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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09B |
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管理番号 | 1355597 |
審判番号 | 不服2018-10302 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-27 |
確定日 | 2019-10-02 |
事件の表示 | 特願2016-168724「自己分散型顔料ならびにその製造方法および使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 31413〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、2008年8月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年8月23日(US)米国)を国際出願日とする特願2010-522080号の一部を平成27年2月26日に新たな特許出願とした特願2015-36020号の一部を、平成28年8月31日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月31日に手続補正書が提出され、平成29年4月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年3月20日付けで拒絶査定がされ、同年7月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 なお、この出願の一部が平成30年7月27日に特願2018-141341号として分割出願されている。 第2 本願発明 この出願の発明は、平成29年11月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 反応基X-Yを顔料表面に結合させるステップ;および 次いで、Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップを含む顔料の改質方法 [式中、 Xはスルホニル、ホスホリルまたは1,3,5-トリアジン基であり; Yはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり; Nはアミン、イミン、ピリジンまたはチオール基であり; Sは置換もしくは非置換のアルキル、アリール、または分子量範囲が300?8000の高分子鎖であり; Zはカルボキシル、スルホニル、フェノール、ホスホリル、アンモニウム、トリメチルアンモニウムまたはトリブチルアンモニウム基であり; Mはハロゲン化物、負荷電イオン、塩形態のプロトンまたは塩形態のカチオンである]。」 第3 原査定の理由 原査定の理由である平成29年4月28日付けの拒絶理由通知における拒絶の理由は、理由1(新規性)及び2(進歩性)である。 そのうちの理由1の概要は、この出願の請求項1?10に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。 本願発明は、上記の拒絶理由が通知された請求項2に係る発明である。その引用文献1は、特表2006-502269号公報(以下「刊行物1」という。)であり、引用文献2は、特開2002-338845号公報であり、引用文献3は、特表2004-531593号公報(以下「刊行物2」という。)である。 第4 当審の判断 当審は、原査定の理由のとおり、本願発明は、上記刊行物1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであると判断する。 その理由は、以下のとおりである。 (1)刊行物 刊行物1:特表2006-502269号公報 刊行物2:特表2004-531593号公報 (2)刊行物の記載事項 ア 刊行物1 (1a)「【請求項1】 着色されたキャリア粒子を製造するための方法であって、 (a)キャリア粒子を着色剤又は顔料誘導体の溶液中に分散させるか、キャリア粒子を着色剤又は顔料誘導体の溶液に添加するか、又は顔料誘導体又は着色剤をキャリア粒子の分散物に添加する工程と、 (b)着色剤又は顔料誘導体をキャリア粒子上に析出させる工程と、及び (c)顔料誘導体の場合には、その後に顔料誘導体を顔料に変換する工程とを含む方法。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【請求項8】 アルカリ性媒体に溶解性であり、工程(b)において、酸及び/又は金属塩を添加することによって基質上に析出する着色剤を使用するか、あるいは弱酸又は中性媒体に溶解性であり、工程(b)において、酸及び/又は金属塩を添加することによって基質上に析出する着色剤を使用する、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。 【請求項9】 式: D(SO_(2)NHE)_(y) (II) 〔式中、 yは、1?8の整数であり、 Dは、1-アミノアントラキノン、アントラキノン、アントラピリミジン、アゾ、アゾメチン、ベンゾジフラノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、フラバントロン、インダントロン、インジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、イソビオラントロン、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロン又はチオインジゴ系の発色団の基であり、 Eは、以下の式: 【化4】 〔式中、 n_(1) 及びn_(2) は、それぞれ他と独立して、0、1又は2であり、少なくとも1つの基-OH又は-COOHが存在し、n_(3) は、0又は1であり、 m_(1) は、1?8の整数であり、 m_(2) 及びm_(3) は、それぞれ他と独立して、1?8の整数であり、 Gは、基-NH_(2)、-OH、-COOH又は-SO_(3)Hであり、 x_(1) は、0?8の整数である〕 の基から選択される〕 の化合物。 【請求項10】 着色剤が、以下の式: D(SO_(2)NHE)_(y) (II) 〔式中、 yは、1?8の整数であり、 Dは、1-アミノアントラキノン、アントラキノン、アントラピリミジン、アゾ、アゾメチン、ベンゾジフラノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、フラバントロン、インダントロン、インジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、イソビオラントロン、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロン又はチオインジゴ系の発色団の基であり、 Eは、アルカリ媒体中で溶解性を付与するために好適な任意の所望の基である〕 を有する、請求項8に記載の方法。 【請求項11】 Eが、以下の式: 【化5】 〔式中、 n_(1) 及びn_(2) は、それぞれ他と独立して0、1又は2であり、少なくとも1つの基-OH又は-COOHが存在し、n_(3) は、0又は1であり、 m_(1) は、1?8の整数であり、 m_(2) 及びm_(3) は、それぞれ他と独立して、1?8の整数であり、 Gは、基-NH_(2)、-OH、-COOH又は-SO_(3)Hであり、そして x_(1) は、0?8の整数である〕 の基、及び以下の式: D(F)_(y) (III) 〔式中、 yは、1?8の整数であり、 Dは、1-アミノアントラキノン、アントラキノン、アントラピリミジン、アゾ、アゾメチン、ベンゾジフラノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、フラバントロン、インダントロン、インジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、イソビオラントロン、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロン又はチオインジゴ系の発色団の基であり、 Fは、水性溶媒中で溶解性を付与するために好適な任意の所望の基であり、例えば、-SO_(3)M又は-COOMであり、ここで、Mは、カチオン又は水素である〕 の化合物から選択される、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 請求項1?8、10及び11のいずれか1項に記載の方法によって得られる着色されたキャリア粒子。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【請求項15】 生地、表面コーティング組成物、印刷インク、プラスチック、ガラス、セラミック製品又は化粧品調製物の着色における、あるいはインクジェット印刷における、請求項12又は14のいずれかに記載の着色されたキャリア粒子の使用。」(特許請求の範囲の請求項1、8、9、10、11、12、15) (1b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、着色されたキャリア物質(基質)、特に「エフェクト顔料」を製造する方法、及びこのような方法によって得られる着色された基質、さらにそれらの使用に関する。本発明に係る方法を用いて、驚くほど良好な光堅ろう性を有する着色及び着色された基質を得ることが可能である。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【0013】 本発明に係る方法は、原理的に、任意のキャリア物質(基質)を着色するのに適している。たった1つの要求は、キャリア粒子が分解を受けずに溶媒中で安定であるということである。キャリア粒子の例は、セルロース(木)、ケラチン(毛髪)及び陽極処理されたアルミニウムである。 【0014】 キャリア粒子は、好ましくは金属性物質、金属酸化物、非金属性物質及び(非金属)酸化物キャリア粒子、特にエフェクト顔料、ポリマー性化合物及びそれらの組み合わせ、ならびに有機顔料及び無機顔料から選択される。」 (1c)「【0186】 (合成例1-化合物A1’の合成) (スルホクロロ化) クロロスルホン酸156gを、スターラー、サーモメーター及びコンデンサーを取り付けた0.5L丸底フラスコに入れた。銅フタロシアニン30g(0.052mol)を室温で一度に添加した。得られた溶液をゆっくりと130℃まで加熱し、3時間攪拌した。この溶液を冷却し、塩化チオニル65.7gを80℃でゆっくりと滴下した。次いで、さらに3時間、還流下で攪拌を行った。室温で、溶液を氷1.3kg上に出し;得られた懸濁物をろ過し、水で十分に洗浄した。 【0187】 (アミド化) 脱イオン水450g及びメタノール120g中の4-アミノ安息香酸54g(0.393mol)を1L丸底フラスコに入れ、氷を添加することによって0℃まで冷却した。水で湿ったろ過ケーキを一度に入れ、氷をさらに添加することにより温度を0℃に維持した。懸濁物を0℃で2時間攪拌し、室温で14時間攪拌し、80℃で1時間攪拌した。室温で、懸濁物をろ過し、脱イオン水1000gで洗浄した。減圧中50℃で乾燥させた後、化合物A1’ 95gを得た。 元素分析により、化合物A1’が構造異性体の混合物であり、さらに、ジ-及びトリ-スルホクロロ化され、アミド化された分子(比:25% トリ-、75% ジ-スルホクロロ化種)の混合物であることが示された。 (化合物A1’の化合物A1への変換) 1500mL丸底フラスコ中で、化合物A1’ 10gを水1000gに懸濁させた。室温で、32%水酸化ナトリウム溶液3.7gを滴下した。得られた溶液を60℃で2時間攪拌し、温めながらろ過し、ロータリーエバポレータ-を用いてろ液を最大50℃、減圧下で濃縮した。減圧中50℃で乾燥させた後、化合物A1 10.5gを得た。 元素分析(理論値):C:43.71%(49.34%)、H:2.22%(2.21%)、N:10.17%(11.51%)、Cu 5.00%(4.35%)、Na 7.35%(6.30%)、S 9.12%(8.78%)。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【0189】 【化55】 ・・・・・・・・・・・・・・・」 イ 刊行物2 (2a)「【請求項1】 一般式(I) 【化1】 [式中、Q^(1) は、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アンサンスロン、インダンスロン、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、チオインジゴ、チアジンインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピランスロン、イソビオランスロン、フラバンスロン、またはアントラピリミジン顔料の群からの有機顔料の基であり、 sは、1?5の数字であり、 nは、0?4の数字であり、 sとnの合計は、1?5であり、 R^(1 )は、1?20個の炭素原子を有する、二価の分枝もしくは非分枝の、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素基;C_(5)?C_(7) シクロアルキレン基;または1、2、もしくは3個の芳香環を有する二価の芳香族基であって、その環同士が縮合した形になることも、化学結合によって結合することも可能であるもの;またはO、N、およびSの群からの1、2、3、もしくは4個のヘテロ原子を含む1、2、もしくは3個の環を有する複素環基;またははこれらの組合せであり;前述の炭化水素、シクロアルキレン、芳香族およびヘテロ芳香族基は、OH、CN、F、Cl、Br、NO_(2)、CF_(3)、C_(1)?C_(6) アルコキシ、S-C_(1)?C_(6)-アルキル、NHCONH_(2)、NHC(NH)NH_(2)、NHCO-C_(1)?C_(6)-アルキル、C_(1)?C_(6) アルキル、COOR^(20)、CONR^(20)R^(21)、NR^(20)R^(21)、SO_(3)R^(20)、またはSO_(2)-NR^(20)R^(21) の群からの1、2、3、もしくは4個の置換基で置換されることが可能であり、R^(20) およびR^(21) は、同一または異なり、水素、フェニル、またはC_(1)?C_(6)-アルキルであり、 R^(2) は、水素、HR^(1) またはR^(1)-COO^(-)E^(+) であり、 E^(+) およびG^(+) は、互いに独立に、H^(+)、または化学元素周期系の典型元素の1?5族、または遷移元素の1もしくは2族または4?8族からの金属カチオンM^(m+) の等価物M^(m+)/mであって、mが1、2、もしくは3であるもの、または アンモニウムイオンN^(+)R^(9)R^(10)R^(11)R^(12) であり、 置換基R^(9)、R^(10)、R^(11)、およびR^(12) は・・・(審決注:省略する。)・・・あるいはE^(+) および/またはG^(+) は、次式(Ia)・・・(審決注:省略する。)・・・]の顔料分散剤。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【請求項6】 ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アンサンスロン、インダンスロン、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、チオインジゴ、チアジンインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピランスロン、イソビオランスロン、フラバンスロン、またはアントラピリミジン顔料の群からの有機顔料をクロロスルホン化し、得られたスルホクロリドと次式(V) 【化3】 のアミノカルボン酸を反応させ、所望であれば、遊離の酸と、アンモニウム塩またはG^(+) もしくはE^(+)(審決注:+は原文は下付文字であるが上付文字の誤記と認める。)に基づく金属塩とを反応させることを特徴とする、請求項1から4の一項または複数項に記載の顔料分散剤の調製方法。 【請求項7】 a)少なくとも1種の有機ベース顔料と、 b)少なくとも1種の次式(II) 【化4】 [式中、Q^(2) は、フタロシアニン、アゾ、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合体、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アンサンスロン、インダンスロン、ジオキサジン、ジケトピロロピロール、インジゴ、チオインジゴ、チアジンインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピランスロン、イソビオランスロン、フラバンスロン、またはアントラピリミジン顔料の群からの有機顔料の基であり、 s、n、R^(1)、R^(2)、E^(+)、およびG^(+) は、請求項1から5で述べた定義を有する]の顔料分散剤がその中に存在することを特徴とする顔料配合物。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【請求項11】 請求項7から9の一項または複数項に記載の顔料配合物の、天然または合成の高分子量有機材料、特にプラスチック、樹脂、ワニス、ペイント、電子写真用トナー、および現像剤に加え、インキおよび印刷インキを着色するための使用。」(特許請求の範囲の請求項1、6、7、11) (2b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、新規な顔料分散剤、および着色性およびレオロジー性が改良された新規な顔料配合物、ならびにまたその調製、および高分子量材料を着色するための使用に関する。 【背景技術】 【0002】 顔料配合物は、顔料と顔料を分散させる薬品との組合せであり、以下では後者を顔料分散剤と称する。このような顔料分散剤は、構造が顔料に類似しており、たとえば、顔料の特徴のある物質、好ましくはその有機顔料自体から、特定の活性を有する基を置換することによって調製される。顔料に分散剤を加えるのは、塗布媒体、特にワニス中でのその分散を促進し、かつその顔料のレオロジー性および着色性を改良するためである。顔料分率の高いペイント濃縮物(練り顔料)の粘性が低下し、顔料粒子の凝集が低減するのである。これによって、たとえば、透明度および光沢度の向上が可能になる。このような向上は、金属粉顔料の場合に特に望ましい。 【0003】 顔料系もしくは非顔料系補助剤を加えることによって有機顔料のレオロジー性および着色性を改良する提案が多数あるが、これらの提案は必ずしも期待された結果をもたらさない。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 改良が求められているので、さまざまなクラスの顔料に直ちに利用でき、例外なくさまざまなクラスの顔料と共に使用でき、これらの使用によって新規の顔料配合物が提供できる、現況技術よりも優れた特性を有する顔料分散剤を発見することが目的であった。」 (2c)「【実施例2】 【0071】 [実施例2a] 【0072】 【化6】 四つ口フラスコに360部のクロロスルホン酸を装入し、30部の市販のキナクリドン顔料P.V.19を10分間かけて導入し、溶解させる。次いで、溶液を100℃に加熱し、4時間100℃で攪拌する。これが75℃に冷えた後、29.8部の塩化チオニルを25分間かけて滴下し、次いでこの溶液を85℃で2時間攪拌する。溶液を室温に冷却し、1640部の氷と200部の水から調製した1840部の氷水に滴下する。沈殿したスルホクロリドを濾過する。四つ口フラスコに、500部の氷、500部の水、純度98%のβ-アラニン90.9部、および33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液133.3部を装入し、0?5℃でスルホクロリドプレスケーキを導入する。次いで混合物を0?5℃で1時間攪拌し、30分間で25℃に温め、25℃で終夜攪拌し、30分間で50℃に加熱し、50℃で30分間攪拌し、30分間で70℃に加熱し、70℃で30分間攪拌する。10%濃度の水性塩酸563.6部を用いてpHを1.8にする。生成物を濾過し、1500部の水に懸濁させ、濾過し、305部の10%濃度の塩酸中に懸濁させ、再度濾過し、80℃の減圧下で乾燥させる。これによって49.8部の顔料分散剤が得られる。 【0073】 D_(2)SO_(4) での^(1)H NMRスペクトルは、9.2、9.1、8.2、および8.0ppmに予想どおりの芳香環系のシグナルを示し、3.3および2.8ppmにはメチレン基2個の2本の強いシグナルを示す。強度から算出した置換度は1.8である。 【0074】 [実施例2b] 実施例2a)からの式(XXI)の顔料分散剤1.3部を100部の水に懸濁させ、33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHを10.8にする。次いで、10部の硫酸アルミニウム十八水和物を加える。21.4%の水で湿らせた、市販のキナクリドン顔料P.R.122のプレスケーキ116.7部を383.3部の水に懸濁させた懸濁液に、この懸濁液を加える。混合物を加熱して沸騰させ、還流させながら1時間攪拌する。室温に冷却した後、これを濾過し、水で洗浄し、80℃で乾燥させる。これによって25.7部の顔料分散剤が得られる。」 (2d)「【実施例3】 【0076】 [実施例3a] 【0077】 【化7】 四つ口フラスコに350部のクロロスルホン酸を装入し、85部の塩化ビニルを加える。次いで、50部のジオキサジン顔料P.V.23を10分間かけて導入し、溶解させる。溶液を室温で19時間攪拌する。この溶液を、1920部の氷と200部の水から調製した2120部の氷水に加える。沈殿したスルホクロリドを濾過し、750部の冷水で洗浄する。四つ口フラスコに、250部の氷、250部の水、純度98%のβ-アラニン40.9部、および33%濃度の水酸化ナトリウム溶液60.0部を装入し、0?50℃のスルホクロリドプレスケーキを導入する。次いで混合物を0?5℃で1時間攪拌し、30分間で25℃に温め、25℃で終夜攪拌し、30分間で50℃に温め、50℃で30分間攪拌し、30分間で70℃に加熱し、70℃で30分間攪拌する。10%濃度の水性塩酸232.6部を用いてpHを1.9にする。生成物を濾過し、1500部の水に2度懸濁させ、濾過し、10%濃度の水性塩酸462部に懸濁させ、再度濾過し、80℃の減圧下で乾燥させる。これによって69.3部の顔料分散剤が得られる。 【0078】 元素分析では、硫黄が7.4%という結果が得られ、置換度sが2.1であることに一致する。 【0079】 [実施例3b] 実施例3a)からの式(XXII)の顔料分散剤2.5部を100部の水に懸濁させ、33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを11.1にする。次いで、純度98%の塩化カルシウム5.1部を100部の水に溶かした溶液に加える。441.9部の水と、43%の水で湿らせた、市販のジオキサジン顔料P.V.23のプレスケーキ58.2部とから調製した顔料懸濁液に、この顔料分散剤懸濁液を加える。混合物を加熱して沸騰させ、還流させながら1時間攪拌する。室温に冷却した後、これを濾過し、水で洗浄し、80℃で乾燥させる。これによって26.7部の顔料配合物が得られる。」 (2e)「【実施例4】 【0081】 [実施例4a] 【0082】 【化4】 四つ口フラスコに372.8部のクロロスルホン酸を装入し、57.6部の銅フタロシアニンP.Blue 15の粗製顔料を導入し、溶解させる。次いで、溶液を80℃に加熱し、80℃で4時間攪拌する。これが75℃に冷えた後、53.6部の塩化チオニルを75℃で30分間かけて滴下する。次いでこの溶液を85℃に加熱し、85℃で2時間攪拌する。室温に冷えた後、この溶液を、1842部の氷と200部の水から調製した2042部の氷水に滴下する。沈殿したスルホクロリドを濾過し、750部の冷水で洗浄する。四つ口フラスコに375部の氷、375部の水、純度98%のβ-アラニン45.5部、および33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液66.7部を装入し、0?5℃でスルホクロリドプレスケーキを導入する。次いで、混合物を0?5℃で1時間攪拌し、30分間で25℃に温め、25℃で30分間攪拌し、30分間で50℃に加熱し、50℃で30分間攪拌し、30分間で70℃に加熱し、70℃で30分間攪拌する。10%濃度の水性塩酸371.7部を用いてpHを1.9に合わせる。生成物を濾過し、水で洗浄し、80℃で乾燥させる。これによって61部の顔料分散剤が得られる。 【0083】 元素分析では、硫黄2.8%および炭素60.9%という結果が得られた。これは、置換度sが0.6であることに一致する。 【0084】 [実施例4b](微細化CuPc) 市販のテトラクロロ銅フタロシアニン顔料P.Blue15:1 200部を、96%濃度の硫酸2000部に溶解させる。この溶液を、5200部の氷と24000部の水の混合物中に25分間かけて注ぐ。この顔料懸濁液を濾過し、水で洗浄する。これによって濃度20.5%の水性顔料プレスケーキ989.6部が得られるので、これを各329.8部の顔料プレスケーキ3個分に分ける。この顔料プレスケーキの1個分を1087.7部の水に懸濁させ、33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いて懸濁液のpHを9.5に合わせ、2部のC12アルコールを加える。この懸濁液を加圧しながら130℃で1時間攪拌する。他の2個分でも同じ手順を行う。3つの懸濁液を合わせ、濾過し、洗浄する。これによって濃度22.8%の水性顔料プレスケーキ858部が得られる。 【0085】 この顔料プレスケーキ100部を80℃で乾燥させると、22.8部の乾燥顔料が得られる。」 (2f)「【実施例6】 【0093】 [実施例6a] 【0094】 【化10】 四つ口フラスコに360部のクロロスルホン酸を装入し、市販のキナクリドン顔料P.V.19 30部を10分間かけて導入し、溶解させる。次いで溶液を100℃に加熱し、100℃で4時間攪拌する。これが75℃に冷えた後、29.8部の塩化チオニルを25分間かけて滴下し、次いで溶液を85℃で2時間攪拌する。この溶液を室温に冷却し、1600部の氷と200部の水から調製した1800部の氷水に滴下する。沈殿したスルホクロリドを濾過する。四つ口フラスコに、500部の氷、500部の水、138.6部の4-アミノ安息香酸、および33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液133.3部を装入し、0?5℃でスルホクロリドプレスケーキを導入する。次いで、混合物を0?5℃で1時間攪拌し、30分間で25℃に温め、25℃で終夜攪拌し、30分間で50℃に加熱し、50℃で30分間攪拌し、30分間で70℃に加熱し、70℃で30分間攪拌し、30分間で90℃に加熱し、90℃で30分間攪拌するが、33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液約175部を加えることによって、この温度プログラム間のpHを>10に保つ。10%濃度の水性塩酸728.8部を用いてpHを1.8にする。生成物を濾過し、400部の10%濃度の水性塩酸中に懸濁させ、濾過し、80℃の減圧下で乾燥させる。これによって61.8部の顔料分散剤が得られる。 【0095】 D_(2)SO_(4) での^(1)H NMRスペクトルは、9.2、8.95、8.15、7.9、7.75、7.3、および7.0ppmに予想どおりの芳香環系のシグナルを示す。その強度から算出した置換度は、約1.5である。 【0096】 [実施例6b] 実施例6a)のように調製した式(XXV)の顔料分散剤4部と市販のキナクリドン顔料P.R.122 40部を混合して、顔料配合物にする。」 (2g)「【実施例7】 【0098】 [実施例7a] 【0099】 【化11】 四つ口フラスコに372.8部のクロロスルホン酸を装入し、銅フタロシアニンP.Blue 15の粗製顔料57.6部を導入し、溶解させる。次いで溶液を95℃に加熱し、95℃で4時間攪拌する。これが75℃に冷えた後、75℃で25分間かけて53.6部の塩化チオニルを滴下する。次いで溶液を85℃に加熱し、85℃で2時間攪拌する。T<40℃に冷えた後、この溶液を、1850部の氷と200部の水から調製した2050部の氷水に滴下する。沈殿したスルホクロリドを濾過し、750部の冷水で洗浄する。四つ口フラスコに、375部の氷、375部の水、純度98%のβ-アラニン54.6部、および33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液80部を装入し、0?50℃でスルホクロリドプレスケーキを導入する。次いで、混合物を0?5℃で1時間攪拌し、30分間で25℃に温め、25℃で30分間攪拌し、30分間で50℃に加熱し、50℃で30分間攪拌し、30分間で70℃に加熱し、70℃で30分間攪拌する。10%濃度の水性塩酸404.9部を用いてpHを1.9に合わせる。生成物を濾過し、水で洗浄し、80℃で乾燥させる。これによって71.4部の顔料配合物が得られる。 【0100】 元素分析では、硫黄5.6%および窒素16.8%という結果が得られ、これは置換度sが約1.4であることと一致する。 【0101】 [実施例7b] 粉にした市販の銅フタロシアニンP.Blue15の粗製顔料を、pHが>12の50%イソブタノール中、12重量%の実施例7aのとおりに調製した式(XXVI)の顔料分散剤と共に攪拌することによって調製し、この配合物を、圧力をかけながら130℃で攪拌する。冷却した後、蒸留によってイソブタノールを除去し、顔料配合物を単離し、乾燥させる。」 (3)刊行物に記載された発明 ア 刊行物1は、着色されたキャリア粒子を製造する方法について記載した特許文献である(摘示(1a)?(1c))。 その特許請求の範囲の請求項9には、式: D(SO_(2)NHE)_(y) (II) (審決注:式の構成要素の説明は省略する。)の化合物が記載され、請求項10、8、1を参照すると、上記式(II)の化合物は、キャリア粒子を着色するための着色剤として用いられるものである(摘示(1a))。 そして、合成例1には、請求項9に係る発明を具体化したものとして、以下の式 (ここで、Aは であり、nは1-8であり、Catは合成の際に水酸化ナトリウムを用いていることからNa^(+) である。)の化合物を実際に合成したことが具体的に記載されている(摘示(1c))。 したがって、刊行物1には、請求項9に係る発明を具体化したものである上記化合物の発明が記載されているといえ、また、上記化合物を製造する方法についての以下の 「式 (ここで、Aは であり、nは1-8であり、CatはNa^(+) である。) の化合物を、以下の手順に従い製造する方法: (スルホクロロ化) クロロスルホン酸156gを、スターラー、サーモメーター及びコンデンサーを取り付けた0.5L丸底フラスコに入れ、銅フタロシアニン30g(0.052mol)を室温で一度に添加し、得られた溶液をゆっくりと130℃まで加熱し、3時間攪拌し、この溶液を冷却し、塩化チオニル65.7gを80℃でゆっくりと滴下し、次いで、さらに3時間、還流下で攪拌を行い、室温で、溶液を氷1.3kg上に出し;得られた懸濁物をろ過し、水で十分に洗浄する: (アミド化) 脱イオン水450g及びメタノール120g中の4-アミノ安息香酸54g(0.393mol)を1L丸底フラスコに入れ、氷を添加することによって0℃まで冷却し、水で湿ったろ過ケーキを一度に入れ、氷をさらに添加することにより温度を0℃に維持し、懸濁物を0℃で2時間攪拌し、室温で14時間攪拌し、80℃で1時間攪拌し、室温で、懸濁物をろ過し、脱イオン水1000gで洗浄し、減圧中50℃で乾燥させた後、化合物A1’ 95gを得る: (化合物A1’の化合物A1への変換) 1500mL丸底フラスコ中で、化合物A1’ 10gを水1000gに懸濁させ、室温で、32%水酸化ナトリウム溶液3.7gを滴下し、得られた溶液を60℃で2時間攪拌し、温めながらろ過し、ロータリーエバポレータ-を用いてろ液を最大50℃、減圧下で濃縮し、減圧中50℃で乾燥させた後、化合物A1 10.5gを得る」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているということができる。 イ 刊行物2は、顔料分散剤について記載した特許文献である(摘示(2a)?(2g))。 その特許請求の範囲の請求項1には、一般式(I) (審決注:式の構成要素の説明は省略するが、Q^(1) にはキナクリドン及びジオキサジンが含まれる。)の顔料分散剤の発明が記載され、請求項6には、その調製方法の発明として、上記式のQ^(1) として挙げられたのと同じ特定の有機顔料をクロロスルホン化し、得られたスルホクロリドと次式(V) のアミノカルボン酸を反応させ、所望であれば、遊離の酸と、アンモニウム塩またはG^(+) もしくはE^(+) に基づく金属塩とを反応させることを発明特定事項とする顔料分散剤の調製方法の発明が記載されている(摘示(2a))。 また、請求項7には、顔料配合物の発明として、有機ベース顔料と、式(II) の顔料分散剤がその中に存在する、顔料配合物の発明が記載されており(摘示(2a))、この式(II)の顔料分散剤は、請求項1の式(I)の顔料分散剤と大部分重複するものであるが、有機顔料の基Q^(2) が式(I)における有機顔料の基Q^(1) にはないフタロシアニン、アゾ、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合体を含む点で、式(I)の顔料分散剤より若干広いものである。 そして、実施例2、3、4、6、7には、請求項6又は7に係る発明を具体化したものとして、それぞれ以下の式(XXI)、(XXII)、(XXIII)、(XXV)、(XXVI) の顔料分散剤を、対応する有機顔料(順に、キナクリドン、ジオキサジン、フタロシアニン、キナクリドン、フタロシアニンである。)に、クロロスルホン酸又はクロロスルホン酸と塩化チオニルを作用させてスルホクロリドとし、これに対応するβ-アラニン又は4-アミノ安息香酸を反応させて、実際に合成したこと、また、有機ベース顔料と混合して顔料配合物を得たことが、具体的に記載されている(摘示(2c)?(2g))。有機顔料がフタロシアニンであるものも、有機顔料がキナクリドン又はジオキサジンであるものと同様の手順で顔料分散剤が調製されている。 したがって、刊行物2には、請求項6に係る式(I)の顔料分散剤の調製方法の発明、及び同様の調製方法により式(II)の顔料分散剤を調製する方法の発明であって、調製される式(I)又は(II)の顔料分散剤が実施例2、3、4、6又は7に記載された顔料分散剤である、以下の 「以下の式(XXI)、(XXII)、(XXIII)、(XXV)又は(XXVI) の顔料分散剤の調製方法であって、キナクリドン、ジオキサジン又はフタロシアニン顔料である対応する有機顔料をクロロスルホン化し、得られたスルホクロリドと、β-アラニン又は4-アミノ安息香酸である対応する4-アミノカルボン酸を反応させる、顔料分散剤の調製方法。」 の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているということができる。 (4)本願発明と引用発明との対比 ア 引用発明1との対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「銅フタロシアニン」は、フタロシアニン顔料として当業者よく知られたものであるから、本願発明の「顔料」に相当し、 引用発明1における「スルホクロロ化」の工程は、「銅フタロシアニン」の顔料表面にクロロスルホン酸(Cl-S(O)_(2)OH)を反応させ、「銅フタロシアニン」の顔料表面に「スルホン酸基」(-S(O)_(2)OH)」を導入し、導入した「スルホン酸基」の水酸基部分を塩化チオニルで塩素化し、最終的に「クロロスルホニル基」(-S(O)_(2)Cl)を導入する工程であるから、本願発明の「反応基X-Yを顔料表面に結合させるステップ」であって「Xはスルホニル」かつ「Yは・・・塩素」に相当する。 引用発明1における「アミド化」及び「化合物A1’の化合物A1への変換」の工程は、上記クロロスルホニル基と4-アミノ安息香酸を反応させ、得られた懸濁物をろ過し、水酸化ナトリウムを添加し、Na塩の形態の4-カルボキシフェニルアミノスルホニル基(-S(O)_(2)NH-Ph-COONa(4位))に変換する工程であるから、本願発明の「Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップ」であって「Nはアミン」、「Sは・・・アリール」、「Zはカルボキシル」かつ「Mは・・・塩形態のカチオン」に相当する。 また、引用発明1の「式(式及び式中の定義は省略)の化合物を、以下の手順に従い製造する方法」は、「銅フタロシアニン」の顔料表面に「スルホクロロ化」及び「アミド化」を行い、「銅フタロシアニン」の顔料表面に置換基を導入するものであり、本願明細書段落【0045】、【0062】の記載から、本願発明の顔料の改質とは、顔料の表面に置換基を結合して性質を改質することに過ぎないので、本願発明の「顔料の改質方法」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「反応基X-Yを顔料表面に結合させるステップ;および 次いで、Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップを含む顔料の改質方法 [式中、 Xはスルホニルであり; Yは塩素であり; Nはアミンであり; Sはアリールであり; Zはカルボキシルであり; Mは塩形態のカチオンである]」である点で一致し、相違する点はない。 よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。 イ 引用発明2との対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「キナクリドン、ジオキサジン又はフタロシアニン顔料」及び「有機顔料」は、本願発明の「顔料」に相当し、 引用発明2における「クロロスルホン化」し「スルホクロリド」を得る工程は、顔料表面にクロロスルホニル基(-S(O)_(2)Cl)を導入する工程であるから、本願発明の「反応基X-Yを顔料表面に結合させるステップ」であって「Xはスルホニル」かつ「Yは・・・塩素」に相当する。 引用発明2における「得られたスルホクロリドと、β-アラニン又は4-アミノ安息香酸である対応する4-アミノカルボン酸を反応させる」工程は、β-アラニンを反応させる工程の場合は、上記クロロスルホニル基とβ-アラニンを反応させてカルボキシエチルアミノスルホニル基-S(O)_(2) NH(CH_(2))_(2)COOHに変換する工程であるといえ、本願発明の「Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップ」であって「Nはアミン」、「Sは・・・アルキル」、「Zはカルボキシル」かつ「Mは・・・プロトン」に相当し、 また、4-アミノ安息香酸を反応させる工程の場合にも、上記クロロスルホニル基と4-アミノ安息香酸を縮合反応させて4-カルボキシフェニルアミノスルホニル基-S(O)_(2)NH-Ph-COOH(4位)に変換する工程であるから、本願発明の「Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップ」であって「Nはアミン」、「Sは・・・アリール」、「Zはカルボキシル」かつ「Mは・・・プロトン」に相当する。 そして、引用発明2の「顔料分散剤の調製方法」は、有機顔料をクロロスルホン化し、得られたスルホクロリドと、β-アラニン又は4-アミノ安息香酸である対応する4-アミノカルボン酸を反応させ、これらの有機基を有機顔料に導入するものであり、本願明細書段落【0045】、【0062】の記載から、本願発明の顔料の改質とは、顔料の表面に置換基を結合して性質を改質することに過ぎないので、本願発明の「顔料の改質方法」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明2とは、 「反応基X-Yを顔料表面に結合させるステップ;および 次いで、Yを有機基質N-S-ZMで置換し、X-N-S-ZMが結合した表面改質顔料を形成させるステップを含む顔料の改質方法 [式中、 Xはスルホニルであり; Yは塩素であり; Nはアミンであり; Sはアルキルまたはアリールであり; Zはカルボキシルであり; Mはプロトンである]。」である点で一致し、相違する点はない。 よって、本願発明は、刊行物2に記載された発明である。 ウ 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、刊行物1及び2は、「有機基質N-S-ZM」における「S」が「それぞれ、分子量が300未満である4-アミノ安息香酸のアリール環を使用することを開示している」こと、刊行物1の段落[0186]及び刊行物2の段落[0037]で使用されている「クロロスルホン酸と塩化チオニルの比率」が「本願請求項6のクロロスルホン酸と塩化チオニルの比率である「3:1?6:1(wt/wt)」の範囲よりも小さい」ことなどから、本願発明は刊行物1、2と異なる発明であると主張している。 しかしながら、上記ア及びイで検討したとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明にほかならない。 また、本願発明には、審判請求人の主張する「クロロスルホン酸と塩化チオニルの比率」について何ら特定されておらず、さらに、本願発明の「S」は、「置換もしくは非置換のアルキル、アリール、または分子量範囲が300?8000の高分子鎖」と特定され、「置換もしくは非置換のアルキル、アリール」の「分子量範囲」について何ら特定されていないのであるから、これらの審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、到底、採用することができない。 (5)まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物1又は2に記載された発明である。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-04-18 |
結審通知日 | 2019-05-08 |
審決日 | 2019-05-21 |
出願番号 | 特願2016-168724(P2016-168724) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 斉藤 貴子 |
特許庁審判長 |
瀬良 聡機 |
特許庁審判官 |
佐々木 秀次 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 自己分散型顔料ならびにその製造方法および使用 |
代理人 | 平木 祐輔 |
代理人 | 田中 夏夫 |
代理人 | 藤田 節 |
代理人 | 菊田 尚子 |