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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
管理番号 1351393
異議申立番号 異議2018-700424  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-25 
確定日 2019-03-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6238144号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6238144号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第6238144号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6238144号の請求項1に係る特許についての出願は、平成22年6月17日に出願した特願2010-138769号の一部を、平成26年4月18日に新たな特許出願とした特願2014-86399号の一部を、平成27年2月20日に新たな特許出願とした特願2015-31593号の一部を、平成28年2月26日に新たな特許出願とした特願2016-36057号の一部を平成28年3月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年11月10日にその特許権の設定登録がされ、平成29年11月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年5月25日に特許異議申立人有江純子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年8月8日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年10月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、平成30年11月6日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、その訂正の請求に対して、申立人は平成30年12月11日に意見書を提出した。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

平成30年10月12日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」といい、図面を含めて「本件明細書等」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示すものとして、当審が付した)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「長手方向に沿って凹部が形成された本体と;
複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;
前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と;
前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
に訂正する。

(2)訂正事項2

願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を
「 実施形態の照明器具は、長手方向に沿って凹部が形成された本体と;複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と;前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;を具備することを特徴とする。」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正事項1は、実質的に、以下の訂正事項(1-A)及び(1-B)であるといえることから、各訂正事項について以下検討する。

(ア)訂正事項(1-A)

訂正前の請求項1の「前記本体の凹部内に配置される係止部」を、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部」と「前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部」に訂正する。

(イ)訂正事項(1-B)

訂正前の請求項1の「前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で、前記本体に前記光源部が係合して取付けられるとともに、前記光源部が前記本体に配設された状態において、」を「前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、」と訂正する。

イ 検討

(ア)訂正事項(1-A)について(下線は当審が付した。以下同様。)

訂正事項(1-A)は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記本体の凹部内に配置される係止部」について、本件明細書の段落【0014】、段落【0016】、段落【0027】及び段落【0028】並びに図4及び図5等の記載を根拠に、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部」と「前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部」に特定するものである。
本件明細書には、係止部について、以下の記載がある。

a 「収容凹部11の側板部11cにおける長手方向の両端部には、一対の係止爪通過孔11dが形成されている。この係止爪通過孔11dには、後述する係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっている。」(段落【0014】)

b 「取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有している。」(段落【0016】)

c 「より詳しくは、図4に示すように、係止爪4aが収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、収容凹部11の外側にねじ等の固定手段(図3参照)によって取付けられるようになっている。このように構成された係止部材4には、図5に示すように、光源部2が取付けられる。つまり、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設される。」(段落【0027】)

d 「光源部2を器具本体1に対して図示矢印方向に移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接する。この状態からさらに光源部2の移動を進め、係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される(図4参照)。」(段落【0028】)

そして、上記各記載における「係止爪4a」及び「第1の側壁21bから水平方向に延出」した部分が、訂正前の請求項1に係る発明の「係止部」に相当する構成であると認められるところ、訂正事項(1-A)は、訂正前の請求項1に係る発明の「係止部」を、「係止爪4a」を「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部」とし、「第1の側壁21bから水平方向に延出」した部分を「前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部」として減縮したものであるといえる。
また、「第1の係止部」及び「第2の係止部」という記載は、本願明細書等に明記されていないものの、「第1の係止部」及び「第2の係止部」が、本願明細書等に記載された「係止爪4a」及び「第1の側壁21bから水平方向に延出」した部分にそれぞれ相当するといえるし、「係止爪4a」は「収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置」(段落【0027】)されていることから、「収容凹部11」の開口部側の両端間を結ぶ線、すなわち基準線よりも「収容凹部11」の内側に取付けられているといえる。
さらに、「係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される」(段落【0028】)の記載から、「第2の側壁21c」は、前記基準線よりも「収容凹部の内側」において「係止爪4a」と係合されるように「光源部2」に配置されるものであるといえる。
そうすると、訂正事項(1-A)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(イ)訂正事項(1-B)について

訂正事項(1-B)は、後述する取消理由1に対応して、請求項1の記載を明瞭なものとするための訂正であると認められるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項(1-B)は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴って特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、上記(1)で判断したところによれば、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)独立特許要件

本件において、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1及び2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

3 申立人の主張

平成30年12月11日に提出された意見書の3頁「(2)ア(イ)(a)1)」において、「前記本体のうち」とはどのような構成を意味するのか明らかでない旨主張しているが、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と」の記載は、「本体」において、その一部分である「凹部の内側に」「第1係止部」が「取り付けられる」構成を示していることは明確であるし、「前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;」の記載は、「本体」において、その一部分である「凹部の内側において」「第2係止部」が「第1係止部」と「係合される」構成を示していることも明確であるから、かかる主張を採用することはできない。
また、同意見書の4頁「(2)ア(イ)(a)2)」において、具体的に、どの部材が「第1係止部」、「第2係止部」に相当するのか特定できない旨主張しているが、上記「2(1)イ(ア)」においても述べたとおり、「第1の係止部」及び「第2の係止部」が、本願明細書等に記載された「係止爪4a」及び「第1の側壁21bから水平方向に延出」した部分にそれぞれ相当するといえるから、かかる主張も採用することはできない。

4 小括

以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。

第3 本件発明

上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「長手方向に沿って凹部が形成された本体と;
複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;
前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と;
前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

第4 特許異議の申立てについて

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が平成30年8月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1

本件特許は、その特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消すべきものである。

(2)取消理由2

本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

<刊行物>
引用文献1:登録実用新案第3151288号公報
上記引用文献1は、申立人が証拠として提出した甲第1号証である。

2 当審の判断

2-1 本件取消理由について

(1)取消理由1について

取消理由1は、「請求項1には、「前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で、前記本体に前記光源部が係合して取付けられるとともに、前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体の凹部内に配置される係止部」と記載されているが、「係止部」がどこにどのように設けられた構成であるか不明確である。」というものであったが、本件訂正により、「係止部」が 「前記凹部の内側に取付けられる第1係止部」及び「前記光源部に配置される第2係止部」であることが明確となり、その構成が明確になったことから、取消理由1は解消した。

(2)取消理由2について

ア 刊行物の記載事項等

(ア)引用文献1の記載事項等

引用文献1には、以下の事項等が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。

(1a)
「【請求項1】
放熱ベースと、それぞれ前記放熱ベースの幅方向における両端から上へ延伸する2つの第1係止構造とを備えるベースユニットと、
前記放熱ベースに着脱可能に設置され、基板と前記基板に電気的に接続される複数の発光素子とを有する発光ユニットと、
レンズと、それぞれ前記レンズの幅方向における両端に形成される2つの第2係止構造とを有し、前記2つの第1係止構造と前記2つの第2係止構造との嵌合により、前記発光ユニットの上方に着脱可能に設置されるレンズユニットと、を含むことを特徴とするカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール。」

(1b)
「【技術分野】
【0001】
本考案は、発光モジュールに関り、特に、ユーザのニーズに応じて放熱ベース、発光素子及びレンズを交換できるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールに関するものである。」

(1c)
「 【0008】
(実施例1)
図1?図4に示すように、本考案の実施例1によるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールは、ベースユニット1aと、発光ユニット2aと、複数のねじ素子3aと、レンズユニット4aと、2つのカバー部材5aとを含む。
【0009】
ベースユニット1aは、放熱ベース10aと、それぞれ放熱ベース10aの幅方向における両端から上へ延伸する2つの第1係止構造11aとを備え、かつ、各第1係止構造11aの外側に、凹み係止部110aを有する。また、放熱ベース10aの底部に複数の放熱フィン100aを有するが、これらの放熱フィン100aは、単に例を挙げるためのものに過ぎず、本考案は、異なる設計要求に応じて、異なる形状や配列方式、サイズまたは数量の放熱フィンを用いることができる。そのため、本考案は、ユーザの要する放熱効果に伴い異なる放熱ベースを選ぶことができる。
【0010】
また、発光ユニット2aは、基板20aと、基板20aに電気的に接続された複数の発光素子21aを備える。さらに、基板20aは、これらのねじ素子3aに対応する複数の貫通孔200aを有し、且つ、各ねじ素子3aは、それぞれ対応する貫通孔200aを通して基板20aを放熱ベース10a上に締め付けて固定する。また、発光ユニット2aの熱(これらの発光素子21aからの熱)が放熱ベース10aに伝達される効率を向上させるため、本考案は、さらに、放熱ベース10aと基板20aとの間に成形(例えば、塗布やプリントの方式)された放熱用ゲル状物A、或いは、放熱ベースと基板との間に設置(例えば、貼付方式)された放熱用テープ(図示せず)を含む。
【0011】
また、レンズユニット4aは、レンズ40aと、それぞれレンズ40aの幅方向における両端に形成された2つの第2係止構造41aとを有し、且つ、前記2つの第2係止構造41aは、前記2つの第1係止構造11aに対応する。そのため、レンズユニット4aは、前記2つの第1係止構造11aと前記2つの第2係止構造41aとの嵌合により、発光ユニット2aの上方に着脱可能に設置される。実施例1では、前記2つの第1係止構造11aは、それぞれ内向きに開口する第1スライド溝構造であり、前記2つの第2係止構造41aは、それぞれ外向きに開口する第2スライド溝構造であり、且つ、前記2つの第1スライド溝構造と前記2つの第2スライド溝構造とは、互いに摺動可能に嵌合される。
【0012】
また、2つのカバー部材5aは、それぞれ、ベースユニット1aの長手方向における両端を閉鎖し、且つ、各カバー部材5aは、カバー本体50aと、カバー本体50aから突出しかつ前記2つの第1係止構造11aの間に密接に嵌合される突出部51aとを備える。
【0013】
図3に示すように、発光素子21aからの出射光Sは、レンズ40aを透過して所定の投光角度のある投射光P1が投射される。そのため、本考案は、ユーザが所要する投光角度に応じて異なるレンズを選ぶことができる。
【0014】
図4に示すように、ベースユニット1aは、2つの凹み係止部110aにより逆さにした状態でフックユニット6a内に係止される。例えば、ユーザが天井板(壁やあらゆる物体であっても良い)に本考案によるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールを設置する場合、前記2つの凹み係止部110aをそれぞれ前記天井板に予め固定されたフックユニット6aの2つのフック構造60aに係止させることで、ベースユニット1aが逆さにした状態で2つのフック構造60aの間に係止され、そのうち、放熱ベース10aはフックユニット6aに内蔵され、レンズ40aはフックユニット6aの外部に露出される。そのため、発光素子21aからの出射光Sは、レンズ40aを透過して下へ投光する方式でユーザが必要とする照明効果(所定の投光角度のある投射光P1を投射)を発生し、且つ、レンズ40aの交換に合わせて異なる投光角度を得られる。」

(1d)
「【0016】
(実施例2)
図6?図9に示すように、本考案の実施例2によるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールは、ベースユニット1bと、発光ユニット2bと、複数のねじ素子3bと、レンズユニット4bと、2つのカバー部材5bとを含む。
【0017】
ベースユニット1bは、放熱ベース10bと、それぞれ放熱ベース10bの幅方向における両端に形成された2つの第1係止構造11bとを備える。また、放熱ベース10bの底部に複数の放熱フィン及び放熱体100bを有する。
【0018】
また、発光ユニット2bは、基板20bと、基板20bに電気的に接続された複数の発光素子21bを備える。さらに、基板20bは、これらのねじ素子3bに対応する複数の貫通孔200bを有し、且つ、各ねじ素子3bは、対応する貫通孔200bを通して基板20bを放熱ベース10b上に締め付けて固定する。また、発光ユニット2bの熱(これらの発光素子21bからの熱)が放熱ベース10bに伝達される効率を向上させるため、本考案は、さらに、放熱ベース10bと基板20bとの間に成形(例えば、塗布及びプリントの方式)放熱用ゲル状物A、或いは、放熱ベースと基板との間に設置(例えば、貼付方式)された放熱用テープ(図示せず)を含む。
【0019】
また、レンズユニット4bは、レンズ40bと、それぞれレンズ40bの幅方向における両端から下へ延伸する2つの第2係止構造41bとを有し、且つ、前記2つの第2係止構造41bの内側に、凹み係止部410bを有する。また、前記2つの第2係止構造41bは前記2つの第1係止構造11bに対応するので、レンズユニット4bは、前記2つの第1係止構造11bと前記2つの第2係止構造41bとの組み合わせにより、発光ユニット2bの上方に着脱可能に設置される。実施例2では、前記2つの第1係止構造11bは、それぞれ内向きに開口する第1スライド溝構造であり、前記2つの第2係止構造41bは、それぞれ外向きに開口する第2スライド溝構造であり、且つ、前記2つの第1スライド溝構造と前記2つの第2スライド溝構造とは、互いに摺動可能に嵌合される。
【0020】
また、2つのカバー部材5bは、それぞれ、ベースユニット1bの長手方向における両端を閉鎖し、且つ、各カバー部材5bは、カバー本体50bと、カバー本体50bから突出しかつ前記2つの第2係止構造41bの間に密接に嵌合される突出部51bとを備える。
【0021】
図8に示すように、発光素子21bからの出射光Sは、レンズ40bを透過して所定の投光角度のある投射光P3が投射される。そのため、本考案は、ユーザが所要する投光角度に応じて異なるレンズを選ぶことができる。
【0022】
図9に示すように、レンズユニット4bは、2つの凹み係止部410bにより逆さにした状態でフックユニット6bの下端に係止される。例えば、ユーザが天井板(壁やあらゆる物体であっても良い)に本考案によるカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールを設置する場合、前記2つの凹み係止部410bをそれぞれ前記天井板に予め固定されたフックユニット6bの2つのフック構造60bに係止させることで、ベースユニット1bが逆さにした状態で2つのフック構造60bの間に係止され、そのうち、放熱ベース10bはフックユニット6bに内蔵され、レンズ40bはフックユニット6bの外部に露出される。そのため、発光素子21bからの出射光Sは、レンズ40bを透過して下へ投光する方式でユーザが必要とする照明効果(所定の投光角度のある投射光P3を投射)を発生し、且つ、レンズ40bの交換に合わせて異なる投光角度を得られる。」

(1e)
引用文献1には、以下の図が記載されている。
【図1】


【図4】


【図6】


【図9】


(1f)
引用文献1の「発光素子21aからの出射光Sは、レンズ40aを透過して所定の投光角度のある投射光P1が投射される。」(摘示(1c)【0013】)、「発光素子21aからの出射光Sは、レンズ40aを透過して下へ投光する方式でユーザが必要とする照明効果(所定の投光角度のある投射光P1を投射)を発生し、且つ、レンズ40aの交換に合わせて異なる投光角度を得られる。」(摘示(1c)【0014】)の記載及び【図4】(摘示(1e))の投射光が拡がる記載並びに「発光素子21bからの出射光Sは、レンズ40bを透過して所定の投光角度のある投射光P3が投射される。」(摘示(1d)【0021】)、「発光素子21bからの出射光Sは、レンズ40bを透過して下へ投光する方式でユーザが必要とする照明効果(所定の投光角度のある投射光P3を投射)を発生し、且つ、レンズ40bの交換に合わせて異なる投光角度を得られる。」(摘示(1d)【0022】)の記載及び【図9】(摘示(1e))の投射光が拡がる記載から、「レンズ40a,40b」が、光拡散性の透光性であることが看取される。

(1g)
引用文献1の第4図及び第9図(摘示(1e))から、「発光素子21a,21b」が「フックユニット6a,6b」の下部端面から突出していることが看取される。

上記(1a)?(1g)の記載を総合すると、引用文献1には、実施例1として、以下の引用発明1が記載され、実施例2として、以下の引用発明2が記載されている。

<引用発明1>

「 放熱ベース10aと、それぞれ前記放熱ベース10aの幅方向における両端から上へ延伸する2つの第1係止構造11aとを備えるベースユニット1aと、
前記放熱ベース10aに着脱可能に設置され、基板20aと前記基板20aに電気的に接続される複数の発光素子21aとを有する発光ユニット2aと、
光拡散性の透光性のレンズ40aと、それぞれ前記レンズ40aの幅方向における両端に形成される2つの第2係止構造41aとを有し、前記2つの第1係止構造11aと前記2つの第2係止構造41aとの嵌合により、前記発光ユニット2aの上方に着脱可能に設置されるレンズユニット4aと、
を含むカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールとを備え、
ベースユニット1aは、2つの凹み係止部110aを有し、
前記2つの凹み係止部110aをそれぞれ天井板に予め固定されたフックユニット6aの2つのフック構造60aに係止させることで、ベースユニット1aが逆さにした状態で2つのフック構造60aの間に係止され、
発光素子21aがフックユニット6aの下部端面から突出している
前記カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールを天井板に設置する照明装置。」

<引用発明2>

「 放熱ベース10bと、それぞれ前記放熱ベース10bの幅方向における両端から上へ延伸する2つの第1係止構造11bとを備えるベースユニット1bと、
前記放熱ベース10bに着脱可能に設置され、基板20bと前記基板20bに電気的に接続される複数の発光素子21bとを有する発光ユニット2bと、
光拡散性の透光性のレンズ40bと、それぞれ前記レンズ40bの幅方向における両端に形成される2つの第2係止構造41bとを有し、前記2つの第1係止構造11bと前記2つの第2係止構造41bとの嵌合により、前記発光ユニット2bの上方に着脱可能に設置されるレンズユニット4bと、
を含むカスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールとを備え、
レンズユニット4bは、2つの凹み係止部410bを有し、
前記2つの凹み係止部410bをそれぞれ天井板に予め固定されたフックユニット6bの2つのフック構造60bに係止させることで、ベースユニット1bが逆さにした状態で2つのフック構造60bの間に係止され、
発光素子21bがフックユニット6bの下部端面から突出している
前記カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュールを天井板に設置する照明装置。」

イ 対比・判断

(ア)引用発明1について

A 対比

本件発明と引用発明1とを対比する。

(A)引用発明1の「フックユニット6a」は、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」を、その「2つのフック構造60a」により係止していることから、本件発明の「本体」に相当する構成であるといえるとともに、図1(摘示(1e))の記載も踏まえると、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」は「フックユニット6a」が形成する長手方向に沿った下方に開口がある空間内に設置されているといえる。
そうすると、引用発明1の「フックユニット6a」と、本件発明の「長手方向に沿って凹部が形成された本体」とを対比すると、両者は、「長手方向に沿って下方に開口がある空間が形成された本体」を限度として共通する。

(B)引用発明1の「複数の発光素子21a」が、本件発明の「複数の発光素子」に相当する。

(C)引用発明1の「複数の発光素子21a」は、「フックユニット6aの下部端面から突出して」おり、「フックユニット6aの下部端面」は、「下方に開口がある空間の開口部側の両端間を結ぶ基準線」を構成しているといえる。
そして、本件発明の「凹部」も下方に開口がある空間を形成していること、及び、上記(A)を踏まえると、引用発明1の「複数の発光素子21a」が配置されている構成と、本件発明の「前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている」構成とは、「前記複数の発光素子は前記下方に開口がある空間の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている」構成を限度として共通する。

(D)引用発明1の「光拡散性の透光性のレンズ40a」は、「複数の発光素子21a」を覆っている(図4(摘示(1e)参照)ことから、本件発明の「複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材」に相当する。

(E)引用発明1の「複数の発光素子21aとを有する発光ユニット2a」を含む「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」が、「フックユニット6a」に着脱可能であること及び上記(B)?(D)を踏まえると、引用発明1の「複数の発光素子21aとを有する発光ユニット2a」を含む「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」と、本件発明の「前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部」とは、「前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記下方に開口がある空間の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部」を限度として共通する。

(F)上記(A)のとおり、引用発明1の「フックユニット6a」は、本件発明の「本体」を構成しており、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」を、その「2つのフック構造60a」により係止している。
そうすると、引用発明1の「2つのフック構造60a」と本件発明の「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部」とを対比すると、両者は、「本体の第1係止部」を限度として共通する。

(G)引用発明1の「凹み係止部110a」は、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」に含まれており、「2つの凹み係止部110aをそれぞれ天井板に予め固定されたフックユニット6aの2つのフック構造60aに係止させる」ことで、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」の「ベースユニット1a」を「2つのフック構造60aの間に係止」している。
そうすると、上記(A)及び(E)を踏まえると、引用発明1の「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」を「フックユニット6a」が形成する長手方向に沿った下方に開口がある空間内に設置した際に、「2つのフック構造60a」に係止される「凹み係止部110a」と、本件発明の「前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部」とを対比すると、両者は、「前記光源部を前記下方に開口がある空間内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部」を限度として共通する。

(H)引用発明1の「照明装置」は、図4(摘示(1e))の記載からも理解されるとおり、「カスタマイズ可能な組み立て式発光モジュール」を「天井板に予め固定されたフックユニット6aの2つのフック構造60a」により、「天井板に設置」した装置であり、「照明」に供される「器具」といえるから、本件発明の「照明器具」に相当する。

上記(A)?(H)を総合すると、本件発明と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「 長手方向に沿って下方に開口のある空間が形成された本体と;
複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記下方に開口がある空間の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;
前記本体の第1係止部と;
前記光源部を前記下方に開口がある空間内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;
を具備する照明器具。」

<相違点>
本件発明は、「本体」が「凹部」を形成しており、「複数の発光素子」が「凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている」とともに、「第1係止部」は、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられ」ており、「第2係止部」は、「前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合」している特定がされているのに対し、引用発明1は「フックユニット6a」が「2つのフック構造60a」から構成され、「下方に開口がある空間」を形成しているが、「複数の発光素子」の配置及び「2つのフック構造60aまたは2つの凹み係止部110a」の配置についてかかる特定がされていない点。

B 判断

上記相違点について検討する。
引用発明1の「フック構造60a」(本件発明の「第1係止部」に相当)は、「フックユニット6a」(本件発明の「本体」に相当)と一体のものであって、「フックユニット6a」に取付けられるものとして構成されたものではなく、また、「フックユニット6aの下部端面」よりも「フックユニット6a」が形成する長手方向に沿った下方に開口がある空間の内側に形成されてもいないものであり、さらに、引用文献1には、「フック構造60a」の位置を変更することも記載も示唆もされていない。
また、「長手方向に沿って凹部が形成された本体」と「前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部」とを具備する照明器具において、「第1係止部」が、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられ」ている構成が周知慣用技術あるいは技術常識であるということもできないし、かかる構成を採用することが単なる設計変更ともいうことはできない。
したがって、引用発明1において、上記相違点に係る本件発明の「第1係止部」が、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられ」ている構成を採用すること、さらに、「第1係止部」と「第2係止部」が「前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側」において係合する構成を採用することも、当業者が容易に想到しうるものであるということはできない。
よって、本件発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)引用発明2について

本件発明と引用発明2とを対比・判断する。
上記(ア)の検討において、「引用発明1」を「引用発明2」、「図1」を「図6」、「図4」を「図9」、「2つのフック構造60a」を「2つのフック構造60b」、「フックユニット6a」を「フックユニット6b」、「複数の発光素子21a」を「複数の発光素子21b」、「光拡散性の透光性のレンズ40a」を「光拡散性の透光性のレンズ40b」、「2つの凹み係止部110a」を「2つの凹み係止部410b」と読み替えた対比・判断が成り立つことから、上記(ア)と同様の検討に基づき、本件発明は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

申立人は、特許異議申立書において、以下の旨主張する。

理由1 発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない。

理由2 本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないため、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない。

理由3 本件特許の請求項1に係る発明は、明確でないため、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない。

理由4 本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に示される技術常識から、当業者が容易に想到しうる発明であり、同法第29条第2項の要件を満たさない。

甲第1号証:登録実用新案第3151288号公報
甲第2号証:特開2000-133032号公報
甲第3号証:特開2001-229726号公報
甲第4号証:特開2006-79945号公報
甲第5号証:特開2009-259624号公報

(1)理由1及び2について

申立人は、理由1及び2の根拠として、特許異議申立書4頁「(4)ア(ア)及び(イ)」において、本件明細書等の請求項1及び段落【0007】の「凹部」について、どのような部材を指すのか明らかでない旨主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0012】の「器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に収容凹部11が形成されている。」の記載を考慮すれば、「収容凹部11」が、請求項1及び段落【0007】の「凹部」に相当することは明らかである。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないということはできないため、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないとはいえないし、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないということもできないため、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないということもできず、理由1及び2に係る申立人の主張を採用することはできない。
(2)理由3について

申立人は、理由3の根拠として、特許異議申立書4頁「(4)ア(ウ)1)」において、請求項1に記載された「前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線」について、「両端間」とは、長手方向の両端間なのか断面方向の両端間なのか明らかでない旨主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0038】には、「(実施例1)図19に示すように、本実施例では、発光素子22の実装位置を収容凹部11の開口部側端部より突出させるようにしたものである。すなわち、収容凹部11の開口部側端部の間を結ぶ水平線を基準線Aとした場合、この基準線Aより前面側に発光素子22が突出するように配置したものである。これにより、発光素子22から出射された光は、拡散性を有する透光性のカバー部材24を透過して拡散され、下方に放射されるとともに、側板部11cや天井面Cに照射される光の量を増加させることが可能となり、明るさ感を増すことができる。」との記載とともに、図19には断面方向の両端間を結ぶ水平線が基準線Aとして記載されている。
そうすると、「前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線」について、「両端間」とは、断面方向の両端間であることは明らかであり、上記理由3に係る申立人の主張を採用することはできない。

(3)理由4について

申立人は理由4について、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5号証に示される技術常識から、当業者が容易に想到しうる発明である旨主張しているので、上記「2 2-1(2)イ(ア)A」に記載した相違点に係る本件発明の構成が、甲第2?5号証に示される技術常識を踏まえれば、当業者が容易に想到しうるか否かについて検討する。
申立人の主張するように「係止部を本体の凹部内に配置する」ことが、甲第2号証の「保持金具17」の取付構成、甲第3号証の「軸30」の取付構成、甲第4号証の「吊持側係止具6」の取付構成及び甲第5号証の「バネ受け25」の取付構成に見られるように技術常識ということができたとしても、当該技術常識は、「長手方向に沿って凹部が形成された本体」と「前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部」とを具備する照明器具において、「第1係止部」が、「前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられ」ている構成を示すものでもないし、引用発明1または2に対し、そのような構成を採用することを示唆するものでもない。
そうすると、甲第2?5号証に示される技術常識を考慮しても、本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことから、上記理由4に係る申立人の主張を採用することはできない。

第5 むすび

以上のとおり、請求項1に係る特許については、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明器具
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、LED等の発光素子を光源として用いる照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光ランプを光源とする照明器具にあっては、通常、器具本体と反射板とをそれぞれ別個に設け、器具本体に点灯装置等の部品が配設されるようになっている。
【0003】
また、近時、LEDの高出力化、高効率化及び普及化に伴い、光源としてLEDを用いた屋内又は屋外で使用される長寿命化が期待できる照明器具が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-161914号公報
【特許文献2】特開2010-73670号公報
【特許文献3】特開2010-115949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような照明器具においては、例えば、天井面側への照射される光が不足し明るさ感が低下する虞がある。
【0006】
本発明の実施形態は、上記課題に鑑みなされたもので、例えば、天井面側や側方側に照射される光の量を増加させることが可能となり、明るさ感を向上することができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の照明器具は、長手方向に沿って凹部が形成された本体と;複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と;前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、明るさ感を向上することができる照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図2】同照明器具を背面側から見て示す斜視図である。
【図3】同照明器具を示す分解斜視図である。
【図4】図2中、X-X線に沿って示す断面図である。
【図5】同照明器具において、器具本体への光源部の取付状態を示す断面図である。
【図6】同器具本体を示す斜視図である。
【図7】同器具本体を示す側面図である。
【図8】同取付部材を示す斜視図である。
【図9】同取付部材を示す側面図である。
【図10】同カバー部材を示す斜視図である。
【図11】同カバー部材を示す側面図である。
【図12】同係止部材を示す斜視図である。
【図13】同係止部材を示す側面図である。
【図14】同照明器具において、光源部を取外して前面側から見て示す斜視図である。
【図15】同照明器具において、光源部を取外して取付ボルトを含めて前面側から見て示す斜視図である。
【図16】同照明器具を複数台直列的に設置した状態を模式的に示す説明図である。
【図17】同照明器具を複数台直列的に設置した場合の送り線の配線状態を示す断面図である。
【図18】同照明器具において、係止部材を解除する動作を示す断面図である。
【図19】本発明の第2の実施形態(実施例1)に係る照明器具を示す断面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態(実施例2)に係る照明器具を示す断面図である。
【図21】本発明の第3の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【図22】本発明の第4の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【図23】同じく、本発明の第4の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【図24】本発明の第5の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【図25】同じく、本発明の第5の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【図26】本発明の第6の実施形態に係る照明器具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について図1乃至図18を参照して説明する。図1乃至図5は、照明器具を示しており、図6及び図7は、器具本体1、図8及び図9は、取付部材21、図10及び図11は、透光性のカバー部材24、図12及び図13は、係止部材4を示している。また、図14乃至図15は、器具本体1から光源部2を取外した状態、図16及び図17は、送り線6の配線状態を示しており、図18は、係止部材4を解除する動作を示している。
なお、リード線等の配線部材関係の図示は省略し、また、各図において同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1乃至図4において、天井面へ設置される天井直付けタイプの照明器具が示されており、この照明器具は、逆富士型をなしていて、横長であって長尺状をなす器具本体1と、この器具本体1に配設された光源部2及び点灯装置3と、光源部2を器具本体1に取付けて保持する係止部材4とを備えている。
【0012】
図6及び図7の参照を加えて示すように、器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に収容凹部11が形成されている。収容凹部11は、天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された側壁11bとから構成されている。また、収容凹部11の開口部側であって幅方向の両側、すなわち、側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて収容凹部11に沿って側板部11cが形成されている。したがって、側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えている。
【0013】
この収容凹部11及び側板部11cは板材を折曲して一体的に形成されており、少なくともこれらの前面側の表面は、光の反射率が高くなるように白色の塗装が施されている。したがって、側板部11cの傾斜面における表面は、反射面をなしていて、側板部11cは、反射板として機能するようになっている。
【0014】
収容凹部11の側板部11cにおける長手方向の両端部には、一対の係止爪通過孔11dが形成されている。この係止爪通過孔11dには、後述する係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっている。また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように側板部11cには、解除孔11eが形成されている。この解除孔11eは、後述するように係止部材4の係止爪4aを解除操作するために用いられる。
【0015】
また、主として図2及び図6に示すように、器具本体1の背面側、すなわち、天板部11aの両端側には、一対の取付穴11fが形成されている。この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトBtが外面側から貫通し、器具本体1が天井面に設置されるようになっている。なお、取付穴11fの周囲には、取付穴11fを補強するために、背面側へドーム状に突出する補強部11gが形成されている。さらに、器具本体1の長手方向の両端には、略逆台形状の端板12が取付けられている。
光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とを備えている。
【0016】
図8及び図9の参照を加えて示すように、取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有している。また、第1の側壁21bにおける取付面21a側には、複数の切起し片21dが略等間隔に幅方向の外側に突出して形成されている。
取付部材21には、亜鉛めっき鋼板やアルミニウムの板材等の熱伝導が良好な材料が用いられている。
【0017】
基板23は、略長方形状に形成されており、複数、すなわち、4枚の基板23が直線状に並べられて取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が取付面21aに密着するように取付けられている。この基板23の表面側には、複数の発光素子22が実装されている。
【0018】
基板23は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂の平板からなり、表面側には銅箔で形成された配線パターンが施されている。また、適宜レジスト層が施されるようになっている。なお、基板23の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れた材料を適用するのが好ましい。
【0019】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。概略的にはセラミックスで形成された本体に配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。
【0020】
LEDチップは、青色光を発光する青色のLEDチップである。透光性樹脂には、蛍光体が混入されており、白色光を出射できるようにするために、青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。
【0021】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板23に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0022】
図10及び図11の参照を加えて示すように、カバー部材24は、アクリルやポリカーボネート等の透光性の材料から作られており、長尺状で半円筒状に形成されている。そして、カバー部材24の開放端部側には、長手方向に沿って一対の嵌合部としての嵌合溝24aが形成されている。また、カバー部材24は、フロスト処理が施されて発光素子22から出射される光を拡散する機能を有するようになっている。なお、カバー部材24に適宜拡散材を混入させて光の拡散性をもたせるようにしてもよい。
【0023】
このように構成されたカバー部材24は、複数の発光素子22が実装された基板23を覆うように取付部材21に取付けられている。具体的には、図4に示すように、カバー部材24の一対の嵌合溝24aに取付部材21の切起し片21dがスライドして嵌合し、取付けられるようになっている。
以上のように、光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成されている。
【0024】
また、点灯装置3が器具本体1の収容凹部11における天板部11aの内側に取付けられている。点灯装置3は、箱状のケース内に回路基板及びこの基板に実装された回路部品を収容して構成されており、商用交流電源ACに接続されていて、この交流電源ACを受けて直流出力を生成するものである。点灯装置3は、例えば、全波整流回路の出力端子間に平滑コンデンサを接続し、この平滑コンデンサに直流電圧変換回路及び電流検出手段を接続して構成されている。したがって、点灯装置3は、基板23を介して発光素子22に接続されており、その直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
【0025】
点灯装置3は、図4及び図14に示すように、そのケースの両側壁が収容凹部11の側壁11bに隙間なく接触するように配置されている。このため、点灯装置3は器具本体1を補強する役目を果たしている。なお、ここで、隙間なくとは、点灯装置3の側壁と収容凹部11の側壁11bとが全面的に接触している必要はなく、補強効果との関係で把握されるものであり、僅かな隙間の存在は許容されるものである。さらに、点灯装置3は、前記一方の取付穴11fの近傍に配置されている。
【0026】
また、収容凹部11における天板部11aの内側には、端子台5が取付けられている。この端子台5には、電源線や送り線、調光信号線が接続されるようになっている。
【0027】
係止部材4は、図12及び図13の参照を加えて示すように、ステンレス材料等のばね材によって略コ字状に折曲して形成されている。また、係止部材4の両端には、係止部としての係止爪4aが内側に折曲して形成されている。この係止部材4は、図2乃至図4に示すように、器具本体1の収容凹部11の両端部側に外側から重合するように一対取付けられる。より詳しくは、図4に示すように、係止爪4aが収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、収容凹部11の外側にねじ等の固定手段(図3参照)によって取付けられるようになっている。
このように構成された係止部材4には、図5に示すように、光源部2が取付けられる。つまり、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設される。
【0028】
光源部2を器具本体1に対して図示矢印方向に移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接する。この状態からさらに光源部2の移動を進め、係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される(図4参照)。
この場合、第2の側壁21cは、傾斜状に形成されているので、係止爪4aとの関係において、光源部2の取付けを円滑に行うことができる。
【0029】
この状態では、取付部材21の第2の側壁21cは、収容凹部11の側壁11bに面接触するようになっており、取付部材21と器具本体1とは、熱的に結合されるようになる。また、係止部材4は、器具本体1の収容凹部11の外側から重合するように取付けられているので、例え、ねじ等の固定手段が外れたとしても、光源部2が落下するのを防止でき、安全性を確保することができる。仮に、係止部材4を収容凹部11の内側に固定手段によって取付けた場合には、固定手段が外れると、光源部2が係止部材4とともに落下してしまう危険性が生じる。
上記のように構成された照明器具の天井面Cへの設置状態について、主として図4及び図5を参照して説明する。
【0030】
まず、設置にあたっては、図5に示すように、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトBtを外面側から器具本体1の天板部11aの取付穴11fに通し、この取付ボルトBtに天板部11aの内面側からワッシャを介してナットNtを締め付ける。これにより、天板部11aの外面側の補強部11g及び側板部11cの背面側一端部が天井面Cに密着して器具本体1は、天井面Cに設置される。この場合、図15に示すように、取付ボルトBtが通り、ナットNtによって締め付けられる取付穴11f(図示上、左側)は、点灯装置3が配置される部位の近傍に形成されているので、上述の補強効果でその締め付け力によって器具本体1が変形するのを抑制することができる。
【0031】
続いて、光源部2を器具本体1に取付ける。この場合、図4に示すように、収容凹部11には、所定の収容スペースが確保されるようになっている。このため、収容凹部11に点灯装置3や端子台5等を配置することが可能となり、また、光源部2を器具本体1に取付けることによって、点灯装置3、端子台5や配線関係部材が光源部2でカバーされ、外観上見え難くなるので、格別な部材を設けることなく外観性を良好なものとすることが可能となる。
【0032】
また、収納凹部11を有する器具本体1には、反射板として供される側板部11cが一体的に形成されているので、部品点数を少なくでき、施工作業の省力化を図ることができる。
【0033】
次に、図16に示すように、上記照明器具は、天井面Cへ複数台直列的に配置される場合がある。この場合、各照明器具を送り線6(電源線)で連続的に接続する必要がある。本実施形態の照明器具では、図15に示すように、端子台5の近傍であって収容凹部11の側壁11bには、送り線通過孔6aが形成されている。したがって、送り線6を端子台5から送り線通過孔6aを通して導出させて、図17に示すように、器具本体1の収容凹部11の外側と側板部11cとで形成される空間を通過させて次段の照明器具に接続することができる。これにより、前記空間を有効に利用してまとまりよく送り線6を配線することができる。
【0034】
次に、図18に示すように、メンテナンス等により器具本体1から光源部2を取外すため、係止部材4を解除する動作について説明する。例えば、ドライバー等の工具用い、ドライバーの先端を側板部11cに形成された解除孔11eに挿入する。次いで、係止部材4の係止爪4aをドライバーによって図示矢印方向に変形させて係止爪通過孔11dから外す。すると、係止爪4aの係合が解かれるので(他方の係止部材4の係止爪4aの係合も解除する)、光源部2を下方に引っ張ることにより光源部2を取外すことができる。このように解除孔11eが形成されているので光源部2の取外しを容易に行うことができる。
【0035】
図4に代表して示すように、照明器具の設置状態において、点灯装置3に電力が供給されると、基板23を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、拡散性を有する透光性のカバー部材24を透過して拡散され、主として下方に放射されるとともに、一部の光は、側板部11cの表面で反射され、また、天井面Cに照射される。これにより、照明の明るさ感を増すことができる。また、各発光素子22から発生する熱は、基板23裏面側から取付部材21に伝導され、さらに取付部材21の第2の側壁21cから器具本体1へ伝導されて放熱される。これによって、発光素子22の温度上昇を抑制することができる。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、収容凹部11を有する器具本体1には、側板部11cが一体的に形成されているので、部品点数を少なくでき、施工作業の省力化を図ることができる。また、収容凹部11には、所定の収容スペースが確保されるようになっているので点灯装置3を効率的に配置することが可能となり、さらに、光源部2を器具本体1に取付けることによって、点灯装置3等の部品が光源部2でカバーされ、外観性を良好なものとすることができる。
また、点灯装置3は、収容凹部11に隙間なく配置されているため、器具本体1の補強を図ることができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明器具について図19及び図20を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0038】
(実施例1)図19に示すように、本実施例では、発光素子22の実装位置を収容凹部11の開口部側端部より突出させるようにしたものである。すなわち、収容凹部11の開口部側端部の間を結ぶ水平線を基準線Aとした場合、この基準線Aより前面側に発光素子22が突出するように配置したものである。これにより、発光素子22から出射された光は、拡散性を有する透光性のカバー部材24を透過して拡散され、下方に放射されるとともに、側板部11cや天井面Cに照射される光の量を増加させることが可能となり、明るさ感を増すことができる。
【0039】
また、本実施例では、カバー部材24は、側板部11cの背面方向へ拡がる傾斜面の外形線の延長線Bより外側に突出するようになっている。したがって、発光素子22から出射された光は、拡散性を有する透光性のカバー部材24を透過して拡散され、側板部11cや天井面Cに照射される光の量を一層増加させることが可能となり、明るさ感を増すことができる。
【0040】
なお、本実施例においては、基準線Aより前面側に発光素子22が突出するように配置する構成又は延長線Bより外側にカバー部材24が突出する構成のいずれか一方を選択するようにしてもよい。
【0041】
(実施例2)図20に示すように、本実施例では、カバー部材24の内面側に山形の凸部24bを形成したものである。この凸部24bによって発光素子22から出射された光の拡散性を促進することができ、側板部11cや天井面Cに照射される光の量を増加させることが可能となる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る照明器具について図21を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0043】
本実施形態では、カバー部材24を前面側へ膨出させるように形成し、側板部11cの背面方向へ拡がる傾斜面より外側に突出する量を多くするようにしたものである。したがって、この構成により、発光素子22から出射された光は、拡散性を有する透光性のカバー部材24を透過して拡散され、特に、カバー部材24の膨出部分において拡散された光は、側板部11cや天井面Cに向かい、これらに照射されるので、照明の明るさ感を増すことが可能となる。
【0044】
次に、本発明の第4の実施形態に係る照明器具について図22及び図23を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0045】
本実施形態では、第1の実施形態とは、光源部2の取付構造が異なる形態を示している。図22に示すように、取付部材21において、一方の第2の側壁21cと対向する他方側には、収容凹部11の側壁11bに形成された孔11hを通って水平方向に延出し、先端側に引掛け部21fを有する係止壁21eが形成されている。
【0046】
このような構成によれば、図23に示すように、器具本体1に光源部2を取付ける場合、係止壁21eの引掛け部21fを孔11hに引掛けて、光源部2を吊り下げ状態にして、引掛け部21fを支点として光源部2を図示矢印方向に回動するように操作することにより、光源部2を取付けることができる。
したがって、器具本体1に光源部2を取付けるに際し、光源部2の落下を防止できるとともに、取付作業が容易となる効果が期待できる。
【0047】
次に、本発明の第5の実施形態に係る照明器具について図24及び図25を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0048】
本実施形態は、器具本体1に対し、光源部2の前面側、背面側方向への突出量を変更できるようにしたものである。これによって、遮光角を調整することができる。
【0049】
係止部材4には、前面側、背面側方向に位置の異なる2段階の係止爪4a1、4a2が設けられている。光源部2は、前面背面方向に可動でき、取付部材21が係止爪4a1、4a2によって所定位置に係合保持されるようになっている。
【0050】
図24に示す状態は、前面側の係止爪4a1に取付部材21が係合されている状態であり、遮光角は小さく設定される。この状態から光源部2を背面側へ移動して背面側の係止爪4a2に取付部材21を係合することにより遮光角を大きく設定することができる。
【0051】
したがって、本実施形態によれば、照明器具の設置環境に応じて遮光角の調整が可能となる。なお、光源部2の突出量の変更は、2段階のみならず多段的に変更できるようにしてもよく、さらには、任意に変更できるようにしてもよい。これによって、遮光角の調整範囲を広げることができる。
【0052】
次に、本発明の第6の実施形態に係る照明器具について図26を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態は、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設されるが、光源部2のカバー部材24が収容凹部11の開口部側を隙間がないように覆い配置される構成となっている。
【0054】
したがって、収容凹部11の開口部側において、カバー部材24と収容凹部11との隙間による光学的な暗部が生じるのを抑制することが可能となる。また、この場合、メンテナンス等により器具本体1から光源部2を取外すため、係止部材4を解除する際には、収容凹部11の開口部側には隙間がないので、側板部11cに形成された解除孔11eにドライバー等の工具を挿入して解除するのが不可欠的操作となる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光素子は、LEDや有機EL等の固体発光素子が適用できる。
【0056】
また、発光素子を基板に実装する場合、発光素子を表面実装方式で実装する場合や発光素子を直接基板に実装する場合がある。発光素子の実装個数は、特段限定されるものではない。
また、器具本体の側板部は、反射板としての機能を有していることが好ましいが、必ずしもこの機能を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・器具本体、2・・・光源部、3・・・点灯装置、4・・・係止部材、4a・・・係止部としての係止爪、11・・・収容凹部、11b・・・側壁、11c・・・側板部、21・・・取付部材、21a・・・取付面、21b・・・の側壁、22・・・発光素子(LED)、23・・・基板、24・・・カバー部材、24a・・・嵌合部としての嵌合溝
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って凹部が形成された本体と;
複数の発光素子と、複数の発光素子を覆う光拡散性の透光性のカバー部材とを備えており、前記本体に着脱可能であり、前記複数の発光素子は前記凹部の開口部側の両端間を結ぶ基準線よりも前面側に配置されている光源部と;
前記本体のうち、前記基準線よりも前記凹部の内側に取付けられる第1係止部と;
前記光源部を前記凹部内へ移動した状態で前記本体と前記光源部とが係合して取付けられるとともに前記光源部が前記本体に配設された状態において、前記本体のうち前記基準線よりも前記凹部の内側において前記第1係止部と係合されるように前記光源部に配置される第2係止部と;
を具備することを特徴とする照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-27 
出願番号 特願2016-61678(P2016-61678)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (F21S)
P 1 651・ 537- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 仁木 学
中川 真一
登録日 2017-11-10 
登録番号 特許第6238144号(P6238144)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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