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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1357615
異議申立番号 異議2019-700010  
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-11 
確定日 2019-10-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6355296号発明「皮膚外用剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6355296号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6355296号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6355296号の請求項1ないし4に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成25年4月9日に出願され、平成30年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年7月11日に特許掲載公報が発行された。その後の手続は以下のとおりである。
平成31年 1月11日 特許異議申立人 山下 桂(以下、「申立人 」という。)より特許異議の申立て
平成31年 2月25日 取消理由通知
令和 1年 5月 7日 特許権者より意見書の提出及び訂正の請求
同年 5月27日 特許権者より訂正請求書の手続補正書(方式 )の提出
同年 7月 3日 申立人より意見書の提出

第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
令和1年5月27日付けの手続補正書によって補正された同年5月7日付け訂正請求書により特許権者が請求する訂正は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものである。
その請求の内容は、請求項1?4からなる一群の請求項に係る訂正であって、以下のとおりのものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲中、請求項1の柱書末尾の「(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除く)」の記載を、「(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)」と訂正すると共に、
請求項1の末尾の「(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上」の記載の次に、「(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」の記載を追加する訂正を行う。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲中、請求項1に「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 2?15質量%」とある記載を、「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 6?15質量%」と訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の皮膚外用剤組成物から除外される態様として、新たに(f)項を除外事項として追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
請求項1を引用する請求項2?4も、当該訂正により、同様に除外事項が増えるものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)新規事項の追加の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項1の皮膚外用剤組成物から、「(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」を除外する訂正であるが、願書に添付した明細書の【0045】には、「(C)成分は上記(B)成分以外のエステル油の1種以上である」との記載があり、同明細書の【0048】には、「(C)成分の含有量が0.5?10質量%の範囲を外れると、水中油滴型液晶構造の形成と安定性に支障を来たす他、皮膚外用剤組成物の良好な塗布感を確保できない。」との記載があって、要するに願書に添付した明細書には、(B)成分以外のエステル油の合計含有量が10質量%を超えると不具合が生じることが記載されているから、当該願書に添付した明細書に記載の「(B)成分以外のエステル油」を意味する、「上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものと、上記(C)成分との合計」((C)成分以外の「(B)成分以外のエステル油」と(C)成分を足し合わせているので、(C)成分が差し引きゼロとなり、結局「(B)成分以外のエステル油」を意味する)の含有量が10質量%を超える場合を除外するこの訂正は、願書に添付した明細書から導き出される事項である。
なお、上記【0048】の「(C)成分の含有量が0.5?10質量%の範囲」について、(f)項では「・・・合計含有量が10質量%を超える場合」を規定するが、「・・・合計含有量が0.5重量%未満である場合」は規定していないが、これは、請求項1における(C)成分の含有量の下限値が0.5質量%であって、「(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が0.5質量%未満」の態様を採ることがなく、除外をする必要がないからである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項1は、皮膚外用剤組成物に含まれる成分の含有量の範囲をより限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 2?15質量%」とある記載を、「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 6?15質量%」と訂正することにより、(A)成分の含有量の範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
請求項1を引用する請求項2?4も、当該訂正により、当該(A)成分の含有量をより限定するものであるから、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)新規事項の追加の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 2?15質量%」とある記載を、「(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 6?15質量%」と訂正するものであるが、願書に添付した明細書の表1?表6に記載する実施例1?実施例43の内、実施例1、3、4、31、33を除く38の実施例で、(A)成分の含有量が6?15質量%の範囲内であり、特に実施例5、10?12、17?19、26?30の12例の実施例の(A)成分の含有量が6質量%であるから、皮膚外用剤組成物における(A)成分の含有量として、「6質量%」をその下限値として読み取ることができるものである。
そうすると、(A)成分の含有割合を「2?15質量%」から「6?15質量%」と訂正する訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(ウ)特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項2は、(A)成分の含有量という発明特定事項の範囲をより限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正請求についての結論
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
特許第6355296号の請求項1?4の特許に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、特許第6355296号の請求項1?4の特許に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等ということがある。また、これらをまとめて「本件特許発明」ということがある。)。

「【請求項1】 下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造を含むことを特徴とする皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 6?15質量%
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上
(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合

【請求項2】 前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分と(C)成分の合計含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2?30の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。

【請求項3】 前記(C)成分がミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。

【請求項4】 前記皮膚外用剤組成物が、更に水溶性高分子の1種以上を含有することを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の要旨
上記訂正前の本件特許に対して平成31年 2月25日付けで通知された取消理由の要旨は以下のとおりである。

(1)取消理由1(新規事項)平成29年12月14日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、上記訂正前の本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正がなされた特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)取消理由2(新規性)上記訂正前の本件特許の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記2に示す甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

2 取消理由通知で引用した証拠
・甲第1号証 国際公開第02/19973号(以下、「甲1」という。)
・甲第2号証 特開2010-18536号公報(以下、「甲2」という。)
・甲第3号証 国際公開第2007/122822号(以下、「甲3」という。)
・甲第4号証 特開2005-60230号公報(以下、「甲4」という。)

3 取消理由通知で引用した証拠の記載事項
甲1?甲4には、それぞれ以下の記載がある。甲1は外国語であるため、日本語訳文を記載する。

(1)甲1
(1-1)(p.26第1?25行)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)調製物の総重量に基づいて1?5重量%の1種もしくは複数の中和または一部中和されたC_(14)-C_(32)-脂肪酸、
(II)ここで、中和または一部中和された形態の6.0?8.0の調製物のpH範囲に対応して、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが中和塩基として選択され、
(III)ここで、アルキル化アンモニウム塩基の含量が0.01重量%未満であるように選択され、
(IV)調製物の総重量に基づいて0.1?1.5重量%の、グリセロールおよび/またはプロピレングリコールおよび/またはグリコールの、1種もしくは複数のモノ-および/もしくはジエステル、
(V)調製物の総重量に基づいて0.5?3重量%の、12?40炭素原子を有する分枝および非分枝アルキルアルコールの群から選択される、1種もしくは複数の脂肪アルコール、
(VI)調製物の総重量に基づいて1?9重量%の、
(a)30℃より低い融点をもつ1種もしくは複数の脂質、
(b)30℃より高い融点をもつ1種もしくは複数の脂質、
から成る脂質相、
(VII)ここで、(a)と(b)の比率が2:1から6:1の範囲にあり、
(VIII)ここで、(a)に従う脂質が調製物の総重量に基づいて0?5%のシリコーン油を含んで成り、
(IX)ここで、脂質(a):シリコーン油(VIII)の比率が好ましくは、5:1から1:2の範囲にある、
を含んで成る、O/Wエマルション形態の化粧品または皮膚科学的調製物。」

(1-2)(p.1第4?8行)
「本発明は化粧品および皮膚科学的エマルション、とりわけ皮膚手入れ用化粧品および皮膚科学的エマルションに関する。有利な態様において、本発明は脂肪酸を含有する調製物、とりわけエマルション、好ましくは、O/Wエマルションの安定性を増加させる適用に関する。」

(1-3)(p.20第1?15行)
「実施例1(O/Wクリーム)
重量%
ステアリン酸 3.00
セチルアルコール 2.50
ステアリン酸グリセリル 1.00
オクチルドデカノール 3.00
シクロメチコン 1.00
ミリスチン酸ミリスチル 2.00
グリセロール 5.00
カーボマー 0.10
水酸化ナトリウム 適量
保存剤 適量
香料 適量
水、脱ミネラル 全100.00
pH6.0?8.0に調整」

(1-4)(p.22第1?末行)
「実施例4(O/Wエマルションメークアップ)
重量%
ステアリン酸 1.00
セチルアルコール 2.00
ステアリン酸グリコール 0.50
ステアリン酸グリセリル 0.25
イソノナン酸セテアリル 2.00
パルミチン酸イソプロピル 1.00
ジメチコン 0.60
パルミチン酸セチル 0.70
グリセロール 3.00
カーボマー 0.15
雲母 1.00
ケイ酸マグネシウム 1.00
酸化鉄 1.00
二酸化チタン 2.50
タルク 5.00
パルミチン酸ビタミンA 0.10
水酸化ナトリウム 適量
保存剤 適量
香料 適量
水、脱ミネラル 全100.00
pH6.0?8.0に調整」

(1-5)(p.24第1?末行)
「実施例6(O/Wローション)
重量%
ステアリン酸 2.00
セチルステアリルアルコール 2.00
ステアリン酸グリコール 0.30
ステアリン酸グリセリル 0.30
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド 1.00
エチルヘキサン酸セチルステアリル 1.00
ジメチコン 4.00
ミリスチン酸ミリスチル 1.00
酢酸ビタミンE 2.00
カーボマーナトリウム 0.10
グリセロール 3.00
香料、保存剤、染料、等 適量
水酸化ナトリウム 適量
水、pH6.0?7.5に調整 全100.00」

(1-6)(p.25第1?末行)
「実施例7(日焼け止めクリーム)
重量%
ステアリン酸 3.50
セチルアルコール 1.50
ミリスチルアルコール 1.00
ステアリン酸グリセリル 1.00
オクチルドデカノール 1.00
安息香酸C12-15-アルキル 2.00
パラフィン油 0.50
ジメチコン 1.00
パルミチン酸セチル 0.80
キサンタンゴム 0.10
カーボマーナトリウム 0.10
グリセロール 3.00
メトキシケイ皮酸オクチル 4.00
ベンゾフェノン-3 3.00
サリチル酸オクチル 3.00
BHT 0.02
Na_(2)H_(2)EDTA 0.10
香料、保存剤、染料 適量
水酸化カリウム 適量
水、pH6.5?8.0調整 全100.00」

(2)甲2
(2-1)
「(【請求項1】
化粧料全量に対して、
(a)ビタミンAおよびその誘導体を0.01?4質量%と、
(b)下記(b-1)?(b-3)成分からなる非イオン界面活性剤を0.6?4質量%と、
(b-1)トリステアリン酸ソルビタン、
(b-2)ポリエチレングリコールの付加モル数が20?120である、ステアリン酸ポリエチレングリコール、
(b-3)HLBが5?8のステアリン酸グリセリル、
(c)炭素原子数が14?24の高級アルコールを1?10質量%
を含有し、かつ(b)成分に対する(b-1)成分の配合比(質量比)が0.1?0.8である、水中油型乳化皮膚化粧料。」

(2-2)
「【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ビタミンA類を安定に配合し、使用性(肌なじみ、塗布後の効果実感)、基剤の経時安定性(乳化安定性)に優れる水中油型乳化皮膚化粧料を提供することを目的とする。」

(2-3)
「【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限りすべて質量%である。
・・・
(比較例1、実施例1?4)
・・・
【0066】
【表1】

・・・
(実施例5?8、比較例2?4)
下記表2に示す試料を調製し、上記評価方法に従い、酢酸レチノールの安定性、基剤の経時安定性(乳化安定性)、使用性(肌なじみ、塗布後の効果実感)を評価した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

・・・
【0071】
(実施例9?11)
・・・
【0072】
【表3】



(2-4)
「【0074】
以下に、さらに処方例を示す。
【0075】
(実施例12:スキンクリーム)
(配合成分) (質量%)
(1)酢酸レチノール 0.2
(2)トリステアリン酸ソルビタン 1.35
(3)ステアリン酸PEG40 0.81
(4)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.54
(5)ステアリルアルコール 0.9
(6)ベヘニルアルコール 3.3
(7)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 15
(8)シクロメチコン 2
(9)ミリスチン酸ミリスチル 2
(10)BHT 0.05
(11)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
(12)ダイナマイトグリセリン 8
(13)キシリトール 3
(14)1、3-ブチレングリコール 8
(15)キサンタンガム 0.2
(16)クエン酸ナトリウム 0.06
(17)クエン酸 0.04
(18)エデト酸三ナトリウム 0.05
(19)フェノキシエタノール 0.5
(20)トラネキサム酸 1
(21)4-メトキシサリチル酸カリウム 1
(22)水 残余
(製造方法)
(1)?(10)を70℃にて均一に混合溶解した(油相)。一方、(11)?(22)を70℃にて均一に混合溶解する(水相)。70℃に保持した水相に油相を添加し、ホモミキサーで乳化する。乳化が終了したら30℃まで冷却する。」

(3)甲3
(3-1)
「請求の範囲
[1]下記(A)(B)(C)(D)(E)の条件を全て満足することを特徴とする水中油型乳化日焼け止め化粧料。
(A)下記の(A-1)?(A-3)の三種の界面活性剤を化粧料全量に対して1?6質量%含有すること
(A-1)P.O.Eのモル数が20?120のP.O.Eステアリン酸エステル
(A-2)トリステアリン酸ソルビタン
(A-3)HLBが5?8のステアリン酸グリセリル
(B)下記の室温固体の油溶性紫外線吸収剤を化粧料全量に対して0.01?5質量%含有すること
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及び/又はtert-ブチルメトキシベンゾイルメタン
(C)下記の室温液体の油溶性紫外線吸収剤を化粧料全量に対して1?14質量%含有すること
メトキシ桂皮酸エチルヘキシル及び/又はオクトクリレン
(D)下記の水溶性紫外線吸収剤を化粧料全量に対して0.1?5質量%含有すること
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸
(E)炭素原子数が14?24の高級アルコールを含有すること

[2]下記(1)及び(2)の条件を満足することを特徴とする請求項1記載の水中油型乳化日焼け止め化粧料。
(1)成分(A-1)(A-2)(A-3)の全量に対して、成分(A-3)の含有量が10質量%?75質量%である。
(2)成分(A-1)(A-2)(A-3)の全量に対して、成分(E)の含有量が30?90質量%である。

[3]さらに(F)下記式(1)で表されるモノエステル油を化粧料全量に対して0.2?9質量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水中油型乳化日焼け止め化粧料。
[化1]
R_(1)COOR_(2) (1)
(式中、R1は炭素原子数5?11のアルキル基を示し、R2は炭素原子数3?11のアルキル基を示す)

[4]さらに(G)下記式(2)で表されるエチレングリコールとプロピレングリコールのランダム共重合体エーテル化合物を化粧料全量に対して0.2?9質量%含有することを特徴とする上記の水中油型乳化日焼け止め化粧料。
[化2]
RO-[(EO)_(m)(AO)_(n)]-OR (2)
(式中、AOは炭素数3?4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3?4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は50?100重量%である。炭素数3?4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はランダム状に付加されている。Rは、同一もしくは異なってもよく炭素数1?4の炭化水素基または水素原子であり、Rの炭化水素基数に対する水素原子数の割合は0.15以下である。)

[5]さらに(H)β-アラニル-L-ヒスチジン及び/又はその塩を化粧料全量に対して0.1?4質量%含有し、化粧料のpHが8未満であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水中油型乳化日焼け止め化粧料。」

(3-2)
「実施例
[0067]<製法>
表に示す処方にて75℃に加熱して、溶解したWパーツに、85℃に加熱して融解したOパーツを混合して乳化した後、Pパーツを混合し、30℃まで急冷する(各成分とパーツの関係は表参照)ことにより水中油型乳化日焼け止めクリームを製造した。そして、下記の評価試験を行った。
なお、表記載のパーツの欄において、Wとは水相成分、Oとは油相成分、Pとは粉末成分を意味する。
・・・
[0078]「実施例1、3、4と比較例1-4」

・・・
[0080]「実施例1、2、5、6と比較例1-5?1-6」

・・・
[0082]「実施例1、7、8と比較例1-7?1-8」

・・・
[0084]「実施例1、9、10と比較例2-1?2-2」

・・・
[0086]「実施例1、11と比較例2-3?2-4」


・・・
[0088]「実施例1、12、13と比較例2-5?2-6」

・・・
[0090]「実施例1と実施例14?17と比較例3-1?3-2」

・・・
[0092]「実施例1と実施例18?21と比較例3-3?3-4」

・・・
[0094]「実施例1、実施例22?23、比較例3-5」



(4)甲4
(4-1)
「【0042】
試験例1 刺激・使用感試験
比較例1?3及び実施例8?10を表1に示す処方に従って常法により調整した。30代女性20名に比較例1?3、実施例8?10の乳化組成物を1週間連続使用してもらい、皮膚へのチクチク・ピリピリと感じる刺激感、しっとり感、滑らかなすべり感等の使用感を評価してもらい、その評価を以下のように判定した。
・・・
【0044】
【表1】


【0045】
表1の結果から明らかなように、本発明の乳化組成物である実施例8?10のクリームは、皮膚への刺激が十分に改善されており、優れた使用感を有していることが確認された。一方、比較例1は、皮膚への刺激が十分に改善されておらず、滑らかなすべり感が少なく使用感に劣っていた。比較例2(2-エチルへキサン酸イソセチルは、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールからなるエステル油である)は、皮膚へ適用したときにチクチク・ピリピリした刺激感があり、しっとり感が少なく使用感が良好でなかった。比較例3(パルミチン酸セチルは、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールからなるエステル油である)は、皮膚への刺激が十分に改善されておらず、しっとり感・滑らかなすべり感が少なく使用感に劣っていた。」

4 取消理由通知についての当審の判断
(1)取消理由1(新規事項)について
上記平成31年2月25日付けの取消理由通知では、平成29年12月14日付け手続補正書でした補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、訂正前の本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない旨の取消理由を通知した。その取消理由の内容は概略以下のとおりである。
<取消理由の内容>
「本件特許は、平成29年12月14日付け手続補正書により、請求項1中の「(C)上記(B)成分以外のエステル油の1種以上 0.5?10質量%」なる記載が「(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%」へと補正がされた。この補正により、補正前の(C)成分に該当する「(B)成分以外のエステル油」のうち、補正後の『「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステル」以外の「(B)成分以外のエステル油」』については、任意の含量で含むものとなった。
しかしながら、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許の願書に最初に添付した明細書等」という)には、
「【請求項1】
下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される水中油滴型液晶構造を含むことを特徴とする皮膚外用剤組成物。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 2?15質量%
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)上記(B)成分以外のエステル油の1種以上 0.5?10質量%」、及び、
「【0048】
皮膚外用剤組成物における(C)成分の含有量は0.5?10質量%であり、好ましくは2?5質量%である。(C)成分の含有量が0.5?10質量%の範囲を外れると、水中油滴型液晶構造の形成と安定性に支障を来たす他、皮膚外用剤組成物の良好な塗布感を確保できない。」
なる記載があり、本件特許の願書に最初に添付した明細書等には、補正前の(C)成分に該当する「(B)成分以外のエステル油」の含有量が0.5?10質量%の範囲を外れる皮膚外用剤組成物は水中油滴型液晶構造の形成と安定性に支障を来たし、良好な塗布感を確保できず、そのような「(B)成分以外のエステル油」の含有量が0.5?10質量%の範囲を外れる皮膚外用剤組成物は本件特許の願書に最初に添付した明細書等には記載がされていなかったことが認められる。
一方、上記補正後の皮膚外用剤組成物については、『「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステル」以外の「(B)成分以外のエステル油」』を任意の含量で含むこととなった結果、「(B)成分以外のエステル油」を10質量%以上含む皮膚外用剤組成物の態様も包含されるものとなったところ、そのような皮膚外用剤組成物は、本件特許の願書に最初に添付した明細書等に開示された範囲を超えるものであり、新たな技術的事項を導入するものである。」

<上記取消理由についての合議体の判断>
しかしながら、上記「第2 訂正請求について」と「第3 本件特許発明」で述べたとおり、本件特許発明1の皮膚外用剤組成物から(f)項に係る態様を除くことにより、「(B)成分以外のエステル油」を10質量%以上含む態様は含まれないものとなったから、この取消理由は、当該訂正がなされたことにより解消した。
したがって、本件特許発明1?4に係る特許は、取消理由1によって取り消すべきものではない。

(2)取消理由2(新規性)について
(2-甲1)甲1発明に基づく新規性について
(ア)甲1発明の認定
上記記載事項(1-1)?(1-6)の、特に実施例1、4、6及び7の記載より、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、「重量%」と「質量%」は、地球上では実質的に同義であるため、単位は、本件特許発明1において用いられている「質量%」として表現する。
実施例1に記載の、
「ステアリン酸 3.00質量%
セチルアルコール 2.50質量%
ステアリン酸グリセリル 1.00質量%
オクチルドデカノール 3.00質量%
シクロメチコン 1.00質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2.00質量%
グリセロール 5.00質量%
カーボマー 0.10質量%
水酸化ナトリウム 適量
保存剤 適量
香料 適量
を含有し、脱ミネラル水で全100.00質量%として、pHを6.0?8.0に調整した、O/Wクリームである化粧品または皮膚化学的調製物」
(以下、「甲1-1発明」という)、

実施例4に記載の、
「ステアリン酸 1.00質量%
セチルアルコール 2.00質量%
ステアリン酸グリコール 0.50質量%
ステアリン酸グリセリル 0.25質量%
イソノナン酸セテアリル 2.00質量%
パルミチン酸イソプロピル 1.00質量%
ジメチコン 0.60質量%
パルミチン酸セチル 0.70質量%
グリセロール 3.00質量%
カーボマー 0.15質量%
雲母 1.00質量%
ケイ酸マグネシウム 1.00質量%
酸化鉄 1.00質量%
二酸化チタン 2.50質量%
タルク 5.00質量%
パルミチン酸ビタミンA 0.10質量%
水酸化ナトリウム 適量
保存剤 適量
香料 適量
を含有し、脱ミネラル水で全100.00重量%として、pHを6.0?8.0に調整した、O/Wエマルションメークアップ」
(以下、「甲1-4発明」という)、

実施例6に記載の、
「ステアリン酸 2.00質量%
セチルステアリルアルコール 2.00質量%
ステアリン酸グリコール 0.30質量%
ステアリン酸グリセリル 0.30質量%
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド 1.00質量%
エチルヘキサン酸セチルステアリル 1.00質量%
ジメチコン 4.00質量%
ミリスチン酸ミリスチル 1.00質量%
酢酸ビタミンE 2.00質量%
カーボマーナトリウム 0.10質量%
グリセロール 3.00質量%
香料、保存剤、染料、等 適量
水酸化ナトリウム 適量
を含有し、水で全100.00重量%として、pHを6.0?7.5に調整した、O/Wローションである化粧品または皮膚化学的調製物」
(以下、「甲1-6発明」という)、

実施例7に記載の、
「ステアリン酸 3.50質量%
セチルアルコール 1.50質量%
ミリスチルアルコール 1.00質量%
ステアリン酸グリセリル 1.00質量%
オクチルドデカノール 1.00質量%
安息香酸C_(12-15)-アルキル 2.00質量%
パラフィン油 0.50質量%
ジメチコン 1.00質量%
パルミチン酸セチル 0.80質量%
キサンタンゴム 0.10質量%
カーボマーナトリウム 0.10質量%
グリセロール 3.00質量%
メトキシケイ皮酸オクチル 4.00質量%
ベンゾフェノン-3 3.00質量%
サリチル酸オクチル 3.00質量%
BHT 0.02質量%
Na_(2)H_(2)EDTA 0.10質量%
香料、保存剤、染料 適量
水酸化カリウム 適量
を含有し、水で全100.00重量%として、pHを6.5?8.0に調整した、O/Wエマルション形態の日焼け止めクリーム」
(以下、「甲1-7発明」という)。
なお、「甲1-1発明」、「甲1-4発明」、「甲1-6発明」、「甲1-7発明」をまとめて「甲1発明」ともいう。

(イ)本件特許発明1と甲1発明との対比・相違点の認定
以下、本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の製品は、O/Wクリームである化粧品または皮膚化学的調製物(甲1-1発明)、O/Wエマルションメークアップ(甲1-4発明)、O/Wローションである化粧品または皮膚化学的調製物(甲1-6発明)、O/Wエマルション形態の日焼け止めクリーム(甲1-7発明)であり、これらはいずれも「水中油滴型の皮膚外用剤組成物」に相当する。
甲1発明における「ステアリン酸グリセリル」は、本件特許発明1の「(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上」に該当し、その含有量は、甲1-1発明及び甲1-7発明では1.00質量%、甲1-4発明では0.25質量%、甲1-6発明では0.30質量%であって、いずれも本件特許発明1の(B)成分の含有量「0.1?5質量%」の範囲内にあり、さらに、甲1発明における「ミリスチン酸ミリスチル」、「パルミチン酸セチル」は、本件特許発明1の「(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上」に該当し、その含有量は、甲1-1発明では2.00質量%、甲1-4発明では0.70質量%、甲1-6発明では1.00質量%、甲1-7発明では0.80質量%であって、いずれも本件特許発明1の(C)成分の含有量「0.5?10質量%」の範囲内にある。
本件特許発明1からは、(a)ミツロウ、(d)ポリビニルアルコール、(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上、のいずれか1以上の成分を含有するものが除かれているが、 甲1発明は、これらのいずれの成分も含まない。
本件特許発明1からは、(f)に該当する場合も除かれているが、甲1発明において、(B)成分以外であって、(C)成分以外のエステル油は、「ステアリン酸グリコール」、「イソノナン酸セテアリル」、「パルミチン酸イソプロピル」、「カプリン酸/カプリン酸トリグリセリド」、「エチルヘキサン酸セチルステアリル」、「メトキシケイ皮酸オクチル」、「パルミチン酸ビタミンA」、「安息香酸C_(12-15)-アルキル」、「サリチル酸オクチル」が該当するが、これらの成分と(C)成分との合計含有量が10質量%を超えるものはない。
甲1発明における「セチルアルコール」、「セチルステアリルアルコール」、「ミリスチルアルコール」は、本件特許発明1の(A)成分に該当するが、その含有量は、甲1-1発明及び甲1-7発明では2.50質量%、甲1-4発明及び甲1-6発明では2.00質量%であって、いずれも本件特許発明1の(A)成分の含有量「6?15質量%」の範囲外である。
そうすると、本件特許発明1と、甲1発明は、
「下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上
(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」
である点で一致し、

(相違点1)
水中油滴型構造について、本件特許発明1は、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造であるのに対し、甲1発明では、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
(A)成分の含有量が、本件特許発明1は、6?15質量%であるのに対し、甲1発明では、2.50質量%、または、2.00質量%である点。
で相違する。

(ウ)本件特許発明1についての判断
本件特許発明1は、上記「第2 訂正請求について」において示したとおり、(A)成分の含有量を「2?15質量%」から「6?15質量%」に限定する訂正がなされたため、上記(相違点2)に係る(A)成分の含有量の点で、甲1発明と明確に相違するものとなった。
したがって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1に記載された発明ということはできない。

(エ)本件特許発明2?4についての判断
上記(ウ)に示したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないから、その本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4も、同様に、甲1に記載された発明ということはできない。

(2-甲2)甲2発明に基づく新規性について
(ア)甲2発明の認定
上記記載事項(2-1)?(2-4)の、特に実施例1?12の記載より、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
実施例1?4に記載の、
「1,3-ブチレングリコール 8質量%
キシリトール 3質量%
ダイナマイトグリセリン 8質量%
キサンタンガム 0.2質量%
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 実施例1及び3は1.08質量%、実施例2は1.5質量%、実施例4は0.54質量%
トリステアリン酸ソルビタン 実施例1は0.27質量%、実施例2は0.5質量%、実施例3及び4は1.35質量%
ステアリン酸PEG40 実施例1は1.35質量%、実施例2は0.7質量%、実施例3は0.27質量%、実施例4は0.81質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
ステアリルアルコール 0.6質量%
ベヘニルアルコール 2.2質量%
シクロメチコン 2質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 15質量%
酢酸レチノール 0.2質量%
4-メトキシサリチル酸塩 1質量%
トラネキサム酸 1質量%
クエン酸 0.04質量%
クエン酸ナトリウム 0.06質量%
ブチルヒドロキシトルエン(BHT) 0.05質量%
エデト酸三ナトリウム 0.05質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
イオン交換水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化皮膚化粧料」
(以下、「甲2-A発明」という。)、

実施例5?8に記載の、
「1,3-ブチレングリコール 8質量%
キシリトール 3質量%
ダイナマイトグリセリン 8質量%
キサンタンガム 0.2質量%
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 実施例5は1.5質量%、実施例6は1.2質量%、実施例7は0.9質量%、実施例8は0.6質量%
トリステアリン酸ソルビタン 実施例5は0.5質量%、実施例6は0.4質量%、実施例7は0.3質量%、実施例8は0.2質量%
ステアリン酸PEG40 実施例5は0.7質量%、実施例6は0.56質量%、実施例7は0.42質量%、実施例8は0.28質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
ステアリルアルコール 0.6質量%
ベヘニルアルコール 2.2質量%
シクロメチコン 2質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 15質量%
酢酸レチノール 0.2質量%
4-メトキシサリチル酸ナトリウム 1質量%
トラネキサム酸 1質量%
クエン酸 0.04質量%
クエン酸ナトリウム 0.06質量%
ブチルヒドロキシトルエン(BHT) 0.05質量%
エデト酸三ナトリウム 0.05質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
イオン交換水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化皮膚化粧料」
(以下、「甲2-B発明」という。)、

実施例9?11に記載の、
「1,3-ブチレングリコール 8質量%
キシリトール 3質量%
ダイナマイトグリセリン 8質量%
キサンタンガム 0.2質量%
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 実施例9は0.48質量%、実施例10は0.32質量%、実施例11は0.16質量%
トリステアリン酸ソルビタン 実施例9は0.66質量%、実施例10は0.98質量%、実施例11は1.3質量%
ステアリン酸PEG40 実施例9は0.48質量%、実施例10は0.32質量%、実施例11は0.16質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
ステアリルアルコール 0.9質量%
ベヘニルアルコール 3.3質量%
シクロメチコン 2質量%
テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 15質量%
ポリプロピレンポリマー 1質量%
酢酸レチノール 0.2質量%
4-メトキシサリチル酸塩 1質量%
トラネキサム酸 1質量%
クエン酸 0.04質量%
クエン酸ナトリウム 0.06質量%
ブチルヒドロキシトルエン(BHT) 0.05質量%
エデト酸三ナトリウム 0.05質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
イオン交換水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化皮膚化粧料」
(以下、「甲2-C発明」という。)、

実施例12に記載の、
「 (配合成分) (質量%)
(1)酢酸レチノール 0.2
(2)トリステアリン酸ソルビタン 1.35
(3)ステアリン酸PEG40 0.81
(4)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.54
(5)ステアリルアルコール 0.9
(6)ベヘニルアルコール 3.3
(7)テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 15
(8)シクロメチコン 2
(9)ミリスチン酸ミリスチル 2
(10)BHT 0.05
(11)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
(12)ダイナマイトグリセリン 8
(13)キシリトール 3
(14)1、3-ブチレングリコール 8
(15)キサンタンガム 0.2
(16)クエン酸ナトリウム 0.06
(17)クエン酸 0.04
(18)エデト酸三ナトリウム 0.05
(19)フェノキシエタノール 0.5
(20)トラネキサム酸 1
(21)4-メトキシサリチル酸カリウム 1
(22)水 残余
を含有した、水中油型スキンクリーム。」
(以下、「甲2-D発明」という)。
なお、「甲2-A発明」?「甲2-D発明」をまとめて「甲2発明」ともいう。

(イ)本件特許発明1と甲2発明との対比・相違点の認定
以下、本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の製品は、水中油型乳化皮膚化粧料(甲2-A発明?甲2-C発明)、水中油型スキンクリーム(甲2-D発明)であり、これらはいずれも「水中油滴型の皮膚外用剤組成物」に相当する。
甲2発明における「自己乳化型モノステアリン酸グリセリン」は、本件特許発明1の「(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上」に該当し、その含有量は、甲2-A発明の実施例1及び実施例3では1.08質量%、甲2-A発明の実施例2では1.5質量%、甲2-A発明の実施例4では0.54質量%、甲2-B発明の実施例5では1.5質量%、甲2-B発明の実施例6では1.2質量%、甲2-B発明の実施例7では0.9質量%、甲2-B発明の実施例8では0.6質量%、甲2-C発明の実施例9では0.48質量%、甲2-C発明の実施例10では0.32質量%、甲2-C発明の実施例11では0.16質量%、甲2-D発明では0.54質量%であって、いずれも本件特許発明1の(B)成分の含有量「0.1?5質量%」の範囲内にあり、さらに、甲2発明における「ミリスチン酸ミリスチル」は、本件特許発明1の「(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上」に該当し、その含有量は2質量%であって、本件特許発明1の(C)成分の含有量「0.5?10質量%」の範囲内にある。
本件特許発明1からは、(a)ミツロウ、(d)ポリビニルアルコール、(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上、のいずれか1以上の成分を含有するものが除かれているが、 甲2発明は、これらのいずれの成分も含まない。
本件特許発明1からは、(f)に該当する場合も除かれているところ、甲2発明における「テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット」は、「(B)成分以外であって、(C)成分以外のエステル油」に該当し、この含有量が15質量%と、10質量%を超えるものであるから、甲2発明はいずれも、当該除かれる(f)の態様にあたる。
甲2発明における「ステアリルアルコール」、「ベヘニルアルコール」は、本件特許発明1の(A)成分に該当するが、その含有量は、甲2-A発明及び甲2-B発明では2.8質量%、甲2-C発明及び甲2-D発明では4.2質量%であって、いずれも本件特許発明1の(A)成分の含有量「6?15質量%」の範囲外である。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、

「下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上」
である点で一致し、

(相違点1)
水中油滴型構造について、本件特許発明1は、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造であるのに対し、甲2発明では、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
(A)成分の含有量が、本件特許発明1は、6?15質量%であるのに対し、甲2発明では、2.8質量%、または、4.2質量%である点。

(相違点3)
本件特許発明1からは、「(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」が除かれているのに対し、甲2発明は、この除かれている態様に該当する点。
で相違する。

(ウ)本件特許発明1についての判断
本件特許発明1は、上記「第2 訂正請求について」において示したとおり、(A)成分の含有量を「2?15質量%」から「6?15質量%」に限定する訂正がなされたため、上記(相違点2)に係る(A)成分の含有量の点で、甲2発明と明確に相違するものとなった。
また甲2発明は、(相違点3)に係る、本件特許発明1からは除かれている(f)の態様に該当するものであるから、この点でも本件特許発明1と明確に相違するものである。
したがって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2に記載された発明ということはできない。

(エ)本件特許発明2?4についての判断
上記(ウ)に示したとおり、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではないから、その本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4も、同様に、甲2に記載された発明ということはできない。

(2-甲3)甲3発明に基づく新規性について
(ア)甲3発明の認定
上記記載事項(3-1)?(3-2)の、特に実施例1?11及び13?23の記載より、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。
実施例1、3、4に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 実施例1及び4は2質量%、実施例3は1質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 実施例1及び3は0.5質量%、実施例4は2質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 実施例1及び4は3質量%、実施例3は4質量%
スクワラン 実施例1及び3は5質量%、実施例4は3.5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-A発明」という。)、

実施例2、5、6に記載の、
「ステアリン酸PEG40 実施例2は0質量%、実施例5及び6は1.1質量%
ステアリン酸PEG100 実施例2は1質量%、実施例5及び6は0質量%
トリステアリン酸ソルビタン 実施例2は1.1質量%、実施例5及び6は1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 実施例2は3質量%、実施例5は2質量%、実施例6は5質量%
メトキシ桂皮酸エチルヘキシル 実施例1及び6は5質量%、実施例5は1質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 実施例2は1質量%、実施例5及び6は0.5質量%
ベヘニルアルコール 実施例2は0.5質量%、実施例5及び6は2質量%
セタノール 実施例2は1質量%、実施例5及び6は0質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 実施例2は3質量%、実施例5は5質量%、実施例6は2質量%
スクワラン 実施例2は2質量%、実施例5は5質量%、実施例6は1質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-B発明」という。)、

実施例7、8に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 実施例7は1質量%、実施例8は3質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 実施例7は0.6質量%、実施例8は1.8質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-C発明」という。)、

実施例9、10に記載の、
「ステアリン酸PEG40 実施例9は0.44質量%、実施例10は1.32質量%
トリステアリン酸ソルビタン 実施例9は0.4質量%、実施例10は1.2質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 実施例9は1質量%、実施例10は3質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-D発明」という。)、

実施例11に記載の、
「ステアリン酸PEG40 0.85質量%
トリステアリン酸ソルビタン 0.75質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 3質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-E発明」という。)、

実施例13に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.6質量%
ベヘニルアルコール 2.4質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-F発明」という。)、

実施例14?17に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル 実施例14は1質量%、実施例15は2質量%、実施例16は0質量%、実施例17は5質量%
イソノナン酸イソノニル 実施例16は2質量%、実施例14、15及び17は0質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 実施例14は4質量%、実施例15及び16は3質量%、実施例17は0質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-G発明」という。)、

実施例18?21に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル 実施例18は1質量%、実施例19は2質量%、実施例20は0質量%、実施例21は5質量%
PEG/PPG-17/4ジメチルエーテル 実施例18、19及び21は0質量%、実施例20は2質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-H発明」という。)、

実施例22及び23に記載の、
「ステアリン酸PEG40 1.1質量%
トリステアリン酸ソルビタン 1質量%
自己乳化型ステアリン酸グリセリル 2.5質量%
tert-ブチルメトキシベンゾイルメタン 2質量%
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 0.5質量%
オクトクリレン 5質量%
フェニルベンズイミダゾールスルフォン酸 2質量%
ステアリルアルコール 0.5質量%
ベヘニルアルコール 2質量%
カルノシン 実施例22は1質量%、実施例23は3質量%
グリセリン 7質量%
ジプロピレングリコール 5質量%
ブチレングリコール 8質量%
キサンタンガム 0.15質量%
ミリスチン酸ミリスチル 2質量%
マイクロクリスタリンワックス 1質量%
ジメチコン 3質量%
スクワラン 5質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
酸化チタン 1質量%
球状セルロース 0.5質量%
エデト酸塩 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003質量%
ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1質量%
酸化鉄(赤)0.0003質量%
酸化鉄(黄)0.006質量%
水 100質量%の残余
を含有した、水中油型乳化日焼け止め化粧料」
(以下、「甲3-I発明」という。)。
なお、「甲3-A発明」?「甲3-I発明」をまとめて「甲3発明」ともいう。

(イ)本件特許発明1と甲3発明との対比・相違点の認定
以下、本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の製品は、水中油型乳化日焼け止め化粧料であり、これらはいずれも「水中油滴型の皮膚外用剤組成物」に相当する。
甲3発明における「自己乳化型ステアリン酸グリセリル」は、本件特許発明1の「(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上」に該当し、その含有量は、甲3-A発明?甲3-C発明及び甲3-F発明?甲3-I発明では2.5質量%、甲3-D発明の実施例9では1質量%、甲3-D発明の実施例10及び甲3-E発明では3質量%であって、いずれも本件特許発明1の(B)成分の含有量「0.1?5質量%」の範囲内にあり、さらに、甲3発明における「ミリスチン酸ミリスチル」は、本件特許発明1の「(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上」に該当し、その含有量は2質量%であって、本件特許発明1の(C)成分の含有量「0.5?10質量%」の範囲内にある。
本件特許発明1からは、(a)ミツロウ、(d)ポリビニルアルコール、(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上、のいずれか1以上の成分を含有するものが除かれているが、 甲3発明は、これらのいずれの成分も含まない。
本件特許発明1からは、(f)に該当する場合も除かれているが、甲3発明において、(B)成分以外であって、(C)成分以外のエステル油は、「ステアリン酸PEG40」、「ステアリン酸PEG100」、「トリステアリン酸ソルビタン」、「メトキシ桂皮酸エチルヘキシル」、「2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル」、「イソノナン酸イソノニル」が該当するが、これらの成分と(C)成分との合計含有量が10質量%を超えるものはない。
甲3発明における「ステアリルアルコール」、「ベヘニルアルコール」、「セタノール」は、本件特許発明1の(A)成分に該当するが、その含有量は、甲3-A発明?甲3-E発明及び甲3-G発明?甲3-I発明では2.5質量%、甲3-F発明では3質量%であって、いずれも本件特許発明1の(A)成分の含有量「6?15質量%」の範囲外である。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、
「下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上
(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」
である点で一致し、

(相違点1)
水中油滴型構造について、本件特許発明1は、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造であるのに対し、甲3発明では、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
(A)成分の含有量が、本件特許発明1は、6?15質量%であるのに対し、甲3発明では、2.5質量%、または、3質量%である点。
で相違する。

(ウ)本件特許発明1についての判断
本件特許発明1は、上記「第2 訂正請求について」において示したとおり、(A)成分の含有量を「2?15質量%」から「6?15質量%」に限定する訂正がなされたため、上記(相違点2)に係る(A)成分の含有量の点で、甲3発明と明確に相違するものとなった。
したがって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3に記載された発明ということはできない。

(エ)本件特許発明2?4についての判断
上記(ウ)に示したとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないから、その本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4も、同様に、甲3に記載された発明ということはできない。

(2-甲4)甲4発明に基づく新規性について
(ア)甲4発明の認定
上記記載事項(4-1)の、特に比較例3の記載より、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、「重量%」と「質量%」は、地球上では実質的に同義であるため、単位は、本件特許発明1において用いられている「質量%」として表現する。
比較例3に記載の、
「尿素 5質量%
セタノール 3質量%
パルミチン酸セチル 1質量%
モノステアリン酸グリセリル 3質量%
ポリオキシエチレン(23)セチルエーテル 3質量%
ワセリン 5質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5質量%
ビタミンEアセテート 0.5質量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
トリエタノールアミン 0.2質量%
グリシン 1.0質量%
精製水 残量
を含有した、皮膚に適用する乳化組成物」
(以下、「甲4発明」という。)

(イ)本件特許発明1と甲4発明との対比・相違点の認定
以下、本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明は乳化型の特定がなされていない乳化組成物であるが、約80%もの精製水を含むものであるところ、その型は「水中油滴型」であると認められる。そうすると、甲4発明は、皮膚に適用する水中油滴型の乳化組成物であり、「水中油滴型の皮膚外用剤組成物」に相当する。
甲4発明における「モノステアリン酸グリセリル」は、本件特許発明1の「(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上」に該当し、その含有量は3質量%であって、本件特許発明1の(B)成分の含有量「0.1?5質量%」の範囲内にあり、さらに、甲4発明における「パルミチン酸セチル」は、本件特許発明1の「(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上」に該当し、その含有量は1質量%であって、本件特許発明1の(C)成分の含有量「0.5?10質量%」の範囲内にある。
本件特許発明1からは、(a)ミツロウ、(d)ポリビニルアルコール、(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上、のいずれか1以上の成分を含有するものが除かれているが、 甲4発明は、これらのいずれの成分も含まない。
本件特許発明1からは、(f)に該当する場合も除かれているが、甲4発明に、(B)成分以外であって、(C)成分以外のエステル油は「ビタミンEアセテート」が該当するが、当該成分と(C)成分との合計含有量は10質量%以下である。
甲4発明における「セタノール」は、本件特許発明1の(A)成分に該当するが、その含有量は3質量%であって、本件特許発明1の(A)成分の含有量「6?15質量%」の範囲外である。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、
「下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上
(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」
である点で一致し、

(相違点1)
水中油滴型構造について、本件特許発明1は、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造であるのに対し、甲4発明では、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
(A)成分の含有量が、本件特許発明1は、6?15質量%であるのに対し、甲4発明では、3質量%である点。
で相違する。

(ウ)本件特許発明1についての判断
本件特許発明1は、上記「第2 訂正請求について」において示したとおり、(A)成分の含有量を「2?15質量%」から「6?15質量%」に限定する訂正がなされたため、上記(相違点2)に係る(A)成分の含有量の点で、甲4発明と明確に相違するものとなった。
したがって、(相違点1)について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4に記載された発明ということはできない。

(エ)本件特許発明2?4についての判断
上記(ウ)に示したとおり、本件特許発明1は、甲4に記載された発明ではないから、その本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4も、同様に、甲4に記載された発明ということはできない。

(2-まとめ)小括
よって、本件特許発明1?4に係る特許は、取消理由2によって取り消すべきものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
以下では、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について述べる。

1 進歩性について
(1)甲2発明に基づく進歩性について
申立人は、令和1年7月3日付け意見書において、「上記第4の4の(2-甲2)(イ)で示した(相違点2)の(A)成分の配合量について、甲2には、請求項1等に規定されているように、炭素原子数が14?24の高級アルコールの含有量を1?10質量%とすることが記載されており、また、(相違点3)のB成分以外のエステル油の配合量について、甲2には、「エステル」等の通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分を、効果を損なわない範囲で適宜配合できることが記載されており(【0028】)、甲2発明の解決しようとする課題は、「ビタミンA類を安定に配合し、使用性(肌なじみ、塗布後の効果実感)、基剤の経時安定性(乳化安定性)に優れる水中油型乳化皮膚化粧料を提供すること」であるから(【0007】等)、甲2発明において、上記課題を解決できる範囲において、エステルおよび高級アルコールの含有量を本件特許発明1の範囲とすることに困難性はなく、また、本件特許明細書の実施例等の記載を見ても、これらの(相違点2)及び(相違点3)に係る構成により顕著な効果が得られるとは理解できない。」旨、主張し、本件特許発明1?4は、甲2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。

<合議体の判断>
しかしながら甲2発明には、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物の油滴が「球状液晶」であることなどは記載されていない(上記「第4の4の(2-甲2)(イ)」で示した(相違点1))。この点、本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「水中油滴型液晶構造の確認は、偏光顕微鏡によって行うことができる。」 との記載があるとおり(【0025】)、「油滴が球状液晶であること」が確認できるものを本件特許発明としているものであるが、甲2には、油滴を球状液晶とする動機付けとなるような記載は見当たらない。
確かに本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「少なくとも、2?15質量%の(A)成分と、0.1?5質量%の(B)成分と、0.5?10質量%の(C)成分とを水に加えて撹拌すると、水中油滴型のエマルションであって、その微小な油滴の一部又は全部が球状の液晶となっているものを調製することができる。」なる記載があり、(A)成分?(C)成分の配合量が油滴を球状液晶とするのに重要な要素であることは認められるが、他方、甲2発明には、(A)成分?(C)成分以外の成分も種々含まれているところ、それらの他の成分を含む甲2発明の油滴が球状液晶であると断ずることもできない。
そうすると、そのような甲2発明について、上記「第4の4の(2-甲2)(イ)」において示した(相違点2)及び(相違点3)について、(A)成分の配合量を増やし、また、(B)成分以外のエステル油の量を減らして、甲2に記載も示唆もされていない、油滴を球状液晶とすることが当業者に容易に為し得たということはできない。
そして本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、請求項に規定される発明特定事項を備えることにより、皮膚に塗布した際にも液晶構造が維持されるという高い液晶安定性と良好な塗布感という(【0006】?【0007】、実施例)、当業者に予測外の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明は、甲2に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲3発明に基づく進歩性について
申立人は、令和1年7月3日付け意見書において、「上記第4の4の(2-甲3)(イ)で示した(相違点2)の(A)成分の配合量について、甲3には、「高級アルコール」等の通常化粧料に用いられる成分を必要に応じて適宜配合できることが記載されており(【0031】)、高級アルコールとして成分(A)に該当するミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが記載されているから(【0037】)、甲3発明において、高級アルコールの含有量を本件特許発明1に記載の範囲とすることに何ら困難性はなく、また本件特許明細書の実施例において、(相違点2)に係る構成が異なっても評価結果は全く同じであるから、当該本件特許明細書の記載に接した当業者は、(A)成分の含有量を「6?15質量%」としても何ら新たな効果は得られないことを理解する。」旨、主張し、本件特許発明1?4は、甲3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。

<合議体の判断>
しかしながら甲3発明には、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物の油滴が「球状液晶」であることなどは記載されていない(上記「第4の4の(2-甲3)(イ)」で示した(相違点1))。この点、本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「水中油滴型液晶構造の確認は、偏光顕微鏡によって行うことができる。」 との記載があるとおり(【0025】)、「油滴が球状液晶であること」が確認できるものを本件特許発明としているものであるが、甲3には、油滴を球状液晶とする動機付けとなるような記載は見当たらない。
確かに本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「少なくとも、2?15質量%の(A)成分と、0.1?5質量%の(B)成分と、0.5?10質量%の(C)成分とを水に加えて撹拌すると、水中油滴型のエマルションであって、その微小な油滴の一部又は全部が球状の液晶となっているものを調製することができる。」なる記載があり、(A)成分?(C)成分の配合量が油滴を球状液晶とするのに重要な要素であることは認められるが、他方、甲3発明には、(A)成分?(C)成分以外の成分も種々含まれているところ、それらの他の成分を含む甲3発明の油滴が球状液晶であると断ずることもできない。
そうすると、そのような甲3発明について、上記「第4の4の(2-甲3)(イ)」において示した(相違点2)について、(A)成分の配合量を増やして、甲3に記載も示唆もされていない、油滴を球状液晶とすることが当業者に容易に為し得たということはできない。
そして本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、請求項に規定される発明特定事項を備えることにより、皮膚に塗布した際にも液晶構造が維持されるという高い液晶安定性と良好な塗布感という(【0006】?【0007】、実施例)、当業者に予測外の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明は、甲3に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲4発明に基づく進歩性について
申立人は、令和1年7月3日付け意見書において、「上記第4の4の(2-甲4)(イ)で示した(相違点2)の(A)成分の配合量について、甲4には、
「【0011】
本発明の乳化組成物において、高級アルコールの含有量は、本発明の目的を奏する限り限定されないが、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1重量%以上で含有することができ、上限は15重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは8重量%以下で含有する。」なる記載があるから、当業者であれば、甲4発明において、高級アルコールの含有量を本件特許発明の範囲とすることに何ら困難性はなく、また、甲4発明は、甲4中で「比較例」と記載されていることをもって、ただちに、甲4発明の高級アルコールの含有量を上記範囲に調整することの動機付けがないとはいえない。また、本件特許明細書に接した当業者には、本件特許発明が相違点に係る構成を有することにより何らかの新たな効果が得られるとは理解できない。」旨、主張し、本件特許発明1?4は、甲4に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。

<合議体の判断>
しかしながら甲4発明には、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物の油滴が「球状液晶」であることなどは記載されていない(上記「第4の4の(2-甲4)(イ)」で示した(相違点1))。この点、本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「水中油滴型液晶構造の確認は、偏光顕微鏡によって行うことができる。」 との記載があるとおり(【0025】)、「油滴が球状液晶であること」が確認できるものを本件特許発明としているものであるが、甲4には、油滴を球状液晶とする動機付けとなるような記載は見当たらない。
確かに本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「少なくとも、2?15質量%の(A)成分と、0.1?5質量%の(B)成分と、0.5?10質量%の(C)成分とを水に加えて撹拌すると、水中油滴型のエマルションであって、その微小な油滴の一部又は全部が球状の液晶となっているものを調製することができる。」なる記載があり、(A)成分?(C)成分の配合量が油滴を球状液晶とするのに重要な要素であることは認められるが、他方、甲4発明には、(A)成分?(C)成分以外の成分も種々含まれているところ、それらの他の成分を含む甲4発明の油滴が球状液晶であると断ずることもできない。加えて甲4発明は、甲4において効果の劣るものとして比較例に挙げられたものにすぎない。
そうすると、そのような甲4発明について、上記「第4の4の(2-甲4)(イ)」において示した(相違点2)について、(A)成分の配合量を増やして、甲4に記載も示唆もされていない、油滴を球状液晶とすることが当業者に容易に為し得たということはできない。
そして本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、請求項に規定される発明特定事項を備えることにより、皮膚に塗布した際にも液晶構造が維持されるという高い液晶安定性と良好な塗布感という(【0006】?【0007】、実施例)、当業者に予測外の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明は、甲4に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)甲1発明に基づく進歩性について
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明は、甲1発明との相違点は設計事項にすぎないから、進歩性を有しない旨、主張する。
しかしながら甲1発明には、水中油滴型構造を含む皮膚外用剤組成物の油滴が「球状液晶」であることなどは記載されていない(上記「第4の4の(2-甲1)(イ)」で示した(相違点1))。この点、本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に「水中油滴型液晶構造の確認は、偏光顕微鏡によって行うことができる。」 との記載があるとおり(【0025】)、「油滴が球状液晶であること」が確認できるものを本件特許発明としているものであるが、甲1には、油滴を球状液晶とする動機付けとなるような記載は見当たらない。
確かに本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「少なくとも、2?15質量%の(A)成分と、0.1?5質量%の(B)成分と、0.5?10質量%の(C)成分とを水に加えて撹拌すると、水中油滴型のエマルションであって、その微小な油滴の一部又は全部が球状の液晶となっているものを調製することができる。」なる記載があり、(A)成分?(C)成分の配合量が油滴を球状液晶とするのに重要な要素であることは認められるが、他方、甲1発明には、(A)成分?(C)成分以外の成分も種々含まれているところ、それらの他の成分を含む甲1発明の油滴が球状液晶であると断ずることもできない。
そうすると、そのような甲1発明について、上記「第4の4の(2-甲1)(イ)」において示した(相違点2)について、(A)成分の配合量を増やして、甲1に記載も示唆もされていない、油滴を球状液晶とすることが当業者に容易に為し得たということはできない。
そして本件特許発明の皮膚外用剤組成物は、請求項に規定される発明特定事項を備えることにより、皮膚に塗布した際にも液晶構造が維持されるという高い液晶安定性と良好な塗布感という(【0006】?【0007】、実施例)、当業者に予測外の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明は、甲1に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)小括
よって、申立人の主張する本件特許発明1?4が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとする、申立理由は、理由がない。

2 サポート要件・実施可能要件について
(1)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「本件特許発明の解決しようとする課題は、液晶安定性の確保と、良好な塗布感の実現だが、この点について【0048】段落には、「皮膚外用剤組成物における・・・(C)成分の含有量が0.5?10質量%の範囲を外れると、水中油滴型液晶構造の形成と安定性に支障を来たす他、皮膚外用剤組成物の良好な塗布感を確保できない。」なる記載があり、当該(C)成分とは、補正前の「(B)成分以外のエステル油」である。
しかしながら、訂正前の本件特許発明1は、「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステル」を10質量%含むとともに、他のエステル油を任意の割合で含む構成を排除していないから、そのような補正前の(C)成分の含有量が10質量%を超えるものは、【0048】段落の記載どおり、上記課題を解決することができないものである。」として、本件特許発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨、主張し、同様の理由で、本件特許発明は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨、主張している。

(2)合議体の判断
しかしながら、上記「第2 訂正請求について」において述べたとおり、本件特許発明では、訂正前の請求項1の皮膚外用剤組成物から、「(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合」を除外する訂正がなされたから、申立人がサポート要件及び実施可能要件を満たさない旨主張している対象である「補正前の(C)成分の含有量が10質量%を超えるもの」は、本件特許発明に含まれないこととなった。
したがって、申立人の主張する本件特許発明1?4が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるとする、申立理由は、理由がない。
また、申立人の主張する本件特許発明1?4が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないものであるとする、申立理由も、理由がない。

3 明確性について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、
「(a)「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上」の範囲が不明確であり、
(b)さらに具体的には、
「【0047】
以上の内、より好ましいものは直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上であり、特に好ましいものはミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、モノステアリン酸バチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソノニル、ステアリン酸ステアリル及びオレイン酸デシルから選ばれる1種以上であり、とりわけ好ましいものはミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、モノステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上である。」
なる記載があり、(C)成分の具体例としての好ましいものが「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル等」であることが記載されており、その中でも好ましい成分として「イソノナン酸イソノニル」が記載されているが、当該「イソノナン酸イソノニル」は分岐脂肪酸のエステルであって、「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル等」に該当しないから、【0047】の(C)成分を特定する記載に不整合があるから、請求項における(C)成分の定義及び範囲も不明確である」旨、主張する。

(2)合議体の判断
しかしながら、
(b)イソノナン酸イソノニルは、「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル」にも「バチルアルコールの脂肪酸エステル」にも該当しないから、(C)成分の「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステル」に含まれないことが明確であり、また、
(a)本件特許発明の(C)成分に係る「直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステル」は、直鎖脂肪酸と高級アルコールがエステル結合した化合物と、バチルアルコールと脂肪酸がエステル結合した化合物を、それぞれ意味していることが明確であるから、請求項における(C)成分は明確である。
したがって、申立人の主張する本件特許発明1?4が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるとする、申立理由は、理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1?4に係る特許について、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(A)成分?(C)成分を必須成分として構成される、油滴が球状液晶である水中油滴型液晶構造を含むことを特徴とする皮膚外用剤組成物(但し、下記(a)、(d)、(e)のいずれか1以上の成分を含有するものを除き、更に下記(f)に該当する場合を除く)。
(A)常温で固体の高級アルコールの1種以上 6?15質量%
(B)グリセリン脂肪酸エステルの1種以上 0.1?5質量%
(C)直鎖脂肪酸と高級アルコールのエステル及びバチルアルコールの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上 0.5?10質量%
(a)ミツロウ
(d)ポリビニルアルコール
(e)カルニチン、その誘導体及びそれらの塩より選択される1種以上
(f)上記(B)成分以外のエステル油であって上記(C)成分以外のものを含有し、これと上記(C)成分との合計含有量が10質量%を超える場合
【請求項2】 前記(B)成分の含有量に対する前記(A)成分と(C)成分の合計含有量の質量比((A)+(C))/(B)が2?30の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】 前記(C)成分がミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸バチル及びミリスチン酸オクチルドデシルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】 前記皮膚外用剤組成物が、更に水溶性高分子の1種以上を含有することを特徴とする請求項1?請求項3のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-09-30 
出願番号 特願2013-81512(P2013-81512)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 561- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松村 真里  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 冨永 みどり
田村 聖子
登録日 2018-06-22 
登録番号 特許第6355296号(P6355296)
権利者 ホーユー株式会社
発明の名称 皮膚外用剤組成物  

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