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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04F
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1354974
異議申立番号 異議2019-700339  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-24 
確定日 2019-09-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6421005号発明「衝撃吸収用床材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6421005号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6421005号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成26年9月24日(優先権主張平成26年5月15日)に特許出願され、平成30年10月19日に特許の設定登録がされ、平成30年11月7日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1ないし6に係る特許に対し、平成31年4月24日に特許異議申立人鈴木有子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)。

「【請求項1】
衝撃吸収性を有したパネル状のベース材と、該ベース材を覆うシート材とを少なくとも備えた衝撃吸収用床材であって、
前記ベース材は、前記ベース材の表面に配置される表面材と、前記ベース材の裏面に配置され、前記表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する衝撃吸収材と、が少なくとも積層された積層構造体であり、
前記シート材は、前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されており、
前記表面材と前記衝撃吸収材とは、非固着の状態で積層されていることを特徴とする衝撃吸収用床材。
【請求項2】
前記ベース材の裏面に配置されたシート材と共に前記ベース材の前記裏面を覆うように、裏打ち材が少なくとも前記シート材に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の衝撃吸収用床材。
【請求項3】
前記衝撃吸収材は、発泡樹脂材からなり、
前記シート材と前記ベース材の少なくとも前記表面との間には、前記衝撃吸収材よりも軟質のクッション材が配置され、
前記クッション材は、前記シート材と、前記ベース材の前記側面との間にさらに配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収用床材。
【請求項4】
前記シート材と前記ベース材の少なくとも前記表面との間には、前記衝撃吸収材の硬さと同等、またはそれよりも硬質であり、前記表面材よりも軟質のクッション材が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の衝撃吸収用床材。
【請求項5】
前記衝撃吸収材は、発泡樹脂材からなり、
前記シート材と、前記ベース材の前記側面のうち、前記衝撃吸収材により形成された側面とは、非固着状態であり、
前記シート材と、前記ベース材の前記側面との間に、空隙が形成されていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の衝撃吸収用床材。
【請求項6】
前記シート材は、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面の一部のみ固着され、前記表面材と、前記衝撃吸収材により形成された前記ベース材の側面と、に非固着状態であることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の衝撃吸収用床材。」

第3 申立理由の概要
申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。
1 取消理由1(明確性要件違反)
本件発明1ないし6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていないから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
2 取消理由2(新規性欠如)
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由3(進歩性欠如)
本件発明1ないし6は、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて、または、甲第2号証ないし甲第11号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

第4 刊行物(申立人が提出した証拠)
・甲第1号証:実願昭49-131485号(実開昭51-57815号)のマイクロフィルム
・甲第2号証:実願昭59-173393号(実開昭61-87828号)のマイクロフィルム
・甲第3号証:特開2010-19022号公報
・甲第4号証:特開2012-149434号公報
・甲第5号証:特許第5466289号公報(平成26年4月9日発行)
・甲第6号証:特開2012-77535号公報
・甲第7号証:実願昭60-78574号(実開昭61-194581号)のマイクロフィルム
・甲第8号証:特開2013-167096号公報
・甲第9号証:特開2004-332346号公報
・甲第10号証:特開2001-115633号公報
・甲第11号証:登録実用新案第3185038号公報(平成25年7月25日発行)

1 甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある。(本決定で下線を付与。以下同様。)
(1)「本考案は柔道用畳に関するものである。」(明細書1頁13行)

(2)「以下本考案の実施例を示した図面について説明すると、(1)は畳の基台、(2)は畳表シートであり、該基台(1)の上層に弾力性に富んだウレタンフォームのごとき軟質発泡体(3)を配し、その下面側にベニヤ板のごとき薄い合板(4)を介して発泡スチロールのごとき軟質発泡体(5)(決定注:硬質発泡体(5)の誤記と認める。)を重合し、更に該軟質発泡体(3)の上面および硬質発泡体(5)の下面に保形用シートもしくは布帛(6)(7)を重合したのち、該上下のシートもしくは布帛(6)(7)間を縫糸(8)でもって貫通縫合して基台(1)を形成し、該基台(1)の上面および側面を畳表シート(2)でもって被覆して畳状となしたものである。上記した基台(1)の上下面の保形用シートもしくは布帛(6)(7)は縫糸(8)よる貫通縫合の際、軟質発泡体(3)や硬質発泡体(5)に縫糸(8)が喰い込むのを阻止するとともに使用中における片寄りや畳表シート(2)あるいは床面との接触による損傷を防止するものである。特に下面のシート(7)は畳表シート(2)の端部(2’)を基台(1)側に縫着するためにも役立つものであって、このことから目ずれの少ない網状布帛を用いるとよい。前記した軟質発泡体(3)と硬質発泡体(5)の構成比はl:2程度が好ましく、また硬質発泡体(5)を1枚ものとなすよりも図示したごとく、中間に布帛やシート(9)を介在させた2枚の積層体となしたものを使用した方が緩衝作用とともにひび割や破損に強く耐久性が大となって望ましい。
このように本考案は、基台(1)の上層部に弾力性に富んだ軟質発泡体(3)を配しているため適度なクッション性が得られ、しかも下層の硬質発泡体(5)との間に合板(4)を介在させているため、上層部の弾性変形が下層の硬質発泡体(5)に直接影響せず、硬質発泡体(5)に局部的な押圧力や衝撃が加からず、該硬質発泡体(5)をその弾性限界以上に変形せしめることが回避される。その上、基台(1)の上下面にシートもしくは布帛(6)(7)を重合しているため、該基台(1)の形態は極めて安定し、かつ発泡体上下面の損耗が防止でき耐久性が大となる。更に、かかる基台(1)に畳表シート(2)を被覆してなる本考案の畳は、極めて軽量であるから敷設あるいは収納作業が至便である。そして使用時においては畳表シート(2)の張力、軟質発泡体(3)の弾力、合板(4)の剛性、そして硬質発泡体(5)の緩衝力が調和して適度なクッション性が発現され、投げられた際の衝撃を減殺して受け身を容易にし、しかも柔道特有の機敏にして軽快な動作が妨げられないから、骨折、脱臼事故はもとより捻挫事故をも減少することが可能となり、柔道練習用畳として安全性の面から好適となる。更にまた本考案の柔道用畳は前記したごとき構造であるため、極めて安価に製作でき、耐久、耐湿性に優れ、しかも表替えも可能であるなど実用的な多くの利点を有するものである。」(明細書2頁16行-5頁4行)

(3)第1図は次のものである。


(4)第2図は次のものである。


(5)第1図および第2図から、畳表シート(2)は、基台(1)の表面および基台(1)の側面を連続して覆うとともに、基台(1)の側面から基台(1)の裏面の一部まで連続して覆うように配置されている点が看て取れる。

上記(1)ないし(5)からみて、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「適度なクッション性を有した基台と、該基台を被覆する畳表シートとを少なくとも備えた柔道用畳であって、
前記基台は、上層に弾力性に富んだウレタンフォームのごとき軟質発泡体を配し、その下面側にベニヤ板のごとき薄い合板を介して発泡スチロールのごとき硬質発泡体を重合し、該軟質発泡体の上面および硬質発泡体の下面に保形用シートもしくは布帛を重合したのち、該上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合することで形成し、
前記畳表シートは、前記基台の表面および該基台の側面を連続して覆うとともに、該基台の側面から該基台の裏面の一部まで連続して覆うように配置し、
該上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合して使用中における片寄りを防止し、
前記基台の上面および側面を畳表シートでもって被覆して畳状となしたものである柔道用畳」

2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。
(1)「(産業上の利用分野)
この考案は、道場や学校の体育館等で柔道を行なう際に使用する柔道畳に関するものである。」(明細書1頁11行-13行)

(2)「(作用)
従って、本考案の柔道畳を凹凸のある床面に敷いて使用すると、畳の上部に大きな衝撃力が加わっても、ベニヤ板が弾性の小さい発泡高分子部材によって支えられるので凹まず、ベニヤ板への鉛直方向の衝撃波がベニヤ板と発泡高分子部材とよって水平方向に均一に分散される。
又、床面の凹凸に対しては、柔道畳の畳床を構成する最下層の高発泡高分子部材がこの凹凸面をうめるように変形して床面にぴったり整合するため、ベニヤ板上に大きな衝撃が加わっても床面の凹凸の影響は完全になくなるものである。」(明細書4頁3行-14行)

(3)「(実施例)
以下、本考案の実施例を図面に示して説明する。
本実施例の柔道畳Aは、第1図に示すように、上部から順に、低発泡高分子部材1、ベニヤ板2、弾性の小さい発泡高分子部材3、弾性の大きい発泡高分子部材4を積層し、これらを縫製して所要厚さの畳床Cを形成すると共に該畳床Cの外周に畳表5を縫着している。畳床Cは、低発泡高分子部材1を発泡倍率9倍のポリエチレン発泡部材で約10mmの厚さに形成し、この低発泡高分子部材1の下に厚さ5mmのベニヤ板2を敷き、このベニヤ板2の下に弾性の小さい発泡高分子部材3として発泡倍率が30倍のポリエチレン発泡部材を25mmの厚さにして敷き、更に、この発泡高分子部材3の下に弾性の大きい発泡高分子部材4として軟質ウレタンを15mm厚さに敷いて、糸6で一体に縫製し、畳床Cを55mmの厚さに仕上げる。又、他の実施例の畳床Cとして、低発泡高分子部材1を発泡倍率9倍のポリエチレン発泡部材で約5mmの厚さに形成し、この低発泡高分子部材1の下に順に5mmのベニヤ板2、30倍発泡のポリスチレン-ポリエチレン共重合部材からなる発泡高分子部材3を30mm厚さに敷き、更に、この発泡高分子部材3の下に弾性の大きい発泡高分子部材4としてスポンジゴム4を15mmの厚さに敷いて、糸6で一体に縫製し、全体を55mmの厚さに仕上げる。
上述のようにして形成した柔道畳Aを凹凸の差が10mmほどある道場に敷いて、1年間ほどテストしたが、中間層のベニヤ板は割れなかった。即ち、床面の凹凸を柔道畳Aの最下層の弾性豊かな発泡高分子部材(スポンジや軟質ウレタン)4でもって水平な面になるように整合し、又、畳Aの最上部に大きな衝撃が加わっても、ベニヤ板2の下の弾性の小さい発泡高分子部材3(30倍発泡のポリエチレン,30倍発泡のポリスチレン-ポリエチレン共重合体)でもって受け止め、この衝撃力を最下層の高弾性の発泡高分子部材4でもって吸収することができるので、ベニヤ板の一部が凹むこともなく、さらにはベニヤ板2の一部に大きな衝撃が加えられても、この衝撃力は弾性の小さい発泡高分子部材3を介して高弾性の発泡高分子部材4に伝えられ、この高弾性の発泡高分子部材4で完全に衝撃を吸収するため、畳自体の上部層は硬いが全体に弾性を帯びさせて衝撃を吸収できる柔道畳を完成することができた。
(考案の効果)
以上説明したように、本考案の柔道畳は、衝撃によって畳の上層部が凹まず、かつ全体にクッションを付与しているので、技がかけやすく、しかも足の指先が畳表の凹みにひっかかって、怪我することがなく、骨折等の大きな事故を防止することができ、又、初心者から熟練者まで広く使用できる上にベニヤ板の割れもないため耐久性が著しく向上して使用しやすくなった。」(明細書4頁15行-8頁5行)

(4)第1図は次のものである。


(5)第1図および(3)から、畳表5は、畳床Cの外周を、表面、および、畳床Cの側面を連続して覆うとともに、畳床Cの前記側面から、畳床Cの裏面まで連続して覆うように、配置されている点が看て取れる。

上記(1)ないし(5)からみて、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲2発明)
「衝撃を吸収できる畳床と、該畳床を連続して覆う畳表とを少なくとも備えた柔道畳であって、
上部から順に、低発泡高分子部材、ベニヤ板、弾性の小さい発泡高分子部材、弾性の大きい発泡高分子部材を積層し、これらを糸で一体に縫製して、畳の最上部やベニヤ板に大きな衝撃が加えられても、弾性の小さい発泡高分子部材までで水平に分散し、弾性の大きい発泡高分子部材で完全に衝撃を吸収する、所要厚さの前記畳床を形成すると共に、
前記畳表は、前記畳床の外周を、表面、および、該畳床の側面を連続して覆うとともに、該畳床の前記側面から、該畳床の裏面まで連続して覆うように配置し、該畳床の外周に該畳表を縫着している柔道畳」

3 甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡プラスチック製の芯材を用いて軽量化を図るとともに寸法の経年変化を防止することのできる合成畳に関する。」

(2)「【0012】
このように畳構成部材が縫着により一体化されることにより、接着材で固定する場合とは異なって各構成要素の上下への動きが可能であるので、反りの発生を防止することができる。」

(3)「【0019】
そして、畳表7、保護材4、補強材2、芯材1、補強材3、裏面材5を図示しない縫糸で一括して縫合固定し、合成畳Aを構成している。なお、縫糸としては、ビニロン系又はポリプロピレン系の糸が用いられている。」

(4)「【0023】
また、本発明の合成畳では、上下の層間に接着剤が介在されず、全て縫糸で一体化されているため、各層間は適宜な移動が可能であるため、復元性が良好で、どの部分を踏んだとしても硬さは均一である。」

(5)図1は次のものである。


(6)図2は次のものである。


(7)図3は次のものである。


4 甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関し、特に、木質の外観を有しながら畳のような感触を有する床材に関するものである。」

(2)「【0029】
-畳床用芯材-
平板状の畳床用芯材3は、化粧シート5を縫着又は止着可能なボード材料であればよいが、例えば、図2(a)に示すように、一般に畳床に使用される木質繊維板(タタミボード、以下「TB」という)23の複数枚の積層板、若しくは、図2(b)に示すように発泡樹脂板13(又はTB23)の単体板、又は、図2(c)に示すようにこれらの組合せの積層板であり、軽量且つ縫製可能となっている。畳床用芯材3として、積層板を用いる場合には、TB23と発泡樹脂板13とが接着剤による接着や縫着等によって一体化される。なお、必要に応じて、表面側に保護紙(図示せず)、裏面側に防水紙(図示せず)を設けてもよい。」

(3)「【0032】
この化粧シート5は、その端部が、畳床用芯材3の幅方向の端部3a及び/又は長手方向の端部3bに縫着又は止着により間欠的に固定されて、換言すると、縫着、タッカー留め、ピン留めなど、固定箇所同士が所定の間隔をあけて間欠的に固定される方法により固定されて、畳床用芯材3と一体となっている。このように、化粧シート5は、接着剤による貼着のような取り外しが困難な固定ではなく、また、畳床用芯材3表面の全面に亘って縫着して一体化するものではなく、一般的な畳表の縫着と同様に、幅方向の端部3a及び/又は長手方向の端部3bにおいてのみ縫着又は止着したものであることから、縫着糸11を解いたりステープルやピンを抜いたりすることで、容易に取り替えられるようになっている。その一方、縫着又は止着という簡単な作業により、新たな化粧シート5を畳床用芯材3に容易に取り付けることが可能になっている。すなわち、本実施形態の床材1によれば、畳床用芯材3の表面と化粧シート5の裏面とを接着剤7等で全面的に貼着していた従来の床材と異なり、化粧シート5を容易に取り替えられるので、化粧シート5を用いつつ畳の更新性を維持することができる。なお、固定方法は、縫着による固定でも、止着による固定でもよいし、縫着と止着による固定を組み合わせてもよい。」

(4)図1は次のものである。


(5)図2は次のものである。


(6)図3は次のものである。


5 甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
表面シート材と、釘やネジを使用することが可能な硬い素材が使用された下地板と、畳床とが上からこの順で積層されてなる畳床フロアであって、表面シート材と下地板は貼着されており、前記表面シート材は、前記畳床の少なくとも側面に固定するために、前記下地板と貼着した際に下地板からはみ出した部分を有しており、前記畳床の表面と前記下地板の裏面は固着されていないことを特徴とする畳床フロア。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、畳床に固着されていない下地板と下地板に貼着される表面シート材を備えた畳床フロア及びそれに用いる表面シート材に関するものである。」

(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は洋風化してきた生活に合わせられる畳をいかにして製造し、提供するが事が出来るかである。それには、和室の畳を洋室の床の様に変更する事が出来るかである。そして、リフォーム工事をして洋室にするより畳を使って洋室にした方が良いと思ってもらえる畳を作る事が出来るかである。畳床を使用して和室を洋室に変える方法として考えられる方法は、畳床にクッションフロアなどのシート材を縫着させる方法である。しかし、いぐさ表と同じ方法で縫着させると問題が起こる。畳の製造方法は、畳床にいぐさ表の片側を縫着させ、反対側は、引っ張って弛みを取り縫着させる。しかし、クッションフロアは引っ張られる様には作られていない為、歪みが出る。しかし、引っ張らずに畳床に縫着すれば弛みが出る。元々、貼着して使用する様に作られている為、強度にも問題が起こる。そこで、クッションフロアに出る歪みを無くし、元々の強度を出すにはどうすれば良いかである。その点を解決したフロアを提供することを課題とする。そこで、クッションフロアを貼着して使用する為に必要となるのが下地板である。尚、下地板は畳床に固着させずに使用する事を特徴とする。下地板を畳床に固着させずに使用する事で、簡単に本来の畳に戻す事が可能になる。」

(4)「【発明の効果】
【0018】
畳床にクッションフロアなどのシート材を直貼り出来ない理由は、接着剤等で畳床とクッションフロアなどのシート材を固着してしまうと、剥がす時に畳床の表面がボロボロになり畳床の再利用が出来なくなる。ただ、薄板が使用されている畳床であれば、剥がす時に畳床の表面がボロボロになることは無いので、直貼りが可能になる可能性はある。しかし、床の縫い糸の凹凸が表面に出てしまう。下地板の効果は、畳床の再利用を可能にさせる為の物であり、畳床にある凹凸が表面に出ない様にする為の物でもある。更に、クッションフロアなどのシート材に出る歪みを無くし、本来の強度を持たせる事を可能にした。縁無し畳であれば下地板を厚くする事で強度を増す事も可能となる。クッションフロアなどのシート材を使用する事で、水拭きが出来る様になりペットを飼う事も台所で使用する事も可能になる。更に畳と畳の間の溝をコーキング剤等で埋める事で完全に水の浸み込みを止める事も可能になる。これで、リフォーム工事をしてクッションフロアなどのシート材を貼着させた洋室と略同じ使用が可能になる。尚且つ、畳本来の防音効果と保温効果も兼ね備えている。畳床フロアは、ベースに畳床を使用する事で、部屋を洋室にする事も、和室に戻す事も、いぐさ表の畳と表面シート材を貼着させた畳を1つの部屋にミックスで設置する事も可能にした。」

(5)「【0028】
第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の畳床フロア1の斜視図である。下地板4が貼着した表面シート材2を畳床側面に縫着させ製作した縁無し畳である。しかし、畳には、図25の様に縁付き畳もある。又、大きさも厚さも取付け方法にも決まりは無い。畳床の種類もいろいろあり限定するのは難しいが、凸凹の出にくい素材で一般的に使用されている畳床で上からボード5、発泡素材6、ボード5、裏シート7の四層構造の物、もしくは薄板19、発泡素材6、裏シート7の三層構造の物が好ましい。畳床は、素材を重ねて、図8で示す14の糸で縫われ一体化している。下地板4については、面取りが必要な場合は行う。表面シート材2に防炎加工Gを施す事も可能であり、畳床8部分に把持部Hを設ける事も可能である。
【0029】
図2は、図1の畳床フロア1の断面図である。表面シート材2と下地板4は貼着されており、畳床8aとは固着されず、畳床側面に表面シート材2が縫着され一体化している。尚、一体化させる方法は、表面シート材2を畳床の側面又は底面に折り曲げタッカーなどで付ける方法もある。一体化させる方法に決まりは無いが縫着する方法が好ましい。下地板4と畳床8aを固着しない一番のメリットは、いつでも簡単に元の畳に戻す事が出来る事である。高さの問題も外した下地板4を畳の下に敷く事で解決される。」

(6)「【0034】
図7について説明する。本発明の畳床フロア1の一部切欠斜視図である。縁無し畳床フロア1の強度を増す為には、下地板4を厚くする事が必要になる。その時、下地板4をどこまで厚くする事が可能であるかを示した説明図である。13に示す様に縫い糸3の少し上までは下地板4を厚くする事が可能である。」

(7)図1は次のものである。


(8)図2は次のものである。


(9)図7は次のものである。


6 甲第6号証
甲第6号証には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
畳床を畳表で被覆した畳において、畳床の上面に素材自体が滑り止め材で構成されるか又は素材の表面に滑り止め加工を施した緩衝体を非接着で載せ、緩衝体の上方を畳表によって緊張状態で被覆したことを特徴とする畳。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、畳に関するものである。」

(3)「【0003】
ところで、床に敷き込んだ畳に脚等を斜めに強く突っ込むと、畳表に皺が寄ったり、破れたりすることはよく経験することである。このため、畳表を畳床に被覆する場合、表面を緊張状態にしてこれらを回避している。ところが、このように畳表を緊張状態にすると、畳自体が上方に反り返るが、敷いたときにその自重で平坦に近づく。しかし、こうしたとしても、皺が寄ったり、破れたりるするのは完全に抑えることはできない。そこで、下記特許文献1に示されるように、畳床と畳表の間に皺寄りや破れの力を減弱する緩衝体を介在させ、これら畳床、緩衝体及び畳表を接着剤で接着したものが提案されている。
【0004】
ところが、接着剤で接着していると、皺等の原因になる延びは抑制されるものの、一旦皺がよったものは元には戻らない。また、廃棄等に際して各素材を分類するとき、接着剤を剥がさなければならないから、非常に手間と時間をとる。さらに、畳表に上質材を使用しているようなときに、これを裏返して使う表替えができない(接着剤から剥がしてあるから)。その他、接着剤を使用することで、作業環境を悪化させるということもある。」

(4)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、緩衝体は使用するものの、緩衝体と畳床及び畳表を接着しないことにより、上記した種々の欠点を解消したものである。」

(5)「【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、緩衝体は素材そのものが滑り止め材で構成されているか表面に滑り止め加工を施してあるものであるから、畳表に斜め方向の強い力がかかっても、その力を減弱して皺が寄ったり、破れたりすることが少ない。また、畳床、緩衝体及び畳床は互いに非接着であるから、接着剤を使用することによる欠点が生じない。例えば、畳表を裏返す表替えで新品同様に再使用するようなことも可能である。」

(6)「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を最近多く使用される薄畳を例にとって図面を参照して説明する。図1は本発明に係る畳の断面図であるが、この畳は、畳床1と、緩衝体2と、畳表3とからなる。畳床1は本来の藁床であってもよいが、薄畳は厚みが20mm以下が多いことから、安価なポリスチレンフォームにベニヤ板やインシュレーションボード板を重ねた建材床が適する。
【0012】
緩衝体2は建材床の硬さを緩衝するとともに、畳表3にかかる力を減弱して滑り等を防止するもので、一般的な発泡樹脂体が使用されるが、ポリエステルの織布、不織布が緩衝作用が強く、滑り止め効果が十分であることから、適正度が高い。畳表3は、い草、植物、樹脂の織布、不織布があるが、中でも、厚手の布製の上質クロスを使用すると美観に優れて肌触りがよいが、高価なのが難点である。
【0013】
次に、この畳の製畳方法について説明すると、畳床1の上面に緩衝体2を載せる(接着しない)。本例における畳表3の載せ方は、畳床1の大きさと同じものを全面的に載せているが、部分的に載せてもよい。この緩衝体2は素材そのものが滑り止め材で構成されているか又は上面に滑り止め加工が施された素材(以下、滑り止め加工品)を使用する。滑り止め材の具体例としては、上記のポリエステルの他にゴムシート、ポリオレフィン系の織布又は不織布等、摩擦係数の高いものが考えられる。」

(7)「【0015】
次いで、畳表3で畳床1及び緩衝体2を緊張状態(引っ張った状態)で包み込むように巻く。このとき、畳表3の端部は畳床1の側面に沿うか下面にまで回り込ませる。そして、これを畳床1に固定するのであるが、これを接着剤を使用しない機械的な固定による。具体的には、畳糸4による縫着が考えられるが、止金によるものでもよい。したがって、接着剤は不要になり、接着工程も必要としないし、作業環境も悪化しない。なお、畳表3は緊張状態で巻くので、多少上方に反り返るが、床に置いて上方から荷重をかければ元に戻る。」

(8)図1は次のものである。


(9)図2は次のものである。


7 甲第7号証
甲第7号証には、以下の記載がある。
(1)「[産業上の利用分野]
本考案は柔道競技に使用する畳に関するものである。さらに詳しくは、軽量で、容易にしかも安価に製造する事が出来るとともに、柔道競技に使用した場合、耐久性と競技者の安全性および衛生面の点で優れた柔道用畳に関する。」(明細書1頁10行-15行)

(2)「[考案の構成]
第1図は本考案の柔道用畳の基板の構成を示し、第2図は完成した柔道用畳の断面図を示す。
まず長さ1,840×幅930×厚さ20mmの剛性軽量発泡板(スチレンボード)2を切り出し、この板の上下面にこれと同じ長さと幅を有し厚さが2.5mmの木製合板1および3を接着剤を用いて貼着し芯体を作る。次いで、この芯体の上下面にこれと同じ長さと幅を有し厚さが10mmの弾力性合成樹脂発泡シート5と厚さが25mmの軽量合成樹脂発泡よりなる板4を接着剤及び粘着剤を用いて貼着する。さらに軽量合成樹脂発泡板4の下面に裏打材として合成あるいは天然繊維製織布複合紙6を接着剤及び貼着剤を用いて貼着し、畳床として必要な寸法に切断し、最後にこのように構成された積層一体化構造体の、その上面と側面を畳表シート7によって被覆する。該畳表の被覆はその端部を糸あるいは接着剤を用いて固定することにより行われる。上記の構成において、軽量合成樹脂発泡板2の上下面に位置する木製合板1および3は柔道競技の実施中に畳に加わる集中荷重および過剰衝撃を有効に分散し、なお畳床全体の伸縮を防ぎ、平滑性を保持し、畳全体の破損を防止するよう機能する。またこの上層に位置する弾力性軽量合成樹脂発泡シート5および下層に位置する軽量合成樹脂発泡板4は柔道競技の実施に適した風合とクツシヨン効果を発揮する。本考案の柔道用畳は積層構造を構成する際に結合の手段として糸を使用しないので、縫針の貫通孔を亀裂破壊の起点とするような破壊を生じることがない。しかも適度な剛性を有する軽量剛性樹脂発泡体よりなる板材の上下面に同一の木製合板を貼着したものを芯体としているので、軽量で撓み性が少なく、とくに持ち運びが容易である。
[考案の効果]
本考案の柔道用畳は軽量合成樹脂発泡体を主要材料とし、その一部に適度の剛性を有する軽量合成樹脂発泡体を中心にその両面に木製合板を接着あるいはその他の手段で接合することによってサンドイツチ構造とした芯体を使用することにより、柔道競技の実施中に加わる荷重の分散が製品の重量増加を来すことなく有効に行われ、下層部にあるクツシヨン性軽量合成樹脂発泡体の部分ひずみを防ぎ常に平滑性が保たれる。なお畳の上げ下ろしや運搬の際には畳自体軽量であると共に腰があるため容易に移動出来、上げ下ろしを常に必要とする体育館や仮設大会会場での使用にも適している。よつて畳自体の耐久性の向上と競技者の安全と快適性が確保できる利点を有する。」(明細書4頁17行-7頁5行)

(3)図1は次のものである。


(4)図2は次のものである。


8 甲第8号証
甲第8号証には、以下の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家屋の洋間や板間あるいはロビーなどの床に畳を並べて畳コーナーを設置する置き畳として利用される縁なし畳に関する。」

(2)「【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1(A)は本発明の縁なし畳10を上下方向に分解して示す斜視図である。この図が示すように、縁なし畳10は中間部の畳床30と、この畳床30を表面側から覆う畳表40と、裏面側から貼り付ける裏シート20とで構成される。図においては、本発明の畳床裏面での畳表固定構造を明瞭に表すため畳床30の裏面側を上向きにして示している。
【0021】
畳床30は、木質繊維板からなる方形板状の部材であり、図では正方形の板材を例にとって説明する。この畳床30となる木質繊維板としては、厚さh1が10?50mm程度で、かつ見掛け密度が0.2?0.35g/cm^(3)程度のインシュレーションボード(軟質繊維板)を用いるのがクッション性、断熱性、防音性等の観点から適している。」

(3)「【0026】
畳表40は、天然のイ草や細幅にスリットした機械抄和紙を筒状にして撚りをかけた人工の筒状抄繊糸などを縦糸にして編織して得た可撓性を有するシートである。このシート状の畳表40の畳表本体40aは、図2に示すように正方形の畳床30と同じ大きさの正方形を有しており、この畳表本体40aで畳床30の表面を覆い、このとき畳床30からはみ出した畳表本体40aの周縁部を畳床30の裏面側へと折り返して巻き込み、この巻き込んだ部分を接着剤で固定して一体化するようにしている。」

(4)「【0032】
裏シート20は、畳床30を畳表40で覆った後、その裏面側を最後に覆うシートであって、例えば外面の摩擦係数を大きくした不織布を用いる。この不織布を畳床30より一回り小さい大きさに形成して畳の裏面に接着固定するものである。」

(5)図1は次のものである。


(6)図2は次のものである。


(7)図3は次のものである。


(8)図4は次のものである。


(9)図5は次のものである。


(10)図6は次のものである。


(11)図7は次のものである。


(12)図8は次のものである。


9 甲第9号証
甲第9号証には、以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば日本間における6畳間や8畳間のように規格化された面積を有するように施工された床面を複数枚で敷き詰めるように構成された畳のような規格寸法を有する敷設物に関するものである。」

(2)「【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態の一例を図面に基づいて説明する。
図5に示すように、本発明の敷設物11は、その外形が規格寸法を有し、規格化された面積を有するように施工された床面10を敷き詰めるように構成される。ここで、規格化された面積とは、例えば日本間でいえば6畳間や8畳間のようにその床面10における面積が予め規格化されたものをいい、敷設物11の外形はその床面10を敷き詰める枚数により定められた規格寸法をいう。敷設物11は正方形又は長方形であることが一般的であり、正方形の薄畳の場合を例示すれば、その厚さは、一般的には3?60mmであり、好ましくは5?20mmであり、最も好ましくは10?20mmである。また、外径が正方形である場合の規格寸法は、その一辺の長さは、一般的には440?1000mmであり、好ましくは800?900mmであり、最も好ましくは820?880mmである。
【0012】
図1に示すように、敷設物11は、角形の芯板12と、芯板12の少なくとも1つの側縁に側縁の全長にわたって添着される弾力性のある縁材13と、芯板12の表面を縁材13とともに被覆して芯板12の表面及び縁材13に固着される表面シート14とを備える。芯板12は角形であれば一般的な三角形や四角形の他に、床面10を複数枚で敷き詰めることができる限り、五角形や六角形、又は八角形であってもよい。縁材13は芯板12の少なくとも1つの側縁に添着されるものであるけれども、芯板12が四角形である場合には縁材13を芯板12の相対向する2つの側縁に添着することが好ましい。
【0013】
図1には敷設物11が薄畳である場合を示し、図1の芯板12は畳芯であり、表面シート14はイ草茎からなる畳表である。この場合縁材13はイ草茎に平行になるように芯板12の相対向する2つの側縁に添着される。芯板である畳芯12は、従来から用いられているワラや、このワラに代えて発泡ポリスチレン等の発泡体から構成されるけれども、例えば木質系ボード単体であっても、その木質系ボードに発泡体を貼着した積層構造を有していてもよい。発泡体を用いる場合には、クッション性及び環境問題の双方を考慮に入れると、炭酸カルシウムとポリオレフィンの複合発泡体又はフェルトが最も好ましい。一方、敷設物11が比較的大きく、その反りを防止するのであれば、炭酸カルシウムとポリオレフィンの複合発泡体又はフェルトからなる層の底に、ゴム層を付加しても良い。」

(3)「【0017】
なお、上述した実施の形態では、表面シート14が芯板12の表面に直接固着される場合を説明したが、図6に示すように、芯板12の表面に弾力性のある表面クッション材16を被着し、表面シート14がその表面クッション材16を介して芯板12と縁材13とを被覆するようにしても良い。このように表面クッション材16を備えれば、縁材13の弾力性によりその縁材13が設けられた方向における寸法を弾力的に変化させるとともに、表面クッション材16の存在により敷設物11の厚さ方向における弾力性を向上させることができる。このため、比較的硬い芯板12を用いる場合に有効である。この場合、表面クッション材16はオレフィン系発泡体、ゴム系発泡体、発泡エラストマー、ウレタン系発泡体、不織布又はフェルトであることが好ましく、縁材13と表面クッション材16とを同一材料で一体的に形成すれば縁材13と共のその表面クッション材16を同時に得ることができるので更に好ましい。」

(4)図1は次のものである。


(5)図2は次のものである。


(6)図3は次のものである。


(7)図4は次のものである。


(8)図5は次のものである。


(9)図6は次のものである。


(10)図7は次のものである。


10 甲第10号証
甲第10号証には、以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、畳、特にサイズの調整可能な畳に関するものである。」

(2)「【0017】
【発明の実施の形態】以下図面に示す実施の形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明畳1の1例を示す断面図である。この例は、ほぼ正方形の縁なし畳である。床材2の側面部に変形部材3が固着されている。この例では、インシュレーションボードである。床材2の表裏面にはクッション材4が貼付されている。また、図からわかるように変形部材3は、床材2より高さが低く、下方に空間5ができている。これは、変形部材3を変形させた時に逃げる部分となり、変形が容易となり、且つ畳表6に悪影響を及ぼさないためのものである。勿論、床材3と同じ高さでも構わない。この図では、畳表6は省略して描いている。この図はイグサが長手方向と直角に断面されているため框部の図である。
【0018】畳表6は床材2の裏面にまで及んでいるが、これも側面まででもよい。このインシュレーションボードは、通常の床材(ベニヤやプラスチック)よりは柔軟であり、畳を入れる程度の力や木槌程度の力で変形できるため、本発明の塑性変形部材としては好適である。
【0019】
【発明の効果】本発明は次のような大きな効果がある。
(1) 畳の側面に変形部材が設けられているため、サイズの現場での調整が可能である。
(2) 変形部材として、塑性変形部材と弾性変形部材があり、どちらもそれぞれの利点を有している。
(3) 変形部材は畳表の内部であるため、通常はまったく見えず使用者には意識されない。
(4) 現場で寸法が合わないため、製造しなおしという最悪の自体を軽減できる。
(5) 特に薄畳のような剛性床材には好適である。」

(3)図1は次のものである。


11 甲第11号証
甲第11号証には、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】
四角形の畳床の表面を経糸に緯条を織成した畳表の上に置いて四辺に余部を残して全面接着するとともに、畳表を畳床の角の頂点から辺の延長方向に畳床の高さだけ90°に開いてカットし、それを過ぎると外辺まで45°にカットし、余部を折り返して畳床の裏面に接着剤で接着するとともに、このとき、畳表の経糸を折る方向に対しては非接着で、かつ、外方に膨らませて畳床との間に中空部を形成したことを特徴とする縁なし薄畳。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本考案は、縁なし薄畳に関するものである。」

(3)「【考案を実施するための形態】
【0011】
以下、本考案の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は縁なし畳の裏面図であるが、この畳は床1と表2とからなる。床1はインシュレーションボードのような硬い部材で構成される。床1の厚みは薄畳であるから、7?15mm程度であり、長さは910mm四方程度(半畳)の大きさを有している。表2は天然又は人造のござが普通であるが、織布や不織布のものもある。中でも、天然又は樹脂製のものが最適であり、これは、経糸に対して繊維質の緯条を連並した織布(編布)であり、繊維質と平行な方向(これを「カマチ」という)には曲がり易いが、繊維質の方向(したがって、「非カマチ」という)には繊維質を折らなければならないから、曲がり難いのが特徴である。
【0012】
以上の表2を床1の一面(表面)に全面接着する。このとき、表2は床1よりも1割程度面積の広いものを採用し、床1を表2の中心に位置させる。そして、床1の角3(稜線)の頂点の部分の表2の位置を出発点として床1の辺の延長上に稜線の長さだけ90°にカットする。それをすぎると外辺まで45°方向(床1の対角線方向になる)にカットし、このはみ出た部分を余部4とする。なお、床1の表面と表2の接触部分は全面的に接着しておく。このときの接着剤の種類は問わないが、水性又は油性の種々の溶剤系のものでよい。
【0013】
また、接着の速度や強度からいえば、ホットメルト糊もある。ここでいうホットメルト糊とは、熱可塑性のもので、ポリアミド系、オレフィン系、エステル系があり、70°以上で溶解し、冷却すると、固化して二つのものを結合し、接着を完了するものであり、形態もパウダー、ネット、溶液、フィルム状とある。
【0014】
これで、床1と表2の一面同士は接着されたものになるが、図2は表2の一方を貼った場合の要部斜視図であるが、90°カットした表2の頂点は床1の角3(稜線)の頂点と一致したものになる。したがって、もう一方の表2を貼ると、表2と表2はこの角3(稜線)を挟んで突き合わされたようになり、体裁のよいものになる。図4は隙間が空いたような場合の措置の方法を示す要部斜視図であるが、ここに表2の小片2aをあてがい接着剤で接着しておけば、所謂、ぼろ隠しができる。」

(4)「【0019】
ところで、以上の説明では堰体6や熱盤9は右側の一辺だけに設けられたものであるが、左側にも設けてもよい。こうすると、二辺の余部4を同時に接着することができる(余部4の床1の裏面への接着は四辺で行う)。以上の表2の接着作業のとき、表2は床1の側面で折り曲げられる。図3はこの部分の要部断面図であるが、これは「カマチ」の部分では容易であり、接着剤が床1と表2の間まで入り込んでいたりすると(積極的には入れないが)、その部分では接着される。また、接着剤が入り込んでいなければ、表2は床1に密着はしているが、接着はされていない(a)。
【0020】
これに対して「非カマチ」の部分では表2の緯条の繊維質は短い区間で約90°二回折り曲げられなくてはならない。したがって、よほど強い力で表2を床1に押し付けても、さらに、仮に、床1と表2の間に接着剤が入っていても、接着されることはない。つまり、表2が外方に膨らみ、両者の間には中空部ができる(b)。なお、接着剤が入り込んで部分的に接着されている個所があったとしても、ここでは、接着されたとはいわない。
【0021】
このことは若干美観を害すものであっても長所がある。すなわち、隣の畳と突き合わせられたとき、両者の間が緊くても、側面の膨らんだ方の表2が縮んでそれを吸収する。また、予め凹ませておけば逆のこともできる。この結果は、畳を集積して敷いたときには必ず生ずる。なぜなら、この種の畳は隣合うものでは、表2の緯条の繊維質の向きを90°ずつ変えて敷く市松模様で敷くのが通常であるからである。」

(5)図1は次のものである。


(6)図2は次のものである。


(7)図3は次のものである。


(8)図4は次のものである。


第5 判断
1 取消理由1(明確性要件違反)について
申立人は、請求項1において「非固着」の意味が曖昧であるから、本件発明1、及び本件発明1と従属関係にある本件発明2ないし6は明確でない旨主張するので、「非固着」が明確であるか否かについて検討する。

(1)「非固着」が明確であるか否かについて
請求項1には「前記表面材と前記衝撃吸収材とは、非固着の状態で積層されている」と記載されており、また、「非」は「そうでない意を表す語」、「固着」は「かたくしっかりとつくこと。一定の場所に留まって移らないこと。」をそれぞれ意味するから([株式会社岩波書店 広辞苑第六版])、「非固着」の状態で積層されているとは、前記表面材と前記衝撃吸収材とは、かたくしっかりとついてはいない状態で積層されていることであると理解できる。
そして、このような理解は、本件特許明細書の段落【0031】の「本実施形態では、シート材15は、ベース材10の表面10a、側面10b、および裏面10cの一部を覆うように、接着剤、粘着剤、またはステープル等で、その一例としてベース材10の表面材11および衝撃緩衝材12のそれぞれに固着されている。・・・なお、本発明でいう「固着」とは、接着剤または粘着剤による「貼着」を含むものである。」及び段落【0032】の「・・・表面材11と衝撃吸収材12とは、接着剤または粘着剤による貼着または熱による融着により積層されている。しかしながら、後述するシート材15を覆った状態で、表面材11と衝撃吸収材12との積層状態を保持することができるのであれば、表面材11と衝撃吸収材12とは、貼着または融着などにより固着されていなくてもよい。このように表面材11と衝撃吸収材12とが非固着状態である場合、これらを個別に簡単に取り換えることができるばかりでなく、表面材11と衝撃吸収材12とが相互に拘束されないので、衝撃吸収の向上も期待できる。・・・」との記載とも整合する。
以上のとおりであるから、「非固着」は明確であるといえる。

(2)申立人の主張について
申立人は、「非固着」の意味が不明であることについて、本件明細書の発明の詳細な説明には、「非固着」が表面材11と衝撃吸収材12のどのような状態を指すのかを積極的に定義した記載はなく、また、本件明細書の段落【0032】を参酌すると、本件の請求項の構成は、表面材11と衝撃吸収材12との積層状態を保持することができるのであれば、表面材11と衝撃吸収材12とは、貼着または融着などにより固着されていない状態を指すものと理解できるが、「固着」の範囲が曖昧であるため、「非固着」の範囲も曖昧となり、発明の範囲が不明確となる旨主張する。(申立書第27頁第19行-第28頁第9行)
しかしながら、上記(1)のとおり、「非固着」の意味は明確であるから、申立人の上記主張は採用できない。

(3)まとめ
以上のとおり、明確性要件に関して、申立人が主張する理由によって、本件発明1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。

2 取消理由2(新規性欠如)および3(進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明を主引例とした場合の検討
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「適度なクッション性を有した基台」は、本件発明1の「衝撃吸収性を有したパネル状のベース材」に相当し、同様に、
「基台を被覆する畳表シート」は、「ベース材を覆うシート材」に相当する。
また、甲1発明の「柔道用畳」は、適度なクッション性を有した基台と、該基台を被覆する畳表シートとを少なくとも備えたものであって、衝撃を吸収することが明らかであるので、本件発明1の「衝撃吸収用床材」に相当する。

また、甲1発明の「前記基台は、上層に弾力性に富んだウレタンフォームのごとき軟質発泡体を配し、その下面側にベニヤ板のごとき薄い合板を介して発泡スチロールのごとき硬質発泡体を重合し、該軟質発泡体の上面および硬質発泡体の下面に保形用シートもしくは布帛を重合したのち、該上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合することで形成」する点と、本件発明1における「前記ベース材は、前記ベース材の表面に配置される表面材と、前記ベース材の裏面に配置され、前記表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する衝撃吸収材と、が少なくとも積層された積層構造体であ」る点とは、「前記ベース材は、複数の部材が積層された積層構造体であ」る点で共通する。

また、甲1発明の「前記畳表シートは、前記基台の表面および該基台の側面を連続して覆うとともに、該基台の側面から該基台の裏面の一部まで連続して覆うように配置」する点と、本件発明1における「前記シート材は、前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されて」いる点とは、「前記シート材は、ベース材の表面、および、ベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、ベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されて」いる点で共通する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「衝撃吸収性を有したパネル状のベース材と、該ベース材を覆うシート材とを少なくとも備えた衝撃吸収用床材であって、
前記ベース材は、複数の部材が積層された積層構造体であり、
前記シート材は、ベース材の表面、および、ベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面からベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されていることを特徴とする衝撃吸収用床材。」

(相違点1)
本件発明1は、ベース材について、「前記ベース材の表面に配置される表面材と、前記ベース材の裏面に配置され、前記表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する衝撃吸収材と、が少なくとも積層された積層構造体であり」、シート材について、「前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されて」いるという構成を備えるのに対し、甲1発明は、基台について、上層に弾力性に富んだウレタンフォームのごとき軟質発泡体を配し、その下面側にベニヤ板のごとき薄い合板を介して発泡スチロールのごとき硬質発泡体を重合したのち、該上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合することで形成された積層構造体であり、畳表シートについて、前記基台の表面および該基台の側面を連続して覆うとともに、該基台の側面から該基台の裏面の一部まで連続して覆うように配置している点。

(相違点2)
本件発明1は、ベース材の表面に配置される部材である「表面材」と、ベース材の裏面に配置される部材である「衝撃吸収材」とは、「非固着の状態で積層されている」という構成を備えるのに対し、甲1発明は、軟質発泡体の上面および硬質発泡体の下面に保形用シートもしくは布帛を重合したのち、該上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合することで、基台を形成している点。

(イ)判断
a 相違点1について
(a)甲1発明の「軟質発泡体」および「硬質発泡体」と、本件発明1における「表面材」および「衝撃吸収材」は、いずれも積層構造体を構成する部材であるが、甲1発明の「硬質発泡体」は、本件発明1における「表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する」構成を有しておらず、また、甲1発明は、上層に配した「軟質発泡体」の弾力により適度なクッション性が発現されている柔道用畳であることから、「軟質発泡体」と「硬質発泡体」の位置を交換することは当業者が技術常識を勘案しても容易になし得る事項ではない。さらに、「硬質発泡体」に代えて、「軟質発泡体」よりも軟質な発泡体とすることも当業者が技術常識を勘案しても容易になし得る事項ではない。

(b)また、甲1発明の「軟質発泡体の上面」および「硬質発泡体の下面」に「保形用シートもしくは布帛」を重合したものが積層構造体を構成する部材であると解することもできるが、そのように解した場合も、上記(a)の「軟質発泡体」および「硬質発泡体」についての検討と同様である。

(c)また、甲1発明の「ベニヤ板のごとき薄い合板」および「硬質発泡体」と、本件発明1における「表面材」および「衝撃吸収材」は、積層構造体を構成する部材であるが、甲1発明の「ベニヤ板のごとき薄い合板」は、本件発明1における「表面材」のように、ベース材の表面には配置されておらず、また、甲1発明の「ベニヤ板のごとき薄い合板」の上層に配される、弾力により適度なクッション性が発現するための「軟質発泡体」を省略することは当業者が技術常識を勘案しても容易になし得る事項ではない。

(d)他に上記相違点1に係る積層構造体を示唆する証拠もない。

(e)そして、上記相違点1に係るベース材の積層構造体を得ることが、甲1発明および技術常識を勘案しても当業者が容易になし得る事項でない以上、前記積層構造体を覆うように配置される上記相違点1に係るシート材を得ることも当業者が容易になし得る事項ではない。

(f)よって、甲1発明において、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

b 相違点2について
甲第3号証には、「このように畳構成部材が縫着により一体化されることにより、接着材で固定する場合とは異なって各構成要素の上下への動きが可能であるので、反りの発生を防止することができる。」(段落【0012】)、甲第4号証には、「平板状の畳床用芯材3は、化粧シート5を縫着又は止着可能なボード材料であればよいが、例えば、図2(a)に示すように、一般に畳床に使用される木質繊維板(タタミボード、以下「TB」という)23の複数枚の積層板、若しくは、図2(b)に示すように発泡樹脂板13(又はTB23)の単体板、又は、図2(c)に示すようにこれらの組合せの積層板であり、軽量且つ縫製可能となっている。畳床用芯材3として、積層板を用いる場合には、TB23と発泡樹脂板13とが接着剤による接着や縫着等によって一体化される。」(段落【0029】)と記載されているが、甲第3号証および甲第4号証記載のものが、かたくしっかりとついている状態、すなわち固着の状態であることに変わりはない。
甲第5号証には、「表面シート材2と下地板4は貼着されており、畳床8aとは固着されず、畳床側面に表面シート材2が縫着され一体化している。尚、一体化させる方法は、表面シート材2を畳床の側面又は底面に折り曲げタッカーなどで付ける方法もある。一体化させる方法に決まりは無いが縫着する方法が好ましい。下地板4と畳床8aを固着しない一番のメリットは、いつでも簡単に元の畳に戻す事が出来る事である。」(段落【0029】)と記載されているから、下地板4と畳床8aとは非固着である。しかしながら、甲第5号証における下地板4は、和室の畳を洋室の床の様に変更するために、貼着して使用する様に作られているクッションフロアを貼着して使用する為に、畳床8aの上に配置するものである(段落【0009】および【図2】)。
そのため、甲第5号証における下地板4と畳床8aとが非固着であるからといって、甲1発明における基台の中の部材を非固着とすることが示唆されるものでなく、甲1発明に甲第5号証に記載された構成を適用しても相違点2に係る構成に至るものではない。
甲第6号証には、「緩衝体2は建材床の硬さを緩衝するとともに、畳表3にかかる力を減弱して滑り等を防止する」(段落【0012】)、「畳床1の上面に緩衝体2を載せる(接着しない)。本例における畳表3の載せ方は、畳床1の大きさと同じものを全面的に載せているが、部分的に載せてもよい。」(段落【0013】)、「このとき、畳表3の端部は畳床1の側面に沿うか下面にまで回り込ませる。そして、これを畳床1に固定するのであるが、これを接着剤を使用しない機械的な固定による。具体的には、畳糸4による縫着が考えられるが、止金によるものでもよい。」(段落【0015】)と記載され、図1における畳糸4が畳表3の端部のみを畳床1に固定しているから、緩衝体2と畳床1とは非固着である。
しかしながら、甲第6号証においては、畳床1の上に配置した緩衝体2および畳表3を、表替えや廃棄時の作業を考慮して接着しないものであるから(段落【0004】、【0006】)、甲第6号証における緩衝体2が畳床1に接着されていないからといって、甲1発明における基台の中の部材を非固着とすることが示唆されるものでなく、甲1発明に甲第6号証に記載された構成を適用しても相違点2に係る構成に至るものではない。
そして、甲1発明の「基台」は、使用中における片寄りを防止するために、上下のシートもしくは布帛間を縫糸でもって貫通縫合することが必須の構成であることから、縫糸でもって貫通縫合することを省略することは、容易になし得る事項ではない。
他に上記相違点2に係る非固着の状態で積層されている構成を示唆する証拠もない。
よって、甲1発明において、甲第3号証ないし甲第6号証に記載の発明を適用して、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

c なお、甲第7号証には、「さらに軽量合成樹脂発泡板4の下面に裏打材として合成あるいは天然繊維製織布複合紙6を接着剤及び貼着剤を用いて貼着し」(明細書5頁8行-10行)、「該畳表の被覆はその端部を糸あるいは接着剤を用いて固定することにより行われる。」(明細書5頁13行-15行)、甲第8号証には、「畳床30は、木質繊維板からなる方形板状の部材であり」(段落【0021】)、甲第9号証には、「芯板である畳芯12は、従来から用いられているワラや、このワラに代えて発泡ポリスチレン等の発泡体から構成されるけれども、例えば木質系ボード単体であっても、その木質系ボードに発泡体を貼着した積層構造を有していてもよい。」(段落【0013】)、「芯板12の表面に弾力性のある表面クッション材16を被着し、表面シート14がその表面クッション材16を介して芯板12と縁材13とを被覆するようにしても良い。」(段落【0017】)、甲第10号証には、「床材2の表裏面にはクッション材4が貼付されている。」(段落【0017】)、甲第11号証には、「床1はインシュレーションボードのような硬い部材で構成される。」(段落【0011】)と記載されているが、衝撃吸収用床材のベース材を構成する部材について、表面に配置される部材よりも裏面に配置される部材を軟質とすることや、前記各部材を非固着の状態で積層していることは記載も示唆もない。

d 上記aないしcに示したように、本件発明1の相違点1および2に係る構成は、当業者が容易に想到できたものではないから、本件発明1は、甲1発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)まとめ
本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
また、本件発明1は、当業者が甲1発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲2発明を主引例とした場合の検討
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「衝撃を吸収できる畳床」は、本件発明1の「衝撃吸収性を有したパネル状のベース材」に相当し、同様に、
「畳床を連続して覆う畳表」は、「ベース材を覆うシート材」に相当する。
また、甲2発明の「柔道畳」は、「衝撃を吸収できる畳床」を備えるから、本件発明1の「衝撃吸収用床材」に相当する。
甲2発明が「上部から順に、低発泡高分子部材、ベニヤ板、弾性の小さい発泡高分子部材、弾性の大きい発泡高分子部材を積層」することを踏まえると、甲2発明の畳床の最上部の「低発泡高分子部材」から、「ベニヤ板」、および「弾性の小さい発泡高分子部材」までの部材は、本件発明1の「ベース材の表面に配置される表面材」に相当し、同様に、
「完全に衝撃を吸収する弾性の大きい発泡高分子部材」は、「前記ベース材の裏面に配置され、前記表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する衝撃吸収材」に相当する。

また、甲2発明の「畳表は、前記畳床の外周を、表面、および、該畳床の側面を連続して覆うとともに、該畳床の前記側面から、該畳床の裏面まで連続して覆うように配置」する点と、本件発明1における「前記シート材は、前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面の一部まで連続して覆うように、配置されて」いる点とは、「前記シート材は、前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面まで連続して覆うように、配置されて」いる点で共通する。

さらに、甲2発明の「これらを糸で一体に縫製して所要厚さの畳床を形成する」点と、本件発明1における「前記表面材と前記衝撃吸収材とは、非固着の状態で積層されている」点とは、「前記表面材と前記衝撃吸収材とは、積層されている」点で共通する。

以上のことから、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「衝撃吸収性を有したパネル状のベース材と、該ベース材を覆うシート材とを少なくとも備えた衝撃吸収用床材であって、
前記ベース材は、前記ベース材の表面に配置される表面材と、前記ベース材の裏面に配置され、前記表面材よりも軟質であり、該表面材からの衝撃を吸収するように圧縮変形する衝撃吸収材と、が少なくとも積層された積層構造体であり、
前記シート材は、前記表面材により形成されたベース材の表面、および、前記表面材と前記衝撃吸収材とにより形成されたベース材の側面を連続して覆うとともに、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の裏面まで連続して覆うように、配置されており、
前記表面材と前記衝撃吸収材とは、積層されていることを特徴とする衝撃吸収用床材。」

(相違点3)
本件発明1は、ベース材の表面に配置される部材である「表面材」、ベース材の裏面に配置される部材である「衝撃吸収材」とは、「非固着の状態で積層されている」という構成を備えるのに対し、甲2発明は、畳床が糸で一体に縫製して形成されている点。

(相違点4)
本件発明1は、前記シート材は、前記ベース材の前記側面から、前記衝撃吸収材により形成されたベース材の「裏面の一部まで」連続して覆うように、配置されているのに対し、甲2発明は、裏面の一部までとは特定されていない点。

(イ)判断
a 相違点3について
甲第5号証、および甲第6号証には、それぞれ前記第4の5および6に摘記した事項が記載されているが、上記2(1)ア(イ)bでの検討したと同じ理由で、甲第5号証、および甲第6号証は、甲2発明の畳床の積層構造体を非固着とすることまで開示も示唆もするものではない。甲第3号証ないし甲第4号証、甲第7号証ないし甲第11号証についても、相違点3に係る構成を開示あるいは示唆するものではない。
また、甲2発明の「畳床」は、所要厚さの畳床を形成するために、糸で一体に縫製して畳床を形成していることが必須の構成であることから、糸でもって一体に縫製することを省略することは、容易になし得る事項ではないことは甲1発明と同様である。
したがって、甲2発明において、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明を適用して、本件発明1の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

b よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲2発明、甲第3ないし11号証に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)まとめ
本件発明1は、甲2発明と同一ではない。
また、本件発明1は、当業者が甲2発明、甲第3ないし11号証に記載の発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、本件発明1は、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明である旨、または、甲第3号証ないし甲第6号証に記載されたように従来周知の技術事項を、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に適用することは、当業者が適宜なし得る事項に過ぎない旨主張する。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第6号証が、積層構造体からなるベース材をシート材で覆う床材に関する技術である点で共通しているとしても、上記で述べたように、各甲号証を組み合わせたとしても、甲1発明または甲2発明において、本件発明1のごとく構成することは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。

エ むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明又は甲2発明と同一ではない。
また、本件発明1は、当業者が甲1発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて、または甲2発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の構成を全て含み更に減縮したものである。
そうすると、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4は、甲2発明と同一ではない。
また、本件発明2ないし6は、当業者が甲1発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて、または甲2発明、甲第3号証ないし甲第11号証に記載の発明に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-08-30 
出願番号 特願2014-193946(P2014-193946)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04F)
P 1 651・ 113- Y (E04F)
P 1 651・ 537- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 敏行  
特許庁審判長 秋田 将行
特許庁審判官 須永 聡
有家 秀郎
登録日 2018-10-19 
登録番号 特許第6421005号(P6421005)
権利者 永大産業株式会社
発明の名称 衝撃吸収用床材  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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