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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C12M
管理番号 1353696
審判番号 不服2018-7956  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-08 
確定日 2019-08-06 
事件の表示 特願2015-552449「藻類培養システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月18日国際公開、WO2015/087858、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)12月 9日(国内優先権主張 平成25年12月 9日)を国際出願日とする出願であって、平成29年 8月31日付けで拒絶理由通知がなされ、平成30年 3月12日付けで拒絶査定され、同年 6月 8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定である平成30年 3月12日付け拒絶査定の理由の概要は、以下の1及び2のとおりである。

1 本願請求項1?6、9、11?18、21に係る発明の進歩性欠如
本願請求項1?6、9、11?18、21に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献3?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「査定理由1」という。)。

2 本願請求項7?21に係る発明の進歩性欠如
本願請求項7?21に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記の引用文献3?8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、「査定理由2」という。)。

引用文献3:特開2011-254724号公報
引用文献4:特開2006-35021号公報
引用文献5:特開2004-57967号公報
引用文献6:特開平5-111376号公報
引用文献7:特開2013-85534号公報
引用文献8:特開2012-175964号公報

第3 本願発明
本願の請求項1?21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明21」という。)は、平成30年 6月 8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の藻類培養装置と、
複数の前記藻類培養装置と電気的に接続された蓄電部と、
前記蓄電部と電気的に接続された太陽電池パネルと、を備え、
前記藻類培養装置は、
藻類及び該藻類を培養する培養液を収容する培養槽と、
前記培養槽に設けられ、該培養槽内の液面及びその近傍の前記培養液を、前記培養槽の中央から該培養槽の内壁部に向かって移動させることで、前記培養液の液面及びその近傍に、前記培養槽の中央から該培養槽の内壁部に向かい、前記内壁部で向きを変えて前記内壁部に沿って下方に流れ、前記培養槽の底面に達してさらに向きを変え、前記内壁部から前記培養槽の中央に向かって流れ、前記培養槽の中央で、前記液面に向けて上昇する前記培養液の流れを生じさせる流れ発生機と、
前記流れ発生機が前記培養液に浮かんだ状態で、前記培養槽の中央部に前記流れ発生機の位置を規制する流れ発生機位置規制部材と、
を備え、
前記流れ発生機は、
モータと、
一方の端部が前記モータに接続された回転軸と、
基端部が前記回転軸の他方の端部に接続されて前記回転軸を中心に放射状に配置された複数の支持部材と、
前記支持部材の先端部に取り付けられた複数の羽根部材と、
を有し、
前記培養槽に収容された前記培養液の液面に対して前記回転軸が直交するように配置された状態で、前記複数の羽根部材が前記回転軸よりも前記培養槽の前記内壁部寄りに配置され、前記支持部材から垂下することで前記培養液に接し、
前記太陽電池パネルで発電した電気を前記蓄電部に供給し、複数の前記流れ発生機を駆動することを特徴とする藻類培養システム。
【請求項2】
前記支持部材は前記培養液よりも比重が軽く、前記培養液に対し前記流れ発生機の浮力を確保するための浮力材であることを特徴とする請求項1に記載の藻類培養システム。
【請求項3】
前記複数の支持部材は、隣接する該支持部材同士が成す角度が全て等しくなるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の藻類培養システム。
【請求項4】
前記培養槽は、平面視すると前記内壁部が円筒形状であり、前記流れ発生機は前記培養槽の中央部に配置されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項5】
前記流れ発生機は、前記培養槽の中央から前記内壁部に向かう前記培養液の流れを、前記培養液に対して前記培養槽の中央から全方向に生じさせることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項6】
前記藻類培養装置は、前記培養槽に収容された前記培養液中に存在する前記藻類に光を照射する光照射部材を備えることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項7】
前記光照射部材は前記培養槽の底面に配置された光ファイバを含み、外部光源の光を、前記光ファイバを通じて前記培養槽の底面に導いて前記藻類に照射することを特徴とする請求項6に記載の藻類培養システム。
【請求項8】
前記光照射部材は前記培養槽の底面に配置され、前記藻類に自ら発する光を照射することを特徴とする請求項6に記載の藻類培養システム。
【請求項9】
前記培養槽は、地盤を地表よりも掘り下げて形成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項10】
前記培養槽に被せられ、該培養槽の内壁部及び底部を覆うシートを前記藻類培養装置がさらに備え、
前記培養液は前記シートを介して前記培養槽に収容されていることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項11】
前記培養槽に、該培養槽内に収容された前記培養液に二酸化炭素を供給するための二酸化炭素供給口が設けられていることを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項12】
前記二酸化炭素供給口は、前記培養槽の底面の中央に配置されていることを特徴とする請求項11に記載の藻類培養システム。
【請求項13】
前記培養槽に、前記培養液中で培養した前記藻類を前記培養液とともに回収するための藻類回収口が設けられていることを特徴とする請求項1から12の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項14】
前記藻類回収口は、前記培養槽の底面に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の藻類培養システム。
【請求項15】
下記(1)式で示される前記培養槽の外周縁での前記培養液の流速vが12m/min以上であることを特徴とする請求項1から14の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【数1】

但し、上記(1)式において、φは前記培養液の体積を前記藻類の培養に要した前記流れ発生機の出力で割ったパラメータ、Wattは前記藻類の培養に要した前記流れ発生機の出力、Dは前記培養槽に収容された前記培養液の深さであり、かつ0.4?1mの範囲内の数値、tは前記培養液が前記培養槽の外周縁を1周するのに要する時間をそれぞれ示す。
【請求項16】
前記流れ発生機は、1つの前記培養槽に対して1つ設けられることを特徴とする請求項1から15の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項17】
前記培養槽内に収容された前記培養液に、前記培養槽に設けられた二酸化炭素供給口を通じて二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給源を備えることを特徴とする請求項1から16の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項18】
太陽光を集光し、該集光した太陽光を藻類培養装置に設けられた光照射部材に供給する太陽光集光部を備えることを特徴とする請求項1から17の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項19】
一方の端部が前記培養槽に設けられた藻類回収口に接続され、前記培養液中で培養した前記藻類を前記培養液とともに回収する藻類回収ラインを備え、
前記藻類回収ラインの他方の端部は、前記一方の端部よりも低い位置に配置され、前記藻類回収ラインの双方の端部の高低差を利用して前記藻類を前記培養槽から回収することを特徴とする請求項1から18の何れか一項に記載の藻類培養システム。
【請求項20】
前記藻類回収ラインの少なくとも一部が、前記一方の端部から前記他方の端部に向けて傾斜していることを特徴とする請求項19に記載の藻類培養システム。
【請求項21】
前記太陽電池パネルが、前記培養槽の上方に設置されていることを特徴とする請求項1から20の何れか一項に記載の藻類培養システム。」

第4 引用文献の記載事項、引用発明の認定
引用文献3には、次の事項1?3が記載されている(以下、それぞれ「記載事項1」?「記載事項3」という。)。

1 「【請求項1】
光を吸収し二酸化炭素を取り込み光合成を行う光合成微細藻類を培養するための光合成微細藻類培養装置において、
前記光合成微細藻類と培養液の混合液を収容し当該光合成微細藻類を培養するための培養槽又は培養池と、
前記培養槽又は培養池の前記混合液中で、前記培養槽又は培養池の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態で、前記混合液を吸引し、前記底部に向かって排出し当該底部の前記光合成微細藻類を撹拌する撹拌装置と、
前記撹拌装置を前記混合液中で移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする光合成微細藻類培養装置。」

2 「【0002】
近年、地球温暖化の元凶である二酸化炭素を光合成反応により吸収して固定化する微細生物として光合成微細藻類が注目されている。光合成微細藻類は、培養液を収容する培養槽又は培養池を具備する装置で培養され、光合成反応が促進される。このような培養装置では、光合成微細藻類と培養液の混合液を撹拌することで、培養された光合成微細藻類の沈降や堆積に伴う腐敗を防止し生産性を高めることが求められる。そして、培養液の撹拌を効果的に行うことができる装置として、混合液を撹拌しながら航行する撹拌浮揚体を具備するものが知られている。この撹拌浮揚体は、液面に浮揚するボート型の浮揚体の下部に、撹拌用と推進用を兼ねるプロペラを有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-3098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置にあっては、培養槽又は培養池の底部を十分に撹拌できず、光合成微細藻類の沈降や堆積を防止できない場合があった。例えば、雨天の影響で培養槽又は培養池の液位が高くなると、プロペラと培養槽又は培養池の底部との距離が長くなり、培養槽又は培養池の底部までプロペラによる撹拌力が及ばない場合があった。一方、晴天により培養液が蒸発し、培養槽又は培養池の液位が低くなると、プロペラと培養槽又は培養液の底部とが接触してしまい、航行不能となる場合があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、安定且つ十分な撹拌により、光合成微細藻類の沈降や堆積を確実に防止できる光合成微細藻類培養装置の提供を目的とする。」

3 「【0006】
本発明による光合成微細藻類培養装置は、光を吸収し二酸化炭素を取り込み光合成を行う光合成微細藻類を培養するための光合成微細藻類培養装置において、光合成微細藻類と培養液の混合液を収容し当該光合成微細藻類を培養するための培養槽又は培養池と、培養槽又は培養池の混合液中で、培養槽又は培養池の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態で、混合液を吸引し、底部に向かって排出し当該底部の光合成微細藻類を撹拌する撹拌装置と、撹拌装置を混合液中で移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような光合成微細藻類培養装置によれば、撹拌装置が、培養槽又は培養池の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態に保たれるため、液位にかかわらず、底部を安定且つ十分に撹拌することができる。また、移動手段により撹拌装置が移動されるため、底部全体を満遍なく撹拌することができる。これにより、光合成微細藻類の沈降や堆積を確実に防止することができる。」

引用文献3には、記載事項1から、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明3」という。)。

「光を吸収し二酸化炭素を取り込み光合成を行う光合成微細藻類を培養するための光合成微細藻類培養装置において、
前記光合成微細藻類と培養液の混合液を収容し当該光合成微細藻類を培養するための培養槽と、
前記培養槽の前記混合液中で、前記培養槽の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態で、前記混合液を吸引し、前記底部に向かって排出し当該底部の前記光合成微細藻類を撹拌する撹拌装置と、
前記撹拌装置を前記混合液中で移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする光合成微細藻類培養装置。」

第5 当審の判断
1 査定理由1について
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明3とを対比する。
引用発明3における「光合成微細藻類培養装置」は、本願発明1における「藻類培養装置」及び「藻類培養システム」の両方に相当する。また、引用発明3における「光合成微細藻類と培養液の混合液を収容し当該光合成微細藻類を培養するための培養槽」は、本願発明1における「藻類及び該藻類を培養する培養液を収容する培養槽」に相当する。そして、引用発明3における「撹拌装置」は、培養槽の混合液中で光合成微細藻類と培養液の混合液を吸引し、底部に向かって排出する流れを発生させるものであるから、本願発明1における「前記培養槽に設けられ、培養液の流れを生じさせる流れ発生機」に相当する。
してみると、本願発明1と引用発明3とは、ともに
「藻類培養装置を備え、
前記藻類培養装置は、
藻類及び該藻類を培養する培養液を収容する培養槽と、
前記培養槽に設けられ、前記培養液の流れを生じさせる流れ発生機と、
を備える藻類培養システム。」
である点で一致するものの、以下の5点で相違する(以下、それぞれ「相違点1」?「相違点5」という。)。

<相違点1>
本願発明1における藻類培養システムの備える藻類培養装置が「複数」であることが特定されているのに対し、引用発明3においてそのように特定されていない点

<相違点2>
本願発明1における藻類培養システムが複数の前記藻類培養装置と「電気的に接続された蓄電部と、前記蓄電部と電気的に接続された太陽電池パネルと、を備え」るとともに、「前記太陽電池パネルで発電した電気を前記蓄電部に供給し、複数の流れ発生機を駆動する」と特定されているのに対し、引用発明3においてそのように特定されていない点

<相違点3>
本願発明1における流れ発生器が「該培養槽内の液面及びその近傍の前記培養液を、前記培養槽の中央から該培養槽の内壁部に向かって移動させることで、前記培養液の液面及びその近傍に、前記培養槽の中央から該培養槽の内壁部に向かい、前記内壁部で向きを変えて前記内壁部に沿って下方に流れ、前記培養槽の底面に達してさらに向きを変え、前記内壁部から前記培養槽の中央に向かって流れ、前記培養槽の中央で、前記液面に向けて上昇する前記培養液の流れを生じさせる」と特定されているのに対し、引用発明3においてそのように特定されていない点

<相違点4>
本願発明1における藻類培養システムが「流れ発生機が培養液に浮かんだ状態で、培養槽の中央部に前記流れ発生機の位置を規制する流れ発生機位置規制部材」を備えると特定されているのに対し、引用発明3ではそのように特定されておらず、特に引用発明3における流れ発生機である撹拌装置が「培養槽の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態」であり、また、「移動手段によって藻類と培養液との混合液中で移動させられる」ものである点

<相違点5>
本願発明1における流れ発生機が「モータと、一方の端部が前記モータに接続された回転軸と、基端部が前記回転軸の他方の端部に接続されて前記回転軸を中心に放射状に配置された複数の支持部材と、前記支持部材の先端部に取り付けられた複数の羽根部材と、を有し、前記培養槽に収容された前記培養液の液面に対して前記回転軸が直交するように配置された状態で、前記複数の羽根部材が前記回転軸よりも前記培養槽の前記内壁部寄りに配置され、前記支持部材から垂下することで前記培養液に接」すると特定されているのに対し、引用発明3においてそのように特定されていない点

ここでまず、相違点4について検討する。
引用発明3は、引用文献3の記載事項2に示される、液面に浮揚する撹拌浮揚体によって培養槽を撹拌する場合に、培養槽の液位が高くなると、撹拌浮揚体と培養槽の底部との距離が長くなり撹拌力が及ばないという従前の問題に対して、引用文献3の記載事項3のとおり、撹拌装置を培養槽の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態に保つことによって、液位にかかわらず底部を安定且つ十分に撹拌することができるとしたものである。
一方、引用文献4及び引用文献5には、それぞれの特許請求の範囲の請求項1及び図面の図1に記載されるように、回転体に付帯する羽根により水流を生じさせる、液面に浮遊する浄水機が記載されている。ここで、引用文献4及び引用文献5に記載の当該浄水機は、引用文献3の記載事項2における上記「液面に浮揚する撹拌浮揚体」と同じく、液位が高くなると浄水機と底部との距離が長くなり撹拌力が及ばないという上記従前の問題が懸念されるものであるから、引用発明3における「培養槽の底部から上方の一定位置に離間して位置した状態」である撹拌装置に代えて、引用文献4や引用文献5に記載の液面に浮遊する浄水機を採用し、本願発明1のように「培養液に浮かんだ」状態とすることは、引用発明3の趣旨に反していると言わざるを得ない。
また、引用発明3における流れ発生器である撹拌装置は、「移動手段によって藻類と培養液との混合液中で移動させられる」ものであり、引用文献3の記載事項3のとおり、移動手段により撹拌装置が移動されることで、底部全体を満遍なく撹拌することができるとされるものである。してみると、仮に、引用発明3における流れ発生器である撹拌装置に代えて、引用文献4や引用文献5に記載の液面に浮遊する浄水機を採用することができたと仮定した場合であっても、その浄水機を本願発明1のように「流れ発生機位置規制部材」によって「培養槽の中央部に」「位置を規制する」ようにすれば、「移動手段によって藻類と培養液との混合液中で移動させられる」ことが妨げられ、底部全体を満遍なく撹拌することができなくなることが懸念される。そのため、上記仮定した場合において、本願発明1に特定される「流れ発生機位置規制部材」を設けることも、引用発明3の趣旨に反していると言わざるを得ない。
したがって、当業者であっても、相違点4について容易に想到することはできないから、当該相違点4以外の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献3?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)本願発明2?6、9、11?18、21について
本願発明2?6、9、11?18、21は、いずれも本願発明1と同一の構成を備える藻類培養装置であるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献3?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本願発明1?6、9、11?18、21は、引用文献3?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、査定理由1を維持することはできない。

2 査定理由2について
本願発明7?21のそれぞれも、本願発明1と同一の構成を備える藻類培養装置であるから、前記1(1)において本願発明1について示した理由と同じ理由により、引用文献3?5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ところで、引用文献6には、「光照射型の培養槽であって、該培養槽の底部は光照射用の硝子窓にて密閉され、該硝子窓の下面に光源を配置して、該培養槽内の細胞又は菌体に前記光源からの光を照射できるように構成したことを特徴とする光合成培養装置。」(【請求項1】)についての発明が、引用文献7には、「柔軟な不透水性の高分子フィルムで設定される、フィルム層と空間層からなる、少なくとも3層以上の多層構造を有するチューブ状容器内の、一部の空間層に培養液を通じて実施する微細藻類の培養方法」(【請求項1】)についての発明が、引用文献8には、「垂直方向に延在する1あるいは複数の藻類担体と、該藻類担体の上部から培養液を供給する培養液供給手段とを具備することを特徴とする藻類培養装置。」(【請求項1】)についての発明が、それぞれ記載されている。しかしながら、これら引用文献6?8のそれぞれには、流れ発生機を本願発明1のように「培養液に浮かんだ」状態とすること、また、流れ発生機を本願発明1のように「流れ発生機位置規制部材」によって「培養槽の中央部に」「位置を規制する」ようにすることについて記載も示唆もしておらず、これら引用文献6?8に記載された事項を踏まえても、本願発明7?21は、当業者が容易に発明をすることができたものでないとした上述の判断を覆す理由を見いだすことはできない。
そのため、本願発明7?21は、前記1(1)において本願発明1について示した理由と同じ理由により、引用文献3?8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
よって、査定理由2を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願を、原査定の拒絶理由によって拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-19 
出願番号 特願2015-552449(P2015-552449)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C12M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 雅樹  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 澤田 浩平
小暮 道明
発明の名称 藻類培養システム  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  

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