入光部11g及び橙色LED光源13から放射された橙色光を導光レンズ11内部に導入する2つの橙色光入光部11hが形成されている。白色光入光部11g及び各橙色光入光部11hは、導光レンズ11(基端面11a)の幅方向に関し左右対称、かつ、一列に(すなわちシンメトリーに)配置されている。」

(1e)
「【0040】
図3(b)に示すように、導光レンズ11の裏面11dには、導光レンズ11の先端11bに向けて導光される白色光及び/又は橙色光を導光レンズ11の表面11cから出射させるために、当該白色光及び/又は橙色光を導光レンズ11の表面11cに向けて全反射するための複数の個別全反射面11d1が形成されている。
・・・
【0043】
白色LED光源12は、その白色光が白色光入光部11gから導光レンズ11内部に導入されて導光レンズ11の先端11bに向けて導光されるように、白色光入光部11gに対向した状態で配置されている。
【0044】
白色LED光源12には、当該白色LED光源12に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路(図示せず)が接続されている。この回路は、デイタイムランニングランプ用スイッチ又はポジションランプ用スイッチのオン/オフに応じて、白色LED光源12に印加する電流を制御する。例えば、図4(a)に示すように、デイタイムランニングランプ用スイッチがオンされた場合、白色LED光源12に駆動電流0.38[A]が印加され、ポジションランプ用スイッチがオンされた場合、白色LED光源12にデイタイムランニングランプ用スイッチがオン時よりも少ない駆動電流0.06[A]が印加される。
【0045】
橙色LED光源13は、その橙色光が橙色光入光部11hから導光レンズ11内部に導入されて導光レンズ11の先端11bに向けて導光されるように、橙色光入光部11hに対向した状態で配置されている。
【0046】
橙色LED光源13には、当該橙色LED光源13に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路(図示せず)が接続されている。この回路は、フロントターンランプ用スイッチがオンされた場合、橙色LED光源13が点滅するように当該橙色LED光源13に駆動電流(例えば0.38[A])を印加する(図4(a)参照)。」

(1f)
「【0063】
また、本実施形態の車両用光学ユニット10によれば、白色LED光源12が減光された状態で点灯することで、デイタイムランニングランプ用配光、フロントターンランプ用配光に加え、さらに、ポジションランプ用配光をも形成することが可能となる。」

(1g)
刊行物1には、以下の図が記載されている。
【図1】 【図3】


(1h)
図1及び図3(摘示(1g))の記載から、以下の事項が看取される。
「白色LED光源12及び橙色LED光源13と近接状態で対向する導光レンズ11」

上記(1a)?(1h)を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。

「導光レンズ11と、
前記導光レンズ11内部に導入された後に出射してデイタイムランニングランプ用配光を形成する白色光を放射する白色LED光源12と、
前記導光レンズ11内部に導入された後に出射してフロントターンランプ用配光を形成する橙色光を放射する橙色LED光源13と、
を備え、
白色LED光源12には、当該白色LED光源12に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路が接続され、橙色LED光源13には、当該橙色LED光源13に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路が接続されており、
前記導光レンズ11は、
白色LED光源12及び橙色LED光源13と近接状態で対向するとともに、前記白色LED光源12から放射された白色光を前記導光レンズ11内部に導入するための白色光入光部11g及び前記橙色LED光源13から放射された橙色光を前記導光レンズ11内部に導入するための橙色光入光部11hが形成された基端面11aと、
前記導光レンズ11内部に導入された白色光及び/又は橙色光が出射する共通出光面としての表面11cと、
前記導光レンズ11内部に導入された白色光及び/又は橙色光を前記表面11cから出射させるために、当該白色光及び/又は橙色光を前記表面11cに向けて全反射するための全反射面11d1が形成された裏面11dと、
両側面11fで囲まれた全体として楔形状のレンズ体である
車両用光学ユニット。」

イ 刊行物2の記載事項等

(2a)
「【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットに関するものである。また、この発明は、半導体型光源を光源とする車両用灯具に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、LEDベアチップ(LEDチップ)に給電する配線素子をショートしないように確実に配線するという点と、配線素子のワイヤの断線ストレス(断線荷重)を軽減するという点と、配線素子のボンディング部のストレス(荷重)を軽減するという点と、にある。
・・・
【発明の効果】
【0012】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、前記の課題を解決するための手段により、第2グループの発光チップに給電する配線素子であって、隣同士の配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)を相互に近づけることができ、その隣同士の配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)を相互に電気的に接続する配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)を、第1グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)の上を跨ぐように配線する必要が無いので、第2グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)が第1グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)に接触してショート(短絡)する不具合をなくすことができる。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、発光チップに給電する配線素子をショートしないように確実に配線することができる。
【0013】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、第2グループの発光チップに給電する配線素子であって、隣同士の配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)を相互に電気的に接続する配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の長さを短くすることができるので、長いための不具合、すなわち、封止部材を注入する際また硬化した封止部材の膨張収縮などにおいて、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)が切断したり、また、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の接続部(ボンディング部)がはがれたりする不具合を少なくすることができる。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の長さを短くすることができるので、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の断線ストレス(断線荷重)を軽減することができ、また、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の接続部(ボンディング部)のストレス(荷重)を軽減することができる。このように、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、発光チップに給電する配線素子を確実に配線することができる。」

(2b)
「【0030】
(光源部10の説明)
前記光源部10は、図1?図3、図12?図15に示すように、取付部材としての基板3と、前記半導体型光源の複数個この例では5個の発光チップ40、41、42、43、44と、制御素子としての抵抗R1?R12およびダイオードD1、D2と、配線素子としての導体(パターン、導体パターン)51?57およびワイヤ配線(金ワイヤ)61?65およびボンディング部610?650と、を備えるものである。
【0031】
前記基板3は、この例では、セラミックからなる。前記基板3は、図1、図3?図6、図10、図11に示すように、平面(上)から見てほぼ八角形の板形状をなす。前記基板3の3辺(右辺、左辺、下辺)のほぼ中央には、前記ソケット部11の給電部材91、92、93が挿通する挿通孔31、32、33がそれぞれ設けられている。前記基板3の一面(上面)には、実装面としての平面の取付面34が設けられている。前記基板3の他面(下面)には、平面の当接面35が設けられている。なお、高反射部材のセラミック製の前記基板3の取付面34に、さらに高反射塗料や高反射蒸着などの高反射面30を設けても良い。
【0032】
前記基板3の前記取付面34には、前記5個の発光チップ40?44および前記抵抗R1?R12および前記ダイオードD1、D2および前記導体51?57および前記ワイヤ配線61?65および前記ボンディング部610?650および前記接続部材17が取り付けられている(すなわち、実装、印刷、焼成、蒸着などにより、設けられている)。また、図示していないが、前記基板3の前記取付面34に実装されている前記5個の発光チップ40?44および配線素子の一部(前記導体51?57の一部および前記ワイヤ配線61?65および前記ボンディング部610?650)には、土手部材を介して、光透過性部材、たとえば、エポキシ樹脂から構成されている封止部材が封止されている。あるいは、前記基板3の前記取付面34全面(前記5個の発光チップ40?44および前記制御素子および前記配線素子など)には、封止部材が封止されている。」

(2c)
「【0041】
(発光チップ40?44および抵抗R1?R12およびダイオードD1、D2および導体51?57およびワイヤ配線61?65およびボンディング部610?650のレイアウトの説明と駆動回路2の説明)
前記5個の発光チップ40?44および前記12個の抵抗R1?R12および前記2個のダイオードD1、D2および前記導体51?57および前記ワイヤ配線61?65および前記ボンディング部610?650は、図10の電気部品のレイアウト図および図11の一部拡大のレイアウト図および図11の電気回路図に示すように、配置されていてかつ接続されている。
・・・
【0053】
前記大電流供給のストップランプ機能の4個の発光チップ41?44用の導体52?55は、4個に分割されている。前記小電流供給のテールランプ機能の発光チップ40用の第1導体51は、4個に分割されている前記大電流供給のストップランプ機能の発光チップ41?44用の導体のうち、前記第2導体52および前記第3導体53側と、前記第4導体54および前記第5導体55側との間に挟まれた状態で配置されている。」

(2d)
「【0094】
また、この実施例における光源ユニット1および車両用灯具100は、5個の発光チップ40?44を基板3の取付面34の中央部に配置して、制御素子の抵抗R1?R12およびダイオードD1、D2を基板3の取付面34の周辺部(すなわち、5個の発光チップ40?44の外側)に配置することにより、5個の発光チップ40?44に給電する導体51?56の面積を広くすることができる。この結果、この実施例における光源ユニット1および車両用灯具100は、4個(当審注:5個の誤記と認められる。)の発光チップ40?44に給電する導体51?56において発生する熱を基板3および熱伝導性媒体を介して外部の放熱部材8に効率良く放射させることができる。すなわち、放熱効果が向上する。」

(2e)
刊行物2には、以下の図が記載されている。
【図1】


【図2】

【図11】



(2f)
図1(摘示(2e))の記載から、以下の事項が看取される。
「導体51?57は、発光チップ40?44が搭載される面に形成される」
(2g)
刊行物2の「前記光源部10は、図1?図3、図12?図15に示すように、取付部材としての基板3と、前記半導体型光源の複数個この例では5個の発光チップ40、41、42、43、44と、制御素子としての抵抗R1?R12およびダイオードD1、D2と、配線素子としての導体(パターン、導体パターン)51?57およびワイヤ配線(金ワイヤ)61?65およびボンディング部610?650と、を備える」(摘示(2b)段落【0030】)の記載、「前記大電流供給のストップランプ機能の4個の発光チップ41?44用の導体52?55は、4個に分割されている。前記小電流供給のテールランプ機能の発光チップ40用の第1導体51は、4個に分割されている前記大電流供給のストップランプ機能の発光チップ41?44用の導体のうち、前記第2導体52および前記第3導体53側と、前記第4導体54および前記第5導体55側との間に挟まれた状態で配置されている。」(摘示(2c)段落【0053】)の記載、図1、図2及び図11(摘示(2e))の記載から、以下の事項が看取される。
「導体52が、テールランプ機能の発光チップ40とストップランプ機能のチップ41?44にワイヤ配線(金ワイヤ)61及び65により、ボンディング部610及び650で接続されることでテールランプ機能の発光チップ40の点灯時と、ストップランプ機能のチップ41?44の点灯時に兼用される」

上記(2a)?(2g)を総合すると、刊行物2には、以下の技術(以下「刊行物2技術」という。)が記載されている。

「車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットに関する技術であって、
光源部10は、取付部材としての基板3と、テールランプ機能の発光チップ40と、ストップランプ機能の4個の発光チップ41?44と、配線素子としての導体(パターン、導体パターン)51?57と、ワイヤ配線(金ワイヤ)61?65およびボンディング部610?650とを備え、
導体51?57は、発光チップ40?44が搭載される面に形成され、
導体51?56の面積を広くし、テールランプ機能の発光チップ40及びストップランプ機能の発光チップ41?44に給電する導体51?56において発生する熱を基板3および熱伝導性媒体を介して外部の放熱部材8に効率良く放射させ、
導体52が、テールランプ機能の発光チップ40とストップランプ機能のチップ41?44に、ワイヤ配線(金ワイヤ)61及び65によりボンディング部610及び650で接続されることでテールランプ機能の発光チップ40の点灯時と、ストップランプ機能のチップ41?44の点灯時に兼用される
車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットに関する技術。」

(2)対比・判断

ア 本件発明2について

(ア) 対比

本件発明2と刊行物1発明とを対比する。

a 刊行物1発明の「白色LED光源12」及び「橙色LED光源13」は、種類が異なる「発光素子」であることから、本件発明2の「第2の種類の発光素子」及び「第1の種類の発光素子」にそれぞれ相当する。
そうすると、刊行物1発明の「前記導光レンズ11内部に導入された後に出射してデイタイムランニングランプ用配光を形成する白色光を放射する白色LED光源12と、前記導光レンズ11内部に導入された後に出射してフロントターンランプ用配光を形成する橙色光を放射する橙色LED光源13と、」の構成と、本件発明2の 「前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、」の構成は、「第1の種類の発光素子と、第2の種類の発光素子と、」の構成を限度として共通する。

b 刊行物1発明の「白色LED光源12」及び「橙色LED光源13」は、それぞれ「デイタイムランニングランプ用配光を形成する」ものと、「フロントターンランプ用配光を形成する」ものであるから、その機能を考慮すると、両者は「選択的に点灯」されるものである。
そうすると、上記aを考慮すると、刊行物1発明の「橙色LED光源13に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路」及び「白色LED光源12に印加する電流を制御する電流制御手段としての回路」は、本件発明2の「前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路」に相当する。

c 刊行物1発明の「導光レンズ11」を「白色LED光源12及び橙色LED光源13と近接状態で対向する」ように配置する構成は、「導光レンズ11」が本件発明2の「導光体」に相当すること及び上記aを考慮すると、本件発明2の「導光体」を「前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置」する構成に相当する。

d 刊行物1発明の「前記白色LED光源12から放射された白色光を前記導光レンズ11内部に導入するための白色光入光部11g及び前記橙色LED光源13から放射された橙色光を前記導光レンズ11内部に導入するための橙色光入光部11hが形成された基端面11a」は、上記aを考慮すると、本件発明2の「前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面」に相当する。

e 刊行物1発明の「橙色光」及び「白色光」は、上記aを考慮すると、本件発明2の「前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光」に相当する。

f 刊行物1発明の「導入された白色光及び/又は橙色光が出射する共通出光面としての表面11c」は、上記eを考慮すると、本件発明2の「入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光」の「出射部」に相当する。

g 刊行物1発明の「導光レンズ11」は、その「表面11c」が「導入された白色光及び/又は橙色光」の「共通の出光面」であることから、本件発明2の「入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光」の「共通の出射範囲」も有しているといえる

h 刊行物1発明の「導光レンズ11」は、「白色光及び/又は橙色光を前記表面11cから出射させるために、当該白色光及び/又は橙色光を前記表面11cに向けて全反射」させていることから、「白色光及び/又は橙色光」を「内部反射させながら出射部の」「出射範囲に導く導光部」も有しているといえる。

i 上記c?hを総合すると、刊行物1発明の、
「前記導光レンズ11は、白色LED光源12及び橙色LED光源13と近接状態で対向するとともに、前記白色LED光源12から放射された白色光を前記導光レンズ11内部に導入するための白色光入光部11g及び前記橙色LED光源13から放射された橙色光を前記導光レンズ内部に導入するための橙色光入光部11hが形成された基端面11aと、前記導光レンズ11内部に導入された白色光及び/又は橙色光が出射する共通出光面としての表面11cと、前記導光レンズ11内部に導入された白色光及び/又は橙色光を前記表面11cから出射させるために、当該白色光及び/又は橙色光を前記表面11cに向けて全反射するための全反射面11d1が形成された裏面11dと、両側面11fで囲まれた全体として楔形状のレンズ体である」という構成は、本件発明2の「前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体」の構成に相当する。

j 刊行物1発明の「前記導光レンズ11内部に導入された白色光及び/又は橙色光」が、「共通出光面としての表面11c」から出射されていることから、上記eを考慮すれば、刊行物1発明の「車両用光学ユニット」は、本件発明2の「前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり」という構成を有しているといえる。

k 刊行物1には、従来の車両用灯具と比べ、発光領域の共有による小型化を実現することが可能な車両用光学ユニットを提供する(摘示(1c))と記載されていることから、刊行物1発明の「車両用光学ユニット」は、本件発明2の「車両用灯具」に相当する。

上記a?kを総合すると、本件発明2と刊行物1発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「 第1の種類の発光素子と、
第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、
を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じである、車両用灯具。」

<相違点1>
本件発明2は、「基板」を備え、「第1の種類の発光素子」と「第2の種類の発光素子」が、「基板に搭載される」とともに、「 前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」構成を備えているのに対し、刊行物1発明は、「基板」が特定されておらず、「第1の発光素子(橙色LED光源13)」及び「第2の発光素子(白色LED光源12)」は、「基板に搭載される」ことが特定されていないことに加え、「基板」についてのかかる特定もない点。

(イ)判断

相違点1について検討する。

a 刊行物2技術の「基板3」が、その機能・構成から、本件発明2の「基板」に相当する。

b 刊行物2技術の「発光チップ40」及び「発光チップ41?44」は、その機能・構成から、本件発明2の「第2の発光素子」及び「第1の発光素子」に相当する。

c 刊行物2技術の「導体51?57」は、「発光チップ40?44が搭載される面に形成され」ており、そのうち、「導体51?56」は、「テールランプ機能の発光チップ40及びストップランプ機能の発光チップ41?44に給電する」構成である。
そして、「導体51?56」に関し、刊行物2には、
「5個の発光チップ40?44に給電する導体51?56の面積を広くすることができる。この結果、この実施例における光源ユニット1および車両用灯具100は、5個の発光チップ40?44に給電する導体51?56において発生する熱を基板3および熱伝導性媒体を介して外部の放熱部材8に効率良く放射させることができる。すなわち、放熱効果が向上する。」(摘示(2d))と記載されている。
そうすると、刊行物1発明の「導体51?56」は、本件発明2の「前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域」に相当するといえることから、刊行物2技術の「発光チップ41?44が搭載される面に形成され」た「導体51?56」は、本件発明2の「前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域」に相当する。

d 刊行物2技術の「導体51?56」の間が「電気的に非導通状態にする非導通領域」であることは、「導体51?56」の間にそれぞれ「基板3」が存在し、その「基板3」が「セラミック」であること(摘示(2b)【0031】)及び「ワイヤ配線(金ワイヤ)61?65および前記ボンディング部610?650」が必要であること(摘示(2b)【0030】)から明らかである。
そうすると、刊行物2技術の「導体51?56」の間にそれぞれ存在する「基板3」は、本件発明2の「前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域」に相当する。

e 刊行物2技術の「導体52が、テールランプ機能の発光チップ40とストップランプ機能のチップ41?44に、ワイヤ配線(金ワイヤ)61及び65によりボンディング部610及び650で接続されることでテールランプ機能の発光チップ40の点灯時と、ストップランプ機能のチップ41?44の点灯時に兼用される」構成と、本件発明の2の「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」構成とは、上記b及びcを考慮すると、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用される」構成の限度で共通する。

f 上記eを踏まえると、刊行物2技術は、「導体52」が、「テールランプ機能の発光チップ40」と「ストップランプ機能のチップ41?44」に、「ワイヤ配線(金ワイヤ)61及び65」並びに「ボンディング部610及び650」を介して接続されており、「導体52」は、「テールランプ機能の発光チップ40」と「ストップランプ機能のチップ41?44」に直接接触していない。
そうすると、刊行物1及び刊行物2には、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触する」構成が記載も示唆もされていないし、そうすることが当業者にとって容易に想到しうることであるといえる根拠も見いだせないことから、刊行物1発明において、上記相違点1に係る本件発明2の構成を採用することが当業者にとって容易であるということはできない。

(ウ)特許異議申立人の主張

ところで、特許異議申立人は、平成30年10月18日付けの意見書で、以下の主張をしている。

<主張1>「発光素子」と「電気的に接続する」という表現ではなく、「直接接触する」という言葉を用いているが、意味内容が不明である。

<主張2>基板に発光素子を実装するにあたって、フリップチップにて実装することは周知慣用技術であるところ、刊行物1発明において、刊行物2技術を適用するに際し、発光素子をフリップチップで搭載することは、当業者であれば、設計事項として容易に想到できることである。

a 主張1について

上記「第2 1 1-2 (1)イ」において検討したとおり、「少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触する」とは、本件明細書等の記載によれば、「第1の発光素子30」及び「第2の発光素子40」が、何ら他の構成を介さずに「第2の放熱用導体領域22」に配置されていることを意味しているといえるから、特許異議申立人の上記主張1は採用できない。

b 主張2について

刊行物2技術は、「半導体型光源を光源とする車両用灯具に関する」(摘示(2a)段落【0001】)技術であって、「LEDベアチップ(LEDチップ)に給電する配線素子をショートしないように確実に配線するという点と、配線素子のワイヤの断線ストレス(断線荷重)を軽減するという点と、配線素子のボンディング部のストレス(荷重)を軽減するという点」(摘示(2a)段落【0005】)を解決しようとする課題とする発明に係る技術である。
そして、「その隣同士の配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)を相互に電気的に接続する配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)を、第1グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)の上を跨ぐように配線する必要が無いので、第2グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)が第1グループの発光チップに給電する配線素子(たとえば、導体、パターン、導体パターン)に接触してショート(短絡)する不具合をなくすことができる。」(摘示(2a)段落【0012】)及び「この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具の半導体型光源の光源ユニットは、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の長さを短くすることができるので、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の断線ストレス(断線荷重)を軽減することができ、また、配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の接続部(ボンディング部)のストレス(荷重)を軽減することができる。」(摘示(2a)段落【0013】)という効果の記載からも理解されるように、刊行物2技術は、「配線素子(例えば、ワイヤ配線、金ワイヤ)」及び「配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の接続部(ボンディング部)」の存在を前提としたものであり、刊行物2には、「配線素子(例えば、ワイヤ配線、金ワイヤ)」及び「配線素子(たとえば、ワイヤ配線、金ワイヤ)の接続部(ボンディング部)」による接続に換えて、他の接続方法により接続することは記載も示唆もされておらず、想定されていないものであるといえる。
そうすると、特許異議申立人が主張するとおり、フリップチップにて実装することが周知慣用技術であったとしても、刊行物1発明に刊行物2技術を適用する際に、当該周知慣用技術を参酌する余地はなく、そうすることが当業者にとって容易に想到することができるものであったということはできないから、上記主張2を採用することはできない。

(エ)以上のとおり、本件発明2は刊行物1発明と相違点1において相違するものであるところ、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者にとって容易想到とはいえないものであるから、本件発明2は刊行物1発明及びに刊行物2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2-2 本件取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について

(1)本件取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

ア 申立理由1(特許法第36条第4項第1号)

訂正前の請求項1?4に係る発明は、発明の詳細な説明にその発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。したがって、請求項1?4に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書第11頁第13行?第12頁第11行)。

イ 申立理由2(特許法第36条第6項第1号)

訂正前の請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。したがって、請求項1?4に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書第12頁第12行?第13頁第3行)。

ウ 申立理由3(特許法第36条第6項第2号)

訂正前の請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。したがって、請求項1?4に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書第13頁第4行?第14頁第14行)。

エ 申立理由4(特許法第29条第1項第3号)

訂正前の請求項4に係る発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。したがって、上記請求項1に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書第30頁第15行?第31頁第8行)。

オ 申立理由5(特許法第29条第2項)

訂正前の請求項4に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、上記請求項4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである(特許異議申立書第31頁第9?20行)。

(2)検討

本件訂正により、訂正前の請求項1は削除され、訂正前の請求項2及び3に訂正後の請求項2及び3が対応し、訂正前の請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するものに訂正後の請求項4が対応し、訂正前の請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するものに訂正後の請求項5が対応する。
そうすると、訂正後の請求項1についての申立理由1?3は解消しているから、訂正後の請求項2?5について、以下検討する。

ア 申立理由1?3について

(ア)特許異議申立人は、訂正後の請求項2?5の「前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり」という構成について、本件明細書には、どのようにして出射範囲を同じとなるようにするのか、発明の詳細な説明にその発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないし(申立理由1)、発明の詳細な説明に記載されたものでもないし(申立理由2)、「出射範囲が同じである」との意味内容が不明確であり、訂正後の請求項2?5に係る発明が明確でない旨主張している(申立理由3)。
加えて、「入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体」の構成について、「出射部の共通の出射範囲」がどの部分を指しているのか不明であり、訂正後の請求項2?5に係る発明が明確でない旨主張している(申立理由3)。

(イ)本件明細書等の段落【0024】?段落【0025】には以下の記載がある。
「【0024】
すなわち、本発明の実施形態に係る車両用灯具10は、発光素子30、40の発光を導光体60で導光し、導光体60の出射部63から出射させるので、少ない個数の発光素子30、40であっても、導光体60の形状設定により所望の発光形態が得られ、その結果、発光素子30、40の個数を減らせるだけでなく、安価な点灯回路の採用が可能になり、大幅なコストダウンが図れる。
【0025】
しかも、導光体60は、第1の発光素子30の点灯時と第2の発光素子40の点灯時に兼用され、各発光素子30、40から入射される光を導光し、共通の出射範囲から出射させるので、発光素子30、40の種類毎に別々の導光体60を設ける場合に比べ、部品点数を削減してコストダウンが図れるだけでなく、車両用灯具10の大型化も回避することができる。」

(ウ)上記(ア)の主張について検討すると、上記(イ)の記載によれば、本件発明は「発光素子30、40の発光を導光体60で導光し、導光体60の出射部63から出射させ」るとともに、「導光体60」を「第1の発光素子30」及び「第2の発光素子40」で兼用することにより、効果を奏するものであるといえるから、請求項2の「前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり」という構成及び「入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体」の構成は、「導光体」が、「前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有」することにより自ずと実現されている構成であると解される。
そうすると、「前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり」という構成は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとまではいえないし、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されていない、あるいは、特許を受けようとする発明が明確でないとまでもいえない。
また、「入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体」の構成も、特許を受けようとする発明が明確でないとまではいえない。

(エ)訂正後の請求項3の「前記基板は、非導通領域を介して直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域と、前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む導体領域と、を有し、」の記載について、特許異議申立人は、「放熱用導体領域」と「導体領域」を区別する基準が不明であり、訂正後の請求項3に係る発明が明確でない旨主張している(申立理由3)。

(オ)(エ)の主張について検討すると、訂正後の請求項3に記載された「第1?第3の放熱用導体領域」には、本件明細書等に記載された「放熱用導体領域21?23」が相当し、訂正後の請求項3に記載された「導体領域」は、「前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む」構成であることから、本件明細書等に記載された「導体領域24」が相当する。
放熱用導体領域21?23に関し、本件明細書の段落【0029】には、「導体領域21?24のなかには、各発光素子30、40を電気的に接続させるだけでなく、各発光素子30、40から発生する熱を放熱させるために広域に亘って形成される放熱用導体領域21?23が含まれている。」と記載されていることから、放熱用導体領域とは、電気的に接続されれば足りる導体領域を、さらに、放熱のために電気的な接続に必要とされる以上に広域に亘って形成した領域を示しているといえるから、上記記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとまではいえない。

(カ)したがって、特許異議申立人の主張する申立理由1?3によっては、訂正後の本件発明2?5に係る特許を取り消すことはできない。

イ 申立理由4及び5について
上記「第3」で述べたとおり、本件発明4は、訂正特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである。
また、刊行物1発明は、上記「2-1(1)ア」で述べたとおりのものである。
そして、上記「2-1(2)ア」を踏まえると、本件発明4と刊行物1発明とは、上記一致点で一致し、以下の各相違点で相違する。

<相違点2>
本件発明4は、「基板」を備え、「第1の種類の発光素子」と「第2の種類の発光素子」が、「基板に搭載される」構成を備えているのに対し、刊行物1発明は、「基板」が特定されておらず、「第1の発光素子(橙色LED光源13)」及び「第2の発光素子(白色LED光源12)」は、「基板に搭載される」ことが特定されていない点。

<相違点3>
本件発明4は、「前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能する」のに対し、刊行物1発明は、「橙色LED光源13」が「フロントターンランプ用配光を形成」し、「白色LED光源12」が「デイタイムランニングランプ用配光を形成する」点。

事案に鑑み、上記相違点3について検討すると、刊行物1には、「白色LED光源12が減光された状態で点灯することで、デイタイムランニングランプ用配光、フロントターンランプ用配光に加え、さらに、ポジションランプ用配光をも形成することが可能」(摘示(1f))と記載されており、「白色LED光源12」すなわち「デイタイムランニングランプ」を「減光」することで「ポジションランプ」として用いることは示唆されているものの、「デイタイムランニングランプ」として機能する光源と「ポジションランプ」として機能する光源を備える点は記載も示唆もされておらず、「デイタイムランニングランプ」と「フロントターンランプ」の発光領域を共有することによって、小型化を実現することを課題とする(摘示(1b)及び(1c))刊行物1発明において、「フロントターンランプ」として機能する発光素子に換えて、「ポジションランプ」として機能する発光素子を備えるようにすることは、当業者が容易に想到しうることであるとはいえない。
また、特許異議申立人は、平成30年10月18日付け意見書において、ランプをどのような用途で用いるかは、適宜設計すべき事項である旨を主張するとともに、2つの光源から同一の発光領域を兼用して光を出射する技術において、片方の光源からの光をデイタイムランニングランプとして機能させ、他方の光源からの光をポジションランプとして機能させることは周知慣用技術であると主張し、資料9?11を示している。(同意見書第4頁第3?12行)
しかしながら、上述したとおり、刊行物1発明は、「デイタイムランニングランプ」と「フロントターンランプ」の「発光領域」を「共有」することによって、「小型化を実現すること」を課題とする(摘示(1b)及び(1c))ものであるから、刊行物1発明の前提であるランプの用途を変更することは適宜設計すべき事項であるとはいえないし、特許異議申立人が示した資料9には「可視光用光源12b」を「ポジションランプ」もしくは「デイタイムランニングランプ」として用いることが記載され、資料10には、「可視光発光素子14a」を「ポジションランプ」もしくは「デイタイムランニングランプ」として用いることが記載され、資料11には、「灯具10」が「デイタイムランニングランプ」又は「ポジションランプ」であることが記載されているのであって、特許異議申立人が主張する「2つの光源から同一の発光領域を兼用して光を出射する技術において、片方の光源からの光をデイタイムランニングランプとして機能させ、他方の光源からの光をポジションランプとして機能させること」は記載されていないことから、上記主張を採用することはできない。
したがって、本件発明4は、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたともいえないことから、特許異議申立人の主張する申立理由4及び5によっては、本件発明4に係る特許を取り消すことはできない。
また、本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明4と同様に、刊行物1に記載された発明ではないし、刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張する,申立理由4及び5によっては、訂正後の本件発明2?5に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項2?5に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項2?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子に直接接触することで前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記基板に、2つの前記第1の種類の発光素子と1つの前記第2の種類の発光素子を搭載するにあたり、
前記基板は、
非導通領域を介して直列状に並ぶ第1?第3の放熱用導体領域と、
前記非導通領域を介して前記第2の放熱用導体領域の中央部まで入り込む導体領域と、を有し、
一方の前記第1の種類の発光素子は、前記第1の放熱用導体領域と前記第2の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
他方の前記第1の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域と前記第3の放熱用導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置され、
前記第2の種類の発光素子は、前記第2の放熱用導体領域の中央部で、前記第2の放熱用導体領域と前記導体領域の間の非導通領域を跨ぐように配置されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
基板と、
前記基板に搭載される第1の種類の発光素子と、
前記基板に搭載される第2の種類の発光素子と、
前記第1の種類の発光素子と前記第2の種類の発光素子を選択的に点灯させる点灯回路と、
前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子と近接状態で対向するように配置され、前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光が入射される入射部となる一端面を有し、入射した前記第1の種類の発光素子及び前記第2の種類の発光素子の光を内部反射させながら出射部の共通の出射範囲に導く導光部を有する導光体と、を備え、
前記第1の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲と前記第2の種類の発光素子の点灯時に光が出射する前記出射部の出射範囲が同じであり、
前記基板は、
前記各発光素子が搭載される面に形成され、前記各発光素子を電気的に接続させるとともに、前記各発光素子から発生する熱を放熱させる複数の放熱用導体領域と、
前記放熱用導体領域の間にそれぞれ形成され、隣接する前記放熱用導体領域間を電気的に非導通状態にする非導通領域と、を有し、
少なくとも一つの前記放熱用導体領域が、前記第1の種類の発光素子の点灯時と前記第2の種類の発光素子の点灯時に兼用され、
前記第1の種類の発光素子の点灯時は、デイタイムランニングランプとして機能し、
前記第2の種類の発光素子の点灯時は、ポジションランプとして機能することを特徴とする車両用灯具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-14 
出願番号 特願2013-30366(P2013-30366)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
P 1 651・ 113- YAA (F21S)
P 1 651・ 537- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 石井 孝明安食 泰秀  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 仁木 学
一ノ瀬 覚
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6205745号(P6205745)
権利者 市光工業株式会社
発明の名称 車両用灯具  
代理人 坂本 智弘  
代理人 坂本 智弘  

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