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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1357433
審判番号 不服2018-51  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2019-11-27 
事件の表示 特願2013-139202「ビジネスルール管理システム及びビジネスルール管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 11685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成25年7月2日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月20日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月18日 :意見書,補正書の提出
平成29年 9月11日付け:拒絶査定
平成30年 1月 4日 :審判請求書,手続補正書の提出
平成31年 2月12日付け:拒絶理由通知
令和 元年 6月 4日 :意見書,補正書の提出


第2 本願発明

本願の請求項に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和元年6月4日付け手続補正書により補正された請求項1?6記載された事項により特定されるものであり,そのうち請求項1に係る発明は,次のとおりのものと認められる。
「 【請求項1】
ビジネスルールを登録管理するビジネスルール登録管理部と,前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールを表示可能な表示装置とを備えるビジネスルール管理装置であって,
ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段と,
前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し表示するルール仕様表示手段と,
前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分を前記表示装置のルール条件表示領域に表示するルール条件表示手段と,
前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分を前記表示装置の他のルール実行(アクション)表示領域に表示するルール実行条件表示手段とを備え,
前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルールを生成可能とすることを特徴とするビジネスルール管理装置。」


第3 当審における拒絶の理由

当審においてした平成31年2月12日付け拒絶理由通知の理由は,概略,次のとおりのものである。

1.(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは,下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから,特許を受けることができない。

2.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(発明該当性)について
・請求項1
(1)「自然法則の利用性」の観点について

特許法第2条第1項には,「この法律で「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定され,同法第29条第1項柱書には,「産業上利用することができる発明をしたものは,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。したがって,特許出願に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは,その発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。
そこで,請求項1に係る発明が「自然法則を利用した」ものか否かについて以下検討する。

ア.請求項1の「ビジネスルールを登録管理するビジネスルール登録管理部と,前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールを表示可能な表示装置とを備えるビジネスルール管理装置」との事項は,記憶手段である「ビジネスルール登録管理部」と,出力手段である「表示装置」とを備えた「ビジネスルール管理装置」という,コンピュータの使用を前提としているものである。

イ.請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段」との事項は,明細書の段落【0045】-【0047】の記載からみて,原書類等からルール化対象箇所を「抽出」し,表示装置の所定領域に「展開」する作業は人によって行われ,その結果として,「ルール化対象箇所」が「ルール化対象表示手段」に表示されるものであるから,当該構成要件は,全体として,人がコンピュータを用いて行う行為そのものを「手段」として特定したものであり,「自然法則」が利用されているとは認められない。

ウ.前記「イ」と同様に,請求項1の「ルール仕様表示手段」「ルール条件定義手段」「ルール実行条件定義手段」は,いずれも,人がコンピュータを用いて行う行為そのものを「手段」として特定したものであり,「自然法則」が利用されているとは認められない。

エ.「前記ルール条件定義手段と前記ルール実行条件定義手段で定義した前記ルール条件表示領域及びルール実行(アクション)表示領域の表示情報からルール生成可能とする」との事項は,ルール生成が「可能」である旨を特定しているに過ぎず,指定された条件とアクションからルールを生成するという,通常のビジネス手法を特定しているに過ぎない。

オ.上記「ア」から「エ」で言及した様に,本願発明は,コンピュータを用いてはいるものの,全体としては,単にコンピュータを情報の表示や操作の道具として使用し,人が原書類等からルール化対象箇所を抽出・展開し,次いでルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出・展開し,さらにルールのうちルール実行時の条件部分とルール実行条件部分を定義するという,人の行為を特定するものであるから,特許法第2条第1項でいうところの『自然法則を利用した技術的思想の創作』とはいえず,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができないものである。

(2)「コンピュータソフトウェア関連発明」の観点について

請求項1は,記憶手段である「ビジネスルール登録管理部」と,出力手段である「表示装置」とを備える「ビジネスルール管理装置」という,コンピュータの使用を前提としたものであり,いわゆる,「コンピュータソフトウェア関連発明」であるとも考えられるため,その観点からも以下検討する。
ここで,ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となる基本的な考え方は,以下の通りである。
ソフトウェア関連発明のうちソフトウェアについては,「ソフトウェアによる情報処理が,ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」場合は,当該ソフトウェアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。「ソフトウェアによる情報処理が,ハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」とは,ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって,使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。(「特許・実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例 附属書B 「2.1.1.2 ソフトウェアの観点に基づく考え方」参照。)

ア.請求項1は,記憶手段である「ビジネスルール登録管理部」と,出力手段である「表示装置」とを備える「ビジネスルール管理装置」が特定されているから,「ハードウェア資源」といえるものを利用していることは特定されている。

イ.一方,請求項1における「ルール化対象表示手段」「ルール仕様表示手段」「ルール条件定義手段」「ルール実行条件定義手段」の各手段において実行される「抽出」「展開」「定義」等の処理は,人の精神活動の手順を特定したものであり,「表示する」との処理は人が入力操作を行ったデータを表示装置に表示するという,コンピュータが当然に備える機能を特定したものにすぎない。

ウ.請求項1における「前記ルール条件定義手段と前記ルール実行条件定義手段で定義した前記ルール条件表示領域及びルール実行(アクション)表示領域の表示情報からルール生成可能とする」との事項は,ルール生成が「可能」である旨を特定しているに過ぎず,具体的な情報処理の内容等を特定したものではない。また,仮に当該事項が「ルールを生成する」機能手段を特定したものであると解釈しても,指定された条件とアクションからルールを生成するという,通常のビジネスルール管理装置が備える機能を特定しているに過ぎず,本願発明に特有の情報処理が特定されたものとはいえない。

エ.してみると,請求項1の「ビジネスルール管理装置」が実行する「情報処理」の内容は,一般的な記憶手段や出力手段を備えたコンピュータが当然に実行する情報処理であり,「使用目的に応じた特有の情報処理」とはいえないものであるから,請求項1に記載されたものは「コンピュータソフトウェア関連発明」の観点から見ても「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえない。

したがって,請求項1は,特許法第2条第1項でいうところの「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえず,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができないものである。

<以下略>

●理由2(明確性)について
・請求項 1
(1)請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段」との記載に関し,「ルール化対象箇所を抽出」するという処理,及び「表示装置の所定領域に展開表示」するという処理を行う主体が特定されていないため,これらの処理が「人の精神活動の手順」を意味するのか,あるいは「コンピュータによる情報処理手順」を意味するのか,不明である。

(2)上記(1)と同様に,請求項1の「ルール仕様表示手段」「ルール条件定義手段」「ルール実行条件定義手段」において行われる各処理についても主体が特定されていないため,これらの処理が「人の精神活動の手順」を意味するのか,あるいは「コンピュータによる情報処理手順」を意味するのか,不明である。
(なお,発明の詳細な説明には,上記(1)(2)で指摘した各処理はいずれも人が行うものとして記載されていると認められるから,仮に処理の主体が「コンピュータ」である旨を特定した場合には,当該構成がサポート要件違反となる可能性に留意されたい。)

(3)請求項1の「ルール条件定義手段」「ルール実行条件定義手段」において「定義し」との語が用いられているが,「定義する」とは「言葉や概念の意味を明確にする」という意味の語であり,本願発明においてはどのような編集操作を行うことを意味するのか明確に解釈できない。

(4)請求項1の「前記ルール条件定義手段と前記ルール実行条件定義手段で定義した前記ルール条件表示領域及びルール実行(アクション)表示領域の表示情報からルール生成可能とすることを特徴とする」に関し,「ルール生成可能とする」という記載では,「ビジネスルール管理装置」が実際にルール生成処理を行うことを特定するものであるのか,単に可能性を指摘しているものであるのか,不明である。また,仮に「ビジネスルール管理装置」が実際にルール生成処理を行うとした場合,生成したルールをどのような手段に出力または格納するものであるのか,不明である。

<以下略>

●理由3(進歩性)について

・請求項 1,5
・引用文献等 1,2

<以下略>

<引用文献等一覧>
1.山本史朗,業務仕様の変化に強いプログラム作成を目指したビジネスロジック・ジェネレータ,技報 UNISYS TECHNOLOGY REVIEW,日本,平成24年3月31日発行,第31巻,第4号,p.91?102
2.BPMの威力 ビジネス速度はまだ上がる ツールを使えばここまでできる モデリングからシステム連携までをカバー,日経コンピュータ,日本,平成18年5月15日発行,第652号,p.46?51


第4 当審の判断

1 発明の詳細な説明の記載内容
発明の詳細な説明には,次の内容が記載されている。
(1)発明が解決しようとする課題
「 【0017】
しかしながら,従来のビジネスルール管理システムでは,業務毎に業務内容を分析し,専用のプログラムを作成してルール化するための対象を絞り込み,ルールの抽出を行なわなければならず,ビジネスルールの抽出方法,処理方法も処理対象が異なれば全て異なったものとなり,ルールの構成,管理方法等の全てで開発過程が複雑かつ面倒であり,更に,ルールの定義処理の操作も固有のものであり,習熟には時間が必要であった。」

(2)課題を解決するための手段
「 【0018】
本発明は,上述した課題を解決することを目的としてなされたもので,処理対象が例え異なったとしても,共通の処理が可能で,ビジネスルールの定義・実装・管理を同じプロセスで行うことができるビジネスルール管理方法及びビジネスルールの管理方法を提供することにある。
【0019】
係る目的を達成する一手段として例えば以下の構成を備える。すなわち,抽出した処理対象ビジネスルールを表形式で表される表中の所定の領域に展開表示するルール仕様表示手段と,前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時の条件部分を前記表中のルール条件表示セル部分に定義するルール条件定義手段と,前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分を前記表中の他のルール実行(アクション)表示セル部分に定義するルール実行条件定義手段とを備え,前記ルール条件定義手段と前記ルール実行条件定義手段で定義したセルの情報からルール生成可能とすることを特徴とする。
【0020】
そして例えば,前記表中のルール条件表示セル部分への定義及び前記表中のルール実行表示セル部分への定義は,前記ルール仕様表示手段で表示されているルールの対応ルール部分を複写・貼付することで定義可能であることを特徴とする。
【0021】
また例えば,生成したルールと,ルール実行時の入力値と,を表中の同一行に設定し,設定したルール及び入力値によりルールを実行した場合のルール実行結果の出力結果値を前記表中の同一行に表示するルール検証手段を備えることを特徴とする。
【0022】
更に例えば,前記ルール検証手段は,前記実行するルールと同一行にルール実行時の出力期待値を設定可能であり,前記出力期待値と前記出力結果値とを同時に目視確認可能とすることを特徴とする。
【0023】
または,ルールなどを入力する入力手段と,表作成ソフトが作成する表を表示可能な表示手段と,定義されたルールを記憶する記憶手段を備えるビジネスルール管理装置におけるビジネスルール管理方法であって,抽出し前記入力手段から入力した処理対象ビジネスルールを前記表示手段の表示画面に表示されている表中の所定の領域に展開表示するルール仕様表示ステップと,前記入力手段よりの指示に従い前記ルール仕様表示ステップで表示されているルールのうちルール実行時の条件部分を前記表中のルール条件表示セル部分に定義するルール条件定義ステップと,前記ルール仕様表示ステップで表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分を前記表中の他のルール実行(アクション)表示セル部分に定義するルール実行条件定義ステップと,前記ルール条件定義ステップと前記ルール実行条件定義ステップで定義したセルの情報からルールを生成するルール生成ステップを有するビジネスルール管理方法であることを特徴とする。
【0024】
そして例えば,前記表中のルール条件表示セル部分への定義及び前記表中のルール実行表示セル部分への定義は,前記ルール仕様表示ステップで表示したルールの対応ルール部分を複写・貼付することで定義可能であるビジネスルール管理方法であることを特徴とする。
【0025】
また例えば,前記表示手段の表示画面に表示されている表中の所定領域にルール生成ステップ生成したルールと同一行に,前記入力手段より入力される当該ルール実行時の入力値とを表示するとともに,前記入力値によりルールを実行したルール実行結果の出力結果値を前記表中の同一行に表示するルール検証ステップを更に有するビジネスルール管理方法であることを特徴とする。
【0026】
更に例えば,前記出力結果値表示部に隣接する同一表示行のセルに前記入力手段からルール実行時の出力期待値を設定表示可能であり,前記出力期待値と前記出力結果値とを同時に目視確認可能とするビジネスルール管理方法であることを特徴とする。」

(3)発明の効果
「 【0027】
本発明によれば,対象となるビジネスルールが変わっても,あるいは追加変更となっても,ルールエンジンを新たに作り直す必要がなく,共通の方法で対応することが可能なビジネスルール管理方法及びビジネスルール管理装置を提供できる。」

(4)発明を実施するための形態
ア 「【0033】
図1は本発明に係る一実施の形態例のビジネスルール管理システムの全体構成を説明するための図である。図1において,図8と同様構成には同一番号を付した。
【0034】
図1において,300は各種情報処理を行うコンピュータであり,演算装置350,記憶装置400などから構成されている。コンピュータ300の記憶装置400には,コンピュータを稼働させるためのOS(オペレーティングシステム)410,GUI(グラフィカルユーザインタフェース)420,アプリケーションプログラム430,ルールエンジン440及び本実施の形態例に特有のルールスタジオ450等が格納され,例えばキー入力装置360よりの指示に従って演算装置350で必要な制御処理が実行される。 【0035】
360はキー入力装置であり,コンピュータ300の動作制御を指示可能である。370は表示装置であり,キー入力装置360の指示に従ったコンピュータ300の動作状態などを表示可能である。
【0036】
又,データベース100及びルールベース200などは大容量記憶装置500に形成されている。尚,各ベース毎に独立した記憶装置に単独で格納されていても良い。610,620は操作端末であり,コンピユータ300,大容量記憶装置500等をアクセス可能である。
【0037】
本実施の形態例では,処理対象のビジネスルールから必要なルールを抽出・実装・変更を行い,ルールの編集・検証・単体テスト,ルール生成を行うルールエディタ機能を有するルール・スタジオ450を備える点に特徴があり,ルールエンジン440によるルールの実行及び制御を簡単な操作で実現している。
【0038】
本実施の形態例ではルールエディタによる,ルールの実装・変更をコンピュータシステムに標準的に備えられている表作成ソフトウェアを利用して,表形式の表示でルール定義等を行ない,ルールベース200に登録し,登録したルールをルールテスタで確認し,誤りなどがあれば修正を行い,正しいルールとしてルールベース200に登録し,ルールエンジンによるルールベース200よりの抽出,抽出したルールに従ったデータの読み出しが可能としている。
【0039】
以下,本実施の形態例のルール・スタジオ450を用いたビジネスルールの定義,ルールプログラムの生成,ルールテストを含むルール開発処理を図2のフローチャートも参照して説明する。
【0040】
本実施の形態例では,ビジネスルールの提示が容易に行えるようにするために表作成ソフト,例えばマイクロソフト社のExcel(登録商標),ジャストシステム社の三四郎(登録商標)その他,各種の表作成ソフトを使用できる。ルールの抽出は,処理対象の例えば使用書,業務マニュアル,各種規定書などから,ルール化の対象となる箇所をIF?THE形式で,表作成ソフトで作成した表シート,例えばExcel(登録商標)シートに展開することで行う。
【0041】
また,本実施の形態例では,ルールスタジオ450のルールエディタ機能(ルール編集機能)により,ビジネスロジックを自然言語ライクにルール化し,ルールで使用する用語(モデル:日本語,英語)のマスタ定義を行う。そして,ルール(条件,アクション)の定義を行い,実行制御のための優先度を設定する。その際に,操作性,生産性,品質を向上させる用語入力支援を行う。
【0042】
そして,ルールスタジオ450のルールジェネレータ機能(ルール自動生成機能)により,ルールエディタ機能で登録されたルールから,ルールプログラム(DRL)を自動生成する。必要に応じて日本語モデルから英語モデルに自動変換する。尚,ルールを読み出すプログラム(例えば,VB,NET,java)のインタフェースプログラムを自動生成する。
【0043】
生成したルールをルールスタジオ450のルールテスタ機能(ルール単体テスト機能)により,テストデータを入力してルールのテストを実施可能であり,生成したルールの確認ができる。例えば,表作成ソフトで登録したテストデータをXML変換し,ルールエンジンと例えばREST通信し,ルールを実行し,ルール実行結果やログを表示装置370等の表示画面に同時に全て表示している。」

イ 「【0045】
図2を参照して本実施の形態例のビジネスルール管理の詳細を説明する。以下において,操作は表示装置370の表示画面を参照してキー入力装置360から,あるいは操作端末610あるいは620を利用して行うことができる。
【0046】
最初にルール化を行なう原書類等を用意し,ルールの抽出操作を行う。ルール化を行なう原書類等は,個人市民税(給与支払い報告書)の生命保険控除ルールを処理する例に限定されるものではなく,例えばルールの拠り所である業務マニュアル,社内規定等の書類などであっても同様である。
【0047】
即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。そしてステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。続くステップS6において,必要なルール化を全て行ったか否か調べ,ルール化する箇所が残っている場合にはステップS4に戻り次のルール化操作を行う。一方,ステップS6で全てのルールの抽出が終了している場合にはステップS8に進む。
【0048】
本実施の形態例に係るビジネスルール管理処理のルール抽出例を図3に示す。図3の例は国税庁の個人市民税の基準となる給与支払報告書から生命保険控除についての不備チェック処理のルールを抽出してルール仕様領域に展開した例を示しており,図3には4つのルールが抽出された例が示されている。
【0049】
(1)ルール条件が「個人年金保険料の控除額 > 所得税生命保険控除額」の場合
→アクションとして「個人年金保険料の控除額が所得税生命保険控除額に加算されていない」ことが考えられる。
(2)ルール条件が「所得税生命保険控除額 > 100000」の場合
→アクションとして「生命保険料の控除額が,10万円を超えている。」ことが考えられる。
【0050】
(3)ルール条件が「個人年金保険料 >0円
かつ,所得税生命保険料控除額 = 0円」の場合
→アクションとして「個人年金保険料の額が記入されているのに,生命保険料の控除額が 0円 になっている」ことが考えられる。
(4)ルール条件が「個人年金保険料 = 0円 かつ,所得税生命保険料控除額 > 50000円」の場合
→アクションとして「個人年金保険料の額 = 0円 で,生命保険料の控除額が5万円を超えている」ことが考えられる。
【0051】
本実施の形態例では,図3に示すように,ルール仕様を自然言語で記述するため,処理すべきルールが変わったとしても,全て統一された同じような操作でルールの生成ができルール化対象の変更等があっても同じような操作手順で同様に必要なルールの抽出,定義をすることができ,汎用性の高いビジネスルール管理システムが提供できる。」

ウ 「【0052】
ルールの抽出が終了すると図2に示すステップS8の処理に移行する。ルール仕様領域にルールを展開した例を図4に示す。図4に示す表は本実施の形態例におけるルール定義を行う処理で使用する表の例を示しており,表示装置370の表示画面あるいは操作端末の表示画面に一画面として表示する。図4の最下部にルール仕様領域が配置されており,図3に示す4つのレール抽出結果を複写した状態を示している。即ち,本実施の形態例では表示画面の表示の一部を所定領域に複写するのみで容易にルール仕様の抽出,条件の定義,アクションの定義が行える点に大きな特徴を有している。」

エ 「【0053】
そして,図2のステップS8でルール仕様領域に展開したルール条件を参照してルール条件領域に定義する。続くステップS9で展開したルールを参照して対応アクションをアクション領域に展開する。
【0054】
図4に示す表の状態から展開した例を図5に示す。図5は本実施の形態例におけるルール仕様領域(図5のルール仕様スタートS領域)に展開したルールをルール条件領域及びアクション領域にルールを定義した状態の例を示す図である。図5の例は,図4のS24に展開した上記(1)のルール条件「個人年金保険料の控除額 > 所得税生命保険控除額」をルール条件領域(図5のコンディションC領域)に複写し,「個人年金保険料の控除額が所得税生命保険控除額に加算されていません。」をアクション領域(図5のアクションA領域)に定義した状態を示している。
【0055】
図2のステップS12において,ルール仕様領域に展開したルール全てを対応領域に定義したか否かを判断し,ルール仕様領域に展開したルールの中で未定義のルール条件がある場合にはステップS8に戻り,次のルール条件の定義を行う。ステップS12で全ての定義が終了するとステップS14に進む。
【0056】
ステップS14では,ステップS8で展開されたルール条件領域の定義及びステップS10でアクション領域の定義を参照しながらルールを自動再生する。ルールの再生については公知の方法を用いることができる。ステップS14で生成したルールは,ステップS16においてルールベース200に格納される。これらの処理はルールスタジオ450のルールエディタ機能を用いてルールの定義までを行い,ルールジェネレータ機能でルールの自動生成を行う。」

オ 「【0062】
以上説明したように本実施の形態例によれば,業務マニュアルや説明書,社内規定,顧客へ処理説明者や記載説明書等のルールの拠り所となるデータから,ルール化の対象となる箇所を抽出し,IF?THE形式で表示されている表中の(Excelシートの)所定領域に展開するという簡単な操作でルールの抽出ができる。
【0063】
更に,表中に展開したルールを表示装置に表示された表中の「ルール仕様」の行にコピー&ペースト(複写)により定義し,さらに「ルール仕様」に展開したルールを参照しながら,容易にルール条件セル〔コンディション(IF)〕及びアクションセル〔アクション(THEN)のセル〕にルールを定義することができる。この定義も,「ルール仕様」に展開したルールを複写(コピー)&貼付(ペースト)により面倒な再入力を行うことなく行うことができる。又,1ルール仕様を1列にルールとして記述するため,ルール仕様などを容易に確認できる。」

2 理由2(特許法36条6項2号)について
判断の便宜から,理由2から検討をする。

(1)請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段」との記載について,発明の詳細な説明を参照しつつ物の発明を構成する「手段」として明確であるか,以下,検討する。

ア 請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し」について検討をする。
上記1(4)イ【0046】【0047】には「最初にルール化を行なう原書類等を用意し,ルールの抽出操作を行う。ルール化を行なう原書類等は,個人市民税(給与支払い報告書)の生命保険控除ルールを処理する例に限定されるものではなく,例えばルールの拠り所である業務マニュアル,社内規定等の書類などであっても同様である。」(段落【0046】),「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。」(段落【0047】)と記載されている。これらの記載を参照すると,段落【0047】には「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し」とあることから,段落【0046】の記載は,請求項1の「ルール化対象箇所を抽出」することを説明するものであることは明らかである。
そして,「最初にルール化を行う原書類等を用意する」行為は,人が行うことは明らかであり,続けて「ルールの抽出操作を行う。」として抽出「操作」を行うことが記載されている。「操作」とは一般に人の行為を意味することから,ルールの抽出は人が行っていると考えることが自然である。
そうすると,請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出」することは,発明の詳細な説明を参照すると,人の行為であることは明らかである。

イ 請求項1の「前記表示装置の所定領域に展開表示する」について検討をする。
上記1(4)イ【0047】には「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。」と記載されている。この記載を参照すると,ルール化対象箇所の抽出に続けて,展開が行われていることから,上記1(4)イ【0047】の当該記載は,請求項1の「前記表示装置の所定領域に展開」することを説明するものであることは明らかである。
そして,上記1(4)イ【0047】の当該記載は,抽出に続けて展開が行われることが記載されているところ,表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートは行為主体となることはないので,上記1(4)イ【0047】の抽出したものを「IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する」ことは人が行うものと考えることが自然である。
そうすると,請求項1の「前記表示装置の所定領域に展開表示する」ことは,発明の詳細な説明を参照すると,人の行為であることは明らかである。

ウ 上記ア,イを踏まえて請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段」との記載について検討すると,人が行う「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開」との行為により,ハードウエア資源である「ルール化対象表示手段」の機能,構成を特定しようとすることから,請求項1の当該記載は不明確である。

(2)請求項1の「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し表示するルール仕様表示手段」との記載について,発明の詳細な説明を参照しつつ物の発明を構成する「手段」として明確であるか,以下,検討する。

ア 請求項1の「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し」について検討をする。
上記1(4)イ【0047】には「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。そしてステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。続くステップS6において,必要なルール化を全て行ったか否か調べ,ルール化する箇所が残っている場合にはステップS4に戻り次のルール化操作を行う。一方,ステップS6で全てのルールの抽出が終了している場合にはステップS8に進む。」と記載されている。この記載を参照すると,上記1(4)イ【0047】の「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。」との記載は,上記2(1)でみたとおり,請求項1の「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示する」を説明するものであり,上記1(4)イ【0047】には続けて「そしてステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。」とあることから,この「そしてステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。」との記載は,請求項1の「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出」することを説明であることは明らかである。
そして,上記1(4)イ【0047】には「展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。」として,複写(コピー&ペースト)操作により,展開したルールから必要とするルールを抽出するものであり,「複写(コピー&ペースト)操作」は一般に人の行為を意味することから,必要とするルールの抽出は人が行っていると考えることが自然である。
そうすると,請求項1の「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し」との処理は,発明の詳細な説明を参照すると,人の行為であることは明らかである。

イ 請求項1の「抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し」について検討をする。
上記1(4)イ【0047】には「即ち,ステップS1においてルール化対象箇所を抽出し,IF?THE形式で表作成ソフト,例えばExcel(登録商標)シートの所定領域に展開する。そしてステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作で抽出する。続くステップS6において,必要なルール化を全て行ったか否か調べ,ルール化する箇所が残っている場合にはステップS4に戻り次のルール化操作を行う。一方,ステップS6で全てのルールの抽出が終了している場合にはステップS8に進む。」,上記1(4)ウ【0052】には「ルールの抽出が終了すると図2に示すステップS8の処理に移行する。ルール仕様領域にルールを展開した例を図4に示す。」と記載されている。これらの記載を参照すると,図4は,ステップS4において,展開したルールから必要とするルールを表中のルール仕様の領域に例えば複写(コピー&ペースト)操作した結果をルール仕様領域に展開した例を説明する図であることは明らかである。そうすると,上記1(4)イ【0047】の上記記載及び上記1(4)ウ【0052】の上記記載は,請求項1の「抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開」することを説明していることは明らかである。
そして,複写(コピー&ペースト)操作はペースト機能から,コピー(抽出)したものをペースト(展開)するものであり,「複写(コピー&ペースト)操作」は一般に人の行為を意味することから,展開する処理は人が行っていると考えることが自然である。
そうすると,請求項1の「抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し」は,発明の詳細な説明を参照すると,人の行為であることは明らかである。

ウ 上記ア,イを踏まえて請求項1の「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し表示するルール仕様表示手段」との記載について検討すると,人が行う「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開」との行為により,ハードウエア資源である「ルール仕様表示手段」の機能,構成を特定しようとすることから,請求項1の当該記載は不明確である。

3 理由1(特許法29条1項柱書)について
(1)自然法則の利用可能性について
特許法2条1項は,発明について,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうと規定するところ,人は,自由に行動し,自己決定することができる存在である以上,人の特定の精神活動,意思決定,行動態様等に有益かつ有用な効果が認められる場合があったとしても,人の特定の精神活動,意思決定や行動態様等自体は,直ちには自然法則の利用とはいえない。
したがって,ある課題解決を目的とした技術的思想の創作が,いかに,具体的であり有益かつ有用なものであったとしても,その課題解決に当たって,専ら,人間の精神的活動を介在させた原理や法則,社会科学上の原理や法則,人為的な取り決めや,数学上の公式等を利用したものであり,自然法則を利用した部分が全く含まれない場合には,そのような技術的思想の創作は,同項所定の「発明」には該当しない。
そうすると,特許出願に係る発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」でないときは,その発明は特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず,特許を受けることができない。
そこで,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が全体として「自然法則を利用した」技術的思想の創作に該当するか否かについて以下検討する。

ア 発明の詳細な説明には,上記1(1)の発明が解決しようとする課題,上記1(2)の課題を解決するための手段,及び,上記1(3)の発明の効果を踏まえて,発明の詳細な説明の記載全体を見ると,本願発明であるビジネスルール管理装置は,処理対象のビジネスルールから必要なルールを抽出・実装・変更を行い,ルールの編集・検証・単体テスト,ルール生成を行うルールエディタ機能を有するルール・スタジオ450を備える点に特徴がある。そして,そのような構成を採用することで,共通の処理が可能で,ビジネスルールの定義・実装・管理を同じプロセスで行うことができるビジネスルール管理装置及びビジネスルールの管理方法を提供するものである。これにより,人がルールの抽出を行い,ルール仕様領域へのルールの展開を人が複写(コピー)&貼付(ペースト)で行うことにより面倒な再入力を行うことなくルール条件にルールを定義することができ,全ての定義が終了するとルールを自動生成するものであり,さらに,発明の詳細な説明段落【0057】?【0061】のルールテスト機能によりルールの修正を可能にすることで,対象となるビジネスルールが変わっても,あるいは追加変更となっても,ルールエンジンを新たに作り直す必要がなく,共通の方法で対応することが可能なビジネスルール管理装置及びビジネスルール管理方法を提供できるものである。
そして本願発明であるビジネスルール管理装置が有するルールエディタ機能のうちのルールの編集機能に関し,上記1(4)オ【0063】のとおり,人がルール仕様などを容易に確認することができるという効果を奏する。

イ 本願発明のビジネスルール管理装置のルール編集機能は,上記第2でみたとおり人が必要とするルールを抽出し,抽出されたルールをビジネスルール管理装置が表示すること,また,ビジネス管理装置が,「前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分」及び「前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分」を表示すること,及び,「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルールを生成可能とする」ことを定めたものである。
ここで,本願発明の「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルール生成可能とする」について検討をする。
上記1(4)エ【0053】【0054】及び上記1(4)オ【0063】には次の記載がある。
「 【0053】
そして,図2のステップS8でルール仕様領域に展開したルール条件を参照してルール条件領域に定義する。続くステップS9で展開したルールを参照して対応アクションをアクション領域に展開する。
【0054】
図4に示す表の状態から展開した例を図5に示す。図5は本実施の形態例におけるルール仕様領域(図5のルール仕様スタートS領域)に展開したルールをルール条件領域及びアクション領域にルールを定義した状態の例を示す図である。図5の例は,図4のS24に展開した上記(1)のルール条件「個人年金保険料の控除額 > 所得税生命保険控除額」をルール条件領域(図5のコンディションC領域)に複写し,「個人年金保険料の控除額が所得税生命保険控除額に加算されていません。」をアクション領域(図5のアクションA領域)に定義した状態を示している。」
「 【0063】
更に,表中に展開したルールを表示装置に表示された表中の「ルール仕様」の行にコピー&ペースト(複写)により定義し,さらに「ルール仕様」に展開したルールを参照しながら,容易にルール条件セル〔コンディション(IF)〕及びアクションセル〔アクション(THEN)のセル〕にルールを定義することができる。この定義も,「ルール仕様」に展開したルールを複写(コピー)&貼付(ペースト)により面倒な再入力を行うことなく行うことができる。又,1ルール仕様を1列にルールとして記述するため,ルール仕様などを容易に確認できる。」
これらの記載によると,「定義」は人が行う「複写(コピー)&貼付(ペースト)」により行われるものであるから,本願発明の「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付する」ことは人行為であることは明らかである。
また,上記1(4)エ【0055】【0056】には次の記載がある。
「【0055】
図2のステップS12において,ルール仕様領域に展開したルール全てを対応領域に定義したか否かを判断し,ルール仕様領域に展開したルールの中で未定義のルール条件がある場合にはステップS8に戻り,次のルール条件の定義を行う。ステップS12で全ての定義が終了するとステップS14に進む。
【0056】
ステップS14では,ステップS8で展開されたルール条件領域の定義及びステップS10でアクション領域の定義を参照しながらルールを自動再生する。ルールの再生については公知の方法を用いることができる。ステップS14で生成したルールは,ステップS16においてルールベース200に格納される。これらの処理はルールスタジオ450のルールエディタ機能を用いてルールの定義までを行い,ルールジェネレータ機能でルールの自動生成を行う。」
なお,上記1(4)エ【0056】の「自動再生する」は同段落の「ステップS14で生成したルールは」及び図2から,「自動生成する」の明らかな誤記である。同様に「ルールの再生については公知の方法を用いることができる。」の「再生」も「生成」の明らかな誤記である。
そこで「生成可能」について検討すると,上記1(4)エ【0055】【0056】には生成処理の流れは記載されているものの「生成可能」については記載されていない。また,発明の詳細な説明全体を参照しても,発明の詳細な説明の段落【0019】に「前記ルール条件定義手段と前記ルール実行条件定義手段で定義したセルの情報からルール生成可能とすることを特徴とする。」との記載があるのみで,具体的に「生成可能」を説明する記載はない。そのため,一般的な意味から生成「可能」を検討するに,「可能」とは,「(現に実現していなくとも)実現の余地があること。実際ありうること。(しようと思えば)できる意にも,理論上や規定上は矛盾なくそういう状態が考えられる意にも使う。「?なかぎり早く行く」「百階建のビルも?だ」」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]とある。そうすると「生成可能」とは,少なくともルールの生成は実行されていない状態を意味することは明らかである。
そうすると,「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することで」「ルールを生成可能とする」とあることから,「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付する」という条件を満たすことで「ルールを生成可能とする」という取決めを定めたにすぎない。
このように,発明の詳細な説明に照らして本願発明から把握できる事項は,コンピュータシステムが有する表示機能と,周知の表計算ソフトが有する一般的な複写機能を利用して,人が必要なルールを抽出し,抽出したルールを構成するルール条件とアクションを,ルール条件領域とアクション領域にそれぞれ表示し,人による複写・貼付することによりルールが生成可能な状態になることが特定されるのみである。
そして,本願発明のビジネスルール管理装置のルール編集機能により奏する作用効果は,上記1(4)オ【0063】から,ルール条件領域にルール条件が表示されること,アクション領域にアクションが表示されることで人がルール仕様を容易に確認できるという心理的な法則に基づくものである。このような心理的な法則により,ルールの確認を容易にすることは,専ら人間の精神活動に基づくものであって,自然法則を利用したものとはいえない。
そうすると,本願発明は全体として自然法則を利用したものとはいえず,「発明」に該当しない。

ウ なお念のため,本願発明の各構成要件に着目をして,それぞれ検討をする。
本願発明は次の構成要件A?Gに分説される。

A ビジネスルールを登録管理するビジネスルール登録管理部と,前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールを表示可能な表示装置とを備えるビジネスルール管理装置であって,
B ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段と,
C 前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し表示するルール仕様表示手段と,
D 前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分を前記表示装置のルール条件表示領域に表示するルール条件表示手段と,
E 前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分を前記表示装置の他のルール実行(アクション)表示領域に表示するルール実行条件表示手段とを備え,
F 前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルールを生成可能とする
G ことを特徴とするビジネスルール管理装置。

(ア)構成要件A,Gについて。
構成要件Aは「ビジネスルールを登録管理のするビジネスルール登録管理部と,前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールを表示可能な表示装置とを備えるビジネスルール管理装置であって,」として,「ビジネスルール管理装置」の構成を特定するものである。しかしながら,「ビジネスルール管理装置」が「ビジネスルールを登録管理するビジネスルール登録管理部」と「ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールを表示可能な表示装置」を備えることを特定するにとどまる。
構成要件Gは「ビジネスルール管理装置」であって,構成要件Aの「ビジネスルール管理装置」と同じものであり,構成要件B?Fの構成及び機能を有することを特定するにとどまる。

(イ)構成要件Bについて。
構成要件Bは「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開表示するルール化対象表示手段と,」として「ルール化対象表示手段」の機能を特定するものである。しかしながら,上記2(1)で見たとおり,「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し前記表示装置の所定領域に展開」は人の行為であって,ハードウエア資源である「ルール化対象表示手段」の機能は,人の行為により得られたものを「表示する」のみである。
そうすると,構成要件Bは,人が行った「ルール化を行う原書類等のルール化対象箇所を抽出し」たものを「前記表示装置の所定領域に展開」したものを「ルール化対象表示手段」が「表示する」ことを特定するにとどまる。

(ウ)構成要件Cについて。
構成要件Cは「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開し表示するルール仕様表示手段と,」として「ルール仕様表示手段」の機能を特定するものである。しかしながら,上記2(2)で見たとおり,「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開」は人の行為であって,ハードウエア資源である「ルール仕様表示手段」の機能は,人の行為により得られたものを「表示する」のみである。
そうすると,構成要件Cは,人が行った「前記ルール化対象表示手段で表示されているルール化対象箇所のうち必要とするビジネスルールを抽出し抽出した処理対象ビジネスルールを前記表示装置の所定の領域に展開」したものを「ルール仕様表示手段」が「表示する」ことを特定するにとどまる。

(エ)構成要件Dについて。
構成要件Dは「前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分を前記表示装置のルール条件表示領域に表示するルール条件表示手段と,」として,「ルール条件表示手段」の機能を特定するものである。
上記1(4)エ【0054】には「図5の例は,図4のS24に展開した上記(1)のルール条件「個人年金保険料の控除額 > 所得税生命保険控除額」をルール条件領域(図5のコンディションC領域)に複写し,「個人年金保険料の控除額が所得税生命保険控除額に加算されていません。」をアクション領域(図5のアクションA領域)に定義した状態を示している。」,上記1(4)オ【0063】には「表中に展開したルールを表示装置に表示された表中の「ルール仕様」の行にコピー&ペースト(複写)により定義し,さらに「ルール仕様」に展開したルールを参照しながら,容易にルール条件セル〔コンディション(IF)〕及びアクションセル〔アクション(THEN)のセル〕にルールを定義することができる。この定義も,「ルール仕様」に展開したルールを複写(コピー)&貼付(ペースト)により面倒な再入力を行うことなく行うことができる。」と記載されている。これらの記載から,構成要件Dの「前記表示装置のルール条件表示領域」は発明の詳細な説明の「ルール条件領域」を意味し,構成要件Dの「前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分」はルール条件領域に複写される「ルール条件」を意味していることは明らかである。
そうすると,構成要件Dは,「ルール情報表示手段」が「前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分」を「前記表示装置のルール条件表示領域」に「表示する」ことを特定するにとどまる。

(オ)構成要件Eについて。
構成要件Eは「前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分を前記表示装置の他のルール実行(アクション)表示領域に表示するルール実行条件表示手段とを備え,」として,「ルール実行条件表示手段」の機能を特定するものである。
上記1(4)エ【0054】には「図5の例は,図4のS24に展開した上記(1)のルール条件「個人年金保険料の控除額 > 所得税生命保険控除額」をルール条件領域(図5のコンディションC領域)に複写し,「個人年金保険料の控除額が所得税生命保険控除額に加算されていません。」をアクション領域(図5のアクションA領域)に定義した状態を示している。」,上記1(4)オ【0063】には「表中に展開したルールを表示装置に表示された表中の「ルール仕様」の行にコピー&ペースト(複写)により定義し,さらに「ルール仕様」に展開したルールを参照しながら,容易にルール条件セル〔コンディション(IF)〕及びアクションセル〔アクション(THEN)のセル〕にルールを定義することができる。この定義も,「ルール仕様」に展開したルールを複写(コピー)&貼付(ペースト)により面倒な再入力を行うことなく行うことができる。」と記載されている。これらの記載から,構成要件Dの「前記表示装置の他のルール実行(アクション)表示領域」は発明の詳細な説明の「アクション領域」を意味し,さらに,上記1(4)イ【0049】?【0050】を参照すると,構成要件Dの「前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分」はアクション領域に複写される「アクション」を意味していることは明らかである。
そうすると,構成要件Eは,「ルール実行条件表示手段」が「前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分」を「前記表示装置の他のルール実行(アクション)表示領域」に「表示する」ことを特定するにとどまる。

(カ)構成要件Fについて。
構成要件Fは「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルールを生成可能とする」として,「ビジネスルール管理装置」の機能を特定するものである。
そして,上記3(1)イで検討したとおり,「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付する」という条件を満たすことで「ルールを生成可能とする」という取決めを定めたにすぎない。

エ そうすると,各構成要件について検討をしても,それぞれ,各表示手段が所定の情報を表示すること,ルールを生成可能とするという取決めを定めたものにすぎないため,人為的取決めにとどまり,自然法則を利用したとはいえず,「発明」に該当しない。

(2)「コンピュータソフトウエア関連発明」の観点について
ア 本願発明は上記3(1)ウ(ア)でみたとおり,コンピュータを利用していることは明らかであるから,「コンピュータソフトウエア関連発明」であることは明らかである。そこで,このコンピュータソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するかを検討する。

イ コンピュータソフトウエア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」となるためには,「ソフトウエアによる情報処理が,ハードウエア資源を用いて具体的に実現している」ことが必要となる。具体的には,ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより,使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。

ウ 本願発明全体は,ビジネスルール管理装置の構成は記載されているものの,上記3(1)のとおり,人が必要とするルールを抽出し,抽出されたルールをビジネスルール管理装置が表示すること,また,ビジネス管理装置が,「前記ルール仕様表示手段で表示されている前記ビジネスルール登録管理部に登録されているビジネスルールのうちルール実行時の条件部分」及び「前記ルール仕様表示手段で表示されているルールのうちルール実行時のルール実行条件部分」を表示すること,及び,「前記ルール条件表示手段で表示した前記ルール条件表示領域に表示されているルールを前記ルール実行条件表示手段の表示領域に複写・貼付することでルールを生成可能とする」とする取決めが特定されているにすぎない。そうすると,全体として,ルール編集機能をコンピュータ及び周知の表計算ソフトの有する一般的な機能の単なる使用により実現しているにすぎないことから,ビジネスルール管理装置の各手段を道具として用いているにすぎない。

エ なお念のため,本願発明を上記(1)ウのように分説したときの各構成要件について検討をしても,上記(1)ウ(ア)?(カ)のとおりであり,コンピュータによる情報処理は特定されていない。

オ そうすると,本願発明は全体を見ても,各構成要件を見ても,情報処理は特定されているとはいえないから,本願発明は,ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって,使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又は動作方法が構築されているとはいえない。
よって,本願発明は,全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず,コンピュータソフトウエア関連発明の観点で検討をしても,「発明」に該当しない。

4 むすび
上記のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないこと,及び,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことから,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-05 
結審通知日 2019-08-27 
審決日 2019-09-18 
出願番号 特願2013-139202(P2013-139202)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (G06Q)
P 1 8・ 537- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 佐藤 聡史
特許庁審判官 松田 直也
相崎 裕恒
発明の名称 ビジネスルール管理システム及びビジネスルール管理方法  
代理人 丸山 幸雄  
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