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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1350992
審判番号 不服2017-18792  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-19 
確定日 2019-04-10 
事件の表示 特願2014-546708「受領者に対して最適化された医用撮像再構成」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/088353、平成27年 4月 2日国内公表、特表2015-510157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)12月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年12月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月10日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年4月5日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年8月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年12月19日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 審判請求時の補正について
1 平成29年12月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の記載が、
(補正前)
【請求項1】
複数の画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベースであり、各々の画像受領者再構成プロファイルは、画像再構成アルゴリズム及び該画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値を有する、データベースと、
医用撮像データから、再構成画像を、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び
取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること、
を含む処理によって生成するように構成された電子プロセッサと、
を有する装置。

【請求項2】 省略

【請求項3】
前記電子プロセッサは更に、
前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び
前記収集されたフィードバックに基づいて、前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、
を含むプロファイル更新処理を実行するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。

【請求項4】-【請求項15】 省略

から、

(補正後)
【請求項1】
複数の画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベースであり、各々の画像受領者再構成プロファイルは、画像再構成アルゴリズム及び該画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値を有する、データベースと、
医用撮像データから、再構成画像を、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び
取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること、
を含む処理によって生成するように構成された電子プロセッサと、
を有し、
前記電子プロセッサは更に、
前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び 前記収集されたフィードバックに基づいて、前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、
を含むプロファイル更新処理を実行するように構成される、
装置。

【請求項2】-【請求項13】 省略

と補正された。なお、下線は補正箇所を示すものとして審判請求人が付与したものである。

2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項3は、請求項1の記載を引用して記載されたものである。したがって、本件補正前の請求項3に係る発明と、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明として相違するところがないから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項3を、独立形式に書き改めて記載したものである。
そうしてみると、本件補正は、本件補正前の請求項1を削除して、本件補正前の請求項3を本件補正後の請求項1にしたものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる、同法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって、請求項1に係る本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「複数の画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベースであり、各々の画像受領者再構成プロファイルは、画像再構成アルゴリズム及び該画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値を有する、データベースと、
医用撮像データから、再構成画像を、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び
取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること、
を含む処理によって生成するように構成された電子プロセッサと、
を有し、
前記電子プロセッサは更に、
前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び 前記収集されたフィードバックに基づいて、前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、
を含むプロファイル更新処理を実行するように構成される、
装置。」

第4 原査定の拒絶の理由
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2011-92682号公報
引用文献2:省略
引用文献3:特開2005-103263号公報(周知技術を示す文献)

第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
引用文献1(特開2011-92682号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加したものである。
(1)「【0001】
本発明は、読影レポート情報を利用して医用画像の表示態様を決定する医用画像表示装置、方法、および、この方法をコンピュータに実行させるプログラムに関するものである。」

(2)「【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の医用画像表示装置は、入力された医用画像データから表示対象の医用画像を生成するための画像処理条件、および/または、該表示対象の医用画像の表示条件が、解剖学的構造物および/または病変に関する情報と関連づけられて定義された表示プロトコルを記憶する表示プロトコル記憶手段と、前記入力医用画像データから生成された読影対象の画像に対する所見を含む読影レポート情報から、前記所見中の解剖学的構造物および/または病変に関する情報を抽出する抽出手段と、前記抽出された解剖学的構造物および/または病変に関する情報に基づいて、前記表示プロトコル記憶手段に記憶された表示プロトコルからの選択によって、前記入力医用画像データに対する前記表示プロトコルを決定する表示プロトコル決定手段と、前記決定された表示プロトコルに基づいて、前記入力医用画像データからの前記表示対象の医用画像の生成、および/または、前記表示対象の医用画像の表示制御を行う画像処理・表示制御手段とを設けたことを特徴とする。
・・・
【0021】
本発明において、画像処理条件には、MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリングといった、生成される画像の種類を表す条件や、断面の位置や傾き、被投影領域の範囲、視点の位置、視線ベクトルの向き、不透明度等の画像処理の詳細パラメータ、階調処理や強調処理等のパラメータ、ウィンドウ幅、ウィンドウレベル、画像認識処理(CAD)等の様々な条件が含まれうる。
【0022】
また、表示条件には、一画面内に表示する画像数、各表示画像のサイズ、レイアウト、表示順序等の様々な条件が含まれうる。
【0023】
この画像処理条件や表示条件と関連づけられる解剖学的構造物は、撮影部位、器官、組織等、様々な観点や単位のものが考えられる。具体例としては、頭部、胸部といった撮影部位、脳、肺、肝臓といった臓器等、前頭葉、左肺、左肺上葉、肝区域といった臓器等の一部分、骨、血管等、第5腰椎、肝動脈といった特定の骨や血管等が挙げられる。
【0024】
病変に関する情報とは、上記の解剖学的構造物中の病変に関する情報であり、具体例としては、結節、腫瘍、狭窄、梗塞等が挙げられる。
【0025】
したがって、本発明における表示プロトコルとは、上記の解剖学的構造物や病変毎に、それらの観察に適した画像の画像処理条件や表示条件を定義したものであるということができる。」

(3)「【0043】
図1に、本発明の実施形態における医用画像表示装置が導入された医療情報システムの概略構成を示す。このシステムは、公知のオーダリングシステムを用いた診療科の医師からの検査オーダーに基づいて、被検体の検査対象部位の撮影および保管、放射線科の読影医による撮影された画像の読影および読影レポートの作成、依頼元の診療科の医師による読影レポートの閲覧および読影対象だった画像の詳細観察を行うためのシステムである。図に示すように、医用画像の撮影装置(モダリティ)1、画像品質チェック用ワークステーション(QA-WS)2、放射線科用ワークステーション3、診療科用ワークステーション4、画像情報管理サーバ5、画像情報データベース6、読影レポートサーバ7、読影レポートデータベース8が、ネットワーク9を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。各機器は、CD-ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムによって制御される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0044】
モダリティ1には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれる。具体例としては、CT、MR、PET、超音波撮影装置、平面X線検出器(FPD)を用いたX線撮影装置などが挙げられる。なお、以下では、被写体を表す画像データと画像データの付帯情報の組を「画像情報」と称することとする。すなわち「画像情報」の中には画像に係るテキスト情報も含まれる。
【0045】
QA-WS2は、汎用の処理装置(コンピュータ)と1台または2台の高精細ディスプレイとキーボード・マウスなどの入力機器により構成される。処理装置には、検査技師の作業を支援するためのソフトウェアが組み込まれている。QA-WS2は、そのソフトウェアプログラムの実行によって実現される機能により、モダリティ1からDICOMに準拠した画像情報を受信し、受信した画像情報に含まれる画像データと付帯情報の内容を画面に表示することで検査技師に確認を促す。そして、検査技師による確認が済んだ画像情報を、ネットワーク9を介して画像情報管理サーバ5に転送し、その画像情報の画像情報データベース6への登録を要求する。
【0046】
放射線科用ワークステーション3は、放射線科の読影医が画像の読影や読影レポートの作成に利用するコンピュータであり、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものであるが、表示装置として1台または2台の高精細ディスプレイを有している。この放射線科用ワークステーション3では、画像情報管理サーバ5に対する画像の閲覧要求や、画像情報管理サーバ5から受信した画像の表示、画像中の病変らしき部分の自動検出・強調表示、読影レポートの作成の支援、読影レポートサーバ7に対する読影レポートの登録要求や閲覧要求、読影レポートサーバ7から受信した読影レポートの表示等の各処理が、各処理のためのソフトウェアプログラムの実行により行われる。
【0047】
診療科用ワークステーション4は、診療科の医師が画像の詳細観察や読影レポートの閲覧、電子カルテの閲覧・入力等に利用するコンピュータであり、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものであるが、表示装置として1台または2台の高精細ディスプレイを有している。この診療科用ワークステーション4では、画像情報管理サーバ5に対する画像の閲覧要求や、画像情報管理サーバ5から受信した画像の表示、画像中の病変らしき部分の自動検出・強調表示、読影レポートサーバ7に対する読影レポートの閲覧要求、読影レポートサーバ7から受信した読影レポートの表示等の各処理が、各処理のためのソフトウェアプログラムの実行により行われる。本発明の医用画像表示装置は、この診療科用ワークステーション4に実装されているが、これについては後述する。
【0048】
画像情報管理サーバ5は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものである。画像情報管理サーバ5は画像情報データベース6が構成される大容量ストレージを備えている。このストレージは、画像情報管理サーバ5とデータバスによって接続された大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク9に接続されているNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。
【0049】
画像情報データベース6には、被写体画像を表す画像データと付帯情報とが登録される。付帯情報には、例えば、個々の画像を識別するための画像ID、被写体を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、画像情報ごとに割り振られるユニークなID(UID)、その画像情報が生成された検査日、検査時刻、その画像情報を取得するための検査で使用されたモダリティの種類、患者氏名、年齢、性別などの患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影条件(造影剤の使用有無や、放射線量など)、1回の検査で複数の画像を取得したときのシリーズ番号あるいは採取番号などの情報が含まれうる。画像情報は、例えばXMLやSGMLデータとして管理されうる。
【0050】
画像情報管理サーバ5は、QA-WS2からの画像情報の登録要求を受け付けると、その画像情報をデータベース用のフォーマットに整えて画像情報データベース6に登録する。
【0051】
また、画像情報管理サーバ5は、放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4からの閲覧要求をネットワーク9経由で受信すると、上記画像情報データベース6に登録されている画像情報を検索し、抽出された画像情報を要求元の放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4に送信する。
【0052】
放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4は、画像診断医や診療科医等のユーザによって読影・観察対象画像の閲覧を要求する操作が行われると、画像情報管理サーバ5に対して閲覧要求を送信し、必要な画像情報を取得する。そして、その画像情報をモニタ画面に表示し、ユーザからの要求に応じて病変の自動検出処理などを実行する。
【0053】
放射線科用ワークステーション3は、読影レポートの作成を支援するレポート作成画面をモニタに表示し、放射線科医によって読影に基づいて行った所見などの内容を示すテキストが入力されたときに、入力された情報と読影の対象とされた画像(以下、読影対象画像)を記録した読影レポートを生成する。読影対象画像が複数あるときは、読影レポートには、読影所見を最も顕著に表す代表的な画像(以下、代表画像)を記録する。放射線科用ワークステーション3は、生成した読影レポートを、ネットワーク9を介して読影レポートサーバ7に転送し、その読影レポートの読影レポートデータベース8への登録を要求する。
【0054】
読影レポートサーバ7は、汎用の比較的処理能力の高いコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだものであり、放射線科用ワークステーション3からの読影レポートの登録要求を受け付けると、その読影レポートをデータベース用のフォーマットに整えて読影レポートデータベース8に登録する。
【0055】
読影レポートデータベース8には、例えば、読影対象画像もしくは代表画像を識別する画像IDや、読影を行った画像診断医を識別するための読影者ID、関心領域の位置情報、所見、所見の確信度といった情報が登録される。この他、画像の読影時に画像情報の付帯情報を参照することで取得された検査番号、患者番号、さらには、読影対象画像または代表画像の画像データ自体も等も含まれうる。読影対象画像または代表画像の画像データは、画像情報データベース6に登録されている画像データよりも画素数が少ない(間引きされた)縮小画像データとすることができる。この場合、この縮小画像データの生成のもとになる、画像情報データベース6に登録されている画像データへのアクセスを可能にするためのリンク情報(画像情報データベース6に登録されている画像データのアドレスやフォルダ名、ファイル名等)も読影レポートデータベース8に登録しておくことが好ましい。また、画像情報データベース6に登録されている画像データをそのままコピーしたものを読影レポートデータベース8に登録しておいてもよい。また、関心領域の位置情報は、読影レポートデータベース8ではなく、画像データの付帯情報として画像情報データベース6に登録しておいてもよい。なお、読影レポートは、例えばXMLやSGMLデータとして管理されうる。
【0056】
読影レポートサーバ7は、放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4からの閲覧要求をネットワーク9経由で受信すると、読影レポートデータベース8に登録されている読影レポートを検索し、抽出された読影レポートを要求元の放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4に送信する。
【0057】
ネットワーク9は病院内の各種装置を接続するローカルエリアネットワークである。但し、放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4が他の病院あるいは診療所にも設置されている場合には、ネットワーク9は、各病院のローカルエリアネットワーク同士をインターネットもしくは専用回線で接続した構成としてもよい。いずれの場合にも、ネットワーク9は光ネットワークなど画像情報の高速転送を実現できるものとすることが好ましい。
【0058】
図2は、診療科用ワークステーション4における読影レポートおよび読影レポートの対象画像の連携閲覧機能として実装された本発明の第1の実施形態となる医用画像表示装置の構成とデータの流れを模式的に示したブロック図である。図に示したように、本発明の医用画像表示装置は、キーワードテーブル21、キーワード抽出部22、表示プロトコルテーブル23、表示プロトコル決定部24、画像取得部25、画像処理部26、表示画面生成部27から構成される。
【0059】
まず、この連携閲覧機能を実現するソフトウェアプログラムは、読影レポートの閲覧中に、そのレポートの対象となっている画像を詳細に観察するための操作を行うことによって起動される。図3Aおよび図3Bは、読影レポートの表示画面中でこの起動操作を行う場合の具体例を示したものである。図3Aに示したように、読影レポートの表示画面30は、患者IDを表示する領域31、検査IDを表示する領域32、検査日を表示する領域33、読影対象画像の所見を表示する領域34、読影対象画像または代表画像の縮小画像36を表示する領域35、詳細観察ボタン37から構成されている。ユーザである診療科の医師が、診療科用ワークステーション4のマウスのクリック操作等により、詳細観察ボタン37を押下すると、このソフトウェアプログラムが起動される。また、図3Bは、詳細観察ボタン37を表示しない例であり、ここでは、詳細観察を行いたい画像36に対するダブルクリック操作等により、このソフトウェアプログラムが起動される。
【0060】
このソフトウェアプログラムが起動されると、キーワード抽出部22は、キーワードテーブル21を用いて読影レポートRPTの所見情報(図3A、図3Bの所見領域34の表示内容)を解析し、表示プロトコルの決定要因となるキーワードK1,K2を抽出する。図4は、この処理の具体的内容の一例を模式的に示したものである。図に示したように、キーワードテーブル21は、キーワードと抽出対象語とが関連づけられたものであり、キーワードおよび抽出対象語として、解剖学的構造物および病変に関する情報が登録されている。キーワード抽出部22は、読影レポートRPTの所見情報中にキーワードテーブル21に登録された抽出対象語が存在するかどうか検索を行う。この例では、所見中の「左肺」「上葉」「結節」が抽出対象語と一致する。次に、キーワード抽出部22は、検索でヒットした抽出対象語をキーワードに変換する。すなわち、「左肺」「上葉」は、各語と関連づけられたキーワード「肺」(キーワードK1)に変換され、「結節」は、そのままキーワード「結節」(キーワードK2)となる。
【0061】
ここで、キーワードの抽出方法は上記の方法に限定されず、例えば、サーチエンジン等で用いられる公知の自然言語処理技術等を採用することも可能であるが、読影レポートの作成時に、解剖学的構造物や病変の選択入力するユーザインターフェースを提供するなどして、解剖学的構造物や病変の呼称を標準化しておけば、上記のようなキーワードテーブルを用いた検索でも十分な効果は得られる。
【0062】
また、図3Bの具体例において、特許文献1に記載された従来技術のように、所見中のキーワードとそのキーワードとともに参照すべき画像とを関連づけるリンクを作成しておいた場合、例えば、図3Bの所見欄の「左肺上葉S2」や「結節」と貼付画像36とが関連づけられていれば、貼付画像36に対するダブルクリック操作等により、このソフトウェアプログラムが起動された際に、キーワード抽出部22は、上記リンクをたどることによって、指定された貼付画像36と関連づけられた「左肺上葉S2」や「結節」を抽出対象語として抽出し、キーワードテーブル21を用いてキーワード「肺」「結節」に変換するようにしてもよい。
【0063】
なお、キーワードテーブル21は、所定のGUIから、診療科の医師等のユーザが、必要に応じて、登録、変更、削除等のメンテナンスが可能である。
【0064】
次に、表示プロトコル決定部24は、キーワード抽出部22によって抽出されたキーワードK1、K2を用いて表示プロトコルテーブル23を参照し、これらのキーワードK1、K2と関連づけられた表示プロトコルを特定する。
【0065】
図5Aは、ある表示プロトコルの内容を模式的に表したものである。図に示したように、この表示プロトコルは、画面をSub1、Sub2、Sub3、Sub4の4つの小領域に分割し、小領域Sub1にはCT画像からアキシャル断面画像を再構成し、肺野条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行ったものを表示し、小領域Sub2にはCT画像からコロナル断面画像を再構成し、肺野条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行ったものを表示し、小領域Sub3にはCT画像からアキシャル断面画像を再構成し、縦隔条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行ったものを表示し、小領域Sub4にはCT画像からコロナル断面画像を再構成し、縦隔条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行ったものを表示することを示している。なお、画像処理条件等は、実際には、断面位置等、さらに詳細なパラメータを設定する必要があるが、説明を簡潔にするため、アキシャル断面画像、肺野条件等の用語で表現している。図5Bは、この表示プロトコルを表示プロトコルテーブル23に登録した例を示している。図に示したように、表示プロトコルテーブル23は、表示プロトコルを識別する表示プロトコルID、キーワード、画面中の小領域を識別する領域ID、各小領域の位置情報(左上端の座標、幅(W)、高さ(H))、各小領域に表示する画像のモダリティ等の条件(取得画像の項目)、画像処理の内容(画像処理1、画像処理2の項目)が関連づけられて登録されたものであり、この表示プロトコルでは、1つの表示プロトコル「001」に対するキーワードは「肺」および「結節」で、4つの小領域Sub1、Sub2、Sub3、Sub4がその属性(位置情報、取得画像、画像処理1、画像処理2、・・・)とともに登録されている。
【0066】
なお、このような表示プロトコルは、診療科の医師等のユーザが、必要に応じて、登録、変更、削除等のメンテナンスが可能である。このメンテナンスは、表示プロトコルテーブル23を直接設定してもよいが、画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにすることが好ましい。
【0067】
図4の具体例のように、キーワード抽出部22によって「肺」(キーワードK1)および「結節」(キーワードK2)がキーワードとして抽出された場合、表示プロトコル決定部22が、これらの抽出されたキーワードに基づいて、図5Bに例示した表示プロトコルテーブル23に登録されたキーワードを検索すると、表示プロトコル「001」にヒットする。これにより、表示プロトコルDPが特定される。
【0068】
一方、画像取得部25は、まず、読影レポートRPTに貼付された読影対象画像36の生成のもとになる画像データにアクセスするためのリンク情報ILを取得する。なお、読影レポートデータベース8の説明で言及したとおり、このリンク情報ILは読影レポート中の他の情報とともに読影レポートデータベース8に関連づけられているので、診療科用ワークステーション4が読影レポートを読影レポートサーバ7から取得する際には、読影レポートRPTとともにリンク情報ILも取得するものとする。次に画像取得部25は、リンク情報ILに基づいて画像情報管理サーバ5に対して閲覧要求を行い、読影レポートRPTにおいて読影対象だった画像(以下、読影対象画像)の元データI1を取得する。なお、図4の具体例では、この画像データI1はCT画像データである。
【0069】
画像処理部26は、表示プロトコル決定部24で決定された表示プロトコルDPに基づいて、画像データI1を入力として画像処理を行い、処理済みの画像データI11、I12、I13・・・を出力する。なお、画像処理部26は、MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリング、ウィンドウ処理等の各種処理毎に別のプログラムとして実装してもよい。図4、図5A、図5Bの具体例では、画像処理部26は、画像データI1を入力として、小領域Sub1に対応する、CT画像からアキシャル断面画像を再構成し、肺野条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行った画像と、小領域Sub2に対応する、コロナル断面画像を再構成し、肺野条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行った画像と、小領域Sub3に対応する、アキシャル断面画像を再構成し、縦隔条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行った画像と、小領域Sub4に対応する、コロナル断面画像を再構成し、縦隔条件のウィンドウレベルやウィンドウ幅で処理を行った画像とを生成する。
【0070】
表示画面生成部27は、画像処理部26で生成された処理済み画像データI11、I12、I13・・・による画像を、表示プロトコル決定部24で決定された表示プロトコルDPに基づく表示レイアウトに配置した表示画面SCを生成する。これにより、図4、図5A、図5Bの具体例では、図5Aに示したようなレイアウトで、各小領域には画像処理部26で処理済みの画像が嵌め込まれた表示画面SCが生成され、診療科用ワークステーション4のディスプレイに表示される。」

(4)「【0096】
上記の各実施形態では、全ユーザに共通の表示プロトコルとして表示プロトコルテーブル23を設けていたが、ユーザ毎、あるいは、複数のユーザによるグループ(例えば、脳外科グループ)毎に表示プロトコルを定義してもよい。具体的には、ユーザ毎、グループ毎に別個の表示プロトコルテーブルを設けてもよいし、表示プロトコルテーブルにユーザIDやグループIDの項目を追加し、診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザやグループで定義された表示プロトコルのみにアクセスするようにしてもよい。」

(5)以上、(1)-(4)の記載によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

読影レポート情報を利用して医用画像の表示態様を決定する医用画像表示装置であって(【0001】)、
前記医用画像表示装置が導入された医療情報システムは、医用画像の撮影装置(モダリティ)1、画像品質チェック用ワークステーション(QA-WS)2、放射線科用ワークステーション3、診療科用ワークステーション4、画像情報管理サーバ5、画像情報データベース6、読影レポートサーバ7、読影レポートデータベース8が、ネットワーク9を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されており(【0043】)、
前記モダリティ1には、被検体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM規格で規定された付帯情報を付加して、画像情報として出力する装置が含まれ(【0044】)、
前記画像情報管理サーバ5は画像情報データベース6を備え、QA-WS2からの画像情報の登録要求を受け付けると、その画像情報をデータベース用のフォーマットに整えて画像情報データベース6に登録し、また、前記放射線科用ワークステーション3や前記診療科用ワークステーション4からの閲覧要求をネットワーク9経由で受信すると、上記画像情報データベース6に登録されている画像情報を検索し、抽出された画像情報を要求元の放射線科用ワークステーション3や診療科用ワークステーション4に送信するものであり(【0048】、【0050】、【0051】)、
前記画像情報データベース6には、被写体画像を表す画像データと付帯情報とが登録され、付帯情報には、例えば、個々の画像を識別するための画像ID、被写体を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、画像情報ごとに割り振られるユニークなID(UID)、その画像情報が生成された検査日、検査時刻、その画像情報を取得するための検査で使用されたモダリティの種類、患者氏名、年齢、性別などの患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影条件(造影剤の使用有無や、放射線量など)、1回の検査で複数の画像を取得したときのシリーズ番号あるいは採取番号などの情報が含まれ(【0049】)、
前記診療科用ワークステーション4は、診療科の医師が画像の詳細観察や読影レポートの閲覧、電子カルテの閲覧・入力等に利用するコンピュータであり、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、画像情報管理サーバ5に対する画像の閲覧要求や、画像情報管理サーバ5から受信した画像の表示、画像中の病変らしき部分の自動検出・強調表示、読影レポートサーバ7に対する読影レポートの閲覧要求、読影レポートサーバ7から受信した読影レポートの表示等の各処理が、各処理のためのソフトウェアプログラムの実行により行われ、前記医用画像表示装置は、この診療科用ワークステーション4に実装されるものであり(【0047】)、
前記医用画像表示装置は、
前記診療科用ワークステーション4における読影レポートおよび読影レポートの対象画像の連携閲覧機能として実装され、キーワードテーブル21、キーワード抽出部22、表示プロトコルテーブル23、表示プロトコル決定部24、画像取得部25、画像処理部26、表示画面生成部27から構成されており(【0058】)、
この連携閲覧機能を実現するソフトウェアプログラムは、読影レポートの閲覧中に、そのレポートの対象となっている画像を詳細に観察するための操作を行うことによって起動され(【0059】)、
このソフトウェアプログラムが起動されると、
キーワード抽出部22は、キーワードテーブル21を用いて読影レポートRPTの所見情報を解析し、表示プロトコルの決定要因となるキーワードK1,K2を抽出し(【0060】)、
ここで、前記キーワードテーブル21は、キーワードと抽出対象語とが関連づけられたものであり、キーワードおよび抽出対象語として、解剖学的構造物および病変に関する情報が登録され、キーワード抽出部22は、読影レポートRPTの所見情報中にキーワードテーブル21に登録された抽出対象語が存在するかどうか検索を行うものであり、例えば、所見中の「左肺」「上葉」「結節」が抽出対象語と一致すると、次に、キーワード抽出部22は、検索でヒットした抽出対象語をキーワードに変換し、すなわち、「左肺」「上葉」は、各語と関連づけられたキーワード「肺」(キーワードK1)に変換され、「結節」は、そのままキーワード「結節」(キーワードK2)となるものであり(【0060】)、
表示プロトコル決定部24は、キーワード抽出部22によって抽出されたキーワードK1、K2を用いて表示プロトコルテーブル23を参照し、これらのキーワードK1、K2と関連づけられた表示プロトコルを特定するものであり(【0064】)、
ここで、前記表示プロトコルテーブル23は、表示プロトコルを識別する表示プロトコルID、キーワード、画面中の小領域を識別する領域ID、各小領域の位置情報(左上端の座標、幅(W)、高さ(H))、各小領域に表示する画像のモダリティ等の条件(取得画像の項目)、画像処理の内容(画像処理1、画像処理2の項目)が関連づけられて登録されたものであり(【0065】)、
また、前記表示プロトコルは、上記の解剖学的構造物や病変毎に、それらの観察に適した画像の画像処理条件や表示条件を定義したものであって、前記画像処理条件は、MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリングといった、生成される画像の種類を表す条件や、断面の位置や傾き、被投影領域の範囲、視点の位置、視線ベクトルの向き、不透明度等の画像処理の詳細パラメータ、階調処理や強調処理等のパラメータ、ウィンドウ幅、ウィンドウレベル、画像認識処理(CAD)等の様々な条件であり、また、前記表示条件は、一画面内に表示する画像数、各表示画像のサイズ、レイアウト、表示順序等の様々な条件であり(【0021】、【0022】、【0025】)、
さらに、前記表示プロトコルは、診療科の医師等のユーザが、必要に応じて、登録、変更、削除等のメンテナンスが可能であり、このメンテナンスは、表示プロトコルテーブル23を直接設定してもよいが、画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにすることが好ましく、また、ユーザ毎に別個の表示プロトコルテーブルを設けてもよいし、表示プロトコルテーブルにユーザIDの項目を追加し、診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザで定義された表示プロトコルのみにアクセスするようにしてもよいものであり(【0066】、【0096】)、
画像取得部25は、まず、読影レポートRPTに貼付された読影対象画像36の生成のもとになる画像データにアクセスするためのリンク情報ILを取得し、次に画像取得部25は、リンク情報ILに基づいて画像情報管理サーバ5に対して閲覧要求を行い、読影レポートRPTにおいて読影対象だった画像(以下、読影対象画像)の元データI1を取得し(【0068】)、
画像処理部26は、表示プロトコル決定部24で決定された表示プロトコルDPに基づいて、画像データI1を入力として画像処理を行い、処理済みの画像データI11、I12、I13・・・を出力するものであり、画像処理部26は、MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリング、ウィンドウ処理等の各種処理毎に別のプログラムとして実装してもよく(【0069】)、
表示画面生成部27は、画像処理部26で生成された処理済み画像データI11、I12、I13・・・による画像を、表示プロトコル決定部24で決定された表示プロトコルDPに基づく表示レイアウトに配置した表示画面SCを生成し、診療科用ワークステーション4のディスプレイに表示する(【0070】)、
医用画像表示装置。

2 引用文献3について
周知技術を示す文献として提示した引用文献3(特開2005-103263号公報)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付加したものである。
(1)「【0025】
更に、画像再構成アルゴリズムはコンピュータ装置に特に再構成パラメータに関して予め設定され、特に種々に選択可能な走査プロトコルのために種々の種類の画像再構成アルゴリズムまたは種々のパラメータ化された画像再構成アルゴリズムが格納されている。それにより、これに関するどんな使用者入力もなしに又は重要な使用者入力なしに概観表示に到達することができる利点が生じる。このような自動的または準自動的な再構成は、特に等方性のボリュームデータセットの作成、特に最大限の分解能を有するボリュームデータセットの作成との関係において重要である。例えば胸部、頭部、腹部などのための走査プロトコルが存在してよい。再構成パラメータはスライス厚、鮮明度(分解能)、畳み込み核の種類などであってよい。
(2)「【0035】
結果画像の算出(ステップe))前に、操作者によって、目標パラメータとしての画像鮮明度、画像間隔、スライス厚、画像切抜きの少なくとも1つがコンピュータ装置に入力される。入力された目標パラメータはコンピュータ装置によって結果画像の算出(ステップe))の最適化に使用される。」
(3)「【0043】
しかしながら、操作者が診断所見上重要な表示範囲を概観表示において選択した後に、コンピュータ装置が結果画像の再構成のための画像再構成アルゴリズムの種類および/または再構成パラメータを決定すると有利である。この場合に、オプションとして入力された目標パラメータは結果画像のためにコンピュータ装置によって画像再構成アルゴリズムの決定時に利用されるとよい。」

第6 対比
そこで、本願発明と引用発明を対比する。

1 本願発明の「装置」と、引用発明の「医用画像表示装置」について
引用発明の「医用画像表示装置」は、「診療科用ワークステーション4」に実装されており、当該「診療科用ワークステーション4」は、診療科の医師が画像の詳細観察や読影レポートの閲覧、電子カルテの閲覧・入力等に利用するコンピュータであり、CPU、主記憶装置、・・・補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、データバス等の周知のハードウェア構成を備えており、「医用画像の撮影装置(モダリティ)1」により撮影された画像を、「表示プロトコル」に基づいて各種の画像処理を行い、処理済みの画像を表示する装置であることから、本願発明の「電子プロセッサ」を有する「装置」に対応するものであることは明らかである。
以下、両装置について詳細に対比する。

2 本願発明の「データベース」と、引用発明の「表示プロトコルテーブル23」について
(1)本願発明でいう「再構成」の技術的な意味は、明細書の【0002】段落の「医療撮像施設にて、技師が医師の注文に従って撮像データ収集を実行し、人間が見ることができる画像を生成するよう撮像データを再構成する。」との記載、また、【0003】段落の「医療撮像施設は、所与の撮像モダリティの撮像システムを2つ以上収容していることがある。・・・これら様々な撮像システムは、異なるデフォルトパラメータ(例えば、異なるデフォルトフィルタ及びフィルタ設定)を用いて異なる特性(例えば、解像度又はダイナミックレンジなど)を有する画像を作り出すことがある。医療撮像施設は、様々な訓練レベル、経歴及び撮像経験などを有する二人、三人、四人又はそれより多くの(場合により、遥かに多くの)技師を配置していることがある。これら様々な技師は、所与の撮像再構成のために使用するパラメータの“最良”セットに関して異なる意見を有することがあり、故に、異なる技師によって、異なるタイプの“チューニング(調整)”を用いた画像が作り出され得る。」との記載によれば、いわゆる撮像モダリティにより撮像された撮像データから、医師が見るための画像を生成することである。
そうすると、引用発明の「医用画像表示装置」も、診療科の医師が「診療科用ワークステーション4」において画像の詳細観察等を行うために、「モダリティ1」により撮影された画像データを、「画像処理部26」により画像処理を行い、処理済みの画像データを生成し、ディスプレイに表示するものであるから、当該「画像処理部26」により画像処理を行い、処理済みの画像データを生成することも「再構成」であることは明らかである。
(2)引用発明の「表示プロトコルテーブル23」には、キーワードK1、K2と関連づけられた「表示プロトコル」が登録され、当該「表示プロトコル」には「MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリングといった、生成される画像の種類を表す条件や、断面の位置や傾き、被投影領域の範囲、視点の位置、視線ベクトルの向き、不透明度等の画像処理の詳細パラメータ、階調処理や強調処理等のパラメータ、ウィンドウ幅、ウィンドウレベル、画像認識処理(CAD)等」の「画像処理条件」が定義されており、例えば「階調処理や強調処理等のパラメータ」は、生成される画像データの品質に関連したパラメータであることは明らかであるし、また、一般にパラメータとしては複数のパラメータを有し、各パラメータは値として設定されることも自明である。
また、当該「表示プロトコル」は、「画像処理部26は、表示プロトコル決定部24で決定された表示プロトコルDPに基づいて、画像データI1を入力として画像処理を行い、処理済みの画像データI11、I12、I13・・・を出力するものであり、画像処理部26は、MPR、MIP、MinIP、ボリュームレンダリング、ウィンドウ処理等の各種処理毎に別のプログラムとして実装してもよく」との事項によれば、「画像処理部26」における各種画像処理を定義するもの、すなわち画像の再構成を定義するものであり、また、ここでの各種画像処理は、画像を処理するため(再構成するため)のアルゴリズムをプログラムとして実現したものであるから、それぞれの画像処理プログラムは画像再構成アルゴリズムであるといえる。
そうすると、引用発明の「表示プロトコル」の一つである「階調処理や強調処理等のパラメータ」は、本願発明の「画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値」に相当するものである。
(3)引用発明の「ユーザ毎に別個の表示プロトコルテーブルを設けてもよいし、表示プロトコルテーブルにユーザIDの項目を追加し、診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザで定義された表示プロトコルのみにアクセスする」との事項によれば、表示プロトコルテーブルには、ユーザである医師毎の「表示プロトコル」が登録され、診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザで定義された表示プロトコルのみにアクセスするものである。また、ユーザである医師は「診療科用医用画像ワークステーション4」において再構成された画像を閲覧する者であって画像受領者である。
そして、上記(2)で記載したように「表示プロトコル」の一つである「階調処理や強調処理等のパラメータ」は、本願発明の「画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値」に相当するものである。
そうすると、引用発明のユーザである医師毎の「表示プロトコル」は、本願発明の「画像受領者再構成プロファイル」に対応するものである。
なお、引用発明の「表示プロトコル」が「画像構成アルゴリズム」を有するかは不明である。
(4)上記(3)で記載したように、引用発明はユーザである医師毎に「表示プロトコル」を登録するものであるから、「表示プロトコルテーブル23」には複数の「表示プロトコル」が登録されており、また、「診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザで定義された表示プロトコルのみにアクセスする」ことから、引用発明の「表示プロトコルテーブル23」もデータベースであるといえる。
(5)以上の(1)-(4)によれば、本願発明と引用発明は、
「複数の画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベースであり、各々の画像受領者再構成プロファイルは、該画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値を有する、データベース」を備える点で共通し、
また、前記「画像受領者再構成プロファイル」について、本願発明では「画像再構成アルゴリズム」を有しているのに対し、引用発明は「画像再構成アルゴリズム」を有しているか不明である点で相違する。

3 本願発明の「再構成画像」の生成処理と、引用発明の「表示プロトコル決定部24」、「画像取得部25」、「画像処理部26」について
(1)上記2(3)で記載したように、引用発明は「表示プロトコル決定部24」において、「表示プロトコルテーブルにユーザIDの項目を追加し、診療科用医用画像ワークステーション4へのログインIDと照合するなどして、そのユーザで定義された表示プロトコルのみにアクセスする」ものであり、「表示プロトコルテーブル23」からログインIDと照合することによりユーザである医師が定義した「表示プロトコル」にアクセスする、すなわち対象の「表示プロトコル」を取り出すものである。
そうすると、引用発明の「表示プロトコル決定部24」による前記処理は、本願発明の「目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと」に相当するものである。
(2)引用発明の「画像取得部25」は「画像情報管理サーバ5」から対象とする画像の元データを取得し、また、「画像処理部26」は決定された「表示プロトコル」に基づいて、画像処理を行い、処理済みの画像データを生成するものである。
そうすると、引用発明の「画像取得部25」及び「画像処理部26」による前記処理は、本願発明の「取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること」に相当するものである。
(3)引用発明の上記(1)及び(2)の処理は、上記1で記載したように「診療科用ワークステーション4」であるコンピュータのCPU、つまり電子プロセッサにより処理されることは明らかである。
(4)以上の(1)-(3)によれば、本願発明と引用発明は、後記する点で相違するものの、
「医用撮像データから、再構成画像を、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び
取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること、
を含む処理によって生成するように構成された電子プロセッサと、を有し」
の点で共通する。

4 本願発明の「プロファイル更新処理」と、引用発明の「表示プロトコル」のメンテナンスについて
引用発明では、「前記表示プロトコルは、診療科の医師等のユーザが、必要に応じて、登録、変更、削除等のメンテナンスが可能であり、このメンテナンスは、表示プロトコルテーブル23を直接設定してもよいが、画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにすること」が記載されており、診療科の医師が必要に応じて「表示プロトコル」の登録、変更、削除等のメンテナンスを可能とすること、すなわち診療科の医師により当該医師毎に登録されている「表示プロトコル」を更新する処理を実行するものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「前記電子プロセッサは更に、
前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、を含むプロファイル更新処理を実行するように構成される」
点で共通し、
また、前記「プロファイルの更新処理」について、本願発明では「前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び前記収集されたフィードバックに基づいて」行われるのに対し、引用発明では「画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにする」ものである点で相違する。

5 以上の1-4に記載したとおり、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
複数の画像受領者再構成プロファイルを格納するデータベースであり、各々の画像受領者再構成プロファイルは、該画像再構成アルゴリズムの画像品質に関連する複数の画像再構成パラメータ値を有する、データベースと、
医用撮像データから、再構成画像を、
目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び
取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成すること、
を含む処理によって生成するように構成された電子プロセッサと、
を有し、
前記電子プロセッサは更に、
前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、
を含むプロファイル更新処理を実行するように構成される、
装置。

<相違点1>
「画像受領者再構成プロファイル」について、本願発明では「画像再構成アルゴリズム」を有しているのに対し、引用発明は「画像再構成アルゴリズム」を有しているか不明である点。

<相違点2>
「プロファイルの更新処理」について、本願発明では「前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び前記収集されたフィードバックに基づいて」行われるのに対し、引用発明では「画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにする」ものである点。

第7 判断
以下、相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明の「表示プロトコル」の一つである「階調処理や強調処理等のパラメータ」について、そもそもパラメータ値だけが設定されている状態では、どの画像処理に対するパラメータであるのか不明であるし、また、画像品質に影響する画像処理(再構成アルゴリズム)には、階調処理や強調処理以外にも多種存在し、どの画像処理を選択するか、また、選択した画像処理による効果をどの程度とするかのパラメータ値をセットで指定することは、前記引用文献3に記載されている如く、単なる周知技術にすぎない。
したがって、引用発明の「表示プロトコル」を、使用する画像処理(再構成アルゴリズム)と、使用する画像処理(再構成アルゴリズム)のパラメータ値をセットにして定義することは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
X線CT装置などのいわゆるモダリティにより撮影された医用画像を表示する医用画像表示装置において、表示された医用画像の状態(表示条件)を変更したい場合に、医師が画像処理のパラメータの設定を変更することにより、処理後の医用画像を表示し、その状態でよい場合に当該設定を保存する技術は、例えば特開平8-238223号公報に記載されているように周知の技術である。
そして、引用発明の「前記表示プロトコルは、診療科の医師等のユーザが、必要に応じて、登録、変更、削除等のメンテナンスが可能であり、このメンテナンスは、表示プロトコルテーブル23を直接設定してもよいが、画面の分割数、配置、各小領域に嵌め込む画像の属性や画像処理条件等を対話的に入力、選択するGUIから設定できるようにすること」において、診療科の医師等のユーザが画像処理条件を変更しようとするのは、上記周知技術でも示したように、表示された画像を見て、目的とする画像になっていないと判断したからであると考えるのが相当であり、また、目的とする画像とするために診療科の医師等のユーザが入力するパラメータの変更値は、表示された画像を見た結果としての診療科の医師等のユーザからのフィードバックであるし、さらに複数のパラメータが入力され、そして入力された複数のパラメータに基づいて設定変更することは、言い換えればフィードバックを収集し、前記収集されたフィードバックに基づいて表示プロトコルを更新するものといえる。
したがって、相違点2に係る構成は、単なる表現の相違程度のものであり、実質的に相違するものではないから、引用発明における「表示プロトコル」の更新処理を、診療科の医師等のユーザから、画像処理された画像についてのフィードバックを収集すること、及び前記収集されたフィードバックに基づいて、前記診療科の医師等のユーザに関する表示プロトコルを更新すること、とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

3 効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 請求人の主張について
請求人は、平成29年12月19日付けの審判請求書において、「しかしながら、引用文献1は、本願発明が有する上述の技術的特徴、とりわけ「前記目的の画像受領者から、前記再構成画像についてのフィードバックを収集すること、及び前記収集されたフィードバックに基づいて、前記目的の画像受領者に関する前記画像受領者再構成プロファイルを更新すること、を含むプロファイル更新処理を実行する」に相当する構成を何ら開示しておりません。引用文献1(例えば、段落[0066])は、診療科の医師などが、「表示プロトコル」それ自体を、直接的にメンテナンスすることしか記載しておらず、再構成画像についてのフィードバックを収集して、該フィードバックに基づいてその「表示プロトコル」をメンテナンスするといったことを記載も示唆もしておりません。」と主張する。
しかしながら、本願発明では、「前記再構成画像についてのフィードバック」でいう「フィードバック」が、具体的にどのような情報であるのかは特定していないし、また、「前記再構成画像」についても「医用撮像データから、再構成画像を、目的の画像受領者に関する画像受領者再構成プロファイルを前記データベースから取り出すこと、及び取り出された画像受領者再構成プロファイルの画像再構成パラメータ値を用いて前記医用撮像データを再構成して、前記再構成画像を生成する」による処理で生成された再構成画像であれば特に限定はないのであるから、上記2に記載したとおり、引用文献1の更新処理も、フィードバックに基づく更新であることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-12 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2014-546708(P2014-546708)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雅士  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 金子 幸一
宮久保 博幸
発明の名称 受領者に対して最適化された医用撮像再構成  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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