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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 B65G 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65G 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B65G |
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管理番号 | 1356793 |
異議申立番号 | 異議2018-700487 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-13 |
確定日 | 2019-09-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6245975号発明「AR/VRを利用した物品収納補助装置及びシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6245975号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6245975号の請求項2、3、6ないし9に係る特許を維持する。 特許第6245975号の請求項1に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6245975号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成25年12月25日に出願され、平成29年11月24日にその特許権の設定登録がされ、平成29年12月13日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成30年6月13日 :特許異議申立人大隅庸平(以下、「申立人」 という。)による請求項1?3及び6?9に 係る特許に対する特許異議の申立て 平成30年10月1日付け:取消理由通知 平成30年12月4日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 平成31年2月13日付け:特許法第120条の5第5項の通知 平成31年3月22日 :申立人による意見書の提出 令和1年5月27日付け :取消理由通知(決定の予告) 令和1年8月2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 特許権者によって令和1年8月2日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 なお、本件訂正請求により、平成30年12月4日に提出された訂正請求書による訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法第120条の5第7項)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、 アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、 特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、 前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、 前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段と をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の物品収容補助装置。」と記載されているものを、独立形式に改め、 「物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段と、 画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段と、 収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段と、 前記撮像手段により得られた画像情報から収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段と、 前記第1の記憶手段から前記取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段と、 前記撮像手段により、収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段と、 前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を前記表示手段に表示する手段と を具備することを特徴とする物品収容補助装置であって、 前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、 アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、 特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、 前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、 前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段と をさらに具備することを特徴とする物品収容補助装置。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記獲得された収納情報と前記第2のID情報に関連する収納情報とを比較する手段をさらに具備することを特徴とする請求項1もしくは2記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記獲得された収納情報と前記第2のID情報に関連する収納情報とを比較する手段をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点を該マーカーの所定の動きによって画される情報であることを特徴とする請求項1もしくは2記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点を該マーカーの所定の動きによって画される情報であることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点が音声によって与えられることを特徴とする請求項1もしくは2記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点が音声によって与えられることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「前記表示手段が、実際の目視風景と、前記作成された情報とを重畳して表示できるヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする請求項1もしくは2記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記表示手段が、実際の目視風景と、前記作成された情報とを重畳して表示できるヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「前記ディスプレイが可搬表示装置であることを特徴とする請求項4記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記表示手段が可搬表示装置であることを特徴とする請求項4記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「前記光学的特徴情報が識別子であることを特徴とする請求項1乃至5のうち1項記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「前記光学的特徴情報が識別子であることを特徴とする請求項2乃至5のうち1項記載の物品収容補助装置。」 に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「物品収納位置情報が前記光学的特徴情報に係る場所に関連付けて、前記表示手段に重畳的に表示されることを特徴とする請求項1乃至6のうち1項記載の物品収容補助装置。」と記載されているのを、「物品収納位置情報が前記光学的特徴情報に係る場所に関連付けて、前記表示手段に重畳的に表示されることを特徴とする請求項2乃至6のうち1項記載の物品収容補助装置。」に訂正する。 訂正前の請求項1?9は、請求項2?9が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接または間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項1?9について請求されている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項2によって、訂正後の請求項2について何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3?6 訂正事項3?6は、訂正前の請求項3?6が請求項1または2の記載を引用する記載であったのを、引用請求項数を削減し、請求項2の記載を引用する記載にするための訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3?6は、訂正前の請求項3?6の引用請求項数を削減するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項7 訂正前の請求項7には「前記ディスプレイ」とあったところ、訂正前の請求項7が直接または間接的に引用している請求項においては、「ディスプレイ」という語が存在していないため、訂正前の請求項7の記載は、当該請求項7が直接または間接的に引用している請求項との関係において不明瞭な記載であった。 訂正事項7は、訂正前の請求項7の「前記ディスプレイ」との記載を「前記表示手段」とすることにより、上記不明瞭な記載を明瞭な記載とするものといえ、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正前の請求項7が引用する訂正前の請求項1には、「表示手段」との記載があり、本件明細書中においては、ディスプレイが、画像情報や文字情報を含む情報を表示することができる表示手段を具体化したものとして示されているから(段落【0031】、【0053】、【0055】、【0060】及び【0093】等)、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 さらに、訂正事項7は、訂正前の不明瞭な記載を明瞭な記載とするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項8 訂正事項8は、訂正前の請求項8が、請求項1?5のうちいずれかを引用する記載であったのを、引用請求項数を削減し、請求項2?5の記載を引用する記載にするための訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項8は、訂正前の請求項8の引用請求項数を削減するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項9 訂正事項9は、訂正前の請求項9が、請求項1?6のうちいずれかを引用する記載であったのを、引用請求項数を削減し、請求項2?6の記載を引用する記載にするための訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項9は、訂正前の請求項9の引用請求項数を削減するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 独立特許要件 本件においては、訂正前の請求項1?3及び6?9について特許異議の申立てがされているので、訂正事項2によって訂正される訂正後の請求項2及び当該訂正後の請求項2の記載を直接または間接的に引用する訂正後の請求項3?9に係る発明のうち、訂正後の請求項3及び6?9に係る発明については特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項で規定される独立特許要件は課されない。 一方、特許異議の申立てがされていない請求項4及び5は、訂正事項4及び5により特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がなされているから、訂正後の請求項4及び5に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項で規定される独立特許要件を満たすものでなければならない。 訂正後の請求項4及び5に係る発明は、訂正後の請求項2に係る発明をさらに限定したものであるから、後記「第6 2(2)」で説示のとおり、特許異議申立書に添付した甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、他に請求項4及び5に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を見出せない。 したがって、訂正後の請求項4及び5に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。 4 小括 したがって、本件訂正請求に係る訂正事項1?9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項から第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?9〕についての訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項2?9に係る発明(以下、「本件発明2」?「本件発明9」という。)は、令和1年8月2日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2?9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明2] 「物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段と、 画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段と、 収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段と、 前記撮像手段により得られた画像情報から収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段と、 前記第1の記憶手段から前記取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段と、 前記撮像手段により、収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段と、 前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を前記表示手段に表示する手段と を具備することを特徴とする物品収容補助装置であって、 前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、 アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、 特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、 前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、 前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段と をさらに具備することを特徴とする物品収容補助装置。」 [本件発明3] 「前記獲得された収納情報と前記第2のID情報に関連する収納情報とを比較する手段をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」 [本件発明4] 「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点を該マーカーの所定の動きによって画される情報であることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」 [本件発明5] 「前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点が音声によって与えられることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。 [本件発明6] 「前記表示手段が、実際の目視風景と、前記作成された情報とを重畳して表示できるヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。」 [本件発明7] 「前記表示手段が可搬表示装置であることを特徴とする請求項4記載の物品収容補助装置。」 [本件発明8] 「前記光学的特徴情報が識別子であることを特徴とする請求項2乃至5のうち1項記載の物品収容補助装置。」 [本件発明9] 「物品収納位置情報が前記光学的特徴情報に係る場所に関連付けて、前記表示手段に重畳的に表示されることを特徴とする請求項2乃至6のうち1項記載の物品収容補助装置。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由 取消理由の概要 訂正前の請求項1、3、6、8及び9に係る特許に対して、当審が令和1年5月27日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 [取消理由1] 本件特許の請求項1、3、6、8及び9に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が、容易に発明をすることができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [取消理由2] 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 [取消理由1]について 甲第1号証:特開2013-245029号公報(特許異議申立書の甲第1号証) [取消理由2]について 本件特許の請求項1及び請求項3、6、8及び9(ただし請求項2を引用しないもの)には、作業者による商品移動の情報を逐次情報処理装置に入力するための手段が反映されていないから、本件特許の請求項1及び請求項3、6、8及び9(ただし請求項2を引用しないもの)の記載は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えて特許を請求することとなる。 したがって、本件特許の請求項1及び請求項3、6、8及び9(ただし請求項2を引用しないもの)に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由 申立人が特許異議申立書において主張した特許異議申立理由のうち、取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 [異議申立理由1] 本件特許の、請求項1、3、7及び8に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証にそれぞれ記載された発明であり、また、請求項2、6及び9に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [異議申立理由2] 本件特許の、請求項2及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、あるいは、請求項1?3及び6?9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 [異議申立理由3] 本件特許の、特許請求の範囲の請求項1の記載の、「第1のID情報」と「第2のID情報」との関係が明確でないため、課題を解決するための手段が反映されておらず、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 [異議申立理由4] 本件特許の、特許請求の範囲の記載の、「第1のID情報」と「第2のID情報」はその技術的意味が明確でないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確ではない。 したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 第6 当審の判断 1 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について (1)[取消理由1](特許法第29条第2項)について 本件訂正請求により、訂正前の請求項1は削除され、請求項3?9は請求項2の記載を直接または間接的に引用するものとなり、本件発明3?9は本件発明2をさらに限定した発明となった。 後記2(2)オ(ア)で説示のとおり、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、同様の理由により、本件発明3、6、8及び9も、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、[取消理由1]は、理由がない。 (2)[取消理由2](特許法第36条第6項第1号)について [取消理由2]は、訂正前の請求項1の記載不備に基づくものであったところ、本件訂請求により請求項1は削除されたため、[取消理由2]は、理由がない。 なお、訂正前の請求項1の記載を引用した請求項2に係る発明には記載不備の取消理由はない(後記2(3)を参照。)。 2 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許法第29条第1項第3号について 後記(2)オ(ア)aで説示のとおり、本件発明2と甲第1号証に記載された甲1発明との間には、少なくとも実質的な相違点といえる相違点2が存在するから、本件発明2並びに本件発明2をさらに限定した本件発明3及び6?9は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。 また、後記2(2)オ(イ)で説示のとおり、本件発明2と甲第2号証に記載された甲2発明との間には、少なくとも実質的な相違点といえる相違点5が存在するから、本件発明2並びに本件発明2をさらに限定した本件発明3、7及び8は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。 したがって、[異議申立理由1]は理由がない。 なお、請求項1は、本件訂正請求により削除されている。 (2)特許法第29条第2項について ア 甲第1号証に記載の事項 申立人が特許異議申立書において提出した甲第1号証(特開2013-245029号公報)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア1)「【0026】 さらに、ピッキングシステム1は、保管棚3と搬送コンベヤ4との間の長手状空間部である作業者用スペース7にその長手方向に互いに間隔をおいて配置された複数の作業者Xの各々が脱着可能に装着した拡張現実装置であるAR眼鏡(透過型のヘッドマウントディスプレイ:HMD)5を備えている。」 (ア2)「【0035】 そして、各フリーローラ部12の後端部には、付加情報提示位置を特定するためのマーカー型ビジョンベースAR用のマーカー(識別子)である保管部識別用後側ARタグ15が固設されている。つまり、保管棚3の後面側には、各保管部2ごとに保管部識別用後側ARタグ15が設けられている。各保管部識別用後側ARタグ15の表面には、それぞれ異なる図形が付されている。」 (ア3)「【0039】 AR眼鏡5は、図1および図2等に示されるように、例えばGPS(全地球測位システム)およびARタグ14,15,20を利用して現実空間(現実環境)の位置情報を取得しつつ、装着者である作業者Xに対して所定の付加情報(CG画像等の視覚的情報)を現実空間の所望位置に付加提示するものである。 【0040】 このAR眼鏡5によって作業者Xに提示される付加情報は、例えば、作業者Xに対してピッキングすべき物品Wが保管されている保管部2を指示する保管部指示情報である保管部指示画像、作業者Xに対して物品Wを投入すべき集品容器aを指示する集品容器指示情報である集品容器指示画像、作業者Xに対して物品Wを補充すべき保管部2を指示する補充保管部指示情報である補充保管部指示画像等である。 【0041】 ここで、AR眼鏡5は、図2に示されるように、作業者Xが頭部に装着可能な眼鏡部21と、この眼鏡部21に設けられたカメラ部22と、これら眼鏡部21およびカメラ部22に電気的に接続された制御部23とを有している。なお、制御部23は、制御装置6との間で無線通信をするための通信手段等を有している。 【0042】 また、眼鏡部21は、作業者Xの両眼の前方を覆う透過型のディスプレイ(透過型表示部)25を有している。つまり、眼鏡部21は、作業者Xがその眼鏡部21を装着した状態のまま現実空間の光景とこの光景の一部に重なり合った付加情報とを見ることが可能な左右1対の透明な小型のディスプレイ25を有している。両ディスプレイ25は眼鏡枠26の左右両側に固着され、この眼鏡枠26の左右方向中央部にカメラ部22が固着されている。 【0043】 そして、制御部23による制御に基づいて眼鏡部21のディスプレイ25が現実空間の光景(現実像)に付加情報を仮想的に重畳表示することにより、その付加情報が現実空間に付加された状態となって作業者Xに対して提示される。」 (ア4)「【0076】 次に、保管棚3への物品Wの補充作業について説明すると、制御装置6のコンピュータ本体31には、予め補充する商品データと補充場所(間口アドレス)が登録されている。 【0077】 なお、補充する物品Wは、例えば予め保管棚3の付近に配置されているものとするが、離れた棚等にある場合は、AR眼鏡5にてトータルピッキングを行ってから補充してもよい。 【0078】 AR眼鏡5を装着した作業者(補充作業者)Xは、補充物品Wを選択後、その選択した物品Wに付されている識別子(例えばバーコード、ICタグ等)、或いは、その選択した物品Wが入った保管容器bに付されている識別子(例えばバーコード、ICタグ等)を読取装置である例えばAR眼鏡5で検知する。 【0079】 すると、例えば図9に示すように、AR眼鏡5の眼鏡部21のディスプレイ25には、物品Wを検知したことがわかる付加情報(例えば商品名表示、商品コード、「補充有り」というメッセージ等)が表示される。なお、補充すべき物品Wでない場合は、その旨を作業者Xに知らせるための付加情報(例えば「補充無し」というメッセージ等)がディスプレイ25に表示される。また、保管棚3の在庫管理を行っている場合には、補充する物品Wの数量をディスプレイ25に表示するようにしてもよい。 【0080】 そして、作業者Xが補充すべき物品Wを持ったまま保管棚3側を向くと、AR眼鏡5は、このAR眼鏡5を装着した作業者Xに対して、補充保管部指示画像を現実空間の所望位置((例えば1つの保管部))に重畳表示するようにして付加提示する。 【0081】 すなわち例えば、図10に示すように、AR眼鏡5を装着した作業者Xが、AR眼鏡5の眼鏡部21のディスプレイ25を通して保管棚3を見ると、その作業者Xは、自己が担当する複数の保管部2中で唯一の保管部2と重なった1つの補充保管部指示画像(図10上、斜線を施した部分)を視認することとなる。 【0082】 この補充保管部指示画像は、例えばその唯一の保管部2である対象補充保管部2の後面に重なって位置するように、ディスプレイ25に表示された赤色画像である。」 (ア5)「【0084】 そして、作業者Xは、補充保管部指示画像によって指示された対象補充保管部2内に物品Wを補充する。 【0085】 この補充後、作業者Xは、補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を行う。すると、AR眼鏡5は、作業者Xの補充完了のジェスチャーを検知して補充完了データを制御装置6に送信し、ディスプレイ25上の補充保管部指示画像が消える。 【0086】 続いて、作業者Xは、別の補充物品Wのバーコード等の識別子をAR眼鏡5で検知し、同様に補充作業を進めていく。」 イ 甲第1号証に記載の発明 (ア)上記アの(ア2)及び(ア3)の記載からAR眼鏡5は保管棚3の保管部識別用後側ARタグ15を検知する手段を有していると認められる (イ)また、上記アの(ア4)【0078】の記載からAR眼鏡5は補充物品Wの識別子を検知する手段を有していると認められる。 (ウ)さらに、上記アの(ア3)【0039】、【0040】及び(ア4)【0078】?【0080】)の記載から、AR眼鏡5は作業者Xが補充物品Wを持ったまま保管棚3側を向くと、AR眼鏡5は保管部識別用後側ARタグ15を利用して現実空間の位置情報を取得しつつ、補充保管部指示画像を現実空間の所望位置に重畳表示するようにAR眼鏡のディスプレイ25に付加提示するものであると認められる。 (エ) 上記アの各記載及び上記認定事項(ア)?(ウ)から、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「補充物品Wの識別子を検知するAR眼鏡5の検知手段、及び、保管棚3の保管部識別用後側ARタグ15を検知するAR眼鏡5の検知手段と、 補充物品Wを識別したことが分かる付加情報、及び、補充物品Wを補充すべき保管棚3の保管部2を指示する補充保管部指示画像を表示するAR眼鏡のディスプレイ25と、 補充物品Wの商品データと補充場所が登録されている制御装置6のコンピュータ本体31と、 を備え、 作業者Xが補充物品Wを持ったまま保管棚3側を向くと、AR眼鏡5は保管部識別用後側ARタグ15を利用して現実空間の位置情報を取得しつつ、補充保管部指示画像を現実空間の所望位置に重畳表示するようにAR眼鏡のディスプレイ25に付加提示し、 AR眼鏡5の検知手段は、作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知して補充完了データを制御装置6に送信し、ディスプレイ25上の補充保管部指示画像が消える、 保管棚3への補充物品Wの補充作業に使用する装置。」 ウ 甲第2号証に記載の事項 申立人が特許異議申立書において提出した甲第2号証には、図面とともに次の記載がある(下線は当審で付した。)。 (ウ1)「【0032】 在庫管理装置1は、コンピュータ2、ラベルプリンタ3、無線通信機4などを備えて構成されている。コンピュータ2は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータを用いて構成されており、表示手段としてのディスプレイや操作手段としてのキーボード等を備えている。ラベルプリンタ3は、ラベルシート状の印刷媒体に対してバーコード表示の印刷を行う印刷手段として構成されている。また、無線通信機4は、入出庫される荷Wの搬送や各収納スペース102に対する荷Wの入出庫作業を行うためのフォークリフト6に搭載される移動端末7と通信可能なアクセスポイントを構成している。コンピュータ2、ラベルプリンタ3、無線通信機4は、ハブ5を介して接続されている。 【0033】 また、コンピュータ2は、上位コンピュータ8と通信可能になっており、上位コンピュータ8から送信される入庫情報及び出庫情報を受信し、この入出庫情報に基づいて在庫管理を行うとともに、入出庫実績情報を上位コンピュータ8に計上(送信)するように構成されている。また、コンピュータ2は、無線通信機4を介して複数のフォークリフト6に搭載された各移動端末7と通信可能になっている。そして、各移動端末7には、作業者(フォークリフト運転者)に対して入出庫作業に関する各種情報等を表示する表示手段9や、各荷Wや各収納スペース102に対応して付されたバーコード表示を読み取る長距離式のバーコードリーダ10などが備えられている。」 (ウ2)「【0044】 入庫スペース記憶部39は、入庫スペース指示部38にて指定される収納スペース102を特定する入庫スペースデータを、収納スペース102に入庫される荷Wの入庫番号に対応付けて記憶する入庫スペース記憶ステップを実行する(入庫スペース記憶部39に入庫スペースデータが記憶される)。即ち、図5に例示するように、各入庫番号に対応付けて、その入庫番号が対応する荷Wが入庫される収納スペース102のラック番号及び棚番号が記憶される。」 (ウ3)「【0047】 なお、荷Wが入庫される前の状態において、図8に示すように、荷Wに貼付された入庫ラベル40に表示された入庫番号のバーコードを移動端末7のバーコードリーダ10にて読み取ると、その読み取られた入庫番号の情報が無線通信機11・4を介して在庫管理装置1に送信される。そして、読み取られた入庫番号と対応付けて入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102の入庫スペースデータが、無線通信機4・11を介して移動端末7に送信される。これに基づいて、移動端末7の表示手段9に入庫予定の収納スペース102が表示され、作業者が入庫先を把握して、その収納スペース102に対して入庫作業を行うことができる。」 (ウ4)「【0054】 図8に示すように、入庫対象の荷Wに貼付された入庫ラベル40の入庫番号がバーコードリーダ10で読み取られると、表示手段9に入庫先の収納スペース102が表示されるため、作業者は、その表示に従って指示された入庫先の収納スペース102まで入庫対象の荷Wを搬送する。そして、入庫先に到着すると、入庫先の収納スペース102であると作業者が意図している収納スペース102に対応して付されている棚番号ラベル41(図1参照)に表示されたバーコード(その収納スペース102を特定する情報を含むバーコード)の読み取り作業が行われる。この読み取り結果は、在庫管理装置1へと送信され、在庫管理装置1にて、入庫スペース指示部38にて指示した収納スペース102と読み取られた棚番号ラベル41によって特定される収納スペース102とが一致しているか否かの確認(入庫スペースの確認)が行われる(S105)。 【0055】 入庫スペースを確認した結果、比較された両収納スペース情報(入庫スペース情報)が一致していれば(S106、Yes)、棚番号ラベル41の読み取り作業を行った収納スペース102に対する入庫作業が行われる(S109)。入庫スペース情報が一致していなければ(S106、No)、一致していない旨のエラーメッセージが表示手段9等を介して作業者に報知される(S107)。このエラーメッセージに基づいて、作業者は、指示された入庫先の収納スペース102を再度確認し、入庫先の選択のやり直し(入庫スペースの修正)を行う(S108)。入庫スペース修正(S108)後は、ステップ105以降の処理が繰り返される。ステップ109にて入庫作業が完了すると、図10のフローに示す作業は終了する(S110)。」 エ 甲第2号証に記載された発明 上記ウの各記載から、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「荷Wに貼付された入庫ラベル40に表示された入庫番号のバーコードや収納スペース102に対応して付されている棚番号ラベル41に表示されたバーコードを読み取るバーコードリーダ10と、作業者に対して入出庫作業に関する各種情報等を表示する表示手段9と、を備えた移動端末7と、 入庫番号と対応付けて記憶されている入庫先の収納スペース102の入庫スペースデータを記憶している入庫スペース記憶部39と、 入庫対象の荷Wに貼付された入庫ラベル40の入庫番号がバーコードリーダ10で読み取られると、読み取られた入庫番号と対応付けて入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102が表示手段9に表示され、 入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102と、作業者が意図している収納スペース102の棚番号ラベル41のバーコードを読み取ることにより特定された収納スペース102とが一致しているか否かの確認を行う在庫管理装置1と、を備える装置。」 オ 対比・判断 (ア)甲1発明を主引用発明とした場合 a 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 (a)甲1発明の「補充物品W」は、本件発明2の「物品」及び「収納対象物」に相当する。 また、甲1発明の「保管棚3」は、本件発明2の「収納場所」に相当する。 さらに、甲1発明の「補充物品Wの識別子」は、本件発明2の「物品」「に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報」に相当する。 (b)甲1発明の「AR眼鏡5の検知手段」は、これによって、検知対象物からなんらかの情報を取得するものといえるから、本件発明2の「撮像手段」と「情報を取得する手段」との限度で共通する。これを踏まえれば、甲1発明の「補充物品Wの識別子を検知するAR眼鏡5の検知手段」は、本件発明2の「物品」「に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段」と、「物品」「に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を取得する手段」である限りで共通するとともに、本件発明2の「撮像手段により得られた画像情報から収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段」と、「収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段」である限りで共通する。 (c)甲1発明の「保管棚3の保管部識別用後側ARタグ15を検知するAR眼鏡5の検知手段」は、本件発明2の「物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段」と、「物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を取得する手段」である限りで共通するとともに、本件発明2の「撮像手段により、収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段」と、「収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段」である限りで共通する。 (d)甲1発明の「補充物品Wを識別したことが分かる付加情報、及び、補充物品Wを補充すべき保管棚3の保管部2を指示する補充保管部指示画像を表示するAR眼鏡のディスプレイ25」は、「付加情報」が「例えば商品名表示、商品コード、「補充有り」というメッセージ等」(甲第1号証の段落【0079】、上記ア(ア4)を参照。)という文字情報、「補充保管部支持画像」が画像情報であるといえるので、本件発明2の「画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段」に相当する。(e)甲1発明の「補充物品Wの商品データと補充場所が登録されている制御装置6のコンピュータ本体31」は、補充物品Wごとに補充場所にかかる情報が記憶されているといえるから、本件発明2の「収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段」に相当する。 (f)甲1発明は、「作業者Xが補充すべき物品Wを持ったまま保管棚3側を向くと、AR眼鏡5は保管部識別用後側ARタグ15を利用して現実空間の位置情報を取得しつつ、補充保管部指示画像を現実空間の所望位置に重畳表示するようにAR眼鏡のディスプレイ25に付加提示する」ものであるが、それに先立ち、補充物品Wを補充すべき保管棚3の保管部2(補充保管部)に関する情報を取得していると認められる。そうすると、甲1発明は、本件発明2の「第1の記憶手段から取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段」を備えているといえる。 (g)甲1発明の「AR眼鏡5は保管部識別用後側ARタグ15を利用して現実空間の位置情報を取得」し処理を行うことは、AR眼鏡5が保管部識別用後側ARタグ15の情報をもとにして処理を行うことであるので、本件発明2の「取得された第2のID情報をもとに」することに相当する。 (h)甲1発明の「補充保管部指示画像を現実空間の所望位置に重畳表示するようにAR眼鏡のディスプレイ25に付加提示する」ことは、本件発明2の「収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を表示手段に表示する」ことに相当する。 (i)(g)及び(h)を踏まえると、甲1発明の「AR眼鏡5は保管部識別用後側ARタグ15を利用して現実空間の位置情報を取得しつつ、補充保管部指示画像を現実空間の所望位置に重畳表示するようにAR眼鏡のディスプレイ25に付加提示する」ことは、本件発明2の「取得された第2のID情報をもとに収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を表示手段に表示する」ことに相当し、両者が「手段」により実施されることは明らかである。 (j)(b)より、甲1発明の「AR眼鏡5の検知手段」は、本件発明2の「撮像手段」と「情報を取得する手段」との限度で共通し、甲1発明の「作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)」は、作業者Xのアクションといえるから、甲1発明の「AR眼鏡5の検知手段は、作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知」することは、本件発明2の「撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段」を「具備する」ことと「情報を取得する手段により作業者からアクションに係る情報をアクション情報として取得する手段」を「具備する」ことである限りで共通する。 (k)甲1発明は、「作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知して補充完了データを制御装置6に送信」するものであるところ、このためには、作業者Xのジェスチャーのうち、例えば指でマルのサインが補充完了のジェスチャーであると定義し、この補充完了のジェスチャーがあれば補充完了データを制御装置6に送信するということが対応付けられている必要がある。そして、そのために、作業者Xのジェスチャーから例えば指でマルをしているサインであるという特徴情報を導出する手段、特徴情報を導出する手段によって、指でマルをしているサインが導出された場合、そのサインが補充完了のジェスチャーであり、これに対応して補充完了データを制御装置6に送信するという要求動作情報を定義し、格納する記憶手段、及び、補充完了のジェスチャーに対応して当該記憶手段から補充完了データを制御装置6に送信するという要求動作情報を取得する手段を備えている必要があることは明らかである。 (l)甲1発明の「保管棚3への補充物品Wの補充作業に使用する装置」は、物品を入庫収容するための補助装置といえるので、本件発明2の「物品収容補助装置」に相当する。 (m)以上のとおりであるので、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 <一致点1> 「物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を取得する手段と、 画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段と、 収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段と、 収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段と、 前記第1の記憶手段から前記取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段と、 収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段と、 前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を前記表示手段に表示する手段と、 情報を取得する手段により作業者からアクションに係る情報をアクション情報として取得する手段と、 アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、 特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、 前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、 を具備する物品収容補助装置。」 <相違点1> 「情報を取得する手段」に関して、本件発明2は「光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段」であり、「前記撮像手段により得られた画像情報から」、「収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段」及び「収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段」を「具備する」とともに「前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段」を「具備する」のに対し、甲1発明は「識別子を検知するAR眼鏡5の検知手段」及び「保管部識別用後側ARタグ15を検知するAR眼鏡5の検知手段」「を備え」また、「AR眼鏡5の検知手段は」、「作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知」するものでもある点。 <相違点2> 本件発明2は、「前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段をさらに具備」しているのに対し、甲1発明は、かかる手段を具備するものではなく、「作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知して補充完了データを制御装置6に送信し、ディスプレイ25上の補充保管部指示画像が消える」ものである点。 b 判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 本件発明2は、「前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段」によって、作業者が臨機応変に収納保管場所変更をする場合に、変更後の収納場所情報に関するデータを逐次更新することができ、作業者による臨機応変な収納保管場所変更を自動倉庫管理システムに取り込むことを可能にし、倉庫内の商品収納・保管・出荷の安全性及び作業性を向上させつつ、経済効率も向上させることが可能な物品収納位置情報入力装置を提供することができるものである(明細書の段落【0026】、【0042】?【0046】、【0064】?【0067】、【0078】?【0097】及び【0105】?【0111】を参照。)。 これに対して、甲1発明は、「作業者Xの補充完了のジェスチャー(例えば指でマルのサイン)を検知して補充完了データを制御装置6に送信し、ディスプレイ25上の補充保管部指示画像が消える」ものであることに留まり、作業者による臨機応変な収納保管場所変更に対応しているものではない。 また、甲第1号証には、甲1発明の「補充完了のジェスチャー」の他に、作業者Xのジェスチャーとして「欠品通知のジェスチャー」、「投入完了のジェスチャー」及び「仮置き完了のジェスチャー」の例示があるものの(甲第1号証の段落【0058】、【0065】及び【0099】を参照。)、作業者が収納保管場所変更をする場合については、記載も示唆もされておらず、このため作業者による収納保管場所変更後の収納場所情報に関するデータを更新する機能に関しても記載も示唆もないし、当該機能が、本件出願日前に当業者に周知の技術であったともいえない。 さらに、申立人の提出した甲第2号証(特開2005-206268号公報)においても、当該機能に関しては記載も示唆もされていない。 そして、本件発明2は、相違点2に係る構成を有することにより、「作業者による臨機応変な商品移動に対して効率よく収納場所を記録でき倉庫内の収納効率を向上させる」という格別の作用効果を奏するものであるといえる(本件明細書段落【0011】、【0021】、【0026】、【0044】、【0116】等を参照。)。 したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明2の構成となすことは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載の発明または甲第1号証に記載の発明及び周知の技術、あるいは、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明3及び6?9は、本件発明2をさらに限定したものであるから、本件発明2と同様の理由により、甲第1号証に記載の発明または甲第1号証に記載の発明及び周知の技術、あるいは、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)甲2発明を主引用発明とした場合 a 対比 本件発明2と甲2発明とを対比する。 (a)甲2発明の「荷W」は、本件発明2の「物品」及び「収納対象物」に相当する。 (b)甲2発明の「収納スペース102」は、本件発明2の「物品の収納場所」に相当し、甲2発明の「入庫予定の収納スペース102」及び「入庫先の収納スペース102」は、本件発明2の「対象物が収納されるべき場所」に相当する。 (c)甲2発明の「各荷Wに貼付された入庫ラベル40に表示された入庫番号のバーコードや各収納スペース102に対応して付されている棚番号ラベル41に表示されたバーコード」は、本件発明2の「物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報」に相当し、甲2発明のバーコードを「読み取るバーコードリーダ10」は、本件発明2の光学的特徴情報を「含む画像情報を取得する撮像手段」と、光学的特徴情報を「取得する手段」である限りで共通する。 (d)甲2発明の「作業者に対して入出庫作業に関する各種情報等を表示する表示手段9」は、本件発明2の「画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段」に相当する。 (e)甲2発明の「入庫番号と対応付けて記憶されている入庫先の収納スペース102の入庫スペースデータを記憶している入庫スペース記憶部39」は、荷Wごとに該荷Wが収納されるべき場所である収納スペース102に係る情報である入庫スペースデータを格納する記憶手段であるといえるから、本件発明2の「収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段」に相当する。 (f)甲2発明の「各荷Wに貼付された入庫ラベル40に表示された入庫番号のバーコード」は、荷Wに係る識別情報といえるから、本件発明2の「収納対象物に係る第1のID(識別)情報」に相当する。したがって、(c)を踏まえると、甲2発明の「各荷Wに貼付された入庫ラベル40に表示された入庫番号のバーコード」「を読み取るバーコードリーダ10」は、本件発明2の「撮像手段により得られた画像情報から収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段」と、「収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段」である限りで共通する。 (g)甲2発明の「入庫対象の荷Wに貼付された入庫ラベル40の入庫番号がバーコードリーダ10で読み取られると、読み取られた入庫番号と対応付けて入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102が表示手段9に表示され」ることは、バーコードリーダ10で読み取られた入庫情報に基づいて入庫スペース記憶部39から入庫先の情報を取得する手段を備えていることにほかならないから、(e)をも踏まえると、甲2発明は、本件発明2の「第1の記憶手段から取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段」に相当する手段を備えているといえる。 (h)甲2発明の「各収納スペース102に対応して付されている棚番号ラベル41に表示されたバーコード」は、荷Wの収納場所に係る情報であるといえるから、本件発明2の「収納対象物の収納場所に係る第2のID情報」に相当する。したがって、(c)を踏まえると、甲2発明の「各収納スペース102に対応して付されている棚番号ラベル41に表示されたバーコードを読み取るバーコードリーダ10」は、本件発明2の「撮像手段により、収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段」と、「収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段」である限りで共通する。 (i)甲2発明の「入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102と、作業者が意図している収納スペース102の棚番号ラベル41のバーコードを読み取ることにより特定された収納スペース102とが一致しているか否かの確認を行う」ことにおいて、入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102と、特定された収納スペース102とが一致していた場合には、棚番号ラベル41に表示されたバーコードをもとに荷Wが格納されるべき収納スペース102に係る情報が取得されていたこととなる。 したがって、甲2発明が、「入庫スペース記憶部39にて記憶されている入庫先の収納スペース102と、作業者が意図している収納スペース102の棚番号ラベル41のバーコードを読み取ることにより特定された収納スペース102とが一致しているか否かの確認を行う在庫管理装置1と、を備える」ことによって、本件発明2の「前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を前記表示手段に表示する手段と」「を具備する」ことに関して、「前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を取得する手段」「を具備する」との限りで共通する構成を有するといえる。 (j)甲2発明の「装置」は、荷Wを入庫スペース102に入庫収容するための補助装置といえるから、本件発明2の「物品収容補助装置」に相当する。 (k)以上のとおりであるから、本件発明2と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 <一致点2> 「物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を取得する手段と、 画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段と、 収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段と、 収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段と、 前記第1の記憶手段から前記取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段と、 収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段と、 前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を取得する手段と を具備する物品収容補助装置。」 <相違点3> 「光学的特徴情報を取得する手段」、「第1のID(識別)情報を取得する手段」及び「第2のID情報を取得する手段」に関して、本件発明2は、「光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段」であり、「撮像手段により得られた画像情報から」収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得し、「撮像手段により、」収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得するものであるのに対して、甲2発明は、「バーコードリーダ10」である点。 <相違点4> 本件発明2は、「前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を」取得し、当該情報を「前記表示手段に表示する表示手段」を「具備する」ものであるのに対し、甲2発明は、「収納スペース102の棚番号ラベル41のバーコードを読み取ることにより」収納スペース102に係る情報を取得し、収納スペース102を特定するものではあるものの、当該収納スペース102に係る情報を表示する表示手段を具備することは特定されていない点。 <相違点5> 本件発明2は、「前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段とをさらに具備する」ものであるのに対し、甲2発明は、かかる各手段を具備するものとはされていない点。 b 判断 事案に鑑み相違点5について検討する。 相違点5に係る本件発明5の構成は、作業者による臨機応変な商品移動に対して効率よく商品の収納場所を記録でき倉庫内の収納効率を向上させるために具備されているものである(本件明細書段落【0011】、【0021】、【0026】、【0044】、【0116】等を参照。)。 これに対して、甲2発明は、荷Wを在庫管理装置1で示された正しい収納スペース102に入庫するための発明であり、本件発明2のように、作業者による臨機応変な商品移動を想定しているものではない。また、甲第2号証には、作業者による臨機応変な商品移動を行うことについては記載も示唆もされていない。 したがって、甲2発明において、作業者による臨機応変な商品移動を検出する手段である、「前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と」「を具備する」とともに、当該商品移動に対して効率よく商品の収納場所を記録できるための手段(収納場所変更後の収納場所情報に関するデータを逐次更新する手段)である、「前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段とを」「具備する」こととすることは、当業者であっても容易にはなし得ない。 なお、甲第1号証にも、作業者が商品の収納場所変更(商品移動)をする場合については、記載も示唆もされておらず、このため作業者による収納保管場所変更後の収納場所情報に関するデータを逐次更新する機能に関しても記載も示唆もない(上記(ア)bを参照。)。また、かかる点が本件出願日前に当業者に周知の技術であったともいえない。 そして、上記に説示のように、本件発明2は、相違点5に係る構成を有することにより、「作業者による臨機応変な商品移動に対して効率よく収納場所を記録でき倉庫内の収納効率を向上させる」という格別の作用効果を奏するものであるといえる(本件明細書段落【0011】、【0021】、【0026】、【0044】、【0116】等を参照。)。 したがって、甲2発明において、相違点5に係る本件発明2の構成となすことは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲第2号証に記載の発明または甲第2号証に記載の発明及び甲第1号証に記載の事項、あるいは、甲第2号証に記載の発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明3及び6?9は、本件発明2をさらに限定したものであるから、甲第2号証に記載の発明または甲第2号証に記載の発明及び甲第1号証に記載の事項、あるいは、甲第2号証に記載の発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)小括 (ア)及び(イ)より、本件発明2、3及び6?9は、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基いて、あるいは、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、[異議申立理由2]は理由がない。 (3)特許法第36条第6項第1号及び第2項について 本件訂正請求により請求項1は削除されたので、訂正後の請求項2について検討する。 請求項2には、作業者による臨機応変な商品移動を検出する手段である、「前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と」「を具備する」とともに、当該商品移動に対して効率よく商品の収納場所を記録できるための手段(収納場所変更後の収納場所情報に関するデータを逐次更新する手段)である、「前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段とを」「具備する」と規定されており、本件特許の発明の詳細な説明に記載された、「作業者による臨機応変な商品移動に対して効率よく収納場所を記録でき倉庫内の収納効率を向上させること」を目的ないし課題として(段落【0011】、【0021】、【0026】、【0044】、【0116】等)、作業者による商品移動の情報を逐次情報処理装置に入力するための手段を備えた発明が記載されているといえる。また、訂正後の請求項2は、「第1のID情報」に関しては、「収納対象物に係る第1のID(識別)情報」及び「第1のID情報に関する収納情報を獲得する」と記載し、第1のID情報が、収納対象物、すなわち、物品に係る情報であり、この第1のID情報に基づいて収納情報を獲得すると明確に記載しているとともに、「第2のID情報」に関しては、「収納場所に係る第2のID情報」及び「第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を・・・表示する」と記載し、第2のID情報が、収納場所に係る情報であり、この第2のID情報に基づいて収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を表示すると明確に記載しているといえる。 したがって、訂正後の請求項2及び請求項2を直接または間接的に引用する請求項3?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとともに、明確であるといえる。 よって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の要件を満たし、[異議申立理由3]及び「異議申立理由4]は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2、3及び6?9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2、3及び6?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項1は、本件訂正請求により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 物品または物品の収納場所に関連する自動読み取り可能な光学的特徴情報を含む画像情報を取得する撮像手段と、 画像情報及び/もしくは文字情報を含む情報を表示することができる表示手段と、 収納対象物ごとに該収納対象物が収納されるべき場所に係る収納情報を格納する第1の記憶手段と、 前記撮像手段により得られた画像情報から収納対象物に係る第1のID(識別)情報を取得する手段と、 前記第1の記憶手段から前記取得された第1のID情報に関する収納情報を獲得する手段と、 前記撮像手段により、収納対象物の収納場所に係る第2のID情報を取得する手段と、 前記取得された第2のID情報をもとに前記収納対象物が格納されるべき収納場所に係る情報を前記表示手段に表示する手段と を具備することを特徴とする物品収容補助装置であって、 前記撮像手段により作業者からアクションに係る画像を撮像しアクション情報として取得する手段と、 アクション情報から特徴情報を導出する特徴情報導出手段と、 特徴情報ごとの要求動作に係る情報が対応して定義・格納されている第2の記憶手段と、 前記特徴情報導出手段により導出した特徴情報に対応する要求動作に係る情報を前記第2の記憶手段から取得する要求動作情報取得手段と、 前記取得された要求動作情報が所定の情報である場合に、前記第1の記憶手段に格納されている所定の収納対象物に対応する第2のID情報を更新する手段と をさらに具備することを特徴とする物品収容補助装置。 【請求項3】 前記獲得された収納情報と前記第2のID情報に関連する収納情報とを比較する手段をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。 【請求項4】 前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点を該マーカーの所定の動きによって画される情報であることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。 【請求項5】 前記アクション情報は、マーカーの始点及び終点が音声によって与えられることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。 【請求項6】 前記表示手段が、実際の目視風景と、前記作成された情報とを重畳して表示できるヘッドマウントディスプレイであることを特徴とする請求項2記載の物品収容補助装置。 【請求項7】 前記表示手段が可搬表示装置であることを特徴とする請求項4記載の物品収容補助装置。 【請求項8】 前記光学的特徴情報が識別子であることを特徴とする請求項2乃至5のうち1項記載の物品収容補助装置。 【請求項9】 物品収納位置情報が前記光学的特徴情報に係る場所に関連付けて、前記表示手段に重畳的に表示されることを特徴とする請求項2乃至6のうち1項記載の物品収容補助装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-09-04 |
出願番号 | 特願2013-267614(P2013-267614) |
審決分類 |
P
1
652・
537-
YAA
(B65G)
P 1 652・ 121- YAA (B65G) P 1 652・ 113- YAA (B65G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 福島 和幸 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
内田 博之 尾崎 和寛 |
登録日 | 2017-11-24 |
登録番号 | 特許第6245975号(P6245975) |
権利者 | トーヨーカネツソリューションズ株式会社 |
発明の名称 | AR/VRを利用した物品収納補助装置及びシステム |
代理人 | 渡邊 誠 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 友野 英三 |
代理人 | 友野 英三 |
代理人 | 田中 伸一郎 |