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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部無効 2項進歩性  H01M
管理番号 1356293
審判番号 無効2018-800005  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2019-09-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5359442号発明「ナトリウムイオン電池」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5359442号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?請求項5について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5359442号(以下「本件特許」という。)は、平成21年 3月25日に出願(特願2009-73714号)されたものであって、その請求項1?5に係る発明について、平成25年 9月13日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、ファラディオン リミテッドから平成30年 1月24日付けで請求項1?5に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたものであるところ、審判請求以降の手続は、おおむね次のとおりである。

平成30年 4月19日付け 審判事件答弁書(被請求人)
同年 5月30日付け 審理事項通知書(1回目)
同年 7月23日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 8月30日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 9月 7日付け 審理事項通知書(2回目)
同年 9月26日付け 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
同年 9月27日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
同年10月 4日 口頭審理(平成30年10月 4日付け
第1回口頭審理調書)
同年10月25日付け 審決の予告
同年12月 4日 訂正請求書、上申書(被請求人)
平成31年 2月21日付け 審判事件弁駁書(請求人)
同年 3月13日付け 審理終結通知書
同年 3月20日付け 補正許否の決定

第2 訂正請求について
1 請求の趣旨・本件訂正の内容
被請求人が平成30年12月 4日に提出した訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第5359442号の特許請求の範囲を、平成30年12月 4日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について訂正することを求めるというものである。
ここで、本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正された箇所を表す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ナトリウムイオン電池。」とあるのを、
「ナトリウムイオン電池(ただし、負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く)。」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3?5も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「正極活物質が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム無機化合物である請求項1記載の電池。」とあるのを、
「正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池であって、正極活物質が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム無機化合物であり、前記負極活物質は、前記炭素材料のみからなるナトリウムイオン電池。」に訂正する。
請求項2を引用する請求項3?5も同様に訂正する。

2 当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、先行技術文献に記載されている事項のみを除く訂正であって、いわゆる「除くクレーム」とする訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、「除くクレーム」とする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合し、新たな技術的事項が付加される訂正でもないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は以下の訂正(a)、訂正(b)を含む。
訂正(a)
訂正前の請求項2が請求項1を引用する記載であるところ、請求項1の記載を引用しないものとして、請求項間の引用関係を解消して、独立請求項とする。
訂正(a)は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。

訂正(b)
「前記負極活物質は、前記炭素材料のみからなる」との事項を追加する。
訂正(b)は、訂正前に「負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、・・・を有し」(「・・・」は省略を表す。)と、負極が、負極活物質として、炭素材料以外のものも有することを許容していたのを、訂正後に「負極活物質は、前記炭素材料のみからなる」として、負極活物質を限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 特許請求の範囲の拡張、変更について
上記アのとおり、訂正(a)は、引用関係を解消する訂正であり、訂正(b)は、特許請求の範囲の減縮であるから、訂正事項2は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

新規事項の追加の有無について
明細書の【0054】には、以下の記載がある。下線は当審が付与した。以下同様。
「【0054】
実施例1(ナトリウムイオン電池の製造)
(1)負極の製造
負極活物質として、非晶質炭素材料である市販の炭素材料(ICB0510、日本カーボン社製)を用いて、負極活物質と結合剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、負極活物質:結合剤=95:5(重量比)の組成となるように秤量し、結合剤をNMPに溶解した後、これに負極活物質を加えて均一になるように分散混錬し、負極合剤のペーストを得た。該ペーストを、負極集電体である厚さ40μmのアルミニウム箔上に、アプリケータを用いて100μmの厚さで塗布し、乾燥、ロールプレスを行って負極シート1を得た。この負極シート1を電極打ち抜き機で直径1.5cmに打ち抜いて負極1を得た。」

よって、明細書には、負極活物質が炭素材料のみからなることが記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。

(3)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項1?5について特許無効審判の請求がされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1、及び訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)一群の請求項と訂正単位について
本件訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?5は特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正前の請求項1?5に対応する本件訂正後の請求項1?5は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
なお、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3?5について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているが、以下の理由により、訂正後の請求項2?5を他の請求項と別の訂正単位とすることはできない。
すなわち、訂正後の請求項1と、訂正後の請求項1を引用する請求項3?5(〔1、3?5〕と呼ぶ。)と、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3?5(〔2、3?5〕と呼ぶ。)は、共通する請求項3?5を有するから、〔1、3?5〕と、〔2、3?5〕は組み合わされて、請求項1?5が1つの一群の請求項であって、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?5〕を訂正単位として訂正の請求をすべきものであるからである。

3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第3項の規定、同条第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池(ただし、負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く)。
【請求項2】
正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池であって、
正極活物質が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム無機化合物であり、
前記負極活物質は、前記炭素材料のみからなるナトリウムイオン電池。
【請求項3】
ナトリウムイオン非水電解質が、液体状である請求項1または2記載の電池。
【請求項4】
セパレータを備える請求項3記載の電池。
【請求項5】
セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムを有するセパレータである請求項4記載の電池。」

第4 当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、「特許第5359442号の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、審判請求書とともに甲第1号証?甲第6号証を提出し、平成30年 7月23日付け口頭審理陳述要領書とともに甲第7号証?甲第14号証を提出し、さらに平成30年 9月27日付け口頭審理陳述要領書(2)を提出し、平成31年 2月21日付け審判事件弁駁書を提出している。
そして、上記提出した書面及び口頭審理調書によれば、請求人は、以下の無効理由を主張するものである。

(1)本件特許の請求項1と請求項1を引用する請求項3、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)本件特許の請求項1と請求項1を引用する請求項3?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(3)また、本件特許の請求項2と請求項2を引用する請求項3?5に係る発明は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

[請求人の証拠方法]
甲第1号証:米国特許出願公開2008/0026289号公報
甲第2号証:Ricardo A.et al. 「Carbon black:a promising electrode material for sodium-ion batteries」 electrochemistry communications (2001) 3巻 p.639-642
甲第3号証:特表2004-533706号公報
甲第4号証:特開平4-181651号公報
甲第5号証:特開2000-30686号公報
甲第6号証:特開2005-26203号公報
甲第7号証:特開2008-277001号公報
甲第8号証:特開2008-269890号公報
甲第9号証:特開2006-32062号公報
甲第10号証:特開2001-223021号公報
甲第11号証:特開2008-186595号公報
甲第12号証:特表2004-533706号公報
甲第13号証:米国特許出願公開2007/0009800号公報
甲第14号証:中国特許出願公開第101154745号公報
以下、それぞれ「甲1」?「甲14」という。
なお、甲7?甲14は、周知技術を示す文献として提出された。

また、請求人による平成31年 2月21日付けの審判事件弁駁書の第3頁第23行?第11頁第23行において主張された、(a)甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如、(b)甲第12号証を主引用例とする新規性進歩性欠如、(c)甲第13号証を主引用例とする新規性進歩性欠如の新たな理由のうち、上記(a)の理由は採用して上記理由(2)として検討するが、上記(b)、(c)の理由は、審判請求書に当初記載されていた無効理由に新たな理由を追加する補正にあたり、審判請求書の要旨を変更するものであるから、この補正は許可しない。この点についての補正許否の決定は、平成31年 3月20日付でなされている。

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めて、審判事件答弁書とともに、乙第1号証?乙第13号証を提出し、平成30年 8月30日付け口頭審理陳述要領書を提出し、さらに平成30年 9月26日付け口頭審理陳述要領書(2)とともに乙第14号証を提出し、平成30年12月 4日付け訂正請求書及び上申書を提出している。
そして、上記提出した書面及び口頭審理調書によれば、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件発明を無効とすることはできないと主張している。

[被請求人の証拠方法]
乙第1号証:特開2007-234512号公報
乙第2号証:特開2008-153122号公報
乙第3号証:特開2008-260666号公報
乙第4号証:特開2010-260761号公報
乙第5号証:特開2012-99245号公報
乙第6号証:特表2015-515719号公報
乙第7号証:特表2015-525730号公報
乙第8号証:特表2016-511730号公報
乙第9号証:特表2015-536890号公報
乙第10号証:特表2017-508697号公報
乙第11号証:特表2017-521815号公報
乙第12号証:特表2017-531300号公報
乙第13号証:特表2017-521342号公報
乙第14号証:金村聖志編集「リチウム二次電池の技術展開」普及版第1刷、株式会社シーエムシー出版発行、2007年 2月22日、第59頁?第86頁
以下、それぞれ「乙1」?「乙14」という。

3 甲号証の記載事項
(1) 甲第1号証(米国特許出願公開2008/0026289号公報) 甲1には、「Non-aqueous electrolyte secondary battery」(発明の名称)(当審訳:非水電解質二次電池)に関して、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審が付与した。「・・・」は省略を表す。以下同様。)

「What is claimed is:
・・・
3 . A non-aqueous electrolyte secondary battery comprising:
a positive electrode;
a non-aqueous electrolyte containing sodium ions; and
a negative electrode having a negative electrode active material layer, the negative electrode active material layer containing germanium having a particle size of 16 μm or less as its main active material.」

当審訳:
「請求項3
正極と、
ナトリウムイオンを含む非水電解質と、
負極活物質層を有する負極と、を備え、
前記負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含むことを特徴とする非水電解質二次電池。」

「[0011]It should be noted that the term “main active material” herein is intended to mean an active material that accounts for greater than 50 mass % of the electrode active material. 」

当審訳:
「[0011]ここで、主成分活物質とは、電極活物質のうち、50質量%を超える量であることを意味する。」

「[0033] In the non-aqueous electrolyte secondary battery of the present invention, the negative electrode comprises a negative electrode active material layer containing germanium as its main active material. The germanium which is the main active material may be in the form of elemental germanium or a germanium alloy.
[0034] Other materials that can be used with the germanium main active material in the negative electrode active material layer are materials that can occlude and release sodium ion and include, for example, a carbon material such as hard carbon, tin, bismuth, sodium and the like.
[0035] As the metal current collector of the negative electrode, a material which does not form an alloy with sodium is preferred. Such materials include copper, aluminum, iron, tantalum, niobium and alloys thereof.」

当審訳:
「[0033]本発明の非水電解質二次電池では、負極は、ゲルマニウムをその主成分活物質として含む負極活物質層を有する。主成分活物質であるゲルマニウムは、ゲルマニウム元素又はゲルマニウム合金の形態であってもよい。
[0034]負極活物質層においてゲルマニウム主成分活物質とともに利用できる他の材料は、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料、例えばハードカーボンといった炭素材料、スズ、ビスマス、ナトリウム等である。
[0035]負極の金属集電体として、ナトリウムと合金を形成しない材料が好ましい。このような材料は、銅、アルミニウム、鉄、タンタル、ニオブ、及びその合金が含まれる。」

「[0037] A non-aqueous electrolyte secondary battery according to the present embodiment comprises a working electrode (negative electrode), a counter electrode (positive electrode), and a non-aqueous electrolyte.」

当審訳:
「[0037]本実施の形態に係る非水電解質二次電池は、作用極(負極)、対極(正極)及び非水電解質により構成される。」

「[0071]The present embodiment employs a non-aqueous electrolyte in which sodium hexafluorophosphate as an electrolyte salt is added at a concentration of 1 mol/L to a mixed non-aqueous solvent of a 50:50 volume ratio of ethylene carbonate and diethyl carbonate. 」

当審訳:
「[0071]本実施の形態では、非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比50:50の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸ナトリウムを1mol/lの濃度になるように添加したものを用いる。」

「[0075]Next, a separator 4 is interposed between the working electrode 1 and the counter electrode 2 , and then, the working electrode 1 and the counter electrode 2 are disposed in a cell container 10 , along with a reference electrode 3 made of, for example, metallic sodium. Thereafter, a non-aqueous electrolyte 5 prepared in the foregoing manner is filled in the cell container 10 , to thereby prepare a test cell. 」

当審訳:
「[0075]次に、作用極1と対極2との間にセパレータ4を挿入し、セル容器10内に作用極1、対極2および例えばナトリウム金属からなる参照極3を配置する。そして、セル容器10内に前述の方法で用意した非水電解質5を注入することにより試験セルを作製する。」

(2)甲第2号証(Ricardo A.et al. 「Carbon black:a promising electrode material for sodium-ion batteries」 electrochemistry communications (2001) 3巻 p.639-642)

「In order to test sodium-ion batteries,the cathode material was prepared by heating stoichiometric amounts of Na_(2)CO_(3) and CoCO_(3) at 700℃for 40h in air.」(第639頁右欄26行?第640頁左欄2行)

当審訳:
「ナトリウムイオン電池試験用に、Na_(2)CO_(3)とCoCO_(3)の化学量論量を700℃で40時間空気中で加熱して正極物質を用意した。」(第639頁右欄26行?第640頁左欄2行)

「With the purpose of testing the carbon black samples in sodium-ion batteries,Na_(0.7)CoO_(2) was prepared and used as the positive electrode[17].」(第641頁左欄2行?5行)

当審訳:
「ナトリウムイオン電池においてカーボンブラック試料を試験するために、正極としてNa_(0.7)CoO_(2)を用意し利用した。」(第641頁左欄2行?5行)

(3)甲第3号証(特表2004-533706号公報)
甲3には、「ナトリウムイオンバッテリ」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
正極と、負極と電解質を含み:
前記正極は、ナトリウムイオンを可逆的にサイクルさせることができる電気化学的活物質を含み;
前記負極は、ナトリウムイオンを挿入可能な炭素を含み、100mAh/gより大きな比容量で可逆的にサイクル可能であるバッテリ。」

「【0006】
本発明はナトリウムイオン装置にカソード(正極)活物質として組み込むのに適したナトリウム遷移金属化合物を提供する。これらの物質は、比較的高い作動ポテンシャルおよび良好な比容量を有している。本発明は、さらに、充放電中に、ナトリウムイオンを挿入及び離脱(放出)可能なインターカレーションアノードを提供する。
【0007】
他の実施態様において、バッテリはカソード、アノード、アノード及び電解質を含む。一つの実施態様において、カソードは電気化学的に活性なナトリウムベース活物質を含む。」

「【0008】
限定されない、好ましいナトリウム含有活物質の例示としては、NaVPO_(4)F,Na_(1+y)VPO_(4)F_(1+y),NaVOPO_(4),Na_(3)V_(2)(PO_(4))_(2)F_(3),Na_(3)V_(2)(PO_(4))_(3),NaFePO_(4),NaFe_(x)Mg_(1-x)PO_(4),Na_(2)FePO_(4)F及びそれらの混合物を含む(ただし0<x<1、および-0.2≦y≦0.5)。他の好ましい活物質は、一般式Li_(1-z)Na_(z)VPO_(4)F(ただし、0<z<1)を有している。バナジウム(V)に加えて、ナトリウムベース活物質を製造するため、種々の遷移金属及び非繊維金属元素が個々に、あるいは組み合わせて使用可能である。」

「【0052】
他の実施態様では、本発明はカソード、アノード、電解質を有するバッテリを提供する。前記カソードは可逆的にナトリウムイオンをサイクルできる、電気化学的に活性な物質を含む(カソードは放電中に還元が行われる電極と定義され、アノードは放電中に酸化が行われる電極と定義される)。この実施態様では、アノードはナトリウムイオンを挿入可能な物質を含み、100mAh/g、好ましくは200mAh/g、さらに好ましくは300mAh/gより大きな比容量で可逆的にサイクルできる。好ましい実施態様では、アノード物質は平均粒径3?6マイクロメータを中心とする粒子分布のハードカーボンを含む。他の実施態様では、好ましいハードカーボン物質は、グラファイトより大きなd_(002)間隔を有する。大きなd_(002)間隔は、本発明のバッテリの動作中における、ナトリウムイオンを挿入し、可逆的にサイクルさせる前記物質の能力に、部分的に影響があることが理論付けられている。結晶グラファイト、カーボンファイバおよび石油コーク物質は、一般にナトリウムイオン電池のアノード(正極)として、あまり好ましいものではない。グラファイトは取るに足らないナトリウム挿入量であるし、これに対し石油コーク及びカーボンファイバ試料は、比較的低い比容量を示すに過ぎない(極めて低いレート条件下で、典型的には50?100mAh/g)。好ましい実施態様において、本発明のアノードは、たとえば、大阪ガス化学(大阪ガス,大阪,日本)より市販されているハードカーボンを含む。この物質についての典型的な特性を下記の表3に示す。」

「【0124】
本発明の電解質は炭酸アルキレンおよび環状エステルの混合物に溶解された塩を含む。好ましくは、電解質の塩はリチウムあるいはナトリウム塩である。有用な塩は、LiAsF_(6),LiPF_(6),LiClO_(4),LiB(C_(6)H_(5))_(4),LiAlCl_(4),LiBr,LiBF_(4)およびそれらの混合物、同様に、好ましくは毒性の低いナトリウム類似の塩を含む。」

(4)甲第4号証(特開平4-181651号公報)
甲4には、「電池用セパレータの製造法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

「〔課題を解決するための手段〕
本発明者は従来技術の有する上記問題を解決するため、鋭意研究の結果、融点の異なる樹脂を主成分とする少なくとも二つの樹脂層から成る積層フィルムを特定温度条件で低温延伸し、次いで特定温度条件で高温延伸することにより、これらの樹脂層が各々多孔質化され、しかも優れたSD特性を示す電池用セパレータが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明に係る電池用セパレータの製造法は、高融点樹脂層と低融点樹脂層(この層の融点をTmb℃とする)を有する積層フィルムを、-20℃?(Tmb-30)℃の低温度領域で1軸延伸し、次にこの延伸フィルムを(Tmb-30)℃?(Tmb-2)℃の高温度領域において前記低温延伸と同一方向に延伸することにより多孔質化せしめることを特徴とするものである。
本発明において用いられる積層フィルムは高融点樹脂層と低融点樹脂層を有するものである。これら樹脂層は融点が異なるものであれば、その材質は同質或いは異質のいずれであっても良い。」(第2頁左下欄第13行?右下欄第13行)

(5)甲第5号証(特開2000-30686号公報)
甲5には、「非水電解質電池セパレーターとリチウム二次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

「【0010】また、本発明は、(2)織物、不織布、紙または多孔質のフィルムからなる基材、耐熱性含窒素芳香族重合体およびセラミック粉末を含む非水電解質電池セパレーターに関するものである。」

「【0016】本発明における耐熱性含窒素芳香族重合体とは、主鎖に窒素原子と芳香族環を含む重合体であり、例えば、芳香族ポリアミド(以下、「アラミド」ということがある)、芳香族ポリイミド(以下、「ポリイミド」ということがある)、芳香族ポリアミドイミドなどがあげられる。
【0017】アラミドとしては、例えばメタ配向芳香族ポリアミド(以下、「メタアラミド」ということがある。)とパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある)があげられ、多孔質になりやすい点でパラアラミドが好ましい。」

(6)甲第6号証(特開2005-26203号公報)
甲6には、「電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。

「【0041】
セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合させたり、またはブレンド化することで用いることができる。」

第5 当審の判断
1 無効理由(1)、(2)(本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明3?5に対する、甲1を主引用例とする新規性進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲1の請求項3と、[0011]、[0034]の記載によれば、甲1には、「負極活物質層」が、主成分活物質として「50質量%を超える量」の「16μm以下の粒径を有するゲルマニウム」を含むととともに、当該ゲルマニウムとともに利用できる、「ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な」「他の材料」として、「ハードカーボンといった炭素材料、スズ、ビスマス、ナトリウム」から選ばれる材料も含むことが記載されていると認められる。

イ また、甲1の請求項3、[0035]の記載によれば、負極は、負極の金属集電体として、「ナトリウムと合金を形成しない材料」である「銅、アルミニウム、鉄、タンタル、ニオブ、及びその合金」から選ばれる材料を含むことが記載されていると認められる。

ウ 甲1の[0075]の記載によれば、作用極1と対極2との間にセパレータを挿入した非水電解質二次電池とすることが記載されている。

エ 甲1の[0071]の記載によれば、非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比50:50の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸ナトリウムを1mol/lの濃度になるように添加したものを用いることが記載されている。

上記第4の3(1)の甲1の記載事項を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

(甲1A発明)
「正極と、
ナトリウムイオンを含む非水電解質と、
負極活物質層を有する負極と、を備え、
前記負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含む非水電解質二次電池であって、
主成分活物質とは、電極活物質のうち、50質量%を超える量であり、
主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料として、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である、ハードカーボンといった炭素材料、スズ、ビスマス、ナトリウムから選ばれる材料を含み、
負極の金属集電体として、ナトリウムと合金を形成しない材料である、銅、アルミニウム、鉄、タンタル、ニオブ、及びその合金から選ばれる材料を含み、
負極と正極との間にセパレータを有し、
非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比50:50の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸ナトリウムを1mol/lの濃度になるように添加したものを用いた、非水電解質二次電池。」

ここで、甲1A発明には、「主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料」として、いずれも「ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である」、「ハードカーボンといった炭素材料」、「スズ」、「ビスマス」、「ナトリウム」の4種が、同等なものとして含まれており、また、「負極集電体」として、いずれも「ナトリウムと合金を形成しない材料である」、「銅」、「アルミニウム」、「鉄」、「タンタル」、「ニオブ」の5種と、「銅」、「アルミニウム」、「鉄」「タンタル」、「ニオブ」それぞれの合金を意味すると解することができる、5種の「その合金」の合わせて10種の金属が、同等なものとして含まれている。

そうすると、甲1A発明は、「主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料」である4種の材料と、「負極集電体」である10種の材料との組み合わせである、4×10=40通りの態様を包含するものであり、当該40通りの態様は、いずれもお互いに非水電解質二次電池として等価なものとして開示されているといえる。

ここで、上記40通りの態様を含有すると考えられる甲1A発明において、本件発明と構成が最も似ている電池である、「主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料」が「ハードカーボンといった炭素材料」であり、「負極集電体」が「アルミニウム」又は「アルミニウム合金」である発明に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。

(甲1B発明)
「正極と、
ナトリウムイオンを含む非水電解質と、
負極活物質層を有する負極と、を備え、
前記負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含む非水電解質二次電池であって、
主成分活物質とは、電極活物質のうち、50質量%を超える量であり、
主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料として、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である、ハードカーボンといった炭素材料を含み、
負極の金属集電体として、ナトリウムと合金を形成しない材料である、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、
負極と正極との間にセパレータを有し、
非水電解質として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比50:50の割合で混合した非水溶媒に、電解質塩としての六フッ化リン酸ナトリウムを1mol/lの濃度になるように添加したものを用いた、非水電解質二次電池。」

(2)本件発明1と甲1B発明との対比
甲1B発明の「ナトリウムイオンを含む非水電解質」は、本件発明1の「ナトリウムイオン非水電解質」に相当し、甲1B発明は、ナトリウムイオン非水電解質を備え、ナトリウムイオンが電荷の担い手である電池であるから、甲1B発明の「非水電解質二次電池」は、本件発明1の「ナトリウムイオン電池」に相当する。
甲1B発明の「負極の金属集電体として、ナトリウムと合金を形成しない材料である、アルミニウム又はアルミニウム合金を用い」との事項は、本件発明1の「負極が、」「アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し」に相当する。
甲1B発明は、ナトリウムイオン電池であるから、技術常識に照らせば、その正極は、当然に、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有するものである。

甲1B発明の「負極活物質層を有する負極」、「負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含む」、「主成分活物質とは、電極活物質のうち、50質量%を超える量であり、」、「主成分活物質であるゲルマニウムとともに利用できる他の材料として、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である、ハードカーボンといった炭素材料を含み」との事項を総合すると、甲1B発明の「負極」は、「負極活物質として、負極活物質の50質量%超の16μm以下の粒径を有するゲルマニウムと、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な材料である、ハードカーボンといった炭素材料とを含む」ものであるといえるから、当該事項は、本件発明1の「負極が、」「負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、」「を有し」との事項に相当するということができる。

そうすると、本件発明と、甲1B発明とは、
「正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池」
との点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本件発明1では、「ただし、負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く」との特定事項を有するのに対し、甲1B発明では、「負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含む」と特定しており、負極活物質層が、ゲルマニウムを含む点。

上記相違点1は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。

(3)本件発明1を引用する本件発明3?本件発明4と甲1B発明との対比
本件発明1を引用する本件発明3?本件発明4と、甲1B発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違するから、本件発明1を引用する本件発明3?本件発明4は、甲1に記載された発明ではない。

(4)本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明3?5についての進歩性について
ア 本件発明1と、本件発明1を引用する本件発明3?5と、甲1B発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点1で相違している。

イ 相違点1について検討する。
甲1B発明は、負極活物質としてゲルマニウムを主成分活物質として含むもの、すなわち、電極活物質のうち、50質量%を超える量のゲルマニウムを必須の活物質として含むものであり、甲1B発明において、50質量%を超える量のゲルマニウムを含むことは、甲1B発明特有の課題を解決する手段を基礎づける技術的思想の中核をなす特徴部分、すなわち、本質的部分であるといえるから、当該甲1B発明において、「負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く」とすること、すなわち、ゲルマニウムを主成分活物質として含まない電池とすることは、そもそも甲1B発明の本質的部分を変更しようとするものであって、甲1B発明においてそのような変更をすることはできない。
甲2?甲6を参酌しても、当該甲1B発明において、「負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く」とすることはできない。
よって、甲1B発明において、相違点1に係る事項を備えるとすることは、当業者にとって容易とはいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明1を引用する本件発明3?5についても、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)無効理由(1)、(2)についての小括
以上のとおり、本件発明1、本件発明1を引用する本件発明3?本件発明4は、甲1に記載された発明ではない。
また、本件発明1、本件発明1を引用する本件発明3?本件発明5は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、無効理由(1)、(2)によって、本件発明1、本件発明1を引用する本件発明3、4、5に係る特許を無効とすることはできない。

2 無効理由(3)(本件発明2と、本件発明2を引用する本件発明3?5に対する、甲1を主引用例とする進歩性)について
(1)本件発明2と甲1B発明との対比
本件発明2と甲1B発明とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致している。

(相違点2)
本件発明2では、「負極活物質は、前記炭素材料のみからなる」との特定事項を有するのに対し、甲1B発明では、「負極活物質層は、16μm以下の粒径を有するゲルマニウムを主成分活物質として含む」と特定しており、負極活物質層が、ゲルマニウムを含む点。

(相違点3)
本件発明2では、「正極活物質が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム無機化合物であり」との特定事項を有するのに対し、甲1B発明では、正極活物質について特定されていない点。

相違点2について検討するに、甲1B発明は、負極活物質としてゲルマニウムを主成分活物質として含むもの、すなわち、電極活物質のうち、50質量%を超える量のゲルマニウムを必須の活物質として含むものであり、甲1B発明において、50質量%を超える量のゲルマニウムを含むことは、甲1B発明特有の課題を解決する手段を基礎づける技術的思想の中核をなす特徴部分、すなわち、本質的部分であるといえるから、当該甲1B発明において、「負極活物質は、前記炭素材料のみからなる」とすること、すなわち、ゲルマニウムを主成分活物質として含まない電池とすることは、そもそも甲1B発明の本質的部分を変更しようとするものであって、甲1B発明においてそのような変更をすることはできない。
甲2?甲6を参酌しても、当該甲1B発明において、負極活物質を炭素材料のみからなるものとすることはできない。
よって、甲1B発明において、相違点2に係る事項を備えるとすることは、当業者にとって容易とはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1?甲6に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2を引用する本件発明3?本件発明5と甲1B発明との対比
本件発明2を引用する本件発明3?本件発明5と甲1B発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点2及び相違点3で相違している。
そして、上記(1)の相違点2の判断と同様に、甲1B発明において、相違点2に係る事項を備えるとすることは、当業者にとって容易とはいえない。
したがって、本件発明2を引用する本件発明3?本件発明5は、甲1?甲6に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)無効理由(3)についての小括
以上のとおり、本件発明2と、本件発明2を引用する本件発明3?5は、甲1?甲6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、無効理由(3)によって、本件発明2と、本件発明2を引用する本件発明3?5に係る特許を無効とすることはできない。

第6 まとめ
以上のとおり、請求人の主張する無効理由(1)?(3)及び提出した証拠方法によっては、本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池(ただし、負極活物質層がゲルマニウムを含むものを除く)。
【請求項2】
正極、負極およびナトリウムイオン非水電解質を備え、該負極が、負極活物質としてナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる炭素材料と、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる負極集電体とを有し、該正極が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできる正極活物質を有することを特徴とするナトリウムイオン電池であって、
正極活物質が、ナトリウムイオンをドープかつ脱ドープすることのできるナトリウム無機化合物であり、
前記負極活物質は、前記炭素材料のみからなるナトリウムイオン電池。
【請求項3】
ナトリウムイオン非水電解質が、液体状である請求項1または2記載の電池。
【請求項4】
セパレータを備える請求項3記載の電池。
【請求項5】
セパレータが、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムを有するセパレータである請求項4記載の電池。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-03-13 
結審通知日 2019-03-26 
審決日 2019-04-19 
出願番号 特願2009-73714(P2009-73714)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (H01M)
P 1 113・ 113- YAA (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小森 利永子  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 結城 佐織
亀ヶ谷 明久
登録日 2013-09-13 
登録番号 特許第5359442号(P5359442)
発明の名称 ナトリウムイオン電池  
代理人 吉住 和之  
代理人 福山 尚志  
代理人 清水 義憲  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
代理人 三上 敬史  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 福山 尚志  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
代理人 三上 敬史  
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