ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
---|---|
管理番号 | 1355841 |
審判番号 | 不服2018-4686 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-06 |
確定日 | 2019-10-10 |
事件の表示 | 特願2015-501951「モジュールとして構成されるマルチレベルリードフレームを有するパッケージングされた半導体デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/142867、平成27年 4月13日国内公表、特表2015-511073〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)3月25日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年3月23日 米国(US)、2013年3月22日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成28年3月22日付けで手続補正がなされ、平成29年3月7日付け拒絶理由通知に対して同年6月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対して平成30年4月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 補正の適否 平成30年4月6日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲(平成29年6月13日付けで補正)の請求項1 「複数の相互接続レベルを備えるパッケージされた半導体デバイスであって、 第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリであって、 第1のリードのセットとパッドと曲げられた伸長されたリードの第1のセットとを含む第1の平坦リードフレームと、 前記第1の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含み、 前記曲げられた伸長されたリードの第1のセットが前記第1の平坦リードフレームの平面から離れて第1の方向に曲げられる、前記第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリと、 第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリであって、 第2のリードのセットとパッドとを含む第2の平坦リードフレームと、 前記第2の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含み、 前記曲げられた伸長されたリードの第1のセットが前記第2の平坦リードフレームに導電的に接続され、2つの平面における電子的構成要素とリードのセットとの間の導電的にリンクされた3次元ネットワークを形成する、前記第2のプリアセンブルされたモジュラーアセンブリと、 前記3次元ネットワークの一部分を封止するパッケージング材料と、 を含む、デバイス。」を、 「複数の相互接続レベルを備えるパッケージされた半導体デバイスであって、 第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリであって、 第1のリードのセットとパッドと曲げられた伸長されたリードの第1のセットとを含む第1の平坦リードフレームと、 前記第1の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含み、 前記曲げられた伸長されたリードの第1のセットが前記第1の平坦リードフレームの平面から離れて第1の方向に曲げられる、前記第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリと、 第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリであって、 第2のリードのセットとパッドとを含む第2の平坦リードフレームと、 前記第2の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含み、 前記曲げられた伸長されたリードの第1のセットが前記第2の平坦リードフレームに導電的に接続され、2つの平面における電子的構成要素とリードのセットとの間の導電的にリンクされた3次元ネットワークを形成する、前記第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリと、 前記3次元ネットワークの一部分を封止するパッケージング材料と、 を含む、デバイス。」 とするものである。 すなわち、本件補正は、請求項1において「前記第2のプリアセンブルされたモジュラーアセンブリ」を「前記第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」と補正するものである。 補正前の請求項1においては、「前記第2のプリアセンブルされたモジュラーアセンブリ」という記載箇所より前に「第2のプリアセンブルされたモジュラーアセンブリ」という記載がなく、「第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」が記載されている。 したがって、「前記第2のプリアセンブルされたモジュラーアセンブリ」を「前記第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」と補正することは、特許法第17条の2第5項第3号に規定される誤記の訂正を目的とするものに該当する。 よって、本件補正は、適法になされたものである。 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年4月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである(上記「第2」の後段の請求項1を参照)。 第4 引用文献 (1)特開2011-60927号公報 原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-60927号公報(以下「引用文献1」という。)には、「半導体装置」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【技術分野】 【0001】 本発明は、多層フレーム実装構造を有する半導体装置に関する。 【背景技術】 【0002】 パワーMOSFETやIGBTなどに代表されるパワー半導体素子(消費電力が0.1ワット以上)のような電子部品を、配線基板上に実装し、モジュール化した、所謂パワーモジュールが、車載用や産業用の半導体装置で、一般的に用いられている。パワーモジュールでは、主にパワー半導体素子が実装された面と反対側の面より、該パワーモジュールが固定された筐体などの冷却板へ熱を伝導することで、排熱される構造になっている。 【0003】 従来、パワーモジュールを用いた電子制御装置は、制御対象機器ごとに設けられていた。ところが近年、これらの電子制御装置は小型化、一体化、低コスト化が求められており、パワーモジュールにおいても、小型化が求められている。」 イ.「【0014】 第1の実施例を図1?図13を用いて具体的に説明する。図1は、第1の実施例における多層フレーム実装構造を有する半導体装置を模式的に示した側面図である。 【0015】 図1に示すように、複数の電子部品104が実装された、第1層目のリードフレーム101、第2層目のリードフレーム102、第3層目のリードフレーム103を積層し、全体を封止樹脂105で封止し、放熱シート106を介して筐体107にボルト(図1には未記載)で固定することで、多層リードフレームモジュールを製作した。図1において、符号108はリードフレーム層間接続材、符号101-3は第1層目リードフレームで構成された信号入力端子、符号102-1は第2層目リードフレームで構成された大電流入力端子、符号102-2は第2層目リードフレームで構成された大電流出力端子、符号102-3は第2層目リードフレームで構成された信号入力端子、符号103-3は第3層目リードフレームで構成された信号入力端子である。また、符号109は電子部品104と各リードフレーム101、102、103、との電気的接続及び機械的固定等に用いる導電性材料、符号110は導電性材料109より融点が低い導電性材料である。」 ウ.「【0018】 導電性材料には、はんだ(Sn-3.0Ag-0.5Cu(wt%))を用いた。導電性材料109の溶融温度は、導電性材料110の溶融温度より高い材料を用いればよい。これは、層間接続材108と各リードフレーム101、102、103を接続するときに、電子部品を電気的接続および機械的固定をしている導電性材料109が溶融することを防止するためである。本実施例に用いる導電性材料は、加熱処理により電気的接続と機械的固定が同時に行えるものであれば特に限定されないが、はんだや導電性ペーストが望ましい。これは、印刷やディスペンサにてリードフレーム上に導電性材料を塗布でき、生産性が高いためである。例えば、はんだを用いる場合には溶融開始温度が封止樹脂の効果処理温度以上のものであれば特に制限されないが、例えばはんだにはSn(スズ)とAu(金)合金系、Sn(スズ)とPb(鉛)合金系、Sn(スズ)とAg(銀)合金系、Sn(スズ)とAg(銀)とCu(銅)合金系、Sn(スズ)とAg(銀)とBi(ビスマス)合金系等のはんだやこれらに5wt%以下のIn(インジウム)、Ni(ニッケル)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)等を添加したものが用いられる。導電性ペーストは、導電性材料と接着性材料を混合したものである。」 エ.図7-9を参照すると、複数箇所で層間接続材108と各リードフレーム101、102、103を接続している。 上記アないしエから、引用文献1には以下の事項が記載されている。 ・上記アによれば、多層フレーム実装構造を有する半導体装置に関するものである。 ・上記イによれば、複数の電子部品104が実装された、第1層目のリードフレーム101、第2層目のリードフレーム102、第3層目のリードフレーム103を積層し、全体を封止樹脂105で封止した、多層リードフレームモジュールにおいて、リードフレーム層間接続材108、第2層目リードフレームで構成された大電流入力端子102-1、大電流出力端子102-2及び信号入力端子102-3、第3層目リードフレームで構成された信号入力端子103-3を備えたものである。 ・上記ウ、エによれば、複数箇所において、各リードフレーム101、102、103を層間接続材108で接続している。 したがって、上記摘記事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「多層フレーム実装構造を有する半導体装置に関し、 複数の電子部品104が実装された、第1層目のリードフレーム101、第2層目のリードフレーム102、第3層目のリードフレーム103を積層し、全体を封止樹脂105で封止した、多層リードフレームモジュールにおいて、 リードフレーム層間接続材108、第2層目リードフレームで構成された大電流入力端子102-1、大電流出力端子102-2及び信号入力端子102-3、第3層目リードフレームで構成された信号入力端子103-3を備え、 複数箇所において、各リードフレーム101、102、103を層間接続材108で接続している、半導体装置。」 (2)国際公開第2011/155165号公報 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/155165号(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 オ.「[0016] 図1?図5に示すように、本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置は、第1素子であるパワー素子1を第1ダイパッド部3Aの上に保持する第1リードフレーム3と、第2素子である制御素子4を第2ダイパッド部5Aの上に保持する第2リードフレーム5と、第1リードフレーム3の下面に絶縁シート10を介在して固着された放熱板2と、封止樹脂材からなる外装体6とから構成されている。」 カ.「[0019] このため、本実施形態においては、パワー素子1と制御素子4とは、例えば金(Au)からなるワイヤ32では直接に接続することができない。そこで、本実施形態に係る樹脂封止型半導体装置では、第1リードフレーム3(当審注:「第1リードフレーム1」は、「第1リードフレーム3」の誤記と認められる。)においては、複数のリードのうちの1つをパワー素子用中継リード21としている。また、第2リードフレーム5においては、複数のリードのうちの1つを制御素子用中継リード22としている。これらパワー素子用中継リード21及び制御素子用中継リード22の端部同士を接合部23(第1接合部)により接合している。」 キ.図3及び図14には、樹脂封止型半導体装置を示す断面図が記載されており、第2リードフレーム5における中継リード22は、第1リードフレーム3側に延びて屈曲して、第1リードフレーム3の中継リード21に接続されていると認定できる。 上記オないしキによれば、引用文献2には「樹脂封止型半導体装置において、第2リードフレームの中継リードが、第1リードフレーム側に延びて屈曲して、第1リードフレームの中継リードに接続されることで、第2リードフレーム上の素子と第1リードフレーム上の素子とを接続する」技術事項が記載されている。 第5 対比 そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「半導体装置」は、「全体を封止樹脂105で封止」されているから、本願発明の「パッケージされた半導体デバイス」に相当する。 (2)引用発明1の「各リードフレーム101、102、103を層間接続材108で接続している」ことは、本願発明の「複数の相互接続レベル」に相当する。 (3)引用発明1の各リードフレーム101、102、103に実装される「電子部品104」は、本願発明の「電子的構成要素」に相当する。 また、引用発明1の「複数の電子部品104が実装された、第1層目のリードフレーム101、第2層目のリードフレーム102、第3層目のリードフレーム103」は、電子部品とリードフレームから構成される部品であるから、それぞれが多層リードフレームモジュールの一部を構成するサブアセンブリ、すなわちモジュラーサブアセンブリといえ、本願発明の「モジュラーサブアセンブリ」に相当する。 (4)引用発明1の「各リードフレーム101、102、103」は、図1を参照すると、平らな形状をしているから、本願発明の「平坦リードフレーム」に相当する。 また、引用発明1の「各リードフレーム101、102、103」は、電子部品を実装する場所を備えているから、本願発明の「パッド」に相当する構成を備えている。 ここで、引用発明1の「第2層目のリードフレーム102」、「第3層目のリードフレーム103」を、本願発明の「第1の平坦リードフレーム」、「第2の平坦リードフレーム」にそれぞれ対応させると、引用発明1の「複数の電子部品が実装された、」「第2層目のリードフレーム102」、「第3層目のリードフレーム103」は、本願発明の「第1の」「モジュラーサブアセンブリ」、「第2の」「モジュラーサブアセンブリ」にそれぞれ相当する。 ただし、第1及び第2のモジュラーサブアセンブリに関して、本願発明は「第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」と「第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」であって、プリアセンブルされたものであるのに対して、引用発明1は、その旨の記載がない点で相違する。 (5)引用発明1の「層間接続材108」は、複数箇所で「第2層目のリードフレーム102」と「第3層目のリードフレーム103」を接続するから、引用発明1の「層間接続材108」と本願発明の「曲げられた伸長されたリードの第1のセット」は、第1及び第2の平坦リードフレームを接続する部材のセットである点で共通する。 ただし、第1及び第2の平坦リードフレームを接続する部材に関して、本願発明は、「第1の平坦リードフレーム」の「曲げられた伸長されたリード」が、「前記第1の平坦リードフレームの平面から離れて第1の方向に曲げられ」ており、「前記第2の平坦リードフレームに導電的に接続され」ているのに対して、引用発明1は、「層間接続材108」が「第2層目のリードフレーム102」と「第3層目のリードフレーム103」を接続している点で相違する。 (6)引用発明1の「第2層目リードフレームで構成された大電流入力端子102-1、大電流出力端子102-2及び信号入力端子102-3」は、図1及び図8を参照すると、封止樹脂105の外側に出ているリード端子部分であり、複数あるから、本願発明の「第1の平坦リードフレーム」の「第1のリードのセット」に相当する。 また、引用発明1の「第3層目リードフレームで構成された信号入力端子103-3」は、図1及び図9を参照すると、封止樹脂105の外側に出ているリード端子部分であるから、本願発明の「第2の平坦リードフレーム」の「第2のリード」に相当する。 ただし、第2のリードに関して、本願発明は、「第2のリードのセット」であって、リードが複数あるのに対して、引用発明1は、複数ない点で相違する。 (7)引用発明1の「第3層目のリードフレーム103」における「電子部品104」と、「第2層目リードフレームで構成された大電流入力端子102-1、大電流出力端子102-2及び信号入力端子102-3」とが、電気的に接続されていることは明白である。 また、引用発明1の多層リードフレームモジュールにおいて、上下に配置されたリードフレームが電気的に接続される構成は、立体的な3次元ネットワークといえる。 そうすると、引用発明1の「電子部品104が実装された、」「第3層目のリードフレーム103」は、本願発明における「第2の」「モジュラーサブアセンブリ」が「2つの平面における電子的構成要素とリードのセットとの間の導電的にリンクされた3次元ネットワークを形成する」構成を含んでいる。 (8)引用発明1の「封止樹脂105」は、図1を参照すると、端子102-1、102-2、102-3及び103-3が封止樹脂の外側に出るように、多層リードフレームモジュールの一部を封止しており、引用発明1の「封止樹脂105」は、本願発明の「3次元ネットワークの一部分を封止するパッケージング材料」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、 「複数の相互接続レベルを備えるパッケージされた半導体デバイスであって、 第1のモジュラーサブアセンブリであって、 第1のリードのセットとパッドとを含む第1の平坦リードフレームと、 前記第1の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含む、前記第1のモジュラーサブアセンブリと、 第2のモジュラーサブアセンブリであって、 第2のリードとパッドとを含む第2の平坦リードフレームと、 前記第2の平坦リードフレームのパッドに取り付けられた電子的構成要素と、 を含み、 第1及び第2の平坦リードフレームを接続する部材のセットが前記第2の平坦リードフレームに導電的に接続され、2つの平面における電子的構成要素とリードとの間の導電的にリンクされた3次元ネットワークを形成する、前記第2のモジュラーサブアセンブリと、 前記3次元ネットワークの一部分を封止するパッケージング材料と、 を含む、デバイス。」である点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点1> 第1及び第2のモジュラーサブアセンブリに関して、本願発明は「第1のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」と「第2のプリアセンブルされたモジュラーサブアセンブリ」であって、プリアセンブルされたものであるのに対して、引用発明1は、その旨の記載がない点。 <相違点2> 第1及び第2の平坦リードフレームを接続する部材に関して、本願発明は、「第1の平坦リードフレーム」の「曲げられた伸長されたリードの第1のセット」が、「前記第1の平坦リードフレームの平面から離れて第1の方向に曲げられ」ており、「前記第2の平坦リードフレームに導電的に接続され」ているのに対して、引用発明1は、「層間接続材108」が「第2層目のリードフレーム102」と「第3層目のリードフレーム103」を接続している点。 <相違点3> 第2のリードに関して、本願発明は、第2のリードの「セット」であって、リードが複数あるのに対して、引用発明1は、複数ない点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 (1)<相違点1>について 引用文献1の【0030】-【0033】及び図10には、多層リードフレームモジュール作製の工程表が記載されている。3枚のリードフレームを積層(S808)する前に、電子部品をリードフレーム上に搭載(S804)しており、電子部品が搭載されたリードフレームは、積層の前に事前に組み立てられた、すなわちプリアセンブルされたものといえる。 してみると、引用発明1において、複数の電子部品が実装された、「第2層目のリードフレーム102」、「第3層目のリードフレーム103」は、積層の前に事前に組み立てられた、プリアセンブルされたものといえるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。 (2)<相違点2>について 引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項(上記「第4(2)」を参照)は、共に樹脂封止された半導体装置における多層リードフレームの電気的接続に関する技術である。 そうすると、引用発明1において、層間接続材108を用いることに代えて、引用文献2に記載された技術事項を採用し、第2層目のリードフレーム102と第3層目のリードフレーム103を接続する際に、引用文献2記載のリードフレームから延びて屈曲した、中継リードによる接続を用い、リードフレーム102の曲げられた伸長されたリードのセットが、リードフレーム102の平面から離れてリードフレーム103の方向に曲げられて、リードフレーム103に導電的に接続するように構成して、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)<相違点3>について 引用発明1は、リードフレームに所望の回路パターンを形成してもよいものである(【0030】参照)。引用発明1において、第3層目のリードフレーム103に形成する回路パターンに、複数のリードを必要とする回路パターンを採用し、リードフレーム103がリードのセットを含むように構成して、上記相違点3の構成を導くことは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用文献1ないし2の技術事項から当業者が予想できる範囲のものである。 なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1に記載された発明に、中継リード21、22により第1リードフレーム3に保持されるパワー素子1と第2リードフレーム5に保持される制御素子4とを接続する引用文献2に記載された技術を適用すると、層間接続材108を用いる場合と異なり、中継リード21、22の分だけ水平方向の大きさが増大することになり、引用文献1に記載された発明の目的である小型、薄型の多層リードフレーム実装構造と相反する結果を招きますので、半導体装置の当業者であれば、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された技術を適用することはありません。」との主張をしている。 しかしながら、引用発明1のリードフレーム上には回路が形成されており、層間接続材108を配置するスペース、及び層間接続材108との接続に必要となる配線のスペースが水平方向に確保されていることは自明であり、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することに阻害要因はない。そして、これらのスペースを含むことができる大きさのリードフレームに対して、引用文献2に記載された技術事項を適用した際に、水平方向の大きさを増大させることなく、中継リードによる接続の構成を設けることは当業者が適宜設計変更し得る程度のことである。 なお、リードフレームに所望の回路パターンを形成してよいことは、上記相違点3で検討したとおりである。 よって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。 第7 むずび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2019-05-08 |
結審通知日 | 2019-05-15 |
審決日 | 2019-05-31 |
出願番号 | 特願2015-501951(P2015-501951) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 多賀 和宏、平林 雅行、豊島 洋介 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
井上 信一 五十嵐 努 |
発明の名称 | モジュールとして構成されるマルチレベルリードフレームを有するパッケージングされた半導体デバイス |
代理人 | 片寄 恭三 |