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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 特174条1項 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1355932 |
異議申立番号 | 異議2018-700462 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-06 |
確定日 | 2019-08-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6243863号発明「ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6243863号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕、〔5-8〕について訂正することを認める。 特許第6243863号の請求項5-7に係る特許を維持する。 特許第6243863号の請求項1-4、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6243863号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成25年2月26日に出願された特願2013-36351号の一部を、平成27年2月18日に新たな特許出願としたものであり、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月6日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年 6月 6日 :特許異議申立人白井 雅恵(以下「申立人 」という。)による請求項1?8に係る特 許に対する特許異議の申立て 平成30年 8月23日付け:取消理由通知書 平成30年10月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 平成30年11月29日 :申立人による意見書の提出 平成31年 2月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告) 平成31年 4月12日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出 令和 元年 5月29日 :申立人による意見書の提出 なお、平成31年4月12日の訂正請求書により訂正請求がされたため、特許法120条の5第7項の規定により、平成30年10月25日の訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなす。 2 訂正の適否 (1) 訂正の内容 平成31年4月12日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 オ 訂正事項5 訂正前の請求項5に、「水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、 前記ノンアルコール飲料は、レモンチューハイテイスト飲料であり、 前記ノンアルコール飲料は前記水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%含有し、 前記水溶性食物繊維の含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)が、0.050?0.500となるように」とあるのを、 「難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、 前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、 前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、 前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように」と訂正する。 カ 訂正事項6 訂正前の請求項6に、「前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満である」とあるのを、 「前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満である」と訂正する。 キ 訂正事項7 訂正前の請求項7に、「前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.050?0.350である」とあるのを、 「前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.300?0.350である」と訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 ケ 訂正事項9 願書に添付した明細書の【発明の名称】に「ノンアルコール飲料および味の厚みと飲みやすさの増強方法」とあるのを、 「ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法」と訂正する。 コ 訂正事項10 願書に添付した明細書の段落【0001】に、「本発明は、ノンアルコール飲料および味の厚みと飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料および味の厚みと飲みやすさの増強方法に関する。」とあるのを、 「本発明は、ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法に関する。」と訂正する。 サ 訂正事項11 願書に添付した明細書の段落【0008】に、「本発明は、味の厚みと飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料および味の厚みと飲みやすさの増強方法」とあるのを、 「本発明は、ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法」と訂正する。 シ 訂正事項12 願書に添付した明細書の段落【0009】に、「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)水溶性食物繊維と、クエン酸と、を含有し、前記水溶性食物繊維の含有量は、0.75?3.00w/v%であり、前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.050?0.500であり、レモンチューハイテイスト飲料であることを特徴とするノンアルコール飲料。 (2)前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする前記(1)に記載のノンアルコール飲料。 (3)前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.050?0.350であることを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載のノンアルコール飲料。 (4)前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリンであることを特徴とする前記(1)乃至前記(3)のいずれか1つに記載のノンアルコール飲料。 (5)水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、レモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%含有し、前記水溶性食物繊維の含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)が、0.050?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させることを特徴とする味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (6)前記水溶性食物繊維の含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする前記(5)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (7)前記水溶性食物繊維の含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記水溶性食物繊維の含有量)は、0.050?0.350であることを特徴とする前記(5)または前記(6)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (8)前記水溶性食物繊維は、難消化性デキストリンであることを特徴とする前記(5)乃至前記(7)のいずれか1つに記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。」とあるのを、 「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1) (削除) (2) (削除) (3) (削除) (4) (削除) (5)難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させることを特徴とする味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (6)前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする前記(5)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (7)前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.300?0.350であることを特徴とする前記(5)または前記(6)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (8) (削除)」と訂正する。 ス 訂正事項13 願書に添付した明細書の段落【0010】の「本発明に係るノンアルコール飲料は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を含有することにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさを増強することができる。」を削除する。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1?4、8 訂正事項1?4、8は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1?4、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1?4、8が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。 イ 訂正事項5 訂正事項5のうち、訂正前の請求項5に「水溶性食物繊維」とあったものを、「難消化性デキストリン」と限定すること、及び、「前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように」と、数値の範囲を狭くすることは、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5のうち、「レモンチューハイテイスト飲料」について、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」とすることは、「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることを明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、水溶性植物繊維として、難消化性デキストリンについては、本件特許明細書の段落【0021】に、「水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びグアーガム分解物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、水溶性食物繊維としては、前記したもの以外にも、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナンなどを用いることができる。 その中でも、後記実施例に示されているように、難消化性デキストリンとポリデキストロースを好適に用いることができ、特に難消化性デキストリンを好適に用いることができる。商業上入手可能な難消化性デキストリンとしては、例えば、松谷化学工業株式会社製のファイバーソル、パインファイバー等があり、ポリデキストロースとしては、例えばダニスコジャパン株式会社製のライテス等がある。」と記載されている。 また、クエン酸の含有量/難消化性デキストリンの含有量が、0.300であることは、訂正前の本件特許明細書の段落【0058】の【表3】のNo.3-4の比率の欄に「0.300」と記載されている。 また、「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることは、本件特許明細書の段落【0016】に、「『チューハイテイスト飲料』とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。」と記載されている。 そうすると、訂正事項5は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項6 訂正事項6は、訂正前の請求項6に、「水溶性食物繊維」とあったのを、「難消化性デキストリン」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記イと同様に、訂正事項6は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項7 訂正事項7は、「水溶性食物繊維」を「難消化性デキストリン」に、「0.050?0.350」を「0.300?0.350」にそれぞれより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書に、水溶性食物繊維として、難消化性デキストリンについて記載されていること、及び「0.300」の数値が記載されていることは、上記イと同様である。 よって、訂正事項7は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項9?13 訂正事項9?13は、上記訂正事項1?8に係る訂正に伴い、特許請求の範囲と本件特許明細書との整合性を図るための訂正であり、訂正事項9?13に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記ア?エで述べたことと同様に、訂正事項9?13は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ なお、訂正前の請求項1?4は、請求項2?4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項5?8は、請求項6?8が、訂正の請求の対象である請求項5の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項[1?4]及び一群の請求項[5?8]について請求されている。 (3) 小括 上記のとおり、訂正事項1?4、6?8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 また、訂正事項9?13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、及び明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正後の請求項〔1?4〕、〔5?8〕について訂正することを認める。 3 本件発明 本件訂正による訂正後の請求項5?7に係る発明について、訂正特許請求の範囲には、以下のとおり記載されている。以下、訂正後の本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明5」などといい、総称して「本件発明」という。 【請求項5】 難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、 前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、 前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、 前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させることを特徴とする味の厚みと飲みやすさの増強方法。 【請求項6】 前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする請求項5に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 【請求項7】 前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.300?0.350であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1) 取消理由の概要 当審が平成31年2月7日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ア 本件発明は、「ノンアルコール飲料」が「レモンチューハイテイスト飲料」であるとするものであるが、「チューハイテイスト飲料」とは、どのようなものを具体的に特定しているのかが理解できないため、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 イ 本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」は、発明の詳細な説明に課題を解決できたものとして具体的に記載されていなく、また、本件発明が特定するクエン酸の含有量及び水溶性食物繊維の含有量の全ての範囲において、課題を解決できることも確認されていないので、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 ウ 本件発明の発明の詳細な説明の記載では、「レモンチューハイテイスト飲料」がどのようなものを特定しているのか明確でないので、本件発明に関してどのように実施するのか不明であり、当該所期の作用効果を奏する発明として実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされているとはいえないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載が不備のため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 エ 本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1又は2に記載された発明、及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 引用文献1:特開2002-330735号公報(申立人提出の甲第4号証) 引用文献2:特開平10-191944号公報(同じく甲第5号証) 引用文献3:特願2015-30052号の平成29年7月26日付け手続補足書(同じく甲第3号証) 引用文献4:特開2013-27363号公報(同じく甲第8号証:周知技術を示す文献) 引用文献5:川井信子、外2名、「市販果汁飲料中の酸味料について」 、食衛誌、1983年6月、Vol.24、No.3、p.333-339(同じく甲第9号証:周知技術を示す文献) (2) 当審の判断 ア 理由ア(第36条第6項第2号)について (ア) 本件訂正により、 本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」が「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものであることが特定された。そして、「チューハイ飲料」は、酎ハイが、一般に「焼酎を炭酸水で割った飲み物。」(広辞苑第六版)と広く認識されているものであるから、「レモンチューハイテイスト飲料」は、レモンの味のする焼酎を炭酸水で割ったものの味わいを奏するにように調製されたものであると理解できる。 そして、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製」することについて、本件特許明細書には、「詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」(【0016】)と記載されていることも参酌すると、当業者であれば、本件発明の「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」を具体的に想定できると認められる。 申立人は、「単なるレモン風味の炭酸飲料が『レモンチューハイテイスト飲料』に該当するのかについて、その境界線が明確でなければ、・・・第三者に不測の不利益を及ぼすことになる。」(令和元年5月29日意見書2ページ「3-1」の項。当審注:「・・・」は記載の省略を意味する。)と主張しているが、「単なるレモン風味の炭酸飲料」は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された」ものではないから、本件発明の「レモンチューハイテイスト飲料」に該当しない。 (イ) したがって、本件発明に係る特許請求の範囲の記載は不明確であるとすることはできず、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないものではない。 イ 理由イ(第36条第6項第1号)について (ア) 本件発明の課題・効果について、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。 「【0008】そこで、本発明は、ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法を提供することを課題とする。」(本件訂正後) 「【発明の効果】【0010】本発明に係る味の厚みと飲みやすさの増強方法は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさを増強することができる。」(本件訂正後) そうすると、本件発明の課題は、「ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法を提供すること」(以下「本件発明の課題」という。)であると認められる。 (イ) また、本件特許明細書には、味の厚みと飲みやすさ、ノンアルコール飲料について、以下の事項が記載されている。 「【0012】 以下、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに味の厚みと飲みやすさの増強方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。 なお、本願における『味の厚み』とは、詳細には、味覚種類が多く、飲料としての飲み応えがある様を示すものであり、『飲みやすさ』とは、詳細には、飲料を飲んだときに味の引っかかりがない様を示すものである。」 「【0013】 [ノンアルコール飲料] 本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、クエン酸とを含有する飲料である。 そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。」 (ウ) 一方、本件特許明細書には、実施例及びその評価について、以下の事項が記載されている。 「【0042】 次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに味の厚みと飲みやすさの増強方法について説明する。 【0043】 [サンプル] サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製:クエン酸(結晶))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.1-1?1-7、No.2-1?2-8、No.3-1?3-7)を製造した。 【0044】 また、サンプルとして、ポリデキストロース(ダニスコジャパン株式会社製:ライテス)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製:クエン酸(結晶))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.4-1、4-2)を製造した。 【0045】 なお、各サンプルは、蒸留水を加えて総量が350mlとなるように調製し、所定のガス圧(20℃:0.18MPa)となるように炭酸ガスを内包させた。そして、各サンプルのエタノール含有量は、いずれも0.005体積%未満であった。」 「表1 表2 表3 」 そして、これらの評価について、以下のとおり記載されている。 「【0060】 表2に示すNo.2-3?2-6に係るサンプル、表3に示すNo.3-3?3-7に係るサンプル、および、表4に示すNo.4-2に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていたので、味の厚み増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが合格との評価となった。また、これらのサンプルは、総合評価においても飲料として好適であるという評価となった。 ただし、これらのサンプルの中でも、No.2-3?2-5に係るサンプル、No.3-4?3-7に係るサンプル、No.4-2に係るサンプルは、クエン酸の比率が本発明の好ましい要件を満たしていたので、飲みやすさ増強効果について特に効果があるという評価となった。 さらに、その中でも、No.2-3?2-5に係るサンプル、No.3-4?3-5に係るサンプル、No.4-2に係るサンプルは、水溶性食物繊維の含有量が本発明の好ましい要件を満たしていたので、総合評価においても飲料として優秀であるという評価となった。 なお、No.2-4に係るサンプルとNo.4-2に係るサンプルとを比較すると、味の厚みおよび飲みやすさの点数にそれほど差異は生じなかったが、総合評価においてNo.2-4に係るサンプルの方が0.4も高かったため、本発明は、水溶性食物繊維の中でも難消化性デキストリンを含有したノンアルコール飲料に対して特に効果があることがわかった。 【0061】 これに対し、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1、2-2、2-7、2-8に係るサンプル、No.3-1、3-2に係るサンプル、および、No.4-1に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていなかったので、味の厚み増強効果または飲みやすさ増強効果の少なくとも一方の効果が得られなかった。これは、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1に係るサンプル、および、No.4-1に係るサンプルがクエン酸を含まなかったためであり、No.2-2、2-7、2-8に係るサンプル、および、No.3-1、3-2に係るサンプルのクエン酸の比率が本発明の規定する範囲外であったためである。 【0062】 以上説明したように、ノンアルコール飲料の水溶性食物繊維の含有量に対して、クエン酸の含有量の比率が所定の数値範囲に該当するようにクエン酸を添加することにより、味の厚みを増強できるとともに、飲みやすさについても増強でき、香味の優れた飲料を提供できることが確認された。」 (エ) 上記(ウ)の記載事項から、本件特許明細書には、種々のノンアルコール飲料のベースとなる、難消化性デキストリン、クエン酸、蒸留水、炭酸ガスからなる飲料について、ノンアルコール飲料の難消化性デキストリンの含有量に対して、クエン酸の含有量の比率が所定の数値範囲にあるものは、クエン酸を添加することにより、味の厚みを増強できるとともに、飲みやすさについても増強できることが確認されている。 このことから、難消化性デキストリンとクエン酸とが、所定の数値範囲で共存することで、本件発明の課題を解決できるものと理解でき、ベースとなる飲料に他の成分が追加されて味や香りに違いが生じたとしても、難消化性デキストリンとクエン酸の両者が所定の数値範囲で共存する限りにおいては、程度の違いがあるとしても、両者による味の厚み及び飲みやすさについての増強できる効果が奏し得ないというものでもない。 そうすると、本件発明の課題は、難消化性デキストリンとクエン酸とが、所定の数値範囲で共存する、本件発明の「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」においても解決し得るものと認められる。 (オ) また、本件発明において特定する、難消化性デキストリンの添加量、前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)の全ての範囲において、本件発明の課題を解決し得るかについては、以下のとおりである。 本件特許明細書の実施例において、No.2-5(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.333)、2-6(難消化性デキストリン:1.50w/v%、比率0.467)に係るサンプル、No.3-3(難消化性デキストリン:0.75w/v%、比率0.400)、3-4(難消化性デキストリン:1.00w/v%、比率0.300)に係るサンプルにおいて、味の厚みと、飲みやすさが増強できたことが確認されている(表2、3参照。)。 また、訂正後の本件発明の実施例ではなくなったものの、No.3-7(難消化性デキストリン:3.00w/v%、比率0.100)も、味の厚みと飲みやすさが増強されている(表3)。 そうすると、上記No.2-5、2-6より、難消化性デキストリンに対するクエン酸の比率が、おおよそ、0.300?0.500の範囲であれば、味の厚みと、飲みやすさが増強するという効果が確認されていると認められる。 また、上記No.3-3、3-7より、難消化性デキストリンの添加量が0.75w/v%及び3.00w/v%の場合において、クエン酸を添加することにより、味の厚みと、飲みやすさが増強するという効果が確認されていると認められる。 そうすると、本件発明は、その特定する数値範囲で、上記本件発明の課題を解決し得るものと認められる。 (カ) したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号の要件を満さないものではない。 ウ 理由ウ(第36条第4項第1号)について 上記アに述べたとおり、本件訂正により、本件発明は、明確なものとなった。したがって、本件発明に関して、どのように実施すればよいかも明確となったので、本件発明を実施することができる程度に発明の詳細な説明の記載が明確かつ十分にされていないとはいえず、特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないものではない。 エ 理由エ(第29条第2項)について (ア) 引用文献1を主引用例として a 刊行物 引用文献1(特開2002-330735号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】炭酸飲料中にDE6?30の澱粉分解物を0.5?5質量%添加することを特徴とする炭酸飲料の製造法。 【請求項2】炭酸飲料中にDE9?20の澱粉分解物を0.5?1.5質量%添加する請求項1に記載の炭酸飲料の製造法。 【請求項3】澱粉分解物が難消化性デキストリンである請求項1又は2に記載の炭酸飲料の製造法。」 「【産業上の利用分野】本発明は味質に優れた炭酸飲料の製造法に関する。」 「【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、刺激性、クリーミー性、コク味などの味質を改善した炭酸飲料を経済的に安価に製造できる方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の問題を解決すべく鋭意努力の結果、DE6?30の澱粉分解物を使用して問題点が解消されることを見出して、本発明を完成した。即ち、本発明は炭酸飲料中のDE6?30の澱粉分解物の添加量が0.3?5質量%である炭酸飲料の製造法である。 【0011】 【発明の作用】本発明でいう炭酸飲料とは、飲用適の水に、甘味料、フレーバリング等を含有させ、二酸化炭素を圧入して、圧力を0.2kg/cm^(2) 以上となした飲料を総称し、具体的にはコーラ、レモンライム、オレンジ、グレープ、サイダー、アップル、グレープフルーツ、ラムネ、レモン、クリームソーダ、プラム、チエリー、ジンジャエール、ガラナ、トニックウオータなどの飲料が例示される。 【0012】甘味料としては、砂糖、異性化糖、フラクトース、グルコースなどの通常の甘味料以外に、グリチルリチン、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロースなどの高甘味甘味料を例示できる。またフレーバリングとしては柑橘その他果実から抽出した香料、果汁または果実ビューレ、植物の種実、根茎、木皮、葉等またはこれらの抽出物、乳または乳製品、合成香料などが例示される。」 「【0024】 【実施例1】異性化糖65部(固形分80質量%)にクエン酸0.4部、サイダーフレーバ0.5部と松谷化学工業(株)製の澱粉分解物を0.5?30部又は和光純薬工業(株)製のサポニン1部を加え全量を100部し、混合して溶解後300メッシュの篩を通過させてシロップを製造した。澱粉分解物としては、「パインデックス#100」(商品名、DE3.8の澱粉分解物)、「パインデックス#1」(商品名、DE7.5の澱粉分解物)、「パインデックス#2」(商品名、DE11.8の澱粉分解物)、「TK-16」(商品名、DE16.0の澱粉分解物)、「パインデックス#3」(商品名、DE25.2の澱粉分解物) 、「パインデックス#6」(商品名、DE40.5の澱粉分解物)及び「ファイバーソル#2」(商品名、DE11.5の難消化性デキストリン)を用いた。 【0025】それぞれのシロップから20部を100ml用の透明ガラス瓶2本に注入し、4℃以下に冷却後、「SUNTORY SODA」(商品名、サントリー株式会社製の炭酸水)80部をゆっくり添加して、直ちに打栓し、充分に混合してから70℃の湯に10分間浸漬(品温約65℃)して加熱、殺菌後、流水中で冷却した。冷却後室温と冷蔵で放置した。別に、異性化糖、クエン酸、サイーダーフレーバと炭酸水からなる対照品の飲料も同様にして製造し、同じように放置した。」 「【0027】尚、表1において、「パインデックス#100」、「パインデックス#1」、「パインデクス#2」、「パインデックス#3」、「パインデックス#6」を「#100」、「#1」、「#2」、「#3」、「#6」と表記し、「ファイバーソル2」は「FS-2」と表記した。 【0028】評価方法 外観 ○:製造直後と全く変化なし。 ×:白濁などの現象がみられ、製造直後と異なる状態になる。 味質(刺激性、クリーミ感、コク味、切れ、雑味)を対照品と比較する ◎:対照品に比して極めて良好 ○:対照品に比べて良好 △:対照品とほぼ同じ ×:対照品より悪い」 「表1 」 なお、表1中、「FS-2」がファイバーソル2を示し(【0027】)、表中の量「1.0」は、ファイバーソル2を用いてシロップを作成し、その後20部を100mlの透明ガラス瓶に入れて炭酸水を80部添加して製造した飲料100部中のファイバーソル2の添加量を意味していると理解し得る。 また、「DE」がデキストロース当量を意味することは技術常識といえ、さらに、表1中のDEの数値が、明細書中に記載された「パインデックス#1」(商品名、DE7.5の澱粉分解物)、「パインデックス#2」(商品名、DE11.8の澱粉分解物)、「TK-16」(商品名、DE16.0の澱粉分解物)、及び「ファイバーソル#2」(商品名、DE11.5の難消化性デキストリン)」とは、若干異なっているものの、表1のDEの数値は、市販のものを購入した後、試験者が実測した数値を記載したものであると理解し得るから、特に矛盾するものではない。 よって、上記記載事項を総合し、実施例1の、難消化性デキストリンであるファイバーソルを用いた例に着目して整理すると、引用文献1には、次の飲料の調製方法についての発明(以下「引1発明」という。)が記載されていると認められる。 引1発明 「異性化糖65部(固形分80質量%)にクエン酸0.4部、サイダーフレーバ0.5部と松谷化学工業(株)製の澱粉分解物「ファイバーソル#2」(商品名、DE11.5の難消化性デキストリン)を加え全量を100部とし、混合して溶解後300メッシュの篩を通過させたシロップから20部を100ml用の透明ガラス瓶2本に注入し、4℃以下に冷却後、「SUNTORY SODA」(商品名、サントリー株式会社製の炭酸水)80部をゆっくり添加して、直ちに打栓し、充分に混合してから70℃の湯に10分間浸漬(品温約65℃)して加熱、殺菌後、流水中で冷却する、飲料(飲料100部中のファイバーソル#2は1.0部)の調製方法。」 b 本件発明5について (a) 対比 本件発明5と引1発明とを対比すると、引1発明の「松谷化学工業(株)製の澱粉分解物『ファイバーソル#2』(商品名、DE11.5の難消化性デキストリン)」は、本件発明5の「難消化性デキストリン」に相当する。 また、引1発明の「飲料」は、その組成からみて、本件発明5の「ノンアルコール飲料」に相当する。 さらに、引1発明は、「打栓」された「飲料」中に、「クエン酸0.4部」×20%=0.08部が含有され、「松谷化学工業(株)製の澱粉分解物『ファイバーソル#2』(商品名、DE11.5の難消化性デキストリン)」は1.0部が含有されている。 よって、引1発明のクエン酸の含有量/難消化性デキストリンの含有量は、0.08/1.0=0.08なので、引1発明が、該含有量のクエン酸を飲料に含有させていることと、本件発明5の「前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる」こととは、「クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる」限りで一致する。 また、引1発明の「100部中のファイバーソル#2は1.0部」とされることは、本件発明5の「前記難消化性デキストリンの含有量は、0.75?3.00w/v%含有」させることに相当する。 さらに、引1発明の「飲料の調製方法」と本件発明5の「味の厚みと飲みやすさの増強方法」とは、「飲料の調製方法」との点で共通する。 そうすると、本件発明5と引1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料についての方法であって、 前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、 クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる、飲料の調製方法。」 [相違点1] ノンアルコール飲料について、本件発明5は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」と特定されているのに対し、引1発明は、「サイダーフレーバー」を含むものである点。 [相違点2] クエン酸をノンアルコール飲料に含有させることについて、本件発明5は、「前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように」しているのに対して、引1発明のクエン酸の含有量/難消化性デキストリンの含有量の比率は、0.08である点。 [相違点3] 飲料の調製方法について、本件発明5は、「味の厚みと飲みやすさの増強」方法であるとされているのに対して、引1発明は、そのような特定はなされていない点。 (b) 判断 事案に鑑み、相違点2について、先ず検討する。 相違点2について 引1発明は、「刺激性、クリーミー性、コク味などの味質を改善した炭酸飲料を経済的に安価に製造できる方法を提供すること」(【0009】)をその解決すべき課題とし、「本発明者等は上記の問題を解決すべく鋭意努力の結果、DE6?30の澱粉分解物を使用して問題点が解消されることを見出して、本発明を完成した。即ち、本発明は炭酸飲料中のDE6?30の澱粉分解物の添加量が0.3?5質量%である炭酸飲料の製造法である。」(【0010】) との知見に基づいてなされたものである。 そして、澱粉分解物について、「これら澱粉分解物の中でも、炭酸飲料の切れを改善する効果としては、難消化性デキストリン(還元物も含む)が最適である。DEが6未満では、炭酸飲料の味質を改善する効果が弱かったり、貯蔵中に白濁などの現象がみられて外観が悪くなる。DEが30を越えると味質を改善する効果が弱く、特に炭酸による刺激を改善する効果がみられない。」(【0015】)とするものである。 そうすると、引1発明及び引用文献1において、DE(デキストロース当量)や澱粉分解物の添加量については着目するものの、クエン酸と難消化性デキストリンの両者に着目して、クエン酸と難消化性デキストリンとの比率を特定の範囲の「0.300?0.500」に調製することは、記載も示唆もなされていないと認められる。さらに、難消化性デキストリンの含有量に対するクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)について、本件発明5は、「0.300?0.500」であるのに対して、引1発明は「0.08」と、本件発明5と比較して、桁を違えて異なっているものである。 よって、引1発明において、飲料の味の厚みと飲みやすさの増強を目的として、飲料の味に大きく影響するクエン酸の比率をさらに高めて、「0.300?0.500」とすることの動機付けがあるとはいえない。 また、本件発明5は、上記相違点2に係る本件発明5の構成を採用したものにおいて、飲料の味の厚みと飲みやすさの増強効果を確認したというのであるから(本件特許明細書【0060】?【0062】)、これを当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。 以上のことより、引1発明において、上記相違点2に係る本件発明5の特定事項を採用することは、当業者であっても容易に想到し得たものではない。 したがって、本件発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、引1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 c 本件発明6、7について 本件発明6、7は、本件発明5を引用するものであり、上記相違点2に係る本件発明5の特定事項を具備しており、本件発明6、7と引1発明とは、少なくとも、上記相違点2と同様の点で相違するところ、前記bで述べたのと同様の理由によって、本件発明6、7は、引1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (イ) 引用文献2を主引用例として a 刊行物 引用文献2(特開平10-191944号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、チアミン化合物、難消化性デキストリン、糖アルコール及びステビオサイドを含有する低カロリー飲料。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はシェイプアップによる体脂肪減少に効果があり、ダイエット効果も奏する新規な飲料に関する。特に難消化性デキストリンを配合したことによる喉越しの違和感を糖アルコール及びステビオサイドの相乗効果により解消した口当たりのよい、コクのある低カロリー飲料に関する。」 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】この難消化性デキストリン、具体的には1.6?2.4キロカロリー/gの低カロリー・マルトデキストリンを清涼飲料水に配合すると上述のごとく優れたダイエット効果を奏するものの、飲料の風味が著しく損なわれる。すなわち飲んだとき口当たりが悪く、コクが失われる。」 「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸、キサンチン誘導体およびチアミン化合物を含む飲料に、難消化性デキストリンを添加したことによる味の低下を改善するため多数の甘味料、呈味物質、嬌味剤の添加を試みたところ糖アルコールとステビオサイドの併用が実に効果的に難消化性デキストリンによる風味の低下を防止することを知見した。」 「【0008】本発明の低カロリー飲料には、更に所望に応じて飲食品として許容される各種の担体及び/又は添加剤を添加配合することができる。・・・ そのような例としてはビタミン類(ビタミンA、ビタミンB_(2) 、ビタミンB_(6) 、パントテン酸、ニコチン酸、ビタミンC、ビタミンEなど)、甘味料、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸など)、着色剤、香料(バニリン、リナロール、天然香料など)、湿化防止剤、ファイバー、電解質、ミネラル、栄養素、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、湿潤剤、植物抽出物(例えば、茶抽出物、コーヒー抽出物、ココア抽出物など)、果汁(例えば、オレンジ、グレープ、アップル、ピーチ、パイナップル、ナシ、プラム、サクランボ、パパイヤ、トマト、メロン、イチゴ、ラズベリーなど)があげられる。 【0009】本発明の飲料は、例えばダイエット飲料、医薬品、カンヅメ飲料、ジュース、シロップなどを含めた飲料製造に通常用いられる方法で調合したり、製造したりすることができる。・・・また、本発明の飲料は、炭酸飲料の形態に調製してもよく、飲む直前にすぐに調製しうるに適した粉末形態のものであってもよい。」 「【0013】試験例1 〔表1〕に示した配合量で常法により処方(1)?(4)の飲料を調製した。」(当審注:原文の丸数字を括弧書きで表記した。) 「【表1】 」 〔表1〕の処方(4)に着目し、この飲料を調製する方法の観点から整理すれば、引用文献2には、次の発明(以下「引2発明」という。)が記載されていると認められる。 「マルチトール9.4g、難消化性デキストリン5.0g、ステビオサイド40mg、カフェイン0.015g、アルギニン0.35g、クエン酸0.42g、ジベンゾイルチアミン0.0004g、香料0.49g、及び残量として純水を配合して全量が350mlである飲料を調製する方法。」 b 本件発明5について (a) 対比 引2発明の「飲料」は、処方からみてアルコールを含まないから、本件発明5の「ノンアルコール飲料」に相当する。 引2発明の「全量が350mlである飲料」に「難消化性デキストリン5.0g」を配合していることは、難消化性デキストリンの含有割合が5.0g/350ml=1.4w/v%であるから、本件発明5の「ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有」することに相当する。 引2発明の「難消化性デキストリン5.0g」、「クエン酸0.42g」を配合してなることは、クエン酸の含有量/難消化性デキストリンの含有量の比率を計算すると、0.42/5.0=0.084となる。そうすると、引2発明の「クエン酸0.42g」と「難消化性デキストリン5.0g」とを含有させる態様は、本件発明5の「前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる」ことと、「前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる」限りで一致する。 引2発明の「飲料の調製方法」と本件発明5の「味の厚みと飲みやすさの増強方法」とは、「飲料の調製方法」との点で共通する。 そうすると、本件発明5と引2発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料についての方法であって、前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、 クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる、飲料の調製方法。 [相違点4] ノンアルコール飲料について、本件発明5は、「チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料」と特定されているのに対し、引2発明は、「香料」が含まれた「ノンアルコール飲料」である点。 [相違点5] 飲料の調製方法について、本件発明5は、「味の厚みと飲みやすさの増強」方法であるとされているのに対して、引2発明は、そのような特定はなされていない点。 [相違点6] クエン酸をノンアルコール飲料に含有させることについて、本件発明5は、「前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させる」のに対して、引2発明のクエン酸の含有量/難消化性デキストリンの含有量の比率は、0.084である点。 (b) 判断 事案に鑑み、先ず相違点6について検討する。 相違点6について 引2発明は、「・・・従来ダイエットに効果があるとして知られているグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸の少なくとも1種、キサンチン誘導体の少なくとも1種、チアミン化合物を含む飲料にさらに難消化性デキストリンを加え、しかも口当たりがよく、コクのある低カロリー飲料の出現が待たれていた。」(【0003】)をその解決すべき課題とし、「本発明者らは、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸、キサンチン誘導体およびチアミン化合物を含む飲料に、難消化性デキストリンを添加したことによる味の低下を改善するため多数の甘味料、呈味物質、嬌味剤の添加を試みたところ糖アルコールとステビオサイドの併用が実に効果的に難消化性デキストリンによる風味の低下を防止することを知見した。」(【0004】)との知見に基づいてなされたものである。 そうすると、引2発明及び引用文献2において、グルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸、キサンチン誘導体およびチアミン化合物を含む飲料に、難消化性デキストリンを添加すること、及び糖アルコールとステビオサイドの併用することに着目しているものの、クエン酸と難消化性デキストリンの両者に着目して、クエン酸と難消化性デキストリンとの比率を特定の範囲の「0.300?0.500」に調製することは、記載も示唆もなされていないと認められる。さらに、難消化性デキストリンの含有量に対するクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)について、本件発明5は、「0.300?0.500」であるのに対して、引2発明は「0.084」と、本件発明5と比較して、桁を違えて異なっているものである。 よって、引2発明において、飲料の味の厚みと飲みやすさの増強を目的として、飲料の味に大きく影響するクエン酸の比率をさらに高めて、「0.300?0.500」とすることの動機付けがあるとはいえない。 また、本件発明5は、上記相違点6に係る本件発明5の構成を採用したものにおいて、飲料の味の厚みと飲みやすさの増強効果を確認したというのであるから(本件特許明細書【0060】?【0062】)、これを当業者が適宜なし得る設計的事項ということもできない。 したがって、本件発明5は、他の相違点を検討するまでもなく、引2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 c 本件発明6、7について 本件発明6、7は、本件発明5を引用するものであり、上記相違点6に係る本件発明5の特定事項を具備しており、本件発明6、7と引2発明とは、少なくとも、上記相違点6と同様の点で相違するところ、前記bで述べたのと同様の理由によって、本件発明6、7は、引2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項1?8について、平成29年7月26日て提出された手続補正書による補正によって、請求項1?8に係る「ノンアルコール飲料」が「レモンチューハイテイスト飲料」と補正されたが、当該補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面のいずれにも記載されておらず、本件特許は、特許法第17条の2第3項に係る要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるから、特許法第113条第1号の規定に違反し、取り消されるべき旨を主張する。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。 「[ノンアルコール飲料] 本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、クエン酸とを含有する飲料である。 そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。」(【0013】) 「また、『チューハイテイスト飲料』とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。 なお、『チューハイ飲料』とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、焼酎等)に、果汁、炭酸水等を混ぜ合わることにより作られる飲料である。」(【0016】) 「また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを添加することもできる。なお、各種果汁は、例えば、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁、果汁エキス等、といった従来公知の形態で添加すればよい。」(【0030】) これらの記載を踏まえると、発明の詳細な説明において、ノンアルコール飲料としてチューハイテイスト飲料が想定されており、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを飲料に添加されるものが想定されていること、及びチューハイ飲料として、レモンチューハイ飲料が広く知られていることからすると、当該補正が「当初明細書等に記載した事項」との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、当該補正は、新規事項を追加する補正でない。 したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。 6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議 申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項5?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項5?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない 。 請求項1?4、8に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法に係り、特に、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法に関する。 【背景技術】 【0002】 食に対する消費者の健康志向の高まりに対応すべく、特定保健用食品をはじめとした、身体の生理学的機能等に良い影響を与える保健機能成分を含有する食品に関して、日々、研究がおこなわれている。 当然、飲料に関しても例外ではなく、様々な保健機能成分を含有する飲料について、研究開発が進められている。 【0003】 例えば、特許文献1には、高甘味度甘味料と食物繊維とを含有する飲料が提案されている。詳細には、特許文献1に係る技術は、飲料のカロリーを低く抑える目的で、砂糖等の糖類の代わりに高甘味度甘味料を使用しており、当該高甘味度甘味料が引き起こすコク味の低下を防止するために、飲料に食物繊維を含有させている。 【0004】 また、特許文献2には、難消化性デキストリンとコラーゲンとを含有する飲料が提案されている。詳細には、特許文献2に係る技術は、飲料に美容への効果を付与する目的で、コラーゲンを含有させており、当該コラーゲンが引き起こす不快な臭い・味の発生を抑制するために、飲料に難消化性デキストリンを含有させている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開2004-41118号公報 【特許文献2】特開2012-19764号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1および特許文献2に係る技術は、高甘味度甘味料またはコラーゲンがもたらす飲料への悪影響に着目した技術であるため、水溶性食物繊維自体が飲料にもたらす香味上の好ましくない影響については、何ら検討されていない。特に、ノンアルコール飲料と水溶性食物繊維との組み合わせに基づく香味上の影響については、当然、検討されていない。 【0007】 本発明者らは、ノンアルコール飲料において水溶性食物繊維がもたらす香味上の影響を鋭意研究した結果、これまでに認知されていなかった課題を見出した。 詳細には、本発明者らは、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料は、水溶性食物繊維特有の平板な香味により、飲み難い飲料となってしまうという課題を見出した。 【0008】 そこで、本発明は、ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)(削除) (2)(削除) (3)(削除) (4)(削除) (5)難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させることを特徴とする味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (6)前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする前記(5)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (7)前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.300?0.350であることを特徴とする前記(5)または前記(6)に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 (8)(削除) 【発明の効果】 【0010】 本発明に係る味の厚みと飲みやすさの増強方法は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさを増強することができる。 【図面の簡単な説明】 【0011】 【図1】本発明の実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法の内容を説明するフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0012】 以下、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに味の厚みと飲みやすさの増強方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。 なお、本願における「味の厚み」とは、詳細には、味覚種類が多く、飲料としての飲み応えがある様を示すものであり、「飲みやすさ」とは、詳細には、飲料を飲んだときに味の引っかかりがない様を示すものである。 【0013】 [ノンアルコール飲料] 本実施形態に係るノンアルコール飲料とは、水溶性食物繊維と、クエン酸とを含有する飲料である。 そして、ノンアルコール飲料とは、エタノール含有量が1.00体積%未満の飲料であり、炭酸飲料、果汁または野菜汁入り飲料、健康飲料といったものから、ビールテイスト飲料、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、梅酒テイスト飲料まで、様々な飲料が含まれる。 【0014】 ただし、ノンアルコール飲料の中でも、後記するクエン酸の含有量の比率を考慮すると、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、または、梅酒テイスト飲料であるのが好ましい。 【0015】 ここで、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様(風)飲料とも称され、ビール飲料のような味わいを奏する、つまり、ビール飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する麦汁、甘味料、香料、苦味料等を添加することにより、ビール飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。 なお、「ビール飲料」とは、一般的には、麦芽、ホップおよび水を発酵させることにより作られる飲料である。 【0016】 また、「チューハイテイスト飲料」とは、チューハイ様(風)飲料とも称され、チューハイ飲料のような味わいを奏する、つまり、チューハイ飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。 なお、「チューハイ飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、焼酎等)に、果汁、炭酸水等を混ぜ合わることにより作られる飲料である。 【0017】 また、「カクテルテイスト飲料」とは、カクテル様(風)飲料とも称され、カクテル飲料のような味わいを奏する、つまり、カクテル飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁、果汁フレーバー、甘味料、香料、酸味料等を添加することにより、カクテル飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。 なお、「カクテル飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、各種蒸留酒やリキュール等)に、果汁、果実、香辛料、甘味料、炭酸水等を混ぜ合わせることにより作られる飲料である。 【0018】 また、「梅酒テイスト飲料」とは、梅酒様(風)飲料とも称され、梅酒飲料のような味わいを奏する、つまり、梅酒飲料を飲用したような感覚を飲用者に与えるノンアルコール飲料である。詳細には、エタノール含有量を所定値未満に抑えつつ、後記する果汁(梅果汁)、甘味料、香料、苦味料等を添加することにより、梅酒飲料の味わいを奏するように調製された飲料である。 なお、「梅酒飲料」とは、一般的には、アルコール飲料(例えば、各種蒸留酒等)に、梅と甘味料等とを一緒に漬け込むことにより作られる飲料である。 【0019】 なお、ノンアルコール飲料において、エタノール含有量が少なくなればなるほど、味に厚みがなく、飲み難いという課題が明確に現れることとなる。 よって、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、エタノール含有量が0.100体積%未満のもの、特に、0.005体積%未満のものに適用するのが好ましく、顕著な効果(味の厚みと飲みやすさの増強)を発揮することとなる。 【0020】 (水溶性食物繊維) 水溶性食物繊維とは、人間の消化酵素では消化されない食品中の多糖類を主体とした高分子成分の総体のうち水溶性のものをいう(綾野、ジャパンフードサイエンス、12、27?37頁(1988))。 そして、水溶性食物繊維は、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用が認められている。 【0021】 水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース及びグアーガム分解物などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、水溶性食物繊維としては、前記したもの以外にも、例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナンなどを用いることができる。 その中でも、後記実施例に示されているように、難消化性デキストリンとポリデキストロースを好適に用いることができ、特に難消化性デキストリンを好適に用いることができる。商業上入手可能な難消化性デキストリンとしては、例えば、松谷化学工業株式会社製のファイバーソル、パインファイバー等があり、ポリデキストロースとしては、例えばダニスコジャパン株式会社製のライテス等がある。 【0022】 難消化性デキストリンは、澱粉の加水分解・熱分解により生成され、各種アミラーゼ、特にヒトの消化酵素によっても分解されない成分を有するものである。 ポリデキストロースは、トウモロコシから作られた水溶性食物繊維であり、ブドウ糖、ソルビトールを混ぜ合わせ、クエン酸を加えることにより生成することができる。 なお、グアーガム分解物は、グアー豆を酵素で分解することにより生成することができる。 【0023】 水溶性食物繊維の含有量が0.75w/v%未満では、前記した有用な作用を十分に発揮できないとともに、前記した増強効果を十分に発揮できない。一方、水溶性食物繊維の含有量が3.00w/v%を超えると、前記した作用が飽和するとともに、摂取した人のおなかをゆるくさせてしまう可能性がある。 したがって、水溶性食物繊維の含有量は、0.75?3.00w/v%である。 【0024】 なお、前記した作用や増強効果の発揮を確実なものとするためには、水溶性食物繊維の含有量は、1.00w/v%以上であることが好ましく、1.20w/v%以上であることが特に好ましく、飲料としてより好適なものとするためには、2.00w/v%未満であることが好ましい。 【0025】 (クエン酸) クエン酸とは、柑橘類の果実などに含まれる有機化合物であって、ヒドロキシ酸の一種である。そして、クエン酸は、水溶性食物繊維の香味との相乗効果により、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強することができる。さらに、クエン酸は、水溶性食物繊維を含有するノンアルコール飲料の評価(香味)を良好なものとすることができる。 なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料のクエン酸とは、飲料に含まれる全てのクエン酸を示しており、例えば、飲料に果汁が含まれる場合、当該果汁由来のクエン酸も含むものである。 【0026】 クエン酸の含有量の比率(クエン酸の含有量(w/v%)/水溶性食物繊維の含有量(w/v%))が0.050未満では、味の厚みと飲みやすさの増強効果を得られない。一方、クエン酸の含有量の比率が0.500を超えると、飲みやすさの増強効果が得られず、逆に飲み難くなってしまう。 したがって、クエン酸の含有量の比率は、0.050?0.500である。 【0027】 なお、前記した味の厚みの増強効果を確保しつつ、飲みやすさの増強効果を確実なものとするためには、0.350以下であることが好ましい。 【0028】 本実施形態において、水溶性食物繊維の含有量、および、クエン酸の含有量の比率とは、ノンアルコール飲料の製造直後の値である。 なお、ノンアルコール飲料中の水溶性食物繊維、クエン酸の含有量や比率については、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の公知の分析装置により分析することで算出することができる。 【0029】 (その他) また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される着色料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類など(以下、これらを単に添加剤ということがある。)を添加することもできる。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素などを用いることができる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。また、苦味料としては、例えば、イソ-α酸、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどを用いることができ、塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどを用いることができる。 【0030】 また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、レモンや梅といった各種果汁や各種果汁フレーバーを添加することもできる。なお、各種果汁は、例えば、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁、果汁エキス等、といった従来公知の形態で添加すればよい。 【0031】 また、本実施形態に係るノンアルコール飲料においては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で、麦汁を添加することもできる。そして、麦汁は、各種麦芽または各種麦芽エキスを水と混合することにより調製すればよい。また、麦芽以外の原料として、大麦及び/又は小麦等(例えば、大麦、小麦、豆類、米類、いも類、とうもろこし及びその他の穀物からなる群より選択される1種以上)を使用することもできる。 【0032】 本実施形態に係るノンアルコール飲料は、非発泡性であってもよいし、発泡性であってもよい。ここで、本実施形態における非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm^(2))未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm^(2))以上であることをいう。なお、発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.235MPa(2.4kg/cm^(2))程度とするのが好ましい。これよりもガス圧が高くなると炭酸の刺激が強くなり過ぎてしまうので好ましくない。 【0033】 なお、前記した水溶性食物繊維、クエン酸、添加剤等については、公知の製造方法により製造したものを用いてもよいし、一般に市販されているものを用いてもよい。 【0034】 以上説明したように、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、飲料中に含まれる水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を含有することにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさを増強することができる。 なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、水溶性食物繊維を所定量含有することにより、食物繊維の摂取不足を補うことが可能な飲料として好適なものとなり、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を十分に発揮することができる。 つまり、本実施形態に係るノンアルコール飲料は、前記の有用な作用を十分に発揮しながら、味の厚みと飲みやすさを増強することができる。 【0035】 [ノンアルコール飲料の製造方法] 次に、ノンアルコール飲料の製造方法の実施形態について説明する。 本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維と、クエン酸と、を添加する添加工程を含むことを特徴とする製造方法である。そして、添加工程では、水溶性食物繊維の含有量が0.75?3.00w/v%(好ましくは1.00w/v%以上2.00w/v%未満)となるように水溶性食物繊維を添加するとともに、クエン酸の含有量の比率(クエン酸の含有量/水溶性食物繊維の含有量)が0.050?0.500(好ましくは0.050?0.350)となるようにクエン酸を添加する。 【0036】 この添加工程は、ノンアルコール飲料の製造工程中のいずれかの段階で行えばよい。例えば、ノンアルコール飲料の原料を混合する混合タンクに添加することができる。当該混合タンクには、水溶性食物繊維・クエン酸の添加前、添加と同時及び添加後のいずれかのタイミングで、所定量の水、果汁、着色料、酸味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類などを添加することができる。これらの添加の有無及び添加量は、ニーズ等に合わせて任意に設定することができる。 【0037】 図1を参照して本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法について説明する。 本製造方法は、水、果汁、着色料、酸味料、甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、苦味料、塩類などが投入された混合タンクに、水溶性食物繊維と、クエン酸とを前記した含有量および比率となるように添加する添加工程S1と、添加工程S1において各成分が混合した混合液をろ過するろ過工程S2と、ろ過工程S2でろ過したろ過液を殺菌する殺菌工程S3と、殺菌工程S3で殺菌した殺菌済みのろ過液をビンや缶、ペットボトルなどの容器に充填する充填工程S4と、充填工程S4で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する殺菌工程S5と、を含む。 なお、添加工程S1は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機などにより撹拌しながら混合するのが好ましい。また、ろ過工程S2は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。殺菌工程S3は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。充填工程S4は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。殺菌工程S5は、所定の温度および所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。なお、殺菌工程S3および殺菌工程S5を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。 また、発泡性のノンアルコール飲料とする場合は、例えば、殺菌工程S3と充填工程S4の間でカーボネーションを行うとよい。 【0038】 以上説明したように、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を添加する添加工程を含むことにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料を製造することができる。 なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、水溶性食物繊維を所定量添加することにより、食物繊維の摂取不足を補うことが可能な飲料として好適であるとともに、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を十分に発揮することができるノンアルコール飲料を製造することができる。 つまり、本実施形態に係るノンアルコール飲料の製造方法は、前記の有用な作用を十分に発揮しながら、味の厚みと飲みやすさが増強されたノンアルコール飲料を製造することができる。 【0039】 [味の厚みと飲みやすさの増強方法] 次に、味の厚みと飲みやすさの増強方法の実施形態について説明する。 本実施形態に係る味の厚みと飲みやすさの増強方法は、水溶性食物繊維を0.75?3.00w/v%(好ましくは1.00w/v%以上2.00w/v%未満)含有するノンアルコール飲料に、クエン酸の含有量の比率(クエン酸の含有量/水溶性食物繊維の含有量)が0.050?0.500(好ましくは0.050?0.350)となるようにクエン酸を含有させることを特徴とする方法である。 【0040】 以上説明したように、本実施形態に係る味の厚みと飲みやすさの増強方法は、水溶性食物繊維を含有することにより、整腸作用や血糖値上昇抑制作用といった有用な作用を発揮する飲料に、当該水溶性食物繊維に対して所定の比率でクエン酸を含有させることにより、水溶性食物繊維の香味とクエン酸の香味との相乗効果で、味の厚みと飲みやすさを増強させることができる。 【0041】 なお、本実施形態に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに味の厚みと飲みやすさの増強方法において、明示していない特性や条件については、従来公知のものであればよく、前記特性や条件によって得られる効果を奏する限りにおいて、限定されないことは言うまでもない。 【実施例】 【0042】 次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明に係るノンアルコール飲料およびその製造方法、ならびに味の厚みと飲みやすさの増強方法について説明する。 【0043】 [サンプル] サンプルとして、難消化性デキストリン(松谷化学工業株式会社製:パインファイバー)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製:クエン酸(結晶))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.1-1?1-7、No.2-1?2-8、No.3-1?3-7)を製造した。 【0044】 また、サンプルとして、ポリデキストロース(ダニスコジャパン株式会社製:ライテス)、クエン酸(和光純薬工業株式会社製:クエン酸(結晶))を所定量含有させたノンアルコール飲料(No.4-1、4-2)を製造した。 【0045】 なお、各サンプルは、蒸留水を加えて総量が350mlとなるように調製し、所定のガス圧(20℃:0.18MPa)となるように炭酸ガスを内包させた。そして、各サンプルのエタノール含有量は、いずれも0.005体積%未満であった。 【0046】 [味の厚み増強効果の評価] 製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-8、No.3-1?3-7、No.4-1、4-2に係るサンプルの味の厚みについて、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 【0047】 (味の厚み) 4点:非常に好ましい味の厚みがある。 3点:かなり好ましい味の厚みがある。 2点:味の厚みがある。 1点:ほとんど味の厚みがない。 0点:全く味の厚みがない。 【0048】 そして、味の厚み増強効果は、同量の水溶性食物繊維を含有するサンプルであるとともに、クエン酸を含有させていないサンプル(基準サンプル)の味の厚みの点数(平均値)と比較して、どれだけ味の厚みの点数(平均値)が高くなったかを、「評価対象となるサンプルの味の厚みの点数(平均値)」-「基準サンプルの味の厚みの点数(平均値)」により算出した。 味の厚み増強効果が0.3以上のものを効果がある(合格)と判断し、0.5以上のものを特に効果がある(合格)と判断した。 【0049】 [飲みやすさ増強効果の評価] 製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-8、No.3-1?3-7、No.4-1、4-2に係るサンプルの飲みやすさについて、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 【0050】 (飲みやすさ) 4点:非常に飲みやすい。 3点:かなり飲みやすい。 2点:飲みやすい。 1点:若干、飲み難い。 0点:飲み難い。 【0051】 そして、飲みやすさ増強効果は、同量の水溶性食物繊維を含有するサンプルであるとともに、クエン酸を含有させていないサンプル(基準サンプル)の飲みやすさの点数(平均値)と比較して、どれだけ飲みやすさの点数(平均値)が高くなったかを、「評価対象となるサンプルの飲みやすさの点数(平均値)」-「基準サンプルの飲みやすさの点数(平均値)」により算出した。 飲みやすさ増強効果が0.1以上のものを効果がある(合格)と判断し、0.5以上のものを特に効果がある(合格)と判断した。 【0052】 [総合評価] 製造したNo.1-1?1-7、No.2-1?2-8、No.3-1?3-7、No.4-1、4-2に係るサンプルの総合評価(官能検査)を行った。官能検査項目としては、ノンアルコール飲料としての評価について、よく訓練された専門のパネル5名が下記評価基準に則って0?4点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。 【0053】 (官能検査) 4点:ノンアルコール飲料として非常に好ましい香味である。 3点:ノンアルコール飲料としてかなり好ましい香味である。 2点:ノンアルコール飲料として好ましい香味である。 1点:ノンアルコール飲料として許容できる香味である。 0点:ノンアルコール飲料として不適な香味である。 【0054】 総合評価が1.0以上のものを飲料として好適である(合格)と判断し、2.0以上のものを飲料として優秀である(合格)と判断した。 【0055】 表1にNo.1-1?1-7に係るサンプル、表2にNo.2-1?2-8に係るサンプル、表3にNo.3-1?3-7に係るサンプル、表4にNo.4-1、4-2に係るサンプルについて、水溶性食物繊維の含有量、クエン酸の含有量、比率、味の厚み、味の厚み増強効果、飲みやすさ、飲みやすさ増強効果、総合評価を示す。 なお、表中の「比率」とは「クエン酸の含有量(w/v%)/水溶性食物繊維の含有量(w/v%)」のことである。また、表中の「比率」は、小数点第4位を四捨五入している。そして、表中の評価項目の点数については、小数点第2位を四捨五入している。 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 【0058】 【表3】 【0059】 【表4】 【0060】 表2に示すNo.2-3?2-6に係るサンプル、表3に示すNo.3-3?3-7に係るサンプル、および、表4に示すNo.4-2に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていたので、味の厚み増強効果、飲みやすさ増強効果、のいずれもが合格との評価となった。また、これらのサンプルは、総合評価においても飲料として好適であるという評価となった。 ただし、これらのサンプルの中でも、No.2-3?2-5に係るサンプル、No.3-4?3-7に係るサンプル、No.4-2に係るサンプルは、クエン酸の比率が本発明の好ましい要件を満たしていたので、飲みやすさ増強効果について特に効果があるという評価となった。 さらに、その中でも、No.2-3?2-5に係るサンプル、No.3-4?3-5に係るサンプル、No.4-2に係るサンプルは、水溶性食物繊維の含有量が本発明の好ましい要件を満たしていたので、総合評価においても飲料として優秀であるという評価となった。 なお、No.2-4に係るサンプルとNo.4-2に係るサンプルとを比較すると、味の厚みおよび飲みやすさの点数にそれほど差異は生じなかったが、総合評価においてNo.2-4に係るサンプルの方が0.4も高かったため、本発明は、水溶性食物繊維の中でも難消化性デキストリンを含有したノンアルコール飲料に対して特に効果があることがわかった。 【0061】 これに対し、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1、2-2、2-7、2-8に係るサンプル、No.3-1、3-2に係るサンプル、および、No.4-1に係るサンプルは、本発明の要件を満たしていなかったので、味の厚み増強効果または飲みやすさ増強効果の少なくとも一方の効果が得られなかった。これは、No.1-1?1-7に係るサンプル、No.2-1に係るサンプル、および、No.4-1に係るサンプルがクエン酸を含まなかったためであり、No.2-2、2-7、2-8に係るサンプル、および、No.3-1、3-2に係るサンプルのクエン酸の比率が本発明の規定する範囲外であったためである。 【0062】 以上説明したように、ノンアルコール飲料の水溶性食物繊維の含有量に対して、クエン酸の含有量の比率が所定の数値範囲に該当するようにクエン酸を添加することにより、味の厚みを増強できるとともに、飲みやすさについても増強でき、香味の優れた飲料を提供できることが確認された。 【符号の説明】 【0063】 S1 添加工程 S2 ろ過工程 S3 殺菌工程 S4 充填工程 S5 殺菌工程 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】(削除) 【請求項5】 難消化性デキストリンを含有するノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさを増強する方法であって、 前記ノンアルコール飲料は、チューハイ飲料の味わいを奏するように調製されたレモンチューハイテイスト飲料であり、 前記ノンアルコール飲料は前記難消化性デキストリンを0.75?3.00w/v%含有し、 前記難消化性デキストリンの含有量に対してクエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)が、0.300?0.500となるように前記クエン酸を前記ノンアルコール飲料に含有させることを特徴とする味の厚みと飲みやすさの増強方法。 【請求項6】 前記難消化性デキストリンの含有量は、1.00w/v%以上2.00w/v%未満であることを特徴とする請求項5に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 【請求項7】 前記難消化性デキストリンの含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率(前記クエン酸の含有量/前記難消化性デキストリンの含有量)は、0.300?0.350であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の味の厚みと飲みやすさの増強方法。 【請求項8】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-08-06 |
出願番号 | 特願2015-30052(P2015-30052) |
審決分類 |
P
1
651・
55-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L) P 1 651・ 537- YAA (A23L) P 1 651・ 121- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松岡 徹、名和 大輔 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
紀本 孝 山崎 勝司 |
登録日 | 2017-11-17 |
登録番号 | 特許第6243863号(P6243863) |
権利者 | サッポロビール株式会社 |
発明の名称 | ノンアルコール飲料の味の厚みと飲みやすさの増強方法 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 多田 悦夫 |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |
代理人 | 多田 悦夫 |