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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A21D 審判 全部申し立て 2項進歩性 A21D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A21D 審判 全部申し立て 特174条1項 A21D |
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管理番号 | 1353173 |
異議申立番号 | 異議2017-701061 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-11-10 |
確定日 | 2019-06-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6126452号発明「冷凍ドーナツ生地および該冷凍ドーナツ生地を用いたドーナツ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6126452号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6126452号の請求項1-3に係る特許を維持する。 特許第6126452号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6126452号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年5月9日に出願され、平成28年11月29日付けで拒絶理由通知が通知され、平成29年3月22日に意見書及び手続補正書の提出がされ、平成29年4月14日にその特許権の設定登録がされ、平成29年5月10日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成29年11月10日 : 特許異議申立人鈴木裕子(以下「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て 平成30年2月2日付け : 取消理由通知 平成30年4月6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成30年5月16日 : 特許異議申立人による意見書の提出 平成30年6月28日付け: 訂正拒絶理由通知 平成30年7月23日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書に係る手続補正書の提出 平成30年12月17日付け: 取消理由通知(決定の予告) 平成31年2月14日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。)の提出 なお、平成31年2月20日付けの通知書で、特許異議申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかったものである。 また、平成30年4月6日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正についての判断 1.訂正の内容 特許権者は、特許請求の範囲を以下(訂正事項1?6)のとおり、訂正することを請求する。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「生地材料に水を加えて捏ね上げたドウ」とあるのを、「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウ」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「生地材料と水を混合したペースト」とあるのを、「ドーナツの生地材料と水を混合したペースト」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「複数重ねて折り込まれた」とあるのを、「複数折り込りまれた」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「冷凍ドーナツ生地」とあるのを、「冷凍ドーナツ生地であって、前記ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である、冷凍ドーナツ生地」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 なお、本件訂正は、一群の請求項〔1-5〕に対して請求されている。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「ドウ」に係る「生地材料」を、明細書の「以下に例示する生地材料に水を加えて捏ね上げたもので、伸展性および弾力性のある生地である。例えば、イーストドーナツ生地やパン生地などを挙げることができる。」(【0024】)の記載に基づいて「ドーナツの生地材料」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「ペースト」に係る「生地材料」を、明細書の「本発明に係る冷凍ドーナツ生地のペースト状生地は、以下に例示する生地材料と水を混合した均質な流動性のある生地または塑性のある生地である。例えば、ケーキ生地やケーキドーナツ生地、可塑性生地などを挙げることができる。」(【0027】)の記載に基づいて「ドーナツの生地材料」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた「複数重ねられて折り込まれた」との記載が、層を「複数」に折り込むのか、「重ねて」折り込むのか不明瞭であったのを、「複数折り込まれた」と訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的としており、明細書の「層構造は、(1)ドウ状生地で(2)ペースト状生地を包んだ後、薄く伸ばし、何重にも重ねることで作成することができる。その際、必要に応じてリバースシーター等の専用の器具を用いて、生地を伸ばすこともできる。」(【0034】)との記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載されていた「ペースト」について、訂正前の請求項4の「前記ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である」の記載に基づいて特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合するものである。 (7)以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正により訂正されたので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1ないし3」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである(下線は、訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を1つの層とし、 該層が複数折り込まれた層構造を呈する冷凍ドーナツ生地であって、 前記ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である、冷凍ドーナツ生地。 【請求項2】 前記層が8層以上の折り層数に折り込まれた層構造を呈する、請求項1記載の冷凍ドーナツ生地。 【請求項3】 前記ドウと前記ペーストの重量比が、15:85?85:15である請求項1または2に記載の冷凍ドーナツ生地。」 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 平成30年2月2日付け取消理由通知及び平成30年12月17日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 <理由1> 本件特許の請求項1、2、3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 <理由2> 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された甲第1、2、3、5及び6号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 <理由3> この特許は、特許請求の範囲の請求項5の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 <理由4> 平成29年3月22日に提出された手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は取り消すべきものである。 <理由5> この特許は、特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載が特許法36条6第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 甲第1号証 特開2005-348675号公報 甲第2号証 特開2003-250432号公報 甲第3号証 特開昭63-192341号公報 甲第5号証 特開2006-129763号公報 甲第6号証 桜井芳人編、総合食品事典 第六版、同文書院、平成元年3月4日、p.654 甲第7号証 田中康夫(外1名)、冷凍生地の理論と実際、株式会社食研センター、1982年11月1日、p.194、195、198-201、204-206 2.取消理由についての判断 (1)<理由1>及び<理由2>について ア.引用文献及び引用発明 (ア)甲第1号証について 甲第1号証には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、積層状の構造を有する積層生地に関し、具体的にはフライするのに適した積層生地であって、さらに詳しくはフライした菓子・パン類を作るのに適した菓子・パン用の積層生地に関する。本発明はまた、前記積層生地の製造方法に関し、さらに前記積層生地を用いる食品、とりわけフライ食品の製造方法に関する。」 「【0007】 本発明の積層生地を用いて製造するフライ食品は特に限定されるものではない。フライ食品の中でも菓子・パン類が挙げられ、その形状は特に限定されるものではなく、クロワッサン、デニッシュ、パイ、ドーナツ、ツイスト状、棒状、板状、フラワー状、三つ編状などの菓子・パン類など種々のものが包含される。 本発明のフライ食品用積層生地は、ドウ生地層、油脂層、並びに穀粉及び/又は澱粉を含むペーストの層が積層して構成されている。」 「【0011】 本発明で使用する穀粉及び/又は澱粉を含むペーストにおいて、穀粉とは小麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉、及びこれらの混合物を包含し、中でも小麦粉が好ましく用いられる。また澱粉としては小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さつまいも澱粉、さご澱粉、くず澱粉、ワキシーコーンスターチなどの生澱粉や加工澱粉などが挙げられる。好ましく用いられるのはトウモロコシ澱粉である。 本発明で使用する上記ペーストは穀粉又は澱粉、あるいは穀粉と澱粉の双方を含んでよい。本発明で使用する該ペーストは、穀粉及び/又は澱粉を2?20質量%程度含むペースト状のものである。該ペーストは通常、水を15?40質量%程度含む。本発明で使用するペーストは、その他に、糖類(砂糖、水あめ、麦芽糖、異性化糖、液糖、またはそれらの混合物など)を10?50質量%程度、マーガリン、ショートニングその他の動植物油脂などの油脂類を10?30質量%程度含むことができる。」 「【0015】 このように製造された積層生地は、例えばカットすることにより、適当な大きさ及び形状に分割し、さらに目的とする食品に応じて成形することができる。こうして成形された積層生地は必要に応じて醗酵(ホイロ)をとる。また、必要に応じてフライ前にラックタイムをとってもよい。 製造された積層生地はまた、成形する前又は成形した後に冷凍、冷蔵して保管することができ、冷凍条件としては、一般に-10℃?-35℃が採用され、急速冷凍などがあり、例えば-35℃で急速冷凍することができる。冷蔵条件は一般に-5℃?5℃である。冷凍生地の解凍は自然解凍が適当であり、解凍後、そのままホイロもしくは解凍後成形しホイロ(例えば27?40℃、湿度45?85%)を行い、好ましくは乾ホイロによって適当な醗酵を施すことが好ましい。 本発明の積層生地は成形する前後のものを包含し、また、冷凍生地及び冷蔵生地を包含する。本発明の積層生地は、冷凍又は冷蔵の状態で流通させることができる。」 「【0017】 [実施例1] 以下の配合にてドウ生地を製造した。 ドウ生地 強力粉 80質量部 薄力粉 20質量部 イースト 4質量部 イーストフード 0.1質量部 砂糖 10質量部 脱脂粉乳 3質量部 食塩 1.8質量部 全卵 10質量部 練り込み用油脂 10質量部 水 50質量部 【0018】 [ドウ生地の製造工程] ミキシング:低速2分 中速5分→油脂を投入→低速5分 中速3分 捏ね上げ温度:20℃ 醗酵:室温、湿度50?60%、30分 リタード:-10℃、1?2時間 リタードしたドウ生地の圧延 [積層生地の製造工程] (1)折りこみ:上記ドウ生地層100質量部に対してロールイン油脂シート(油脂80%、水15%含有)10質量部を載せ、さらにフラワーペーストシート(糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有)10質量部を載せ、該ドウ生地で包みこみ、ドウ生地とドウ生地の間に油脂層とフラワーペースト層が1層づつ形成される積層体を作った。 (2)上記積層体の圧延:シーターで15mmに圧延した。 (3)折り畳み操作と圧延:三つ折りを3回行う、その間に圧延操作を行う(油脂層が3×3×3で27層となる)→シーターで15mmまで圧延する。 (4)分割・成形:上記のように圧延した積層生地を棒状にカットしツイストする(45g/個) (5)ホイロ:30℃、湿度75%、50分 (6)ラックタイム:10分 [フライ] 使用した油脂:ドーナツ用固形油脂、180℃、60秒反転60秒 こうして、ツイスト状のフライ食品を得た。」 「【0019】 [実施例2] 実施例1と同様の操作を行い、但し、積層生地の製造工程(1)折りこみにおいて、ドウ生地層100質量部に対してロールイン油脂シート10質量部、及びフラワーペーストシート20質量部を用いて、ツイスト状の成形生地(45g/個)を得て、フライした。・・・ 【0020】 [比較例1]従来の方法 実施例1で用いたドウ生地100質量部を用い、これに対して実施例1で用いたロールイン油脂シート10質量部を折りこんで、その他は実施例1と同様に操作して、ツイスト状の成形生地(45g/個)を得て、フライした。 [比較例2] 実施例1で用いたドウ生地100質量部を用い、これに対して実施例1で用いたフラワーペーストシート20質量部を折りこんで、その他は実施例1と同様に操作して、ツイスト状の成形生地(45g/個)を得て、フライした。」 上記の記載より、比較例2に注目し、積層生地を冷凍して冷凍生地とする旨の記載(【0015】)も踏まえると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。 「ドウ生地層100質量部に対してフラワーペーストシート(糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有)20質量部を載せ、該ドウ生地で包みこみ、ドウ生地とドウ生地の間に油脂層とフラワーペースト層が1層づつ形成される積層体を作り、前記積層体をシーターで15mmに圧延し、三つ折りを3回行って得た積層生地を冷凍した冷凍ドーナツ生地。」(以下「甲1発明」という。) (イ)甲第2号証について 甲第2号証には、以下の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 生地に、(1)異なる生地を重ね合わせること、(2)シート状食品を重ね合わせること、(3)ペースト状食品を塗布すること、のいずれか一つ以上の工程を経た後にフライすることを特徴とするフライしたパン類の製造方法。 【請求項2】 フライする前に、成形することを特徴とする請求項1に記載のパン類の製造方法。」 「【0014】本発明で言うシート状食品とは、保型性を有するシート状に加工された食品をいい、好ましくはフライ時に一方の生地などから剥離しないもの、および溶解してフライ油に流れ出さないものをいう。例としてはフラワーシート、チーズやジャム等さまざまな風味付けをしたフラワーシート、ゼリー、チョコレート製品等が挙げられるが本発明はこれらに限定されない。 【0015】また本発明でいうペースト状食品とは流動性を持たないペースト状の食品で、好ましくはフライ時に一方の生地などから剥離しにくいもの、および溶解してフライ油に流れ出さないものをいう。具体的にはジャム、チーズ製品、餡、チョコレートソース等が挙げられるが本発明はこれらに限定されない。 【0016】本発明でいう生地とは、小麦粉を主原料としこれに水等を加え、必要に応じて更に油脂類、糖類、乳製品、卵、乳化物、膨張剤、イーストフード、各種生地改良剤、各種酵素類、各種乳化剤等の原料を添加したものであり、パン酵母の添加の有無に関わらず、混捏工程を経て得られた一般的な生地のことを言い、饅頭生地やパイ生地、ピザ生地、ホットケーキ生地、スポンジケーキ生地、クレープ生地、餃子生地等をも包含する。更に上記原料の他に小麦粉以外の穀物や固形物、例えばライ麦、レーズン等を混捏した物でも構わない。更に上記原料の他に生地への風味付けとしてチョコレートソース、フルーツソース等のペースト類などを混合したものでも構わない。そして生地を加熱調理したものをパン類という。」 「【0017】本発明における生地の配合、混捏方法については特に限定されることはない。配合について例を挙げると、食パン生地配合、フランスパン生地配合、イギリスパン生地配合、ライ麦パン生地配合、バターロール生地配合、ブリオッシュ生地配合、デニッシュペストリー生地配合、パイ生地配合、スイートロール生地配合、イーストドーナツ生地配合、デニッシュドーナツ生地配合、コーヒーケーキ生地配合、パネトーネ生地配合、ケーキドーナツ生地配合、フレンチクルーラー配合、クイックブレッド生地配合、イングリッシュマフィン生地配合、天然酵母パン生地配合、サワー種生地配合、中華まん生地配合などがあるが本発明はこれらに限定されるものではない。また混捏方法について例を挙げると、ストレート法、中種法では50%中種法、70%中種法、100%中種法、ノータイム法、液種法、サワー種法、水種法、再捏法、冷凍生地法、冷蔵生地法、湯種法などが挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。 【0018】本発明のフライしたパン類は、例えば以下のようにして製造できる。生地の製法についてパン類を例に挙げると、今日では直捏法、中種法、加糖中種法、再捏法、冷凍生地法、冷蔵生地法などがあり、更にそれらの製法に加えて老麺法、液種法、ノータイム法、天然酵母使用法などがある。しかし本発明はこれら製法に限定されることは全くなく、どの製法で行っても構わない。」 「【0022】また、生地に、(1)異なる生地を重ね合わせる、(2)シート状食品を重ね合わせる、(3)ペースト状食品を塗布する、の方法を特に限定しないが、フライする前に重ね合わせた生地を折り畳む、ロール状に巻いてカットする、若しくはツイスト成形するなどの作業を行い成形する方が視覚的に美しくなり、製品のバラエティーの幅が広がるので好ましい。 【0023】次に成形された物をフライする工程に移るが、この時点で発酵を必要とするものは発酵工程を取った後、フライする工程に移る。」 「【0027】(実施例1)表1に記載するパン生地配合に従い、表2の工程でパン生地を約1000g得た。また別途、表1に記載するココア風味ケーキ生地配合に従い、表3の工程でココア風味ケーキ生地を約400g得た。上記で得た生地は、リバースシーターを用いてパン生地は約20mm、ココア風味ケーキ生地は約10mmにそれぞれに圧延した後、パン生地にココア風味ケーキ生地を重ね合わせた。これを更に厚さ約5mm、生地サイズ約30cm×約40cmになるように圧延した。これをロール巻きに成形した後、生地厚さ約4cm毎にカットした(生地重量約140g/片)。これらは、温度36℃、湿度60%で50分間のホイロを経た後、フライ油温度200℃で6分間フライし、渦巻き模様のドーナツを得た。」 表1には、「ココア風味ケーキ生地」の配合として、「薄力粉100重量部、上白糖100重量部、油脂100重量部、水30重量部、全卵100重量部、ベーキングパウダー1重量部、カカオペースト40重量部」とすることが記載されている。 上記の記載より、甲第2号証には、以下の発明が記載されている 「薄力粉100重量部、上白糖100重量部、油脂100重量部、水30重量部、全卵100重量部、ベーキングパウダー1重量部、カカオペースト40重量部のココア風味ケーキ生地をパン生地に重ね合わせロール巻きに成形した、渦巻き模様のドーナツの冷凍生地。」(以下「甲2発明」という。) (ウ)甲第3号証について 甲第3号証には、以下の記載がある。 「2.特許請求の範囲 板状に延ばした粘弾性および伸展性の優れたフラワーペーストをパン生地に対して20?50%包み込み、フラワーペーストをパン生地と交互に4?12層に組み合わせてシート状となし、これを分割、整型した後、醗酵(焙炉)させて焼成することを特徴とする菓子パンの製造法。」(1ページ左下欄3ないし9行) 「3.発明の詳細な説明 「産業上の利用分野」 本発明は風味が良く、極めて老化の遅いパンの製造法に関する。詳しくは優れた粘弾性と伸展性を有するフラワーペーストをロールイン方法により生地と多層に組み合わせることを特徴とする菓子パンの製造法に関する。」(1ページ左下欄10ないし16行) 「実施例3 パン生地とフラワーペーストのロールインによる新たな組み合わせに関する本発明に於いて、フラワーペーストの種類を自由に選定することは勿論可能である。例えばカスタードの他にミルク、チョコレート、コーヒー、チーズ、黒糖、各種フルーツ類及びナッツ類等の入った粘弾性と伸展性の優れたロールイン用フラワーペーストを使用することにより、菓子パンのバラエティ-化を更に豊かにすることができる。これに加えて整型を変えたり、ベーキングの他に揚げたり、蒸したりする操作を行った場合に於いても本発明の効果が顕著に認められる。実施例3によりロールイン用チョコレートフラワーペースト(チョコレートシート)の使用例を示す。 〔生地配合〕 強力粉 80部 薄力粉 20 上白糖 25 食塩 1 脱脂粉乳 3 全卵(殻付) 12 マーガリン 20 イースト 6 イーストフード 0.1 水 43 〔製法〕 マーガリンを除く諸原料を常法により低速3分、中速5分ミキシングし、次いでマーガリンを加えて更に低速1分、中速3分攪拌して捏上温度25℃の菓子パン生地を得る。30分のフロア-タイムの後、-15℃のフリーザーで60分冷却する。一定の厚さに整えた生地1.5kgで、板状に延ばされたチョコレートシート600gを包み込み、リバースシーターで2つ折り及び3つ折り各一回行って厚さIcmの6層生地を得る。これを巾1.5cm、長さ1.8cmにカットして40?45g分割とし、天板に並べて38℃の焙炉で50分の醗酵時間をとった後200℃で10分焼成する。」(4ページ左下欄9行ないし5ページ左上欄8行) 「一方、フラワーペーストの水分は特殊なものを除いて通常45?50%前後のものであり、」(5ページ左下欄15及び16行) 上記の記載より、甲第3号証には、以下の発明が記載されている 「板状に延ばした粘弾性および伸展性の優れた、強力粉80部、薄力粉20部、上白糖25部、食塩1部、脱脂粉乳3部、全卵(殻付)12部、マーガリン20部、イースト6部、イーストフード0.1部、水43部のパン生地に対してフラワーペーストを20?50%包み込み、フラワーペーストをパン生地と交互に4?12層に組み合わせてシート状となし、これを分割、整型した後、醗酵(焙炉)させて焼成する菓子パン。」(以下「甲3発明」という。) エ)甲第5号証について 甲第5号証には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、フラワーペースト、カスタード、スープ等のフラワーペースト類に関する。また、本発明は、該フラワーペースト類の製造方法、及び該フラワーペースト類を用いたベーカリー食品に関する。」 「【0008】 本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、澱粉類2?10質量%、極度硬化油脂0.01?1質量%を含む油脂3?40質量%、及び糖類8?30質量%を含有することを特徴とするフラワーペースト類を提供するものである。 また、本発明は、澱粉類2?10質量%、極度硬化油脂0.01?1質量%を含む油脂3?40質量%、及び糖類8?30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱することを特徴とするフラワーペースト類の製造法を提供するものである。 また、本発明は、上記フラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を、焼成及び/又はフライしてなることを特徴とするベーカリー食品を提供するものである。」 「【0030】 その他、本発明のフラワーペースト類には、通常フラワーペースト類の原料として使用し得る成分を使用することが可能であり、例えば、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。尚、これらの成分のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、本発明のフラワーペースト類中の水分含有量が30?85質量%となるように使用することが好ましい。」 「【0032】 具体的には、まず、澱粉類2?10質量%、極度硬化油脂0.01?1質量%を含む油脂3?40質量%、糖類8?30質量%、及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペースト原料を、加熱溶解、乳化混合して予備乳化組成物を作成する。その際、水相と油相との比率(前者:後者、質量基準)は、95:5?60:40とすることが好ましい。なお、増粘安定剤を添加する場合は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。」 「【0036】 このようにして得られた本発明のフラワーペースト類は、フィリング、トッピング、練り込み用、折り込み(ロールイン)用として、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ等の菓子類、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール、イーストドーナツ等のパン類等に広く用いることができる。 【0037】 以下に、本発明のベーカリー食品について述べる。 本発明のベーカリー食品は、本発明のフラワーペースト類をベーカリー生地にフィリング、トッピング、練り込み、折り込み等の方法で複合させた複合生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成及び/又はフライして得られたものである。 【0038】 上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等の菓子生地やパン生地が挙げられる。 【0039】 上記の複合生地としては、例えば、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類を包餡した包餡生地、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類をトッピング又はサンドした積層生地、ベーカリー生地にシート状のフラワーペースト類をロールインした積層生地、製パン連続ラインにおいて、ブロック状のフラワーペースト類を、ファットポンプ等を使用して薄板状に押し出し、ベーカリー生地にロールインした積層生地、円柱状のフラワーペースト類をベーカリー生地中に分散させた混合生地等が挙げられる。」 「【0042】 上記複合生地をフライする場合、ラックタイムは特に有効である。ラックタイムをとることにより、ベーカリー生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として、ベーカリー生地の水分を減少させること及びフライ操作時の吸油を減少させることができる点で、ラックタイムをとることが望ましく、時間にして10?40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。 フライ操作は、通常のドーナツ等と同様、160?250℃、特に170?220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られにくい。250℃を超えると、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。 なお、上記焼成とフライとを併用する場合は、フライした後に焼成しても、焼成した後にフライしてもよい。」 上記の記載より、甲第5号証には、以下の発明が記載されている。 「ベーカリー生地に、澱粉類2?10質量%、極度硬化油脂0.01?1質量%を含む油脂3?40質量%、糖類8?30質量%、及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペーストをサンドしたケーキドーナツの積層生地。」(以下「甲5発明」という。) (オ)甲第6号証 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 ソフトドーナッツは、ドーナッツの生地を油の中に押出して作り、軟らかく、形も美しい。(以下「甲6記載事項」という。) (カ)甲第7号証 甲第7号証には、以下の事項が記載されている。 ドーナツの生地を冷凍、解凍及び焼成を行うこと。 イ.対比・判断 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ドウ生地層」及び「ドウ生地」は、その用語の意味等から本件発明1の「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウ」に相当する。 本件発明1の「ドーナツの生地材料と水を混合したペースト」と、甲1発明の「糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有」する「フラワーペーストシート」及び「フラワーペースト層」とは、「ペースト状の層」の限りで一致する。 本件発明1の「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を1つの層とし、該層が複数折り込まれた層構造を呈する冷凍ドーナツ生地であって、前記ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である」態様と、甲1発明の「ドウ生地層100質量部に対してフラワーペーストシート(糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有)20質量部を載せ、該ドウ生地で包みこみ、ドウ生地とドウ生地の間に油脂層とフラワーペースト層が1層づつ形成される積層体」とは、「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ペースト状の層を包んだ状態を1つの層とし、該層が複数折り込まれた層構造」の限りで一致する。 甲1発明の「積層生地を冷凍した冷凍ドーナツ生地」は、本件発明1の「冷凍ドーナツ生地」に相当する。 そうすると、両者は、「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ペースト状の層を包んだ状態を1つの層とし、 該層が複数折り込まれた層構造を呈する冷凍ドーナツ生地。」 で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 ペースト状の層について、本件発明1は、「ドーナツの生地材料と水を混合したペースト」であって、「ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である」のに対して、甲1発明は、フラワーペースト(糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有)である点。 上記相違点1について検討すると、甲1発明のフラワーペースト層は、「糖類40%、油脂15%、穀粉10%含有」するものであり、加水量が明示されていないが、甲第1号証の「該ペーストは通常、水を15?40質量%程度含む。」(【0011】)との記載から、下限値である15質量%としても、穀粉10%を100重量部とすると水は150重量部となり、本件発明1の穀粉100重量部に対して30?60重量部の範囲外であり、甲第2、3、5及び7号証の記載を参酌しても、甲1発明において加水量を減らして穀粉100重量部に対して30?60重量部とする動機付けはない。 そして、本件発明1は、上記相違点1の構成を備えることにより「本発明によれば、ソフトドーナツに分類されるドーナツと同等の品質のドーナツ用生地を冷凍することができる。また、本発明に係る冷凍ドーナツ生地を用いれば、ソフトでボリュームのあるソフトドーナツと同等の品質のドーナツを製造することができる。」(【0015】)、「本発明では特に、ペースト状生地の作製時における加水量を、材料穀粉100重量部に対して、30?60重量部に設定することが好ましい。加水量を、30重量部以上とすることで、製造されるドーナツのソフト感およびボリューム感をより向上させることができる。」(【0028】)との効果を奏するものである。 したがって、相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明であるとはいえず、また、本件発明1は、甲1発明並びに甲2発明、甲3発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法29条1項3号に該当するとはいえず、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 (イ)本件発明2及び3について 本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、上記(ア)と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲1発明であるとはいえず、また、甲1発明並びに甲2発明、甲3発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 以上のとおりであるから、本件発明2及び3は、特許法29条1項3号に該当するとはいえず、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないともいえない。 (2)<理由3> について 特許請求の範囲の請求項5の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとした取消理由は、特許請求の範囲の請求項5が本件訂正により削除されたため、解消された。 (3)<理由4>について 平成29年3月22日に提出された手続補正書でした請求項1及び5に係る補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとした取消理由は、本件訂正の訂正事項3及び6により請求項1の記載は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとなったから解消された。 (4)<理由5> 特許請求の範囲の請求項1ないし5の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないとした取消理由は、本件訂正の訂正事項3及び6により、請求項1ないし3の記載は特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものといえるから解消された。 3.取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載された申立て理由について (1)甲第2号証に基づく進歩性の判断について 甲2発明の「パン生地」及び「ココア風味ケーキ生地」は、本件発明1の「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウ」及び「ドーナツの生地材料と水を混合したペースト」に相当する。 甲2発明の「渦巻き模様のドーナツの冷凍生地」は、本件発明1の「冷凍ドーナツ生地」に相当する。 本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は、 「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウでドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を一つの層とした、冷凍ドーナツ生地。」 で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 相違点2 本件発明1は、「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を1つの層とし、 該層が複数折り込まれた層構造を呈する」を備えているのに対して、甲2発明は、「ココア風味ケーキ生地をパン生地に重ね合わせロール巻きに成形」する点。 上記相違点2について検討すると、甲2発明は、渦巻き模様のドーナツの生地であるから、前記相違点2に係る本件発明1の構成とする動機付けはない。 したがって、本件発明1は、甲2発明並びに甲1発明、甲3発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 また、同様の理由で、本件発明3は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (2)甲第3号証に基づく進歩性の判断について 本件発明1と甲3発明とを対比すると、両者は、 「生地にペーストを包んだ層を一つの層とし、該層が複数折り込まれた層構造を呈する食品。」 で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 相違点3 本件発明1は、「冷凍ドーナツ生地」であるのに対して、甲3発明は、「菓子パン」である点。 上記相違点3について検討すると、甲3発明は、菓子パンであるところ、冷凍ドーナツ生地とする動機付けはない。 したがって、本件発明1は、甲3発明並びに甲1発明、甲2発明及び甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 また、同様の理由で、本件発明2及び3は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (3)甲第5号証に基づく進歩性の判断について 本件発明1と甲5発明とを対比すると、両者は、 「ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を1つの層とし、該層が複数重ねられたドーナツ生地。」 で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 相違点5 ペーストの加水量について、本件発明1は、「ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部であるソフトドーナツの製造方法」であるのに対して、甲5発明は、加水量について特定されていない点。 上記相違点5について検討すると、甲5発明は、「澱粉類2?10質量%、極度硬化油脂0.01?1質量%を含む油脂3?40質量%、糖類8?30質量%、及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペースト」であり、甲第5号証には、「尚、これらの成分のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、本発明のフラワーペースト類中の水分含有量が30?85質量%となるように使用することが好ましい。」(【0030】)と記載されている。しかし、フラワーペーストを水分量を30質量%、澱粉類を10%で調製した場合を考えても、材料澱粉100重量部に対して加水量は300重量部となり、甲第1号証?甲第3号証の記載を参酌しても、甲5発明において加水量を減らして穀粉100重量部に対して30?60重量部とする動機付けはない。 したがって、本件発明1は、甲5発明並びに甲1発明、甲2発明及び甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 また、同様の理由で、本件発明2及び3は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 (4)小括 本件発明1-3は、甲2、3及び5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 以上のとおりであるから、本件発明1-3は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立て理由によっては、本件請求項1-3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1-3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項4及び5に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てにおける、請求項4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ドーナツの生地材料に水を加えて捏ね上げたドウで、ドーナツの生地材料と水を混合したペーストを包んだ状態を1つの層とし、 該層が複数折り込まれた層構造を呈する冷凍ドーナツ生地であって、 前記ペーストの作製時における加水量が、材料穀粉100重量部に対して30?60重量部である、冷凍ドーナツ生地。 【請求項2】 前記層が8層以上の折り層数に折り込まれた層構造を呈する、請求項1記載の冷凍ドーナツ生地。 【請求項3】 前記ドウと前記ペーストの重量比が、15:85?85:15である請求項1または2に記載の冷凍ドーナツ生地。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-06-06 |
出願番号 | 特願2013-99249(P2013-99249) |
審決分類 |
P
1
651・
55-
YAA
(A21D)
P 1 651・ 537- YAA (A21D) P 1 651・ 121- YAA (A21D) P 1 651・ 113- YAA (A21D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 吉田 知美 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 佐々木 正章 |
登録日 | 2017-04-14 |
登録番号 | 特許第6126452号(P6126452) |
権利者 | 昭和産業株式会社 |
発明の名称 | 冷凍ドーナツ生地および該冷凍ドーナツ生地を用いたドーナツ |
代理人 | 渡邊 薫 |
代理人 | 小林 十四雄 |
代理人 | 岡村 信一 |
代理人 | 渡邊 薫 |