現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
管理番号 1354937
異議申立番号 異議2018-701036  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-20 
確定日 2019-08-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6346746号発明「三次元造形物の製造方法、三次元造形物を製造するためのキット及び三次元造形物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6346746号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?5]について、訂正することを認める。 特許第6346746号の請求項1?5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6346746号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年12月26日の出願であって、平成30年6月1日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、平成30年12月20日に特許異議申立人 岡野眞人(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成31年3月13日付けで取消理由が通知され、令和1年5月17日に特許権者 株式会社ミマキエンジニアリングより意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がなされ、その訂正の請求に対して、同年6月26日に特許異議申立人から意見書の提出がなされたものである。


第2 訂正の許否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)

特許請求の範囲の請求項1に
「酸価が20以下であるモデル材を、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するモデル材印刷工程と、
酸価が80以上であり、上記モデル材を支持するサポート材を、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われることを特徴とする三次元造形物の製造方法。」
とあるのを、
「酸価が20以下であるモデル材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法によりモデル材を造形するモデル材印刷工程と、
酸価が80以上であるサポート材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により上記モデル材を支持するサポート材を造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、
上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み、
上記サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含む
ことを特徴とする三次元造形物の製造方法。」
に訂正する。
併せて、訂正前の請求項1を引用する請求項2ないし5についても、その引用部分について同様に訂正する。
なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?5〕に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
請求項1に係る訂正のうち、「酸価が20以下であるモデル材」を「酸価が20以下であるモデル材用インク」に変更し、「積層法により造形する」を「積層法によりモデル材を造形する」に変更すること、及び、「酸価が80以上であり、上記モデル材を支持するサポート材を、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するサポート材印刷工程」を「 酸価が80以上であるサポート材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により上記モデル材を支持するサポート材を造形するサポート材印刷工程」に変更する訂正事項(以下、「訂正事項ア」という。)は、活性エネルギー線を照射して硬化させる材料(インク)と、硬化により造形される材の関係をより明確にするものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0028】には、「本発明に係る三次元造形物の製造方法で用いるモデル材は、酸価が20以下であり、活性エネルギー線硬化型インクである。」、段落【0062】には、「本発明に係る三次元造形物の製造方法が含むモデル材印刷工程は、モデル材を用いて印刷する工程である。」、段落【0068】には、「本発明に係る三次元造形物の製造方法で用いるサポート材は、酸価が80以上であり、活性エネルギー線硬化型インクである。」、段落【0079】には、「本発明に係る三次元造形物の製造方法が含むサポート材印刷工程は、サポート材を用いて印刷する工程である。」とそれぞれ記載されているから、訂正事項アは、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

次に、請求項1に係る訂正のうち、「上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われること」を「上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み、上記サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含むこと」に変更する訂正事項(以下、「訂正事項イ」という。)は、モデル材インク、サポート材インクに含まれる成分(あるいは含まれない成分)を具体的に特定し、さらに限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、明細書の段落【0035】には、「モデル材は、実質的に(メタ)アクリル酸基を含まないことがより好ましい。」、段落【0042】には、「モデル材が紫外線硬化型インクである場合には、モデル材は光重合開始剤を含むことがより好ましい。」、段落【0072】には、「サポート材は、(メタ)アクリル酸基及びスルホン酸基のうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。」、段落【0077】には、「なお、〔モデル材〕の項で説明した(光重合開始剤)及び(その他の成分)の項の説明は、サポート材にも適用され得るものである。」とそれぞれ記載されているから、訂正事項イは、願書に添付した明細書および特許請求の範囲等に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
酸価が20以下であるモデル材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法によりモデル材を造形するモデル材印刷工程と、
酸価が80以上であるサポート材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により上記モデル材を支持するサポート材を造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、
上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み、
上記サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含む
ことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
上記モデル材用インクが、着色剤含む着色用インク又は着色剤を含まないインクであることを特徴とする請求項1に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
上記サポート材用インクが、着色剤を含まないか、又は、体質顔料を含むインクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
上記モデル材用インクが実質的に(メタ)アクリル酸基を含まず、且つ、上記サポート材用インクが(メタ)アクリル酸基及びスルホン酸基のうち少なくとも一方を含む請求項1?3のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
上記サポート材用インクが、ホモポリマー水溶性となる水溶性ビニルモノマーを含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1?5に係る特許に対して、当審が平成31年3月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)本件特許の訂正前の請求項1?5についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

その具体的理由は概略次のとおり。

ア 本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、三次元造形物の製造方法の発明において、酸価が20以下である「モデル材」、酸価が80以上である「サポート材」を用いることを特定事項として含むものであるものの、「モデル材」、「サポート材」の組成については何ら特定するものではない。
明細書の発明の詳細な説明には、「モデル材」や「サポート材」として採用しうる具体的材料や製造方法についての記載があるものの、「モデル材」、「サポート材」の成分組成については何ら言及されておらず、また、実施例として段落【0097】?【0108】に、モデル材インクとして「(株)ミマキエンジニアリング製UVインクLH-100インク(酸価2)」を用いたもののみであり、サポート材インクとしてアクリル酸又はメタアクリル酸と2-フェノキシエチルアクリレートをあわせて69部、テトラヒドロフルフリルアルコールを25部、イルガキュアを4部、DTEX-Sを2部、N-ビニルカプロラクタムを20部(実施例3のみ)用いた例が示されるにすぎない。
「モデル材」、「サポート材」において、「酸価」が所定の条件を満たすためには、例えば「サポート材」については、酸価の高い添加剤(着色剤や分散剤等)を大きな割合で用いるとともに、酸価の極めて低い重合体成分を小さな割合で用いる場合も考えられるが、このような場合には、酸価の極めて低い重合体成分よりなる部分は、中性又は塩基性の除去液で除くことが困難となる。また、「モデル材」についても、酸価の低い添加剤(着色剤や分散剤等)を大きな割合で用いるとともに、酸価の高い重合体成分を小さな割合で用いた場合、酸価の高い重合体成分からなる部分は中性又は塩基性の除去液で除かれることとなり、結果として、段落【0012】に記載されているような「簡易且つ短時間に三次元造形物を製造すること」との発明の課題を解決しないこととなる。このように、「モデル材」、「サポート材」に含まれる組成物の成分組成は課題解決のための重要な要因となるものと考えられるところ、上述の通り、実施例として示されている例は何れも基本的な成分、割合が同じ例にすぎず、また、明細書全体を通じてみても、どのような組成条件において、所定の酸価条件を満たしつつ硬化可能で、かつ、「モデル材」、「サポート材」として適切なものを得ることができるのかが明らかではなく、当業者にとって自明のことであるともいえないものであるから、発明の詳細な説明には、当業者が発明の詳細な説明の記載および出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度に記載されているものとはいえない。
してみると、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の訂正前の請求項1?5についての特許について、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

イ 実施例で用いている「DTEX-S」とは何であるのかについても明らかではなく、また、当業者にとって自明のものであるともいえない。故に、実施例を追試することもできない。
してみると、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の訂正前の請求項1?5についての特許について、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(2)本件特許の訂正前の請求項1?5についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

その具体的理由は概略次のとおり。

本件特許の訂正前の請求項1には、
「酸価が20以下であるモデル材を、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するモデル材印刷工程と、
酸価が80以上であり、上記モデル材を支持するサポート材を、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われることを特徴とする三次元造形物の製造方法。」
と記載されている。
ここで、「モデル材」、「サポート材」はそれぞれ、「モデル材用インク」の硬化物、「サポート材用インク」の硬化物であるように読める。
しかしながら、明細書には、「酸価が20以下であり、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材」(段落【0013】、【0023】、【0025】、【0027】、【0028】、【0088】、【0093】)、「酸価が80以上であり、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材」(段落【0013】、【0023】、【0025】、【0027】、【0088】、【0093】)、「サポート材は、酸価が80以上であり、活性エネルギー線硬化型インクである」(段落【0068】)、「モデル材およびサポート材をともに吐出するインクジェット法に好適に用いることができる」(段落【0030】)、「モデル材が紫外線硬化型インクである場合には」(段落【0042】)、「モデル材は、・・・インクであってもよい」(段落【0047】)など、「モデル材」は「モデル材用インク」であり、「サポート材」は「サポート材用インク」であると記載されている。
してみると、「モデル材」、「サポート材」との用語は、硬化物としての「モデル材」、「サポート材」を指すのか、あるいは、硬化していない「モデル材用インク」、「サポート材用インク」を指すのか、当業者にとって明確であるとはいえない。

(3)本件特許の訂正前の請求項1?5についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

その具体的理由は概略次のとおり。

本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、段落【0012】の記載からみて、「簡易且つ短時間に三次元造形物を製造すること」を発明の課題とするものであるが、本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明に関し、次の点でいわゆるサポート要件上の問題が存在する。

ア 本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、「酸価が20以下のモデル材」、「酸価が80以上のサポート材」との特定事項を有するものであるが、そもそも、明細書には、酸価が20以下のモデル材用インク、酸価が80以上のサポート材用インクが記載されているものの、硬化物としての「モデル材」、「サポート材」の酸価については何ら記載されていない。また、インクの酸価から、硬化物の酸価が当業者にとって自明のことであるともいえない。
してみると、本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。

イ 本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、三次元造形物の製造方法の発明において、酸価が20以下である「モデル材」、酸価が80以上である「サポート材」を用いることを特定事項として含むものであるものの、「モデル材」、「サポート材」の組成については何ら特定するものではない。
「モデル材」、「サポート材」の組成に関し、明細書の発明を実施するための形態の項では、「モデル材」や「サポート材」として採用しうる具体的材料や、製造方法についての記載があるものの、酸価が20以下である「モデル材」、酸価が80以上である「サポート材」を得るための組成については何ら言及されておらず、また、実施例として段落【0097】?【0108】に記載されている例においても、モデル材インクとして、「(株)ミマキエンジニアリング製UVインクLH-100インク(酸価2)」を用いたもののみであり、サポート材インクとして、アクリル酸又はメタアクリル酸と2-フェノキシエチルアクリレートをあわせて69部、テトラヒドロフルフリルアルコールを25部、イルガキュアを4部、DTEX-Sを2部、N-ビニルカプロラクタムを20部(実施例3のみ)用いた例が示されるにすぎない。
「モデル材」、「サポート材」において、「酸価」が所定の条件を満たすためには、例えば「サポート材」については、酸価の高い添加剤(着色剤や分散剤等)を大きな割合で用いるとともに、酸価の極めて低い重合体成分を小さな割合で用いる場合も考えられるが、このような場合には、酸価の極めて低い重合体成分よりなる部分は、中性又は塩基性の除去液で除くことが困難となる。また、「モデル材」についても、酸価の低い添加剤(着色剤や分散剤等)を大きな割合で用いるとともに、酸価の高い重合体成分を小さな割合で用いた場合、酸価の高い重合体成分からなる部分は中性又は塩基性の除去液で除かれることとなり、結果として、発明の課題を解決しないこととなる。
このように、硬化物としての「サポート材」及び「モデル材」の酸価を特定する本件発明において発明の課題を解決するためには、「酸価」のみならず、「モデル材」、「サポート材」に含まれる組成物の成分組成は重要な要因となるものと考えられるところ、実施例で示されている3つの組成は何れも、モデル材として、「(株)ミマキエンジニアリング製UVインクLH-100インク(酸価2)」を用いて硬化させることにより得られたもの、サポート材として、「アクリル酸又はメタアクリル酸と2-フェノキシエチルアクリレートをあわせて69部、テトラヒドロフルフリルアルコールを25部、イルガキュアを4部、DTEX-Sを2部、N-ビニルカプロラクタムを20部(実施例3のみ)」を含むサポート材用インクを用いて硬化させたもののみである。そして、明細書全体を通じてみても、どのような成分組成の場合に、所定の酸価条件を満たしつつ硬化可能で、かつ、「モデル材」、「サポート材」として適切なものを得ることができるのかが明らかであるとはいえず、また、当業者にとって自明のことであるともいえない。
してみると、本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明のうち、実施例1?3で具体的にあげられている成分組成のもの以外の部分については、発明の詳細な説明には、当業者が課題を解決できると認識できる程度に記載されているものとはいえないから、本件特許の訂正前の請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

2 取消理由についての検討

上記の取消理由について順次検討する。

(1) 1(1)(特許法第36条第4項第1号の理由)について

ア 1(1)アの理由について

本件発明1?5は、「酸価が20以下であるモデル材用インク」、「酸価が80以上であるサポート材用インク」を用いるものであり、かつ、「モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み」、「サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含む」ものである。つまり、重合成分として適する(あるいは適さない)ものが明らかにされた上で、かつ、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」の酸価がそれぞれ20以下、80以上と特定された。そして、発明の詳細な説明には、他に用いられる成分について記載されている上、実施例には、具体的な組成例が示されている。
してみると、発明の詳細な説明のこれらの記載に接した当業者であれば、重合成分と添加剤の組成を調整しつつ、組成物の酸価が条件に適合するものとし、本件発明1?5の三次元造形物の製造方法を実施することができるものといえる。

イ 1(1)イの理由について

実施例で用いている「DTEX-S」について、特許権者が提示した乙第1号証?乙第4号証からみても、日本化薬株式会社製の「KAYACURE DETX-S」との光ラジカル重合開始剤であることは、当業者にとって自明のことであるといえる。

ウ まとめ

上記ア、イのとおりであるから、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

(2) 1(2)(特許法第36条第6項第2号の理由)について

訂正により、本件発明1は、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」をそれぞれ硬化させることで、「モデル材」、「サポート材」をそれぞれ造形するものであるとされ、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」と、「モデル材」、「サポート材」の関係が明確になった。
よって、本件発明1?5は明確であり、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。

(3) 1(3)(特許法第36条第6項第1号の理由)について

ア 1(3)アの理由について

訂正により、本件発明1は、「酸価が20以下であるモデル材用インク」、「酸価が80以上であるサポート材用インク」を用いるものとなった。そして、モデル材用インク、サポート材用インクの酸価については、発明の詳細な説明の段落【0041】、【0068】、実施例に記載されているとおりである。

イ 1(3)イの理由について

訂正により、本件発明1は、「モデル材用インク」の「酸価が20以下である」こと、「サポート材用インク」の「酸価が80以上である」ことが特定された。つまり、重合成分以外のインク構成成分も含め、「インク」の酸価条件が特定されたものである。そして、このような酸価の条件を満たすものを用いることは、発明の詳細な説明の段落【0041】、【0068】、実施例に記載されているとおりである。

ウ まとめ

上記ア、イのとおりであるから、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。


第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について

以下、取消理由通知で採用しなかった、特許異議申立書における他の申立理由について、順次検討する。

1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について

(1)特許異議申立人の主張の概略

特許異議申立人の主張の概略(申立書第36頁下から第5行ないし第37頁第11行)は次のとおりである。

発明の詳細な説明において、モデル材には酸性染料型キレート等の着色剤や分散剤を含んでもよいことが記載されている。着色剤や分散剤には高い酸価を有するものもあり、酸価に影響する。重合体成分の酸価が20近くである場合に上記分散剤を使用するを使用するケースではモデル材の酸価は20を超える場合も想定される。したがって、どのようにモデル材の酸価を20以下とし、本件発明の課題を解決できるモデル材を製造するかについて、発明の詳細な説明には、当業者が同記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤なを要することなく、そのものを生産し、かつ、使用することができる程度の記載がない。

(2)検討

(1)の主張について検討する。

本件発明1?5は、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」の酸価をそれぞれ特定するものであるから、インクに含まれる着色剤や分散剤も含めた状態で酸価を制御すればよいことは、当業者にとって明らかであるから、本件発明1?5の三次元造形物の製造方法は実施できるものといえる。
してみると、本件発明1?5は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたもの、つまり、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものといえる。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について

(1)特許異議申立人の主張の概略

特許異議申立人の主張の概略(申立書第38頁下から第13行ないし同頁下から第1行、第39頁下から第8行ないし第40頁第18行、並びに、第41頁第7行ないし同頁第14行)は次のとおりである。

ア 請求項1では、モデル材用インク、サポート材用インクの重合成分の濃度が規定されておらず、広い範囲の重合成分濃度を含むものである。これに対し、実施例においては、モデル材用インク、サポート材用インクのいずれもが、重合成分を69重量%含有するもののみしか記載されておらず、重合成分を例えばもっと低い濃度で使用した場合等にまで、課題を解決できると出願時の技術常識に照らしても当業者が認識することができない。

イ 請求項1では、モデル材とサポート材について、それぞれ酸価を規定しているのみであり、収縮率及び吸湿の差が大きく、変形しやすい組み合わせや、硬化速度が遅いサポート材も含まれる。
また、請求項4では、「上記モデル材用インクが実質的に(メタ)アクリル酸基を含まず、且つ、上記サポート材用インクが(メタ)アクリル酸基及びスルホン酸基のうち少なくとも一方を含む」ことが記載されている。
しかしながら、酸価20以下で実質的に(メタ)アクリル酸基を含まないモデル材用インクと、酸価が80以上で(メタ)アクリル酸基及びスルホン酸基のうち少なくとも一方を含むサポート材用インクを使用した場合には、収縮率及び吸湿の差が大きく、変形しやすい組み合わせ、硬化速度が遅いサポート材も含まれる。
段落【0073】に「同系統のアクリレートを組み合わせることによって、モデル材とサポート材との収縮率を近づけることができる」との記載があり、段落【0011】には「特許文献4はモデル材とサポート材との収縮率及び吸湿の差が大きく、変形しやすい。そのため所望の形状にするために更なる処理等が必要になる可能性が大きく、結果として、造形物を得るために長時間を要する。」と記載され、段落【0009】に「特許文献2のサポート材は硬化速度が遅いことから三次元造形物の製造に長時間を要してしまい、より短時間で製造するための示唆もない。」と記載されている。本件発明1?5はこれらの課題を解決するものと解されるが、上記の通り、本件発明1?5には、収縮率及び吸湿の差が大きく、変形しやすい組み合わせ、硬化速度が遅いサポート材も含まれていると考えられ、上記課題を解決できないものが含まれる。
従って、本件発明1?5は、本件出願日当時の技術常識を有する当業者が本件明細書において本件発明1?5の課題である「簡易且つ短時間に三次元造形物を製造すること」が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えるものである。

ウ 請求項1には「酸価が20以下であるモデル材」が規定されているが、実施例においては、モデル材用インクの酸価が2であるもののみしか記載されておらず、例えば酸価が20である場合に溶解剤によるモデル材に対する膨潤等の影響の発生を抑制できるか等の課題を解決できると出願時の技術常識に照らしても当業者が認識することができない。

(2)検討

(1)の主張のア?ウの順に対応して、以下、ア?ウで順次検討する。

ア 本件発明1?5は、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」を用いて、硬化させ造形することを前提とするものであるから、本件発明1?5において、硬化し造形できる程度に重合成分を含有させるものであることは、当業者であれば当然認識できる範囲内のものといえる。

イ 本件発明1?5は、「簡便且つ短時間に三次元造形物を製造すること」(段落【0012】)を課題とし、その解決手段として、「モデル材とサポート材の酸価の大きな違いを利用して、簡便且つ短時間にサポート材を除去する」(段落【0014】)ものである。してみると、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」の酸価が特定されている本件発明1?5は、上記課題を解決するものであることは、当業者であれば当然理解できる。

ウ 上記イでも検討したとおり、本件発明1?5の課題は、「簡便且つ短時間に三次元造形物を製造すること」(段落【0012】)であって、本件発明1?5が当該課題を解決するものであることは、当業者であれば当然理解できる。(「膨潤等の影響」は、更なる課題であって、本件発明1?5の主たる課題ではない。)

エ ア?ウの検討のとおりであるから、本件発明1?5は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたもの、つまり、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものといえる。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。

3 特許法第29条第2項(進歩性)について

(1)特許異議申立人の主張の概略

特許異議申立人の主張の概略は次のとおりである。

本件発明1?5は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の記載事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

甲第1号証:特開2012-111226号公報
甲第2号証:水溶性塗料用樹脂、高分子、Vol.12,No.130,p31-34(1962)
甲第3号証:特表2012-509777号公報
甲第5号証:垣内弘編、新・基礎高分子化学、株式会社昭晃堂、
平成2年10月30日、2版11刷発行、p40-47

(2)検討

ア 甲第1号証?甲第3号証、甲第5号証に記載された事項等

(ア)甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明

甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

「【請求項7】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品の光造形時の形状支持用サポート材。」

「【請求項12】
インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物において、該モデル材が請求項1?6のいずれか記載のモデル材であり、該サポート材が請求項7?11のいずれか記載のサポート材であるインクジェット光造形用の二液型光硬化性樹脂組成物。」

「【0007】
また、サポート材に関しては、特許文献10、11に開示されている方法では、基本的にサポート材がモデル材との結合を形成する架橋ゲルとなってしまうため、サポート材の除去に時間がかかったり、細部まで除去するのが困難である等の問題があった。
特許文献12に開示されているサポート材に関しても、基本的にサポート力と水への溶解性を両立するのは難しく、モデル材の硬化後にサポート材を除去するのに長時間を要したり、アクリロイル基を有するアクリルアミド系の濃度低減や連鎖移動剤量の増加を行った場合には、サポート力を保てない等の問題があった。
さらに、前記公知文献に記載の従来技術は、モデル材とサポート材をインクジェット方式で吐出した際、硬化するまでの間に、両者が混ざり合ってしまい、光造形品の水浸漬時等に混合部分が膨張変形してしまう等の問題に関しては、全く配慮がされていないものであった。」

「【0009】
本発明のモデル材、サポート材、二液型光硬化性樹脂組成物、該組成物を用いてなる光造形品およびその製造方法は下記の効果を奏する。
(1)モデル材の光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤変形が極めて少ない。
(2)サポート材の光硬化物は水溶解性に優れ、光造形後の除去が容易である。
(3)二液型光硬化性樹脂組成物において、サポート材はモデル材と相溶せず、光造形品は優れた機械物性を有する。
(4)二液型光硬化性樹脂組成物を用いてなる光造形品は造形精度に優れる。
(5)該光造形品の製造方法は生産性に優れる。」

「【0015】
本発明のモデル材において、硬化性樹脂成分は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)、ウレタン基を含有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)、ウレタン基含有エチレン性不飽和単量体(C)および光重合開始剤(D)を含有してなる。
ここにおいてモデル材は、モデル材中の硬化性樹脂成分、すなわち、(A)?(C)のSP値の加重平均値が9.0?10.3となるように設計される。」

「【0016】
[単官能エチレン性不飽和単量体(A)]
単官能エチレン性不飽和単量体(A)としては、エチレン性不飽和基[(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基等]を1個有する化合物であれば特に限定されるものではないが、SP値を小さくするという観点から、好ましいのは疎水性の単官能エチレン性不飽和単量体(A1)(SP値が10以下)である。」

「【0019】
モデル材中の硬化性樹脂成分、すなわち、(A)?(C)のSP値の加重平均値を10.3以下に設計できる場合は、(A)として、水溶性の単官能エチレン性単量体(A2)を含有させることができる。本発明において、「水溶性」とは、水に対する溶解度(25℃)が1(g/水100g)以上であることを意味するものとする。」

「【0021】
(A2)の含有量は、モデル材の重量に基づいて通常10%以下、後述するモデル材の光硬化物の水膨潤率の低減の観点から好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは0%である。
上記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、1種単独使用でも必要により2種以上を併用してもいずれでもよい。」

「【0036】
[その他の添加剤(E)]
モデル材には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤(E)を含有させることができる。
(E)には、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が含まれ、目的に応じて種々選択することができ、1種の単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。」

「【0045】
充填剤としては、金属粉(アルミニウム粉、銅粉等)、金属酸化物(アルミナ、シリカ、タルク、マイカ、クレー等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト等)、有機繊維(コットン、ナイロン、アクリル、レーヨン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス、シラス、フェノール樹脂等)、炭素類(カーボンブラック、石墨、石炭粉等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等が挙げられる。
充填剤の使用量は、(A)?(D)の合計重量に基づいて、通常30%以下、充填効果およびインクジェット吐出可能粘度、光硬化物物性の観点から好ましくは3?20%である。」

「【0047】
[モデル材中の水溶性成分]
モデル材中の水溶性成分の含有量は、光硬化物の水膨潤変形や吸湿変形の防止の観点から好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。なお、ここにおいて水溶性成分とは、前記定義した水への溶解度が1(g/水100g)以上である成分を指し、モデル材を構成する前記(A)?(D)、および必要により加えられる(E)のうちの該溶解度を示すものである。」

「【0051】
本発明のモデル材は、インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物におけるモデル材として用いられる。二液型光硬化性樹脂組成物において、併用されるサポート材としては公知のサポート材が使用できるが、光硬化物の優れた水溶解性による光造形後の除去の容易さ、およびモデル材との非相溶性による光造形品の優れた造形精度と機械物性の観点から、下記の本発明のサポート材を使用することが好ましい。
【0052】
[サポート材]
本発明におけるサポート材は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)、オキシプロピレン基を含むアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)、並びに光重合開始剤(D)を含有してなる。
【0053】
[水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)]
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)は、光造形後にサポート材の硬化物をすばやく水に溶解させるために、サポート材の構成成分として用いられる。」

「【0055】
(F)としては、C5?15の水酸基含有(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等];Mn200?1,000の水酸基含有(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1?4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(C1?4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよびPEG-PPGブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等];C3?15の(メタ)アクリルアミド誘導体[(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルメタ)アクリルアミド、N-プロピルメタ)アクリルアミド、N-ブチルメタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルメタ)アクリルアミド、N,N’-ジエチルメタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピルメタ)アクリルアミドおよびN-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、および(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは1種単独の使用でも、あるいは2種以上を併用してもいずれでもよい。」

「【0062】
サポート材中の(F)、(G)、(D)の各含有割合(重量%)は、(F)はサポート材の光硬化物を固体状としてサポート力を発揮させる観点および該光硬化物の水への溶解性の観点から、好ましくは3?45%、さらに好ましくは3?43%、とくに好ましくは4?40%;(G)は該光硬化物の水への溶解性およびサポート力の観点から好ましくは50?95%、さらに好ましくは53?93%、とくに好ましくは55?90%;(D)はサポート材の光硬化性および光硬化物の水への溶解性の観点から好ましくは0.1?10%、さらに好ましくは0.3?8%、とくに好ましくは0.5?6%である。
【0063】
[その他の添加剤(E)]
サポート材には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤(E)を含有させることができる。
サポート材にもモデル材におけるその他の添加剤(E)と同様のものが使用できる。
(E)には、重合禁止剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、充填剤等が含まれ、目的に応じて種々選択することができ、1種の単独使用または2種以上の併用のいずれでもよい。
(F)、(G)、(D)の合計重量に基づく各(E)の使用量(%)は、モデル材における、前記(A)?(D)の合計重量に基づく各(E)の使用量(%)と同様であり、また(F)、(G)、(D)の合計重量に基づく(E)の合計の使用量(%)についても、前記(A)?(D)の合計重量に基づく(E)の合計の使用量(%)と同様である。」

「【0066】
本発明のサポート材は、インクジェット光造形法で光造形品を形成するモデル材と、該光造形品の光造形時の形状を支えるサポート材を組み合わせてなる二液型光硬化性樹脂組成物におけるサポート材として用いられる。二液型光硬化性樹脂組成物において、併用されるモデル材としては公知のモデル材が使用できるが、光硬化時および硬化後の水または吸湿による膨潤変形の少なさ、およびサポート材との非相溶性による光造形品の優れた造形精度と機械物性の観点から、上記の本発明のモデル材を使用することが好ましい。」

「【0078】
次に、上述したインクジェット方式の三次元造形システムを用いた三次元造形方法について述べる。
三次元造形のためのCADデータが1に入力されると、STLデータに変換されるとともに、上述した画面上にて、三次元造形装置2の保有する造形空間内における三次元的なデータ(モデル)の姿勢を決定した後、1からZ方向の各スライスデータが三次元造形装置2に送られる。
三次元造形装置2は、プリンタヘッドモジュール26を主走査方向に往復動作させるとともに、その往復動作中に、受け取った各スライスデータに基づき適切な位置にモデル材とサポート材とを各プリンタヘッド22ならびに23から吐出制御させることにより、各スライスデータに対応する各層を造形テーブル上に積層していく。
各層には少なくともモデル材がプリンタヘッド22から適切な位置に吐出され、必要に応じて、サポート材もプリンタヘッド23から適切な位置に吐出され各層が造形されることになる。
【0079】
更に、例えば、図2の左から右方向(往路)にプリンタヘッドモジュール26が移動する過程において、各プリンタヘッド22ならびに23からモデル材とサポート材が吐出される場合、その復路(図2の右から左方向)の過程において、ローラ24が既に造形テーブル21上に塗布されているモデル材とサポート材から形成される表面の平滑化を図るために、余分な材料を取り除くため、モデル材とサポート材の表面に対して接触しつつ、上述した回転方向に回転しつづける。
そして、このローラ24によって平滑化された表面に対して、プリンタヘッドモジュール26に載置されるUV光源25から紫外線を照射することによって、造形テーブル21上に形成されている最上面に位置する層の硬化を行わせる。なお、各層は、少なくともモデル材によって形成され、必要に応じてサポート材を加えて形成されることは言うまでもない。
従って、各層の形成は、各プリンタヘッド22ならびに23からモデル材とサポート材の吐出により、造形テーブル21上の最上面に位置する層の形成、その層の表面をローラ24による平滑化、平滑化された、造形テーブル21上の最上面に位置する層に対する紫外線の照射による層の硬化によって行われ、これらの工程を繰り返すことにより、三次元のモデルを造形することになる。」

「【0081】
図7の(A)は、このようにして造形が完了したサポート材を含むモデルを示す概略図であり、図7の(B)は、造形が完了したサポート材を含むモデルからサポート材を除去したモデルを示す概略図である。
図7の(A)に示すように、三次元造形装置2により、三次元のモデルの成形が完了した時点では、このモデルには、成形中のモデル材の支持のためのサポート材が一体的に形成されている。このため、このサポート材は、水溶解性の材料からなっているため、例えば水に浸けることにより、図7の(B)に示すようなモデル材のみからなるモデルを得ることができる。」

「【図7】



「【0089】
【表1】


【0090】
【表2】


【0091】
【表3】


【0092】
なお、表1、2における記号が示す内容は以下のとおりである。
A-1:イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBXA」、共栄社化学(株)製、平均官能基数1]
A-2:アクリロイルモルフォリン[商品名「ACMO」、(株)興人製、平均官能基数1]
A-3:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート[商品名「エポキシエステルM-600A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数1]
A-4:フェノキシエチルアクリレート[商品名「SR-339」、サートマー(株)製、平均官能基数1]
A-5:1-アダマンチルアクリレート[商品名「1-AdA」、大阪有機化学工業(株)製、平均官能基数1]
A-6:ステアリルアクリレート[商品名「STA」、大阪有機化学工業(株)製、平均官能基数1]
【0093】
B-1:ジシクロペンタンジメチロールジアクリレート[商品名「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
B-2:ビスフェノールAのPO2モル付加物ジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物[商品名「エポキシエステル3002A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
B-3:トリメチロールプロパントリアクリレート[商品名「SR-351」、サートマー(株)製、平均官能基数3]
B-4:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート[商品名「ライトアクリレート1,6HX-A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
【0094】
C-3:ウレタンアクリレートオリゴマー[商品名「Photomer6010」、コグニス(株)製、平均官能基数2]
D-1:1,3,5-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
D-2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア184」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
D-3:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン[商品名「イルガキュア907」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
D-4:1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパン-1-オン[商品名「イルガキュア2959」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
【0095】
E-1:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン[商品名「BYK307」、ビックケミージャパン(株)製]
E-2:ヒドロキノンモノメチルエーテル[和光純薬工業(株)製]
E-3:カーボンブラック[商品名「MHIブラック#220」、御国色素(株)製]」

以上の記載、特に段落【0021】の「モデル材中の水溶性の単官能エチレン性単量体(A2)の含有量が最も好ましくは0%である。」との記載、段落【0078】、【0079】のインクジェット方式の三次元造形システムを用いた三次元造形方法の記載、及び、実施例の組成に着目しつつ、総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「モデル材を、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するモデル材印刷工程と、
水溶解性の材料からなり、上記モデル材を支持するサポート材を、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、
上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含む、
光造形品の製造方法。」

(イ)甲第2号証に記載された事項

甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

「鎖状の2塩基酸と多価アルコールのポリエステルは以前から研究されているが、その後熱硬化性を与えるために不飽和2塩基酸を用いる試みがなされている。さらにエチレンオキサイドを付加した多価アルコールを用いる例もある。これらの樹脂は酸価80?100程度の縮合度で水溶化している。」(第32頁右欄、下から第12行目?第7行目)

「最近は植物油で変性したアルキドについても多くの試みがなされている。油長は比較的短い配合がとられるがこの場合、酸価は50?70程度まで縮合する例が多い。前述のごとく、アルカノールアミン類を造塩剤に用いると酸価20?35まで下げることができる。」(第33頁左欄、第6行目?第10行目)

「あらかじめアルキドを合成し、酸価を90?100で反応を止め、キシレンなどで希釈してこれにブチル化ポリメチロールメラミンのキシレン溶液を加えて55?60℃に約30分加熱し、その後にアンモニアまたは第3アミンを加えて水で希釈する。」(第33頁左欄、下から第12行目?第8行目)

「これらの点の解決策として現在試みられているのはアミノ樹脂と同様、アルキドとの共縮合による部分的エーテル化である。特許に記されている例では、クエン酸、n-ヘキシルアルコール、ペンタエリスリットにより酸価65?70のアルキドをつくる。」(第33頁右欄、第12行目?第16行目)

(ウ)甲第3号証に記載された事項

甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
デジタル製造システムと共に使用するための支持材の原料において、
-・ カルボキシル基を含む第1のモノマー単位と;
・ フェニル基を含む第2のモノマー単位と;
を含む第1のコポリマーと、
- ポリマー衝撃改質剤と、
を含む支持材の原料。」

「【請求項8】
当該支持材の原料がアルカリ性水溶液中で可溶である、請求項1に記載の支持材の原料。」

「【請求項15】
デジタル製造システムを用いて三次元モデルを構築するための方法において、
- 支持体構造を形成するためにデジタル製造システムの構築チャンバ内部で層ベースの添加技術を用いて支持材を堆積させるステップであって、支持材が第1のコポリマーとポリマー衝撃改質剤とを含み、前記第1のコポリマーが、カルボキシル基を含む複数の第1のモノマー単位とフェニル基を含む複数の第2のモノマー単位とを含んでいるステップと;
- 前記3次元モデルを形成するために前記デジタル製造システムの構築チャンバ内部で前記層ベースの添加技術を用いてモデリング材料を堆積させるステップであって、前記三次元モデルが、前記支持体構造により支持された少なくとも1つの突出領域を含んでいるステップと;
- 水溶液を用いて前記三次元モデルから前記支持体構造を実質的に除去するステップと;
を含む方法。」

「【0001】
〔背景〕
本発明は、三次元(3D)モデルを構築するためのデジタル製造システムに関する。具体的には、本発明は、押出しによるデジタル製造システムなどのデジタル製造システムと共に使用するための支持材に関する。」

「【0010】
コントローラ28から供給される信号に基づいて積層式にプラテン14上で3Dモデル24および支持体構造26を構築するために、押出しヘッド18がガントリー16上に支持されている。図1に示された実施形態において、押出しヘッド18は、それぞれ供給源20および供給源22からのモデリング材料および支持材を堆積させるように構成されたデュアルチップ押出しヘッドである。押出しヘッド18にとって適切な押出しヘッドの例としては、LaBossiereらの米国特許出願公開第2007/0003656号および米国特許出願公開第2007/00228590号;およびLeavittの米国特許出願公開第2009/0035405号の中で開示されているものが含まれる。あるいは、システム10は、1つ以上の2段ポンプアセンブリ、例えばBatchelderらの米国特許第5,764,521号;およびSkubicらの米国特許出願公開第2008/0213419号の中で開示されているものを含んでいてよい。さらに、システム10は、モデリング材料および/または支持材を堆積させるための複数の押出しヘッド18を含んでいてよい。
【0011】
モデリング材料は、供給源20から補給ライン30を介して押出しヘッド18に供給され、こうして押出しヘッド18がモデリング材料を堆積させて3Dモデル24を構築することができるようになっている。相応して、可溶性支持材が供給源22から補給ライン32を介して押出しヘッド18に供給されることで、押出しヘッド18が支持材を堆積させて支持構造26を構築できる。構築作業中、ガントリー16は、構築チャンバ12の内部において水平x-y平面内で押出しヘッド18をあちこちに移動させ、供給源20および22から押出しヘッド18を通してモデリング材料および支持材を間欠的に補給するように、1つ以上の補給機構(図示せず)が方向づけされる。受取られたモデリング材料および支持材は次にプラテン14上に堆積させられて、層ベースの添加技術を用いて3Dモデル24および支持体構造26を構築する。3Dモデル24の層の突出領域のためにz軸に沿って垂直支持体を提供するように支持体構造22を堆積させるのが望ましい。z軸に沿って垂直支持体を提供するように支持体構造を堆積させることで、3Dオブジェクト24をさまざまな幾何形状で構築できることになる。構築作業が完了した後、結果として得た3Dモデル24/支持体構造26を構築チャンバ12から取出し、水溶液(例えばアルカリ性水溶液)の入った浴槽内に置いて、支持体構造26を3Dモデル24から除去してもよい。」

「【0017】
一次コポリマー内のカルボキシルモノマー単位の適切な濃度は、一次コポリマーが水溶液中での溶解度のために少なくとも部分的に中和できるようにするものであることが望ましい。一次コポリマー中のカルボキシルモノマー単位の適切な濃度例は、一次コポリマーの全重量に基づいて約10重量%?約50重量%の範囲内であり、特に適切な濃度は約30重量%?約45重量%の範囲内である。さらに、一次コポリマー中のカルボキシル基(COOH)の適切な濃度例は、一次コポリマーの全重量に基づいて、約5重量%?約30重量%の範囲内にあり、特に適切な濃度は約10重量%?約20重量%の範囲内である。」

「【0026】
支持材内で使用するための適切な一次コポリマーの例としては、ドイツルのルードルシュタット(Rudolstadt,Germany)にあるInnocycling GmbH&Co.KGから「BELLAND」88140コポリマーという商品名で市販されているスチレン、メタクリル酸およびアクリル酸ブチルのコポリマーが含まれる。支持材中の1つ以上の一次ポリマーの適切な濃度の例は、支持材の全重量に基づいて、約25重量%?約98重量%の範囲内にあり、特に適切な濃度は、約50重量%?約95重量%の範囲内であり、さらに一層適切な濃度は約80重量%?約90重量%の範囲内にある。」

「【0033】
支持材は同様に、追加の可塑化剤、レオロジー改質剤、不活性充填剤、着色料、安定剤およびそれらの組合せなどの追加の添加剤を含んでいてもよい。支持材中で使用するための適切な追加の可塑化剤の例としては、フタル酸ジアルキル類,フタル酸シクロアルキル類、フタル酸ベンジルおよびアリール類、フタル酸アルコキシ類、リン酸アルキル/アリール類、ポリグリコールエステル類、アジピン酸エステル類、クエン酸エステル類、グリセリンのエステル類およびその組合せが含まれる。適切な不活性充填剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス球、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維、ガラス繊維、タルク、珪灰石、雲母、アルミナ、シリカ、カオリン、炭化ケイ素、可溶性塩およびその組合せが含まれる。支持材が追加の添加剤を含む実施形態において、支持材中の追加の添加剤の適切な組合せ濃度の例は、支持材の全重量に基づいて、約1重量%?約10重量%の範囲内にあり、特に適切な濃度は約1重量%?約5重量%の範囲内である。」

「【0037】
支持材のための上述の適切な組成物は、最高約120℃のガラス遷移温度を提供する。これらのガラス遷移温度において、構築チャンバ12は、支持体構造26の機械的ゆがみ発生の危険性を削減するため、約85℃?約105℃、そしてより望ましくは約85℃?約95℃の範囲内の1つ以上の温度で維持されることが望ましい。3Dモデルを構築するために選択されるモデリング材料は同様に、実質的な機械的ゆがみの発生のない、構築チャンバ12のこの温度範囲内で使用可能であることが望ましい。したがって、3Dモデル(例えば3Dモデル24)を構築するための適切なモデリング材料には、実質的な機械的ひずみが発生することなく構築チャンバ12内に押出し凝固させることのできる任意の熱可塑性材料が含まれる。3Dモデルを構築するための適切なモデリング材料の例としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー、ABS-ポリカーボネート混合物、これらの組成物の改質された変形形態(例えばABS-M30コポリマー)およびこれらの混合物が含まれる。」

(エ)甲第5号証の記載事項

甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

「水溶性モノマーはアクリルアミド、N-ビニルピロリドンあるいはアクリル酸などがある」(第41頁、備考欄)

「ビニルモノマーの単独重合における反応性(Schildknecht) ラジカル重合・アニオン重合 CH_(2)=CHCOOR、CH_(2)=C(CH_(3))COOR、CH_(2)=CHCONR_(2)、CH_(2)=C(CH_(3))CONR_(2)」(第46頁、表(3・7))

イ 対比・判断

(ア)本件発明1について

本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法によりモデル材を造形するモデル材印刷工程と、
活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により上記モデル材を支持するサポート材を造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、
上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含む
三次元造形物の製造方法。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
モデル材用インク、サポート材用インクの酸価について、本件発明1はそれぞれ、酸価が20以下、80以上であるのに対し、甲1発明はいずれも特定されない点。

(相違点2)
サポート材用インクについて、本件発明1は、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含むものであるのに対し、甲1発明はその組成について特定されない点。

先ず相違点1について検討する。
甲1発明は、段落【0009】によると、「サポート材の光硬化物は水溶解性に優れ、光造形後の除去が容易である」とするものの、モデル材用インク、サポート材用インクに関する、酸価についての記載はない。そして、モデル材用インク、サポート材用インクは、重合性成分だけでなく、他の添加材も含めた組成物であることからすれば、モデル材用インク、サポート材用インクに用いることができる成分が明らかであるからと言って、直ちに、モデル材用インク、サポート材用インクの酸価がどの程度となるのか、さらには、モデル材用インク、サポート材用インクの酸価と水溶性との関係については明らかであるとはいえず、本件出願時において、そのような事項が当該技術分野において周知技術であったともいえない。また、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証のいずれにも、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」の酸価と、水溶性との関係について示唆する記載もない。
そして、その結果として、モデル材用インク、サポート材用インクの酸価をそれぞれ、20以下、80以上とすることにより、簡易且つ短時間に三次元造形物を製造することができるとする本件発明1の効果について、当業者が予測し得たものとは到底認められない。

なお、特許異議申立人は、モデル材の酸価については0である旨主張しているが、モデル材用インクの1成分が酸価0であったとしても、「モデル材用インク」の酸価は他の成分にも影響されるものである以上、直ちに、「モデル材用インク」の酸価を0と推認することはできない。

してみれば、相違点2については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明および甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2?5について
本件発明2?5は、それぞれ、請求項1を引用し、モデル材用インク、サポート材用インクに含まれる成分を特定するものである。
上記(ア)のとおり、本件発明1は、甲1発明および甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1の特定事項を全て含む発明である、本件発明2?5もまた、甲1発明および甲第2号証、甲第3号証及び甲第5号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 特許異議申立人の意見書における主張について

特許異議申立人は、令和1年6月26日提出の意見書において、参考資料1?4を提出するとともに、本件発明1?5に対して、概略、次の主張をしている。

サポート材用インク、モデル材用インクにおける、サポート材、モデル材を形成するための(重合)成分は、参考資料1?4の記載を参酌すれば、必ずしも大きな割合で含むものと認識することはできず、その結果、サポート材用インク、モデル材用インクとしてどのような組成のものが適するのか決定することは、当業者といえども過大な試行錯誤を要するものであるといわざるを得ないから、実施可能要件を満たしていないこと、また、それ故に、実施例以外のいかなるものが課題を解決するものなのか、当業者にとって自明のことであるとはいえないから、本件発明1?5は、サポート要件を満たしていない。

そこで、上記主張について検討する。
本件発明1で特定されている酸価は、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」であり、モデル材用インク、サポート材用インクに含まれる重合成分自体ではない。つまり、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」という組成物の酸価がそれぞれ、20以下、80以上の条件を満たせばこと足りる。さらに、モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み、サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含むことも特定されており、この条件を満たした実施例も開示されていることからすれば、当業者ならば、他の添加材等を調整しつつ、酸価が適合するようにし、本件発明1の三次元造形物の製造方法を実施することができるものといえる。
そして、本件発明1の効果についても、「モデル材とサポート材との酸価の大きな違いを利用して、簡易且つ短時間にサポート材を除去することができ」る(段落【0014】)との記載から見ても、「モデル材用インク」、「サポート材用インク」の酸価をそれぞれ20以下、80以上とすることにより、効果の発現を認識できるものであるといえる。
してみると、本件発明1?5は、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたもの、つまり、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものであり、また、本件発明1?5は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたもの、つまり、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第36条第6項第1号の要件をも満たすものである。


第7 結論

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が20以下であるモデル材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法によりモデル材を造形するモデル材印刷工程と、
酸価が80以上であるサポート材用インクであって、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材用インクを用いて印刷して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで積層法により上記モデル材を支持するサポート材を造形するサポート材印刷工程と、
上記サポート材印刷工程によって造形されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含み、
上記モデル材印刷工程と、上記サポート材印刷工程とは、インクジェット法により上記モデル材用インク及び上記サポート材用インクを異なる位置に同時に吐出することで同時に行われるものであり、
上記サポート材除去工程は、中性又は塩基性の除去液を用いて行われ、
上記モデル材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含まない重合成分と、光重合開始剤とを含み、
上記サポート材用インクは、(メタ)アクリル酸基を含む重合成分と、光重合開始剤とを含む
ことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
上記モデル材用インクが、着色剤含む着色用インク又は着色剤を含まないインクであることを特徴とする請求項1に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
上記サポート材用インクが、着色剤を含まないか、又は、体質顔料を含むインクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
上記モデル材用インクが実質的に(メタ)アクリル酸基を含まず、且つ、上記サポート材用インクが(メタ)アクリル酸基及びスルホン酸基のうち少なくとも一方を含む請求項1?3のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
上記サポート材用インクが、ホモポリマー水溶性となる水溶性ビニルモノマーを含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の三次元造形物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-07-22 
出願番号 特願2013-270512(P2013-270512)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 536- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田代 吉成  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
大島 祥吾
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6346746号(P6346746)
権利者 株式会社ミマキエンジニアリング
発明の名称 三次元造形物の製造方法、三次元造形物を製造するためのキット及び三次元造形物  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ