• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01T
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01T
管理番号 1349930
審判番号 不服2017-19157  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2019-04-02 
事件の表示 特願2012-257007「携帯式放射線検出器及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月10日出願公開、特開2013-113848、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月26日(パリ優先権主張 平成23年11月30日、米国)の出願であって、その主な経緯は次のとおりである。
平成27年11月18日 :手続補正書(この手続補正書による補正を「第1次補正」という。)
平成28年 9月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 3月 3日 :意見書・手続補正書(この手続補正書による補正を「第2次補正」という。)
平成29年 8月31日付け:拒絶査定
平成29年12月25日 :審判請求書・手続補正書(この手続補正書による補正を「第3次補正」という。)
平成30年 2月 6日付け:前置拒絶理由通知(最後)
平成30年 5月11日 :意見書・手続補正書(この手続補正書による補正を「第4次補正」という。)
平成30年 7月 4日付け:前置報告書
平成30年 9月 7日付け:当審拒絶理由通知(最初)
平成30年12月11日 :意見書・手続補正書(この手続補正書による補正を「第5次補正」という。)
平成31年 1月23日付け:当審拒絶理由通知(最初)
平成31年 2月 6日 :意見書・手続補正書(この手続補正書による補正を「第6次補正」という。)

第2 原査定・前置拒絶理由通知・前置報告書・当審拒絶理由通知の概要
1 原査定の概要
原査定がなされた時、本願の請求項に係る発明は、第2次補正後の特許請求の範囲の請求項1?13に記載されたとおりのものであった。そして、原査定は、請求項9?13に係る発明に対して、次の理由を説示した。他方、原査定は、請求項1?8に係る発明に対して、査定の対象とはしなかった。

(1)本願請求項9?13に係る発明は、引用文献1(「第2」の項の末尾に記載する。以下同じ。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願請求項9?13に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 前置拒絶理由通知の概要
前置拒絶理由通知がなされた時、本願の請求項に係る発明は、第3次補正(審判請求と同時になされた補正)後の特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものであった。そして、前置拒絶理由通知は、請求項1?8に係る発明に対して、次の理由(以下「前置拒絶理由」という。)を説示した。

(1)本願の請求項1?6,8に係る発明は、引用文献1?引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本願の請求項7?8に係る発明は、引用文献1?引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 前置報告書の概要
前置報告書が作成された時、本願の請求項に係る発明は、第4次補正後の特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものであった。そして、前置報告書は、請求項1?7に係る発明に対して、次の理由を説示した。

(1)本願の請求項1?5、7に係る発明は、引用文献1,2,4,5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本願の請求項6,7に係る発明は、引用文献1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 平成30年9月7日付け当審拒絶理由通知(以下「第1次当審拒絶理由通知」という。)の概要
第1次当審拒絶理由通知がなされた時、本願の請求項に係る発明は、前置報告書が作成された時と同様に、第4次補正後の特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものであった。そして、第1次当審拒絶理由通知は、請求項1?7に係る発明に対して、次の理由(以下「第1次当審拒絶理由」という。)を説示した。

(1)請求項1?7に係る発明は、明確でない。
(2)請求項1?7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていない。

5 平成31年1月23日付け当審拒絶理由通知(以下「第2次当審拒絶理由通知」という。)の概要
第2次当審拒絶理由通知がなされた時、本願の請求項に係る発明は、第5次補正後の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明であった。そして、第2次当審拒絶理由通知は、請求項1?6に係る発明に対して、次の理由(以下「第2次当審拒絶理由」という。)を説示した。

請求項1?6に係る発明は、明確でない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2010/109984号
2.特開2011-229899号公報
3.特開2006-208313号公報
4.特開2011-131066号公報
5.特開2011-104086号公報

第3 本願の請求項に係る発明の認定
本願の請求項1?6に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、第6次補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、本願発明1は、次のとおりである。

「電磁放射線を電気信号に変換し、固定式又は定置式画像処理システムおよび可動式画像処理システムと共に使用するように構成された、取り外し可能ではないハンドルを含む携帯式検出器であって、
前記携帯式検出器に外部電力を供給する1つ又は複数のコネクタと、
バッテリと、
1つ又は複数のルーチンを記憶する少なくとも1つのメモリ構造体と、
前記少なくとも1つのメモリ構造体により記憶された前記1つ又は複数のルーチンを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサと
を含み、
前記1つ又は複数のルーチンは、実行の際、前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力に基づいて、前記バッテリによって電力が供給されている前記携帯式検出器を、前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態に設定する、携帯式検出器。」

なお、本願発明2?6は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献の記載事項等の認定
1 引用文献1(国際公開第2010/109984号)
(1)原査定の理由及び前置拒絶理由が引用した引用文献1には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「なお、本実施形態における放射線画像検出装置2は、後述するように、バッテリ28を内蔵しており、このバッテリ28のみから電力を取得して各機能部を駆動するバッテリ駆動状態と、クレードル4又はケーブル5を介して外部から給電することにより駆動する外部給電駆動状態との2つの駆動状態が選択可能となっており、この外部給電駆動状態のときには、各機能部の駆動と並行してバッテリ28の充電を行うことができるように構成されている。」([0020])、
「バッテリ28と検出装置側コネクタ部26との間には、接続検出部60が設けられている。接続検出部60は、検出装置側コネクタ部26に、クレードル4又はケーブル5のいずれが接続されたかを検出する検知手段である。接続検出部60による検出結果は、充電制御回路6の充電電流設定部61に出力される。
なお、本実施形態において、接続検出部60が、検出装置側コネクタ部26に接続されたのがクレードル4であるかケーブル5であるかを検出する手法は特に限定されない。例えば、検出装置側コネクタ部26に機械的なスイッチ(図示せず)を設けて、クレードル4が接続されたときとケーブル5が接続されたときとでスイッチのON/OFF状態が切り変わるように構成してもよいし、検出用の接点を設けて、クレードル4が接続されたときとケーブル5が接続されたときとで接点の短絡/開放状態が変わるように構成してもよい。」([0028])、
「制御部30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータであり、放射線画像検出装置2全体を統括的に制御する。
信号処理部34は、画像データに所定の信号処理を施すことによって画像データを外部に出力するのに適した形式のデータとする機能部である。」([0035])、
「ROMには、実写画像データ生成処理、オフセット補正値生成処理、給電制御処理等、放射線画像検出装置2において各種の処理を行うためのプログラム、各種の制御プログラムやパラメータ等が記憶されている。
制御部30は、ROMに格納された所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開し、当該プログラムに従ってCPUが各種処理を実行するようになっている。」([0036])、
「充電電流設定部61は、接続検出部60による検知結果に応じて、バッテリ28に供給する充電電流を切り替える機能部である。
本実施形態において、検出装置側コネクタ部26にクレードル出力コネクタ部42が接続されたと検知された場合には、バッテリ28に供給する充電電流の電流値を高く設定して、大電流による高速充電を行うようになっている。
また、検出装置側コネクタ部26にケーブル5が接続されたと検知された場合には、バッテリ28に供給する電流の電流値を低く設定して、小電流による充電を行うようにする。そして、この場合には、バッテリ28の充電を行いながら、これと並行して撮影等を行うことができるようになっており、ケーブル5を介して外部電源から供給された電力がバッテリ28のほか、電源回路29を介して各機能部にも供給されるようになっている。」([0040])

イ 「請求の範囲」、
「各機能部に電力を供給するバッテリを内蔵し、前記バッテリからの電力供給による駆動が可能なカセッテ型の放射線画像検出装置と、
前記バッテリの充電制御を行う充電制御回路と、
前記放射線画像検出装置を載置することにより、外部から前記放射線画像検出装置に電力を供給可能に構成されたクレードルと、
前記放射線画像検出装置と接続することにより、外部から前記放射線画像検出装置に電力を供給可能なケーブルと、を備え、
前記放射線画像検出装置は、前記クレードル及び前記ケーブルのそれぞれと電気的に接続可能に構成され受電を行う接続部を有し、
前記バッテリの充電は、前記クレードルによる接続と前記ケーブルによる接続との双方により可能に構成され、
前記充電制御回路は、前記クレードルによる接続時と、前記ケーブルによる接続時とで充電電流を切り替えることを特徴とする放射線画像検出システム。」([請求項1])、
「前記接続部に前記クレードル又は前記ケーブルのいずれが接続されているかを検知する検知手段を有し、
前記充電制御回路は、前記検知手段の検知結果に応じて充電電流を切り替えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像検出システム。」([請求項3])、
「前記放射線画像検出装置は、電力を前記バッテリのみから取得して駆動するバッテリ駆動状態と、電力を前記クレードル又は前記ケーブルを介して、外部から給電して駆動する外部給電駆動状態との2つの駆動状態が選択可能であり、
前記外部給電駆動状態のときに、前記バッテリの充電を並行して行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像検出システム。」([請求項4])

(2)上記(1)の各記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明1の認定に直接用いた引用文献1の記載等を、括弧内に付記している(以下、同じ。)。
「各機能部に電力を供給するバッテリを内蔵し、前記バッテリからの電力供給による駆動が可能なカセッテ型の放射線画像検出装置と、
前記バッテリの充電制御を行う充電制御回路と、
前記放射線画像検出装置を載置することにより、外部から前記放射線画像検出装置に電力を供給可能に構成されたクレードルと、
前記放射線画像検出装置と接続することにより、外部から前記放射線画像検出装置に電力を供給可能なケーブルと、を備え、
前記放射線画像検出装置は、前記クレードル及び前記ケーブルのそれぞれと電気的に接続可能に構成され受電を行う接続部を有し、
前記バッテリの充電は、前記クレードルによる接続と前記ケーブルによる接続との双方により可能に構成され、
前記充電制御回路は、前記クレードルによる接続時と、前記ケーブルによる接続時とで充電電流を切り替える放射線画像検出システムであって、([請求項1])
前記接続部に前記クレードル又は前記ケーブルのいずれが接続されているかを検知する検知手段を有し、
前記充電制御回路は、前記検知手段の検知結果に応じて充電電流を切り替えるものであり、([請求項3])
前記検知手段は、検出装置側コネクタ部26に検出用の接点を設けて、クレードル4が接続されたときとケーブル5が接続されたときとで接点の短絡/開放状態が変わるように構成してもよく、([0028])
放射線画像検出装置全体を統括的に制御する制御部を備え、前記制御部は、CPU、ROM等を備えるコンピュータであり、([0035])
ROMには、実写画像データ生成処理、オフセット補正値生成処理、給電制御処理等、放射線画像検出装置2において各種の処理を行うためのプログラム、各種の制御プログラムやパラメータ等が記憶されており、([0036])
このバッテリ28のみから電力を取得して各機能部を駆動するバッテリ駆動状態と、クレードル4又はケーブル5を介して外部から給電することにより駆動する外部給電駆動状態との2つの駆動状態が選択可能となっている、([0020])
放射線画像検出システム。」

2 引用文献2(特開2011-229899号公報)
原査定の理由及び前置拒絶理由が引用した引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「可搬型検出器10において、把手64を用いて可搬型検出器10の装着、運搬及び/又は保管を容易にすることができること。(【0016】、図2)」

3 引用文献3(特開2006-208313号公報)
原査定の理由及び前置拒絶理由が引用した引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「放射線画像検出器5に加速度センサを配設し、このセンサを動作状態を切り替えるための指示が入力される入力部とすること。(【0080】)」

4 引用文献4(特開2011-131066号公報)
前置報告書の理由が引用した引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「無線通信使用時には、電力供給制御部51および電力供給用配線38を介してバッテリー30から各部位へ電力が供給され、有線通信使用時には、無線通信部31を除く各部位に電力が供給されること、(【0034】)
無線送信が困難である場合や、無線送信が適切でない場合等には、撮影者は、有線通信手段32の接続端子33に通信ケーブル35の接続端子36を接続し、通信ケーブル検知部50により、接続端子33に通信ケーブル35の接続端子36が接続されていることが検知され、通信制御部41は、有線通信部32により送信を行うことを自動的に設定し、同時に電力供給制御部51を制御して、無線通信部31への電力供給を停止すること、(【0036】)
有線通信部32が送信可能に設定された場合には、無線通信部31への電力供給が停止されるため、無線通信を行わない場合の電力消費を低減することができること。(【0039】)」

5 引用文献5(特開2011-104086号公報)
前置報告書の理由が引用した引用文献5には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「バッテリ内蔵型の可搬型放射線画像撮影装置では、バッテリの消耗を避けること等を目的として、放射線検出素子等に対する電力の供給状態を、放射線検出素子等に電力を供給して放射線画像撮影を可能とする撮影可能モードと、放射線検出素子等への電力の供給を停止して必要な部材にのみ電力を供給するスリープモード(待機モード等ともいう。)との間で切り替えることができるように構成されている場合があり、スリープモードでは、放射線検出素子等に電力を供給しないため消費電力を抑制することができるが、放射線画像撮影を行うことはできないこと。(【0004】)」

第5 原査定の理由に対する当審の判断
原査定は、第2の1のとおり、第2次補正後の請求項9?13に係る発明を対象としていたところ、審判請求と同時になされた第3次補正により、当該各発明は、いずれも削除された。
そのため、原査定の理由により、本願を拒絶することはできない。

第6 前置拒絶理由に対する当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1の「電磁放射線を電気信号に変換し、固定式又は定置式画像処理システムおよび可動式画像処理システムと共に使用するように構成された、取り外し可能ではないハンドルを含む携帯式検出器であって、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「カセッテ型の放射線画像検出装置」は、本願発明1の「電磁放射線を電気信号に変換」する「携帯式検出器」に相当する。
(イ)よって、引用発明1は、本願発明1の「電磁放射線を電気信号に変換し、」「携帯式検出器であって、」との特定事項を備える。
(ウ)しかし、引用発明1は、「固定式又は定置式画像処理システムおよび可動式画像処理システムと共に使用するように構成された」ものではなく、「取り外し可能ではないハンドルを含む」ものでもない。

イ 本願発明1の「前記携帯式検出器に外部電力を供給する1つ又は複数のコネクタと、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「前記クレードル及び前記ケーブルのそれぞれと電気的に接続可能に構成され受電を行う接続部」(及び「検出装置側コネクタ部26」)が、本願発明1の「前記携帯式検出器に外部電力を供給する1つ又は複数のコネクタ」に相当することは、明らかである。
(イ)よって、引用発明1は、本願発明1の「前記携帯式検出器に外部電力を供給する1つ又は複数のコネクタと、」との特定事項を備える。

ウ 本願発明1の「バッテリと、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「カセッテ型の放射線画像検出装置」に「内蔵」された「バッテリ」は、本願発明1の「バッテリ」に相当する。
(イ)よって、引用発明1は、本願発明1の「バッテリと、」との特定事項を備える。

エ 本願発明1の「1つ又は複数のルーチンを記憶する少なくとも1つのメモリ構造体と、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「各種の処理を行うためのプログラム、各種の制御プログラムやパラメータ等が記憶されている」「ROM」は、本願発明1の「1つ又は複数のルーチンを記憶する少なくとも1つのメモリ構造体」に相当する。
(イ)よって、引用発明1は、本願発明1の「1つ又は複数のルーチンを記憶する少なくとも1つのメモリ構造体と、」との特定事項を備える。

オ 本願発明1の「前記少なくとも1つのメモリ構造体により記憶された前記1つ又は複数のルーチンを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサと」との特定事項について
(ア)引用発明1の「放射線画像検出装置全体を統括的に制御する制御部」に備えられた「CPU」は、本願発明1の「1つ又は複数のプロセッサ」に相当する。
(イ)よって、上記エも踏まえれば、引用発明1は、本願発明1の「前記少なくとも1つのメモリ構造体により記憶された前記1つ又は複数のルーチンを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサと」との特定事項を備える。

カ 本願発明1の「前記1つ又は複数のルーチンは、実行の際、前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力に基づいて、前記バッテリによって電力が供給されている前記携帯式検出器を、前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態に設定する、」との特定事項について
(ア)引用発明1は、「前記検知手段は、検出装置側コネクタ部26に検出用の接点を設けて、クレードル4が接続されたときとケーブル5が接続されたときとで接点の短絡/開放状態が変わるように構成してもよ」いものであるとともに、「前記検知手段の検知結果に応じて充電電流を切り替えるものであ」る。そうすると、上記イ、エ及びオも踏まえると、本願発明1と引用発明1とは、「前記1つ又は複数のルーチンは、実行の際、前記1つ又は複数のコネクタから受け取った」「入力に基づいて、」「前記携帯式検出器を、」所定の「動作状態に設定する」点で一致する。
(イ)しかし、引用発明1は、
前記携帯式検出器を所定の動作状態に設定する際に基づくものとされる、「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った」「入力」が、「クレードル」又は「ケーブル」のいずれかが接続されているという意味での「入力」であって、本願発明1のような「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」ではなく、
「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った」「入力」に基づいて設定される「所定の動作状態」が、「バッテリ28のみから電力を取得して各機能部」が「駆動」されている前記携帯式検出器ではなく、「クレードル4又はケーブル5を介して外部から給電することにより駆動」されている前記携帯式検出器の、「充電電流」が相違する動作状態である。

キ 本願発明1の「携帯式検出器。」との特定事項について
上記アのとおり、引用発明1は、本願発明1の「携帯式検出器。」との特定事項を備える。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明1と引用発明1とは、
「電磁放射線を電気信号に変換する携帯式検出器であって、
前記携帯式検出器に外部電力を供給する1つ又は複数のコネクタと、
バッテリと、
1つ又は複数のルーチンを記憶する少なくとも1つのメモリ構造体と、
前記少なくとも1つのメモリ構造体により記憶された前記1つ又は複数のルーチンを実行するように構成された1つ又は複数のプロセッサと
を含み、
前記1つ又は複数のルーチンは、実行の際、前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力に基づいて、前記携帯式検出器を、所定の動作状態に設定する、
携帯式検出器。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は、「固定式又は定置式画像処理システムおよび可動式画像処理システムと共に使用するように構成された」ものであるのに対し、引用発明1は、そうではない点。

[相違点2]
本願発明1は、「取り外し可能ではないハンドルを含む」のに対し、引用発明1は、そうではない点。

[相違点3]
「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力に基づいて、前記携帯式検出器を、所定の動作状態に設定する」ことについて、

本願発明1は、
前記携帯式検出器を所定の動作状態に設定する際に基づくものとされる「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力」が、「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」であり、
「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力」に基づいて設定される「所定の動作状態」が、「前記バッテリによって電力が供給されている前記携帯式検出器を、前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態」であるのに対し、

引用発明1は、
前記携帯式検出器を所定の動作状態に設定する際に基づくものとされる「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った」「入力」が、「クレードル」又は「ケーブル」のいずれかが接続されているという意味での「入力」であって、「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」ではなく、
「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力」に基づいて設定される「所定の動作状態」が、「バッテリ28のみから電力を取得して各機能部」が「駆動」されている前記携帯式検出器ではなく、「クレードル4又はケーブル5を介して外部から給電することにより駆動」されている前記携帯式検出器の、「充電電流」が相違する動作状態である点。

(4)相違点の判断
ア 相違点3について
事案にかんがみ、相違点3から判断する。
引用文献1?3には、携帯式検出器を所定の動作状態に設定する際に基づくものとされる「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力」が「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す」入力であることの記載も示唆もなく、「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、入力」に基づいて設定される「所定の動作状態」が、「前記バッテリによって電力が供給されている前記携帯式検出器を、前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態」であることについての記載も示唆もない。
そうすると、当業者といえども、引用発明1及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて相違点3の構成に至ることはない。

イ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1を減縮したものであるから、上記1と同様の理由で、引用発明1及び引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 前置拒絶理由に対する当審の判断の小括
以上のとおりであるから、前置拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。

第6 前置報告書の理由に対する当審の判断
前置拒絶理由と前置報告書の理由との差異は、要するに、引用文献4及び5の提示の有無である。しかし、これらの文献を考慮しても、上記第5の1(4)アにおける相違点3の判断の結論は、以下のとおり、左右されない。

まず、引用文献4に記載された技術的事項は、「有線通信手段32の接続端子33に通信ケーブル35の接続端子36を接続し」た入力に基づいて、バッテリによって電力が供給されている携帯式検出器を、前記携帯式検出器の「無線通信部31」(「電力消費部品」に相当する。)をオフにする動作状態に設定するものといえる。しかしながら、上記の「有線通信手段32の接続端子33に通信ケーブル35の接続端子36を接続し」た入力は、相違点3でいう「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」とはいえない。よって、引用発明1に当該技術的事項を採用したとしても、相違点3の構成に至らない。

次に、引用文献5に記載された技術的事項は、バッテリによって電力が供給されている前記携帯式検出器を、前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態に設定するものであるといえる。しかしながら、当該技術的事項は、その動作状態へ設定する際に基づくものとされる入力が、「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」とされているのではなく、さらにいえば、「前記1つ又は複数のコネクタから受け取った、」入力とされているものですらない。よって、引用発明1に当該技術的事項を採用したとしても、相違点3の構成に至らない。

そうすると、本願発明1?6は、引用発明1及び引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないというべきである。
前置報告書の理由によって、本願を拒絶することはできない。

第7 第1次当審拒絶理由に対する当審の判断
1 明確性要件違反について
(1)当審は、第4次補正後の請求項1における、「様々な画像処理システム」及び「実行の際、前記1つ又は複数のコネクタから受け取った入力に基づいて、バッテリにより給電される前記携帯式検出器の1つ又は複数の電力消費部品をオフにする動作状態を特定する1つ又は複数のルーチンをエンコードする少なくとも1つのメモリ構造体と、」との記載が明確でない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項1の記載は、明確である。

(2)当審は、第4次補正後の請求項2における「電力」との記載が明確でない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項2の記載は、明確である。

2 サポート要件違反について
(1)当審は、第4次補正後の請求項1における「・・・コネクタから受け取った入力に基づいて、」「・・・電力消費部品をオフにする動作状態を特定する」との記載がサポートされていない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項1の記載はサポートされている。

(2)当審は、第4次補正後の請求項5における「・・・に接続されているかどうかに・・・基づいて特定される」との記載がサポートされていない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項4(第5次補正により、第4次補正後の請求項4が削除されたため、請求項に付された番号がずれている。)の記載はサポートされている。

(3)当審は、第4次補正後の請求項6における「前記携帯式検出器の前記動作状態は、加速度計又は近接センサにより生成される信号に少なくとも部分的に応答して特定される」との記載がサポートされていない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項5(第5次補正により、第4次補正後の請求項4が削除されたため、請求項に付された番号がずれている。)の記載はサポートされている。

3 第1次当審拒絶理由に対する当審の判断の小括
よって、第1次当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。

第8 第2次当審拒絶理由に対する当審の判断
当審は、第5次補正後の請求項1の「前記携帯式検出器が外部電源に接続されていないことを表す入力」との記載が明確でない旨の拒絶理由を通知したが、第6次補正後の請求項1の記載は明確である。
よって、第2次当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由、前置拒絶理由、前置報告書の理由、第1次当審拒絶理由及び第2次当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-19 
出願番号 特願2012-257007(P2012-257007)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01T)
P 1 8・ 121- WY (G01T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 孝平右田 純生  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 森 竜介
山村 浩
発明の名称 携帯式放射線検出器及びシステム  
代理人 荒川 聡志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ