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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
管理番号 1353143
異議申立番号 異議2018-700358  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-26 
確定日 2019-05-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6222370号発明「繊維強化複合材料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6222370号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10?12〕について訂正することを認める。 特許第6222370号の請求項1、2、10?12に係る特許を維持する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6222370号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?19に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)7月8日(優先権主張 平成27年7月8日)を国際出願日とする特許出願であり、平成29年10月13日に特許権の設定登録がされ、同年11月1日に特許掲載公報が発行された。その後、特許異議申立人 特許業務法人 朝日奈特許事務所(以下、「申立人」という。)により、平成30年4月26日に、請求項1、2、10?12に係る本件特許について、特許異議の申立てがされた。
その後、平成30年7月2日に取消理由が通知され、同年8月31日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出され、同年10月18日に申立人から意見書が提出され、同年11月28日に取消理由(決定の予告)が通知され、平成31年1月28日に特許権者から意見書及び訂正請求書が提出された。そして、申立人に対する訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対し、申立人は応答しなかった。
なお、平成30年8月31日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定より、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1.請求の趣旨
特許権者が平成31年1月28日に行った訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、「特許第6222370号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項10?12について訂正することを求める」ことを請求の趣旨とするものである。

2.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項10に
「前記プリプレグ(X)から形成され、」とあるのを、「連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)から形成され、」に訂正し、
「前記樹脂フィルム(Y)から形成され、」とあるのを、「樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(但し、発泡プラスチックを除く。)から形成され、」に訂正する。

(請求項10を直接的あるいは間接的に引用する請求項11、12についても同様に訂正する。)

(2)一群の請求項について
訂正事項1による本件訂正は、訂正前の請求項10?12を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項11?12は、訂正請求の対象である請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項10?12は一群の請求項であって、訂正事項1による本件訂正は、一群の請求項〔10?12〕について請求されたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1による訂正について
訂正事項1による訂正は、(i)訂正前の請求項10の「前記プリプレグ(X)」、「前記樹脂フィルム(Y)」なる記載に関し、請求項10には、当該記載より前に、「プリプレグ(X)」及び「樹脂フィルム(Y)」なる用語が記載されていないために、「前記」が何を意味するのか明らかではなく、請求項10に不明確な記載があったのを、「前記プリプレグ(X)」が「連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)」であり、「前記樹脂フィルム(Y)」が「樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)」であることを明らかにして明確化するとともに、(ii)「樹脂フィルム(Y)を「発泡プラスチックを除く」ものに限定するものである。
よって、訂正事項1による訂正は、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

そして、上記(i)の点の訂正に関し、願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の【0025】に「<プリプレグ(X)> スタックに用いるプリプレグ(X)は、連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグである。」と記載されていたし、上記(i)の点の訂正は、請求項10より前の請求項1に記載されていた「プリプレグ(X)」及び「樹脂フィルム(Y)」についての定義とも一致するものであるから、上記(i)の点の訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、上記(ii)の点の訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは当業者に明らかである。

(2)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔10?12〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものであるし、また、第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項10?12に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項10?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
(なお、本件特許の請求項1、2、10?12に係る発明を、以下、請求項番号に併せて「本件発明1」等という。)

「【請求項1】
連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)と、樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(ただし、プリプレグ(X)を除く。)とが積層され、
プリプレグ(X)/プリプレグ(X)/樹脂フィルム(Y)/プリプレグ(X)/プリプレグ(X)の5層構成の積層ユニットを含み、第1層のプリプレグ(X)の繊維方向を0°としたとき、第2層、第4層及び第5層のプリプレグ(X)の繊維方向がそれぞれ15?165°であり、かつ各層の繊維方向が異なるスタックを、
一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームとし、さらに前記プリフォームを圧縮成形して立体形状の繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記第2層のプリプレグ(X)の繊維方向が85?95°であり、前記第4層のプリプレグ(X)の繊維方向が30?60°であり、前記第5層のプリプレグ(X)の繊維方向が120?150°である、請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。」

「【請求項10】
下記樹脂層A?Eがこの順番に積層され、樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度が45°以下である繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
樹脂層A、B、D、E:連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含む樹脂層。
樹脂層C:樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(但し、発泡プラスチックを除く。)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層。
【請求項11】
前記樹脂層Aの強化繊維の繊維方向を0°としたとき、前記樹脂層B、前記樹脂層D及び前記樹脂層Eの強化繊維の繊維方向がそれぞれ15?165°である、請求項10に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記の最小の角度が15?45°である、請求項10又は11に記載の繊維強化複合材料の製造方法。」


第4 特許異議の申立理由及び取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要

1.特許異議申立書に記載された特許異議の申立理由
本件訂正前の請求項1、2、10?12に係る発明についての特許に対して、申立人が申立てていた特許異議の申立理由は、概略、以下の(1)、(2)のとおりであって、申立人は、特許異議申立書(以下、単に「申立書」という。)に添付して、証拠方法として下記(3)の甲第1号証?甲第3号証を提出した。

(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性)
請求項1、2、10?12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(下記の甲第1号証に記載された発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証を主引例とする進歩性)
請求項1、2、10?12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて(申立理由2-1)、あるいは、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、第3号証に記載の事項に基づいて(申立理由2-2)、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)証拠方法
甲第1号証:中国特許出願公開第103252946号明細書
(甲第1号証は外国語で作成された文献であるので、申立人により訳文が提出されている。)
甲第2号証:ダイセル・エボニック株式会社のホームページの「ポリメタクリルイミド硬質発泡体 ROHACELL IG-F」についての頁(https://www.daicel-evonik.com/product/detail/4)(copyrightは2014年)を2018年4月23日に印刷したもの。
甲第3号証:特開2008-230236号公報
(以下、甲第1号証?甲第3号証を、それぞれ、「甲1」?「甲3」という。)

2.取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由
本件訂正前の請求項10?12に係る特許に対して、当審合議体が平成30年11月28日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1(甲第1号証に基づく新規性)
請求項10?12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(甲1に記載された発明)であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(申立人が申立書において主張する申立理由1と同旨。但し、取消理由1は、請求項10?12に係る発明についての特許に対してのみである。)
(2)取消理由2(甲第1号証を主引例とする進歩性)
請求項10?12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(申立人が申立書において主張する申立理由2-1と同旨。但し、取消理由2は、請求項10?12に係る発明についての特許に対してのみである。)

第5 当審合議体の判断

以下に述べるように、取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由(取消理由1(甲1に基づく新規性))及び取消理由2(甲1に基づく進歩性))、並びに、申立書に記載された申立理由(申立理由1(甲1に基づく新規性)、申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)及び申立理由2-2(甲1?甲3に基づく進歩性))によっては、本件発明1、2、10?12についての特許を取り消すことはできない。
なお、上記第4で記載したとおり、取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由1は、申立理由1と同旨であり、また、取消理由2は、申立理由2-1と同旨であるが、いずれも、申立理由1及び申立理由2-1が対象とする請求項よりも狭い範囲の請求項に係る発明についての特許を対象としているものであって、いずれも申立理由1及び申立理由2-1に包含されている。
したがって、以下では、申立理由1、申立理由2-1及び申立理由2-2に対する当審合議体の判断を記載する。

1.甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである甲1は、外国語文献であるので、この決定中における甲1の記載の指摘は、主に申立人が提出した訳文による。(なお、甲1とその訳文の段落番号は一致しているので、以下、2.以降において、甲1の段落番号を記載する場合には、対応する訳文の段落番号ではなく、甲1の段落番号でのみ表記する。)

(1)甲1の記載事項
甲1の請求項6?8には、以下の記載がある。(なお、日本語として読みやすくなるよう、以下の訳文では、改行等の形式的な変更を適宜加えた。)

「請求項6.
a)熱硬化性樹脂がプレ浸漬された第1材料を乾燥して形成された、少なくとも2層のプレ浸漬テープを取り出して金型中に重畳配置し、第1プレフォーム材を形成するステップと、
b)第2材料が形成するシート材を前記第1プレフォーム材の表面に配置して、第2プレフォーム材を得るステップと、
c)少なくとも2層のプレ浸漬テープを前記第2プレフォーム材の表面に重畳配置して、第3プレフォーム材を得るステップと、
d)金型を閉合し、前記第3プレフォーム材を加熱プレス成型し、前記第2材料が形成するシート材がサンドイッチ層を形成し、サンドイッチ層の下方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第1表面層を形成し、前記サンドイッチ層の上方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第2表面層を形成するステップと、を含むことを特徴とするワークの製造方法。
請求項7.
ステップa)において、具体的には、
少なくとも2層のプレ浸漬テープを取り出して金型中に重畳配置して第1プレフォーム材を形成し、前記隣接する2つのプレ浸漬テープ中に繊維状の第1材料が垂直に配列されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
請求項8.
前記第1材料は繊維であり、前記第2材料は発泡プラスチックであることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。」

(2)甲1に記載された発明
請求項6を引用する請求項7を引用する請求項8によれば、甲1には以下の発明が記載されている。
「a)熱硬化性樹脂がプレ浸漬された繊維である第1材料を乾燥して形成された、少なくとも2層のプレ浸漬テープを取り出して金型中に重畳配置し、その際、隣接する2つのプレ浸漬テープ中に繊維状の第1材料が垂直に配列されるようにして第1プレフォーム材を形成するステップと、
b)発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材を前記第1プレフォーム材の表面に配置して、第2プレフォーム材を得るステップと、
c)少なくとも2層のプレ浸漬テープを前記第2プレフォーム材の表面に重畳配置して、第3プレフォーム材を得るステップと、
d)金型を閉合し、前記第3プレフォーム材を加熱プレス成型し、前記発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材がサンドイッチ層を形成し、サンドイッチ層の下方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第1表面層を形成し、前記サンドイッチ層の上方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第2表面層を形成するステップと、を含むワークの製造方法。」
(以下「甲1発明」という。)

2.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「繊維である第1材料」、「熱硬化性樹脂」、「ワーク」は、それぞれ、本件発明1の「強化繊維」、「マトリクス樹脂組成物」、「繊維強化複合材料」に相当する。
イ 甲1発明の「熱硬化性樹脂がプレ浸漬された繊維である第1材料を乾燥して形成され」る「プレ浸漬テープ」は、本件発明1の「強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)」に、また、甲1発明の(a)?c)のステップを経て得られた)「第3プレフォーム材」は、本件発明1の「スタック」に相当する。
ウ 甲1発明の「第3プレフォーム材」を構成する層であって、a)工程の「熱硬化性樹脂がプレ浸漬された繊維である第1材料を乾燥して形成された層」である「プレ浸漬テープ」から形成される部分は、本件発明1の「複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)」に、甲1発明の「第3プレフォーム材」を構成する層であって、b)工程の「発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材」から形成される部分は、本件発明1の「樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)」に相当する。
エ 甲1発明の「発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材」から形成される部分には、強化繊維は含まれていないから、本件発明1の「(ただし、プリプレグ(X)を除く。)」を満足する。
オ 甲1発明の「d)金型を閉合し、前記第3プレフォーム材を加熱プレス成型し、前記発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材がサンドイッチ層を形成し、サンドイッチ層の下方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第1表面層を形成し、前記サンドイッチ層の上方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第2表面層を形成するステップ」は、本件発明1の「圧縮成形して立体形状の繊維強化複合材料を得る」工程に相当する。
カ 本件特許明細書の【0035】及び【0037】の記載によれば、本件発明1においては、シート状のプリプレグ(X)と樹脂フィルム(Y)の積層は任意の手順であってよいから、甲1発明における、a)?c)のステップ、つまり、第1プレフォーム材、第2プレフォーム材を経て第3プレフォーム材を得るステップは、本件発明1の「強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)と、樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(ただし、プリプレグ(X)を除く。)とが積層」される工程に相当する。
また、a)?c)のステップを経て得られた「第3プレフォーム材」は、「少なくとも2層のプレ浸漬テープ」からなる「第1プレフォーム材」の「表面」に、「発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材」を「配置」して形成された「第2プレフォーム材」の「表面」に、「少なくとも2層のプレ浸漬テープを重畳配置」して形成されるものであるし、「第3プレフォーム材を加熱プレス成型」した「ワーク」は、「第2材料が形成するシート材がサンドイッチ層を形成し、サンドイッチ層の下方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第1表面層を形成し、前記サンドイッチ層の上方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第2表面層を形成する」ものであるから、当該「第3プレフォーム材」は、本件発明1の「プリプレグ(X)/プリプレグ(X)/樹脂フィルム(Y)/プリプレグ(X)/プリプレグ(X)の5層構成の積層ユニットを含み」を満足する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違している。
<一致点>
複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)と、樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(ただし、プリプレグ(X)を除く。)とが積層され、
プリプレグ(X)/プリプレグ(X)/樹脂フィルム(Y)/プリプレグ(X)/プリプレグ(X)の5層構成の積層ユニットを含むスタックを、
圧縮成形して立体形状の繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。

<相違点1>
本件発明1では、複数本の強化繊維を有するシート状のプリプレグ(X)について、複数本の強化繊維は「連続して配列された」ものであることが特定され、また、該シート状のプリプレグ(X)と樹脂フィルム(Y)を含む所定の5層構成の積層ユニットを含むスタックについて、「第1層のプリプレグ(X)の繊維方向を0°としたとき、第2層、第4層及び第5層のプリプレグ(X)の繊維方向がそれぞれ15?165°であり、かつ各層の繊維方向が異なる」(以下、「特定の繊維配置構造」という。)と特定されているのに対し、甲1発明では、複数本の強化繊維を有するシート状のプリプレグ(X)について、複数本の強化繊維が「連続して配列された」ものであることは特定されておらず、また、上記スタックについて特定の繊維配置構造を有する点の特定はない点。

<相違点2>
本件発明1では、スタックから圧縮成形して立体形状の繊維強化複合材料を得る工程(以下、「本成形工程」ともいう。)の前に、「スタックを、一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームと(する)」予備成形工程を行うのに対し、甲1発明では、本成形工程(加熱プレス成型)のみで、予備成形工程がない点。

(2)申立理由1(新規性)についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1には、甲1発明において、本件発明1の「スタック」を得る工程に相当する「c)少なくとも2層のプレ浸漬テープを前記第2プレフォーム材の表面に重畳配置して、第3プレフォーム材を得るステップ」と、本件発明1の本成形工程に相当する「d)」のステップの間に、「スタックを、一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームと(する)」予備成形工程を設けることを示唆するような記載はない。また、甲1に上記のことが記載されているに等しいと認めるべき本件特許の優先日前の技術常識が存在しているともいえない。
そうすると、相違点2は、実質的な相違点であるといえるから、相違点2で甲1発明と相違する本件発明1について、甲1に記載された発明であるということはできない。

(3)申立理由2-1及び申立理由2-2(進歩性)についての判断
上記(1)で説示したとおり、本件発明1と甲1発明は、相違点2で異なるところ、上記(2)で記載したとおり、甲1には、「c)」ステップと「d)」ステップの間に、「スタックを、一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームと(する)」予備成形工程を設けることを示唆する記載はない。
むしろ、甲1の[0037]に「本発明が提供する製造方法は、加熱プレス法を使用し、ワークを1回で成型し、その他のステップを使用する必要がなく、プロセス制御が容易であるため、大規模な工業化生産に適合している。」と記載されているように、甲1発明は、第3プレフォーム材(本件発明1の「スタック」に相当する。)形成後に予備成形工程を行わないで、本成形工程(圧縮成形)を行う点に特徴を有している。
そうすると、甲1発明において、ワークを「d)」ステップの1回で成型する方法に変えて、予備成形工程と本成形工程の2回の工程で成形する方法に変更することを、甲1の記載からは当業者は動機付けられない。
また、申立人が提出した他の証拠(甲2、甲3)にも、甲1発明におけるワークの製造に際し、「d)」ステップの1回で成型する方法に変えて、予備成形工程と本成形工程の2回の工程で成形する方法を採用することを動機付けるような記載はない。
したがって、申立人が提出した他の証拠を参酌しても、甲1発明を、相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1について、甲1発明(甲1に記載された発明)に基づいて、あるいは、甲1発明及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、申立人は、平成30年10月18日提出の意見書において、甲1の[0069]に、「金型中に面取りがある場合は、成型過程において、前記第1表面層及び第2表面層と前記サンドイッチ層とを金型中における面取り位置と角度とに基づき成型し、つまり前記第1表面層及び第2表面層が金型中の形状に従って成型された第1形状と、前記表面層が金型中の形状に従って成型された第2形状とを一致させると、一定の形状を有するワークが得られ」と記載されていることを指摘し、「金型中に面取り(部材の稜角を削るなどして得られた面)がある場合は、かかる金型中の面の形状に従って各層をあらかじめ成型し、第1表面層が金型中の形状に従って成型された第1形状と、第2表面層が金型中の形状に従って成型された第2形状とを(サンドイッチ層も合わせて)一致させることで、一定の形状を有するワークが得られることが記載されているといえる。そのため、上記金型の形状に従った成型は、本件発明に係る予備成形に該当する。」と主張する。
しかしながら、上記の[0069]の記載は、面取りがある金型を使用して成形体(ワーク)を製造するにあたり、予めワークを構成する各層(第1表面層、第2表面層、サンドイッチ層)を金型の面取り位置と角度とに基づき成型しておくことを記載しているにとどまるものと解され、この場合、第3プレフォーム材は、予め成形された第1表面層、サンドイッチ層、第2表面層が重畳配されたもので、本件発明1の「スタック」に相当するものに過ぎない。よって、上記[0069]の記載を参酌しても、甲1発明において「スタックを、一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームと(する)」予備成形工程を設けることは動機付けられない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

3.本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用する請求項に係るものであって、甲1発明と、少なくとも上記2.(1)で記載した相違点1?2の点で相違している。
そして、相違点2についての判断は、上記2.(2)、(3)で記載したとおりであり、本件発明2についても、本件発明1について説示したと同様の理由によって、甲1に記載された発明であるということはできないし、また、甲1発明(甲1に記載された発明)に基づいて、あるいは、甲1発明及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

4.本件発明10について
(1)対比
本件発明10と甲1発明を対比する。
ア 甲1発明の「繊維である第1材料」、「熱硬化性樹脂」は、それぞれ、本件発明1の「強化繊維」、「マトリクス樹脂組成物」に相当する。
イ 甲1発明のa)?d)のステップを経て得られた「ワーク」は、本件発明10の「繊維強化複合材料」に相当する。
ウ ワークを形成する「第3プレフォーム材」を構成する層であって、「熱硬化性樹脂がプレ浸漬された繊維である第1材料を乾燥して形成された層」である「プレ浸漬テープ」から形成される部分は、本件発明10の「樹脂層A、B、D、E」である「複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)」に相当する。
エ 甲1発明のワークを形成する「第3プレフォーム材」を構成する層であって、b)工程の「発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材」から形成される部分は、本件発明10の「樹脂層C」である、「樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)から形成される樹脂層」に相当するし、また、甲1発明のワークの、上記「シート材」から形成される部分は、材料の「シート材」自体が一方向に引き揃えられた強化繊維を含まないから、本件発明10の「樹脂層C」についての「一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない」を満足する。
オ 甲1発明の「ワーク」は、d)工程に特定されるとおり、「発泡プラスチックである第2材料が形成するシート材がサンドイッチ層を形成し、サンドイッチ層の下方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第1表面層を形成し、前記サンドイッチ層の上方に位置する少なくとも2層のプレ浸漬テープが第2表面層を形成する」ものであるから、本件発明10の「樹脂層A?Eがこの順番に積層され」を満足する。

そうすると、本件発明10と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違している。

<一致点>
下記樹脂層A?Eがこの順番に積層された繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
樹脂層A、B、D、E:複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)から形成される、強化繊維を含む樹脂層。
樹脂層C:樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層。

<相違点3>
本件発明10では、樹脂層A、B、D、Eを構成する、プリプレグ(X)から形成される、強化繊維を含む樹脂層が、「連続して配列され」、「一方向に引き揃えられた」強化繊維を含む層であることが特定され、また、「樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度が45°以下である」と特定されているのに対し、甲1発明では、これらの特定はされていない点。
<相違点4>
樹脂層Cである樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)について、本件発明10では、「(但し、発泡プラスチックを除く。)」と特定され、樹脂フィルム(Y)から、発泡プラスチックが除かれているのに対し、甲1発明では、本件発明10の樹脂フィルム(Y)に相当する第2材料は、発泡プラスチックである点。

(2)申立理由1(新規性)についての判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
本件特許の請求項10に「樹脂フィルム(Y)(但し、発泡プラスチックを除く。)」と記載されるとおり、本件発明10の繊維強化複合材料を形成する樹脂フィルム(Y)には、発泡プラスチックは含まれない。一方、甲1発明のワーク(これは、本件発明10の「繊維強化複合材料」に相当する。)の形成に用いられる第2材料(これは、本件発明10の「樹脂フィルム(Y)」に相当する。)は、発泡プラスチックであるから、相違点4が実質的な相違点であることは明らかであり、相違点4で甲1発明と相違する本件発明10について、甲1に記載された発明であるということはできない。

(3)申立理由2-1及び申立理由2-2(進歩性)についての判断
上記(1)で説示したとおり、本件発明1と甲1発明は、相違点4で異なるところ、甲1発明に関し、甲1に、「本発明が解決すべき技術的問題は、重量が軽く、かつ、厚みが比較的薄くて良好な機械性能を有するワーク及びその製造方法・・・を提供することである。」([0005])と記載されるとおり、甲1発明は、重量が軽く、かつ、厚みが比較的薄くて良好な機械性能を有するワークの製造方法を提供することを目的とする。
そして、当該ワークについて、甲1の請求項1には、「第1表面層と、前記第1表面層の下方に設置されるサンドイッチ層と、前記サンドイッチ層の下方に設置される第2表面層と、を含み、前記第1表面層及び前記第2表面層は、それぞれ少なくとも2層のプレ浸漬テープにより形成され、前記プレ浸漬テープは、熱硬化性樹脂がプレ浸漬された第1材料を乾燥して形成され、前記サンドイッチ層は、若干の微孔を有する第2材料により形成されることを特徴とするワーク。」と記載され、ワークが「若干の微孔を有する第2材料により形成される」、「サンドイッチ層」を有することが特定されているところ、当該若干の微孔を有する第2材料とは、具体的には、発泡プラスチックである(請求項4)。
ここで、甲1の[0036]に、「サンドイッチ層は第2材料からなり、前記第2材料中に大量の微孔が含まれるため、ワーク全体の密度を低減し、材料全体の重量を低下させることができる。微孔構造は、材料の耐引張力及び耐圧縮能力を高めることもでき、・・・本発明が提供するワークは、質量が軽く、厚みは比較的薄く、かつ、非常に良好な機械性能を有している。」と記載されるとおり、甲1は、甲1([0005])に記載の上記目的を達成するために、ワークを構成する第2材料を、若干の微孔を有する第2材料(発泡プラスチック)とする点に特徴を有する発明を開示するものといえる。
そうすると、そのようなワークを製造する方法に関するものである甲1発明において、重量が軽く、かつ、良好な機械的性能を有する材料である第2材料の発泡プラスッチックを、発泡プラスチックではなく、微孔が含まれておらず(発泡プラスチックよりも)重量が重く、かつ、微孔構造に基づく機械的性能の改善効果も期待できない単なる樹脂フィルムに変更することを、当業者が動機付けられるとはいえない。
また、申立人が提出した甲3(これには、未硬化の熱硬化性マトリックス樹脂(A)を連続した強化繊維束(B)に含浸させて得たプリプレグ(I)と、熱可塑性樹脂(C)からなるシート状基材(II)とを用いる複合材料の製造方法に関する技術が開示されており、シート状基材(II)は、発泡プラスチックではない単なる樹脂フィルムである。)を含めた他の証拠を参酌しても、甲1発明において、第2材料を、発泡プラスッチックに変えて、発泡プラスチックではない単なる樹脂フィルムとすることを動機付けるような記載はない。
したがって、申立人が提出した他の証拠を参酌しても、甲1発明を、相違点4に係る本件発明10の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10について、甲1発明(甲1に記載された発明)に基づいて、あるいは、甲1発明及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.本件発明11?12について
本件発明11?12は、請求項10を直接または間接的に引用する請求項に係るものであって、甲10発明と、少なくとも上記4.(1)で記載した相違点3?4の点で相違している。
そして、相違点4についての判断は、上記4.の(2)、(3)で記載したとおりであり、本件発明11?12についても、本件発明10について説示したと同様の理由によって、甲1に記載された発明であるということはできないし、また、甲1発明(甲1に記載された発明)に基づいて、あるいは、甲1発明及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

6.まとめ
以上のとおり、本件発明1、2、10?12について、甲1に記載された発明であるということはできないし、また、甲1発明(甲1に記載された発明)に基づいて、あるいは、甲1発明及び甲2、3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、申立理由1、申立理由2-1及び申立理由2-2には、理由がない。

そして、第5の冒頭で述べたとおり、取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由1及び取消理由2は、申立理由1及び申立理由2-1に包含されているから、申立理由1及び申立理由2-1に関して既に述べたと同様の理由によって、取消理由1及び取消理由2には、理由がない。


第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立理由によっては、本件発明1、2、10?12についての特許を取り消すことはできない。さらに、他にこれらの発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する 。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)と、樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(ただし、プリプレグ(X)を除く。)とが積層され、
プリプレグ(X)/プリプレグ(X)/樹脂フィルム(Y)/プリプレグ(X)/プリプレグ(X)の5層構成の積層ユニットを含み、第1層のプリプレグ(X)の繊維方向を0°としたとき、第2層、第4層及び第5層のプリプレグ(X)の繊維方向がそれぞれ15?165°であり、かつ各層の繊維方向が異なるスタックを、
一対の型を備える成形型により予備成形してプリフォームとし、さらに前記プリフォームを圧縮成形して立体形状の繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記第2層のプリプレグ(X)の繊維方向が85?95°であり、前記第4層のプリプレグ(X)の繊維方向が30?60°であり、前記第5層のプリプレグ(X)の繊維方向が120?150°である、請求項1に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記スタックとして、2つ以上の前記積層ユニットを含み、かつ厚さ方向に隣り合う前記積層ユニットの間に前記樹脂フィルム(Y)が挟まれるように積層されたスタックを用いる、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記スタックとして、同一の積層構成の2つの前記積層ユニットを含み、かつそれら積層ユニットが、それぞれの積層順序が厚さ方向において対称となるように積層されたスタックを用いる、請求項1?3のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記スタックとして、前記第4層の繊維方向と前記第5層の繊維方向の角度の差が90°である積層ユニットを含むスタックを用いる、請求項1?4のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記スタックを、平面に展開できない立体形状に成形する、請求項1?5のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記プリプレグ(X)に含まれるマトリックス樹脂組成物と、前記樹脂フィルム(Y)に含まれる樹脂組成物の組成が同一である、請求項1?6のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂フィルム(Y)の厚みが0.1?1mmである、請求項1?7のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記プリプレグ(X)として、クロスプリプレグを用いる、請求項1?8のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項10】
下記樹脂層A?Eがこの順番に積層され、樹脂層A、B、D、Eのそれぞれの2層間において平面視で強化繊維の繊維方向がなす角度のうち、最小の角度が45°以下である繊維強化複合材料を得る、繊維強化複合材料の製造方法。
樹脂層A、B、D、E:連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ(X)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含む樹脂層。
樹脂層C:樹脂組成物からなる1つ以上の樹脂フィルム(Y)(但し、発泡プラスチックを除く。)から形成され、一方向に引き揃えられた強化繊維を含まない樹脂層。
【請求項11】
前記樹脂層Aの強化繊維の繊維方向を0°としたとき、前記樹脂層B、前記樹脂層D及び前記樹脂層Eの強化繊維の繊維方向がそれぞれ15?165°である、請求項10に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記の最小の角度が15?45°である、請求項10又は11に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項13】
連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)が、繊維方向が異なるように積層されたスタックを、一対の型を備える成形型により立体形状に成形する、繊維強化複合材料の製造方法であって、
前記成形型を構成する前記の一対の型のうちの一方の型と前記スタックとの間に、樹脂製又はゴム製の伸縮シートを特定の方向に緊張させながら配置した状態で前記一対の型を近接させ、
前記一対の型によって前記伸縮シートを引き延ばしながら前記スタックを予備成形によりプリフォームを得た後、前記伸縮シートを配置しない状態で前記一対の型により前記プリフォームを再び圧縮成形して繊維強化複合材料とする、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項14】
前記一対の型が下型と上型とからなり、
前記下型の成形面における上型に対向する部分に前記伸縮シートが部分的に接するように、前記伸縮シートを緊張させながら配置し、前記伸縮シート上に前記スタックを配置した状態で、前記上型と前記下型とを近接させて前記スタックを予備成形する、請求項13に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項15】
前記スタック中の強化繊維が二方向以上に引き揃えられている、請求項13又は14に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、前記伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度が15?75°となるように、一方向以上の方向に前記伸縮シートを緊張させた状態で前記スタックを予備成形する、請求項13?15のいずれか一項に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項17】
前記スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、前記伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度が30?60°である、請求項16に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項18】
連続して配列された複数本の強化繊維にマトリクス樹脂組成物が含浸された複数のシート状のプリプレグ(X)が、繊維方向が異なるように積層されたスタックを、一対の型を備える成形型により立体形状に成形する、繊維強化複合材料の製造方法であって、
前記成形型を構成する前記の一対の型のうちの一方の型と前記スタックとの間に、樹脂製又はゴム製の伸縮シートを特定の方向に緊張させながら配置した状態で前記一対の型を近接させ、
前記スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、前記伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度が15?75°となるように、前記一対の型によって前記伸縮シートを引き延ばしながら一方向以上の方向に前記伸縮シートを緊張させた状態で前記スタックを成形する、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項19】
前記スタックにおける各プリプレグ(X)の繊維方向と、前記伸縮シートを緊張させる方向とがなす角度が30?60°である、請求項18に記載の繊維強化複合材料の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-20 
出願番号 特願2016-548746(P2016-548746)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (B29C)
P 1 652・ 121- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 渕野 留香
大島 祥吾
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6222370号(P6222370)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 繊維強化複合材料の製造方法  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
代理人 大浪 一徳  
代理人 伏見 俊介  
代理人 伏見 俊介  
代理人 高橋 詔男  
代理人 大浪 一徳  
代理人 志賀 正武  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 鈴木 三義  
代理人 鈴木 三義  
代理人 田▲崎▼ 聡  

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