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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352577
審判番号 不服2018-12815  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-26 
確定日 2019-06-13 
事件の表示 特願2016- 51919号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月21日出願公開、特開2017-164261号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月16日の出願であって、平成30年1月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月13日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月25日付け(謄本送達日:同年7月3日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年9月26日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年9月26日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成30年3月13日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
可変表示に対応した特定表示を表示可能な特定表示手段と、
所定の示唆を行った後に特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な変化演出を実行可能な変化演出実行手段を備え、
前記変化演出実行手段は、
変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出と、変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出とを実行可能で、
前記変化演出には、前記特定表示の表示態様が変化する第1パターンと、前記特定表示の表示態様が変化しない第2パターンがあり、
前記特定表示の表示態様が前記特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、第2パターンによる第2変化演出を実行しない、
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
可変表示に対応した特定表示を表示可能な特定表示手段と、
一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出を実行可能な変化演出実行手段を備え、
前記変化演出実行手段は、
変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出と、変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出とを実行可能で、
前記変化演出には、前記特定表示の表示態様が変化する第1パターンと、前記特定表示の表示態様が変化しない第2パターンがあり、
前記特定表示の表示態様が前記特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、第2パターンによる第2変化演出を実行せず、
前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない、
ことを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「所定の示唆を行った後に特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な変化演出を実行可能な変化演出実行手段」を「一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出を実行可能な変化演出実行手段」とする補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「特定表示」に関して、「前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない、」を追加する補正。

2 本件補正の目的
(1)ア 上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の図26ないし図29等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「変化演出を実行可能」なのが「一の可変表示」であるものに限定するものである。また、本件補正前の請求項1において記載されていた「所定の示唆」が「複数種類のうちいずれかの示唆」であるものに限定するとともに、本件補正前の請求項1において記載されていた「実行可能な」「変化演出」が「複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出」であることに限定するものである。
イ 上記1(2)イの補正は、当初明細書等の【0259】、図22等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「特定表示」が「前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない」ものであることに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしGは、分説するため合議体が付した。

「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 可変表示に対応した特定表示を表示可能な特定表示手段と、
C 一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出を実行可能な変化演出実行手段を備え、
C1 前記変化演出実行手段は、
変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出と、変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出とを実行可能で、
D 前記変化演出には、前記特定表示の表示態様が変化する第1パターンと、前記特定表示の表示態様が変化しない第2パターンがあり、
E 前記特定表示の表示態様が前記特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、第2パターンによる第2変化演出を実行せず、
F 前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない、
G ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-245158号公報(平成24年12月13日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図面とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、始動領域を遊技媒体が通過した後に、可変表示の開始を許容する可変表示の開始条件の成立に基づいて、各々を識別可能な複数種類の識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する可変表示部を備え、該可変表示部に特定表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に移行させる遊技機に係り、特に、開始条件が成立していない可変表示について所定数を上限に保留記憶し、開始条件が成立する前に遊技内容を決定する遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように、上記の遊技機において、前記決定された遊技内容に応じて、保留表示の表示態様を変化させ、該表示態様を変化させる場合に、表示態様が変化することを遊技者に事前に知らせる前知演出(パラシュートの落下)を実行するものが知られている。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す遊技機では、前知演出が行われても、保留表示の表示態様は一種類にしか変化しないため、遊技者の興味を集めるには乏しかった。
【0005】
本発明は、このような背景のもとになされたものであり、保留表示の表示態様を変化させる予告に対して遊技者の興味を集めることができるような遊技機を提供することにある。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。
【0038】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取り付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取り付けられる機構板(図示せず)と、それらに取り付けられる種々の部品(後述する遊技盤6を除く)とを含む構造体である。
・・・略・・・
【0040】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9の表示画面には、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示に同期した演出図柄の可変表示を行う演出図柄表示領域がある。よって、演出表示装置9は、演出図柄の可変表示を行う可変表示装置に相当する。演出図柄表示領域には、例えば「左」、「中」、「右」の3つの装飾用(演出用)の演出図柄を可変表示する図柄表示エリアがある。図柄表示エリアには「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリアがあるが、図柄表示エリアの位置は、演出表示装置9の表示画面において固定的でなくてもよいし、図柄表示エリアの3つ領域が離れてもよい。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。
・・・略・・・
【0049】
遊技盤6における下部の左側には、識別情報としての第1特別図柄を可変表示する第1特別図柄表示器(第1可変表示部)8aが設けられている。この実施の形態では、第1特別図柄表示器8aは、0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第1特別図柄表示器8aは、0?9の数字(または、記号)を可変表示するように構成されている。遊技盤6における下部の右側には、識別情報としての第2特別図柄を可変表示する第2特別図柄表示器(第2可変表示部)8bが設けられている。第2特別図柄表示器8bは、0?9の数字を可変表示可能な簡易で小型の表示器(例えば7セグメントLED)で実現されている。すなわち、第2特別図柄表示器8bは、0?9の数字(または、記号)を可変表示するように構成されている。」

ウ 「【0061】
また、演出表示装置9の表示画面の下部には、第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数)を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられている。この実施の形態では、合計数を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられていることによって、可変表示の開始条件が成立していない実行条件の成立数の合計を把握しやすくすることができる。なお、この実施の形態では、合算保留記憶表示部18cにおいて、第1保留記憶と第2保留記憶とが第1始動入賞口13および第2始動入賞口14への入賞順に並べて表示されるとともに、第1保留記憶であるか第2保留記憶であるかを認識可能な態様で表示される(例えば、第1保留記憶は白の保留球で表示され、第2保留記憶はグレーの保留球で表示される)。
・・・略・・・
【0066】
また、図1に示すように、可変入賞球装置15の下方には、特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は開閉板を備え、第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。大入賞口に入賞した遊技球はカウントスイッチ23で検出される。
・・・略・・・
【0088】
この実施の形態では、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段(演出制御用マイクロコンピュータで構成される。)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、演出図柄を可変表示する演出表示装置9の表示制御を行う。
【0089】
また、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段が、ランプドライバ基板35を介して、遊技盤に設けられている装飾LED25、および枠側に設けられている枠LED28の表示制御を行うとともに、音声出力基板70を介してスピーカ27からの音出力の制御を行う。
【0090】
図3は、中継基板77、演出制御基板80、ランプドライバ基板35および音声出力基板70の回路構成例を示すブロック図である。なお、図3に示す例では、ランプドライバ基板35および音声出力基板70には、マイクロコンピュータは搭載されていないが、マイクロコンピュータを搭載してもよい。また、ランプドライバ基板35および音声出力基板70を設けずに、演出制御に関して演出制御基板80のみを設けてもよい。
【0091】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、および演出図柄プロセスフラグ等の演出に関する情報を記憶するRAMを含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ100におけるRAMは電源バックアップされていない。演出制御基板80において、演出制御用CPU101は、内蔵または外付けのROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からの取込信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用CPU101は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に演出表示装置9の表示制御を行わせる。」

エ 「【0423】
(保留球変化の先読み予告演出)
ここで本実施形態における「保留球変化」の先読み予告演出について、図59?図61を用いて説明する。本実施形態では、保留球変化の先読み予告演出について、予告の対象が異なる複数(2つ)の演出系統が存在する。1つは大当りの可能性(大当り期待度)を示唆する演出系統であり、もう1つはスーパーリーチの可能性(スーパーリーチ期待度)を示唆する演出系統である。図59(a)に示すように、大当り期待度は保留球の色によって異なる。大当り期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球の色は変化せず(即ち第1保留記憶であれば白色、第2保留記憶であればグレーのまま)、大当り期待度が中程度であれば先読み予告演出によって保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球の色は赤になる。また、図59(b)に示すように、スーパーリーチ期待度は保留球の形状によって異なる。スーパーリーチ期待度が低ければ先読み予告演出によって保留球は変化せず(割れず)、スーパーリーチ期待度が高ければ先読み予告演出によって保留球が割れる(さらに割れた保留球からSという文字が出現する)。
【0424】
本実施形態では、保留球の色又は形状を変化させる際の演出として、所定のキャラ(小人又は巨人)が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、保留球の色又は形状を変化させようとする。ここで、図59(c)に示すように、小人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し難く、巨人が出現した場合には、保留球の色又は形状が変化し易いように演出の割り振りが行われている。また、小人が出現した場合には、保留球の色が変化し難く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し難く)、保留球の形状が変化し難い(即ち割れ難い)ように演出の割り振りが行われており、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化し易く(即ち白若しくはグレーから青又は赤に変化し易く)、保留球の形状が変化し易い(即ち割れ易い)ように演出の割り振りが行われている。
【0425】
本実施形態における第1保留演出(保留球色変化演出)は、保留球の表示態様(色)を第1表示態様(変化なし,青,赤)に変化させる割合が異なる複数種類の演出(刷毛を持った小人が出現する演出は色を変化させる割合が低く、刷毛を持った巨人が出現する演出は色を変化させる割合が高い)を有し、第2保留演出(保留球形状変化演出)は、保留球の表示態様(形状)を第2表示態様(割れない,割れる)に変化させる割合が異なる複数種類の演出を有し(ハンマーを持った小人が出現する演出は形状を変化させる割合が低く、ハンマーを持った巨人が出現する演出は形状を変化させる割合が高い)ている。
【0426】
図60に、本実施形態における保留球変化の予告演出の一例を示す。図60の例では、合算保留記憶表示部18cに保留球が3個表示されており、演出図柄が変動表示されている状態で、保留球変化の先読み予告演出が行われる。図60(1)に示すように、演出表示装置9に刷毛1110とペンキ入りのバケツ1120を持った小人のキャラ1100が表示され、このキャラ1100が左から3つめの保留球1000に近づく。次いで図60(2)に示すように、保留球1000に対して、小人が刷毛1110によってバケツ1120のペンキを使用して色を塗る動作を行う。本例では白の保留球1000が赤に塗り替えられたものとする。そして図60(3)に示すようにペンキを塗り終えた小人のキャラ1100は去り、演出表示装置9に表示されなくなる。この例では、白の保留球1000が赤に変化したため、遊技者は大当り期待度が高いことを認識し、大当りの期待感及び興味を持って遊技を行うことができる。」

エ 「【図60】



オ 「【0427】
図61に、本実施形態における保留球変化の予告演出の一例を示す。図61の例では、合算保留記憶表示部18cに保留球が3個表示されており、演出図柄が変動表示されている状態で、保留球変化の先読み予告演出が行われる。図61(1)に示すように、演出表示装置9にハンマー1210を持った巨人のキャラ1200が表示され、このキャラ1200が左から3つめの保留球1000に近づく。次いで図61(2)に示すように、保留球1000に対して、巨人がハンマー1210で割る動作を行う。本例では保留球1000が割れ、中からスーパーリーチを示唆するSという文字が出現する。即ち、保留表示の形状が変化する。そして図61(3)に示すように保留球を割り終えた巨人のキャラは去り、演出表示装置9に表示されなくなる。この例では、保留球1000が割れて保留表示がSの形状に変化したため、遊技者はスーパーリーチ期待度が高いことを認識し、スーパーリーチの期待感及び興味を持って遊技を行うことができる。このように「保留球変化」の態様の先読み予告演出として、複数の系統の演出を設けておくことで、遊技者に興味を持たせることができる。」

カ 「【図61】



キ 「【0428】
なお、本実施形態において、合算保留記憶表示部18cに表示されている保留球が隠れないよう小人や巨人のキャラの表示処理がなされている。小人は演出表示装置9に表示されている画像中の面積が小さく、巨人は大きい。また、小人に付されている色は透明度が高く、巨人は透明度が低い。さらに、小人は動きが速く、巨人は動きが遅いというように、小人と巨人のキャラには対照的な特徴が設定されている。
【0429】
次にステップS6016?S6019Fに示す演出決定処理について説明する。ステップS6016では、演出制御用CPU101は、始動入賞時コマンド格納領域に格納されている最新の始動入賞指定コマンドが第1始動入賞指定コマンドであるか否かを確認する。第1始動入賞指定コマンドが格納されていれば、演出制御用CPU101は、合算保留記憶表示部18cにおいて保留表示として第1通常表示を1つ増加させる(ステップS6017A)。
【0430】
最新の始動入賞指定コマンドが第1始動入賞指定コマンドでなければ(すなわち、第2始動入賞指定コマンドが格納されている場合であれば)、演出制御用CPU101は、合算保留記憶表示部18cにおいて保留表示として第2通常表示を1つ増加させる(ステップS6017B)。このように本実施形態においては、「保留球変化」の演出態様の先読み予告を行うと決定した場合であっても、一端、第1通常表示又は第2通常表示を増加させる(例えば後述する図54(2))。
【0431】
ステップS6017A又はステップS6017Bの後、演出制御用CPU101は、「保留球変化」の演出態様の先読み予告について、保留球の色を変化させる演出又は保留球の形状を変化させる演出のいずれを行うかを決定する(ステップS6018A)。例えばステップS6018Aにおいて、演出制御用CPU101は、「保留球変化」の先読み予告演出を行う場合の演出系統(「色変化」又は「形状変化」のいずれとするか)を決定するための演出系統決定用乱数を所定のタイミング(例えばいずれかの始動入賞時のコマンドの受信時)で抽出し、抽出した演出系統決定用乱数の値が偶数であれば「色変化」、奇数であれば「形状変化」と決定するようにすると良い。
【0432】
本実施形態では、「色変化」が決定されたときには、図62(a)に示すように保留球の表示態様(本例では色)を変化させ、「形状変化」が決定されたときには、図62(b)に示すように保留球の表示態様(本例では形状)を変化させるようにする。そして、後述するように、保留球の色を変化させるときに保留球に対して実行する第1保留演出として、図63に示すように、小人又は巨人が刷毛によって保留球に色を塗る動作を行う演出が設けられており、保留球の形状を変化させるときに保留球に対して実行する第2保留演出として、図64に示すように、小人又は巨人がハンマーによって保留球を割る動作を行う演出が設けられている。即ち、第1予告演出(色変化)を実行すると決定されたことに基づいて、保留表示(保留球)の表示態様(色)を第1表示態様(変化なし,青,赤)に変化させるときに保留表示(保留球)に対して第1保留演出(図63の演出)を実行し、第2予告演出(形状変化)を実行すると決定されたことに基づいて、保留表示(保留球)の表示態様(形状)を第2表示態様(割れない,割れる)に変化させるときに保留表示(保留球)に対して第2保留演出(図64の演出)を実行するものである。
【0433】
ここで、本実施形態では、図60及び図61を用いて説明したように、第1保留演出及び第2保留演出において、いずれも小人又は巨人のキャラが出現して、保留球に対して所定の動作(塗る又は割る)を行った直後に保留球の表示態様が変化(色変化又は形状変化)している。即ち、第1保留演出又は第2保留演出と、保留球の表示態様が変化するタイミングが連続している例が示されている。しかしながら、第1保留演出又は第2保留演出と、保留球の変化のタイミングは連続していなくとも良く、例えば小人又は巨人が保留球に対して所定の動作を行って、小人又は巨人が画面から消えた後、即ち第1保留演出又は第2保留演出から所定の時間を経過した後に保留球が変化するようにしても良い。
【0434】
また、本実施形態では、図60及び図61を用いて説明したように、第1保留演出及び第2保留演出において、いずれも小人又は巨人のキャラが出現し、予告対象となる保留球に対して接近した後、当該保留球に所定の動作(塗る又は割る)を行うことで、保留球の表示態様が変化する例を示している。これら第1保留演出及び第2保留演出として、例えば、予告対象となる保留球の周囲をキャラが移動する非接触型の演出を行うようにしても良く、予告対象となる保留球が表示されている位置を指し示す態様の演出(例えば所定位置に表示されたキャラが保留球に接近せずに保留球を指さす又は保留球に向かって変形する)を行うようにしても良い。また、キャラが予告対象となる保留球を一時的に隠し、再度保留球が出現したときには表示態様が変化しているようにしても良い。さらに、第1保留演出及び第2保留演出は、予告対象となる保留球への接近や、当該保留球へ所定の動作を行うものに限られず、例えばキャラが出現し、予告対象となる保留球に対して接近せず何ら動作を行わないが、キャラ出現に伴い保留球の表示態様が変化するようにしても良い。
・・・略・・・
【0441】
(色変化演出の決定)
演出制御用CPU101は、ステップS6018Cにおいて、決定色より期待度の高い色の保留球を表示していない(及び表示しない)ことを確認すると(N)、ランダムYに基づいて演出を決定する(ステップS6018D)。なお、前述したように、演出制御用CPU101は、遊技制御用マイクロコンピュータ560からいずれかの始動入賞時のコマンドを受信した時に、所定のカウンタから値を抽出して、抽出値をランダムYの値としている。本実施形態において、ランダムYは1?100までのいずれかの値である。
【0442】
本実施形態では、演出制御用CPU101は、図63に示す色決定時の演出振り分けテーブルに基づいて、演出番号を決定する。ここで、演出制御用CPU101は、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときには、図63に示す左側のテーブルを選択し、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときには、図63に示す右側のテーブル(「左記以外の場合」)を選択する。
【0443】
本例では、決定色が「変化なし」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?50の範囲であれば演出番号A01を選択し、51?90の範囲であれば演出番号A02を選択し、91?100の範囲であれば演出番号A03を選択する。一方、決定色が「変化なし」であって、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?60の範囲であれば演出番号A01を選択し、61?95の範囲であれば演出番号A02を選択し、96?100の範囲であれば演出番号A03を選択する。ここで演出番号A01及びA02は小人のみが出現する演出であり、これらは決定色が「変化なし」の場合に90%(左テーブル)又は95%(右テーブル)の高い確率で出現する。一方、演出番号A03は巨人のみが出現する演出であり、これは「変化なし」の場合に10%(左テーブル)又は5%(右テーブル)の低い確率でしか出現しない。従って「変化なし」の演出が行われるときは、小人のみが出現する確率が極めて高く設定されている。
【0444】
また、本例では、決定色が「青」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?40の範囲であれば演出番号A11を選択し、41?80の範囲であれば演出番号A12を選択し、81?100の範囲であれば演出番号A13を選択する。一方、決定色が「青」であって、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?35の範囲であれば演出番号A11を選択し、36?70の範囲であれば演出番号A12を選択し、71?100の範囲であれば演出番号A13を選択する。ここで演出番号A11は巨人のみが出現する演出であり、これは決定色が青の場合に40%(左テーブル)又は35%(右テーブル)の確率で出現する。一方、演出番号A12は、小人が出現後、小人が保留球に色を塗るが保留球の色は変化せず、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が青に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が青の場合に40%(左テーブル)又は35%(右テーブル)の確率で出現する。また、演出番号A13は、小人出現後、小人が帰り、その後巨人が出現して、当該保留球に色を塗り保留球が青に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が青の場合に20%(左テーブル)又は30%(右テーブル)の確率で出現する。ここで演出番号A12及びA13は、当初保留球変化の期待度が低い小人が出現し、小人によって保留球の色が変化しないが、その後巨人が出現して保留球の色を変化させるステップアップ演出を行っている。このようなステップアップ演出を用意しておくことにより、遊技者は小人出現後、保留球の色が変化しない場合でも、その後に変化の期待度が高い巨人が出現するか否かを興味を持って見ることができる。また、段階的に大当り期待度を高くする演出によって、遊技者に興味を持たせることができる。
【0445】
また、本例では、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、2R,10R,又は15R確変大当りの場合に遊技制御用マイクロコンピュータ560から送信される図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?50の範囲であれば演出番号A22を選択し、51?90の範囲であれば演出番号A23を選択し、91?100の範囲であれば演出番号A24を選択する。一方、決定色が「赤」であって、演出制御用CPU101が、上記以外の図柄指定コマンドを受信したときは、ランダムYの値が1?30の範囲であれば演出番号A21を選択し、31?60の範囲であれば演出番号A22を選択し、61?99の範囲であれば演出番号A23を選択し、100であればA24を選択する。なお、演出番号A21は、小人が出現後、小人が保留球に色を塗り保留球が青に変化し、その後小人が帰り、巨人が出現して、当該保留球に巨人が色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出である。これは決定色が赤の場合に30%(左テーブル及び右テーブル)の確率で出現するステップアップ演出となっている。
【0446】
ここで、演出番号A22の演出は、小人が出現し、対象となる保留球をハンマーで割る動作を行うが、保留球は割れず、小人は帰り、その後巨人が出現して、当該保留球に色を塗り保留球が赤に変化し、巨人が帰るという演出である。即ち、色変化が決定されたにもかかわらず、あたかも形状変化を行うような演出を行い、その後に色変化を生ずる演出を行うようにしている。このように複数の系統(スーパーリーチ期待度及び大当り期待度)を跨ぐ演出を行うことによって、遊技者は最終的にいずれの系統の演出が行われるのかを演出が終了するまで把握できないので、演出に興味を持たせることができる。なお、本実施形態では、A22の演出を除き、図63に示す全ての演出(AXX)で最初に刷毛を持った小人又は巨人が出現するものとする。
【0447】
また、本例では、小人のみが出現して、保留球の色が変化する演出はA24のみであり、その出現率は、決定色が「赤」である場合に10%(左テーブル)又は1%(右テーブル)となっている。即ち、小人のみが出現する場合には、保留球の色が変化する期待度が低く、巨人が出現した場合には、保留球の色が変化する期待度が高いように演出の振り分けが行われている。但し、小人のみが出現して保留球の色を変化させる演出(A24)では、保留球の色は赤に変化する。且つ、2R,10R,又は15R確変大当り以外の図柄指定コマンドを受信したときは、決定色が「赤」である場合に1%という極めて低い確率でしか、A24の演出が出現しないように振り分けが行われている。即ち、小人のみによって保留球の色を変化させることは殆どないが、仮に色を変化させたときには大当り期待度が極めて高いことになる。即ち、遊技者は小人が出現した場合でも、保留球の色が変化するか否かに関して興味を持って演出を見ることができる。」

ク 「【図63】



ケ 【0442】の記載及び図63の記載からみて、演出制御用CPU101は、以下のいずれか演出番号の保留球変化の演出を抽選により決定して実行可能であるものと認められる。
演出番号A01 決定色が「変化なし」、小人出現→小人帰る
演出番号A02 決定色が「変化なし」、小人出現→小人塗る(色変化なし)→小人帰る
演出番号A03 決定色が「変化なし」、巨人出現→巨人帰る
演出番号A11 決定色が「青」、巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A12 決定色が「青」、小人出現→小人塗る(色変化なし)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A13 決定色が「青」、小人出現→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A21 決定色が「赤」、小人出現→小人塗る(青)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青→赤)→巨人帰る
演出番号A22 決定色が「赤」、小人出現→小人割る(割れず)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(赤)→巨人帰る
演出番号A23 決定色が「赤」、巨人出現→巨人塗る(赤)→巨人帰る
演出番号A24 決定色が「赤」、小人出現→小人塗る(赤)→小人帰る

コ 上記アないしケからみて、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしgについては本願補正発明のAないしGに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 第1特別図柄表示器8a(第1可変表示部)に特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときと、第2特別図柄表示器8b(第2可変表示部)に特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる、パチンコ遊技機1(【0038】、【0049】、【0066】)であって、
b 可変表示の開始条件が成立していない実行条件の成立数の合計であって、第1保留記憶数と第2保留記憶数との合計である合計数(合算保留記憶数)を白又はグレーの保留球で表示する合算保留記憶表示部18cが設けられた演出表示装置9(【0061】)と、
c 演出図柄が変動表示されている状態で、小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うことによって、例えば、大当り期待度が中程度であれば保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ保留球の色は赤になるというように、保留球の色又は形状を変化させる保留球変化の先読み予告演出を行う、演出制御用CPU101(【0423】、【0424】、【0426】、【0431】)を備え、
c1、d、e 前記演出制御用CPU101は、
演出番号A01 決定色が「変化なし」、小人出現→小人帰る
演出番号A02 決定色が「変化なし」、小人出現→小人塗る(色変化なし)→小人帰る
演出番号A03 決定色が「変化なし」、巨人出現→巨人帰る
演出番号A11 決定色が「青」、巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A12 決定色が「青」、小人出現→小人塗る(色変化なし)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A13 決定色が「青」、小人出現→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青)→巨人帰る
演出番号A21 決定色が「赤」、小人出現→小人塗る(青)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(青→赤)→巨人帰る
演出番号A22 決定色が「赤」、小人出現→小人割る(割れず)→小人帰る→巨人出現→巨人塗る(赤)→巨人帰る
演出番号A23 決定色が「赤」、巨人出現→巨人塗る(赤)→巨人帰る
演出番号A24 決定色が「赤」、小人出現→小人塗る(赤)→小人帰る
のいずれか演出番号の保留球変化の先読み予告演出を抽選により決定して実行可能である(上記ケ)、
g パチンコ遊技機1(【0038】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知例
ア 本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-93058号公報(以下「周知例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機1ついて説明する。なお、以下では、パチンコ遊技機1を、単に、遊技機1という場合がある。」
(イ)「【0170】
[先読み予告演出設定処理]
図17のステップS701において、CPU401は、RAM403に記憶されている特別図柄抽選(第1特別図柄抽選および第2特別図柄抽選)の保留数(保留データの数)が2以上であるか否かを判定する。つまり、CPU401は、図15のステップS111の処理により受信された保留増加コマンドに基づいて記憶された保留データ(以下、最新保留データ、または単に最新保留ということがある)よりも前に記憶されている保留データがあるか否かを判定する。ステップS701での判定がYESの場合、処理はステップS703に移り、この判定がNOの場合、処理はステップS702に移る。
【0171】
ステップS702において、CPU401は、最新保留を示す保留画像の表示態様を設定する。具体的には、CPU401は、RAM403に記憶された最新保留に含まれる事前判定情報に基づいて、最新保留を示す保留画像の表示態様を設定する。例えば、事前判定情報が、「大当り」を示すものである場合、最新保留の保留画像の表示態様を、「大当り」である可能性が高いことを示す表示態様(例えば赤色)に設定する。そして、先読み予告演出設定処理を終了し、処理は図15のステップS113に移る。
【0172】
ステップS703において、CPU401は、背景画像BI(後述する図31参照)として、モード背景0またはモード背景3が表示されているか否かを判定する。なお、本実施形態では、複数のモード背景(モード背景0?3)が用意されているが、モード背景の詳細については、図22を参照して後述する。ステップS703での判定がYESの場合、処理はステップS704に移り、この判定がNOの場合、処理はステップS710に移る。
【0173】
ステップS704において、CPU401は、最新保留に含まれる事前判定情報に基づいて、先読み予告演出を実行するか否かを判定する。具体的には、CPU401は、事前判定情報が、「大当り」を示すものである場合、「ハズレ」かつ「リーチ演出あり」を示すもの(リーチありハズレ)である場合、または、「ハズレ」かつ「リーチ演出なし」を示すもの(リーチなしハズレ)である場合のそれぞれにおいて、先読み乱数を取得し、当該先読み乱数が所定の先読み当選値に一致した場合に、先読み予告演出を実行すると決定する。なお、この先読み当選値は、事前判定情報が「大当り」の場合と、「リーチありハズレ」の場合と、「リーチなしハズレ」の場合とで、それぞれ異なる個数が設定されるものとしてもよい。具体的には、「大当り」の場合の先読み当選値の個数は、「リーチありハズレ」の場合の先読み当選値の個数よりも多く設定することにより、「大当り」時には先読み予告演出が実行され易いものとしてもよい。また、本実施形態では、先読み予告演出の一つとして、キャラクタを用いて保留画像の表示態様を変化させる保留変化演出が実行される。また、本実施形態では保留変化演出が実行されない場合における第1特別図柄抽選の保留画像と第2特別図柄抽選の保留画像の表示態様(以下、デフォルト表示態様ということがある)は、同一であり(例えば白色の保留球)、保留変化演出も第1特別図柄抽選の保留と第2特別図柄抽選の保留との間で区別が設けられることなく実行される。ステップS704での判定がYESの場合、処理はステップS705に移り、この判定がNOの場合、処理はステップS714に移る。
・・・略・・・
【0189】
[保留変化テーブル]
次に、図23?図25を参照して保留変化テーブルについて説明する。まず、モード背景0またはモード背景3が表示されているときに参照される保留変化テーブルTF1について説明する。図23の(1)に示すように、保留変化テーブルTF1には、最終表示態様として、保留画像の形状が変化する「H」、「I」、「J」、および保留画像の色彩または模様が変化する「青」、「緑」、「赤」、「縞」、「虹」の8つの表示態様が設定されている。また、初期表示態様として「通常(デフォルト表示態様)」、「H」、「I」、「J」、「青」、「緑」、「赤」、「縞」、「虹」の9つの表示態様が設定されている。そして、このテーブルTF1に基づいて、最終表示態様および初期表示態様の組合せ態様が決定される場合には、先読み演出対象保留の事前判定情報に基づいて、まず最終表示態様が決定される。具体的には、図23の(2)に示すように、事前判定情報が「大当り」を示すものであるか、「ハズレ」を示すものであるかに応じて、各最終表示態様が決定される抽選割合が決定されており、この抽選割合に基づいて最終表示態様が決定される。例えば、事前判定情報が「大当り」を示す場合には、最終表示態様として「H」、「I」、「J」が決定される割合は、それぞれ1%であり、「青」が決定される割合が5%であり、「緑」が決定される割合が37%であり、「赤」が決定される割合が50%であり、「縞」が決定される割合は4%であり、「虹」が決定される割合が1%である。一方、事前判定情報が「ハズレ」を示す場合には、最終表示態様として「H」、「I」、「J」が決定される割合は10%であり、「青」が決定される割合が20%であり、「緑」が決定される割合が30%であり、「赤」が決定される割合が19%であり、「縞」が決定される割合は1%であり、「虹」が決定されることはない。したがって、保留画像の最終表示態様として「H」、「I」、「J」が表示されると、「ハズレ」である可能性が極めて高く、一方、「虹」が表示されると、必ず「大当り」である。また、例えば、大当り時には、「赤」が決定される割合は高い(50%)が、ハズレ時には、「赤」が決定される割合は低い(19%)。このため、保留画像の最終表示態様として「赤」が表示されると「大当り」である可能性(以下、信頼度ともいう)が高い。反対に、ハズレ時には、「青」が決定される割合は高い(20%)が、大当り時には「青」が決定される割合は低い(5%)。このため、保留画像の最終表示態様として「青」が表示されると信頼度が低い。このように、本実施形態では、図23の(2)に示す最終表示態様は、右に行くほど信頼度が高くなる。以下では、説明の便宜のため、信頼度が高くなるほど段階が高くなるものとして、最終表示態様を左から順に段階1?8に分類するものとする(例えば、「青」を、段階4に分類する)。」

イ 本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-33447号公報(以下「周知例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、遊技機の一種であるパチンコ遊技機の一実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、パチンコ遊技機(以下、単に「遊技機」という)の遊技盤10のほぼ中央には、画像表示部(画像表示領域)GHを有する演出表示装置11が配設されている。演出表示装置11は、例えば液晶ディスプレイ型の表示装置である。」
(イ)「【0069】
そして、図4(a)?(h)に示すように、本実施形態の保留変化演出は、各保留表示領域X1?X4,Y1?Y4に表示させる保留画像HGの表示態様を、該保留画像HGに対応する特別図柄変動ゲームの変動内容に応じて異ならせることにより実行される。保留変化演出では、保留画像HGの表示態様の演出段階として、第1演出段階から第4演出段階まで複数である4段階が設定されている。
【0070】
表示態様を異ならせた保留画像HGには、白色の球体を模した白保留画像HGw、緑色の球体を模した緑保留画像HGg、赤色の球体を模した赤保留画像HGr、黒色の球体を模した黒保留画像HGk、及び青色の球体を模した青保留画像HGbがある。また、保留画像HGには、紫色の球体を模した紫保留画像HGp、星型のキャラクタを模した星保留画像HGs、及び当りの「当」の文字を模した当保留画像HGtがある。」
(ウ)「【0192】
また、第1演出振分用テーブルTAによれば、保留画像HGの表示態様が変化され得る演出段階が第1演出段階<第2演出段階<第3演出段階<第4演出段階である順に、決定割合の全体に占める、大当り変動を示す事前判定コマンドE3H,E4Hを入力した場合の決定割合が高くなる。このため、通常演出モードM1における保留変化演出では、緑保留画像HGg<赤保留画像HGr<星保留画像HGs<当保留画像HGtの順に、対応する第1特別図柄変動ゲームが大当り変動となる可能性の高低を示す大当り信頼度が高くなる。
【0193】
特に、第1演出振分用テーブルTAによれば、事前判定コマンドに示される第1保留記憶数分の図柄変動ゲームのうち、最終回の図柄変動ゲーム迄に第4演出段階へ変化させる演出パターン(4(当))は、大当り変動を示す事前判定コマンドE3Hを入力した場合にのみ選択可能である。したがって、通常演出モードM1において、当保留画像HGtが表示される保留変化演出は、該当保留画像HGtに対応する第1特別図柄変動ゲームが大当り変動となり、且つ12R大当りZAが付与されることを確定的に認識できる大当り確定の遊技演出となる。なお、以下の説明において「最終回の図柄変動ゲーム」と示す場合には、特に断らない限り、事前判定コマンドに示される保留記憶数分の図柄変動ゲームのうち、最終回の図柄変動ゲームを指すものとする。」

ウ 本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2010-57725号公報(以下「周知例3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明にかかる遊技機の適例としてのパチンコ遊技機について説明を行う。図1には、本発明に係る遊技機として例示するパチンコ遊技機の正面図を示した。また、図2には、ガイドレール2で囲まれ、遊技球を発射して遊技を行う遊技領域1aが前面側に形成された遊技盤1の部分拡大図を示した。」
(イ)「【0078】
この始動記憶表示60には複数種類の表示が設定されている。図8に示すように、通常表示としては、始動記憶がないことを示す第1通常表示(ここでは白)と、第1通常表示とは表示色を異ならせることで始動記憶があることを示す第2通常表示(ここでは黒)とが設定されている。また、特殊表示として、「V」を表示する第1特殊表示と、「!!」を表示する第2特殊表示と、「?」を表示する第3特殊表示の各表示が設定されている。なお、特殊表示は、第1通常表示、第2通常表示とは表示色が異なり(ここでは斜線)、遊技者が認識できるようになっている。もちろん、始動記憶表示60の表示態様(色や図柄)はこれに限られるものではなく他の表示態様を用いても良い。
【0079】
第1特殊表示は、当該第1特殊表示に対応する始動記憶に基づく特図変動表示ゲームで、ラウンド遊技の回数が15ラウンド(15R)である特別結果が導出されることを予告報知する表示である。また、第2特殊表示は、当該第2特殊表示に対応する始動記憶に基づく特図変動表示ゲームで、ラウンド遊技の回数が2ラウンド(2R)である特別結果が導出される確率が25%、10ラウンド(10R)である特別結果が導出される確率が20%、15ラウンド(15R)である特別結果が導出される確率が30%、特別結果が導出されない確率が25%であることを予告報知する表示である。また、第3特殊表示は、当該第3特殊表示に対応する始動記憶に基づく特図変動表示ゲームで、ラウンド遊技の回数が2ラウンド(2R)である特別結果が導出される確率が10%、10ラウンド(10R)である特別結果が導出される確率が20%、15ラウンド(15R)である特別結果が導出される確率が50%、特別結果が導出されない確率が20%であることを予告報知する表示である。」
(ウ)「【0132】
そして、演出制御装置40では、始動記憶Aに基づく特図変動表示ゲームであるゲームAの開始までの期間において、例えば、乱数値の抽出により仮予告報知の変更を行うか否かを決定する処理を行う。ここでは、始動記憶Aに基づく特図変動表示ゲームであるゲームAの開始の直前に仮予告報知を変更するように決定されている。これにより、仮予告報知としての2ラウンドの予告報知から、実際のラウンド遊技の実行回数の予告報知である15ラウンドの予告報知に始動記憶表示60が変更されることとなる(t2)。すなわち、演出制御装置40が、所定の確率で仮予告報知から判定手段(遊技制御装置30)による判定結果に基づくラウンド遊技の実行回数の報知に予告報知を変更する仮報知変更手段をなす。
【0133】
このような仮予告報知を行うようにしたことで、予告報知を多彩なものにし、遊技の興趣を向上することができる。また、判定手段による判定結果に基づくラウンド遊技の実行回数よりも少ない回数を仮予告報知として報知するので、変動表示ゲームが当たった場合に少なくとも得られる出玉の獲得量を予測できる。また、遊技者が過剰な期待を抱くことなく、特に、出玉の少ない特別結果が導出された場合の興趣の低下を防止できる。さらに、仮予告報知がなされた場合は、遊技者の期待よりも出玉の多い特別結果が導出される、または、特別遊技状態中に予告報知より多いラウンド遊技が実行されることとなり(いわゆる昇格する状態となり)、遊技者に得をした感覚を与え遊技の興趣を向上できる。また、特別遊技状態中も予告報知より多いラウンド遊技が実行されることを期待するようになり、特別遊技状態中における興趣を向上することができる。また、始動記憶の発生から該始動記憶に基づく特図変動表示ゲームの開始までの期間に、予告報知が変更される可能性があるため、遊技者の期待感を長い期間維持でき、遊技の興趣を向上することができる。
【0134】
なお、仮予告報知からさらに異なる仮予告報知に変更するようにしても良い。例えば、実際にはラウンド遊技の実行回数が15ラウンドである特別結果を導出する始動記憶に対して、まず、2ラウンドの仮予告報知を行い、その後、10ラウンドの仮予告報知に変更しても良い。」
(エ)「【0171】
ここで、図26に示す例では、特図変動表示ゲームの結果として特別結果を導出する始動記憶に対応する始動記憶表示60として、ラウンド遊技の実行回数が15ラウンドである特別結果の導出を確定報知する第1特殊表示を表示した場合を示したが、これ以外の特殊表示または通常表示を表示した場合に、上述のような予告報知を行うようにしても良い。特に、第1特殊表示以外の始動記憶表示をした場合に、上述のような予告報知を行えば、当該予告報知により特別結果の導出の可能性が高まる演出となり、遊技の興趣を向上することができる。さらにこのような場合は、飾り特図変動表示ゲームで導出された左、中、右の3つの識別図柄による結果態様の和が所定のラウンド遊技の実行回数となるような飾り特図変動表示ゲームが連続する回数が多いほど、特別結果が導出される可能性が高くなるような演出を行うようにしても良い。」

エ 例えば、周知例1(上記ア)、周知例2(上記イ)及び周知例3(上記ウ)に記載された事項からみて、
「保留画像が大当り信頼度に応じて変化するパチンコ遊技機において、
前記保留画像として特定画像が表示されると大当りが確定すること。」は本願出願前に周知(以下「周知技術」という。)であるといえる。

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(g)は、本願補正発明のAないしGに対応させている。

(a)(g)引用発明において、第1特別図柄表示器8a(第1可変表示部)に特定表示結果(大当り図柄)を導出表示すること、第2特別図柄表示器8b(第2可変表示部)に特定表示結果(大当り図柄)を導出表示することは、本願補正発明の「可変表示」に相当する。
また、引用発明の「大入賞口が開放状態になる」ことは、技術常識からみて、本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」であることに相当することは明らかである。
また、引用発明の「パチンコ遊技機1」と、本願補正発明の「遊技機」とは、「遊技機」である点で一致する。
そうすると、引用発明の特定事項aは、本願補正発明の「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」を備える。

(b)引用発明の「保留球」は、可変表示の開始条件が成立していない実行条件の成立数の合計であり、可変表示に対応しているといえるから、本願補正発明の「可変表示に対応した特定表示」に相当する。
また、引用発明の「演出表示装置9」は、保留球(特定表示)を表示する合算保留記憶表示部18cが設けられているから、本願補正発明の「特定表示手段」に相当する。
そうすると、引用発明の特定事項bは、本願補正発明の「B 可変表示に対応した特定表示を表示可能な特定表示手段」を備える。

(c)引用発明の「保留球変化の先読み予告演出」は、大当り期待度が中程度であれば保留球の色は青になり、大当り期待度が高ければ保留球の色は赤になるものであり、青と赤とで有利な度合いが異なる複数段階の特定表示の表示態様を構成し、該複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出を行うものといえるから、本願補正発明の「特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出」に相当する。
また、引用発明の「演出図柄が変動表示されている状態」は、技術常識からみて、本願補正発明の「一の可変表示」に相当することは明らかである。
また、引用発明において、「小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行う」ことは、変化演出の示唆といえ、該示唆は複数種類のうちのいずれかを行うものといえるから、引用発明の「演出図柄が変動表示されている状態で、小人又は巨人が出現し、表示されている保留球に刷毛で色を塗る又は表示されている保留球をハンマーで割る演出を行うこと」は、本願補正発明の「一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行」うことに相当する。
また、引用発明の「演出制御用CPU101」は、「保留球変化の先読み予告演出」(変化演出)を行うのであるから、本願補正発明の「変化演出実行手段」に相当する。
そうしてみると、引用発明の特定事項cは、本願補正発明の「C 一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出を実行可能な変化演出実行手段」を備える。

(c1)引用発明において、演出番号A11ないしA13の演出は、小人又は巨人が出現して、保留球が白又はグレーから青へ1段階大当り期待度が高いものへ変化する演出であり、演出番号A21ないしA24の演出は、保留球が白又はグレーから青よりも大当たり期待度が高い赤に変化するものである。
そうすると、引用発明の演出番号A11ないしA13の演出、演出番号A21ないしA24の演出は、それぞれ本願補正発明の「変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出」、「変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出」に相当し、引用発明の特定事項c1、d、eは、本願補正発明の「C1 前記変化演出実行手段は、変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出と、変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出とを実行可能」との特定事項を備える。

(d)引用発明の演出番号A11ないしA13及びA21ないしA24の演出は、小人又は巨人が出現して、保留球が白又はグレーから青又は赤に変化するものであるから、本願補正発明の「特定表示の表示態様が変化する第1パターン」を備えるものである。また、引用発明の演出番号A01ないしA03の演出は、小人又は巨人が出現するものの、保留球が変化しない演出であるから、本願補正発明の「特定表示の表示態様が変化しない第2パターン」を備えるものである。
そうすると、引用発明の特定事項c1、d、eは、本願補正発明の「D 前記変化演出には、前記特定表示の表示態様が変化する第1パターンと、前記特定表示の表示態様が変化しない第2パターンがあり」との特定事項を備える。

(e)引用発明において、保留球が赤に変化する演出番号A21ないしA24の演出(第2変化演出)は、保留球の色が変化しない、すなわちガセ演出である演出番号A01ないしA03の演出(本願補正発明の「第2パターン」を含む)を実行し得ないから、引用発明の特定事項c1、d、eは、本願補正発明の「E 前記特定表示の表示態様が前記特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、第2パターンによる第2変化演出を実行しない」との特定事項を備える。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 可変表示に対応した特定表示を表示可能な特定表示手段と、
C 一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出を実行可能な変化演出実行手段を備え、
C1 前記変化演出実行手段は、
変化前の特定表示の表示態様から1段階以上有利な表示態様に変化可能な第1変化演出と、変化後の特定表示の表示態様が複数段階のうちの特定段階の表示態様に変化可能な第2変化演出とを実行可能で、
D 前記変化演出には、前記特定表示の表示態様が変化する第1パターンと、前記特定表示の表示態様が変化しない第2パターンがあり、
E 前記特定表示の表示態様が前記特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、第2パターンによる第2変化演出を実行しない、
G 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点(特定事項F)
本願補正発明では、「前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 上記(3)エで示したように、保留画像が大当り信頼度に応じて変化するパチンコ遊技機において、前記保留画像として特定画像が表示されると大当りが確定することは周知技術である。そして、当該周知技術において、大当りが確定する特定画像が表示される場合は、ガセ演出は実行されないといえる。

イ 引用発明は、大当り期待度に応じて、保留球の色又は形状を変化させる保留球変化の先読み予告演出を行うものであるところ、大当り期待度に応じて保留変化するという点で引用発明と周知技術とは共通するから、当業者であれば周知技術を引用発明に適用しようと試みるものである。
この適用について具体的に検討すると、引用発明は、保留球の色が「赤」(特定段階の表示態様)である場合に大当り期待度が高いものであるが、大当り確定とまではいえないものであるところ、引用発明における保留球変化後の最終的な表示態様として、「赤」よりも大当り期待度の高い表示態様、すなわち、大当り確定の表示態様を付加することは、周知技術に接した当業者であれば適宜なし得たことである。

ウ 上記イのように、引用発明において、保留球の表示として大当り確定の表示態様を付加した場合、実際に、保留球を「赤」から大当り確定の表示態様に変化させることに決定した際には、保留球変化の先読み予告演出としては、小人又は巨人が出現するものの、保留球(特定表示の表示態様)の色が変化しないガセ演出(第2パターン)を含む演出番号A01ないしA03の演出を実行し得ないとともに、保留球が1段階大当り期待度が高いものへ変化する演出番号A11ないしA13の演出(第1変化演出)ではガセ演出(第2パターン)も実行し得ないものである。そうすると、引用発明は、本願補正発明でいう「第2パターンによる第1変化演出を実行しない」ものである。
してみると、引用発明は、本願補正発明の特定事項Fのように、「特定表示が特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない」ものとなることは明らかである。

エ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たものである。

オ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

カ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】において、以下のとおり概略主張している。
「4.新規性進歩性について
本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、一の可変表示において、複数種類のうちいずれかの示唆を行った後に、特定表示の表示態様を有利な度合いが異なる複数段階のうちのいずれかの表示態様に変化可能な複数種類の変化演出のうちいずれかの変化演出が実行されます。そして、特定表示の表示態様が特定段階の表示態様に変化することが抽選制御により決定された場合は、特定表示の表示態様が変化しない変化演出である第2パターンによる第2変化演出を実行しないという特徴(A)を有しています。
これにより、本願発明では、特定段階の表示態様(例えば、赤)に変化することが抽選で決定された場合は、所定の示唆を行った後に特定表示の表示態様が変化しないいわゆるガセ演出として第2変化演出が実行されることはなく必ず表示態様が変化するため、示唆を見た遊技者の期待を裏切らずに、遊技に対する興趣を向上させる効果が期待できます。
これに対し、引用文献1では、明細書の段落[0432]の記載や図63からも明らかなように、保留表示の色変化を実行すると決定された場合でも、保留表示の色が変化しない演出(例えば、図63の演出番号A01?A03の演出)が行われる可能性があります。そして、この場合は、演出による示唆を見た遊技者の期待を裏切ることになり、遊技に対する興趣は低下してしまいます。
このようなことから、本願発明の特徴(A)及びその効果について、引用文献1に開示も示唆もないのは明らかです。
・・・略・・・
また、本願発明は、上述した特徴(A)以外に、「前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない、」という特徴(B)を有しています。
これにより、本願発明では、有利状態への制御が確定する最高段階の表示態様(例えば、レインボー表示)であるにも拘わらずガセ演出である第2パターンによる第1変化演出が実行されてしまうことを防止でき、演出的な違和感を遊技者に生じさせないようにすることができます。
これに対し、引用文献1では、明細書の段落[0432]の記載や図63からも明らかなように、保留表示の色変化を実行すると決定された場合でも、保留表示の色が変化しない演出(例えば、図63の演出番号A01?A03の演出)が行われる可能性があります。そして、この場合は、演出による示唆を見た遊技者の期待を裏切ることになり、演出的な違和感が遊技者に生じてしまい遊技に対する興趣は低下してしまいます。
このようなことから、本願発明の特徴(B)及びその効果について、引用文献1に開示も示唆もないのは明らかです。
以上説明したように、本願発明の特徴(A)、(B)について、引用文献1には開示も示唆もありません。よって、当業者であっても、引用文献1に開示された内容から本願発明を容易に想到しうることはできず、本願発明は、新規性進歩性を有しております。」

(イ)まず、特徴(A)については、上記(4)ア(e)で説示したとおり、引用例(引用文献1)に記載されているといえる。
また、特徴(B)については、上記イで説示したとおり、周知技術に基づけば、引用発明において、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、審判請求人の主張を採用することはできない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年3月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりのものである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.特開2012-245158号公報

3 引用例
(1)引用例(引用文献1)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、実質的に、「F 前記特定表示が前記特定段階の表示態様で表示されているときに、前記特定表示の表示態様が前記有利状態に制御されることの確定を報知する表示態様に変化する場合は、第2パターンによる第1変化演出を実行しない」(上記相違点)に係る限定事項を削除したものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると相違点はないから、本願発明は、引用例に記載された発明である。

第4 むすび
本願発明は、以上のとおり、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-04 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-22 
出願番号 特願2016-51919(P2016-51919)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 牧 隆志
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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