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審決分類 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A47B
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A47B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A47B
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A47B
管理番号 1357086
審判番号 訂正2019-390104  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2019-08-29 
確定日 2019-10-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5051863号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5051863号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第5051863号(以下「本件特許」という。)は、平成18年6月20日に特許出願され、平成24年8月3日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成29年3月21日に別件訂正審判(訂正2017-390021号)が請求され、同年5月24日に明細書及び特許請求の範囲を訂正することを認める審決がなされ、さらに令和1年8月29日に本件訂正審判が請求されたものである。


2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の要旨は、本件特許の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正すること認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(なお、下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
明細書の段落【0021】に、
「一方、引出し11の格納状態において、引出し11の鏡板11aを前述した通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ると、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの係止(吸着)状態が解除され、図7(b)に示すように、引出し11のみがレール14に沿って前方に移動してキャビネット4から引き出される。この時、内引出し13は、レール15の後方側に格納された状態となっており、例えば引出し11の上部の開口から手を入れて内引出し13の鏡板13aを前方に引っ張ることにより、内引出し13を引き出すことができる。これにより、例えば引出し11内の前部に比較的高さの高い収納物がある場合等に、一旦引出し11のみを引き出して当該収納物を取り出し、その後に内引出し13を引き出して内引出し13内の収納物を出し入れできることになる。」
とあるのを、
「一方、引出し11の格納状態において、引出し11の鏡板11aを前述した通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ると、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの係止(吸着)状態が解除され、図7(b)に示すように、引出し11のみがレール14に沿って前方に移動してキャビネット4から引き出される。この時、内引出し13は、レール15の後方側に格納された状態となっており、例えば引出し11の上部の開口から手を入れて内引出し13の鏡板13aを前方に引っ張ることにより、内引出し13を引き出すことができる。これにより、例えば引出し11内の前部に比較的高さの高い収納物がある場合等に、一旦引出し11のみを引き出して当該収納物を取り出し、その後に内引出し13を引き出して内引出し13内の収納物を出し入れできることになる。
なお、第2の引っ張り力であっても、引出し11を引き出したときに、直ちに係止手段17が内引出し13との間の係止状態を解除できず、内引出し13が引出し11に連動して若干引き出された後に係止状態が解除されることもあり得る。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0030】に、
「またさらに、上記実施形態においては、引出し11の鏡板11aが第2の引っ張り力で引っ張られた際に係止手段17の係止状態が解除されるように構成したが、例えば鏡板11aの引っ張りだけでは解除されず、両引出し11、13を手でもって所定の力で引き離すことにより解除できるように構成して、係止手段17の不用意な解除を防止する構成とすることもできる。また、上記実施形態においては、内引出し13が調理台キャビネット4の中段の引出しとして設けられる例について説明したが、調理台キャビネット4の上段や下段の引出し10、12に適用しても良いし、システムキッチン1の他のキャビネット2、5の各種引出し9に適用することもできる。」
とあるのを、
「また、上記実施形態においては、内引出し13が調理台キャビネット4の中段の引出しとして設けられる例について説明したが、調理台キャビネット4の上段や下段の引出し10、12に適用しても良いし、システムキッチン1の他のキャビネット2、5の各種引出し9に適用することもできる。」
と訂正する。


3 当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の明細書の段落【0017】?【0018】に、
「【0017】
なお、前記マグネット17aと吸着板17cの吸着力は、マグネット17a自体の磁力あるいはその大きさ等により、後述するように引出し11を通常の引っ張り力(第1の引っ張り力)で引っ張った際に吸着状態が維持され、引出し11に比較的強い力を瞬間的に加える引っ張り力(第2の引っ張り力)で引っ張った際に吸着状態が解除されるように設定されている。また、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの位置関係は、図示した例と逆構成のマグネット17aを引出し11側に配設し吸着板17cを内引出し13側に配設することも可能である。
【0018】
次に、このように構成された引出し11の動作を図7等に基づいて説明する。先ず、引出し11をキャビネット4内に押し込んだ格納状態においては、図2及び図7の実線で示すように、キャビネット4の前面開口部が引出し11の鏡板11aで閉塞された状態となっている。この状態で、引出し11を前述した通常の引っ張り力(第1の引っ張り力)で引っ張ると、引出し11がレール14に沿って前方に移動すると共に、この引出し11に係止手段17により係止されている内引出し13もレール15に沿って引出し11に連動する状態で前方に移動し、図7(a)の二点鎖線の位置に設定される。」と記載され、同じく段落【0021】に、
「【0021】
一方、引出し11の格納状態において、引出し11の鏡板11aを前述した通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ると、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの係止(吸着)状態が解除され、図7(b)に示すように、引出し11のみがレール14に沿って前方に移動してキャビネット4から引き出される。この時、内引出し13は、レール15の後方側に格納された状態となっており、例えば引出し11の上部の開口から手を入れて内引出し13の鏡板13aを前方に引っ張ることにより、内引出し13を引き出すことができる。これにより、例えば引出し11内の前部に比較的高さの高い収納物がある場合等に、一旦引出し11のみを引き出して当該収納物を取り出し、その後に内引出し13を引き出して内引出し13内の収納物を出し入れできることになる。」と記載されている。
上記記載からは、通常の引っ張り力(第1の引っ張り力)で引出し11を引っ張ることで、引出し11に係止手段17(マグネット17aと吸着板17c)により係止されている内引出し13も引出し11に連動する状態で前方に移動すること、及び、引出し11を通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ると、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの係止状態が即座に解除され、引出し11のみが前方に移動することとなることが開示されているものと認められる。
そこで、上記第2の引っ張り力と上記係止手段17の係止状態についてさらに検討すると、マグネット17aの磁力の強さとの関係において、第2の引っ張り力が通常の引っ張り力より相当強ければ、該係止状態が即座に解除されることは当然起こりうる動作であるが、第2の引っ張り力は、人が操作することによって与えられるものであって、操作毎に異なる強さとなるものであるところ、通常の引っ張り力より強いというその強さの程度が、通常の引っ張り力よりそれほど強いものでない場合に、該係止状態が即座に解除される場合もあり得る一方、該係止状態が即座に解除されず、内引出し13が若干引き出された後に解除される場合もあり得ることは、当業者にとって自明であるといえる。
よって、以上の検討事項からみて、引出し11を通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張る際に、(ア)上記係止手段17の係止状態が即座に解除して、内引出し13がレール15の後方側に格納された状態となる場合に加えて、(イ)上記係止手段17の係止状態が即座に解除せずに、内引出し13が引出し11に連動して若干引き出された後に係止状態が解除されることがあり得るものである。
してみると、第2の引っ張り力により引出11を引っ張った際の動作として、上記(ア)のみが説明されている本件訂正前の明細書の記載では、その他の動作が起こりうるかどうか不明であるから、上記(イ)の動作を説明する記載を加えた訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加について
訂正事項1は、上記アで検討したとおり、当業者にとって自明な上記(イ)の動作を加える訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の段落【0030】に記載された
「またさらに、上記実施形態においては、引出し11の鏡板11aが第2の引っ張り力で引っ張られた際に係止手段17の係止状態が解除されるように構成したが、例えば鏡板11aの引っ張りだけでは解除されず、両引出し11、13を手でもって所定の力で引き離すことにより解除できるように構成して、係止手段17の不用意な解除を防止する構成とすることもできる。」を削除するものである。
上記段落【0030】の削除事項は、係止手段17の係止状態の解除を、「両引出し11、13を手でもって所定の力で引き離すことにより解除」することが記載されたものであるが、該解除は、特許請求の範囲において記載されている「前記第1の引っ張り力よりも強い第2の引っ張り力で引っ張った」ことによる解除と整合していない。
よって、訂正事項2の上記削除は、発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載との整合させるものであるから、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2は、上記アのとおり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載との整合させるために、単に発明の詳細な説明の記載を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。


4 むすび
以上のとおり、訂正事項1、2は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項、第6項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
引出し構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン等のキャビネットに引出し可能に配設される引出し構造に係わり、特に内引出しを備えた引出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内引出しを備えてキャビネットに引出し可能に配設される引出し構造としては、例えば特許文献1に開示されている。この引出し構造は、引出しの左右側板の上部に取り付けられたガードパイプに内引出しの左右の側板底面に設けた溝条を係合させると共に、内引出しの側板に取り付けたサイドローラがキャビネットのレールに係合し、内引出しが、キャビネット内においてはレールに沿って移動し、引出しが引き出された状態においてはガードパイプに沿って移動するように構成されている。
【特許文献1】特開2003-153753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような引出し構造においては、内引出しがキャビネット内ではレールに沿って移動しキャビネット外ではガードパイプに沿って移動する構造であるため、内引出しの引出しに対する設置高さがガードパイプの位置に特定化され、設置高さの調整が困難で各種形態のキャビネットに適用できない等、汎用性の面で劣ると共に、内引出しの移動によるガードパイプの変形や傷付き防止のためガードパイプに所定の剛性を確保する必要がある。また、内引出しがレールからガードパイプに乗り移る構成であるため、この内引出しがガードパイプに乗り移る際に異音が発生したり、スムーズな引出しや格納動作が困難で引出しの使い勝手の面でも劣ることになる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な構成により各種形態のキャビネットに容易に適用し得て汎用性を向上させ得ると共に、引出しへの悪影響を無くして使い勝手に優れた引出し構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、キャビネットの側板に設けた第1のレールに沿って引出し可能に配設された引出しと、該引出しの上部空間内に配置され前記キャビネットの側板に設けた第2のレールに沿って前記引出しと共に引出し可能であって、かつ、前記引出しが引き出されているときには前記引出しと独立して引出し可能に配設された内引出しと、を備え、前記内引出しは、前記引出しに係止手段により係止可能であり、前記係止手段により係止されている際には前記引出しの引出し動作に連動して引出し可能に構成され、前記係止手段の係止状態が解除された際には前記引出しが引き出されていることを条件に前記引出しとは別体で引出し可能に配設されると共に、前記係止手段は、前記引出しがキャビネット内に格納された状態において、第1の引っ張り力で引っ張った際にその係止状態が維持されて内引出しが引出しと連動して引き出され、前記第1の引っ張り力よりも強い第2の引っ張り力で引っ張った際にその係止状態が解除されて引出しのみが引き出されることを特徴とする。
【0006】
そして、前記係止手段は、請求項2に記載の発明のように、マグネットの磁力を利用して引出しと内引出しとを係止させることが好ましい。また、前記係止手段は、請求項3に記載の発明のように、前記引出しと内引出しの背面板の長手方向両端部に緩衝手段を介してそれぞれ配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、キャビネットに設けた第2のレールに沿って引出し可能な内引出しが、キャビネットに設けた第2のレールとは別体の第1のレールに沿って引出し可能な引出しに係止手段により係止されているため、引出し内に引出し可能に配設される内引出しを引出しとは別のレールに沿って引出しでき、レールの位置により各種形態のキャビネットに容易に適用できて汎用性を向上させることができる。また、内引出しが引出しとは別のレールに沿って乗り換え等をすることなく移動するため、引出しのガードパイプ等への悪影響を無くすことができると共に内引出しの引出し時に異音の発生がなく、かつ内引出しのスムーズな引出し動作が得られる等、使い勝手に優れた引出しや格納構造を得ることができる。さらに、係止手段の係止状態が解除された際に内引出しが引出しとは別体で引出し可能に配設されているため、例えば引出しを引き出した状態で内引出しを引き出すことができたり、両引出しを引き出した状態から内引出しのみを格納することもできて、引出し内の収容物の出し入れが容易に行える等、引出しの使い勝手の向上を図ることができる。
【0008】
また、格納状態の引出しを第1の引っ張り力で引っ張った際に係止手段の係止状態が維持され、第2の引っ張り力で引っ張った際に係止手段の係止状態が解除されるため、引出しの引っ張り力によって引出しと内引出しの係止状態を所望に設定して引出しや内引出し内への収納物の出し入れが可能となり、引出しの使い勝手の一層の向上を図ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、係止手段がマグネットの磁力を利用して引出しと内引出しとを係止させるため、安価な所定磁力のマグネットの使用により係止手段による係止やその解除を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、係止手段が引出しと内引出しの背面板の長手方向両端部に緩衝手段を介してそれぞれ配置されているため、引出しと内引出しを係止手段で確実に係止できると共に、緩衝手段により係止手段の係止や解除時の異音発生等を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1?図7は、本発明に係わる引出し構造を採用したシステムキッチンの一実施形態を示し、図1がシステムキッチンの斜視図、図2が調理台キャビネットの縦断面図、図3及び図4がその半断面図及び平面図、図5及び図6が要部の側面図及び背面図、図7が動作説明図である。
【0012】
図1に示すように、システムキッチン1は、上面にシンク6が配置されたシンクキャビネット2と、このシンクキャビネット2の右側に配置され食器乾燥機が内蔵された乾燥機キャビネット3と、シンクキャビネット2の左側に配置された調理台キャビネット4と、この調理台キャビネット4の左側に配置され上面にコンロ台7が設けられたコンロ台キャビネット5等を有し、これらの各キャビネット2?5の上面には、カウンター8が配置されている。
【0013】
また、シンクキャビネット2及びコンロキャビネット5には、所定数の引出し9が配設されると共に、調理台キャビネット4には、例えば上下方向に3段の引出し10?12が設けられている。この調理台キャビネット4(以下、単にキャビネット4という)は、図2?図4に示すように、前板4a、左右の側板4b、底板4c、背面板4d等により前面に開口部を有する如く枠組み形成され、前面の開口部に3つの引出し10?12が引出し可能に配設されている。この3つの引出し10?12のうち、中段の引出し11にはその内部に内引出し13が配設されている。
【0014】
すなわち、引出し11は、前面の鏡板11aと、左右の側板11b、底板11c及び背面板11d等によって箱状に形成され、左右の側板11bに設けたローラ(図示せず)がキャビネット4の側板4b内面に設けたレール14(図3参照)に係合することにより、キャビネット4に対して引出し可能に配設されている。また、引出し11の側板11b上方で鏡板11aの裏面と背面板11d間には金属や樹脂製のガードパイプ16が取り付けられており、このガードパイプ16の上方で、鏡板11aの後方に形成される引出し11の内部空間内に内引出し13が配設されている。
【0015】
この内引出し13は、前面の鏡板13aと、左右の側板13b、底板13c及び背面板13d等によって、引出し11の略半分程度の面積を有する箱状に形成され、左右の側板13bに設けたローラ(図示せず)がキャビネット4の側板4b内面に設けたレール15(図3参照)に係合することにより、キャビネット4に対して引出し11とは独立して引出し可能に配設されている。この時、内引出し13用のレール15と引出し11用のレール14は、レール15の長さがレール14の長さより所定寸法短く形成されて、内引出し13の引出し距離が所定距離となるように設定されている。
【0016】
また、内引出し13と引出し11は、その背面板13d、11d側で係止手段17によって係止されている。この係止手段17は、図5及び図6に示すように、内引出し13の背面板13dの左右幅方向両端部にマグネット取付板17bによって配設されたマグネット17aと、引出し11の背面板11dの左右幅方向両端部に配設された吸着板17c等により形成されている。この時、マグネット取付板17bは側面視でL字形状に形成され、その下方に延びた垂直部に接着剤18を介して例えば円盤状のマグネット17aが固着され、また、吸着板17cのマグネット17aが吸着する部分には、フェルトやスポンジ等からなる薄い緩衝材19(緩衝手段)が固着されている。
【0017】
なお、前記マグネット17aと吸着板17cの吸着力は、マグネット17a自体の磁力あるいはその大きさ等により、後述するように引出し11を通常の引っ張り力(第1の引っ張り力)で引っ張った際に吸着状態が維持され、引出し11に比較的強い力を瞬間的に加える引っ張り力(第2の引っ張り力)で引っ張った際に吸着状態が解除されるように設定されている。また、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの位置関係は、図示した例と逆構成のマグネット17aを引出し11側に配設し吸着板17cを内引出し13側に配設することも可能である。
【0018】
次に、このように構成された引出し11の動作を図7等に基づいて説明する。先ず、引出し11をキャビネット4内に押し込んだ格納状態においては、図2及び図7の実線で示すように、キャビネット4の前面開口部が引出し11の鏡板11aで閉塞された状態となっている。この状態で、引出し11を前述した通常の引っ張り力(第1の引っ張り力)で引っ張ると、引出し11がレール14に沿って前方に移動すると共に、この引出し11に係止手段17により係止されている内引出し13もレール15に沿って引出し11に連動する状態で前方に移動し、図7(a)の二点鎖線の位置に設定される。
【0019】
この両引出し11、13の引出し時に、引出し11と内引出し13がそれぞれ専用のレール14、15に沿って移動し、内引出し13の荷重が引出し11のガードパイプ16等に加わることがなくなると共に内引出し13が1本のレール15上を移動し、両引出し11、13がキャビネット4に対してスムーズに引き出されることになる。なお、引出し11や内引出し13の最前端の引出し位置は、レール14、15の長さと図示しないストッパにより規制されており、引出し11を最大限引き出した場合に、引出し11と内引出し13との係止状態が維持されるように設定しても良いし、内引出し13の最先端の引出し位置をやや後方に設定して、引出し11を最大限引き出した場合に、引出し11と内引出し13との係止状態が解除されるようにマグネット17aと吸着板17cとの間に所定の隙間が生じるように設定しても良い。
【0020】
そして、両引出し11、13の引出し位置で収容物の出し入れ作業が終了して、引出し11の鏡板11aが後方側に押されると、引出し11がレール14に沿って後方側に移動すると共に、この引出し11に係止手段17により係止されている内引出し13も引出し11と連動する状態でレール15に沿って後方側に移動し、両引出し11、13が図7(a)の実線で示す格納位置に設定される。この引出し11、13の格納時においても、両引出し11、13がそれぞれ専用のレール14、15に沿って互いに干渉することなく移動して、キャビネット4内にスムーズに格納されることになる。
【0021】
一方、引出し11の格納状態において、引出し11の鏡板11aを前述した通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ると、係止手段17のマグネット17aと吸着板17cの係止(吸着)状態が解除され、例えば、図7(b)に示すように、引出し11のみがレール14に沿って前方に移動してキャビネット4から引き出される。この時、内引出し13は、レール15の後方側に格納された状態となっており、例えば引出し11の上部の開口から手を入れて内引出し13の鏡板13aを前方に引っ張ることにより、内引出し13を引き出すことができる。これにより、例えば引出し11内の前部に比較的高さの高い収納物がある場合等に、一旦引出し11のみを引き出して当該収納物を取り出し、その後に内引出し13を引き出して内引出し13内の収納物を出し入れできることになる。
なお、第2の引っ張り力であっても、引出し11を引き出したときに、直ちに係止手段17が内引出し13との間の係止状態を解除できず、内引出し13が引出し11に連動して若干引き出された後に係止状態が解除されることもあり得る。
【0022】
また、この引出し11と内引出し13の係止状態が解除された場合の両引出し11、13のキャビネット4内への格納は、引出し11を後方側に押し込むことによる背面板11dの移動により、その吸着板17cも移動して内引出し13のマグネット17aに当接して吸着される。この時、吸着板17cに緩衝材19が固着されているため、マグネット17aがこの緩衝材19を介してマグネット17aに吸着され、吸着板17cとマグネット17aの吸着時の異音(吸着音)の発生が抑制される。また、引出し11が内引出し13とは別体で前方に引き出されている場合は、引出し11を押し込むだけで、その収納動作中において係止手段17で両引出し11、13が係止されて一体となりキャビネットの格納位置に格納されることになる。
【0023】
つまり、前記引出し11の場合、引出し11の内部空間内に配設される内引出し13を専用のレール15に沿って移動させると共に、引出し11と内引出し13をその背面板11d、13d側で係止手段17により係止させることにより、通常の引っ張り力の場合は、両引出し11、13を一体化した状態でかつ互いに干渉することなく引出したり格納することができ、また、比較的強い力で引っ張ることにより、係止手段17の係止状態が解除されて引出し11のみを引出しできることになる。
【0024】
このように、上記実施形態の引出し11にあっては、キャビネット4の側板4bに引出し専用のレール14と内引出し13専用のレール15をそれぞれ配置し、両引出し11、13の背面板11d、13dが係止手段17により互いに係止されているため、引出し11内に引出し可能に配設される内引出し13を引出し11とは別のレール15に沿って引出したり格納することができる。その結果、例えばレール15の位置により各種大きさ等のキャビネット4に容易に適用することができて汎用性を向上させることができる。また、同時に、内引出し13の引出しや格納時に、引出し11のガードパイプ16等への干渉がなくなり、従来の内引出しのような引出し時の異音発生を防止できると共に引出し11の変形等が防止されて、長期に亘る内引出し13のスムーズな引出し動作が得られて使い勝手に優れたキャビネット4を提供することが可能となる。
【0025】
また、キャビネット4にそれぞれ専用のレール14、15を設けることで対応できるため、部材(特にレール14、15)の共通化が図れて、従来のようにレールやキャビネットを個別に設定(開発)する必要がなくなり、コスト的に有利なキャビネット4を得ることができる。また、係止手段17(特にマグネット取付板17b)の形状やレール15の形状(長さや位置)を工夫することにより、内引出し13の引出しに対する設置高さや奥行き位置を所望に設定できて、ユーザーの好みに応じたキャビネット4の開発を容易に行うことができる。さらに、係止手段17が引出し11や内引出し13の背面板11d、13d側に位置するため、係止手段17が収納物の出し入れ時に邪魔になることがなくなると共に、引出し11を引き出した際に前方から視認され難く、キャビネット4の見栄えの低下を防止することもできる。
【0026】
また、引出し11の鏡板11aを通常の引っ張り力より強い第2の引っ張り力で引っ張ることにより、係止手段17の係止状態が解除されるため、引出し11を引き出した状態で内引出し13を前方に引き出すことができて、例えば引出し11内の前部に収納されている高さの高い収容物を出した後に内引出し13を引き出しできる等、引出し11の使い勝手の向上を図ることができる。特に、引出し11の引っ張り力によって引出し11と内引出し13の係止状態を所望に設定できることから、格別な部品を設けることなく、係止手段17の解除や係止を行うことができて、構成簡易にして引出し11の使い勝手のより一層の向上を図ることが可能となる。
【0027】
さらにまた、係止手段17としてマグネット17aと吸着板17cが使用され、マグネット17の磁力を利用して引出し11と内引出し13とを係止させる構造であるため、安価で所定磁力のマグネット17aの使用により係止手段17の係止や解除を簡単かつスムーズに行うことができる。また、係止手段17が引出し11と内引出し13の背板板11d、13dの長手方向両端部に緩衝材19を介してそれぞれ配置されているため、引出し11と内引出し13を係止手段17で確実に係止できると共に、緩衝材19により係止手段17の係止や解除時の異音発生を抑制することができて、一層スムーズな引出し動作や格納動作を得ることが可能となる。
【0028】
なお、上記実施形態においては、係止手段17としてマグネット17aと吸着板17cを使用したが、本発明はこれに限定されず、例えば一対の布製ファスナや回転可能なローラとこれを挟み込む鈎状フックからなる係止部材等、互いに脱着可能な他の適宜の係止手段を採用することができる。また、上記実施形態においては、係止手段17を、内引出し13の背面板13dと引出し11の背面板11dのそれぞれ左右幅方向両端部に配設されたマグネット17aと吸着板17c等により形成しているが、内引出し13の背面板13dと引出し11の背面板11dのそれぞれ左右幅方向の中央部等に1つのマグネット17aと吸着板17cとを設ける構成としても良く、係止手段17の配置位置等は限定されるものではない。
【0029】
さらに、上記実施形態においては、係止手段17の解除を引出し11の鏡板11aの引っ張り力の大小で行ったが、例えば係止手段17として電磁石と吸着板を使用し、電磁石へ通電するためのスイッチを引出し11の鏡板11a等に設け、該スイッチをオンした際に電磁石がOFFして係止手段17の係止状態を解除する構成とすることもできる。また、この係止手段17の解除方法としては、鏡板11aに把手を傾動可能に設けると共にこの把手と係止手段17とを連結し、把手を傾動させた際に係止手段が解除される機械的な構成を採用することも可能である。
【0030】
また、上記実施形態においては、内引出し13が調理台キャビネット4の中段の引出しとして設けられる例について説明したが、調理台キャビネット4の上段や下段の引出し10、12に適用しても良いし、システムキッチン1の他のキャビネット2、5の各種引出し9に適用することもできる。
【0031】
また、上記実施形態における、システムキッチン1の全体構成や各キャビネット自体の構成、引出し11や内引出し13の構成等も一例であって、例えば引出し11のガードパイプ16を廃止したり、各引出し11、13をパンチング板で形成する等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、システムキッチン等のキッチンの引出しキャビネットへの適用に限らず、例えばキッチンのシンクキャビネットやコンロ台キャビネット等の引出し、あるいはキッチン以外の洗面化粧台や各種ストッカー、各種机のキャビネット等、引出しを有する全ての製品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係わる引出し構造を採用したシステムキッチンの一実施形態を示す斜視図
【図2】同その引出しキャビネットの縦断面図
【図3】同その正面から見た半断面図
【図4】同平面図
【図5】同引出しと内引出しの連結部分の側面図
【図6】同その背面図
【図7】同動作説明図
【符号の説明】
【0034】
1・・・システムキッチン、2・・・シンクキャビネット、3・・・乾燥機キャビネット、4・・・調理台キャビネット、4b・・・側板、4d・・・背面板、5・・・コンロ台キャビネット、9、10?12・・・引出し、11a・・・鏡板、11b・・・側板、11c・・・底板、11d・・・背面板、13・・・内引出し、13a・・・鏡板、13b・・・側板、13c・・・底板、13d・・・背面板、14・・・レール、15・・・レール、16・・・ガードパイプ、17・・・係止手段、17a・・・マグネット、17b・・・マグネット取付板、17c・・・吸着板、18・・・接着剤、19・・・緩衝材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-09-26 
結審通知日 2019-10-01 
審決日 2019-10-15 
出願番号 特願2006-169507(P2006-169507)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (A47B)
P 1 41・ 855- Y (A47B)
P 1 41・ 854- Y (A47B)
P 1 41・ 841- Y (A47B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
秋田 将行
登録日 2012-08-03 
登録番号 特許第5051863号(P5051863)
発明の名称 引出し構造  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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