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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1353648
審判番号 不服2018-13932  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-19 
確定日 2019-08-07 
事件の表示 特願2014-131762号「エアバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月18日出願公開,特開2016- 8023号,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年6月26日の出願であって,平成30年1月12日付けで拒絶理由が通知され,同年3月23日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年7月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願の請求項1に係る発明は,以下の引用文献1,2,4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願の請求項2に係る発明は,以下の引用文献1?4に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-116010号公報
2.実公昭49-24105号公報
3.米国特許第7192053号明細書
4.特開2008-49716号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1,2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は,平成30年10月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である(下線部は,補正箇所であり,当審で付した。)。
「【請求項1】
互いに対向する一対の対向面部,及び,これら対向面部間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員拘束面部を備え,折り畳まれた状態から導入されたガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ本体部と,
前記対向面部の少なくともいずれかに設けられた排気用の排気孔と,
この排気孔の前記エアバッグ本体部の外部に設けられた蓋体と,
一端側がこの蓋体に対して連結され,他端側がこの蓋体に対応する前記排気孔が設けられた前記対向面部と反対側の前記対向面部に対して前記エアバッグ本体部の内部に連結されて,前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られて前記蓋体に張力を与えることで前記排気孔の開度を変えるとともに,前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記蓋体を前記排気孔の閉塞状態に維持する連結部材と
を具備したことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
連結部材は,
排気孔を跨いで蓋体に両端部が連結された連結部と,
この連結部に対して一端側がこの連結部に沿って可動的に連結され,他端側が対向面部に連結された連結部材本体とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。」

第4 引用文献,引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は,車両用エアバッグ装置に関する。」
イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで,車両用エアバッグ装置を有する車両では,該車両の前面衝突時には,車両用シートに着座している乗員の上半身は,該乗員とインストルメントパネルとの間に膨張展開するエアバッグにより拘束される。ここで,車両用シートにおけるシートベルト着用義務が課されていない国や地域において,該車両用シートに着座している乗員がシートベルト非着用であった場合,該乗員の体は慣性によって全体的に車両前方へ相対移動し,該乗員の上半身が全体的にエアバッグに進入することとなる。上記した従来例の構造では,このように乗員の上半身が全体的にエアバッグに当接した場合に,エアバッグの車両後方側下部に連結されたストラップが緩み,乗員拘束に伴う内圧の上昇によりベントホールが開くものと考えられる。
【0004】
しかしながら,車両用シートに着座している乗員がシートベルトを着用している場合には,上半身下部の車両前方への相対移動が抑制され,乗員の上半身の進入方向(進入経路)がシートベルト非着用の場合とは異なることとなるため,乗員拘束時におけるエアバッグの有効ストロークが変化し,該乗員を適切に拘束するために必要なエアバッグの反力も変わることとなる。また車両用シートに着座している乗員がシートベルトを着用している場合には,上記したように上半身下部の車両前方への相対移動が抑制されるので,上記従来例の構造では,ストラップが緩み難く,ベントホールを開かせることは難しいと考えられる。
【0005】
本発明は,上記事実を考慮して,乗員の拘束時におけるエアバッグの反力を,シートベルト装着の有無にかかわらず適正化することを目的とする。」
ウ.「【0033】
[第1実施形態]
図1において,本実施の形態に係る車両用エアバッグ装置10は,例えば車両用シートの一例たる助手席12に対応して設けられるエアバッグ装置であり,エアバッグ14と,開度変更手段の一例たる弁体16と,テザー18と,を有している。
【0034】
エアバッグ14は,助手席12の車両前方の例えばインストルメントパネル21内に設けられた収納部22に,通常時において折畳み状態で収納されると共に,車両24の前面衝突時に,例えばインフレータ26からのガスの供給を受けて助手席12に着座している乗員28側へ向けて膨張展開可能に構成されている。
【0035】
収納部22は,例えば所謂モジュールケースである。インフレータ26は,例えば該収納部22の底部に取り付けられている。エアバッグ14が膨張展開する際の出口となる収納部22の開口部は,通常使用時は,インストルメントパネル21や,該インストルメントパネル21の内側に配置されエアバッグ14の膨張圧により展開するドア基材(図示せず)等により塞がれている。インストルメントパネル21のうち,収納部22の開口部に対応する領域は,エアバッグ14の膨張圧により破断予定部(図示せず)が破断することで展開可能に構成されている。
【0036】
またエアバッグ14は,乗員28の拘束時に,インフレータ26から供給されたガスを外部へ排出可能とするベントホール32を有している。図1,図6に示されるように,このベントホール32は,例えば三角形(略正三角形)に形成され,展開状態のエアバッグ14において,例えば車幅方向の両側の側部14Aに1箇所ずつ設けられている。該側部14Aにおけるベントホール32の位置は,例えば車両後方寄りの下部に設定されている。三角形のベントホール32の一辺は,例えば車両下側に位置している。
【0037】
インフレータ26は,車両24の前面衝突時に膨張用のガスをエアバッグ14に供給するガス発生手段であり,ワイヤーハーネス(図示せず)を介してエアバッグECU(図示せず)に接続されている。このインフレータ26は,該エアバッグECUからの作動電流
により作動して,エアバッグ14に対して膨張用のガスを供給するように構成されている。エアバッグECUは,衝突センサ(図示せず)からの信号により車両24の前面衝突を判定した際に,インフレータ26に対して作動電流を流すように構成されている。
【0038】
図1において,弁体16及びテザー18は,エアバッグ14の膨張展開時における該エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向に応じてベントホール32の開口面積を変更する開度変更手段である。図1,図6(A)に示されるように,弁体16は,エアバッグ14の外面におけるベントホール32の位置に対応して設けられている。具体的には,弁体16は,例えばエアバッグ14の基布と同等の材質を用いて,例えばベントホール32よりも大きい三角形(略正三角形)に形成され,例えば車両下側の一辺16Bが,エアバッグ14の側部14Aの外面において,例えばベントホール32における車両下側の一辺に沿って,糸33を用いて縫い付けられている。弁体16は,ベントホール32に対して,車両下側の一辺16Bを中心として開閉可能に構成されている。弁体16において,車両下側の一辺16Bに対向する車両上側の角部16Aには,テザー18の一端18Aが,例えば糸19で縫い付けることにより連結されている。
【0039】
図1,図2において,テザー18は,非伸長性の帯状部材であって,一端18Aがエアバッグ14の外部において弁体16に連結され,該外部からエアバッグ14の内部へ通され,他端18Bがエアバッグ14の乗員側基布34に連結されている。具体的には,テザー18は,両側の弁体16に対して夫々1本ずつ設けられている。エアバッグ14の側部14Aにおけるベントホール32の車両上方側近傍には,テザー18を挿通可能な例えば矩形の貫通孔14Cが夫々設けられている。テザー18は,この貫通孔14Cを通じて,エアバッグ14の外部から内部へ通され,テザー18の他端18Bは,乗員側基布34の車幅方向の中央部(エアバッグ14の天井部)に連結されている。図1に示されるように,テザー18は,エアバッグ14の展開時に車両側面視において車両上下方向に張られた状態となり,弁体16を閉じ方向に付勢するように構成されている。
【0040】
(作用)
本実施形態は,上記のように構成されており,以下その作用について説明する。図1において,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置10では,車両24が前面衝突し,図示しない衝突センサからの信号に基づいてエアバッグECUが該衝突の発生を判定すると,該エアバッグECUからインフレータ26に作動電流が流される。インフレータ26は,該作動電流を受けて作動して,多量のガスを噴出させる。このガスがエアバッグ14へと供給されることで,該エアバッグ14が膨張展開し始める。
【0041】
このときエアバッグ14の膨張圧は,収納部22の開口部に位置するドア基材(図示せず)やインストルメントパネル21に作用する。この膨張圧が所定値以上になると,ドア基材は,ティアライン(図示せず)に沿って破断し開裂する。またこれに伴い,インストルメントパネル21の一部も開裂する。これにより,ドア基材とインストルメントパネル21の一部がエアバッグドア36となって,例えば車両上方側へ展開し,インストルメントパネル21に開口部38が形成される。エアバッグ14は,この開口部38を通じて,インストルメントパネル21内から乗員28側に膨出し,フロントウインドシールド40と,インストルメントパネル21と,乗員28との間の空間へ展開して行く。
【0042】
エアバッグ14の展開時(膨張展開完了時)には,テザー18が,車両側面視において車両上下方向に張られた状態となり,該エアバッグ14の両方の側部14Aに設けられた弁体16を夫々閉じ方向に付勢する。これにより,ベントホール32の開口面積が小さくなる。
【0043】
ここで,助手席12におけるシートベル着用義務が課されていない国や地域において,乗員28がシートベルト非着用であった場合(図3)と,乗員28がシートベルト42を着用していた場合(図4)とでは,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向(進入経路)が異なるが,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置10では,開度変更手段としての弁体16及びテザー18により,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向に応じて,該エアバッグ14におけるベントホール32の開口面積を変更することができる。
【0044】
具体的には,図3に示されるように,乗員28がシートベルト非着用の場合,該乗員28の体は慣性によって全体的に車両前方へ相対移動し,該乗員28の上半身28Aが全体的にエアバッグ14に進入する。このとき,テザー18は,車両側面視において車両上下方向に張られ,弁体16を閉じ方向,即ち図6(A)における矢印C方向に付勢した状態となっているので,乗員28の上半身28Aが全体的にエアバッグ14に進入しても,該テザー18は弛み難く,弁体16によりベントホール32の開口面積が小さく維持される。従って,インフレータ26からエアバッグ14内に供給されたガスがベントホール32から排出され難くなる。このため,乗員28に対するエアバッグ14の反力を十分に確保して,該乗員28を適切に拘束することができる。
【0045】
一方,図4において,助手席12に着座している乗員28がシートベルト42を着用していて,乗員28の上半身28A,特に頭部28Hが腰部28Wを中心として回転して,エアバッグ14に対して車両前下方に進入する場合には,該エアバッグ14が車両上下方向に撓むため,車両側面視において車両上下方向に張られ弁体16を閉じ方向に付勢していたテザー18が,図6(B)における矢印O方向に弛む。そして弁体16が開くことで,ベントホール32の開口面積が大きくなり,エアバッグ14内のガスが該ベントホール32からが排出され易くなる(図5も参照)。このため,乗員28に対するエアバッグ14の反力を低減して,該乗員28を適切に拘束することができる。
【0046】
このように,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置10によれば,シートベルト装着の有無による乗員28の上半身28Aのエアバッグ14に対する進入方向の違いに適切に対応して,乗員28の拘束時におけるエアバッグ14の反力を夫々適正化することができる。
【0047】
特に,図2に示されるように,本実施形態では,テザー18の他端18Bが,エアバッグ14における乗員側基布34の車幅方向の中央部に連結されているので,車両24の前面衝突時,図5に示されるように,乗員28の上半身28A(頭部28H)が助手席12における通常位置にあり,展開したエアバッグ14の車幅方向の中央部に対して車両前下方に進入する場合に,両側のテザー18が迅速に弛み,弁体16が同等に開いて,両側のベントホール32の開口面積が夫々大きくなる。このため,乗員28に対するエアバッグ14の反力をより速やかに低減して,該乗員28を適切に拘束することができる。
【0048】
また本実施形態では,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合に,進入初期におけるテザー18の弛みが大きくなるので,ベントホール32からのガスの排出を促し,乗員28の拘束初期におけるエアバッグ14の反力を弱めることができる。」
エ.「【0050】
[第2実施形態]
図8において,本実施の形態に係る車両用エアバッグ装置20では,テザー18の他端18Bが,エアバッグ14における乗員側基布34の車幅方向の複数箇所に連結されている。具体的には,車両右側のテザー18の他端18Bは,展開完了時のエアバッグ14における乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに連結され,車両左側のテザー18の他端18Bは,該乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向左寄りに連結されている。両側の他端18Bは,乗員側基布34の車幅方向の中央部を基準として,車幅方向に対称となる位置に配置されている。
【0051】
他の部分については,第1実施形態と同様であるので,同一の部分には図面に同一の符号を付し,説明を省略する。
【0052】
(作用)
本実施形態は,上記のように構成されており,以下その作用について説明する。図8(A)において,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置20では,車両右側のテザー18の他端18Bが,エアバッグ14の乗員側基布34における車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに連結され,車両左側のテザー18の他端18Bが,該乗員側基布34の車幅方向の中央部よりも車幅方向左寄りに連結されているので,車両24の例えばオフセット衝突時(図4参照),乗員28がシートベルト42を着用していて,その上半身28A(頭部28H)が,展開したエアバッグ14に対して車両前下方に進入する際,その進入位置が車幅方向にばらついても,テザー18が夫々同等のタイミングで弛み,弁体16が開いて,ベントホール32の開口面積が大きくなる。
【0053】
具体的には,図8(A)に示されるように,例えばオフセット衝突時に,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部よりも車幅方向左側にずれた場合には,車両左側のテザー18が弛み,該テザー18の一端18Aが連結されている車両左側の弁体16が開くことで,車両左側のベントホール32の開口面積が大きくなり,エアバッグ14内のガスが該ベントホール32からが排出され易くなる。
【0054】
またエアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部よりも車幅方向右側にずれた場合には,車両右側のテザー18が弛み,該テザー18の一端18Aが連結されている車両右側の弁体16が開くことで,車両右側のベントホール32の開口面積が大きくなり,エアバッグ14内のガスが該ベントホール32からが排出され易くなる。このため,エアバッグ14に対する乗員28の進入位置が車幅方向における車両左側や車両右側にばらついても,該乗員28に対するエアバッグ14の反力を速やかに低減して,該乗員28を適切に拘束することができる。
【0055】
更に本実施形態では,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合には,進入初期におけるテザー18の弛みが少なくなるので,ベントホール32からのガスの排出を抑制し,バッグ厚を確保して,乗員28の拘束初期におけるエアバッグ14の反力を高めることができる。」
オ.「【0056】
[第3実施形態]
図9において,本実施の形態に係る車両用エアバッグ装置30では,エアバッグ14の両側の側部14Aに,ベントホール32が夫々例えば2箇所ずつ形成され,各々のベントホール32に弁体16が設けられている。ベントホール32は,エアバッグ14の側部14Aにおいて,例えば車両上下方向に並んで形成されている。
【0057】
本実施形態では,テザー18が例えば4本設けられている。これらのテザー18は,2本で一組とされ,展開完了時のエアバッグ14における乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに,一組のテザー18の他端18Bが連結され,車幅方向左寄りに,もう一組のテザー18の他端18Bが連結されている。
【0058】
乗員側基布34の車幅方向右寄りに他端18Bが連結された一組のテザー18のうち,一方のテザー18の一端18Aは,車両右側かつ車両上側に位置する弁体16の車両上側の角部16Aに連結され,他方のテザー18の一端18Aは,車両左側かつ車両下側に位置する弁体16の車両上側の角部16Aに連結されている。同様に,乗員側基布34の車幅方向左寄りに他端18Bが連結された一組のテザー18のうち,一方のテザー18の一端18Aは,車両右側かつ車両下側に位置する弁体16の車両上側の角部16Aに連結され,他方のテザー18の一端18Aは,車両左側かつ車両上側に位置する弁体16の車両上側の角部16Aに連結されている。
【0059】
このように,本実施形態では,乗員側基布34における車幅方向の複数箇所が,テザー18によって,何れも車幅方向両側の弁体16に連結されている。
【0060】
他の部分については,第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので,同一の部分には図面に同一の符号を付し,説明を省略する。
【0061】
(作用)
本実施形態は,上記のように構成されており,以下その作用について説明する。図10(A),(B)において,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置30では,弁体16が,エアバッグ14の車幅方向両側の側部14Aに設けられ,乗員側基布34の車幅方向の複数箇所が,テザー18によって車幅方向両側の弁体16に夫々連結されているので,車両24の例えばオフセット衝突時,乗員28の上半身28A(頭部28H)が,展開したエアバッグ14に対して車両前下方に進入する際,その進入位置が車幅方向にばらついても,車幅方向両側の弁体16が開く。
【0062】
具体的には,図10(A)に示されるように,例えばオフセット衝突時に,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部よりも車幅方向左側にずれた場合には,乗員側基布34の車幅方向右寄りに他端18Bが連結された一組のテザー18が弛み,該一組のテザー18の一端18Aが夫々連結された両側の弁体16が夫々開く。これにより,車幅方向両側の一対のベントホール32の開口面積が大きくなり,エアバッグ14内のガスが該ベントホール32からが排出され易くなる。
【0063】
また図10(B)に示されるように,エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部よりも車幅方向右側にずれた場合には,乗員側基布34の車幅方向左寄りに他端18Bが連結された一組のテザー18が弛み,該一組のテザー18の一端18Aが夫々連結された両側の弁体16が夫々開く。これにより,車幅方向両側の一対のベントホール32の開口面積が大きくなり,エアバッグ14内のガスが該ベントホール32からが排出され易くなる。
【0064】
このように,本実施形態に係る車両用エアバッグ装置30では,展開したエアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が車幅方向にばらついても,ベントホール32の開口面積が,第2実施形態の場合よりも大きくなるので,乗員28に対するエアバッグ14の反力をより一層速やかに低減して,該乗員28を適切に拘束することができる。」

・図1及び図8からみて,「互いに対向する一対の側部14A,及び,これら側部14A間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員側基部34を備える袋状のエアバッグ14」が理解できる。

以上の記載事項からみて,引用文献1には,特に,第2実施形態に着目すると,以下の発明(以下「引用発明」)が記載されていると認められる。
「互いに対向する一対の側部14A,及び,これら側部14A間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員側基布34を備え,折畳み状態で収納されると共に,車両24の衝突時に,ガスの供給を受けて膨張展開可能に構成されている袋状のエアバッグ14と,
車幅方向の両側の前記側部14Aに設けられたガスを外部へ排出可能なベントホール32と,
前記ベントホール32の位置に対応してエアバッグ14の外面に設けられた弁体16と,
一端18Aがエアバッグ14の外部において前記弁体16に連結され,該外部からエアバッグ14の内部へ通され,車両右側のテザー18の他端18Bは,展開完了時のエアバッグ14における乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに連結され,車両左側のテザー18の他端18Bは,該乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向左寄りに連結されており,両側の他端18Bは,乗員側基布34の車幅方向の中央部を基準として,車幅方向に対称となる位置に配置されている,テザー18と,
を備え,
弁体16及びテザー18は,エアバッグ14の膨張展開時における該エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向に応じてベントホール32の開口面積を変更する開度変更手段であり,
乗員28がシートベルト非着用の場合,乗員28の上半身28Aが全体的にエアバッグ14に進入しても,該テザー18は弛み難く,弁体16によりベントホール32の開口面積が小さく維持され,
乗員28がシートベルト42を着用していて,その上半身28A(頭部28H)が,展開したエアバッグ14に対して車両前下方に進入する際,その進入位置が車幅方向にばらついても,テザー18が夫々同等のタイミングで弛み,弁体16が開いて,ベントホール32の開口面積が大きくなり,該乗員28に対するエアバッグ14の反力を速やかに低減して,該乗員28を適切に拘束することができ,
エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合には,進入初期におけるテザー18の弛みが少なくなるので,ベントホール32からのガスの排出を抑制し,バッグ厚を確保して,乗員28の拘束初期におけるエアバッグ14の反力を高めることができる,
車両用エアバッグ装置20。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「1は気密な布帛によって袋状に形成したエアバック,2はエアバック1に高圧ガスを圧入するためのパイプである。このように構成されたエアバックにおいて本考案は第2図に示す如くエアバック1の両側面にガス抜口3を設けると共に該ガス抜口3に布帛片4を当て,エアバック1と布帛片4とを前記エアバックに設けた紐6を介して所定の圧力以上の圧力が加わると切断するような糸5によって縫合せガス抜口3を一時封鎖する。この際糸5の代りに接着剤によって接着するようになしてもよい。前記紐6はエアバックの変形に充分たえる強じんな紐であって,紐6の一端は布帛片4に接続されるが,他端はエアバック1が張らんだ際に緊張した状態になるように互に対角線上のエアバック内の内壁に固定する。」(1ページ2欄11?26行)
イ.「次に作用について説明する。エアバック1は予め折りたたんだ状態で,例えば自動車のダッシュボードに搭載し,該エアバック1に連通せしめたパイプ2の先端には高圧ガスボンベ(図示せず)を接続させておく。いま,衝突によって高圧ガスボンベの栓が抜かれるとボンベ内の高圧ガスはパイプ2を通ってエアバック内に圧入されエアバック1は急速に膨張する。一方搭乗員は前方に放出され脹らんだエアバック1に突当りエアバック1を扁平せしめ,エアバック1自体を左右方向に押広げるが。しかるに布帛片4は紐6によって阻止せしめられる。しかるに布帛片4はエアバック1の変形により所定の圧力以上の圧力が前記布帛片4に接続させた紐6を介して加わると切断するような糸5によって縫合せているから糸5が切れ布帛片4はエアバック1より離れ,ガス抜口3からは高圧ガスが放出されエアバック1は若干しぼむようになる。」(1ページ2欄27行?2ページ3欄6行)
ウ.「本考案は上述した如く構成せしめたので,衝突に際して搭乗者が脹らんだエアバックに突当っても従来の如く座席の如く跳返されることがないものである。従って,後遺症にかかることもなくなり,搭乗者を保護する保護具として非常に有用なものである。」(2ページ3欄7?12行)
エ.「また,第6図?第7図は更に他の一例を示すもので,エアバック1に設けた裂目状のガス抜口3″の外側から布帛片4′をあてがう。このさい,紐6の一端は第8図に示すように通常のミシン糸8によりかがり縫いするとともに他の一端を反対側のエアバックの内壁に結付ける。このものにおいては衝撃によって紐6に所定の圧力以上の圧力が加わって第9図に示すように紐6がミシン糸8から抜けるのに伴ってミシン糸8がエアバック1から外れて布帛片4′がエアバックから離れるからガス抜口3からエアが漏れて所期の目的を達する。」(2ページ4欄3?14行)
エ.「<実用新案登録請求の範囲>
エアバックにガス抜口を形成し,該ガス抜口を縫着するか或は結束することによって一時封鎖するようになしたエアバックにおいて,紐の一端を前記縫着或は結束部に接続すると共に他の一端を対角線上のエアバック内壁に固定せしめるようになしたことを特徴とするエアバック。」(2ページ4欄15?21行)
オ.第6図からみて,一端が布帛片4に対して連結され,他端がこの布帛片4に対応するガス抜口3が設けられた内壁と反対側の内壁に対してエアバック1の内部に連結された紐6が理解できる。,

以上の記載事項からみて,引用文献2には,特に第6図?第9図の実施例に着目すると,以下の事項が記載されていると認められる。
「エアバック1に設けた裂目状のガス抜口3”の外側から布帛片4’をあてがい,紐6の一端は通常のミシン糸8によりかがり縫いされて,エアバック1のガス抜口3”に布帛片4’を縫い付けられたものにおいて,一端が布帛片4に対して連結され,他端がこの布帛片4’に対応するガス抜口3”が設けられた内壁と反対側の内壁に対してエアバック1の内部に連結されて,前記エアバック1が張らんだ際に緊張した状態になり,衝撃により紐6に所定圧力以上の圧力が加わって紐6がミシン糸8から抜けるのに伴って,布帛片4'がエアバック1から離れてガス抜口3からエアが洩れるようにする紐6を具備したエアバック。」

(3)引用文献4について
原査定の拒絶の理由に周知の事項として引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0007】
ところで,助手席用エアバッグ装置は,正規に着座した大人に対応した構造とされており,そのため,図6に示すように,助手席シートSに体格の小さい子供などの乗員Pがインパネ40に近づいた状態で着座しているような場合,助手席シートSの前のインパネ40に配置されたエアバッグ装置41のインフレータが作動してエアバッグ42が膨張展開すると,そのエアバッグ42の展開過程で子供などの乗員Pの頭部等に局部的に衝撃を加えたり,ベントホールから噴出した高温のガスが吹き付けられて火傷したりする恐れがあるという問題があった。また,図7に示したような構成のエアバッグ装置21を助手席用エアバッグ装置に適用しても,子供等の乗車状況によっては同じ問題がある。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と,引用発明とを対比すると,後者の「側部14A」は前者の「対向面部」に相当し,以下同様に,「乗員側基布34」は「乗員拘束面部」に,「エアバッグ14」は「エアバッグ本体部」に,「ベントホール32」は「排気孔」に,「外面」は「外部」に,「弁体16」は「蓋体」に,「一端18A」は「一端側」に,「他端18B」は「他端側」に,「テザー18」は「連結部材」に,「備え」たことは「具備」したことに,車両用エアバッグ装置20」は「エアバッグ」に,それぞれ相当する。
後者の「互いに対向する一対の側部14A,及び,これら側部14A間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員側基布34」は前者の「互いに対向する一対の対向面部,及び,これら対向面部間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員拘束面部」に相当する。
後者の「折畳み状態で収納されると共に,車両24の衝突時に,ガスの供給を受けて膨張展開可能に構成されている袋状のエアバッグ14」は前者の「折り畳まれた状態から導入されたガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ本体部」に相当する。
後者の「車幅方向の両側の前記側部14Aに設けられたガスを外部へ排出可能なベントホール32」は前者の「前記対向面部の少なくともいずれかに設けられた排気用の排気孔」に,後者の「前記ベントホール32の位置に対応してエアバッグ14の外面に設けられた弁体16」は前者の「この排気孔の前記エアバッグ本体部の外部に設けられた蓋体」にそれぞれ相当する。
後者の「一端18Aがエアバッグ14の外部において前記弁体16に連結され,該外部からエアバッグ14の内部へ通され,車両右側のテザー18の他端18Bは,展開完了時のエアバッグ14における乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに連結され,車両左側のテザー18の他端18Bは,該乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向左寄りに連結されており,両側の他端18Bは,乗員側基布34の車幅方向の中央部を基準として,車幅方向に対称となる位置に配置されている,テザー18と」と,前者の「一端側がこの蓋体に対して連結され,他端側がこの蓋体に対応する前記排気孔が設けられた前記対向面部と反対側の前記対向面部に対して前記エアバッグ本体部の内部に連結され」た「連結部材と」とは,「一端側がこの蓋体に対して連結され,他端側がこの蓋体に対応する前記対向面部以外の前記エアバッグ本体部の内部に連結され」た「連結部材」において共通する。
後者の「弁体16及びテザー18は,エアバッグ14の膨張展開時における該エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向に応じてベントホール32の開口面積を変更する開度変更手段であ」ることと,前者の「前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られて前記蓋体に張力を与えることで前記排気孔の開度を変える」「連結部材」とは,「前記エアバッグ本体部の前記排気孔の開度を変える」「連結部材」において共通する
後者の「乗員28がシートベルト42を着用していて」「エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合」は前者の「前記乗員拘束面部での所定の正規位置での乗員の拘束時」に相当するから,後者の「乗員28がシートベルト42を着用していて」「エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合には,進入初期におけるテザー18の弛みが少なくなるので,ベントホール32からのガスの排出を抑制し,バッグ厚を確保して,乗員28の拘束初期におけるエアバッグ14の反力を高めることができる」ことと,前者の「前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記蓋体を前記排気孔の閉塞状態に維持する連結部材」とは,「前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記排気孔からのガスの排出を抑制する連結部材」において共通する。
そうすると,両者は,
「互いに対向する一対の対向面部,及び,これら対向面部間に位置し乗員に対向してこの乗員を拘束可能な乗員拘束面部を備え,折り畳まれた状態から導入されたガスにより膨張展開する袋状のエアバッグ本体部と,
前記対向面部の少なくともいずれかに設けられた排気用の排気孔と,
この排気孔の前記エアバッグ本体部の外部に設けられた蓋体と,
一端側がこの蓋体に対して連結され,他端側がこの蓋体に対応する前記対向面部以外の前記エアバッグ本体部の内部に連結され,前記エアバッグ本体部の前記排気孔の開度を変えるとともに,前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記排気孔からのガスの排出を抑制する連結部材と,
を具備した,エアバッグ。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。
<相違点>
一端側がこの蓋体に対して連結され,他端側がこの蓋体に対応する前記対向面部以外の前記エアバッグ本体部の内部に連結され,前記エアバッグ本体部の前記排気孔の開度を変えるとともに,前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記排気孔からのガスの排出を抑制する連結部材に関して,連結部材が,本願発明では,一端側がこの蓋体に対して連結され,「他端側がこの蓋体に対応する前記排気孔が設けられた前記対向面部と反対側の前記対向面部に対して」前記エアバッグ本体部の内部に連結されて,「前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られて前記蓋体に張力を与えることで」前記排気孔の開度を変えるとともに,前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に「前記蓋体を前記排気孔の閉塞状態に維持する」ものであるのに対して,引用発明では,一端18Aが前記弁体16に連結されるものの,「車両右側のテザー18の他端18Bは,展開完了時のエアバッグ14における乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向右寄りに連結され,車両左側のテザー18の他端18Bは,該乗員側基布34のうち,車幅方向の中央部よりも車幅方向左寄りに連結されており,両側の他端18Bは,乗員側基布34の車幅方向の中央部を基準として,車幅方向に対称となる位置に配置されている」ものであり,弁体16及びテザー18は,「エアバッグ14の膨張展開時における該エアバッグ14に対する乗員28の上半身28Aの進入方向に応じてベントホール32の開口面積を変更する開度変更手段」であり,「乗員28がシートベルト42を着用していて」「エアバッグ14に対する乗員28の上半身28A(頭部28H)の進入位置が,乗員側基布34の車幅方向の中央部である場合には,進入初期におけるテザー18の弛みが少なくなるので,ベントホール32からのガスの排出を抑制し,バッグ厚を確保して,乗員28の拘束初期におけるエアバッグ14の反力を高めることができる」ものである点。

(2)相違点の判断
本願発明1と引用文献2の記載事項とを対比すると,後者の「エアバッグ1」は前者の「エアバッグ本体部」に相当し,以下同様に,「裂目状のガス抜口3”」は「排気孔」に,「外側」は「外部」に,「布帛片4’」は「蓋体」に,「内壁」は「対向面部」に,「紐6」は「連結部材」に,[エアバック」は「エアバッグ」に,それぞれ相当する。
後者の「前記エアバック1が張らんだ際に緊張した状態になる」ことは前者の「前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られ」ることに相当する。
そうすると,引用文献2には,以下の事項が開示されている。
「エアバッグ本体部に設けた排気孔の外部から蓋体をあてがい,連結部材の一端は通常のミシン糸8によりかがり縫いされて,エアバッグ本体部の排気孔に蓋体を縫い付けたものにおいて,一端が蓋体に対して連結され,他端がこの蓋体に対応する前記排気孔が設けられた対向面部と反対側の前記対向面部に対して前記エアバック本体部の内部に連結されて,前記エアバック本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られ,衝撃により連結部材に所定以上の圧力が加わって連結部材がミシン糸8から抜けるのに伴って,蓋体がエアバック本体部から離れて排気孔からエアが洩れるようにする連結部材を具備したエアバッグ。」
そして,引用文献4に記載されるように「助手席用エアバッグ装置は,正規に着座した大人に対応した構造とされることが前提であること」は周知の事項であるとしても,上記引用文献2に開示された事項では,「前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られ」るものであるものの,衝撃による連結部材への圧力が蓋体に作用をすることで前記排気孔の開度を変えるものであって,エアバッグの膨張展開に応じて排気孔の開度を変えるものでもなく,排気孔の開度の変え方が,閉状態から開状態に変えるものであり,本願発明1の開状態から閉状態に変えるものとは逆方向であるし,上記相違点における本願発明1のうち「前記エアバッグ本体部の膨張展開に応じて前記対向面部により引っ張られて前記蓋体に張力を与えることで前記排気孔の開度を変えるとともに,前記乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時に前記蓋体を前記排気孔の閉塞状態に維持する」構成にはならない。
また,引用発明では,テザーの他端18Bを乗員側基布34に設けることに意味があるので,たとえ引用文献2に開示された事項を考慮しても,連結部材の他端を反対側の対向面部に設けることには阻害理由があるといえる。
そして,上記構成により,本願発明1は,乗員拘束面部での所定の正規位置の乗員の拘束時には蓋体を排気孔の閉塞状態に維持してエアバッグ本体部の内圧を高く維持することができるという,格別の効果を奏する。
また,請求人が本願発明2について原査定で引用した引用文献3にも上記構成は記載されていない。
したがって,本願発明1は,引用発明,引用文献2に開示された事項,引用文献4に記載される周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定して発明を特定するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,原査定において引用された引用文献2に開示された事項,引用文献3に記載された事項及び引用文献4に記載された周知の事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-23 
出願番号 特願2014-131762(P2014-131762)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 藤井 昇
中村 泰二郎
発明の名称 エアバッグ  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  

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