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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C07D 審判 全部申し立て 2項進歩性 C07D 審判 全部申し立て 発明同一 C07D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C07D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C07D |
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管理番号 | 1354946 |
異議申立番号 | 異議2018-700838 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-15 |
確定日 | 2019-08-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6312479号発明「有機化合物、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 1 特許第6312479号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。2 特許第6312479号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 特許第6312479号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成26年3月24日(優先権主張 平成25年3月25日)に出願され、平成30年3月30日にその特許権の設定登録がされ、同年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年10月15日に特許異議申立人 飯田 進(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成31年2月14日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成31年4月22日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、令和1年6月7日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の趣旨 本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めるものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、以下の訂正事項1?4のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 請求項1に「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物を除く)」とあるのを、「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、式(144)で表される化合物、式(148)で表される化合物、式(167)で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(162)?式(164)で表される化合物、式(174)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-35]?[F-37]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-79]?[F-81]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-35]?[G-37]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-79]?[G-81]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く)」に訂正する。 あわせて、A-1?A-6で表される化合物、式(144)で表される化合物、式(148)で表される化合物、式(167)で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(162)?式(164)で表される化合物、式(174)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-35]?[F-37]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-79]?[F-81]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-35]?[G-37]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-79]?[G-81]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物に対応する化学構造式を追加する。 (2)訂正事項2 請求項2に「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物を除く)」とあるのを、「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く」に訂正する。 あわせて、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物に対応する化学構造式を追加する。 (3)訂正事項3 請求項3に「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物を除く)」とあるのを、「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-55]?[F-56]で表される化合物、[F-59]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-11]?[G-12]で表される化合物、[G-15]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-55]?[G-56]で表される化合物、[G-59]で表される化合物、[G-63]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、B-13?B-15で表される化合物、及びB-17?B-20で表される化合物を除く)」に訂正する。 あわせて、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-55]?[F-56]で表される化合物、[F-59]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-11]?[G-12]で表される化合物、[G-15]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-55]?[G-56]で表される化合物、[G-59]で表される化合物、[G-63]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、B-13?B-15で表される化合物、及びB-17?B-20で表される化合物に対応する化学構造式を追加する。 (4)訂正事項4 請求項4に「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物を除く)」とあるのを、「(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-55]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[G-11]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-55]で表される化合物、[G-63]で表される化合物B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、及びB-13?B-15で表される化合物を除く)」に訂正する。 あわせて、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-55]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[G-11]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-55]で表される化合物、[G-63]で表される化合物B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、及びB-13?B-15で表される化合物に対応する化学構造式を追加する。 3 訂正の目的の適否 訂正事項1?4は、それぞれ請求項1?4の一般式(G1)?(G4)で表される有機化合物から、本件訂正前から除かれるとされていた化合物に加えて、さらに除かれる化合物を具体的に特定することで、一般式(G1)?(G4)で表される有機化合物を限定するものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 4 新規事項の追加の有無 訂正事項1?4は、それぞれ訂正前の請求項に係る発明から、先行技術との重なりのみを除くものであって、新たな技術的事項を導入するものではないから、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものである。 5 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記3及び4で検討したとおり、訂正事項1?4は、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において、先行技術との重なりのみを除くことで、訂正前の請求項に記載された有機化合物を限定したものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 6 一群の請求項について 訂正事項1?4にかかる訂正前の請求項1?8について、請求項5?8はそれぞれ請求項1?4を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1?4によって記載が訂正される請求項1?4に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?8に対応する訂正後の請求項1?8に係る本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。 7 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?8に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 なお、以下、本件特許の請求項1?8に係る発明を「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。 「【請求項1】 一般式(G1)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、式(144)で表される化合物、式(148)で表される化合物、式(167)で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(162)?式(164)で表される化合物、式(174)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-35]?[F-37]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-79]?[F-81]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-35]?[G-37]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-79]?[G-81]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く)。 【化1】 (但し、一般式(G1)中、Ar^(1)は、置換もしくは無置換のフルオレニル基を表し、Ar^(2)は、置換もしくは無置換の炭素数6?13のアリール基を表し、A^(1)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。なお、Ar^(1)、Ar^(2)およびA^(1)が、置換基を有する場合、置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士は結合して環を形成しない。) 【化2】 【化3】 【請求項2】 一般式(G2)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く)。 【化4】 (但し、一般式(G2)中、Ar^(3)は、置換もしくは無置換の炭素数6?13のアリール基を表し、A^(2)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。また、R^(1)?R^(9)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表し、Ar^(3)およびA^(2)が置換基を有する場合、Ar^(3)およびA^(2)の置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士が結合して環を形成しない。) 【化5】 【化6】 【請求項3】 一般式(G3)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-55]?[F-56]で表される化合物、[F-59]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-11]?[G-12]で表される化合物、[G-15]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-55]?[G-56]で表される化合物、[G-59]で表される化合物、[G-63]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、B-13?B-15で表される化合物、及びB-17?B-20で表される化合物を除く)。 【化7】 (但し、一般式(G3)中、Ar^(4)は、置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、A^(3)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。また、R^(11)?R^(19)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表し、Ar^(4)およびA^(3)が置換基を有する場合、Ar^(4)およびA^(3)の置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士が結合して環を形成しない。) 【化8】 【化9】 【請求項4】 一般式(G4)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-55]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[G-11]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-55]で表される化合物、[G-63]で表される化合物B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、及びB-13?B-15で表される化合物を除く)。 【化10】 (但し、一般式(G4)中、Xは、酸素または硫黄を表し、R^(21)およびR^(22)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表す。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、R^(21)とR^(22)は結合して環を形成しない。) 【化11】 【化12】 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子。 【請求項6】 請求項5に記載の発光素子を用いた発光装置。 【請求項7】 請求項6に記載の発光装置を用いた電子機器。 【請求項8】 請求項6に記載の発光装置を用いた照明装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、当審が平成31年2月14日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1(新規性) 請求項1?3、5?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由2(進歩性) 請求項5?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)理由3(拡大先願その1) 請求項1?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前の先の出願に基づく優先権の主張を伴う外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その出願後に特許法第184条の15第3項によって読み替えられた特許法第41条第3項の規定により国際公開がされたときに出願公開がされたものとみなされた外国語特許出願3?5の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願に係る優先日前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。(同法第184条の13参照)。 (4)理由4(拡大先願その2) 請求項1?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前の日本語特許出願であって、その出願後に特許法第184条の15第2項によって読み替えられた特許法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされた日本語特許出願6の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願に係る優先日前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 刊行物等及び刊行物等に記載された事項 (1)刊行物1 本件特許の出願に係る優先日前である平成23年5月19日に日本国内又は外国において頒布された刊行物である国際公開第2011/059099号(甲第1号証。以下、「甲1」という。)には、次のように記載されている。 (甲1a)「[0001]本発明は、芳香族アミン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。 背景技術 [0002]有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子の再結合エネルギーにより蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。」 (甲1b)「[0007]本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造の芳香族炭化水素基と分岐状の芳香族炭化水素基を共に有する芳香族アミン誘導体を、有機EL素子用材料として、特に正孔輸送材料として用いることにより、有機EL素子が低電圧化し、且つ発光効率及び素子寿命が向上することを見出した。 [0008]すなわち、本発明は、下記[1]及び[2]に関する。 [1]下記式(I)で表される芳香族アミン誘導体。 [0009][化1] ・・・ [0014][2]陽極と陰極との間に少なくとも1つの有機薄膜層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、上記[1]に記載の芳香族アミン誘導体を含有する有機薄膜層を少なくとも1層以上有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。」 (甲1c)「[0051]次に、前記式(I)で表される本発明の芳香族アミン誘導体の具体例を以下に示すが、特にこれらに限定されるものではない。 ・・・ [0058][化28] ・・・ [0068][化38] 」 (甲1d)「実施例 [0093]以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。 なお、下記合成例1?23において合成した中間体の構造は、以下の通りである。 [0094][化42] [0095][化43] [0096]<合成例1(中間体1の合成)> アルゴン雰囲気下、1,3,5-トリブロモベンゼン70g、フェニルボロン酸54g及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム10.2gに、トルエン1200mL及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液650mLを加え、10時間還流させながら加熱した。 反応終了後、直ちにろ過した後、水層を除去した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、23.9gの白色結晶を得た。フィールドディソープションマススペクトル(以下、FD-MSと称する。)の分析により、該白色結晶を3,5-ジフェニル-1-ブロモベンゼンと同定した。 アルゴン雰囲気下、3,5-ジフェニル-1-ブロモベンゼン23.9gに無水テトラヒドロフラン250mLを加え、-40℃で撹拌中に、1.6mol/Lのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液60mLを加えた。反応溶液を0℃まで加温しながら1時間攪拌した。反応溶液を再び-78℃まで冷却し、ホウ酸トリイソプロピル43.6gの無水テトラヒドロフラン50mL溶液を滴下した。反応溶液を室温で5時間攪拌した。1N塩酸200mLを加え、1時間攪拌した後、水層を除去した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエンで洗浄し、14.8gの固体を得た。FD-MSの分析により、該固体を3,5-ジフェニルフェニルボロン酸と同定した。 アルゴン雰囲気下、4-ブロモヨードベンゼン16.1g、3,5-ジフェニルフェニルボロン酸14.8g、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)1.3gにトルエン300mL、2M濃度の炭酸ナトリウム水溶液80mLを加え、10時間還流させながら加熱した。 反応終了後、直ちにろ過した後、水層を除去した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、12.5gの白色結晶を得た。FD-MSの分析により、該白色結晶を中間体1と同定した。 [0097]<合成例2(中間体2の合成)> アルゴン気流下、2-ブロモ-9,9-ジメチルフルオレン55gにヨウ素23g、過ヨウ素酸2水和物9.4g、水42mL、酢酸360mL及び硫酸11mLを加え、65℃で30分撹拌した後、90℃で6時間反応させた。反応物を氷水に注入し、ろ過した。水で洗浄後、メタノールで洗浄することにより、61gの白色粉末を得た。FD-MSの分析により、該白色粉末を中間体2と同定した。 [0098]<合成例3(中間体3の合成)> アルゴン雰囲気下、4-ヨードブロモベンゼン28.3g、ジベンゾフラン-4-ボロン酸22.3g及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム2.31gにトルエン300mL及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液150mLを加え、10時間還流させながら加熱した。 反応終了後、直ちにろ過した後、水層を除去した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、26.2gの白色結晶を得た。FD-MSの分析により、該白色結晶を中間体3と同定した。 [0099]<合成例4(中間体4の合成)> 窒素雰囲気下、ジベンゾフラン150gに酢酸1Lを加え、加熱溶解させた。臭素188gを時々水冷しながら滴下した後、空冷下に20時間撹拌した。析出した結晶を濾別し、酢酸、水で順次洗浄し、減圧下乾燥させた。得られた結晶を、減圧蒸留にて精製した後、メタノールで数回再結晶を繰り返し、66.8gの固体を得た。FD-MSの分析により、該固体を中間体4と同定した。 ・・・ [0101]<合成例6(中間体6の合成)> 合成例3において、ジベンゾフラン-4-ボロン酸の代わりに中間体5を22.3g用いた以外は同様にして反応を行ったところ、23.1gの白色粉末を得た。FD-MSの分析により、該白色粉末を中間体6と同定した。 ・・・ [0106]<合成例11(中間体11の合成)> アルゴン雰囲気下、中間体2を40.0g、フェニルボロン酸12.8g及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム2.31gに、トルエン300mL及び2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液150mLを加え、10時間還流させながら加熱した。 反応終了後、直ちにろ過した後、水層を除去した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、19.7gの白色結晶を得た。FD-MSの分析により、該白色結晶を中間体11と同定した。 ・・・ [0108]<合成例13(中間体13の合成)> アルゴン気流下、アセトアミド5.9g、中間体3を32.3g、ヨウ化銅2.70g、炭酸カリウム40.8g、N,N’-ジメチルエチレンジアミン6.3g、及びキシレン300mLを入れ、175℃にて19時間反応させた。さらに中間体1を38.5g入れ、175℃にて19時間反応させた。 冷却後、水を加えてろ過し、残渣をアセトン、メタノール、水で3回洗浄し、28.4gの中間体13のアセトアミド体を得た。 中間体13のアセトアミド体28.4g、水酸化カリウム26.3g、水25mL及びキシレン40mLを入れて175℃にて5時間反応させた。 冷却後、水を加えてろ過し、アセトン、メタノール、水で3回洗浄し、ショートカラム(展開溶媒:トルエン)で精製し、得られた個体をn-ヘキサンで洗浄して、減圧乾燥したところ、16.6gの白色固体を得た。FD-MSの分析により、該白色固体を中間体13と同定した。 [0109]<合成例14(中間体14の合成)> 合成例13において、中間体3の代わりに中間体6を32.3g用いた以外は同様に反応を行ったところ、15.2gの白色粉末を得た。FD-MSの分析により、該白色粉末を中間体14と同定した。 ・・・ [0114]<合成例19(中間体19の合成)> 合成例4において、ジベンゾフランの代わりにジベンゾチオフェンを164g用いた以外は同様に反応を行ったところ、70gの白色粉末を得た。FD-MSの分析により、該白色粉末を中間体19と同定した。」 (甲1e)「[0119]下記合成実施例1?32において製造した本発明の芳香族アミン誘導体の構造は以下の通りである。 [0120][化44] [0121][化45] [0122][化46] [0123]<合成実施例1(芳香族アミン誘導体(H1)の製造)> アルゴン気流下、中間体13を5.6g、中間体3を3.2g、t-ブトキシナトリウム1.3g(広島和光株式会社製)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム46mg(アルドリッチ社製)、トリ-t-ブチルホスフィン21mg及び脱水トルエン50mLを入れ、80℃にて8時間反応させた。 冷却後、水500mLを加え、混合物をセライト濾過し、濾液をトルエンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をカラム精製し、トルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥したところ、5.6gの淡黄色粉末を得た。FD-MSの分析により、該淡黄色粉末を芳香族アミン誘導体(H1)と同定した。 ・・・ [0132]<合成実施例10(芳香族アミン誘導体(H10)の製造)> 合成実施例1において、中間体3の代わりに中間体11を3.5g用いた以外は同様に反応を行ったところ、6.0gの淡黄色粉末を得た。FD-MSの分析により、該淡黄色粉末を芳香族アミン誘導体(H10)と同定した。 [0133]<合成実施例11(芳香族アミン誘導体(H11)の製造)> 合成実施例1において、中間体13の代わりに中間体14を5.6g用い、中間体3の代わりに中間体11を3.5g用いた以外は同様に反応を行ったところ、5.7gの淡黄色粉末を得た。FD-MSの分析により、該淡黄色粉末を芳香族アミン誘導体(H11)と同定した。」 (甲1f)「[0155][実施例1(有機EL素子の製造)] 25mm×75mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。 洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして下記芳香族第三級アミン誘導体(H232)を蒸着し、膜厚60nmのH232膜を正孔注入層として成膜した。このH232膜上に、正孔輸送材料として前記合成実施例1で得た芳香族アミン誘導体(H1)を蒸着し、膜厚20nmの正孔輸送層を成膜した。さらに下記化合物EM1を蒸着し、膜厚40nmの発光層を成膜した。同時に発光分子として、下記のスチリルアミン誘導体(D1)を、EM1とD1の重量比(EM1:D1)が40:2になるように蒸着した。 この膜上に、下記有機金属錯体(Alq)を膜厚10nmとなるよう成膜した。この層は、電子注入層として機能する。この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し有機EL素子を形成した。 得られた有機EL素子の発光色を観察し、さらに、初期輝度5000cd/m^(2)、室温及びDC定電流駆動での発光効率、駆動電圧及び発光の半減寿命を測定した結果を表1に示す。 ・・・ [0170]表1より、本発明の芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子は、公知の芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子に比べ、低駆動電圧で高発光効率を得ることができ、さらに素子寿命が数倍も延びていることがわかる。」 (甲1g)「[0171]本発明の芳香族アミン誘導体を有機EL素子用材料(特に正孔輸送材料)として利用すると、発光効率が高く、且つ長寿命の有機EL素子であって、低電圧化された有機EL素子が得られる。このため、本発明の有機EL素子は、壁掛けテレビのフラットパネルディスプレイ等の平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト又は計器類等の光源、表示板、標識灯等に利用できる。 また、本発明の芳香族アミン誘導体は、有機EL素子だけでなく、電子写真感光体、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の分野においても有用である。」 (甲1h)「[請求項1]下記式(I)で表される芳香族アミン誘導体。 ・・・ [請求項9]陽極と陰極との間に少なくとも1つの有機薄膜層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、請求項1?8のいずれかに記載の芳香族アミン誘導体を含有する有機薄膜層を少なくとも1層以上有することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。」 (2)外国語特許出願3 本件特許の出願に係る優先日前である平成24年7月23日の優先権主張を伴うPCT/EP2013/001889であって、その優先権主張の基礎とされた書面に記載され、国際公開第2014/015935号により出願公開されたものとみなされた外国語特許出願3には、次のように記載されている。 なお、外国語特許出願3の記載事項は、対応した特表2015-530364号公報(甲第3号証。以下、「甲3」という。)の記載で示す。 (甲3a)「【請求項1】 一般式(1)の化合物; 【化1】 ・・・ 【請求項20】 請求項1?12何れか1項記載の少なくとも一つの化合物または請求項17記載の少なくとも一つのポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーまたは請求項18記載の少なくとも一つの組成物を含む電子素子。 【請求項21】 有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)から選ばれることを特徴とする、請求項20記載の電子素子。 【請求項22】 有機エレクトロルミッセンス素子、特に、有機発光ダイオード(OLED)から選ばれ、請求項1?12何れか1項記載の化合物または請求項17記載のポリマー、オリゴマーもしくはデンドリマーまたは請求項18記載の組成物が、一以上の以下の機能で使用されることを特徴とする、請求項20または21記載の電子素子; -正孔輸送層または正孔注入層中で正孔輸送材料として、 -発光層中でのマトリックス材料として -電子ブロック材料として -励起子電子ブロック材料として。」 (甲3b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、新規な有機化合物と、その化合物の電子素子での使用と、少なくとも一つのその化合物を含む電子素子に関する。本発明は、さらに、その化合物の製造方法と少なくとも一つのその化合物を含む組成物と調合物に関する。 ・・・ 【0003】 本発明にしたがうと、用語電子素子は、特に、有機集積回路(OIC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機発光トランジスタ(OLET)、有機太陽電池(OSC)、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子(OFQD)、有機発光電子化学電池(OLEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)の意味で使用される。 ・・・ 【0014】 したがって、本発明は、たとえば、蛍光もしくは燐光OLED等のエレクトロルミッセンス素子での使用に適し、特に、正孔輸送もしくは励起子ブロック層中で正孔輸送材料および/または正孔注入材料として、または発光層中でマトリックス材料として使用することができるエレクトロルミッセンス素子と化合物を提供する目的を基礎としている。 【0015】 本発明の部分として、以下に示される式(1)の化合物が、上記電子素子、特に、エレクトロルミッセンス素子での使用のために極めて適していることが驚くべきことに見出された。」 (甲3c)「【0087】 本発明による化合物の合成は、当業者に知られたプロセスにより、実施することができる。調製は、たとえば、ハロゲン化、ブッフバルトカップリンおよびスズキカップリングにより実施することができる。 【0088】 以下の反応スキームは、本発明の化合物(1)の調製のための好ましい合成経路を示す。本発明の化合物の合成のために、フルオレン化合物Aは、式Ar^(1)-NH-Ar^(2)のアミンBとブッフバルトカップリンで反応する。 【化21】 【0089】 式中、上記定義が使用される記号と添え字に適用され、ここで、 X^(a)_(0)、X^(b)_(0)、X^(c)_(0)は、出現毎に同一であるか異なり、R^(3)であり、および X^(a)_(1)、X^(b)_(1)、X^(c)_(1)は、-B’-Yであり、Yは、脱離基、たとえば、ハロゲンである。 【0090】 本発明の化合物の調製のための別の好ましい合成経路は、以下の反応スキームに描かれる。合成経路は、二種のカップリング反応を含む:まず、フルオレン化合物Aは、第1のブッフバルトカップリングで式Ar^(1)-NH_(2)のアミンBと反応する。最後に第2のブッフバルトカップリングが、化合物D、たとえば、ブロモアリール化合物と実施される。 【化22】 【0091】 式中、Yは、また、脱離基、たとえば、ハロゲンであり、 およびここで、 XX^(a)_(0)、XX^(b)_(0)、XX^(c)_(0)は、出現毎に同一であるか異なり、R^(3)であり、および XX^(a)_(1)、XX^(b)_(1)、XX^(c)_(1)は、-B’-NH-Ar^(1)である。 ・・・ 【0096】 ・・・本発明の化合物の合成に使用される出発化合物A、B、C、D、EおよびFは、当業者になじみである。さらに、幾つかの明確な合成プロセスが、実施例において詳細に説明される。 【0097】 一般式(1)の化合物の調製のための好ましいカップリング反応は、ブッフバルトカップリングである。」 (甲3d)「【0098】 本発明の好ましい化合物が、以下の表の例により示される。 ・・・ 【化25-3】 ・・・ 【化25-5】 」 (甲3e)「【0142】 本発明にしたがって、一以上の一般式(1)の化合物を含む電子素子は、照明用途の光源として、医療および/または美容用途(たとえば、光治療)の光源として、表示装置において使用することができる。 【0143】 一般式(1)の化合物を含む素子を、非常に多用途で使用することができる。よって、たとえば1以上の一般式(1)の化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子を、テレビジョン、モバイル電話機、コンピュータ、カメラ用の画面で使用することができる。しかしながら、素子を照明用途にも使用することができる。さらに、たとえば、OLEDまたはOLECにおいて、一般式(1)の少なくとも1つの化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子を、医学もしくは美容における光線療法に利用できる。よって、多数の病気(乾癬、アトピー性皮膚炎、炎症、にきび、皮膚癌等)もしくは皮膚の皺、皮膚の発赤、皮膚の老化の予防または低減の処置をすることができる。さらに、飲料、食物又は食品を新鮮に保つため、または装置(例えば医療機器)を滅菌するために、発光素子を利用することができる。」 (甲3f)「【0155】 例1 化合物ビスビフェニル-4-イル-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-イル)アミン(1-1)と化合物(1-2)?(1-12)の合成 【化28】 【0156】 4-ブロモ-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン 37g(152ミリモル)の2,2’-ジブロモビフェニルを、加熱により乾燥させた、フラスコ中で、300mlの無水THF中に溶解させる。反応混合物を-78℃まで冷却する。ヘキサン(119ミリモル)中、75mlのn-BuLiの15%溶液をこの温度でゆっくりと滴下する(期間:約1時間)。バッチをさらに1時間、-70℃で撹拌する。21.8gのベンゾフェノン(119ミリモル)をその後、100mlのTHF中に溶解させ、-70℃で滴下する。添加が終わると、反応混合物を室温までゆっくりと温め、NH_(4)Clを使用して、さまし、その後、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。510mlの酢酸を蒸発させた溶液へ慎重に添加し、100mlの発煙HClをその後添加する。バッチを75℃まで加熱し、この温度で4時間維持する。白色の固形物をこの期間に沈殿させる。次いで、バッチを室温まで冷却し、沈殿した固形物を吸引濾過し、メタノールでゆすぐ。残留物を真空において40℃で乾燥させる。収率は33.2g(83ミリモル)(理論値の70%)である。 【0157】 以下の臭素化化合物を同様に調製する: ・・・ 【0158】 ビスビフェニル-4-イル-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-イル)アミン(1-1) 17gのビスビフェニル-4-イルアミン(53ミリモル)と、23.1gの4-ブロモ-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン(58ミリモル)とを500mlのトルエン中に溶解させる:溶液を脱気し、N_(2)で飽和させる。5.3ml(5.3ミリモル)の1M トリ-tert-ブチルホスフィン溶液と、0.6g(2.65ミリモル)の酢酸パラジウム(II)を次いで添加する。12.7gのナトリウムtert-ブトキシド(132.23ミリモル)をその後、添加する。反応混合物を保護雰囲気下で3時間、沸騰させて加熱する。その後、混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で3度洗浄し、Na_(2)SO_(4)により乾燥させ、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。粗生成物をシリカゲルを通してトルエンと共に濾過した後、残された残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空において昇華させる。純度は99.9%である。収率は29g(理論値の87%)である。 【0159】 以下の化合物(1-2)?・・・を同様に調製する。 【化30-1】 【化30-2】 」 (甲3g)「【0202】 例10 化合物の特性決定 ・・・ 【0203】 ・・・使用する基板は、厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板である。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/随意に正孔注入層(HIL1)/正孔輸送層(HTL)/正孔注入層(HIL2)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/随意に電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。・・・ ・・・ 【0206】 OLEDでの正孔輸送材料としての本発明による化合物の使用 特に、本発明による化合物は、OLED中で、HIL、HTLまたはEBLとして、適している。それらは、単層でのみならず、HIL、HTL、EBLとしての混合成分として、またはEML内で適している。 【0207】 NPB参照成分(V1、V8)と比べると、本発明による化合物を含む試料は、一重項青色と三重項緑色との両者において、より高い効率に加えて、非常に改善された寿命をも示す。 【0208】 参照材料HTMV1(V2、V9)と比べると、本発明(E1・・・)による化合物(1-1)は、青色および緑色において、非常に良好な寿命を有する。 【0209】 参照材料HTMV2-HTMV6(V3-V7、V9・・・)と比べると、本発明による材料(1-1)、(1-4)、(1-7)、(5-1)、(4-1)、(1-12)・・・は、青色および/または緑色において、より良好な寿命を示す。 【0210】 蛍光および燐光OLEDでの正孔輸送材料としての本発明による化合物の使用 特に、本発明による化合物は、OLED中で、HIL、HTLまたはEBLとして、適している。それらは、単層でのみならず、HIL、HTL、EBLとしての混合成分として、またはEML内で適している。 【0211】 NPB参照成分(V1)と比べると、本発明による化合物を含む全ての試料は、一重項青色と三重項緑色との両者において、より高い効率と、非常に改善された寿命との両者をも示す。」 (3)外国語特許出願4 本件特許の出願に係る優先日前である平成24年7月23日の優先権主張を伴うPCT/EP2013/001891であって、その優先権主張の基礎とされた書面に記載され、国際公開第2014/015937号により出願公開されたものとみなされた外国語特許出願4には、次のように記載されている。 なお、外国語特許出願4の記載事項は、対応した特表2015-529970号公報(甲第4号証。以下、「甲4」という。)の記載で示す。 (甲4a)「【請求項1】 少なくとも一つの一般式(1)の化合物を含むエレクトロルミッセンス素子; 【化1】 ・・・ 【請求項10】 素子が、有機発光トランジスタ(OLET)、有機電場消光素子(OFQD)、有機発光電子化学電池(OLEC、LEC、LEEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機発光ダイオード(OLED)、好ましくは、OLEDであることを特徴とする、請求項1?9何れか1項記載の素子。 【請求項11】 少なくとも一つの式(1)?(6)の化合物が、素子中で以下の機能で以下の層で使用されることを特徴とする、請求項1?10何れか1項記載の素子: ・正孔輸送もしくは正孔注入層中で正孔輸送材料として、 ・励起子ブロック材料として、 ・電子ブロック材料として、 ・発光層中でマトリックス材料として、 ・発光層中でエミッターとして。」 (甲4b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、新規な有機化合物と、化合物のエレクトロルミネッセンス素子での使用と少なくとも一つの化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子に関する。本発明は、さらに、その化合物の製造方法と少なくとも一つのその化合物を含む組成物と調合物に関する。 ・・・ 【0003】 本発明にしたがうと、用語エレクトロルミネッセンス素子は、とりわけ、有機発光トランジスタ(OLET)、有機電場消光素子(OFQD)、有機発光電子化学電池(OLEC、LEC、LEEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機発光ダイオード(OLED)の意味で使用される。 ・・・ 【0012】 したがって、本発明は、たとえば、蛍光もしくは燐光OLED等のエレクトロルミッセンス素子での使用に適し、特に、正孔輸送もしくは励起子ブロック層中で正孔注入材料および/または正孔輸送材料として、または発光層中でマトリックス材料として使用することができるエレクトロルミッセンス素子と化合物を提供する目的を基礎としている。 【0013】 本発明を通じて、以下に示される式(1)の化合物が、エレクトロルミッセンス素子での上記用途のために極めて適していることが驚くべきことに見出された。」 (甲4c)「【0081】 化合物の合成は、先行技術から当業者に知られたプロセスにより、実施することができる。調製は、たとえば、ハロゲン化、ブッフバルトカップリンおよびスズキカップリングにより実施することができる。」 (甲4d)「【0088】 エレクトロルミッセンス素子の好ましい化合物が、以下の表の例により示される。 ・・・ 【化23-2】 【化23-3】 ・・・ 【化23-5】 」 (甲4e)「【0145】 本発明にしたがって、一以上の一般式(1)?(255)の化合物を含む電子素子は、照明用途の光源として、医療および/または美容用途(たとえば、光治療)の光源として、表示装置において使用することができる。 【0146】 一般式(1)?(255)の化合物を含む素子を、非常に多用途で使用することができる。よって、たとえば1以上の一般式(1)?(255)の化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子を、テレビジョン、モバイル電話機、コンピュータ、カメラ用の画面で使用することができる。しかしながら、素子を照明応用にも使用することができる。さらに、たとえば、OLEDまたはOLECにおいて、一般式(1)?(255)の少なくとも1つの化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子を、医学もしくは美容における光線療法に利用できる。よって、多数の病気(乾癬、アトピー性皮膚炎、炎症、にきび、皮膚癌等)もしくは皮膚の皺、皮膚の発赤、皮膚の老化の予防または低減の処置をすることができる。さらに、飲料、食物又は食品を新鮮に保つため、または装置(例えば医療機器)を滅菌するために、発光素子を利用することができる。」 (甲4f)「【0158】 例1 化合物ビフェニル-2-イルビフェニル-4-イル-(9-メチル-9-p-トリル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(1-1)と、化合物(1-2)?(1-11)の合成 【化32】 【0159】 2-ブロモ-9-メチル-9-p-トリル-9H-フルオレン 40g(154ミリモル)の2-ブロモ-9H-フルオレンを、加熱により乾燥させたフラスコ中の500mlの無水THF中に溶解させる。溶液をN_(2)で飽和し、15.0g(170ミリモル)の塩化セリウム(III)を添加する。透明な溶液を-10℃まで冷却し、次いで、121ml(170ミリモル)の1.4Mメチルマグネシウムブロミド溶液を添加する。反応混合物を室温までゆっくりと温め、次いで、NH_(4)Cl(500ml)を使用してクエンチする。混合物をその後、酢酸エチルと水との間で分画し、有機相を水で3度洗浄し、Na_(2)SO_(4)で乾燥させ、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。60mlのトルエンを、蒸発させた溶液に滴下する。バッチを50℃まで加熱し、27.2mlのトリフルオロメタンスルホン酸(308ミリモル)をその後、滴下する。1時間後、反応混合物を室温まで冷やし、1lの水へ流し込む。混合物をトルエンと水との間で分画し、有機相を水で3度洗浄し、Na_(2)SO_(4)で乾燥させ、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。(ヘプタン:酢酸エチル、1:1)と共に、シリカゲルを通して粗生成物を濾過すると、32g(理論値の60%)を得る。 【0160】 以下の臭素化化合物を同じように調製する: ・・・ 【0161】 ビフェニル-2-イルビフェニル-4-イル-(9-メチル-9-p-トリル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(1-1) 27.6gのビフェニル-2-イルビフェニル-4-イルアミン(85.9ミリモル)と30gの2-ブロモフルオレン(85.9ミリモル)とを500mlのトルエン中で溶解させ、溶液を脱気し、N_(2)で飽和させる。4.3ml(4.3ミリモル)の1Mトリ-tert-ブチル-ホスフィン溶液と、0.48g(2.15ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを次いで添加する。20.6gのナトリウムtert-ブトキシド(214.7ミリモル)をその後、添加する。反応混合物を保護雰囲気下で、5時間、沸騰させて加熱する。混合物をその後、トルエンと水との間で分画し、有機相を水で3度洗浄し、Na_(2)SO_(4)で乾燥させ、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。トルエンと共に、シリカゲルを通して粗生成物を濾過した後、残留する残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空中で昇華させ、純度は99.9%である。収率は39.5g(理論値の78%)である。 【0162】 化合物(1-2)?・・・を同じように調製する: 【化34-1】 【化34-2】 【化34-3】 ・・・ 【0163】 例2 化合物ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-(9-メチル-9-フェニル-9H-フルオレン-4-イル)アミン(2-1)と、化合物(2-2)?・・・の合成 【化35】 【0164】 4-ブロモ-9-メチル-9-フェニル-9H-フルオレン 30g(94ミリモル)の2,2’-ジブロモビフェニルを、加熱により乾燥させたフラスコ中の200mlの無水THF中に溶解させる。反応混合物を-78℃まで冷却する。ヘキサン(94ミリモル)中の37.7mlのn-BuLiの2.5M溶液を、この温度でゆっくりと滴下する(期間:約1時間)。バッチをさらに1時間、-70℃で撹拌する。11.1mlのアセトフェノン(94ミリモル)をその後、100mlのTHF中に溶解させ、-70℃で滴下する。滴下が終わったとき、反応混合物を室温までゆっくりと温め、NH_(4)Clを使用してクエンチし、その後、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。300mlの酢酸を、蒸発させた溶液に慎重に添加し、50mlの発煙HCLをその後、添加する。バッチを75℃まで加熱し、その状態に6時間維持する。白色の固形物がこの期間に沈殿する。次いで、バッチを室温まで冷やし、沈殿した固形物を吸引濾過し、メタノールで濯ぐ。残留物を真空で40℃で乾燥させる。収率は25.3g(75ミリモル)(理論値の80%)である。 【0165】 以下の臭素化化合物を同じように調製する: ・・・ 【0166】 ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-(9-メチル-9-フェニル-9H-フルオレン-4-イル)アミン(2-1) 17.8gのビフェニル-2-イルビフェニル-4-イルアミン(49.4ミリモル)と、18.2gの2.ブロモ-(9-メチル-9-フェニル-9H-フルオレン(54.3モル)を400mlのトルエン中で溶解させる:溶液を脱気し、N_(2)で飽和させる。2.96ml(2.96ミリモル)のトリ-tert-ブチルホスフィンと、0.33g(1.48ミリモル)の酢酸パラジウム(II)とを次いで添加し、9.8gのナトリウムtert-ブトキシド(98.8ミリモル)をその後、添加する。反応混合物を保護雰囲気下で、3時間、沸騰させて加熱する。混合物をその後、トルエンと水との間で分画し、有機相を水で3度洗浄し、Na_(2)SO_(4)で乾燥させ、ロータリーエバポレーター中で蒸発させる。シリカゲルを通して、トルエンと共に粗生成物を濾過した後、残留する残留物をヘプタン/トルエンから再結晶化させ、最後に、高真空中で昇華させ、純度は99.9%である。収率は24.3g(理論値の80%)である。 【0167】 化合物(2-2)?・・・を同じように調製する: 【化37-1】 【化37-2】 」 (甲4g)「【0175】 例4 化合物の特性決定 ・・・ 【0176】 ・・・使用する基板は、厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板である。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔注入層(HIL1)/正孔輸送層(HTL)/正孔注入層(HIL2)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。・・・ ・・・ 【0179】 蛍光OLEDでの正孔輸送材料としての、本発明による化合物の使用 特に、本発明による化合物は、OLED中で、HIL、HTLまたはEBLとして、適している。それらは、単層としてのみならず、HIL、HTL、EBLとしての混合成分として、またはEML内で適している。 【0180】 NPB参照素子(V1)と比べると、本発明による化合物を含む試料は、一重項青色において、より高い効率と非常に改善された寿命との両者を示す。 【0181】 参照材料HTMV1(V2)と比べると、本発明(E1・・・)による化合物(2-7)、(2-4)、(2-5)・・・は、より良好な寿命を有する。」 (4)外国語特許出願5 本件特許の出願に係る優先日前である平成24年12月31日の優先権主張を伴うPCT/KR2013/006587であって、その優先権主張の基礎とされた書面に記載され、国際公開第2014/104514号により出願公開されたものとみなされた外国語特許出願5には、次のように記載されている。 なお、外国語特許出願5の記載事項は、対応した特表2016-509368号公報(甲第5号証。以下、「甲5」という。)の記載で示す。 (甲5a)「【請求項11】 陽極、陰極、および前記陽極と陰極との間に形成された少なくとも一層以上の有機薄膜層を含み、 前記有機薄膜層は、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層またはこれらの組み合わせを含み、 前記有機薄膜層は、発光層および複数の正孔輸送層を含み、 前記複数の正孔輸送層のうち、前記発光層に隣接した正孔輸送層は、下記の化学式11で表される化合物を含み、前記発光層に隣接していない正孔輸送層のうちいずれか一つは、下記の化学式B-1で表される化合物を含むものである有機光電子素子: 【化9】 ・・・ 【請求項20】 請求項11に記載の有機光電子素子を含む表示装置。」 (甲5b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、有機光電子素子およびこれを含む表示装置に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明の目的は、発光、または正孔注入および輸送の役割を果たすことができ、適切なドーパントと共に発光ホストとしての役割を果たすことができる有機光電子素子用化合物を提供する。 【0011】 また、本発明の他の目的は、前記有機光電子素子用化合物を正孔層に適切に組み合わせて特性に優れた有機光電子素子を提供することにある。」 (甲5c)「【0149】 より具体的な例を挙げると、前記化学式11で表される化合物は、下記の化学式F-1?F-182、G-1?G-182、H-1?H-203またはI-1?I-56のうちのいずれか一つで表され得るが、これに制限されない。 【0150】 【化62】 【0151】 【化63】 【0152】 【化64】 【0153】 【化65】 ・・・ 【0157】 【化69】 【0158】 【化70】 【0159】 【化71】 【0160】 【化72】 【0161】 【化73】 」 (甲5d)「【0398】 実施例1:化合物F-94で表される化合物の製造 【0399】 【化149】 【0400】 丸底フラスコに中間体M-1 10g(30.9mmol)とビス(4-ビフェニル)アミン9.9g(30.9mmol)、ソジウムt-ブトキシド4.5g(46.35mmol)を入れてトルエン155mlを加えて溶解させた。ここにPd(dba)2 0.178g(0.31mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン0.125g(0.62mmol)を順次に入れた後、窒素雰囲気下で4時間還流攪拌させる。反応終了後、トルエンと蒸留水で抽出後、有機層をマグネシウムスルフェートで乾燥および濾過し、濾過液を減圧濃縮した。生成物をn-ヘキサン/ジクロロメタン(8:2体積比)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物であるF-94を16g(収率92%)を収得した。 【0401】 LC-Mass(理論値:563.22g/mol、測定値:M+=563.28g/mol)。 【0402】 実施例2:化合物G-94で表される化合物の製造 【0403】 【化150】 【0404】 丸底フラスコに中間体M-2 10.5g(30.9mmol)とビス(4-ビフェニル)アミン9.9g(30.9mmol)、ソジウムt-ブトキシド4.5g(46.35mmol)を入れてトルエン155mlを加えて溶解させた。ここにPd(dba)2 0.178g(0.31mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン0.125g(0.62mmol)を順次に入れた後、窒素雰囲気下で4時間還流攪拌させる。反応終了後、トルエンと蒸留水で抽出後、有機層をマグネシウムスルフェートで乾燥および濾過し、濾過液を減圧濃縮した。生成物をn-ヘキサン/ジクロロメタン(8:2体積比)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物であるG-94を16.8g(収率94%)を収得した。 【0405】 LC-Mass(理論値:579.20g/mol、測定値:M+=579.32g/mol)。 【0406】 実施例3:化合物F-99で表される化合物の製造 【0407】 【化151】 【0408】 丸底フラスコに中間体M-1 10g(30.9mmol)とビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-アミン11.2g(30.9mmol)、ソジウムt-ブトキシド4.5g(46.35mmol)を入れてトルエン155mlを加えて溶解させた。ここにPd(dba)2 0.178g(0.31mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン0.125g(0.62mmol)を順次に入れた後、窒素雰囲気下で4時間還流攪拌させる。反応終了後、トルエンと蒸留水で抽出後、有機層をマグネシウムスルフェートで乾燥および濾過し、濾過液を減圧濃縮した。生成物をn-ヘキサン/ジクロロメタン(8:2体積比)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物であるF-99を17.2g(収率92%)を収得した。 【0409】 LC-Mass(理論値:603.26g/mol、測定値:M+=603.31g/mol)。 【0410】 実施例4:化合物G-99で表される化合物の製造 【0411】 【化152】 【0412】 丸底フラスコに中間体M-2 10.5g(30.9mmol)とビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-アミン11.2g(30.9mmol)、ソジウムt-ブトキシド4.5g(46.35mmol)を入れてトルエン155mlを加えて溶解させた。ここにPd(dba)2 0.178g(0.31mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン0.125g(0.62mmol)を順次に入れた後、窒素雰囲気下で4時間還流攪拌させる。反応終了後、トルエンと蒸留水で抽出後、有機層をマグネシウムスルフェートで乾燥および濾過し、濾過液を減圧濃縮した。生成物をn-ヘキサン/ジクロロメタン(8:2体積比)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して目的化合物であるG-99を17.6g(収率92%)を収得した。 【0413】 LC-Mass(理論値:619.23g/mol、測定値:M+=619.34g/mol)。」 (甲5e)「【0558】 (有機発光素子の製造) 緑色有機発光素子の製造 実施例40 ITO(Indium tin oxide)が1500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水で超音波洗浄した。蒸留水洗浄が終わるとイソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄し乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機で基板を移送した。このように準備されたITO透明電極を陽極として用いてITO基板上部にHT-1を真空蒸着して700Åの厚さの正孔注入および輸送層を形成した。次に、実施例4で製造された化合物を用いて真空蒸着で100Åの厚さの補助正孔輸送層を形成した。前記補助正孔輸送層上部に(4,4’-N,N’-ジカルバゾール)ビフェニル[CBP]をホストとして用い、ドーパントとしてトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)[Ir(ppy)3]を5重量%にドーピングして真空蒸着で300Åの厚さの発光層を形成した。 【0559】 その後、前記発光層上部にビフェノキシ-ビス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム[Balq]を真空蒸着して50Åの厚さの正孔阻止層を形成した。前記正孔阻止層上部にトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム[Alq3]を真空蒸着して250Åの厚さの電子輸送層を形成し、前記電子輸送層上部に10ÅのLiFと1000ÅのAlを順次に真空蒸着して陰極を形成することによって有機発光素子を製造した。 【0560】 前記有機発光素子は5層の有機薄膜層を有する構造からなっており、具体的にAl(1000Å)/LiF(10Å)/Alq3(250Å)/Balq(50Å)/EML[CBP:Ir(ppy)3=95:5](300Å)/補助HTL(100Å)/HT-1(700Å)/ITO(1500Å)の構造で製作した。 ・・・ 【0571】 赤色有機発光素子の製造 実施例48 ITO(Indium tin oxide)が1500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を蒸留水で超音波洗浄した。蒸留水洗浄が終わるとイソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄し乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機で基板を移送した。このように準備されたITO透明電極を陽極として用いてITO基板上部に4,4’-bis[N-[4-{N,N-bis(3-methylphenyl)amino}-phenyl]-N-phenylamino]biphenyl[DNTPD]を真空蒸着して600Åの厚さの正孔注入層を形成した。次に、HT-1を真空蒸着で200Åの厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上部に実施例32で製造された化合物を用いて真空蒸着で100Åの厚さの補助正孔輸送層を形成した。前記補助正孔輸送層上部に(4,4’-N,N’-ジカルバゾール)ビフェニル[CBP]をホストとして用い、ドーパントとしてビス(2-フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)[Ir(pq)2acac]を7重量%にドーピングして真空蒸着で300Åの厚さの発光層を形成した。 【0572】 その後、前記発光層上部にビフェノキシ-ビス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム[Balq]を真空蒸着して50Åの厚さの正孔阻止層を形成した。前記正孔阻止層上部にトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム[Alq3]を真空蒸着して250Åの厚さの電子輸送層を形成し、前記電子輸送層上部に10ÅのLiFと1000ÅのAlを順次に真空蒸着して陰極を形成することによって有機発光素子を製造した。 【0573】 前記有機発光素子は、6層の有機薄膜層を有する構造からなっており、具体的にAl(1000Å)/LiF(10Å)/Alq3(250Å)/Balq(50Å)/EML[CBP:Ir(pq)2acac=93:7](300Å)/補助HTL(100Å)/HT-1(700Å)/DNTPD(600Å)/ITO(1500Å)の構造で製作した。 ・・・ 【0578】 実施例53 前記実施例48で、実施例32の代わりに実施例3を用いた点を除いては同様な方法で有機発光素子を製造した。 ・・・ 【0593】 (有機発光素子の性能測定) 前記実施例40?56と比較例1?6で製造されたそれぞれの有機発光素子に対して電圧に応じた電流密度の変化、輝度の変化および発光効率を測定した。具体的な測定方法は、次のとおりであり、その結果は下記表2および表3に示した ・・・ 【0598】 (駆動電圧および発光効率1,000nitで測定) 前記表2の結果によれば、緑色燐光有機発光素子で補助正孔輸送層を使用しない比較例1または比較例3に比べて、本発明の化合物を補助正孔輸送層として使用した前記実施例40?47は、有機発光素子の発光効率と寿命を向上させることが分かる。特に、比較例3に比べて本発明の実施例は、発光効率が最小18%から最大30%以上大幅に上昇することが分かり、従来に知らされているTCTAを補助正孔輸送層として使用した比較例2に比べて本発明の実施例は、発光素子寿命が最小20%から最大50%以上上昇して実際の素子の商業化の側面から、素子の寿命は製品化の最も大きい問題の一つであることを考慮すると、前記実施例の結果は素子を製品化して商業化するに十分であると判断される。 ・・・ 【0600】 (駆動電圧および発光効率800nitで測定) 前記表3の結果によれば、赤色燐光有機発光素子で補助正孔輸送層を使用しない比較例4または比較例6に比べて、本発明の化合物を補助正孔輸送層として使用した前記実施例48?56は、有機発光素子の発光効率と寿命を向上させることが分かる。特に、比較例4に比べて本発明の実施例は、発光効率が最小10%から最大25%以上大幅に上昇することが分かり、従来に知らされているTCTAを補助正孔輸送層として使用した比較例5に比べて本発明の実施例は、発光効率が最小5%から最大20%以上上昇し、発光素子寿命が最小23%から最大38%以上上昇し、駆動電圧を下げて赤色燐光素子の全般的な主要特性を大幅に向上させることが分かる。実際の素子の商業化の側面から、素子の寿命は製品化の最も大きい問題の一つであることを考慮すると、前記実施例の結果は素子を製品化して商業化するに十分であると判断される。」 (5)日本語特許出願6 本件特許の出願に係る優先日前である平成24年8月31日の優先権主張の基礎とされた特願2012-191939号であって、その書面に記載され、国際公開第2014/034795号(甲第6号証。以下、「甲6」という。)により出願公開されたものとみなされた日本語特許出願6には、次のように記載されている。 なお、日本語特許出願6の記載事項は、甲6の記載で示す。 (甲6a)「技術分野 [0001]本発明は芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。例えば、置換もしくは無置換の9,9-ジフェニルフルオレン骨格を有する芳香族アミン誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。 ・・・ 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007]本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、低電圧駆動が可能で長寿命かつ高効率の有機EL素子及びこれを実現することができる有機EL素子用材料、例えば、正孔輸送材料を提供すること目的とする。 [0008]本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、ジ置換アミノ基が9,9-ジフェニルフルオレン骨格の2位に直接又は間接的に結合した化合物であって、該ジ置換アミノ基の少なくとも一方の基が直接又はフェニレン基を介して窒素原子に結合している化合物は正孔注入性及び正孔輸送性が良好であり、低電圧駆動が可能で長寿命かつ高効率の有機EL素子を実現することを見出した。」 (甲6b)「[0066]以下に式(1)で表される本発明の芳香族アミン誘導体の具体例を示すが、下記化合物に限定されるものではない。 ・・・ [0069] [化20] ・・・ [0077] [化28] 」 (甲6c)「[0116]中間体合成例1-1(中間体1-1の合成) アルゴン雰囲気下、4-ヨードブロモベンゼン28.3g(100.0mmol)、ジベンゾフラン-4-ボロン酸22.3g(105.0mmol)、Pd[PPh_(3)]_(4) 2.31g(2.00mmol)にトルエン150ml、ジメトキシエタン150ml、2M Na_(2)CO_(3)水溶液150ml(300.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。 反応終了後、室温に冷却し、試料を分液ロートに移しジクロロメタンにて抽出した。有機層をMgSO_(4)で乾燥後、ろ過、濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、26.2gの白色固体を得た。FD-MS分析(電界脱離質量分析)により、下記中間体1-1と同定した。(収率81%) [化38] [0117]中間体合成例1-2(中間体1-2の合成) アルゴン雰囲気下、4’-ブロモアセトアニリド24.0g(112.0mmol)、ジベンゾフラン-4-ボロン酸28.6g(135.0mmol)、Pd[PPh_(3)]_(4) 2.6g(2.24mmol)にトルエン450ml、ジメトキシエタン100ml、2M Na_(2)CO_(3)水溶液110ml(220.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。 反応終了後、室温に冷却し、析出した結晶をろ過した。得られた結晶をテトラヒドロフランに溶解させ、セライト/シリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をメタノール/ヘキサンで洗浄、乾燥し、18.0gの白色固体を得た。FD-MSの分析により、下記中間体1-2と同定した。(収率53%) [化39] [0118]中間体合成例1-3(中間体1-3の合成) 中間体1-2 18.0g(59.7mmol)にキシレン120ml、水1200ml、エタノール60mlを加え、攪拌した。水酸化カリウム20.0g(360.0mmol)を加え、10時間加熱還流攪拌した。 反応終了後、室温に冷却し、試料を分液ロートに移しトルエンにて抽出した。有機層をMgSO_(4)で乾燥後、ろ過、濃縮した。得られた残渣をキシレンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、14.7gの白色固体を得た。FD-MSの分析により、下記中間体1-3と同定した。(収率95%) [化40] ・・・ [0131]中間体合成例2-1(中間体2-1の合成) アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-9,9-ジフェニルフルオレンを19.9g(50.0mmol)、中間体1-3 13.0g(50.0mmol)、t-ブトキシナトリウム9.6g(100.0mmol)に脱水トルエン250mlを加え、撹拌した。酢酸パラジウム225mg(1.0mmol)、トリ-t-ブチルホスフィン202mg(1.0mmol)を加え、80℃にて8時間反応した。 冷却後、反応混合物をセライト/シリカゲルを通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をトルエンで再結晶し、それを濾取した後、乾燥し、23.0gの白色固体を得た。FD-MSの分析により、下記中間体2-1と同定した。(収率80%) [化53] ・・・ [0136]合成実施例1(芳香族アミン誘導体(H1)の製造) アルゴン雰囲気下、中間体1-1 3.2g(10.0mmol)、中間体2-1 5.8g(10.0mmol)、Pd_(2)(dba)_(3) 0.14g(0.15mmol)、P(tBu)_(3)HBF_(4) 0.087g(0.3mmol)、t-ブトキシナトリウム1.9g(20.0mmol)に、無水キシレン50mlを加えて8時間加熱還流した。 反応終了後、反応液を50℃に冷却し、セライト/シリカゲルを通して濾過を行い、濾液を濃縮した。得られた濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し白色固体を得た。粗生成物をトルエンにて再結晶し、3.7gの白色結晶を得た。FD-MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H1)と同定した。(収率45%) [化58] ・・・ [0139]合成実施例4(芳香族アミン誘導体(H4)の製造) 合成実施例1において、中間体1-1の代わりに4-ブロモビフェニルを2.3g用いた以外は同様に反応を行ったところ、3.6gの白色結晶を得た。FD-MSの分析により、下記芳香族アミン誘導体(H4)と同定した。(収率50%) [化61] 」 (甲6d)「[0144]実施例1-1 有機EL素子の作製 25mm×75mm×1.1mmのITO透明電極ライン付きガラス基板(ジオマティック社製)をイソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄し、さらに、30分間UV(Ultraviolet)オゾン洗浄した。 洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている面上に前記透明電極を覆うようにして下記電子受容性化合物(A)を蒸着し、膜厚5nmの膜Aを成膜した。 この膜A上に、第1正孔輸送材料として下記芳香族アミン誘導体(X1)を蒸着し、膜厚160nmの第1正孔輸送層を成膜した。第1正孔輸送層の成膜に続けて、第2正孔輸送材料として下記芳香族アミン誘導体(H1)を蒸着し、膜厚10nmの第2正孔輸送層を成膜した。 この正孔輸送層上に、ホスト化合物(BH)とドーパント化合物(BD)とを厚さ25nmで共蒸着し、発光層を成膜した。ドーパント化合物(BD)の濃度は4質量%であった。 続いて、この発光層上に、下記化合物(ET1)を厚さ20nm、続いて下記化合物(ET2)を厚さ10nm、及びLiを厚さ25nmで共蒸着し、電子輸送/注入層を成膜した。Liの濃度は4質量%であった。 さらに、金属Alを厚さ80nmに積層して陰極を形成し、有機EL素子を製造した。 ・・・ [0150]有機EL素子の発光性能評価 以上のようにして作製した有機EL素子を直流電流駆動により発光させ、輝度(L)、電流密度を測定し、測定結果から電流密度10mA/cm^(2)における電流効率(L/J)、駆動電圧(V)を求めた。さらに電流密度50mA/cm^(2)における素子寿命を求めた。ここで、80%寿命とは、定電流駆動時において、輝度が初期輝度の80%に減衰するまでの時間をいう。結果を表1に示す。 ・・・ [0152] 表1の結果から、本発明の芳香族アミン誘導体を用いることにより、低電圧で駆動しても高効率であり、かつ、長寿命の有機EL素子が得られることがわかる。」 (甲6e)「[請求項1]下記式(1)で表される芳香族アミン誘導体。 [化1] ・・・ [請求項6]陽極、陰極、及び該陽極と陰極の間に1層以上の有機薄膜層を有し、該1層以上の有機薄膜層が発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該有機薄膜層の少なくとも1層が請求項1?5のいずれかに記載の芳香族アミン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。 [請求項7]前記有機薄膜層が正孔注入層または正孔輸送層を有し、該正孔注入層または正孔輸送層が前記芳香族アミン誘導体を含有する請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。」 3 当審の判断 当審は、本件特許は、当審が通知した取消理由の理由1?4によっては取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 (1)理由1(新規性)について ア 甲1に記載された発明 (ア)甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)が記載されており、式(I)で表される、特定構造の芳香族炭化水素基と分岐状の芳香族炭化水素基を共に有する芳香族アミン誘導体を有機EL素子用材料として用いることにより、有機EL素子が低電圧化し、且つ発光効率及び素子寿命が向上することが記載されている(上記(甲1a)、(甲1b)、(甲1h))。 そして、甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体の具体例として、特定構造の芳香族炭化水素基としてフルオレニル基及びジベンゾフラニル基(又はジベンゾチオフェニル基)と、分岐状の芳香族炭化水素基としてアリール基を有する、6個の芳香族アミン誘導体(以下、「芳香族アミン誘導体A」?「芳香族アミン誘導体F」という。)の化学構造式が記載されている(順に、上記(甲1c)の[化28]の3段目左から1?3番目の化合物及び[化38]の2段目左から2?4番目の化合物)。 (イ)甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体の一般的な製造方法や、芳香族アミン誘導体A?Fの製造方法は記載されていないが、実施例に32個の式(I)で表される芳香族アミン誘導体の製造方法が記載されている。 そして、芳香族アミン誘導体(H10)又は芳香族アミン誘導体(H11)のように、芳香族アミン誘導体A?Fに類似する構造の化合物の製造方法も記載されている。 すなわち、合成実施例10において、合成実施例1と同様にして、中間体13と中間体11とから芳香族アミン誘導体(H10)を製造したこと、合成実施例11において、合成実施例1と同様にして、中間体14と中間体11とから芳香族アミン誘導体(H11)を製造したことが記載されており、合成実施例1、10及び11はいずれも、芳香族ハロゲン化物(中間体3又は中間体11)と、アミン(中間体13又は中間体14)との、パラジウム触媒、第三級ホスフィン及び塩基存在下でのクロスカップリング反応による方法が示されている(上記(甲1e))。 そして、合成例13には、中間体13を中間体1と中間体3とから製造したことが、合成例14には、合成例13と同様にして、中間体14を中間体1と中間体6から製造したことが記載されており、この方法は、アセトアミドと芳香族ハロゲン化物(中間体3又は中間体6、及び中間体1)との銅触媒を用いたクロスカップリング及び塩基存在下での脱アセチル化によるものである(上記(甲1d))。 (ウ)以上のとおり、甲1の実施例には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体を、当業者に公知の一般的な合成方法で製造することが記載されており、これら実施例の記載から、実施例以外の化合物であっても、具体的に化学構造式が示されている芳香族アミン誘導体は、化合物として製造でき、技術思想として抽出できる程度に記載されているといえる。 (エ)したがって、甲1には、次の芳香族アミン誘導体A?Fの発明(「甲1発明A」?「甲1発明F」)が記載されているといえる。 (オ)また、甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体を含有する有機EL素子の発明が記載されており(上記(甲1a)、(甲1b)、(甲1h))、合成実施例で得た芳香族アミン誘導体を正孔輸送材料として用いた有機EL素子を製造し、得られた有機EL素子の発光色、発光効率などを測定した結果も示されている(上記(甲1f))。 これらの記載から、芳香族アミン誘導体A?Fについても、有機EL素子に用い得ることが記載されているといえる。 したがって、甲1には、次の発明(「甲1発明G」)が記載されているといえる。 甲1発明G: 「甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 甲1発明A?Fは、それぞれ本件特許発明1において、一般式(G1)で表される有機化合物から除くとされるA-1?A-6で表される化合物に該当するから、一般式(G1)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明1は甲1に記載された発明ではない。 (イ)本件特許発明2について 甲1発明A?Fは、それぞれ本件特許発明2において、一般式(G2)で表される有機化合物から除くとされるA-1?A-6で表される化合物に該当するから、一般式(G2)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明2は甲1に記載された発明ではない。 (ウ)本件特許発明3について 甲1発明A?Fは、それぞれ本件特許発明3において、一般式(G3)で表される有機化合物から除くとされるA-1?A-6で表される化合物に該当するから、一般式(G3)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明3は甲1に記載された発明ではない。 (エ)本件特許発明5?8について 甲1発明Gは、甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子の発明であるが、上記(ア)?(ウ)のとおり、甲1発明A?Fの芳香族アミン誘導体は、本件特許発明1?3の有機化合物から除くとされる化合物である。 そうすると、甲1発明Gは、本件特許発明1?3のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子に関する発明である本件特許発明5と、素子に用いる化合物が異なるから、本件特許発明5は、甲1に記載された発明ではない。 本件特許発明6?8は、直接又は間接的に本件特許発明5を引用する発明であるため、同様に、甲1に記載された発明ではない。 ウ 理由1(新規性)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?3、5?8に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、本件特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (2)理由2(進歩性)について ア 甲1に記載された発明 甲1発明Gは、上記(1)ア(オ)で認定した次のとおりのものと認める。 甲1発明G: 「甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明5と甲1発明Gとを対比すると、甲1発明Gの「甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子」は、本件特許発明5の「請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子」と、「有機化合物を用いた素子」である点で共通する。 したがって、両発明は、「有機化合物を用いた素子」である点で一致し、次の点で相違点する。 相違点: 「有機化合物を用いた素子」について、本件特許発明5は、「請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子」と特定しているのに対し、甲1発明Gは、「甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子」と特定している点。 (イ)そこで、上記相違点について検討する。 甲1に、有機EL素子は自発光素子であると記載されているとおり(上記(甲1a))、甲1発明Gの「有機EL素子」は、「発光素子」と同義といえる。 しかしながら、上記(1)で検討したとおり、甲1発明A?Fのいずれかの芳香族アミン誘導体は、本件特許発明1?3のいずれか一に記載の有機化合物から除くとされる化合物である。 そして、甲1には、甲1発明A?Fに代えて、本件特許発明1?3に記載された有機化合物に該当する芳香族アミン誘導体を、有機EL素子、すなわち、発光素子に用いることについては記載も示唆もされておらず、化合物を代替する動機付けはないといえる(下記(5)イも参照)。 したがって、本件特許発明5は、甲1発明Gに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件特許発明6は、本件特許発明5の発光素子を用いた発光装置に関し、本件特許発明7又は8は、本件特許発明6の発光装置を用いた電子機器又は照明装置に関するところ、上記(イ)のとおり、本件特許発明5が、甲1発明Gに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであるから、本件特許発明6?8も、甲1発明Gに基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 理由2(進歩性)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項5?8に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえない。 (3)理由3(拡大先願その1)について ア 甲3との検討 (ア)甲3に記載された発明 a 甲3には、一般式(1)の化合物及びその化合物を含む電子素子、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)が記載されている(上記(甲3a)、(甲3b))。 そして、一般式(1)の化合物の具体例として、式(144)、式(148)及び式(167)の3個の化合物(以下、「化合物144」、「化合物148」及び「化合物167」という。)の化学構造式が記載されている(上記(甲3d))。 b 甲3には、化合物144、148及び167を製造したことは記載されていないが、一般式(1)の化合物は、当業者に知られた方法により合成できることが示されており(上記(甲3c))、例1には、化合物144、148及び167に類似する構造の化合物、例えば化合物(1-1)、(1-6)及び(1-9)などの製造方法が具体的に記載されている(上記(甲3f))。 c 以上のことから、甲3には、一般式(1)の化合物を、当業者に公知の一般的な合成方法で製造できることが記載されており、実施例で製造された化合物以外の化合物であっても、具体的に化学構造式が示されている化合物であれば製造できる程度に記載されているといえるから、化合物144、148及び167は、技術思想として抽出できる程度に記載されているといえる。 d したがって、甲3には、次の化合物144、148及び167の発明(「甲3発明A」?「甲3発明C」)が記載されているといえる。 e また、甲3には、一般式(1)の化合物を含む有機EL素子の発明が記載されており(上記(甲3a)、(甲3b))、例1などで得た化合物を正孔輸送材料として用いた有機EL素子を製造し、効率や寿命などを測定した結果も示されている(上記(甲3g))。 これらの記載から、化合物144、148及び167についても、有機EL素子に用い得ることが記載されているといえる。 したがって、甲3には、次の発明(「甲3発明D」)が記載されているといえる。 甲3発明D: 「甲3発明A?Cのいずれかの化合物を用いた有機EL素子。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明1について 甲3発明A?Cは、それぞれ本件特許発明1において、一般式(G1)で表される有機化合物から除くとされる式(144)、式(148)及び式(167)で表される化合物に該当するから、一般式(G1)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明1は甲3に記載された発明と同一ではない。 b 本件特許発明5?8について 甲3発明Dは、甲3発明A?Cのいずれかの化合物を用いた有機EL素子の発明であるが、上記(ア)のとおり、甲3発明A?Cの化合物は、本件特許発明1の有機化合物から除くとされる化合物である。 そうすると、甲3発明Dは、本件特許発明1のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子に関する発明である本件特許発明5と、素子に用いる化合物が異なるから、本件特許発明5は、甲3に記載された発明と同一ではない。 本件特許発明6?8は、直接又は間接的に本件特許発明5を引用する発明であるため、同様に、甲3に記載された発明と同一ではない。 (ウ)甲3との理由3(拡大先願その1)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、5?8に係る発明は、外国語特許出願3に記載された発明と同一ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえない。 イ 甲4との検討 (ア)甲4に記載された発明 a 甲4には、少なくとも一つの一般式(1)の化合物を含むエレクトロルミネッセンス素子(以下、「EL素子」という。)が記載されている(上記(甲4a))。 そして、一般式(1)の化合物の具体例として、例1に、化合物(1-3)を合成したことが記載され(上記(甲4f))、さらに、式(162)、式(163)、式(164)、式(174)、式(192)、式(193)及び式(197)の7個の化合物(以下、「化合物162」、「化合物163」、「化合物164」、「化合物174」、「化合物192」、「化合物193」及び「化合物197」という。)の化学構造式が記載されている(上記(甲4d))。 b 甲4には、化合物162?164、174及び193を製造したことは記載されていないが、一般式(1)の化合物は、当業者に知られた方法により合成できることが示されており(上記(甲4c))、例1?2には、化合物(1-3)以外にも、化合物162?164、174及び193に類似する構造の化合物の製造方法が具体的に記載されている(上記(甲4f))。 c 以上のことから、甲4には、一般式(1)の化合物を、当業者に公知の一般的な合成方法で製造できることが記載されており、実施例で製造された化合物以外の化合物であっても、具体的に化学構造式が示されている化合物であれば製造できる程度に記載されているといえるから、化合物(1-3)のみならず、化合物162?164、174及び193も、技術思想として抽出できる程度に記載されているといえる。 d したがって、甲4には、次の化合物(1-3)及び化合物162?164、174、192及び193の発明(「甲4発明A」?「甲4発明H」)が記載されているといえる。 なお、化合物(1-3)と式(192)の化合物は同じ化合物であるため、甲4発明Aと甲4発明Fは同一の化合物である。 e また、甲4には、一般式(1)の化合物を含む有機EL素子の発明が記載されており(上記(甲4a)、(甲4b))、例2で得た化合物を正孔輸送材料として用いた有機EL素子を製造し、効率や寿命などを測定した結果も示されている(上記(甲4g))。 これらの記載から、化合物(1-3)及び化合物162?164、174、192及び193についても、有機EL素子に用い得ることが記載されているといえる。 したがって、甲4には、次の発明(「甲4発明I」)が記載されているといえる。 甲4発明I: 「甲4発明A?Hのいずれかの化合物を用いた有機EL素子。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明1について 甲4発明A?Hは、それぞれ本件特許発明1において、一般式(G1)で表される有機化合物から除くとされる(1-3)、式(162)?式(164)、式(174)、式(192)?式(193)及び式(197)で表される化合物に該当するから、一般式(G1)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明1は甲4に記載された発明と同一ではない。 b 本件特許発明2について 甲4発明A及びF?Hは、それぞれ本件特許発明2において、一般式(G2)で表される有機化合物から除くとされる(1-3)、式(192)?式(193)及び式(197)で表される化合物に該当するから、一般式(G2)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明2は甲4に記載された発明と同一ではない。 c 本件特許発明3について 甲4発明A及びF?Hは、それぞれ本件特許発明3において、一般式(G3)で表される有機化合物から除くとされる(1-3)、式(192)?式(193)及び式(197)で表される化合物に該当するから、一般式(G3)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明3は甲4に記載された発明と同一ではない。 d 本件特許発明4について 甲4発明A及びF?Hは、それぞれ本件特許発明4において、一般式(G4)で表される有機化合物から除くとされる(1-3)、式(192)?式(193)及び式(197)で表される化合物に該当するから、一般式(G4)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明4は甲4に記載された発明と同一ではない。 e 本件特許発明5?8について 甲4発明Iは、甲4発明A?Hのいずれかの化合物を用いた有機EL素子の発明であるが、上記a?dのとおり、甲4発明A?Hの化合物は、本件特許発明1?4の有機化合物から除くとされる化合物である。 そうすると、甲4発明Iは、本件特許発明1?4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子に関する発明である本件特許発明5と、素子に用いる化合物が異なるから、本件特許発明5は、甲4に記載された発明と同一ではない。 本件特許発明6?8は、直接又は間接的に本件特許発明5を引用する発明であるため、同様に、甲4に記載された発明と同一ではない。 (ウ)甲4との理由3(拡大先願その1)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?8に係る発明は、外国語特許出願4に記載された発明と同一ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 ウ 甲5との検討 (ア)甲5に記載された発明 a 甲5には、化学式11で表される化合物を含む有機光電子素子の発明が記載されている(上記(甲5a)、(甲5b))。 そして化学式11の化合物の具体例として、化学式F-9、F-10、F-12、F-15、F-16、F-17、F-18、F-19、F-20、F-21、F-35、F-36、F-37、F-46、F-54、F-54の右隣の化合物、F-55、F-56、F-59、F-60、F-61、F-62、F-63、F-64、F-65、F-79、F-80、F-81、F-90、G-9、G-10、G-11、G-12、G-15、G-16、G-17、G-18、G-19、G-20、G-21、G-35、G-36、G-37、G-46、G-54、G-54の右隣の化合物、G-55、G-56、G-59、G-60、G-61、G-62、G-63、G-64、G-65、G-79、G-80、G-81、G-90の59個の化合物の化学構造式が記載されている(上記(甲5c))。 b 甲5には、上記59個の化合物を製造したことは記載されていないが、実施例1?4には、化学式11の具体例として、上記59個の化合物とともに化学構造式が記載されているF-94、G-94、F-99及びG-99をいずれも同様な方法で製造したことが具体的に記載されている(上記(甲5d))。 また、甲5には、他に実施例5?39が記載されており、実施例1?39の全ての実施例において、当業者に公知の、芳香族ハロゲン化物とアミンとのパラジウム触媒、第三級ホスフィン及び塩基存在下でのクロスカップリング反応による合成が実施されている。 c 以上のことから、甲5には、化学式11の化合物を、当業者に公知の一般的な合成方法で製造できることが記載されており、実施例1?4で製造された化合物以外の化合物であっても、具体的に化学構造式が示されている化合物であれば製造できる程度に記載されているといえるから、上記59個の化合物は、技術思想として抽出できる程度に記載されているといえる。 d したがって、甲5には、次の59個の化合物の発明(「甲5発明1」?「甲5発明59」)が記載されているといえる。 e また、甲5には、化学式11で表される化合物を含む有機光電子素子の発明が記載されており(上記(甲5a)、(甲5b))、実施例40には、化学式11の化合物に該当する実施例4で製造したG-99を用いて緑色有機発光素子を製造したこと、実施例53には、化学式11の化合物に該当する実施例3で製造したF-99を用いて赤色有機発光素子を製造したことが記載され、得られた有機発光素子の性能評価を行ったことも記載されている(上記(甲5e))。 これらの記載から、化学式11に該当する上記59個の化合物についても、有機発光素子に用い得ることが記載されているといえる。 したがって、甲5には、次の発明(「甲5発明60」)が記載されているといえる。 甲5発明60: 「甲5発明1?59のいずれかの化合物を用いた有機発光素子。」 (イ)対比・判断 a 本件特許発明1について 甲5発明1?59は、それぞれ本件特許発明1において、一般式(G1)で表される有機化合物から除くとされる[F-9]?[F-10]、[F-12]、[F-15]?[F-21]、[F-35]?[F-37]、[F-46]、[F-54]?[F-56]、[F-59]?[F-65]、[F-79]?[F-81]、[F-90]、[G-9]?[G-12]、[G-15]?[G-21]、[G-35]?[G-37]、[G-46]、[G-54]?[G-56]、[G-59]?[G-65]、[G-79]?[G-81]及び[G-90]で表される化合物に該当するから、一般式(G1)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明1は甲5に記載された発明と同一ではない。 b 本件特許発明2について 甲5発明1?10、14?25、29?40、44?55及び59は、それぞれ本件特許発明2において、一般式(G2)で表される有機化合物から除くとされる[F-9]?[F-10]、[F-12]、[F-15]?[F-21]、[F-46]、[F-54]?[F-56]、[F-59]?[F-65]、[F-90]、[G-9]?[G-12]、[G-15]?[G-21]、[G-46]、[G-54]?[G-56]、[G-59]?[G-65]及び[G-90]で表される化合物に該当するから、一般式(G2)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明2は甲5に記載された発明と同一ではない。 c 本件特許発明3について 甲5発明3、4、8、14、17?19、23、29、32?34、38、44、47?49、53及び59は、それぞれ本件特許発明3において、一般式(G3)で表される有機化合物から除くとされる[F-12]、[F-15]、[F-19]、[F-46]、[F-55]、[F-56]、[F-59]、[F-63]、[F-90]、[G-11]、[G-12]、[G-15]、[G-19]、[G-46]、[G-55]、[G-56]、[G-59]、[G-63]及び[G-90]で表される化合物に該当するから、一般式(G3)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明3は甲5に記載された発明と同一ではない。 d 本件特許発明4について 甲5発明8、17、23、32、38、47及び53は、それぞれ本件特許発明4において、一般式(G4)で表される有機化合物から除くとされる[F-19]、[F-55]、[F-63]、[G-11]、[G-19]、[G-55]及び[G-63]で表される化合物に該当するから、一般式(G4)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明4は甲5に記載された発明と同一ではない。 e 本件特許発明5?8について 甲5発明60は、甲5発明1?59のいずれかの化合物を用いた有機発光素子の発明であるが、上記a?dのとおり、甲5発明1?59の化合物は、本件特許発明1?4の有機化合物から除くとされる化合物である。 そうすると、甲5発明60は、本件特許発明1?4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子に関する発明である本件特許発明5と、素子に用いる化合物が異なるから、本件特許発明5は、甲5に記載された発明と同一ではない。 本件特許発明6?8は、直接又は間接的に本件特許発明5を引用する発明であるため、同様に、甲5に記載された発明と同一ではない。 (ウ)甲5との理由3(拡大先願その1)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?8に係る発明は、外国語特許出願5に記載された発明と同一ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえない。 エ 理由3(拡大先願その1)についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1?8に係る発明は、外国語特許出願3?5に記載された発明のいずれとも同一ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 (4)理由4(拡大先願その2)について ア 甲6に記載された発明 (ア)甲6には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体及び前記芳香族アミン誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)が記載されており、ジ置換アミノ基が9,9-ジフェニルフルオレン骨格の2位に直接又は間接的に結合した化合物であって、該ジ置換アミノ基の少なくとも一方の基が直接又はフェニレン基を介して窒素原子に結合している化合物が正孔注入性及び正孔輸送性が良好であり、低電圧駆動が可能で長寿命かつ高効率の有機EL素子を実現することが記載されている(上記(甲6a)、(甲6e))。 そして、甲6には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体の具体例として、ジ置換アミノ基が9,9-ジフェニルフルオレン骨格の2位に直接結合した化合物であって、該ジ置換アミノ基の一方の基がジベンゾフラニル基又ジベンゾチオフェニル基であるとともに両方の基が直接窒素原子に結合している、20個の芳香族アミン誘導体(以下、「芳香族アミン誘導体A」?「芳香族アミン誘導体T」という。)の化学構造式が記載されている(順に、上記(甲6b)の[化20]の1列目の左端から4列目の右端の化合物及び[化28]の6列目の左端から右端の化合物)。 (イ)甲6には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体の一般的な製造方法や、芳香族アミン誘導体A?Tの製造方法は記載されていないが、実施例には芳香族アミン誘導体(H1)や(H4)などの芳香族アミン誘導体の製造方法が、合成中間体の製造方法も含めて記載されている(上記(甲6c))。 すなわち、中間体合成例1-1?中間体合成例1-3の手順により、芳香族モノ置換アミノ化合物を製造し、次いで、中間体合成例2-1の手順により、芳香族ジ置換アミノ化合物とし、合成実施例1の手順により、目的とする芳香族アミン誘導体を製造したことが記載されている。 ここで、上記合成方法は、ジ置換アミノ基の少なくとも一方の基がフェニレン基を介して窒素原子に結合している化合物を製造する手順を示したものであるため、製造過程で4’-ブロモアセトアニリドとの反応を行う工程を経て、ジベンゾフラニル基がフェニレン基を介してアミノ基の窒素原子に結合している化合物を製造し、次いで芳香族ハロゲン化物(2-ブロモ-9,9-ジフェニルフルオレン)との反応でジ置換アミノ化合物を製造しているが、4-アミノジベンゾフランのような公知の化合物を用いて、同様の方法によりジベンゾフラニル基が直接アミノ基の窒素原子に結合している化合物と、芳香族ハロゲン化物との反応でジ置換アミノ化合物を製造できることは、当業者に自明な事項といえる。 そして、合成実施例1に示されているジ置換アミノ化合物と、芳香族ハロゲン化物とのパラジウム触媒、第三級ホスフィン及び塩基存在下でのクロスカップリングは、当業者に公知の一般的な合成方法である。 (ウ)そうすると、甲6の実施例には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体を、当業者に公知の一般的な合成方法で製造することが記載されており、これら実施例の記載から、実施例以外の化合物であっても、具体的に化学構造式が示されている芳香族アミン誘導体A?Tは、化合物として製造でき、技術思想として抽出できる程度に記載されているといえる。 (エ)したがって、甲6には、次の芳香族アミン誘導体A?Tの発明(「甲6発明A」?「甲6発明T」)が記載されているといえる。 (オ)また、甲6には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体を含有する有機EL素子の発明が記載されており(上記(甲6a)、(甲6e))、実施例1-1には、式(1)で表される芳香族アミン誘導体に該当する実施例1で製造した芳香族アミン誘導体(H1)を用いて有機EL素子を製造し、発光性能評価を行ったことも記載されている(上記(甲6d))。 これらの記載から、芳香族アミン誘導体A?Tについても、有機EL素子に用い得ることが記載されているといえる。 したがって、甲6には、次の発明(「甲6発明U」)が記載されているといえる。 甲6発明U: 「甲6発明A?Tのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 甲6発明A?Tは、それぞれ本件特許発明1において、一般式(G1)で表される有機化合物から除くとされるB-1?B-20で表される化合物に該当するから、一般式(G1)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明1は甲6に記載された発明と同一ではない。 (イ)本件特許発明2について 甲6発明A?Tは、それぞれ本件特許発明2において、一般式(G2)で表される有機化合物から除くとされるB-1?B-20で表される化合物に該当するから、一般式(G2)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明2は甲6に記載された発明と同一ではない。 (ウ)本件特許発明3について 甲6発明A?C、E?G、I?K、M?O及びQ?Tは、それぞれ本件特許発明3において、一般式(G3)で表される有機化合物から除くとされるB-1?B-3、B-5?B-7、B-9?B-11、B-13?B-15及びB-17?B-20で表される化合物に該当するから、一般式(G3)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明3は甲6に記載された発明と同一ではない。 (エ)本件特許発明4について 甲6発明A?C、E?G、I?K及びM?Oは、それぞれ本件特許発明4において、一般式(G4)で表される有機化合物から除くとされるB-1?B-3、B-5?B-7、B-9?B-11及びB-13?B-15で表される化合物に該当するから、一般式(G4)で表される有機化合物ではない。 したがって、本件特許発明4は甲6に記載された発明と同一ではない。 (オ)本件特許発明5?8について 甲6発明Uは、甲6発明A?Tのいずれかの芳香族アミン誘導体を用いた有機EL素子の発明であるが、上記(ア)?(エ)のとおり、甲6発明A?Tの芳香族アミン誘導体は、本件特許発明1?4の有機化合物から除くとされる化合物である。 そうすると、甲6発明Uは、本件特許発明1?4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子に関する発明である本件特許発明5と、素子に用いる化合物が異なるから、本件特許発明5は、甲6に記載された発明と同一ではない。 本件特許発明6?8は、直接又は間接的に本件特許発明5を引用する発明であるため、同様に、甲6に記載された発明と同一ではない。 ウ 甲6との理由4(拡大先願その2)についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?8に係る発明は、日本語特許出願6に記載された発明と同一ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものでなはい。 (5)申立人の意見について ア 申立人は、意見書において、本件訂正により特定の化合物が除かれたが、訂正後の本件特許発明は、(i)甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであること(38頁?46頁の(2))、(ii)甲5及び甲6に記載された発明と実質的に同一であること(46頁の(3))、及び(iii)不明確であること(46頁?47頁の(4))を主張するので、以下、それぞれについて検討する。 イ (i)について (ア)申立人は、甲1には、式(I)で表される一般式の化合物が記載されており(上記(甲1b)参照)、式(I)の化合物の3つの置換基Ar^(A)、Ar^(B)及びAr^(C)について、それぞれ甲1に具体的に例示されているものから、好ましいとされているものを選ぶという極めて少数の選択で本件特許発明1?3に包含される化合物に到達することや、本件特許発明1?3から除外されたA-1?A-6で表される化合物の置換基を、例示されている他の置換基に代えることで本件特許発明1?3に包含される化合物に容易に到達する旨主張する。 (イ)しかしながら、式(I)で表される芳香族アミン誘導体の3つの置換基Ar^(A)、Ar^(B)及びAr^(C)それぞれについて、甲1の記載から個別に選択すれば、本件特許発明1?3に包含される化合物を想定することはできるかもしれないが、甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体として多数の化合物の具体例が示されているところ、そのうちで本件特許発明1?3に該当する化合物は、本件特許発明1?3において除くとされた6個の化合物のみである。 そして、甲1の[0007]に「本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造の芳香族炭化水素基と分岐状の芳香族炭化水素基を共に有する芳香族アミン誘導体を、有機EL素子用材料として、特に正孔輸送材料として用いることにより、有機EL素子が低電圧化し、且つ発光効率及び素子寿命が向上することを見出した。」とあるように、甲1の式(I)で表される芳香族アミン誘導体は、3つの置換基Ar^(A)、Ar^(B)及びAr^(C)のうち、Ar^(A)は、分岐状の芳香族炭化水素基であり、Ar^(B)は、芳香族炭化水素基を介してアミンの窒素に結合してもよい、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基又はカルバゾリル基から選択される芳香族炭化水素基であり、Ar^(C)は、芳香族炭化水素基であるかAr^(A)、Ar^(B)のいずれかである(甲1の[請求項1]参照)ことで、有機EL素子の正孔輸送材料として用いると、有機EL素子が低電圧化し、且つ発光効率及び素子寿命が向上するものである。 このように、甲1の式(I)で表される芳香族アミン誘導体においては、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基及びジベンゾチオフェニル基は、1つの置換基における選択肢として記載されているうえに、アミンの窒素に直接結合することを必須の要件としないものである。 (ウ)それに対し、本件特許発明1?4の一般式(G1)?(G4)で表される有機化合物は、フルオレニル基と、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基とを有するとともに、これらがアミンの窒素に直接結合した化合物である。 そして、本件特許発明1?4の一般式(G1)?(G4)で表される有機化合物は、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチオフェニル基がアミンの窒素に直接結合した構造有しているため、HOMO準位が低く、正孔(ホール)輸送性の高い有機化合物を形成することができるというものである(本件特許明細書【0024】参照)。 (エ)そうすると、甲1の式(I)で表される芳香族アミン誘導体において、多数の具体的に示されている化合物以外に、甲1の技術思想とは離れて、ことさらに本件特許発明1?3の要件を満たす化合物を想定する動機付けがあるとはいえないし、多数の具体的に示されている化合物の中から、6個の化合物に着目し、その置換基を変更して本件特許発明1?3の要件を満たす化合物を想定する動機付けがあるともいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 ウ (ii)について 申立人は、甲5に記載された12の化合物は、申立人が作成した一般式に包含されるものであり、当業者はこのような一般的な教示を認識するから、特定の化合物を除外しても新規性を確保することはできず、本件特許発明1?8は、甲5に記載された発明と実質的に同一であることや、甲6に記載された発明とも実質的に同一である旨主張する。 申立人の主張は、甲5又は甲6の具体的な化合物群は上位概念化して一般式で表すことができ、そのような一般式で示される化合物は、本件特許発明1?4で除くとされる化合物以外の化合物も含むといえるから、本件特許発明1?4の化合物は、甲5又は甲6に実質的に開示されているというものと解される。 しかしながら、申立人が示す一般式は、甲5に多数例示されている化合物の中から、本件特許発明1?4の化合物に該当するもののみを取り出して上位概念化したことにより作成されたものといえ、そのような一般式は、そもそも甲5全体の記載から導き出すことはできず、記載された発明であるとさえいえない。 甲6についても同様である。 よって、申立人の主張は前提において採用できない。 エ (iii)について 申立人は、本件特許発明1は、100以上の化合物を除外するものであるが、それらの化合物に極めて類似する実質同一の範囲が除外されていないため、その表現によって除かれる部分の範囲が明確といえないこと、このように、「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占め、多数にわたるところ、一の請求項から一の発明が明確に把握できないため、本件特許発明1?4の化合物の構造が不明確となっていることを主張する。 そこで検討するに、本件特許発明1?4は、それぞれ一般式(G1)?(G4)で表される有機化合物であり、その構造は、それぞれ請求項1?4で定義されるとおり明確である。 また、本件特許発明1?4において、訂正により除くとされた化合物も、いずれも化学構造式で特定されているとおり明確であり、それらが、本件特許発明1?4の一般式(G1)?(G4)に含まれる化合物であることも明確であるから、その数によらず、除かれる部分の範囲は明確である。 訂正により除くとされる化合物が、申立人の主張するように極めて類似する実質同一の範囲を除くかどうかは、置換基の異なる化合物同士を実質同一といえるかどうかの問題で、明確性の問題とはいえないし、本件訂正により除くとされた化合物は上記のとおり明確である。 よって、申立人の主張は採用できない。 4 小括 以上のとおり、本件特許は、当審が通知した取消理由に記載した理由1?4によっては取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 訂正前の請求項1?8に係る特許に対して、取消理由通知において採用しなかった申立人の主張する取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1(進歩性その1) 請求項4に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由2(進歩性その2) 請求項1?8に係る特許は、当該請求項に係る発明が本件特許の出願に係る優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 記 刊行物2: 国際公開第2011/021520号(甲第2号証。以下「甲2」という。) (3)理由3(記載不備) 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号及び同第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 当審の判断 (1)理由1(進歩性その1)について 申立人は、本件特許発明4は一般式(G4)で表される有機化合物であるところ、前記第4 3(1)アで認定した甲1発明A?Fとは、フルオレニル基が7位で置換されていない点で相違するが、甲1には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体の置換基Ar^(B)の好ましい態様として、フルオレニル基が置換基を有さない構造が記載されていることから、そのような化合物は、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(申立書107頁?108頁参照)。 しかしながら、前記第4 3(5)イで検討したとおり、甲1において、甲1発明A?Fに代えて、本件特許発明4の化合物とする動機付けはなく、甲1の式(I)で表される芳香族アミン誘導体に代えて、本件特許発明4の化合物とする動機付けも見出せない。 よって、申立人の主張は採用することができない。 (2)理由2(進歩性その2)について ア 申立人は、申立書108頁?113頁の(ウ-2)において、甲2には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体が記載されており、その具体例の中に、次のa?jの化合物が記載されているところ、甲2に、ヘテロアリール基置換フェニル基と同様にフェニル基やビフェニル基を選択し得ることが示されているから、a?jの化合物について、ヘテロアリール基置換フェニル基を無置換フェニル基などに代えて、本件特許発明1?4の化合物とすることは、当業者が容易になし得たものである旨主張する。 また、甲2には、次に示す芳香族アミン誘導体も記載されており、甲2に、アミンの窒素に直接結合するジベンゾフラン基を選択し得ることも記載されているから、そのように変更して本件特許発明1?4の化合物とすることは、当業者が容易になし得たものである旨も主張する。 イ そこで検討するに、甲2には、次のような記載がある。 (甲2a)「[請求項1] 下記式(I)で表される芳香族アミン誘導体。 [化1] [式(I)中、Ar^(a)は下記式(II)で表される。 [化2] (式(II)中、L^(a)は、単結合又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6?50のアリーレン基を表す。 ・・・ 式(I)中、Ar^(b)は下記式(III)で表される。 [化3] (式(III)中、Xは、NR^(a)、酸素原子又は硫黄原子を表す。・・・ ・・・ nは、XがNR^(a)の場合、2?4の整数を表し、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、0?4の整数を表す。 ・・・ 式(I)中、Ar^(c)は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6?50のアリール基を表すか、又は上記式(III)で表される。]」 (甲2b)「[0007] 本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フルオレン骨格、及びカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格もしくはジベンゾチオフェン骨格を有する芳香族アミン誘導体を、有機EL素子用材料、特に正孔輸送材料として用いることにより、その高い電荷移動度のため、有機EL素子のさらなる低電圧化が達成され、且つ薄膜の安定性が向上することにより有機EL素子のさらなる長寿命化が達成されることを見出した。」 (甲2c)「[0019]・・・ 上記式(I)中、Ar^(a)は下記式(II)で表される。 ・・・ [0021] ・・・ L^(a)としては、単結合又はフェニレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。L^(a)が単結合であると、フルオレン骨格が窒素原子と直接結合することになるため、イオン化ポテンシャルが小さくなり、正孔輸送層及び発光層界面に正孔が蓄積されて電子注入が促進されるものと考えられ、有機EL素子がより低電圧化される。」 (甲2d)「[0043]・・・ さらに、Ar^(b)としては、上記式(III)の中でも、有機EL素子をより低電圧化させる観点から、下記式(III-1)?(III-6)のいずれかで表されることがより好ましい。 [0044][化14] 」 ウ これら、甲2の記載から、甲2の式(I)で表される芳香族アミン誘導体は、アミンの窒素に直接結合したフルオレン骨格を有すること、また、フェニレン基などの連結基を介してカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格又はジベンゾチオフェン骨格をアミンの窒素に結合した構造とすることが、有機EL素子を低電圧化させる観点から望ましいことが示されているといえる。 そうすると、有機EL素子を低電圧化させる観点からフェニレン基を介してカルバゾール骨格又はジベンゾフラン骨格をアミンの窒素に結合した構造とすることが望ましいことを開示する甲2に照らして、そのような骨格を有するa?jの化合物について、当業者がヘテロアリール置換フェニル基を無置換フェニル基に代えることにはむしろ阻害要因があるといえ、容易になし得たことということはできない。 同様に、フェニレン基を介してジベンゾフラン骨格をアミンの窒素に結合した構造に代えて、ジベンゾフラン骨格がアミンの窒素に直接結合した構造とすることが、容易になし得たことということはできない。 そして、甲2には、式(I)で表される芳香族アミン誘導体について多数の具体例が示されているのに対し、その中から本件特許発明1?4の化合物に構造が近いもののみを取り上げて、甲2に示されている可能な選択肢から、本件特許発明1?4の化合物となる場合に着目して変更することが、甲2全体の記載からみて、当業者に動機付けられるとはいえない。 エ 本件特許発明1?4が、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものということはできないことから、本件特許発明1?4のいずれかの有機化合物を用いることを必須の構成とする本件特許発明5?8も、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものということはできない よって、申立人の主張は採用することができない。 (3)理由3(記載不備)について ア 申立人は、申立書125頁の(エ-1)において、本件特許発明1?4は、14種の化合物を除くクレームであるため不明確である旨主張するが、前記第4 3(5)ウで検討したとおり、本件特許発明1?4は明確である。 よって、申立人の主張は採用することができない。 イ(ア)申立人は、申立書125頁?127頁の(エ-2)において、本件特許発明1?8の解決しようとする課題は、HOMO準位が低くかつ正孔(ホール)輸送性を有する化合物の提供であるが、本件特許発明1は一般式(G1)で表される有機化合物であるのに対し、本件特許明細書で合成され実験データがある2つの化合物は、いずれも一般式(G1)において「Ar^(1)」が「ジメチル置換フルオレニル基」、「Ar^(2)」が「ビフェニル」、「A^(1)」が「無置換ベンゾフラニル」である化合物であり、これ以外の一般式(G1)で表される有機化合物の有用性を当業者が直ちに認識できるとはいえない旨主張する。 そして、その理由として、基本骨格を構成する元素の種類が異なる化合物の有用性を当業者が予測できるといえる本件特許出願時の技術常識などは見当たらず、化合物の可変基の置換基の種類により化合物の性質が変化することから、化合物の置換基の種類によっては、所望の電子特性を得られないこともあるのだから、置換基の全てが本件特許所定の課題を解決できると解し得る本件特許出願時の技術常識などの具体的な根拠も見当たらないので、本件特許発明1が、HOMO準位が低くかつ正孔(ホール)輸送性を有する化合物の提供という本件特許所定の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められないことを主張し、同様の理由で、本件特許発明2?8も本件特許所定の課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない旨主張する。 (イ)しかしながら、本件特許明細書の【0009】には、「上述したように、発光素子の特性を向上させる上で、発光素子に適した特性を有する有機化合物の開発が望まれる。本発明の一態様では、HOMO準位が低く、かつ正孔(ホール)輸送性を有する新規な有機化合物を提供する。また、本発明の一態様である新規な有機化合物を用いることにより、発光効率の高い発光素子を提供し、さらに短波長(450nm?550nm程度の範囲)の発光を高い効率で与える発光素子を提供する。」と記載されているように、本件特許発明1?4の解決しようとする課題は、「発光素子に適した特性を有する新規な有機化合物の提供」にあり、本件特許発明5?8の解決しようとする課題は、「本件特許発明1?4のいずれかに記載の有機化合物を用いた発光素子、それを用いた発光装置、及びそれを用いた電子機器又は照明装置の提供」にあるといえ、「HOMO準位が低く、かつ正孔(ホール)輸送性を有する新規な有機化合物の提供」はその一態様として示されているものである。 そして、芳香族アミン誘導体が発光素子に適した一定の特性を有することは、甲1?2などにもあるように、本件特許出願時の技術常識であり、本件特許発明1?4の有機化合物は、新規な化合物に特定されているから、本件特許発明1?8の課題を解決し得ると当業者が認識できる範囲にあるといえる。 (ウ)そのうえ、本件特許明細書の【0024】に、「上記一般式(G1)?(G4)および構造式(100)で表される本発明の一態様である有機化合物は、いずれも置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基がアミンの窒素に直接結合した構造を有している。そのため、HOMO準位が低く、正孔(ホール)輸送性の高い有機化合物を形成することができる。」と説明されており、実施例において、ジベンゾフラニル基がアミンの窒素に直接結合した構造を有する化合物を用いた発光素子を作成し、高効率な素子であることや、色純度のよい黄緑色発光を示すことが確認されている。 よって、申立人の主張は採用することができない。 ウ 申立人は、申立書128頁の(エ-3)において、要するに、実施例で合成された2つの化合物以外の製造方法について、本件特許明細書の合成例についての記載を含む本件特許明細書全体の記載を参酌しても、当業者が当該化合物を「製造」できるといえる程度の記載が見当たらないし、本件特許出願時の技術常識に基いて過度の試行錯誤を要することなく当業者が製造できるといえる根拠も見当たらない旨主張する。 しかしながら、本件特許明細書【0059】?【0073】に、本件特許発明1?4の化合物の合成方法が説明されており、具体例として、[ハートウィック・ブッフバルト反応を行う場合]や[ウルマン反応を行う場合]が示されている。 そして、これらの合成方法は、甲1の実施例や甲2の実施例でも採用されているように、当業者に公知の芳香族アミン誘導体の製造方法であって、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく本件特許発明1?4の化合物を製造できるといえる。 そして、本件特許発明5?8で特定される、得られた化合物を用いた発光素子などについても、本件特許明細書の【0074】?【0171】に記載された事項及び技術常識に基いて、当業者であれば製造できるといえる。 よって、申立人の主張は採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立人の申立てた理由によっては、本件請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一般式(G1)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、式(144)で表される化合物、式(148)で表される化合物、式(167)で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(162)?式(164)で表される化合物、式(174)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-35]?[F-37]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-79]?[F-81]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-35]?[G-37]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-79]?[G-81]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く)。 【化1】 (但し、一般式(G1)中、Ar^(1)は、置換もしくは無置換のフルオレニル基を表し、Ar^(2)は、置換もしくは無置換の炭素数6?13のアリール基を表し、A^(1)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。なお、Ar^(1)、Ar^(2)およびA^(1)が、置換基を有する場合、置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士は結合して環を形成しない。) 【化2】 【化3】 【請求項2】 一般式(G2)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-9]?[F-10]で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]?[F-21]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-54]?[F-56]で表される化合物、[F-59]?[F-65]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-9]?[G-12]で表される化合物、[G-15]?[G-21]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-54]?[G-56]で表される化合物、[G-59]?[G-65]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、及びB-1?B-20で表される化合物を除く)。 【化4】 (但し、一般式(G2)中、Ar^(3)は、置換もしくは無置換の炭素数6?13のアリール基を表し、A^(2)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。また、R^(1)?R^(9)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表し、Ar^(3)およびA^(2)が置換基を有する場合、Ar^(3)およびA^(2)の置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士が結合して環を形成しない。) 【化5】 【化6】 【請求項3】 一般式(G3)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、A-1?A-6で表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-12]で表される化合物、[F-15]で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-46]で表される化合物、[F-55]?[F-56]で表される化合物、[F-59]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[F-90]で表される化合物、[G-11]?[G-12]で表される化合物、[G-15]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-46]で表される化合物、[G-55]?[G-56]で表される化合物、[G-59]で表される化合物、[G-63]で表される化合物、[G-90]で表される化合物、B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、B-13?B-15で表される化合物、及びB-17?B-20で表される化合物を除く)。 【化7】 (但し、一般式(G3)中、Ar^(4)は、置換もしくは無置換のビフェニル基を表し、A^(3)は、置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチオフェニル基のいずれか一を表す。また、R^(11)?R^(19)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表し、Ar^(4)およびA^(3)が置換基を有する場合、Ar^(4)およびA^(3)の置換基は、炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基とする。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、置換基同士が結合して環を形成しない。) 【化8】 【化9】 【請求項4】 一般式(G4)で表される有機化合物(ただし、下記のFormel(132)?式(137)で表される化合物、化合物(1-9)、化合物(1-11)、Formel(165)?(167)で表される化合物、化合物(2-8)、Int-2eで表される化合物、及びInt-2fで表される化合物、(1-3)で表される化合物、式(192)?式(193)で表される化合物、式(197)で表される化合物、[F-19]で表される化合物、[F-55]で表される化合物、[F-63]で表される化合物、[G-11]で表される化合物、[G-19]で表される化合物、[G-55]で表される化合物、[G-63]で表される化合物B-1?B-3で表される化合物、B-5?B-7で表される化合物、B-9?B-11で表される化合物、及びB-13?B-15で表される化合物を除く)。 【化10】 (但し、一般式(G4)中、Xは、酸素または硫黄を表し、R^(21)およびR^(22)は、水素、または炭素数1?4のアルキル基、または炭素数6?13のアリール基を表す。なお、アリール基としては、ヘテロアリール基は含まない。また、R^(21)とR^(22)は結合して環を形成しない。) 【化11】 【化12】 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の有機化合物を用いた発光素子。 【請求項6】 請求項5に記載の発光素子を用いた発光装置。 【請求項7】 請求項6に記載の発光装置を用いた電子機器。 【請求項8】 請求項6に記載の発光装置を用いた照明装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-01 |
出願番号 | 特願2014-59991(P2014-59991) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(C07D)
P 1 651・ 121- YAA (C07D) P 1 651・ 537- YAA (C07D) P 1 651・ 161- YAA (C07D) P 1 651・ 113- YAA (C07D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 村守 宏文 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
村上 騎見高 関 美祝 |
登録日 | 2018-03-30 |
登録番号 | 特許第6312479号(P6312479) |
権利者 | 株式会社半導体エネルギー研究所 |
発明の名称 | 有機化合物、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置 |
代理人 | 玉城 信一 |
代理人 | 伊藤 高志 |
代理人 | 玉城 信一 |
代理人 | 伊藤 高志 |