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審決分類 |
審判 全部無効 1項1号公知 A01K |
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管理番号 | 1355207 |
審判番号 | 無効2017-800079 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-06-21 |
確定日 | 2019-09-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4802252号「連続貝係止具とロール状連続貝係止具」の特許無効審判事件についてされた平成30年 9月28日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10162号、平成31年 2月28日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4802252号の請求項1?3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 事案の概要 本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4802252号(以下「本件特許」という。平成18年5月24日原出願、平成21年2月13日本件出願、平成23年8月12日登録、請求項の数は3である。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とすることを求める事案である。 第2 手続の経緯 本件審判の経緯は、以下のとおりである。 平成29年 6月21日 審判請求 平成29年 7月14日 証人尋問申出書(請求人) 平成29年 9月 8日 審判事件答弁書 平成29年10月11日 審理事項通知(起案日):審理事項通知書(1) 平成29年10月13日 手続補正書(審判請求理由補充書) 平成29年10月20日 証人尋問申出書(請求人) 平成29年10月30日 口頭審理陳述要領書(請求人・差出日):口頭審理陳述要領書(1) 平成29年11月15日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成29年11月21日 審理事項通知(起案日):審理事項通知書(2) 平成29年12月 1日 口頭審理陳述要領書(請求人・差出日):口頭審理陳述要領書(2) 平成29年12月 1日 検証申出書・検証物指示説明書(請求人・差出日) 平成29年12月 1日 口頭審理・証拠調べ(証人尋問・本人尋問・検証) 平成30年 1月26日 上申書(請求人):上申書(1) 平成30年 1月26日 上申書(被請求人):上申書(1) 平成30年 3月22日 上申書(請求人):上申書(2) 平成30年 3月22日 上申書(2)(被請求人):上申書(2) 平成30年 5月 9日 上申書(請求人・差出日):上申書(3) 平成30年 6月13日 上申書(請求人):上申書(4) 平成30年 9月28日 一次審決(請求人送達日:平成30年10月9日) 平成30年11月 8日 審決取消訴訟提起(請求人)(平成30年(行ケ)第10162号) 平成31年 2月28日 判決言渡(審決取消) 平成31年 4月22日 審決の予告 なお、請求人が提出した平成29年10月13日付けの「審判請求理由補充書」は、平成29年11月21日付け審理事項通知書の「1 (1)」のとおり、職権で「手続補正書(審判請求理由補充書)」と訂正した。 また、提出された書面の後に「:」が付されたものについては、それぞれ、「:」以下のとおりの書面として、以降、読み替えるものとする。 第3 本件発明 本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1」などといい、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(なお、1A?3Bの分説は、請求人の主張に基づく。) 「【請求項1】 1A:ロープと貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材(1)と、その軸方向両端側の夫々に突設された貝止め突起(2)と、夫々の貝止め突起(2)よりも内側に貝止め突起(2)と同方向にハ字状に突設された2本のロープ止め突起(3)を備えた貝係止具(11)が基材(1)の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型された連続貝係止具において、 1B:前記多数本の貝係止具(11)がロープ止め突起(3)を同じ向きにして多数本配列され、 1C:配列方向に隣接する貝係止具(11)のロープ止め突起(3)の先端が、他方の貝係止具(11)の基材から離れて平行に配列され、 1D:隣接する基材(1)同士はロープ止め突起(3)の外側が可撓性連結材(13)で連結されず、ロープ止め突起(3)の内側が2本の可撓性連結材(13)と一体に樹脂成型されて連結され、 1E:可撓性連結材(13)はロープ止め突起(3)よりも細く且つロール状に巻き取り可能な可撓性を備えた細紐状であり、 1F:前記2本の可撓性連結材(13)による連結箇所は、2本のロープ止め突起(3)の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起(3)間の中心よりも夫々のロープ止め突起(3)寄りの箇所として、 1G:2本の可撓性連結材(13)を切断すると、その切り残し突起(16)が2本のロープ止め突起(3)の内側に残るようにした 1H:ことを特徴とする連続貝係止具。」 「【請求項2】 2A:請求項1記載の連続貝係止具において、 2B:2本の可撓性連結材(13)の間隔が、貝係止具(11)が差し込まれる縦ロープ(C)の直径よりも広い 2C:ことを特徴とする連続貝係止具。」 「【請求項3】 3A:請求項1又は請求項2記載の連続貝係止具(14)が、シート(15)を宛がって又は宛がわずに、ロール状に巻かれた 3B:ことを特徴とするロール状連続貝係止具。」 第4 請求人の主張及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、手続補正書(審判請求理由補充書)、口頭審理陳述要領書(1)、口頭審理陳述要領書(2)、上申書(1)、上申書(2)及び上申書(4)参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第87号証を提出している。 なお、手続補正書(審判請求理由補充書)に添付して提出した甲第4号証の1は、審理事項通知書(2)の「1(2)」で甲第55号証と読み替えている。(なお、各当事者の主張においては、各書面で記載されたとおりの名称で記載した。) 〔無効理由1〕本件発明1、本件発明2及び本件発明3は、本件特許の遡及日前において公然知られた連続貝係止具の発明(と同一)であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 〔無効理由2〕本件発明1、本件発明2及び本件発明3は、本件特許の遡及日前において公然知られた連続貝係止具の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 〔無効理由3〕本件発明1、本件発明2及び本件発明3は、甲第28号証ないし甲第31号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 2 証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 (1)甲第1号証 陳述書 田中孝俊 (2)甲第2号証 「つりピンロール」カタログ (3)甲第3号証 「つりピン」サンプルシート 2005年 (4)甲第4号証 「つりピン」サンプルシート 2006年 (5)甲第5号証 「つりピン」サンプルシート 2009年 (6)甲第6号証 陳述書 佐藤滝夫 (7)甲第7号証 陳述書 神野美徳 (8)甲第8号証 陳述書 株式会社アダチCS (9)甲第9号証 陳述書 三信船舶電具(株)函館営業所 (10)甲第10号証 陳述書 成田昭 (11)甲第11号証 陳述書 寺澤秀司 (12)甲第12号証 陳述書 金丸義光 (13)甲第13号証 陳述書 仙石信幸 (14)甲第14号証 陳述書 成田貢 (15)甲第15号証 陳述書 小笠原辰夫 (16)甲第16号証 陳述書 柴田恭一 (17)甲第17号証 陳述書 桜庭紀子 (18)甲第18号証 陳述書 中野健二 (19)甲第19号証 陳述書 小笠原辰夫 (20)甲第20号証 陳述書 成田貢 (21)甲第21号証 陳述書 成田昭 (22)甲第22号証 請求書、納品書 有限会社シンワから小笠原辰夫 (23)甲第23号証 青森銀行 普通預金口座通帳 (24)甲第24号証 請求書、納品書 有限会社シンワから成田昭 (25)甲第25号証 青森銀行 普通預金口座通帳 (26)甲第26号証 請求書、納品書 有限会社シンワから成田貢 (27)甲第27号証 経費明細書、領収書 東日本フェリー株式会社等 (28)甲第28号証 登録実用新案第3109948号公報 (29)甲第29号証 特開2003-289742号公報 (30)甲第30号証 特開2002-136241号公報 (31)甲第31号証 特開2004-208619号公報 (32)甲第32号証 陳述書 工東雄二 (33)甲第33号証 納品書、請求書 有限会社シンワから工東雄二 (34)甲第34号証 陳述書 桜庭紀子 (35)甲第35号証 陳述書 中野健二 (36)甲第36号証 陳述書 安達節男 (37)甲第37号証 陳述書 神野美徳 (38)甲第38号証 ヤマト運輸宅急便受付票 (39)甲第39号証 甲第38号証の受付票が貼着された荷物袋 (40)甲第40号証 取扱いピン一覧1 (41)甲第41号証の1 サンプルシートの写し (42)甲第41号証の2 サンプルシートの写し (43)甲第41号証の3 サンプルシートの写し (44)甲第41号証の4 サンプルシートの写し (45)甲第41号証の5 サンプルシートの写しを提出した証拠説明書 (46)甲第42号証 陳述書 大関規彦 (47)甲第43号証 陳述書 船橋直彦 (48)甲第44号証 陳述書 船橋政種 (49)甲第45号証 陳述書 川村栄 (50)甲第46号証 写真 中野健二を含む (51)甲第47号証 写真 中野健二を含む (52)甲第48号証の1 「つりピンロール」カタログ (53)甲第48号証の2 「つりピンロール」カタログ裏面 (54)甲第48号証の3 「つりピンロール」カタログ (55)甲第49号証 陳述書 小笠原辰夫 (56)甲第50号証の1 被請求人つりピンロールの部分写真 (57)甲第50号証の2 被請求人つりピンをロープに差し込む前の写真 (58)甲第50号証の3 請求人つりピンロール及び被請求人つりピンロール伸長した写真 (59)甲第50号証の4 請求人つりピンをロープに差し込む前の写真 (60)甲第51号証 陳述書 前田正徳 (61)甲第52号証 陳述書 畑井則弘 (62)甲第53号証 陳述書 辻村祐一 (63)甲第54号証 陳述書 笹原喜代美 (64)甲第55号証 「つりピン」サンプルシート 2006年 (平成29年11月21日付け審理事項通知において、甲第4号証 の1を甲第55号証と読み替えた。) (65)甲第56号証 甲46写真のファイル情報 (66)甲第57号証 甲47写真のファイル情報 (67)甲第58号証 陳述書 竹林政人 (68)甲第59号証 陳述書 竹林政人 (パソコンのディスプレイを撮影した写真○1?○3を含む。)(審決注:○囲み数字は、○数字と表記する。以下同様。) (69)甲第60号証 陳述書 竹林政人 (70)甲第61号証の1 納品書、請求書 有限会社シンワから金丸義光 (71)甲第61号証の2 納品書、請求書 有限会社シンワから金丸義光 (72)甲第61号証の3 青森銀行普通預金口座通帳 (73)甲第62号証の1 納品書、請求書 有限会社シンワから有限会社中里モーター商会 (74)甲第62号証の2 納品書、請求書 有限会社シンワから有限会社中里モーター商会 (75)甲第62号証の3 領収証(控) (76)甲第62号証の4 納品書、請求書 有限会社シンワから有限会社中里モーター商会 (77)甲第62号証の5 領収証(控) (78)甲第63号証の1 納品書、請求書 有限会社シンワからマリノサポート株式会社 (79)甲第63号証の2 青森銀行普通預金口座通帳 (80)甲第63号証の3 納品書、請求書 有限会社シンワからマリノサポート株式会社 (81)甲第63号証の4 青森銀行普通預金口座通帳 (82)甲第64号証の1 納品書、請求書 有限会社シンワから三津谷昭大 (83)甲第64号証の2 納品書、請求書 有限会社シンワから三津谷昭大 (84)甲第64号証の3 普通預金口座通帳 (85)甲第65号証の1 納品書、請求書 有限会社シンワから塩越昭正 (86)甲第65号証の2 平内町漁業協同組合 普通貯金口座通帳 (87)甲第65号証の3 納品書、請求書 有限会社シンワから塩越昭正 (88)甲第65号証の4 平内町漁業協同組合 普通貯金口座通帳 (89)甲第66号証 「つりピンロール」カタログ (90)甲第67号証 群馬県藤岡市のホームページ (91)甲第68号証 知的財産高等裁判所平成29年(ネ)第10055号特許権侵害差止請求控訴事件における準備書面1 (92)甲第69号証 東京地方裁判所平成19年(ワ)第12683号商標権侵害差止等請求事件における訴状 (93)甲第70号証 陳述書 田中孝俊 (94)甲第71号証 陳述書 田中孝俊 (95)甲第72号証 「つりピングリーン」のカタログ (96)甲第73号証 株式会社東北総合研究社ホームページ、[平成30年6月3日検索]、インターネット<URL:http://www/tohoku-soken.co.jp/roll_pinsetter_h.html> (97)甲第74号証 株式会社東北総合研究社から有限会社シンワへの電子メール (98)甲第75号証 「15周年記念 展示即売会の御案内」、株式会社東北総合研究社 (99)甲第76号証 「展示即売会」の案内パンフレット、株式会社東北総合研究社 (100)甲第77号証 陳述書 三津谷昭大 (101)甲第78号証の1 請求書 有限会社シンワから三津谷昭大 (102)甲第78号証の2 納品書、請求書、納品書(控) 有限会社シンワから三津谷昭大 (103)甲第78号証の3 納品書、請求書、納品書(控) 有限会社シンワから三津谷昭大 (104)甲第78号証の4 納品書、請求書、納品書(控) 有限会社シンワから三津谷昭大 (105)甲第78号証の5 青森県信用漁業協同組合連合会 普通貯金口座通帳 (106)甲第79号証 陳述書 塩越昭正 (107)甲第80号証の1 請求書 有限会社シンワから塩越昭正 (108)甲第80号証の2 納品書、請求書、納品書(控) 有限会社シンワから塩越昭正 (109)甲第80号証の3 納品書、請求書、納品書(控) 有限会社シンワから塩越昭正 (110)甲第80号証の4 平内町漁業協同組合 普通貯金口座通帳 (111)甲第81号証 陳述書 小笠原辰夫 (112)甲第82号証 陳述書 有限会社中里モーター商会 中里悟 (113)甲第83号証 陳述書 成田貢 (114)甲第84号証 陳述書 成田昭 (115)甲第85号証 陳述書 工東雄二(代筆 工東秀子) (116)甲第86号証 陳述書 金丸義光 (117)甲第87号証 陳述書 神野美徳 (118)検甲第3号証 「つりピン」サンプルシート 2005年 (119)検甲第4号証 「つりピン」サンプルシート 2006年 (120)検甲第55号証 「つりピン」サンプルシート 2006年 甲第66号証は、甲第2号証を差し替えたものであるが、実質的に同じものであるから、両証拠を甲第2号証として、以下審理する。 また、人証(本人尋問または証人尋問を行った証人)は、以下のとおりである。 田中 孝俊 成田 貢 安達 節男 3 請求人の具体的な主張 (1)無効理由1(新規性要件違背)について ア 各配布物の作成について (ア)甲第2号証(カタログ) a つりピンロールの開発について (a)甲第1号証(田中孝俊 陳述書)の「成田昭さんから(株)むつ家電特機・・・の自動ピンは不具合が多く頻繁に機械が止まって困っている、・・・良いピンを作ってくれないか?と依頼され開発することになった。」点について、甲第21号証による陳述は、平成17年2月ごろ田中孝俊が、(株)むつ家電特機の自動ピンに換わる改良ピンの製作を依頼されたことと符合する。 (b)同「平成17年5月31日にロープ止めの内側に2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)が完成、6月1日に当社に到着した」点について、甲第38号証(宅配便受付票)に係る「サンプル(30本取り)」が、平成17年6月1日にシンワに到着したことは、甲第39号証(宅配便貼付票が貼付された封筒。原本あり。)によっても明らかである。 この「サンプル(30本取り)」は、カタログに示されているように平板であり、「サンプル(30本取り)」のものが約100枚、進和化学工業からシンワに送付され、北海道の噴火湾に営業に行く前に、約50枚近くが予め青森県横浜町に在住のホタテ養殖業者の所有する(株)むつ家電特機の自動ピンセッターを借りて運転状況の試験を行った。試験の結果、問題ないことを確認したものである。 〔口頭審理陳述要領書(1)4頁16行?17行、5頁12行?6頁2行〕 b 甲第2号証の作成について (a)既提出の甲第1号証 田中孝俊陳述書、○1の項に「平成17年5月31日にロープ止めの内側に2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)が完成。6月1日に当社に到着した。」と陳述されている。この陳述内容は、甲第38号証として提出する、ヤマト運輸宅急便により、進和化学工業株式会社から有限会社シンワあてのつりピンサンプルが平成17年(2005年)5月31日に受付され6月1日が届け日とする受付票から証明される。 ここで、甲第1号証 田中孝俊陳述書によれば、甲第2号証カタログの作成日は、つりピンサンプルの到着日の平成17年(2005年)6月1日から、カタログ持参日である平成17年(2005年)7月6日までの期間内である。 〔手続補正書4頁10?18行〕 (b)甲第2号証カタログ(原本持参)は、竹林政人が、6月1日にしんわに到着した、ロープ止めの内側に2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)を撮影し、パソコンで作成したカタログ用シートをプラスチックフィルムによりパウチ処理したもので、その作成日は、つりピンサンプルの到着日の平成17年(2005年)6月1日から、カタログ持参日である平成17年(2005年)7月6日までの期間内である。 (有)シンワの社員は、田中孝俊、竹林政人及び女性事務員1名の合計3名である。竹林政人及び女性事務員の2名により、何日かかけて甲第2号証カタログを手作りで約500部を作成したものである。この作成日を特定する資料又は記録を現時点で見いだせない。 〔口頭審理陳述要領書(1)6頁6行?6頁15行〕 (c)新「つりピンロール」のカタログ(甲第2号証)は、平成17年7月6日?8日に、田中孝俊が北海道の噴火湾地域に出向くに先立ち、竹林政人が、平成17年6月1日にシンワに到着した(甲第38号証、甲第39号証)2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)を撮影し、パソコンで作成したカタログ用シートをプラスチックフィルムによりパウチ処理したもので、その作成日は、つりピンサンプルの到着日の平成17年(2005年)6月1日から、カタログ持参日である平成17年(2005年)7月6日までの期間内である。 この点に関し、竹林政人による陳述書(甲第58号証、甲第59号証、甲第60号証)を提出し、平成17年(2005年)6月初旬が作成日であることを明らかにします。 特に、甲第59号証の○2によれば、つりピンロールサンプルを受け取った翌日の6月2日に撮影しパソコンにデータ取り込みを行っています。甲第59号証の○2の画面は、色再現性が悪いものの「1.5つりピンオレンジ」のものであることが分かります。 〔口頭審理陳述要領書(2)3頁3行?16行〕 (イ)甲第3号証(サンプルシート) a 平成29年10月13日提出の書面により明らかにしたように、連続貝係止具である「つりピンロールグリーン」における連結材は、ロープ止め突起の外側にあるものである。これ以外の他の6つのピンサンプルは連結材を有しない単独ピンである。したがって、本件発明とは直接関係しない。 甲第3号証の平成17年(2005年)「つりピン」サンプルシートの頒布時期についての資料類は現時点で見出すことはできない。 〔口頭審理陳述要領書(1)4頁19行?5頁1行〕 b 竹林政人による甲第58号証陳述書により、甲第3号証は2005年(平成17年)4月初旬に作成を開始し、4月下旬に配布を開始していることを立証します。 なお、被請求人も甲第41号証の1により平成2005年(審決注:「平成2005年」は、「2005年」の誤記と認める。)の頒布事実を自認しています。 〔口頭審理陳述要領書(2)4頁10行?15行〕 (ウ)甲第4号証(サンプルシート) 竹林政人による甲第58号証陳述書、甲第60号証陳述書及び甲第59号証により、甲第4号証は2006年(平成18年)4月18日ごろに作成し(甲第59号証○3の「2006拡販用カタログ,CNV」2006/04/18なる表示を参照)、4月20(審決注:「4月20」は、「4月20日」の誤記と認める。)頃から配布を開始したことを立証します。 〔口頭審理陳述要領書(2)4頁17行?20行〕 (エ)甲第55号証(サンプルシート) 竹林政人による甲第58号証陳述書及び甲第60号証陳述書及び甲第59号証により、甲第55号証は2006年(平成18年)4月26日以降ごろに作成を開始した(甲第59号証○3の「2006拡販用カタログ価格言う入り.cNV」(記載のママ) 2006/04/26なる表示を参照)ことを立証します。 被請求人も甲第41号証の4により平成2006年(審決注:「平成2006年」は、「2006年」の誤記と認める。)の頒布事実を自認しています。 〔口頭審理陳述要領書(2)5頁1行?6行〕 (オ)甲第3号証?甲第5号証、甲第55号証(サンプルシート) 甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第55号証などに(審決注:「に」は「の」の誤記と認める。)カタログ作成及び配布が毎年春に行われていることは、甲第59号証○3からも明らかであります。 2007年では4月18日に、2008年では4月21日に、2009年では4月22日に、2008年北海道メロン入りでは5月27日にそれぞれ作成されています。こらからもカタログ作成及び配布が毎年春に行われていることが明らかであります。 〔口頭審理陳述要領書(2)5頁8行?14行〕 イ 配布物の配布、開示について (ア)甲第2号証(カタログ)、サンプルピン a 甲第1号証に記載されているように、請求人代表者田中孝俊は、平成17年7月6日?8日に、北海道の噴火湾地域に出向き、新「つりピンロール」のカタログ(甲第2号証)と、「つりピンロールグリーン」の一部の長さ分を切り取ったサンプル品と、その当時恒常的に販売していたいわゆる「ばらピン」とをプラスチック袋に封入し、ピンそれぞれの特性を記載した外装紙で保持した「サンプルシート」(甲第3号証)と、を顧客に配布した。(審決注;請求人は、「甲第3号証」を、口頭審理陳述要領書(1)の「第2 1」において「甲第4号証又は甲第4号証の1」と訂正している。) b 原告(審決注:「原告」は「請求人」の誤記と認める。)による、「サンプルシート」の配布は、2006年(甲第4号証)、2009年にも行われている(甲第5号証)。 c 甲第2号証カタログ及び甲第3号証「サンプルシート」の配布の事実は、甲第6号証?甲第21号証(陳述書)によって立証される。 d 甲第19号証は小笠原辰夫による陳述書であり、次の各事実が示されている。 (a)「ロープ止めの間に2本のつなぎがあるピンで抜け落ち防止用の改良されたピン」で、被請求人「むつ家電特機用の自動ピンセッターにあう」ピンものであるとの請求人からの説明を受けたこと(平成17年7月7日) (b)請求人から「サンプル」「カタログ」(同書右欄のピンの図と共に「自動機用つりピンロール完成!」の文字が記されたカタログ)を受領したこと(平成17年7月7日) (c)「サンプル」についてテストしたこと (d)前記ピンを平成17年8月26日に注文したこと e 甲第20号証は成田貢による陳述書であり、次の各事実が示されている。 (a)「抜け落ち防止付きの改良された自動機用のピン」であるとの請求人からの説明を受けたこと(平成17年7月7日) (b)請求人から「サンプル」「カタログ」(同書右欄のピンの図と共に「自動機用つりピンロール完成!」の文字が記されたカタログ)を受領したこと(平成17年7月7日) (c)ピン「サンプル」についてテストしたこと (d)前記ピンを平成17年10月19日に注文したこと f 甲第21号証は成田昭による陳述書であり、次の各事実が示されている。 (a)平成17年2月ごろ、請求人が来訪した際に、「東和電機製の自動ピンセッターにあうピンを製作してほしいと依頼し」たこと そのごろ又はその後、被請求人の自動ピンでは機械が止まることがあるなどの理由により請求人に改良をできるかの話をもちかけた、こと (b)請求人から「サンプル」「カタログ」(同書右欄のピンの図と共に「自動機用つりピンロール完成!」の文字が記されたカタログ)を受領したこと(平成17年7月7日) (c)ピン「サンプル」についてテストしたこと (d)前記ピンを平成17年10月26日に注文したこと 〔審判請求書13頁16行?16頁1行〕 g 他方、請求人が噴火湾地域での営業を行うために、平成17年7月6日早朝に青森県大間から北海道函館までフェリーに乗船したことは、甲第27号証(東日本フェリー株式会社発行領収書)からも判る。 〔審判請求書16頁18行?20行〕 h 田中孝俊が、平成17年7月6日?8日に、北海道の噴火湾地域に出向き、新「つりピンロール」のカタログ(甲第2号証)と、自動ピンである残り約50枚のサンプルピン(「サンプル(30本取り)」)とをもって北海道に出張し営業したことは、甲第6号証ないし甲第21号証、甲第32号証、甲第34号証ないし甲第37号証から明らかである。 特に、甲第32号証、甲第34号証ないし甲第37号証は、甲第2号証カタログと同一の写しがあらわされた書面をもっての陳述であり、新「つりピンロール」のカタログと、サンプルピン(「サンプル(30本取り)」)とを顧客に見せた事実又は配布した事実を立証するものである。 さらに、(株)むつ家電特機の自動ピンセッターを持っている、成田昭さん(甲第10号証、甲第20号証)、金丸義光さん(甲第12号証)、成田貢さん(甲第14号証、甲第20号証)、小笠原辰夫さん(甲第15号証、甲第19号証)、工東雄二さん(甲第32号証)にはそれぞれ約10枚近くのサンプルピン(「サンプル(30本取り)」)を手渡し、試験をしてもらっている。 〔口頭審理陳述要領書(1)6頁16行?7頁4行〕 i (有)中野器機サービスの中野健二氏は、甲第18号証の陳述書において、2005年(平成17年)7月8日に自動ピンとそのカタログを田中孝俊から見せてもらったことを陳述している。 田中孝俊は、カタログ及びサンプルを(有)中野器機サービスに置かせてもらい、その事務所の壁にカタログを貼ってあることを陳述している(甲第1号証)。 (有)中野器機サービスの事務所の壁に(棚の下で工作機の左上に)カタログを貼ってあった事実は、甲第35号証及び甲第46号証によって、 そのカタログを平成29年4月12日に撤去し、事務所の壁に貼ってあったカタログが撤去された事実を甲第47号証によって、 当該カタログ自体を甲第48号証によって立証する。甲第48号証の原本は紫外線でやや茶色かかるまで変色しており、事務所の壁にカタログを貼ってあった事実を補強するものである。 〔口頭審理陳述要領書(1)9頁1行?15行〕 j 田中孝俊陳述書(甲第1号証)によって、平成17年(2005年)7月8日に(有)中野器機サービスに新「つりピンロール」のカタログ(甲第2号証)を配布し、事務所の壁に同カタログを貼ってあることを明らかにしました。 この点に関し、(有)中野器機サービスの中野健二氏は、甲第18号証の陳述書において2005年(平成17年)7月8日に自動ピンとそのカタログを田中孝俊から見せてもらったことを陳述しています。また、甲第35号証において事務所の壁に同カタログを貼ってあることを陳述しています。 他方、甲第46号証(陳述日平成29年2月21日)の写真の撮影日は平成29年2月21日であることを甲第56号証によって、甲第47号証の写真の撮影日平成29年10月20日であることを甲第57号証によって明らかにします。甲第56号証及び甲第57号証の左部のファイル情報の欄を参照してください。 〔口頭審理陳述要領書(2)3頁17行?4頁3行〕 k 甲第2号証カタログの右下に進和化学工業株式会社の住所として、「群馬県多野郡鬼石町浄法寺766-1」とあるが、甲第67号証「群馬県藤岡市のホームページ」の藤岡市の概要の頁の沿革によると、平成18年(2006年)1月1日に鬼石町は藤岡市と合併されたことがわかる。したがって、甲第2号証カタログは、少なくとも平成17年中に発行され、頒布されたものであることは明らかである。 〔上申書(1)2頁10行?15行〕 (イ)甲第3号証(サンプルシート) a 上記(ア)aを参照。 b 甲第3号証に、平成17年(2005年)「つりピン」サンプルシートを写しで提出した。この時点での連続貝係止具である「つりピンロールグリーン」における連結材は、ロープ止め突起の外側にあるものである。これ以外の他の6つのピンサンプルは連結材を有しない単独ピンである。 この甲第3号証の平成17年(2005年)「つりピン」サンプルシートの頒布時期についての資料類は現時点で見出すことはできない。しかし、甲第4号証及び甲第4号証の1のように、冬が終わり、その後夏にかけて需要が高まる春に頒布しながら営業活動を行ったものであることは明らかである。 甲第3号証の頒布時点では、連続貝係止具である「つりピンロール」は、グリーン色の「つりピンロールグリーン」のみである。 〔手続補正書(審判請求理由補充書)2頁5行?17行〕 c 連続貝係止具である「つりピンロールグリーン」における連結材は、ロープ止め突起の外側にあるものである。したがって、本件発明とは直接関係しない。 甲第3号証の平成17年(2005年)「つりピン」サンプルシートの頒布時期についての資料類は現時点で見出すことはできない。 しかし、平成17年(2005年)春であることは明らかであり、請求人は本件特許の遡及日の1年以上も前から、ロープ止め突起の外側にあるロール状連続貝係止具を販売していた事実は明らかである。 また、甲第3号証は、後述する甲第41号証の1に示されているように、平成17年(2005年)4月25日以前に配布していたもので、平成18年(2006年)春に頒布された甲第4号証及び甲第4号証の1と同様の形態のサンプルシートであり、同様の形態のサンプルシートが毎年頒布されていた事実を補強するものである(甲第5号証もサンプルシートが毎年頒布されていた事実を補強するものである。)。 〔口頭審理陳述要領書(1)4頁19行?5頁11行〕 d 上記ア(イ)b及び(オ)参照。 (ウ)甲第4号証、甲第55号証(サンプルシート) a 原告による、「サンプルシート」の配布は、2006年(甲第4号証)、2009年にも行われている(甲第5号証)。 〔審判請求書14頁5行?6行〕 b 甲第4号証として、平成18年(2006年)4月20日に作成した、平成18年(2006年)「つりピン」サンプルシートの写しを提出した。この時点での連続貝係止具である「つりピンロールバラ色」及び「つりピンロールグリーン」における連結材は、ロープ止め突起の内側にあるものである。 なお、甲第4号証の単独ピンである「つりピングリーン」については、プラスチック袋内にそのサンプルつりピンが欠落している。 甲第4号証の平成18年(2006年)「つりピン」サンプルシートには、価格が記載されていなかった。そこで、顧客から価格が分かるようにして欲しいとの要望があり、この要望に基づき約1週間後の4月末日ごろに、ここに甲第4号証の1として写しを示す、改訂の平成18年(2006年)「つりピン」サンプルシートを、陸奥湾の顧客に配布した。 甲第4号証の1の平成18年(2006年)「つりピン」サンプルシートにおける「つりピンロールバラ色」及び「つりピンロールグリーン」における連結材は、ロープ止め突起の内側にあるものである。これ以外の他の5つのピンサンプルには連結材を有しない単独ピンである。 甲第4号証の1の平成18年(2006年)「つりピン」サンプルシートには、価格とともに「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」との記載によれば、本件特許出願の遡及日前に量産されている状態にあったことが分かる。 〔手続補正書(審判請求理由補充書)3頁11行?4頁9行〕 c 甲第3号証、甲第4号証、甲第4号証の1及び甲第5号証の「サンプルシート」は、種々の「つりピン」(パラピン)又は「つりピンロール」をプラスチック袋に封入し、ほぼA4版の普通紙に、その上部を内面側に折り畳み、その外面にシンワの販売に係るものであること、販促のキャンペーンであることなどをあらわすとともに、普通紙の下部の表中に、各サンプルの名称及び特徴を記載するとともに、表の各欄に対応してサンプル封入ピンを宛かって固定したものである。 連続貝係止具としては、甲第2号証カタログにおいては「つりピンロールオレンジ」が該当する。甲第4号証又は甲第4号証の1「サンプルシート」においては、「つりピンロールオレンジ」は封入されておらず、「サンプルシート」の左から2番目の「つりピンロールバラ色」、並びに左から5番目の「つりピンロールグリーン」が該当する。 なお、請求人は、ピンの色を、例えば甲第40号証に示すように、サイズ、推奨キリサイズ、ロープ止め強さなどで分類している。この分類はプラスチックの硬軟に関連する。 〔口頭審理陳述要領書(1)7頁5行?19行〕 d 請求人は、北海道の噴火湾地域(豊浦町や八雲町など)における営業が約9ヶ月にわたって円滑に進んでいることをふまえ、2006年(平成18年)4月下旬には青森県陸奥湾においても甲第4号証の1「サンプルシート」(陳述書でいう「サンプル付きチラシ」)を配布して営業を行ったことを、甲第42号証(大関規彦さん陳述書)、甲第43号証(船橋直彦さん陳述書)、甲第44号証(船橋政種さん陳述書)、甲第45号証(川村栄さん陳述書)、によって立証する。その際に、船橋政種さん及び川村栄さんは(有)シンワに注文している。 〔口頭審理陳述要領書(1)8頁19行?末行〕 e 上記ア(ウ)、(エ)及び(オ)参照。 (エ)甲第3号証、甲第4号証、甲第55号証(サンプルシート)に対応する甲第41号証の1?4 a 被請求人は、平成19年5月22日付け訴状提出の東京地方裁判所での商標権侵害差止請求事件(東京地方裁判所平成19年(ワ)第12683号)において、「甲第27号証の1?甲第27号証の4」の号証番号で、甲第2号証及び甲第4号証の1対応するものを証拠として提出していた。同事件での甲第27号証の1は本件審判の甲第2号証(ただし、欄外に価格記載はない。)に、甲第27号証の4は本件審判の甲第4号証の1にそれぞれ対応し、平成19年5月22日付け証拠説明書(1)によると、甲第27号証の1?2は2005年(平成17年)に、甲第27号証の3?4は2006年(平成18年)にそれぞれ頒布したものであると自認している。これらの被請求人による証拠を甲第41号証として提出する。 特に注目すべきは、甲第41号証の4(地裁事件の甲第27号証の4)において、「2006年販売促進キャンペーン」の「キャンペーン期間」に関し「予約5月末まで、・納品5月20日?9月末」と記載されており、少なくとも2006年(平成18年)5月20日以前に、甲第27号証の4「カタログシート」は頒布され、受注体制が整っていたことが分かる。2006年(平成18年)5月20日は、本件特許の遡及日2006年(平成18年)5月24日以前であり、公然実施品に係るものであることが分かる。 なお、甲第41号証の1(地裁事件の甲第27号証の1)には、「下記価格は2005年4月25日現在の価格です。」と記載され、(有)シンワが2005年4月25日以前に甲第3号証「サンプルシート」を配布していたことは明らかであり、甲第4号証の1「サンプルシート」を、2006年(平成18年)においても、ホタテ養殖が本格化する春(本業界のトップメーカーである東北総合研究社が毎年春にキャンペーンを行っている対抗上、春に販促キャンペーンを行う慣例がある。)において、同様の4月20日に作成し頒布したとの事実と符合する。(審決注:上記「甲第2号証」は「甲第3号証」の誤記と認める。) 〔口頭審理陳述要領書(1)7頁20行?8頁18行〕 b 甲第41号証の4の「サンプルシート」は、被請求人むつ家電特機が、平成19年(2007年)5月22日付けで提出した東京地方裁判所平成19年(ワ)第12683号商標権侵害差止等請求事件(前件訴訟)の訴状(甲69)と共に提出された同事件の甲第27号証の4である。 その際、被請求人が提出した「平成19年5月22日付け証拠説明書」が甲第41号証の5である。 この証拠説明書の6頁には「甲27の3?4」の説明として、標目欄には「被告シンワのチラシ(2006年用)」とあり、作成日欄には「2006(平成18)年」、立証趣旨欄には「同上」とあり、「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する」とされている。 甲第41号証の4(前件訴訟の甲27号証の4)のチラシ(サンプルシート)は、被請求人むつ家電特機自身が平成19年5月22日の段階で入手していたもので、請求人有限会社シンワが2006年(平成18年)用チラシ(サンプルシート)として配布していた事実を認めていたものである。 そのため、この証拠は、請求人において、後に偽造したり、変造したりすることができない客観的な証拠である。 この甲第41号証の4(前件訴訟の甲27号証の4)と甲第55号証及び検第55号証とを比較すれば、掲載文言の同一性と添付されているピンのサンプルの同一性から、同一機会に作成されたチラシ(サンプルシート)であることが確認でき、甲第55号証や検第55号証が後になって作られたり、偽造・変造されたものではないことが証明される。 甲第41号証の4のチラシに写っているサンプルの形状に注目すれば、「つりピンロールバラ色」の欄に、また「つりピングリーン」の欄と「つりピンロールグリーン」欄とに跨がって、いずれも5個つなぎのつりピンロールのサンプルが写っており、それは、ハ字状のロープ止め突起の内側に連結部材で連結されたものであることが確認できる。 このロープ止め突起の内側で連結されたつりピンロールは、甲第55号証、検第55号証の「つりピンロールバラ色」「つりピンロールグリーン」のサンプルとして添付されたつりピンロールと同一である。 そして、甲第41号証の4の掲載文言を注視すると以下のとおりの記載がある。甲第55号証、検甲55号証においても同一文言である。 記 『表題』として 『2006年販売促進キャンペーン』 『キャンペーン期間』として 『予約5月末まで』 『納品』として 『5月20日?9月末』 この記載からすると、2006年(平成18年)の5月末がキャンペーン期間の終期であり、キャンペーン自体は、これよりもある程度前から開始されていたことが分かる。そして、「納品」が2006年(平成18年)5月20日から開始されるとあることからすると、その時点でロープ止め突起の内側で連結材により連結されたつりピンロールである「つりピンロールバラ色」「つりピンロールグリーン」の「出荷体制」ができていたことが分かる。 納品の開始日である2006年(平成18年)5月20日は、本件特許の遡及日2006年(平成18年)5月24日より前であり、甲第41号証の4(甲第55号証)に現れているつりピンロールは公然に頒布された物品に係るもので、本件特許は公然と知られた発明であることが明らかである。 甲第41号証の4(甲第55号証)のチラシ(サンプルシート)が2006年(平成18年)4月下旬に配布されていたことを、大関規彦氏(甲42)、船橋直彦氏(甲43)、船橋政権氏(甲44)、川村栄氏(甲45)が、それぞれ陳述しており、上記内容と符合する裏付け証拠である。 〔上申書(2)3頁18行?6頁4行〕 ウ 販売について (ア)小笠原辰夫、成田昭、成田貢の購入の事実 a 小笠原辰夫がピン(つりピンロール1.6(グリーン))を購入したことは、甲第22号証(ただし、これは請求人のコンピュータ上のデータをプリントアウトしたものである。)及び甲第23号証(青森銀行の普通預金口座通帳)の平成17年9月5日付けで「マルサン オガサワラギ」名義(「マルサン」は屋号である。オガサワラギは「オガサワラギョギョウブ」の名義である。)で148、000円の振り込みの事実からも明らかである。 b 成田昭がピン(つりピンロール1,5(オレンジ)及びつりピンロールグリーン)を購入したことは、甲第24号証(ただし、これは請求人のコンピュータ上のデータをプリントアウトしたものである。)及び甲第25号証(青森銀行の普通預金口座通帳)の平成17年11月8日付けで「ナリタ アキラ」名義で286、000円の振り込みの事実からも明らかである。 c 成田貢がピン(つりピンロール1.5(オレンジ)及びつりピンロールグリーン)を購入したことは、甲第26号証(ただし、これは請求人のコンピュータ上のデータをプリントアウトしたものである。)及び甲第25号証(青森銀行の普通預金口座通帳)の平成17年11月30日付けで「ナリタ ミツグ」名義で202、100円の振り込みがあった事実からも明らかである。 〔審判請求書16頁2行?17行) (イ)本件特許出願の遡及日前に量産され販売されていた事実のまとめ a 甲第15号証及び甲第19号証小笠原辰夫氏陳述書とともに、甲第22号証請求書(2005年8月26日付け)「つりピンロール1.6(グリーン)」の請求事実、甲第23号証預金通帳における2005年9月5日付け入金事実(「マルサン オガサワラギ」と屋号で記載されている。)。 b 甲第21号証成田昭氏陳述書とともに、甲第24号証請求書(2005年10月26日付け)「つりピンロール1.5(オレンジ)」の請求事実、甲第25号証預金通帳における2005年11月8日付け入金事実。 甲第24号証請求書(2005年12月8日付け)「つりピンロール1.5(バラ色)」の請求事実、甲第25号証預金通帳における2006年1月5日付け入金事実。 c 甲第20号証成田貢氏陳述書とともに、甲第26号証請求書(2005年10月19日付け)「つりピンロール1.5(オレンジ)」の請求事実、甲第25号証預金通帳における2005年11月30日付け入金事実。 d 甲第32号証工東雄二氏陳述書とともに、甲第33号証請求書(2005年11月1日付け)「つりピンロール1.5(オレンジ)」の請求事実、甲第25号証預金通帳における2005年11月21日付け入金事実。 e 甲第12号証金丸義光氏陳述書とともに、甲第61号証の1請求書(2005年12月12日付け)「つりピンロール1.5(オレンジ)」の請求事実、甲第61号証の2請求書(2005年12月22日付け)「つりピンロール1.5(オレンジ)」の請求事実、甲第61号証の3預金通帳における2006年2月2日付け(合算金額の)入金事実。 f 甲第62号証の1 有限会社中里モーター商会宛て請求書(2005年10月26日付け)「つりピンロール1.5」の請求事実、甲第62号証の2 有限会社中里モーター商会宛て請求書(2005年10月29日付け)「つりピンロール1.5」の請求事実、甲第62号証の3における2005年(平成17年)12月13日付け合算領収書(控え)による入金事実、及び、 甲第62号証の4 有限会社中里モーター商会宛て請求書(2006年5月11日付け)「つりピンロール1.6(グリーン)」の請求事実、甲第62号証の5における2006年(平成18年)6月16日付け領収書(控え)による入金事実。 g 甲第63号証の1 マリノサポート株式会社宛て請求書(2006年5月15日付け)「つりピンロール1.6(グリーン)」の請求事実、甲第63号証の2預金通帳における2006年(平成18年)6月30日付け入金事実(ただし、他の代金も含む。)及び、 甲第63号証の3 マリノサポート株式会社宛て請求書(2006年5月22日付け)「つりピンロール1.6(グリーン)」の請求事実、甲第63号証の4預金通帳における2006年(平成18年)7月31日付け入金事実(ただし、他の代金も含む。)。 h 甲第64号証の1 三津谷昭大氏宛て請求書(2005年10月31日付け)「つりピンロール1.5」の請求事実、甲第64号証の2 三津谷昭大氏宛て請求書(2005年12月26日付け)「つりピンロール1.5」の請求事実、甲第64号証の3 田中孝俊預金通帳における2005年(平成17年)12月26日付け合算入金事実。 i 甲第65号証の1 塩越昭正氏宛て請求書(2005年12月6日付け)「つりピンロール(グリーン)」の請求事実、甲第65号証の2 田中孝俊預金通帳における2006年(平成18年)2月9日付け入金事実(ただし、手差しのピン代を含む。)、及び、 甲第65号証の3 塩越昭正氏宛て請求書(2006年5月13日付け)「つりピンロール1.6(グリーン)」を含む請求事実、甲第65号証の4 田中孝俊預金通帳における2006年(平成18年)7月28日付け入金事実。 〔口頭審理陳述要領書(2)5頁20行?8頁3行〕 エ 同一性について (ア)本件出願前に公然知られた「つりピンロール」のカタログ(甲第2号証)及び「サンプルシート」(甲第3号証)に注目すると、技術常識をふまえれば、その「つりピンロール」は次の構成であることが判る。 (a)ロープと貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材と、その軸方向両端側の夫々に突設された貝止め突起と、夫々の貝止め突起よりも内側に貝止め突起と同方向にハ字状に突設された2本のロープ止め突起を備えた貝係止具が基材の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型された連続貝係止具であること (b)前記多数本の貝係止具がロープ止め突起を同じ向きにして多数本配列されていること (c)配列方向に隣接する貝係止具のロープ止め突起の先端が、他方の貝係止具の基材から離れて平行に配列されていること (d)隣接する基材同士はロープ止め突起の外側が可撓性連結材で連結されず、ロープ止め突起の内側が2本の可撓性連結材と一体に樹脂成型されて連結されていること (e)可撓性連結材はロープ止め突起よりも細く且つロール状に巻き取り可能な可撓性を備えた細紐状であること (f)前記2本の可撓性連結材による連結箇所は、2本のロープ止め突起の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起間の中心よりも夫々のロープ止め突起寄りの箇所にあること (g)2本の可撓性連結材を切断すると、その切り残し突起が2本のロープ止め突起の内側に残るようにしたものであること (h)連続貝係止具であること。 そして、上記(a)?(h)の構成は、本件発明1の1A?lHにそれぞれ正しく一致するから、a?hの構成に係る発明は、本件発明1と同一である。 よって、本件発明1は、新規性のない発明に対して特許されたものである。 上記(a)?(h)の構成の連続貝係止具における2本の可撓性連結材の間隔が、貝係止具が差し込まれる縦ロープの直径よりも広いことは明らかである。2本の可撓性連結材間に縦ロープが位置するであろうことは、当業者は目視のみで直ちに判断できることであり、実際にテストを行ったり、購入された事実が多くあるので、否定する理由はない。 上記(a)?(h)の構成の連続貝係止具は、「ロール状に巻かれた」「つりピンロール」として販売された事実があるから、本件発明3についても新規性のない発明に対して特許されたものである。(審決注:請求人は、上記「甲第3号証」を、上申書(3)の「第1 2」において、「甲第4号証及び甲第4号証の1(甲第55号証)」と読み替えている。) 〔審判請求書16頁末行?18頁11行〕 (イ)本件特許の遡及日前に公然知られた甲第2号証カタログ及びサンプルピン(「サンプル(30本本取り)」、甲第4号証又は甲第4号証の1「サンプルシート」に注目すると、技術常識をふまえれば、それらにあらわされた「つりピンロール」は、着色を除いて、いずれも同一の構成であることが判る。 この構成について、添付図面(【説明図】)をもってその符号とともに説明すると、 (a)ロープと貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材1と、その軸方向両端側の夫々に突設された貝止め突起2,2と、夫々の貝止め突起2,2よりも内側に貝止め突起2,2と同方向にハ字状に突設された2本のロープ止め突起3,3を備えた貝係止具が基材1の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型された連続貝係止具であること (b)前記多数本の貝係止具11がロープ止め突起3,3を同じ向きにして多数本配列されていること (c)配列方向に隣接する貝係止具のロープ止め突起3,3の先端が、他方の貝係止具11の基材1から離れて平行に配列されていること (d)隣接する基材1,1同士はロープ止め突起3,3の外側が可撓性連結材13,13で連結されず、ロープ止め突起3,3の内側が2本の可撓性連結材13,13と一体に樹脂成型されて連結されていること (e)可撓性連結材13,13はロープ止め突起3,3よりも細く且つロール状に巻き取り可能な可撓性を備えた細紐状であること (f)前記2本の可撓性連結材13,13による連結箇所は、2本のロープ止め突起3,3の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起3,3間の中心よりも夫々のロープ止め突起3,3寄りの箇所にあること (g)2本の可撓性連結材13,13を切断すると、その切り残し突起16,16が2本のロープ止め突起3,3の内側に残るようにしたものであること (h)連続貝係止具であること。 そして、上記(a)?(h)の構成は、本件発明1の1A?lHにそれぞれ正しく一致する。 また、上記(a)?(h)の構成の連続貝係止具は、同様の作用効果を奏することは当業者にとって自明であるから、(a)?(h)の構成に発明は、本件発明1と同一である。 よって、本件発明1は、新規性のない発明に対して特許されたものである。 上記(a)?(h)の構成の連続貝係止具における2本の可撓性連結材の間隔が、貝係止具が差し込まれる縦ロープの直径よりも広いことは明らかである(当業者にとって自明である。)。2本の可撓性連結材間に縦ロープが位置するであろうことは、当業者は目視のみで直ちに判断できることであり、実際にテストを行ったり、購入された事実が多くあるので、否定する理由はない。 上記(a)?(h)の構成の連続貝係止具は、「ロール状に巻かれた」「つりピンロール」として販売された事実があるから、本件発明3についても新規性のない発明に対して特許されたものである。 〔口頭審理陳述要領書(1)13頁13行?15頁7行〕 (ウ)まとめ 本件発明と同一の連続貝係止具及びロール状連続貝係止具に係る発明があらわされた甲第2号証カタログ及びサンプルピン(「サンプル(30本取り)」の開示、配布の事実、甲第4号証又は甲第4号証の1「サンプルシート」の開示、配布の事実によれば、本件発明1、本件発明2及び本件発明3は、本件特許の遡及日前において公然知られた連続貝係止具の発明及びロール状連続貝係止具の発明(と同一)であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができないものである。 なお、甲第4号証又は甲第4号証の1「サンプルシート」が本件特許の遡及日前に配布された事実は、被請求人による甲第41号証の4 (地裁事件の甲第27号証の4)によっても明らかである。甲第41号証の4 (地裁事件の甲第27号証の4)に示された「つりピンロールバラ色」「つりピンロールグリーン」の形状をみると、明らかに本件発明1?3と同一のものである(なお、甲第41号証の3(地裁事件の甲第27号証の3)も参照される。)。 〔口頭審理陳述要領書(1)11頁6行?18行〕 (2)無効理由2(進歩性要件違背)について 上記(1)エ(ア)または(イ)の(a)?(h)の構成の連続貝係止具は、「ロール状に巻かれた」「つりピンロール」として販売された事実があるから、本件発明は新規性を有しない発明であったほか、少なくとも、本件発明1?本件発明3は、公然知られた発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、進歩性のない発明に対して特許されたものである。 〔審判請求書18頁13行?17行〕 (3)無効理由3(進歩性要件違背)について ア 第1理由 (ア)引用発明 甲30公報には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、甲31公報にも、同一の発明が記載されているものと認められる。)。 1a:ロープと貝にあけた孔に差し込みできる軸部と、その軸方向両端側の夫々に突設された尖鋭部と、夫々の尖鋭部よりも内側に尖鋭部と同方向にハ字状に突設された2本の抜け止め部を備えた掛止具が軸部の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂等で形成された帯状掛止具において、 1b:前記多数本の掛止具が抜け止め部を同じ向きにして多数本配列され、 1c:配列方向に隣接する掛止具の抜け止め部の先端が、他方の掛止具の軸部から離れて平行に配列され、 1d:隣接する軸部同士は抜け止め部の軸方向外方部分において2本の可撓性連結片により連結され、 1e:可撓性連結片はロール状に巻き取り可能な可撓性を備えており、 1f:前記2本の可撓性連結片による連結箇所は、抜け止め部の軸方向外方部分として、 1g:(乙20公報(審決注:「甲30公報」の誤記と認める。)には、可撓性連結片の切り残し突起に関する記載はない。) 1h:ことを特徴とする帯状掛止具。 (イ)一致点 引用発明と本件発明1とは、「ロープと貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材(1)と、その軸方向両端側の夫々に突設された貝止め突起(2)と、夫々の貝止め突起(2)よりも内側に貝止め突起(2)と同方向にハ字状に突設された2本のロープ止め突起(3)を備えた貝係止具(11)が基材(1)の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型された連続貝係止具において、前記多数本の貝係止具(11)がロープ止め突起(3)を同じ向きにして多数本配列され、配列方向に隣接する貝係止具(11)のロープ止め突起(3)の先端が、他方の貝係止具(11)の基材から離れて平行に配列され、隣接する基材(1)同士が2本の可撓性連結材(13)で連結され、可撓性連結材(13)はロール状に巻き取り可能な可撓性を備えていることを特徴とする連続貝係止具。」である点において一致している。 (ウ)相違点 引用発明と本件発明1とは、次の各点において相違する。 (相違点1) 本件発明1において、隣接する基材(1)同士は、ロープ止め突起(3)の「外側」ではなく、「2本のロープ止め突起(3)の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本のロープ止め突起(3)間の中心よりも夫々のロープ止め突起(3)寄りの箇所」において、2本の可撓性連結材(13)で連結されているのに対し、引用発明の隣接する軸部同士は、抜け止め部の「軸方向外方部分」において、2本の可撓性連結片により連結されている点。 (相違点2) 本件発明1において、隣接する基材(1)同士は、2本の可撓性連結材と一体に樹脂成型されているのに対し、引用発明の隣接する軸部同士は、2本の可撓性連結片と一体に樹脂成型されているか不明である点。 (相違点3) 本件発明1において、可撓性連結材(13)は、「ロープ止め突起(3)よりも細く」かつ「細紐状」であるのに対し、引用発明の可撓性連結片がかかる形状を有するか不明である点。 (相違点4) 本件発明1において、2本の可撓性連結材(13)を切断すると、その切り残し突起(16)が2本のロープ止め突起(3)の内側に残るのに対し、引用発明では、可撓性連結片を切断した際の切り残し突起は、抜け止め部の「軸方向外方部分」に残る点。(もっとも、この点は、相違点1に係る構成の差異に伴い必然的に発生する相違点であり、相違点1と実質的に異なるものではない。) 〔審判請求書22頁1行?24頁9行〕 (エ)相違点1について a 甲31公報には、連続貝係止具について、平行に配列された基材同士を連結する構成として、(i)基材の上下に突設されたロープ止め突起同士を連結する構成、(ii)基材の上部に突設されたロープ止め突起と基材とを連結する構成、(iii)ロープ止め突起の先端を基材と連結すると共に、更に可撓性連結材によって基材同士を連結する構成が、それぞれ開示されており、また、(iv)前記(iii)の場合において、2本の可撓性連結材は、ロープ止め突起と一体成型されており、2本の可撓性連結材による連結箇所を、ロープ止め突起からみて軸方向内側とする構成が開示されているものと認められる。 b したがって、甲31公報に開示された基材の連結に関する構成のうち、上記(iv)の構成から、殊更、可撓性連結材がロープ止め突起と一体成型されているとの部分を捨象して、2本の可撓性連結材による連結箇所をロープ止め突起からみて軸方向内側とするとの構成のみを取り出した上、これを引用発明に組み合わせれば、相違点1に係る本件発明1の構成に至ることは容易であるといえる。 c これを説明すると、甲30公報及び甲31公報は、いずれも連続貝係止具に係る発明が記載されたものであり、両者の技術分野は共通するものである。 さらに、甲31公報のものは、(ii)基材の上部に突設されたロープ止め突起と基材とを連結する構成であるが、甲30公報の図11、及び図13に示されているように、基材の上部に突設されたロープ止め突起と上方の基材とを連結しない構成とし、可撓性連結材のみで連結する構成は引用発明に開示されているのであるから、 甲31公報の「(i)基材の上下に突設されたロープ止め突起同士を連結する構成」は、基材の上のみに突設されたロープ止め突起とし、そのロープ止め突起を上方の基材とを連結しない構成とし、可撓性連結材のみで連結する構成するとともに、2本の可撓性連結材による連結箇所を、ロープ止め突起からみて軸方向内側とする構成とすることは、当業者は容易に予想でき容易想到の範囲の事項である。 d なお、前記甲第30号証の引用発明に甲31公報の構成を適用する場合において、ロープ止め突起と可撓性連結材とを軸方向に分離することは、甲30公報の図11及び図13に開示の構成であり、甲31公報の図6又は図12に開示の構成でもあるから、甲30公報図11の突起3、4と可撓性連結材8との分離に阻害要因がなく、当業者が適宜選択できる事項である。なお、分離した基材2の下方に突起4が生じてはいけない理由もない。 〔審判請求書26頁12行?28頁13行〕 (オ)相違点2について 甲第31号証の【0014】には「(連結貝係止具の実施の形態1)本発明の連結貝係止具の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。図1の連結貝係止具は樹脂成型品であり、多数本の同じ形状の貝係止具1が同じ向きに揃えて連結されて、多数本の貝係止具1が連続的に連結されて成型されている。連結する貝係止具1の数は任意に選択することができるが、例えば、数千?数万本とすることができる。」と記載されており、相違点2が開示されている。 〔審判請求書34頁12行?17行〕 (カ)相違点3について 甲第31号証の【0024】には「本発明の連結貝係止具の第5の実施例を図6(a)(b)に基づいて説明する。この連結貝係止具の基本的構造は図3の連結貝係止具と同じであり、異なるのは、隣接する基材2を、二本ずつある第一、第二のロープ止め突起3、4間において可撓性連結材8によって連結し、可撓性連結材8を可撓性のある紐としたことである。紐の直径は0.3?0.4mm程度が良い。可撓性連結材8は可撓性のある紐薄片又は可撓性のあるテ一プ状片とすることもできる。この場合の可撓性連結材8の肉厚は0.3?0.4mm程度、幅は4?5mm前後とするのが良い。このようにすると可撓性連結材8が曲がり易くなり、連結貝係止具をロール状に巻き易くなり、切断もし易くなる。」と記載されており、相違点3が開示されている。 可撓性連結材8は、突起3、4よりも細い形態で図示され、また、可撓性連結材8の紐の細さは適宜に選択でき、そこに発明としての技術的意義を見出すことはできない。 〔審判請求書34頁19行?35頁7行〕 (キ)判決における「相違点1について」の判断の誤り a 平成29年4月19日に言い渡された平成28年(ワ)第20818号判決は、本件発明の認定に根本的な誤りがあり、その判断内容も誤りであり、本件審判において、決してそのように解することはできないことを説明しておく。 すなわち、判決は、訴訟が「(ロール状に巻かれた)連続貝係止具」に関する争いであって、「ばらピン」の争いではないにもかかわらず、「ばらピン」の貝への係止作業に関する記載事項を本件発明の作用効果であると誤解して本件発明の作用効果を認定・判断している。そして、進歩性の争いについても、本件発明の作用効果を誤解したうえ、それに基づいて請求人(被告)による進歩性なしの主張を否定している。 〔審判請求書29頁3?13行〕 b 判決は、「本件発明1は、構成要件1Aないし同1Hの構成を備える連続貝係止具であり、同構成を備えることにより、貝係止具を一本ずつ切断するときに可撓性連結材の一部が切り残し突起となって基材に残って突出しても、貝係止具を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残し突起に当たらないため手が損傷したり、薄い手袋を手に嵌めて作業しても手袋が破れたりしにくいとの効果を奏する(【0005】、【0008】)。」と判断するが、その記載は「ばらピン」を「手で持って貝へ差し込むとき」の問題であって、本件発明の「連続貝係止具」「ロール状貝係止具」をピンセッターによりロープに差し込むことと無関係である。ここに精読を欠いた大きな誤りがある。 〔審判請求書31頁17行?32頁1行〕 c 判示は、「可撓性連結材を切断した際に突出して残る切り残し突起が、作業時に作業者の手に当たり、怪我をしたり手袋が破れたりするとの課題」を「乙20公報及び乙22公報のいずれにおいても記載されておらず、その示唆もない」とするが、そのような課題は、そもそも「連続貝係止具」又は「ロール状連続貝係止具」にとって、存在するはずの無い課題であり、本件発明の構成とは関係のない課題であるから、「乙20公報及び乙22公報のいずれにおいても記載されておらず、その示唆もない」ことは当然である。 判決は、本件発明の課題を、上記のように誤ってかつ独自に課題を認定し、誤った課題に基づいて進歩性判断を行ったものであるから、本件審判において判示を参照できない。 〔審判請求書34頁1?10行〕 (審決注:上記「乙20公報」及び「乙22公報」は、それぞれ本件無効審判事件における「甲第30号証」及び「甲第31号証」に相当する。) d 「貝係止具」を手で持って貝へ差し込むとき、持つのはロープ、並びに差し込み側の貝止め突起とロープ止め突起との間の部分のみであるから、そもそも切り残し突起に当たることはない。 本件発明の「貝係止具11を手で持って貝へ差し込むときに手(指)が切り残し突起16に当たらないため手が損傷したり、薄い手袋を手に嵌めて前記差込作業をしても手袋が破れたりしにくい」([0008])なる作用効果の意味内容を精査することなく、本願発明の特徴(技術上の意義)を認定・判断すること自体が誤りである。 e 原判決は、「貝係止具を手で持って作業する際に、可撓性連結材が切断されて切り残し突起が基材上に残存していたとしても、ロープ止め突起が障壁となって手が当該切り残し突起に当たりにくくなることにあると解される」 (乙1 判決文40頁2行?4行、41頁5行?7行、44頁2行?5行)とするが、そもそも貝係止具を手で持って貝へ差し込むとき、持つのはロープ、並びに差し込み側の貝止め突起とロープ止め突起との間の部分のみであるから、「ロープ止め突起が障壁となって手が当該切り残し突起に当たりにくくなる」現象は生じない。 すなわち、そもそも切り残し突起に当たないので、「当たりにくくなる」こと自体があり得ないのであり、「ロープ止め突起が障壁となって」の意味も不明である(原審が根拠なく取り込む技術上の誤認である。)。 〔口頭審理陳述要領書(1)34頁14行?35頁7行〕 (ク)小括 したがって、本件特許の原出願日当時、当業者が、甲30公報の引用発明に甲31公報記載の基材の連結に関する構成を適用し、又は適宜選択するなどして、容易に相違点1?相違点3に係る本件発明1の構成に想到し得たことは明らかである。 〔審判請求書35頁9行?12行〕 イ 第2理由 第1理由は、主引用発明を、甲第30号発明として論理展開した。 甲第31号証発明を主引用発明とした論理展開は次のとおりである。 a 本件発明の構成によって、要すれば2本のロープ止め突起の内側に切り残し突起が残るようにすることによって、貝係止具を貝の孔に差し込む際に、手や手袋に突き刺さりにくくなるという効果を奏するとは、到底認定できるものではない。 また、仮に2本のロープ止め突起の内側に切り残し突起が残るようにすることによって、貝係止具を貝の孔に差し込む際に、手や手袋に突き刺さりにくくなるという効果があるとしても、そのことは、2本のロープ止め突起の内側に可撓性連結材を設ける構成(切り残し突起が2本のロープ止め突起の内側に残る構成)によって実現されていた効果であり、そうした構成は甲第31号証の図11、図10、図6などに既に見られたものであった。 b 「2本のロープ止め突起の内側に切り残し突起が残るようにする」だけが、技術的思想であるとすれば、より一層、本件発明の技術的特徴は見いだせない。その理由は次のとおりである。 (a)甲第31号証の図6、図10、図15、図20,図24及び図27にロープ止め突起間に離れた一本の細紐状の連結材により連結する構成が、 甲第31号証の図7、図12、図16、図21,図25及び図31にロープ止め突起の外側に二本の細紐状の連結材により連結する構成が、 甲第31号証の図11及び図18にロープ止め突起の内側に二本の連結材により連結する構成が、 甲第31号証の図31にロープ止め突起の外側であるものの離れた二本の連結材により連結する構成が、 甲第30号証の図11にハ字状に突設されたロープ止め突起の外側であるものの離れた二本の細紐状の連結材により連結する構成が、 甲第28号証の図1?図3にハ字状に突設されたロープ止め突起の外側であるものの離れた二本の細紐状の連結材により連結する構成が(図3には切り残し突起11が図示されている。)、 それぞれ開示されている。 (b)甲第30号証において、 図3に細紐状の連結材8,9により連結する構成が、 図8に小さな連結部18a,19aを有するハ字状の抜け止め部18,19(ロープ止め突起に相当する)により連結する構成が、 図11及び図13に、小さな連結部18a,19aを有することなく、先端が他の基材から離れたハ字状のロープ抜け止め部31,32(ロープ止め突起に相当する)が形成され、ロープ抜け止め部31,32(ロープ止め突起に相当する)の外側において離れた二本の細紐状の連結材28,29により連結する構成が、 開示されている。 (c)甲第31号証の図11及び図18における、ロープ止め突起3,4のそれぞれ内側に二本の細紐状の連結材8,8により連結する構成を出発点とすれば、 <第1> 基材間をロープ止め突起3,4により連結する構成に換えて、 甲第28号証(審決注:「甲第28号証」は「甲第30号証:の誤記と認める。)の図3と図8との間の置換容易性あるいは図11もしくは図13の基材と離れたロープ止め突起とする構成の置換容易性に基づき、 ロープ止め突起を基材と離れた構成とすること、 <第2> ロープ止め突起3,4と連結材8とを一体に連結する構成に換えて、 甲第31号証の図6、図10、図15、図20,図24及び図27にロープ止め突起間に離れた一本の連結材により連結する構成への置換容易性に基づき、 あるいは、甲第30号証の図11及び図13における、先端が他の基材から離れたハ字状のロープ抜け止め部31,32(ロープ止め突起に相当する)が形成され、ロープ抜け止め部31,32(ロープ止め突起に相当する)と離れた別の二本の連結材28,29により連結する構成への置換容易性に基づき、 ロープ止め突起と連結材とを離れた構成とすること、 になんら工夫を要するものではないことは明らかであり、結局、本件発明は遡及日前に当業者が容易に発明できたものである。 〔口頭審理陳述要領書(1)46頁6行?48頁17行〕 ウ 本件発明2についての検討 本件発明2は、「2本の可撓性連結材(13)の間隔が、貝係止具(11)が差し込まれる縦ロープ(C)の直径よりも広い」ことを要件とするが、例えば甲31公報の図11の形態においては、「可撓性連結材8、8の間隔が、貝係止具が差し込まれる縦ロープの直径よりも広い」ことを当然に予想させるものであるから、本件発明2についても進歩性を有しない。なお、特許明細書に本件発明2による直接的な作用効果に記載は(審決注:原文ママ)見いだせない。 〔審判請求書35頁14行?19行〕 エ 本件発明3についての検討 本件発明3は、「連続貝係止具(14)が、シート(15)を宛がって又は宛がわずに、ロール状に巻かれた」ことを要件とするが、詳しく説明するまでもなく、甲30公報、甲31公報、甲28公報及び甲29公報ものも同じ構成であるから、本件発明3についても進歩性を有しない。 〔審判請求書35頁21行?36頁1行〕 第5 被請求人の主張及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨主張し(審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書、上申書(1)及び上申書(2)参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証の5を提出している。 2 証拠方法 提出された証拠は、以下のとおりである。 (1)乙第1号証 東京地方裁判所 平成28年(ワ)第20818号 特許権侵害差止請求事件 平成29年4月19日言渡判決 (2)乙第2号証 不服2010-13889の平成23年6月27日付け意見書 (3)乙第3号証 意願2003-6624の出願控え (4)乙第4号証 意願2003-6625の出願控え (5)乙第5号証 特願2009-31797の平成21年6月4日付け起案の拒絶理由通知書 (6)乙第6号証 特願2009-31797の平成21年10月20日付け起案の拒絶理由通知書 (7)乙第7号証 特願2009-31797の平成22年3月17日付け起案の拒絶査定 (8)乙第8号証 不服2010-13889の平成23年4月20日付け起案の拒絶理由通知書 (9)乙第9号証 不服2010-13889の平成23年6月27日付け提出の手続補正書 (10)乙第10号証 不服2010-13889の平成23年6月28日付け提出の物件提出書 (11)乙第11号証の1 iMacのキャプチャー画像 (12)乙第11号証の2 iMacのキャプチャー画像 (13)乙第11号証の3 iMacのキャプチャー画像 (14)乙第11号証の4 iMacのキャプチャー画像 (15)乙第11号証の5 iMacのキャプチャー画像 (16)乙第12号証の1 Windowsのキャプチャー画像 (17)乙第12号証の2 Windowsのキャプチャー画像 (18)乙第12号証の3 Windowsのキャプチャー画像 (19)乙第12号証の4 Windowsのキャプチャー画像 (20)乙第12号証の5 Windowsのキャプチャー画像 3 被請求人の具体的な反論 (1)無効理由1及び2(新規性要件違背及び進歩性要件違背) ア 田中孝俊氏陳述書(甲1)について 本件審判の当事者である請求人シンワの代表者田中孝俊氏(以下『田中氏』という)による陳述書(甲1)は、田中氏自身に都合のよいことを記載することができる恣意的なものであり、客観的裏付けのないものであるから証拠として採用されるべきではない。また、田中氏の陳述書には、平成17年当時のことが記載されているが、記載されていることが事実であることを裏付ける証拠もない。 〔答弁書6頁19行?24行〕 イ 配布物の作成について (ア)甲第2号証(カタログ) 宅配便受付票(甲38)及び宅配便貼付票が貼付された封筒(甲39)の「品物」欄には、「ピン《サンプル》在中 ※6/1(水)必着!」と記載されているだけであり、当該封筒に封入されたピンがどのような形状であるかを特定することはできない。 請求人らは、甲2カタログは、「6月1日にしんわ(下線部は「シンワ」の誤記と思われる)に到着した、ロープ止めの内側に2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)を撮影し・・・」と主張するが、上記のとおり、6月1日に請求人シンワに到着したピンの形状は不明である。したがって、それを撮影したものが甲2カタログに掲載された連続貝係止具であるということもできない。 請求人らは、甲2カタログについて、「その作成日は、つりピンサンプルの到着日の平成17年(2005年)6月1日から、カタログ持参日である平成17年(2005年)7月6日までの期間内である。」と主張するが、上記のとおり、平成17年(2005年)6月1日に請求人シンワに到着したと請求人が主張するサンプルピンの形状が特定されていないため、甲2カタログに掲載のピンと前記サンプルとの関連性も不明である。 請求人らが、「この作成日を特定する資料又は記録は現時点では見いだせない」と自認している(請求人要領書:6頁14行?15行)とおり、甲2カタログの作成日及び配布日を客観的に裏付ける証拠は何も提出されていない。 〔口頭審理陳述要領書4頁13行?16行、5頁2行?15行〕 (イ)甲第3号証ないし甲第5号証、甲第55号証(サンプルシート) a 甲第4号証の作成事実について 請求人らは、竹林政人の陳述書(甲58から甲60)を根拠に、「甲第4号証は2006年(平成18年)4月18日ごろに作成し(甲59号証○3の『2006拡販用カタログ.CNV』2006/04/18なる表示を参照)、4月20頃から配布を開始したことを立証します。」(陳述要領書4頁18行から20行)と主張する。 しかし、竹林政人の陳述書(甲58から甲60)は、請求人らに都合のよいことを記載することができる恣意的なものであるから採用されるべきではない。そもそも、甲59の写真○3には、名前として『2006拡販用カタログ.CNV』と記載され、更新日時として「2006/04/18」と記載されているだけである。ここでいう『2006拡販用カタログ.CNV』が甲4のサンプルシートであることを裏付ける証拠は何ら提出されていない。甲60には甲2のカタログがコピーされているが、甲2そのものが、・・・当時成型されていないサンプルを掲載したものであって、請求人らによって捏造されたものであるから、その甲2を使用した甲60の内容も虚偽である。よって、少なくとも、これら陳述書(甲58から甲60)は、2006年のサンプルシート(甲4)が本件特許の原出願時以前に配布されたことを立証するものではない。請求人らの主張は客観的な裏付けのない主張であり、排斥されるべきである。 〔上申書(1)20頁末行?21頁15行〕 b 甲55号証の作成事実について 請求人らは、竹林政人の陳述書(甲58から甲60)を根拠に、「甲第55号証は2006年(平成18年)4月26日以降ごろに作成を開始した(甲59号証○3の『2006拡販用カタログ価格言う入り(記載のママ)).CNV』2006/04/26なる表示を参照)ことを立証します。」(陳述要領書5頁2行から4行)と主張する。 しかし、竹林政人の陳述書(甲58から甲60)は、請求人らに都合のよいことを記載することができる恣意的なものであるから採用されるべきではない。そもそも、甲59の写真○3には、名前欄として『2006拡販用カタログ価格言う入り.CNV』が記載され、更新日時として「2006/04/26」が記載されているだけであり、ここでいう『2006拡販用カタログ.CNV』が甲4のサンプルシートであることを裏付ける証拠は何ら提出されていない。少なくとも、これら陳述書(甲58から甲60)によって、2006年の価格入りのサンプルシート(甲5)が本件特許の原出願時以前に配布されたことが立証されたことにはならない。なお、甲59の写真○1から○3の画像上の日付が変更可能であり、請求人らの主張は客観的な裏付けのない主張であり、排斥されるべきである。 〔上申書(1)21頁17行?22頁6行〕 ウ 配布物の配布、開示について (ア)甲第2号証(カタログ) a 請求人らが提出する新「つりピンロール」のチラシ(以下「甲2チラシ」という)には、その配布日が記載されていないため、いつ頒布されたのか一切不明であるし、実際に配布されたか否かも不明である。少なくとも、甲2チラシは、平成18年(2006年)5月24日(以下「本件出願日」という)前に頒布されていたことを客観的に裏付けるものではなく、本件発明1?3に対する出願前公知資料ではない。 〔答弁書7頁17行?26行〕 b 経費明細書・フェリー領収書・旅館領収書(甲27) 請求人らは、請求人シンワが平成17年7月6日に青森県大間から北海道函館までフェリーに乗船した証拠として、東日本フェリー株式会社発行の領収書(甲27)を提出する。 しかし、この証拠によって立証できるのは、請求人シンワが平成17年7月6日に青森県大間から北海道函館までのフェリーの乗船券を購入したということであって、乗船したかさえ不明である。請求人シンワが、甲2チラシの「1.6つりピングリーン」や「1.5つりピンオレンジ」の連続貝係止具やロール状連続貝係止具を頒布していたことの証拠にはならない。 〔答弁書11頁6行?14行〕 c 請求人らは、甲6ないし甲21、甲32、甲34ないし甲37を根拠に、甲2カタログと約50枚のサンプルピンをもって北海道に出張し、営業していたと主張するが、甲6ないし甲18の陳述書に記載の「ロープ止めの間にピンとピンをつなげた形状」のピンには、例えば、甲31の図6(a)や図10、図15、図20のように、2本のロ-プ止めの間が1本の可撓性連結材で連結されたものも含まれるし、他の形状もあり得る。しかも、甲6?甲18の陳述書にはピンの写真が掲載されていないので、当該陳述書に記載のピンがどのような形状か不明である。また、甲19ないし甲21、甲32、甲34ないし甲37のチラシ付陳述書には、甲2チラシが掲載はされているが、前記のように甲2チラシとサンプルピンの関係が特定されておらず、甲2チラシの作成日及び配布日を客観的に裏付ける証拠もない。したがって、こられ陳述書は本件特許発明1?3に対する出願前公知資料として採用されるべきではない。 請求人らは、成田昭氏、金丸義光氏、成田貢氏、小笠原辰夫氏、工東雄二氏に、30本取りのサンプルピンを10枚近く手渡し、試験を行ってもらったと主張するが、この試験したことを裏付ける証拠は提出されていない。仮に、試験したとしても、前記のとおり、30本取りのサンプルピンの形状も特定できないので、試験したピンの形状がどのようなものであったかも不明である。 請求人らが前記主張の根拠とする成田昭氏の陳述書(甲10)、金丸義光氏の陳述書(甲12)、成田貢氏の陳述書(甲14)には、「ロープ止めの間にピンとピンとをつなげた形状の抜け落ち防止用の改良されたピン」等と記載されているだけであり、このような形状のピンには、甲31の図6(a)や図10、図15、図20のように、2本のロープ止めの間が1本の可撓性連結材で連結されたものも含まれる。したがって、これら陳述書をもって、「サンプル(30本取り)」が甲2チラシに掲載のピンと同じ形状であるということはできない。 同様に、請求人らが前記主張の根拠とする小笠原辰夫氏のチラシ付き陳述書(甲19)、成田貢氏のチラシ付き陳述書(甲20)及び工東雄二氏のチラシ付き陳述書(甲32)には、甲2チラシが掲載されているが、甲2チラシに掲載されているピンと「サンプルピン(30本取り)」を結びつける証拠は何ら提出されていないため、これらチラシ付き陳述書をもって、甲2チラシに掲載されているピンが前記「サンプル(30本取り)」であるということにもならない。 〔口頭審理陳述要領書5頁18行?6頁21行〕 d 請求人らは、小笠原辰夫氏の陳述書(甲15)に加え、当人のチラシ付き陳述書(甲19)も提出しているが、両陳述書の署名の筆跡は明らかに異なり、同一人物が署名したものとは思えない。請求人らが提出したこれら陳述書(甲15及び甲19)を誰が作成したかは不明である。内容が同様であることや空白に氏名等を記載させていることからすれば、請求人ら或いは請求人らの代理人が作成したものと思われるが、少なくとも、署名者がその内容を理解した上で署名したものとは思えず、文面を読んだかさえも疑わしい。署名の筆跡が明らかに異なることからすれば、本人以外の誰かが本人に頼まれて署名した可能性が極めて高く、真正な証拠として採用されるべきものではない。 〔答弁書9頁3行?13行〕 e 中野健二氏のチラシ付き陳述書(甲35)及び写真(甲46)は撮影時点において前記カタログが事務所の壁に貼られていたことを示す証拠であって、中野氏が前記カタログをいつ入手したのかを特定することはできない。そもそも、チラシ付き陳述書(甲35)の写真及び写真(甲46)には撮影日付が入っておらず、いつ撮影されたものであるかも定かではなく、いつの時点で貼られていたのかも不明である。 請求人らは、甲47の写真はカタログが撤去された事実を立証するものであるとするが、この写真にも撮影日付が入っていないので、この写真だけではカタログが撤去される前なのか後なのか不明である。そもそも、カタログがいつ撤去されたかは本件特許発明の新規性の認定とは無関係である。 請求人らは、事務所の壁に貼ってあったカタログとして甲48の1?甲48の3を提出するが、これら証拠にも年月日は入っておらず、いつ配布されたものであるかは不明である。甲48の2に記載の日付に至っては何を意味しているのかさえ不明である。請求人らは、カタログの原本が変色していることをもって、事務所の壁に力タログが貼ってあった事実を補強するものであると主張するが、この種のカタログであれば数年もすれば変色するのが常であるから、変色しているからといって本件出願前から貼られていたことの裏付けにはならない。ここでの問題は、中野氏が事務所の壁に貼られたカタログをいつ入手したかであって、事務所の壁にいつ貼られたかではない。 〔口頭審理陳述要領書11頁4行?21行〕 (イ)甲第3号証?甲第5号証、甲第55号証(サンプルシート) a 請求人らが提出する「2005年サンプルシート」(甲3:以下「05年シート」という)、「2006年サンプルシート」(甲4:以下「06年シート」という)及び「2009年サンプルシート」(甲5:以下「09年シート」という)には、その頒布日が記入されていないため、いつ頒布されたのか一切不明であるし、実際に配布されたか否かも不明である。これら証拠は、前記各サンプルシート(甲3?甲5)が本件出願日前に頒布されたこと客観的に裏付けるものではなく、本件発明1?3に対する出願前公知資料ではない。 また、「06年シート」(甲4)には7つの欄があり、それら各欄にピンの見本品らしきものが貼付されているが、6種類のピンしか貼付されていない。 〔答弁書7頁下から2行?8頁10行〕 b 請求人らが提出したサンプルシート(甲3、甲4、甲4の1及び甲5)は、貝係止具がプラスチック袋に封入され、そのプラスチック袋が台紙(普通紙)に貼り付けられたものである。このプラスチック袋は密封されていないため、簡単に中身の貝係止具を入れ替えることができるので、プラスチック袋内の貝係止具は、いつ、プラスチック袋内に入れたものであるかを特定することはできず、少なくとも、本件出願前に封入されたと特定できるものではない。また、台紙はいつでも作成することができるものであり、「2006年」と記載されているからといって2006年に作成され、2006年に配布されたとも断定できない。請求人らからは、サンプルシートの配布日を裏付ける証拠は何も提出されていない。 プラスチック袋は非常にもろく、破れやすい。実際に、請求人らが本件特許に関連する控訴審(平成29年(ネ)第10055号)において、原本確認のため知財高裁に持参したサンプルシートのプラスチック袋には破れているものがあり、中身(貝係止具)が紛失していた。請求人らは、後日当該プラスチック袋に入っていたものとして貝係止具を提出したが、その貝係止具が実際に当該プラスチック袋に入っていたものであることは立証されていない。現に、甲4でも、貼り付け欄は7つあるが、貼られているのは6種類のピンである。 以上のように、サンプルシートに固定されたプラスチック袋内の貝係止具は、後から入れ替えることもできるものであり、いつ封入されたものであるか不明であるため、これら証拠に基づいて、本件発明の新規性が否定されるものではない。 〔口頭審理陳述要領書6頁下から4行?7頁15行〕 c 請求人らは、「甲第4号証又は甲第4号証の1『サンプルシート』においては、『つりピンロールオレンジ』は封入されておらず、『サンプルシート』の左から2番目の『つりピンロールバラ色』並びに左から5番目の『つりピンロールグリーン』が該当する。」と主張する。 しかし、『つりピンロールオレンジ』は平成17年に完成していたと主張しておきながら、翌平成18年(2006年)のサンプルシートに掲載されていないのは不自然である。また、『つりピンロールバラ色』はいつ開発されたのか立証されていないにも拘わらず、突然、平成18年(2006年)のサンプルシートに貼り付けられているのも不自然であるのみならず、何の裏付けもなく、甲4の『つりピンロールオレンジ』は『つりピンロールバラ色』であったと言い換えている。請求人の主張は証拠による裏付けがないから採用されるべきでない。 〔口頭審理陳述要領書7頁17行?8頁1行〕 d 請求人らは、「また、『つりピンロールバラ色』の宣伝販売は、甲第4号証及び甲第4号証の1にもあるように、平成18年(2006年)4月20日及び4月末日に続いている。」と主張する(手続補正書:3頁8行?10行)が、甲4号証及び甲4号証の1のサンプルシートが4月20日及び4月末日に続いて頒布されたとする証拠は提出されていない。 請求人らは、「甲第4号証の1の平成18年(2006年)『つりピン』サンプルシートには、価格とともに『キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末』と記されている」ことを根拠に、「この記載によれば、納品が5月20日には開始されるというものであり、本件特許出願の遡及日は平成18年(2006年)5月24日であるから、その遡及日前に量産されている状態にあったことがわかる。」と主張する(手続補正書:4頁7行?9行)が、前記記載があっても、甲4号証の1のサンプルシートが遡及日前に頒布されたとする証拠は提出されていない。 〔口頭審理陳述要領書18頁10行?21行〕 e 甲第41号証の1?甲第41号証の4について (a)請求人らは、被請求人が、東京地方裁判所平成19年(ワ)第12683号商標権侵害差止請求事件(以下「従前地裁事件」という)で東京地裁に提出した、甲第27号証の1?甲第27号証の4を、本件事件において、甲第41号証の1?甲第41号証の4として提出した上で、「同事件での甲第27号証の1は本件審判の甲第2号証(ただし、欄外に価格記載はない。)に、甲第27号証の4は本件審判の甲第4号証の1にそれぞれ対応し、」という。しかし、甲27の1はキャンペーンの一覧であり、甲2はチラシであるからこの両者は対応しない。甲27の4はモノクロコピーであり、甲4の1はカラーコピーであるからこの両者も対応しない。 (b)被請求人は、従前地裁事件において、甲41の1?甲41の4(サンプルシート)を提出した。しかし、被請求人が東京地裁に提出したのは本件特許出願日よりも後の平成19年5月22日である。その当時、被請求人の手元にあったのを提出しただけであり、被請求人はこれらサンプルシートを、誰が、何時、何処で入手したかは記憶にない。 (c)甲41の1?甲41の4のうち、「2006年度取扱いピンサンプル一覧」なるタイトルのサンプルシート(甲41の3)及び「2006年販売促進キャンペーン」なるタイトルのサンプルシート(甲41の4)には、ロープ止め突起の内側を連結した連続貝係止具が含まれている。請求人らは、このサンプルシート(甲41の4)に「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」と記載されていることを根拠に、「少なくとも2006年(平成18年)5月20日以前に、甲第27号証の4『カタログシート』は頒布され・・・」と主張している。しかし、このサンプルシートを配布した事実を裏付ける証拠も、配布日を裏付ける証拠もない。キャンペーン期間が記載されていることと、当該サンプルシート(甲41の4)が配布されたか否か、2006年(平成18年)5月20日以前に配布されたか否かとは別問題である。 しかも、「2006年販売促進キャンペーン」なるタイトルのサンプルシートには、甲4のサンプルシートと、甲4の1のサンプルシート(カラー)と、甲41の4(モノクロ)の3種類がある。どれが、何時、何処で頒布されたのかを裏付ける証拠はない。 〔口頭審理陳述要領書8頁3行?9頁8行〕 f 請求人らは、大関規彦氏、船橋直彦氏、船橋政種氏、川村栄氏の陳述書(甲42?甲45)を証拠として、2006年4月下旬には、甲4の1のサンプル付きチラシを配布して営業を行っていたことを立証すると主張する。しかし、陳述書は請求人らに都合のよいことを記載することができる恣意的なものであり、客観的裏付けのないものであるから証拠として採用されるべきではない。 大関規彦氏の陳述書(甲42)の陳述日付は平成29年10月25日、船橋直彦氏の陳述書(甲43)、船橋政種氏の陳述書(甲44)、川村栄氏の陳述書(甲45)の陳述日付は平成29年10月26日である。これら日付は、特許庁から請求人に送付された「審理事項通知書」で請求人に指定された「口頭審理陳述要領書」の提出期限である平成29年10月27日の2日前と前日であること、請求人からの「口頭審理陳述要領書」の提出が前記指定期限を3日も経過した平成29年10月31日であることから、これら陳述書はいずれも、前記「口頭審理陳述要領書」用に恣意的に作成された疑いが濃厚である。 〔口頭審理陳述要領書9頁10行?10頁1行〕 エ 販売について (ア)請求書・納品書・通帳写し(甲22?甲26) a 請求人らは、小笠原辰夫氏、成田昭氏、成田貢氏が「つりピンロール1.6(グリーン)」や「つりピンロール1.5(オレンジ)」を購入した証拠として、請求書・納品書・通帳の写し(甲22?甲26)を提出する。 b しかし、これら請求書・納品書(甲22、24及び26)には、「つりピンロール1.5(オレンジ)」或いは「つりピンロール1.6(グリーン)」と商品名が記載されているだけであり、これら商品名だけではその商品の具体的形状、即ち、甲19?甲21の「1.6つりピングリーン」や「1.5つりピンオレンジ」であることを確認することはできない。また、通帳の写しの金額が前記請求書・納品書の金額と一致するとしても、それら通帳の写しによっても甲19?甲21の「1.6つりピングリーン」や「1.5つりピンオレンジ」であることを確認することはできない。 c 「06年シート」(甲4)には「つりピンロールグリーン」と記載され、見本品と思しきものが貼付され、「05年シート」(甲3)にも「つりピンロール」は記載され、見本品と思しきものが貼付されている。しかし、「05年シート」の見本品は2本のロープ止め突起の外側が可撓性連結材で連結され、「つりピンロールグリーン」という名称のピンには形状の異なる二種類のピンがあることになる。そうすると、請求書及び納品書(甲22、甲24)に記載の「つりピンロール1.6(「グリーン)」が、前記二種類のどちらのピンのことであるのか特定することはできない。したがって、請求書及び納品書(甲22、甲24)は、小笠原辰夫氏や成田昭氏が甲19、甲21に掲載されている「1.6つりピングリーン」を購入した証拠ではない。なお、成田貢氏が「つりピンロール1.6(グリーン)」を購入した記録は請求書及び納品書(甲26)にはない。 d なお、成田昭氏宛ての請求書(甲24)には、2005年12月8日付けの「つりピンロール1.5(バラ色)」という品名が記載されているが、「05年シート」(甲3)にも、甲2チラシにも、「つりピンロール1.5(バラ色)」という商品は掲載されていない。05年シート(甲3)にも甲2チラシにも掲載されていない商品が、請求書の品目に掲載されるのは不自然である。このような請求書には信憑性はないから、採用されるべきではない。 〔答弁書9頁21行?11頁5行〕 (イ)請求書・納品書等(甲61の1?甲65の4) 甲61の1及び2には「つりピンロール1.5(オレンジ)」と、甲62の1及び2には「つりピンロール1.5」と、甲62の4には「つりピンロール1.6(グリーン)」と、甲63の1及び3には「つりピンロール1.6(グリーン)」と、甲第64号証の1及び2には「つりピンロール1.5」と、甲第65の1には「つりピンロール(グリーン)」と記載されているだけであり、これら「つりピンロール」がどのような形状であるのかは不明である。少なくとも、2本のロープ止め突起の内側を2本の可撓性連結材で連結した形態のものであることの証拠にはならない。 したがって、請求人らの提出した甲61の1?甲65の4は、本件特許に係る発明の新規性を否定する証拠とはなりえない。 〔上申書(1)23頁18行?24頁2行〕 (2)無効理由3(進歩性要件違背) <第1理由> ア 相違点1について (ア)甲31公報の図18の連結貝係止具は、可撓性連結材がロープ止め突起と連結して一体成型されていることに特徴がある。 しかも、「可撓性連結材がロープ止め突起と一体成型されているとの部分を捨象」できることは、甲31公報には開示も示唆もされていない。したがって、可撓性連結材がロープ止め突起と一体成型されているとの部分を捨象して、2本の可撓性連結材による連結箇所をロープ止め突起からみて軸方向内側との構成のみを取り出すことはできない。 〔答弁書14頁11行?14頁18行〕 (イ)技術分野が共通するからと言って直ちに容易想到であるということにはならないし、引用文献に請求人ら主張の構成が開示されているからと言って直ちに容易想到であるということにはならい。容易想到性の有無の判断に当たっては、発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠であるが、請求人らの前記主張は、この認識を欠くものであり、失当である。 容易想到性の有無の判断に当たって、発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠であることについては、知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10096号 審決取消請求事件(以下「裁判例」という)の判示に従えば、請求人らが提出した甲30公報や甲31公報には、可撓性連結材を切断した際に突出して残る切り残し突起が、作業時に作業者の手に当たり、けがをしたり手袋が破れたりするという本件発明の課題については開示も示唆もされておらず、また、当該課題は、本件出願の出願時における周知の課題というわけでもない。 そうすると、当業者といえども、甲30公報や甲31公報に接することにより前記課題を意識することができたとはいえず、請求人らが主張するように、甲31公報に記載の『○1基材の上下に突設されたロープ止め突起同士を連結する構成』を、基材の上のみに突設されたロープ止め突起とし、そのロープ止め突起を上方の基材と連結しない構成とし、可撓性連結材のみで連結する構成するとともに、2本の可撓性連結材による連結箇所を、ロープ止め突起からみて軸方向内側とする構成とする動機付けがあるとは言えない。 〔答弁書15頁5行?16頁18行〕 (ウ)「特許・実用新案審査基準 第3(審決注:ローマ数字は、アラビア数字で表記する。)部 第2章 『第2節進歩性』」によれば、阻害要因とは、主引用発明に副引用発明を適用することを阻害する事情のことであり、乙30公報の図11の突起3、4と可撓性連結材8とを軸方向に分離することの判断において使用される用語ではない。請求人らの主張は「阻害要因」という用語の用法を正しく理解するものではない。 〔答弁書18頁18行?18頁23行〕 イ 相違点2及び3について 請求人らは、甲第31号証の【0014】に相違点2が開示され、【0024】に相違点3が開示されている、と主張する。しかし、甲第31号証の【0014】に相違点2は開示されていないし、【0024】(正しくは【0022】)に相違点3は開示されていない。 〔答弁書22頁2行?23頁1行〕 ウ 判決の判断の誤りについて (ア)関連侵害訴訟の判決は、本件発明を連続貝係止具又はロール状連続貝係止具として認定し、一本ずつに切断してロープに差し込んだ後に、ピンを一本ずつ貝の孔に差し込む作業時の作用効果について判断をしているのであって、「ばらピン」の作用効果とは誤認していない。業界で俗称されている「ばらピン」は、連続貝係止具又はロール状連続貝係止具をロープへの差し込み時一本ずつに切断したピンをいうのではなく、貝養殖業者への納品時に切断を必要としないものである。したがって、「ばらピン」には切り残し突起という構成はありえない。 〔答弁書19頁6行?19頁16行〕 (イ)前記(ア)で述べたとおり、関連侵害訴訟の判決は、連続貝係止具やロール状連続貝係止具を切断してロープに差し込んだ後の個々の貝係止具を貝に差し込むときの作用効果について判断しているのであって、一本ずつばらばらになっている「ばらピン」を手で持って貝へ差し込むときのことを判断しているわけではない。 請求人らのこの主張も「ばらピン」の構成を誤って認識した上での主張であるから失当である。 〔答弁書20頁2行?8行〕 (ウ)可撓性連結材を切断した際に突出して残る切り残し突起が作業時に作業者の手に当たり、怪我をしたり手袋が破れたりするとの課題は、乙2意見書の「三 養殖業界の現状」(意見書1?3頁)及び乙2意見書の「五 1.本願発明の解決課題」(意見書3頁)に明記してあるとおり、「連続貝係止具」及び「ロール状連続貝係止具」についての課題であり、本件発明の構成に関係する課題である。前記課題は本件特許明細書の段落番号【0008】【0026】にも明確に記載されている。関連侵害訴訟の判決は、本件発明の課題について誤った認定も、独自の認定もしておらず、関連侵害訴訟の判決の進歩性の判断に何ら誤りはない。本件審判において関連侵害訴訟の判決の判断が参照されない理由はなく、当然に参照されるものである。 〔答弁書21頁18行?末行〕 (エ)縦ロープに差し込まれている貝係止具を貝の孔に差し込む場合、貝係止具の持ち方は、持ち易さ、差し込み易さ、作業効率などの面から作業者によって異なる。すべての作業者が請求人らの主張するような持ち方をするというわけではない。貝係止具はその両端を貝の孔に差し込むため、貝係止具の持ち替えの手間を省いて作業性を向上させるため、貝係止具を折り曲げるようにして持つ作業者もいる。貝係止具を縦ロープと共に手で持っている場合、切り残し突起が「ハ」宇状のロープ止め突起の外側に残ると、内側に残った場合よりも手に当たり易いことは明白である。真っ直ぐ持つ場合であっても同じである。貝への貝係止具差込み作業は、作業者によっても異なるが、一般的には、一人で、一日数千個である。このため、前記のように、切り残し突起が手に当たると手が傷付いたり手袋が破れたりするという課題が生じていた。請求人らの「手が切り残し突起にあたることはない」との主張は失当である。 このように、切り残し突起が手に当たることは厳然たる事実であるから、原審(関連侵害訴訟)の判断は正しい事実認識に基づくものである。 (口頭審理陳述要領書14頁9行?23行、15頁8行?9行) <第2理由> 関連侵害訴訟で示されたとおり、甲28、甲29及び甲30には、「可撓性連結材を切断した際に突出して残る切り残し突起、作業時に作業者の手に当たり、怪我をしたり手袋が破れたりするとの課題」は記載されておらず、かかる課題は本件特許の原出願時において周知の課題であるというわけでも無い。このような事実からすれば、当業者といえども、甲28、甲29及び甲30に接することにより、上記課題を意識することができたとは言えない。したがって、甲28、甲29及び甲30との関係で、本件発明1?3が進歩性を有することに争いの余地はない。請求人らの<第2理由>での主張も失当である。 〔口頭審理陳述要領書17頁10行?17行〕 第6 当審の判断 1 各証拠の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 「私は(有)シンワの代表取締役の田中孝俊といいます。(有)シンワを平成16年12月3日に設立し、ホタテ養殖資材及び機械の開発、営業、販売、修理などを行っております。 ○1 つりピンロール(自動ピンセッター用)の開発 平成17年1月頃に北海道二海郡八雲町のホタテ養殖漁師、成田昭さんから(株)むつ家電特機(以下、むつ家電)の自動ピンは不具合が多く頻繁に機械が止まって困っている、ホタテがピンから抜けることがあるので良いピンを作ってくれないか?と依頼され開発することになった。 前職でピンについての知識があり平成17年3月1日に抜け落ち防止付のつりピンロールの案を進和化学工業(株)(以下、進和化学)並木敏夫会長に連絡した。従業員の桑原正則さんは金型の図面を3月5日に製作し始めた。 翌週、3月8日に、成田昭さんを再度訪問し、抜け落ち防止付のつりピンロール(以下、つりピンロール)はなんとかなりそうだと伝え、平成17年3月19日には試作用の金型製作を開始した。 平成17年5月31日にロープ止めの内側に2本のつなぎのついたサンプル(30本取り)が完成、6月1日に当社へ到着した、その後、青森県横浜町にある、むつ家電製の自動ピンセッターを借りてテストを行った。課題でもあったロープの撚りの硬いものにも問題なく差せることを確認できた。 ○2 カタログ配布 開発に成功したサンプルピンを当社の竹林政人が2種類のつりピンロールを撮影、カタログを製作し、そのカタログとサンプルを持って平成17年7月6日から北海道出張へ出かけた。7月6日には三信船舶電具(株)函館営業所の安達節男さん、北海道長万部町の神野漁網(株)当時専務であった神野美徳さん、7月7日には北海道八雲町でむつ家電製の自動ピンセッターを所持している工藤雄二さん、小笠原辰夫さん、成田貢さん、成田昭さん、北海道森町の金丸義光さんを訪問した。その時の自動ピンセッターでのテスト結果が良かったため予約注文を頂いた。そのことを進和化学桑原正則さんに報告、製品版の金型を依頼している。 カタログとサンプルはその他にも八雲町漁業協同組合購買部担当者の桜庭紀子さん、7月8日には、(有)中野器機サービスでも、むつ家電の自動ピンセッターに合う自動用ピンだと説明をしカタログ及びサンプルを置かせてもらっており、(有)中野器機サービスには今でも事務所の壁にカタログを貼ってある。 その他にも(有)中里モーター商会、落部漁業協同組合、森漁業協同組合の購買担当者、北海道森町漁師の寺澤秀司さん、仙石政信さんなどにもに同様の説明をしカタログ及びサンプルを置かせてもらった。 予約注文を頂き納品したのは 平成17年8月26日 小笠原辰夫 つりピンロール(グリーン)2ケース 平成17年10月19日 成田貢 つりピンロール(オレンジ)1ケース 平成17年 9月30日 成田昭 納品分後日返品される 平成17年10月26日 成田昭 つりピンロール(オレンジ)3ケース 平成17年12月12日 金丸義光 つりピンロール(オレンジ)3ケース で現金や振り込みなどで代金の回収を行っている。 ○3 むつ家電特機による当社カタログの持ち帰り 後日、聞いた話で成田貢さんの小屋に置いたカタログ及びサンプルをむつ家電の従業員である中村克志が来たあとに当社のサンプルとカタログが無くなっていたと成田貢さんと奥さんから聞いた。 むつ家電の従業員の中村克志とは、北海道への出張時にはよく噴火湾で会うことが多くフェリーやホテルでも一緒になることがあり、八雲町の焼肉屋富士で一緒に食事もしたことがある。北海道函館市から青森県大間町への帰りのフェーリー(船名、ばあゆ)で一緒になった際に中村克志より北海道の漁師から当社のカタログとサンプルを回収してむつ家電社長に手渡したと聞いた。中村自身も後にむつ家電の特許になっていてびっくりしたと話していた。また、このサンプルを(株)MCIエンジニアリングに持って行ったとも話していた。 ○4 結論 この経緯でもわかるようにロープ止めの内側に2本のつなぎのついた自動ピンは当社が早く開発しているので、(株)むつ家電特機の特許権や意匠権などは無効である。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「抜け落ち防止対策ピン『つりピン』の 自動機用つりピンロール 完成!」(上段) イ 「一枚明けの場合、従来品のピンはホタテ貝が回転することにより、ホタテの出っ張りにアゲ先端が接触し、その力でアゲが寝床部分へ寝る状態になり抜ける しかし、抜け落ち防止対策ピンは、その力を『くびれ』部分で吸収、変形することで穴をふさぐような形で折れ曲がるため穴から抜け出てきにくい。」(中段右欄) ウ 「販売元 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 有限会社シンワ 電話0175-28-5344 ファックス0175-28-5345」(下段左欄) エ 「製造元 群馬県多野郡鬼石町浄法寺766-1 進和化学工業株式会社 電話0274-52-5001 ファックス0274-52-4101」(下段右欄) オ 上段左の写真は以下のとおり。 カ 中段の写真は以下のとおり。 キ 上記オ及びカをみると、甲第2号証には、「つりピンロール」として次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材と、その軸方向両端側の夫々に突設された突起と、夫々の両端側の突起よりも内側に両端側の突起と同方向にハ字状に突設された2本の内側の突起を備えたつりピンが基材の間隔をあけて平行に多数本連結されて成型されたつりピンロールにおいて、前記多数本のつりピンが内側の突起を同じ向きにして多数本配列され、配列方向に隣接するつりピンの内側の突起の先端が、他方のつりピンの基材から離れて平行に配列され、隣接する基材同士は内側の突起の外側が連結材で連結されず、内側の突起の内側が2本の連結材と一体に成型されて連結され、連結材は内側の突起よりも細い細紐状であり、前記2本の連結材による連結箇所は、2本の内側の突起の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本の内側の突起間の中心よりも夫々の内側の突起寄りの箇所としたつりピンロール。」 (3)甲第3号証(検甲第3号証) 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「2005年販売ピン一覧」(上段左欄) イ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(上段右欄) ウ 「抜落防止対策品」(表の上から1段目左から2列目) 「(2) つりピンロールグリーン」(表の上から2段目左から2列目) 「特徴 穴サイズ1.6グリーンピンの使用感を損なわず海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピンのロール状につないだもの」(表の上から3段目左から2列目) エ 1枚目の表の左側周辺は以下のとおり。 オ 甲第3号証の元となる現物である検甲第3号証の証拠調べ(検証)において、「(6)左から2番目の小袋内に封入されたつりピンロールグリーンは、連結材がロープ止め突起の外側にある[写真3-12]。」ことを確認した。 (「第1回口頭審理及び証拠調べ調書」の「検証調書」4.(イ)を参照。) カ 上記ウ及びオを参照して、上記エをみると、甲第3号証には、「つりピンロール」として次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。 「細長の基材と、その軸方向両端側の夫々に突設された突起と、夫々の両端側の突起よりも内側に両端側の突起と同方向にハ字状に突設された2本の内側の突起を備えたつりピンが基材の間隔をあけて平行に多数本連結されて成型されたつりピンロールにおいて、前記多数本のつりピンが内側の突起を同じ向きにして多数本配列され、配列方向に隣接するつりピンの内側の突起の先端が、他方のつりピンの基材から離れて平行に配列され、隣接する基材同士は内側の突起の外側が2本の連結材と一体に成型されて連結され、連結材は内側の突起よりも細い細紐状である、つりピンロール。」 (4)甲第4号証(検甲第4号証) 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「2006年販売促進キャンペーン 良い品で湾内No.1の安い店を目指しています。」(上段左欄) イ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(上段右欄) ウ 「一枚明け1.5 2枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.55キリを使用してください」(表の上から1段目左から1列目) 「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」(表の上から2段目左から2列目) 「バラ色を改良し先端からアゲまでを短くし作業性を良くし、ロール状にしたもの。海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピン・・・」(表の上から3段目左から2列目) エ 「一枚明け1.6 2枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.65キリを使用してください」(表の上から1段目左から2列目) 「つりピンロールグリーン 抜落防止対策品」(表の上から2段目左から5列目) 「グリーンピンの使用感を損なわず海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピンをロール状につないだもの」(表の上から3段目左から5列目) オ 1枚目の表の上半分付近は、以下のとおり。 カ 甲第4号証の元となる現物である検甲第4号証の証拠調べ(検証)において、「(6)左から2番目の小袋に封入されたつりピンロールバラ色と、左から5番目の小袋に封入されたつりピンロールグリーン[写真4-13]は、合成樹脂によって一体に成型されており、ロープ止め突起の内側の離れた箇所に、2本の可撓性連結材を有する。[写真4-14、写真4-15]」ことを確認した。 (「第1回口頭審理及び証拠調べ調書」の「検証調書」4.(ロ)を参照。) キ 上記ウ、エ及びカを参照して、上記オをみると、甲第4号証には、「つりピンロール」として次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものと認められる。 「貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材と、その軸方向両端側の夫々に突設された両端側の突起と、夫々の両端側の突起よりも内側に両端側の突起と同方向にハ字状に突設された2本の内側の突起を備えたつりピンが基材の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型されたつりピンロールにおいて、前記多数本のつりピンが内側の突起を同じ向きにして多数本配列され、配列方向に隣接するつりピンの内側の突起の先端が、他方のつりピンの基材から離れて平行に配列され、隣接する基材同士は内側の突起の外側が連結材で連結されず、内側の突起の内側が2本の連結材と一体に樹脂成型されて連結され、連結材は内側の突起よりも細い細紐状であり、前記2本の連結材による連結箇所は、2本の内側の突起の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本の内側の突起間の中心よりも夫々の内側の突起寄りの箇所としたつりピンロール。」 (5)甲第55号証(検甲第55号証) 甲第55号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「2006年販売促進キャンペーン 良い品で湾内No.1の安い店を目指しています。 キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」(上段左欄) イ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(上段右欄) ウ 「一枚明け1.5 2枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.55キリを使用してください」(表の上から1段目左から1列目) 「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」(表の上から2段目左から2列目) 「バラ色を改良し先端からアゲまでを短くし作業性を良くし、ロール状にしたもの。海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピン・・・」(表の上から3段目左から2列目) エ 「一枚明け1.6 2枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.65キリを使用してください」(表の上から1段目左から2列目) 「つりピンロールグリーン 抜落防止対策品」(表の上から2段目左から5列目) 「グリーンピンの使用感を損なわず海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピンをロール状につないだもの」(表の上から3段目左から5列目) オ 1枚目の表の上半分付近は以下のとおり。 カ 甲第55号証の元となる現物である検甲第55号証の証拠調べ(検証)において、「(6)左から2番目の小袋に封入されたつりピンロールバラ色と、左から5番目の小袋に封入されたつりピンロールグリーン[写真55-8、写真55-10]は、合成樹脂により一体に成型されており、ロープ止め突起の内側の離れた箇所に、2本の可撓性連結材を有する[写真55-14、写真55-15]。」ことを確認した。 (「第1回口頭審理及び証拠調べ調書」の「検証調書」4.(ハ)を参照。) キ 上記ウ、エ及びカを参照して、上記オをみると、甲第55号証には、「つりピンロール」として次の発明(以下「甲55発明」という。)が記載されているものと認められる。 「貝にあけた孔に差し込みできる細長の基材と、その軸方向両端側の夫々に突設された両端側の突起と、夫々の両端側の突起よりも内側に両端側の突起と同方向にハ字状に突設された2本の内側の突起を備えたつりピンが基材の間隔をあけて平行に多数本連結されて樹脂成型されたつりピンロールにおいて、前記多数本のつりピンが内側の突起を同じ向きにして多数本配列され、配列方向に隣接するつりピンの内側の突起の先端が、他方のつりピンの基材から離れて平行に配列され、隣接する基材同士は内側の突起の外側が連結材で連結されず、内側の突起の内側が2本の連結材と一体に樹脂成型されて連結され、連結材は内側の突起よりも細い細紐状であり、前記2本の連結材による連結箇所は、2本の内側の突起の夫々から内側に離れた箇所であり且つ前記2本の内側の突起間の中心よりも夫々の内側の突起寄りの箇所としたつりピンロール。」 (6)甲41号証の1 甲第41号証の1には、以下の事項が記載されている。 ア 「甲27号証の1」(1枚目右上端) イ 「2005年開業キャンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」(1枚目上段左欄) ウ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(1枚目上段右欄) エ 「当社では売れ残り品は販売しておりません。お客様からの注文後製造いたします。」(1枚目下から1行目) (7)甲41号証の2 甲第41号証の2には、以下の事項が記載されている。 ア 「甲27号証の2」(右上端) イ 「2005年開業キャンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」(上段左欄) ウ 「緊急値下げ!! つりピン&ロールピン&グリーンピン&バラ色ピン」(上段) エ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(上段右欄) オ 「・・・おりません。お客様からの注文後製造いたします。」(下から1行目) (8)甲41号証の3 甲第41号証の3には、以下の事項が記載されている。 ア 「甲27号証の3」(右上端) イ 「2006年度 取扱いピンサンプル一覧」(上段左欄) ウ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 電話番号 0175-28-5344 ファックス番号 0175-28-5345」(上段右欄) エ 「つりピンロール(バラ色) 抜落防止対策品」(表の上から1段目右から1列目) 「一枚明け1.5」(表の上から2段目右から1列目) 「バラ色を改良し先端からアゲまでを短くし作業性を良くし、ロール状にしたもの。海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピン。※注意、細くできているため材質性能上柔らかく、多少差しづらさがあります。」(表の上から3段目右から1列目) 「早期出荷用・・・」(表の上から4段目右から1列目) オ 「つりピンロール(グリーン) 抜落防止対策品」(表の上から1段目右から2列目) 「一枚明け1.6」(表の上から2段目右から2列目) 「グリーンピンの使用感を損なわず海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピンをロール状につないだもの。」(表の上から3段目右から2列目) 「早期出荷用」(表の上から4段目右から2列目) カ 表の上半分付近は以下のとおり。 (9)甲41号証の4 甲第41号証の4には、以下の事項が記載されている。 ア 「甲27号証の4」(右上端) イ 「2006年販売促進キャンペーン 良い品で湾内No.1の安い店を目指しています。 キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」(上段左欄) ウ 「有限会社シンワ 青森県下北郡東通村大字目名字前田10-3 TEL0175-28-5344 FAX0175-28-5345」(上段右欄) エ 「一枚明け1.5 2枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.55キリを使用してください」(表の上から1段目左から1列目) 「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」(表の上から2段目左から2列目) 「・・・ロール状にしたもの。海中で貝の回転による抜け落ち防止を施したピン・・・」(表の上から3段目左から2列目) オ 「・・・枚明けや一枚明けでも深い穴は多少差しづらさがあるため1.65キリを使用してください」(表の上から1段目左から2列目) 「・・ピンロール・・落防止対策品」(表の上から2段目左から5列目) 「・・・ピンをロール状につないだもの」(表の上から3段目左から5列目) カ 表の上半分付近は以下のとおり。 (10)甲第41号証の5 甲第41号証の5には、以下の事項が記載されている。 ア「商標侵害差止等請求権 東京地方裁判所御中 原告 株式会社むつ家電特機 外1名 被告 進和化学工業株式会社 外4名 ・・・・・」 平成19年5月22日 ・・・・・ 原告訴訟代理人 弁護士 五藤昭雄 弁護士 芦川淳一 ・・・・・ 証拠説明書(1)」 イ(6頁上から2段目) 「甲26の1?3」(号証の欄)、 「被告シンワの書面」「写し」(標目(原本・写しの別)の欄) 「2006(平成18)年7月20日」(作成年月日) 「(有)シンワ」(作成者) 「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する」(立証趣旨) ウ(6頁上から3段目) 「甲27の1?2」(号証の欄)、 「被告シンワのチラシ(2005年用)」「写し」(標目(原本・写しの別)の欄) 「2005(平成17)年」(作成年月日の欄) 「(有)シンワ」(作成者の欄) 「同上」(立証趣旨の欄) エ(6頁上から4段目) 「甲27の3?4」(号証の欄)、 「被告シンワのチラシ(2006年用)」「写し」(標目(原本・写しの別)の欄) 「2006(平成18)年」(作成年月日の欄) 「(有)シンワ」(作成者の欄) 「同上」(立証趣旨の欄) 2 無効理由1(新規性要件違背)について (1)つりピンサンプルシート(甲第41号証の4)と同じ書面が、本件特許の遡及日前に作成され、配布された事実について ア 被請求人は、被請求人外1名を原告、請求人ら外3名を被告とする商標権侵害差止等請求事件において、当該事件の原告訴訟代理人弁護士五藤昭雄及び同芦川淳一が平成19年5月22日に東京地方裁判所に証拠として提出した甲41の4及び証拠説明書として提出した甲41の5を、その頃受領していること、甲41の5には、甲41の4の説明として、「被告シンワのチラシ(2006年用)」、「写し」、作成日「2006(平成18)年」、作成者「(有)シンワ」、立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨記載されていることが認められるところ、甲41の4には、「2006年販売促進キャンペーン」、「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」、「有限会社シンワ」、「つりピンロールバラ色 抜落防止対策品」、「サンプル価格」、「早期出荷用グリーンピン 特別感謝価格48000円」などの記載があり、複数の種類の「つりピン」が記載されており、その中には、5本のピンが中央付近においてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに、そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のもの(つりピンロールバラ色と記載された部分の直近下に写し出されているもの)があることが認められる。 上記「つりピン」の形状は、証拠(甲41の3?5)により、上記事件の上記原告訴訟代理人が、平成19年5月22日に、甲41の4とともに、上記商標権侵害差止等請求事件において、東京地方裁判所に証拠として提出したと認められる甲41の3に「つりピンロ-ル(バラ色)抜落防止対策品」として記載されているピンク色の「つりピン」と、その形状が一致していると認められる。証拠(甲41の3?5)によると、甲41の3は、甲41の4と同じ証拠説明書による説明を付して提出されたものであると認められ、「2006年度 取扱いピンサンプル一覧」、「有限会社シンワ」、「早期出荷用」などの記載がある。 また、証拠(甲41の1?5)によると、甲41の4は、上記商標権侵害差止等請求事件の上記原告訴訟代理人が、平成19年5月22日に、甲41の4とともに、「被告シンワのチラシ(2005年用)」、「写し」、作成日「2005(平成17)年」、作成者「(有)シンワ」、立証趣旨「被告シンワが原告むつ家電得意先へ営業した事実を立証する。」旨の証拠説明書による説明を付して、上記商標権侵害差止等請求事件において、東京地方裁判所に提出したと認められる甲41の1と、レイアウトが類似しているところ、甲41の1には、「2005年開業キャンペーン 下記価格は2005年4月25日現在の価格(税込)です。」、「有限会社シンワ」、「当社では売れ残り品は販売しておりません。お客様からの注文後製造いたします。」などの記載がある。 以上によると、甲41の3及び4は、いずれも、請求人シンワが、被請求人の顧客であった者に交付したものを、平成19年5月22日までに、被請求人が入手し、請求人シンワが、被請求人の得意先へ営業した事実を裏付ける証拠であるとして、上記商標権侵害差止等請求事件において、提出したものであると認められる。 そして、甲41の4の上記記載内容、特に「販売促進キャンペーン」、「納品5月20日?」と記載されていることからすると、甲41の4と同じ書面が、平成18年5月20日以前に、請求人シンワにより、ホタテ養殖業者等の相当数の見込み客に配布されていたことを推認することができる。 イ また、前記アの認定事実によると、甲41の4に記載されている、5本の「つりピン」が中央付近においてそれぞれハの字型の1対の突起を有するとともに、そのハの字型の間の部分を2本の直線状の部分が連通する形で連結された形状のものは、請求人シンワにより見込み客に配布されていた前記アの甲41の4と同じ書面にも添付されていたと認められる。 (2)甲第41号証の4と甲第55号証の同一性、及び両者の原本について ア 甲第41号証の4及び甲第55号証のいずれにも、「2006年販売促進キャンペーン」及び「キャンペーン期間 ・予約5月末まで ・納品5月20日?9月末」という同じ記載が同じ配置であり、また、甲第41号証の4及び甲第55号証に写っているサンプルの形状が、いずれも5個つなぎのつりピンロールであって、ハ字状のロープ止め突起の内側に連結部材で連結されたものであって同じである(「つりピンロールバラ色」の欄及び「つりピングリーン」の欄と「つりピンロールグリーン」欄とに跨がっている部分)。 上記の点をふまえると、写しである甲第41号証の4の原本と甲第55号証の元となる現物は同じ内容のものであるといえる。そして、上記(1)で認定したことを踏まえると、その原本及び現物と同じ内容のものが、平成18年5月20日以前に、請求人シンワにより、ホタテ養殖業者等の相当数の見込み客に配布されていたことを推認することができる。 (3)甲第41号証の4に記載された発明について 上記(2)のとおり、甲第41号証の4の原本と甲第55号証の元となる現物は同じ内容のものであることから、甲第41号証の4に記載された発明(以下、「甲41の4発明」という。)は、甲第55号証(検甲第55号証)から認定することができる発明と同じである。 そうすると、甲41の4発明は、上記1(5)キのとおりである。 (4)甲41の4発明の公知性について 上記(1)?(3)によれば、甲41の4発明は、本件特許の原出願の出願(平成18年5月24日)前に公然知られた発明であると認められる。 (5)甲41の1発明が本件発明と同一であるかどうかについて ア 本件発明1について (ア)対比・判断 本件発明1と、甲41の4発明とを対比すると、技術常識を勘案すれば、 甲41の4発明の「内側の突起」は、本件発明1の「ロープ止め突起」に相当し、同じく「両端側の突起」は、「貝止め突起」に相当する。 また、甲41の4発明であるつりピンロールは、樹脂成型されており、そして、その連結材は、全体がつりピンロールであること、つまりロール状に巻き取られることから、可撓性を備えていることは明らかである。 さらに、甲41の4発明において、連結材の配置を考慮すれば、その連結材を切断すると、その切り残し突起は、2本の内側の突起の内側に残ることは自明である。 したがって、本件発明1と甲41の4発明とは、相違点は存在せず、同一である。 イ 本件発明2について (ア)対比・判断 本件発明2と甲41の4発明とを対比すると、 甲41の4発明に記載された「つりピン」は、ロープ止め突起の先端と連結部材とが極めて近接した位置にあり、2本のロープ止め突起の先端の間隔よりも一定程度狭い縦ロープとの関係では、2本の可撓性連結材の間隔が、貝係止具が差し込まれる縦ロープの直径よりも広くなる。そうすると、甲41の4発明は、本件発明2と同様に「2本の可撓性連結材(13)の間隔が、貝係止具(11)が差し込まれる縦ロープ(C)の直径よりも広い」ものといえるから、本件発明2と甲41の4発明とは、相違点は存在せず、同一である。 ウ 本件発明3について (ア)対比・判断 甲41の4発明であるつりピンロールは、その名称からロール状に巻かれることは自明であるから、本件発明3と甲41の4発明とは、相違点は存在せず、同一である。 エ 小括 上記ア?ウのとおりであるから、本件発明1?3と甲41の4発明とは同一である。 (6)まとめ 上記(1)?(5)で検討したとおりであるから、本件発明1?3は、本件特許の遡及日前に、公然知られた発明であったということができる。 第7 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の遡及日前に公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号の規定に違反してなされたものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-07-16 |
結審通知日 | 2019-07-19 |
審決日 | 2019-07-30 |
出願番号 | 特願2009-31797(P2009-31797) |
審決分類 |
P
1
113・
111-
Z
(A01K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 圭伸 |
特許庁審判長 |
秋田 将行 |
特許庁審判官 |
富士 春奈 西田 秀彦 |
登録日 | 2011-08-12 |
登録番号 | 特許第4802252号(P4802252) |
発明の名称 | 連続貝係止具とロール状連続貝係止具 |
代理人 | 五藤 昭雄 |
代理人 | 後藤 充隆 |
代理人 | 奥川 勝利 |
代理人 | 高橋 勇雄 |
代理人 | 奥川 勝利 |
代理人 | 芦川 淳一 |
代理人 | 宮森 惣平 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 高橋 勇雄 |
代理人 | 宮森 惣平 |
代理人 | 後藤 充隆 |
代理人 | 小林 正英 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 小林 正治 |
代理人 | 井上 誠一 |
代理人 | 井上 誠一 |