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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
管理番号 1351412
異議申立番号 異議2018-700616  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-25 
確定日 2019-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6273851号発明「感圧性接着剤および光学部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6273851号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6273851号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6273851号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成26年1月20日〔優先権主張:平成25年1月21日(JP)日本国〕に特願2014-8043号として特許出願され、平成30年1月19日に特許権の設定登録がされ、平成30年2月7日にその特許公報が発行され、その請求項1?6に係る発明の特許に対し、平成30年7月25日に熊野剛(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
平成30年11月 8日付け 取消理由通知
同年12月20日 面接
平成31年 1月10日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 1月15日付け 訂正請求があった旨の通知

なお、特許異議申立人は、平成31年1月15日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答をしていない。

第2 訂正の適否
1.訂正請求の趣旨及び内容
平成31年1月15日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6273851号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1及び2のとおりである(なお、訂正に関連する箇所に下線を付した。)。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「平均一次粒子径が5?100nmの金属酸化物を含み、」とあるのを「平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項3に「前記分散剤が、直鎖型であり、」とあるのを「前記分散剤が、直鎖型高分子であり、」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4?6も同様に訂正する。)。

2.訂正事項1及び2の適否
(1)訂正事項1
ア.訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「金属酸化物」の種類を「酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種」のものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮をしようとするものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、訂正後の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?6についても同様に特許請求の範囲が減縮されることになるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項1は、上記「ア.」に示したように「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無
本件特許明細書の段落0030には「前記金属酸化物は、具体的には、…酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム…等が挙げられる。」との記載があり、同段落0112には、金属酸化物として、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンを用いた実施例が記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア.訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項3の「前記分散剤が、直鎖型であり、」との記載にある「直鎖型」との表記と、本件特許明細書の段落0032の「本発明において分散剤は、保存安定性をより向上させる点で前記直鎖型高分子が好ましい。」等の記載にある「直鎖型高分子」との表記が整合しないことにつき、その表記の不整合を明瞭化するためのものである。
したがって、訂正事項2は、請求項3及びその従属項である請求項4?6の記載における不明瞭な記載を釈明するためのものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ.拡張又は変更の存否
訂正事項2は、訂正前の「直鎖型」との表記を、本件特許明細書の「直鎖型高分子」との表記に整合させることにより、その特許を受けようとする発明の範囲を本来意図する範囲のものに明瞭化させるためのものであって、訂正前の「直鎖型」が本件特許明細書の段落0032に記載された「直鎖型高分子」を意図していたことは明らかであるから、訂正事項2により特許請求の範囲が実質的に拡張又は変更されるとはいえない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ.新規事項の有無(特許明細書等に記載した事項の範囲内のものか否か)
訂正事項2は、本件特許明細書の段落0032の「本発明において分散剤は、保存安定性をより向上させる点で前記直鎖型高分子が好ましい。」等の記載にある「直鎖型高分子」との表記に整合させるために、訂正前の「直鎖型」を訂正後の「直鎖型高分子」に訂正して、本来意図する範囲のものに明瞭化させるものであるから、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1?6は、その請求項1を請求項2?6が直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

3.訂正の適否のまとめ
以上総括するに、訂正事項1及び2による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は容認し得るものであるから、本件訂正により訂正された請求項1?6に係る発明(以下「本1発明」?「本6発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー、硬化剤および平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含み、
前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む感圧性接着剤。
【請求項2】さらに、分散剤を含む、請求項1記載の感圧性接着剤。
【請求項3】前記分散剤が、直鎖型高分子であり、かつ酸性、塩基性および非イオン性からなる群より選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項2記載の感圧性接着剤。
【請求項4】前記酸性分散剤が、下記一般式(1)で示される化合物(A)、および前記化合物(A)を変性してなる酸価10以上の化合物(B-1)の少なくともいずれか、
前記非イオン性分散剤が、前記化合物(A)を変性してなる酸価10未満の化合物(B-2)であることを特徴とする請求項3記載の感圧性接着剤。
一般式(1) (HOOC-)_(m)-R^(1)-(-COO-[-R^(3)-COO-]_(n)-R^(2))_(t)
(ただし、R^(1)は4価のテトラカルボン酸化合物残基、R^(2)はモノアルコール残基、R^(3)はラクトン残基、mは2または3、nは1?50の整数、tは(4-m)を表す。)
【請求項5】さらにシランカップリング剤およびシランの少なくともいずれか含む、請求項1?4いずれか1項に記載の感圧性接着剤。
【請求項6】請求項1?5いずれか1項に記載の感圧性接着剤から形成した感圧性接着剤層と、基材とを備えた光学部材。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る発明の特許に対して平成30年11月8日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

〔理由1〕本件特許の請求項1?2及び5?6に係る発明は、本件出願日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?3に記載された発明に基いて、本件出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開2004-54161号公報(甲第1号証に同じ)
刊行物2:特開2009-120726号公報(甲第2号証に同じ)
刊行物3:特開2009-24093号公報
よって、本件特許の請求項1?2及び5?6に係る発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。

〔理由2〕本件特許の請求項1?6に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記(ア)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
(ア)本件特許に係る発明の「金属酸化物」の種類が「酸化亜鉛」と「酸化ジルコニウム」と「酸化チタン」の三種類以外である場合の発明については、当該発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
よって、本件特許の請求項1?6に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1.理由1(進歩性)について
(1)引用刊行物及びその記載事項
刊行物1:特開2004-54161号公報(甲第1号証に同じ)
刊行物2:特開2009-120726号公報(甲第2号証に同じ)
刊行物3:特開2009-24093号公報

上記刊行物1には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1
「【請求項1】ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層が設けられた光学用易接着性ポリエステルフィルムであって、塗布層が高分子バインダーおよび微粒子を含有し、微粒子は平均一次粒子径5?100nm、屈折率1.70?3.00の金属酸化物である、光学用易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項2】高分子バインダーがポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性体のいずれかを含有する、請求項1記載の光学用易接着性ポリエステルフィルム。」

摘記1b:段落0002、0007及び0021
「【0002】【従来の技術】ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属板ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。…
【0007】本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、透明性、易滑性および耐傷性に優れ、種々の光学用途に用いられる層との接着力に優れながら、さらに優れた反射防止性能を有するポリエステルフィルムを提供することを目的とする。…
【0021】[ウレタン樹脂]ウレタン樹脂としては、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤等で構成される。」

摘記1c:段落0028
「【0028】[製造方法]本発明において塗布層の塗設に用いられる上記組成物は、塗布層(以下『塗膜』いうことがある)を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されることが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を添加することができる。」

摘記1d:段落0035、0040?0041及び0053?0055
「【0035】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。各種物性は下記の方法により評価した。…
【0040】(4)摩擦係数(μs)
ASTM D1894-63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、塗膜形成面とポリエチレンテレフタレートフィルム(塗膜非形成面)との静摩擦係数(μs)を測定した。但し、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。尚、フィルムの滑り性を下記の基準で評価した。
◎: 摩擦係数(μs)≦0.5 ……滑り性極めて良好
○:0.5<摩擦係数(μs)≦0.8 ……滑り性良好
×:0.8<摩擦係数(μs) ……滑り性不良
【0041】(5)接着性
・ハードコート
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜形成面に厚さ10μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm^(2)のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満 ……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満 ……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満 ……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満 ……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの ……接着力極めて不良
【0053】ウレタン:…分子量200000…ヘキサメチレンジイソシアネート52重量部を加え、…固形分40%のウレタンの水分散体を得た。
【0054】無機微粒子1:酸化チタンフィラー(平均一次粒子径:30nm、屈折率2.70、密度4.0g/cm^(3))(シーアイ化成社製 商品名酸化チタンスラリー)…界面活性剤:ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル(三洋化成社製 商品名ナロアクティーN-70)。
【0055】【表1】
┌─────┬───────┬───┬────┬───┐
│ 項目 │ │ … │実施例7│ … │
├─────┼───────┼───┼────┼───┤
│ 塗布層 │ … │ … │ … │ … │
│(重量%)│ ウレタン │ … │ 60 │ … │
│ │無機微粒子1 │ … │ 35 │ … │
│ │ … │ … │ … │ … │
│ │ ワックス │ … │ 2 │ … │
│ │界面活性剤 │ … │ 3 │ … │
│ │ … │ … │ … │ … │
└─────┴───────┴───┴────┴───┘ 」

上記刊行物2には、次の記載がある。
摘記2a:請求項1及び5
「【請求項1】屈折率が2.0以上であり、分散平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の金属酸化物粒子を、光学部材用透明粘着剤中に分散してなることを特徴とする屈折率調整光学部材用透明粘着剤。…
【請求項5】前記金属酸化物は、酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の屈折率調整光学部材用透明粘着剤。」

摘記2b:段落0020及び0022
「【0020】…金属酸化物粒子の中でも好ましいものは、フィラー粒径が小さいものが得られる酸化チタン、酸化ジルコニウムである。…
【0022】…光学部材用透明粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。
特に、アクリル系樹脂は、耐水性、耐熱性、耐光性等の信頼性に優れ、接着力、透明性が良く、さらに、屈折率を光学部材の透明基材、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の表示側のパネル(透明基板)に適合するように調整し易いことからも好ましい。」

摘記2c:段落0030
「【0030】この金属酸化物粒子を水、有機溶媒または有機樹脂モノマーの分散媒中、および粘着剤中に安定的に分散させるために、この金属酸化物粒子の表面を表面修飾剤により処理することが好ましい。
表面修飾剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤やアルコキシシラン等のシラン化合物、変性シリコーン(オイル)やシリコーンレジン等のシロキサン化合物、シラザン化合物、チタンカップリング剤の群から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。」

摘記2d:段落0043
「【0043】…この屈折率調整光学部材用透明粘着剤は、まず、上記の透明分散液と、上記の光学部材用透明粘着剤と、必要に応じて硬化剤とを混合・撹拌する。」

摘記2e:段落0047
「【0047】…この屈折率調整光学部材用透明粘着剤の屈折率を上記の範囲とするためには、金属酸化物粒子の混合比率を、金属酸化物粒子と光学部材用透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ80質量%以下、好ましくは20質量%以上かつ70質量%以下とする必要がある。」

摘記2f:段落0057
「【0057】「光学用透明粘着層」この光学用透明粘着層は、透明基材上または離型材上に、上記の屈折率調整光学部材用透明粘着剤を塗布し、乾燥または硬化させることにより、作製することができる。」

上記刊行物3には、次の記載がある。
摘記3a:請求項7及び10
「【請求項7】ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)が、30000?300000である請求項1?6いずれか記載の感圧式接着剤組成物。…
【請求項10】更にシランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項9記載の感圧式接着剤組成物。」

摘記3b:段落0006?0008
「【0006】…近年では、光学部材の接着処理おいて、光を有効利用するという観点から、光学部材と被着体との間における屈折率差に基づく界面反射の抑制が求められ、光学部材の屈折率と被着体の屈折率との中間の屈折率を有する感圧式接着剤層の使用が有利であることが知られている。ちなみに界面での屈折率差が大きいと全反射を生じる入射角が小さくなり、光の有効利用度を低下させる。
【0007】しかしながら従来のアクリル系樹脂を用いた接着剤層の屈折率は、1.46前後であるのに対して、光学部材を形成する材料の屈折率は、例えばガラスで1.52前後、メタクリル系樹脂で1.51前後、ポリカーボネート系樹脂で1.54前後、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で1.60前後であるため、両者の屈折率の差が大きく、又、例えばガラスからなる光学部材とメタクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、あるいはPET樹脂からなる光学部材とを接着する際に、前記した中間の屈折率を得ることもできない。
【0008】従って、偏光フィルムを液晶セル用のガラス部材に貼着するためのアクリル系感圧式接着剤は、偏光フィルム自体の寸法変化を抑えることや、接着剤層の屈折率をより高めることが求められる。このために、接着剤層自体を硬くしたり、接着強さを大きくしたりすることによって、比較的小さい寸法の変化、あるいは比較的短期間の寸法の変化を抑制することはできる。又、芳香環含有の単量体を使用したり、芳香族化合物や硫黄原子を含む化合物、あるいは無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である。」

摘記3c:段落0075
「【0075】本発明のポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)は、30000?300000の範囲にあることが接着性の点で好ましく、50000?200000の範囲にあることがより好ましい。Mwが30000未満であると凝集力を発現できずに、耐熱性や耐湿熱性が低下する場合がある。一方、Mwが300000を超えると、樹脂の流動性が不良となって、樹脂積層体を作製することが困難となる場合がある。」

摘記3d:段落0080及び0089
「【0080】本発明の感圧式接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、…充填剤…等を配合しても良い。…
【0089】…光学部材用フィルムやガラス等の光学用部材に使用される材料の屈折率は、先に述べたように、1.50?1.58程度のものであり、感圧式接着剤組成物を乾燥及び/又は硬化させた後の屈折率が1.45未満であると光学フィルムや光学用部材との屈折率差が大きくなる。…光学フィルムや光学用部材との屈折率差を低減するために、本発明の感圧式接着剤組成物の乾燥及び/又は硬化後の屈折率が1.49?1.60の範囲で制御できることも重要である。特に1.50?1.55の範囲で制御が可能である。」

(2)刊行物に記載された発明
ア.刊1発明
摘記1aの「塗布層が高分子バインダーおよび微粒子を含有し、微粒子は平均一次粒子径5?100nm…の金属酸化物である、…高分子バインダーが…ウレタン樹脂…を含有する、…光学用易接着性ポリエステルフィルム。」との記載、
摘記1bの「ウレタン樹脂としては、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤等で構成される。」との記載、
摘記1cの「本発明において塗布層の塗設に用いられる上記組成物は、…必要に応じて、…界面活性剤、…架橋剤等を添加することができる。」との記載、及び
摘記1dの「ウレタン:…分子量200000…ヘキサメチレンジイソシアネート52重量部を加え、…固形分40%のウレタンの水分散体を得た。…無機微粒子1:酸化チタンフィラー(平均一次粒子径:30nm…)…実施例7…塗布層(重量%)…ウレタン…60…無機微粒子1…35…界面活性剤…3」との記載からみて、刊行物1には、
『ポリオール、ポリイソシアネート、鎖長延長剤、架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)等で構成されるウレタン樹脂(分子量200000)を含有する高分子バインダー(固形分40%)60重量%、平均一次粒子径5?100nmの金属酸化物(平均一次粒子径30nmの酸化チタンフィラー)35重量%、及び界面活性剤3重量%を含有する光学用易接着性ポリエステルフィルムのための塗布層の塗設に用いられる組成物。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。

イ.刊2発明
摘記2aの「屈折率が2.0以上であり、分散平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の金属酸化物粒子を、光学部材用透明粘着剤中に分散してなることを特徴とする屈折率調整光学部材用透明粘着剤。」との記載、
摘記2bの「金属酸化物粒子の中でも好ましいものは、フィラー粒径が小さいものが得られる酸化チタン、酸化ジルコニウムである。…光学部材用透明粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。」との記載、
摘記2cの「この金属酸化物粒子を…粘着剤中に安定的に分散させるために、この金属酸化物粒子の表面を表面修飾剤により処理する…表面修飾剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤やアルコキシシラン等のシラン化合物…が好適に用いられる。」との記載、
摘記2dの「この屈折率調整光学部材用透明粘着剤は…光学部材用透明粘着剤と、…硬化剤とを混合・撹拌する。」との記載、及び
摘記2eの「金属酸化物粒子の混合比率を、金属酸化物粒子と光学部材用透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ80質量%以下…とする」との記載からみて、刊行物2には、
『分散平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の金属酸化物粒子(酸化チタン、酸化ジルコニウム)を、硬化剤を混合した光学部材用透明粘着剤(アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂)中に分散してなり、金属酸化物粒子の混合比率を、金属酸化物粒子と光学部材用透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ80質量%以下とし、金属酸化物粒子を粘着剤中に安定的に分散させるために、この金属酸化物粒子の表面を界面活性剤、シランカップリング剤やアルコキシシラン等のシラン化合物等の表面修飾剤により処理する屈折率調整光学部材用透明粘着剤。』についての発明(以下「刊2発明」という。)が記載されているといえる。

(3)刊行物1を主引用例とした理由について
ア.対比
本1発明と刊1発明とを対比する。
刊1発明の「ウレタン樹脂(分子量200000)を含有する高分子バインダー(固形分40%)60重量%」及び「平均一次粒子径5?100nmの金属酸化物(平均一次粒子径30nmの酸化チタンフィラー)35重量%」の各々は、本1発明の「ウレタン系ポリマー」及び「平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物」の各々に対応するとともに、刊1発明の配合割合は、固形分40%のウレタンの水分散体60重量部に対して酸化チタンフィラー35重量部を配合するものであって、ウレタン樹脂100重量部に対して金属酸化物146重量部の配合割合と換算されることから、本1発明の「前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む」に相当する。
また、刊1発明の「架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)」は、本件特許明細書の段落0077の「硬化剤の中でも…イソシアネート化合物…がより好ましい。」との記載からみて、本1発明の「硬化剤」に相当する。
そして、刊1発明の「光学用易接着性ポリエステルフィルムのための塗布層の塗設に用いられる組成物」は、塗布剤といえるから、本1発明の「感圧性接着剤」とは「剤」という点において共通する。

してみると、本1発明と刊1発明は、両者とも『ウレタン系ポリマー、硬化剤および平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含み、前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む剤。』である点において一致し、次の〔相違点1a〕及び〔相違点1b〕において相違する。

〔相違点1a〕剤が、本1発明は「感圧性接着剤」であるのに対して、刊1発明は「光学用易接着性ポリエステルフィルムのための塗布層の塗設に用いられる組成物」という塗布剤である点。

〔相違点1b〕ウレタン系ポリマーの「重量平均分子量」が、本1発明においては「10000?200000」の範囲に特定されているのに対して、刊1発明においては「重量平均分子量」としての分子量が不明である点。

イ.判断
上記〔相違点1a〕について検討するに、感圧性接着剤は「粘着剤」とも呼ばれるものであり、一般に「水、溶剤、熱などを使用せず、常温で短時間、わずかな圧力を加えるだけで接着」する「粘着」の性質をもつ材料(JIS Z 0109:1992「粘着テープ・粘着シート用語」参照)を意味するのに対して、刊1発明の「光学用易接着性ポリエステルフィルムのための塗布層の塗設に用いられる組成物」は、刊行物1の段落0002及び0007(摘記1b)の記載にあるように「各種部材の保護用フィルム等の素材」として広く用いられている「ポリエステルフィルム」に塗設されることにより「種々の光学用途に用いられる層」との「接着力」に優れた「易接着性」の「ポリエステルフィルム」を提供するための「塗布剤」であって、同段落0041(摘記1d)の実施例の評価方法では「易接着性ポリエステルフィルム」の「塗膜形成面」に「ハードコート層」を形成させた剥離試験において「5:剥離面積が10%未満」のものが「接着力極めて良好」と評価されていることから、種々の光学用途に用いられる層(ハードコート層)と保護用フィルム等の素材(ポリエステルフィルム)とを良好に接着するために使用される「塗布剤」にすぎないものといえる。
したがって、ハードコート層とポリエステルフィルムとを良好に接着するための塗布剤に関する刊1発明を「感圧性接着剤」の発明とする動機付けがなく、上記〔相違点1a〕に係る構成を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

次に、上記〔相違点1b〕について検討するに、刊行物3の請求項7(摘記3a)には「ポリウレタン(E)の重量平均分子量(Mw)が、30000?300000である…感圧式接着剤組成物。」についての発明が記載されているが、刊行物3に記載の発明は「感圧式接着剤組成物」に関する発明であって、刊1発明の「光学用易接着性ポリエステルフィルムのための塗布層の塗設に用いられる組成物」に関する発明と、全く異なる技術分野に属するから、刊行物3に記載された発明のポリウレタンの重量平均分子量に関する技術事項を、刊1発明に適用することに動機付けがあるとはいえない。
したがって、上記〔相違点1b〕に係る構成を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。

そして、本1発明は、その「重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー」を使用することにより、本件明細書の段落0010に記載された「重量平均分子量が高いアクリル系ポリマーに代えて、適切な重量平均分子量のウレタン系ポリマーを使用したことで、金属酸化物との相溶性が大きく向上し、感圧性接着剤の保存安定性の低下を抑制できた。さらに相溶性が悪い別種のポリマーを配合せずにウレタン系ポリマー自体で屈折率を制御ができるため、粘着テープに加工したときに、通常使用時に高透明(低ヘイズ)なだけでなく、感圧性接着剤を高温高湿雰囲気で使用したときに接着力が変化し難い特性が得られた。」という格別の効果を奏するに至ったものと認められる。

したがって、本1発明が、刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)刊行物2を主引用例とした場合の検討
ア.対比
本1発明と刊2発明とを対比する。
刊2発明の「分散平均粒子径が1nm以上かつ20nm以下の金属酸化物粒子(酸化チタン、酸化ジルコニウム)」は、本1発明の「平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物」に相当し、
刊2発明の「硬化剤」は、本1発明の「硬化剤」に相当し、
刊2発明の「光学部材用透明粘着剤(アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂)」と、本1発明の「重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー」は、両者とも「樹脂」である点で共通し、
刊2発明の「金属酸化物粒子の混合比率を、金属酸化物粒子と光学部材用透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ80質量%以下とし」は、本1発明の「前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む」に相当し、
刊2発明の「屈折率調整光学部材用透明粘着剤」は、例えば、刊行物3の段落0006の「光学部材の接着処理…感圧式接着剤層の使用が有利である」との記載にあるように、光学部材の貼り合わせに用いられる組成物は、一般に「感圧性」の「接着剤」として認識されるものであるから、本1発明の「感圧性接着剤」に相当する。
してみると、本1発明と刊2発明は、両者とも『樹脂、硬化剤および平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含み、前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む感圧性接着剤。』である点において一致し、次の〔相違点2〕において相違する。

〔相違点2〕樹脂が、本1発明においては「重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー」であるのに対して、刊2発明においては「重量平均分子量」が不明の「アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂」である点。

イ.判断
上記〔相違点2〕について検討する。
刊行物2の段落0022(摘記2b)の「光学部材用透明粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。…特に、アクリル系樹脂は、耐水性、耐熱性、耐光性等の信頼性に優れ、接着力、透明性が良く、さらに、屈折率を光学部材の透明基材、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の表示側のパネル(透明基板)に適合するように調整し易いことからも好ましい。」との記載にあるように、刊行物2の記載においては、使用する「樹脂」の種類として「ポリウレタン系樹脂」よりも「アクリル系樹脂」の方が好ましいとされていることから、刊2発明の「光学部材用透明粘着剤(アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂)」として「ポリウレタン系樹脂」を用いたものは、刊行物2に実質的に記載されているとはいえない。また、刊行物2の段落0022の記載に接した当業者にしてみれば、その「光学部材用透明粘着剤」用の「樹脂」として「アクリル系樹脂」よりも好ましくないとされる「ポリウレタン系樹脂」を採用することには阻害事由があるものと認められる。
そして、刊行物3の請求項7(摘記3a)には「感圧式接着剤組成物」に「重量平均分子量(Mw)が、30000?300000」の「ポリウレタン(E)」を用いる発明が記載されているが、刊行物3に記載された発明は、その段落0006?0008及び0089(摘記3b及び3d)の記載にあるように「感圧式接着剤組成物」を硬化させた後の「屈折率が1.45未満」であると「光学用部材」との「屈折率差が大きく」なって「光の有効利用度を低下」させるため、その「屈折率差を低減する」ことが望ましいという観点から「接着剤層の屈折率」が「1.46前後」の「アクリル系樹脂」を用いた「アクリル系感圧式接着剤」は好ましくないとされているので、アクリル系樹脂が好ましいとしている刊行物2に記載の技術に、アクリル系樹脂が好ましくないとしている刊行物3に記載の技術を組み合わせることには阻害事由があるものと認められる。
さらに、刊行物3の段落0008(摘記3b)には「無機化合物を使用したりすることである程度の屈折率向上は可能である」との記載があるところ、刊行物3には「無機化合物」を使用した場合に「屈折率」は「ある程度」しか「向上」しないと記載されているので、このような屈折率向上の効果に否定的な教示がなされている刊行物3に記載の技術を、刊2発明の「金属酸化物粒子(酸化チタン、酸化ジルコニウム)」のような無機化合物を使用して「屈折率調整」をしている「光学部材用透明粘着剤」の技術に組み合わせることには阻害事由があるものと認められる。
このため、刊行物2及び3に記載の技術をどのように組み合わせたとしても、上記〔相違点2〕に係る構成を、当業者が容易に想到し得るとは認められない。
そして、本1発明は、その「重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー」を使用することにより、本件明細書の段落0010に記載された「重量平均分子量が高いアクリル系ポリマーに代えて、適切な重量平均分子量のウレタン系ポリマーを使用したことで、金属酸化物との相溶性が大きく向上し、感圧性接着剤の保存安定性の低下を抑制できた。さらに相溶性が悪い別種のポリマーを配合せずにウレタン系ポリマー自体で屈折率を制御ができるため、粘着テープに加工したときに、通常使用時に高透明(低ヘイズ)なだけでなく、感圧性接着剤を高温高湿雰囲気で使用したときに接着力が変化し難い特性が得られた。」という格別の効果を奏するに至ったものと認められる。
したがって、本1発明が、刊行物2及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)理由1のまとめ
以上のとおり、本1発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
そして、本2発明、本5発明、及び本6発明は、本1発明を直接又は間接に引用するものであるから、同様の理由により、その進歩性を否定することはできない(なお、本3発明、及び本4発明については、進歩性に関する取消理由は通知されていない。)。
したがって、取消理由通知において示した〔理由1〕には理由がなく、本2発明、本5発明、及び本6発明に係る特許が、特許法第29条の規定に違反してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。

2.理由2(サポート要件)について
(1)本件特許の請求項1?6に係る発明の「解決しようとする課題」は、本件特許明細書の段落0008の記載を含む発明の詳細な説明の記載の全体の記載からみて『配合成分の相溶性が良好であるため保存安定性が良好であり、さらに粘着テープに加工したときに、低ヘイズであり、さらに高温高湿雰囲気で使用したときに接着力が変化し難い光学部材への適用に好適な感圧性接着剤の提供』にあるものと解される。

(2)そして、本件特許明細書の段落0112の【表2】には「

」という配合組成の金属酸化物分散体の一覧が示され、同段落0132の【表4】には、分散体1?7を用いた実施例1?8のもの、及び分散体10?12を用いた実施例9?11のものが、上記課題を解決できると認識できる範囲にあることを裏付ける試験結果が示されている。
ここで、その「実施例1」のものは『重量平均分子量15200のウレタン系ポリマー、硬化剤および平均一次粒子径が20nmの酸化亜鉛である金属酸化物を含み、前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を66.8重量部含む感圧性接着剤』に相当するところ、その試験結果からみて、金属酸化物が「酸化亜鉛」である場合については「分散剤」を併用せずとも上記課題を解決できることが裏付けられているといえる。

(3)また、分散剤を併用した実施例2?11の試験結果からみて、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンの3種類の金属酸化物については、上記課題に照らして相互に同等の有用性を示すと認識できるから、訂正後の請求項1の「酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物」については、本件特許明細書の実施例1?11の試験結果、並びに平成31年1月10日付けの意見書の第7頁第17?20行の「添付の実験成績証明書が示すとおり、本件特許発明は、金属酸化物が酸化ジルコニウム又は酸化チタンであっても、酸化亜鉛と同様に、分散剤を併用しなくてもその課題を解決することができます。」との主張及び平成30年12月26日付けの実験成績証明書をも斟酌するに、本願請求項3?4に記載される特定の「分散剤」を併用せずとも、上記課題を解決できると認識できる範囲にあるといえる。

(4)してみると、訂正後の請求項1の記載について、取消理由通知において示した〔理由2〕に理由があるとはいえず、本件特許の請求項1並びに当該請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?6の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないとはいえない。
したがって、本1発明?本6発明に係る特許が、特許法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるとはいえないから、同法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべきものであるとすることはできない。

3.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人の主張する理由1は、取消理由通知の〔理由2〕として採用しており、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由はない。
また、訂正後の本1発明?本6発明について、特許異議申立人は、指定期間内に何ら意見を述べていない。

第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1発明?本6発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、この他に本1発明?本6発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量10000?200000のウレタン系ポリマー、硬化剤および平均一次粒子径が5?100nmの、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含み、
前記ウレタン系ポリマー100重量部に対して、前記金属酸化物を1?200重量部含む感圧性接着剤。
【請求項2】
さらに、分散剤を含む、請求項1記載の感圧性接着剤。
【請求項3】
前記分散剤が、直鎖型高分子であり、かつ酸性、塩基性および非イオン性からなる群より選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項2記載の感圧性接着剤。
【請求項4】
前記酸性分散剤が、下記一般式(1)で示される化合物(A)、および前記化合物(A)を変性してなる酸価10以上の化合物(B-1)の少なくともいずれか、
前記非イオン性分散剤が、前記化合物(A)を変性してなる酸価10未満の化合物(B-2)であることを特徴とする請求項3記載の感圧性接着剤。
一般式(1) (HOOC-)_(m)-R^(1)-(-COO-[-R^(3)-COO-]_(n)-R^(2))_(t)
(ただし、R^(1)は4価のテトラカルボン酸化合物残基、R^(2)はモノアルコール残基、R^(3)はラクトン残基、mは2または3、nは1?50の整数、tは(4-m)を表す。)
【請求項5】
さらにシランカップリング剤およびシランの少なくともいずれか含む、請求項1?4いずれか1項に記載の感圧性接着剤。
【請求項6】
請求項1?5いずれか1項に記載の感圧性接着剤から形成した感圧性接着剤層と、基材とを備えた光学部材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-20 
出願番号 特願2014-8043(P2014-8043)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 木村 敏康
天野 宏樹
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6273851号(P6273851)
権利者 東洋インキSCホールディングス株式会社 トーヨーケム株式会社
発明の名称 感圧性接着剤および光学部材  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  
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