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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1354852
審判番号 不服2018-12216  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-11 
確定日 2019-09-02 
事件の表示 特願2016-188964「毛髪洗浄料」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日出願公開、特開2016-216513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯 ・本願発明
本願は、平成24年11月2日に出願された特願2012-243034号に基づき、平成28年9月28日に特許法第44条第1項の規定に基づく新たな特許出願として出願したものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年9月19日:拒絶理由通知
平成30年1月17日:意見書
平成30年1月17日:手続補正書
平成30年6月4日:拒絶査定
平成30年9月11日:審判請求
平成30年10月22日:手続補正書(方式)

本願の請求項1?4に係る発明は、平成30年1月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された以下のとおりのものである(以下、請求項1?4に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本願発明1」等という。また、これらをまとめて「本願発明」ということがある。)。
「【請求項1】
(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である毛髪洗浄料。
【請求項2】
(c)カチオン変性ガラクトマンナンが、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、カチオン化グアーガム及びカチオン化フェヌグリークガムからなる群から選択される一種以上である請求項1記載の毛髪洗浄料。
【請求項3】
(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である毛髪洗浄料として使用するための透明組成物。
【請求項4】
(c)カチオン変性ガラクトマンナンが、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、カチオン化グアーガム及びカチオン化フェヌグリークガムからなる群から選択される一種以上である請求項3記載の組成物。」

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(1)本願は原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含んでおり、出願の分割要件を満たしておらず、出願日の遡及は認められない。
(2)請求項1?4に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開2014-91704号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(3)請求項1?4に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 当審の判断
1.分割要件(特許法第44条第1項)の判断
本願の願書の記載によれば、本願は、特許法第44条第1項の規定による特許出願(いわゆる分割出願)として出願をしようとするものであるから、まず、本願が適法に分割されたものであるか否かを検討する。

(1)特許出願の分割は、二以上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願とするものである(特許法第44条第1項柱書き)から、適法に分割されたものというためには、以下の(要件1)及び(要件3)が満たされる必要がある。また、分割出願が原出願の時にしたものとみなされる(特許法第44条第2項本文)という特許出願の分割の効果を考慮すると、更に以下の(要件2)も満たされる必要がある。
(参考:特許・実用新案審査基準 第VI部第1章第1節「2.2 特許出願の分割の実体的要件」)

(要件1) 原出願の分割直前の明細書等に記載された発明の全部が分割出願の請求項に係る発明とされたものでないこと。
(要件2) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること。
(要件3) 分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であること。

(2)そこで、まず、(要件2)が満たされているか否かを検討する。

ア 原出願(特願2012-243034号)の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の記載
原出願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である透明毛髪洗浄料。
【請求項2】
(c)カチオン変性ガラクトマンナンが、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、カチオン化グアーガム及びカチオン化フェヌグリークガムからなる群から選択される一種以上である請求項1記載の透明毛髪洗浄料。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は透明毛髪洗浄料に関する。さらに詳しくは、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さに優れると同時に、低温条件下でも透明性を維持することができる透明毛髪洗浄料に関する。」

(ウ)「【背景技術】
【0002】
シャンプー剤等の毛髪洗浄料においては、洗浄力とともに、使用時の豊かな泡立ち、クリーミーな泡質、すすぎ時の滑らかさ、使用後の毛髪のごわつきの無さ、しっとり感の付与等は重要な品質特性である。
【0003】
このような使用性に優れた毛髪洗浄料として、例えば特許文献1には、(a)アニオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤の中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤30?60重量%と、(b)エチレングリコール長鎖エステル3?10重量%と、(c)多価アルコール6?20重量%を含有する毛髪洗浄料が提案されている。特許文献1によれば、この毛髪洗浄料は、優れた起泡性を有し、毛髪に対して優れた保湿性を付与することができ、さらに指通り感、滑らかさ、毛髪のまとまり感に優れるとされている。
しかし、このような従来型の毛髪洗浄料は一定の使用感触は満たすものの、滑らかさ等については依然として改善の余地があった。
【0004】
また、近年になって、消費者の好みの多様化に伴い、透明感のある製品に対する需要が高まりつつある。例えば、特許文献2には、(A)ポリグリセリン脂肪酸エステルと、(B)特定構造のアルキレンオキシド誘導体とを含有する液体洗浄料組成物が記載されており、低刺激で、使用感や透明安定性にも優れるとされている。また、特許文献3には、1)ポリオキシエチレンの平均付加モル数が5以下のPOE付加硫酸エステル系アニオン界面活性剤10?25質量%と、2)両性界面活性剤8?20質量%とを含有する水性のジェリー状洗浄料が、透明度が高く、美麗であり、外観形態にも優れることが記載されている。
【0005】
しかし、一般的には、透明な化粧料は他の配合成分や温度変化などの影響により不安定になり、一部の成分が析出して白濁を生じる傾向があった。このため、特に寒冷地のような低温環境下では、経時的に透明性が損なわれる場合があった。」

(エ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして、毛髪洗浄料としての使用性に優れると同時に、低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料が依然として求められている。」

(オ)「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、透明な毛髪洗浄料に、イソステアリルアルコールと、ラウリン酸ジエチレングリコールと、カチオン変性ガラクトマンナンとを特定量で配合することにより、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さ等の使用性を改善できると同時に、低温環境下での透明安定性をも改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である透明毛髪洗浄料を提供するものである。」

(カ)「【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記(a)?(c)成分を上記特定量で配合することにより、使用時の泡立ちや泡質の良さ、すすぎ時の指どおりの滑らかさ、使用後のごわつきの無さといった毛髪洗浄料に求められる使用性を改善することができる。さらに、低温条件下(15℃)であっても透明な外観を長期間にわたって維持することが可能である。このため、特に寒冷地での使用に適している。」

(キ)「【0024】
<その他の成分>
本発明にかかる透明毛髪洗浄料は、目的に応じて、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で通常化粧品や医薬品等に用いられる他の成分を添加してもよい。このような成分としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルグルタミン酸塩等の、AMT型活性剤以外のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミン等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
さらに、炭化水素油、エステル油、高級脂肪酸、シリコーン油等の油分;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤;トリクロロカルバニリド、イオウ、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール等の抗フケ用薬剤;増粘剤;粘度調整剤;乳濁剤;金属イオン封鎖剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;粉末成分;血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、殺菌剤、消炎剤、アミノ酸、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤;pH調整剤;色素;香料;低級アルコール等が挙げられる。」

(ク)「【0026】
<透明毛髪洗浄料>
本発明の透明毛髪洗浄料は、選択する剤形と形態に応じた方法に従って製造することが可能であり、典型的には、上記の必須配合成分と必要な選択的成分を、水等の溶剤に溶解させることにより製造され、その製品形態としては、透明ヘアシャンプー、透明リンスインシャンプー等が挙げられる。」

(ケ)「【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
【0028】
<評価方法>
下記表1?5に示す処方の毛髪洗浄料組成物(試料)を、処方成分をイオン交換水に溶解混合することにより調製し、下記の手法により評価した。
【0029】
<使用性評価>
調製した各試料を専門パネル10名に実際に使用してもらい、使用時の泡立ちの豊かさ、泡質の細やかさ(クリーミーさ)、すすぎ時の滑らかさ(指通りの良さ)、使用後の毛髪のごわつきの無さについて、下記の基準に従って採点させた。次いで、各試料につき平均点を算出し、下記の4段階で評価した。
(採点基準)
5点:良い
4点:やや良い
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
(評価)
◎:平均点が4.5点以上
○:平均点が3.5点以上4.5点未満
△:平均点が2.5以上3.5点未満
×:平均点が2.5点未満
【0030】
<低温安定性評価>
調製した各試料を、15℃で1ヶ月間保存した後に外観観察を行い、透明性について評価を行った。評価は次の基準により判定した。
(評価)
◎:透明であった
○:僅かな濁りが認められるが、ほぼ透明であった
△:やや濁りが観察された
×:白濁した
【0031】
1.イソステアリルアルコール(a成分)の配合量及びa成分に対するラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)の質量比の検討
表1に示す処方の試料を調製し、a成分の配合量、並びにa成分に対するb成分の質量比[(b)/(a)]について検討した。結果を表1に併せて示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示すとおり、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)を含有しても、イソステアリルアルコール(a成分)及びカチオン化グアーガム(c成分)を含まない場合には、すすぎ時の滑らかさとごわつきの評価が悪く、泡質も満足できるものではなかった(試料1)。また、これにc成分を追加配合することで、これらの評価が多少改善されるものの、依然として満足できるレベルには至らなかった(試料2)。これに対し、a?c成分の全てを含み、なおかつ、a成分に対するb成分の質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲を満たす場合には、全ての評価項目において優れた評価結果を示した(試料4?6)。しかし、a成分に対するb成分の質量比が前記範囲外になると、これらの評価項目について優れた結果が得られないことが確認された(試料3、7?10)。
【0034】
2.カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)の配合量検討
表2に示す処方の試料を調製し、c成分の配合量について検討した。結果を表2に併せて示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示すとおり、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)のひとつであるカチオン化グアーガムを、試料の全量に対して、0.3?1質量%の範囲で含有する場合には全ての評価項目において優れた評価結果を示した(試料13?15)。しかし、c成分の配合量が前記範囲外の場合には、すすぎ時の滑らかさやごわつきの悪化が目立った(試料11、12、16)。
【0037】
3.カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)と他のカチオンポリマーとの対比
表3に示す処方の試料を調製し、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)とカチオンポリマーとの配合効果を比較した。結果を表3に併せて示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示すとおり、カチオン変性ガラクトマンナン(c成分)であるカチオン化グアーガム又はカチオン化ローカストビーンガムを配合した場合には、ガラクトマンナン骨格を有しないカチオンポリマーであるカチオン化セルロースやポリクオタニウム-7を配合した場合と比べて、全ての評価項目において高い評価が得られた。
【0040】
4.イソステアリルアルコール(a成分)と他の高級アルコールとの対比
表4に示す処方の試料を調製し、イソステアリルアルコール(a成分)と高級アルコールとの配合効果を比較した。結果を表4に併せて示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示すとおり、イソステアリルアルコール(a成分)を配合した場合には、低温(15℃)環境下で1ヶ月保管しても透明性を維持することができたが、他の高級アルコールであるセタノールやステアリルアルコールを配合した場合には、低温安定性が悪く、白濁が確認された。
【0043】
5.ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)と他のラウリン酸グリコールエステルとの対比
表5に示す処方の試料を調製し、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)とラウリン酸グリコールエステルとの配合効果を比較した。結果を表5に併せて示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表5に示すとおり、ラウリン酸ジエチレングリコール(b成分)に代えて、ラウリン酸プロピレングリコールを配合すると、泡立ちや泡質が悪くなることが確認された。」

イ 判断
(ア)本願発明1及び2には、「毛髪洗浄料」と記載されており、この「毛髪洗浄料」は、特に「透明」との特定があるものではないため、透明でないものを包含するものである。
本願発明3及び4には、「毛髪洗浄料として使用するための透明組成物」と記載されており、この「毛髪洗浄料」についても同様に、透明でないものを包含するものである。

(イ)そこで、(a)イソステアリルアルコール、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール及び(c)カチオン変性ガラクトマンナンを所定の割合で含む透明でない毛髪洗浄料が原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであるか否かについて検討する。
まず、原出願の当初明細書等において、発明の技術分野を記載した段落【0001】には、「本発明は透明毛髪洗浄料に関する。さらに詳しくは、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さに優れると同時に、低温条件下でも透明性を維持することができる透明毛髪洗浄料に関する。」と記載されており、透明毛髪洗浄料に関する技術分野に関するものであることが記載されている。
次に、原出願の当初明細書等において、発明の解決しようとする課題を記載した段落【0007】には、「毛髪洗浄料としての使用性に優れると同時に、低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料が依然として求められている。」と記載されており、発明の解決しようとする課題が、「使用性に優れること」及び「低温環境下でも透明性を失わないこと」を同時に解決した「透明毛髪洗浄料」を提供することである旨記載されている。
そして、原出願の当初明細書等において、課題を解決するための手段を記載した段落【0008】には、「本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、透明な毛髪洗浄料に、イソステアリルアルコールと、ラウリン酸ジエチレングリコールと、カチオン変性ガラクトマンナンとを特定量で配合することにより、泡立ち、泡質、すすぎ時の滑らかさ、ごわつきの無さ等の使用性を改善できると同時に、低温環境下での透明安定性をも改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されており、課題を解決する手段として、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエチレングリコール、カチオン変性ガラクトマンナンを特定量で配合する発明特定事項を採用することにより、使用性及び低温環境下での透明安定性の両方が同時に改善できることが記載されている。
さらに、原出願の当初明細書等において、発明の効果を記載した段落【0010】には、「本発明は、上記(a)?(c)成分を上記特定量で配合することにより、使用時の泡立ちや泡質の良さ、すすぎ時の指どおりの滑らかさ、使用後のごわつきの無さといった毛髪洗浄料に求められる使用性を改善することができる。さらに、低温条件下(15℃)であっても透明な外観を長期間にわたって維持することが可能である。このため、特に寒冷地での使用に適している。」と記載されており、発明の効果として、使用性を改善できることに重ねて、低温条件下での外観の透明性を維持できることが記載されている。
加えて、原出願の当初明細書等における実施例4(段落【0040】?【0042】及び表4)では、(a)成分のイソステアリルアルコールと他の高級アルコールとの対比を行った結果、(a)成分のイソステアリルアルコールを配合した場合には、低温環境下で1ヶ月保管しても透明性を維持することができたが、他の高級アルコールを配合した場合には、低温安定性が悪く、白濁が確認されたことが記載されており、この記載から(a)成分のイソステアリルアルコールが、低温環境下での透明性の維持に貢献する成分であることが示されているといえる。さらに、他の表1?3及び5においても、この(a)成分を含有する試料を調製している。
このように、原出願の当初明細書等の全体にわたって、(a)イソステアリルアルコール、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール及び(c)カチオン変性ガラクトマンナンを所定の割合で含む毛髪洗浄料は透明であることが前提となっており、原出願の当初明細書等に、透明でないものが記載されているとはいえない。
したがって、分割出願である本願の請求項1?4には、透明でないものを包含する毛髪洗浄料が記載された点で原出願の当初明細書等にはない新たな技術的事項が導入されているものと認められるから、分割出願の明細書等に記載された事項が、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、上記(要件2)を満たしていない。
また、原出願の分割直前の明細書、特許請求の範囲及び図面は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲及び図面と同一内容であるから、上記で検討したのと同様の理由により、本願の請求項1?4は原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、上記(要件3)を満たしていない。
よって、上記(要件1)について検討するまでもなく、本願は適法に分割されたものではない。

(ウ)請求人の主張について
a 請求人は、以下の事項を主張する。
(i)原出願の当初明細書等には、「(透明という限定を含まない)毛髪洗浄料(組成物)」という文言が、「背景技術」を説明する段落【0002】及び【0003】、課題に関する段落【0007】、効果に関する段落【0010】、実施例を説明する段落【0028】に記載されており、本願発明に「毛髪洗浄料」と記載する補正は、形式的に新規事項の追加には該当しない。

(ii)原出願の特許の請求項1及び2の「透明毛髪洗浄料」を本願発明1及び2では、上位概念である「毛髪洗浄料」としたものであるところ、審査基準では、「例えば、削除する事項が発明による課題の解決には関係なく、任意の付加的な事項であることが当初明細書等の記載から明らかである場合には、この補正により新たな技術上の意義が追加されない場合が多い」とされている。そして、原出願の当初明細書等に記載されている発明は、(イ)使用性の改善、及び(ロ)低温条件下でも透明性が維持できるという低温安定性の向上を解決課題としている。課題(イ)の使用性の改善は、透明毛髪洗浄料に限らず、全ての毛髪洗浄料に適用可能である。課題(ロ)については、本願明細書の実施例において評価しているのは、「洗浄料自体が透明であるか否か」ではなく、「透明性」という指標を用いた「低温安定性(低温下での析出の有無)」と解すべきであるから、洗浄料自体が元々透明であることは前記課題の解決には直接関係が無い任意の付加的な事項であって、「透明」を削除する補正は新たな技術的意義を追加するものではなく、新規事項を追加する補正には該当しない。

b 請求人の主張について検討する。
(i)について
原出願の当初明細書等における段落【0002】及び【0003】は、背景技術に関する記載であって、原出願の特許請求の範囲に係る発明、すなわち、(a)イソステアリルアルコール、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール及び(c)カチオン変性ガラクトマンナンを所定の割合で含む毛髪洗浄料について記載したものではない。
また、原出願の特許請求の範囲に係る発明の課題に関する段落【0007】には、「毛髪洗浄料としての使用性に優れると同時に、低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料が依然として求められている。」と記載されており、発明の課題は、「使用性に優れる」と同時に、「低温環境下でも透明性を失わない」「透明毛髪洗浄料」の提供であるから、使用性の課題の記載のみを取り上げて、透明性を求めない毛髪洗浄料が記載されているとすることはできない。
そして、発明の効果に関する段落【0010】には、「本発明は、上記(a)?(c)成分を上記特定量で配合することにより、使用時の泡立ちや泡質の良さ、すすぎ時の指どおりの滑らかさ、使用後のごわつきの無さといった毛髪洗浄料に求められる使用性を改善することができる。さらに、低温条件下(15℃)であっても透明な外観を長期間にわたって維持することが可能である。このため、特に寒冷地での使用に適している。」と記載されており、使用性の改善に関して「毛髪洗浄料」という文言が用いられているが、発明の効果は、使用性の改善に重ねて、低温条件下での外観の透明性を維持できることであるから、使用性に関する効果の記載だけから、透明性を求めない毛髪洗浄料が記載されているとすることはできない。
段落【0028】には、「下記表1?5に示す処方の毛髪洗浄料組成物(試料)を、処方成分をイオン交換水に溶解混合することにより調製し、下記の手法により評価した。」と記載されているが、表1?5で調製された毛髪洗浄料組成物は全て、実施例4において透明性の維持に貢献していることが示された成分(a)のイソステアリルアルコールを包含するものであるから、これらの表を見た当業者は、段落【0028】における「毛髪洗浄料組成物」は、「透明毛髪洗浄料」であると理解する。

(ii)について
請求人は、使用性の改善の課題は透明毛髪洗浄料に限らず、全ての毛髪洗浄料に適用可能である旨主張するが、原出願の当初明細書等の段落【0007】には、「毛髪洗浄料としての使用性に優れると同時に、低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料が依然として求められている。」と記載されており、発明の課題は、「使用性に優れる」と同時に、「低温環境下でも透明性を失わない」「透明毛髪洗浄料」の提供であり、使用性の課題だけを取り上げて、透明性を求めない全ての毛髪洗浄料が記載されているとすることはできない。
請求人は、「低温環境下でも透明性を失わない」という課題は低温安定性の向上という課題と解すべきであり、洗浄料自体が元々透明であることは課題の解決とは直接関係がない旨主張するが、段落【0007】の記載のとおり、原出願の特許請求の範囲に係る発明の課題は「低温環境下でも透明性を失わない透明毛髪洗浄料」の提供にほかならず、「透明性を失わない」という以上、洗浄料自体が透明であることは当該課題の解決において当然の前提となるものである。
そして、透明毛髪洗浄料を提供することは、まさに発明の課題であるから、「透明毛髪洗浄料」における「透明」という事項は、発明による課題の解決には関係ない、任意の付加的な事項であるとはいえない。
したがって、原出願の特許の請求項1及び2の「透明毛髪洗浄料」を分割出願の請求項1及び2で「毛髪洗浄料」とすることは新規事項を追加するものであるから、本願発明1及び2は、原出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえない。

よって、請求人による上記(i)、(ii)の主張はいずれも採用できない。

(3)小括
以上のとおり、本願は適法に分割されたものではないから、本願について特許法第44条第2項本文の規定は適用されない。
よって、本願の出願日は現実の出願日である平成28年9月28日である。

2.新規性(特許法第29条第1項第3号)の判断
(1)引用文献1
上記のとおり、本願の出願日は平成28年9月28日であり、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-91704号公報は、本願の分割出願に係る原出願の公開公報であり、上記1.(2)アで摘記した事項が記載されている。

そして、上記記載事項(ア)の請求項1によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である透明毛髪洗浄料」(以下、「引用発明1」という。)

また、上記記載事項(ア)の請求項2によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「(a)イソステアリルアルコールを0.1?0.5質量%、(b)ラウリン酸ジエチレングリコール、(c)カチオン変性ガラクトマンナンを0.3?1質量%含有し、(a)イソステアリルアルコールに対する(b)ラウリン酸ジエチレングリコールの質量比[(b)/(a)]が2?10の範囲である透明毛髪洗浄料であって、(c)カチオン変性ガラクトマンナンが、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化タラガム、カチオン化グアーガム及びカチオン化フェヌグリークガムからなる群から選択される一種以上である透明毛髪洗浄料。」(以下、「引用発明2」という。)

(2)対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「透明毛髪洗浄料」は、本願発明1の「毛髪洗浄料」に含まれるものであるから、両者に相違点はない。
よって、本願発明1は引用文献1に記載された発明である。

イ 本願発明2と引用発明2を対比すると、引用発明2の「透明毛髪洗浄料」は、本願発明2の「毛髪洗浄料」に含まれるものであるから、両者に相違点はない。
よって、本願発明2は引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1及び2に係る発明は、引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-03 
結審通知日 2019-07-05 
審決日 2019-07-17 
出願番号 特願2016-188964(P2016-188964)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 03- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 冨永 みどり
吉田 知美
発明の名称 毛髪洗浄料  
代理人 内田 直人  

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