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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1352203
審判番号 不服2018-2082  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-14 
確定日 2019-06-27 
事件の表示 特願2015-232794号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年6月9日出願公開、特開2016-104139号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月8日に出願した特願2012-25205号の一部を平成27年11月30日に新たな特許出願(特願2015-232794号)としたものであって、平成28年2月10日に手続補正書が提出され、同年10月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月6日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月9日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月10日付けで、同年6月9日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年11月14日)、それに対して、平成30年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、同年12月5日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年1月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年1月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(A?Kは、本願発明を分説するために当審で付した)。

「A 前面に遊技領域を有し該遊技領域内に開口部が形成された遊技板と、
B 該遊技板の前記開口部内に挿入されたセンター役物と、
C 立体的な装飾がなされている装飾部と、を備え、
B1 該センター役物は、
D 前記センター役物の外側に向かって開口したワープ入口及び前記センター役物の内側に向かって開口したワープ出口を連通するワープ通路と、
E 前記遊技板の前記開口部に挿入されている挿入部と、
F 前記遊技板の前面よりも遊技者側に突出し、前記遊技領域と前記センター役物の内部空間とを区画する区画壁部と、
G 前記挿入部よりも径方向外側に突出し前記遊技板の前面に当接するフランジ部と、
H 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第一の遊技領域拡張部と、を具備し、
H1 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記第一の遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され、
C1 立体的な装飾がなされている前記装飾部は、透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるように前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置し、前記第一の遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ、
K 前記第一の遊技領域拡張部とは異なる位置に前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第二の遊技領域拡張部を備え、
E1 前記挿入部は、前記第一の遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され、
H3 前記第一の遊技領域拡張部の遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす特別装飾部が、前記第一の遊技領域拡張部に対して正面視で前記区画壁部を挟んで径方向内側に設けられ、
H4 前記挿入部と前記遊技板との間に生じる空間の幅よりも前記第一の遊技領域拡張部である前記挿入部と前記区画壁部との間の幅のほうが大きくなっている
J ことを特徴とする遊技機。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1
・引用文献等 1?9
・請求項 1
・引用文献等 1、9、10

引用文献等一覧
1.特開2007-267902号公報
2.特開2009-78015号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2010-119730号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2010-131459号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-227430号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2010-246724号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2009-233387号公報
8.特開2009-153679号公報
9.特開2003-236110号公報
10.特開2008-212750号公報

2 原査定の理由についての判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-267902号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審にて付した)。

(ア)「【0009】
そこで、本発明は、上述した点を鑑みてなされたものであり、センター装飾部材に外周が取り囲まれた表示画面が大型化又は偏在されても、パチンコ球が転動流下可能な転動領域のスペースを十分に確保するとともに表示画面の視認に支障がない構造を有したパチンコ機を提供することを課題とする。」

(イ)「【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は、本実施の形態のパチンコ機の遊技盤202を示した正面図である。遊技盤202の盤面202Aには、略円形状の外レール206Aと内レール206Bとが設けられており、外レール206A及び内レール206Bの内縁で囲まれた領域をもって、遊技領域207を形成している。さらに、図8に示すように遊技盤202の盤面202Aの遊技領域207には、後述するセンター装飾部材205の外周形状に類似する形状であって、センター装飾部材205の外周寸法より小さい寸法の孔(中央開口部204、配置開口部331)が設けられている。そして、図示されないが、表示制御基板と一緒に透明なケースに収納されユニット化された液晶表示装置が、遊技盤202の裏面の所定位置に、螺子などで固定される。
一方、遊技盤202の表面(正面)には、図1に示すように、センター装飾部材205の一部が、遊技盤202に形成された孔(中央開口部201、配置開口部331)の一部を塞ぐように、且つ、後述するセンター装飾部材205の第1開口部302が、液晶表示装置の表示画面203の周囲を取り囲むように、センター装飾部材205が遊技盤202に螺子などによって固定される。
【0012】
そこで、ここからは、センター装飾部材205を図面に基づいて説明する。図4にセンター装飾部材205の正面図を示し、図5にセンター装飾部材205の背面図を示し、図6にセンター装飾部材205の分解斜視図を示し、図7にセンター装飾部材205の斜視図を示す。図4?図7に示すように、センター装飾部材205では、その本体枠301に対しては固定板311が取り付けられ、固定板311に対しては発光素子基盤321が取り付けられている。
【0013】
この点、本体枠301には、第1開口部302が設けられているとともに、固定板311を取り付けるための第2開口部303が設けられている。そして、第1開口部302や第2開口部303の周辺には、センター装飾部材205が遊技盤202の盤面202Aに固定された際に遊技盤202の盤面202Aと接面する各基底片面401A,401B,401C,401Dが形成され、さらに、センター装飾部材205が遊技盤202の盤面202Aに固定された際に遊技盤202の盤面202Aに対して垂直した状態となる屈曲した突出片面402が形成されている。
特に、突出片面402の一部によって、第1開口部302と第2開口部303の間にワープルート304が形成され、また、ワープルート304の上部を構成するとともに上中央付近から左横に向かって下りに傾斜する傾斜片面403が形成されている。
【0014】
尚、本体枠301は、各基底片面401A,401B,401C,401Dや、突出片面402、傾斜片面403、ワープルート304を含めて、無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で一体的に成型加工される。
また、センター装飾部材205の基底片面401A,401B,401C,401Dから突出片面402が突出した方面が「遊技者側」となる。従って、「反遊技者側」とは、センター装飾部材205の基底片面401A,401B,401C,401Dから遊技盤202の盤面202Aに向かう方面をいう。
【0015】
また、固定板311には、その表面において、ジグザグ状の複数の突出片面312が形成されている。そして、本体枠301の第2開口部303に対し固定板311が螺子で固定されると、固定板311の表面に列設されたジグザグ状の複数の突出片面312によって、本体枠301の第2開口部303に案内溝313が形成される。この点、案内溝313の各溝は、パチンコ球が転動可能な間隔を有していることから、遊技釘を使用することなくパチンコ球を誘導することが可能となる。
尚、複数の突出片面312が列設された固定板311は、光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で一体的に成型加工される。但し、このポリカーボーネート樹脂は、光が透過するものであれば、有色又は無色、透明又は非透明のいずれであってもよい。
【0016】
また、発光素子基盤321には、複数のLED発光素子322が搭載されている。そして、発光素子基盤321は、各LED発光素子322の搭載面が固定板311に対向した状態で、固定板311の背面に螺子で固定される。
【0017】
次に、図8に基づいて説明する。遊技盤202の盤面202Aには、上記中央開口部204と連なるようにして配置開口部331が設けられている。そして、遊技盤202に対してセンター装飾部材205を組み付けると、センター装飾部材205を構成する本体枠301の第1開口部302は遊技盤202の中央開口部204に重なり合い、また、センター装飾部材205を構成する本体枠301の第2開口部303は遊技盤202の配置開口部331に重なり合う。従って、遊技盤202に対してセンター装飾部材205が組み付けられた状態では、遊技盤202の配置開口部331は、センター装飾部材205の第2開口部303に固定された固定板311で塞がれることになる。そして、このとき、固定板311の背面に固定された発光素子基盤321の各LED発光素子322は遊技盤202の配置開口部331に内置され、固定板311の表面に形成された突出片面312などで構成する案内溝313は遊技盤202上に存置される。
【0018】
また、図1に示すように、遊技盤202の盤面202Aにセンター装飾部材205を固定した状態では、センター装飾部材205の傾斜片面403は、上述したように、センター装飾部材205の上中央付近から左横に向かって下り勾配を有した斜面となる。
【0019】
また、遊技盤202の盤面202Aに形成された遊技領域207においては、センター装飾部材205の突出片面402がその上中央外側から右横外側にかけて外側レール206A及び内側レール206Bの各内縁と非常に接近しており、その接近した領域にパチンコ球が侵入することを阻止するために、返し部材208がセンター装飾部材205の上中央外側付近に設けられている。
【0020】
さらに、遊技盤202の盤面202Aに形成された遊技領域207内においては、上述したセンター装飾部材205や返し部材208に加えて、風車211、第1始動口214、チューリップ部材215Aを有した第2始動口215、ゲート216、大入賞口217、アウト口218、電飾部材231A,231Bなどが配設されている。従って、遊技盤202の盤面202Aに形成された遊技領域207内のうち、表示画面203を含めたセンター装飾部材205(但し、基底片面401A,401D、案内溝313、ワープルート304を除く)や、返し部材208、風車211、第1始動口214、第2始動口215、ゲート216、大入賞口217、アウト口218、電飾部材231A,231Bなどを排除した領域でパチンコ球が転動流下することが可能な転動領域232が形成されている。
【0021】
そして、センター装飾部材205の上中央外側から上左外側にかけて形成された転動領域232には、複数の遊技釘209が配設されているが、さらに、センター装飾部材205の基底片面401Aやワープルート304の上部が配設されている。
また、センター装飾部材205の左横外側に形成された転動領域232には、複数の遊技釘210や、風車211が配設されているが、さらに、センター装飾部材205の案内溝313やワープルート304の下部が配設されている。
さらに、センター装飾部材205の下外側に形成された転動領域232には、誘導釘などを形成する複数の遊技釘213や、第1始動口214、チューリップ部材215Aを有した第2始動口215、ゲート216、大入賞口217、アウト口218などが配設されているが、さらに、センター装飾部材205の基底片面401Dが配設されている。」

(ウ)「【0023】
また、本実施の形態のパチンコ機1では、遊技盤202の盤面202Aにセンター装飾部材205を固定した状態では、図2の斜線部205Aに示すように、センター装飾部材205の基底片面401Aと突出片面403とワープルート304の各一部が表示画面203の一部を覆っている。しかしながら、センター装飾部材205は、基底片面401Aや突出片面403やワープルート304を含めて、無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で一体的に成型加工されていることから、表示画面203のうち斜線部205Aに該当する部分に映るカラー画像は、センター装飾部材205を介しても変色することなく見ることができる。
【0024】
以上詳細に説明したように、本実施の形態のパチンコ機1においては、遊技盤202と、前記遊技盤202の盤面202A上に設けられた外側レール206A及び内側レール206B(本発明の「ガイドレール」に相当するもの)と、前記外側レール206A及び内側レール206Bによって前記遊技盤202の盤面202A上に区画形成された遊技領域207と、前記遊技盤202の盤面202A上に設けられるとともに前記遊技領域207内に配設された第1始動口214又は第2始動口215(本発明の「入賞口」のいずれかに相当するもの)と、前記遊技盤202の盤面202A上に設けられるとともに前記遊技領域207内に前記第1始動口214又は第2始動口215より上方に配設された表示画面203と、前記遊技盤202の盤面202A上に遊技者側に向けて突設されるとともに前記遊技領域207内で前記表示画面203の外周を取り囲んで配設されたセンター装飾部材205と、前記遊技盤202の盤面202A上に設けられるとともに前記遊技領域207内で前記センター装飾部材205と前記外側レール206A及び内側レール206Bとの間に配設された遊技釘209,210,213(本発明の「障害物」に相当するもの)と、前記第1始動口214又は第2始動口215と前記表示画面203と前記センター装飾部材205と前記遊技釘209,210,213とが配設されることによって前記遊技領域207内に形成されるとともに前記遊技盤202の盤面202A上でのパチンコ球の流下方向を変更する転動領域232と、を有するとともに、前記センター装飾部材205には前記遊技盤202の盤面202Aに対して略平行な基底片面401A,401B,401C,401D(本発明の「基底面」に相当するもの)と前記基底片面401A,401B,401C,401Dから遊技者側に向けて突設された突出片面402(本発明の「突出面」に相当するもの)と前記突出片面402の一部として当該センター装飾部材205の略斜め左上方隅付近に設けられた傾斜片面403(本発明の「傾斜面」に相当するもの)とが形成されており、前記外側レール206Aに案内されて前記転動領域232内に侵入したパチンコ球が前記センター装飾部材205の傾斜片面403に沿って流下すれば前記センター装飾部材205の傾斜片面403と比べて流下方向に位置する前記遊技釘209,210,213を介して前記第1始動口214又は第2始動口215に向かって案内される。」

(エ)「【0027】
すなわち、本実施の形態のパチンコ機1では、図1や図2に示すように、遊技盤202の盤面202A上の遊技領域207内にセンター装飾部材205が配設されることによって、センター装飾部材205の基底片面401Aやワープルート305が遊技盤202の盤面202A上の遊技領域207内に存在する転動領域232内に配置されている。
さらに、センター装飾部材205の略斜め左上方隅付近では、センター装飾部材205によって外周が囲まれた表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232からセンター装飾部材205の傾斜片面403にかけてセンター装飾部材205の基底片面401Aを渡し設けている。また、センター装飾部材205の略斜め左上方隅及び左横付近では、センター装飾部材205によって外周が囲まれた表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、センター装飾部材205の突出片面402や傾斜片面403からワープルート305を延設させている。
【0028】
従って、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aやワープルート305は、遊技盤202の盤面202A上にはないけれども、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232から延長された新たな転動領域として機能することができる。このとき、表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aや傾斜片面403やワープルート305など(図2における符号205Aの斜線部分で示す部分)を通過しても、センター装飾部材205の基底片面401Aや傾斜片面403やワープルート305などが無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で一体的に成型加工されていることから、遊技者側にそのままの状態で達する。
以上より、センター装飾部材205に外周が取り囲まれた表示画面203が遊技盤202の盤面202A上で大型化又は偏在されても、センター装飾部材205の基底片面401Aや傾斜片面403やワープルート305などが透明の光透過性材質であるため、これら透明材質を介して遊技者が表示画面203を視認可能になるので、視覚効果などを十分に発揮させることができる。さらに、表示画面203が大型化するに連れて、追従するように、転動領域232を狭くしなくても良いので、第1始動口214又は第2始動口213に対するパチンコ球の入賞率の調整を考慮したレイアウト設計への制約が比較的緩やかにすることができる。」

(オ)【図4】には、ワープルート304の上端が、センター装飾部材205の外側に向かって開口し、ワープルート304の下端が、センター装飾部材205の内側で開口していることが記載されている。また、センター装飾部材205の上中央から上右にかけての突出片面402の径方向位置に比べ、上中央から上左にかけての傾斜片面403の径方向位置は、径方向内側に配置され、傾斜片面403の径方向外側に基底片面401Aが配置されることが記載されている。
【図4】


上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「a 遊技盤202の盤面202Aには遊技領域207が形成され、該遊技領域207には中央開口部204が設けられている遊技盤202(【0011】)と、
b 遊技盤202の表面(正面)に、センター装飾部材205の一部が遊技盤202に形成された中央開口部201の一部を塞ぐように、螺子などによって固定されるセンター装飾部材205(【0011】)と、を備え、
d センター装飾部材205の本体枠301に、遊技盤202の盤面202Aに対して垂直した状態となる屈曲した突出片面402が形成され、突出片面402の一部によってワープルート304が形成され(【0012】-【0013】)、センター装飾部材205の上中央外側から上左外側にかけて形成された転動領域232には、ワープルート304の上部が配設され、センター装飾部材205の左横外側に形成された転動領域232には、ワープルート304の下部が配設されており(【0021】)、ワープルート304の上端が、センター装飾部材205の外側に向かって開口し、ワープルート304の下端が、センター装飾部材205の内側で開口しており(【図4】)、
f センター装飾部材205から遊技者側に突出した突出片面402(【0014】)の一部によって上中央付近から左横に向かって下りに傾斜する傾斜片面403が形成されており(【0013】)パチンコ球が前記センター装飾部材205の傾斜片面403に沿って流下し(【0024】)、
g センター装飾部材205の本体枠301に、センター装飾部材205が遊技盤202の盤面202Aに固定された際に遊技盤202の盤面202Aと接面する各基底片面401A,401B,401C,401Dが形成され(【0012】-【0013】)、
h 突出片面402に対して径方向内側に配置された傾斜片面403の径方向外側に基底片面401Aが配置され(【図4】)、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aは、遊技盤202の盤面202A上にはないけれども、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232から延長された新たな転動領域として機能し(【0028】)、
h1 センター装飾部材205の基底片面401Aは無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で成型加工されており(【0028】)、
c1 表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232からセンター装飾部材205の傾斜片面403にかけてセンター装飾部材205の基底片面401Aを渡し設けており(【0027】)、表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aを通過し遊技者側にそのままの状態で達する(【0028】)、
j パチンコ機(【0011】)。」

イ 引用文献2
原査定に係る拒絶理由で周知技術の例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-78015号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0354】
複数のライト状装飾体520は、裏ユニット510の開口部514aの全周を取り囲むように、裏ユニット510の正面側に略均等な間隔で配置される。そして、各ライト状装飾体520の背後には、3つのレンズ体(1つの青色レンズ体および2つの赤色レンズ体)の各々に対応するLEDを備えたLED基板(図示外)が設けられている。このLED基板(図示外)の駆動により、各ライト状装飾体520は赤色レンズ体または青色レンズ体を介して発光する。」

ウ 引用文献3
原査定に係る拒絶理由で周知技術の例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-119730号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0017】
図2および図4に示すように、前記遊技盤20には、可動体110,130,220,330,420,424,428を有する演出装置100,200,300,400が表示部20bを囲んで複数設けられている。実施例の遊技盤20は、表示部20bの下側に位置して裏ユニット30に設置された下部演出装置100と、表示部20bの上側に位置して裏ユニット30に設置された上部演出装置200と、表示部20bの上側で、上部演出装置200の前側に位置して枠状装飾体70に設置された前部演出装置300と、表示部20bの両側部に位置して裏ユニット30に設置された左右の側部演出装置400,400とを備えている。
【0018】
(下部演出装置)
前記下部演出装置100は、図3に示すように、裏ユニット30における裏ユニット開口部30a下側を画成する辺部に設置され、透明板22の後側に配置されている。また下部演出装置100は、図2に示すように、表示部20bとこの表示部20bの下側に配置された始動入賞装置25との間に位置し、該下部演出装置100の前面に設けられる後述する第2下部可動体(可動体)130がステージ74の後側に重なるように配置されている。
【0019】
図12?図33に示すように、前記下部演出装置100は、下部ベース部材102と、この下部ベース部材102の後側に設けられた第1下部可動体110と、下部ベース部材102の前側を覆う下部内周装飾部40の前側に設けられた第2下部可動体130と、下部ベース部材102に設けられ、第1下部可動体110を動作させる第1下部駆動機構と、下部ベース部材102に設けられ、第2下部可動体130を動作させる第2下部駆動機構とから基本的に構成される。下部演出装置100は、第1下部可動体110と第2下部可動体130とが前後の関係で重なるように配置され、下部内周装飾部40の前側で揺動する第2下部可動体130の後側から第1下部可動体110が表示部20bに対して出没するようになっている(図7および図8参照)。」

(イ)「【0037】
図28および図29に示すように、前記第2下部可動体130は、光を透過しない不透明な枠部140を本体として、光拡散部142,144、ロゴLED基板(発光体基板)146および後壁部148を順に枠部140に取り付けて構成される。なお、第2下部可動体130は、パチンコ機のモチーフに合わせた複雑な外形とされる。枠部140は、第2下部可動体130の前面を構成する前壁140aと、この前壁140aの外周縁から後側に延出形成されて、第2下部可動体130の側面を構成する周壁140bとを備え、前壁140aの後側に周壁140bで囲われて光拡散部142,144、ロゴLED基板146および後壁部148の収容空間が画成される。また枠部140には、前壁140に複数の前壁開口部(開口部)140cが設けられると共に、前壁140aの後面から後側へ向けて円柱形状の突片140dが複数突出形成され、実施例では、長手辺が延在する左右方向に離間して3つの突片140dが設けられている。すなわち、複数の突片140dは、前壁140aの後面に設けられるので、前壁140aに隠れて前壁開口部140cを介して第2下部可動体130の外側から視認不能である。なお、突片140dの前壁140aからの突出寸法は、周壁140bの前壁140aからの突出寸法より僅かに(後壁部148の板厚分)小さくなるよう設定される。更に枠部140は、突片140dより突出寸法を抑えて前壁140aの後面に形成され、第2下部可動体130の短手に沿う方向に延在する規制突部140eを備えている。なお、実施例の規制突部140eは、光拡散部の後述する前光拡散部142の板厚分程度の突出寸法にしてある。」

エ 引用文献4
原査定に係る拒絶理由で周知技術の例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-131459号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0039】
図6及び図7に示すように、本実施形態の弾球遊技機1においては、遊技板32と液晶ディスプレイ部70との間には、スペーサ110が備えられている。先ずスペーサ110の構成を説明する。」

(イ)「【0058】
具体的には、スペーサ110の前面の凹部114には、電飾用レンズ部材140が嵌め込まれる。この凹部114に電飾用レンズ部材140が嵌め込まれた状態で、電飾用レンズ部材140は、正面側から見て凹部114に配備された開口部113を覆っている。スペーサ110の裏面に発光基板130が取り付けられた状態で、各発光部材131が正面側から見て各開口部113に臨む位置となることにより、電飾用レンズ部材140は、スペーサ110の前面側から見て複数の発光部材131と重なる位置に取り付けられていることになる。」

オ 引用文献5
原査定に係る拒絶理由で周知技術の例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-227430号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0040】
(左右の側部発光演出装置について)
次に、前記左右の側部発光演出装置80,81につき説明する。なお、左右の側部発光演出装置80,81は、基本的構成が左右対称となるよう形成されているので、右側部発光演出装置80の構成に関して詳細に説明し、左側部発光演出装置81に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。前記右側部発光演出装置80は、図6、図8、図14、図15に示すように、前記裏ユニット57(箱状本体58)における対向面部59の開口部60の右側前面(左側部発光演出装置81では対向面部59における開口部60の左側前面)に配設され、前方へ光を照射する複数のLED82a,82b,82cが実装された側部LED基板82と、該側部LED基板82の前側に配設される複数の発光体カバー91,92,93,94とから構成されて、該側部LED基板82のLED82a,82b,82cを発光することで、各発光体カバー91,92,93,94が明輝されるようになっている。ここで、前記側部LED基板82は、前記裏ユニット57に配設した際に、前記対向面部59の上下方向の略全長に亘って延在するよう形成されて、該対向面部59における開口部60の右側前面(左側部発光演出装置81では対向面部59の開口部60の左側前面)の略全面を覆うよう構成されている(図8参照)。なお、前記側部LED基板82には、各発光体カバー91,92,93,94に形成された突出部115(後述)を挿通する嵌合孔部82dが複数箇所に形成されている。」

カ 引用文献6
原査定に係る拒絶理由で周知技術の例として引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-246724号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0025】
ここで、透明プレート7は、透明遊技盤6と同じくアクリル板等の透明性を有する部材で形成される。そして、透明プレート7は前記したようにパチンコ機1の奥行き方向において透明遊技盤6と画像表示装置41、照明装置42、43との間であって、透明遊技盤6を正面から見た場合に、画像表示装置41や照明装置42、43の周囲で且つ画像表示装置41や照明装置42、43と重ならない領域に配置されている。
【0026】
そして、透明プレート7の前面(即ち、透明遊技盤6と対向する面)には、複数の凹部61が形成されている。ここで、凹部61は大小様々なサイズの星型に形成されており、透明プレート7の表面の一部を削ることによって成形される。ここで、凹部61は、後述するように透明プレート7の側面に対向して配置されたLED等の光源から透明プレート7内へと入射された光を、遊技者側へと案内する案内部に相当する。即ち、透明プレート7内へと光が入射されると、透明プレート7において星型に形成された凹部61が発光することとなる。また、凹部61はLED等の光源から透明プレート7内へと入射された光を、遊技者側と反対方向(即ち、枠体51の背面壁部53側)へも案内する。従って、空間54において透明プレート7の背面側に照射対象物(人形など)を配置すると、その照射対象物に対して光を照射し、明るく照らすことが可能となる。
尚、透明プレート7による発光システムの詳細については後述する。
また、本実施形態では透明プレート7の前面に凹部61を形成しているが、透明プレート7の後面(透明遊技盤6と対向する面と反対側の面)に凹部61を形成しても良い。」

キ 引用文献7
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-233387号公報(以下「引用文献7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0012】
遊技盤1の前面には、図1に示すように、アウト球流入口4、センターケース10、上下に並んで配置された二つの始動入賞口11,12、変動入賞装置13、複数の一般入賞口14、普図始動ゲート15、普図表示器16、普図記憶表示器17、普図状態表示器18、特図表示器19、特図記憶表示器20、特図状態表示器21、多数の障害釘9などが設けられている。なお障害釘9は、遊技領域3の上部に飛入した遊技球がこれに当たりながら流下するものであり、センターケース10や入賞具(始動入賞口11等)の取付部分を除いた遊技領域内に複数本植設されている。」

(イ)「【0022】
センターケース10は、遊技盤1の前面側から取り付けられ、装飾枠体31と、装飾枠体31の裏面側に取り付けられる画面枠32と、を含む。
遊技盤1を構成する基板(いわゆるベニヤ)には、上記センターケース10をはめ込むためのセンターケース用開口(図示省略)が形成され、上記センターケース10は、遊技盤1の前面からこのセンターケース用開口にはめ込まれて取り付けられる。
【0023】 また装飾枠体31は、内側が前後に開口する枠状のものであり、画面枠32の後述する表示用開口部33を介して表示装置本体の表示部6を前面から視認可能とする。また、前述の装飾部22や装飾部25?27は、これら装飾部をそれぞれ構成する部材を装飾枠体31に固定することによって、設けられている。
また装飾枠体31には、表示部6の上方に、前方に突出する鎧部34が設けられ、この鎧部34の上部は、その頂部34aを右方に偏らせるように両側に向けて下り傾斜している。鎧部34は、遊技球が表示部6の前面に落下しないようにする部分である。
一方、画面枠32は、前記表示部6が臨む矩形の表示用開口部33(図2に示す)を内側に有し、装飾枠体31に対して固定される部材である。」

(ウ)【図2】及び【図5】には、センターケース用開口にはめ込まれて取り付けられる、装飾枠体31の部分が記載されている。
【図2】

【図5】


以上の記載事項から、引用文献7には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

遊技盤1の前面側から取り付けられるセンターケース10は、内側が前後に開口する枠状の装飾枠体31を含み、センターケース用開口にはめ込まれて取り付けられる装飾枠体31の部分を有すること。

ク 引用文献8
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-153679号公報(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0022】
遊技領域3aには、中央部に形成された開口部37と、遊技領域3aに打ち出された遊技球Baを導入し得るように左上部に形成されたワープ導入口(導入口)26と、該ワープ導入口26から導入された遊技球Baを転動させるステージSと、を有するセンター飾り(センター役物)23を備えている。該センター飾り23は、開口部37の下側に上記ステージSを有しており、該ステージSの下方に球放出口24を有している。」

(イ)【図2】には、センター飾り23の左上に、遊技領域3aの開口部37に挿入される部分が記載されている。
【図2】


以上の記載事項から、引用文献8には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

センター飾り23の左上に、遊技領域3aの開口部37に挿入される部分を有すること。

ケ 引用文献9
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-236110号公報(以下「引用文献9」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0020】図1に示すように、遊技盤1の表面には、一対のガイドレール2で囲まれた略円形の遊技部3を備えており、遊技部3内には、複数の障害釘4や風車5等の障害部材を配設するとともに、複数の特別図柄画像や演出画像を変動表示するための画像表示装置6と、普通図柄を変動表示するための普通図柄表示装置7と、複数の入賞口と、いずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球を遊技部3内から排出するためのアウト口8とを備えている。」

(イ)「【0030】<画面枠部材>画面枠部材14は、図2、図3に示すように、遊技盤1に取り付けるための取付基板15と、取付基板15から遊技盤1の前方へ突出して設けた枠部16と、取付基板15から遊技盤1の後方へ向かって設けられた凹室17とからなる。
【0031】取付基板15は、その略中央部に画像表示装置6の画面が臨む開口を備えており、開口から後方に向かって凹室17が設けられている。また、取付基板15の上部には、枠部16の上方に位置するようにして突出部18が設けられている。この突出部18内には複数の装飾用LED(図示せず)が配設されている。そして、この突出部18により、枠部16の上面が左右に二分されている。」

(ウ)「【0046】<球案内路>突出部18の左右側方に位置する取付基板15の表面には、枠部16上を転動する遊技球Pが接触する位置に、遊技球Pの転動方向に沿って第1の球案内路30が設けられている。また、通路部材20の内壁面であって、取り込んだ遊技球Pが接触する位置に、遊技球Pの転動方向に沿って第2の球案内路31が設けられている。」

(エ)【図2】には、枠部16が突出部18により左右に二分されており、左右それぞれの枠部16上で遊技球Pが転動しうることが記載されている。
【図2】


以上の記載事項から、引用文献9には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

遊技盤1の表面には略円形の遊技部3を備えており、遊技盤1に取り付けられる取付基板15から遊技盤1の前方へ突出して設けた枠部16が、枠部16の上方に位置する突出部18により、枠部16の上面が左右に二分されており、左右それぞれの枠部16上で遊技球Pが転動すること。

コ 引用文献10
原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2008-212750号公報(以下「引用文献10」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0015】
前面構成部材8は、図2から図5に示すように、遊技盤1に形成された開口31に該遊技盤1の前方から嵌装される部材であって、前面構成部材8の前面部分を構成する取付基板ユニット(取付基板体)40と、該取付基板ユニット40の裏面側に設けられる裏箱ユニット(裏箱体)41と、該裏箱ユニット41の前面に前記取付基板ユニット40を取り付けて、その内部に収納される装飾ユニット43とを備えている。
【0016】
裏箱ユニット41は、前記遊技盤1の開口31に嵌装され、前方を開放した箱状ユニットであって、後方の壁に長方形状の表示用開口窓部33が形成されて略額縁状を呈しており、前記裏面構成部材32に内装するように装着されることにより、前記表示用開口窓部33から前記変動表示装置9の表示部29を臨ませるように成っている。この裏箱ユニット41の周囲の適宜位置には、この前面に前記取付基板ユニット40を取り付けるためのネジ等の止着部材を止着する止着部44が配設されている。
【0017】
取付基板ユニット40は、前記表示用開口窓部33よりも大きい開口部46が形成された異形枠体状のユニットであって、その周囲に沿って前記遊技盤1に取り付ける取付基板47を有しており、その適宜位置には止着部材を止着する止着部48が形成されている。図3に示すように、この取付基板47の前面側上部には、左右全幅に亘って庇状の鎧部51を前方に突設し、該鎧部51の左右傾斜端部から下方に縦長の側辺部52,52を突設し、左右の側辺部52,52の下端同士を接続する状態で底部53を後方へ突設し、この取付基板ユニット40を前記裏箱ユニット41の前面に取り付けることにより、前記取付基板47の後方に鎧部51、左右側辺部52,52、及び底部53に囲まれた凹室54を形成している。この凹室54の奥の面に前記表示用開口窓部33が配設されており、鎧部51は、上面が中央の円弧状の振り分け凸部55から左右方向に向けて緩やかに下り傾斜している。そして、前記取付基板47の後部には取付支持部56が前記鎧部51と連続するように一体成形されており、該取付支持部56は前記取付基板47から遊技盤1内へ臨むように後方へ向けて突設されている。前記凹室54の底部には、遊技球が転動可能であって、該転動する遊技球を前記前面構成部材8の下方の遊技領域へ流下可能なステージ部60が形成されている。この凹室54内に配されたステージ部60は、左右方向に延設された第1ステージ61と、その前面側下方において左右方向に延設された第2ステージ71とから成り、その具体的構造については後で詳細に説明する。
【0018】
また、前記取付基板ユニット40には、前記ガイドレール5によって区画され、前記発射装置により発射された遊技球を導入部17から遊技領域に案内する発射球案内通路13(図1参照)とは反対側の部分の前記取付基板47を前記鎧部51から右側の前記遊技領域区画部材側へと延出させて、外形が前記遊技領域区画部材6に沿って円弧状に形成された取付基板延出部81を設けている。この取付基板延出部81は、前記裏箱ユニット41との間に収納される前記装飾ユニット43の前面を覆っており、例えば、無色透明の合成樹脂材により形成されて、後方の装飾ユニット43が視認可能なカバー部材を構成している。取付基板延出部81は無色透明の部材に限るものではなく、後方の装飾ユニット43が視認可能であれば、有色透明または半透明等であっても構わない。また、この取付基板延出部81は、その前方を遊技球が流下可能に形成され、遊技球が通過しうる幅を有しており、前述したように、外形が前記遊技領域区画部材6に沿った円弧状を呈しているので、前記鎧部51の振り分け凸部55によって右方向に振り分けられた遊技球が該取付基板延出部81の前面に沿って円滑に流下するように成っている。即ち、図1に示すように、前記取付基板ユニット40を遊技盤1に取り付けると、取付基板延出部81の円弧状の外周部は前記遊技領域区画部材6の上部から右側部分に亘って当接されることになり、この遊技領域区画部材6と該取付基板延出部81の内周部を区画する前記右側辺部52との間を遊技球が流下することになる。したがって、取付基板延出部81の後方に装飾ユニット43を配置しても、該取付基板延出部81を後方の装飾ユニット43が視認可能な部材により形成され、且つ、該取付基板延出部81の前方を遊技球が流下可能であるので、装飾領域を拡大できるとともに、拡大した装飾領域の前を遊技球が通過でき、装飾効果を高めつつ遊技の興趣を高めることができる。」

(イ)「【0021】
前述したように、前記裏箱ユニット41の前面に前記取付基板ユニット40を取り付けて、これらの内部に装飾ユニット43を収納している。装飾ユニット43は、図4及び図5に示すように、本実施例では、例えば、上装飾ユニット95、左装飾ユニット96及び右装飾ユニット97から構成され、それぞれ歯車やピストン等の機械の内部構造を暗示させるような装飾が施されている。」

(ウ)「【0024】
なお、各装飾ユニット95,96,97は複数の部品を組み合わせてユニット化されており、例えば、左装飾ユニット96は、ユニット本体155が有色透明の合成樹脂材等の透光性の部材により形成され、その裏面側に裏面側発光基板160を備えるとともに、その前面側に前記ユニット本体155の前面部に形成された凹部161に係合する異形箱体状の装飾部品162、該装飾部品162を覆う蓋材163、該蓋材163に装着される前面側発光基板164、該発光基板164の前面に設けられ、レンズ枠167内に収納される後側レンズ部材165及び前側レンズ部材166を順次備えて、前記文字装飾125を構成しており、前面側発光基板164によって後側レンズ165及び前側レンズ166を介して文字装飾125が点灯し、前記裏面側発光基板161によって前記ユニット本体155における文字装飾12の周囲部分が点灯するように成っている。」

以上の記載事項から、引用文献10には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

遊技盤1に形成された開口31に該遊技盤1の前方から嵌装される前面構成部材8の前面部分を構成する取付基板ユニット40と、取付基板ユニット40の内部に収納される装飾ユニット43とを有し、取付基板ユニット40は、前記表示用開口窓部33よりも大きい開口部46が形成された異形枠体状のユニットであって、その周囲に沿って前記遊技盤1に取り付ける取付基板47を有しており、前記取付基板47の後部には取付支持部56が一体成形されており、該取付支持部56は前記取付基板47から遊技盤1内へ臨むように後方へ向けて突設されており、取付基板延出部81は、前記装飾ユニット43の前面を覆っており、無色透明の合成樹脂材により形成されて、後方の装飾ユニット43が視認可能なカバー部材を構成し、その前方を遊技球が流下可能に形成されており、装飾ユニット43は、上装飾ユニット95、左装飾ユニット96及び右装飾ユニット97から構成され、左装飾ユニット96は、裏面側発光基板160、前面側発光基板164を備え、複数の部品と共に文字装飾125を構成していること。

(2)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
a、d、f、g、j 引用発明1の「遊技盤202」、「ワープルート304」、「傾斜片面403」、「基底片面401B,401C,401D」及び「パチンコ機」は、それぞれ本願発明の「遊技板」、「ワープ通路」、「区画壁部」、「フランジ部」及び「遊技機」に相当する。

b 引用発明1の「センター装飾部材205」は、その一部が「遊技盤202に形成された中央開口部201の一部を塞ぐように、螺子などによって」「遊技盤202の表面(正面)に」「固定される」のであるから、遊技盤202の中央開口部201に挿入されてはいないが、遊技盤202の中央開口部201に取付けられている。そうすると、引用発明1の「b 遊技盤202の表面(正面)に、センター装飾部材205の一部が遊技盤202に形成された中央開口部201の一部を塞ぐように、螺子などによって固定されるセンター装飾部材205」と、本願発明の「B 該遊技板の前記開口部内に挿入されたセンター役物」とは、「B’ 該遊技板の前記開口部に取付けられたセンター役物」である点で共通する。

h 引用発明1の「基底片面401A」は、「突出片面402に対して径方向内側に配置された傾斜片面403の径方向外側に基底片面401Aが配置され」るものであり、「遊技盤202の盤面202A上の転動領域232から延長された新たな転動領域として機能」するものであるから、本願発明の「拡張された拡張遊技領域」と同等の機能を有するものである。そうすると、引用発明1の構成hにおける「遊技盤202の盤面202A上にはないけれども、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232から延長された新たな転動領域として機能」する、「突出片面402に対して径方向内側に配置された傾斜片面403の径方向外側に」「配置され」た、「表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401A」は、本願発明の「H 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第一の遊技領域拡張部」と、「H’ 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、拡張された拡張遊技領域を形成する第一の遊技領域拡張部」である点で共通する。

h1 引用発明1の「基底片面401A」は、引用発明1の構成hに「表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aは、遊技盤202の盤面202A上にはない」とあり、また、引用発明1の構成c1に「表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aを通過し遊技者側にそのままの状態で達し」とあることからして、「遊技盤202」の「中央開口部204」の内縁よりも径方向内側に形成されていることは明らかである。そうすると、引用発明1の「h1 センター装飾部材205の基底片面401Aは無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で成型加工されて」いることは、本願発明の「H1 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記第一の遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され」ることに相当する。

c1 引用発明1は、本願発明の「C 立体的な装飾がなされている装飾部」に対応する構成を備えていないが、引用発明1の「基底片面401A」は、「表示画面203の一部と重ね合わせるようにして」設けられており、「表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aを通過し遊技者側にそのままの状態で達」することから、「基底片面401A」を介して、後方に位置する「表示画面203」を視認可能であるといえる。そうすると、上記h1で示した点を踏まえ、引用発明1の「c1 表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232からセンター装飾部材205の傾斜片面403にかけてセンター装飾部材205の基底片面401Aを渡し設けており、表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aを通過し遊技者側にそのままの状態で達」することは、本願発明の「C1 立体的な装飾がなされている前記装飾部は、透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるように前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置し、前記第一の遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ」ることと、「C1’ 透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置する部材が視認可能である」点で共通する。

そうすると、両者は、
「A 前面に遊技領域を有し該遊技領域内に開口部が形成された遊技板と、
B’ 該遊技板の前記開口部内に取付けられたセンター役物と、を備え、
B1 該センター役物は、
D 前記センター役物の外側に向かって開口したワープ入口及び前記センター役物の内側に向かって開口したワープ出口を連通するワープ通路と、
F 前記遊技板の前面よりも遊技者側に突出し、前記遊技領域と前記センター役物の内部空間とを区画する区画壁部と、
G 前記挿入部よりも径方向外側に突出し前記遊技板の前面に当接するフランジ部と、
H’ 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、拡張された拡張遊技領域を形成する第一の遊技領域拡張部と、を具備し、
H1 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記第一の遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され、
C1’ 透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置する部材が視認可能である、
J 遊技機。」

の点で一致し、以下の4点で相違する。

相違点1 本願発明の「センター役物」は、「E 前記遊技板の前記開口部に挿入されている挿入部」を具備しており、遊技板の開口部へのセンター役物の取付け(構成B)に関して、「挿入」して取付けており、「E1 前記挿入部は、前記第一の遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され」ており、「第一の遊技領域拡張部」は「前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する」(構成H)ものであり、「H4 前記挿入部と前記遊技板との間に生じる空間の幅よりも前記第一の遊技領域拡張部である前記挿入部と前記区画壁部との間の幅のほうが大きくなっており」としているのに対し、引用発明1では、「センター装飾部材205」は「挿入部」を備えておらず、センター装飾部材205は遊技盤202に、螺子などによって固定されており、挿入部の配置について特定されておらず、第一の遊技領域拡張部の配置についても挿入部に基づいて特定されていない点。

相違点2 本願発明は「C 立体的な装飾がなされている装飾部」を備え、「C1’ 透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置する部材が視認可能である」点に関し、「立体的な装飾がなされている前記装飾部」を視認可能であるとしていると共に、「立体的な装飾がなされている前記装飾部」は「前記第一の遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ」ているのに対し、引用発明1では「装飾部」を備えておらず、「第一の遊技領域拡張部の後方に位置する部材」(構成C1’)は「表示画面203」であり、「装飾部」を設ける位置の限定もされていない点。

相違点3 本願発明では「H3 前記第一の遊技領域拡張部の遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす特別装飾部が、前記第一の遊技領域拡張部に対して正面視で前記区画壁部を挟んで径方向内側に設けられ」との構成を有しているのに対し、引用発明1では当該構成を有していない点。

相違点4 本願発明では、「K 前記第一の遊技領域拡張部とは異なる位置に前記フランジ部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第二の遊技領域拡張部を備え」ているのに対し、引用発明1では、「基底片面401A」と異なる位置に、新たな転動領域として機能するような構成を設けることは特定されていない点。

(3)相違点についての判断
以下、相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用文献7には、装飾枠体31(本願発明の「センター役物」に相当する。)が、開口にはめ込まれて取り付けられる部分(本願発明の「挿入部」に相当する。)を有することが記載されている。また、引用文献8には、センター飾り23(本願発明の「センター役物」に相当する。)が、遊技領域3aの開口部37に挿入される部分(本願発明の「挿入部」に相当する。)を有することが記載されている。さらに、引用文献10には、取付基板ユニット40(本願発明の「センター役物」に相当する。)が、遊技盤1内へ臨むように後方へ向けて突設されている取付支持部56(本願発明の「挿入部」に相当する。)を有し、遊技盤1に形成された開口31に前方から嵌装されることが記載されている。
これらの記載事項に基づけば、引用発明1において、センター装飾部材205を遊技盤202に取付けるにあたり、中央開口部204に挿入する部分をセンター装飾部材205に設け、該挿入する部分を中央開口部204に挿入することによりセンター装飾部材205を遊技盤202に取付けるようにすること(本願発明の構成B,Eをなすこと)は、当業者にとって容易であるといえる。
そして、そのようにした場合、基底片面401Aは、センター装飾部材205の挿入する部分と傾斜片面403との間に形成されること(本願発明の構成H)となり、また、センター装飾部材205の挿入する部分と中央開口部204との間に生じる空間の幅は、挿入することにより取付けるために小さい必要があるから、センター装飾部材205と傾斜片面403との間の幅の方が大きくなる(本願発明の構成H4)ものといえる。
さらに、引用発明1の「センター装飾部材205の基底片面401A」は、「無色透明の光透過性材質であるポリカーボーネート樹脂で成型加工されて」おり(構成h1)、表示画面203のカラー画像は、センター装飾部材205を介しても変色することなく見ることができる(記載事項(ウ)【0023】)ことからして、「センター装飾部材205の基底片面401A」の後方に表示画面203が取付けられるような空間が形成されていることは明らかであり、上記のようにセンター装飾部材205に挿入する部分を設ける際には、基底片面401Aの後方に空間が形成されるようにする(構成E1)ことも、当業者であれば容易に為し得たことである。
そうすると、上記相違点1に係る発明は、引用発明1及び引用文献7、8又は10に記載された事項から、当業者であれば容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
上記相違点2について検討する。
引用文献2乃至6それぞれに記載されるように、立体的な装飾がなされている装飾部を、その後方に配置されたLED等の発光手段と共に、遊技領域の後方に配置することは、周知技術であるといえる。そうすると、引用発明1において、センター装飾部材205の基底片面401Aの後方に、立体的な装飾がなされている装飾部を、単に設けようとすることは、当業者であれば適宜に為し得たことである。
また、引用文献10には、取付基板延出部81は、前記装飾ユニット43の前面を覆っており、無色透明の合成樹脂材により形成されて、後方の装飾ユニット43が視認可能なカバー部材を構成し、その前方を遊技球が流下可能に形成されていること、すなわち、遊技球が流下可能な取付基板延出部81の後方に、装飾ユニット43を設け、装飾ユニット43を視認可能とすることが記載されている。このような事項に基づけば、引用発明1において、センター装飾部材205の基底片面401Aの後方に、装飾ユニット43のような装飾部を設けようとすることは、当業者であれば想到し得たことであると一応いえる。
一方、引用発明1においては、「表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232からセンター装飾部材205の傾斜片面403にかけてセンター装飾部材205の基底片面401Aを渡し設けており、表示画面203から放たれた光は、表示画面203の一部と重なり合ったセンター装飾部材205の基底片面401Aを通過し遊技者側にそのままの状態で達し」(構成c1)ており、基底片面401Aの後方から、傾斜片面403の径方向内側の位置(本願発明の構成C1の「遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨っ」た、に対応する位置)には、表示画面203が配置されている。このような位置に立体的な装飾がなされている装飾部を設けるためには、表示画面203をこの位置から排除しなければならないが、引用文献1には「センター装飾部材に外周が取り囲まれた表示画面が大型化又は偏在されても、パチンコ球が転動流下可能な転動領域のスペースを十分に確保するとともに表示画面の視認に支障がない構造を有したパチンコ機を提供することを課題とする」(記載事項(ア)【0009】)と記載されるように、引用発明1は表示画面が大型化又は偏在されても転動領域のスペースを十分に確保するとともに表示画面の視認に支障がないようにすることを課題とするものであり、引用発明1において、上記の位置から表示画面203を排除した上で、立体的な装飾がなされている装飾部を設けることは、表示画面の大型化や表示画面の視認に支障がないようにすることに反する構成にすることを強いるものであり、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。また、この点に関し、引用文献7乃至9には、何ら記載されていない。
そうすると、引用発明1、上記周知技術及び引用文献7乃至10それぞれに記載された事項に基づいて、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

ウ 相違点3について
引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明の構成とするためには、傾斜片面403の径方向内側に、基底片面401Aの遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす部材を設けなければならない。
しかし、引用文献1には、センター装飾部材205の基底片面401Aよりも遊技者側に、装飾をなす部材を設けることについて何ら記載されておらず、引用発明1において、そのような装飾をなす部材を設けること、設けるとして傾斜片面403の径方向内側の位置とすることの動機付けは、ない。
また、仮に、引用発明1において傾斜片面403の径方向内側に、基底片面401Aの遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす部材を設けたとすると、引用発明1においては、「表示画面203の一部と重ね合わせるようにして、遊技盤202の盤面202A上の転動領域232からセンター装飾部材205の傾斜片面403にかけてセンター装飾部材205の基底片面401Aを渡し設けており」(構成c1)、基底片面401Aに対して傾斜片面403の径方向内側には、表示画面203が配置されており、上記装飾をなす部材を設けると、表示画面203を支障することになる。上記相違点2について示したように、引用文献1には、表示画面の視認に支障がないようにすることを課題とすることが記載されており、引用発明1において、表示画面203を支障するような位置に装飾をなす部材を設けることは、当該課題の解決を阻害することとなり、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。また、この点に関し、引用文献2乃至10には、何ら記載されていない。
そうすると、引用発明1、上記周知技術及び引用文献7乃至10それぞれに記載された事項に基づいて、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

エ 相違点4について
引用発明1において、上記相違点4に係る本願発明の構成とするためには、基底片面401A(本願発明の「第一の遊技領域拡張部」に相当)が遊技盤202の盤面202Aの左側に設けられている(記載事項(イ)【0013】「突出片面402の一部によって」「上中央付近から左横に向かって下りに傾斜する傾斜片面403が形成され」、記載事項(オ)「傾斜片面403の径方向外側に基底片面401Aが配置される」)ことから、新たな転動領域として機能するような構成を遊技盤202の盤面202Aの右側に設けなければならない。
しかし、引用文献1には、遊技盤202の盤面202Aの右側に転動領域として機能するような構成を設けることについて何ら記載されておらず、引用発明1において、新たな転動領域として機能するような構成を設けること、及び、設けるとして遊技盤202の盤面202Aの右側の位置とすることの動機付けは、ない。
また、仮に、引用発明1において、新たな転動領域として機能するような構成を遊技盤202の盤面202Aの右側に設けるとすると、引用文献1には、「遊技盤202の盤面202Aに形成された遊技領域207においては、センター装飾部材205の突出片面402がその上中央外側から右横外側にかけて外側レール206A及び内側レール206Bの各内縁と非常に接近しており、その接近した領域にパチンコ球が侵入することを阻止するために、返し部材208がセンター装飾部材205の上中央外側付近に設けられている」(記載事項(イ)【0019】)ことが記載されており、遊技盤202の盤面202Aの右側にはパチンコ球が侵入しないように遊技盤202やその他の部材が構成されている。そうすると、単に新たな転動領域として機能するような構成を遊技盤202の盤面202Aの右側に設けたとしても、パチンコ球が侵入しないことから、実際には新たな転動領域として機能しない。
ここで、引用文献9には、遊技盤に設けられた左右に二分されたそれぞれの枠部16上で遊技球Pが転動することが記載されているが、遊技部が略円形であることから、枠部16の左側にも右側にも遊技球Pが流入しうるものであり、引用発明1に単に引用文献9に記載された技術的事項を適用しても、上述の通り、枠部16の右側でパチンコ球が転動するようなものとはならない。
さらに、引用発明1において、遊技盤202の盤面202Aの右側に設ける構成を、新たな転動領域として機能させるために、パチンコ球が侵入するようなものとすると、遊技盤202の盤面202Aの右側の領域にパチンコ球が流下するための構成が必要となるが、上記相違点2について示したように、引用発明1は表示画面が大型化又は偏在されても転動領域のスペースを十分に確保するとともに表示画面の視認に支障がないようにすることを課題とするものであり、引用発明1において、上述のような構成を設けることは、当該課題の解決を阻害することとなり、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。また、この点に関し、引用文献2乃至8及び10には、何ら記載されていない。
そうすると、引用発明1、上記周知技術及び引用文献7乃至10それぞれに記載された事項に基づいて、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

(4)小括
以上のとおり、本願発明の相違点2、3及び4に係る構成に関して、引用発明1、上記周知技術及び引用文献7乃至10それぞれに記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

3 まとめ
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1
(1)平成30年2月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載の、「前記区画壁部と該区画壁部よりも径方向内側において該第一の遊技領域拡張部の遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす特別装飾部とが並ぶ位置」とは、どのような位置を意図しているのか、明確であるとは言えない。
(2)平成30年2月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載の、「フランジ部と区画壁部との間」とはどのような位置であるのか不明である。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、不明確である。

理由2.(進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献A及びBに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由3.(先願)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願日前の下記の出願Cに係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2010-227430号公報(原査定の引用文献5)
B.特開2009-233387号公報(原査定の引用文献7)
C.特願2015-232791号

2 明確性に係る当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由の理由1(明確性)に対して、平成31年1月30日付けの手続補正書による補正により、特許請求の範囲は上記「第2 本願発明」において摘示したとおりに補正された。
このことにより、特許請求の範囲の記載は明確となった。
したがって、本願については、明確性についての当審拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

3 進歩性に係る当審拒絶理由についての判断
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献A
当審拒絶理由に引用された引用文献Aには、図面とともに、次の記載がある(下線は当審にて付した。以下、「記載事項」として参照することがある)。

(ア)「【0005】
ところで、遊技盤を大型化する場合には、前記中枠において遊技盤が占有する領域が増大し、中枠側に設けられた各種構成部品との関係上、遊技盤側に配設される遊技部品の設置スペースが制限される場合がある。例えば、パチンコ機に設けられる球皿等との位置関係上、遊技盤を設置する遊技盤保持部を中枠の下方に拡げるには限界があり、遊技盤保持部を中枠の上方位置へ拡げるよう構成することが求められる。この場合に、中枠の裏側上部に位置する球タンクと遊技盤とが前後に重なる関係で位置することになるため、遊技盤(特に遊技領域)の上部位置を照明する照明装置を設置することが困難で、遊技盤(遊技領域)の上部位置の装飾性が低下することに繋がっていた。」

(イ)「【0015】
(パチンコ機について) 実施例に係るパチンコ機10は、図1に示すように、矩形枠状に形成されて遊技店の図示しない設置枠台に固定される固定枠としての外枠11の開口前面側に、後述する遊技盤30(図3参照)を着脱可能に保持された本体枠としての中枠12が開閉および着脱可能に組み付けられて、該遊技盤30の裏側に対して、各種図柄を変動表示可能な図柄表示装置19が着脱可能に配設されている。また、前記中枠12の前面側には、前記遊技盤30を透視保護するガラス板を備えた装飾枠としての前枠13が開閉可能に組み付けられると共に、該前枠13の下方にパチンコ球を貯留する下球受け皿15が開閉可能に組み付けられる。なお、実施例では、前記前枠13の下部位置に、パチンコ球を貯留する上球受け皿14が一体的に組み付けられており、前枠13の開閉に合わせて上球受け皿14も一体的に開閉するよう構成される。ここで、前記上球受け皿14は、前記前枠13と別体に形成して中枠12に対して開閉可能に組み付けるようにしてもよい。」

(ウ)「【0019】
(遊技盤について)
前記中枠12の遊技盤保持部24に配設される前記遊技盤30は、図4?図8に示すように、アクリルやポリカーボネート等の光透過性の合成樹脂材からなる平板状の透明板31と、該透明板31の後面に組み付けられて前記図柄表示装置19が着脱可能に配設されると共に上部および左右の側部発光演出装置80,81,120(後述)や可動演出装置140,141が配設される不透明な合成樹脂材で形成された裏ユニット57とから構成され、該裏ユニット57に形成された前後に開口する開口部60(図7、または図8参照)を介して図柄表示装置19を前面側から視認し得るよう構成されている。ここで、裏ユニット57に形成される開口部60は、該裏ユニット57の上下および左右幅の大部分が開口する大型の開口である。なお、実施例の透明板31は、アクリル樹脂により一定の厚み寸法の平板状に形成されている。ここで、前記透明板31および裏ユニット57は、外郭形状が略整合する大きさおよび形状に形成されて、該透明板31と裏ユニット57とを組み付けた状態で透明板31の後面を裏ユニット57で全面的に覆うよう構成され、前側から遊技盤30(裏ユニット57)の裏側を視認し得ないようになっている。
【0020】
(透明板について)
図3?図5に示すように、前記透明板31の前面には、左方に膨出する円弧状に形成した案内レール36が配設されると共に、該案内レール36の右方位置に、左端縁を右方に凹む円弧状に形成した第1の盤面飾り部材35aが配設されている。そして、前記案内レール36および第1の盤面飾り部材35aにより、パチンコ球が流下可能な遊技領域34が略円形状に画成される。また、前記透明板31の前面には、前記案内レール36の左上外方(遊技領域34の外側)に第2の盤面飾り部材35bが配設されると共に、案内レール36の左下外方(遊技領域34の外側)に第3の盤面飾り部材35cが配設されている。前記第1?第3の盤面飾り部材35a?35cの夫々は、不透明な合成樹脂材から形成されており、該第1?第3の盤面飾り部材35a?35cが配設された部分を除いた領域(すなわち遊技領域34内)において透明板31の裏側(裏ユニット57側)を視認し得るよう構成されている。」

(エ)「【0022】
また、前記透明板31には、前記裏ユニット57に形成された開口部60の前側に前後に貫通する貫通口31a(図5参照)が形成されており、該貫通口31aに対して前後に開口する枠状の枠状装飾体(装飾カバー部材)43(後述)が配設されている。すなわち、前記裏ユニット57の開口部60から臨む前記図柄表示装置19は、前記枠状装飾体43における前後に開口する窓口43aを介して透明板31の前側に露出して、該図柄表示装置19の表示面19aで展開される図柄変動演出を前側から視認し得るようになっている。また、この枠状装飾体43は、透明板31より前面に突出する円弧状の庇状部48(後述)が備えられており、前記遊技領域34に打ち出されたパチンコ球が枠状装飾体43の窓口43aを横切って流下(落下)するのを庇状部48で規制している。」

(オ)「【0025】
(枠状装飾体について)
前記枠状装飾体43は、図3に示すように、前後に窓口43aが開口する枠状に形成されて、前記遊技盤30に開設された貫通口31aに前側から取り付けられている。そして、前記枠状装飾体43を第1装着口32aに配設した際に、前記裏ユニット57に形成した開口部60が枠状装飾体43の窓口43a内で開口して、該窓口43aを介して裏ユニット57に設けた図柄表示装置19を前側から視認し得るよう構成されている。なお、実施例では、前記枠状本体部の窓口43aより裏ユニット57の開口部60の方が大きく形成されて、該開口部60を介して臨む図柄表示装置19の一部が前記透明板31に対向し、該透明板31を介して図柄表示装置19を前側から視認されるようになっている。また、前記枠状装飾体43の左側部には、前記遊技領域34を流下するパチンコ球が通入可能な球誘導部44が設けられると共に、該装飾部材49の下縁部(始動入賞装置39の上方位置)に、球誘導部44を通過したパチンコ球を受け入れてパチンコ球の流下方向を変更しつつ最終的に遊技領域34内に排出するステージ45が設けられている。
【0026】
ここで、前記枠状装飾体43は、図3、図11、図13に示すように、前記透明板31に開設された前記貫通口31aに沿って延在する環状に形成され、該透明板31の盤面にネジ固定される固定板46と、該固定板46から後方に突出し、前記貫通口31a内に挿入される内周壁47と、該固定板46から前方へ突出する前記庇状部48とを備えた前後に開口する枠状に形成されて、該開口が前記窓口43aとされる。すなわち、前記内周壁47を透明板31の貫通口31aに対して前側から挿入すると共に、前記固定板46を透明板31の前面に当接させて、該固定板46を透明板31にネジ止めすることで、前記枠状装飾体43が透明板31に取り付けられる。ここで、前記庇状部48は、前記固定板46の左側端部から上端部および右側端部に亘って延在するよう形成されて、前記遊技領域34を流下する過程で庇状部48に接触したパチンコ球を、該庇状部48に沿って前記枠状装飾体43の左右側方に誘導することで、前記窓口43aを横切ってパチンコ球が流下しないようにしている。なお、実施例では、前記枠状装飾体43の全体(固定板46、内周壁47および庇状部48)が有色または無色の光透過性の合成樹脂材により形成されて、該枠状装飾体43を介して裏ユニット57を前側から視認し得るようになっている。
【0027】
また、図3に示すように、前記枠状装飾体43には、前記庇状部48の前端側に、前記窓口43aの開口内側に延出する装飾部材49が庇状部48に沿って延在するよう設けられている。そして、前記装飾部材49における窓口43aの上方位置に前側発光演出装置50が配設されている。なお、前記装飾部材49は、前記枠状装飾体43の右側部において、前記窓口43aを前記図柄表示装置19が臨む開口領域と、前記右側部発光演出装置80の中央発光体カバー92および下部発光体カバー93が臨む開口領域とに区切るよう形成されている。
【0028】
(前側発光演出装置について)
前側発光演出装置50は、図11に示すように、前記装飾部材49に取り付けられて取付ベース51と、該取付ベース51に配設されて前方へ向けて光を照射するLED52aを有する前側LED基板52と、該取付ベース51に配設されて前側LED基板52の前面を覆う光透過性の前側レンズ部材53とを備え、前側LED基板52に設けたLED52aからの光が前側レンズ部材53を透過して機前方へ照射されるようになっている。なお、前記前側LED基板52は、前方に開口する光透過性の基板ケース55に収容されて、該基板ケース55が取付ベース51に固定される。
【0029】
前記取付ベース51および前側レンズ部材53は、図9または図11に示すように、その一部分が前記庇状部48の外方(上方)へ突出するよう形成されて、前記固定板46の前方に離間した位置で対向するよう構成されている。また、前記裏ユニット57には、前記前側レンズ部材53における突出部分53aの後方に位置するよう後述の右上部LED基板(第1LED基板)72が配設されている。ここで、前記取付ベース51における前記庇状部48から突出した突出部分は、光透過性を有するよう形成されており、前記右上部LED基板72のLED72aを発光した際に、前記枠状装飾体43(固定板46)および取付ベース51を透過した光が前側レンズ部材53の突出部分53aに照射されるようになっている(図11参照)。すなわち、前記取付ベース51に配設された前側LED基板52のLED52aを発光させると共に、前記裏ユニット57に設けた右上部LED基板72のLED72aを発光させることで、前側レンズ部材53の全体が明輝される。換言すると、前記裏ユニット57に配設される右上部LED基板72は、前側発光演出装置50の一部も構成している。」

(カ)「【0037】
ここで、図9または図11に示すように、前記右上部LED基板72は、前記設置部71に取り付けた状態で前記枠状装飾体43の固定板46に設けられた前記第2光拡散部材54bの後方に位置し、右上部LED基板72において前記前側発光演出装置50の前側レンズ部材53(突出部分53a)と対向する部位の前面略全体が第2光拡散部材54bにより覆われている(図9(b)参照)。これにより、透明板31の前側から右上部LED基板72が直接視認されるのを防止すると共に、該右上部LED基板72のLED72aからの光を、該第2光拡散部材54bにより拡散して前記前側レンズ部材53の突出部分53aに照射し得るようになっている。また、前記上固定部62aの右端部側には、前記右上部LED基板72のコネクタ接続口72dに接続した配線HA1を挿通する第1の配線埋込み溝73が前記段差部70および箱状本体58の内側に開口するよう形成されている。そして、前記右上部LED基板72のコネクタ接続口72dに接続した配線HA1を、前記第1の配線埋込み溝73を介して箱状本体58の右上部に導出して、前記右側部発光演出装置80の右側部LED基板82(後述)に接続するよう構成されている。なお、前記第1の配線埋込み溝73には、延在方向に離間する複数箇所に配線止め73aが突設されており、該第1の配線埋込み溝73に挿通された配線HA1を溝内に保持して、前記透明板31と裏ユニット57(上固定部62a)との間に配線HA1が噛み込まれるのを防止している。」

(キ)「【0065】
(上部発光演出装置120)
前記裏ユニット57の左上方に配設される前記上部発光演出装置120は、図31?図38に示すように、外郭をなすベース部材121と、該ベース部材121の裏側に配設される第2レンズ部材126と、該第2レンズ部材126の裏側に離間して配設された上側LED基板129と、第2レンズ部材126および上側LED基板129の間に配置された第2の光拡散シート130と、第2の光拡散シート130および上側LED基板129の間に配設される第1および第2の仕切り部材135,137とから基本的に構成されている。前記ベース部材121は、後方へ開放する箱状に形成されて、該ベース部材121の前面板122に対して各種識別情報を象った貫通孔122a?122eが形成されている。ここで、ベース部材121に形成される識別情報としては、仮名文字や欧文字等の文字や数字、記号、その他識別可能な図形等が挙げられ、遊技者の視覚を通じて知覚され得るものであればよい。なお、前記ベース部材121には、複数(実施例では5つ)の識別情報が左右方向に直線的な配列で並ぶ形態で形成してある。以下の説明において、前記ベース部材121の左側に位置する識別情報に対応する貫通孔122a?122eから順に第1?第5貫通孔122a?122eとして夫々特定し、第1?第5貫通孔122a?122eに対応した識別情報を第1?第5識別情報として夫々特定する場合もある。」

(ク)「【0077】
すなわち、前記裏ユニット57の段差部70に配設された前記左右の上部LED基板72,76を覆うレンズ部材を裏ユニット57側に配設する必要がないから、前記段差部70の前後寸法を左右の上部LED基板72を設置するのに必要な最小限とし得る。すなわち、上固定部62aにLED基板72,76を配設するスペースを確保するだけで、前記中枠12に設けられた球タンク26と前後に重なって前後の寸法を確保し得ない遊技盤30の上部位置を照明することができ、遊技盤30の装飾性の向上を図ることができる。また、前記右上部LED基板72および左上部LED基板76を裏ユニット57側に配設して、透明板31の裏側から照明するよう構成したことで、遊技領域34を照明するため装置を透明板31側に設ける必要がなく、該透明板31に形成される遊技領域34を大きくすることができる。」

(ケ)「【0087】
また、前記遊技盤30(裏ユニット57)の側部位置に設けられた前記上部発光演出装置120は、ベース部材121の前面板122に第1?第5識別情報を象った貫通孔122a?122eを形成して、第2識別情報を象る第2貫通孔122bの輪郭部に第1の仕切り部材135を配設すると共に、第4識別情報を象る第4貫通孔122dの輪郭部に第2の仕切り部材137を配設してある。このため、前記第2の光拡散シート130と上側LED基板129との間の空間が第1および第2仕切り部材135,137により第1?第5識別情報(第1?第5貫通孔122a?122e)毎に仕切られるから、上側LED基板129に設けたLED129aの発光時に、第1?第5識別情報を個別に明瞭に明輝させることができ、各識別情報による装飾性を向上し得ると共に、各識別情報を容易に判別し得る。」

(コ)【図11】には、固定板46と、該固定板46から図面右方向(後方)に突出し、透明板31の貫通口31aから所定距離離間して該貫通口31a内に挿入される内周壁47と、内周壁47から図面下方向に離間した位置で、固定板46から図面左方向(前方)に突出する庇状部48とが設けられ、貫通口31aと内周壁47との間の図面上下方向の距離より、内周壁47と庇状部48との間の図面上下方向の距離が大きいこと、また、固定板46の、内周壁47と庇状部48との間の図面右方向(後方)には、空間が形成されるように内周壁47が位置しており、該空間のさらに図面右方向(後方)に右上部LED基板72が位置していることが記載されている。
【図11】


(サ)上部発光演出装置120に関し、【図6】には、裏ユニット57の左上に上部発光演出装置120が配置されることが、また、【図6】と【図3】とをあわせ見ると、上部発光演出装置120は装飾部材49の後側に配置されることが、記載されている。
【図6】

【図3】


イ 以上の記載事項から、引用文献Aには、次の技術的事項が記載されているものと認められる(以下、「認定事項」として参照することがある)。

(a)記載事項(ウ)から、透明板31の前面には、案内レール36が配設されると共に、第1の盤面飾り部材35aが配設され、案内レール36および第1の盤面飾り部材35aにより、パチンコ球が流下可能な遊技領域34が略円形状に画成されることが記載されている。また、記載事項(エ)から、透明板31には、前後に貫通する貫通口31aが形成されており、この貫通口31aについて、記載事項(エ)には、該貫通口31aに対して前後に開口する枠状の枠状装飾体43が配設されており、枠状装飾体43は、透明板31より前面に突出する円弧状の庇状部48が備えられており、前記遊技領域34に打ち出されたパチンコ球が枠状装飾体43の窓口43aを横切って流下(落下)するのを庇状部48で規制していることが記載されていることからして、貫通口31aは、パチンコ球が流下可能な遊技領域34内に形成されているものである。そうすると、引用文献Aには、前面に遊技領域34が画成され該遊技領域34内に貫通口31aが形成された透明板31が記載されている。

(b)記載事項(エ)から、透明板31の貫通口31aに配設された枠状装飾体43が記載されている。

(c)記載事項(キ)から、上部発光演出装置120は、外郭をなすベース部材121、該ベース部材121の裏側に配設される第2レンズ部材126、該第2レンズ部材126の裏側に離間して配設された上側LED基板129等から構成され、ベース部材121の前面板122に対して各種識別情報を象った貫通孔122a?122eが形成されていることから、立体的な形状を有していることは明らかである。そうすると、引用文献Aには、立体的な形状を有する上部発光演出装置120が記載されている。

(d)記載事項(オ)(【0025】)から、枠状装飾体43には、遊技領域34を流下するパチンコ球が通入可能な球誘導部44が設けられることが記載されており、この球誘導部44が、枠状装飾体43の外側の遊技領域34に向かってパチンコ球の入口を有することは明らかである。また、記載事項(オ)(【0025】)の、該装飾部材49の下縁部(始動入賞装置39の上方位置)に、球誘導部44を通過したパチンコ球を受け入れてパチンコ球の流下方向を変更しつつ最終的に遊技領域34内に排出するステージ45が設けられているとの記載から、球誘導部44が、枠状装飾体43の内側に向かってパチンコ球の出口を有することも明らかである。そうすると、引用文献Aには、枠状装飾体43に設けられ、枠状装飾体43の外側の遊技領域34に向かってパチンコ球の入口を有し、枠状装飾体43の内側に向かってパチンコ球の出口を有する、パチンコ球が通入可能な球誘導部44が記載されている。

(e)記載事項(オ)(【0026】)から、枠状装飾体43は透明板31の貫通口31a内に挿入される内周壁47を備えることが記載されている。

(g)記載事項(オ)(【0026】)から、枠状装飾体43は、透明板31に開設された貫通口31aに沿って延在する環状に形成され、透明板31の盤面にネジ固定される固定板46を備えることが記載されており、上記認定事項(e)の通り、内周壁47が貫通口31a内に挿入されることからすると、上記固定板46は、貫通口31aに沿って延在する環状に形成されているのであるから、内周壁47に対しては径方向外側に突出することになる。そうすると、引用文献Aには、枠状装飾体43は内周壁47に対して径方向外側に突出し、透明板31の盤面にネジ固定される固定板46を備えることが記載されている。

(f)記載事項(オ)(【0026】)から、枠状装飾体43は、固定板46から前方へ突出する庇状部48を備えることが記載されており、上記認定事項(g)の通り、固定板46は透明板31の盤面にネジ固定されることからすると、上記庇状部48が固定板46から前方へ突出していることから、庇状部48が透明板31の前面よりも前方へ突出していることは明らかである。また、記載事項(オ)(【0026】)の、庇状部48は、遊技領域34を流下する過程で庇状部48に接触したパチンコ球を、庇状部48に沿って枠状装飾体43の左右側方に誘導することで、前記窓口43aを横切ってパチンコ球が流下しないようにしているとの記載から、庇状部48は、遊技領域34と枠状装飾体43の内部空間とを区画していることは明らかである。そうすると、引用文献Aには、枠状装飾体43は透明板31の前面よりも前方へ突出し、遊技領域34と枠状装飾体43の内部空間とを区画している庇状部48を備えることが記載されている。

(h)記載事項(コ)から、固定板46と、該固定板46から後方に突出し、透明板31の貫通口31aから所定距離離間して該貫通口31a内に挿入される内周壁47と、内周壁47から図面下方向に離間した位置で、固定板46から前方に突出する庇状部48とが設けられることが記載されており、【図11】は【図9】のA-A線断面図である(【0013】)ことからすると、記載事項(コ)は、枠状装飾体43の上部の一部についてのものであり、上記図面下方向は、正面視において径方向内側であると言える。また、内周壁47は、貫通口31aから所定距離離間して該貫通口31a内に挿入されるのであるから、庇状部48を、内周壁47から図面下方向に離間した位置に設けることは、貫通口31aから正面視において貫通口31aから径方向内側に離間した位置に設けることであると言える。そして、上記認定事項(f)で示したように、庇状部48は、遊技領域34を流下する過程で庇状部48に接触したパチンコ球を、庇状部48に沿って枠状装飾体43の左右側方に誘導するものであることからすると、庇状部48の上側で遊技領域34を画定するものであり、上記庇状部48を内周壁47から図面下方向に離間した位置に設けることで、固定板46の、内周壁47と庇状部48との間の部分に、遊技領域を拡張する領域を形成するものであると言える。そうすると、引用文献Aには、枠状装飾体43の庇状部48の一部を、正面視において貫通口31aから径方向内側に離間した位置に設けることで、内周壁47と庇状部48との間に遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分が記載されている。

(h1)記載事項(オ)(【0026】)に、枠状装飾体43の全体(固定板46、内周壁47および庇状部48)が有色または無色の光透過性の合成樹脂材により形成されて、該枠状装飾体43を介して裏ユニット57を前側から視認し得るようになっていると記載されており、ここで、有色または無色の光透過性とは、枠状装飾体43を介して裏ユニット57を前側から視認し得るのであるから、透光可能に透明である。そして、上記認定事項(h)を踏まえ、引用文献Aには、正面視において貫通口31aから径方向内側の、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されていることが記載されている。

(c1)上記認定事項(c)で示した立体的な形状を有する上部発光演出装置120は、記載事項(キ)に、裏ユニット57の左上方に配設される前記上部発光演出装置120と記載されるように、裏ユニット57に設けられるものである。また、記載事項(サ)から、上部発光演出装置120は、裏ユニット57の左上で、装飾部材49の後側に配置されるものであり、記載事項(オ)(【0027】)に、枠状装飾体43には、庇状部48の前端側に、窓口43aの開口内側に延出する装飾部材49が庇状部48に沿って延在するよう設けられていると記載されていることからすると、上部発光演出装置120は、庇状部48の後側に配置されると言える。そして、記載事項(オ)(【0026】)に、枠状装飾体43の全体(固定板46、内周壁47および庇状部48)が有色または無色の光透過性の合成樹脂材により形成されて、該枠状装飾体43を介して裏ユニット57を前側から視認し得るようになっていると記載されている。そうすると、上記認定事項(h)、(h1)を踏まえ、引用文献Aには、立体的な形状を有する上部発光演出装置120は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されている枠状装飾体43を介して視認し得るように庇状部48の後側に配置されることが記載されている。

(e1)記載事項(コ)から、固定板46の、内周壁47と庇状部48との間の後方には、空間が形成されるように内周壁47が位置していることが記載されている。

(h4)記載事項(コ)の記載及び上記認定事項(h)を踏まえ、引用文献Aには、貫通口31aと内周壁47との間の距離より、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分である、内周壁47と庇状部48との間の距離が大きいことが記載されている。

ウ 以上の記載事項(ア)?(サ)及び認定事項(a)?(h4)を総合すると、引用文献Aには、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる(分説a?jは、本願発明の分説A?Jに対応させて付与した)。

「a 前面に遊技領域34が画成され該遊技領域34内に貫通口31aが形成された透明板31と、
b 透明板31の貫通口31aに配設された枠状装飾体43と、
c 立体的な形状を有する上部発光演出装置120とを備え、
b1 枠状装飾体43は、
d 枠状装飾体43の外側の遊技領域34に向かってパチンコ球の入口を有し、枠状装飾体43の内側に向かってパチンコ球の出口を有する、パチンコ球が通入可能な球誘導部44と、
e 透明板31の貫通口31a内に挿入される内周壁47と、
f 透明板31の前面よりも前方へ突出し、遊技領域34と枠状装飾体43の内部空間とを区画している庇状部48と、
g 内周壁47に対して径方向外側に突出し、透明板31の盤面にネジ固定される固定板46と、
h 庇状部48の一部を、正面視において貫通口31aから径方向内側に離間した位置に設けることで、内周壁47と庇状部48との間に遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分と、を具備し、
h1 正面視において貫通口31aから径方向内側の、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成され、
c1 立体的な形状を有する上部発光演出装置120は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されている枠状装飾体43を介して視認し得るように庇状部48の後側に配置され、
e1 固定板46の、内周壁47と庇状部48との間の後方には、空間が形成されるように内周壁47が位置しており、
h4 貫通口31aと内周壁47との間の距離より、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分である、内周壁47と庇状部48との間の距離が大きい、
j パチンコ機10。」

エ 引用文献B
当審拒絶理由に引用された引用文献Bには、図面とともに、次の記載がある(下線は当審にて付した)。

(ア)「【0012】
遊技盤1の前面には、図1に示すように、アウト球流入口4、センターケース10、上下に並んで配置された二つの始動入賞口11,12、変動入賞装置13、複数の一般入賞口14、普図始動ゲート15、普図表示器16、普図記憶表示器17、普図状態表示器18、特図表示器19、特図記憶表示器20、特図状態表示器21、多数の障害釘9などが設けられている。なお障害釘9は、遊技領域3の上部に飛入した遊技球がこれに当たりながら流下するものであり、センターケース10や入賞具(始動入賞口11等)の取付部分を除いた遊技領域内に複数本植設されている。」

(イ)「【0022】
センターケース10は、遊技盤1の前面側から取り付けられ、装飾枠体31と、装飾枠体31の裏面側に取り付けられる画面枠32と、を含む。
遊技盤1を構成する基板(いわゆるベニヤ)には、上記センターケース10をはめ込むためのセンターケース用開口(図示省略)が形成され、上記センターケース10は、遊技盤1の前面からこのセンターケース用開口にはめ込まれて取り付けられる。
【0023】
また装飾枠体31は、内側が前後に開口する枠状のものであり、画面枠32の後述する表示用開口部33を介して表示装置本体の表示部6を前面から視認可能とする。また、前述の装飾部22や装飾部25?27は、これら装飾部をそれぞれ構成する部材を装飾枠体31に固定することによって、設けられている。
また装飾枠体31には、表示部6の上方に、前方に突出する鎧部34が設けられ、この鎧部34の上部は、その頂部34aを右方に偏らせるように両側に向けて下り傾斜している。鎧部34は、遊技球が表示部6の前面に落下しないようにする部分である。
一方、画面枠32は、前記表示部6が臨む矩形の表示用開口部33(図2に示す)を内側に有し、装飾枠体31に対して固定される部材である。」

(ウ)【図2】には、装飾枠体31の鎧部34が、鎧部34の頂部34aの左右両側において、装飾枠体31のセンターケース用開口にはめ込まれる部分に対して、図面下方(径方向内側)にずらして配置されることが、記載されている。

(エ)【図5】にも、装飾枠体31の鎧部34が、鎧部34の頂部34aの左右両側において、装飾枠体31のセンターケース用開口にはめ込まれる部分に対して、図面下方(径方向内側)にずらして配置されることが、記載されている。

オ 以上の記載事項から、引用文献Bには、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(2h) 遊技盤1のセンターケース用開口に前面からはめ込まれるセンターケースの装飾枠体31として、装飾枠体31に設けられ、遊技球が表示部6の前面に落下しないようにする部分である鎧部34が、鎧部34の頂部34aの左右両側において、装飾枠体31のセンターケース用開口にはめ込まれる部分に対して、径方向内側にずらして配置されること。

(2)対比
本願発明と引用発明Aとを対比する(見出しa?jは、本願発明の分説A?Jに対応させて付した)。

a、b、d、e、f、g、j 引用発明Aの「透明板31」、「枠状装飾体43」、「球誘導部44」、「内周壁47」、「庇状部48」、「固定板46」及び「パチンコ機10」は、それぞれ本願発明の「遊技板」、「センター役物」、「ワープ通路」、「挿入部」、「区画壁部」、「フランジ部」及び「遊技機」に相当する。

c 引用発明Aの「上部発光演出装置120」は、上記認定事項(c)で示したように、ベース部材121には各種識別情報を象った貫通孔122a?122eが形成されており、記載事項(ケ)に「第1?第5識別情報を個別に明瞭に明輝させることができ、各識別情報による装飾性を向上し得る」と記載されるように、装飾に供されるものであるから、本願発明の「装飾部」に相当する。

c1 引用発明Aの「立体的な形状を有する上部発光演出装置120は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されている枠状装飾体43を介して視認し得るように庇状部48の後側に配置され」ることに関して、まず、何を「介して視認し得る」かについて、引用発明Aでは「枠状装飾体43」であるのに対し、本願発明では「正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部」である点で相違するが、両者はいずれも「センター役物」の一部分である点で共通する。また、「後側に配置され」る点について、「立体的な形状を有する上部発光演出装置120」を「枠状装飾体43を介して視認し得る」のであれば、上部発光演出装置120の装飾が視認可能となることは明らかであるが、何の「後側に配置され」るのかということについて、引用発明Aでは「庇状部48」であるのに対し、本願発明では「第一の遊技領域拡張部」で相違するものの、両者はいずれも「センター役物」の他の一部分である点で共通する。
そうすると、引用発明Aの「c1 立体的な形状を有する上部発光演出装置120は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されている枠状装飾体43を介して視認し得るように庇状部48の後側に配置され」ることは、本願発明の「C1 立体的な装飾がなされている前記装飾部は、透明な部材で正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるように前記第一の遊技領域拡張部の後方に位置し、前記第一の遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ」ることと、「C1’ 立体的な装飾がなされている前記装飾部は、透明な部材で形成されているセンター役物の一部分を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるようにセンター役物の他の一部分の後方に位置」する点で共通する。

h、h1、e1、h4 引用発明Aの「h 庇状部48の一部を、正面視において貫通口31aから径方向内側に離間した位置に設けることで、内周壁47と庇状部48との間に遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」は、本願発明の「H 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第一の遊技領域拡張部」と、「H’ 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する遊技領域拡張部」である点で共通し、また、引用発明Aの「h1 正面視において貫通口31aから径方向内側の、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成され」ること、「e1 固定板46の、内周壁47と庇状部48との間の後方には、空間が形成されるように内周壁47が位置して」いること、及び「h4 貫通口31aと内周壁47との間の距離より、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分である、内周壁47と庇状部48との間の距離が大き」いことは、それぞれ本願発明の「H1 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記第一の遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され」ること、「E1 前記挿入部は、前記第一の遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され」ること、及び「H4 前記挿入部と前記遊技板との間に生じる空間の幅よりも前記第一の遊技領域拡張部である前記挿入部と前記区画壁部との間の幅のほうが大きくなって」いることと、「H1’ 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され」る点、「E1’ 前記挿入部は、前記遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され」る点、及び「H4’ 前記挿入部と前記遊技板との間に生じる空間の幅よりも前記遊技領域拡張部である前記挿入部と前記区画壁部との間の幅のほうが大きくなって」いる点で共通する。

以上のことからすると、本願発明と引用発明Aとは、次の4点で相違し、その余の点で一致する。

相違点1 「C1’ 立体的な装飾がなされている前記装飾部は、透明な部材で形成されているセンター役物の一部分を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるようにセンター役物の他の一部分の後方に位置」する点に関して、
本願発明では、装飾部は、「正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成されている前記第一の遊技領域拡張部を介し、前記装飾部の装飾が視認可能となるように」、「第一の遊技領域拡張部」の後方に位置し、「前記第一の遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ」ているのに対し、
引用発明Aでは、上部発光演出装置120は、「枠状装飾体43を介して視認し得るように」、「庇状部48」の後方に位置しており、「前記遊技領域拡張部の後方から前記区画壁部の径方向内側の位置まで跨って設けられ」ることについては特定されていない点。

相違点2 本願発明では、「H3 前記第一の遊技領域拡張部の遊技球通過面よりも遊技者側において装飾をなす特別装飾部が、前記第一の遊技領域拡張部に対して正面視で前記区画壁部を挟んで径方向内側に設けられ」ているのに対し、引用発明Aでは明らかではない点。

相違点3 本願発明では、「K 前記第一の遊技領域拡張部とは異なる位置に前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する第二の遊技領域拡張部を備え」ているのに対し、引用発明Aでは、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を、異なる位置に二つ設けることは特定されていない点。

相違点4 「H’ 前記区画壁部の少なくとも一部を、正面視において前記開口部の内縁よりも径方向内側の所定位置に配置することで、前記挿入部と前記区画壁部との間に拡張された拡張遊技領域を形成する遊技領域拡張部」、「H1’ 正面視において前記遊技板の前記開口部の内縁よりも径方向内側に形成された前記遊技領域拡張部は、透光可能に透明な部材で形成され」る点、「E1’ 前記挿入部は、前記遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され」る点、及び「H4’ 前記挿入部と前記遊技板との間に生じる空間の幅よりも前記遊技領域拡張部である前記挿入部と前記区画壁部との間の幅のほうが大きくなって」いる点に関し、本願発明では、「遊技領域拡張部」が「第一の遊技領域拡張部」と特定されているのに対し、引用発明Aではそのように特定されていない点。

(3)判断
以下、相違点について検討する。

ア 「第一の遊技領域拡張部」を設ける位置について
本願発明では、「第一の遊技領域拡張部」を遊技領域のどのような位置に設けるか(センター役物の頂部に対して左側に設けるか、右側に設けるか)について特定されておらず、引用発明Aにおいても、「遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」を遊技領域のどのような位置に設けるか特定されていないが、他の相違点の判断に影響するため、まずこの点について検討する。
引用文献Aには、「遊技盤を大型化する場合には」、「遊技盤保持部を中枠の上方位置へ拡げるよう構成することが求められる。この場合に」「遊技盤(特に遊技領域)の上部位置を照明する照明装置を設置することが困難で、遊技盤(遊技領域)の上部位置の装飾性が低下する」ことを課題とすることが記載されている(記載事項(ア))。そして、この課題の解決のために、「前記右上部LED基板72は」、「前記枠状装飾体43の固定板46に設けられた前記第2光拡散部材54bの後方に位置し、右上部LED基板72において前記前側発光演出装置50の前側レンズ部材53(突出部分53a)と対向する部位の前面略全体が第2光拡散部材54bにより覆われている。」「これにより」、「該右上部LED基板72のLED72aからの光を、該第2光拡散部材54bにより拡散して前記前側レンズ部材53の突出部分53aに照射し得るようになっている」(記載事項(カ))という構成を取ることで、「前記右上部LED基板72」「を裏ユニット57側に配設して、透明板31の裏側から照明するよう構成したことで、遊技領域34を照明するため装置を透明板31側に設ける必要がなく、該透明板31に形成される遊技領域34を大きくすることができる」(記載事項「ク」)という効果を奏することができるものである。
そうすると、引用発明Aの「h 庇状部48の一部を、正面視において貫通口31aから径方向内側に離間した位置に設けることで、内周壁47と庇状部48との間に遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」は、当該固定板46に設けられた第2光拡散部材54bの後方に右上部LED基板72を位置させ、該右上部LED基板72のLED72aからの光を、該第2光拡散部材54bにより拡散して前記前側レンズ部材53の突出部分53aに照射することで、遊技領域34を大きくすることができ、引用文献Aに示された課題を解決するための構成であるといえる。
ここで、引用発明Aの、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分が設けられる位置について、引用文献Aの記載を参照すると、【図11】は【図9】のA-A線断面図である(【0013】)ことからすると、当該部分が設けられる位置は、枠状装飾体43の頂部に対して右側であり、前側発光演出装置50の前側レンズ部材53の突出部分53aがある位置である。
一方、引用文献Aには、枠状装飾体43の頂部に対して左側の位置に、前側発光演出装置50のような部材を設けることは記載されておらず、そのような位置に、後方から照明を行うLED基板を設けるために、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を設ける必要は無い。また、裏ユニット57の左上方には上部発光演出装置120を配設することが記載されている(記載事項(キ))が、上部発光演出装置120は裏ユニット57に配設されるものであり、上部発光演出装置120を照明するために、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を設ける必要は無い。
さらに、引用文献Bには、認定事項(2h)にあるとおり、遊技球が表示部の前面に落下しないようにする部分である鎧部34を、装飾枠体31のセンターケース用開口にはめ込まれる部分に対して径方向内側にずらして配置することを、鎧部34の頂部34aの左右両側において行うことが記載されているが、引用文献Aの前側発光演出装置50のような部材を設けることについては記載されていない。
そうすると、引用発明Aの、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を、枠状装飾体43の頂部に対して左側の位置に設けることが、当業者にとって容易であるとすることはできない。

イ 相違点1について
引用発明Aでは、上部発光演出装置120は、透光可能に透明な合成樹脂材により形成されている枠状装飾体43を介して視認し得るものであるが、上記アで示したように、引用発明Aの、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を、枠状装飾体43の頂部に対して左側の位置に設けることが、当業者にとって容易であるとすることはできず、上部発光演出装置120を、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を介して視認可能とすることはできない。また、この点に関し、引用文献Bには、何ら記載されていない。
したがって、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基づいて、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

ウ 相違点2について
引用文献Aにおいて、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分より遊技者側には、前側発光演出装置50の前側レンズ部材53があり、これを本願発明の「特別装飾部」とすることができるか検討すると、「前側レンズ部材53は」、「その一部分が前記庇状部48の外方(上方)へ突出するよう形成されて」(記載事項(オ)【0029】)おり、庇状部48の径方向内側に設けられているものではない。また、前側発光演出装置50の前側レンズ部材53は、上記アで示したように、その突出部分53aに右上部LED基板72のLED72aからの光を照射することで、引用文献Aに示された課題を解決するものとなっており、前側レンズ部材53を庇状部48の径方向内側のみに設けるとすることは、突出部分53aを無くすることとなり、当該課題の解決を阻害することとなる。さらに、遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分より遊技者側で、庇状部48の径方向内側の位置、すなわち、前側レンズ部材53と重なるような位置に、他の装飾を設けることの動機付けは、ない。また、これらの点に関し、引用文献Bには、何ら記載されていない。
したがって、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基づいて、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

エ 相違点3、4について
相違点3、4について、あわせて検討する。
上記アで示したとおり、引用発明Aにおいて、「遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」は、右上部LED基板72、前側発光演出装置50の前側レンズ部材53(突出部分53a)、第2光拡散部材54bと一体的に配置されることで、遊技領域34を照明するため装置を透明板31側に設ける必要がなく、該透明板31に形成される遊技領域34を大きくすることができるという効果を奏するものであり、「遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」を、枠状装飾体43の頂部に対して左側の位置に設けることが、当業者にとって容易であるとすることはできない。そして、引用発明Aにおいて、「遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」を設けたまま、さらに、枠状装飾体43の頂部に対して左側の位置に、別の遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分を設けることも、当業者にとって容易であるとすることはできない。また、引用発明Aにおいて、「遊技領域を拡張する領域を形成する固定板46の部分」を第一、第二のいずれと特定することも、当業者にとって容易であるとすることはできない。さらに、この点に関し、引用文献Bには、何ら記載されていない。
したがって、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基づいて、上記相違点3及び4に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。

(4)小括
以上のとおり、本願発明の相違点1乃至4に係る構成に関して、引用発明A及び引用文献Bに記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。

4 先願に係る当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由の理由3(先願)に対して、平成31年1月30日付けの手続補正書による補正により、特許請求の範囲は上記「第2 本願発明」において摘示したとおりに補正された。また、先願Cについて、平成31年1月30日付けの手続補正書による補正により、特許請求の範囲が補正された。
これらの補正により、本願発明の構成「E1 前記挿入部は、前記第一の遊技領域拡張部の後方に空間が形成されるように配置され」を、先願Cの特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明は有しないものとなり、本願発明は、先願Cの特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明とは同一ではなくなった。
そうすると、本願については、先願についての当審拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

5 まとめ
したがって、本願については、明確性進歩性及び先願についてのいずれの当審拒絶理由によっても拒絶すべきものとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の理由及び当審拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-17 
出願番号 特願2015-232794(P2015-232794)
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 知  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
田邉 英治
発明の名称 遊技機  

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