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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1351048
審判番号 不服2017-4700  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-04 
確定日 2019-04-24 
事件の表示 特願2015- 90716「通信速度およびスペクトル効率を増大させ、他の利益を可能にする共通波通信システムおよび方法ならびに側波帯軽減通信システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-173469〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年(平成19年)12月19日、米国)を国際出願日とする特願2010-539903号の一部を平成25年6月10日に新たな特許出願とした特願2013-122277号の一部をさらに平成27年4月27日に新たな特許出願としたものであって、平成28年12月1日付けで拒絶査定がされ、平成29年4月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、平成30年4月17日付けで当審より拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月24日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年4月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
送信線を渡ってチャネルを受信することができる受信機
を備え、
前記受信機がさらに、搬送波の中央ローブ及び側波帯の両方を排除するために側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路を備える
通信装置。
【請求項2】
前記搬送波の前記特性は、さらに、前記搬送波の位相を含み、前記搬送波を回復する前記回路は、前記搬送波の前記位相をシフトさせて、前記搬送波を生成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記搬送波を回復する前記回路は、さらに、前記側波帯軽減搬送波から、前記側波帯軽減信号を除去して、前記搬送波を回復する回路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記搬送波の前記特性は、前記搬送波の位相、前記搬送波の振幅および前記搬送波の周波数からなるグループから選択される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記搬送波を回復する前記回路は、さらに、変調器を含む、請求項1に記載の装置。」(以下、請求項1ないし5に記載された発明を、順に「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「理由1(実施可能要件) (略)
理由2(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



<理由1(実施可能要件)について>(略)

<理由2(サポート要件)について>
(1) 本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、共通システム方法を提供することを課題とした発明、及び、データ送信速度およびスペクトル効率を大幅に増大させるために、有効帯域幅を最小化し、側波帯を中性化する(側波帯軽減)システムおよび方法を提供することを課題とした発明が開示されていると認められる。
これに対して、請求項1に係る発明は、
「送信線を渡ってチャネルを受信することができる受信機
を備え、
前記受信機がさらに、搬送波の中央ローブ及び側波帯の両方を排除するために側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路を備える
通信装置。」
であって、発明の詳細な説明に記載された後者の発明に対応する発明であるところ、「通信装置」が「送信線を渡ってチャネルを受信することができる受信機」を備え、その「受信機」は「側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路」を備えること、並びに、その「側波帯軽減搬送波」は「搬送波の中央ローブ及び側波帯の両方を排除するために側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する」ことは記載されているが、受信機においてはどのような受信波を受信するかは制御できず、受信装置が備える「回路」が受信した側波帯軽減搬送波から搬送波をどのようにして(又はどのような構成によって)回復するかについても記載されていない。
このため、請求項1に係る発明は、データ送信速度およびスペクトル効率を大幅に増大させることができるとの作用・効果を奏し得ないものも包含しており、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものと認められる。
また、請求項2乃至5に係る発明も同様である。
このため、請求項1乃至5に係る発明は、サポート要件を満たさず、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2) 請求項2に係る発明の「前記搬送波を回復する前記回路は、前記搬送波の前記位相をシフトさせて、前記搬送波を生成する」、請求項3に係る発明の「前記搬送波を回復する前記回路は、さらに、前記側波帯軽減搬送波から、前記側波帯軽減信号を除去して、前記搬送波を回復する回路」、及び、請求項5に係る発明の「前記搬送波を回復する前記回路は、さらに、変調器を含む」ことについて、本願明細書の発明の詳細な説明には、有効帯域幅を最小化し、側波帯を中性化する(側波帯軽減)システムおよび方法に係る受信機側の構成については、段落【0033】の記載のみであり、知られている技法を使用するとの事項しか開示されておらず、請求項2、3及び5に係る発明で特定された事項は、いずれも本願明細書の発明の詳細な説明に記載された事項ではない。
また、請求項4は請求項3を引用していることから、請求項3と同様な不備を内在する。
このため、請求項2乃至5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【背景技術】
【0003】
さまざまな有線および無線通信システムがよく知られている。例えば、図1および2に示すように、2つの異なる従来の通信システムが知られている。図1に示すように、従来の有線通信システムの一例は、送信機および受信機を有し、第1の有線通信リンクを通じてデータ信号が伝達され、(このデータ信号を反転させた形態の)第2のデータ信号が第2の有線の通信リンクを通じて伝達される。図1に示すシステムでは、2つの有線通信リンクが互いに近くに位置する。受信機はこれらの2つのデータ信号を受け取り、これらの2つのデータ信号の差を求めて、これらのデータ信号からデータを抽出することができる。この従来の通信システムは差動信号システムとして知られ、差動信号システムでは、2つの信号の差だけが必要なためより低い電圧を使用することができ、より高いデータ送信速度が可能であり、全てのノイズが両方の通信リンクに影響を及ぼし、2つのデータ信号の差が決定されたときに、ノイズがフィルタ除去されるため、ノイズイミュニティ(noise immunity)が増大する。図1に示すシステムは例えばプリント基板上で使用することができ、このとき、それぞれの有線通信リンクはプリント基板上のトレースである。
【0004】
図1のシステムが銅線上でどのように機能するのかを示す一例は、隣接する2本の電線がそれぞれ信号を有し、一方の信号がもう一方の信号の反転信号である場合である。例えば、「デジタル1」が1ボルトのレベルで送信される場合には、線Aが1ボルト、線Bが0ボルト(すなわち反転)となり、「デジタル0」が送信される場合には、線Aが0ボルト、線Bが1ボルトになる。これらの電線は両方とも送信機から受信機まで延びているため、電線は、線内の電圧レベルを上昇させまたは低下させるノイズを拾い、加えて、データのようにも見えるスパイクを生じさせる可能性がある。これらの2本の電線が物理的に互いのごく近くにある場合、ノイズは両方の電線で全く同じになる。受信機端で、これらの2本の線は差動増幅器回路に接続される。差動増幅器回路は、このノイズを「減算によって除去する」。
【0005】
図2は、無線通信システムとすることができる従来の別の通信システムの一例を示す。この通信システムでは、送信機が、複数のデータ信号を発生させ、通信リンクを通じて伝達し、次いで受信機が、それぞれのデータ信号からデータを独立に抽出するが、これらのデータ信号間に、データ信号からデータを抽出するのに役立つ関係はない。図2に示すシステムは、時分割多重通信システム、符号分割多重通信システムなどの一般的な移動電話システムに対して使用することができる。
【0006】
図3は、パイロット信号を使用する無線通信システムを示し、このシステムでは、パイロット信号が搬送波およびデータ信号で変調されて、単一の出力信号が生成され、次いで、この信号が通信リンクを通じて受信機に送信される。受信機は次いで、(出力信号に埋め込まれた)パイロット信号を使用して、データ信号を復号する。パイロット信号を使用するこの従来のシステムでは、単一の信号だけが通信リンクを通じて送信される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの従来の通信システムはいずれも、(同じ通信リンクを通じて異なるチャネル上で送信される)データ信号と基準信号を使用しておらず、したがって、共通波システムおよび方法を提供することが望ましく、そのため共通波システムおよび方法を対象とする。
【0008】
さらに、有効帯域幅を最小化し、側波帯を中性化する(側波帯軽減)システムおよび方法であって、データ送信速度およびスペクトル効率を大幅に増大させることができるシステムおよび方法を提供することが望ましく、そのためこのようなシステムおよび方法も対象とする。」
「【0012】
図4は、送信機401および受信機402を有する共通波通信システム400の一実施態様を示す。通信システム400はさらに通信リンク403を含むことができ、通信リンク403は、送信機と受信機の間で信号を送信することができる媒体とすることができる。この媒体は、大気、空間、水、電線、同心ケーブル、光ファイバ(fiber optics)、プリント基板トレース、集積回路トレース、掘穿泥水(driling mud)、AC電力分配線などを含むことができる。この通信システムでは、通信リンク403の中に複数のチャネル406を置くことができる。この通信システムは、データ信号を含む少なくとも1つのデータチャネル404と、基準信号を含む少なくとも1つの基準チャネル405と、データ信号または基準信号を含むことができる別の1つまたは複数のチャネル407とを含むことができる。この少なくとも1つのデータチャネル用の通信リンクとこの少なくとも1つの基準チャネル用の通信リンクは、同じ通信リンクでもよく、または異なる通信リンクでもよい。
【0013】
この共通波システムでは、データ信号が、例えば周波数変調、振幅変調、位相変調またはこれらの組合せなどのさまざまな変調技術を使用して搬送波上に変調された情報信号を有するデータ波として知られることがある。基準信号は、データ波に対する基準波としての役目を果たす(固定の、または知られている方式で調整することができる)既知の周波数信号である共通波として知られることがある。一実施形態では、データ波と共通波が異なる周波数を有することができるが、それらの異なる周波数は互いに近い。周波数ホッピングを使用する符号分割多元接続(CDMA)移動電話システムなどの一実施形態では、データ波と共通波が、任意の1つの瞬間に異なる周波数を有するが、周波数ホッピングのため、データ波は、別のある瞬間に共通波と同じ周波数を有することができる。他の実施形態では、所定のサイクル数の間、特定の周波数で共通波信号を送信し、次いで、(共通波信号が送信される所定のサイクル数とは異なる)所定のサイクル数の間、同じ周波数または異なる周波数でデータ波信号を送信することができる。他の実施形態では、データ波信号と共通波信号とが同じ周波数を有することができ、一連の共通波信号が送信され、次いで一連のデータ波信号が送信され(または一連のデータ波信号が送信され、次いで一連の共通波信号が送信され)、共通波信号を使用して受信機を較正し、データ波信号に対して、あるノイズフィルタリングを提供することができる。
【0014】
共通波システムの一実施形態では、1つまたは複数のデータ信号404と1つまたは複数の基準信号405が通信リンク403を通じて同時に伝達され、受信機402によって受信される。
他の実施形態では、1つまたは複数のデータ信号と1つまたは複数の基準信号が通信リンクを通じて同時には伝達されない。1つまたは複数のデータ信号および1つまたは複数の基準信号が受信機402によって受信されると、データ信号から情報信号を抽出するため、データ信号はそれぞれ対応する基準信号と比較される。データ信号と対応する基準信号は、両方とも通信リンク403内のノイズの影響を同じように受け、そのため、受信機でデータ信号と基準信号とを比較することによって、ノイズの一部がフィルタ除去され、データ信号中のノイズのレベルが低減し、その結果、シャノンの法則によってよく知られているように、より良好な信号対ノイズ比、したがってより高い可能な送信速度が得られるため、この共通波システムは、向上したノイズイミュニティを提供する。
【0015】
図5は、図4に示した共通波通信システム400の一例をより詳細に示す図であり、この図には、図解目的のため無線通信リンクを通じて伝達されている単一のデータ信号チャネルおよび単一の基準信号チャネルが示されている。前述のとおり、データ信号404および基準信号405は、送信機401と受信機402の間の通信リンク403を通じて伝達される。送信機401は、情報信号502を(特定の周波数を有する)搬送波501上に変調して、データ信号を生成する変調器503を有することができる。一実施形態では位相変調器回路を使用することができる。共通波信号405が生成されるが、(図5に示す例の)共通波信号405は送信前に変調されない。データ信号および共通波信号は次いで、1つまたは複数のアンテナ505を介して、通信リンク403を通じて受信機402へ送信される。
【0016】
受信機402は、1つまたは複数のアンテナ506を使用して通信リンクからこれらの信号を受信することができ、アンテナ506によって受信されたこれらの信号は、データ信号の搬送波の周波数に同調した第1のフィルタ507および基準信号の周波数に同調した第2のフィルタ508に入力される。したがって、第1のフィルタは、データ信号を信号比較装置509の第1の入力に出力することを可能にし、(他の信号をフィルタ除去し)、第2のフィルタは、基準信号を信号比較装置509の第2の入力に出力することを可能にする(他の信号をフィルタ除去する)。一実施形態では、この信号比較装置を、第1の入力の信号と第2の入力の信号とを比較する差動増幅器とすることができる。したがって、信号比較装置509は、データ信号と基準信号の差である信号を出力し、この差は、通信リンク403に導入されたノイズを除去する。送信機401に入力された情報信号502に対応する情報信号511を生成するため、信号比較装置の出力は、(図5の例の位相復調器などの)復調器510に供給され、復調器510はさらに、(受信機でローカルに生成した、または送信された信号から抽出した)搬送波の複製を受け取る。差動増幅器を使用する一実施形態では、次いで差動増幅器の出力を解析して、(復調された)データを識別することができる。この信号は、復調される通常の無線信号とはかなり異なるが、この信号を、標準回路またはデジタル信号プロセッサ(DSP)を使用するよく知られた技法で解析することができる。
【0017】
図6は、図4に示した共通波通信システムの実施態様の一例を示す。この実施態様では、送信機401は、さらに、910.546MHzの搬送波などの搬送波を発生させる例えば電圧制御器発振器などの搬送波発生器601と、925.000MHzの基準波などの基準波を発生させる例えば電圧制御器発振器などの基準波発生器602とを備えることができる。この実施態様では、変調器503を、搬送波の位相を情報信号502に基づいてシフトさせる移相器回路とすることができる。この実施態様では、これらのデータ信号および基準波が、無線周波数増幅器などの信号増幅器603に入力され、信号増幅器603は、これらの両方の信号の強度を押し上げ、これらの信号はその後、1つまたは複数のアンテナ505によって放射される。
【0018】
この実施態様の受信機402は、さらに、低ノイズ増幅器などの増幅器604を含むことができ、増幅器604は、受信信号(データ信号と基準信号の両方)の信号強度を押し上げ、それらの信号は次いでフィルタ507、508に供給される。この実施態様では、復調器510を、(信号比較装置509から出力された)着信情報信号と、「1」または「0」の予想信号とを比較し、回復された情報信号を出力する(しきい値回路などの)回路とすることができる。図7は、一実施形態の「1」および「0」の予想信号を示し、「1」は、データ波とは+90度位相がずれて始まり、「0」は、データ波とは-90度位相がずれて始まる。
【0019】
図8は、上記図4?6に示した送信機および受信機によって実行することができる共通波通信方法800の一例を示す。送信機において、システムは、データ信号と基準信号の間の関係を選択する(801)。この関係を、いくつかの方法で受信機に伝達することができる(例えばこの関係は予め構成しておいてもよく、またはそれぞれの通信セッションの間にセットしてもよい)。この関係は、特定の時点における振幅、周波数、位相および/または極性の特定の差とすることができる。一実施形態では、システムが、(送信機と受信機の両方に)デフォルト設定をセットしておくことができ、次いで必要に応じてその関係を、互いに通信することによって調整することができる。デフォルト関係の一例は、一般的な振幅、周波数および/または位相変調であり、通信中にこの関係を変更して、周波数ホッピングを提供し、かつ/または信号強度を調整することができる。この関係を決定した後、送信機は、情報信号(803)に基づいて、基準信号およびデータ信号を生成する(802)ことができる。送信機でこれらの信号を生成した後、1つまたは複数の通信リンク403を介して、データ信号チャネルを通じてデータ信号を伝達し(804)、基準信号チャネルを通じて基準信号を伝達する(805)。次いで受信機が送信機信号を受信し(806)、次いで関係情報を使用して、データチャネル内のデータ信号から情報信号を抽出し(807)、その結果、情報信号を出力する(808)。
【0020】
図9は、共通波通信システムのデータ信号をリセットする方法の一例を示す。基準信号とデータ信号が同時に送信されると、これら2つの信号は重ね合わされ、それにより、大部分の時間(約50%の時間)の間、かなりの弱め合う干渉が起こることがあり、このことは多くの無線システムで一般的である。この重ね合せ問題を克服するため、位相変調を使用する共通波通信システムの一実施形態では、送信機がデータ信号を定期的にリセットして、図9に示すように、データ信号を、データ信号と同位相に戻すことができる。一実施形態では、(図9に示すように)4信号周期ごとにデータ波をリセットすることができる。このデータ信号のリセットは、位相変調実施形態だけでなく、振幅変調実施形態、周波数変調実施形態および他の変調実施形態に対しても使用することができる。このデータ信号のリセットは、データ信号と基準信号が同時に送信される共通波通信システムだけでなく、データ信号と基準信号を同時に送信しないシステムに対しても使用することができる。」
「【0025】
有効帯域幅の最小化
図10および11は、通信システムの有効帯域幅を最小化する方法の一例を示す。図10?11に示す方法は、従来の通信システムおよび共通波通信システムで使用することができる。
【0026】
例示的な一通信システムでは、搬送周波数が1GHzであり、デジタルデータがAM、FMまたはPMによって10MHzで変調される場合、送信される周波数帯は990MHzから1.010GHzであり、この周波数帯は、送信チャネルとして使用する必要がある場合に、995MHzとの干渉の問題を引き起こす。結果として生じる帯域幅の増大は、所与の周波数帯で送信することができる総データ量を限定する多くの因子の1つである。995MHzでのこの干渉を克服し、搬送波の帯域幅を最小化するため、通信システムは、図10に示すように所定の時刻に180度移相される搬送波を使用することができる。分かりやすくするため、搬送波上に変調された情報信号は示されていない。図11に示すように、この移相は、搬送周波数および近くのチャネル、例えば995MHzにおける平均電力をゼロにする。そのため、995MHzを、共通波システムまたは従来の技術を使用する通信チャネルとして使用することができ、このチャネルは1GHzチャネルの影響を受けない。
【0027】
一実施形態では、10サイクルごとに送信信号を移相する場合、受信機も「移相」して、着信信号を取り扱うことができるようにしなければならない。隣接チャネルもこの移相法を使用する場合には、それぞれのチャネルの移相のタイミングを他のチャネルからずらすことができる。これによって、より多くのチャネルを、チャネル間の干渉なしで同じ周波数帯に詰め込むことができる。
【0028】
送信機または受信機用の伝統的なフィルタでは、図10に示すように信号の位相を交番させると、回路が効果的に共振することが妨げられることがあり、したがって回路が弱い信号を出力する。
図12は、交番位相を有する信号に対して共振を効果的に達成する交番位相信号フィルタ1200の一実施形態を示す。スイッチ1201は、スイッチ制御入力に基づいて位置を交互に変える。この位置スイッチのタイミングは、従来の帯域フィルタまたは共振回路1202が常に、それに対する同じ位相入力を有するようなタイミングである。これによって、回路は共振を達成することができ、したがって所望の周波数および位相での強い信号を通過させることができる。さらに、これにより、望ましくない周波数および位相に対する弱め合う干渉が生じる。この同じタイプの交番位相信号フィルタ1200は、図9に示すようにリセットされた信号とともに使用するとよく機能する。
【0029】
図10に示した実施形態では、搬送波が180度移相されるが、移相の他の組合せも同様の結果を達成することができ、このシステムが、図10に示した180度の移相に限定されないことを理解することができる。例えば、0度の10の搬送波、120度の10の搬送波および-120度の10の搬送波は、0度の30の波よりも、搬送周波数における平均電力が小さい。さらに、異なる位相、振幅および周波数の組合せが同様の効果を有することができ、それらも本開示の範囲に含まれる。
【0030】
側波帯の中性化
図13および14は、通信システムの側波帯を中性化する方法の一例を示す。図13?14に示す方法は、従来の通信システムおよび共通波通信システムとともに使用することができる。無線信号(振幅、周波数および/または位相)を変化させると、帯域幅が増大し、側波帯が生成される。側波帯は、多くのプロトコルの無線通信、例えば「単側波帯」無線通信において不可欠の部分である。しかし、多くの状況で、側波帯は、信号変調の望ましくない副生物である。
【0031】
図11に示すように、搬送信号の移相によって、かなりの側波帯が生成されることが分かる。これらの側波帯は、放射され、その周波数の別のチャネルと干渉するため望ましくない。側波帯を排除する伝統的な方法は、低域、高域または帯域フィルタの使用である。これらの伝統的なフィルタは、高速信号を劣化させるため、高速データ信号が含まれる状況においては望ましくない。共通波システムとともに使用することができる側波帯中性化法では、搬送信号とともに「中性化信号」を送信線に注入することができる。図13に示すように、950MHzの側波帯を中性化するため、特定の所定の振幅および位相を有する950MHz信号を使用して、その側波帯を中性化し、図13は、950MHzの側波帯が中性化された結果として得られた信号を示す。例えば、注入する信号は、中性化する側波帯と同じ振幅を有し、中性化される側波帯から180度移相されている必要がある。図13に示す例では、搬送波が1ボルトの振幅を有し(図10参照)、注入する950MHz信号が0.6525ボルトの振幅を有する。注入する信号は、搬送波から位相が90度ずれて始まる。さらに、追加の信号を同様に注入して、他の側波帯を排除することもできる。
【0032】
側波帯の振幅、周波数および位相が予め分かっている限りにおいて、送信線への信号の注入を使用して、全ての側波帯源から生成される側波帯を排除することができる。これらの値は、研究室環境での以前の送信から決定し、現場設定で使用することができる。データ変調によって側波帯が生成される場合であっても、適当な側波帯中性化信号を送信線に注入することができる。その中性化信号の詳細はデータの値によって異なる。
【0033】
送信システムの受信機端で、知られている技法を使用して原搬送波が回復される。中性化信号を注入した場合には、原搬送波を回復するために、それらの注入中性化信号が除去される。
【0034】
本発明に係わる「送信線」が、1つの位置から別の位置へ信号エネルギーを伝達するのに使用される任意の経路と定義される。送信線には、限定はされないが、送信機内の導線、ウェーブガイド、送信機を1つまたは複数のアンテナ、増幅器または無線通信リンクを含む通信リンクに接続する線などが含まれる。
【0035】
次に、上記の側波帯中性化(側波帯軽減)の詳細な例を説明する。この説明では、側波帯の中性化を例示するためにシミュレーションを使用する。以下に示す例は、側波帯の中性化が、無線通信のスペクトル効率をどのように実質的に増大させることができるのかを示す。この例では、よく知られた信号を出発点として示し、次いで、比較のため、説明した側波帯軽減を利用する信号を示す。この例の目的上、1GHzの搬送波を使用するが、開示する側波帯軽減は、任意の周波数とともに使用することができ、したがって特定の周波数に限定されない。この例示的な周波数を使用するのは、携帯電話(800、900、1800、2100MHz)、WiFi(2.4GHz)、WiMax(2.3、2.5および3.5GHz)などの一般的な周波数帯に近いためである。この例の目的上、使用するシミュレーションソフトウェアは、Linear Technology Corporation社製のLTspice/SwitcherCAD III Version 2.24iである。
【0036】
この例に対する1GHzの搬送波を生成することができる回路を図15に示す。電圧源は、振幅1.414V、周波数1GHzの正弦波を発生させる。時間領域においてこの回路をシミュレートすると、図16に示すような電圧対時間オシロスコープ出力が得られる。この信号電圧に対してよく知られているFFT(高速フーリエ変換)シミュレーションを実行した結果を図17に示す。この例の目的上、全てのFFT演算は、そうでないと明記されていない限り、ハミング窓関数、1,048,576データ点サンプル、および5ポイント2項スムージングを使用して、1000nsの期間に対して実行される。
【0037】
米連邦通信委員会(FCC)の規制がどのように適用されるのかを示すため、「CFRタイトル47、パート15-無線周波装置、セクション15.247 902?928MHz、2400?2483.5MHzおよび5725?5850MHz帯におけるオペレーション」(CFR Title 47, Part 15-Radio Frequency Devices, §15.24.7 Operation within the bands 902-928 MHz, 2400-2483.5 MHz, and 5725-5850 MHz)を参照すると、以下のように記されている。
§15.247 902?928MHz、2400?2483.5MHzおよび5725?5850MHz帯におけるオペレーション
(a)このセクションの条項に基づくオペレーションは、以下の条項に従う周波数ホッピングおよびデジタル変調インテンショナルラジエータに限定される:
(1)周波数ホッピングシステムは、最小25kHzまたはホッピングチャネルの20dB帯域幅のいずれか大きい方によって分離されたホッピングチャネル搬送周波数を有するものとし、...。
【0038】
上に示した搬送波に対する電力は、それらの帯域および1GHzに対する最大レベルよりも低い20mWである。FFT結果に注目し、250kHz(20dB)帯域幅マスクを描いた結果を図18に示す。この図では、FFTが1000nsの間サンプリングしただけであるため、信号がマスク内にフィットしていない。
【0039】
この搬送波にデータを追加するため、図19のV2によってデータ信号を発生させ、TP_Dataに出力させる。この例に対する以下のデータを任意に選択する。
10110011 10001111 00001111 10000011 11110000 00111111 10000000 11111111
00000000 11111111 10000000 00111111 11110000 00000011 11111111 10000000
【0040】
データレートは125Mbpsであり、その周期は8nsである。この信号の最初の124nsを図20に示す。
【0041】
図19に示されたPhase_Modulator_90_degreeは、搬送波をデータ波で変調し、データビット「1」は90°移相され、データビット「0」は0°移相される。図21は、変調信号の最初の36nsを示す。図22は、かなりの側波帯を有する変調信号のFFTを示す。予想されるとおり、データレートがあまりに高いため、ローブ(lobe)はマスク内にフィットしない。図22に示されているように、20dB帯域幅は22MHzである。
【0042】
本明細書に開示する側波帯軽減システムは、以下のように定義されるスペクトル効率を増大させる。
(スペクトル効率)=(データレート)/(帯域幅) (式1)
【0043】
式1を使用すると、図21に示した信号のスペクトル効率は以下のようになる。
SE-20dB=(125Mbps)/(22MHz)=5.7Mbps/MHz
【0044】
帯域フィルタを使用して(一般的な解決策)、図21の信号のスペクトル効率を向上させようとする試みは、帯域フィルタがデータをフィルタ除去してしまうため有効ではない。しかしながら、スペクトル効率は、デルタ移相を90°未満(例えば11.5°)に低減させること、振幅変調およびその他の使用を含む知られている技法を使用して向上させることができる。これらの知られている技法は機能し、頻繁に使用されているが、ハードウェアの実世界ノイズおよび感度に起因する限界を有する。例えば、デルタ移相を11.5°に低減させると、受信機が、位相ノイズ(ジッタ)の影響をより受けやすくなり、位相検出器の分解能の限界に近づく。したがって、この一般的な解決策は限界を有し、かつ/または十分な結果を提供しない。本明細書に開示する側波帯軽減技術は、これらの知られている技法以上の改善を提供し、実際、これらの知られている技法とともに使用して、側波帯を低減させ、スペクトル効率を増大させることができる。
【0045】
開示の側波帯軽減を実現するため、図22に示された中央ローブを調べることができる。図23に示すように、出力TP_CLK_250を有する250MHzクロックおよび出力TP_FN1を有する移相変調器を追加することができる。この移相変調器のため、それぞれのデータビットの移相はデータ周期の半分に対して0、残りの半分に対して移相は180である。データビットが1の場合、データビットの位相は最初の半分に対して0、次の半分に対して位相は180である。データビットが0の場合、図24に示すように、データビットの位相は最初の半分に対して180、次の半分に対して位相は0である。LTspice(この例で使用したシミューレーションソフトウェア)では、「^」(図23に示されている)が、それらの式をブーリアンの両側に変換し、次いで結果のXOR(排他的論理和)をとるオペランドである。
【0046】
側波帯軽減技術の変調により、それぞれのデータビットが、FFTに関してそれ自体を打ち消し、その結果、1GHzのローブは図25に示されているように排除されるが、図22の残りのローブは以前よりも悪くなる。図25の867MHzに注目し、位相を追加すると図26が得られる。この図では、ローブの中心が867MHzにあり、ピークが-11.7dB、位相が-24°(1GHzは-7°)である。867MHzローブを軽減するため、867MHz、振幅0.368V、位相245°の正弦波V(TP_FN2)を信号に追加する。結果はTP_FN2であり、図27および28に示されている。
【0047】
図28は、1回目の軽減の試みによって残留ローブが残っていることを示している。868MHzローブを軽減するため、振幅0.200、位相250°の868.6MHzローブを追加する。これらの結果を図29に示す。これらのステップを繰り返して、-20dBマスクよりも上の全てのローブを排除し、それによって、125Mbpsデータレートを、250kHz帯域幅FCCアロケーション内にフィットさせることを可能にすることができる。式1でこの数値を使用すると、側波帯軽減システムのスペクトル効率は以下のようになる。
SE?20dB=(125Mbps)/(250kHz)=500Mbps/MHz
【0048】
この値は、既存の技術のスペクトル効率よりもかなり高い。この標準式によれば実際のスペクトル効率は無限大であるということができる。下表1に示すSBM信号によって、1GHzよりも低い全てのローブの排除が達成され、結果として生じる信号を図30に、FFTを図31に示す。
【0049】
【表1】(略)
【0050】
中性化信号の適当な特性は、送信するデータが入力される式によって、または送信するデータが使用される照合テーブルによって決定することができる。
【0051】
位相フィルタリング
データ波中の情報信号を位相変調する場合には、受信機において復調するために位相フィルタリングが有用である。位相変調は、近くのデータチャネルからのノイズおよび干渉を有する着信信号に対して特に有益である。一例では、着信信号がその信号中に所望のデータを有するが、その信号のデータ部分が、その信号の中のノイズおよび干渉によって不明瞭になっていると仮定する。位相フィルタリングを実行するため、そのデータの値を(例えば1または0と)仮定し、その仮定に等しい信号を着信信号に注入する。データ値の仮定が正しい場合、着信信号と注入した信号との間の強め合う干渉が、強め合う干渉を提供し、その仮定が正しいことを証明する。データ値の仮定が誤っている場合、弱め合う干渉が、その仮定が誤っていることを示す。着信信号および注入した信号が共振(または「同調」)回路中にある場合、正しい仮定と誤った仮定との間の出力信号の差が非常に大きくなる。これは、注入した信号およびデータ信号の着信データ部分に対する正しい仮定が、波ごとに出力信号の振幅を増大させるためである。
【0052】
図32に示す一実施形態では、着信信号を分割して1505、2つの回路に入力することができ、一方の回路1501は、そのデータが「1」であると仮定し、もう一方の回路1502は、そのデータが「0」であると仮定する。信号発生器1503および1504は、それぞれ1および0であるそれらのそれぞれの仮定に等しい信号を発生させる。シミュレートした信号に入力信号を追加するために、抵抗器1506が使用される。示された4つの全ての抵抗器が同じ値である場合、信号は全て均等に追加される。特定の信号に対して利得が必要な場合には、異なる値の抵抗器を使用することができる。これらの2つの回路からの出力を信号比較装置1507に通すことができ、この信号比較装置の出力は、どちらの仮定(「0」または「1」)が正しい仮定であるかを強く指示する信号を提供する。この出力信号は、復調される通常の無線信号とはかなり異なるが、標準回路またはデジタル信号プロセッサ(DSP)を使用するよく知られた技法によって解析することができる。
【0053】
この開示では、どうすれば特定の信号を発生させることができるかを示すために、全体を通じてハードウェア回路を示したが、これらの信号およびハードウェアの機能は、限定はされないが、デジタル信号合成、波形発生器、任意波形発生器、信号発生器、関数発生器、デジタルパターン発生器、周波数発生器、周波数合成、直接デジタル合成などを含むさまざまな手段によって統合することができることに留意されたい。この開示の目的上、これらの用語およびさまざまなハードウェア解決策は全て同義であり、これらは全て本開示の範囲に含まれる。」

第5 判断
1 請求項1について
上記によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「共通波システムおよび方法を提供すること」(【0007】)という技術課題を解決するための発明と、「有効帯域幅を最小化し、側波帯を中性化する(側波帯軽減)システムおよび方法であって、データ送信速度およびスペクトル効率を大幅に増大させることができるシステムおよび方法を提供すること」(【0008】)という技術課題を解決するための発明が記載されているといえる。
そして、請求項1に係る発明の「通信装置」が「前記受信機がさらに、搬送波の中央ローブ及び側波帯の両方を排除するために側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路を備える」こと、及び、前記「側波帯軽減信号」は、発明の詳細な説明の「中性化信号」(【0031】等)のことであり、「側波帯の中性化」は、「従来の通信システムおよび共通波通信システムとともに使用できる」(【0030】)ことからみて、請求項1に係る発明は、後者の「有効帯域幅を最小化し、側波帯を中性化する(側波帯軽減)システムおよび方法であって、データ送信速度およびスペクトル効率を大幅に増大させることができるシステムおよび方法を提供すること」を技術課題とする発明であるといえる。

前記技術課題を解決するための構成について、発明の詳細な説明には、送信機における処理として「側波帯の振幅、周波数および位相が予め分かっている限りにおいて、送信線への信号の注入を使用して、全ての側波帯源から生成される側波帯を排除することができる。」(【0032】)及び「送信システムの受信機端で、知られている技法を使用して原搬送波が回復される。中性化信号を注入した場合には、原搬送波を回復するために、それらの注入中性化信号が除去される。」(【0033】)と記載されており、この場合、送信側で原搬送波から中性化信号(側波帯軽減信号)により排除するのは側波帯のみであり、中央ローブの排除は、「所定の時刻に180度移相される搬送波を使用すること」(【0026】)、又は、「それぞれのデータビットの移相はデータ周期の半分に対して0、残りの半分に対して移相は180である」(【0045】)ことにより行われるのであって、中性化信号により排除するのではない。

これに対して、請求項1の「通信装置」は、「側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する」ものであるから、受信側の通信装置であるが、発明の詳細な説明において、受信機における処理は、送信機で側波帯軽減のため注入した中性化信号(側波帯軽減信号)を除去することが記載されているだけであるから、側波帯軽減信号により側波帯とともに中央ローブが排除された側波帯軽減搬送波を受信して、中央ローブ及び側波帯が排除される前の(原)搬送波に回復することは、発明の詳細な説明の記載に基づくものではない。

この点について、請求人が平成30年7月24日に提出した意見書では、「受信装置が備える「回路」が受信した側波帯軽減搬送波から搬送波をどのようにして(又はどのような構成によって)回復するかについても、段落0051、0052、0027、0028に記載されています。」と主張するので、以下検討する。
まず、【0051】及び【0052】の記載は、「位相フィルタリング」に関する記載であって、「データ波中の情報信号を位相変調する場合には、受信機において復調するために位相フィルタリングが有用である。」とし、「着信信号がその信号中に所望のデータを有するが、その信号のデータ部分が、その信号の中のノイズおよび干渉によって不明瞭になっていると仮定する。位相フィルタリングを実行するため、そのデータの値を(例えば1または0と)仮定し、その仮定に等しい信号を着信信号に注入する。データ値の仮定が正しい場合、着信信号と注入した信号との間の強め合う干渉が、強め合う干渉を提供し、その仮定が正しいことを証明する。データ値の仮定が誤っている場合、弱め合う干渉が、その仮定が誤っていることを示す。着信信号および注入した信号が共振(または「同調」)回路中にある場合、正しい仮定と誤った仮定との間の出力信号の差が非常に大きくなる。」ことに基づいて復調すること、つまり、送信したデータが「1」か「0」かを認識する方法について記載されているが、復調に際してキャリア再生は行っていないから、請求項1の「通信装置」が受信した側波帯軽減搬送波から搬送波を回復することは記載されていない。
次に、【0027】及び【0028】の記載は、「有効帯域幅の最小化」に関する記載であって、隣接する周波数帯域からの干渉を克服し、搬送波の帯域幅を最小化するため、通信システムは、所定の時刻に180度移相される搬送波を使用すること(【0026】)に対応し、受信側でも「移相」して着信信号を取り扱うことについて記載されているが、請求項1の「通信装置」が受信した側波帯軽減搬送波から搬送波を回復することは記載されていない。
したがって、請求人の意見書による主張は採用できない。

よって、請求項1を引用する請求項2ないし5を含めて、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 請求項2ないし5について
(1)請求項2について
発明の詳細な説明には、受信機側で「移相」して着信信号を取り扱うこと(【0027】)は示唆されているものの、「側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路」について、請求項2の「前記搬送波を回復する前記回路は、前記搬送波の前記移相をシフトさせて、前記搬送波を生成すること」は、前記意見書で記載の根拠であると主張する【0051】、【0052】、【0027】及び【0028】の記載を含め発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
よって、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(2)請求項3、4について
発明の詳細な説明には、側波帯のみが排除された側波帯軽減搬送波から注入中性化信号(側波帯軽減信号)を除去して搬送波を回復すること(【0032】、【0033】)は記載されているものの、「側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路」について、請求項3の「前記搬送波を回復する前記回路は、さらに、前記側波帯軽減搬送波から、前記側波帯軽減信号を除去して、前記搬送波を回復する回路を含む」ことは、前記意見書で記載の根拠であると主張する【0051】、【0052】、【0027】及び【0028】の記載を含め発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
よって、請求項3に係る発明及び請求項3を引用する請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

(3)請求項5について
発明の詳細な説明には、「側波帯軽減信号により中央ローブ及び側波帯が排除された特性を有する側波帯軽減搬送波を受信し、前記側波帯軽減搬送波から前記搬送波を回復する回路」について、請求項5の「さらに、変調器を含む」ことは、前記意見書で記載の根拠であると主張する【0051】、【0052】、【0027】及び【0028】の記載を含め発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない。
よって、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-20 
結審通知日 2018-11-27 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2015-90716(P2015-90716)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡 裕之  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 中野 浩昌
古河 雅輝
発明の名称 通信速度およびスペクトル効率を増大させ、他の利益を可能にする共通波通信システムおよび方法ならびに側波帯軽減通信システムおよび方法  
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所  

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