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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1351421
異議申立番号 異議2017-701202  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-19 
確定日 2019-04-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6156046号発明「半導体基板およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6156046号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6156046号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6156046号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は,平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ,平成29年7月5日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は,次のとおりである。
平成29年12月19日 :特許異議申立人 岡村英紀 による請求項
1ないし4に係る特許に対する特許異議の
申立て(以下,「特許異議申立書」という
。)
平成30年 4月 5日付け :取消理由通知書
平成30年 6月 8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提

平成30年 7月23日 :特許異議申立人 岡村英紀 による意見書
の提出
平成30年 9月28日付け :取消理由通知(決定の予告)
平成30年11月28日 :特許権者による意見書(以下,「特許権者
の意見書」という。)及び訂正請求書の提

平成30年12月 6日付け :手続補正指令書(方式)
平成31年 1月 7日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
平成31年 2月 4日 :特許異議申立人 岡村英紀 による意見書
の提出

第2 訂正の内容
平成30年11月28日付けの訂正請求書(以下,「訂正請求書」という。)による訂正(以下,「本件訂正」という。)は,以下の訂正事項1及び訂正事項2からなるものである。(下線は,訂正箇所を示すものとして当審で付与した。以下同じ。)

1 訂正事項1
特許権者は,特許請求の範囲の請求項1を,以下の事項により特定されるとおりに,訂正することを請求する(訂正事項1)。
「表面(1a)と裏面(1b)および該表面と裏面との間に位置する側面(1c)を有する支持基板(1)と、
前記支持基板の表面に形成された絶縁膜(2)と、
前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され、シリコン基板により構成され、円形状かつ円形状の一部を切り欠いた直線状部(3d)が形成された活性層(3)と、を有し、
前記活性層のうち、前記絶縁膜と反対側となる表面(3a)と前記絶縁膜側となる裏面(3b)との間に位置する部分を側面(3c)として、前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角であることを特徴とする半導体基板。」

2 訂正事項2
特許権者は,特許請求の範囲の請求項3を,以下の事項により特定されるとおりに,訂正することを請求する(訂正事項2)。
「前記側面は曲面であり、前記側面のうち前記表面との境界部における接線と前記表面との成す角度が鈍角となっており、かつ、前記活性層の表面側から裏面側に向かうほど、前記活性層の厚み方向と平行な断面において、前記側面と前記活性層の表面とが成す鈍角の角度が徐々に大きくなることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。」

なお,訂正前の請求項1?4は,請求項2?4が,訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから,本件訂正は,一群の請求項1?4について請求されている。

3 訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否について(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
(1)訂正事項1
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は,訂正前の請求項1の「該活性層の側面と表面との成す角度が鈍角であること」について,「前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角である」とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,願書に添付した明細書に,

「【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態にかかるSOI基板は、支持基板1と絶縁膜2および活性層3とを有した構成とされている。
・・・ 中 略 ・・・
【0019】
このように構成されたSOI基板では、活性層3のうち側面3cと表面3aとの成す角度が鈍角となっている。このため、図7(a)のように活性層J3の側面が第1のシリコン基板J1の表面に対して垂直になったり、図7(b)のように活性層J3の外縁部が尖ったナイフエッジ状にならない。このため、活性層3の外縁部においてチッピングが発生することを抑制することが可能となる。
【0020】
次に、このように構成された本実施形態にかかるSOI基板の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0021】
〔図2(a)に示す工程〕
シリコン基板などで構成される支持基板1を用意すると共に、デバイスが形成される活性層3を構成するために、表面20aおよび裏面20bとこれら表面20aおよび裏面20bの間に位置する側面20cを有した単結晶のシリコン基板20を用意する。
【0022】
〔図2(b)に示す工程〕
支持基板1の表面1aや裏面1bおよび側面1c上に例えばシリコン酸化膜からなる絶縁膜2を形成する。絶縁膜2については、熱酸化によって形成可能であるが、CVD法等によって形成することもできる。
【0023】
また、シリコン基板20の裏面20b側において、シリコン基板20の外周部を研削して凹ませた外周研削部20dを形成する。例えば、図中に示したように、先端部に行くほど徐々に研削面30aの外径が拡大していくようなグラインダー30を用いる。そして、シリコン基板20を図示しないステージに搭載し、シリコン基板20の中心を回転中心としてステージと共に回転させ、シリコン基板20の外周部にグラインダー30の研削面30aを当接させる。
【0024】
これにより、シリコン基板20の外周部が研削され、外周研削部20dが形成される。このように形成される外周研削部20dは、シリコン基板20の厚み方向において裏面20b側から表面側20aに向かうに連れてシリコン基板20の外径が徐々に小さくなる逆テーパ形状とされる。
【0025】
このとき、外周研削部20dの深さ(シリコン基板20の厚み方向の寸法)については活性層3として残す部分の厚み以上としており、例えば100?200μmとしている。また、外周研削部20dの幅(シリコン基板20の径方向の寸法)についてはシリコン基板20と支持基板1との貼り合せズレを考慮して設定してあり、貼り合せズレ以上の寸法、例えば1mm以上としている。これにより、次の図2(c)に示す工程において、シリコン基板20と支持基板1とを貼り合せたときのズレ量が最大になっても、シリコン基板20のうち外周研削部20dよりも内側の突出部20eが支持基板1の外周部より内側に配置されるようにできる。」

「【0033】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して活性層3の外縁形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0034】
支持基板1をシリコン基板などの半導体基板で構成する場合、図5に示すように面方位などを確認し易いように外周部の一部を切り欠くことで、ノッチ1dを形成したり、図示しないが直線状のオリエンテーションフラットとすることが一般的に行われている。このような場合において、図中に示したように活性層3を円形状にするときには、活性層3の外径をできるだけ大きく設定することでチップ形成の行える有効面積を広くすることになる。しかしながら、シリコン基板20と支持基板1との貼り合せズレが発生した場合に、活性層3がノッチ部1dやオリエンテーションフラットに重なってしまうことが考えられる。
【0035】
このため、本実施形態では、図6に示すように、活性層3のうちノッチ部1dやオリエンテーションフラットと対応する部分において、円形状の一部を切り欠いた直線状部3dを形成している。このような構成とすることで、活性層3の一部がノッチ1dやオリエンテーションフラットと重なってしまうことを防止できる。
【0036】
なお、この場合、直線状部3dについても、活性層3の側面3cと表面3aとの成す角度が鈍角となるようにしておけば、チッピングの発生を抑制することが可能となり、上記第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。」

と記載されているように,「直線状部」は,活性層3の側面3cと表面3aとの成す角度が鈍角となっている。
また,上記「(第3実施形態)」は,活性層3の外縁形状を変更した以外は上記「(第1実施形態)」と同じであるから,「直線状部」は,上記「(第1実施形態)」のシリコン基板20の外周部を研削して凹ませた外周研削部20dを形成すると同じ研削にて形成することとなる。そうすると,上記「(第3実施形態)」の「直線状部」の活性層3の側面3cと表面3aとの成す角度は,上記「(第1実施形態)」の活性層3のうち側面3cと表面3aとの成す角度と同じ角度となると認められる。
してみれば,「直線状部」を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角となるから,訂正事項1は,新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
そして,訂正事項1に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はなく,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2に係る請求項3についての訂正は,訂正前の請求項3について「前記側面のうち前記表面との境界部における接線と前記表面とのなす角度が鈍角となっており、」との限定を加え,さらに,訂正前の請求項3の「前記側面と前記活性層の表面とが成す鈍角の角度が大きくなること」について,「徐々に大きくなる」とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また,願書に添付した明細書に,

「【0030】
図3に示すように、本実施形態では、活性層3の側面3cが曲面となるようにしている。そして、側面3cのうち表面3aとの境界部において、側面3cと表面3aとが成す角度が鈍角となるようにしている。具体的には、側面3cのうち表面3aとの境界部における接線と表面3aとの成す角度が鈍角となっている。そして、活性層3の表面3a側から裏面3b側に向かうほど、活性層3の厚み方向と平行な断面において、側面3cと表面3aとが成す鈍角の角度が徐々に大きくなっていくような曲面によって側面3cを構成している。」

と記載されているから,訂正事項2は,新規事項の追加に該当しないことは明らかである。
そして,訂正事項2に係る訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はなく,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

4 小括
上記のとおり,訂正事項1及び2に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
請求項1ないし4に係る特許に対して,当審が特許権者に通知した平成30年9月28日付け取消理由(以下,「取消理由通知」という。)の要旨は,次のとおりである。
請求項1ないし4に係る発明は,甲第1号証に記載された発明に,甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術を組み合わせることにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって,請求項1ないし4に係る特許は,取り消されるべきものである。

第4 当審の判断
1 訂正後の請求項1?4に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし4に係る特許(以下,「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は,以下のとおりである。

「【請求項1】
表面(1a)と裏面(1b)および該表面と裏面との間に位置する側面(1c)を有する支持基板(1)と、
前記支持基板の表面に形成された絶縁膜(2)と、
前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され、シリコン基板により構成され、円形状かつ円形状の一部を切り欠いた直線状部(3d)が形成された活性層(3)と、を有し、
前記活性層のうち、前記絶縁膜と反対側となる表面(3a)と前記絶縁膜側となる裏面(3b)との間に位置する部分を側面(3c)として、前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角であることを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記側面は平坦面であり、該側面のうち前記活性層の厚み方向全域において、該側面と前記活性層の表面との成す角度が鈍角とされていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記側面は曲面であり、前記側面のうち前記表面との境界部における接線と前記表面との成す角度が鈍角となっており、かつ、前記活性層の表面側から裏面側に向かうほど、前記活性層の厚み方向と平行な断面において、前記側面と前記活性層の表面とが成す鈍角の角度が徐々に大きくなることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記支持基板は、前記支持基板の外周部の一部を切り欠かれたノッチ部(1d)もしくは前記外周部の一部を直線状としたオリエンテーションフラットが形成され、
前記直線状部は、前記ノッチ部もしくは前記オリエンテーションフラットと対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の半導体基板。」

2 甲号証の記載
(1)甲第1号証
取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2004-235251号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貼り合わせ基板およびその製造方法、詳しくは表面シリコン層と、これを支持する支持基板用ウェーハとを貼り合わせた貼り合わせ基板におけるオリエンテーションフラット部またはノッチ部における表面シリコン層の加工技術に関する。」

イ 「【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施例に係る貼り合わせ基板の製造方法を示すフローシートである。図2は、この発明の一実施例に係る貼り合わせ基板の製造方法に使用される外周研削装置の縦断面図である。図3(a)は、この発明の一実施例に係る貼り合わせ基板の平面図である。図3(b)は、この発明の他の実施形態に係る貼り合わせ基板の平面図である。
図1に示すように、まずCZ法により単結晶シリコンインゴットを引き上げ、その後、この得られた単結晶シリコンインゴットに、ブロック切断、ノッチ加工、スライスを施し、さらに得られたウェーハに対して、面取り、鏡面研磨(ノッチを含む)などを施して、厚さ725μm、直径8インチの鏡面仕上げされたノッチn付きの活性層用ウェーハ10を用意する。単結晶シリコンインゴットは、FZ法により作製してもよい。ノッチ加工は、ブロック切断された短尺なインゴットの外周面の一部に、回転中のノッチ用研削砥石を押し付け、これをインゴットの長さ方向に移動させることで施される。
一方、この活性層用ウェーハ10と同じ製法により、鏡面仕上げされたノッチn付きの同じサイズの支持基板用ウェーハ20を用意する(図1(a))。このうち、活性層用ウェーハ10には、熱酸化炉を用いた熱酸化処理により、その露出面の全体に絶縁性のシリコン酸化膜10aを形成しておく。
【0020】
その後、それぞれのノッチnを位置合わせ用のガイドにして、両ウェーハ10,20の鏡面同士をクリーンルームの室温下で重ね合わせる(図1(b))。これにより、貼り合わせウェーハ30が形成される。この貼り合わせにより、活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20との間に介在されたシリコン酸化膜10aの部分が埋め込み酸化膜10bとなる。
次に、この貼り合わせウェーハ30を、貼り合わせ用の熱酸化炉の石英反応管に挿入し、酸素ガス雰囲気で貼り合わせ熱処理する。貼り合わせ温度は1100℃,熱処理時間は2時間である(同じく図1(b))。これにより、貼り合わせウェーハ30の露出面全体がシリコン酸化膜30aにより覆われる。その結果、活性層用ウェーハ10の酸化膜は厚くなる。
【0021】
次いで、超音波照射によるボイド検査を行う。良品の貼り合わせウェーハ30については、面取りされた両ウェーハ10,20の外周部形状に起因した貼り合わせ不良部分を除去するため、活性層用ウェーハ10の外周部(ノッチnの形成部を除く)が、そのデバイス形成面側から#300?#2000のレジノイド外周研削砥石を用いて外周研削される(図1(c))。外周研削装置としては、円錐台形状を有する外周研削用砥石40が用いられる(図2)。外周研削時、貼り合わせウェーハ30は活性層用ウェーハ10側の面を真空チャック41により真空吸着し、回転軸40aを中心にして回転している外周研削用砥石40により、活性層用ウェーハ10の外周部が切削される。
【0022】
貼り合わせ不良部分が存在すれば、その後の洗浄工程、研磨工程などにおいて、この不良部分が剥がれて飛散し、それが付着してSOI層の表面が汚染されたり、この付着した飛散物が、後工程のウェーハ加工時にSOI層の表面を傷つけるからである。この外周研削は、貼り合わせ界面に達しない深さに止められる。現出される活性層用ウェーハ10の外周部の削り残し部10cの厚さは、775μm程度である(8インチの場合)。また、削り残し部10cの幅D1は2mmである。これにより、ノッチnの形成部のうち、V字形状の外開き側の端部が除去される。レジノイド外周研削砥石の回転速度は5000?8000rpm、活性層用ウェーハ10の回転速度は0.2?1rpmである。
【0023】
続いて、同じ外周研削用のレジノイド外周研削砥石を利用し、この活性層用ウェーハ10のノッチnの形成部に、ノッチnを完全に除去する大きさでオリフラ(位置合わせ用切欠部)OFを形成する(図1(d),(d1))。このとき、例えばオリフラOFの最大幅D2は5mmである(図3(a))。すなわち、オリフラOFの最大幅D2は、削り残し部10cの幅D1(2mm)より3mm長い。また、オリフラOF’の形状を支持基板用ウェーハ20のノッチnの形状に似せた山形に形成してもよい(図3(b))。このオリフラ加工時におけるレジノイド外周研削砥石の回転速度は5000?8000rpmである。
それから、この削り残し部10cが、アルカリエッチにより除去される(図1(e))。すなわち、貼り合わせウェーハ30が、KOHなどのアルカリ性エッチング液に浸漬され、その削り残し部10cが溶かされる。こうして、支持基板用ウェーハ20の外周部の領域、具体的には埋め込み酸化膜10bの外周部(テラス部)が露出される。
【0024】
次に、活性層用ウェーハ10がそのデバイス形成面側から#300?#2000のレジノイド研削砥石を用いて表面研削し、減厚されたSOI層10Aを形成する(図1(f))。このとき、表面研削量は600?700μm、加工により減厚されたSOI層10Aの厚さは20μm程度とする。図示しない枚葉式のポーラスセラミックスチャック上には、活性層用ウェーハ10を上方に向けた貼り合わせウェーハ30が真空保持され、この状態で回転している。一方、その上部には、平面研削用のレジノイド研削砥石が回転しており、一定速度で下降することによって、活性層用ウェーハ10を平面研削するようになっている。平面研削用のレジノイド研削砥石の回転速度は2000?6000rpm、ポーラスセラミックスチャックの回転速度は10?300rpmである。
【0025】
それから、このSOI層10Aの研削面に表面研磨が施される(同じく図1(f))。具体的には、図示しない枚葉式の研磨装置の研磨ヘッドの下面に表面研削された貼り合わせウェーハ30を活性層用ウェーハ10側を下方に向けて保持する。次いで、活性層用ウェーハ10の研削面を、所定流量で研磨剤(スラリー)を供給しながら、研磨定盤の上面に展張された研磨布に押し付け、表面研磨する。研磨布には、ロデール社製の軟質不織布パッド、Suba600(Asker硬度80°)が採用されている。このときの研磨量は10?20μmである。その結果、SOI層10Aの外周部の一部分にオリフラOFが形成され、支持基板用ウェーハ20の外周部の一部分に、ノッチnが形成された貼り合わせSOI基板が作製される(図3(a))。
その後、得られた貼り合わせSOI基板は、洗浄され、ウェーハケースなどに梱包されてから、デバイスメーカに出荷される。
【0026】
このように、活性層用ウェーハ10の外周部のうち、ノッチnの形成部を除く部分に外周研削を施すとともに、ノッチnの形成部には、ノッチnを外周研削するよりも加工が容易なオリフラOFを形成するので、テラス部において、ノッチnの形成部のウェーハ半径方向の幅D2と、それ以外の幅D1とをそれぞれ別々に設定して外周研削することができる。よって、従来のようにテラス部の除去幅が長くなる略真円形状の外周研削を施したときに比べて、活性層用ウェーハ10のデバイス形成面積を拡大することができる。また、この活性層用ウェーハ10の外周研削の加工時間も短縮する。さらには、1個の外周研削用砥石だけを使用し、ノッチnの形成部を含めた活性層用ウェーハの外周部の全周を研削することができる。」

ウ 【図2】

エ 【図3】

オ 上記アないしエから,甲第1号証には,次の事項が記載されていると認められる。
(ア)上記「ア」および上記「イ」段落【0025】から,甲第1号証に記載された発明は,SOI基板(貼り合わせ基板)に関する発明である。
また,上記「イ」段落【0025】及び上記「エ」【図3】(a)の記載から,SOI基板のSOI層10Aは円形状を有し,外周部の一部に直線状のオリフラOFが形成されていると認められる。

(イ)上記「イ」段落【0019】及び【0020】の記載から,甲第1号証に記載された発明は,活性層用ウェーハ10の露出面全体に絶縁性のシリコン酸化膜10aを形成し,活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ10のノッチnを位置合わせ用のガイドにして,活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20を重ね合わせ,貼り合わせ熱処理を行うことにより,露出面全体がシリコン酸化膜30aにより覆われている,貼り合わせウェーハ30を形成している。

(ウ)上記「イ」段落【0021】及び【0022】の記載から,甲第1号証に記載された発明は,貼り合わせウェーハ30が,貼り合わせ不良部分を除去するために,円錐台形状を有する外周研削用砥石40により,貼り合わせ界面に達しない深さまで,削り残し部10cを残して,活性層用ウェーハ10の外周部が切削される。
その際,上記「ウ」【図2】から,円錐台形状を有する外周研削用砥石40を用いると,活性層用ウェーハ10の支持基板用ウェーハ20と貼り合わせている面と反対の面(以下,「上面」という。)と上面と接する外周研削用砥石40によって研削された面(以下,「側面」という。)との成す角度が鈍角を成していることがわかるとともに,上面の酸化膜は除去されず残っていると認められる。
その後,上記「イ」段落【0023】の記載から,貼り合わせウェーハ30をアルカリ性エッチング液に浸漬させ,削り残し部10cが溶かされる。
さらに,上記「イ」段落【0024】及び【0025】の記載から,活性層用ウェーハ10がそのデバイス形成面から表面研削され,表面研磨され,SOI層10Aと支持基板用ウェーハ20が張り合わされたSOI基板が作製される。

(エ)上記「イ」段落【0023】,【0026】及び上記「エ」【図3】(a)の記載から,甲第1号証に記載された発明の,活性層用ウェーハ10には,活性層用ウェーハ10のノッチnの形成部に,ノッチnを完全に除去する大きさでオリフラOFが形成されており,また,このオリフラOFは,上記「(ウ)」で用いられた,円錐台形状を有する外周研削用砥石40と同じ砥石が用いられて形成されている。
さらに,上記「イ」段落【0020】,【0023】及び上記「エ」【図3】(a)の記載から,活性層用ウェーハ10に形成されたオリフラOFは,支持基板用ウェーハ20のノッチnと対応する部分に形成されていると認められる。
そして,上記「イ」段落【0023】の記載から,貼り合わせウェーハ30をアルカリ性エッチング液に浸漬させられるから,オリフラOFも,アルカリ性エッチング液に浸漬させられる。

カ 上記「ア」ないし「オ」から,甲第1号証には以下の発明(以下,「甲第1号証発明」という。)が記載されている。

「SOI基板であって,
ノッチnを位置合わせ用のガイドにして,活性層用ウェーハ10に形成された絶縁性のシリコン酸化膜10aを介して活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20を貼り合わせ,露出面全体が酸化膜で覆われた貼り合わせウェーハ30を形成し,
円錐台形状を有する外周研削用砥石40により,貼り合わせ界面に達しない深さまで,削り残し部10cを残して,活性層用ウェーハ10の外周部を,活性層用ウェーハ10の支持基板用ウェーハ20と貼り合わせている面と反対の面(以下,「上面」という。)と上面と接する外周研削用砥石40によって研削された面(以下,「側面」という。)との成す角度が鈍角を成すように研削し,
活性層用ウェーハ10の外周部を研削した前記円錐台形状を有する外周研削用砥石40を用いて,活性層用ウェーハ10にオリフラOFを形成し,
上面に酸化膜が残った貼り合わせウェーハ30をアルカリ性エッチング液に浸漬させ,削り残し部10cを溶かし,
活性層用ウェーハ10がそのデバイス形成面から表面研削され,SOI層10Aとし,
SOI層10Aは円形状を有し,外周部の一部に直線状のオリフラOFが形成され,支持基板用ウェーハ20の外周部の一部分に,ノッチnが形成され,オリフラOFはノッチnと対応する部分に形成されていることを特徴とする,
SOI層10Aと支持基板用ウェーハ20が張り合わされたSOI基板。」

(2)甲第2号証
取消理由通知において引用した甲第2号証(特開平9-246506号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はSOI(Silicon on Insulator)基板の製造方法、例えば周縁の面取り部に支持基板用ウェーハの酸化膜を残したSOI基板の製造方法に関する。」

イ「【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施例を示している。この実施例によれば、活性層用のシリコンウェーハA(鏡面研磨ウェーハ)の表面に予め熱酸化膜SiO_(2)を形成しておく。また、このシリコンウェーハAと同一口径の支持基板用のシリコンウェーハB(鏡面研磨ウェーハ)を準備しておく。そして、これらのウェーハ同士を室温で重ね合わせた後、所定の張り合わせ熱処理を行う(例えば1100℃,2時間)。この結果、支持基板用ウェーハに活性層用ウェーハが酸化膜を介して張り合わされることとなる。また、張り合わせ熱処理により、この張り合わせ基板の支持基板側の表面にも酸化膜が被着されることとなる。
【0012】ここで、この張り合わせ基板についてその活性層用ウェーハの周縁部に所定の面取りを施す。この場合、面取り量を調節して活性層用ウェーハのシリコン層を所定厚さ(例えば5μm)だけこの周縁部に残す。そして、この周縁部に残ったシリコン層をエッチングし、この部分に絶縁膜を露出させる。このエッチャントはシリコンのみを選択的にエッチングするもの(例えばKOH系のエッチング液)を使用する。次に、この活性層用ウェーハを所定厚さになるまで研削し、さらに、研磨する。この結果、所定厚さ(例えば10μm)の活性層が支持基板用ウェーハ上に絶縁膜を介して配設されたSOI基板を得ることができる。
【0013】図2はこの発明の他の実施例を示している。この実施例によれば、支持基板用のシリコンウェーハB(鏡面ウェーハ)に予め所定厚さの熱酸化膜SiO_(2)を形成しておく。また、同一口径の活性層用のシリコンウェーハA(鏡面ウェーハ)を準備しておく。そして、これらのウェーハ同士を室温で重ね合わせた後、1100℃,2時間のアニールを施す。この結果、支持基板用ウェーハに活性層用ウェーハが酸化膜を介して張り合わされる。また、張り合わせ熱処理により、張り合わせ基板の表面(活性層用ウェーハの表面)にも熱酸化膜が被着される。
【0014】ここで、この張り合わせ基板についてその活性層用ウェーハの周縁部に所定の面取りを施す。この場合、面取り量を調節して活性層用ウェーハのシリコン層を所定厚さ(例えば5μm)だけこの周縁部に残す。そして、この周縁部に残ったシリコン層をエッチングし、この部分に絶縁膜を露出させる。このエッチャントとしてはKOH系のエッチング液を使用する。次に、この活性層用ウェーハを所定厚さになるまで研削し、さらに、鏡面研磨する。この結果、所定厚さの活性層が支持基板用ウェーハ上に絶縁膜を介して配設されたSOI基板を得ることができる。なお、活性層用のシリコンウェーハ、支持基板用のシリコンウェーハのいずれにも酸化膜を形成しておき張り合わせることもできる。」





オ 上記「ウ」【図1】及び「エ」【図2】から,甲第2号証の「実施例」および「他の実施例」では,表面が酸化膜で被着された貼り合わせ基板について,その活性層用ウェーハの周縁部に所定の面取りを施す際に,活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハに接した面と反対の面(以下,「上面」という。)に形成した熱酸化膜を除去している。
また,活性層用ウェーハの上面と,上面と接した活性層用ウェーハの周縁部の面取りが行われた側面(以下,「側面」という。)との成す角は鈍角であり,側面は平坦面であると認められる。
そして,周縁部に残ったシリコン層をKOH系のエッチング液を使用してエッチングした際に,熱酸化膜が被着されていない活性層用ウェーハの面は,上面も含めエッチングされ,残った上面と側面との成す角は鈍角となり,また,側面は平坦面となると認められる。
加えて,活性層用ウェーハを所定厚さになるまで研削し,さらに鏡面研磨することにより,所定の厚さの活性層が支持基板用ウェーハ上に絶縁膜を介して配置されたSOI基板を得,このSOI基板の活性層の上面と側面の成す角は鈍角を成し,また,側面は平坦面を成していると認められる。

カ 上記「ア」ないし「オ」から,甲第2号証には以下の事項(以下,「甲第2号証記載事項」という。)が記載されている。

甲第2号証記載事項
「支持基板用のシリコンウェーハと活性層用シリコンウェーハを酸化膜を介して重ね,アニール処理を行い貼り合わせ処理を行い,表面に酸化膜が被着された貼り合わせ基板を作製し,
貼り合わせ基板の活性層用ウェーハの周縁部に所定の面取りを施し,活性層用ウェーハの支持基板用ウェーハに接した面と反対の面(以下,「上面」という。)と,上面と接した活性層用ウェーハの周縁部の面取りが行われた側面(以下,「側面」という。)との成す角は鈍角とし,また,側面は平坦面とするとともに,活性層用ウェーハの表面に被着した熱酸化膜を貼り合わせ面を除き除去し,
活性層用ウェーハのシリコン層をKOH系のエッチング液でエッチングし,
活性層用ウェーハを所定厚さになるまで研削し,さらに鏡面研磨し,
所定の厚さの活性層が支持基板用ウェーハ上に絶縁膜を介して配置され,このSOI基板の活性層の上面と側面の成す角が鈍角を成し,また,側面は平坦面を成す,SOI基板を作製すること。」

(3)甲第3号証
取消理由通知において引用した甲第3号証(特開平10-242091号公報)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二枚の基板を貼り合わせる貼り合わせ基板の作製方法、特には二枚のシリコン単結晶基板をシリコン酸化膜を介して貼り合わせて作製する、いわゆる貼り合わせSOI(Silicon on Insulator)基板の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】SOI基板の作製方法として、2枚のシリコン単結晶基板をシリコン酸化膜を介して貼り合わせる技術、例えば特公平5-46086号公報に示されるように、少なくとも一方の基板に酸化膜を形成し、接合面に異物を介在させることなく相互に密着させた後、およそ200?1200℃の温度で熱処理し結合強度を高める方法が、従来より知られている。
【0003】熱処理を行うことにより結合強度が高められた貼り合わせ基板は、その後の研削及び研磨工程が可能となるため、デバイス作製側基板を研削及び研磨により所望の厚さに薄膜化することにより、素子形成を行うSOI層を形成することができる。
【0004】しかし、こうして作製された貼り合わせ基板の周辺約1?3mmには、未結合部分が存在することが知られており、この部分を除去するため、例えば特開平3-89519号、特開平4-263425号、特開平3-250616号、特開昭64-89346号のような技術が開発されている。
【0005】これらの方法は、未結合部の除去はできるけれども、デバイス作製側基板(ボンドウエーハ)の外周部を、支持基板となる他方の基板(ベースウエーハ)に達するまで研削するものであるために、ベースウエーハの形状を変更するものであったり、ウエーハ周辺部を除いてマスキングテープを粘着し、然る後にエッチングして、ウエーハ周辺部の未結合部を除去するものであるために、工程が複雑なものであったり、ボンドウエーハの周辺部全部をエッチングにより除去するものであるために、時間がかかりコストが高い上に、生産性も低いものであったり、問題が多い。
【0006】一方、このような問題点を解決するものとして、特開平7-45485号のような方法が提案されている。これは、二枚の半導体基板のうち、少なくとも一方の半導体基板の表面に酸化膜を形成し、該酸化膜を介して他方の半導体基板と密着させ、これに酸化性雰囲気下で熱処理を加えて強固に結合させた後、未結合部を除去するのに、ボンドウエーハの外周部をベースウエーハにダメージが達しない厚さまで研削して除去し、その後エッチングにより該ボンドウエーハ外周部の未結合部を完全に除去し、しかる後に該ボンドウエーハを研削・研磨して、所望厚さまで薄膜化することによって貼り合わせ基板を作製する方法である。
【0007】この方法では、ベースウエーハの形状を変更することもないし、マスキングテープ等を用いる必要がなく、工程もそれほど複雑なものとはならない等の利点がある。」

イ「【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を、二枚の半導体基板を貼り合わせる場合につき、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、図1は本発明にかかる貼り合わせ基板の作製工程の概略を示す説明図である。図2は、本発明にかかる二段研削を行った場合のウエーハの外周部断面形状を示した部分拡大図で、(A)は研削後、(B)は、エッチング後の形状である。図3は、従来の研削を行った場合のウエーハの外周部断面形状を示した部分拡大図で、(A)は研削後、(B)は、エッチング後の形状である。
【0023】図1においてまず、貼り合わせによりSOI基板を作製するための原料ウェーハ(単結晶シリコン鏡面ウエーハ:例えばチョクラルスキー法で作製した直径5インチ、方位<100>のもの)であるボンドウェーハ2及びベースウェーハ3を用意する(図1(a))。そして、用意されたシリコン単結晶基板のうち、ボンドウェーハ2に熱処理を施し、ボンドウエーハ表面に酸化膜4を形成する(図1(b))。
【0024】次に、この酸化膜を形成したボンドウエーハ2とベースウエーハ3を清浄な雰囲気下で密着させる(図1(c))。これに酸化性雰囲気下で熱処理を加えて、ボンドウエーハ2とベースウエーハ3を強固に結合させ、貼り合わせ基板1とする。熱処理条件としては、例えば、酸素または水蒸気を含む雰囲気下、200℃?1200℃の温度で行えば良い(図1(d))。この時、ボンドウエーハ2とベースウエーハ3が強固に結合されるとともに、貼り合わせ基板1の外表面全体にも、後工程でエッチング被膜となる酸化膜5が形成される。
【0025】こうして結合された貼り合わせ基板1の外周部約2mmには、ボンドウエーハ2とベースウエーハ3の未結合部が存在している。このような未結合部は、デバイスを作製するSOI層として用いることができない上に、後工程で剥れ落ちて、種々の問題を引き起こすため除去する必要がある。
【0026】未結合部を除去するには、図1(e)に示すように、まず未結合部が存在するボンドウエーハ2の外周部を所定厚tまで研削して除去する。研削によれば、高速で除去することができるし、加工精度もよいからである。
【0027】ところで、従来はこのような一段階の研削を行い、その後ボンドウエーハ2の外周部をエッチングすることによって、未結合部を完全にエッチング除去するようにしていた。しかし、このような方法では、図3(A)、(B)に部分拡大図を示したように、エッチングによりボンドウエーハ外周部の未結合部を除去した後に、エッチング被膜として用いられる表面酸化膜5の周縁部aが鋭利な形状となり、その後の研削・研磨等の工程に送るために、ウエーハをバスケットに収容し、搬送する際に、この鋭利な形状の酸化膜の周縁部aで、バスケットのウエーハ支え部を削ってしまい、削り落ちたバスケットの屑がウエーハあるいは研削・研磨機等の周辺部材に付着し、研削・研磨後にウエーハにヘコミを生じさせてしまう原因となったり、あるいはウエーハをロボットでハンドリングする際に、鋭利な酸化膜周縁部aがバスケットに引っかかってしまい、ロボットエラーあるいはハンドリングミスが生じるという問題が生じてしまう。
【0028】また、このような従来のボンドウエーハ外周部の研削を一段階で行うと、その後のエッチングによりボンドウエーハ外周部の未結合部を除去する際に、溶け残りを防止し未結合部を完全に除去するために多少オーバーエッチングをしなければならないが、このような方法であると実際にいつ完全にエッチング除去されたのかが不明であり、オーバーエッチング量を多めにせざるを得ず工程上無駄であるとともに、正確なエッチング量およびエッチング速度がわからないために、エッチング工程管理上も問題となる。
【0029】そこで、本発明にあっては、図1(e)、(f)に示すように、ボンドウエーハの外周部を所定厚まで除去する研削を二段階で行うようにし、問題となるボンドウエーハの酸化膜周縁部aが、バスケットのウエーハ支え部と接触しないようにするとともに、未結合部が存在する領域より厚い研削をすることによって、エッチング後にこの部分のシリコン層が溶け残るために、その厚さからエッチング量およびエッチング速度が正確に測定できるようにした(図2(A)(B)参照)。
【0030】そして、このような二段階研削は、いずれの段階を先に行ってもよく、その順序は研削機の仕様その他の都合により決定すれば良いが、少なくともそのうちの一段階は、外周部の未結合部が存在する領域を埋め込み酸化膜4及びベースウエーハ3にダメージを与えない範囲で薄く研削するものとし、他の一段階は未結合部が存在する領域よりさらに内側の領域であって、当該貼り合わせウエーハの未結合部を完全に除去するエッチング工程以降にウエーハを収容あるいは搬送するために用いられるウエーハバスケットのウエーハ支え部に接触しない領域までを、少なくともボンドウエーハ表面の酸化膜を除去するものであり、かつ前記未結合部が存在する領域より厚くなるように研削する。
【0031】本発明にかかる二段研削のうち、少なくとも一段階は、外周部の未結合部が存在する領域W_(1) を埋め込み酸化膜4及びベースウエーハ3にダメージを与えない範囲で薄く研削するものとするのは、従来の研削と同様であり、未結合部を除去するために必要であるとともに、所定厚tをできるだけ薄くし、後工程であるエッチング工程での取りしろを減少させ、行程時間を短縮するためである。
【0032】ところでこの場合、エッチングと異なりシリコンウエーハを機械的に研削すると、加工歪みが生じることは良く知られており、あまり所定厚tを薄くすると、埋め込み酸化膜4、あるいはベースウエーハ3に加工歪みのようなダメージが到達してしまい、その後のエッチングによりボンドウエーハ2の外周部の未結合部を完全に除去する際に、ダメージを受けた埋め込み酸化膜4を通ってエッチング液が、ベースウエーハ3の表面にも達し、この部分(テラス部7)に傷や凹凸を発生させ、その後のデバイス工程における歩留を低下させてしまう。
【0033】そこで、埋め込み酸化膜4、ベースウエーハ3にダメージを与えることなく、いかに薄くボンドウエーハ2の外周部を研削するかが問題となるが、これには、図4に示すように、ボンドウエーハ2の外周部を所定厚tまで研削して除去するのに、砥石10をボンドウエーハ2の外周方向から中心方向に向けて相対的に移動させるようにして研削すればよい。
【0034】このように外周部の研削をボンドウエーハ2の外周方向から中心方向に向けて研削するようにすれば、ダメージは砥石の進行方向である、ウエーハの中心方向に入り、厚さ方向のダメージは少ないからである。したがって、例えボンドウエーハ2の外周を、20?150ミクロンといった厚さまで薄く研削しても、埋め込み酸化膜4あるいはベースウエーハ3にダメージが入らない。」

ウ「【0041】外周部の二段研削が終了したなら、次に、図1(g)および図2(B)のように、エッチングによりボンドウエーハ2外周部の未結合部を完全に除去する。これは、酸化膜にくらべてシリコン単結晶のエッチング速度が格段に大きいエッチング液に、貼り合わせ基板1を浸漬することによって、簡単に行うことができる。すなわち、ボンドウエーハ2の外周部は、研削によってシリコンが露出しているために、エッチング液によってエッチングされるが、貼り合わせ基板1の他の部分は、酸化膜5で覆われているためにエッチングされない。このようなエッチングとしては、KOH,NaOH等によるいわゆるアルカリエッチングを挙げることができる。」

エ「【0045】こうして得られた貼り合わせ基板1を最後に、図1(h)に示すように、ボンドウエーハ2の表面を通常の方法に従い研削・研磨して、所望厚さまで薄膜化すれば、SOI層6を有する貼り合わせ基板を作製することができる。」

オ 【図3】

カ 【図4】

キ 上記アないしカから,以下のことがわかる。
(ア)上記「イ」段落【0027】,【0033】及び「オ」【図3】(A),「カ」【図4】の記載から,ボンドウエーハ2の外周部を研削する際に,台形の砥石10を用い研削すると,ボンドウエーハ2のベースウエーハ3との接合する面と反対の面と,研削された面との成す角は鈍角であり,また,研削された面の酸化膜は除去されるが,ボンドウエーハ2のベースウエーハ3との接合する面と反対の面の表面酸化膜5は残っていると認められる。

(イ)上記「イ」段落【0027】及び「オ」【図3】(A),(B)の記載から,研削されたボンドウエーハ2をエッチングし,未結合部を完全にエッチング除去すると,エッチング被膜として用いられる表面酸化膜5の周縁部aが鋭利な形状となり,その形状の下から,ボンドウエーハ2の表面酸化膜5と平行な面と,エッチングされた側面との成す角は鈍角を成し,また,ベースウエーハ3に向かうほど,ボンドウエーハ2の表面酸化膜5と平行な面と,エッチングされた側面との成す角度が徐々に大きくなっていると認められる。
また,上記「ウ」段落【0041】の記載から,エッチングは,KOH,NaOH等によるいわゆるアルカリエッチングであると認められる。

(ウ)上記「エ」段落【0045】及び「オ」【図3】(B)の記載から,SOI層6を有する貼り合わせ基板は,エッチングされた貼り合わせ基板のボンドウエーハ2の表面を研削・研磨して,所望の厚さまで薄膜化しており,このことから,SOI層6を有する貼り合わせ基板は,ボンドウエーハ2のベースウエーハ3と接合する面と反対の面と,この反対の面と接する側面の成す角は鈍角となり,また,ベースウエーハ3に向かうほど,ベースウエーハ3の反対の面と平行な面と,側面との成す角度が徐々に大きくなっていると認められる。

ク 上記「ア」ないし「キ」から,甲第3号証には以下の事項(以下,「甲第3号証記載事項」という。)が記載されている。

「二枚のシリコン単結晶基板をシリコン酸化膜を介して貼り合わせて作製する,SOI(Silicon on Insulator)基板の作製方法に関し,
ボンドウエーハ2とベースウエーハ3を貼り合わせて,外表面全体に酸化膜が形成された貼り合わせ基板1を作製し,
ボンドウエーハ2のベースウエーハ3との接合する面と反対の面の表面酸化膜5を残して,ボンドウエーハ2の外周部を台形の砥石10を用い研削し,
研削されたボンドウエーハ2をアルカリエッチングして,未結合部を完全にエッチング除去し,
ボンドウエーハ2の表面を研削・研磨して,所望の厚さまで薄膜化すると,
SOI層6を有する貼り合わせ基板は,ボンドウエーハ2のベースウエーハ3と接合する面と反対の面と,この反対の面と接する側面の成す角は鈍角となり,また,ベースウエーハ3に向かうほど,ベースウエーハ3の反対の面と平行な面と,側面との成す角度が徐々に大きくなっている曲面となること。」

3 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)甲第1号証発明の「支持基板用ウェーハ20」,「SOI層10A」及び「SOI基板」は,それぞれ本件特許発明1の「支持基板(1)」,「活性層(3)」及び「半導体基板」に相当する。
そして,甲第1号証発明の「支持基板用ウェーハ20」も,本件特許発明1の「表面(1a)と裏面(1b)および該表面と裏面との間に位置する側面(1c)」と同様の構成を有していると認められる。

(イ)甲第1号証発明は「活性層用ウェーハ10に形成された絶縁性のシリコン酸化膜10aを介して活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20を貼り合わせ」,最後に,「活性層用層ウェーハ10がそのデバイス形成面から表面研削され,SOI層10A」とされているから,甲第1号証発明は,「活性層用ウェーハ10に形成された絶縁性のシリコン酸化膜10aを介して」「SOI層10A」と「支持基板用ウェーハ20」を貼り合わせており,このことと,本件特許発明1の「前記支持基板の表面に形成された絶縁膜(2)」を有し,「前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され」る「活性層(3)」とは,「絶縁膜」を有し,「前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され」る「活性層」である点で共通する。

(ウ)甲第1号証発明の「SOI層10A」は,「円形状を有し,外周部の一部に直線状のオリフラOFが形成されている」から,このことは,本件特許発明1の「円形状かつ円形状の一部を切り欠いた直線状部(3d)が形成された活性層(3)」に相当する。

(エ)してみると,本件特許発明1と甲第1号証発明とは,以下の点で一致し,また相違する。

[一致点]
表面と裏面および該表面と裏面との間に位置する側面を有する支持基板と,
絶縁膜と,
前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され,シリコン基板により構成され,円形状かつ円形状の一部を切り欠いた直線状部が形成された活性層と,を有する
ことを特徴とする半導体基板。

[相違点1]
本件特許発明1の「絶縁膜」は,「前記支持基板の表面に形成され」ているのに対して,甲第1号証発明の「絶縁膜」は,「活性層用ウェーハに形成された絶縁性のシリコン酸化膜10a」である点。

[相違点2]
本件特許発明1は「前記活性層のうち、前記絶縁膜と反対側となる表面(3a)と前記絶縁膜側となる裏面(3b)との間に位置する部分を側面(3c)として、前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角である」のに対して,甲第1号証発明は対応する構成の形状が不明である点。

イ 相違点についての判断
[相違点2]について検討する。
甲第1号証発明の「オリフラOF」は,活性層用ウェーハ10の外周部を研削した円錐台形状を有する外周研削用砥石40を用いて形成されるので,甲第1号証発明においても,外周研削用砥石40による研削後の活性層用ウェーハ10の上面と該上面に接する側面との成す角度は,オリフラOFを含めて同じ角度である鈍角に形成されるものであると認められる。
しかしながら,甲第1号証発明では,活性層用ウェーハ10と支持基板用ウェーハ20を貼り合わせた後に外周研削用砥石40による研削が行われるため,研削後の削り残し部10cをアルカリ性エッチング液に浸漬させて溶かす必要がある。
そして,削り残し部10cがアルカリ性エッチング液で溶かされて形成される甲第1号証発明では,削り残し部10cの厚みを溶かす際に,SOI層10Aの上面(3b)と側面(3c)も,アルカリ性エッチング液によるエッチングが行われると認められる。その際,アルカリ性エッチング液によるエッチングは,結晶面方位によってエッチング速度が異なることは周知の事項であり,また,SOI層10Aの上面と接する側面の全周において結晶面方位が同じにならないことは技術常識である。
そうすると,アルカリ性エッチング液によるエッチングが行われた,SOI層10Aの上面(3b)と側面(3c)の成す角度が,オリフラOFを含めて全周で同じ角度になるとは認められず,そもそも全周で確実に鈍角になることも定かとはいえない。
また,SOI基板の形成において,面取りや外周研削用砥石による研削後に,面取り後の周縁部に残ったシリコン層や研削後の未結合部をエッチング除去することが甲第2号証及び甲第3号証に記載されているものの,甲第1号証発明の「削り残し部10c」を溶かすエッチングに対応する,甲第2号証記載事項の「活性層用ウェーハのシリコン層をKOH系のエッチング液でエッチング」,及び,甲第3号証記載事項の「研削されたボンドウエーハ2をアルカリエッチングして,未結合部を完全にエッチング除去」は,甲第1号証発明と同様に,アルカリ性エッチング液によるエッチングが行われていると認められるので,甲第1号証発明に甲第2号証記載事項または甲第3号証記載事項を用いたとしても,[相違点2]に係る構成を設けることはできない。
そうすると,甲第1号証発明,甲第2号証及び甲第3号証記載事項から,[相違点2]に係る構成を,当業者が容易に想起できたとは言えない。
そして,本件特許発明1は,[相違点2]に係る構成を有することにより,「活性層の全周において,チッピングの発生を抑制することが可能。」(本件特許明細書段落【0036】,特許権者の平成30年11月28日の意見書第7頁15行乃至17行)という格別の効果を有するものである。
してみると,[相違点2]に係る構成は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。

ウ 本件特許発明1についてのまとめ
したがって,本件特許発明1は,他の相違点について検討するまでもなく,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は,本件特許発明1を引用するものであり,本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから,前記「(1)」と同様の理由により,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,平成31年2月4日付けの意見書において,本件請求項1についての訂正により,「前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角であること」との事項における下線部が新たに特定されたことについて,概略,以下の主張をしている。
・本件の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面には,直線状部を含めた活性層の側面と表面との成す角度が「活性層の全周で同じ角度である」ことについて,当初から全く記載されておらず,グラインダーによる研削加工でも加工精度の誤差は必ず生じるものであり,研削加工後の「活性層の全周で同じ角度である」ことは,技術常識からありえないから,特許請求の範囲の請求項1についてした訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
・本件特許発明1を特定する事項のうち,「前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角であること」との事項以外の事項は,甲第1号証,甲第2号証又は甲第3号証に記載された事項,及び,甲第1号証発明において適宜選択される事項であるところ,どの程度の角度の差異が「同じ角度」に含まれるのかの基準が不明であるから,訂正において新たに特定された「活性層の全周で同じ角度である」との事項は,新たな相違点とは認められないので,本件特許発明1は,甲第1号証発明,甲第2号証記載事項及び甲第3号証記載事項から容易に発明できたものである。
そこで,本件請求項1の「直線状部」の「該活性層の側面と表面との成す角度」について検討する。
本件特許明細書において,段落【0036】の「直線状部3dについても、活性層3の側面3cと表面3aとの成す角度が鈍角となるようにしておけば、チッピングの発生を抑制することが可能となり、上記第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。」,段落【0023】の「シリコン基板20の裏面20b側において、シリコン基板20の外周部を研削して凹ませた外周研削部20dを形成する。例えば、図中に示したように、先端部に行くほど徐々に研削面30aの外径が拡大していくようなグラインダー30を用いる。そして、シリコン基板20を図示しないステージに搭載し、シリコン基板20の中心を回転中心としてステージと共に回転させ、シリコン基板20の外周部にグラインダー30の研削面30aを当接させる。」,段落【0024】の「これにより、シリコン基板20の外周部が研削され、外周研削部20dが形成される。このように形成される外周研削部20dは、シリコン基板20の厚み方向において裏面20b側から表面側20aに向かうに連れてシリコン基板20の外径が徐々に小さくなる逆テーパ形状とされる。」の記載から,直線状部3dに形成される「鈍角」も,グラインダー30の研削面30aをシリコン基板20の外周部に当接させることで形成されるものと解される。
そうすると,本件請求項1において,「該活性層の側面と表面との成す角度」とは,「直線状部」も含めた「該活性層の全周」で,グラインダー30の研削面30aの傾斜角度で決定される角度であると認められ,また,「活性層の全周で同じ角度である」の「同じ角度」とは,活性層の全周をグラインダー30で研削した際にグラインダー30の研削面30aの傾斜角度で決定される程度で同じ角度になることを意味するものと認められる。
よって,特許請求の範囲の請求項1についてした訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,また,「活性層の全周で同じ角度である」の記載は,記載が不明確とは言えず,上記「第4の3(1)」の[相違点2]に記載したように実質的な相違点になるものであるから,上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

第6 取消理由通知において使用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人 岡村英紀 は,特許異議申立書において,訂正前の請求項1,3及び4に係る特許は,甲第1号証に記載された発明と同じ発明であるから,特許法第29条第1項3号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである旨,主張している。
しかしながら,本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明は,上記「第4の3(1)」で検討したように,[相違点1]及び[相違点2]の点で相違する。
したがって,本件特許発明1は,甲第1号証に記載された発明でない。また,本件特許発明1を引用する本件特許発明3及び4も,甲第1号証に記載された発明でない。

第7 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(1a)と裏面(1b)および該表面と裏面との間に位置する側面(1c)を有する支持基板(1)と、
前記支持基板の表面に形成された絶縁膜(2)と、
前記絶縁膜を介して前記支持基板の上に配置され、シリコン基板により構成され、円形状かつ円形状の一部を切り欠いた直線状部(3d)が形成された活性層(3)と、を有し、
前記活性層のうち、前記絶縁膜と反対側となる表面(3a)と前記絶縁膜側となる裏面(3b)との間に位置する部分を側面(3c)として、前記直線状部を含めた該活性層の側面と表面との成す角度が該活性層の全周で同じ角度である鈍角であることを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記側面は平坦面であり、該側面のうち前記活性層の厚み方向全域において、該側面と前記活性層の表面との成す角度が鈍角とされていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記側面は曲面であり、前記側面のうち前記表面との境界部における接線と前記表面との成す角度が鈍角となっており、かつ、前記活性層の表面側から裏面側に向かうほど、前記活性層の厚み方向と平行な断面において、前記側面と前記活性層の表面とが成す鈍角の角度が徐々に大きくなることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記支持基板は、前記支持基板の外周部の一部を切り欠かれたノッチ部(1d)もしくは前記外周部の一部を直線状としたオリエンテーションフラットが形成され、
前記直線状部は、前記ノッチ部もしくは前記オリエンテーションフラットと対応する部分に形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の半導体基板。
【請求項5】
表面(20a)と裏面(20b)および該表面と裏面との間に位置する側面(20c)を有するシリコン基板(20)を用意すると共に、表面(1a)と裏面(1b)および該表面と裏面との間に位置する側面(1c)を有する支持基板(1)を用意する工程と、
前記シリコン基板の裏面と前記支持基板の表面のうちの少なくとも一方に絶縁膜(2)を形成する工程と、
前記シリコン基板の裏面に対して、該シリコン基板の外周部を研削することにより、該シリコン基板の厚み方向において、該シリコン基板の裏面側から表面側に向かうに連れて該シリコン基板の外径が徐々に小さくなる形状とされた外周研削部(20d)を形成する工程と、
前記シリコン基板のうち前記外周研削部が形成された裏面側が前記支持基板側を向くようにして、前記絶縁膜を介して、前記シリコン基板を前記支持基板の表面上に貼り合せる工程と、
前記支持基板に貼り合せた前記シリコン基板を表面側から前記外周研削部まで達する位置まで研削研磨することで活性層(3)を形成し、該活性層のうち前記絶縁膜と反対側となる表面(3a)と前記絶縁膜側となる裏面(3b)との間に位置する部分を側面(3c)として、該活性層の側面と表面との成す角度が鈍角となるようにする工程と、を含んでいることを特徴とする半導体基板の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-25 
出願番号 特願2013-212783(P2013-212783)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (H01L)
P 1 652・ 121- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 梶尾 誠哉
小田 浩
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6156046号(P6156046)
権利者 株式会社デンソー
発明の名称 半導体基板およびその製造方法  
代理人 特許業務法人ゆうあい特許事務所  
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