• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B82B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B82B
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B82B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B82B
管理番号 1350930
審判番号 不服2018-4408  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-03 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2015-538291「基板上にナノ多孔性層を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 1日国際公開、WO2014/063670、平成28年 2月25日国内公表、特表2016-505391〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)10月4日(パリ優先権による優先権主張外国庁受理2012年(平成24年)10月27日、独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年10月 5日 :手続補正書
平成29年 5月23日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月22日 :意見書、手続補正書
平成30年 1月 5日付け:拒絶査定
平成30年 4月 3日 :審判請求書、手続補正書
平成30年 8月13日 :上申書

第2 平成30年4月3日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月3日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、

「a)互いに異なる融点を有する二つの粒子種A及びBを選択する工程;
b)二つの粒子種A及びBを溶媒中に懸濁させる工程;
c)A及びBを含むその懸濁液を印刷法によって基板上に塗工する工程;
d)より高温で溶融する粒子の融点S_(mA)に到達することなく、より低い融点S_(mB)を有する粒子を制御溶融する工程;
e)基板上に形成されたナノ多孔性層の表面を検査する工程;
を有する、基板上にナノ多孔性層を製造する方法。」

から、

「a)互いに異なる融点を有する二つの粒子A及びBを選択する工程;
b)二つの粒子A及びBを溶媒中に懸濁させる工程;
c)A及びBを含むその懸濁液を印刷法によって基板上に塗工する工程;
d)より高温で溶融する粒子の融点S_(mA)に到達することなく、より低い融点S_(mB)を有する粒子を制御溶融する工程;
e)基板上に形成されたナノ多孔性層の表面を検査する工程;
を有し、
その際、前記粒子A及びBが、10:1?1000:1wt/wtのA:Bの重量比に互いに調整される、基板上にナノ多孔性層を製造する方法。」

へと補正することを、含むものである(下線部は補正箇所。)。

(2)上記(1)によれば、本件補正のうち、請求項1に対するものは、次の内容からなると認められる。
ア 「粒子種A及びB」(2箇所)を「粒子A及びB」(2箇所)とする補正。
イ 「その際、前記粒子A及びBが、10:1?1000:1wt/wtのA:Bの重量比に互いに調整される」との特定事項を付加する補正。

2 補正の適否
上記1(2)アの補正は、本件補正前の請求項1の「粒子種」と「粒子」とが同じであることを明りょうにするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記1(2)イの補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「二つの粒子種A及びBを選択する工程」について、「その際、前記粒子A及びBが、10:1?1000:1wt/wtのA:Bの重量比に互いに調整される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(本件補正のうち、請求項1に対する補正が、いわゆる独立特許要件に適合するか)について、以下、項を改めて検討する。

3 独立特許要件適合性
(1)本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を、上記1(1)において本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものと認める。

(2)先願に関する事項の認定
ア 先願明細書等の記載事項
(ア)原査定が引用した、本願の優先権主張の日前に出願され、その日後に出願公開された特願2011-91271号(特開2012-224885号公報)の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲には、次の事項が記載されていると認められる(下線は当審が付した。)。
なお、以下、特願2011-91271号を「先願」といい、先願の明細書及び特許請求の範囲を総称して、「先願明細書等」という。

a 「【特許請求の範囲】」、
「第1の金属材料を含有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径が50nm?1μmの範囲内にある第1の金属粒子と、
前記第1の金属材料の融点よりも低い融点の第2の金属材料を含有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径が5nm?500nmの範囲内にあり、且つ該平均粒子径が前記第1の金属粒子の平均粒子径以下である第2の金属粒子とを準備する工程と、
前記第1の金属粒子及び前記第2の金属粒子を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱して、前記第2の金属粒子を溶融させ、得られた溶融物によって前記第1の金属粒子を結合し、金属多孔質体を得る金属多孔質体生成工程と、
を具えることを特徴とする、金属多孔質体の製造方法。」(【請求項1】)、
「前記第2の金属粒子の、前記第1の金属粒子に対する割合が、5質量%?40質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一に記載の金属多孔質体の製造方法。」(【請求項4】)

b 「【背景技術】」、
「比表面積の大きな金属多孔質体は、触媒やガス吸蔵材、ガスセンサ、キャパシタ、選択透過膜等として使用されている。これらの用途においては、比表面積が高いほど各用途における機能性が向上する。」(【0002】)

c 「【発明が解決しようとする課題】」、
「本発明は、簡易な方法で、所望の微細孔、特にナノメータオーダの微細孔を有する金属多孔質体を提供することを目的とする。」(【0012】)

d 「【発明の効果】」、
「本発明に係る金属多孔質体の製造方法は、溶融を抑制した第1の金属粒子と、溶融を可能とする第2の金属粒子とを用いることにより、第1の金属粒子の原形を留めたまま、第1の金属粒子同士を繋ぐことが可能となる。例えば、金属多孔質体の母材となる金属粒子が、その表層部のみならず、金属粒子の内部まで溶融が進行しやすい場合であっても、第2の金属粒子を介在させることにより、特段の加熱制御を行うことなく、簡便に所望の金属多孔質体を提供することができる。」(【0018】)

e 「[第1の金属粒子及び第2の金属粒子の準備工程]
本実施形態においては、最初に、第1の金属材料を有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径d1が50nm?1μmの範囲内、好ましくは50nm?500nmの範囲内、より好ましくは50nm?400nmの範囲内、更に好ましくは50nm?200nmの範囲内にある第1の金属粒子と、前記第1の金属材料の融点よりも低い融点の第2の金属材料を含有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径d2が5nm?500nmの範囲内、好ましくは5nm?200nmの範囲内、より好ましくは5nm?100nmの範囲内、更に好ましくは5nm?50nmの範囲内にあり、且つ該平均粒子径が前記第1の金属粒子の平均粒子径以下、すなわち第1の金属粒子の平均粒子径d1と、第2の金属粒子の平均粒子径d2との比d1/d2が1以上である第2の金属粒子とを準備する。」(【0021】)、
「(第1の金属粒子)
第1の金属粒子は、目的とする金属多孔質体の母材を構成するものであって、金属多孔質体の形成後も、その原形が判別できる状態となっていることが望ましい。第1の金属粒子の平均粒子径の下限値を50nmとすることによって、第1の金属粒子の内部への溶融進行を抑制しやすくなり、母材を構成する第1の金属粒子の原形が完全に消失することを防ぐことができる。また、第1の金属粒子の平均粒子径が1μmを超えると、第1の金属粒子同士によって形成される空隙が大きくなり、第2の金属粒子による結合機能が低下する傾向となる。」(【0022】)、
「第1の金属粒子は、第1の金属材料を含有する。この第1の金属材料は、1気圧(101,325Pa)での融点が1000℃以上の金属元素を主成分として含有していることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは95質量%以上含有することがよい。」(【0024】)、
「(第2の金属粒子)
第2の金属粒子は、金属多孔質体の母材となる第1の金属粒子に対する結合剤として機能するものであるので、第1の金属材料の融点よりも低い融点の第2の金属材料を含有することが必要である。第2の金属材料の融点は、第1の金属材料の融点との差が、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上であることがよい。これによって、第1の金属粒子および第2の金属粒子を同時に加熱した場合においても、第2の金属粒子のみを簡易に溶解させることができ、上記結合剤として簡易に機能させることができる。なお、融点の差の上限値は特に限定されず、上述した第1の金属材料および以下に詳述する第2の金属材料の種類によって必然的に決定されるものである。」(【0029】)、
「また、第2の金属材料は、第1の金属材料の主成分の金属元素に比べて融点が低い金属元素を、第2の金属材料の主成分として含有することが好ましく、具体的には、第2の金属材料100質量部に対し、70質量部以上、好ましくは95質量部以上含有していることがよい。」(【0030】)、
「また、第1の金属粒子の平均粒子径d1と、第2の金属粒子の平均粒子径d2との比d1/d2は1以上であり、好ましくは5?200の範囲内、より好ましくは10?200の範囲内がよい。前述のように、金属をナノ粒子化することによる量子効果に基づく融点降下に起因して、第1の金属粒子および第2の金属粒子の融点の絶対値が大きく減少する。このようなことから、第1の金属粒子の平均粒子径d1が、特に50nm?200nmの範囲内にある場合には、d1/d2を5以上とし、第1の金属粒子の融点降下を第2の金属粒子の融点降下に比較して小さくし、第1の金属粒子および第2の金属粒子の融点差を利用した加熱処理によって、第2の金属粒子のみを溶解させ、第1の金属粒子に対する結合剤として簡易に機能させることができる。」(【0033】)、
「第1の金属粒子の原形を完全に消失させずに母材として所定の、特にナノメートルオーダの微細孔を有する金属多孔質体を得るためには、第1の金属粒子の平均粒子径d1が50nm?200nmの範囲内にあって、該平均粒子径d1と、第2の金属粒子の平均粒子径d2との比d1/d2が、好ましくは5?200の範囲内、より好ましくは10?200の範囲内となるように設定することがよい。5よりも小さいと、第2の金属粒子の絶対量が多くなりすぎ、形成した金属多孔質体の細孔を塞いでしまい、ナノメートルオーダの微細孔を有する金属多孔質体を得るのが困難になる場合がある。また、200よりも大きくなると、第2の金属粒子の絶対量が少なくなって、第1の金属粒子を結合させることができなくなる。」(【0034】)、
「また、第2の金属粒子の、第1の金属粒子に対する割合が、5質量%?40質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5質量%?20質量%の範囲がよい。5質量%よりも小さいと、第2の金属粒子の絶対量が少なくなって、第1の金属粒子を結合させることができなくなる。また、40質量%よりも大きくなると、第2の金属粒子の絶対量が多くなりすぎ、形成した金属多孔質体の細孔を塞いでしまい、ナノメートルオーダの微細孔を有する金属多孔質体を得るのが困難になる場合がある。」(【0035】)、
「[金属多孔質体生成工程]
本工程では、第1の金属粒子及び第2の金属粒子を混合した後、この混合物を加熱して、第2の金属粒子を溶融させ、得られた第2の金属粒子の溶融物によって第1の金属粒子を結合して、金属多孔質体を得る。」(【0052】)、
「混合方法は、特に限定されず、第1の金属粒子及び第2の金属粒子のそれぞれを粉末の状態で混合してもよく、スラリーの状態にして混合してもよく、ペースト状態にして混合してもよい。また、汎用の混練機、撹拌機、分散機、乳化装置等を用いてもよい。このようにして得られた混合物は、後工程の加熱の前に、所定の容器に入れられるか、あるいは所定の基材上に堆積又は塗布し、必要に応じ、乾燥させる。乾燥させる方法としては、特に制限されず、例えば30?150℃の範囲内の温度で乾燥を行うことがよい。」(【0053】)、
「加熱処理は、例えば150℃?600℃の範囲内、好ましくは170℃?400℃の範囲内にて行うことができる。この温度は、第1の金属粒子を完全には溶融させずに、第2の金属粒子を溶融させることができる温度に適宜設定すればよい。加熱処理は、例えば窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中、1?5KPaの真空中、大気中、又は水素ガス中で行うことができ、第1の金属粒子の種類や得られる金属多孔質体の使用目的によって適宜選択すればよい。また、必要に応じ、加圧又はプレスを併用して加熱を行ってもよい。」(【0055】)

f 「【実施例】」、
「次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例において特にことわりのない限り、各種測定、評価は下記によるものである。」(【0056】)、
「(実施例1)
第1の金属粒子として、10gのニッケル粒子1a(JFEミネラル社製、商品名;NFP201S、ニッケル含有率;99wt%、平均粒子径;200nm、比表面積;3.4m^(2)/g、5%熱収縮温度;400℃)を準備し、第2の金属粒子として、2gの銀粒子1b(DOWAエレクトロニクス社製、商品名;DOWA銀ナノ粒子乾粉、銀含有率;95wt%、平均粒子径;20nm、比表面積;17.5m^(2)/g)を準備した。」(【0060】)、
「上記ニッケル粒子1a及び銀粒子1bに20gのイソプロピルアルコールを加え、シンキー社製の自動公転式ミキサーを用いて、10分間混錬した後、風乾してイソプロピルアルコールを除去し、混合物1を得た。この混合物1を10Φ×2nmの円柱状の金型容器に入れ、プレス機で1MPaの圧力下で成型体を作製し、その成型体を窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、350℃、3時間加熱し、目的とする金属多孔質体1を得た。」(【0061】)、
「金属多孔質体1の窒素吸収等温線からBET法によって比表面積を求めたところ、0.7m^(2)/gであった。さらに DH法(Dollimore-Heal法)で求められたメソ細孔分布から、細孔径約45nmをピークとし、1nm?85nm程度の細孔分布を有することが判明した。」(【0062】)、
「(実施例2)・・・」(【0063】)、
「上記ニッケル粒子2aの10g及び銀粒子2bの2gを準備し、実施例1と同様にして、混錬、風乾して、混合物2を得た。この混合物2を10Φ×2nmの円柱状の金型容器に入れ、プレス機で1MPaの圧力下で成型体を作製し、その成型体を窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、250℃、3時間加熱し、目的とする金属多孔質体2を得た。」(【0066】)、
「BET法によって求めた金属多孔質体2の比表面積は、2.5m^(2)/gであった。さらに、DH法で求められたメソ細孔分布から、細孔径約36nmをピークとし、1nm?75nm程度の細孔分布を有することが判明した。」(【0067】)、
「上述した実施例から明らかなように、本発明によれば、互いに平均粒子径の異なるナノ粒子である第1の金属粒子及び第2の金属粒子を準備すれば、その後、これらの金属粒子を混合及び加熱するという、いわゆる通常の粉末冶金等における汎用の焼結技術を用いるのみで、目的とする微細孔を有する金属多孔質体を得ることができる。すなわち、湿式法のような複雑な製法を用いることなく、極めて簡易に微細孔を有する金属多孔質体を得ることができる。」(【0068】)、
「以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。」(【0069】)

(イ)上記(ア)に記載された事項によれば、先願明細書等には次の発明(以下「先願明細書等発明」という。)が記載されていると認められる。なお、先願明細書等発明の認定に直接用いた段落番号等を参考までに括弧内に付記してある。

「第1の金属材料を含有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径が50nm?1μmの範囲内にある第1の金属粒子と、
前記第1の金属材料の融点よりも低い融点の第2の金属材料を含有する金属粒子であって、該金属粒子の平均粒子径が5nm?500nmの範囲内にあり、且つ該平均粒子径が前記第1の金属粒子の平均粒子径以下である第2の金属粒子とを準備する工程と、
前記第1の金属粒子及び前記第2の金属粒子を混合して混合物を得る工程と、
前記混合物を加熱して、前記第2の金属粒子を溶融させ、得られた溶融物によって前記第1の金属粒子を結合し、金属多孔質体を得る金属多孔質体生成工程と、
を具える、金属多孔質体の製造方法であって、(【請求項1】)
前記第2の金属粒子の、前記第1の金属粒子に対する割合が、5質量%?40質量%の範囲であり、(【請求項4】)
混合方法は、第1の金属粒子及び第2の金属粒子のそれぞれをスラリーの状態にして混合してもよく、
このようにして得られた混合物は、後工程の加熱の前に、所定の基材上に塗布する、(【0053】)
ナノメータオーダの微細孔を有する金属多孔質体の製造方法。(【請求項1】、【0018】)」

イ 先願の形式的要件に係る事項
先願明細書等発明の発明者は、「山田勝弘」である。
本願の出願時、先願の出願人は、「新日鉄住金化学株式会社」(2012年に、「新日鐵化学株式会社」から商号変更。)であった。

(3)対比
ア 本件補正発明と先願明細書等発明とを以下に対比する。
(ア)本件補正発明の「互いに異なる融点を有する二つの粒子A及びBを選択する工程」との特定事項について
a 先願明細書等発明の「第1の金属粒子」及び「第2の金属粒子」は、それぞれ、本件補正発明の「粒子A」及び「粒子B」に相当する。

b 先願明細書等発明の「第1の金属粒子」及び「第2の金属粒子」は、「第2の金属材料」が「前記第1の金属材料の融点よりも低い」ことと「前記混合物を加熱して、前記第2の金属粒子を溶融させ、得られた溶融物によって前記第1の金属粒子を結合」することとにかんがみれば、「互いに異なる融点を有する」といえる。

c 先願明細書等発明は、「第1の金属粒子と、」「第2の金属粒子とを準備する工程」を備えるから、本件補正発明でいう「二つの粒子A及びBを選択する工程」を備えるといえる。

d したがって、先願明細書等発明は、本件補正発明の「互いに異なる融点を有する二つの粒子A及びBを選択する工程」との特定事項を備える。

(イ)本件補正発明の「二つの粒子A及びBを溶媒中に懸濁させる工程」との特定事項について
先願明細書等発明は、「第1の金属粒子及び第2の金属粒子のそれぞれをスラリーの状態にして混合してもよ」いものであるから、「二つの粒子A及びBを溶媒中に懸濁させる工程」との特定事項を備えることが明らかである。

(ウ)本件補正発明の「A及びBを含むその懸濁液を印刷法によって基板上に塗工する工程」との特定事項について
先願明細書等発明は、「このようにして得られた混合物は、後工程の加熱の前に、所定の基材上に塗布する」ものであるから、上記(イ)にも照らせば、本件補正発明の「A及びBを含むその懸濁液を」「基板上に塗工する工程」との特定事項を備える。
しかし、先願明細書等発明は、その塗布が、「印刷法によって」なされることについて特定しない。

(エ)本件補正発明の「より高温で溶融する粒子の融点S_(mA)に到達することなく、より低い融点S_(mB)を有する粒子を制御溶融する工程」との特定事項について
先願明細書等発明は、「前記混合物を加熱して、前記第2の金属粒子を溶融させ、得られた溶融物によって前記第1の金属粒子を結合」させるから、本件補正発明の「より高温で溶融する粒子の融点S_(mA)に到達することなく、より低い融点S_(mB)を有する粒子を制御溶融する工程」との特定事項を備えるといえる。

(オ)本件補正発明の「基板上に形成されたナノ多孔性層の表面を検査する工程」との特定事項について
先願明細書等発明は、本件補正発明の「基板上に形成されたナノ多孔性層の表面を検査する工程」との特定事項を特定しない。

(カ)本件補正発明の「その際、前記粒子A及びBが、10:1?1000:1wt/wtのA:Bの重量比に互いに調整される」との特定事項について
先願明細書等発明では、「前記第2の金属粒子の、前記第1の金属粒子に対する割合が、5質量%?40質量%の範囲である」ところ、これを本件補正発明の用語に倣って表現すると、「2.5:1?20:1wt/wtのA:Bの重量比」ということになる。
そうすると、本件補正発明と先願明細書等発明とは、「その際、前記粒子A及びBが、」所定の「A:Bの重量比に互いに調整される」点で一致する。

(キ)本件補正発明の「基板上にナノ多孔性層を製造する方法」との特定事項について
先願明細書等発明は、「このようにして得られた混合物は、後工程の加熱の前に、所定の基材上に塗布する」「ナノメータオーダの微細孔を有する金属多孔質体の製造方法」であるから、本件補正発明の「基板上にナノ多孔性層を製造する方法」を備える。

イ 上記アによれば、本件補正発明と先願明細書等発明とは、
「互いに異なる融点を有する二つの粒子A及びBを選択する工程;
二つの粒子A及びBを溶媒中に懸濁させる工程;
A及びBを含むその懸濁液を基板上に塗工する工程;
より高温で溶融する粒子の融点S_(mA)に到達することなく、より低い融点S_(mB)を有する粒子を制御溶融する工程;
を有し、
その際、前記粒子A及びBが、所定のA:Bの重量比に互いに調整される、基板上にナノ多孔性層を製造する方法。」である点で一致し、次の点で一応相違する。

[相違点1]
「A及びBを含むその懸濁液を基板上に塗工する」ことについて、本件補正発明は、「印刷法によって」なされるのに対し、先願明細書等発明には、そのような特定がない点。

[相違点2]
「所定のA:Bの重量比」について、本件補正発明は「10:1?1000:1wt/wt」であるのに対し、先願明細書等発明は「2.5:1?20:1wt/wt」である点。

[相違点3]
本件補正発明は、「基板上に形成されたナノ多孔性層の表面を検査する工程」を備えるのに対し、先願明細書等発明には、そのような特定がない点。

(4)相違点に対する判断
上記各相違点が実質的であるか否かについて検討する。

ア 相違点1について
「懸濁液を基板上に塗工する」際に印刷法によることは、本願の優先権主張の日前における周知技術であり(例えば、原査定が例示した国際公開第2012/141095号の[0053]、特開2007-117811号公報の【0032】、国際公開第2007/43408号の[0062]を参照。)、この周知技術を採用することによって新たな効果を奏するわけでもない。
したがって、相違点1は、懸濁液を基板上に塗工するための具体的手段における微差にすぎず、よって、実質的なものではない。

イ 相違点2について
(ア)まず、「所定のA:Bの重量比」については、本件補正発明と先願明細書等発明とは、「10:1?20:1」の範囲において重複していることが認められる。

(イ)次に、「所定のA:Bの重量比」として、本件補正発明と先願明細書等発明が特定の値を規定した技術的意義について確認する。
本件補正発明が「10:1?1000:1wt/wt」を規定した技術的意義は、重量比が高い場合は、このマトリクスの内部で十分な接触が達成されないおそれがあり(本件補正後の明細書(以下「本件明細書」という。)の【0029】)、また、重量比が低い場合は、極端な場合、孔が閉じて密な、つまり多孔性でないフィルムがもたらされる(本件明細書の【0030】)ことにあると認められる。
他方で、先願明細書等発明が「2.5:1?20:1wt/wt」を規定した技術的意義は、重量比が高い場合は、第2の金属粒子の絶対量が少なくなって、第1の金属粒子を結合させることができなくなり、重量比が低い場合は、第2の金属粒子の絶対量が多くなりすぎ、形成した金属多孔質体の細孔を塞いでしまい、ナノメートルオーダの微細孔を有する金属多孔質体を得るのが困難になる場合がある(【0035】)ことにあると認められる。
そうすると、両者の技術的意義は、同一であると解される。

(ウ)以上によれば、相違点2は、実質的なものではないというべきである。

ウ 相違点3について
物を製造する際に、製造された物の表面を検査することは、例示するまでもなく周知慣用な技術であるし、この周知慣用技術を採用することによって新たな効果を奏するものでもない。
したがって、相違点3は、物を製造するための具体的手段における微差にすぎず、よって、実質的なものではない。

相違点の判断の小括
このように、相違点1?3はいずれも実質的なものではないから、本件補正発明は、先願明細書等発明と同一である。

(5)形式的要件について
上記3(2)イによれば、先願明細書等発明の発明者は、本願の請求項に係る発明の発明者と同一の者でなく、先願の出願人は、本願の出願時において、本願の出願人と同一の者でない。

(6)独立特許要件適合性の小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、本願の優先権主張の日前の特許出願に係る先願であって、その日後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載された先願明細書等発明と同一であり、しかも、先願明細書等発明をした者が本願の請求項に係る発明の発明者と同一の者ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。

4 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明に対する判断
1 本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(1)において、本件補正前の請求項1として記載されたとおりのものであると認められる。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前の特許出願に係る先願であって、その日後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載された先願明細書等発明と同一であり、しかも、先願明細書等発明をした者が本願の請求項に係る発明の発明者と同一の者ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない、というものである。

3 先願に関する事項
原査定の拒絶の理由で引用された先願に係る事項の認定は、上記第2の[理由]3(2)と同じである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、「その際、前記粒子A及びBが、10:1?1000:1wt/wtのA:Bの重量比に互いに調整される」に係る限定事項を削除したものであるとともに、「粒子A及びB」(2箇所)との記載を「粒子種A及びB」(2箇所)との記載に戻したものに相当する。そして、後者は、実質的な意味の変更を伴わない。
そうすると、本願発明の発明特定事項を実質的に全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]3(3)、(4)で認定判断したとおり、先願明細書等発明と同一であるから、本願発明も、先願明細書等発明と同一である。
そして、上記第2の[理由]3(5)で認定した形式的要件についても、同様の認定となる。
したがって、本願発明は、本願の優先権主張の日前の特許出願に係る先願であって、その日後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載された先願明細書等発明と同一であり、しかも、先願明細書等発明をした者が本願の請求項に係る発明の発明者と同一の者ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人と先願の出願人とが同一の者でもない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-19 
結審通知日 2018-11-21 
審決日 2018-12-04 
出願番号 特願2015-538291(P2015-538291)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (B82B)
P 1 8・ 572- Z (B82B)
P 1 8・ 575- Z (B82B)
P 1 8・ 161- Z (B82B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 彰  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 西村 直史
山村 浩
発明の名称 基板上にナノ多孔性層を製造する方法  
代理人 虎山 一郎  
代理人 江崎 光史  
代理人 上西 克礼  
代理人 鍛冶澤 實  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ