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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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令和1行ケ10160 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
異議2018701011 | 審決 | 特許 |
異議2021700592 | 審決 | 特許 |
異議2019700557 | 審決 | 特許 |
令和1行ケ10067 審決取消請求事件 | 判例 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L |
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管理番号 | 1349711 |
異議申立番号 | 異議2018-700871 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-25 |
確定日 | 2019-03-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6315586号発明「液状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6315586号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6315586号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成26年9月19日に出願され、平成30年4月6日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年10月25日に特許異議申立人戸塚清貴は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6315586号の請求項1ないし4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件発明1」ないし「本件発明4」などという。)。 「【請求項1】 食用油脂の含有量が5%未満の液状調味料において、 pH4.0以上5.0以下であり、 焼きあご出汁、有機酸、食塩、並びに1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコールを含有し、 前記食塩含有量が4%以上9%以下、 前記1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールの合計含有量が21%以上40%以下である、 液状調味料。 【請求項2】 請求項1に記載の液状調味料において、 少なくとも1?2糖の糖アルコールを含有する、 液状調味料。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の液状調味料において、 有機酸として少なくとも酢酸を含有する、 液状調味料。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の液状調味料を用いたサラダ。」 第3 申立理由の概要 1.新規性・進歩性 特許異議申立人は甲第1号証?甲第17号証(以下、証拠の番号に従って「甲1」などという。)を提出し、本件特許は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべき旨主張している。 1)甲第1号証:チョーコーあごつゆ400ml、インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%BC-%E3%81%82%E3%81%94%E3%81%A4%E3%82%86-400ml-%E7%93%B6/dp/B005C37S14> (2)甲第2号証:あごつゆ、インターネット<URL:http://choko.co.jp/Pages/product/dashi-tuyu/agotsuyu_400ml.php> (3)甲第3号証:ミヤジマ焼きあごつゆ500ml×2本、インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%AE%E5%B3%B6%E9%86%A4%E6%B2%B9-%E3%83%9F%E3%83%A4%E3%82%B8%E3%83%9E-%E7%84%BC%E3%81%8D%E3%81%82%E3%81%94%E3%81%A4%E3%82%86-500ml%C3%972%E6%9C%AC/dp/B00GWEP90E/ref=lp_2475928051_1_13?srs=2475928051&ie=UTF8&qid=1532504228&sr=8-13> (4)甲第4号証:焼きあごつゆ、インターネット<URL:https://www.miyajima-soy.co.jp/archives/product/m192056> (5)甲第5号証:マルエあごだし本つゆ400ml×12本、インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%A8-0301026-%E3%81%82%E3%81%94%E3%81%A0%E3%81%97%E6%9C%AC%E3%81%A4%E3%82%86-400ml%C3%9712%E6%9C%AC/dp/B002VED6S6> (6)甲第6号証:田中秀夫、”醤油及び醤油を原料とする新しい加工調味料”、調理科学、1989年、第22巻、第1号、p.20-28 (7)甲第7号証:太田静行、外3名、”つゆ類-その化学と製造-”、光琳テクノブックス11、株式会社光琳、平成3年7月25日、p.288-289 (8)甲第8号証:日野哲雄、”多様化する調味料(液状)に対する一考察”、日本醸造協会誌、1995年、第90巻、第8号、p.618-624 (9)甲第9号証:藤川浩、外4名、”発色基質培地クロモアガーカンジダ(○にR)を用いたサラダドレッシング汚染酵母の保存中における増殖の解析”、食品衛生学雑誌、1998年、第39巻、第2号、p.120-126 (10)甲第10号証:[病態対応食]カロリー調整食品、インターネット<URL:https://www.kewpie.co.jp/products/medical/02_b.html> (11)甲第11号証:リケン リケンのノンオイルセレクティこく仕立て和風200ml、インターネット<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%AA%E3%82%B1%E3%83%B3-%E3%83%AA%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%83%8E%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB-%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%93%E3%81%8F%E4%BB%95%E7%AB%8B%E3%81%A6%E5%92%8C%E9%A2%A8-200ml/dp/B00B2HBJQ4> (12)甲第12号証:リケンのノンオイルセレクティ(○にR)こく仕立て和風、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20140902105617/http://www.rikenvitamin.jp:80/products/dressing/serecty/kokuwafu.html> (13)甲第13号証:気づけばカロリーオーバー?野菜ダイエットの落とし穴、インターネット<URL:https://allabout.co.jp/gm/gc/422844/> (14)甲第14号証:読めばわかる!糖質制限ダイエットガイド、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20131206130718/http://xn--ecki4eoz7542cnmxd240azxr.net/meal/seasoning.html> (15)甲第15号証:五島うどんブログ、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20100712171602/https://www.umaiudon.com/blog/agodasi.html> (16)甲第16号証:松嶋菜々子さん紹介『昧の兵四郎あご入りだし』、インターネット<URL:http://tumoria.blog27.fc2.com/blog-entry-836.html> (17)甲第17号証:砂糖類情報、インターネット<URL:https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0502.htm> 2.サポート要件 本件発明1には、焼きあご出汁について含有量が一切特定されていない。 そして、本件特許明細書の段落【0027】の調製方法で得られた焼き干しあご出汁の含有量が15?25%であり、他の成分が特定の含有量で含有される液状調味料については、目的の課題を解決できることが認識できるとしても、焼きあご出汁を15%より少なく用いた場合や、40%より多く液状調味料において用いた場合に、本件発明1の課題が解決されたことを示す根拠となる記載はないから、本件発明1の課題が解決できることは認識できない。また、あらゆる濃度の焼きあご出汁をあらゆる含有量で用いたすべての場合に、本件発明1の課題が解決できるとはいえないことは明らかである。 したがって、本件発明1の範囲にまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件発明1?4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないので、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第4 甲号証について 1.甲1について 甲1には、下記の記載がある。 「本醸造丸大豆うすくち醤油をベースに、長崎名産の飛魚、椎茸、こんぶの三味がおいしく調和しただしの素(めんつゆ)です。2倍希釈ですから、お好みにあわせて飛び魚(アゴ)の上品な味と香り豊かな美味しさをお楽しみ下さい。」 ビンの写真のラベルから、「2倍希釈」が看取できる。 上記の記載より、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「本醸造丸大豆うすくち醤油をベースに、飛魚、椎茸、こんぶの三味が調和しただしの2倍希釈めんつゆ。」 2.甲2について 甲2には、下記の記載がある。 「しょうゆ(本醸造)(大豆(遺伝子組換えでない)・小麦を含む)、砂糖、焼き飛魚(あご)、食塩、みりん、酵母エキス、醸造酢、乾しいたけ、こんぶ、魚貝エキス」 「栄養成分100ml当り 熱量102kcal、たんぱく質3.6g、脂質0.0g、炭水化物21.9g、ナトリウム3.2g、食塩相当量8.2g」 しかしながら、甲2は、公知となった日が不明であるので、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったウェブページであるとはいえないから、新規性・進歩性を判断するうえで採用することができない。 3.甲3について 甲3には、下記の記載がある。 「ミヤジマ焼きあごつゆ500ml×2本」 「原材料:しょうゆ(本醸造9、糖類異性化液糖、水飴、砂糖)、食塩、米発酵調味料、あご(とびうお)、そうだかつお削り節、醸造酢、椎茸粉、かつお調味エキス、蛋白加水分解物、調味エキス、調味料(アミノ酸等)、アルコール、(原材料に一部に大豆、小麦を含む)」 ビンの写真のラベルから、「濃縮2倍」が看取できる。 上記の記載より、甲3には、下記の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 「原材料がしょうゆ(本醸造9、糖類異性化液糖、水飴、砂糖)、食塩、米発酵調味料、あご(とびうお)、そうだかつお削り節、醸造酢、椎茸粉、かつお調味エキス、蛋白加水分解物、調味エキス、調味料(アミノ酸等)、アルコール、(原材料に一部に大豆、小麦を含む)である濃縮2倍焼きあごつゆ。」 4.甲4について 甲4には、下記の記載がある。 「原材料名 しょうゆ、糖類(異性化液糖、水飴、砂糖)、食塩、米発酵調味料、焼きあご(とびうお)、そうだかつお削り節、醸造酢、椎茸粉、かつお調味エキス、蛋白加水分解物、調味エキス/調味料(アミノ酸等)、アルコール、(一部に小麦・大豆を含む)」 「100ml当たりエネルギー:112kcal、たんぱく質:4.5g、脂質:0.0g、炭水化物:23.6g、食塩相当量:7.9g、(ナトリウム:3100mg)」 しかしながら、甲4は、公知となった日が不明であるので、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったウェブページであるとはいえないから、新規性・進歩性を判断するうえで採用することができない。 5.甲5について 甲5には、下記の記載がある。 「マルエあごだし本つゆ400ml×12本」 「原材料:しょうゆ(本醸造)、砂糖・ぶどう糖果糖液糖、風味原料(焼きあごだし、かつおエキス)、米発酵調味料、蛋白加水分解物、食塩、醸造酢、調味料(アミノ酸等)、アルコール、ビタミンB2(原材料の一部に小麦、大豆含む)」 「九州伝統で高級だしとしても知られる焼き飛魚(あご)のだしと馴染み深いカツオ・昆布のだしを使った上品なコクとほのかな甘みが特徴の濃縮3倍つゆです。」 「栄養成分 [栄養成分表100mlあたり]エネルギー131kcal、たんぱく質6.4g、脂質0g、炭水化物23.8g、ナトリウム3.81g」 上記の記載より、甲5には、下記の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 「原材料がしょうゆ(本醸造)、砂糖・ぶどう糖果糖液糖、風味原料(焼きあごだし、かつおエキス)、米発酵調味料、蛋白加水分解物、食塩、醸造酢、調味料(アミノ酸等)、アルコール、ビタミンB2(原材料の一部に小麦、大豆含む)であり、栄養成分が100mlあたり、エネルギー131kcal、たんぱく質6.4g、脂質0g、炭水化物23.8g、ナトリウム3.81gである濃縮3倍つゆ。」 6.甲6について 甲6には、下記の事項が記載されている。 3倍希釈めんつゆのpHは「4.75」、2倍希釈めんつゆのpHは「4.72」及び「4.92」であること(表10)。 「3倍つゆ」の全糖分は「23.4?24.6」、「5倍つゆ」の全糖分は「17.3?24.2」であること(表16)。 「和風たれ、やきとり」の全糖分は「25.1?54.5」、「和風たれ、かばやき」の全糖分は「18.5?39.1」、「和風たれ、てりやき」の全糖分は「31.0?41.0」、「すき焼きのつゆ」の全糖分は「30.0?46.0」、「焼肉のたれ」の全糖分は「25.1?54.5」、「ジンギスカンのたれ」の全糖分は「12.2?27.1」であること(表16)。 7.甲7について 甲7には、下記の事項が記載されている。 2倍つゆのpHは「4.9」、3倍つゆのpHは「4.9」であること(表6-8)。 8.甲8について 甲8には、下記の事項が記載されている。 つゆ、たれ、ぽん酢、液体だしの分析例が示されており、麺つゆ(2倍)のpHは「4.9」であること、及び「焼鳥のたれ」の「全糖(%)」は、「29.0」であること(第3表)。 9.甲9について 甲9には、下記の事項が記載されている。 市販のサラダドレッシング製品M、F、及びTの3銘柄には甘味料としてショ糖が用いられ、その濃度(Brix)は20?28°であること(121ページ左欄)。 10.甲10について 甲10には、下記の事項が記載されている。 ノンオイルドレッシング青じその10ml当たりの炭水化物は、2.2gであること。 11.甲11について 甲11には、下記の事項が記載されている。 リケンのノンオイルセレクティこく仕立て和風200ml。 12.甲12について リケンのノンオイルセレクティ(○にR)こく仕立て和風の栄養成分は、15gあたり炭水化物を3.3g含むこと。 13.甲13について 甲13には、下記の事項が記載されている。 ノンオイルのドレッシングやハーフマヨネーズは、カロリーが低いため魅力的ですが油分の使用が少ない分コクやトロミを出すために甘味料や添加物が入っていることも多いこと。 14.甲14について 甲14には、下記の事項が記載されている。 ノンオイルドレッシングは、油の代わりに糖分を多く使用してコクを出していること。 15.甲15について 甲15には、下記の事項が記載されている。 アゴからダシをとるときには、焼きアゴを使用すること。 16.甲16について 甲16には、下記の事項が記載されれている。 焼きあごのだしは、旨みとコクが深いこと。 17.甲17について 甲17には、下記の事項が記載されれている。 還元澱粉糖化物は、タレやドレッシングなどの調味料によく使われていること。 第5 当審の判断 1.新規性・進歩性 (1)本件発明1について ア 甲1発明を主引用例とした場合 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は、「あごを含有する液状調味料。」の点で一致するものの、本件発明1は、「あご」について、「焼きあご出汁」であり、「食用油脂の含有量が5%未満の液状調味料において、pH4.0以上5.0以下であり、焼きあご出汁、有機酸、食塩、並びに1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコールを含有し、前記食塩含有量が4%以上9%以下、前記1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールの合計含有量が21%以上40%以下である、液状調味料。」であるのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点で相違する(以下「相違点1」という。)。 上記相違点1について検討すると、甲1発明において、上記相違点1とするように成分を調整することに動機付けは存在しないから、設計事項であるとはいえない。 そして、上記相違点1に係る本件発明1に特定された事項は、甲3及び甲5ないし甲17において記載や示唆がされていない。 したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明並びに甲1、甲3、甲5ないし甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 甲3発明を主引用例とした場合 本件発明1と甲3発明とを対比すると、両発明は、「あご、有機酸、食塩、並びに1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコールを含有する液状調味料。」の点で一致するものの、本件発明1は、「あご」について、「焼きあご出汁」であり、「食用油脂の含有量が5%未満の液状調味料において、pH4.0以上5.0以下であり、焼きあご出汁、有機酸、食塩、並びに1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコールを含有し、前記食塩含有量が4%以上9%以下、前記1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールの合計含有量が21%以上40%以下である、液状調味料。」であるのに対し、甲3発明は、そのような特定がなされていない点で相違する(以下「相違点2」という。)。 上記相違点2について検討すると、甲3発明において、上記相違点2とするように成分を調整することに動機付けは存在しないから、設計事項であるとはいえない。 そして、上記相違点2に係る本件発明1に特定された事項は、甲1及び甲5ないし甲17において記載や示唆がされていない。 したがって、本件発明1は、甲3発明であるとはいえず、また、甲3発明並びに甲1、甲3、甲5ないし甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 甲5発明を主引用例とした場合 本件発明1と甲5発明とを対比すると、両発明は、「食用油脂の含有量が5%未満の液状調味料において、焼きあご出汁、有機酸、食塩、並びに1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコールを含有する液状調味料。」の点で一致するものの、本件発明1は、糖について、「前記1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールの合計含有量が21%以上40%以下」と特定しているのに対し、甲5発明は、そのような特定がされていない点(以下「相違点3」という。)、本件発明1は、食塩について、「食塩含有量が4%以上9%以下」と特定しているのに対して、甲5発明は、そのような特定がされていない点(以下「相違点4」という。)、及び本件発明1はpHについて、「pH4.0以上5.0以下」と特定しているのに対して甲5発明は、そのような特定がなされていない点(以下「相違点5」という。)でそれぞれ相違する。 上記相違点3、4及び5について検討すると、甲5発明の100ml 当たりの炭水化物量は23.8gであり、甲5発明の炭水化物が糖であれば、100ml 当たりの糖の量が23.8gであるといえるが、甲5発明における炭水化物の全てが必ずしも、1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールであるとはいえない。そして、「前記1?2糖の糖及び1?2糖の糖アルコールの合計含有量が21%以上40%以下」とすることにより、食用油脂の含有量が5%未満の液状調味料において、pH4.0以上5.0以下(上記相違点5)で、焼きあご出汁、有機酸、含有量が4%以上9%以下の食塩(上記相違点4)、並びに特定量の1?2糖の糖及び/又は1?2糖の糖アルコール(上記相違点3)を含有することを特徴とし、これにより、「食用油脂の含有量が5%未満にもかかわらず、コクが感じられる液状調味料となる。」(【0010】)との効果を奏するものであるから、上記相違点3、4及び5は、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲5発明であるとはいえず、また、甲5発明並びに甲1、甲3、甲5ないし甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲1発明、甲3発明又は甲5発明であるとはいえず、また、甲1発明、甲3発明または甲5発明並びに甲1、甲3、甲5ないし甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2、3及び4について 本件発明2、3及び4は、いずれも請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件発明2ないし4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件発明2、3及び4は、甲1発明、甲3発明又は甲5発明であるとはいえず、また、甲1発明、甲3発明または甲5発明並びに甲1、甲3、甲5ないし甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)小括 本件発明1ないし4は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。 2.サポート要件 本件特許明細書の段落【0015】には、「・・・本発明で用いる焼きあご出汁は、一般的な魚節の出汁と同様、焼きあごから主に熱水等の水性媒体で抽出したものである。 本発明の液状調味料は、焼きあご出汁を用いないと、たとえ他の必須原料である糖質、有機酸及び食塩等と組み合わせたとしてもコクが感じられる液状調味料が得られない。 焼きあごとは、あごを焼いたものであり、例えば、炭火やガス火などで焼いた「焼きあご」、焼いた後に乾燥させる「焼き干しあご」、その他燻製にかけたもの等が挙げられる。 「焼きあご」や「焼き干しあご」は加熱したことにより、あごの余分な魚油が除かれ、芳ばしさが出るため、本発明において、液状調味料に合わせた際に、コクが感じられる。・・・」と記載されている。 また、同段落【0055】?【0057】には、コクが優れていることが確認されている実施例1において、焼き干しあご出汁に代えて、かつお抽出物により調整された比較例1の液状調味料は、コクに欠けているという実験結果、同段落【0058】、【0059】には、同実施例1において、焼き干しあご出汁に代えて、ほしあご出汁から調整された比較例2の液状調味料は、コクに欠けているという実験結果がそれぞれ記載されている。 そうすると、当業者であれば、本件発明1の液状調味料は、焼きあご出汁を含有しているから、その含有量によらず、焼きあご出汁を含有していない同液状調味料に比べ、よりコクに優れた液状調味料を得ることができることが理解できるから、実施例で示された、液状調味料における焼き干しあご出汁の含有量が15?25%の範囲外であっても、当業者であれば、本件特許の課題が解決できると認識することができる。 したがって、本件発明1ないし4の範囲までに、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえないから、本件発明1ないし4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-03-05 |
出願番号 | 特願2014-190892(P2014-190892) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L) P 1 651・ 113- Y (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中村 勇介 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 窪田 治彦 |
登録日 | 2018-04-06 |
登録番号 | 特許第6315586号(P6315586) |
権利者 | キユーピー株式会社 |
発明の名称 | 液状調味料 |