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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1350617
異議申立番号 異議2018-700543  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-06 
確定日 2019-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6256666号発明「エポキシ樹脂硬化剤,エポキシ樹脂組成物,炭素繊維強化複合材」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6256666号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 特許第6256666号の請求項1?14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6256666号(請求項の数14。以下,「本件特許」という。)は,平成29年3月15日(優先権主張:平成28年4月12日)を国際出願日とする特許出願(特願2017-530234号)に係るものであって,平成29年12月15日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成30年1月10日である。)。
その後,平成30年7月6日に,本件特許の請求項1?14に係る特許に対して,特許異議申立人である甲斐若菜(以下,「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は,以下のとおりである。

平成30年 7月 6日 特許異議申立書
9月21日 取消理由通知書
11月16日 意見書,訂正請求書
11月21日 通知書(訂正請求があった旨の通知)

なお,平成30年11月21日付けの通知書(訂正請求があった旨の通知)に対して,申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
平成30年11月16日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)の請求は,本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?14について訂正することを求めるものであり,その内容は,以下のとおりである。下線は,訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において,「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって,該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物であり,該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部である,エポキシ樹脂硬化剤。」とあるのを,「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって,該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物であり,該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部であり,前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である,エポキシ樹脂硬化剤。」に訂正する。

2 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は,訂正前の請求項1に対して,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である」との記載を追加するものである。
この訂正は,訂正前の請求項1における「アミン化合物(A)」及び「フェノール化合物(B)」について,それらの「合計含有量」を「エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲には,以下の記載がある。
「但し,本発明の効果を効率的に発現する観点から,前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,本発明のエポキシ樹脂硬化剤全量に対して好ましくは50質量%以上,より好ましくは70質量%以上,さらに好ましくは80質量%以上,よりさらに好ましくは85質量%以上,よりさらに好ましくは95質量%以上,特に好ましくは99質量%以上(上限は100質量%)となるようにする。」(【0031】)
以上の記載によれば,上記訂正は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1?14について,請求項2?14は,請求項1を直接又は間接的に引用するものであり,上記の訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1?14に対応する訂正後の請求項1?14は,一群の請求項である。そして,本件訂正は,その一群の請求項ごとに請求がされたものである。

3 まとめ
上記2のとおり,訂正事項1に係る訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し,同条4項に適合するとともに,同条9項において準用する同法126条5項及び6項に適合するものであるから,結論のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明
前記第2で述べたとおり,本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1?14に係る発明は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって,該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物であり,該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部であり,前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である,エポキシ樹脂硬化剤。
R^(1)HN-H_(2)C-A-CH_(2)-NHR^(2) (1)
(式(1)中,R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に水素原子,又は炭素数1?6のアミノアルキル基である。Aはシクロヘキシレン基又はフェニレン基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において,R^(1)及びR^(2)が共に水素原子である,請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において,Aがシクロヘキシレン基である,請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項4】
前記フェノール化合物(B)が下記一般式(2)で示される化合物,フェノール,クレゾール,ハイドロキノン,1-ナフトール,2-ナフトール,レゾルシン,フェノールノボラック樹脂,p-イソプロピルフェノール,p-tert-ブチルフェノール,及びノニルフェノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である,請求項1?3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【化1】

(式(2)中,R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立にOH基,又は炭素数1?4のアルキル基である。j及びkはそれぞれ独立に0?5の整数であり,かつj+kは1以上である。複数のR^(5),及び複数のR^(6)はすべて同一でもよく互いに異なってもよいが,このうち少なくとも1つはOH基である。Zは単結合,炭素数1?6のアルキレン基,炭素数2?6のアルキリデン基,炭素数5?10のシクロアルキレン基,炭素数5?10のシクロアルキリデン基,炭素数7?15のアリールアルキレン基,炭素数7?15のアリールアルキリデン基,-S-,-SO-,-SO_(2)-,-O-,-CO-,-C(CF_(3))_(2)-,-CH(CF_(3))-,-CF_(2)-,-CONH-,又は-COO-である。)
【請求項5】
前記フェノール化合物(B)が前記一般式(2)で示される化合物である,請求項4に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項6】
前記フェノール化合物(B)が4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール,ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン,1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン,及びスチレン化フェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である,請求項5に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤と,エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂が分子内に芳香環又は脂環式構造を含むエポキシ樹脂である,請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂が下記一般式(3)で示されるエポキシ樹脂である,請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(式(3)中,R^(21)?R^(24)はそれぞれ独立に炭素数1?6のアルキル基であり,p,q,r,及びsはそれぞれ独立に0?4の整数である。複数のR^(21),複数のR^(22),複数のR^(23),及び複数のR^(24)はすべて同一でもよく,互いに異なってもよい。Y^(1)及びY^(2)はそれぞれ独立に,単結合,-CH_(2)-,-CH(CH_(3))-,又は-C(CH_(3))_(2)-である。R^(25)は-CH_(2)CH(OH)-,又は-CH(OH)CH_(2)-である。mは平均繰り返し単位数を示し,0?0.2の数である。)
【請求項10】
温度40℃における粘度が400mPa・s以下である,請求項7?9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
炭素繊維強化複合材用である,請求項7?10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項7?11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と,炭素繊維とを含む炭素繊維強化複合材。
【請求項13】
自動車用構造材である,請求項12に記載の炭素繊維強化複合材。
【請求項14】
低圧RTM法,中圧RTM法,高圧RTM法,コンプレッションRTM法,リキッドコンプレッションモールディング法,リキッドレイダウン法,スプレーレイダウン法,サーフェイスRTM法,プリプレグコンプレッションモールディング法又はリキッドキャストモールディング法により成形する工程を有する,請求項12又は13に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。

第4 取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件発明1?14は,下記(1)?(4)のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1?14に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記(5)の甲第1号証?甲第3号証(以下,単に「甲1」等という。)を提出する。

(1)取消理由1(新規性)
本件発明1?14は,甲1に記載された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができないものである。
(2)取消理由2-1(進歩性)
本件発明1?14は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)取消理由2-2(進歩性)
本件発明1?14は,甲2に記載された発明並びに甲3に記載された事項及び周知技術(甲1)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)取消理由3-1(サポート要件)
本件発明1は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。
(5)証拠方法
・甲1 特開平6-136099号公報
・甲2 「エポキシ樹脂の硬化とその成分の諸性質に及ぼす硬化促進剤の影響」,材料,日本材料学会,昭和52年10月15日,第26巻,第289号,p.969-975
・甲3 特開2007-56152号公報

2 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)上記1の取消理由1(新規性)(ただし,本件発明1,2及び4?14に対するもの。)と同旨。
(2)上記1の取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明3?14に対するもの。)と同旨。
(3)本件発明1?14は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない(取消理由3-2(サポート要件))。

第5 当審の判断
以下に述べるように,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。

1 取消理由通知書に記載した取消理由
(1)取消理由1(新規性)(ただし,本件発明1,2及び4?14に対するもの。)
ア 甲1に記載された発明
甲1の記載(請求項1?11,【0001】,【0003】?【0009】,【0012】?【0022】,【0024】,【0025】,【0031】?【0033】,表1,表2,実施例1?3,5,表3,【0047】)によれば,特に,エポキシ硬化剤(B)の配合例である配合例2?4(表2)に着目すると,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。

「3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン47重量%と,ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン19重量%と,キシリレンジアミン31重量%と,ビスフェノールA3重量%とからなり,25℃での粘度が0.160Pa・sである,エポキシ硬化剤(B)。」(以下,「甲1発明1」という。)

「3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン36重量%と,ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン36重量%と,キシリレンジアミン25重量%と,ビスフェノールA3重量%とからなり,25℃での粘度が0.100Pa・sである,エポキシ硬化剤(B)。」(以下,「甲1発明2」という。)

「3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン25重量%と,ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン55重量%と,キシリレンジアミン17重量%と,ビスフェノールA3重量%とからなり,25℃での粘度が0.055Pa・sである,エポキシ硬化剤(B)。」(以下,「甲1発明3」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1?3とを対比する。
甲1発明1?3における「キシリレンジアミン」は,本件発明1における「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)」(注:式は省略。以下同様。)に相当する。
甲1発明1?3における「ビスフェノールA」は,本件発明1における「分子量1,000未満のフェノール化合物」である「フェノール化合物(B)」に相当する。
甲1発明1?3における「エポキシ硬化剤(B)」は,本件発明1における「エポキシ樹脂硬化剤」に相当する。
甲1発明1?3における「キシリレンジアミン」の含有量は,それぞれ,「31重量%」,「25重量%」,「17重量%」であり,同「ビスフェノールA」の含有量は,いずれも,「3重量%」であるところ,甲1発明1?3における「キシリレンジアミン」100質量部に対する「ビスフェノールA」の含有量は,それぞれ,9.7質量部,12質量部,17.6質量部となるから,いずれも,本件発明1における「該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部である」に相当する。
以上によれば,本件発明1と甲1発明1?3とは,
「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって,該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物であり,該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部である,エポキシ樹脂硬化剤。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1では,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である」のに対して,甲1発明1?3では,上記合計含有量が特定されていない点。

(イ)相違点1の検討
甲1発明1?3におけるキシリレンジアミンとビスフェノールとの合計含有量は,エポキシ硬化剤(B)全量に対して,それぞれ,34重量%,28重量%,20重量%であるから,本件発明1における「80質量%以上,100質量%以下」を満たさない。
以上によれば,相違点1は実質的な相違点である。
したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件発明2及び4?14について
本件発明2及び4?14は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明2及び4?14についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明1,2及び4?14は,いずれも,甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって,取消理由1(新規性)(ただし,本件発明1,2及び4?14に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1,2及び4?14に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明3?14に対するもの。)
本件発明3?14は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから,事案に鑑み,まず,本件発明1について検討した後,本件発明3?14について検討する。

ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1?3とを対比すると,両者は,上記(1)イ(ア)で認定したとおりの一致点で一致し,同相違点1で相違する。

(イ)相違点1の検討
甲1には,エポキシ樹脂(A),エポキシ硬化剤(B)及び強化繊維(C)からなる繊維強化硬化エポキシ樹脂成形体を製造するための樹脂組成物について記載されているところ,エポキシ硬化剤(B)として,1分子中に2個以上の脂環構造と2個以上の1級及び/又は2級アミノ基を有する化合物を用いることにより,エポキシ樹脂とともにエポキシ硬化剤も低粘度となるため特にS-RIMに適し,低温,短時間で成形できるとともに,成形体としたときに優れた耐衝撃性と耐熱性が得られることが記載されている(請求項1,【0004】)。
甲1発明1?3に係るエポキシ硬化剤(B)は,「3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン」(B1)と,「ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン」(B2)を含むものであるが,これらの化合物は,上記の「1分子中に2個以上の脂環構造と2個以上の1級及び/又は2級アミノ基を有する化合物」に相当するものである(請求項5,【0013】,【0014】)。
また,甲1発明1?3に係るエポキシ硬化剤(B)は,さらに,「キシリレンジアミン」,「ビスフェノールA」を含むものであるが,これらの化合物は,それぞれ,エポキシ硬化剤(B)における反応性希釈剤としての他のアミノ化合物(【0017】),エポキシ硬化触媒(【0021】)に相当するものである。
ところで,甲1には,エポキシ硬化剤(B)中の(B1)と(B2)の量の合計は,通常30重量%以上であることが記載されているが(【0016】),上記のとおり,(B1)及び(B2)は,甲1において,エポキシ樹脂とともにエポキシ硬化剤も低粘度となるため特にS-RIMに適し,低温,短時間で成形できるとともに,成形体としたときに優れた耐衝撃性と耐熱性が得られるという効果を得るための重要な成分と解されるから,甲1発明1?3に係るエポキシ硬化剤(B)において,「3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン」(B1)と,「ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン」(B2)の量の合計を,あえて,通常の量とされる「30重量%以上」よりも少ない,20重量%未満とし,それ以外の成分である,「キシリレンジアミン」と「ビスフェノールA」の量の合計を,80重量%以上,100重量%以下とすることが動機付けられるとはいえない。
そして,本件明細書の記載(【0007】,【0011】,【0012】,【0018】,【0020】,【0024】,【0030】,【0031】,【0055】?【0081】,実施例1?11,比較例1?8,表1,表2)によれば,本件発明1は,エポキシ樹脂硬化剤において,「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)」と,「分子量1,000未満のフェノール化合物」である「フェノール化合物(B)」を含有させるとともに,「該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量」を「8?35質量部」とし,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量」を「エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下」とすることにより,ハイサイクルRTM法などによって自動車用構造材や建材などのCFRPを生産性よく製造できる,速硬化性でかつ低粘度のエポキシ樹脂硬化剤を提供することができるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると,甲1発明1?3に係るエポキシ硬化剤(B)において,エポキシ硬化剤(B)中の「キシリレンジアミン」と「ビスフェノールA」の量の合計を,80重量%以上,100重量%以下とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明3?14について
本件発明3?14は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記アで述べたとおり,本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明3?14についても同様に,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり,本件発明3?14は,いずれも,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明3?14に対するもの。)によっては,本件特許の請求項3?14に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由3-2(サポート要件)
ア 平成30年9月21日付けの取消理由通知書では,エポキシ樹脂硬化剤全量に対する(A)成分と(B)成分との合計含有量について特定しない本件発明1は,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるから,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえず,また,本件発明2?14についても同様の理由により,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨,指摘した。
これに対して,前記第2のとおり,本件訂正により,本件発明1において,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である」ことが特定されたので,以下,検討する。
イ 本件明細書の記載(【0007】,【0011】)によれば,本件発明1の課題は,速硬化性でかつ低粘度であり,ハイサイクルRTM法などによる成形に好適に用いられるエポキシ樹脂硬化剤を提供することであると認められる。
本件明細書の記載(【0012】,【0018】,【0020】,【0024】,【0030】,【0031】)によれば,本件発明1の課題は,エポキシ樹脂硬化剤において,「一般式(1)で示されるアミン化合物(A)」と,「分子量1,000未満のフェノール化合物」である「フェノール化合物(B)」を含有させるとともに,「該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量」を「8?35質量部」とし,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量」を「エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下」とすることによって解決できるとされている。
そして,本件明細書には,実施例及び比較例(【0055】?【0081】,実施例1?11,比較例1?8,表1,表2)が記載されているが,実施例1?8,10及び11は,(A)成分及び(B)成分以外の成分を含有しないもの(すなわち,エポキシ樹脂硬化剤全量に対する(A)成分と(B)成分との合計含有量は100%である。)であり,実施例9は,(A)成分及び(B)成分以外の成分として,N-アミノエチルピペラジンを含有するものの,エポキシ樹脂硬化剤全量に対する(A)成分と(B)成分との合計含有量は,83.3%(=(80g+20g)/(80g+20g+20g)×100)である。
これらの実施例及び比較例によれば,エポキシ樹脂硬化剤全量に対する(A)成分と(B)成分との合計含有量が83.3?100%である実施例1?11において,エポキシ樹脂硬化剤が速硬化性で低粘度であることが示されているといえる。
そうすると,当業者であれば,上記実施例以外の場合であっても,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である」ことを含む本件発明1の構成を備えるエポキシ樹脂硬化剤であれば,同実施例と同様に,速硬化性で低粘度であることが理解できるといえる。
以上のとおり,本件明細書の記載を総合すれば,本件発明1は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって,本件発明1は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
また,本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2?14についても同様であり,本件発明2?14は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
ウ したがって,取消理由3-2(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由
(1)取消理由1(新規性)(ただし,本件発明3に対するもの。)
本件発明3は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記1(1)イで述べたとおり,本件発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない以上,本件発明3についても同様に,甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって,取消理由1(新規性)(ただし,本件発明3に対するもの。)によっては,本件特許の請求項3に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明1及び2に対するもの。)
ア 本件発明1について
本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは,上記1(2)アで述べたとおりである。

イ 本件発明2について
本件発明2は,本件発明1を直接引用するものであるが,上記1(2)アで述べたとおり,本件発明1が,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2についても同様に,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり,本件発明1及び2は,いずれも,甲1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由2-1(進歩性)(ただし,本件発明1及び2に対するもの。)によっては,本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。

(3)取消理由2-2(進歩性)
ア 甲2に記載された発明
甲2には,ポリエポキサイドとして,レゾルシノールのジグリシジルエーテル100重量部と,1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル12重量部との混合物を使用し,硬化剤として,3,9-ビス(3-アミノプロピル),2,4,8,10-テトロキサスピロ-[5,5]ウンデカン100重量部と,メタキシリレンジアミン100重量部との混合物を使用し,硬化促進剤として,Table IIに示される「Phenol」(フェノール)等のフェノール類を使用して,ガラス製ビーカーにポリエポキサイドを入れ,これに硬化促進剤を添加して溶解し,次に硬化剤を添加して混合することが記載されている(970頁左欄12?24行,970頁左欄下から6行?右欄3行,971頁のTable II)。
以上の記載によれば,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。

「レゾルシノールのジグリシジルエーテル100重量部と,1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル12重量部との混合物からなるポリエポキサイドに順に添加される,フェノール等のフェノール類からなる硬化促進剤,及び,3,9-ビス(3-アミノプロピル),2,4,8,10-テトロキサスピロ-[5,5]ウンデカン100重量部と,メタキシリレンジアミン100重量部との混合物からなる硬化剤。」(以下,「甲2発明」という。)

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「メタキシリレンジアミン」は,本件発明1における「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)」に相当する。
甲2発明における「フェノール等のフェノール類」は,本件発明1における「分子量1,000未満のフェノール化合物」である「フェノール化合物(B)」に相当する。
本件発明1における「エポキシ樹脂硬化剤」と,甲2発明における「レゾルシノールのジグリシジルエーテル100重量部と,1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル12重量部との混合物からなるポリエポキサイドに順に添加される」,「硬化促進剤」及び「硬化剤」とは,「エポキシ樹脂を硬化させるために添加される化合物群」である限りで共通する。
以上によれば,本件発明1と甲2発明とは,
「下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂を硬化させるために添加される化合物群であって,該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物である,エポキシ樹脂を硬化させるために添加される化合物群。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点2
本件発明1では,「該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部であり」,「前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が,エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上,100質量%以下である」のに対して,甲2発明では,これらの含有量が特定されていない点。
・相違点3
本件発明1は,「エポキシ樹脂硬化剤」であるのに対して,甲2発明は,「レゾルシノールのジグリシジルエーテル100重量部と,1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル12重量部との混合物からなるポリエポキサイドに順に添加される」,「硬化促進剤」及び「硬化剤」である点。

(イ)相違点2の検討
甲2には,メタキシリレンジアミン100質量部に対するフェノール等のフェノール類の含有量を「8?35質量部」とするとともに,メタキシリレンジアミンとフェノール等のフェノール類との合計含有量を,硬化剤及び硬化促進剤の全量に対して「80質量%以上,100質量%以下」とすることについては,何ら記載されておらず,また,甲1及び3にも記載されていないから,甲2発明において,これらの事項を特定することが動機付けられるとはいえない。
そして,本件発明1は,上記1(2)ア(イ)で述べたとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると,甲2発明において,メタキシリレンジアミン100質量部に対するフェノール等のフェノール類の含有量を「8?35質量部」とするとともに,メタキシリレンジアミンとフェノール等のフェノール類との合計含有量を,硬化剤及び硬化促進剤の全量に対して「80質量%以上,100質量%以下」とすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって,相違点3について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2に記載された発明並びに甲3に記載された事項及び周知技術(甲1)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2?14について
本件発明2?14は,本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるが,上記イで述べたとおり,本件発明1が,甲2に記載された発明並びに甲3に記載された事項及び周知技術(甲1)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2?14についても同様に,甲2に記載された発明並びに甲3に記載された事項及び周知技術(甲1)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
以上のとおり,本件発明1?14は,いずれも,甲2に記載された発明並びに甲3に記載された事項及び周知技術(甲1)に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって,取消理由2-2(進歩性)によっては,本件特許の請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。

(4)取消理由3-1(サポート要件)
ア 申立人は,本件発明1は,フェノール化合物(B)として,「分子量1,000未満のフェノール化合物」を用いるものであるが,発明の詳細な説明には,具体例として,ビスフェノールA,ビスフェノールE,ビスフェノールF及びスチレン化フェノールを用いた例が記載されるのみであり,本件発明1の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。
しかしながら,本件明細書の記載(【0024】)によれば,本件発明1において,所定量のフェノール化合物(B)を含有することにより,低粘度と速硬化性とを両立したエポキシ樹脂硬化剤を得ることができるが,フェノール化合物(B)は,それ自身が有するフェノール性水酸基由来のプロトンにより,エポキシ樹脂のエポキシ基が電子不足となり,アミノ基に対する該エポキシ基の求電子性が高められていると考えられるため,アミン化合物(A)の硬化促進剤として作用するものであり,したがって,フェノール化合物(B)としては,フェノール性水酸基を分子中に少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限なく用いることができることが理解できる。
そして,本件明細書には,申立人が指摘するとおりの各種のフェノール化合物を用いた実施例(実施例1?11)が記載されており,これらの実施例において,エポキシ樹脂硬化剤が速硬化性で低粘度であることが示されている。
そうすると,当業者であれば,上記実施例以外の場合であっても,「分子量1,000未満のフェノール化合物」であるフェノール化合物(B)を用いることを含む本件発明1の構成を備えるエポキシ樹脂硬化剤であれば,同実施例と同様に,速硬化性で低粘度であることが理解できるといえる。
これに対して,申立人は,本件発明1がその課題(上記1(3)イを参照。)を解決できると認識できる範囲を超えるものであることの具体的な根拠を何ら示していない。
以上によれば,申立人が主張するように,発明の詳細な説明に,具体例として,ビスフェノールA,ビスフェノールE,ビスフェノールF及びスチレン化フェノールを用いた例が記載されるのみであるからといって,本件発明1について,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないなどということはできない。

イ 申立人は,本件発明1は,アミン化合物(A)として,「一般式(1)で示されるアミン化合物」を用いるものであるが,発明の詳細な説明には,具体例として,1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びメタキシリレンジアミンを用いた例が記載されるのみであり,本件発明1の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。
しかしながら,本件明細書の記載(【0020】)によれば,本件発明1において,一般式(1)で示される特定構造のアミン化合物(A)を含むことにより,低粘度でかつ速硬化性を有するエポキシ樹脂硬化剤を得ることができることが理解できる。
そして,本件明細書には,申立人が指摘するとおりのアミン化合物を用いた実施例(実施例1?11)が記載されており,これらの実施例において,エポキシ樹脂硬化剤が速硬化性で低粘度であることが示されている。
そうすると,当業者であれば,上記実施例以外の場合であっても,「一般式(1)で示されるアミン化合物(A)」を用いることを含む本件発明1の構成を備えるエポキシ樹脂硬化剤であれば,同実施例と同様に,速硬化性で低粘度であることが理解できるといえる。
これに対して,申立人は,本件発明1がその課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであることの具体的な根拠を何ら示していない。
以上によれば,申立人が主張するように,発明の詳細な説明に,具体例として,1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及びメタキシリレンジアミンを用いた例が記載されるのみであるからといって,本件発明1について,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないなどということはできない。

ウ 以上のとおりであるから,取消理由3-1(サポート要件)によっては,本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり,取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)とフェノール化合物(B)とを含有するエポキシ樹脂硬化剤であって、該(B)成分が分子量1,000未満のフェノール化合物であり、該(A)成分100質量部に対する該(B)成分の含有量が8?35質量部であり、前記アミン化合物(A)と前記フェノール化合物(B)との合計含有量が、エポキシ樹脂硬化剤全量に対して80質量%以上、100質量%以下である、エポキシ樹脂硬化剤。
R^(1)HN-H_(2)C-A-CH_(2)-NHR^(2) (1)
(式(1)中、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1?6のアミノアルキル基である。Aはシクロヘキシレン基又はフェニレン基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R^(1)及びR^(2)が共に水素原子である、請求項1に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Aがシクロヘキシレン基である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項4】
前記フェノール化合物(B)が下記一般式(2)で示される化合物、フェノール、クレゾール、ハイドロキノン、1-ナフトール、2-ナフトール、レゾルシン、フェノールノボラック樹脂、p-イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、及びノニルフェノールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1?3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【化1】

(式(2)中、R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立にOH基、又は炭素数1?4のアルキル基である。j及びkはそれぞれ独立に0?5の整数であり、かつj+kは1以上である。複数のR^(5)、及び複数のR^(6)はすべて同一でもよく互いに異なってもよいが、このうち少なくとも1つはOH基である。Zは単結合、炭素数1?6のアルキレン基、炭素数2?6のアルキリデン基、炭素数5?10のシクロアルキレン基、炭素数5?10のシクロアルキリデン基、炭素数7?15のアリールアルキレン基、炭素数7?15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-O-、-CO-、-C(CF_(3))_(2)-、-CH(CF_(3))-、-CF_(2)-、-CONH-、又は-COO-である。)
【請求項5】
前記フェノール化合物(B)が前記一般式(2)で示される化合物である、請求項4に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項6】
前記フェノール化合物(B)が4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、及びスチレン化フェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂が分子内に芳香環又は脂環式構造を含むエポキシ樹脂である、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂が下記一般式(3)で示されるエポキシ樹脂である、請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(式(3)中、R^(21)?R^(24)はそれぞれ独立に炭素数1?6のアルキル基であり、p、q、r、及びsはそれぞれ独立に0?4の整数である。複数のR^(21)、複数のR^(22)、複数のR^(23)、及び複数のR^(24)はすべて同一でもよく、互いに異なってもよい。Y^(1)及びY^(2)はそれぞれ独立に、単結合、-CH_(2)-、-CH(CH_(3))-、又は-C(CH_(3))_(2)-である。R^(25)は-CH_(2)CH(OH)-、又は-CH(OH)CH_(2)-である。mは平均繰り返し単位数を示し、0?0.2の数である。)
【請求項10】
温度40℃における粘度が400mPa・s以下である、請求項7?9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
炭素繊維強化複合材用である、請求項7?10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項7?11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と、炭素繊維とを含む炭素繊維強化複合材。
【請求項13】
自動車用構造材である、請求項12に記載の炭素繊維強化複合材。
【請求項14】
低圧RTM法、中圧RTM法、高圧RTM法、コンプレッションRTM法、リキッドコンプレッションモールディング法、リキッドレイダウン法、スプレーレイダウン法、サーフェイスRTM法、プリプレグコンプレッションモールディング法又はリキッドキャストモールディング法により成形する工程を有する、請求項12又は13に記載の炭素繊維強化複合材の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-05 
出願番号 特願2017-530234(P2017-530234)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤代 亮  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 海老原 えい子
井上 猛
登録日 2017-12-15 
登録番号 特許第6256666号(P6256666)
権利者 三菱瓦斯化学株式会社
発明の名称 エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物、炭素繊維強化複合材  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  

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