• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
管理番号 1350633
異議申立番号 異議2018-700495  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-19 
確定日 2019-02-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6248858号発明「フッ素系表面処理剤及び該表面処理剤で表面処理された物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6248858号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6248858号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6248858号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成26年8月7日に特願2014-161004号として特許出願され、平成29年12月1日に特許権の設定登録がされ、平成29年12月20日にその特許公報が発行され、その請求項1?9に係る発明の特許に対し、平成30年6月19日に川野由希(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年 8月31日付け 取消理由通知
同年10月29日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年11月 9日付け 訂正請求があった旨の通知

なお、特許異議申立人は、平成30年11月9日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。

第2 訂正の適否
1.訂正請求の趣旨及び内容
平成30年11月9日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6248858号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に、
「Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基、-C≡で示される4価の基、又は-Si≡で示される4価の基であり、」
とあるのを、
「Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基であり、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?9も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項1に、
「bは1?3の整数で、平均が1.5?3.0であり、cは1?10の整数である。)」
とあるのを、
「bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり、cは1?10の整数である。)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?9も同様に訂正する)。

(3)訂正事項3
訂正前の明細書の段落0014に、
「Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基、-C≡で示される4価の基、又は-Si≡で示される4価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?3の整数で、平均が1.5?3.0であり、cは1?10の整数である。)」
とあるのを、
「Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり、cは1?10の整数である。)」
に訂正する。

2.訂正事項1?3の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基、-C≡で示される4価の基、又は-Si≡で示される4価の基であり、」との記載にある「B」で表される基の選択肢のうち、下線を付した2つの「4価の基の選択肢」の全てを削除して、残りの「2価又は3価の基の選択肢」のみに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮をしようとするものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?9についても同様に特許請求の範囲が減縮されることになるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項1は、上記「ア.」に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項1は、上記「ア.」に示したように、その「B」で表される基の選択肢のうちの一部を削除するものであって、複数の選択肢のうちの一部の選択肢を削除することによって新たな技術的事項が導入されないことは明らかであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア.訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「bは1?3の整数で、平均が1.5?3.0であり、cは1?10の整数である。)」との記載について、訂正事項1において「B」で表される基の選択肢から「4価の基の選択肢」の全てを削除したことに伴って、請求項1の平均組成式(1)及び(2)における「b」及びその平均の範囲に不都合が生じることから、その「b」の上限を「3」から「2」に改めるとともに、その平均の上限を「3.0」から「2.0」に改めて、請求項1の記載との整合を図るためのものである。
したがって、訂正事項2は、請求項1及びその従属項である請求項2?9の記載における不明瞭な記載を釈明するためのものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項2は、訂正事項1の「特許請求の範囲の減縮」に伴い、その平均組成式(1)及び(2)の「b」及びその平均の上限を整合させるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項2は、訂正事項1の「特許請求の範囲の減縮」に伴い、その平均組成式(1)及び(2)の「b」及びその平均の上限を整合させるものであって、上限を整合させることによって新たな技術的事項が導入されないことは明らかであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
ア.訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項1及び2に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項3は、訂正事項1及び2に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであって、訂正事項1及び2によって、実質上特許請求の範囲が拡張され、又は変更されないことは、上記「(1)イ.」及び「(2)イ.」に示したとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
訂正事項3は、訂正事項1及び2に伴い特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであって、訂正事項1及び2によって新たな技術的事項が導入されないことは、上記「(1)ウ.」及び「(2)ウ.」に示したとおりであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)一群の請求項及び明細書の訂正と関連する請求項について
訂正前の請求項1?9は、その請求項1を請求項2?9が直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?9に対応する訂正後の請求項1?9は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
また、訂正事項3による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1?9であるから、訂正事項3と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。
したがって、訂正事項3による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

3.訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1?3による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は容認し得るものであるから、本件訂正により訂正された請求項1?9に係る発明(以下「本1発明」?「本9発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】(A)下記平均組成式(1)
【化1】

(式中、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Rfは-(CF2)_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Qは単結合又は2価の有機基であり、Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり、cは1?10の整数である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(B)下記平均組成式(2)
【化2】

(式中、Rf、Q、B、R、X、a、b、cは上記式(1)と同じである。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(C)下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rfは上記式(1)と同じであり、Dは独立にフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとを含むものであり、且つ、(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下であることを特徴とするフッ素系表面処理剤。
【請求項2】Qが、単結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基、-Si[OH][(CH_(2))_(g)Si(CH_(3))_(3)]-(gは2?4の整数)から選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2?12の2価の炭化水素基である、請求項1記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項3】Xが、炭素数1?10のアルコキシ基、炭素数2?10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1?10のアシロキシ基、炭素数2?10のアルケニルオキシ基、ハロゲン基及びシラザン基からなる群より選ばれる加水分解性基である、請求項1又は2記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項4】溶剤で希釈された請求項1?3のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項5】溶剤が、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロヘプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、及びパーフルオロヘキサンから選ばれるものである請求項4記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項6】請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理された物品。
【請求項7】請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理された光学物品。
【請求項8】請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理されたガラス、化学強化されたガラス、物理強化されたガラス、SiO_(2)処理されたガラス、サファイヤガラス、SiO_(2)処理されたサファイヤガラス、石英基板、又は金属。
【請求項9】請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理されたタッチパネル、反射防止フイルム、ウェアラブル端末、眼鏡レンズ、又は太陽電池用パネル。」

なお、上記平均組成式(1)等について、以下、式中の規定も含め、単に「平均組成式(1)」等ということもある。

第4 特許異議申立て及び取消理由通知の概要について
1.特許異議申立人の証拠と主張の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第11号証(以下「甲1」?「甲11」ともいう。)を提出し、以下の理由A及びBにより、本件特許の請求項1?9に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであるとの主張をしている。
甲第1号証:特開2012-72272号公報
甲第2号証:国際公開第2014/069592号
甲第3号証:特開2003-238577号公報
甲第4号証:特開2001-188102号公報
甲第5号証:特開2005-290323号公報
甲第6号証:特開2000-327772号公報
甲第7号証:特表2014-503380号公報
甲第8号証:特表2014-501804号公報
甲第9号証:特表2014-502210号公報
甲第10号証:特開2014-70164号公報
甲第11号証:特開2012-233157号公報

理由A:特許法第36条第6項第1号(全請求項)
理由B:特許法第29条第2項(全請求項)

2.取消理由通知の概要
訂正前の請求項1?9に係る特許に対して平成30年8月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
〔理由〕(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
〔記〕
本件明細書の段落【0008】?【0011】に記載される従来技術の問題点を受けた記載である同段落【0012】の記載によれば、本件発明の課題は、「耐薬品性のみでなく、更に優れた耐擦傷性を有する撥水撥油層を形成することができるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含むフッ素系表面処理剤、及び該表面処理剤で処理された物品を提供すること」であるといえる。
そして、同段落【0079】?【0083】には、本件発明に係る実施例1?7の表面処理剤の評価結果が記載され、同段落【0083】の【表2】には、耐薬品性と耐擦傷との双方が良好な硬化被膜が形成できることが示されていることから、本件明細書には、実施例1?7については、上記本件発明の課題が解決できることが示されているといえる。
ここで、本件発明に係る実施例1?7の表面処理剤の組成物1?7について、本件発明1における「B」は、実施例1?4、6、7では、「-J_(2)C-で示される2価の基」又は「-JC=で示される3価の基」であり、実施例5では、「-LSi=で示される3価の基」である。
一方、「B」で表される基には、加水分解性基に結合したSi部分が結合し、「B」で表される基の構造によって、加水分解性基に結合したSi部分の個数が変動することになり、加水分解性基に結合したSi部分が基材と結合する作用を発揮する構造であることから、上記Si部分の個数は、フッ素表面処理剤を用いて形成される撥水撥油層の耐薬品性及び耐擦傷性に影響を与えるものであるといえる。
しかしながら、本件明細書には、上記加水分解性基に結合したSi部分の個数と、耐薬品性及び耐擦傷性との関連性に関する記載はないから、撥水撥油層における良好な耐薬品性及び耐擦傷性が得られることができる上記加水分解性基に結合したSi部分の個数は、本件明細書に記載される具体的な実施例からしか把握することができない。
そうすると、撥水撥油層における良好な耐薬品性及び耐擦傷性を得ることができるSi部分の個数に対応することになる平均組成式(1)及び平均組成式(2)の「B」で表される基として、「2価または3価の基」を有する「以外の」本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2?9の表面処理剤は、上記本件発明の課題を解決できるものであるとはいえないから、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

第5 当審の判断
1.取消理由通知の理由について
訂正後の請求項1において、「B」で表される基について、2価または3価の基を有するもののみに限定されたので、上記取消理由は解消した。
したがって、本件特許の請求項1及び当該請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?9の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。

2.特許異議申立理由について
(1)理由Aについて
特許異議申立人は、「本件明細書において、具体的に課題が達成できることが示された…『B』で表される基として『2価の基または3価の基』を有する化合物を含む表面処理剤を、本件特許発明1の範囲まで拡張ないし一般化することは妥当ではない。」(特許異議申立書28頁18?23行)と主張をしているところ、これは、上記取消理由と同じである。
したがって、上記「1.」に示したのと同様な理由により、本件特許の請求項1及び請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?9の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。

(2)理由Bについて
ア.理由Bの概要
特許異議申立人は、「本件特許発明1?9は、甲第1号証?甲第11号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」との記載にあるとおりのものであり、
本件発明1については、「本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明、あるいは、甲第1号証に記載された発明および周知技術(例えば、甲第2号証、甲第6号証)に基づいて、当業者にとって容易に想到し得たものである。…以上のように、本件特許発明1は、甲第1号証?甲第10号証に基づいて、当業者が容易に想到し得るものである。」との主張(特許異議申立書65頁6?9行及び78頁10?11行)と、「本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明および甲第1号証または甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。」との主張(特許異議申立書108頁19?21行)がなされている。

イ.甲第1号証?甲第11号証の記載事項
甲1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1、3及び7
「【請求項1】下記式(1)【化1】

(式中、Rf基は-(CF_(2))_(d)-(OC_(2)F_(4))_(e)(OCF_(2))_(f)-O(CF_(2))_(d)-であり、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Qは2価の有機基であり、Zはシロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基であり、Rは炭素数1?4のアルキル基またはフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは1?6の整数、cは1?5の整数であり、αは0または1であり、dはそれぞれ独立に0または1?5の整数、eは0?80の整数、fは0?80の整数であり、かつ、e+f=5?100の整数であり、繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、片末端加水分解性ポリマーと称す)と、
下記式(2)【化2】

(式中、Rf、Q、Z、R、X、a、b、c、αは上記式(1)と同じである。)
で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、両末端加水分解性ポリマーと称す)を含むフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物であって、
片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーとの合計モルに対する両末端加水分解性ポリマーの含有量が0.1モル%以上10モル%未満であることを特徴とするフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物。
【請求項2】更に、下記式(3)【化3】

(式中、Rf及びAは前記と同じ。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、無官能性ポリマーと称す)を含有し、かつ、片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーと無官能性ポリマーとの合計モルに対する片末端加水分解性ポリマーの割合が80モル%以上であり、かつ両末端加水分解性ポリマーの割合が0.1モル%以上10モル%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物。
【請求項3】片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーと無官能性ポリマーとの合計に対する無官能性ポリマーの割合が1?15モル%である請求項2に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物。…
【請求項7】請求項1?6のいずれか1項に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物及び/又は該フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの部分加水分解縮合物を含有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物を含有する表面処理剤。」

甲2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1及び24
「[請求項1]式(1a)または式(1b):
[化1]
A-Rf-X-SiQ_(k)Y_(3-k) ・・・(1a)
Y_(3-k)Q_(k)Si-X-Rf-X-SiQ_(k)Y_(3-k) ・・・(1b)
(式中、Aは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC_(1-16)アルキル基を表し、
Rfは、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、
Xは、2価の有機基を表し、
Yは、各出現において、それぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、または炭化水素基を表し、
Qは、各出現において、それぞれ独立して、-Z-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n)を表し、
Zは、各出現において、それぞれ独立して、2価の有機基を表し:ただし、Zは、式(1a)または式(1b)における分子主鎖の末端のSi原子とシロキサン結合を形成するものを除く、
R^(1)は、各出現において、それぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し、
R^(2)は、各出現において、それぞれ独立して、C_(1-22)アルキル基、またはQ’を表し、
Q’は、Qと同意義であり、
nは、各QおよびQ’において、それぞれ独立して、0?3から選択される整数であって、nの総和は1以上であり、
Q中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり、
kは、それぞれ独立して、1?3から選択される整数である。)
で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。…
[請求項24]請求項1?18のいずれかに記載の式(1a)および/または式(1b)で表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含有する、表面処理剤。」

摘記2b:段落0192及び0195
「[0192]・合成例4…

…[0195]・合成例7…



甲3には、次の記載がある。
摘記3a:請求項1




摘記3b:段落0072
「【0072】【化14】



甲4には、次の記載がある。
摘記4a:請求項3




甲5には、次の記載がある。
摘記5a:請求項1




甲6には、次の記載がある。
摘記6a:請求項1




甲7には、次の記載がある。
摘記7a:請求項3




甲8には、次の記載がある。
摘記8a:請求項7




甲9には、次の記載がある。
摘記9a:請求項7




甲10には、次の記載がある。
摘記10a:請求項1




甲11には、次の記載がある。
摘記11a:請求項1




ウ.甲第1号証を主引用例とした場合の検討
(ア)甲1発明
甲1の請求項1、3及び7(摘記1a)の記載からみて、甲第1号証の刊行物には、
「下記式(1)

(式中、Rf基は-(CF_(2))_(d)-(OC_(2)F_(4))_(e)(OCF_(2))_(f)-O(CF_(2))_(d)-であり、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Qは2価の有機基であり、Zはシロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基であり、Rは炭素数1?4のアルキル基またはフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは1?6の整数、cは1?5の整数であり、αは0または1であり、dはそれぞれ独立に0または1?5の整数、eは0?80の整数、fは0?80の整数であり、かつ、e+f=5?100の整数であり、繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、片末端加水分解性ポリマーと称す)と、
下記式(2)

(式中、Rf、Q、Z、R、X、a、b、c、αは上記式(1)と同じである。)
で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、両末端加水分解性ポリマーと称す)と、
下記式(3)

(式中、Rf及びAは前記と同じ。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、無官能性ポリマーと称す)を含有し、
片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーと無官能性ポリマーとの合計モルに対する片末端加水分解性ポリマーの割合が80モル%以上であり、かつ両末端加水分解性ポリマーの割合が0.1モル%以上10モル%未満であり、無官能性ポリマーの割合が1?15モル%であるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物及び/又は該フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの部分加水分解縮合物を含有する表面処理剤。」についての発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
なお、上記「式(1)」等において、以下、式中の規定も含め「式甲1(1)」等ということもある。

(イ)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「式甲1(1)」の化合物のZ_(α)(シロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基)の数αは、0又は1であるところ、αが0の場合、そのQ(2価の有機基)に直結できるSi含有基(
R_(3-a)

-(-CH_(2))_(c)-Si-X_(a))_(b)
)の数bが1のみをとることから、bの平均が1を超えることはなく、本件発明1の平均組成式(1)の「bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり」という要件を満たさず、「式甲1(1)」は、本件発明1の平均組成式(1)とは異なる。
そして、そのZの数αが1の場合、Zは「シロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基」であるから、本件発明1の平均組成式(1)の「B」(J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基)とは異なる。
してみると、本件発明1の「平均組成式(1)」で表される「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」と、甲1発明の「式甲1(1)」で表される「直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー」は、両者とも「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー部分で変性された加水分解性基含有シラン」という点において共通するものの、具体的な構成は異なる。
また、同様な理由により、本件発明1の「平均組成式(2)」で表される「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」と、甲1発明の「式甲1(2)」で表される「直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー」は、両者とも「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー部分で変性された加水分解性基含有シラン」という点において共通するものの、具体的な構成は異なる。
次に、甲1発明の「式甲1(3)」の化合物は、本件発明1の「一般式(3)」で表される「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー」に相当し、
甲1発明の「片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーと無官能性ポリマーとの合計モルに対する片末端加水分解性ポリマーの割合が80モル%以上であり、かつ両末端加水分解性ポリマーの割合が0.1モル%以上10モル%未満であり、無官能性ポリマーの割合が1?15モル%である」は、本件発明1の「(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下である」に相当し、
甲1発明の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物及び/又は該フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの部分加水分解縮合物を含有する表面処理剤。」は、本件発明1の「フッ素系表面処理剤」に相当する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(C)下記一般式(3)

(式中、Rfは-(CF_(2))_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよく、Dは独立にフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとを含むものであり、且つ、(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下であることを特徴とするフッ素系表面処理剤。」という点において一致し、次の〔相違点1〕及び〔相違点2〕において相違する。

〔相違点1〕(A)のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物が、
本件発明1は、上記「平均組成式(1)」で表されるものであるのに対して、
甲1発明は、上記「式甲1(1)」で表される点。

〔相違点2〕(B)のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物が、
本件発明1は、上記「平均組成式(2)」で表されるものであるのに対して、
甲1発明は、上記「式甲1(2)」で表される点。

(ウ)判断
上記〔相違点1〕について検討する。
甲1?10の各刊行物には、本件発明1の「平均組成式(1)」の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」についての記載がない。
してみると、甲1?10をどのように組み合わせたとしても、上記相違点1に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、本件発明1は、当該「平均組成式(1)」で表される「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を含むことにより、本件特許明細書の段落0013に記載された「フルオロオキシアルキレン基を主鎖構造とし、連結基にシロキサン結合を含まず、加水分解性基を複数有するポリマーを主成分とするフッ素系表面処理剤が、耐擦傷性、耐薬品性に優れた撥水撥油層を形成できる」という格別の効果を奏するものである。
したがって、上記〔相違点2〕について検討するまでもなく、本件発明1が、甲1?10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2?9も、本件発明1と同様に、甲1?10に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張及び甲第2?10号証について
甲2に関連して、特許異議申立書の48頁21行?62頁10行では「(4.3.1.1.5.1)以下に詳細を示すように、甲第2号証には、本件特許発明1の構成要件[I]の化合物および構成要件[II]の化合物に相当する化合物が記載されている。…
甲第2号証の式(1a)で表される化合物と、本件特許発明1の構成要件[I]とを比較する。
┌────────────────┬───────────────┐
│本件特許発明1 │甲第2号証 │
│構成要件[I] │式(1a)で表される化合物 │
├────┬───────────┼───────────────┤
│ … │ … │ … │
│構成要件│b │k │
│(I-5-4) │bは1?3の整数であり│kは1?3から選択される整数。│
│ │…平均が1.5?3.0│段落0192、0195…、には│
│ │である。 │k=2.2?3の化合物を記載。│
└────┴───────────┴───────────────┘
上記のように、甲第2号証の式(1a)で表される化合物は、本件特許発明1の構成要件(I-1)?(I-5)に相当する項目を全て有する。…
従って、甲第1号証および甲第2号証を組み合わせることは、当業者にとって容易である。」との主張がなされている。
しかしながら、甲2の段落0192(摘記2b)には、甲2の式(1a)の「-SiQ_(k)Y_(3-k)」のQが「-Z-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n)」であって、そのZが「-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-」であり、その「R^(1)」及び「Y」が「-OCH_(3)」であり、その「n」が「3」であり、その「k」が「3」である場合のものとして「

」という「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)」が記載されているが、当該「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(D)」は、本件発明1の平均組成式(1)の「B」が「-Si≡で示される4価の基」であるものに該当し、訂正後の本件発明1の選択肢から除外されたものに相当する。
また、甲2の段落0195(摘記2b)には、甲2の式(1a)の「-SiQ_(k)Y_(3-k)」のQが「-Z-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n)」であって、そのZが「-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-」であり、その「R^(1)」及び「Y」が「-OCH_(3)」であり、その「n」が「3」であり、その「k」が「2.2」である場合のものとして「

」という「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の混合物(G)」が記載されているが、当該「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の混合物(G)」は、訂正前の本件発明1の平均組成式(1)の「B」が「-Si≡で示される4価の基」であるものを組成に含み、なおかつ、訂正後の本件発明1の平均組成式(1)の「bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり」という要件を満たし得ないものである。
すなわち、甲2の化合物は、本件発明1の「平均組成式(1)」とは異なる。
したがって、甲2を参酌しても、上記相違点1に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

次に、甲3?5に関連して、特許異議申立書の65頁17行?70頁16行では「(4.3.1.1.7.1)甲第1号証に記載された化合物は、甲第1号証の出願前にすでに公知の化合物であったことを、以下に詳細に示す。…
以上のように、甲第3号証の化合物2、および甲第4号証の【請求項3】に記載された化合物は、甲第1号証の項目[1-i]の化合物に相当し、
甲第3号証の化合物1、および甲第5号証の【請求項1】の式(1)で表される化合物は、甲第1号証の項目[1-ii]の化合物に相当する。…
従って、甲第1号証の項目[1-i」の化合物および項目[1-ii]の化合物は、表面処理剤に含まれる化合物として用いられてきた化合物である。」との主張がなされている。
しかしながら、甲1の化合物が、甲3?5に記載されているとしても、これらの化合物は本件発明1の「平均組成式(1)」とは異なるものであり、特許異議申立人が主張する甲3の化合物2(摘示3b)、甲4の請求項3の化合物(摘示4a)、及び甲5の請求項1の化合物(摘示5a)の各々も、本件発明1の「平均組成式(1)」とは異なるものである。
したがって、甲3?5を参酌しても、上記相違点1に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

次に、甲6に関連して、特許異議申立書の62頁11行?65頁9行では「(4.3.1.1.5.3)さらに、甲第6号証にも、加水分解性基の結合したSi部分の数が増えると、形成される膜の摩擦耐久性が良好になることが記載されている。…
上記のように、加水分解性基の結合したSi部分を複数有するマルチタイプ化合物を用いることによって、加水分解性基の結合したSi部分を1つのみ有するモノタイプの化合物よりも、硬化膜の摩擦耐久性が良好となることは、本件出願時には周知であった。…
従って、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証に記載された発明、あるいは、甲第1号証に記載された発明および周知技術(例えば、甲第2号証、甲第6号証)に基づいて、当業者によって容易に想到し得たものである。」との主張がなされ、
同71頁24行?72頁13行では「(4.3.1.1.8.1)分子中に加水分解性基に結合したSi部分が複数存在する化合物、すなわち、マルチタイプの化合物を用いることによって、形成される膜の摩擦耐久性が良好になることは、例えば、甲第2号証(例えば段落【0210】?【0212】)あるいは甲第6号証(例えば段落【0054】)に記載されているように、本件出願時において周知技術である。…
上記のような甲第2号証のSi原子または甲第6号証の窒素原子を、別の原子、例えば炭素原子に変更し、加水分解性基に結合したSi部分が複数存在するマルチタイプの化合物とすることは当業者にとって容易に想到し得ることである。」との主張がなされている。
しかしながら、甲6の請求項1の化合物(摘記6a)は本件発明1の「平均組成式(1)」とは異なるものであり、甲2のSi原子または甲6のN原子を、別の原子、例えばC原子などに変更すべき動機付けも見当たらない。
したがって、甲6及び甲2を参酌しても、上記相違点1に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

次に、甲7?10に関連して、特許異議申立書の72頁14行?78頁5行では「(4.3.1.1.8.2)そもそも、炭素原子で分岐した化合物を、基材の表面処理に用いることは、以下の甲第7号証?甲第10号証にそれぞれ記載されていることである。…
上記のように、甲第1号証の発明において、本件特許発明1における「-J_(2)C-で示される2価の基」、「-JC=で示される3価の基」および「-C≡で示される4価の基」を有する化合物を表面処理に用いることは、甲第7号証?甲第10号証にすでに記載されている周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できることである。」との主張がなされている。
しかしながら、甲7?10の化合物が「炭素原子で分岐した化合物」であるとしても、甲7の請求項3の化合物(摘示7a)、甲8の請求項7の化合物(摘示8a)、及び甲9の請求項7の化合物(摘示9a)の各々は、本件発明1の「平均組成式(1)」とは異なるものであり、甲7?10の化合物の構造を変更して、本件発明1の「平均組成式(1)」と同じ構造のものに変更すべき動機付けも見当たらない。
したがって、甲7?10を参酌しても、上記相違点1に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

エ.甲第2号証を主引用例とした場合の検討
(ア)甲2発明
甲第2号証の請求項1及び24の記載からみて、甲第2号証の刊行物には
「式(1a)または式(1b):
A-Rf-X-SiQ_(k)Y_(3-k) ・・・(1a)
Y_(3-k)Q_(k)Si-X-Rf-X-SiQ_(k)Y_(3-k) ・・・(1b)
(式中、Aは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC_(1-16)アルキル基を表し、
Rfは、-(OC_(4)F_(8))_(a)-(OC_(3)F_(6))_(b)-(OC_(2)F_(4))_(c)-(OCF_(2))_(d)-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、
Xは、2価の有機基を表し、
Yは、各出現において、それぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、または炭化水素基を表し、
Qは、各出現において、それぞれ独立して、-Z-SiR^(1)_(n)R^(2)_(3-n)を表し、
Zは、各出現において、それぞれ独立して、2価の有機基を表し:ただし、Zは、式(1a)または式(1b)における分子主鎖の末端のSi原子とシロキサン結合を形成するものを除く、
R^(1)は、各出現において、それぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し、
R^(2)は、各出現において、それぞれ独立して、C_(1-22)アルキル基、またはQ’を表し、
Q’は、Qと同意義であり、
nは、各QおよびQ’において、それぞれ独立して、0?3から選択される整数であって、nの総和は1以上であり、
Q中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり、
kは、それぞれ独立して、1?3から選択される整数である。)
で表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含有する、表面処理剤。」についての発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
なお、上記「式(1a)」等について、以下、式中の規定も含め「式甲2(1a)」等ということもある。

(イ)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「式(1a)」の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」を「少なくとも1種」含有するものと、本件発明1の「平均組成式(1)」の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」は、両者とも「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン」を含む組成にある点において共通する。
また、甲2発明の「式(1b)」の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」を「少なくとも1種」含有するものと、本件発明1の「平均組成式(2)」の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」は、両者とも「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン」を含む組成にある点において共通する。
そして、甲2発明の「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含有する、表面処理剤」は、本件発明1の「フッ素系表面処理剤」に相当する。

してみると、本件発明1と甲2発明は、「(A)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(B)フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物とを含むものである、フッ素系表面処理剤。」という点において一致し、次の〔相違点3〕?〔相違点6〕において相違する。

〔相違点3〕(A)のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物が、
本件発明1においては「平均組成式(1)」で表されるものであるのに対して、甲2発明は、「式甲2(1a)」で表される点。

〔相違点4〕(B)のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物が、
本件発明1においては「平均組成式(2)」で表されるものであるのに対して、甲2発明は、「式甲2(1b)」で表される点。

〔相違点5〕本件発明1は「一般式(3)」の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー」を含有するのに対して、甲2発明は当該一般式(3)に対応する化合物を含有するものではない点。

〔相違点6〕本件発明1は「(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下である」という含有量の比を特定するものであるのに対して、甲2発明は、当該(A)、(B)及び(C)の含有量の比を特定するものではない点。

(ウ)判断
上記〔相違点3〕について検討する。
甲第1?11号証の各刊行物には、本件発明1の「平均組成式(1)」の「フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」についての記載がない。
してみると、甲第1?11号証をどのように組み合わせたとしても、本件発明1の「平均組成式(1)」を満たす「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を含む「フッ素系表面処理剤」の構成を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、本件発明1は、当該「平均組成式(1)」で表される「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を含むことにより、本件特許明細書の段落0013に記載された「フルオロオキシアルキレン基を主鎖構造とし、連結基にシロキサン結合を含まず、加水分解性基を複数有するポリマーを主成分とするフッ素系表面処理剤が、耐擦傷性、耐薬品性に優れた撥水撥油層を形成できる」という格別の効果を奏するに至ったものと認められる。
したがって、上記〔相違点4〕?〔相違点6〕について検討するまでもなく、本件発明1が、甲第1?11号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2?9も、本件発明1と同様に、甲第1?11号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(エ)特許異議申立人の主張及び甲第11号証について
甲11に関連して、特許異議申立書の103頁3行?108頁21行では「(4.3.2.1.5.1)以下に詳細を示すように、甲第1号証および甲第11号証には、本件特許発明1の[IV]および[V]に相当する内容、すなわち、本件特許発明1の表面処理剤に含まれる化合物の含有量について記載されている。…
従って、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明および甲第1号証または甲第11号証に記載された発明に基づいて、当業者にとって容易に想到し得たものである。」との主張がなされている。
しかしながら、甲11(及び甲1?10)には、本件発明1の「平均組成式(1)」の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」についての記載がない。
したがって、甲11を参酌しても、上記相違点3に係る本件発明1の「加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物」を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

4.むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本件発明1?9に係る特許を取り消すことはできない。
また、この他に、本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
フッ素系表面処理剤及び該表面処理剤で表面処理された物品
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系表面処理剤に関し、詳細には、撥水撥油性、耐擦傷性に優れ、特に耐薬品性に優れた被膜を形成するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含むフッ素系表面処理剤、及び該表面処理剤で処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外観や視認性をよくするために、光学物品の表面に指紋を付きにくくする技術や、汚れを落とし易くする技術の要求が年々高まってきており、特に眼鏡レンズ、ウェアラブル端末、タッチパネルディスプレイの表面は、皮脂汚れが付着しやすいため、撥水撥油層を設けることが望まれている。現状では、優れた汚れ防止性、汚れ拭き取り性、耐摩耗性、耐擦傷性を有する表面処理剤は実用化されているものの、耐薬品性が十分ではなく、指紋や洗浄剤により性能が経年劣化してしまうという問題点があった。
【0003】
一般に、フルオロオキシアルキレン基含有化合物は、その表面自由エネルギーが非常に小さいために、撥水撥油性、耐薬品性、潤滑性、離型性、防汚性などを有する。その性質を利用して、工業的には紙・繊維などの撥水撥油防汚剤、磁気記録媒体の滑剤、精密機器の防油剤、離型剤、化粧料、保護膜など、幅広く利用されている。しかし、その性質は同時に他の基材に対する非粘着性、非密着性であることを意味しており、基材表面に塗布することはできても、その被膜を密着させることは困難であった。
【0004】
一方、ガラスや布などの基材表面と有機化合物とを結合させる材料として、シランカップリング剤がよく知られており、各種基材表面のコーティング剤として幅広く利用されている。シランカップリング剤は、1分子中に有機官能基と反応性シリル基(特には加水分解性シリル基)を有する。加水分解性シリル基は、空気中の水分などによって自己縮合反応を起こして被膜を形成する。該被膜は、加水分解性シリル基がガラスや布などの表面と化学的・物理的に結合することにより耐久性を有する強固な被膜となる。
【0005】
特許文献1(特開2003-238577号公報)では、下記式で示されるフルオロオキシアルキレン基含有シランが提案されている。該フルオロオキシアルキレン基含有シランで処理したガラスや反射防止膜は、汚れ拭き取り性に優れる材料を得ることができるが、両末端基が基材に結合されるため、表面の潤滑性が不十分となり、滑り性や耐擦傷性が十分ではない。
【0006】
【化1】

(式中、Rfは2価の直鎖型パーフルオロオキシアルキレン基、Rは炭素数1?4のアルキル基又はフェニル基、Xは加水分解性基、nは0?2、mは1?5の整数、aは2又は3である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-238577号公報
【特許文献2】特開2012-072272号公報
【特許文献3】特開2014-084405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献2(特開2012-072272号公報)で、下記式で示されるフルオロオキシアルキレン基含有シランを提案している。該フルオロオキシアルキレン基含有シランで処理したガラスは、特に滑り性に優れ、耐擦傷性に優れるが、耐擦傷性と耐薬品性の要求は更に高まっており、要求を満足するには至っていなかった。
【0009】
【化2】

(式中、Rf基は-(CF_(2))_(d)-(OC_(2)F_(4))_(e)(OCF_(2))_(f)-O(CF_(2))_(d)-であり、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Qは2価の有機基であり、Zはシロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基であり、Rは炭素数1?4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは1?6の整数、cは1?5の整数であり、αは0又は1であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、eは0?80の整数、fは0?80の整数であり、かつ、e+fは5?100の整数であり、繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
【0010】
また、本発明者らは先に、耐薬品性に優れた膜を形成するポリマー組成物を提案した(特開2014-084405号公報:特許文献3)。特許文献3では、下記式で示される耐薬品性に優れるフルオロオキシアルキレン基含有シランを提案しているが、最近になって、耐擦傷性に関する要求が更に高まってきており、耐擦傷性と耐薬品性の両立には至っていなかった。
【化3】

(式中、Rf基は2価のパーフルオロオキシアルキレン基含有基であり、Xは、-(CH_(2))_(n)SiX’基又は水素原子であり、Xのうち水素原子となるのは、1個以下であり、nは2?10の整数である。X’は加水分解性基である。)
【0011】
タッチパネルディスプレイやウェアラブル端末の表面に被覆する撥水撥油層は、傷付き防止性及び指紋拭き取り性の観点から動摩擦係数が低いことが望ましい。そのため耐擦傷性に優れ、かつ動摩擦係数が低い撥水撥油層の開発が要求されている。また、それらの端末は屋外での使用も想定されるため、耐塩水性、耐酸性、耐アルカリ性も同時に必要となる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐薬品性のみでなく、更に優れた耐擦傷性を有する撥水撥油層を形成することができるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含むフッ素系表面処理剤、及び該表面処理剤で処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、主鎖にフルオロオキシアルキレン構造を有し、分子鎖の片末端に加水分解性基を含有するポリマーは、主鎖にフルオロオキシアルキレン構造を有し、分子鎖の両末端に加水分解性基を含有するポリマーと比較して、被膜とした際に優れた耐擦傷性を付与することができることを知見した。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フルオロオキシアルキレン基を主鎖構造とし、連結基にシロキサン結合を含まず、加水分解性基を複数有するポリマーを主成分とするフッ素系表面処理剤が、耐擦傷性、耐薬品性に優れた撥水撥油層を形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
即ち、本発明は、下記のフッ素系表面処理剤及び該表面処理剤で表面処理された物品を提供する。
〔1〕
(A)下記平均組成式(1)
【化4】

(式中、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Rfは-(CF_(2))_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Qは単結合又は2価の有機基であり、Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり、cは1?10の整数である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(B)下記平均組成式(2)
【化5】

(式中、Rf、Q、B、R、X、a、b、cは上記式(1)と同じである。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(C)下記一般式(3)
【化6】

(式中、Rfは上記式(1)と同じであり、Dは独立にフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとを含むものであり、且つ、(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下であることを特徴とするフッ素系表面処理剤。
〔2〕
Qが、単結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基、-Si[OH][(CH_(2))_(g)Si(CH_(3))_(3)]-(gは2?4の整数)から選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2?12の2価の炭化水素基である、〔1〕記載のフッ素系表面処理剤。
〔3〕
Xが、炭素数1?10のアルコキシ基、炭素数2?10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1?10のアシロキシ基、炭素数2?10のアルケニルオキシ基、ハロゲン基及びシラザン基からなる群より選ばれる加水分解性基である、〔1〕又は〔2〕記載のフッ素系表面処理剤。
〔4〕
溶剤で希釈された〔1〕?〔3〕のいずれかに記載のフッ素系表面処理剤。
〔5〕
溶剤が、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロエプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、及びパーフルオロヘキサンから選ばれるものである〔4〕記載のフッ素系表面処理剤。
〔6〕
〔1〕?〔5〕のいずれかに記載のフッ素系表面処理剤で処理された物品。
〔7〕
〔1〕?〔5〕のいずれかに記載のフッ素系表面処理剤で処理された光学物品。
〔8〕
〔1〕?〔5〕のいずれかに記載のフッ素系表面処理剤で処理されたガラス、化学強化されたガラス、物理強化されたガラス、SiO_(2)処理されたガラス、サファイヤガラス、SiO_(2)処理されたサファイヤガラス、石英基板、又は金属。
〔9〕
〔1〕?〔5〕のいずれかに記載のフッ素系表面処理剤で処理されたタッチパネル、反射防止フイルム、ウェアラブル端末、眼鏡レンズ、又は太陽電池用パネル。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物を含むフッ素系表面処理剤から形成される被膜は、耐擦傷性と耐薬品性に優れる。本発明のフッ素系表面処理剤で処理することによって、各種物品に優れた撥水撥油性、指紋拭き取り性を付与し、耐擦傷性と耐薬品性に優れることから、長期にわたって撥水撥油性を持続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のフッ素系表面処理剤は、(A)下記平均組成式(1)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン(以下、片末端加水分解性ポリマーと称す)及び/又はその部分加水分解縮合物を含むものであり、好ましくは更に、(B)下記平均組成式(2)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン(以下、両末端加水分解性ポリマーと称す)及び/又はその部分加水分解縮合物、あるいは(C)下記一般式(3)で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、無官能性ポリマーと称す)を含有するものである。
【0017】
【化7】

(式中、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Rfは-(CF_(2))_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Qは単結合又は2価の有機基であり、Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基、-C≡で示される4価の基、又は-Si≡で示される4価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?3の整数で、平均が1.5?3.0であり、cは1?10の整数であり、Dは独立にフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。)
【0018】
上記式(1)?(3)において、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの主鎖構造であるRfは、-(CF_(2))_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-で表わされる。
【0019】
ここで、dはそれぞれ独立に0?5の整数、好ましくは0?2の整数、更に好ましくは1又は2であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数、好ましくはpは10?150の整数、qは10?150の整数、rは0?20の整数、sは0?20の整数、tは0?20の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200の整数、好ましくは20?150の整数、より好ましくは30?100の整数であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。p、q、r、s、tが200を超えるとフルオロオキシアルキレン基の分子量が大きすぎるため加水分解性シリル基の官能基当量が小さくなってしまうので、基材への密着性が低下したり、合成時に反応性が悪くなったりする。また、p+q+r+s+tが上記上限値より大きいと耐薬品性が悪くなり、上記下限値より小さいとフルオロオキシアルキレン基の特徴である指紋拭き取り性や耐摩耗性を十分に発揮することができず、指紋拭き取り性や耐摩耗性が低下する。
【0020】
Rfとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化8】

(式中、d’は上記dと同じであり、p’は上記pと同じであり、q’は上記qと同じであり、r’、s’、t’はそれぞれ1以上の整数であり、その上限は上記r、s、tの上限と同じである。)
【0021】
上記式(1)において、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、好ましくは炭素数1?6のパーフルオロ基であり、中でも-CF_(3)基、-CF_(2)CF_(3)基が好ましい。
【0022】
上記式(1)及び(2)において、Qは単結合又は2価の有機基である。ここで、単結合とは、Rf基とB基との連結基となることを指す。2価の有機基として、好ましくは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジフェニルシリレン基等のジオルガノシリレン基、-Si[OH][(CH_(2))_(g)Si(CH_(3))_(3)]-(gは2?4の整数)から選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2?12の2価の有機基であり、より好ましくは前記構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2?12の2価の炭化水素基である。
【0023】
ここで、非置換又は置換の炭素数2?12の2価の炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)であってよく、更に、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換したものなどが挙げられ、中でも非置換又は置換の炭素数2?4のアルキル基、フェニル基が好ましい。
【0024】
このようなQとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

(式中、hは2?4の整数であり、Meはメチル基である。)
【0027】
上記式(1)及び(2)において、Bは、-J_(2)C-〔Jは独立に、好ましくは炭素数1?3のアルキル基、ヒドロキシル基もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に、水素原子、好ましくは炭素数1?3のアルキル基、フェニル基等のアリール基又は好ましくは炭素数1?3のアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基、以下同じ〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立に、好ましくは炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のアルコキシ基又はクロル基、以下同じ)で示される2価の基、-JC=で示される3価の基、-LSi=で示される3価の基、-C≡で示される4価の基、-Si≡で示される4価の基である。
【0028】
このようなBとしては、下記に示すものが挙げられる。
【化12】

(式中、Meはメチル基である。)
【0029】
上記式(1)及び(2)において、Xは互いに異なっていてよい加水分解性基である。加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1?10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2?10のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1?10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2?10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、シラザン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0030】
上記式(1)及び(2)において、Rは1価の有機基であり、炭素数1?4のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基又はフェニル基が好ましく、中でもメチル基が好適である。
aは1?3の整数であり、反応性、基材に対する密着性の観点から、2又は3が好ましい。bは1?3の整数で、bの平均が1.5?3.0、好ましくは1.8?3.0である。bの平均が1.5未満では耐薬品性が悪くなる。3.0を超えると加水分解性基が多くなるため、増粘し、製造が煩雑になったり、保存安定性が悪くなったり、非フッ素基の含有率が悪くなることで、撥水撥油性が低下する懸念がある。また、cは1?10の整数、好ましくは3?8の整数である。
上記式(1)で示される片末端加水分解性ポリマーは、加水分解性基Xを1?9個、好ましくは4?9個有するものであり、上記式(2)で示される両末端加水分解性ポリマーは、加水分解性基Xを2?18個、好ましくは8?18個有するものである。
【0031】
上記式(3)において、Dはフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
-CF_(3)
-CF_(2)CF_(3)
-CF_(2)CF_(2)CF_(3)
-CF_(2)H
-CFH_(2)
【0032】
上記式(1)で表される片末端加水分解性ポリマーとして、連結基Qを-CH_(2)-O-C_(3)H_(6)-とし、B基を-Si≡とし、X基を-OCH_(3)として表されるものを下記に例示する。これらQ、B、Xの組み合わせは、これらに限られたものではなく、単純にQ、B、Xを変更することで、数通りの片末端加水分解性ポリマーが得られる。いずれの片末端加水分解性ポリマーを用いたフッ素系表面処理剤でも、本発明の効果は発揮できる。
【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

(括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0036】
また、上記Q、B、X以外のものを使用し、これらを組み合わせた上記式(1)で表される片末端加水分解性ポリマーとしては、更に下記の構造のものが挙げられる。
【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
【化19】

【0041】
【化20】

【0042】
【化21】

【0043】
【化22】

(括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。)
【0044】
本発明の式(1)の化合物は公知の方法で製造できる。
例えば、下記式
【化23】

で表される片末端加水分解性ポリマーは、片方の末端がヒドロキシル基で変性されたフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを出発原料とし、臭化アリルと反応させることで、末端に不飽和結合基を導入した後、クロロシランを付加し、グリニヤ反応により不飽和結合を複数導入する。その不飽和結合末端にクロロシランを付加後アルコキシ化するか、直接、トリアルコキシシランを付加することで製造できる。
【0045】
また、例えば、下記式
【化24】

で表される片末端加水分解性ポリマーは、片方の末端にカルボキシル基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーを出発原料とし、グリニヤ反応により不飽和結合を複数導入した後、不飽和結合末端にクロロシランを付加してこれをアルコキシ化するか、直接、トリアルコキシシランを付加することで製造できる。
【0046】
上記式(2)で表される両末端加水分解性ポリマーとして、具体的には、片末端加水分解性ポリマーと同様なQ、B、Xの組み合わせのものを例示することができ、例えば、下記に示すものが挙げられる。
【0047】
【化25】

【0048】
【化26】

【0049】
上記式(3)で表わされる無官能性ポリマーとして、具体的には、下記一般式(4)、(5)で示されるものが好ましく用いられるが、これに限るものではない。
【化27】

(式中、p1、q1は、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの繰り返し単位数を10?100とする数である。)
【0050】
なお、無官能性ポリマーは、市販品を使用することもでき、例えば、FOMBLINという商標名で販売されているため、容易に手に入れることができる。
このようなポリマーとしては、例えば、下記構造のものが挙げられる。
【0051】
FOMBLIN Y(Solvay Solexis社製商品名、FOMBLIN Y25(重量平均分子量:3,200)、FOMBLIN Y45(重量平均分子量:4,100))
【化28】

(式中、p1、q1は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0052】
FOMBLIN Z(Solvay Solexis社製商品名、FOMBLIN Z03(重量平均分子量:4,000)、FOMBLIN Z15(重量平均分子量:8,000)、FOMBLIN Z25(重量平均分子量:9,500))
【化29】

(式中、p1、q1は上記重量平均分子量を満足する数である。)
【0053】
なお、本発明において、重量平均分子量は、アサヒクリンAK-225(旭硝子社製)を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の標準ポリスチレン換算値として測定できる(以下、同じ)。
【0054】
本発明のフッ素系表面処理剤には、上記片末端加水分解性ポリマー及び/又は両末端加水分解性ポリマーの末端加水分解性基を予め公知の方法により部分的に加水分解し、縮合させて得られる部分(共)加水分解縮合物を含んでいてもよい。1つの部分(共)加水分解縮合物に含まれるポリマーの数は3量化物以内が好ましい。3量化物を超える縮合物の場合には、基材との反応性が悪くなる。このような縮合物は固形分全体の質量に対して、通常30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。この範囲内であれば、溶剤に対する溶解性や基材との反応性が悪くなるおそれがない。
【0055】
(A)上記式(1)で表される片末端加水分解性ポリマー及び/又はその部分加水分解縮合物を含むフッ素系表面処理剤は、(B)上記式(2)で表される両末端加水分解性ポリマー及び/又はその部分加水分解縮合物を含んでもよく、この場合、(A)成分と(B)成分との合計モルに対する(B)成分の含有量が20モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下であることが好ましい。なお、配合する場合、上記含有量は0.01モル%以上、特に5モル%以上であることが好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲内であることにより、耐薬品性と耐擦傷性に優れる膜を形成することができる。
【0056】
本発明のフッ素系表面処理剤には、更に、(C)上記式(3)で表される無官能性ポリマーを含有してもよく、この場合、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モルに対する(C)成分の割合が40モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下であることが好ましい。なお、配合する場合、上記含有量は0.01モル%以上、特に5モル%以上であることが好ましい。(C)無官能性ポリマーの含有量が上記上限値より大きいと耐薬品性が悪くなる。
【0057】
また、該フッ素系表面処理剤は、必要に応じて、本発明を損なわない範囲で他の添加剤を配合することができる。具体的には、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等)、有機チタン化合物(テトラn-ブチルチタネート等)、有機酸(フッ素系カルボン酸、酢酸、メタンスルホン酸等)、無機酸(塩酸、硫酸等)などが挙げられる。これらの中では、特にフッ素系カルボン酸、酢酸、テトラn-ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫が望ましい。
添加量は触媒量であるが、通常、上記(A)?(C)成分の合計100質量部に対して0.01?5質量部、特に0.1?1質量部である。
【0058】
本発明のフッ素系表面処理剤は、適当な溶剤に溶解させてから塗工することが好ましい。上記溶剤は、上記(A)?(C)成分を均一に溶解させるものであることが好ましい。
このような溶剤としては、フッ素変性脂肪族炭化水素系溶剤(ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ1,3-ジメチルシクロヘキサンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶剤(m-キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3-トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶剤(メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2-ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシパーフルオロヘプテンなど)、フッ素変性アルキルアミン系溶剤(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶剤(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エーテル系溶剤(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、エステル系溶剤(酢酸エチルなど)、アルコール系溶剤(イソプロピルアルコールなど)を例示することができる。これらの中では、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶剤が望ましく、特にはエチルパーフルオロブチルエーテルやデカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、パーフルオロヘキサンがより好ましい。上記溶剤は1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
なお、溶剤に溶解させるフッ素系表面処理剤の最適濃度は、処理方法により異なるが、0.01?50質量%、特に0.03?20質量%であることが好ましい。
【0059】
本発明のフッ素系表面処理剤は、ウェット塗工法(刷毛塗り、ディッピング、スプレー、インクジェット)、蒸着法、スパッタ法など公知の方法で基材に施与することができるが、本発明のフッ素系表面処理剤は、特に、スプレー塗工、蒸着塗工、スパッタ塗工する際により効果的である。
また、硬化温度は、硬化方法によって異なるが、室温(20℃)?200℃、特に50?150℃の範囲が望ましい。硬化湿度としては、加湿下で行うことが反応を促進する上で望ましい。
硬化被膜の膜厚は、基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1?100nm、好ましくは3?30nm、より好ましくは5?15nmである。
【0060】
上記フッ素系表面処理剤で処理される基材は、特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英、サファイヤガラスなど各種材質のものであってよく、本発明のフッ素系表面処理剤は、これら基材に撥水撥油性、耐薬品性、離型性、防汚性を付与することができる。基板の表面がハードコート処理や反射防止処理されていてもよい。なお、密着性が悪い場合には、プライマー層として、SiO_(2)層や、加水分解性基又はSiH基を有するシランカップリング剤層を設けるか、真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、アルカリ処理、酸処理することによって公知の方法で密着性を向上させることができる。
本発明においては、フッ素系表面処理剤が加水分解性基を有することから、基板にSiO_(2)層をプライマーとして設け、その上に該フッ素系表面処理剤を塗工することが望ましい。また、ガラス基板等の加水分解性基が基板と直接密着できるような場合には、SiO_(2)層を設けなくても効果が発揮する場合もある。
特に、本発明においては、ガラス、化学強化されたガラス、物理強化されたガラス、SiO_(2)処理されたガラス、サファイヤガラス、SiO_(2)処理されたサファイヤガラス、石英基板、金属を用いることが好ましい。
【0061】
本発明のフッ素系表面処理剤で処理される物品としては、カーナビゲーション、カーオーディオ、タブレットPC、スマートフォン、ウェアラブル端末、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、ゲーム機器、各種操作パネル、電子広告等に使用される液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイや、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、太陽電池パネル、保護フイルム、反射防止フイルム等の光学物品が挙げられ、特にタッチパネル、反射防止フイルム、ウェアラブル端末、眼鏡レンズ、太陽電池用パネルが好適である。本発明のフッ素系表面処理剤は、前記物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、更に傷付き防止性を付与することができるため、特にタッチパネルディスプレイの撥水撥油層として有用である。
【0062】
本発明のフッ素系表面処理剤をガラス、サファイヤガラス、SiO_(2)処理された基板(SiO_(2)をあらかじめ蒸着又はスパッタした基板)などにスプレー塗工、インクジェット塗工、スピン塗工、浸漬塗工、真空蒸着塗工、又はスパッタ塗工した防汚処理基板は、耐薬品性と耐スチールウール摩耗性に優れるため、優れた撥水撥油性を長期にわたって持続することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物1を準備した。
【化30】

p1+q1=45、p1/q1=1.0、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.2:1.8、
(A):(B):(C)=92:3:5(モル比)
各成分((A)、(B)、(C))の含有モル比率は、加水分解性基を有するポリマーをシリカゲルに吸着させることで(C)成分を分取し、^(19)F-NMRにより決定したものである。
【0065】
[実施例2]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物2を準備した。
【化31】

p1+q1=45、p1/q1=1.0、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.5:1.5、
(A):(B):(C)=90:5:5(モル比)
【0066】
[実施例3]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物3を準備した。
【化32】

p1+q1=30、p1/q1=0.9、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.2:1.8、
(A):(B):(C)=85:5:10(モル比)
【0067】
[実施例4]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物4を準備した。
【化33】

p1+q1=80、p1/q1=1.1、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.2:1.8、
(A):(B):(C)=72:14:14(モル比)
【0068】
[実施例5]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物5を準備した。
【化34】

p1+q1=45、p1/q1=1.0、
(A):(B):(C)=65:12:23(モル比)
【0069】
[実施例6]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物6を準備した。
【化35】

p1+q1=45、p1/q1=1.1、r1+s1=4、r1/s1=0.7、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.2:1.8、
(A):(B):(C)=70:8:22(モル比)
【0070】
[実施例7]
組成物1を1モルに対して、無官能パーフルオロポリエーテルFOMBLIN Z15(Solvay Solexis社製、重量平均分子量:8,000)を0.5モル混合したものを組成物7とした。
【0071】
[比較例1]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物8を準備した。
【化36】

p1+q1=45、p1/q1=1.0、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=1:1、
(A):(B):(C)=88:5:7(モル比)
【0072】
[比較例2]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物9を準備した。
【化37】

p1+q1=45、p1/q1=0.9、
G=-H:-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.5:2.5、
(A):(B):(C)=90:8:2(モル比)
【0073】
[比較例3]
組成物1を1モルに対して、FOMBLIN Z15を0.95モル混合したものを組成物10とした。
【0074】
[比較例4]
下記の(A)?(C)成分を含む組成物11を準備した。
【化38】

p1+q1=45、p1/q1=1.1、r1+s1=4、r1/s1=0.7、
E=-C_(3)H_(5):-C_(3)H_(6)-Si(OCH_(3))_(3)=0.2:1.8、
(A):(B):(C)=65:30:5(モル比)
【0075】
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
上記組成物を固形分濃度20質量%になるようにエチルパーフルオロブチルエーテル〔Novec 7200(3M社製)〕に溶解させて表面処理剤を調製した。表面処理剤中の各成分比は、表1に示した。
【0076】
【表1】

*:官能基導入率bとは、式(1)、(2)のbである。
【0077】
最表面にSiO_(2)を10nm蒸着処理したガラス(50mm×100mm)(コーニング社製 Gorilla2)に、上記各表面処理剤を下記条件及び装置で真空蒸着塗工した。80℃、湿度80%の雰囲気下で1時間硬化させて硬化被膜を形成した。
[真空蒸着による塗工条件及び装置]
・測定装置:小型真空蒸着装置VPC-250F
・圧力:2.0×10^(-3)Pa?3.0×10^(-2)Pa
・蒸着温度(ボートの到達温度):500℃
・蒸着距離:20mm
・処理剤の仕込量:10mg
・蒸着量:10mg
【0078】
得られた硬化被膜の撥水性、動摩擦係数、耐薬品性、耐摩耗性を下記の方法により評価した。いずれの試験も、25℃、湿度50%で実施した。これらの結果を表2に示す。
【0079】
[撥水性の評価]
上記にて作製した試験体を用い、接触角計DropMaster(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水(液滴:2μl)に対する接触角を測定した。
【0080】
[動摩擦係数の評価]
ベンコット(旭化成社製)に対する動摩擦係数を、表面性試験機14FW(新東科学社製)を用いて下記条件で測定した。
接触面積:10mm×35mm
荷重:100g
【0081】
[耐薬品性の評価]
密着性の試験として、耐薬品性試験を行った。
1質量%NaOH水溶液に72時間浸漬後、水接触角を上記と同様にして測定した。
【0082】
[耐摩耗性の評価]
スチールウール(#0000)に対する耐摩耗性として、トライボギアTYPE:30S(新東科学社製)を用いて下記条件にて10,000回往復摩耗後の水接触角を上記と同様にして測定した。
接触面積:1cm^(2)
荷重:1kg
【0083】
【表2】

【0084】
上記の結果より、比較例1では、官能基の導入率が低いために、基材との密着性が十分でなく、耐薬品性が劣っている。比較例2では、基材との密着性に優れるものの、連結基が嵩高いため、スチールウールに対する耐摩耗性が悪い。比較例3では、無官能性ポリマー((C)成分)の含有量が多いため、基材との密着性が悪く、耐薬品性が十分でない。比較例4では、両末端加水分解性ポリマー((B)成分)の含有量が多いため、スチールウールに対する耐摩耗性が悪い。
一方、両末端加水分解性ポリマー((B)成分)の含有量が(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下で、無官能性ポリマー((C)成分)の含有量が(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下である実施例は、耐薬品性と耐摩耗性とが両立されていた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のフッ素系表面処理剤は、撥水撥油性に優れた硬化被膜を与えることができる。このため、本発明のフッ素系表面処理剤は、特に、タッチパネルディスプレイ、反射防止フイルムなど油脂の付着が想定され、視認性が重要になる用途に非常に有効であり、また、耐薬品性と耐摩耗性を両立していることから、汚れの付着が長時間続いたり、布や鍵など、日常的に使用する物に触れたりしても長期間にわたって良好な防汚表面を維持することができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
【化1】

(式中、Aは末端が-CF_(3)基である1価のフッ素含有基であり、Rfは-(CF_(2))_(d)-(OCF_(2))_(p)(OCF_(2)CF_(2))_(q)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2))_(r)(OCF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(s)(OCF(CF_(3))CF_(2))_(t)-O(CF_(2))_(d)-であり、dはそれぞれ独立に0?5の整数、p、q、r、s、tはそれぞれ独立に0?200の整数であり、かつ、p+q+r+s+tは10?200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい。Qは単結合又は2価の有機基であり、Bは-J_(2)C-〔Jは独立にアルキル基、ヒドロキシル基、-C_(3)H_(5)基、もしくはK_(3)SiO-(Kは独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシ基)で示されるシリルエーテル基〕で示される2価の基、-L_(2)Si-(Lは独立にアルキル基、アルコキシ基又はクロル基)で示される2価の基、-JC=〔Jは上記と同じ〕で示される3価の基、-LSi=(Lは上記と同じ)で示される3価の基であり、Rは1価の有機基であり、Xは加水分解性基であり、aは1?3の整数であり、bは1?2の整数で、平均が1.5?2.0であり、cは1?10の整数である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(B)下記平均組成式(2)
【化2】

(式中、Rf、Q、B、R、X、a、b、cは上記式(1)と同じである。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーで変性された加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、
(C)下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rfは上記式(1)と同じであり、Dは独立にフッ素原子、水素原子、又は末端が-CF_(3)基、-CF_(2)H基もしくは-CFH_(2)基である1価のフッ素含有基である。)
で表されるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーとを含むものであり、且つ、(B)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分との合計モル中0.1モル%以上20モル%以下であり、(C)成分の含有量が、(A)成分と(B)成分と(C)成分との合計モル中0.1モル%以上40モル%以下であることを特徴とするフッ素系表面処理剤。
【請求項2】
Qが、単結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基、-Si[OH][(CH_(2))_(g)Si(CH_(3))_(3)]-(gは2?4の整数)から選ばれる1種又は2種以上の構造を含んでよい非置換又は置換の炭素数2?12の2価の炭化水素基である、請求項1記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項3】
Xが、炭素数1?10のアルコキシ基、炭素数2?10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1?10のアシロキシ基、炭素数2?10のアルケニルオキシ基、ハロゲン基及びシラザン基からなる群より選ばれる加水分解性基である、請求項1又は2記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項4】
溶剤で希釈された請求項1?3のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項5】
溶剤が、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、メトキシパーフルオロヘプテン、デカフルオロペンタン、ペンタフルオロブタン、及びパーフルオロヘキサンから選ばれるものである請求項4記載のフッ素系表面処理剤。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理された物品。
【請求項7】
請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理された光学物品。
【請求項8】
請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理されたガラス、化学強化されたガラス、物理強化されたガラス、SiO_(2)処理されたガラス、サファイヤガラス、SiO_(2)処理されたサファイヤガラス、石英基板、又は金属。
【請求項9】
請求項1?5のいずれか1項に記載のフッ素系表面処理剤で処理されたタッチパネル、反射防止フイルム、ウェアラブル端末、眼鏡レンズ、又は太陽電池用パネル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-14 
出願番号 特願2014-161004(P2014-161004)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09K)
P 1 651・ 537- YAA (C09K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 木村 敏康
蔵野 雅昭
登録日 2017-12-01 
登録番号 特許第6248858号(P6248858)
権利者 信越化学工業株式会社
発明の名称 フッ素系表面処理剤及び該表面処理剤で表面処理された物品  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ