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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1357294
審判番号 不服2018-15326  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2019-12-11 
事件の表示 特願2017-161669「位置ベースナビゲーションおよび拡張現実アプリケーション用のアンカー」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月18日出願公開、特開2018- 10662、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年6月6日(以下,「本願優先日」という。)を優先日とし,2013年6月2日を国際出願日とする特願2015-515618号の一部を平成29年8月24日に新たな特許出願としたものであって,同日付けで審査請求がなされ,平成30年5月21日付けで特許法第50条の2の通知を伴う拒絶理由通知(同年5月23日発送)がなされ,同年8月17日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年8月29日付けで拒絶査定(原査定)(同年9月5日発送)がなされ,これに対し,同年11月19日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,同年12月17日付けで特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年8月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1?8に係る発明は,以下の引用文献1?3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-139197号公報
2.米国特許出願公開第2012/0039529号明細書
3.特開2008-134989号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正(以下,「本件補正」という。)は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

本件補正によって,本件補正前の請求項1及び2に「ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し、そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる」という事項を追加する補正は,本件補正前の請求項3を付加したものに該当することから,請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。

また,本件補正前の請求項4を,本件補正によって請求項3とし,「請求項1または2に記載の方法」とする補正は,本件補正後の請求項1が本件補正前の請求項1に本件補正前の請求項3を付加したもの,本件補正後の請求項2が本件補正前の請求項2に本件補正前の請求項3を付加したものに該当することから,請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。

加えて,本件補正前の請求項5を,本件補正によって請求項4とし,「前記1つのシンボルが前記媒体上に印刷される」という事項を追加する補正は,本件補正前の請求項6を付加したものに該当することから,請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。

また,本件補正前の請求項7を,本件補正によって請求項5とし,「請求項4に記載の媒体」とする補正は,本件補正後の請求項4が本件補正前の請求項5に本件補正前の請求項6を付加したものに該当することから,請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。

また,本件補正前の請求項8を,本件補正によって請求項6とし,「請求項3-5のいずれかに記載の媒体」とする補正は,
本件補正後の請求項3が本件補正前の請求項1に本件補正前の3を付加したもの,または,本件補正前の請求項2に本件補正前の請求項3を付加したものに対して,本件補正前の請求項4を更に付加したもの,
本件補正後の請求項4が本件補正前の請求項5に本件補正前の請求項6を付加したもの,
本件補正後の請求項5が本件補正前の請求項5に本件補正前の請求項6及び請求項7を付加したもの
に該当するから,請求項の削除を目的とするものであり,新規事項を追加するものではない。

そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,本件補正後の請求項1?6に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は,平成30年11月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
情報を符号化する方法であって、
1つのデジタル値を特定するステップと、
1つのシンボルを形成するステップと、
を有し、
前記1つのシンボルは、前記特定された1つのデジタル値を、前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄色の色要素として識別されるべき、異なるそれぞれの色からなる、1組の色要素に符号化し、
ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し、そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
情報を符号化する方法であって、
1つのデジタル値を特定するステップと、
1つのシンボルを形成するステップと、
を有し、
前記1つのシンボルは、前記特定された1つのデジタル値を、前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄色の色要素として識別されるべき、異なるそれぞれの色からなる、1組の色要素に符号化し、
ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】

ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し、そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
接触可能媒体であって、請求項1または2に記載の方法に従うシンボルが前記媒体上に提供される、ことを特徴とする接触可能媒体。
【請求項4】
接触可能媒体であって、1つのシンボルが前記媒体の上に提供され、
ここにおいて前記シンボルはポリゴンタイルのモザイク配列からなり、
前記ポリゴンタイルのモザイク配列は、複数の共通頂点で会合し、そしてそれぞれの共通頂点における特定されたそれぞれのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持ち、
ここにおいて任意の所与の共通頂点を取り巻く前記色は互いに異なり、
ここにおいて前記シンボルは、前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し、
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は、前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと、そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと、によりそれぞれの共通頂点において符号化され、
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は、前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがなく、そして前記シンボル内の前記ポリゴンタイルのいずれもが黒または白でなく、そして前記シンボル内の全ての前記共通頂点が、前記拡張デジタル値に組み合わされるそれぞれのデジタル値を符号化する、ように選択され、
前記1つのシンボルが前記媒体上に印刷される、
ことを特徴とする、接触可能媒体。
【請求項5】
前記ポリゴンタイルの前記色は赤、緑、青、シアン、マゼンタおよび黄色から構成され、そしてそれぞれ3ビット符号(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1),(0,1,1),(1,0,1)および(1,1,0)を持つ色グループから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の媒体。
【請求項6】
前記シンボルは複数の前記ポリゴンタイル以外の追加のレジストレーションマークを持たずに提供される、ことを特徴とする請求項3-5のいずれかに記載の媒体。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0025】
[カラーコード付きターゲット]
図1に、第1の実施の形態によるカラーコード付きターゲットの例を示す。図1は全体が正方形の形状で、カラーコード部の単位エリアC1?C6が6個のカラーコード付きターゲットである。図1のカラーコード付きターゲットCT1は、位置検出用パターン(レトロターゲット部)P1、基準色パターン(基準色部)P2、カラーコードパターン(カラーコード部)P3、予備パターン(予備部)P4で構成されている。これら、位置検出用パターンP1、基準色パターンP2、カラーコードパターンP3、予備パターンP4はカラーコード付きターゲットCT1内の所定の位置に配置される。すなわち、基準色パターンP2、カラーコードパターンP3、予備パターンP4は位置検出用パターンP1に対して所定の位置関係に配置される。
・・・(略)・・・
【0027】
基準色部P2は、照明やカメラ等の撮影条件による色のずれに対応するために、相対比較時の参照用、色ずれを補正するためのカラーキャリブレーション用として使用される。さらに、基準色部P2は、簡易な方法で作成されたカラーコード付きターゲットCT1の色彩補正用として使用できる。例えば、色管理がなされていないカラーブリンター(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)で印刷したカラーコード付きターゲットCT1を使用する場合は、使用プリンタ等で色彩に個体差が出るが、基準色部P2とカラーコード部P3の色を相対比較し補正することで、個体差の影響を押さえることができる。図1では、基準色部P2は左上のレトロターゲット部P1の周囲の3つの単位エリアR1?R3に配置されて、3つの基準色として、例えば、光の三原色であるRed,Green,Blueが使用される。
【0028】
カラーコード部P3は、その単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現する。コードに使用するカラーコード色の数により表現可能なコード数が変化する。例えば、カラーコード色数がnの場合、図1のカラーコード付きターゲットCT1では、カラーコード部P3の単位エリアC1?C6が6個のため、n6通りのコードを表せる。そして、カラーコード色数を増やせばコード数を増加できる。信頼度を上げるため、他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも、n!通り(n=6の場合、コード数は、6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現できる。かかる条件を課すると、コード読み取りの誤りを減らすことができる。さらに、カラーコード部P3の単位エリアの数とコード数を等しくするという条件を課すと、全てのカラーコード色がカラーコードパターンP3に使用されるため、基準色パターンP2との比較のみで無く、カラーコードパターンP3の各単位エリア間で色を相対比較することにより、各単位エリアの色彩を確認して識別コードを決定することができ、信頼性を上げることができる。また、カラーコード部P3の各単位エリアの面積を全て同じにする条件を追加すると、異なる識別コードをもつカラーコード付きターゲットCT1間でも各色の占有する面積が同じになるため、カラーコードパターン全体からの検出光からはほぼ同様な分散値やヒストグラムが得られ、また、単位エリア間の境界は等間隔に繰り返され(本形態の場合はカラーコード付きターゲットCT1の中心位置の周りにスキャンすれば等間隔に繰り返される)、明確な色彩差が検出されるので、カラーコード付きターゲットCT1を画像中から検出するのが容易になる。
・・・(略)・・・
【0030】
また、カラーコード付きターゲットCT1は、矩形のシートの表面に印刷され、シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている。接着剤の場合はカラーコード付きターゲットを測定対象物1(図8参照)にたやすく貼付でき、磁気シートの場合は測定対象物1が鉄等の磁性材料から成る場合にたやすく付着でき、いずれの場合もターゲット設置の作業性が向上する。」

B 「【0034】
また、10はカラーコード付きターゲットを含む測定対象物1を撮影する画像撮影装置で、CCDステレオカメラ等が使用される。CCDカメラでは通常、色彩はRGBフィルターを通して検出されるので、撮影画像はRGB色空間で知覚される。13は画像撮影装置10で撮影されたステレオ画像又は単写真画像を記憶する画像データ記憶部である。また、150は抽出部41で抽出されたカラーコード付き標識CT1の位置検出用パターンP1の位置座標と識別コード判別部46で判別された識別コードとを関連付けて記憶する標識情報記憶部であり、標識情報記憶部150に記憶されたデータは、標定部44で標定に用いられ、三次元位置計測部50で測定対象物1表面の三次元座標又は三次元形状の測定に用いられる。」

C 「【0050】
図7は、色彩検出処理部311における基準色部P2及びカラーコード部P3の色彩配列検出を説明するための図である。図7(a)に、カラーコード付きターゲットCT1における色彩配列の例を示す。この例では、基準色部の単位エリアR1?R3の色彩をそれぞれ、Red,Green,Blueとし、カラーコード部の単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ、Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする。図7(b)に各単位エリアR1?R3、C1?C6について色彩をRGB色空間で表した場合の光の強度を示す。各単位エリアR1?R3、C1?C6のRGB成分は、RGB座標の1成分又は2成分で表現され、6つのパターンに分かれる。図7(c)に各単位エリアR1?R3、C1?C6について色彩をHSI色空間で表した場合の色相を示す。HSI色空間では、単位エリアR1?R3、C1?C6の色彩は色相すなわち角度θで表現され、等間隔の6つの角度に分かれる。図7(a)でカラーコード付きターゲットCT1の画像上の色彩検出を、矢印Y1で示すように、R1?R3をほぼ均等に横切るようにスキャンし、更に矢印Y2?Y4で示すように、それぞれC1?C2,C3?C4,C5?C6をほぼ均等に横切るようにスキャンすると、RGB色空間では図7(b)を左から右に移動するようなRGBの光強度の時間的又は空間的推移パターンが得られ(スキャン時間をtで示す)、HSI色空間では図7(c)を左から右に移動するような色相θの時間的又は空間的推移パターンが得られる(スキャン時間をtで示す)。これらの推移パターンはR1?R3については全てのカラーコード付きターゲットCT1に共通であり、C1?C6については個別のカラーコード付きターゲットCT1で異なるものとなる。個別のカラーコード付きターゲットCT1について検出された色相θの時間的又は空間的推移パターンは、ターゲット位置・色彩配列記憶部141に記憶される。」

D 「【0112】
例えば、以上の実施の形態では、カラーコード付き標識が三次元計測用カラーコード付きターゲットの例について説明したが、本発明はこれに限られず、商品、貨物、試料を識別するための標識についても適用可能である。また、以上の実施の形態ではHSI変換モデルとして前田らが提唱する円錐モデルを使用する例を説明したが、六角錐モデル、双六角錐モデル、その他のモデルを用いても良い。また、以上の実施の形態では、カラーコード数nが、6,8,9等の例を説明したが、2以上の任意の整数で良く、この場合に隣接する色彩同士の色相差はほぼ360°/nになるように選択されるのが好ましい。また、第5の実施の形態では、Blue系とMagenta系を除いた擬似HSI色相環上で隣接する色彩同士の色相差がほぼ等しくなるように選択される例を説明したが、他の部分Blue系とCyan系を除いた擬似HSI色相環上で隣接する色彩同士の色相差がほぼ等しくなるように選択することも可能である。また、以上の実施の形態ではカラーコードパターンの色彩に基準色パターンの色彩を含める例を説明したが、必ずしも基準色パターンを含めなくても良く、例えば基準色パターンの色相が隣り合うカラーコードパターンの色相の中間になるように選定しても良い。また、以上の実施の形態では、カラーコード部の単位エリアが四角形、正方形等のカラーコード付き標識の例を説明したが、棒状パターン、円形パターン等他の形状にしても良い。また、カラーコード抽出手段の構成、カラーコード付きターゲットの抽出のフローも変更可能である。例えば、以上の実施の形態ではHSI変換を撮影画像取得後、カラーコード付きターゲットの抽出前に行なう例を説明したが、抽出部でのカラーコード付きターゲットの抽出後、識別コード判別部での識別コードの判別前に行なっても良く、グループ化処理後、カラーコード検出処理前に行なっても良い。また、例えば色相関係判定の条件式(4-1)?(4-6)におけるマージン用の定数mを色彩毎に異なる値としても良い。また、基準色、カラーコード色の色彩やコード数等も適宜変更可能である。また、カラーコード抽出手段及び三次元計測システムについても以上の実施の形態に限定されるものではなく、HIS変換機能、カラーコード抽出機能、コード判別機能を備えれば、他の態様であっても良い。」

E 「【図1】


カラーコード部C1?C6が,1つの頂点上で接している旨,カラーコード部C1及びC2,C3及びC4,C5及びC6が,それぞれ別の1つの頂点上で接している旨が記載されている。」

イ 上記Aの【0027】の下線を引いた箇所に記載されている「カラーブリンター(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)」は「カラープリンター(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)」の誤記であるものと認められる。
そこで、当該誤記を訂正した次の記載のものを上記Aの【0027】と認定して、以下の検討を行うこととする。

A 「【0027】
基準色部P2は、照明やカメラ等の撮影条件による色のずれに対応するために、相対比較時の参照用、色ずれを補正するためのカラーキャリブレーション用として使用される。さらに、基準色部P2は、簡易な方法で作成されたカラーコード付きターゲットCT1の色彩補正用として使用できる。例えば、色管理がなされていないカラープリンター(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)で印刷したカラーコード付きターゲットCT1を使用する場合は、使用プリンタ等で色彩に個体差が出るが、基準色部P2とカラーコード部P3の色を相対比較し補正することで、個体差の影響を押さえることができる。図1では、基準色部P2は左上のレトロターゲット部P1の周囲の3つの単位エリアR1?R3に配置されて、3つの基準色として、例えば、光の三原色であるRed,Green,Blueが使用される。」

2 引用発明について
ア 上記記載事項Aの【0025】の「カラーコード部の単位エリアC1?C6が6個のカラーコード付きターゲット」との記載,上記記載事項Aの【0027】の「カラープリンター(インクジェット・レーザー・昇華型等のプリンタ)で印刷したカラーコード付きターゲットCT1」との記載から,引用文献1には,“カラーコード部において,6個の単位エリアC1?C6を備え”た“カラープリンターで印刷したカラーコード付きターゲット”が記載されている。

イ 上記記載事項Aの【0028】の「カラーコード部P3は、その単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現する」との記載,及び,「信頼度を上げるため、他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも、n!通り(n=6の場合、コード数は、6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現できる」から,引用文献1には,“単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現し,信頼度を上げるため、他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも、n!通り(n=6の場合、コード数は、6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき”ることが記載されている。

ウ 上記記載事項Bの「10はカラーコード付きターゲットを含む測定対象物1を撮影する画像撮影装置で、CCDステレオカメラ等が使用される。CCDカメラでは通常、色彩はRGBフィルターを通して検出されるので、撮影画像はRGB色空間で知覚される」との記載から,引用文献1には,“RGB色空間で知覚される画像撮影装置で撮影され”る“カラーコード付きターゲット”が記載されている。

エ 上記記載事項Cの「カラーコード部の単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ、Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする」との記載から,引用文献1には,“単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ、Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaと”することが記載されている。

オ 上記記載事項Dの「カラーコード部の単位エリアが四角形、正方形等のカラーコード付き標識」との記載から,引用文献1には,“単位エリアが四角形、正方形等であ”ることが記載されている。

カ 上記記載事項Eの「カラーコード部C1?C6が,1つの頂点上で接している旨,カラーコード部C1及びC2,C3及びC4,C5及びC6が,それぞれ別の1つの頂点上で接している旨」との記載について,カラーコード部C1?C6は,単位エリアC1?C6と同じ符号が振られていることから,単位エリアC1?C6と同一のものであると認められるから,引用文献1には,“単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接するとともに,単位エリアC1及びC2,C3及びC4,C5及びC6がそれぞれ別の1つの頂点上で接”することが記載されている。

キ 上記記載事項Aの【0030】の「カラーコード付きターゲットCT1は、矩形のシートの表面に印刷され、シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている」と記載されているところ,上記記載事項Aの【0026】における「カラーコード部の単位エリアC1?C6が6個のカラーコード付きターゲット」との記載から,カラーコード付きターゲットCT1の中に,単位エリアC1?C6が含まれると認められるから,引用文献1には,“単位エリアC1?C6は,矩形のシートの表面に印刷され,シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている”ことが記載されている。

ク 上記ア?キの検討により,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カラーコード部において,6個の単位エリアC1?C6を備え,
単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現し,信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき,
RGB色空間で知覚される画像撮影装置で撮影され,
単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとし,
単位エリアが四角形,正方形等であり,
単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接するとともに,単位エリアC1及びC2,C3及びC4,C5及びC6がそれぞれ別の1つの頂点上で接し,
単位エリアC1?C6は,矩形のシートの表面に印刷され,シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている,
カラープリンターで印刷したカラーコード付きターゲット。」

3 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

F 「[0041] As shown in FIG. 10 b, a reference Tag 2 (REF Tag 2), contains a central hexagon surrounded by two layers of identical hexagons. This tag has a capacity of up to 39 bits when the coding is rotationally invariant. As a comparison, a full longitude-latitude co-ordinate pair requires only 21 bits. The hexagons are regular: if the hexagon side is A, then its height is A√3. The used colors are black, Red, Yellow, Green, Cyan, Blue, Magenta, and white, in this order.」
(当審仮訳:[0041]図10 bに示すように,基準タグ2(REFタグ2)は,同一の六角形の2つの層に囲まれた中央の六角形を含む。このタグは,コードが回転して不変である場合,最大39ビットの容量を有している。比較として,経度緯度座標の対は21ビットのみを必要とする。六角形は規則的である:六角形の辺がAである場合,その高さは,A√3である。使用される色は,ブラック,レッド,イエロー,グリーン,シアン,ブルー,マゼンタ,及びホワイト,の順である。)

ケ 上記記載事項Fの「基準タグ2(REFタグ2)は,同一の六角形の2つの層に囲まれた中央の六角形を含む」との記載から,引用文献2には,“同一の六角形の2つの層に囲まれた中央の六角形を含”む“基準タグ2”が記載されているものと認められる。

コ 上記記載事項Fの「使用される色は,ブラック,レッド,イエロー,グリーン,シアン,ブルー,マゼンタ,及びホワイト」との記載から,引用文献2には,“ブラック,レッド,イエロー,グリーン,シアン,ブルー,マゼンタ,及びホワイトを使用する”ことが記載されている。

サ 上記ケ及びコの検討により,上記引用文献2には次の事項が記載されていると認められる。

「同一の六角形の2つの層に囲まれた中央の六角形を含み,
ブラック,レッド,イエロー,グリーン,シアン,ブルー,マゼンタ,及びホワイトを使用する,基準タグ2。」

4 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用されたと認められる引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

G 「【0085】
図8に示すカラーコードの他に、光の反射エネルギー特性が異なる表示領域(セル)が2次元的に配列された2次元コードにおいては、図9に示すように、角隅部にコード状態検出用セルを設けるとよい。これにより、情報コード読み取り装置1は、前記コード状態検出用セルの存在を検出することによって、読み取り対象の情報コードが前記カラーコードであることを検出することができる。
【0086】
また、少なくとも3つの角隅部にコード状態検出用セルを設けると共に、これらのコード状態検出用セルの光の反射エネルギー特性を互いに異ならせるとよい。図9は、或る角隅部に、赤色のコード状態検出用セルを配置し、別の角隅部に青色のコード状態検出用セルを配置し、さらに別の角隅部に、緑色のコード状態検出用セルを配置した状態を示している。」

シ 上記記載事項Gの【0086】の「また、少なくとも3つの角隅部にコード状態検出用セルを設けると共に、これらのコード状態検出用セルの光の反射エネルギー特性を互いに異ならせるとよい。図9は、或る角隅部に、赤色のコード状態検出用セルを配置し、別の角隅部に青色のコード状態検出用セルを配置し、さらに別の角隅部に、緑色のコード状態検出用セルを配置した状態を示している。」との記載より,引用文献3には,“少なくとも3つの角隅部にコード状態検出用セルを設けると共に、これらのコード状態検出用セルの光の反射エネルギー特性を互いに異ならせ,或る角隅部に、赤色のコード状態検出用セルを配置し、別の角隅部に青色のコード状態検出用セルを配置し、さらに別の角隅部に、緑色のコード状態検出用セルを配置した”ことが記載されている。

ス 上記記載事項Gの【0085】の「2次元コード」との記載から,引用文献3には,“2次元コード”が記載されている。

セ 上記シ及びスの検討により,上記引用文献3には次の事項が記載されていると認められる。

「少なくとも3つの角隅部にコード状態検出用セルを設けると共に,これらのコード状態検出用セルの光の反射エネルギー特性を互いに異ならせ,或る角隅部に,赤色のコード状態検出用セルを配置し,別の角隅部に青色のコード状態検出用セルを配置し,さらに別の角隅部に,緑色のコード状態検出用セルを配置した,2次元コード。」

5 その他の文献に記載された事項
(1)引用文献4に記載された事項
本願優先日前公知の文献である特開2005-284412号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

H 「【0010】
図1において、本発明を適用した2次元バーコード2は、例えば勤務先名、氏名、住所、電話番号などの文字情報10が印刷された名刺11に添付される。この2次元バーコード2は、文字情報10や、文字情報10以外の付加情報を符号化して表したものであり、専用の読み取りスキャナやスキャナ付きの携帯電話などで読み取って復号化することにより、元の情報に復元することができる。
【0011】
図2に示すように、2次元バーコード2は、図中一点鎖線で囲まれる正方形状の記録領域20を、マトリクス状に区画することにより形成される複数のセル21(この場合は26×26=676個)を有する。各セル21は、光の3原色(RGB)の組み合わせで表される黒(black、BL)、青(blue、B)、緑(green、G)、黄(yellow、Y)、赤(red、R)、マゼンタ(magenta、M)、シアン(cyan、C)、および白(white、W、名刺11の地色)の8種類の色で塗り潰されている。
・・・(略)・・・
【0013】
図3の表に示すように、前述の8種類の色は、黒は(RGB)=(000)、青は(001)、緑は(010)、黄は(011)、赤は(100)、マゼンタは(101)、シアンは(110)、白は(111)というように、RGBの組み合わせで表される3ビット分の情報を示している。したがって、3個のセル21で8ビット分(3個目のセル21のB成分のビット切り捨て)、つまり、1バイト分のデータを表現している。2次元バーコード2を作成する際には、この表と符号化した情報とを照らし合わせて、セル21を塗り潰す色を特定する。」

ソ 上記記載事項Hの【0010】の「この2次元バーコード2は、文字情報10や、文字情報10以外の付加情報を符号化して表したもの」との記載から,引用文献4には,“文字情報10や、付加情報を符号化して表した2次元バーコード2”が記載されているところ,同じく【0010】の「本発明を適用した2次元バーコード2は、例えば勤務先名、氏名、住所、電話番号などの文字情報10が印刷された名刺11に添付される」との記載より,引用文献4には,2次元バーコード2が“名刺11に添付され”ることも記載されているから,引用文献4には,“名刺11に添付され,文字情報10や、付加情報を符号化して表した2次元バーコード2”が記載されている。

タ 上記記載事項Hの【0011】の「2次元バーコード2は、図中一点鎖線で囲まれる正方形状の記録領域20を、マトリクス状に区画することにより形成される複数のセル21(この場合は26×26=676個)を有する。各セル21は、光の3原色(RGB)の組み合わせで表される黒(black、BL)、青(blue、B)、緑(green、G)、黄(yellow、Y)、赤(red、R)、マゼンタ(magenta、M)、シアン(cyan、C)、および白(white、W、名刺11の地色)の8種類の色で塗り潰されている。」との記載から,“正方形状の記録領域20を、マトリクス状に区画することにより形成される複数のセル21を有し,各セル21は、光の3原色(RGB)の組み合わせで表される黒(black、BL)、青(blue、B)、緑(green、G)、黄(yellow、Y)、赤(red、R)、マゼンタ(magenta、M)、シアン(cyan、C)、および白(white、W、名刺11の地色)の8種類の色で塗り潰され”ていることが記載されている。

チ 上記記載事項Hの【0013】の「前述の8種類の色は、黒は(RGB)=(000)、青は(001)、緑は(010)、黄は(011)、赤は(100)、マゼンタは(101)、シアンは(110)、白は(111)というように、RGBの組み合わせで表される3ビット分の情報を示している」との記載から,引用文献4には,“8種類の色は、黒は(RGB)=(000)、青は(001)、緑は(010)、黄は(011)、赤は(100)、マゼンタは(101)、シアンは(110)、白は(111)というように、RGBの組み合わせで表される3ビット分の情報を示している”ことが記載されている。

ツ 上記ソ?チの検討により,上記引用文献4には次の事項が記載されていると認められる。

「名刺11に添付され,文字情報10や,付加情報を符号化して表した2次元バーコード2において,
正方形状の記録領域20を,マトリクス状に区画することにより形成される複数のセル21を有し,各セル21は,光の3原色(RGB)の組み合わせで表される黒(black,BL),青(blue,B),緑(green,G),黄(yellow,Y),赤(red,R),マゼンタ(magenta,M),シアン(cyan,C),および白(white,W,名刺11の地色)の8種類の色で塗り潰され,
8種類の色は,黒は(RGB)=(000),青は(001),緑は(010),黄は(011),赤は(100),マゼンタは(101),シアンは(110),白は(111)というように,RGBの組み合わせで表される3ビット分の情報を示している,技術。」

(2)引用文献5に記載された事項
本願優先日前公知の文献である特開2011-186613号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

J 「【0038】
(1-2)2次元カラーコードの作成方法と符号化方法
図1に示すガイドコード部2には、2次元カラーコードの位置情報(端点位置、上下左右、ガイドコード部とデータ記録コード部の距離、等)、データ記録コード部の縦横のセルの数、セルサイズ、冗長レベル(誤り訂正能力のレベル)、2次元カラーコードの分割数、分割順番、コード処理方法、等を表す目印として、或いは数値データを色情報として符号化してコード表示媒体に印刷または表示する。これらデータの入力は、図3に示すように、パソコンにダウンロードした専用エンコードソフトウェアによって、人が直接入力しても良いし、電子データファイルから入力してもよい。エンコードの方法は、入力データを2進法ビット配列に変換し、変換するビット数の単位ごとに、予めビット情報と対応させている使用色に変換し、その色情報をガイドコード部のセルパターンの色としてコード表示媒体に印刷または表示する。
・・・(略)・・・
【0040】
上記2進法ビット配列(バイナリーデータと同義語)と使用色との関係をもう少し説明する。
例えば、3bit分の各ビット配列を色に変換する場合、ビット配列は「000」「001」「010」「011」「100」「101」「110」「111」の8パターンあるので、それぞれを異なる色に変換するには、使用色は8色必要となる。例えば、赤、緑、青、青緑、赤緑、黄、黒、白、の8色を使用し、以下のように対応させ、それぞれに識別する番号を割り当てたとする。
000=赤=1、001=緑=2、010=青=3、011=青緑=4、100=赤緑=5、101=黄=6、110=黒=7、111=白=8
例えば、RGB値を用いて使用色の色情報を表現すると、以下のような対応表となる。
番号 ビット配列 使用色 RGB値
1 000 赤 255,0,0
2 001 緑 0,255,0
3 010 青 0,0,255
4 011 青緑 0,255,255
5 100 赤緑 255,0,255
6 101 黄 255,255,0
7 110 黒 0,0,0
8 111 白 255,255,255」

テ 上記記載事項Jの【0038】の「エンコードの方法は、入力データを2進法ビット配列に変換し、変換するビット数の単位ごとに、予めビット情報と対応させている使用色に変換し、その色情報をガイドコード部のセルパターンの色としてコード表示媒体に印刷または表示する」との記載から,引用文献5には,“入力データを2進法ビット配列に変換し、変換するビット数の単位ごとに、予めビット情報と対応させている使用色に変換し、その色情報をガイドコード部のセルパターンの色としてコード表示媒体に印刷するエンコードの方法”が記載されている。

ト 上記記載事項Jの【0040】の「例えば、3bit分の各ビット配列を色に変換する場合、ビット配列は「000」「001」「010」「011」「100」「101」「110」「111」の8パターンあるので、それぞれを異なる色に変換するには、使用色は8色必要となる。例えば、赤、緑、青、青緑、赤緑、黄、黒、白、の8色を使用し、以下のように対応させ、それぞれに識別する番号を割り当てたとする。
000=赤=1、001=緑=2、010=青=3、011=青緑=4、100=赤緑=5、101=黄=6、110=黒=7、111=白=8」
との記載から,引用文献5には,“3bit分の各ビット配列を色に変換する場合,赤、緑、青、青緑、赤緑、黄、黒、白、の8色を使用し,それぞれに識別する番号を割り当て,000=赤=1、001=緑=2、010=青=3、011=青緑=4、100=赤緑=5、101=黄=6、110=黒=7、111=白=8と対応される”ことが記載されている。

ナ 上記テ及びトの検討により,上記引用文献5には次の事項が記載されていると認められる。

「入力データを2進法ビット配列に変換し、変換するビット数の単位ごとに、予めビット情報と対応させている使用色に変換し、その色情報をガイドコード部のセルパターンの色としてコード表示媒体に印刷するエンコードの方法であって,3bit分の各ビット配列を色に変換する場合,赤、緑、青、青緑、赤緑、黄、黒、白、の8色を使用し,それぞれに識別する番号を割り当て,000=赤=1、001=緑=2、010=青=3、011=青緑=4、100=赤緑=5、101=黄=6、110=黒=7、111=白=8と対応される技術。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

イ 引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」することは,コードを表現するには,何らかの情報を符号化することは明らかであることに加え,引用発明は,「カラープリンターで印刷したカラーコード付きターゲット」であることから,カラープリンターで印刷するために,所定の方法により「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」することは明らかであるので,本願発明1と「情報を符号化する方法」である点で共通する。

ウ 上記イでの認定から,方法は所定数のステップで特定されるのは明らかであるところ,引用発明における「信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき」ることは,引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」する際の1つのステップとして行われるものと認められ,複数のコードを表現するにあたり,各コードをデジタル値で特定することは周知の事項であるので,引用発明は,本願発明1の「1つのデジタル値を特定するステップ」に相当する構成を有することは明らかである。

エ 引用発明における「6個の単位エリアC1?C6」は,本願発明1の「1つのシンボル」に相当することに加え,上記イでの認定から,方法は所定数のステップで特定されるのは明らかであるところ,引用発明の「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする」ことは,単位エリアC1?C6を形成しているといえることに加え,引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」する際の1つのステップとして行われるものと認められるから,本願発明1の「1つのシンボルを形成するステップ」に相当する。

オ 上記イないし上記エでの認定に加え,
引用発明の「RGB色空間で知覚される画像撮影装置で撮影され」ることは,少なくとも1つの画像を撮影することは明らかであること,
引用発明の「カラーコード付きターゲット」が備える「6個の単位エリアC1?C6」を撮影することも明らかであること,
引用発明の「Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magenta」は,本願発明1の「赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素」に相当すること,
引用発明の「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする」ことは,引用発明では,「信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合」が含まれることから,6個の単位エリアC1?C6に対して,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaの色を1つずつ割り当てるものと認められるので,
以上総合して,引用発明は,本願発明1と「前記1つのシンボルは,前記特定された1つのデジタル値を,前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素として識別されるべき,異なるそれぞれの色からなる,1組の色要素に符号化」する点で一致する。

カ 引用発明の「単位エリアが四角形,正方形等であ」ることは,本願における発明の詳細な説明の【0025】等における「ポリゴン(多角形)」との記載から,多角形の一種である四角形や正方形もポリゴンに含まれると認められ,引用発明では,“信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合”を含むので,本願発明1の「前記色要素はポリゴンタイルを有」することに相当する。

キ 引用発明の「単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接する」ことは,6個の単位エリアC1?C6が,1つの頂点で会合していることは明らかであるので,本願発明1の「前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる」ことに相当する。

ク したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
情報を符号化する方法であって,
1つのデジタル値を特定するステップと,
1つのシンボルを形成するステップと,
を有し,
前記1つのシンボルは,前記特定された1つのデジタル値を,前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素として識別されるべき,異なるそれぞれの色からなる,1組の色要素に符号化し,
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し,そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる,
ことを特徴とする方法。

(相違点1)
本願発明1は,「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;」
ことが特定されているのに対して,引用発明では,このことが特に特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点1について検討する。
引用文献2?5のいずれにも,本願発明1の「ここにおいて前記シンボルは,前記色要素を形成するためにシアン,マゼンタ,および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され,それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤,緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では,赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では,緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では,青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では,青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では,赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では,赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;」ことが記載されておらず,該相違点は,当業者にとって周知技術または技術常識であるとは言えない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
(1)対比
ア 本願発明2と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

イ 引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」することは,コードを表現するには,何らかの情報を符号化することは明らかであることに加え,引用発明は,「カラープリンターで印刷したカラーコード付きターゲット」であることから,カラープリンターで印刷するために,所定の方法により「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」することは明らかであるので,本願発明2と「情報を符号化する方法」である点で共通する。

ウ 上記イでの認定から,方法は所定数のステップで特定されるのは明らかであるところ,引用発明における「信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき」ることは,引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」する際の1つのステップとして行われるものと認められ,複数のコードを表現するにあたり,各コードをデジタル値で特定することは周知の事項であるので,引用発明は,本願発明2の「1つのデジタル値を特定するステップ」に相当する構成を有することは明らかである。

エ 引用発明における「6個の単位エリアC1?C6」は,本願発明2の「1つのシンボル」に相当することに加え,上記イでの認定から,方法は所定数のステップで特定されるのは明らかであるところ,引用発明の「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする」ことは,単位エリアC1?C6を形成しているといえることに加え,引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」する際の1つのステップとして行われるものと認められるから,本願発明2の「1つのシンボルを形成するステップ」に相当する。

オ 上記イないし上記エでの認定に加え,
引用発明の「RGB色空間で知覚される画像撮影装置で撮影され」ることは,少なくとも1つの画像を撮影することは明らかであること,
引用発明の「カラーコード付きターゲット」が備える「6個の単位エリアC1?C6」を撮影することも明らかであること,
引用発明の「Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magenta」は,本願発明1の「赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素」に相当すること,
引用発明の「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaとする」ことは,引用発明では,「信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合」が含まれることから,6個の単位エリアC1?C6に対して,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaの色を1つずつ割り当てるものと認められるので,
以上総合して,引用発明は,本願発明1と「前記1つのシンボルは,前記特定された1つのデジタル値を,前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素として識別されるべき,異なるそれぞれの色からなる,1組の色要素に符号化」する点で一致する。

カ 引用発明の「単位エリアが四角形,正方形等であ」ることは,本願における発明の詳細な説明の【0025】等における「ポリゴン(多角形)」との記載から,多角形の一種である四角形や正方形もポリゴンに含まれると認められ,引用発明では,“信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合”を含むので,本願発明2の「前記色要素はポリゴンタイルを有」することに相当する。

キ 引用発明の「単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接する」ことは,6個の単位エリアC1?C6が,1つの頂点で会合していることは明らかであるので,本願発明2の「前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる」ことに相当する。

ク したがって,本願発明2と引用発明との間には,次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
情報を符号化する方法であって,
1つのデジタル値を特定するステップと,
1つのシンボルを形成するステップと,
を有し,
前記1つのシンボルは,前記特定された1つのデジタル値を,前記1つのシンボルの1つの画像の中で赤,緑,青,シアン,マゼンタ,および黄色の色要素として識別されるべき,異なるそれぞれの色からなる,1組の色要素に符号化し,
ここにおいて前記色要素はポリゴンタイルを有し,そして前記シンボルは1つの共通頂点で会合する複数の前記ポリゴンタイルからなる,
ことを特徴とする方法。

(相違点2)
本願発明2は,「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】


ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ」ることが特定されているのに対して,引用発明では,このことが特に特定されていない点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
引用文献2?5のいずれにも,本願発明2の「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】


ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ」ることが記載されておらず,該相違点は,当業者にとって周知技術または技術常識であるとは言えない。
したがって,本願発明2は,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3も,本願発明1の「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;」こと,
本願発明2の「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】


ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ」ること
と同一の構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」及び「2 本願発明2について」と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明4について
(1)対比
ア 本願発明4と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

イ 引用発明の「カラーコード付きターゲット」は,「矩形のシートの表面に印刷され,シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている」ことから,接触可能な媒体であることは明らかであるので,本願発明4の「接触可能媒体」に相当する。

ウ 引用発明における「カラーコード部において,6個の単位エリアC1?C6を備え」ることは,引用発明の「6個の単位エリアC1?C6」が,本願発明4の「1つのシンボル」に相当することに加え,「カラーコード付きターゲット」上で提供されることは明らかであるので,本願発明4の「1つのシンボルが前記媒体の上に提供され」ることに相当する。

エ 上記ウでの認定から,引用発明の「6個の単位エリアC1?C6」が,本願発明4の「1つのシンボル」に相当するところ,本願における発明の詳細な説明の【0025】等には「ポリゴン(多角形)」と記載されていることから,多角形の一種である四角形や正方形もポリゴンに含まれると認められ,引用発明において,「単位エリアが四角形、正方形等であ」るので,引用発明における「6個の単位エリアC1?C6を備え,」「単位エリアが四角形、正方形等であ」ることは,本願発明4の「ここにおいて前記シンボルはポリゴンタイル」「からな」ることに相当する。

オ 上記エでの認定に加え,本願における発明の詳細な説明の【0044】には「(「モザイク状に配列する」という用語は本発明の明細書および請求項においては、形状間に重複または隙間がないようにはめ込むためにある領域を幾何学的形状ではめ込むことを言う。)」と記載されていることから,引用発明の「単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接」することも,モザイク配列に含まれると認められるので,引用発明における「6個の単位エリアC1?C6を備え,」「単位エリアが四角形、正方形等であり,単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接」することは,本願発明4の「ここにおいて前記シンボルはポリゴンタイルのモザイク配列からな」ることに相当する。

カ 上記オでの認定に加え,引用発明の「単位エリアC1?C6が,1つの頂点上で接するとともに,単位エリアC1及びC2,C3及びC4,C5及びC6がそれぞれ別の1つの頂点上で接」することは,本願発明4の「前記ポリゴンタイルのモザイク配列は、複数の共通頂点で会合」することに相当する。

キ 引用発明における「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現」することは,コードを表現するには,何らかの情報を符号化することは明らかであることに加え,引用発明においては「信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき」るところ,複数のコードを表現するにあたり,各コードをデジタル値で特定することは周知の事項であるので,引用発明の「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現し,信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現できる」ことは,本願発明4の「特定されたそれぞれのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持」つこと,及び,「ここにおいて任意の所与の共通頂点を取り巻く前記色は互いに異な」ることに相当する。

ク 上記カでの認定,及び,上記キでの認定から,引用発明の「単位エリアC1?C6への配色の組み合わせによってコードを表現し,信頼度を上げるため,他の単位エリアに使用されている色を重複して使用しないという条件を課した場合でも,n!通り(n=6の場合,コード数は,6×5×4×3×2×1=720コード)のコードを表現でき,」「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaと」することは,本願発明4の「前記ポリゴンタイルのモザイク配列は、複数の共通頂点で会合し、そしてそれぞれの共通頂点における特定されたそれぞれのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持」つこと,及び,「ここにおいて任意の所与の共通頂点を取り巻く前記色は互いに異な」ることに相当する。

ケ 引用発明の「単位エリアC1?C6の色彩をそれぞれ、Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaと」することは,6個の単位エリアC1?C6に対して,Red,Yellow,Green,Cyan,Blue,Magentaの色を1つずつ割り当てるものと認められ,これら6個の単位エリアC1?C6に割り当てられる色の中に,黒も白も含まれないことから,本願発明4の「そして前記シンボル内の前記ポリゴンタイルのいずれもが黒または白でな」い点に相当する。

コ 上記エでの認定から,引用発明の「単位エリアC1?C6は,矩形のシートの表面に印刷され,シートの裏面には接着剤が塗布されているか磁気シートが設けられている」ことは,本願発明4の「前記1つのシンボルが前記媒体上に印刷される」ことに相当する。

サ したがって,本願発明4と引用発明との間には,次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
接触可能媒体であって,1つのシンボルが前記媒体の上に提供され,
ここにおいて前記シンボルはポリゴンタイルのモザイク配列からなり,
前記ポリゴンタイルのモザイク配列は,複数の共通頂点で会合し,そしてそれぞれの共通頂点における特定されたそれぞれのデジタル値を符号化するために選択された異なるそれぞれの色を持ち,
ここにおいて任意の所与の共通頂点を取り巻く前記色は互いに異なり,
そして前記シンボル内の前記ポリゴンタイルのいずれもが黒または白でなく,
前記1つのシンボルが前記媒体上に印刷される,
ことを特徴とする,接触可能媒体。

(相違点3)
本願発明4は,「ここにおいて前記シンボルは,前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し,
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は,前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと,そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと,によりそれぞれの共通頂点において符号化され,
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は,前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがな」いのに対して,引用発明には,このことが特に特定されていない点。

(相違点4)
本願発明4は,「そして前記シンボル内の全ての前記共通頂点が、前記拡張デジタル値に組み合わされるそれぞれのデジタル値を符号化する、ように選択され」るのに対して,引用発明には,このことが特に特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,先に相違点3について検討する。
引用文献2?5のいずれにも,本願発明3の「ここにおいて前記シンボルは,前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し,
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は,前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと,そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと,によりそれぞれの共通頂点において符号化され,
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は,前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがな」いことが記載されておらず,該相違点は,当業者にとって周知技術または技術常識であるとは言えない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明4は,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5 本願発明5について
本願発明5も,本願発明4の「ここにおいて前記シンボルは,前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し,
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は,前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと,そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと,によりそれぞれの共通頂点において符号化され,
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は,前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがな」いことと同一の構成を備えるものであるから,上記「4 本願発明4について」と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 本願発明6について
本願発明6も,本願発明1の「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;」こと,
本願発明2の「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】

ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ」ること,
本願発明4の「ここにおいて前記シンボルは、前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し、
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は、前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと、そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと、によりそれぞれの共通頂点において符号化され、
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は、前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがな」いこと
と同一の構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」及び「2 本願発明2について」と同じ理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2?5に記載された技術的事項及び当業者の周知技術または技術常識に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1?6は,
「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の赤、緑および青の輝度特性を示し:
赤色要素では、赤の輝度が青および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
緑色要素では、緑の輝度が赤および青の輝度より2倍を超えて大きい;
青色要素では、青の輝度が赤および緑の輝度より2倍を超えて大きい;
シアン色要素では、青と緑の輝度が共に赤の輝度より2倍を超えて大きい;
マゼンタ要素では、赤と青の輝度が共に緑の輝度より2倍を超えて大きい;そして
黄色要素では、赤と緑の輝度が共に青の輝度より2倍を超えて大きい;」こと,
「ここにおいて前記シンボルは、前記色要素を形成するためにシアン、マゼンタ、および黄色の顔料を基板に適用することにより形成され、それにより前記色要素はsRGB色空間において測定された場合に以下の関係を満たす赤、緑および青の輝度特性を示す:
それぞれの色c=赤、緑、青に対し
【数13】

ここにおいてH^(1)_(c)およびL^(1)_(c)は色cを含むと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であり、一方H^(0)_(c)およびL^(0)_(c)は色cを含まないと期待される前記色要素の中での色cのそれぞれ最高および最低観察値であ」ること,
「ここにおいて前記シンボルは、前記複数の共通頂点により符号化される複数の前記それぞれのデジタル値を組み合わせることにより拡張デジタル値を符号化し、
ここにおいて前記それぞれのデジタル値は、前記ポリゴンタイルの色の3原色要素を示すそれぞれ2進法値からなる3ビット符号をそれぞれの色に割り当てるステップと、そして前記ポリゴンタイルの前記色に割り当てられた前記3ビット符号を組み合わせて前記それぞれのデジタル値を得るステップと、によりそれぞれの共通頂点において符号化され、
ここにおいて前記ポリゴンタイルの色は、前記2進法値のいずれもが前記シンボル内の任意の所与の共通頂点で会合する全てのポリゴンタイルに亘って一定であることがなく」いこと
のうち,いずれかの事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?3に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-11-26 
出願番号 特願2017-161669(P2017-161669)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 松平 英
山崎 慎一
発明の名称 位置ベースナビゲーションおよび拡張現実アプリケーション用のアンカー  
代理人 齋藤 和則  

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