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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1355371
審判番号 不服2018-9398  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-09-19 
事件の表示 特願2016-560853「電力効率の良い近接検出」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開,WO2015/151133,平成29年 5月25日国内公表,特表2017-513405〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)4月2日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年 9月14日付け 拒絶理由通知書
平成29年10月12日 意見書,及び手続補正書の提出
平成30年 4月 5日付け 拒絶査定
平成30年 7月 6日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出


第2 平成30年7月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月6日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要

(1)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成29年10月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項9は次のとおりである。
「 第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,ここで,前記第1の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含み,
第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信することと,ここで,前記第2の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含み,
前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づき,前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否かを判断することと,
前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるという判断に応じて,前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する指示を前記第1の移動端末に送信することと,
を含み,
前記短距離無線通信プロトコルは,最大半径が10m以下である短距離無線通信エリアを有する,方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正は,上記本件補正前の特許請求の範囲の請求項9に記載された発明を,本件補正後の特許請求の範囲の請求項7に記載された,次のとおりの発明とする補正を含むものである。(下線は補正箇所を示す。)
「 第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,ここで,前記第1の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含み,
第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信することと,ここで,前記第2の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含み,
前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づき,前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否かを判断することと,
前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるという判断に応じて,前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する指示を前記第1の移動端末に送信することと,
を含み,
前記短距離無線通信プロトコルは,最大半径が10m以下である短距離無線通信エリアを有し,
前記短距離無線通信プロトコルは,IEEE802.15プロトコルおよびBluetooth(登録商標)プロトコルのうちの少なくとも1つであり,
前記第1の移動端末に指示を送信することは,IEEE802.15ケイパビリティおよびBluetooth(登録商標)ケイパビリティのうちの少なくとも1つの動作を開始するように前記第1の移動端末に指示することを含む,方法。」


2 補正の適否
上記補正は,本件補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項である「短距離無線通信プロトコル」に,「IEEE802.15プロトコルおよびBluetooth(登録商標)プロトコルのうちの少なくとも1つ」との限定を付加し,更に,「指示を前記第1の移動端末に送信する」ことについて,「IEEE802.15ケイパビリティおよびBluetooth(登録商標)ケイパビリティのうちの少なくとも1つの動作を開始するように前記第1の移動端末に指示すること」との限定を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
したがって,上記補正は特許法17条の2第5項2号に規定された事項を目的とするものである。また,同法17条の2第3項(新規事項)及び同法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するところはない。

3 独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件補正後の請求項7に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記「第2 1(2)」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用例1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,InterDigital Communications,UE triggered EPC-assisted direct discovery via control plane PC3(表題の当審訳:UEがトリガーした制御プレーンPC3を介したEPC支援のダイレクト・ディスカバリ),SA WG2 Meeting #101 S2-140228,3GPP,2014.01.14掲載,Internet,p.1-4(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の記載がある。(下線は当審が付与した。以下同様である。)



Figure 6.1.14.2.1-1: EPC assisted direct discovery via MME - Network Triggered

The following procedures are applicable:
1.It is assumed that the UEs are already registered with the ProSe function and the Application Server for ProSe services.

2.ProSe Application request for proximity information. In addition user preferences for discovery are provided. For example, ProSe IDs and/or ProSe application user IDs of UEs that are discoverable.

3. ProSe Function trigger the MME to enable EPC assisted direct discovery for selected ProSe UEs. In addition based on operator configuration the ProSe Function include ProSe configuration information such as reporting based on Proximity Area change.

NOTE1: If control place PC3 is used the ProSe Function is already aware of the MME serving the UE based on the UE ProSe registration procedure.

NOTE2: If user plane PC3 is used the ProSe Function discovers the MME via the HSS. The ProSe Function queries the HSS by providing a ProSe identifier. The HSS would need to have a mapping of the ProSe identifier to the IMSI of the UE.

3a. - 3b. Steps 3a and 3b are carried out if UE is in IDLE mode.

Steps 3c - 3d are optional and carried out if the ProSe function has provided configuration information. In such a case the MME would send the configuration information in a DL GENERIC NAS TRANSPORT MESSAGE.

4.-5. The UEs perform a Tracking Area Update based on the triggers defined in clause 5.3.3.0 of TS 23.401. In addition, the UE send a TAU for the case where the UEs have been configured for proximity area change reporting using TAU . If the TAU was due to a proximity area change the UE includes in the TAU the reason for the trigger (e.g. change in Proximity Area).

6. The MME reports the location information, i.e. the ECGI that is retrieved from the S1AP Initial UE Message, of selected UEs to ProSe function.

7. The ProSe function detects that some UEs are in proximity of each other e.g. UEs are in the same Proximity Area.

8. If the criteria for proximity are met (e.g. proximity range, application type, etc) the ProSe function reports proximity information to ProSe application.

8a. UEs are informed about proximity information via the application server.

9. Alternatively, the ProSe Function triggers and/or forwards information that is relevant for direct discovery between UEs. The ProSe function requests the MME to forward direct discovery trigger and/or relevant information, e.g. target UE identifier, that is needed for direct discovery.

9a.The MME forwards the trigger and/or information, e.g. target UE identifier (UE2) and application ID, etc, to UE1 so that direct discovery. can be started.

9b. The MME forwards the trigger and/or information, e.g. target UE identifier (UE1) and application ID, etc, to UE2 so that direct discovery. can be started.

NOTE: For steps 9a-9b the MME forwards the information via a DL GENERIC NAS TRANSPORT MESSAGE.

Editor's Note: It is FFS which identifier is used for direct discovery.

NOTE: If UEs are in IDLE mode, the UEs transition to connected mode using the Paging and Service Request procedures after which they are provided with Direct Discovery information.

10. Direct discovery is initiated by the UEs.

11. UEs provide proximity information.」(3ページ1行-4ページ38行)
(当審訳:
(図の翻訳は省略する。)
以下の手順が適用可能である。

1.UEがProSe機能及びProSeサービス用のアプリケーションサーバに既に登録されていると仮定する。

2.ProSeアプリケーションが近接情報を要求する。 さらに,ディスカバリのためのユーザ選好が提供される。 例えば,発見可能なUEのProSe ID及び/又はProSeアプリケーションユーザID。

3.ProSe機能は,複数の選択されたProSe UEのためのEPC支援のダイレクト・ディスカバリを可能にするためにMMEをトリガする。さらに,オペレータ設定に基づくProSe機能には,近接エリアの変更に基づく報告などのProSe設定情報が含まれる。

注1:制御場所PC3が使用される場合,ProSe機能は,UE ProSe登録手順に基づいて,UEにサービスを提供するMMEを既に知っている。

注2:ユーザプレーンPC3が使用される場合,ProSe機能はHSSを介してMMEを発見する。ProSe機能は,ProSe識別子を提供することによってHSSに問い合わせる。HSSは,ProSe識別子をUEのIMSIにマッピングする必要があるだろう。

3a-3b.ステップ3a-3bは,UEがアイドルモードにある場合に実行される。

ステップ3c-3dはオプションで,ProSe機能が構成情報を提供した場合に実行される。このような場合,MMEはDL汎用NAS転送メッセージで設定情報を送信する。

4-5.UEは,TS 23.401の5.3.3.0項で定義されているトリガに基づいて追跡エリア更新を実行する。さらに,UEは,TAUを使用してUEが近接エリア変更報告のために構成されている場合には,TAUを送信する。TAUが近接エリアの変更によるものであった場合,UEはTAUにトリガの理由(例えば,近接エリアの変更)を含める。

6.MMEは,選択された複数のUEの位置情報,すなわちS1AP初期UEメッセージから検索されたECGIをProSe機能に報告する。

7.ProSe機能は,同じ近接エリア内にあるなどの,いくつかのUEが互いに近接していることを検出する。

8.近接性の基準(近接範囲,アプリケーションの種類など)が満たされている場合,ProSe機能は近接情報をProSeアプリケーションに報告する。

8a.UEは,アプリケーションサーバを介して近接情報について知らされる。

9.あるいは,ProSe機能は,UE間のダイレクト・ディスカバリに関連する情報をトリガ,及び/又は,転送する。ProSe機能は,MMEに直接発見トリガ,及び/又は,ダイレクト・ディスカバリに必要とされるターゲットUE識別子などの関連情報を転送するように要求する。

9a.MMEは,ダイレクト・ディスカバリを開始することができるように,トリガ,及び/又は,ターゲットUE識別子(UE2)やアプリケーションIDなどの情報をUE1に転送する。

9b.MMEは,ダイレクト・ディスカバリを開始することができるように,トリガ,及び/又は,ターゲットUE識別子(UE1)やアプリケーションIDなどの情報をUE2に転送する。

注:ステップ9a-9bでは,MMEはDL汎用NAS転送メッセージを介して情報を転送します。

編集者注:ダイレクト・ディスカバリに,どの識別子を用いるかはFFSです。

注:UEがIDLEモードの場合,ページング及びサービス要求手順を使用して接続モードに移行し,その後,ダイレクト・ディスカバリ情報が提供されます。

10.ダイレクト・ディスカバリは,UEによって開始される。

11.UEが近接情報を提供する。)


(a)上記Figure 6.1.14.2.1-1の記載によると,UE1とUE2とは,それぞれ4,5(ステップ4,5)においてTracking Area Update(追跡エリアの更新)をMMEに通知し,MMEは,6(ステップ6)でLocation Information(位置情報)をProSe機能に送信しているといえる。
そして,上記ステップ6の記載によると,ProSe機能は,選択されたUEの位置情報の報告をMMEから受信するといえるところ,上記Figure 6.1.14.2.1-1に記載されたUE1,及びUE2は,それぞれ選択されたUEに対応することは明らかであるから,引用例1には,ProSe機能が,UE1の位置情報を受信すること,及びUE2の位置情報を受信することが記載されているといえる。

(b)上記ステップ7の記載,及びFigure 6.1.14.2.1-1の7(ステップ7)によると,ProSe機能は,UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出することが記載されている。

(c)上記Figure 6.1.14.2.1-1の記載によると,ProSe機能は,7(ステップ7)で,Proximity Detection(近接判定)を行い,9,9a(ステップ9,9a)において,MMEを介してUE1とUE2に対してInitiate direct discovery(ダイレクト・ディスカバリの初期化)を指示しているといえる。
そして,ProSe機能によるダイレクト・ディスカバリの初期化の指示は,UEが近接する他のUEとの間でD2D通信を行わせる指示であることが,当業者の技術常識であるところ,上記ステップ9-11の記載,及び前記Figure 6.1.14.2.1-1のステップ9,9aによると,ProSe機能は,UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出した場合,MMEを介し,ダイレクトディスカバリ初期化の指示をUE1に送信しているといえるから,引用例1には,ProSe機能が,UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出した場合,UE1とUE2との間でD2D通信を行わせる指示をUE1に送信することが記載されているといえる。

したがって,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ProsSe機能によって行われる方法であって,
UE1の位置情報を受信することと,
UE2の位置情報を受信することと,
UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出することと,
UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出した場合には,UE1とUE2との間でD2D通信を行わせるための指示をUE1に送信することを含む,方法 」


(3)周知例の記載事項及び周知技術
ア 周知例1
国際公開第2013/161136号(以下,「周知例1」という。)には以下の記載がある。(下線は当審が付与。以下同様。)

「[0024] ここで,端末情報は,例えば,共用周波数における端末無線アクセス能力,又は端末システム能力,を含む。さらに,端末情報は,端末通信量,端末サービス,及び端末位置情報,などを含んでもよい。端末サービスは,無線端末が実行中であるか又は無線端末が要求しているサービスの種別,属性(e.g. リアルタイム性,重要度,優先度,又は要求品質),又はサービスカテゴリを示す。端末位置情報は,例えば,Global Positioning System(GPS)により取得された位置情報,又はネットワークによる位置情報サービスにより取得された位置情報(e.g. Observed Time Difference Of Arrival(OTDOA)法により所得された位置情報)である。また,端末位置情報は,無線端末により測定された無線品質(e.g. 各セルの既知ダウンリンク信号の受信品質及びセル識別子)であってもよい。」


イ 周知例2
特表2012-524424号公報(以下,「周知例2」という。)には以下の記載がある。

「【0186】
UEの接続要求(Attach Request,Service Requestなど)はMMEに転送され,MMEはCreate Bearer Requestメッセージを送信する。Create Bearer Requestメッセージは,SGWを介してLGWに転送される。しかし,同じ解放がCreate Session Requestメッセージのケースに適用されることは当業者であれば自明である。この実施の形態では,一例として,Create Bearer Requestメッセージのケースについて述べる。MMEは,UEの位置情報として,セルID,基地局ID(例えば,(E)CGI(E-UTRAN Cell Global ID or Cell Global ID)),CSG ID,トラッキングエリアID(Tracking Area ID: TAI),ルーティングエリアID(Routing Area ID: RAI),ロケーションエリアID(Location Area ID: LAI)などを含む。位置情報は,上述のIDのうち1つ以上になり得る。PGWはUEの位置情報を得るためにCreate Bearer Requestメッセージを処理し,既に構築された,又は新しくこの時点で構築されたPGWとLGWの間のトンネルを通して位置情報についてLGW(例えば,LGW3)に通知する。」

上記周知例1のセル識別子は,セルIDであることは明らかである。

したがって,上記周知例1,及び周知例2によれば,「セルIDを,移動端末の位置情報とする。」ことは周知技術であると認められる。(以下,「周知技術1」という。)

ウ 周知例3
国際公開第2014/021998号(以下,「周知例3」という。)には以下の記載がある。

「[0049] Although the preceding examples of D2D connections were provided with specific reference to 3 GPP LTE/LTE-A and Wi-Fi (IEEE 802.11) communications, it will be understood that a variety of other WWAN, WLAN, and WPAN protocols and standards may be used in connection with the techniques described herein. These standards include, but are not limited to, standards from 3 GPP (e.g., LTE, LTE-A, HSPA+, UMTS), IEEE 802.11 (e.g., 802.11a, 802.11b, 802. llg, 802.11η, 802.11ac), 802.16 (e.g., 802.16p), or Bluetooth (e.g., Bluetooth 4.0, or other standard defined by the Bluetooth Special Interest Group) standards families. (後略)」
(当審訳:[0049]D2D接続の上記各例は,3GPP LTE/LTE-A及びWi-Fi(IEEE802.11)通信に特に関連して提供されるが,様々な他のWWAN,WLAN,及びWPANプロトコル及び規格が本明細書で記載される技術に関連して用いられてよい。これらの規格は,限定されないが,3GPP(例えば,LTE,LTE-A,HSPA+,UMTS),IEEE802.11(例えば,802.11a,802.11b,802.11g,802.11η,802.11ac),802.16(例えば,802.16p),又はブルートゥース(登録商標)(例えば,ブルートゥース4.0,又はブルートゥース(登録商標)特定利益団体によって定義される他の規格)規格ファミリーからの規格を含む。(後略))

エ 周知例4
国際公開第2014/017070号(以下,「周知例4」という。)には以下の記載がある。

「[0029] The D2D communication link 110 can provide a direct link between the mobile devices 104a, 104b. The D2D communication link 110 can enable the mobile devices 104a, 104b to exchange data without routing the data through base station 102 or other infrastructure of the telecommunication system 100. In some aspects, the mobile devices 104a, 104b can establish a D2D communication link 110 via the licensed frequency spectrum 106, as depicted in Figure 1. In other aspects, the mobile devices 104a, 104b can establish a D2D communication link 110 via a suitable unlicensed frequency spectrum. Non-limiting examples of a communication link 110 via an unlicensed frequency spectrum include a WLAN link, a Bluetooth link, etc.(中略)Establishing the D2D communication link 110 may include determining that the mobile devices 104a, 104b are in sufficient proximity to one another.」
(当審訳: D2D通信リンク110は,モバイルデバイス104a,104b間の直接リンクを提供できる。D2D通信リンク110は,モバイルデバイス104a,104bが電気通信システム100の基地局102または他のインフラストラクチャを通じてデータをルーティングすることなしにデータを交換することを可能にできる。いくつかの態様において,モバイルデバイス104a,104bは,図1に示されるようなライセンス取得周波数スペクトル106によってD2D通信リンク110を確立できる。他の態様では,モバイルデバイス104a,104bは,適切なライセンス未取得周波数スペクトルによってD2D通信リンク110を確立できる。ライセンス未取得周波数スペクトルによる通信リンク110の非限定の例は,WLANリンク,Bluetoothリンクなどを含む。(中略)D2D通信リンク110を確立することは,モバイルデバイス104a,104bが互いに十分に近接していることを確定することを含む。)

(a)通信に所定の規格を含む技術を用いることは,通信に所定のプロトコルを用いることであることが,当業者の技術常識であるところ,上記周知例3において,D2D接続はD2D通信において行われるものであることが明らかであるから,上記周知例3には,D2D通信に,Bluetoothプロトコルを用いることが記載されているといえる。
(b)上記周知例4において,通信リンクとしてBluetoothリンクを含むことは,通信にBluetoothを含むプロトコルを用いることであることは明らかであるから,D2D通信に,Bluetoothプロトコルを用いることが記載されているといえる。

したがって,上記周知例3,及び周知例4によれば,「D2D通信に,Bluetoothプロトコルを用いる。」ことは周知技術であると認められる。(以下,「周知技術2」という。)


(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明のUE1,UE2は,本件補正発明の「第1の移動端末」,「第2の移動端末」に相当する。
そして,引用発明においてProSe機能は何らかの「電子装置」によって構成されていることは明らかであるところ,UEの位置情報は場所情報に相当するから,引用発明の「UE1の位置情報をProSe機能が受信することと,UE2の位置情報をProSe機能が受信すること」は,本件補正発明の「第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,ここで,前記第1の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含み,第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信することと,ここで,前記第2の場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含」むことと,「第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信することを含」む点で共通するといえる。

イ 引用発明における「同じ近接エリア」は,UE間でD2D通信が可能な同一の短距離無線通信エリアであることは明らかであるから,引用発明の「UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出すること」は,本件補正発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあることを判断すること」と一致する。

ウ 本件補正発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する指示」は,本願の発明の詳細な説明(段落0028,0034など)によると,第1の移動端末と第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示であるといえる。
そして,D2D通信が,端末と端末との間での無線通信であることは,当業者の技術常識であるから,引用発明の「UE1とUE2とが同じ近接エリア内にあることを検出した場合には,UE1とUE2との間でD2D通信を行わせるための指示をUE1に送信すること」と,本件補正発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるという判断に応じて,前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する指示を前記第1の移動端末に送信すること」とは,「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるという判断に応じて,前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示を前記第1の移動端末に送信すること」で共通するといえる。

したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

[一致点]
「第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,
第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信することと,
前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否かを判断することと,
前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるという判断に応じて,前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせる指示を前記第1の移動端末に送信することとを含む,方法。」

[相違点1]
一致点の「第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信すること」に関し,本件補正発明は,「場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含」むのに対して,引用発明の場所情報は,どのような情報を含むのか特定されていない点。

[相違点2]
一致点の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否かを判断する」ことに関し,本件補正発明は,「前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づ」いて判断するものであるのに対して,引用発明は,当該事項について特定されていない点。

[相違点3]
一致点の第1の移動端末と第2の移動端末との間で行われる「無線通信」に関し,本件補正発明は,「最大半径が10m以下である短距離無線通信エリアを有し」,「IEEE802.15プロトコルおよびBluetooth(登録商標)プロトコルのうちの少なくとも1つ」であるのに対して,引用発明は,「無線通信」について特定されていない点。

[相違点4]
一致点の「前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示」に関し,本件補正発明は,「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する」ものであり,「IEEE802.15ケイパビリティおよびBluetooth(登録商標)ケイパビリティのうちの少なくとも1つの動作を開始するように前記第1の移動端末に指示することを含む」のに対して,引用発明は,「前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示」について,特定されていない点。


(5)判断
ア 相違点1について
本件補正発明において,「場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含」むことは,本願発明の詳細な説明(段落0021-0022など)によると,場所情報は,セルIDを含むことを包含するといえる。
そして,上記(3)のとおり,「セルIDを,移動端末の位置情報とする。」ことは周知技術であるから,引用発明の移動端末の場所情報に,セルIDを含むようにすることは,当業者が適宜行うべき事項にすぎない。
そうすると,引用発明において,「第1の移動端末の第1の場所情報を電子装置が受信することと,第2の移動端末の第2の場所情報を前記電子装置が受信すること」に関し,「場所情報は,セル位置およびWi-Fiアクセスポイント識別子のうちの少なくとも1つを含」むようにすることは,格別困難なことではない。

イ 相違点2について
2つの端末が所定の範囲内にあるか否かを検出することは,各端末の場所情報の比較に基づいて行われるものであることが,当業者の技術常識であるから,引用発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否か」の判断も,「前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づ」くものであるといえる。
そうすると,上記相違点2は実質的な相違点ではない。
仮にそうでないとしても,引用発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否か」の判断を,上記技術常識を用いて,「前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づ」くものとすることは,当業者が適宜行うべき事項にすぎない。
してみると,引用発明の「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末と同一の短距離無線通信エリアにあるか否かを判断する」ことに関して,「前記第1の場所情報と前記第2の場所情報との比較に基づ」いて判断することは,当業者が容易に想到できたことである。

ウ 相違点3について
上記(3)のとおり,「D2D通信に,Bluetoothプロトコルを用いる。」ことは周知技術であるところ,Bluetoothプロトコルによる無線通信エリアの最大半径が10m以下であることは,当業者の技術常識であるから,引用発明の移動体端末間のD2D通信として,無線通信エリアの最大半径が10m以下であるBluetoothプロトコルを用いることは,当業者が適宜行うべき事項にすぎない。
そうすると,引用発明において,第1の移動端末と第2の移動端末との間で行われる「無線通信」を,「最大半径が10m以下である短距離無線通信エリアを有し」,「IEEE802.15プロトコルおよびBluetooth(登録商標)プロトコルのうちの少なくとも1つ」とすることは,格別困難なことではない。

エ 相違点4について
端末1に端末2との間で通信を行わせるために,端末1から端末2を宛先とする所定の通知を送信することを端末1に対して指示すること,及び,前記指示は,端末1に適用される通信プロトコルによる動作を開始するように端末1に指示することを含むものであることは,当業者の技術常識であるところ,上記イのとおりであるから,引用発明において,第1の移動端末と第2の移動端末との間で行われる「無線通信」にBluetoothプロトコルを用いることにより,「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する」ものとし,「Bluetooth(登録商標)ケイパビリティの動作を開始するように前記第1の移動端末に指示することを含む」ことは,格別困難なことではない。
したがって,引用発明の「前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示」を,「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する」ものとし,「IEEE802.15ケイパビリティおよびBluetooth(登録商標)ケイパビリティのうちの少なくとも1つの動作を開始するように前記第1の移動端末に指示することを含む」ようにすることは,当業者が容易に想到できたことである。


そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明,及び周知例1-4に記載された周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。

したがって,本件補正発明は,引用発明,及び周知例1-4に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。


[請求人の主張について]
請求人は,審判請求書において,以下のとおり主張する。
「direct discoveryをLTE通信と異なるインタフェースで行うことは記載されていませんし,direct discoveryをLTE通信と異なるインタフェースで行うことの示唆もありません。」

しかしながら,上記「(5) ウ」の相違点3の検討で述べたように,引用発明の移動体端末間のD2D通信に,LTE通信とは異なる,無線通信エリアの最大半径が10m以下であるBluetoothプロトコルを用いることは,格別困難なことではない。
したがって,上記請求人の主張は採用できない。


4 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年7月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年10月12日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項9に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項9に記載された事項により特定される,上記「第2 1(1)」に記載のとおりのものと認める。


2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,本願の請求項9に係る発明に対して,以下の引用例1,4,5,及び引用例2,3(周知技術を示す文献)が引用されている。

1 InterDigital Communications,UE triggered EPC-assisted direct discovery via control plane PC3,SA WG2 Meeting #101 S2-140228,3GPP,2014.01.14掲載,Internet,p.1-4
2 特表2010-508761号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2011-238990号公報(周知技術を示す文献)
4 特表2009-537108号公報
5 国際公開第2014/034572号



3 引用発明,及び周知技術
引用例1に記載された発明,及び周知技術は,上記「第2 3(2),(3)」で認定したとおりである。


4.対比・判断
本願発明は本件補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。そうすると,相違点は以下の点である。

[相違点1]
上記「第2 3(4)」の相違点1のとおりである。

[相違点2]
上記「第2 3(4)」の相違点2のとおりである。

[相違点3]
一致点の第1の移動端末と第2の移動端末との間で行われる「無線通信」に関し,本件補正発明は,「最大半径が10m以下である短距離無線通信エリアを有」するものであるのに対して,引用発明は,「無線通信」について特定されていない点。

[相違点4]
一致点の「前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示」に関し,本件補正発明は,「前記第1の移動端末が前記第2の移動端末を宛先とする通知を短距離無線通信プロトコルを用いて送信することを指示する」ものであるのに対して,引用発明は,「前記第1の移動端末と前記第2の移動端末との間で無線通信を行わせるための指示」について,特定されていない点。

上記相違点1-4は,上記「第2 3(4)」の相違点1-4から,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した点に関する相違を除いたものであるところ,本願発明の構成に本件補正に係る限定を付加した本件補正発明が,上記「第2 3(5)」の項で検討したとおり,引用例1に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明,及び周知技術に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-07-17 
結審通知日 2019-07-23 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2016-560853(P2016-560853)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉松本 光平  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 脇岡 剛
長谷川 篤男
発明の名称 電力効率の良い近接検出  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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