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審決分類 審判 査定不服 特37条出願の単一性 取り消して特許、登録 A23L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1356750
審判番号 不服2019-6498  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-17 
確定日 2019-11-26 
事件の表示 特願2018-133683「食品用乳化用組成物」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成30年7月13日を出願日とする出願であって、同年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月13日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年2月13日付けで拒絶査定がされ、令和1年5月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年7月3日に手続補正書(方式)が提出され、令和1年9月5日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成30年9月7日付けの拒絶理由通知における理由1?理由3であり、理由1の概要は、この出願の請求項1?5に係る発明は、引用文献1又は引用文献2により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しないから、特許法第37条に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないというものであり、理由2の概要は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1に記載された発明であり、また、この出願の請求項1?5、10に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないというものであり、理由3の概要は、この出願の請求項6、7に係る発明は、上記引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2015/0313244号明細書
引用文献2:東京家政大学生活科学研究所研究報告,2016年,第39集,p.103-104
引用文献3:国際公開第2013/002373号
引用文献4:特開2004-168702号公報
引用文献5:特表平11-512477号公報

第3 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、令和1年5月17日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
乳化有効成分としてγ-オリザノールを1.5?2.0質量%含む米油を含有することを特徴とする食品用乳化用組成物。
【請求項2】
乳化有効成分としてγ-オリザノールを1.5?5.0質量%含む米油を含有することを特徴とする食品用乳化用組成物。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(米国特許出願公開第2015/0313244号明細書)には、次の事項が記載されている。
訳文にて示す。
(1-1)
「[0030]乳化剤は、植物性油、米胚芽油又はその他を含むことができる。植物油は、当該技術分野で一般に使用される任意の植物油であってもよい。」
(1-2)
「請求項1 米粉、セルロースエーテル、ガム類及び乳化剤を含む米ドウ組成物。」

(2)上記記載事項(1-1)からみて、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「米胚芽油を含む乳化剤。」(以下、「引用発明1」という。)

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(東京家政大学生活科学研究所研究報告,2016年,第39集,p.103-104)には、次の事項が記載されている。
(2-1)
「 パウンドケーキは、薄力粉(・・・)、グラニュー糖(・・・)、植物油脂、新鮮鶏卵(・・・)を各100g使用し、ベーキングパウダー(・・・)は粉の2.8%にあたる2.8gを用いた。
植物油脂として、キャノーラ油(・・・)・太白ごま油(・・・)・オリーブ油(・・・)・こめ油(築野食品工業株)、ココナツ油(・・・)5種を100g使用し、キャノーラ油を用いて調製した試料を対照とした。材料配合は表1に示す。
オールインミックス法で調製し、半パウンドケーキ型1個に調製したバッター170.0gを2個流しいれ、オーブンで180℃、28分間加熱した。」(103頁左欄下から12行?右欄1行)

(2)上記記載事項(2-1)からみて、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。
「バッターを製造するために使用される米油。」(以下、「引用発明2」という。)

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(国際公開第2013/002373号)には、次の事項が記載されている。
(3-1)
「[0073][解析事例5] 解析事例1では、水(ImPa・sを想定)を模擬した嚥下数値実験の解析例を示したが、ここでは、流体の粘度を変化させて解析を行なうこととする。例えば、水相に対してオリーブ油、オリーブスクワラン、ヒマシ油、カルナウバワックス等の植物油を乳化剤として添加できる。これら油性成分を液体全体の0.5?20重量%になるように配合すると、O/W型エマルジョンタイプの乳化液体が形成され、乳化液体の粘度を調整できる。また、攪拌の回転数により粘度を調整できる(例えば特開平10-182339号公報参照)。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4(特開2004-168702号公報)には、次の事項が記載されている。
(4-1)
「【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するべく種々検討したところ、本発明者らは油溶性ビタミンを含有する微細エマルション組成物において、酸化エチレン付加硬化ヒマシ油を乳化剤として使用し、安定化剤としてグリセリンを用いることにより、透明度が高く、安定性が良好なマイクロエマルションを得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。」

5 引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5(特表平11-512477号公報)には、次の事項が記載されている。
(5-1)
「【特許請求の範囲】
1.植物原料を非極性触媒で抽出し、その溶媒を蒸発させて非極性および極性脂質を含有する粗製油を得、それをさらに精製することからなり;
粗製油を制御温度でアルコールと混合し、アルコール相を分離し、蒸発させて極性脂質に富んだ分別植物油を得ることを特徴とする、植物原料から分別植物油を製造する方法。
・・・
11.請求項1?5の何れかの項記載の方法により得られた分別植物油を乳化剤として使用することを特徴とする、トリアシルグリセロール油、好ましくはマツヨイグサ油またはその画分、ルリヂサ油またはその画分、あるいは他の植物油またはその画分から選択される乳化油を含有する乳濁液組成物。」

6 その他の文献について
(1)前置報告において引用された特開2015-128406号公報(以下、「引用文献3’」という。)には、次の事項が記載されている。
(3’-1)
「【請求項1】
γ-オリザノールを1質量%以上含有する油脂を原料として得られるバター代替油脂であって、フィチン酸を含まないことを特徴とするバター代替油脂。」
(3’-2)
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安価で、風味の豊かなバター代替油脂を提供することを目的とする。」
(3’-3)
「【0042】
〔実施例1:γ-オリザノール高含有油脂を原料とするショートニングの製造〕
γ-オリザノール1.5質量%の米油(米胚芽油PRO-15、築野食品工業株式会社製)50質量%、パーム油及びパームステアリンの混合物(融点34?37度)49.8質量%、乳化剤(モノグリセリド)0.2質量%を60℃で混合し、窒素ガスを吹き込んだ後10℃まで急冷しながら練り合わせ、ショートニングを製造した。」

(2)上記記載事項(3’-3)からみて、引用文献3’には、次の発明が記載されていると認められる。
「γ-オリザノールを1.5質量%含む米油、パーム油及びパームステアリンの混合物、乳化剤であるモノグリセリドを含むショートニング」(以下、「引用発明3」という。)

7 参考文献5について
(1)審判請求人が、令和1年7月3日付けで手続補正された審判請求の理由において、参考文献5として提出した「わかさの秘密、γ(ガンマ)-オリザノール、[online]、平成25年3月29日、[令和1年6月18日検索]、インターネット<URL:http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/g-oryzanol/>」(以下、「電子的技術情報」という。)には、次の事項が記載されている。
(参5-1)
「作成日2011年10月29日
更新日2013年3月29日」
(参5-2)
「γ-オリザノールは、コメ胚芽油や米油などに含まれています。米油にはγ-オリザノールが0.2?0.5%含まれています。」

8 参考文献6について
(1)審判請求人が、令和1年7月3日付けで手続補正された審判請求の理由において、参考文献6として提出した「「こめぬか油とオリザノールと 土屋知太郎研究のあしあと」、土屋順堂発行、平成9年5月18日、17頁」(以下、「参考文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
(参6-1)
「粗製米ぬか油中のオリザノール含量は1.68?2.57%で、圧搾油が抽出油より高いオリザノール含量を示し、米胚芽油は1例だけなので、確かではないが、オリザノール含量0.96%で、粗製米ぬか油の1/2以下である。」(下から3行?末行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の米胚芽油は本願発明1の米油と、米由来の油である限りにおいて一致する。
また、引用発明1の乳化剤は、米ドウ組成物を製造するために用いられていることから食品用組成物であるといえ、また、乳化のために用いられるものであるから、乳化用組成物であるといえる。
そうすると、両者は、「米由来の油を含む食品用乳化用組成物」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-1)
米由来の油が、本願発明1では、「米油」であり、当該米油が「γ-オリザノールを1.5?2.0質量%含む」ものであるのに対し、引用発明1は、米胚芽油であり、γ-オリザノールを含むか不明である点
(相違点1-2)
本願発明1は、「γ-オリザノール」を「乳化有効成分」とするものであるのに対し、引用発明1は、γ-オリザノールが乳化有効成分であるか不明である点

イ 判断
(ア)相違点1-1について
引用文献1には、引用発明1の米胚芽油にγ-オリザノールが含まれるものであるか記載されていないが、米胚芽油にγ-オリザノールが含まれることが技術常識であったとしても、一般に、米胚芽油中のγ-オリザノールの含有量は、0.96%であるから(上記記載事項(参6-1)参照)、引用発明1の米胚芽油中に含まれるγ-オリザノールの含有量も0.96%程度の量である蓋然性が高く、「1.5?2.0質量%」もの高い含有量で含まれているとは認められない。
また、引用発明1の米胚芽油中に、γ-オリザノールが含まれることまでは理解できても、引用文献1には、γ-オリザノールについて記載がないのであるから、その含有量をさらに増加させることは当業者にとって動機付けられるものではない。
したがって、当業者といえども相違点1-1の構成を容易に想到することはできない。

(イ)相違点1-2について
引用文献1の記載をみても、引用発明1の乳化剤における乳化有効成分が米胚芽油中に含まれることが直接記載されていないγ-オリザノールであることは読み取れないし、本願出願時の技術常識ともいえない。
したがって、当業者といえども相違点1-2の構成を容易に想到することはできない。

(ウ)効果について
本願発明1は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明1の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献1に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(エ)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

ウ 審判請求人は平成30年12月13日付け意見書において、引用文献1の[0030]の記載について言及しているので、一応検討しておく。
引用文献1には、「乳化剤は、植物性油、米胚芽油又はその他を含むことができる」と記載されているところ、一般に、植物油や米胚芽油は、被乳化物質であるグリセリンのトリエステルであり、親水性部分を有していない油脂として認識されているものであるから、油脂を乳化する剤である乳化剤が、乳化される油脂である植物油等自体であると理解することは正しい理解であるとは認めがたい。
引用文献3には、オリーブ油、オリーブスクワラン、ヒマシ油、カルナウバワックスを乳化剤として添加できることが記載されており、引用文献4には、酸化エチレン付加硬化ヒマシ油を乳化剤として使用できることが記載されており、引用文献5には、分別植物油を乳化剤として使用できることが記載されているが、いずれの文献も、特定条件下で乳化剤として作用することを示すだけで、植物性油一般や米胚芽油自体が乳化剤として使用できることを示すものとはいえない。
したがって、引用文献1の[0030]の記載は、乳化剤に乳化作用を発揮する成分以外に植物性油等が含まれていてよいと理解すべきものである。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、両者は、米油に関する技術である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点2-1)
本願発明1は、「γ-オリザノールを1.5?2.0質量%含む米油を含有」するものであるのに対し、引用発明2は、米油がγ-オリザノールを1.5?2.0質量%含むか不明である点
(相違点2-2)
本願発明1は、「食品用乳化用組成物」であって、「γ-オリザノール」を乳化有効成分とするものであるのに対し、引用発明2は、単なる米油であって、食品用乳化用組成物であることや、γ-オリザノールが乳化有効成分であるか不明である点

イ 判断
(ア)相違点2-1について
引用文献2には、引用発明2の米油にγ-オリザノールが含まれるものであるか記載されていないが、米油にγ-オリザノールが含まれることが技術常識であったとしても、一般に、米油中のγ-オリザノールの含有量は0.2?0.5%であるから(上記記載事項(参-2)参照)、引用発明2の米油に含まれるγ-オリザノールの含有量も、0.2?0.5%程度の量である蓋然性が高く、「1.5?2.0質量%」もの高い含有量で含まれているとは認められない。
また、引用発明2の米油中にγ-オリザノールが含まれることまでは理解できても、引用文献2には、γ-オリザノールについて記載がないのであるから、その含有量をさらに増加させることは当業者にとって動機付けられるものではない。
したがって、当業者といえども相違点2-1の構成を容易に想到することはできない。

(イ)相違点2-2について
本願発明1の「乳化用」組成物という記載は、組成物の用途が乳化用であること、すなわち、組成物を乳化のために用いるものであることを意味すると解される。
引用文献2には、米油を乳化のために用いることは記載も示唆もされていないため、米油を乳化用組成物とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、引用文献2には、米油を用いて製造されたバッターが乳化された状態であることは記載されていないのであるから、引用発明2が結果として乳化用組成物として機能したとはいえないし、仮に米油を用いて製造されたバッターが乳化された状態であったとしても、乳化有効成分が米油に含まれることが直接記載されていないγ-オリザノールであることは、引用文献2の記載からは読み取れない。
したがって、当業者といえども相違点2-2の構成を容易に想到することはできない。

(ウ)効果について
本願発明1は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明1の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献2に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(エ)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明3とを対比する。
引用発明3のショートニングは食品用組成物であるから、両者は、「γ-オリザノールを1.5質量%含む米油を含む食品用組成物」である限りにおいて一致し、次の点で相違する。
(相違点3-1)
本願発明1は、「乳化用組成物」であって、γ-オリザノールを乳化有効成分とするものであるのに対し、引用発明3は、ショートニングであって、乳化用組成物であることも、γ-オリザノールが乳化有効成分であることも不明である点

イ 判断
(ア)相違点3-1について
本願発明1の「乳化用」組成物という記載は、組成物の用途が乳化用であること、すなわち、組成物を乳化のために用いるものであることを意味すると解される。
引用文献3には、ショートニング自体を乳化のために用いることは記載も示唆もされていないため、引用発明3のショートニングを乳化用組成物とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、引用発明3のショートニングは構成成分にモノグリセリドである乳化剤を含むことから、ショートニングは乳化された状態であるといえる。しかし、ショートニング自体が乳化された状態であったとしても、乳化有効成分として機能したのは乳化剤であるモノグリセリドであって、米油に含まれるγ-オリザノールが乳化に寄与する成分であることは、引用文献3の記載からは読み取れないし、本願出願時の技術常識ともいえない。
したがって、当業者といえども相違点3-1の構成を容易に想到することはできない。

(イ)効果について
本願発明1は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明1の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献3に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明2と引用発明1とを対比すると、上記1(1)アで検討したとおり、両者は、「米由来の油を含む食品用乳化組成物」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1-1’)
米由来の油が、本願発明1では、「米油」であり、当該米油が「γ-オリザノールを1.5?5.0質量%含む」ものであるのに対し、引用発明1は、米胚芽油であり、γ-オリザノールを含むか不明である点
(相違点1-2’)
本願発明1は、「γ-オリザノール」を「乳化有効成分」とするものであるのに対し、引用発明1は、γ-オリザノールが乳化有効成分であるか不明である点

イ 判断
(ア)相違点1-1’について
上記1(1)イ(ア)で述べたように、当該技術分野における本願出願前の技術常識を考慮すれば、引用発明1の米胚芽油には、γ-オリザノールが「1.5?5.0質量%」もの高い含有量で含まれているとは認められない。
また、引用発明1の米胚芽油中にγ-オリザノールが含まれることまでは理解できても、引用文献1には、γ-オリザノールについて記載がないのであるから、その含有量をさらに増加させることは当業者にとって動機付けられるものではない。
したがって、当業者といえども相違点1-1’の構成を容易に想到することはできない。

(イ)相違点1-2’について
上記1(1)イ(イ)で述べたとおり、引用発明1の乳化剤における乳化有効成分が米油に含まれることが直接記載されていないγ-オリザノールであることは、引用文献1の記載からは読み取れないし、本願出願時の技術常識ともいえないから、当業者といえども相違点1-2’の構成を容易に想到することはできない。

(ウ)効果について
本願発明2は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明2の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献1に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(エ)小括
したがって、本願発明2は、当業者であっても引用発明1に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 対比
本願発明2と引用発明2とを対比すると、両者は、米油に関する技術である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点2-1’)
本願発明2は、「γ-オリザノールを1.5?5.0質量%含む米油を含有」するものであるのに対し、引用発明2は、米油がγ-オリザノールを1.5?5.0質量%含むか不明である点
(相違点2-2’)
本願発明2は、「食品用乳化用組成物」であって、「γ-オリザノール」を乳化有効成分とするものであるのに対し、引用発明2は、単なる米油であって、食品用乳化用組成物であることや、γ-オリザノールが乳化有効成分であるか不明である点

イ 判断
(ア)相違点2-1’について
上記1(2)イ(ア)で述べたように、当該技術分野における本願出願前の技術常識を考慮すれば、引用発明2の米油には、γ-オリザノールが「1.5?5.0質量%」もの高い含有量で含まれているとは認められない。
また、引用発明2の米油中にγ-オリザノールが含まれることまでは理解できても、引用文献2には、γ-オリザノールについて記載がないのであるから、その含有量をさらに増加させることは当業者にとって動機付けられるものではない。
したがって、当業者といえども相違点2-1’の構成を容易に想到することはできない。

(イ)相違点2-2’について
上記1(2)イ(イ)で述べたとおり、引用発明2の米油を乳化のために用いることは記載も示唆もされていないし、乳化有効成分が米油に含まれることが直接記載されていないγ-オリザノールであることは、引用文献2の記載からは読み取れないし、本願出願時の技術常識ともいえないから、当業者といえども相違点2-2’の構成を容易に想到することはできない。

(ウ)効果について
本願発明2は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明2の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献2に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(エ)小括
したがって、本願発明2は、当業者であっても引用発明2に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明3との対比・判断
ア 対比
本願発明2と引用発明3とを対比すると、両者は、「γ-オリザノールを1.5質量%含む米油」を含む食品用組成物である点」で一致し、次の点で相違する。
(相違点3-1’)
本願発明2は、「乳化用組成物」であって、γ-オリザノールを乳化有効成分とするものであるのに対し、引用発明3は、ショートニングであって、乳化用組成物であることも、γ-オリザノールが乳化有効成分であることも不明である点

イ 判断
(ア)相違点3-1’について
上記上記1(3)イで述べたとおり、引用発明3のショートニング自体を、乳化のために用いる「乳化用」組成物とすること、及び、γ-オリザノールを「乳化有効成分」とすることは、当業者といえども容易に想到するものではない。
したがって、本願発明2は、当業者であっても引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

(イ)効果について
本願発明2は、γ-オリザノールの新たな用途として乳化用途を見出したものであって、本願発明2の構成を採用したことにより、人体に安全であって、乳化作用に優れた食品用乳化用組成物を提供することができるという効果を奏するものであり、この効果は、引用文献3に記載された事項から当業者が予測できるものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本願発明2は、当業者であっても引用発明3に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(特許法第37条)について
原査定の拒絶の理由1の概要は、前記第2のとおり、この出願の請求項1?5に係る発明は、引用文献1又は引用文献2により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しないから、特許法第37条に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないというものであるが、審判請求時に補正された本願発明1及び2と、引用発明1、引用発明2又は引用発明3との間には相違点があり、両者は同一でないことは、前記第5で検討したとおりである。
よって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第29条第1項第3号)及び理由3(同法第29条第2項)について
原査定の拒絶の理由2の概要は、前記第2のとおり、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1に記載された発明であり、また、この出願の請求項1?5、10に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないというものであり、理由3の概要は、この出願の請求項6、7に係る発明は、上記引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
しかしながら、審判請求時の補正により、本願発明1は「乳化有効成分としてγ-オリザノールを1.5?2.0質量%含む米油を含有する」という事項を有するものとなっており、また、本願発明2は、「乳化有効成分としてγ-オリザノールを1.5?5.0質量%含む米油を含有する」という事項を有するものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1又は2に記載された発明と同一であるということはできないし、また、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?5に記載された事項に基いて、容易に発明できたものとはいえないことは、前記第5で検討したとおりである。
よって、原査定の理由2及び理由3を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用文献1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由1?3によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-11 
出願番号 特願2018-133683(P2018-133683)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A23L)
P 1 8・ 121- WY (A23L)
P 1 8・ 64- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高山 敏充  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 冨永 みどり
中島 芳人
発明の名称 食品用乳化用組成物  
代理人 岩谷 龍  
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