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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B63B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B63B
管理番号 1354111
異議申立番号 異議2019-700317  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-23 
確定日 2019-08-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6410532号発明「船舶の復原力回復構造及びこれを備えた船舶」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6410532号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6410532号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成26年9月5日に出願され、平成30年10月5日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年4月23日に特許異議申立人伊藤裕美(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


第2.本件発明

特許第6410532号の請求項1?9に係る発明(以下「本件発明1?9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の区画を有する船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分に、これら区画とは別の損傷時導水区画と同一の区画を形成するダクトを備え、
前記ダクトは、前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され、前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部とが当該ダクトの一部を構成していることを特徴とする船舶の復原力回復構造。
【請求項2】
前記損傷時導水区画は、前記ダクトが設けられた前記舷側外板に面する区画よりも下方に位置する区画であることを特徴とする請求項1記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項3】
前記複数の区画は、少なくとも、
前記船体の前後方向に複数設けられた左舷側区画と、
前記船体の前後方向に複数設けられた右舷側区画と、
前記左舷側区画の下方から前記右舷側区画の下方に至る範囲に形成されて前記船体の前後方向に複数設けられた船底側区画と、を有しており、
前記ダクトが設けられる区画は、前記左舷側区画と前記右舷側区画であり、
前記損傷時導水区画は、前記船底側区画であることを特徴とする請求項1又は2記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項4】
前記複数の区画は、少なくとも、
前記船体の前後方向に複数設けられた左舷側区画と、
前記船体の前後方向に複数設けられた右舷側区画と、
前記左舷側区画と前記右舷側区画との間に形成されて前記船体の前後方向に複数設けられた中央区画と、を有しており、
前記ダクトが設けられる区画は、前記左舷側区画と前記右舷側区画であり、
前記損傷時導水区画は、前記中央区画であることを特徴とする請求項1記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項5】
前記複数の区画は、少なくとも、
前記船体の前後方向に複数設けられた左舷側区画と、
前記船体の前後方向に複数設けられた右舷側区画と、を有しており、
前記ダクトは、前記左舷側区画又は前記右舷側区画のうち少なくとも一方に設けられ、該ダクトを設けた舷側区画とは反対側に位置する前記左舷側区画又は前記右舷側区画に連通する連通部材を有しており、
前記損傷時導水区画は、前記ダクトを設けた区画とは反対側に位置する前記右舷側区画又は前記左舷側区画であることを特徴とする請求項1記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項6】
前記損傷時導水区画は、隣接する前記隔壁間ごとに形成されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項7】
前記ダクトは、上部に空気抜き穴を有することを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項8】
前記ダクトは、前記前後で隣接する区画の境界となる隔壁の両端面にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の船舶の復原力回復構造。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載の船舶の復原力回復構造を備えたことを特徴とする船舶。」



第3.申立理由の概要

1.申立人の主張の概要

申立人は、証拠として、次の甲第1?6号証を提出し、以下の取り消し理由1及び2により、本件発明1?9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。


甲第1号証:実願昭46-105276号(実開昭48-061593号)のマイクロフィルム

甲第2号証:実願昭46-106074号(実開昭48-061594号)のマイクロフィルム

甲第3号証:特開2014-008805号公報

甲第4号証:特開2014-008804号公報

甲第5号証:本件特許の審査時において平成30年4月24日に提出された意見書

甲第6号証:JIS工業用語大辞典 第4版第3刷、1996年10月20日発行、[編集人](財)日本規格協会、[発行人]福原元一、[発行所](財)日本規格協会


1.取り消し理由1(特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項)

申立人は、取り消し理由1において、主たる証拠として甲第1号証を示し、以下の旨主張する。
本件発明1?6,8,9に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当する。
また、本件発明1?3,5,6,8,9に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された周知慣用技術に基いて、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第4号証に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上より、本件発明1?9に係る各発明は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.取り消し理由2(特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項)

申立人は、取り消し理由2において、主たる証拠として甲第2号証を示し、以下の旨主張する。
本件発明1,2,4?6,8,9に係る各発明は、甲第2号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当する。
また、本件発明1,2,4?6,9に係る各発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基いて、本件発明7は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第4号証に記載された周知慣用技術に基いて、本件発明8に係る各発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上より、本件発明1?9に係る各発明は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。



第4.甲各号証の記載事項等

1.甲第1号証

(1)甲第1号証には図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。

(1a)(実用新案登録請求の範囲)
「 二重底タンクを備えた船舶において、仕切横隔壁と舷側外板との取合部に、両者に沿つて上昇し、少くとも満載吃水線の高さ附近にまで達するトランク区画室を形成させ、液密構造の該トランク区画室を二重底タンクに連通せしめたことを特徴とする、衝突あるいは座礁時の安全性な向上させた船舶。」

(1b)(明細書 1頁13?17行)
「 本考案は、例えば他船との衝突あるいは座礁により、外板その他が破損され、多量に浸水したときも、復原性能の低下が少なく、著しく横傾斜したり、転覆、沈没するおそれのない船舶に関するものである。」

(1c)(明細書 1頁18行?2頁10行)
「 第1図、第2図に例示した如く、二重底タンクDおよび左右の舷側タンクP,Sを備えた船舶1においては、例えば他船との衝突により、外板の2Pまたは2Sその他が損傷を受け、浸水した場合も、それに起因する浮力の減少をできるだけ抑え、大角度の横傾斜や転覆ないし沈没を防止するため、これら舷側タンクは、適数個の仕切横隔壁B_(1),B_(2),B_(3),・・を介して、複数個の区分タンクP_(1),P_(2),P_(3),・・およびS_(1),S_(2),S_(3),・・・・・に分割されている。なお図中LPおよびLSは縦通隔壁、C_(1),C_(2),C_(3),・・は船体中央部に形成、配置された主タンク(または船艙)である。」

(1d)(明細書 4頁15行?5頁1行)
「 従来公知の船舶にみられる上述の如き不具合、欠点の排除を目的とした本考案は、このような事実に着目してなされたもので、衝突などにより、浸水した場合は、二重底タンクなどにも自動的に浸水し、その重心が低下するようにした船舶を提供するものである。」

(1e)(明細書 5頁2?11行)
「 本考案の原理を実施例について説明すれば、第3図?第5図において、PT_(1)?PT_(3)およびST_(1)?ST_(3)は何れも二重底タンクDと連通させた液密構造のトランク区画室で、それぞれに対応する各仕切横隔壁B_(2)?B_(4)に沿つて、舷側タンクの区分タンクP_(1)?P_(4)およびS_(1)?S_(4)内を上昇させ、少くとも満載吃水線l-lの高さ附近にまで達するように形成してある。なお3p?5p、3s?5sはそれら各トランク区画室を区分タンクP_(1)?P_(4)、S_(1)?S_(4)からそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁である。」

(1f)(明細書 5頁12行?6頁4行)
「 本考案の実施例はこのように構成されているので、トランク区画室の非損傷時には、二重底タンクに連通するトランク区画室と舷側タンクの区分タンクと、および相対向する左右の区分タンク同志は、何れも互いに独立した関係にあり、バラスト水の注、排水その他にも何らの不都合がない。また例えば満載航海中に、他船と衝突し、上述した場合と同様に、右舷側外板2Sが仕切横隔壁B_(3)をまたいでひどい損傷を受けた場合を考えると、当然、該仕切横隔壁B_(3)およびこれに隣接したトランク区画室ST_(2)ならびに仕切壁4Sは何れも破壊されることになる。」

(1g)(明細書 6頁5?15行)
「 従つて、第1?2図示の場合とは異なり、右舷側の区分タンクS_(2),S_(3)(および主タンクあるいは船艙のC_(2),C_(3))のみならず、それまで空であつた二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する。その結果、吃水はそれに対応して一段と深くなるけれども、二重底タンクDに浸水させたことにより、船の全体重心が甚しく低下し、復原力が増大するので、船の横傾斜角は第2図におけるb-b線のようには増大せず、浸水前の吃水線l-l(あるいはa-a)はc-c線のように変化し、安定する(第3図?第5図参照)。」

(1h)(明細書 6頁19行?7頁7行)
「第5図には、二重底タンクDを1個の長大なタンク区画室として例示してあるが、その目的、用途なども勘案して、縦方向に分割し、左右舷で1組をなす各組のトランク区画室と連通させるそれぞれの容量を適当に制限した型式も採用できる。
またトランク区画室は仕切横隔壁の前面側ではなくて、その後面側に沿つて、あるいはその前後両面側に隣接して、形成させてもよい。」

(1i)(明細書 7頁17行?8頁3行)
「 これを要するに、本考案は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、仕切横隔壁の位置、数、各区分タンクの容量、仕切壁の立設位置、トランク区画室の大きさ、数、舷側タンクの有無など、その要旨の範囲内で、種々の変化、変形をなしうることはいうまでもない。」

(1j)(明細書 8頁4行?12行)
「 以上の説明で明らかなように、本考案によれば、舷側または側部船底外板にひどい損傷を受け、浸水した場合は、自動的に重心が低下し、復原性能が向上するので、転覆は勿論のこと、各種の重大な事故につながる比較的大角度の横傾斜も確実に防止されることになり、従つて、衝突あるいは座礁などに際しての安全性が著しく向上した船舶を、きわめて安価に、かつ容易に建造し、提供することができる。」

(1k)(明細書 8?9頁 4.図面の簡単な説明)
「 第1図、第2図は二重底タンクおよび舷側タンクを備えた従来公知の船舶を例示したもので、第1図は第2図のI-I線における水平断面図、第2図は第1図のII-II線における断面矢視図である。また第3図?第5図は本考案の原理を説明するために示した実施例で、第3図は第4図のIII-III線における水平断面図、第4図は第3図のIV-IV線における断面矢視図、第5図は第4図のV-V線における水平断面図である。
1.・・・・・船舶;2P,2S・・・・・舷側外板;
B_(1)-B_(5)・・・・・・仕切横隔壁;D・・・・・二重底タンク;
l-l・・・・・・・満載吃水線;
PT_(1)-PT_(3),ST_(1)-ST_(3)・・・・・・トランク区画室。」


(1m)以下の図が示されている。



(2)上記摘記(1a)?(1k)及び上記(1m)に示す図面から、次の事項が認定できる。

ア.上記摘記(1b)の「本考案は、・・・外板その他が破損され、多量に浸水したときも、復原性能の低下が少なく、著しく横傾斜したり、転覆、沈没するおそれのない船舶に関する」との記載、及び、上記摘記(1g)の「右舷側の区分タンクS_(2),S_(3)(および主タンクあるいは船艙のC_(2),C_(3))のみならず、それまで空であつた二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する」、「その結果、吃水はそれに対応して一段と深くなるけれども、二重底タンクDに浸水させたことにより、船の全体重心が甚しく低下し、復原力が増大する」との記載によれば、甲第1号証に記載された技術は、「船舶」の「復元力が増大する」構造に関するものである。


イ.上記摘記(1a)の記載から、以下の事項が認定できる。
「船舶において、
仕切横隔壁と舷側外板との取合部に、トランク区画室を形成させ、
液密構造の該トランク区画室を二重底タンクに連通せしめている。」


ウ.上記摘記(1a)の「船舶」に関し、上記(1m)に示す第3図には船舶の船体の内部構造が示されているといえる。

また、上記摘記(1a)の「船舶」に関し、上記摘記(1c)には、「二重底タンク・・・および左右の舷側タンク・・・を備えた船舶1においては、・・・これら舷側タンクは、適数個の仕切横隔壁・・・を介して、複数個の区分タンク・・・に分割されている」ことが記載されている。

さらに、同摘記(1c)の「なお図中・・・は船体中央部に形成、配置された主タンク(または船艙)である」との記載を踏まえると、上記(1m)に示す第3図においては、船舶の船体に主タンクが配置されることが示されているといえる。

加えて、上記(1m)に示す第3図においては、船舶の船体が図面左右方向を前後として示されるとともに、区分タンクが前後で分割されることが示されている。

以上を踏まえると、以下の事項が認定できる。
「船舶の船体は、適数個の仕切横隔壁を含み船体の前後で複数個に分割された区分タンク、及び、主タンクを有しさらに二重底タンクを有している。」


エ.上記ウ.に示す「区分タンク」に関する事項を参酌すると、上記(1m)に示す第3図には、船体の前後に位置する区分タンクの一方にトランク区画室を形成することが示されているといえるから、摘記(1a)の「トランク区画室」の形成部位について、上記(1m)に示す第3図から、以下の事項が認定できる。

「船体の前後に位置する区分タンクの一方の仕切横隔壁と舷側外板との取合部にトランク区画室を形成させる。」


オ.上記摘記(1f)の「満載航海中に、他船と衝突し、上述した場合と同様に、右舷側外板2Sが仕切横隔壁B_(3)をまたいでひどい損傷を受けた場合」、「該仕切横隔壁B_(3)およびこれに隣接したトランク区画室ST_(2)ならびに仕切壁4Sは何れも破壊され」との記載、及び、上記摘記(1g)の「二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する」との記載から、上記摘記(1a)の「船舶」について、以下の事項が認定できる。

「満載航海中に、他船と衝突し、右舷側外板2Sが仕切横隔壁B_(3)をまたいでひどい損傷を受けた場合、該仕切横隔壁B_(3)およびこれに隣接したトランク区画室ST_(2)ならびに仕切壁4Sは何れも破壊され、二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する。」


カ.上記摘記(1e)の「第3図?第5図において、・・・3p?5p、3s?5sは各トランク区画室を区分タンクP_(1)?P_(4)、S_(1)?S_(4)からそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁である」との記載と上記(1m)に示す第3図から、「トランク区画室」は、「区分タンクからそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁」を有するといえる。

また、上記摘記(1c)の「第1図、第2図に例示した如く・・・図中LPおよびLSは縦通隔壁」なる記載を踏まえると、第1図、第2図と共通した部分に付された上記(1m)に示す第3図の図番LPおよび図番LSの示す部位も縦通隔壁であるといえ、当該第3図には「トランク区画室」が当該「縦通隔壁」を有していることが示されているといえる。

さらに、上記(1m)に示す第3図には、舷側外板の一部と仕切横隔壁の一部とがトランク区画室の一部を構成することが示されている。

以上を踏まえると、上記摘記(1a)の「仕切横隔壁と舷側外板との取合部に」おいて形成される「トランク区画室」について、以下の事項が認定できる。

「トランク区画室は、仕切横隔壁と舷側外板との取合部において、区分タンクからそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁を有し、さらに、縦通隔壁を有して形成されており、
舷側外板の一部と仕切横隔壁の一部とがトランク区画室の一部を構成している。」


(3)上記(1)及び(2)から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「船舶の復元力が増大する構造であって、

船舶の船体が、適数個の仕切横隔壁を含み船体の前後で複数個に分割された区分タンク、及び、主タンクを有しさらに二重底タンクを有しており、

船体の前後に位置する区分タンクの一方の仕切横隔壁と舷側外板との取合部にトランク区画室を形成させ、

液密構造の該トランク区画室を二重底タンクに連通せしめており、

トランク区画室は、仕切横隔壁と舷側外板との取合部において、区分タンクからそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁を有し、さらに、縦通隔壁を有して形成されており、
舷側外板の一部と仕切横隔壁の一部とがトランク区画室の一部を構成している、

船舶の復元力が増大する構造。」


2.甲第2号証

(1)甲第2号証には図面とともに以下の事項が記載されている。

(2a) (実用新案登録請求の範囲)
複数個の区分タンクに分割された舷側タンクを備えた船舶において、船艙(あるいは主タンク)内横隔壁に隣接してほぼ水平に液密構造のトランクを、また対向する左右の区分タンク内には少くとも舷側外板あるいは縦通隔壁の一方に沿つて上昇し、少くとも満載吃水線の高さ附近にまで達する液密構造のトランク区画室を、それぞれ形成させ、一方のトランクの一端は一方の区分タンクに、その他端はこれと対設した一方のトランク区画室に、そして他方のトランクの一端はこれと対設した他方のトランク区画室に、その他端は他方の区分タンクに、それぞれ連通せしめたことを特徴とする、衝突あるいは座礁時の安全性を向上させた船舶。」

(2b)(明細書 2頁2?6行)
「 本考案は、例えば他船との衝突あるいは座礁により、外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少なく、大角度の横傾斜が阻止され、転覆や沈没するおそれのない船舶に関するものである。」

(2c)(明細書 2頁7?18行)
「 第1図、第2図に例示した如く、舷側タンクと船体中央部に配置された船艙(あるいは主タンク)とを有する船舶1においては、例えば他船との衝突により、舷側外板の2Pまたは2Sその他が損傷を受けた場合、その浸水範囲を制限し、浮力の減少をできるだけ抑え、大角度の横傾斜や転覆ないし沈没を防止するため、これら船艙(あるいは主タンク)および舷側タンクは適数個の横隔壁B_(1),B_(2),B_(3)…を介して、それぞれ複数個のC_(1),C_(2),C_(3),・・とP_(1),P_(2),P_(3),・およびS_(1),S_(2),S_(3),・・に分割されている。
なお図中LPおよびLSは縦通隔壁、Dは二重底タンクである。」

(2d)(明細書 4頁11?18行)
「 本考案は従来公知の船舶にみられるこのような不都合、危険性を極力排除するためになされたもので、衝突などにより、片舷側の舷側タンクおよび船艙(あるいは主タンク)が何れも2区画にわたつて損傷を受けたときは、必らず反対舷の舷側タンクにも自動的に浸水し、左右舷重量のアンバランスが実質的に、全く起らないようにした船舶の提供を目的としている。」

(2e)(明細書 4頁19行?5頁9行)
「 本考案の原理を実施例について説明すれば、第3図?第5図において、左右の舷側タンクは船艙内横隔壁B_(2)?B_(4)から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁3p?6p、3s?6sにより、複数個の区分タンクP_(1)?P_(5)、S_(1)?S_(5)にそれぞれ分割されている。そしてB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)は横隔壁B_(2)?B_(4)の前面に隣接して船艙C_(1)?C_(3)内を、他方のB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)は横隔壁B_(2)?B_(4)の後面に隣接して、船艙C_(2)?C_(4)内を、何れもほぼ水平に、二重底タンクDの上面に沿うように形成させた液密構造のトランクである。」

(2f)(明細書 5頁10行?6頁3行)
「 またこれらトランクB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)の各左端に対設し、それぞれと連通させたトランク区画室PT_(1)?PT_(3)は舷側タンクの区分タンクP_(2)?P_(4)内を、同様にトランクB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)の各右端に対設し、それぞれと連通させたトランク区画室ST_(1)?ST_(3)は舷側タンクの区分タンクS_(2)?S_(4)内を、何れもそれらの底部より適当な上方位置から上昇させ、少くとも満載吃水l-lの高さ附近にまで達するように形成されている。
なお縦通隔壁LPの下部に取付けられたトランクB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)の各左端は区分タンクP_(2)?P_(4)と、また縦通隔LSの下部に取付けられたトランクB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)の各右端は区分タンクS_(2)?S_(4)と、それぞれ連通せしめてある。」

(2g)(明細書 6頁4行?6頁13行)
「本考案の実施例はこのように構成されているので、トランク区画室PT_(1)?PT_(3)、ST_(1)?ST_(3)の非損傷時には、例えば区分タンクのP_(2)とトランク区画室のST_(1)、区分タンクのS_(2)とトランク区画室のPT_(1)とは、それぞれトランクのB_(2)T_(1)、B_(2)T_(2)によつて連通しているけれども、相対向する左右の区分タンク同志、即ちP_(2)とS_(2)、P_(3)とS_(3)、P_(4)とS_(4)とは、何れも互に独立した関係にあり、バラスト水を搭載してもこれら左右の区分タンク間を移動することにより復原性能が低下するという心配はない。」

(2h)(明細書 6頁14行?7頁12行)
「 また例えば満載航海中に、他船と衝突し、上述と同様に、右舷側外板2Sが船艙内横隔壁B_(3)の前後にまたがるひどい損傷を受けた場合には、当然トランク区画室ST_(2)も破壊されることになる。
従つて、第1?2図の場合とは異なり、右舷側の区分タンクS_(3)(および船艙のC_(2)、C_(3))のみならず、それまで空タンクであつた左舷側の区分タンクP_(3)にも、トランクB_(3)Tを経て、自動的に必ず浸水する。
その結果、浮力は減少し、吃水はそれに対応して深くなるが、反対舷の区分タンクにも浸水させたことにより、左右舷重量のアンバランスは実質的に起らないから、船体はほとんど横傾斜せず、浸水前の吃水線l-l(あるいはa-a)はc-c線のようになり、安定する(第3図?第5図参照)。この場合、浸水による自由水影響により復原挺が負になるときには、復原挺は零になり、安定するまで横傾斜するけれども、左右舷重量のアンバランスが小さいときは、横傾斜角が小さくてすむことは明らかである。」

(2i)(明細書 7頁13行? 8頁4行)
「なお上述とは反対に、例えばトランク区画室PT_(1)?PT_(3)はトランクB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)の左端、トランク区画室ST_(1)?ST_(3)はトランクB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)の右端と連通させ、他方区分タンクS_(2)?S_(4)はトランクB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)の右端と、区分タンクP_(2)?P_(4)はトランクB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)の左端と、それぞれ連通させてもよい。これに関連して附言すれば、第3図示のように、船艙内横隔壁に対して、舷側タンク内仕切横隔壁の位置を前後方向にシフトさせることにより、左右で1組の区分タンクに必要なトランクおよびトランク区画室の個数を最少になしうるという利益がえられる。」

(2j)(明細書 8頁5行? 9頁4行)
「 また二重底タンクが中心線で分割され、それぞれが各舷側タンクと連通している船舶、あるいは二重底タンクを有しない船舶に対しても、本考案が有効に適用できることは明らかであり、これを要するに、本考案は上記実施例に限定されるものではなく、例えが横隔壁や仕切横隔壁の位置、数、各区分タンクの容量、トランクやトランク区画室の大きさ、位置、個数、二重底タンクの有無などは、その要旨の範囲内で、種々の変化、変形をなしうることはいうまでもない。
以上の説明で明らかなように、本考案によれば、舷側または側部船底外板にひどい損傷を受け、浸水した場合は、反対舷にある舷側タンクにも自動的に浸水し、左右舷重量のアンバランスが起らず、転覆は勿論のこと、各種の重大な事故につながる大角度の横傾斜も確実に阻止されることになり、従つて、衝突あるいは座礁などに際しての安全性が著しく向上した船舶を、きわめて安価に、かつ容易に建造し、提供することができる。」

(2k)(明細書 9頁 4.図面の簡単な説明)
「 第1図、第2図は船艙(あるいは主タンク)および舷側タンク(ならびに二重底タンク)を備えた従来公知の船舶を例示したもので、第1図は第2図のI-I線における水平断面図、第2図は第1図のII-II線における断面矢視図である。また第3図?第5図は本考案の原理を説明するために示した実施例で、第3図は第4図のIII-III線における水平断面図、第4図は第3図のIV-IV線における断面矢視図、第5図は第4図のV-V線における水平断面図である。
1・・・・船舶; 2P,2S・・・・・・舷側外板;
B_(1)-B_(5)・・船艙あるいは主タンク内横隔壁;
B_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)、B_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)・・・・・・・液密構造のトランク;
LP、LS・・・・・・・・・縦通隔壁; l-l・・・・・満載吃水線;
P_(1)?P_(5)、 P_(1)?S_(5)・・・・・・・舷側タンクの区分タンク;
PT_(1)?PT_(3)、ST_(1)?ST_(3)・・・・・・液密構造のトランク区画室;」

(2m)以下の図が示されている。



(2)上記摘記(2a)?(2k)及び上記(2m)に示す図面から、次の事項が認定できる。

ア.上記摘記(2b)の「本考案は、例えば他船との衝突あるいは座礁により、外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少なく、大角度の横傾斜が阻止され、転覆や沈没するおそれのない船舶に関するものである」記載から見て、甲第2号証に記載された技術は、「船舶」の「外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少ない」構造に関するものといえる。

イ.上記摘記(2a)の「船舶」に関し、上記(2m)に示す第3図には「船舶」の船体の内部構造が示されているといえる。

また、上記摘記(2a)の「船舶」に関し、上記摘記(2c)には、「舷側タンクと船体中央部に配置された船艙・・・とを有する船舶においては、・・・これら船艙・・・は適数個の横隔壁・・・を介して、それぞれ複数個・・・に分割されている」と記載されている。

さらに、上記摘記(2e)の「第3図?第5図において、左右の舷側タンクは船艙内横隔壁・・・から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により、複数個の区分タンク・・・にそれぞれ分割されている」と記載されている。

加えて、上記(2m)に示す第3図においては、船舶の船体が図面左右方向を前後として示されるとともに、区分タンクが前後で分割されることが示されている。

以上を踏まえると、上記摘記(2a)の「船舶」における「船艙」及び「対向する左右の区分タンク」に関し、以下の事項が認定できる。

「船舶の船体は、適数個の横隔壁を介して分割された複数個の船艙及び対向する左右の区分タンクであってそれぞれが左右の舷側タンクを横隔壁から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により分割されたものである区分タンクを有する。」


ウ.上記摘記(2e)の「B_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)は横隔壁B_(2)?B_(4)の前面に隣接して船艙C_(1)?C_(3)内を、他方のB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)は横隔壁B_(2)?B_(4)の後面に隣接して、船艙C_(2)?C_(4)内を、何れもほぼ水平に、二重底タンクDの上面に沿うように形成させた液密構造のトランクである」との記載と上記(2m)の第3図から、「横隔壁の前後面に隣接したトランク」が示されているといえる。
そして、上記摘記(2a)の「トランクの一方のトランクの一端は一方の区分タンクに、その他端はこれと対設した一方のトランク区画室に、そして他方のトランクの一端はこれと対設した他方のトランク区画室に、その他端は他方の区分タンクに、それぞれ連通せしめている」なる記載、及び、上記イ.において検討した「区分タンク」の配置を踏まえると、上記(2m)の第3図において、以下の事項が認定できる。

「横隔壁の前後面に隣接したトランクの一方のトランクの一端は対向する左右の一側の区分タンクに、その他端は左右の一側の区分タンクと対設した一方のトランク区画室に、そして他方のトランクの一端は一方のトランク区画室と対設した他方のトランク区画室に、その他端は対向する左右の他側の区分タンクに、それぞれ連接せしめていること。」


エ.上記摘記(2c)の「第1図、第2図に例示した如く・・・図中LPおよびLSは縦通隔壁」なる記載を踏まえると、第1図、第2図と共通した部分に付された上記(2m)に示す第3図の図番LPおよび図番LSの示す部位も「縦通隔壁」であるといえ、当該第3図には、「トランク区画室」は「舷側外板」に面する部分に、「舷側外板」及び「縦通隔壁」並びに当該「舷側外板」及び「縦通隔壁」をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部を設けて形成されることが示されているといえる。

また、上記(2m)に示す第3図には、舷側外板の一部がトランク区画室の一部を構成することが示されている。

そうすると、上記摘記(2a)の「船舶」における「トランク区画室」に関し、以下の事項が認定できる。

「トランク区画室は舷側外板に面する部分に舷側外板及び縦通隔壁並びに当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部を設けて形成され、
舷側外板の一部がトランク区画室の一部を構成している。」

また、上記摘記(2a)の「対向する左右の区分タンク内には少くとも舷側外板あるいは縦通隔壁の一方に沿つて上昇し、少くとも満載吃水線の高さ附近にまで達する液密構造のトランク区画室を、それぞれ形成させ」なる記載を踏まえて第3図を参照すると、当該第3図には、「トランク区画室」に関し、「対向する左右の区分タンク内に舷側外板及び縦通隔壁に沿つて上昇し、満載吃水線の高さ附近にまで達する液密構造のトランク区画室を、それぞれ形成させ」た構成が図示されているといえる。


オ.上記摘記(2h)の「満載航海中に、他船と衝突し、上述と同様に、右舷側外板2Sが船艙内横隔壁B_(3)の前後にまたがるひどい損傷を受けた場合には、当然トランク区画室ST_(2)も破壊され・・・それまで空タンクであつた左舷側の区分タンクP_(3)にも、トランクB_(3)Tを経て、自動的に必ず浸水する」との記載から、上記摘記(2a)の「船舶」について、以下の事項が認定できる。

「満載航海中に、他船と衝突し、右舷側外板2Sが船艙内横隔壁B_(3)の前後にまたがるひどい損傷を受けた場合には、当然トランク区画室ST_(2)も破壊され、それまで空タンクであつた左舷側の区分タンクP_(3)にも、トランクB_(3)Tを経て、自動的に必ず浸水する。」


(3)上記(1)及び(2)から、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「船舶の外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少ない構造であって、

船舶の船体は、適数個の横隔壁を介して分割された複数個の船艙及び対向する左右の区分タンクであってそれぞれが左右の舷側タンクを横隔壁から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により分割されたものである区分タンクを有し、

対向する左右の区分タンク内に舷側外板及び縦通隔壁に沿つて上昇し、満載吃水線の高さ附近にまで達する液密構造のトランク区画室を、それぞれ形成させており、

トランク区画室は舷側外板に面する部分に舷側外板及び縦通隔壁並びに当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部を設けて形成され、
舷側外板の一部がトランク区画室の一部を構成し、

横隔壁の前後面に隣接したトランクの一方のトランクの一端は対向する左右の一側の区分タンクに、その他端は左右の一側の区分タンクと対設した一方のトランク区画室に、そして他方のトランクの一端は一方のトランク区画室と対設した他方のトランク区画室に、その他端は対向する左右の他側の区分タンクに、それぞれ連接せしめている、

船舶の外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少ない構造。」


3.甲第3号証

(1)甲第3号証には図面とともに以下の事項が記載されている。

(3a)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の船舶の国際規則において、船側損傷は、旅客搭載人数、船の長さ、幅、喫水によりその損傷時の損傷想定長さ、幅、高さが決められており、損傷時の浸水容積が大きな区画(例えば、機関室、補機室、軸室など)が損傷した際、隔壁を挟んで2区画の損傷要件となる。そのため、船の損傷時の浸水容積が過大となり、規則要求の復原性能の項目としてのGoM(横メタセンタ高さ)が大きくなってしまう。この場合、船型計画の制約、上部構造の制約、区画配置の制約があることから、配置の自由度が制限されてしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、万が一の損傷時における複数の部屋への浸水を抑制できる船舶を提供することを目的とする。」

(3b)「【0039】
図1に示すように、船体10は、乾舷甲板13と船底10Bとの間に甲板12が設けられることで、上下の空間(部屋)が区画されている。また、船体10は、船尾から船首に向かって間隔をあけて、左舷側の側壁20aと右舷側の側壁20bとの間を仕切る隔壁25、24、23、22を備えることで、部屋43、42、41が船体10の長手方向に区画されている。
【0040】
そして、船体10には、左舷側の側壁20aと隔壁23に接する左方の浸水抑制水密区画室31a、32aと、右舷側の側壁20bと隔壁23に接する右方の浸水抑制水密区画室31b、32bとが設けられている。また、船体10には、左舷側の側壁20aと隔壁24とに接する左方の浸水抑制水密区画室33aと、右舷側の側壁20bと隔壁24とに接する右方の浸水抑制水密区画室33bとが設けられている。また、船体10には、左舷側の側壁20aと隔壁24とに接する左方の浸水抑制水密区画室34aと、右舷側の側壁20bと隔壁24とに接する右方の浸水抑制水密区画室34bとが設けられている。浸水抑制水密区画室31a、32a、33a、34aと、浸水抑制水密区画室31b、32b、33b、34bとは、左右舷に対称な配置(図2に示す中央CLを対称軸に船体10の幅方向に線対称の配置)とされており、左右舷にそれぞれ対応する浸水抑制水密区画室同士の容積は大きさが同一である。以下、浸水抑制水密区画室31a、31b、32a、32bについて説明する。浸水抑制水密区画室33a、33b、34a、34bは、浸水抑制水密区画室31a、31b、32a、32bと同じ構成であるので、説明を省略する。
・・・
【0042】
図5は、実施形態1に係る浸水抑制水密区画室を示す部分平面図である。図6は、図5に示す浸水抑制水密区画室の断面図である。図5及び図6に示すように、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、複数の部屋である発電機室41、部屋42(主機室)のそれぞれより容積が小さい。また、図6に示すように、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、船体10の船底10Bから乾舷甲板13までを区画した水密区画である。そして、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、船体10の船底10Bから乾舷甲板13までを連通する一区画である。そして、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、左の側壁20a(右の側壁20b)から船体10の内側へ向かう、船体10の長手方向と直交する方向(短手方向)の寸法Dが、満載喫水線WLでの船体10の幅Bの1/10を左の側壁20a(右の側壁20b)の内側に沿ってひいた仮想ラインBLより大きい。つまり、寸法Dが、船体10の幅Bの1/10より大きくなる。また、船尾から船首方向に向かう船体10の長手方向の浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)のそれぞれの長さを合わせた長さ(寸法)Eは、高さ方向の浸水範囲を制限する甲板の全長、または満載喫水線WLより下方における船体10の投影長さの前端と後端間の長さを比較して大きい方の長さの3/100と、3mとを比較して大きい方の長さより大きく設定されている。本実施形態では、高さ方向の浸水範囲を制限する甲板とは、満載喫水線WLの喫水に12.5mを加えた高さを超える甲板のうち、最も低い甲板(当該高さを超える甲板が存在しない場合には最上層の甲板)又は予備浮力に参入できる範囲の上限となる甲板のいずれか低いものをいう。これにより、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)の大きさは、国際法であるSOLAS ChapterII-1 Part.B-1 Regulation8.3.2、並びに日本国内法である船舶区画規定の第44条のそれぞれに規定される、想定する損傷の大きさよりも、大きくすることができる。その結果、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)による浸水抑制性能を十分に確保することができる。
・・・
【0054】
<実施形態1の第3変形例>
図9は、図5に示す浸水抑制水密区画室の第3変形例を示す断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。図9に示すように、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、乾舷甲板13よりも下層の2重底上甲板11から乾舷甲板13までを区画した水密区画である。そして、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、2重底上甲板11から乾舷甲板13までを連通する一区画である。また、図9に示すように、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)には、隣接するボイドスペースと区画する隔壁に海水案内管83を備えている。海水案内管83は、ボイドスペース81からバラストタンク82及び2重底上甲板11を貫通して、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とボイドスペース81とを接続する。海水案内管83は、船底10Bと2重底上甲板11と左右舷の側壁20a、20bとで囲まれる空間と、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とを接続する管部材である。海水案内管83は、少なくとも乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間に海水導入口83Aを備えている。
・・・
【0056】
船体10の外部から隔壁23の近傍に位置する左舷側の側壁20aに損傷を受けた場合、浸水抑制水密区画室31a、32aは浸水するものの、部屋42(主機室)、部屋41(発電機室)への浸水を抑制することができる。また、制御装置2は、遠隔操作により開閉バルブ84を開くことで、例えば、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)に浸水した水を、隣接するボイドスペース81に入れて、船体10の重心を下げることができる。また、開閉バルブ84を開くことで、例えば浸水抑制水密区画室31a、32aに浸水した水を、損傷していない反対舷の浸水抑制水密区画31b、32bを浸水させ、船舶1は浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができる。
【0057】
開閉バルブ84は、逆止弁でもよい。また、海水案内管83は、上端の海水導入口83Bが乾舷甲板13の上面よりも上に配置され、浸水抑制水密区画31a、32a、31b、32bのいずれかを貫通するとともに、乾舷甲板13の上方の空間と、ボイドスペース81とを連通する。これにより、海水案内管83は、左舷側の側壁20a(右舷側の側壁20b)に損傷を受け乾舷甲板13の上面の浸水した水をボイドスペース81へ流入させることができ、浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができる。これにより、海水案内管83は、乾舷甲板13の上面の浸水した水をボイドスペース81へ流入させる。このため、船体10は、重心を下げることができ、浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができる。
・・・
【0059】
実施形態2に係る浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、部屋42(主機室)、部屋41(発電機室)と、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)のそれぞれとを繋ぐ水密滑り戸85を備えている。水密滑り戸85は、水密ハッチまたは上述した制御装置2で開閉を遠隔操作可能なバルブであってもよい。
【0060】
実施形態2に係る浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、水密滑り戸85を開閉することで、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)内部への出入りを可能にする。このため、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、倉庫、横揺れ抑制(フィン・スタビライザー)機器、空調、汚物処理機器などを格納する機器室、工作機械を格納する工作室として活用することができる。
【0061】
図11は、図10に示す浸水抑制水密区画室の断面図である。図11に示すように、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)は、二重底上板である2重底上甲板11に水密滑り戸86を備えている。水密滑り戸86は、水密ハッチまたは上述した制御装置2で開閉を遠隔操作可能なバルブであってもよい。船体10の外部から隔壁23の近傍に位置する左舷側の壁20aに損傷を受けた場合、浸水抑制水密区画室31a、32aは浸水するものの、部屋42(主機室)、部屋41(発電機室)への浸水を抑制する。また、水密滑り戸86は開くことで、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)に浸水した水を、下方のボイドスペース81に入れて、重心を下げ船体10の復原性の改善を図る。また、水密滑り戸86は開くことで、損傷していない反対舷の浸水抑制水密区画室を浸水させ、船舶1は、浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができる。このように、船舶1は、左右の側壁20a、20bと、船底10Bと、乾舷甲板13を含む複数の甲板とを含む船体10と、この船体10の内部であって隔壁23により船体10の長手方向の前後に区画される複数の部屋41、42と、複数の部屋41、42の内部に配置され、乾舷甲板13よりも下層の2重底上甲板11から乾舷甲板13までの空間を区画し、かつ側壁20aまたは側壁20bと隔壁23とに接する浸水抑制水密区画室31a、31b、32a、32bとを備えている。」


(3c)以下の図が示されている。


(3d)上記(3c)の図3には、部屋42、部屋41が隣接し、部屋42に浸水抑制水密区画室32a、32b、が位置し、部屋41に浸水抑制水密区画室31a、31bが位置している点が示されている。

(3e)上記(3c)の図3には、浸水抑制水密区画室31a、32aが隣接し、浸水抑制水密区画室31b、32bが隣接している点が示されている。

(2)上記(1)から、甲第3号証には、次の事項(以下「甲3事項1」及び「甲3事項2」という。)が記載されていると認められる。

<甲3事項1>

「浸水抑制水密区画室31a、32aが隣接し、浸水抑制水密区画室31b、32bが隣接していること、及び、
浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)には、隣接するボイドスペースと区画する隔壁に海水案内管83を備え、海水案内管83は、ボイドスペース81からバラストタンク82及び2重底上甲板11を貫通して、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とボイドスペース81とを接続し、制御装置2は、遠隔操作により開閉バルブ84を開くことで、例えば、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)に浸水した水を、隣接するボイドスペース81に入れて、船体10の重心を下げることができること。」

<甲3事項2>
「船体10は、船尾から船首に向かって間隔をあけて、左舷側の側壁20aと右舷側の側壁20bとの間を仕切る隔壁25、24、23、22を備えることで、部屋43、42、41が船体10の長手方向に区画され、
部屋42、部屋41が隣接し、部屋42に浸水抑制水密区画室32a、32b、が位置し、部屋41に浸水抑制水密区画室31a、31bが位置し、
浸水抑制水密区画室31a、32aが隣接し、浸水抑制水密区画室31b、32bが隣接しており、
左舷側の側壁20aと隔壁23に接する左方の浸水抑制水密区画室31a、32aと、右舷側の側壁20bと隔壁23に接する右方の浸水抑制水密区画室31b、32bとが設けられること、及び、
船体10の外部から隔壁23の近傍に位置する左舷側の壁20aに損傷を受けた場合、浸水抑制水密区画室31a、32aは浸水し、また、水密滑り戸86は開くことで、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)に浸水した水を、下方のボイドスペース81に入れて、重心を下げ船体10の復原性の改善を図ること、及び、
部屋42(主機室)、部屋41(発電機室)と、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)のそれぞれとを繋ぐ水密滑り戸85を備え、水密滑り戸85を開閉することで、浸水抑制水密区画室31a、32a(31b、32b)内部への出入りを可能にし、倉庫、横揺れ抑制(フィン・スタビライザー)機器、空調、汚物処理機器などを格納する機器室、工作機械を格納する工作室として活用すること。」


4.甲第4号証

(1)甲第4号証には図面とともに以下の事項が記載されている。

(4a)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、船舶の復原力を回復させることができるが、万が一の損傷時に船内に侵入した水をボイドスペースまたはバラストタンクに導入する確率をより高め、より短時間で船体の重心を降下させ、船舶の復原性を高めることが望まれている。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、万が一の損傷時における船体の重心を降下させ、船舶の復原性を高める船舶を提供することを目的とする。」

(4b)「【0029】
甲板12と乾舷甲板13との間に、車両が通行可能な、少なくとも1本の船内ランプ63が設けられている。乾舷甲板13の下方の甲板12上にも車両搭載区画が形成され、この甲板12上の車両搭載区画を囲むように、船体10の船首側にロンジバルクヘッド隔壁21a、21bがある。ロンジバルクヘッド隔壁21a、21bは、船体10の内側に左舷側の側壁20a及び右舷側の側壁20bにそって設けられている。図3に示す下部車両搭載区画DLは、2重底上甲板11と、乾舷甲板13と、ロンジバルクヘッド隔壁21a、21bと、船首隔壁26、隔壁22とで囲まれた空間である。
【0030】
左舷側の側壁20aとロンジバルクヘッド隔壁21aとの間及び右舷側の側壁20bとロンジバルクヘッド隔壁21bとの間には、複数の水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bが形成されている。これら複数の水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bは、ボイドスペース、燃料タンク、バラストタンク、清水タンク、機器室、倉庫、または貨物室として利用できる。本実施形態では、複数の水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bのうち、水密区画52a、53a、52b、53bに、海水案内管83を備えている。なお、海水案内管83は、水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bのいずれか1つ以上に備えられていてもよい。以下、2重底上甲板11の上方かつ乾舷甲板13の下方の空間であって、この海水案内管83を備える水密区画52a、53a、52b、53bを浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bという。
・・・
【0034】
図4及び図5に示すように、浸水抑制水密区画52a、53a(52b、53b)は、内部に海水案内管83を備えている。海水案内管83は、ボイドスペース81からバラストタンク82及び2重底上甲板11を貫通して、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とボイドスペース81とを接続する。海水案内管83は、船底10Bと2重底上甲板11と左右舷の側壁20a、20bとで囲まれる空間と、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とを接続する管部材である。海水案内管83は、少なくとも乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間に海水導入口83Aを備えている。海水導入口83Aが乾舷甲板13の下表面よりも2重底上甲板11の上表面に近くに備えられることにより、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの水をボイドスペース81に流入できる確率を高めることができる。
【0035】
海水導入口83Aは、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの内部にある海水案内管83の枝管83aに開口する穴である。海水案内管83は、ボイドスペース81と、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bのそれぞれを連通させている。そして、海水案内管83は、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの内部にある枝管83aの海水導入口83Aを閉じる開閉バルブ84を備えており、通常、開閉バルブ84は閉鎖されている。例えば、船体10には、制御装置2が搭載されており、制御装置2は、遠隔操作により開閉バルブ84を開閉することができる。そして、開閉バルブ84は、海水導入口83Aを開くように遠隔操作された場合、海水案内管83を通じて、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの水をボイドスペース81に流入できる。
・・・
【0039】
また、海水案内管83は、上端の第2の海水導入口である、海水導入口83Bが乾舷甲板13の上面よりも上に配置され、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bのいずれかを貫通するとともに、乾舷甲板13の上方の空間と、ボイドスペース81とを連通することが好ましい。これにより、海水案内管83は、左舷側の側壁20a(右舷側の側壁20b)に損傷を受け乾舷甲板13の上面に浸水した水をボイドスペース81へ流入させることができ、浸水の影響による船体10の復原性を改善させることができる。
・・・
【0042】
上述した特許文献1の技術では、空気抜き管が破損することで、船舶の復原性を高める浸水の影響による船体の傾きを抑制することができる。これに対し、本実施形態1の船舶1は、側壁20aまたは側壁20bの破損とともに、海水案内管83が破損してもしなくても、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bに浸水した水を、2重底上甲板11の下方のボイドスペース81に入れて、短時間で船体10の重心を降下させ、船舶の復原性を高める浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができる。このため、特許文献1の技術よりも短時間で船体の重心を降下させ、船舶の復原性を高めることができる。さらに、海水案内管83は、左舷側の側壁20aまたは右舷側の側壁20bに損傷を受け乾舷甲板13の上面に浸水した水をボイドスペース81へ流入させることができ、浸水の影響による船体10の復原性を改善させることができる。」

(4c)以下の図が示されている。


(4d)図3には、浸水抑制水密区画52a、53aが隣接し、浸水抑制水密区画52b、53bが隣接することが示されている。

(2)上記(1)から、甲第4号証には、次の事項(以下「甲4事項」という。)が記載されていると認められる。

「ロンジバルクヘッド隔壁21a、21bは、船体10の内側に左舷側の側壁20a及び右舷側の側壁20bにそって設けられ、
左舷側の側壁20aとロンジバルクヘッド隔壁21aとの間及び右舷側の側壁20bとロンジバルクヘッド隔壁21bとの間には、複数の水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bが形成され、
複数の水密区画51a、52a、53a、54a、55a、56a、57a、51b、52b、53b、54b、55b、56b、57bのうち、水密区画52a、53a、52b、53bに、海水案内管83を備え、
浸水抑制水密区画52a、53aが隣接し、浸水抑制水密区画52b、53bが隣接すること、及び、
側壁20aまたは側壁20bの破損とともに、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bに浸水した水を、ボイドスペース81に入れて、短時間で船体10の重心を降下させ、船舶の復原性を高める浸水の影響による船体10の傾きを抑制することができ、
海水導入口83Aは、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの内部にある海水案内管83の枝管83aに開口する穴であり、海水案内管83は、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの内部にある枝管83aの海水導入口83Aを閉じる開閉バルブ84を備え、開閉バルブ84は、海水導入口83Aを開くように遠隔操作された場合、海水案内管83を通じて、浸水抑制水密区画52a、53a、52b、53bの水をボイドスペース81に流入できること、及び、
海水案内管83は、ボイドスペース81からバラストタンク82及び2重底上甲板11を貫通して、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間とボイドスペース81とを接続し、乾舷甲板13の下方及び2重底上甲板11の上方の空間に海水導入口83Aを備え、上端の第2の海水導入口である、海水導入口83Bが乾舷甲板13の上面よりも上に配置されていること。」


5.甲第5号証

甲第5号証には以下の事項が記載されている。

(5a)3頁下から2行目?4頁7行(なお、ページ番号として甲第5号証の各ページ下隅に付された番号を用いる。以下甲第6号証においても同様。)
「本願の請求項1に係る発明は、ダクトが損傷時導水区画と同一の区画を形成する構成です。つまり、ダクトは、下端が開口しており、下端の開口を通じて、損傷時導水区画と常時連通しています(段落[0024]を参照)。すなわち、損傷時導水区画とダクトとの間には仕切る部材が存在しません。・・・ダクト1aの破損した箇所から水が瞬時にダクト1a内に流入し、ダクト1aを通り、第1左舷側区画11および第2左舷側区画12よりも下方に位置する損傷時導水区画となる第2船底区画42に流入し、船体の重心を下げ、また船体の傾斜を抑える。」


6.甲第6号証

甲第6号証には以下の事項が記載されている。

(6a)3頁
「船こく せんこく
外板、甲板、隔壁、骨格などからなる船体構造全体。」

(6b)4頁
「トランク
四辺を囲壁で囲まれた筒状の構造。」


第5.当審の判断

1.取り消し理由1について

(1)対比

本件発明1と甲1発明とを対比する。

ア.甲1発明の「船舶の復元力が増大する構造」は本件発明1の「船舶の復原力回復構造」に相当する。

イ.甲1発明の「適数個の仕切横隔壁を含み船体の前後で複数個に分割された区分タンク及び主タンク」及び「二重底タンク」は本件発明1の「複数の区画」に相当し、前者の「適数個の仕切横隔壁を含み船体の前後で複数個に分割された区分タンク、及び、主タンクを有しさらに二重底タンクを有」する「船体」は、後者の「複数の区画を有する船体」に相当する。

ウ.甲1発明の「二重底タンク」は、「船体の前後に位置する区分タンク」とは別であって、上記第4.1.(2)オ.の摘記(1f)及び(1g)に示される「満載航海中に、他船と衝突し、・・・右舷側外板2Sが仕切横隔壁B_(3)をまたいでひどい損傷を受けた場合に」、「二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する」なる事項を踏まえると、本件発明1の「損傷時導水区画」に相当する。

エ.甲1発明の「該トランク区画室」は、「二重底タンク」と「連通せしめている」ものであって、上記第4.1.(2)オ.の摘記(1f)及び(1g)に示される「損傷を受けた場合、該仕切横隔壁B_(3)およびこれに隣接したトランク区画室ST_(2)ならびに仕切壁4Sは何れも破壊され、二重底タンクDならびに左舷側のトランク区画室PT_(2)にも自動的に浸水する」ことを踏まえると、「該トランク区画室」を通り「二重底タンク」は「自動的に浸水する」ものといえるから、両者は同一の区画を形成するものといえる。
そして上記ウ.での対比も踏まえると、甲1発明の「二重底タンクに連通せしめて」いる「該トランク区画室」は、本件発明1の「損傷時導水区画と同一の区画を形成するダクト」に相当する。

オ.上記エ.における対比も踏まえると、甲1発明の「船体の前後に位置する区分タンクの一方の仕切横隔壁と舷側外板との取合部にトランク区画室を形成させ」ることは、本件発明1の「船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分に、これら区画とは別のダクトを備え」ることと、「舷側外板に面する部分に」「ダクトを備える」限度で共通する。

カ.甲1発明の「区分タンクからそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁3p?5p、3s?5s」は、本件発明1の「船殻部材」に相当する。

キ.甲1発明の「トランク区画室は、仕切横隔壁と舷側外板との取合部において、区分タンクからそれぞれ分離、独立させるために立設した仕切壁を有し、さらに、縦通隔壁を有して形成され」ることと、本件発明1の「前記ダクトは、前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され、前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部とが当該ダクトの一部を構成していること」とは、本件発明1の「前記区画」が「船体の前後で隣接する区画」であることを勘案すると、「前記ダクトは、隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され、前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部とが当該ダクトの一部を構成していること」の限度で共通する。


以上によれば、本件発明1と甲1発明とは以下の点で一致するといえる。


<一致点1>
「複数の区画を有する船体の舷側外板に面する部分に、損傷時導水区画と同一の区画を形成するダクトを備え、
前記ダクトは、隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され、前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部が当該ダクトの一部を構成している、船舶の復原力回復構造。」


そして、以下の点で相違するといえる。

<相違点1>
「ダクト」に関し、
本件発明1は、「船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分」に「これらの区画とは別の」「区画」として形成し、「前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部」に形成されるものであるのに対して、
甲1発明は「船体の前後に位置する区分タンクの一方の仕切横隔壁と舷側外板との取合部」に「独立させるために立設した仕切壁」を有して形成されるものであって、「船体の前後に位置する区分タンク」が隣接していないため、「船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分」に「これらの区画とは別の」「区画」として形成し、「前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部」に形成されるものでない点。


(2)判断

ア.本件発明1について

(ア)特許法第29条第1項第3号について

本件発明1と甲1発明との間には上記相違点1が存在するから、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。


(イ)特許法第29条第2項について

本件発明1は、「船体の前後に位置する区分タンク」を「隣接」させたものである一方、甲1発明の「トランク区画室」は、「仕切壁」を立設することで船体の前後に位置する「区分タンク」と「区分タンク」との間に分離、独立して構成されるものであって、当該「船体の前後に位置する区分タンク」を隣接させる変更は、「トランク区画室」を形成する領域を失わせるといえるから、当該変更の動機付けは存在しない。

そして、甲1発明の「トランク区画室」を、「船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分」に「これらの区画とは別の」「区画」として形成し、「前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部」に形成して、「前記隔壁の一部」が「当該ダクトの一部を構成している」よう構成することは、甲第1号証に記載も示唆もされていない。


そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたということはできない。


イ.本件発明2?3,5,6,8,9について

(ア)特許法第29条第1項第3号及び第2項について

本件発明2?3,5,6,8,9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであって、上記ア.のとおり、本件発明1は、甲1発明でなく、また、甲1発明において当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明2?3,5,6,8,9は、甲1発明でなく、また、甲1発明において当業者にとって容易に発明することができたものとはいえない。


ウ.本件発明4について

(ア)特許法第29条第2項について

本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであるところ、本件発明4と甲1発明との間には少なくとも上記相違点1が存在する。

しかしながら、甲2?3号証に記載された事項(甲2発明、甲3事項1及び2)をみてみても、上記相違点1に係る本件発明4の構成について示されていないから、上記ア.における検討も踏まえると、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証?甲第3号証に記載された事項(甲2発明、甲3事項1及び2)に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


エ.本件発明7について

(ア)特許法第29条第2項について

本件発明7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであるところ、本件発明7と甲1発明との間には少なくとも上記相違点1が存在する。

しかしながら、甲3?4号証に記載された事項(甲3事項1及び2、甲4事項)をみてみても、上記相違点1に係る本件発明7の構成について示されていないから、上記ア.における検討も踏まえると、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第4号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


2.取り消し理由2について

(1)対比

本件発明1と甲2発明とを対比する。

ア.甲2発明の「船舶の外板その他に大きな損傷を受け、浸水したときも、復原性能の低下が少ない構造」は、本件発明1の「船舶の復原力回復構造」に相当する。

イ.甲2発明の「適数個の横隔壁を介して分割された複数個の船艙及び対向する左右の区分タンクであってそれぞれが左右の舷側タンクを横隔壁から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により分割されたものである区分タンク」は本件発明1の「複数の区画」に相当し、甲2発明の「適数個の横隔壁を介して分割された複数個の船艙及び対向する左右の区分タンクであってそれぞれが左右の舷側タンクを横隔壁から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により分割されたものである区分タンクを有」する「船体」は、本件発明1の「複数の区画を有する船体」に相当する。

ウ.甲2発明の「対向する左右の区分タンク」の左右の一側は、当該「対向する左右の区分タンク」の左右の他側とは別の区画であって、当該「対向する左右の区分タンク」の左右の一側は「左右の舷側タンクを横隔壁から前後方向に適当にシフトさせた仕切横隔壁により分割され」ており「仕切横隔壁」を境界に「船体の前後で隣接する区画」を構成し、当該「対向する左右の区分タンク」の左右の他側は、上記第4.2.(2)オ.に示した、甲第2号証における摘記(2h)の「満載航海中に、他船と衝突し、・・・右舷側外板2Sが船艙内横隔壁B_(3)の前後にまたがるひどい損傷を受けた場合には、当然トランク区画室ST_(2)も破壊され、それまで空タンクであった左舷側の区分タンクP_(3)にも、トランクB_(3)Tを経て、自動的に必ず浸水する」なる記載から、左右舷のうち当該「対向する左右の区分タンク」の左右の一側の位置する側の外板がひどい損傷を受けた場合に自動的に浸水するものであるから、「対向する左右の区分タンク」の左右の一側、及び、「対向する左右の区分タンク」の左右の他側はそれぞれ、本件発明1の「船体の前後で隣接する区画」、及び、「これら区画とは別の損傷時導水区画」に相当する。また、甲2発明の「仕切横隔壁」は本件発明1の「前記区画の境界となる隔壁」に相当する。

エ.甲2発明の「一方」及び「他方」の「トランク区画室」は、「対向する左右の一側」及び「対向する左右の他側」の「区分タンク」と、「一方」及び「他方」の「トランク」を介して「連通せしめている」ものであって、上記第4.2.(2).オ.にて甲第2号証における摘記(2h)の示す「満載航海中に、他船と衝突し、上述と同様に、右舷側外板2Sが船艙内横隔壁B_(3)の前後にまたがるひどい損傷を受けた場合には、当然トランク区画室ST_(2)も破壊され、それまで空タンクであった左舷側の区分タンクP_(3)にも、トランクB_(3)Tを経て、自動的に必ず浸水する」ことを踏まえると、「トランク区画室」を通り「区分タンク」は「自動的に必ず浸水する」ものといえるから、「対向する左右の一側」及び「対向する左右の他側」の「区分タンク」と「一方」及び「他方」の「トランク区画室」とは同一の区画を形成するものといえる。
そして、上記ウ.を踏まえると、甲2発明の「一方」及び「他方」の「トランク区画室」は、本件発明1の「損傷時導水区画と同一の区画を形成するダクト」に相当する。

オ.上記エ.における対比も踏まえると、甲2発明の「トランク区画室は舷側外板に面する部分に」「形成され」ることと、本件発明1の「複数の区画を有する船体の前後で隣接する区画の境界の舷側外板に面する部分に」「ダクトを備え」ることは、「舷側外板に面する部分に」「ダクトを備え」る点で共通する。

カ.甲2発明の「当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部」は本件発明1の「船殻部材」に相当する。

そして、上記エ.における対比も踏まえると、甲2発明の「トランク区画室は」「舷側外板及び縦通隔壁並びに当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部を設けて形成され」ていることと、本件発明1の「前記ダクトは、前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され」ることは、「前記ダクトは、前記舷側外板に船殻部材を設けて形成され」る点で共通する。

キ.上記エ.における対比も踏まえると、甲2発明の「舷側外板の一部がトランク区画室の一部を構成し」ていることは、本件発明1の「前記舷側外板の一部」が「当該ダクトの一部を構成していること」に相当する。

以上によれば、本件発明1と甲2発明とは以下の点で一致するといえる。


<一致点2>
「複数の区画を有する船体の前後で隣接する区画の舷側外板に面する部分に、これら区画とは別の損傷時導水区画と同一の区画を形成するダクトを備え、
前記ダクトは、前記舷側外板に船殻部材を設けて形成され、前記舷側外板の一部が当該ダクトの一部を構成している、船舶の復原力回復構造。」


そして、以下の点で相違するといえる。

<相違点2>
「ダクト」に関し、本件発明1は、「船体の前後で隣接する区画」の「境界」に形成されるものであって、「前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され」、「前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部とが当該ダクトの一部を構成している」のに対して、甲2発明は「区分タンク内に舷側外板及び縦通隔壁に沿って上昇」し、「トランク区画室は舷側外板に面する部分に舷側外板及び縦通隔壁並びに当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部を設けて形成され、舷側外板の一部がトランク区画室の一部を構成し」て形成されるものである点。


(2)判断
ア.本件発明1について

(ア)特許法第29条第1項第3号について

本件発明1と甲2発明との間には上記相違点2が存在するから、本件発明1は引用発明であるとはいえない。


(イ)特許法第29条第2項について

a-1.甲2発明の「トランク区画室」の「当該舷側外板及び縦通隔壁をつなぐそれぞれが離隔する一対の壁部」は、「区分タンク」の「境界となる仕切横隔壁」と異なる位置に形成されたものであるため、「前記区分タンクの境界となる仕切横隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に」、本願発明の「船殻部材」に相当する構成を設けて形成されたものでなく、「前記仕切横隔壁の一部が当該ダクトの一部を構成している」ものでもないから、本件発明1の「ダクト」に関する「船体の前後で隣接する区画」の「境界」に形成されるものであって、「前記区画の境界となる隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に船殻部材を設けて形成され」、「前記舷側外板の一部と前記隔壁の一部とが当該ダクトの一部を構成している」点を具備しないものである。

a-2.一方、甲第2号証には、「船艙内横隔壁に対して、舷側タンク内仕切横隔壁の位置を前後方向にシフトさせることにより、左右で1組の区分タンクに必要なトランクおよびトランク区画室の個数を最少になしうるという利益がえられる」(第4.2.(1)上記摘記(2i))との記載、「そしてB_(2)T_(1)?B_(4)T_(1)は横隔壁B_(2)?B_(4)の前面に隣接して船艙C_(1)?C_(3)内を、他方のB_(2)T_(2)?B_(4)T_(2)は横隔壁B_(2)?B_(4)の後面に隣接して、船艙C_(2)?C_(4)内を、何れもほぼ水平に、二重底タンクDの上面に沿うように形成させた液密構造のトランクである」(第4.2.(1)上記摘記(2e))との記載があり、甲第2号証の第3図には、トランク区画室の区分タンク内の位置が、船艙の横隔壁と船体の前後方向で略一致する部位に設けられることが示されている(第4.2.(1)上記(2m))。

a-3.そして、甲2発明において「トランク区画室」は「横隔壁」に隣接する「トランク」の一端に連通し、区分タンク内に舷側外板及び縦通隔壁に沿って上昇するものであるところ、上記a-1.の記載及び図面を踏まえると、「トランク区画室」を、「区分タンクの境界となる仕切横隔壁」に形成し、「前記区分タンクの境界となる仕切横隔壁と前記舷側外板とで形成されるコーナー部に」、本願発明の「船殻部材」に相当する構成を設けて形成し、「前記仕切横隔壁の一部が当該ダクトの一部を構成している」よう構成する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。

a-4.以上のとおりであるから、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することができたということはできない。


イ.本件発明2,4?6,8,9について

(ア)特許法第29条第1項第3号及び第2項について

本件発明2,4?6,8,9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであって、上記ア.のとおり、本件発明1は、甲2発明でなく、また、甲2発明において当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明2,4?6,8,9は、甲2発明でなく、また、甲2発明において当業者にとって容易に発明することができたものとはいえない。


ウ.本件発明3について

(ア)特許法第29条第2項について

本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであるところ、本件発明3と甲2発明との間には少なくとも上記相違点2が存在する。

しかしながら、甲1号証に記載された事項(甲1発明)をみてみても、上記相違点2に係る本件発明3の構成について示されていないから、本件発明3は、甲2発明及び甲第1号証に記載された発明(甲1発明)に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


エ.本件発明7について

(ア)特許法第29条第2項について

本件発明7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであるところ、本件発明7と甲2発明との間には少なくとも上記相違点2が存在する。

しかしながら、甲3?4号証に記載された事項(甲3事項1及び2、甲4事項)をみてみても、上記相違点2に係る本件発明7の構成について示されていないから、上記ア.における検討も踏まえると、本件発明7は、甲2発明及び甲第3号証?甲第4号証に記載された事項(甲3事項1及び2、甲4事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


オ.本件発明8について

(ア)特許法第29条第2項について

本件発明8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであるところ、本件発明8と甲2発明との間には少なくとも上記相違点2が存在する。

しかしながら、甲1号証に記載された事項(甲1発明)をみてみても、上記相違点2に係る本件発明8の構成について示されていないから、上記ア.における検討も踏まえると、本件発明8は、甲2発明に基づいて、又は、甲2発明及び甲第1号証に記載された事項(甲1発明)に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。



第6.むすび

以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないことから、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。

また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-07-22 
出願番号 特願2014-181329(P2014-181329)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B63B)
P 1 651・ 113- Y (B63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 福田 信成  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 岡▲さき▼ 潤
中川 真一
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6410532号(P6410532)
権利者 ジャパンマリンユナイテッド株式会社
発明の名称 船舶の復原力回復構造及びこれを備えた船舶  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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