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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1353756
審判番号 不服2018-4003  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-22 
確定日 2019-07-25 
事件の表示 特願2014-522595「画像処理装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 3日国際公開、WO2014/002897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月21日(優先権主張日 平成24年6月29日、平成24年7月6日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 6月10日 :手続補正
平成29年 6月1日付け :拒絶理由通知
平成29年 7月25日 :意見書提出および手続補正
平成30年 1月5日付け :拒絶査定
平成30年 3月22日 :拒絶査定不服審判請求および手続補正

第2 平成30年3月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成30年3月22日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成29年7月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし9に補正するものであり、本件補正は、請求項9に係る次の補正事項を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前の請求項9)
【請求項9】
量子化行列を構成する複数の係数を含む符号化データを取得し、
取得された前記符号化データを復号し、
前記複数の係数により構成される量子化行列と異なる、全ての係数が同一の値の係数で構成される量子化行列を用いて、生成された直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数、を逆量子化する
画像処理方法。

(補正後の請求項9)
【請求項9】
量子化行列を構成する複数の係数を含む符号化データを取得し、
取得された前記符号化データを復号し、
取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて、生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する
画像処理方法。

2 補正の適合性
(1)補正の目的について
請求項9に係る補正は、
(ア)補正前の「前記複数の係数により構成される量子化行列と異なる、全ての係数が同一の値の係数で構成される量子化行列」という記載を、補正後の「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列」という記載とする補正、
(イ)補正前の「生成された直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数、を逆量子化する」という記載を、補正後の「生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する」という記載とする補正、
である。
当該(ア)の補正は、補正前の「前記複数の係数により構成される量子化行列」に対して、「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列」と限定することで下位概念化するものである。
また、当該(イ)の補正は、補正前の「生成された直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロック」を「生成された前記直交変換スキップブロック」として明確化したものである。
これらの補正は、総合的には特許請求の範囲の減縮を目的とする補正といえる。

そして、本件補正前の請求項9に記載された発明と本件補正後の請求項9に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わるものではなく、同一であるといえるから、請求項9に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の規定に適合するものである。

(2)補正の範囲及び単一性について
本願の国際出願日における願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下、明細書等という)には、以下の記載がある。(下線は、強調のため当審で付したものである。)

「【0036】
<1.第1の実施の形態>
[画像符号化装置]
図1は、画像符号化装置の主な構成例を示すブロック図である。
【0037】
図1に示される画像符号化装置100は、例えば、HEVC(High Efficiency Video Coding)の予測処理、またはそれに準ずる方式の予測処理を用いて画像データを符号化する。」

「【0098】
[符号化効率]
このような直交変換のスキップ制御に関わらず、エントロピ符号化、量子化、ループフィルタ等の処理は、一様に行われる。つまり、直交変換スキップブロックに対しても、非直交変換スキップブロックに対する場合と同様に、エントロピ符号化、量子化、ループフィルタ等の処理が行われる。
【0099】
しかしながら、量子化行列は、周波数領域に関する重み係数である。つまり、量子化行列は、直交変換係数のブロックに適用するように設計されている。したがって、このような量子化行列を空間領域の値(差分画像データ)のブロックに適用すると、符号化効率を低減させる恐れがある。つまり、画質を低減させる恐れがある。
【0100】
また、上述したように、直交変換スキップは、高域成分が出やすい画像に適用される。したがって、直交変換スキップブロックは、非直交変換スキップブロックに対して画像の内容が大きく異なる可能性が高い。つまり、直交変換スキップブロックと非直交変換スキップブロックとの境界には、ブロック歪みが生じ易い。
【0101】
そのため、そのような直交変換スキップブロックと非直交変換スキップブロックとの境界に対して、それ以外の境界と同様にデブロックフィルタ処理を行うと、符号化効率を低減させる恐れがある。つまり、画質を低減させる恐れがある。
【0102】
[直交変換スキップに応じた制御]
そこで、処理対象であるカレントブロックが、直交変換スキップ(TransformSkip)ブロックであるか否かに応じて、符号化処理を制御するようにする。より具体的には、符号化処理の量子化処理(逆量子化処理)、およびデブロック処理を制御する。
【0103】
[量子化処理の制御]
例えば、量子化処理の場合、直交変換が行われた非直交変換スキップブロックに対しては、量子化行列を用いて量子化処理を行い、直交変換がスキップされた直交変換スキップブロックに対しては、量子化行列の代わりに、1の重み係数を用いて量子化処理を行うようにする。つまり、この1の重み係数を用いて、カレントブロックである直交変換スキップブロックの全ての係数に対して量子化を行う。
【0104】
図8にその様子を示す。例えば、非直交変換スキップブロック(直交変換係数の行列)に対しては、図8の上に示されるように、従来と同様に量子化行列を用いて量子化が行われる。
【0105】
これに対して、4×4の直交変換スキップブロック(直交変換前差分値の行列)に対しては、1の重み係数が行列化された重み係数行列を用いて量子化が行われる。もちろん、実際の演算方法は任意であるが、基本的にこの重み係数行列を用いた演算と同等の演算が行われる。」

「【0152】
[符号化処理の流れ]
次に、以上のような画像符号化装置100により実行される各処理の流れについて説明する。最初に、図14のフローチャートを参照して、符号化処理の流れの例を説明する。」
「【0190】
[量子化処理の流れ]
次に、図14のステップS110において実行される量子化処理の流れの例を、図17のフローチャートを参照して説明する。
【0191】
量子化処理が開始されると、ステップS161において、重み係数生成部142は、スキップ決定部132により選択された最適モードが、直交変換スキップ(TransformSkipモード)であるか否かを判定する。直交変換スキップ(TransformSkipモード)であると判定された場合、処理は、ステップS162に進む。
【0192】
ステップS162において、重み係数生成部142は、重み係数を生成する。ステップS162の処理が終了すると、処理は、ステップS164に進む。
【0193】
また、ステップS161において、直交変換スキップ(TransformSkipモード)でないと判定された場合、処理は、ステップS163に進む。
【0194】
ステップS163において、重み係数生成部142は、量子化行列を取得する。ステップS163の処理が終了すると、処理は、ステップS164に進む。
【0195】
ステップS164において、量子化処理部143は、ステップS162において生成された重み係数、若しくは、ステップS163において取得された量子化行列を用いて、カレントブロックの直交変換係数若しくは直交変換係数前差分値の量子化を行う。ステップS165において、量子化処理部143は、量子化行列並びに適用された重み係数を、可逆符号化部106に供給し、伝送させる。」

「図8



「【0237】
図20に示されるように、逆量子化部203は、量子化行列バッファ241、重み係数生成部242、量子化パラメータバッファ243、および逆量子化部244を含むように構成される。
【0238】
量子化行列バッファ241は、可逆復号部202により、符号化データのSPS等から抽出された量子化行列を取得し、保持する。この量子化行列は、符号化側から伝送されたものであり、符号化の際に用いられたものである。量子化行列バッファ241は、所定のタイミングにおいて、若しくは、要求に応じて、保持している量子化行列を重み係数生成部242に供給する。なお、符号化側から、符号化の際に適用された重み係数が伝送された場合、量子化行列バッファ241は、量子化行列と同様に、その重み係数を取得し、重み係数生成部242に供給する。」

「【0240】
例えば、符号化の際にカレントブロックに対して直交変換スキップが適用されなかった場合、重み係数生成部242は、制御信号により指定されるモードの、量子化行列バッファ241から供給された量子化行列を逆量子化部244に供給する。
【0241】
また、例えば、符号化の際にカレントブロックに対して直交変換スキップが適用された場合、重み係数生成部242は、重み係数を生成し、生成した重み係数を逆量子化部244に供給する。」

「【0246】
逆量子化部244は、可逆復号部202により符号化データから抽出された、量子化された係数を取得する。逆量子化部244は、また、量子化パラメータバッファ243から量子化パラメータを取得し、重み係数生成部242から量子化行列若しくは重み係数を取得する。逆量子化部244は、それらを用いて、量子化された係数を逆量子化する。この逆量子化の方法は、画像符号化装置100の量子化処理部143による量子化の方法に対応する。」

「【0260】
[復号処理の流れ]
次に、以上のような画像復号装置200により実行される各処理の流れについて説明する。最初に、図21のフローチャートを参照して、復号処理の流れの例を説明する。
【0261】
復号処理が開始されると、ステップS201において、蓄積バッファ201は、伝送されてきたビットストリームを蓄積する。ステップS202において、可逆復号部202は、蓄積バッファ201から供給されるビットストリーム(符号化された差分画像情報)を復号する。すなわち、図1の可逆符号化部106により符号化されたIピクチャ、Pピクチャ、並びにBピクチャが復号される。
【0262】
このとき、ヘッダ情報などのビットストリームに含められた差分画像情報以外の各種情報も復号される。ステップS203において、逆直交変換スキップ部221のTransformSkipFlagバッファ231は、可逆復号部202において抽出されたスキップ識別情報(TransformSkipFlag)を取得する。逆直交変換スキップ部221の制御信号発生部232は、そのスキップ識別情報(TransformSkipFlag)に基づいて、制御信号を生成し、その制御信号を、重み係数生成部242、逆直交変換部204、および境界判定部251に供給する。
【0263】
ステップS204において、逆量子化部203は、ステップS202の処理により得られた、量子化された係数を逆量子化する。ステップS205において逆直交変換部204は、ステップS204において逆量子化された係数を必要に応じて逆直交変換する。」

「【0271】
[逆量子化処理の流れ]
次に、図21のステップS204において実行される逆量子化処理の流れの例を、図22のフローチャートを参照して説明する。
【0272】
逆量子化処理が開始されると、重み係数生成部242は、ステップS231において、カレントブロックが直交変換スキップ(TransformSkip)モードであるか否かを判定する。
【0273】
カレントブロックが直交変換スキップ(TransformSkip)モードであると判定された場合、処理は、ステップS232に進む。ステップS232において、重み係数生成部242は、重み係数を生成する。ステップS232の処理が終了すると、処理は、ステップS234に進む。
【0274】
また、ステップS231において、カレントブロックが直交変換スキップ(TransformSkip)モードでないと判定された場合、処理は、ステップS233に進む。ステップS233において、重み係数生成部242は、TransformSkipFlagバッファ231を介して量子化行列を取得する。ステップS233の処理が終了すると、処理は、ステップS234に進む。
【0275】
ステップS234において、逆量子化部244は、ステップS232において生成された重み係数、若しくは、ステップS233において生成された量子化行列を用いて逆量子化を行う。」

上記の明細書等の記載によれば、上記(ア)の補正事項のうち、「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し」た量子化行列は、特に【0191】、【0193】?【0195】、【0237】?【0238】、【0240】?【0241】、【0246】、【0261】?【0263】、【0271】?【0275】の記載に基づくものである。
また、上記(ア)の補正事項のうち、「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする」量子化行列は、特に【0098】、【0103】?【0105】、図8の記載に基づくものであるから、請求項9に係る補正は、国際出願日の明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。

また、請求項9に係る補正は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正前の請求項9に記載された発明と、本件補正後の請求項9に記載された発明は、発明の単一性の要件を満たすものといえ、請求項9に係る補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。

(3)独立特許要件について
以上のように、請求項9に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項9に記載された発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(3-1)本願補正発明
本件補正後の請求項9に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
なお、本願補正発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Dと称する。

(本願補正発明)
(A)量子化行列を構成する複数の係数を含む符号化データを取得し、
(B)取得された前記符号化データを復号し、
(C)取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて、生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する
(D)画像処理方法。

(3-2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である、『Marta Mraket al.,Complexity reduction for intra transform skipping proposal JCTVC-I0408,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva,CH,Document:JCTVC-I564,ITU-T,2012年4月28日,version 1』には、次に掲げる事項が記載されている(括弧内に当審で作成した仮訳を添付する。また、下線は、強調のために当審で付したものである。)。

(ア)「Abstract
This contribution presents a method to reduce the complexity when the 2D transform is skipped in intra coded blocks. The transform skipping in intra coded blocks is proposed in document JCTVC-I0408 and involves a scaling operation for all the pixels belonging to the block whereby the transform is being skipped. The scaling in JCTVC-I0408 aims at bringing the pixels to same level as if transform would be performed. 」
(要約
この寄書は、二次元変換がイントラ符号化ブロックでスキップされるときの複雑さを軽減するための方法を提示する。イントラ符号化ブロックにおける変換スキップは、文献JCTVC-I0408に提案されており、変換がスキップされるブロックに属する全ての画素に対するスケーリング操作を含む。JCTVC-I0408におけるスケーリングは画素に変換が実行された場合と同じレベルをもたらすことを目的とする。)

(イ)「1 Description of the simplification
In JCTVC-I0408, 2D transform skipping is proposed in the coding order as shown in Table 1. The same table indicates proposed changes (highlighted) and related complexities.」
(1.簡略化の記述
JCTVC-I0408において、二次元変換スキップは表1に示されるような符号化順序が提案されている。同じ表は提案された変更(ハイライトされている)と関連する複雑さを示す。)

(ウ)「Table 1 Comparison of intra transform skipping methods




(表1 イントラ変換スキップ方法の比較

)

(エ)「4 Encoder description
The following modifications are based on JCTVC-G1102_d1, to describe how an encoder can be if intra transform skipping is used.」
(4 符号化器の記述
以下の変更はJCTVC-G1102_d1に基づくものであり、イントラ変換スキップが用いられる場合に符号化器がどうなるかを記述している。)

イ 引用文献1において参照されている文献
引用文献1のタイトルに含まれ、引用文献1の上記箇所においても参照されている文献JCTVC-I0408、すなわち、『Cuiling Lan et al.,Intra transform skipping,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 9th Meeting: Geneva,CH,Document: JCTVC-I0408,ITU-T,2012年4月』(以下、参考文献1という)には、Page.1?2において、次に掲げる事項が記載されている(括弧内に当審で作成した仮訳を添付する。また、下線は、強調のために当審で付したものである。)。

「2 Intra transform skipping design
For a 4x4 intra TU(both luma and chroma),we enable it to skip transform.The detail modifications for each module by TS mode are list below.
(a) Prediction: No change.
(b) Transform: Skipped. Instead, for transform skipping TUs, a simple scaling process is used.(以後省略)
(c) De-quantization and scaling. No change.
(d) Entropy coding: A flag for each 4x4 intra TU is sent to indicate if transform is bypassed or not.Two contexts are added to code the flag for Y, U and V TUs.
(e) Deblocking, SAO and ALF: No change.
(f) A flag in the SPS to indicate whether transform skipping is enabled or not.
(g) We do not change quantization process for TUs with transform skipping. That is also the case when quantization matrices are used. Because it may not be reasonable to have different quantization parameters according to spatial locations for those TUs with transform skipping, we also suggest changing the default quantization matrix to a flat matrix for 4x4 intra TUs, when transform skipping is enabled. The other reason is that a small transform tends to use a flat quantization matrix.」
(2.イントラ変換スキップの設計
4x4イントラTU(輝度・色度の両者)について、変換スキップを行うことを許可する。TSモードによる各モジュールの変更の詳細は以下に示される。
(a)予測:変更無し
(b)変換:スキップされる。そうでなければ、TUの変換スキップに代わって単純なスケーリング処理が用いられる。
(c)逆量子化とスケーリング:変更無し
(d)エントロピー符号化:各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグが送られる。2つのコンテクストがY、U、V TUのフラグを符号化するために加えられる。
(e)デブロッキング、SAOとALF:変更無し
(f)SPS中に変換スキップ許可かどうかを示すフラグがある。
(g)変換スキップされるTUについての量子化プロセスは変更しない。これは量子化マトリクスが用いられる場合においても同様である。変換スキップされるTUの空間的位置によって異なる量子化パラメータを保持することは望ましいことではないため、変換スキップが許可されるときは、4x4イントラTUに対してデフォルトの量子化マトリクスを平坦なマトリクスに変更することを併せて提案する。その他の理由は、小さな変換は平坦な量子化マトリクスを用いる傾向にあることによる。)

「3 Objective quality comparison
(省略)The encoding time increase is because we double the full RDO procedures for each 4x4 TU to check if the TU should skip transform or not. For the decoder, the proposed scheme makes little impact on the running time, as expected.」
(3.客観的品質比較
各4x4TUについてTUが変換スキップであるかどうかをチェックする、完全RDO(レート歪み最適化)の手続きが2倍かかるため、符号化時間は増加する。復号器については、提案手法は処理時間には期待通り小さな影響しか与えない。)

ウ 引用文献4
原査定に周知技術として引用された引用文献4である、『大久保 榮 監修,改訂三版H.264/AVC教科書,株式会社インプレスR&D,2009年1月1日,第1版,第1刷,P.271-273』には、次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

(ア)「[2]SPSとPPSによる新しい量子化マトリクスの符号化
H.264/AVC高忠実度化規格では、シーケンス・パラメータ・セット(SPS:Sequence Parameter Set)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、シーケンス単位で量子化マトリクスを変更可能とし、さらにピクチャ・パラメータ・セット(PPS:Picture Parameter Set)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、ピクチャ単位で新しい量子化マトリクスを変更可能としています。(中略)なお、シーケンス・パラメータ・セットで量子化マトリクスを使用しないことが示されている場合には、図11-11に示すすべての値が16の量子化マトリクスを、4×4ブロックおよび8×8ブロックで使用します。
量子化マトリクスの値は、通常は、低周波数成分で小さく高周波数成分で大きいことから、低周波数成分から高周波数成分の順序でジグザグ・スキャンの順序で差分符号化(DPCM:Differentinal Pulse Code Modulation)します。」(P.271-P.273)
(イ) P.271の図11-10の「量子化マトリクスの初期値」には、「(1)4×4ブロックの場合」の「(a)画面内(イントラ)符号化の場合」として、係数が
6 13 20 28
13 20 28 32
20 28 32 37
28 20 37 42
という4x4のマトリクスが記載されていることが読み取れる。

(3-3)引用文献に記載された発明及び技術

ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された発明を以下に認定する。

(ア) 符号化処理の順序について
上記(3-2)ア(ア)によれば、引用文献1には、「イントラ符号化ブロックにおける変換スキップは、文献JCTVC-I0408に提案されて」いること、「JCTVC-I0408において、二次元変換スキップは表1に示されるような符号化順序が提案されている」こと、が記載されている。
また、上記(3-2)ア(イ)(ウ)の「表1 イントラ変換スキップ方法の比較」によれば、引用文献1には、イントラ変換スキップ方法に係るステップとして、JCTVC-I0408では、
「(a)予測:変更無し
(b)変換:スキップされる。そうでなければ、TUの変換スキップに代わって単純なスケーリング処理が用いられる。・・・・
(c)逆量子化:変更無し
(d)エントロピー符号化:各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグが送られる。
(e)デブロッキング、SAO、ALF:変更無し」
ことについて示されていることが読み取れる。
そうすると、上記(a)?(e)から、引用文献1には、『予測を変更なく行い、変換をスキップし、逆量子化を変更なく行い、エントロピー符号化において、各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグが送られ、デブロッキング、SAO、ALFを変更なく行うイントラ変換スキップ方法』が記載されているといえる。
また、引用文献1はJoint Collaborative Team on Video Coding(JCT-VC)により発行された文献であり、動画像符号化に関する技術であることは明らかであり、さらに上記(3-2)ア(エ)に「4.符号化器の記述」という記載があることから、引用文献1は符号化器を用いた動画像符号化方法をも開示する文献であるといえる。
以上のことから、引用文献1には、「予測を変更無く行い、変換をスキップし、量子化を変更無く行い、エントロピー符号化において、各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグを送り、デブロッキング、SAO、ALFを変更無く行う、動画像符号化方法におけるイントラ変換スキップ方法」が記載されているものと認められる。

(イ) 変換がスキップされる場合の量子化マトリクスについて
また、上記(3-2)イによれば、引用文献1において参照される参考文献1の「2.Intra transform skipping design」の(g)において、「変換スキップされるTUについての量子化プロセスは変更しない。これは量子化マトリクスが用いられる場合においても同様である。・・・変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対してデフォルトの量子化マトリクスを平坦なマトリクスに変更する」と記載されていることから、引用文献1には、「変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対してデフォルトの量子化マトリクスを平坦なマトリクスに変更し、変換スキップされるTUについての量子化プロセスは平坦なマトリクスが用いられる場合においても変更しない」ことが記載されているといえる。

(ウ) 復号処理について
また、引用文献1はJoint Collaborative Team on Video Coding(JCT-VC)により発行された文献であり、動画像復号処理に関する技術であることは明らかであり、さらに上記参考文献1の「3 Objective quality comparison 」には、「復号器については、提案手法は処理時間には期待通り小さな影響しか与えない。」という記載もあることから、引用文献1は復号器を用いた動画像復号方法についても開示する文献であるといえる。
ここで、復号処理は、符号化処理の各処理段階について、符号化の演算とは逆の演算を、符号化処理と逆の順序で行うこと、および、同じTUに対して復号処理で行う逆量子化と符号化処理で行う量子化において、同じ量子化マトリクスを用いることは技術常識である。

(エ)まとめ
以上(ア)(イ)(ウ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。引用発明の各構成は、符号(a)?(n)を用いて、以下、構成a?構成nと称する。

(引用発明)
(a)予測を変更無く行い、
(b)変換をスキップし、
(c)量子化を変更無く行い、
(d)エントロピー符号化において、各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグを送り、
(e)デブロッキング、SAO、ALFを変更無く行い、
(g)変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対してデフォルトの量子化マトリクスを平坦なマトリクスに変更し、変換スキップされるTUについての量子化プロセスは平坦なマトリクスが用いられる場合においても変更しない、
(h)符号化器を用いた動画像符号化方法におけるイントラ変換スキップ方法により符号化されたデータを復号する動画像復号方法であって、
(i)エントロピー復号において、各4x4イントラTUについて、変換がバイパスされたかどうかを示すフラグを受け取り、
(j)逆量子化を変更無く行い、
(k)逆変換をスキップし、
(l)予測に基づく復号を変更無く行い、
(m)デブロッキング、SAO、ALFを変更無く行い、
(n)変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対して上記デフォルトの量子化マトリクスを上記平坦なマトリクスに変更し、逆変換スキップされたTUについての逆量子化プロセスは上記平坦なマトリクスが用いられる場合においても変更しない、
(h)動画像復号方法。

イ 引用文献4に記載された技術
上記(3-2)ウ(ア)(イ)によれば、引用文献4には、以下の技術が記載されていると認められる。
(文献4技術)
「H.264/AVC高忠実度化規格では、シーケンス・パラメータ・セット(SPS)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、シーケンス単位で量子化マトリクスを変更可能とし、シーケンス・パラメータ・セットで量子化マトリクスを使用しないことが示されている場合には、全ての値が16の量子化マトリクスを使用するものであり、量子化マトリクスの値は、通常は低周波数成分で小さく高周波数成分で大きいものであり、差分符号化するものであって、4x4ブロックのイントラ符号化に用いる量子化マトリクスの初期値がある」こと。

(3-4)対比
次に、本願補正発明と、引用発明を対比する。

ア 構成A、Bについて
引用発明の構成iの「エントロピー復号」において、符号化データを取得してから復号処理を行うことは明らかであり、構成A、Bとは、「符号化データを取得し、取得された前記符号化データを復号」する点で共通する。
しかしながら、本願補正発明は取得された「符号化データ」は「量子化行列を構成する複数の係数を含む」のに対して、引用発明は取得された「符号化データ」に「量子化行列を構成する複数の係数を含む」ことについて特定されていない点で相違する。

イ 構成Cについて

引用発明の構成g、構成nの「平坦なマトリクス」は、構成Cの「全ての係数が同一の値の量子化行列」に相当する。
次に、引用発明の構成nの「逆量子化プロセス」は、「変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対して」「平坦なマトリクス」を用いるものであり、「逆量子化プロセスは平坦なマトリクスが用いられる場合においても変更しない」ことから、変換スキップされるTUに対して、「平坦なマトリクス」、すなわち「全ての係数が同一の値のマトリクス」、を用いて、全ての係数を逆量子化することは明らかである。
また、引用発明における「TU」は、JCT-VCにより進められていた符号化方式の標準であるHEVCにおける変換ユニットの略語であって、直交変換処理が行われる単位であることは当業者における技術常識であるから、引用発明の構成d、構成g及び構成mの「TU」は、本願補正発明の「ブロック」に相当する。

そうすると、引用発明の構成nの「逆量子化プロセス」は、「変換スキップが許可されているときは、4x4イントラTUに対して」「平坦なマトリクスに変更し」て行う「逆量子化プロセス」であって、平坦なマトリクスが用いられる場合においても全ての係数を逆量子化する逆量子化プロセスであるといえる。
よって、引用発明の構成nの「逆量子化プロセス」は、構成Cのうち、「全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて」、「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロック」である「前記直交変換スキップブロック」「の全ての量子化された係数を逆量子化する」ことに相当する。

さらに、引用発明の構成g、構成nの4x4イントラTUに対する「デフォルトの量子化マトリクス」は、変換スキップが許可されているときに、「平坦なマトリクス」に変換されることから、「変換スキップされるTUについての量子化プロセス」に用いられる「平坦なマトリクス」とは異なることは明らかである。よって、構成g、構成nの「デフォルトの量子化マトリクス」は、構成Cの「全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列」における前記量子化行列とは異なる量子化行列に相当する。
また、引用発明においては、4x4の大きさのTUに対して、変換スキップされる場合にイントラ予測、量子化、エントロピー符号化やデブロッキング、SAO、ALF等の処理が変更なく行われる、すなわち4x4の大きさのTUに対して、変換スキップを行う場合も行わない場合も、同じようにイントラ予測、量子化、エントロピー符号化やデブロッキング、SAO、ALF等の処理が変更なく行われるといえる。
そうすると、引用発明の構成g、構成nの「デフォルトの量子化マトリクス」は、4x4の大きさのTUに対して、変換スキップされない場合には、構成Cの「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列」と一致する。

以上のことから、引用発明は、「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列」を用いて、生成された直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化するものであり、構成Cと「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて、生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する」点で共通する。

一方、構成Cの「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列」が「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応」するのに対して、引用発明では、「デフォルトの量子化マトリクス」が「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応」することについて特定されていない点で相違する。

エ 構成Dについて
構成hの「動画像復号方法」は画像処理方法の1つであり、本願補正発明の構成Dの「画像処理方法」に相当する。

オ まとめ
以上によれば、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
符号化データを取得し、
取得された前記符号化データを復号し、
直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて、生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する
画像処理方法。

[相違点]
「符号化データを取得」することについて、
本願補正発明は、取得された「符号化データ」は「量子化行列を構成する複数の係数を含む」ものであって、「直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列」が「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応」するのに対して、
引用発明は取得された「符号化データ」に「量子化行列を構成する複数の係数を含」み、「デフォルトの量子化マトリクス」が「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応」することについて特定されていない点。

(3-5)判断
上記相違点について検討する。

例えば、上記(3-3)ウの(文献4技術)に見られるように、「H.264/AVC高忠実度化規格では、シーケンス・パラメータ・セット(SPS)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、シーケンス単位で量子化マトリクスを変更可能とし、シーケンス・パラメータ・セットで量子化マトリクスを使用しないことが示されている場合には、全ての値が16の量子化マトリクスを使用するものであり、量子化マトリクスの値は、通常は低周波数成分で小さく高周波数成分で大きいものであり、差分符号化するものであって、4x4ブロックのイントラ符号化に用いる量子化マトリクスの初期値がある」ことは周知技術にすぎない。

そうすると、引用発明の画像処理方法において上記周知技術を適用し、「シーケンス・パラメータ・セット(SPS)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、シーケンス単位で量子化マトリクスを変更可能とし、シーケンス・パラメータ・セットで量子化マトリクスを使用しないことが示されている場合には、全ての値が16の量子化マトリクスを使用するものであり、量子化マトリクスの値は、通常は低周波数成分で小さく高周波数成分で大きいものであり、差分符号化するものであって、4x4ブロックのイントラ符号化に用いる量子化マトリクスの初期値がある」符号化データを取得する画像処理方法に関する発明をすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、上記画像処理方法に関する発明において、該シーケンス・パラメータ・セットには、4x4ブロックのイントラ符号化ブロック、すなわち、直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロック、を対象とする、直交変換スキップブロックの量子化に用いられた全ての係数が同一の値の前記量子化行列とは異なる量子化行列を構成する複数の係数を含む、符号化データが含まれることは明らかであり、このような上記画像処理方法に関する発明は本願補正発明にほかならない。
以上のとおりであるから、本願補正発明の構成は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

(3-6)効果等について
本願補正発明の構成は、上記のとおり当業者が容易に想到できたものであるところ、本願補正発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。

(3-7)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「なお、引用文献3および引用文献4には、量子化行列を伝送することが開示されているが、これらの方法の場合、逆量子化には、その伝送される量子化行列が用いられる。したがって、仮に、引用文献1、引用文献3、および引用文献4のそれぞれに記載の方法を適宜組み合わせたとしても、
量子化行列が設定されている場合は、量子化行列を用いて逆量子化を行い、
直交変換スキップが可能な場合、4x4のイントラTUに対するデフォルト量子化行列をフラット行列に変換する(つまり、直交変換スキップが可能な場合、4x4のイントラTUをフラットなデフォルト量子化行列を適用する)のみであり、本願発明のように、
「『前記取得部により取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする量子化行列』とは異なる量子化行列であって、かつ、全ての係数が同一の値の係数で構成される前記量子化行列を用いて、前記復号部により生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する」ことはできない。」と主張している。
しかしながら、上記(3-5)で述べたとおり、画像処理方法の1つである、「H.264/AVC高忠実度化規格」では、「シーケンス・パラメータ・セット(SPS)で新しい量子化マトリクスを符号化することで、シーケンス単位で量子化マトリクスを変更可能とし、シーケンス・パラメータ・セットで量子化マトリクスを使用しないことが示されている場合には、全ての値が16の量子化マトリクスを使用するものであり、量子化マトリクスの値は、通常は低周波数成分で小さく高周波数成分で大きいものであり、差分符号化するものであって、4x4ブロックのイントラ符号化に用いる量子化マトリクスの初期値がある」
ことは周知技術にすぎず、引用発明の動画像復号方法において、上記周知技術を適用した画像処理方法に関する発明を当業者が容易に想到し得たものである。
そして、該画像処理方法に関する発明において、該シーケンス・パラメータ・セットには、4x4ブロックのイントラ符号化ブロック、すなわち、直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロック、を対象とする、直交変換スキップブロックの量子化に用いられた全ての係数が同一の値の前記量子化行列とは異なる量子化行列を構成する複数の係数を含む、符号化データを取得すること、が含まれることは明らかであり、該画像処理方法に関する発明は本願補正発明にほかならない。

以上のとおり、審判請求人の主張は採用できない。

(3-8)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年2月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1に示した(補正前の請求項9)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。

この出願の請求項1,9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の2(3-2)アに示したとおりであり、引用文献1に記載された発明(引用発明)は、上記第2の2(3-3)ア(エ)に認定したとおりである。

4 対比、判断
本願発明は、「前記複数の係数により構成される量子化行列」について、上記第2の1の(補正後の請求項9)で限定された「取得された前記符号化データに含まれる前記複数の係数に対応し、直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックとサイズおよび符号化方法が同一のブロックを対象とする」という発明特定事項を除いて上位概念化し、「生成された前記直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数を逆量子化する」を、「生成された直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロックの全ての量子化された係数、を逆量子化する」とする、すなわち、「生成された前記直交変換スキップブロック」を「生成された直交変換処理がスキップされた直交変換スキップブロック」とするとともに、「量子化された係数、を逆量子化する」と読点を付与したものである。

そうすると、本願発明を実質的に下位概念化したものに相当する本願補正発明が上記第2の2(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-05-24 
結審通知日 2019-05-28 
審決日 2019-06-11 
出願番号 特願2014-522595(P2014-522595)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
川崎 優
発明の名称 画像処理装置および方法  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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