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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1355227 |
審判番号 | 不服2018-10541 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-08-02 |
確定日 | 2019-10-07 |
事件の表示 | 特願2015-541794号「拡張現実デバイスの電力性能を高めるための仮想オブジェクトディスプレイ特性の変更」拒絶査定不服審判事件〔平成26年5月22日国際公開、WO2014/078037、平成28年2月12日国内公表、特表2016-504615号、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月23日(優先権主張 平成24年11月13日及び平成25年2月1日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成27年5月26日に特許協力条約第34条に基づく補正に係る補正書の日本語による翻訳文が提出され、同年7月28日に手続補正書が提出され、平成28年10月6日に手続補正書が提出されたものであり、平成29年7月19日付けの拒絶理由通知に対し、同年10月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月26日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(原査定の謄本の送達日:同年4月2日)、これに対して、同年8月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたが、当審において、平成31年4月26日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、令和1年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明15」という。)は、令和1年8月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 拡張現実ディスプレイを制御するための方法であって、 現実世界の場面に重ね合わされた仮想オブジェクトを含む仮想の視界をヘッドマウントディスプレイにより提示するステップと、 第2の色を使用して前記仮想オブジェクトの表示を変更するステップであって、前記第2の色が、前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と少なくとも既定の量の色コントラストを有し、前記第2の色が、前記第1の色に基づいて選択され、前記仮想の視界における前記仮想オブジェクトが、前記現実世界のオブジェクトの上に重ね合わされる、ステップと、 前記第1の色と前記第2の色との間のコントラストの量に基づいて、前記仮想オブジェクトを表示するための前記ヘッドマウントディスプレイのルーメン出力を低下させるステップと を含む、拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項2】 前記第2の色が、前記現実世界のオブジェクトの前記第1の色に対して少なくとも既定の量の色コントラストを有する、請求項1に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項3】 前記表示を変更するステップが、前記既定の量の色コントラストを、Lab色空間における前記第1の色と前記第2の色との間の最小距離に基づいて決定するステップを含む、請求項2に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項4】 前記表示を変更するステップが、前記拡張現実ディスプレイに接続されたバッテリーの充電レベルが既定のしきい値を下回る場合、前記仮想オブジェクトの前記表示を変更するステップを含む、請求項2に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項5】 前記ルーメン出力を低下させるステップが、前記ヘッドマウントディスプレイの電力消費を、前記仮想オブジェクトを表示するための前記ヘッドマウントディスプレイの前記ルーメン出力を低下させることによって低下させるステップを含む、請求項4に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項6】 前記表示を変更するステップが、前記仮想オブジェクトを前記ヘッドマウントディスプレイの前記仮想の視界内の第1のロケーションから第2のロケーションに移動させることによって、前記仮想オブジェクトの前記表示を変更するステップを含む、請求項1に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項7】 前記表示を変更するステップが、前記仮想オブジェクトを前記ヘッドマウントディスプレイの前記仮想の視界内の前記第1のロケーションから前記第2のロケーションに移動させる前に、既定の期間待機するステップをさらに含む、請求項6に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項8】 前記ルーメン出力を低下させるステップが、 ユーザの眼の焦点を監視するステップと、 前記ユーザが前記仮想オブジェクトが提示される仮想の平面に焦点を合わせていない場合、前記仮想オブジェクトの輝度レベルを低下させるステップと を含む、請求項1に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための方法。 【請求項9】 拡張現実ディスプレイを制御するための装置であって、 現実世界の場面に重ね合わされた仮想オブジェクトを含む仮想の視界を提示するための手段と、 前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と少なくとも既定の量の色コントラストを有し、かつ前記第1の色に基づいて選択される、第2の色を使用して、 前記仮想オブジェクトの表示を変更するための手段であって、前記仮想の視界における前記仮想オブジェクトが、前記現実世界のオブジェクトの上に重ね合わされる、手段と、 前記第1の色と前記第2の色との間のコントラストの量に基づいて、前記仮想オブジェクトを表示するためのヘッドマウントディスプレイのルーメン出力を低下させるための手段と を備える、拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項10】 前記第2の色が、前記現実世界のオブジェクトの前記第1の色に対して少なくとも既定の量の色コントラストを有する、請求項9に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項11】 前記表示を変更するための手段が、Lab色空間における前記第1の色と前記第2の色との間の最小距離に基づいて、前記既定の量の色コントラストを決定するための手段を備える、請求項10に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項12】 前記表示を変更するための手段が、前記拡張現実ディスプレイと結合されたバッテリーの充電レベルが既定のしきい値を下回る場合、前記仮想オブジェクトの前記表示を変更するための手段を備える、請求項10に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項13】 前記ルーメン出力を低下させるための手段が、前記仮想オブジェクトを表示するための前記ヘッドマウントディスプレイの前記ルーメン出力を低下させることによって、前記ヘッドマウントディスプレイの電力消費を低下させるための手段を備える、請求項12に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項14】 前記表示を変更するための手段が、前記仮想オブジェクトを前記ヘッドマウントディスプレイの前記仮想の視界内の第1のロケーションから第2のロケーションに移動させることによって、前記仮想オブジェクトの前記表示を変更するための手段を備える、請求項9に記載の拡張現実ディスプレイを制御するための装置。 【請求項15】 拡張現実ディスプレイを制御するためのコンピュータプログラムであって、プロセッサに、請求項1?8のいずれか一項に記載の方法を行わせるように構成されたプロセッサ可読命令を含む、拡張現実ディスプレイを制御するためのコンピュータプログラム。」 第3 原査定について 1 原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本願発明1?2、4?5、9?10、12?13、15は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) 本願発明1?2、4?5、9?10、12?13、15は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願発明6?7、14は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2及び5に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2009-192583号公報 引用文献2:国際公開第2012/019937号(周知技術を示す文献) 引用文献5:特開2002-163670号公報(周知技術を示す文献) 2 原査定の拒絶の理由についての当審の判断 (1)引用文献、引用発明等 原査定において引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 「【0016】 以下図面に基づいて、本発明に係る頭部装着式映像表示装置(以下、HMDとも称する。)の実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。 【0017】 (省略) 【0018】 HMD1は、図1に示すように、テンプル21R,21L、ブリッジ22、鼻当て23R,23L、透明基板24R,24L、表示ユニット25(LCD表示部26、接眼光学系27)、カメラユニット28、イヤホン29R,29L、マイク30、及び制御ユニット31等を有している。 【0019】?【0022】 (省略) 【0023】 表示ユニット25は、LCD表示部26、及び接眼光学系27等を有し、カメラユニット28で撮影された画像や、制御ユニット31に設けられた後述の通信部36を介して、遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータから提供された映像等を表示する。また、表示ユニット25は、接眼光学系27を通して外界(前方の被写体)をシースルー可能に構成されている。尚、表示ユニット25の詳細は後述する。」 イ 「【0029】 図2に示すように、表示ユニット25は、筐体261、バックライト262、コリメータレンズ263、LCD(Liquid Crystal Display)264からなるLCD表示部26、及びプリズム271、HOE(Holographic Optical Element)272からなる接眼光学系27等から構成される。 【0030】 (省略) 【0031】 バックライト262は、発光色がそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の発光ダイオードであるRLED262R、GLED262G、BLED262Bを有し、LCD264を照明する光源である。 【0032】?【0036】 (省略) 【0037】 以上のような構成を有する表示ユニット25において、バックライト262のRLED262R、GLED262G、BLED262Bから射出された光は、コリメータレンズ263を通してLCD264を照明し、この照明によりLCD264で生成された像光は、プリズム271内で複数回の全反射を行った後、HOE272により回折し虚像として装着者の眼球Eに導かれる。 【0038】 さらに、プリズム271は、前方から入射する光を装着者の眼球Eに導くようになっている。これにより、装着者は、外界(前方の被写体)をシースルー可能となり、カメラユニット28で撮影され生成された画像や、制御ユニット31に設けられた後述の通信部36を介して、遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータから提供された映像等を外界(前方の被写体)と重畳して視認することとなる。」 ウ 「【0045】 制御ユニット31は、制御部32、画像メモリ33、VRAM(Video Random Access Memory)34、操作部35、通信部36、LCDドライバ37、及びHMD1の動作用電源である電池38等から構成される。 【0046】 制御部32は、図示しない各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理等のデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等から構成される。制御部32は、電源スイッチ351及び操作スイッチ352を有する操作部35からの信号、及び遠隔地に設けられた例えば図示しないホストコンピュータからの制御信号等を受けて、HMD1で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものである。尚、制御部32による表示動作制御の詳細は後述する。」 エ 「【0051】 ここで制御部32の詳細を説明する。制御部32は、表示制御部321、画像色解析部322、電池電圧検知部323等を有する。 【0052】 電池電圧検知部323は、電池38の電圧や残容量を検知する。 【0053】 画像色解析部322は、カメラユニットで撮影された画像信号に基づき、画すなわち装着者の前方の被写体の色合いを解析する。色合いを解析する方法としては、例えば、画像信号からR、G、B信号の強度分布(ヒストグラム)をとり、度数の大きい色成分を算出するするとか、R、G、B信号の割合の偏り等を算出といった、周知の方法を用いることができる。 【0054】 表示制御部321は、LCD264を構成するR、G、Bそれぞれの透過型液晶表示素子に対応して、赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号をRLCDドライバ37R、GLCDドライバ37G、BLCDドライバ37Bを介して出力し駆動を制御する。また、LCD264のバックライト262の光源であるRLED262R、GLED262G、BLED262Bの駆動を制御する。 【0055】 また、表示制御部321は、LCD264、バックライト262の駆動モードとして、液晶単色駆動、光源単色駆動の2つの駆動モードを有している。 【0056】 液晶単色駆動は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、画像色解析部322の解析結果に基づいて、該合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動するモードである。 【0057】 また、光源単色駆動は、画像色解析部322の解析結果に基づいて、RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれか1つの光源を駆動するモードである。 【0058】 そして、表示制御部321は、電池電圧検知部323の検知結果に基づいて、液晶単色駆動および光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動モード実行することができる。」 オ 「【0059】 ここで、HMD1で行われる表示制御動作の流れを図4、図5を用いて説明する。図4(a)は、表示制御前の画面の一例を示す模式図、図4(b)は、表示制御後の画面の一表示例を示す模式図である。図5は、表示制御動作の流れを示すフローチャートである。 【0060】 表示ユニット25の画面には、図4(a)に示すように、接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像H1がカラー表示されている。 【0061】 このような状態で、最初に、電池電圧検知部323は、電池38の電圧を検知する(ステップS1)。次に、表示制御部321は、電池電圧検知部323で検知された電池38の電圧Vbと予め設定しておいた基準電圧Vrとを比較する。比較した結果、Vb<Vrの場合(ステップS2;Yes)、すなわち電池38の残容量が低下している場合、表示制御部321は、先ず、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成する(ステップS3)。次に、カメラユニット28によりシースルー画像の画角と略等しい画角で作業対象物Xを撮影し画像信号を取り込む(ステップS4)。画像色解析部322は、カメラユニット28で取り込まれた画像信号を解析し、被写体の色合いを解析する(ステップS5)。次に、表示制御部321は、画像色解析部322で解析された被写体の色合いに基づいて、合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれに出力するかを選択する(ステップS5)。同様に、表示制御部321は、画像色解析部322で解析された被写体の色合いに基づいて、RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれの光源を駆動するかを選択する(ステップS6)。 【0062】 例えば、シースルー画像Sの色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択する。すなわち、シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択する。 【0063】 そして、表示制御部321は、選択した過型液晶表示素子に合成画像信号を出力し駆動するとともに選択したバックライト光源を駆動する(ステップS8)。このとき、表示ユニット25の画面は、図4(b)に示すように、カラーの表示映像H1が単色の表示映像H2に変化し表示される。 【0064】 このように、本発明の実施形態に係るHMD1においては、表示制御部321は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、画像色解析部322の解析結果に基づいて、該合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれか1つの透過型液晶表示素子に出力して駆動する液晶単色駆動および画像色解析部322の解析結果に基づいて、R、G、Bのバックライト光源のいずれか1つの光源を駆動する光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を有する構成とした。これにより、R、G、Bの3つの透過型液晶表示素子およびR、G、Bの3つのバックライト光源をいつも駆動することなく、必要に応じて、液晶単色駆動および光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動動作を行うことにより単色化することができる。その結果、消費電力を大きく低減することができ、電池の消耗を抑え、使用可能時間を延長することができる。 【0065】 また、液晶単色駆動、光源単色駆動を行う際には、電子カメラで撮影された画像の色合いを解析する画像色解析部322の解析結果に基づいて、駆動する透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択するようにしている。これにより、例えば、外界のシースルー画像の色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子、バックライト光源を選択し、駆動することができる。すなわち、シースルー画像の色合いと異なった色合いの映像を表示することができる。その結果、シースルー画像と表示映像との識別が容易になり単色化による視認性の低下を抑えることができる。」 カ 上記ア?オの記載事項を総合すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「表示ユニット25、カメラユニット28及び制御ユニット31を有する頭部装着式映像表示装置(HMD1)の上記表示ユニット25の画面表示を制御する方法において、 (上記アの【0016】、【0018】、上記ウの【0045】?【0046】、上記オの【0059】) 上記表示ユニット25は、筐体261、バックライト262、コリメータレンズ263、LCD264からなるLCD表示部26、及び、接眼光学系27を有し、(上記アの【0023】、上記イの【0029】) 装着者は、外界(前方の被写体)をシースルー可能であり、上記カメラユニット28で撮影され生成された画像や、上記制御ユニット31に設けられた通信部36を介して、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された映像等を上記LCD264において表示し、上記接眼光学系27を通して外界(前方の被写体)と重畳して視認するものであり、 (上記イの【0038】) 上記バックライト262は、発光色がそれぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の発光ダイオードであるRLED262R、GLED262G、BLED262Bを有し、LCD264を照明する光源であり、 (上記イの【0031】) 上記制御ユニット31は、制御部32、画像メモリ33、VRAM34、操作部35、通信部36、LCDドライバ37、及びHMD1の動作用電源である電池38等から構成され、(上記ウの【0045】) 上記制御部32は、表示制御部321、画像色解析部322、電池38の電圧や残容量を検知する電池電圧検知部323を有し、HMD1で行われる表示動作や画像信号処理動作を統括的に制御するものであり、 (上記ウの【0046】、上記エの【0051】?【0052】) 上記画像色解析部322は、上記カメラユニット28で撮影された画像信号に基づき、画像すなわち装着者の前方の被写体の色合いを解析するものであり、色合いを解析する方法としては、例えば、画像信号からR、G、B信号の強度分布(ヒストグラム)をとり、度数の大きい色成分を算出するするとか、R、G、B信号の割合の偏り等を算出といった、周知の方法を用いることができ、(上記エの【0053】) 上記表示制御部321は、LCD264を構成するR、G、Bそれぞれの透過型液晶表示素子に対応して、赤(R)用画像信号、緑(G)用画像信号、青(B)用画像信号をRLCDドライバ37R、GLCDドライバ37G、BLCDドライバ37Bを介して出力し駆動を制御し、LCD264のバックライト262の光源であるRLED262R、GLED262G、BLED262Bの駆動を制御するものであり、LCD264、バックライト262の駆動モードとして、液晶単色駆動、光源単色駆動の2つの駆動モードを有しており、(上記エの【0054】?【0055】) 上記電池電圧検知部323が電池38の電圧を検知し電池38の残容量が低下している場合、上記表示制御部321は、上記液晶単色駆動および上記光源単色駆動、またはそのいずれかの駆動モードを実行することができ、 (上記エの【0058】、上記オの【0061】) 上記表示ユニット25の画面には、接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像H1がカラー表示されており、(上記オの【0060】) 上記表示制御部321は、R、G、B用画像信号を合成して単色画像信号となる合成画像信号を生成し、(上記オの【0061】) 上記画像色解析部322は、上記カメラユニット28で上記シースルー画像Sの画角と略等しい画角で上記作業対象物Xを撮影し取り込まれた画像信号を解析して、被写体の色合いを解析し、(上記オの【0061】) 上記表示制御部321は、上記合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれに出力するか、及び、バックライト光源RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれの光源を駆動するかについて、上記画像色解析部322で解析された上記被写体の色合いに基づいて、シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択し、(上記オの【0061】?【0062】) 選択した透過型液晶表示素子に上記合成画像信号を出力して駆動する(液晶単色駆動モード)とともに、選択したバックライト光源を駆動して(光源単色駆動モード)、(上記オの【0063】) 上記表示ユニット25の画面に表示されたカラーの表示映像H1が、単色の表示映像H2に変化して表示されるようにすることにより、R、G、Bの3つの透過型液晶表示素子およびR、G、Bの3つのバックライト光源をいつも駆動することなく、単色化して消費電力を大きく低減することができ、電池の消耗を抑え、使用可能時間を延長することができるとともに、 シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの映像を表示し、シースルー画像Sと表示映像との識別が容易になり単色化による視認性の低下を抑えることができるようにした、(上記オの【0063】?【0065】) 上記HMD1の上記表示ユニット25の画面表示を制御する方法。 (上記アの【0016】、【0018】、上記ウの【0045】?【0046】、上記オの【0059】)」 (2)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「表示ユニット25、カメラユニット28及び制御ユニット31を有する頭部装着式映像表示装置(HMD1)」は、「外界(前方の被写体)をシースルー可能であり、上記カメラユニット28で撮影され生成された画像や、上記制御ユニット31に設けられた通信部36を介して、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された映像等を上記LCD264において表示し、上記接眼光学系27を通して外界(前方の被写体)と重畳して視認するもの」であるから、引用発明の「頭部装着式映像表示装置(HMD1)」の「表示ユニット25」は、本願発明1の「拡張現実ディスプレイ」に相当する。 また、引用発明の「上記HMD1の上記表示ユニット25の画面表示を制御する方法」は、本願発明の「拡張現実ディスプレイを制御するための方法」に相当する。 イ 引用発明の「外界(前方の被写体)」は、本願発明1の「現実世界」に相当し、引用発明の「接眼光学系27を通して」「視認」される「外界(前方の被写体)」は、本願発明1の「現実世界の場面」に相当する。 また、引用発明の「作業対象物X」は「外界」に存在し、「接眼光学系27を通して」「作業対象物Xを含むシースルー画像S」が「観察」されるから、引用発明の「作業対象物Xを含むシースルー画像S」は、本願発明1の「前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクト」に相当する。 ウ 引用発明の「接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて」、「表示ユニット25の画面」に表示される、「遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像」は、本願発明1の「現実世界の場面に重ね合わされた仮想オブジェクト」に相当する。 そうすると、引用発明の「上記表示ユニット25の画面には、接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像」が「表示」されることは、本願発明1の「現実世界の場面に重ね合わされた仮想オブジェクトを含む仮想の視界をヘッドマウントディスプレイにより提示する」ことに相当する。 エ 引用発明では、「上記表示ユニット25の画面には、接眼光学系27を通して観察できる作業対象物Xを含むシースルー画像Sに重ね合わせて、遠隔地に設けられたホストコンピュータから提供された例えば作業マニュアル等の表示映像H1がカラー表示されており」、「電池38の残容量が低下している場合」には、「上記表示ユニット25の画面に表示されたカラーの表示映像H1が、単色の表示映像H2に変化して表示されるように」なるところ、「変化」後の「表示映像H2」の「単色」は、本願発明1の「第2の色」に相当する。 そうすると、引用発明の「作業マニュアル等」の「カラーの表示映像H1が、単色の表示映像H2に変化して表示」されることは、本願発明1の「第2の色を使用して前記仮想オブジェクトの表示を変更する」ことに相当する。 オ 引用発明では、「上記画像色解析部322は、上記カメラユニット28で上記シースルー画像Sの画角と略等しい画角で上記作業対象物Xを撮影し取り込まれた画像信号を解析して、被写体の色合いを解析し」ているところ、上記イにおいて検討したとおり、引用発明の「作業対象物Xを含むシースルー画像S」は、本願発明1の「前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクト」に相当するから、引用発明の「被写体の色合い」は、本願発明1の「前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色」に相当する。 カ 引用発明では、「上記画像色解析部322」の行う「色合いを解析する方法」として、「例えば、画像信号からR、G、B信号の強度分布(ヒストグラム)をとり、度数の大きい色成分を算出するするとか、R、G、B信号の割合の偏り等を算出といった、周知の方法」が用いられ、「上記表示制御部321は、上記画像色解析部322で解析された上記被写体の色合いに基づいて、シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択し」て、「液晶単色駆動モード」とともに「光源単色駆動モード」を実行し「単色化」を行っているから、引用発明の「単色」は、「被写体の色合い」に基づいて選択され、「単色」と「被写体の色合い」との間には、色コントラストが生じているといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明とは、「前記第2の色が、前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と色コントラストを有し、前記第2の色が、前記第1の色に基づいて選択され、前記仮想の視界における前記仮想オブジェクトが、前記現実世界のオブジェクトの上に重ね合わされる」という点で共通する。 キ 上記ア?カより、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 [一致点] 「拡張現実ディスプレイを制御するための方法であって、 現実世界の場面に重ね合わされた仮想オブジェクトを含む仮想の視界をヘッドマウントディスプレイにより提示するステップと、 第2の色を使用して前記仮想オブジェクトの表示を変更するステップであって、前記第2の色が、前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と色コントラストを有し、前記第2の色が、前記第1の色に基づいて選択され、前記仮想の視界における前記仮想オブジェクトが、前記現実世界のオブジェクトの上に重ね合わされる、ステップと、 を含む、拡張現実ディスプレイを制御するための方法。」 [相違点] 本願発明1では、上記「色コントラスト」について、「第2の色」が、「第1の色と少なくとも既定の量の色コントラストを有し」、「前記第1の色と前記第2の色との間のコントラストの量に基づいて、前記仮想オブジェクトを表示するための前記ヘッドマウントディスプレイのルーメン出力を低下させるステップ」を含むのに対して、引用発明では、「単色」(「第2の色」に相当)が、「シースルー画像Sの色合い」(「第1の色」に相当)と「少なくとも既定の量の色コントラストを有し」ているとはいえず、「シースルー画像Sの色合い」(「第1の色」に相当)と「単色」(「第2の色」に相当)との間のコントラストの量に基づいて、「単色化」が行われているともいえない点。 (3)判断 上記相違点について検討する。 ア 引用発明では、「上記画像色解析部322」が「前方の被写体の色合いを解析」し、「色合いを解析する方法としては、例えば、画像信号からR、G、B信号の強度分布(ヒストグラム)をとり、度数の大きい色成分を算出するするとか、R、G、B信号の割合の偏り等を算出といった、周知の方法を用いる」とされており、このような色合い解析方法により、「例えば、シースルー画像Sの色合いが緑色に偏っている」(上記2の(1)のオの段落【0062】参照)と判定されると考えられる。 イ また、引用発明において行われている、「シースルー画像Sの色合いと異なった色合いの映像を表示し、シースルー画像Sと表示映像との識別が容易」にするための「表示映像」の「単色化」は、「上記合成画像信号をR、G、Bの透過型液晶表示素子のいずれに出力するか、及び、バックライト光源RLED262R、GLED262G、BLED262Bのいずれの光源を駆動するか」という「選択」によって行われるものであるから、その選択肢は、せいぜいR、G、Bの3つに限られ、「例えば、シースルー画像Sの色合いが緑色に偏っている場合、赤色、または青色の透過型液晶表示素子及びバックライト光源を選択する」(上記2の(1)のオの段落【0062】参照)という程度のものである。 ウ したがって、引用発明では、「上記被写体の色合いに基づいて、シースルー画像Sの色合いと異なった色合い」が「選択」されるにしても、その選択は、R、G、Bの3つの選択肢の中から、「シースル画像Sの色合い」とはいえないものを選ぶというものにすぎず、色のコントラストを定量的に評価して、その評価に基づいて「単色化」が行われてはいない。 エ そして、上記引用文献1には、色のコントラストを定量的に評価し、その評価に基づいて単色化が行われることを示唆する記載も見当たらないから、本願発明1は、上記引用文献1に記載された発明であるとはいえない。 オ また、原査定において引用された上記引用文献2及び5にも、上記相違点に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。 カ そうすると、上記相違点に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえないから、本願発明1は、上記引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本願発明2?15 ア 本願発明2、4?5については、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2、4?5は、上記引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本願発明9?10、12?13については、「拡張現実ディスプレイを制御するための装置」の発明であって、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明9?10、12?13は、上記引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本願発明15については、「拡張現実ディスプレイを制御するためのコンピュータプログラム」の発明であって、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明15は、上記引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本願発明6?7については、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明6?7は、上記引用文献1、2及び5に記載された発明に基づいて、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本願発明14については、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明14は、上記引用文献1、2及び5に記載された発明に基づいて、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)小括 上記(1)?(4)において検討したとおりであるから、本願発明1?2、4?5、9?10、12?13、15は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 また、本願発明6?7、14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 したがって、原査定の拒絶の理由を維持することはできない。 第3 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由 当審拒絶理由は次のとおりである。 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)平成30年8月2日に提出された手続補正書により補正された請求項9において、「前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と少なくとも既定の量の色コントラストを有し、かつ前記第1の色に基づいて選択される、第2の色を使用して、前記仮想オブジェクトのディスプレイを変更するための手段であって」と記載されているが、「前記仮想オブジェクトのディスプレイを変更するための手段」の「ディスプレイ」は、「表示」の誤記であると思われる。 請求項12、14においても同様の記載があり、「前記仮想オブジェクトの前記ディスプレイを変更するための手段」の「ディスプレイ」は、「表示」の誤記であると思われる。 (平成29年10月23日に提出された手続補正書では、請求項1については、当該誤記の補正がなされたものの、請求項9、12、14については、当該誤記の補正がなされておらず、そのまま残ってしまったものと思われる。請求項1についてした上記補正と同様に、「前記仮想オブジェクトのディスプレイを変更する」を「前記仮想オブジェクトの表示を変更する」と補正すべきである。) (2)請求項3において、「前記既定の量の色コントラストを、Lab色空間における前記第1の色と前記第2の色との間の最小距離に基づいて決定するステップをさらに含む」と記載されているが、この「前記既定の量の色コントラストを...決定するステップ」は、請求項1における「第2の色を使用して前記仮想オブジェクトの表示を変更するステップであって、前記第2の色が、前記現実世界の場面における現実世界のオブジェクトの第1の色と少なくとも既定の量の色コントラストを有し、前記第2の色が、前記第1の色に基づいて選択され、前記仮想の視界における前記仮想オブジェクトが、前記現実世界のオブジェクトの上に重ね合わされる、ステップ」に含まれるもの(すなわち、上記ステップの内容を詳述したもの)なのか、上記ステップには含まれない別のステップとして特定したものなのか、「ステップをさらに含む」と記載していることから、不明である。 請求項4?8においても、「...ステップをさらに含む」、「...ステップと、をさらに含む」との記載があり、これらのステップが、請求項1において特定されたステップとどのような関係にあるのか(すなわち、請求項1のステップを詳述したものなのか、請求項1のステップには含まれない別のステップとして特定したものなのか)、不明である。 (3)請求項11?14において、「...手段をさらに備える」との記載があり、これらの手段が、請求項9において特定された手段とどのような関係にあるのか(すなわち、請求項9の手段を詳述したものなのか、請求項9の手段とは別の手段を特定したものなのか)、不明である。 2 当審拒絶理由についての判断 当審拒絶理由に対して、令和1年8月1日に提出された手続補正書による補正により、特許請求の範囲は上記「第2 本願発明」において示したとおりに補正されたところ、このことにより、特許請求の範囲の記載は明確となった。 したがって、当審拒絶理由を維持することはできないから、本願は、当審拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-09-20 |
出願番号 | 特願2015-541794(P2015-541794) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G) P 1 8・ 113- WY (G09G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 直明 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
小林 紀史 濱野 隆 |
発明の名称 | 拡張現実デバイスの電力性能を高めるための仮想オブジェクトディスプレイ特性の変更 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 黒田 晋平 |